(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148366
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】植物栽培設備
(51)【国際特許分類】
A01G 9/22 20060101AFI20241010BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A01G9/22
A01G7/00 601Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061456
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 誠人
(72)【発明者】
【氏名】手塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】中田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 義明
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022DA01
2B022DA19
2B029LA01
2B029RA06
2B029SE04
2B029SF04
(57)【要約】
【課題】栽培室内の日射の状況を考慮した遮光カーテン制御を行うことを課題とする。
【解決手段】栽培室1の天井部に遮光カーテン40を開閉可能に設ける植物栽培設備において、栽培室1内に内部日射量センサ46を設け、内部日射量センサ46によって遮光カーテン40の開閉制御を行うよう構成した。なお、栽培室1外に外部日射量センサ45を、栽培室1内に内部日射量センサ46を設け、外部日射量センサ45及び内部日射量センサ46によって遮光カーテン40の開閉制御を行うよう構成し、内部日射量センサ46を優先して遮光カーテン40による遮光制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培室(1)の天井部に遮光カーテン(40)を開閉可能に設ける植物栽培設備において、栽培室(1)内に内部日射量センサ(46)を設け、内部日射量センサ(46)によって遮光カーテン(40)の開閉制御を行うよう構成したことを特徴とする植物栽培設備。
【請求項2】
栽培室(1)外に外部日射量センサ(45)を、栽培室(1)内に内部日射量センサ(46)を設け、外部日射量センサ(45)及び内部日射量センサ(46)によって遮光カーテン(40)の開閉制御を行うよう構成し、内部日射量センサ(46)を優先して遮光カーテン(40)による遮光制御する構成とした請求項1に記載の植物栽培設備。
【請求項3】
内部日射量センサ(46)による日射量の積算値に基づき給液制御を行うよう構成した請求項1に記載の植物栽培設備。
【請求項4】
内部日射量センサ(46)の日射量が予め設定した値以下の場合は、給液制御用の日射量積算を行わないよう構成した請求項3に記載の植物栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培設備において、栽培室外に日射量センサを設け、この日射量センサにより検出される日射量に基づいて、遮光カーテンが所望の開閉度となるよう開閉度を変更し、日射量が大きいときは遮光カーテンを大きく閉じて遮光率を上げる構成がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、日射量に応じて遮光カーテンの開閉制御を行い適正な日射量を管理できる効果がある。
【0005】
しかしながら、栽培室外に日射量センサを設置するから、栽培室内部に至る日射量は、壁部被覆材を通過すると例えば90%程度に減少するため、また秋季、冬季及び春季は太陽の位置が低く、栽培室内に入る光量が少なくなるため、外部日射量センサは、実際に作物が受けている日射より少なく検知する。よって適正な遮光カーテン開閉制御を行えない恐れがある。
【0006】
本発明は、栽培室内の日射の状況を考慮した遮光カーテン制御を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、栽培室1の天井部に遮光カーテン40を開閉可能に設ける植物栽培設備において、栽培室1内に内部日射量センサ46を設け、内部日射量センサ46によって遮光カーテン40の開閉制御を行うよう構成した。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、栽培室1外に外部日射量センサ45を、栽培室1内に内部日射量センサ46を設け、外部日射量センサ45及び内部日射量センサ46によって遮光カーテン40の開閉制御を行うよう構成し、内部日射量センサ46を優先して遮光カーテン40による遮光制御する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、内部日射量センサ46による日射量の積算値に基づき給液制御を行うよう構成する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、内部日射量センサ46の日射量が予め設定した値以下の場合は、給液制御用の日射量積算を行わないよう構成した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1又は請求項2に記載の発明によると、内部日射量によって遮光カーテン40を開閉制御するから、植物が実際に受けている日射量をベースに遮光率を制御することができ、精度の高い制御を実行できる。
【0012】
請求項3に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、遮光カーテン40の遮光中には作物からの蒸散が抑制されるが、内部日射量に基づいて給液制御を行うことで、培地内の養液濃度の安定化、培地水分率の安定化を図ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の効果に加え、内部日射量が所定以下の場合には積算を行わないよう構成することによって低い日射量は測定値としては表れるが、植物としては蒸散作用も無いため給液の対象にはならないため日射量積算を行わないようすることで過剰給液を防止できる。
【0014】
年間を通じて合理的な温度設定とすることができ、植物にストレスを与えない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる植物栽培設備の概要図である。
【
図3】同上栽培設備一例の側断面を示す概要図である。
【
図4】同上栽培設備一例の平面を示す概要図である。
【
図5】(A)同上実施の形態の遮光カーテンの平面図、(B)一部の側断面図である。
【
図6】(A)同上栽培設備の日照センサ設置概念図、(B)遮光カーテン制御一例を示す表である。
【
図7】(A)同上栽培設備の遮光カーテン設置概念図、(B)遮光カーテン制御一例を示す表である。
【
図8】同上栽培設備の2層カーテン設置概念図である。
【
図9】同上栽培設備の制御のフローチャートである。
【
図10】(A)同上栽培設備の培地設置一例を示す側面図、(B)更に他の培地設置一例を示す側面図である。
【
図11】(A)同上栽培設備のイチゴ栽培培地を示す正面図、(B)茎受体の作用を示す正面図、(C)連動機構である。
【
図12】(A)同上実施の形態の追熟室の平面図、(B)受皿一例である。
【
図13】同上実施の形態の追熟設備の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態の温室設備について以下説明する。
【0017】
図1乃至
図4は栽培施設の一例を示すものであり、この栽培施設は、温室である栽培室1と、該栽培室1に隣接する出荷室2とを備えている。前記栽培室1内の中央には作業者又は作業移動車(作業台車)3あるいは防除作業車等が通過できるメイン通路4を設けており、このメイン通路4は、路面がコンクリートで構成されたコンクリート通路である。メイン通路4の両側の側方位置には、栽培ユニットとなる栽培ベッド5を多数列配置した作物を栽培するための栽培スペース6を構成している。尚、前記栽培ベッド5は培地となるロックウールで形成された栽培床部であり、出荷室2内の養液供給装置7から各栽培ベッド5へ養液が供給される構成となっている。
【0018】
また、メイン通路4の両端には開閉扉を備える栽培室1への出入り口8を設け、一方の出入り口8を介して隣接する出荷室2へ行き来できる構成となっている。尚、他方の出入り口8は、栽培施設の屋外から出入りできる構成となっている。そして、作業移動車3をメイン通路4から各々の栽培ベッド5の間のサブ通路9に移動させ、該サブ通路9で栽培ベッド5に沿って作業移動車3を移動させながら栽培する植物に対する各種作業を行うことができる。サブ通路9は、各々の栽培ベッド5の左右間で前後方向に形成される通路となる。尚、作業移動車3は、サブ通路9上に敷設された温室全体を暖房する左右の暖房用管を走行用のレール13として走行する。
【0019】
前記出荷室2内には、前述した養液供給装置7と、収穫されたトマト等の収穫物(果実)を重量や大きさあるいは等級別に選別する選別装置10とを備えている。尚、該選別装置10が、栽培された作物を出荷前に処理する前処理装置となる。選別装置10は、収穫物を搬送して選別する選別コンベア11と、該選別コンベア11の両側の側方に設けられた各階級毎の収穫物収容部12とを備えて構成され、選別コンベア11から各収穫物収容部12へ収穫物を供給して各階級に選別する構成となっている。尚、前記選別コンベア11は、平面視でL字状に屈曲した構成となっている。また、各々の収穫物収容部12には収穫物を収容する収容箱を設けて、この収容箱ごとに収穫物を出荷すればよい。
【0020】
栽培ベッド5の上側には、該栽培条に沿う誘引ワイヤ15を設け、栽培される植物Pの栽培株は、誘引ワイヤ15により誘引される構成となっており、誘引ワイヤ15から誘引フック16を介して垂れ下がる誘引紐17により誘引される。尚、誘引フック16は、誘引ワイヤ15に吊り下げられる構成であり、巻き付けた誘引紐17を適宜繰り出して下方に垂れ下がらせる周知の構成となっている。また、植物が所定の高さ(誘引フック16の近く)まで成長した以降は、誘引フック16から誘引紐17を繰り出しながら、順次誘引紐17を前記複数の栽培株の配列方向、すなわち栽培ベッド5の長手方向にずらせて植物の高さを低下させ、植物を継続的に栽培する。従って、例えばトマトを栽培する場合、トマトの茎が栽培ベッド5から誘引紐17を伝って伸長することになる。
【0021】
作業移動車3は、前後左右の走行車輪20と、作業者が搭乗する作業台21と、走行車輪20を駆動する駆動源となる電動モータを備え、作業者が作業台21に搭乗し機体を走行させながら、栽培植物の葉欠き、芽欠き及び収穫等の作業を行う周知の構成となっている。走行車輪20は、前記レール13に沿って移動できる。
【0022】
なお、走行車輪20は、車輪の外周長の半分の値を車軸からオフセットした構成が望ましい。理由としては、車軸回転がモータ軸と直結の場合、回転数分だけ方向変更が可能であるためである。例えば90度の方向変更の場合は、モータを半回転すれば、方向変更できたと判断し、次工程への運転が容易に管理できる利点がある。
【0023】
栽培室1は、鉄骨構造で枠組みされ、四周及び天井部にビニールを張設して温室とし、その平面視は矩形に構成され、長辺を東西方向に短辺を南北方向に設定している。栽培室1の外側四周において、多数の細霧噴出ノズル25を備えた細霧噴出手段26を備える。細霧噴出手段26は後述の水圧送ポンプや電磁弁を伴うものである。そして細霧噴出手段26は、上記長辺側の両外側面の第1細霧噴出手段26a及び第2細霧噴出手段26b、及び上記短辺側の両外側面の第3細霧噴出手段26c及び第4細霧噴出手段26dである。すなわち、図例では、方角北に面(北面)して第1細霧噴出手段26aを配置するもので、以下、南面に第2細霧噴出手段26bを、東面に第3細霧噴出手段26cを、西面に第4細霧噴出手段26dを配置する。これら第1~第4細霧噴出手段26a~26dの夫々には、第1電磁弁~第4電磁弁27a~27dを対応させてあり、ポンプ28駆動によって水タンク29から給水される水を第1~第4細霧噴出手段26a~26dに独立的に供給し又は遮断できる構成としている。ポンプ28駆動によって給水された水は第1電磁弁27aを介して第1細霧噴出手段26aに供給され複数の細霧ノズル25から水は細霧化され噴出される。同様に、第2電磁弁27bを介して第2細霧噴出手段26bの細霧ノズル25から、第3電磁弁27cを介して第3細霧噴出手段26cの細霧ノズル25から、第4電磁弁27dを介して第4細霧噴出手段26dの細霧ノズル25からそれぞれ水が細霧化され噴出される。
【0024】
噴出される細霧は外気温で気化し、その気化熱により栽培室1のビニール外側の空気を外気温度より低い温度に冷やすこととなる。そして、冷やされた空気は、栽培室1の側壁に設ける外気導入口30から栽培室1内に入り、栽培室1内温度を低下させることができる。したがって、夏季の日光によって昇温した栽培室1内を所謂細霧冷房することができ、植物生育環境や作業者の作業環境の改善を図ることができる。なお、外気導入口30は栽培室1の四周側壁に構成するもので、開閉自在の窓形態や冷気を導入し易く低位置に形成する通気孔形態など種々である。なお図例では、側壁の下方に作業者の足元程度の高さとして複数の開閉プレートを可動自在とした公知のブラインドスクリーン形態としている。
【0025】
本実施例では、栽培室1の四周に第1細霧噴出手段26a~第4細霧噴出手段26dを配置し、独立的に細霧噴出できる構成としたから、四周全体はもちろん必要な場所に選択的に細霧冷房を施すことができる。風向及び風速を検出できる風向計31を備え、風向と風速の検出値を制御部Cに入力できる構成とし、この検出値にもとづいて前記4台の第1電磁弁~第4電磁弁27a~27dのON,OFFを制御するものである。例えば所定風速以上の場合に、風向が北の場合には第1電磁弁27aをON他の制御弁27b~27dをOFFとし、第1細霧噴出手段26aのみを作動させる。このように構成すると、風向北の風を受けて細霧冷房された空気は栽培室1内に導入し易い。また、他の位置で細霧冷房された空気は風に流されて栽培室1内に導入し難い。したがって効率的な細霧噴出を行うことができる。
図5に風向きと第1細霧噴出手段26a~第4細霧噴出手段26dの作動一例を示す。
【0026】
前記栽培室1の屋根部は左右傾斜する天窓35a,35bに構成し、それぞれ棟部中心に開閉自在に設けられる。湿度センサ36や温度センサ37あるいは後述の日射量センサ45の検出値によって開閉制御される。すなわち、湿度や温度が所定以上に達すると天窓35a,35bは開かれて換気され、これらが所定範囲に収まると閉じられる構成である。なお、天窓35a,35bの開閉は駆動手段38(例えば正逆転駆動モータ)による。
【0027】
図5において、栽培室1の天井1s部には、複数の遮光カーテン40を所定間隔おきに設けている。この遮光カーテン40は、巻取軸41に巻き取られて開くようになっている。栽培室1内の一端にはカーテン開閉モータ42を設けており、該モータ42の駆動によりカーテン開閉ワイヤ43を介して複数の遮光カーテン40を同時に巻取軸41から引き出す構成となっている。尚、この複数の遮光カーテン40により、栽培室1の天井部の全面を遮光することができる。カーテン開閉モータ42部には、該モータ42の回転位置により遮光カーテン40の開閉度(開閉量)を検出する遮光カーテン開閉センサ(図示せず)を設けている。そして栽培室1外の南側には、日射量センサ45を設けている。この日射量センサ45により検出される日射量に基づいて、遮光カーテン40が所望の開閉度となるよう、カーテン開閉モータ42を駆動制御して遮光カーテン40の開閉度を変更し、日射量が大きいときは遮光カーテン40を大きく閉じて遮光率を上げるようになっている。また、遮光カーテン開閉センサ44の検出情報に基づいて、所定以上の遮光状態であるときに、前記第1細霧噴出手段26a~第4細霧噴出手段26dによる細霧冷房の実施を許容する構成とする。夏季の定植直後の植物の葉は薄く柔らかいため、細霧が付着すると葉やけを生じやすいが、上記のように構成すると、遮光状態になければ細霧冷房を実施できないため当該葉やけを回避できる。
【0028】
ところで、前記日射量センサ45は栽培室1の外部にあって、この日射量センサ(以下、外部日射量センサ)45のみで遮光カーテン40の開閉制御を行うと、次のような課題がある。栽培室1内部に至る日射量は、壁部被覆材を通過すると例えば、90%程度に減少するため、また秋季、冬季及び春季は太陽の位置が低く、栽培室1内に入る光量が少なくなるため、外部日射量センサ45は、実際に作物が受けている日射より少なく検知する。したがってこの差異を解消すべく改良が求められる。そこで、栽培室1内部に、内部日射量センサ46を備え、両日射量センサ45,46によって遮光カーテン40の開閉制御を実行する構成とする。
図6(A)に示すように、栽培室1の外部に外部日射量センサ45を、内部に内部日射量センサ46を設置し、各センサからの検出は制御部Cに送信され、制御部Cは遮光カーテン40の開閉モータ42に回転制御出力する構成としている。
図6(B)に一例を示すように、外部日射量センサ45は、所定外部日射量Wo、例えば700W/m2を超えると遮光カーテン40を70%閉じた遮光率70%にて日射を遮光し、この所定日射量以下の場合は遮光カーテン40は遮光率0%の開放状態を維持する構成としている。一方内部日射量センサ46は、内部日射量が前記所定外部日射量Woよりも低く設定された設定内部日射量Wi(例えば600W/m2)を超えると遮光カーテン40を遮光率70%となるよう閉じ制御する構成としている。
【0029】
上記のように、外部日射量センサ45及び内部日射量センサ46によって遮光カーテン40の開閉制御を行うが、両方の日射量センサ45及び46を有効とする場合には、内部日射量センサ46を優先して遮光カーテン40による遮光制御するとよい。また、いずれのセンサに選択する手段を設けて任意のセンサ45または46によって遮光カーテン40を開閉し遮光制御することもできる。
【0030】
なお、内部日射量センサ46を優先する理由としては、太陽光の傾斜角度に対応するためである。外部日射センサ45は屋外の高所に設置するため、日の出はより早く、日没はより遅く、内部日照センサよりも長く検出される。しかし栽培室1の日射量の状態は、内部日射センサ46の検出に近く、遮光カーテン40の制御をするにも、より実態に近い制御を行う必要がある。例えば、外部センサを優先すると日没までに時間があり、遮光状態を検出するが、栽培室1はすでに太陽光が入りにくくなり遮光カーテン40を開ける必要があるなどの差異が発生する可能性があり、内部日射量センサ46を優先することで、この問題を改善することができる。
【0031】
さらには、遮光カーテン40による遮光時、内部日射量センサ46の日射量で給液制御を行う構成とすることもできる。このように構成すると、遮光カーテン40の遮光中には作物からの蒸散が抑制されるが、内部日射量に基づいて給液制御を行うことで、培地内の養液濃度の安定化、培地水分率の安定化を図ることができる。なお、外部日射量センサ45による給液制御では、多潅水になり、ケロイド果等の生理障害果が発生し易く品質低下を余儀なくされるが、上記のように内部日射量センサ46設置によって解消できる。
【0032】
次に、天候が不安定な場合の日射量センサ45,46による遮光カーテン40開閉制御について説明する。晴れたり曇ったりの変動が頻繁にあると、日射量に基づく遮光カーテン40の開閉制御の精度を損ねる。そこで、日射量の変動を演算し、日射量が急に少なくなる時には遮光カーテン40の遮光作動を遅らせることによって、遮光カーテン40の開閉頻度が少なくなり、作物の生理障害の低減を図ることができる。具体的には、日射量センサ45又は46の検出によって低下時間を測定し、予め設定した単位時間当たりの設定低下量以上の場合には、遮光カーテン40による遮光制御を遅らせるよう制御する。
図7において、天候不安定の時、例えば日射量が800W/m2から500W/m2への低下時間Tiを測定し、標準時間、例えば20分であるときは
図7(B)の例に示すように遮光率70%状態から遮光率0%に変更制御するが、低下時間Tiが短い、例えば5分の場合は、800W/m2の遮光率70%を暫く維持し、予め設定した復帰時間Tr、例えば15分を経過すると500W/m2に対応する遮光率0%とするものである。
【0033】
次いで、低日射量時の給液制御について説明する。日射量センサ45,46による日射量が所定日射量(例えば、200W/m2)以下の場合、給液するための日射量積算を行わないよう構成し、所定日射量以上の場合に給液するための日射量の積算を行う構成とするものである。このように構成すると、低日射量の時は給液が抑制されるが、葉からの蒸散が少ないため給液を行う必要がなく、培地内の水分および濃度の安定化を図ることができる。なお、内部日射量が所定以下の場合には積算を行わないよう構成することによって低い日射量は測定値としては表れるが、植物としては蒸散作用も無いため給液の対象にはならないため日射量積算を行わないようすることで過剰給液を防止できる。
【0034】
なお、前記遮光カーテン40は、アルミ製や樹脂製で遮光効果を備え巻き掛け可能な素材を用いる。また遮光カーテン40を穴あきパネルとし、上面に高反射フィルムを貼付し、下面に銀イオンを吹き付け加工した構成としてもよい。このように構成すると、上面の加工構成によって植物の生育促進,電気代節約に寄与し、下面の加工によってかびや汚れを予防でき、清掃作業の簡易化が図れる。
【0035】
図8において、従来カーテンを上下2層に備え、上層に遮光カーテン40を、下層に保温カーテン47を配置する構成がある。遮光カーテン40は主として昼間の高温対策、強光対策でも用いられるが、保温用カーテン47は主として夜間の保温対策で使用する。ところで、春季において気温が低いが日射が強くなってくると遮光カーテン40では遮光率が高くなり過ぎる恐れがある。そこで、日射と気温条件に基づいて遮光に使用するカーテン40種類を切替える構成とする。光透過性の良い保温用カーテン47を遮光用に用いることで光環境を適切に制御できる。
【0036】
また、栽培室1内に飽差センサ51を設け、制御部Cに検出値を送信し、制御部Cは、飽差を判定する。飽差が規定値範囲、すなわち3~6g/m3でないと光合成できない知見に基づき、検出した飽差と予め設定した設定飽差の差に基づいて湿度補正、すなわち前記第1細霧噴出手段26a~第4細霧噴出手段26dによる細霧を制御することで、植物の生長量のコントロールが可能となる。
【0037】
また、上記飽差センサ51の検出結果は、前記天窓35a,35bの開閉制御においても有効に用いられる。
図9のフローチャートに示すように、制御部Cは、湿度センサ36、温度センサ37及び飽差センサ51の各検出値を読み込み(S101)、温度検出値及び湿度検出値と予め設定した温度設定値α、湿度設定値βと比較し(S102,S103)、いずれかが設定値α,βを超える場合は、S104に移行して飽差検出値が前記規定値範囲内であるか否か判定され、規定値範囲外であると判定されると、天窓駆動手段38に開出力されるものである(S105)。S104で飽差検出値が前記規定値範囲内であると判定されると、当該環境条件を維持すべく天窓駆動手段38に開出力はなされないよう構成されている。したがって、換気のため天窓35a,35bを開くことで温度と湿度が同時に変わるため調整し難いが、上記のように飽差を基準とすることで天窓35a,35b開閉による制御が容易となる上、植物にストレスを与えにくい。
【0038】
なお、前記天窓駆動手段38としての正逆転モータ38a,38bは、可変モータ形態とし、前記飽差検出値と規定値との差の大小に応じて駆動速度を変更する構成としている。このように構成すると、飽差検出値と規定値との差が小さい場合は極力モータ速度を低下して換気による悪影響を防止することができ、ひいては植物にストレスを与えない。
【0039】
なお、天窓35a,35bの開閉制御に関して、冬季や低温時の風速による天窓開度制御について説明する。風向及び風速を検出できる前記風向計31により検出された風速が、所定風速例えば10m/秒に達すると風上側の天窓35を閉じ、さらに風速が強い15m/秒に至ると風下側の天窓35も閉じる構成としている。ところが、冬季に快晴で強風の場合には、天窓35が全閉じ状態となっているため栽培室1温度が高温となって作物生育に影響する。このため栽培室1の温度センサ37の検出によって天窓35を開く制御を行う構成としている。具体的には、温度センサ37の検出結果に応じて、風下側の天窓35を予め設定した開度に開くもので、温度35℃のとき最大開度の10%開き、温度30℃のとき同じく5%、25℃以下の場合は同じく0%のごとくである。このように構成することによって栽培室1内の環境を適正に維持できる。
【0040】
次いで、
図10に基づき、前記栽培ベッド5(以下、培地)の支持構成の改良について説明する。
図10(A)は、培地5を栽培室1天井部から複数個所に垂らした吊下げ部材60(例えばチェン)で支持する構成としている。このように構成すると、水勾配の設定が容易となり排液の回収が容易となり、床面の清掃も容易となる。また
図10(B)は、培地を載置式ベンチ61としたものであり、この構成によると、栽培室1本体の構造に掛かる負荷を少なくできコスト低廉に繋がる。なお、
図10において、地下に通風路62を形成し図外空調設備からの空調空気を導入し、栽培室1床に開口した通気口63から栽培室1に該空調空気を導入できる構成である。
【0041】
図11はイチゴ栽培用ベッド64に付加する茎受体65の改良に係る。茎受体65は、茎を受ける水平棒状部65aと、この水平棒状部65aを支持するアーム部65bとアーム部65bの基端部65cを電動モータ66に連動するボス部材67に連結することにより、電動モータ68の正転でアーム部65bは上方に回転しこれによって水平棒状部65aは上昇して係合するイチゴ茎を上方に持ち上げることができる。なお、栽培ベッド64の左右対称に茎受体65を配置するものであるから、左用茎受体65Lと右茎受体65Rの各アーム部を受けるボス部材67を左用ボス部材67Lと右用ボス部材67Rに分離して互い逆方向に連動するようベルト69掛けすることで、単一の電動モータ68の正転によって左右の茎受体65L,65Rを上昇し、逆転によって下降するよう構成している(
図11(C))。
【0042】
上記のように茎受体65を上昇下降できるよう構成することで、イチゴ栽培状況に応じて茎受体65の位置を変更できより高い栽培管理が可能になる。また、最上位にすると茎葉の裏側を晒すようになり防除の際に葉裏防除が容易となる。
【0043】
図12は、前記出荷室2に隣接して設ける追熟室70内の一例を示すものである。追熟室70内には出荷室2から搬送され又は外部から持ち込まれたパッションフルーツ等の要追熟果実を荷受けする荷受けコンベア71、検査装置72、複数のストックコンベア73、隣接する冷蔵室74への搬出コンベア75等を備える。76は格外コンベアである。荷受けコンベア71において持ちこまれた果実は一個ずつトレー77に乗せられてコンベア71面で搬送される。検査装置72に至ると、図外カメラによって撮像された画像が制御部によって解析される。分光解析によるキズの有無と表面腐敗の有無の各判断を行い、かつ表面画像の解析によって表面皺の有無が判断される。そして、皺無しで未熟の果実はストックコンベア73に、皺有りで適熟の果実は冷蔵室74に向け、キズ有りや表面腐敗の果実は格外コンベア76に所定に搬送される。
【0044】
追熟室70のストックコンベア73に追熟設備を構成し、待機する果実に対して追熟作用を行う。この追熟設備は、
図13に示すように、給水コンプレッサ78と噴霧ノズル79による加湿手段、エチレンガスタンク80と電磁弁81と供給配管82のエチレンガス供給手段とからなる。加湿手段によって果実の乾燥を防止しつつエチレンガス供給による追熟を行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1栽培室
40遮光カーテン
45外部日射量センサ
46内部日射量センサ