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特開2024-148371粘度指数向上剤、冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148371
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】粘度指数向上剤、冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 155/02 20060101AFI20241010BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20241010BHJP
   C10M 107/24 20060101ALI20241010BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20241010BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20241010BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20241010BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20241010BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20241010BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20241010BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
C10M155/02
C10M105/32
C10M107/24
C10M107/34
C09K5/04 A
C09K5/04 E
C09K5/04 F
C10N20:00 Z
C10N20:04
C10N30:00 A
C10N30:02
C10N40:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061462
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】水谷 祐也
(72)【発明者】
【氏名】尾形 英俊
(72)【発明者】
【氏名】関 由真
(72)【発明者】
【氏名】中島 達貴
(72)【発明者】
【氏名】尾形 和樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 義光
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 直弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将大
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB31A
4H104BB41A
4H104CB02A
4H104CB14A
4H104CJ07C
4H104EA01C
4H104EA03C
4H104LA01
4H104LA11
4H104PA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷媒及び含酸素原子基油に対する溶解性に優れ、冷凍機油に用いた場合に粘度指数向上効果が高く、さらに低温での動粘度が低い冷凍機油を得ることができる、冷凍機油用に好適な粘度指数向上剤を提供すること。
【解決手段】フッ素原子を有する単量体(a)、単量体(b)及びケイ素原子を有する単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤であり、共重合体(A)中のケイ素原子濃度が0.5~25質量%である粘度指数向上剤とする。好ましくは、前記単量体(a)は、(メタ)アクリル酸2-(ペルフルオロヘキシル)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ペルフルオロオクチル)エチル等であり、単量体(b)は、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等である。単量体(c)は、(メタ)アクリロイルオキシアルキルポリアルキルシロキサンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフッ素原子を有する単量体(a)、下記一般式(2)で表される単量体(b)及び下記一般式(3)で表されるケイ素原子を有する単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤であり、共重合体(A)中のフッ素原子濃度が5~50質量%である粘度指数向上剤。
【化1】
[一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;pは0又は1の整数;qは0~20の整数であり、qが2以上の場合、Rは同一でも異なっていても良い。;Yは炭素数1~40の炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基である。]
【化2】
[一般式(2)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;rは0又は1の整数;sは0~20の整数であり、sが2以上の場合、Rは同一でも異なっていても良い。;Rは炭素数1~40のアルキル基である。]
【化3】
[一般式(3)において、R11は水素原子又はメチル基;R12は炭素数1~6のアルキレン基;R13~R17はそれぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基;tは0又は1の整数;uは5~200の整数である。]
【請求項2】
前記共重合体(A)中のケイ素原子濃度が0.5~25質量%である請求項1に記載の粘度指数向上剤。
【請求項3】
前記単量体(c)に由来する構成単位の溶解性パラメータが6.5~9.0(cal/cm1/2である請求項1に記載の粘度指数向上剤。
【請求項4】
前記共重合体(A)の重量平均分子量が1,000~2,000,000である請求項1に記載の粘度指数向上剤。
【請求項5】
さらに含酸素原子基油を含有する請求項1に記載の粘度指数向上剤。
【請求項6】
潤滑油基油と、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤とを含有する冷凍機油。
【請求項7】
前記潤滑油基油が含酸素原子基油を含有する請求項6に記載の冷凍機油。
【請求項8】
前記含酸素原子基油が、エステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の冷凍機油。
【請求項9】
前記共重合体(A)の溶解性パラメータと前記含酸素原子基油の溶解性パラメータとの差の絶対値が2.0(cal/cm1/2以下である請求項7に記載の冷凍機油。
【請求項10】
前記含酸素原子基油の溶解性パラメータは、8.0~10.0(cal/cm1/2である請求項7に記載の冷凍機油。
【請求項11】
請求項6に記載の冷凍機油と、冷媒とを含有する冷凍機用作動流体組成物。
【請求項12】
前記冷媒が飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒及び自然冷媒からなる群より選ばれる少なくとも1種の冷媒又は2種以上の混合冷媒である請求項11に記載の冷凍機用作動流体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度指数向上剤、冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、クロロフルオロカーボン(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に代えて、冷凍機油用の冷媒としてハイドロフルオロカーボン(HFC)が冷媒として使用されつつある。さらにHFC冷媒よりも地球温暖化係数(GWP)が低い冷媒の開発がなされている。このような冷媒に対する相溶性が良いため、近年は冷凍機油用の潤滑油(含酸素原子基油)としてPOE(ポリオールエステル)などが使用されている(例えば、特許文献1、2)。
また、近年、省エネルギー化の観点から、冷凍機油には、粘度指数をさらに高くすることが求められているが、POEの組成を変更して粘度指数を高くすることには限界がある。一方、粘度指数を向上させるためにポリアルキレングリコールやアルキルメタクリレート共重合体等の粘度指数向上剤を用いる冷凍機油が知られている(例えば、特許文献3~7)。しかしながら、上記の粘度指数向上剤は冷媒に対する相溶性が不十分であり、特に低温での相溶性が不十分である。
一方、フッ素原子を有する単量体を構成単量体として含む共重合体を粘度指数向上剤として用いることが知られている(例えば特許文献8、9)。しかしながら、これらの粘度指数向上剤は冷媒及び潤滑油を含む冷凍機油に溶解せず、冷凍機油用の粘度指数向上剤として用いることができない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-302370号公報
【特許文献2】特開2019-158233号公報
【特許文献3】特開2017-057278号公報
【特許文献4】特許第6925323号公報
【特許文献5】特許第6826987号公報
【特許文献6】特許第6793127号公報
【特許文献7】特開2017-197662号公報
【特許文献8】特開平1-245005号公報
【特許文献9】特許第5755469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冷媒及び含酸素原子基油に対する溶解性に優れ、冷凍機油に用いた場合に粘度指数向上効果が高く、さらに低温での動粘度が低い冷凍機油を得ることができる、冷凍機油用に好適な粘度指数向上剤を提供することであり、また、当該粘度指数向上剤を含有する冷凍機油及び当該冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるフッ素原子を有する単量体(a)、下記一般式(2)で表される単量体(b)及び下記一般式(3)で表されるケイ素原子を有する単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤であり、共重合体(A)中のフッ素原子濃度が5~50質量%である粘度指数向上剤である。
【化1】
[一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;pは0又は1の整数;qは0~20の整数であり、qが2以上の場合、Rは同一でも異なっていても良い。;Yは炭素数1~40の炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基である。]
【化2】
[一般式(2)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;rは0又は1の整数;sは0~20の整数であり、sが2以上の場合、Rは同一でも異なっていても良い。;Rは炭素数1~40のアルキル基である。]
【化3】
[一般式(3)において、R11は水素原子又はメチル基;R12は炭素数1~6のアルキレン基;R13~R17はそれぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基;tは0又は1の整数;uは5~200の整数である。]
また、本発明の一側面は、潤滑油基油と、前記粘度指数向上剤とを含有する冷凍機油である。
本発明の他の一側面は、前記冷凍機油と、冷媒とを含有する冷凍機用作動流体組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、冷媒及び含酸素原子基油に対する溶解性に優れ、冷凍機油に用いた場合に粘度指数向上効果が高く、さらに低温での動粘度が低い冷凍機油を得ることができる、冷凍機油用に好適な粘度指数向上剤を提供することができる。また、本発明によると、当該粘度指数向上剤を含有する冷凍機油及び当該冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の粘度指数向上剤は、下記一般式(1)で表されるフッ素原子を有する単量体(a)、下記一般式(2)で表される単量体(b)及び下記一般式(3)で表されるケイ素原子を有する単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤であり、共重合体(A)中のフッ素原子濃度が5~50質量%である粘度指数向上剤である。
【化4】
[一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;pは0又は1の整数;qは0~20の整数であり、qが2以上の場合、Rは同一でも異なっていても良い。;Yは炭素数1~40の炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基である。]
【化5】
[一般式(2)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;rは0又は1の整数;sは0~20の整数であり、sが2以上の場合、Rは同一でも異なっていても良い。;Rは炭素数1~40のアルキル基である。]
【化6】
[一般式(3)において、R11は水素原子又はメチル基;R12は炭素数1~6のアルキレン基;R13~R17はそれぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基;tは0又は1の整数;uは5~200の整数である。]
【0008】
前記共重合体(A)中のフッ素原子濃度は5~50質量%である。
また、前記共重合体(A)を構成する単量体中の前記単量体(a)と前記単量体(c)の合計質量割合が共重合体(A)を構成する単量体の合計質量を基準として1~80質量%であり、前記単量体(c)の質量に対する前記単量体(a)の質量比率(a/c)が0.3~20であることが好ましい。
前記単量体(c)に由来する構成単位の溶解性パラメータは、6.5~9.0(cal/cm1/2であることが好ましい。
また、前記共重合体(A)の重量平均分子量は、1,000~2,000,000であることが好ましい。
また、本発明の粘度指数向上剤は、前記共重合体(A)に加え、さらに含酸素原子基油を含有することが好ましい。なお、本発明の粘度指数向上剤に含有される含酸素原子基油(含酸素原子基油(B)ともいう。)は、共重合体合成時の重合溶剤又は共重合体の希釈溶剤として好ましく用いられるが、後述する冷凍機油における潤滑油基油として用いられる含酸素原子基油と同一であっても異なっていてもよい。
【0009】
<共重合体(A)>
本発明において、共重合体(A)は前記一般式(1)で表されるフッ素原子を有する単量体(a)、前記一般式(2)で表される単量体(b)、及び前記一般式(3)で表されるケイ素原子を有する単量体(c)を必須構成単量体とし、共重合体(A)中のフッ素原子濃度が5~50質量%である。
【0010】
単量体(a)について説明する。
一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、粘度指数向上効果の観点から、メチル基が好ましい。
【0011】
一般式(1)において、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられ、粘度指数向上効果の観点から、エチレン基が好ましい。
Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
pは0又は1の整数であり、p=1が好ましい。
qは0~20の整数であり、含酸素原子基油(B)への溶解性の観点から、好ましくは0~4の整数、更に好ましくは0~2の整数である。
qが2以上の場合のRは同一でも異なっていても良く、(RO)部分はブロック状でもランダム状でもよい。なお、ブロック状とはRが同じであるものが2個以上連続して結合していることを意味する。
【0012】
一般式(1)において、Yは炭素数1~40の炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基である。
炭化水素基中の水素原子の一部がフッ素原子で置換されている一価の基としては、例えば、直鎖又は分岐鎖の鎖状脂肪族炭化水素基中の水素原子の一部がフッ素原子で置換されている一価の基[例えば、炭素数1~40の直鎖の部分フッ化アルキル基{2,2,2-トリフルオロエチル基(-CHCF)、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基(-CHCFCHF)、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基(-CHCFCF)、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル基(-CH(CFCHF)、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロへキシル基(-CHCH(CFCF)、2-(ペルフルオロヘキシル)エチル基(-CHCH(CFCF)、2-(ペルフルオロオクチル)エチル基(-CHCH(CFCF)、1H,1H-ノナデカフルオロデシル基(-CH(CFCF)、-CH(CFCF、-CH(CF10CF、-CH(CF12CF、-CH(CF15CF、-CH(CF18CF、-CH(CF20CF、-CH(CF22CF、-CH(CF24CF、-CH(CF26CF、-CH(CF28CF、-CH(CF30CF、-(CHCF、-(CHCF、-(CHCF、-(CHCF、-(CHCF、-(CHCF、-(CHCF、-(CHCF、-(CH10CF、-(CH12CF、-(CH14CF、-(CH16CF、-(CH18CF、-(CH20CF等}、炭素数3~30の分岐鎖の部分フッ化アルキル基{1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基(-CH(CF)、-CH(CF)CFCF、-CHCH(CF、-CH(CF)(CFCHF、-CH(CFCF)(CFCF等}、炭素数2~40の部分フッ化アルケニル基{例えば、ジフルオロビニル基等}等]、炭素数3~40の部分フッ化脂環式炭化水素基{例えば、2、3又は4-フルオロシクロヘキシル基、4-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基等}、炭素数6~40の部分フッ化芳香族炭化水素基{例えば、2-、3-又は4-フルオロフェニル基、2-、3-又は4-フルオロベンジル基等}が挙げられる。
【0013】
炭化水素基中の水素原子の全部がフッ素原子で置換されている一価の基としては、例えば、直鎖又は分岐鎖の鎖状脂肪族炭化水素基中の水素原子の全部がフッ素原子で置換されている一価の基[例えば、炭素数1~40の直鎖のペルフルオロアルキル基{トリフルオロメチル基(-CF)、ペンタフルオロエチル基(-CFCF)、ヘプタフルオロプロピル基(-(CFCF)、ノナフルオロブチル基(-(CFCF)、ペルフルオロペンチル基(-(CFCF)、ペルフルオロヘキシル基(-(CFCF)、ペルフルオロヘプチル基(-(CFCF)、ペルフルオロオクチル基(-(CFCF)、ペルフルオロノニル基(-(CFCF)、ペルフルオロデシル基(-(CFCF)、-(CF10CF、-(CF11CF、-(CF13CF、ペルフルオロヘキサデシル基(-(CF15CF)、-(CF17CF、-(CF19CF、-(CF21CF、-(CF23CF、-(CF29CF、-(CF39CF等}、炭素数3~40の分岐鎖のペルフルオロアルキル基{-CF(CF、-C(CF、-CF(CF)CFCF、-CFCF(CF、-CF(CF)(CFCF、-CF(CFCF)CFCF、-CFC(CF、-CF(CF)(CFCF、-CF(CFCF)(CFCF、-(CFC(CF、-CF(CF)(CFCF、-CF(CFCFCF)(CFCF、-(CFC(CF、-CF(CF)(CFCF、-CF(CFCFCFCF)(CFCF、-(CFC(CF、-CF(CF)(CFCF、-CF(CFCFCFCFCF)(CFCF、-(CFC(CF、-CF(CF)(CFCF、-CF(CFCFCFCFCFCF)(CFCF、-(CFC(CF等}、炭素数2~40のペルフルオロアルケニル基{例えば、トリフルオロビニル基等}等]、炭素数3~40のペルフルオロ脂環式炭化水素基{例えば、ペルフルオロシクロヘキシル基等}、炭素数6~40のペルフルオロ芳香族炭化水素基{例えば、ペルフルオロフェニル基等}が挙げられる。
【0014】
一般式(1)におけるYとしては、粘度指数向上効果の観点から、炭素数1~24の直鎖又は分岐鎖の鎖状脂肪族炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基が好ましく、さらに好ましくは炭素数8~20の直鎖又は分岐鎖の鎖状脂肪族炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基であり、特に好ましくは炭素数10~18の直鎖又は分岐鎖の鎖状脂肪族炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基である。
また、入手の容易さの観点から、炭素数2~8の直鎖又は分岐鎖の鎖状脂肪族炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基が好ましい。
また、粘度指数向上剤のハンドリング性及び含酸素原子基油(B)への溶解性の観点から、炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖の鎖状脂肪族炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基が好ましい。
【0015】
単量体(a)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
単量体(a)中のフッ素原子濃度は、粘度指数向上効果、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性のバランスの観点から、30~80質量%が好ましく、更に好ましくは40~70質量%である。
なお、単量体(a)中のフッ素原子濃度は、単量体(a)の化学式中に含まれるフッ素原子の数及び単量体(a)の化学式量を用いて算出することができる。
例えば、メタクリル酸2-(ペルフルオロヘキシル)エチル(化学式量:432.18、フッ素原子の数:13)の場合は、下記のように算出することができる。
フッ素原子濃度=13(フッ素原子の数)×19(フッ素原子の原子量)/432.18(化学式量)×100=57.15質量%
【0017】
単量体(a)は、公知の方法で製造することができ、例えば、フッ素原子を有する炭素数1~40の脂肪族モノアルコール又は芳香族モノアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、フッ素原子を有する炭素数1~40の脂肪族モノアルコール又は芳香族モノアルコールのアルキレンオキサイド(炭素数2~4のものが含まれ、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、水酸基を有するビニルエーテル化合物(例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等)とフッ素原子を有する炭素数1~40の脂肪族モノアルコール又は芳香族モノアルコールとのエーテル化反応、ハロゲン化アルキル(ハロゲン化アルキル基の炭素数2~4)ビニルエーテル(例えば、2-クロロエチルビニルエーテル等)とフッ素原子を有する炭素数1~40の脂肪族モノアルコール又は芳香族モノアルコールとをパラジウム系触媒及び脂肪族アミンの存在下で反応させる方法等によって得ることができる。
なお本発明において、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
また、単量体(a)は、アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル(製品名「ビスコート3F」)、アクリル酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(製品名「ビスコート4F」)、アクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(製品名「ビスコート8F」)、メタクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(製品名「ビスコート8FM」)、アクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(製品名「ビスコート13F」)(上記いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル(製品名「ライトエステルM-3F」、共栄社化学株式会社製)、メタクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(東京化成工業株式会社製)、メタクリル酸1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(東京化成工業株式会社製)、メタクリル酸1H,1H-ノナデカフルオロデシル(製品名「メタクリル酸1H,1H-ペルフルオロ-N-デシル」、富士フイルム和光純薬株式会社製)、メタクリル酸2-(ペルフルオロオクチル)エチル(東京化成工業株式会社製)、ダイキン工業株式会社製の(メタ)アクリル酸エステル{メタクリル酸2-(ペルフルオロブチル)エチル、メタクリル酸2-(ペルフルオロへキシル)エチル、メタクリル酸1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル、メタクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル、メタクリル酸1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル、メタクリル酸1H,1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル}、メタクリル酸2-(ペルフルオロブチル)エチル(製品名「CHEMINOX FAMAC-4」)、メタクリル酸(2-ペルフルオロへキシル)エチル(製品名「CHEMINOX FAMAC-6」、ともにユニマッテック株式会社製)、メタクリル酸ヘキサフルオロ2-プロピル(「製品名 HFIP-M」、セントラル硝子株式会社製)等が市販されており、入手可能である。
単量体(a)としては、粘度指数向上剤のハンドリング性及び含酸素原子基油(B)への溶解性の観点から、好ましくは炭素数2~4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されているフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体が好ましく、更に好ましくは(メタ)アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルである。
単量体(a)としては、冷媒(C)への溶解性の観点から、好ましくは炭素数2~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されているフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体が好ましく、更に好ましくは(メタ)アクリル酸2-(ペルフルオロヘキシル)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ペルフルオロオクチル)エチルである。
【0018】
本発明において、単量体(a)に由来する構成単位(単量体(a)の有する炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)の溶解性パラメータ(以下、SP値と略記する)は、含酸素原子基油(B)への溶解性の観点から、好ましくは6.5~9.0(cal/cm1/2であり、より好ましくは7.0~9.0(cal/cm1/2である。
SP値は、例えば、一般式(1)中のYにおいて、アルキル基中の水素原子がフッ素原子で置換される割合が高いものや、分岐度が大きいものや、炭素数が大きいものは小さい傾向があり、フッ素原子で置換される割合が小さいものや、分岐度が小さいものや、炭素数が小さいものは大きくなる傾向がある。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法により算出される値、すなわち、Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2、P147~154の152頁(Table.5)に記載の数値(原子又は官能基の25℃における蒸発熱及びモル体積)を用いて、数式(28)(153頁)により算出される値を意味する。具体的には、Fedors法のパラメータである下記表1に記載のΔe及びΔvの数値から、分子構造内の原子及び原子団の種類に対応した数値を用いて、下記数式に当てはめることで算出することができる。
SP値=(ΣΔe/ΣΔv1/2
【0019】
【表1】
【0020】
例えば、メタクリル酸-2,2,2-トリフルオロエチルの場合は下記の通りである。
-CH-C(CH)-CO-O-CH-CF
SP値={(1180+350+1125+4300+1180+1020)/(16.1-19.2+33.5+18.0+16.1+57.5)}1/2
=8.66
【0021】
また、共重合体(A)が2種以上の単量体(a)を併用している場合は、各単量体(a)に由来する構成単位のそれぞれのSP値を前記の方法で算出し、各SP値を、構成単量体の質量分率に基づいて加重平均した値が前記単量体(a)に由来する構成単位のSP値の範囲を満たすことが好ましい。
【0022】
次に、単量体(b)について説明する。
前記一般式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、粘度指数向上効果の観点から、メチル基が好ましい。
rは0又は1の整数であり、潤滑性の観点から、r=1が好ましい。
-X-は-O-又は-NH-で表される基である。
【0023】
一般式(2)において、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられ、粘度指数向上効果の観点から、エチレン基が好ましい。
Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられ、含酸素原子基油(B)への溶解性の観点から、エチレンオキシ基が好ましい。
sは0~20の整数であり、含酸素原子基油(B)への溶解性の観点から、0~2が好ましい。
sが2以上の場合のRは同一でも異なっていても良く、(RO)部分はブロック状でもランダム状でもよい。なお、ブロック状とはRが同じであるものが2個以上連続して結合していることを意味する。
【0024】
一般式(2)において、Rは炭素数1~40のアルキル基を表し、例えば、炭素数1~40の鎖状脂肪族アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、炭素数3~40の直鎖状のアルキル基(例えば、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-イコシル基、n-ドコシル基、n-テトラコシル基、n-ヘキサコシル基、n-オクタコシル基、n-トリアコンチル基、n-テトラコンチル基等)、炭素数3~40の分岐鎖状のアルキル基(例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソペンチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-メチルペンチル基、イソヘプチル基、2-メチルヘキシル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、イソデシル基、イソドデシル基)、炭素数20~40の2位に分岐を有するもの〔例えば、2-ドデシルトリデシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数6~13)テトラデシル基{例えば、2-ドデシルテトラデシル基等}、2-アルキル(アルキル基の炭素数4~15)ヘキサデシル基{例えば、2-ドデシルヘキサデシル基、2-テトラデシルヘキサデシル基等}、2-アルキル(アルキル基の炭素数2~17)オクタデシル基{例えば、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基等}、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~19)イコシル基{例えば、2-ヘキサデシルイコシル基等}、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~18)ドコシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~16)テトラコシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~14)ヘキサコシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~12)オクタコシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~10)トリアコンチル基等〕等]、脂環式アルキル基(例えば、シクロヘキシル基等)等が挙げられる。
【0025】
としては、粘度指数向上効果の観点から、炭素数8~20のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数10~18のアルキル基である。
また、冷媒(C)への溶解性の観点から炭素数1~6のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数3~4の分岐アルキル基である。
【0026】
単量体(b)として具体的には、アルキル基の炭素数が1~40の(メタ)アクリル酸アルキルエステル{例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル等}、アルキル基の炭素数が1~40のアルキルビニルエーテル{例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等}、ヒドロキシアルキル(ヒドロキシアルキル基の炭素数2~4)ビニルエーテル又はヒドロキシアルキルビニルエーテルのアルキレンオキサイド(炭素数2~4)付加物と炭素数1~40のアルコールとのエーテル化物、アルキル基の炭素数が1~40のN-アルキル(メタ)アクリルアミド{例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド等}、炭素数1~40のアルキルアルコールのAO付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。
【0027】
単量体(b)としては、冷媒(C)への溶解性の観点から、アルキル基の炭素数が1~6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル{例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソ-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル及び(メタ)アクリル酸ヘキシル等}であり、さらに好ましくはアルキル基の炭素数が2~4の(メタ)アクリル酸アルキルエステル{例えば(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル及び(メタ)アクリル酸tert-ブチル等}であり、特に好ましくは(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル及び(メタ)アクリル酸tert-ブチルである。
単量体(b)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
単量体(b)に由来する構成単位(単量体(b)の有する炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)のSP値は、共重合体(A)のSP値を適度にする観点から、好ましくは8.5~10.5(cal/cm1/2であり、より好ましくは8.7~9.8(cal/cm1/2である。
【0029】
次に単量体(c)について説明する。
前記一般式(3)において、R11は水素原子又はメチル基を表し、粘度指数向上の観点から、メチル基が好ましい。
tは0又は1の整数であり、潤滑性の観点から、t=1が好ましい。
【0030】
一般式(3)において、R12は炭素数1~6のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基等)、ブチレン基(1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、1,4-ブチレン基等)、ペンチレン基(1,2-ペンチレン基、1,5-ペンチレン基等)、ヘキシレン基(1,2-ヘキシレン基、1,6-ヘキシレン基等)等が挙げられる。これらのうち、粘度指数向上の観点から、好ましくは炭素数1~6の直鎖アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~4の直鎖のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数2~4の直鎖のアルキレン基である。
【0031】
一般式(3)において、R13~R17はそれぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基を表し、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。これらのうち、粘度指数向上の観点から、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基であり、より好ましくはメチル基であり、特に好ましくはR13~R16はすべてメチル基でありR17はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基の場合である。
【0032】
一般式(3)において、uは5~200の整数であり、粘度指数向上の観点から、10~140が好ましく、より好ましくは20~130である。
【0033】
単量体(c)としては、具体的には、(メタ)アクリロイルオキシアルキルポリアルキルシロキサンであり、具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシアルキルポリジメチルシロキサン[例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルポリジメチルシロキサン等]、(メタ)アクリロイルオキシアルキルポリジエチルシロキサン[例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルポリジエチルシロキサン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルポリジエチルシロキサン等]等が挙げられる。
また、単量体(c)は、α-ブチル-ω-(3-メタクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン[製品名「サイラプレーンFM-0711」(数平均分子量1,000)、製品名「サイラプレーンFM-0721」(数平均分子量5,000)、製品名「サイラプレーンFM-0725」(数平均分子量15,000)、いずれもJNC株式会社製]、メタクリロイルオキシアルキルポリジメチルシロキサン[製品名「X-22-174ASX」(数平均分子量900)、「X-22-174BX」(数平均分子量2,300)、「KF-2012」(数平均分子量4,600)、「X-22-2426」(数平均分子量12,000)、「X-22-2404」(数平均分子量420)、いずれも信越化学工業株式会社製]等が市販されており、入手可能である。
【0034】
単量体(c)の数平均分子量(以下においてMnと略記)は、含酸素原子基油(B)への溶解性、冷媒(C)への溶解性の観点から、100~20,000が好ましく、さらに好ましくは500~13,000である。
なお、単量体(c)のMnは、後述のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0035】
単量体(c)中のケイ素原子濃度は、冷媒(C)への溶解性の観点から、1~50質量%が好ましく、より好ましくは5~45質量%である。
なお、単量体(c)中のケイ素原子濃度は、単量体(c)の化学式中に含まれるケイ素原子の数及び単量体(c)の化学式量を用いて算出することができる。
例えば、メタクリロイルオキシエチルポリジメチルシロキサン(一般式(3)においてu=5である場合)(化学式量:557.093、ケイ素原子の数:6)の場合は、下記のように算出することができる。
ケイ素原子濃度=6(ケイ素原子の数)×28.085(ケイ素原子の原子量)/557.093(化学式量)×100=30.25質量%
【0036】
本発明において、単量体(c)に由来する構成単位(単量体(c)の有する炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)のSP値は、含酸素原子基油(B)および冷媒(C)への溶解性観点から、好ましくは6.5~9.0(cal/cm1/2であり、より好ましくは6.5~8.0(cal/cm1/2である。
なお、単量体(c)に由来する構成単位のSP値は、例えば、メタクリロイルオキシエチルポリジメチルシロキサン(一般式(3)においてu=5である場合)の場合は下記の通り算出する。
-CH-C(CH)-CO-O-CHCH-{Si(CH-O-}-Si(CH
SP値=[{1180+350+1125+4300+1180×2+(810+1125×2+800)×5+810+1125×3}/{16.1-19.2+33.5+18.0+16.1×2+(0+33.5×2+3.8)×5+0+33.5×3}]1/2
=7.829
【0037】
本発明において、共重合体(A)は、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)以外に、脂肪族炭化水素系ビニル単量体(d)、脂環式炭化水素系ビニル単量体(e)、芳香族炭化水素系ビニル単量体(f)、ビニルエステル(g)、ビニルケトン(h)、エポキシ基含有ビニル単量体(i)、単量体(a)以外のハロゲン元素含有ビニル単量体(j)、不飽和ポリカルボン酸エステル(k)、ヒドロキシル基含有ビニル単量体(l)、イオン性基含有ビニル単量体(m)、窒素原子含有ビニル単量体(n)等を構成単量体として含んでもよい。
【0038】
(d)脂肪族炭化水素系ビニル単量体:
炭素数2~20のアルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等)及び炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)等が挙げられる。
【0039】
(e)脂環式炭化水素系ビニル単量体:
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
【0040】
(f)芳香族炭化水素系ビニル単量体:
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、4-クロチルベンゼン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0041】
(g)ビニルエステル:
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)等が挙げられる。
【0042】
(h)ビニルケトン
炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0043】
(i)エポキシ基含有ビニル単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0044】
(j)ハロゲン元素含有ビニル単量体;
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0045】
(k)不飽和ポリカルボン酸のエステル;
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0046】
(l)ヒドロキシル基含有ビニル単量体;
ヒドロキシル基含有芳香族ビニル単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ-又はジ-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等が挙げられる。
【0047】
(m)イオン性基含有ビニル単量体としては、例えば、アニオン性基含有ビニル単量体(m1)、スルホン酸基含有ビニル単量体(m2)、硫酸エステル基含有ビニル単量体(m3)、リン酸基含有ビニル単量体(m4)等が挙げられる。
【0048】
(m1)アニオン性基含有ビニル単量体:
モノカルボン酸基含有ビニル単量体{不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、α-メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸等]、不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~8)エステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル及びイタコン酸モノアルキルエステル等)};ジカルボン酸基含有ビニル単量体(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸等)等が挙げられる。
【0049】
(m2)スルホン酸基含有ビニル単量体:
炭素数2~6のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸及び(メタ)アリルスルホン酸等]、炭素数6~12の芳香族ビニル基含有スルホン酸[α-メチルスチレンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルエステル系単量体[スルホプロピル(メタ)アクリレート及び2-(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系単量体[2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等]、スルホン酸基と水酸基を含有するビニル単量体[3-(メタ)アクリルアミド-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸及び3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等]、アルキル(炭素数3~18)アリルスルホコハク酸エステル[ドデシルアリルスルホコハク酸エステル等]等が挙げられる。
【0050】
(m3)硫酸エステル基含有ビニル単量体:
ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等:付加形態は、単独、ランダム付加又はブロック付加のいずれでもよい。)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル、ポリ(重合度2~30)オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等:付加形態は、単独、ランダム付加又はブロック付加のいずれでもよい。)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル等が挙げられる。
【0051】
(m4)リン酸基含有ビニル単量体:
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2~6)リン酸モノエステル[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等]及び(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸[2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸]等が挙げられる。
【0052】
窒素原子含有ビニル単量体(n)としては、例えば、アミド基含有ビニル単量体(n1)、ニトロ基含有単量体(n2)、1~3級アミノ基含有ビニル単量体(n3)、4級アンモニウム塩基含有ビニル単量体(n4)、両性ビニル単量体(n5)、ニトリル基含有単量体(n6)等が挙げられる。
【0053】
(n1)アミド基含有ビニル単量体:
(メタ)アクリルアミド、ジアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオニルアミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等のアミド基のみに窒素原子を有するものが挙げられる。
【0054】
(n2)ニトロ基含有単量体:
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0055】
(n3)1~3級アミノ基含有ビニル単量体:
1級アミノ基含有ビニル単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有ビニル単量体{アルキル(炭素数1~6)アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[t-ブチルアミノエチルメタクリレート及びメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド[4-ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド及び2-ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有ビニル単量体{ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等]};3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体[N,N-ジメチルアミノスチレン等];含窒素複素環含有ビニル系単量体[モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0056】
(n4)4級アンモニウム塩基含有ビニル単量体:
前記3級アミノ基含有ビニル単量体を、4級化剤(炭素数1~12のアルキルクロライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート及びベンジルクロライド等)を用いて4級化したもの等が挙げられる。具体的には、アルキル(メタ)アクリレート系4級アンモニウム塩[(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルモルホリノアンモニウムクロライド等];アルキル(メタ)アクリルアミド系4級アンモニウム塩[(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド及び(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等];その他の4級アンモニウム塩基含有ビニル系単量体(ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート及びトリメチルビニルフェニルアンモニウムクロライド等)等が挙げられる。
【0057】
(n5)両性ビニル単量体:
N-(メタ)アクリロイルオキシ(又はアミノ)アルキル(炭素数1~10)-N,N-ジアルキル(炭素数1~5)アンモニウム-N-アルキル(炭素数1~5)カルボキシレート(又はサルフェート)[N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムN-メチルカルボキシレート、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-メチルカルボキシレート及びN-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピルサルフェート等]等が挙げられる。
【0058】
(n6)ニトリル基含有単量体:
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0059】
共重合体(A)を構成する単量体(a)の質量割合は、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計質量に基づいて、1~98質量%が好ましく、より好ましくは1~70質量%であり、さらに好ましくは5~55質量%であり、特に好ましくは10~50質量%である。
共重合体(A)を構成する単量体(b)の質量割合は、含酸素原子基油(B)への溶解性の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計質量に基づいて、1~98質量%が好ましく、より好ましくは10~98質量%であり、さらに好ましくは10~60質量%であり、特に好ましくは20~60質量%である。
共重合体(A)を構成する単量体(c)の質量割合は、酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計質量に基づいて、1~98質量%が好ましく、より好ましくは1~60質量%であり、さらに好ましくは5~40質量%であり、特に好ましくは10~30質量%である。
共重合体(A)を構成する単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)の合計質量割合は、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計質量に基づいて、50~100質量%が好ましく、さらに好ましくは80~100質量%であり、特に好ましくは90~100質量%である。
共重合体(A)を構成する単量体(d)~(n)の合計質量割合は、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計質量に基づいて、好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
【0060】
本発明において、共重合体(A)中のフッ素原子濃度は、5~50質量%であり、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、好ましくは10~50質量%であり、更に好ましくは20~50質量%である。フッ素原子濃度が5質量%以上であると、冷媒(C)への溶解性が良好である傾向があり、50質量%以下であると、含酸素原子基油(B)への溶解性が良好である傾向がある。
なお、共重合体(A)中のフッ素原子濃度は、共重合体(A)の製造に用いた単量体(a)中のフッ素原子濃度及び共重合体(A)を構成する単量体中の単量体(a)の質量割合を用いて算出することができる。単量体(a)以外にフッ素原子を含有する単量体を使用する場合は、その単量体中のフッ素原子濃度及び共重合体(A)を構成する単量体中の前記単量体の質量割合を合わせて用いて算出する。
【0061】
本発明において、共重合体(A)中のケイ素原子濃度は、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、好ましくは0.5~25質量%であり、より好ましくは3~25質量%である。ケイ素原子濃度が0.5質量%以上であると、冷媒(C)への溶解性が良好である傾向があり、25質量%以下であると、含酸素原子基油(B)への溶解性が良好である傾向がある。
なお、共重合体(A)中のケイ素原子濃度は、共重合体(A)の製造に用いた単量体(c)中のケイ素原子濃度及び共重合体(A)を構成する単量体中の単量体(c)の質量割合を用いて算出することができる。単量体(c)以外にケイ素原子を含有する単量体を使用する場合は、その単量体中のケイ素原子濃度及び共重合体(A)を構成する単量体中の前記単量体の質量割合を合わせて用いて算出する。
【0062】
本発明において、共重合体(A)を構成する単量体における単量体(b)の有するアルキル基のモル平均炭素数は、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4であり、特に好ましくは2~4である。
【0063】
本発明において、共重合体(A)を構成する単量体中の前記単量体(a)と前記単量体(c)の合計質量割合は、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計質量を基準として、好ましくは1~80質量%であり、より好ましくは10~80質量%であり、更に好ましくは30~80質量%である。
また、前記単量体(c)の質量に対する前記単量体(a)の質量比率(a/c)は、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、好ましくは0.3~20である。
【0064】
本発明において、共重合体(A)を構成する単量体中の前記単量体(a)及び単量体(c)の合計質量に対する前記単量体(b)の質量比率{b/(a+c)}は、含酸素原子基油(B)への溶解性の観点から、0.2以上が好ましく、より好ましくは0.3以上であり、更に好ましくは0.35以上である。
【0065】
共重合体(A)のSP値は、粘度指数向上効果、含酸素原子基油(B)への溶解性、及び冷媒(C)への溶解性の観点から、好ましくは7.5~9.0(cal/cm1/2であり、より好ましくは7.7~8.8(cal/cm1/2であり、更に好ましくは8.0~8.6(cal/cm1/2である。
共重合体(A)のSP値が7.5(cal/cm1/2以上であると、含酸素原子基油(B)への溶解性が良好である傾向があり、9.0(cal/cm1/2以下であると含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性が良好である傾向がある。
なお、共重合体(A)のSP値は、共重合体(A)の構成単量体単位(単量体の炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)それぞれのSP値を前記の方法で算出し、各SP値を、構成単量体単位の質量分率に基づいて加重平均した値である。
例えば、20質量%のメタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル(構成単位のSP値8.66)と80質量%のメタクリル酸n-ブチル(構成単位のSP値9.45)を構成単量体とする共重合体である場合、以下の通り算出することができる。
共重合体(A)のSP値=(8.66×20+9.45×80)/100=9.29
【0066】
共重合体(A)の重量平均分子量は、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、好ましくは1,000~2,000,000であり、さらに好ましくは1,000~1,000,000であり、特に好ましくは1,000~500,000である。
なお、本発明において、重量平均分子量(以下Mwと略記する)及び数平均分子量(以下Mnと略記する)は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によって測定することができる。
<MwおよびMnの測定条件>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー株式会社製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー株式会社製]2本
「TSKgel Multipore HXL-M」[東ソー株式会社製]1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25質量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TS 基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE))
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー株式会社製]
【0067】
共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体配合物を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合する方法等が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、アルキル(炭素数3~10)ベンゼン、メチルエチルケトン及び重合基油{例えば、含酸素原子基油(B)(例えばエステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種等)、鉱物油等}等が挙げられる。これらの内、溶剤を除去するための工程を省略することができるとともに、粘度指数向上剤の取り扱い性及び冷媒(C)との相溶性の観点から、含酸素原子基油(B)が好ましい。
重合触媒としては、アゾ系触媒(アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスバレロニトリル等)及び過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド及びラウリルパーオキシド等)が挙げられる。重合触媒として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を用いてもよい。
更に必要により、連鎖移動剤(ドデシルメルカプタン等の炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは50~140℃であり、更に好ましくは70~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により共重合体(A)を得ることができる。
共重合体(A)の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
共重合体(A)のMwは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量又は連鎖移動剤量等の重合条件を調整することにより調整可能である。
【0068】
<粘度指数向上剤>
本発明の粘度指数向上剤は、前記共重合体(A)を含有していればよく、さらに含酸素原子基油(B)を含んでいてもよい。粘度指数向上剤の取り扱い性及び冷媒(C)との相溶性の観点から、さらに含酸素原子基油(B)を含有していることが好ましい。
【0069】
含酸素原子基油(B)としては、従来から潤滑油として使用されている潤滑機能のある含酸素原子基油を用いることができる。例えば、エステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)等が挙げられる。これらの内、粘度指数向上剤の取り扱い性及び冷媒(C)との相溶性の観点から、エステル油(B1)が好ましい。
【0070】
エステル油(B1)としては、例えば、一価アルコール(x1)と一価カルボン酸(y1)とのモノエステル(B11)、ポリオールエステル(B12)等が挙げられる。ポリオールエステル(B12)としては、例えば、一価アルコール(x1)と二価カルボン酸(y2)とのジエステル(B12-1)、多価(2~10価)アルコール(x2)と一価カルボン酸(y1)とのポリオールエステル(B12-2)等が挙げられる。これらのうち、冷媒(C)との相溶性の観点から、エステル油(B1)は、好ましくは一価アルコール(x1)と一価カルボン酸(y1)とのモノエステル(B11)及び/又はポリオールエステル(B12)であり、より好ましくは一価アルコール(x1)と一価カルボン酸(y1)とのモノエステル(B11)及び/又は多価(2~10価)アルコール(x2)と一価カルボン酸(y1)とのポリオールエステル(B12-2)であり、特に好ましくは多価(2~10価)アルコール(x2)と一価カルボン酸(y1)とのポリオールエステル(B12-2)である。なお、多価(2~10価)アルコール(x2)と一価カルボン酸(y1)とのポリオールエステル(B12-2)において、多価アルコールの水酸基の全てがエステル化された完全エステルであってもよく、一部が水酸基として残存する部分エステルであってもよいが、完全エステルが好ましい。完全エステルであり水酸基価が小さいほど、多価(2~10価)アルコール(x2)と一価カルボン酸(y1)とのポリオールエステル(B12-2)が低温で析出しにくい傾向がある。
【0071】
一価アルコール(x1)としては、炭素数1~24の飽和脂肪族モノアルコール[直鎖状飽和脂肪族モノアルコール{例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデシルアルコール、n-ドデシルアルコール、n-トリデシルアルコール、n-テトラデシルアルコール、n-ペンタデシルアルコール、n-ヘキサデシルアルコール、n-ヘプタデシルアルコール、n-オクタデシルアルコール、n-ノナデシルアルコール、n-エイコシルアルコール、n-ヘンエイコシルアルコール、n-ドコシルアルコール及びn-テトラコシルアルコール等}、分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコール{例えば、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソウンデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソテトラデシルアルコール、イソペンタデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソヘプタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール及びイソノナデシルアルコール等}、脂環式モノアルコール{例えば、シクロヘキサノール、2-、3-又は4-t-ブチルシクロヘキサノール、メントール、シクロヘキサンエタノール、2-、3-又は4-イソプロピルシクロヘキサノール等}等]、直鎖状不飽和脂肪族モノアルコール、分岐鎖状不飽和脂肪族モノアルコール、脂環式不飽和モノアルコール、炭素数7~24の芳香環含有モノアルコール{例えば、ベンジルアルコール等}等が挙げられる。
これらのうち、低温粘度、40℃における動粘度及び冷媒(C)との相溶性の観点から、炭素数4~16の直鎖又は分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコールが好ましく、更に好ましくは炭素数4~10の直鎖又は分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコールであり、特に好ましくは炭素数4~8の直鎖又は分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコールであり、最も好ましくは炭素数4~8の分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコールである。
【0072】
多価アルコール(x2)としては、炭素数2~24の飽和脂肪族ジオール[直鎖状飽和脂肪族ジオール{例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール及び1,16-ヘキサデカンジオール等}、分岐鎖状飽和脂肪族ジオール{例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ウンデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-トリデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ペンタデカンジオール及び1,2-ヘキサデカンジオール等}、炭素数4~24のポリアルキレングリコール{例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等}等]、炭素数2~24の不飽和脂肪族ジオール、炭素数3~24の飽和脂肪族多価(3価以上)アルコール[炭素数3~24の3価飽和脂肪族アルコール{例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、等}、炭素数4~24の4価飽和脂肪族アルコール{例えば、ペンタエリスリトール、キシリトール、ジトリメチロールプロパン等}、5価以上のアルコール{例えば、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリトリメチロールプロパン、ジソルビトール、トリソルビトール、等}等、脂環式ジオール{例えば、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジオール等}等]、炭素数3~24の不飽和脂肪族多価(3価以上)アルコール、炭素数8~24の芳香環含有二価アルコール{例えば、ジヒドロキシベンゼンのエチレンオキサイド付加物等}が挙げられる。
これらのうち、低温粘度、40℃における動粘度及び冷媒(C)との相溶性の観点から、炭素数2~24の直鎖又は分岐鎖状飽和脂肪族ジオール又は炭素数3~24の飽和脂肪族多価(3価以上)アルコールが好ましく、更に好ましくは炭素数2~10の直鎖又は分岐鎖状飽和脂肪族ジオール又は炭素数3~10の飽和脂肪族多価(3価以上)アルコールであり、特に好ましくは炭素数4~8の直鎖又は分岐鎖状飽和脂肪族ジオール又は炭素数4~8の飽和脂肪族多価(3価以上)アルコールである。
【0073】
一価カルボン酸(y1)としては、炭素数2~25の飽和脂肪族一価カルボン酸[直鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸{例えば、n-プロパン酸、n-ブタン酸、n-ペンタン酸、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸、n-ウンデカン酸、n-ドデカン酸、n-トリデカン酸、n-テトラデカン酸、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸、n-ノナデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸及びテトラコサン酸等}、炭素数2~25の分岐鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸{例えば、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸及びイソノナデカン酸等}、脂環式一価カルボン酸{例えば、シクロヘキサンカルボン酸等}等]、炭素数2~25の不飽和脂肪族一価カルボン酸、芳香環含有一価カルボン酸{例えば、安息香酸等}等が挙げられる。
これらのうち、低温粘度、40℃における動粘度及び冷媒(C)との相溶性の観点から、炭素数2~25の脂肪族一価カルボン酸が好ましく、更に好ましくは炭素数2~24の直鎖又は分岐鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸であり、特に好ましくは炭素数4~14の直鎖又は分岐鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸である。
【0074】
二価カルボン酸(y2)としては、炭素数2~24の飽和脂肪族二価カルボン酸[直鎖状飽和脂肪族二価カルボン酸{例えば、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、n-ブタン二酸(コハク酸)、n-ヘプタン二酸(グルタル酸)、n-ヘキサン二酸(アジピン酸)、n-ヘプタン二酸、n-オクタン二酸、n-ノナン二酸(アゼライン酸)、n-デカン二酸(セバシン酸)、n-ウンデカン二酸、n-ドデカン二酸、n-トリデカン二酸、n-テトラデカン二酸、n-ペンタデカン二酸及びn-ヘキサデカン二酸等}、分岐鎖状飽和脂肪族二価カルボン酸{例えば、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、3-メチルアジピン酸等}、脂環式飽和二価カルボン酸{例えば、1,2-又は1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等}等]、炭素数2~24の不飽和脂肪族二価カルボン酸{例えば、マレイン酸、フマル酸等}、炭素数8~24の芳香環含有二価カルボン酸{例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等}等が挙げられる。
これらのうち、低温粘度、40℃における動粘度及び冷媒(C)との相溶性の観点から、炭素数2~24の脂肪族二価カルボン酸が好ましく、更に好ましくは炭素数2~24の直鎖又は分岐鎖状脂肪族二価カルボン酸であり、特に好ましくは炭素数4~10の直鎖又は分岐鎖状脂肪族二価カルボン酸である。
【0075】
エステル油(B1)としては、低温粘度及び冷媒(C)との相溶性の観点から、飽和脂肪族アルコール(飽和脂肪族モノアルコール、飽和脂肪族ジオール及び飽和脂肪族多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種)と飽和脂肪族カルボン酸(飽和脂肪族一価カルボン酸及び/又は飽和脂肪族二価カルボン酸)とのエステルが好ましく、更に好ましくは分岐鎖状飽和脂肪族アルコール(分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコール及び/又は分岐鎖状飽和脂肪族ジオール)と分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸(分岐鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸及び/又は分岐鎖状飽和脂肪族二価カルボン酸)とのエステルであり、特に好ましくは炭素数4~10の分岐鎖状飽和脂肪族アルコールと炭素数4~10の分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸とのエステルである。
【0076】
エステル油(B1)としては、冷媒(C)との相溶性の観点から炭素数20~45のエステルが好ましく、更に好ましくは炭素数20~40のエステルである。
【0077】
また、エステル油(B1)としては、共重合体(A)による粘度指数向上効果の観点から炭素数10~40のエステルが好ましく、更に好ましくは炭素数10~25のエステルが好ましい。炭素数をこれらの範囲にすることで、分子量が大きくなりすぎず、共重合体(A)による粘度指数向上効果が大きくなる。
【0078】
ポリビニルエーテル(B2)(以下においてPVEと略記することがある)としては、ビニルエーテルに由来する構成単位を1種以上有する重合体が挙げられる。
PVEとしては、下記一般式(4)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0079】
【化7】
[式中、R、R及びRは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭化水素基を示し、Rは二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R10は炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示す。mが2以上である場合には、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0080】
一般式(4)におけるR、R及びRで示される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは2~7、更に好ましくは3~6である。また、一般式(4)におけるR、R及びRは、少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、全てが水素原子であることがより好ましい。
【0081】
一般式(4)におけるRで示される二価の炭化水素基及びエーテル結合酸素含有炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは2~8、更に好ましくは3~6である。また、一般式(4)におけるRで示される二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基は、例えばエーテル結合を形成する酸素を側鎖に有する炭化水素基であってもよい。
【0082】
一般式(4)におけるR10は、炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。
【0083】
一般式(4)におけるmは、0~20であることが好ましく、1~18であることがより好ましく、2~16であることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテル(B2)を構成する全構造単位におけるmの平均値が、0~10となることが好ましい。
【0084】
本発明においてポリビニルエーテル(B2)は、一般式(4)で表される構造単位から選ばれる1種で構成される単独重合体であってもよく、一般式(4)で表される構造単位から選ばれる2種以上で構成される共重合体であってもよく、一般式(4)で表される構造単位と他の構造単位とで構成される共重合体であってもよい。ポリビニルエーテル(B2)を共重合体とすることにより、冷凍機油の冷媒(C)との相溶性を満足しつつ、潤滑性、絶縁性、吸湿性等を一層向上させることができる。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類、共重合体における構造単位の比率等を適宜選択することにより、上記の冷凍機油の諸特性を所望のものとすることが可能となる。したがって、冷凍システム又は空調システムにおけるコンプレッサーの型式、潤滑部の材質、冷凍能力、冷媒の種類等により異なる潤滑性、相溶性等の要求に応じた冷凍機油を自在に得ることができる。共重合体は、ブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0085】
本発明においてポリビニルエーテル(B2)が共重合体である場合、当該共重合体は、上記一般式(4)で表され且つR10が炭素数1~2のアルキル基である構造単位(4-1)と、上記一般式(4)で表され且つR10が炭素数3~20、好ましくは3~10、更に好ましくは3~8のアルキル基である構造単位(4-2)と、を含むことが好ましい。構造単位(4-1)におけるR10としてはエチル基が特に好ましく、また、構造単位(4-2)におけるR10としてはイソブチル基が特に好ましい。さらに、本発明においてポリビニルエーテル(B2)が上記の構造単位(4-1)及び(4-2)を含む共重合体である場合、構造単位(4-1)と構造単位(4-2)とのモル比は、5:95~95:5であることが好ましく、20:80~90:10であることがより好ましく、70:30~90:10であることが更に好ましい。当該モル比が上記範囲内であると、冷媒(C)との相溶性をより向上させることができ、また、吸湿性を低くすることができる傾向にある。
【0086】
本発明においてポリビニルエーテル(B2)の製造工程において、副反応を起こして分子中にアリール基などの不飽和基が形成される場合があるが、ポリビニルエーテル自体の熱安定性の向上、重合物の生成によるスラッジの発生の抑制、抗酸化性(酸化防止性)の低下による過酸化物の生成の抑制といった観点から、本発明においてポリビニルエーテル(B2)としては、不飽和基等に由来する不飽和度が低いものが好ましい。ポリビニルエーテル(B2)の不飽和度は、0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテル(B2)の過酸化物価は、10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテル(B2)のカルボニル価は、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、20質量ppm以下であることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテル(B2)の水酸基価は、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
【0087】
なお、本発明における不飽和度、過酸化物価及びカルボニル価とは、それぞれ日本油化学会制定の基準油脂分析試験法により測定した値をいう。すなわち、本発明における不飽和度とは、試料にウィス液(ICl-酢酸溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰のIClをヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出し、このヨウ素価をビニル当量に換算した値(meq/g)をいう。また、本発明における過酸化物価とは、試料にヨウ化カリウムを加え、生じた遊離のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この遊離のヨウ素を試料1kgに対するミリ当量数に換算した値(meq/kg)をいう。また、本発明におけるカルボニル価とは、試料に2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを作用させ、発色性あるキノイドイオンを生ぜしめ、この試料の480nmにおける吸光度を測定し、予めシンナムアルデヒドを標準物質として求めた検量線を基に、カルボニル量に換算した値(質量ppm)をいう。
【0088】
ポリアルキレングリコール(B3)は種々の化学構造のものがあるが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが基本化合物で、単位構造はオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレンであり、それぞれモノマーであるエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを原料として、開環重合により得ることができる。
【0089】
ポリアルキレングリコール(B3)としては、例えば下記一般式(11)で表される化合物が挙げられる。
α-[(ORβ-ORγ (11)
[式(11)中、Rαは水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアシル基又は水酸基を2~8個有する化合物の残基を表し、Rβは炭素数2~4のアルキレン基を表し、Rγは水素原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数2~10のアシル基を表し、fは1~80の整数を表し、gは1~8の整数を表す。]
【0090】
上記一般式(11)において、Rα、Rγで表されるアルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。当該アルキル基の炭素数は好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6である。アルキル基の炭素数が10を超えると冷媒(C)との相溶性が低下する傾向にある。
【0091】
また、Rα、Rγで表されるアシル基のアルキル基部分は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アシル基の炭素数は、好ましくは2~10であり、より好ましくは2~6である。当該アシル基の炭素数が10を超えると冷媒(C)との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。
【0092】
α、Rγで表される基が、ともにアルキル基である場合、あるいはともにアシル基である場合、Rα、Rγで表される基は同一でも異なっていてもよい。さらに、gが2以上の場合は、同一分子中の複数のRα、Rγで表される基は同一でも異なっていてもよい。
【0093】
αで表される基が水酸基を2~8個有する化合物の残基である場合、この化合物は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。
【0094】
上記一般式(11)で表されるポリアルキレングリコールの中でも、Rα、Rγのうちの少なくとも1つがアルキル基(より好ましくは炭素数1~4のアルキル基)であることが好ましく、特にメチル基であることが冷媒(C)との相溶性の点から好ましい。
【0095】
さらには、熱・化学安定性の点から、RαとRγとの双方がアルキル基(より好ましくは炭素数1~4のアルキル基)であることが好ましく、とりわけ双方がメチル基であることが好ましい。
【0096】
製造容易性及びコストの点から、Rα又はRγのいずれか一方がアルキル基(より好ましくは炭素数1~4のアルキル基)であり、他方が水素原子であることが好ましく、とりわけ一方がメチル基であり、他方が水素原子であることが好ましい。また、潤滑性およびスラッジ溶解性の点からは、Rα及びRγの双方が水素原子であることが好ましい。
【0097】
上記一般式(11)中のRβは炭素数2~4のアルキレン基を表し、このようなアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、ORβで表される繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。同一分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよく、また、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよい。
【0098】
上記一般式(11)で表されるポリアルキレングリコールの中でも、冷媒(C)との相溶性及び粘度-温度特性の観点からは、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とを含む共重合体が好ましく、このような場合、焼付荷重、粘度-温度特性の点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との総和に占めるオキシエチレン基の割合(EO/(PO+EO))が0.1~0.8の範囲にあることが好ましく、0.3~0.6の範囲にあることがより好ましい。
【0099】
また、吸湿性や熱・酸化安定性の点ではEO/(PO+EO)の値が0~0.5の範囲にあることが好ましく、0~0.2の範囲にあることがより好ましく、0(すなわちプロピレンオキサイド単独重合体)であることが最も好ましい。
【0100】
上記一般式(11)中のfは、オキシアルキレン基ORβの繰り返し数(重合度)を表し、1~80の整数である。また、gは1~8の整数である。例えばRαがアルキル基またはアシル基である場合、gは1である。Rαが水酸基を2~8個有する化合物の残基である場合、gは当該化合物が有する水酸基の数となる。
【0101】
また、fとgとの積(f×g)については特に制限されないが、冷凍機油としての要求性能をバランスよく満たすためには、f×gの平均値が6~80となるようにすることが好ましい。
【0102】
一般式(11)で表されるポリアルキレングリコールの数平均分子量は好ましくは500~3000、より好ましくは600~2000、さらに好ましくは600~1500であり、nは当該ポリアルキレングリコールの数平均分子量が上記の条件を満たすような数であることが好ましい。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が低すぎる場合には冷媒(C)共存下での潤滑性が不十分となる傾向がある。他方、数平均分子量が高すぎる場合には、低温条件下で冷媒(C)に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる傾向がある。
【0103】
ポリアルキレングリコール(B3)の水酸基価は特に限定されないが、100mgKOH/g以下、好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下、最も好ましくは10mgKOH/g以下であるのが望ましい。
【0104】
本発明においてポリアルキレングリコール(B3)は、公知の方法を用いて合成することができる(「アルキレンオキシド重合体」、柴田満太他、海文堂、平成2年11月20日発行)。例えば、アルコール(RαOH;Rαは上記一般式(11)中のRαと同一の定義内容を表す)に所定のアルキレンオキサイドの1種以上を付加重合させ、さらに末端水酸基をエーテル化又はエステル化することによって、上記一般式(11)で表されるポリアルキレングリコールが得られる。なお、上記の製造工程において異なる2種以上のアルキレンオキサイドを使用する場合、得られるポリアルキレングリコールはランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、より酸化安定性及び潤滑性に優れる傾向にあることからブロック共重合体であることが好ましく、より低温流動性に優れる傾向にあることからランダム共重合体であることが好ましい。
【0105】
ポリアルキレングリコール(B3)の100℃における動粘度は、冷凍機油の潤滑性及び冷媒(C)との相溶性の観点から、5~20mm/sであることが好ましく、好ましくは6~18mm/s、より好ましくは7~16mm/s、さらに好ましくは8~15mm/s、最も好ましくは10~15mm/sである。また、当該ポリアルキレングリコール(B3)の40℃における動粘度は、冷凍機油の潤滑性及び冷媒(C)との相溶性の観点から、40℃における動粘度が10~200mm/sであることが好ましく、20~150mm/sであることがより好ましい。
【0106】
また、上記一般式(11)で表されるポリアルキレングリコールの流動点は-10℃以下であることが好ましく、-20~-50℃であることがより好ましい。流動点が-10℃以上のポリアルキレングリコールを用いると、低温時に冷媒循環システム内で冷凍機油が固化しやすくなる傾向にある。
【0107】
また、上記一般式(11)で表されるポリアルキレングリコールの製造工程において、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが副反応を起こして分子中にアリール基などの不飽和基が形成される場合がある。ポリアルキレングリコール分子中に不飽和基が形成されると、ポリアルキレングリコール自体の熱安定性が低下する、重合物を生成してスラッジを生成する、あるいは抗酸化性(酸化防止性)が低下して過酸化物を生成するといった現象が起こりやすくなる。特に、過酸化物が生成すると、分解してカルボニル基を有する化合物を生成し、さらにカルボニル基を有する化合物がスラッジを生成してキャピラリ詰まりが起こりやすくなる。
【0108】
したがって、本発明においてポリアルキレングリコール(B3)としては、不飽和基等に由来する不飽和度が低いものが好ましく、具体的には0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが最も好ましい。また、過酸化物価は10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが最も好ましい。さらに、カルボニル価は、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、20質量ppm以下であることが最も好ましい。
【0109】
本発明において、不飽和度、過酸化物価及びカルボニル価の低いポリアルキレングリコールを得るためには、プロピレンオキサイドを反応させる際の反応温度を120℃以下(より好ましくは110℃以下)とすることが好ましい。また、製造に際してアルカリ触媒を使用することがあれば、これを除去するために無機系の吸着剤、例えば、活性炭、活性白土、ベントナイト、ドロマイト、アルミノシリケート等を使用すると、不飽和度を減ずることができる。また、当該ポリアルキレングリコールを製造又は使用する際に酸素との接触を極力避けたり、酸化防止剤を添加することによっても過酸化物価又はカルボニル価の上昇を防ぐことができる。
【0110】
本発明においてポリアルキレングリコール(B3)は、炭素/酸素モル比が所定の範囲であることが好ましいが、原料モノマーのタイプ、混合比を選定、調節することにより、該モル比が前記範囲にある重合体を製造することができる。
【0111】
本発明において粘度指数向上剤は、含酸素原子基油(B){上記エステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種等}に加えて、例えば鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油を更に含有していてもよい。エステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)の合計含有量は、粘度指数向上剤に含まれる基油全量基準として、5質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0112】
粘度指数向上剤中の含酸素原子基油(B)の40℃における動粘度(JIS-K2283に準じて測定したもの)は、一般的には、1~200mm/sであり、粘度指数向上効果の観点から、5~100mm/sが好ましく、7~50mm/sがより好ましく、更に好ましくは7~20mm/sである。
粘度指数向上剤中の含酸素原子基油(B)の100℃における動粘度(JIS-K2283に準じて測定したもの)は、一般的には、1~50mm/sであり、低温での動粘度の観点から、1~10mm/sが好ましく、更に好ましくは1~9mm/sである。
粘度指数向上剤中の含酸素原子基油(B)の粘度指数(JIS-K2283に準じて測定したもの)は、一般的には0以上であり、潤滑油組成物の粘度指数向上効果の観点から、50以上が好ましく、更に好ましくは50~180である。
【0113】
含酸素原子基油(B)のSP値は、共重合体(A)の溶解性の観点から、好ましくは8.0~10.0(cal/cm1/2であり、さらに好ましくは8.4~9.5(cal/cm1/2である。
なお、粘度指数向上剤中に含酸素原子基油(B)を2種以上含む場合は、粘度指数向上剤中のそれぞれの含酸素原子基油(B)のSP値を前記の方法で算出し、それぞれのSP値を質量分率に基づいて加重平均した値が上記範囲内であることが好ましい。
【0114】
共重合体(A)のSP値と含酸素原子基油(B)のSP値との差の絶対値は、粘度指数向上効果、含酸素原子基油(B)への溶解性及び冷媒(C)への溶解性の観点から、好ましくは2.0(cal/cm1/2以下であり、より好ましくは0.1~2.0(cal/cm1/2であり、さらに好ましくは0.1~1.5(cal/cm1/2であり、特に好ましくは0.1~1.0(cal/cm1/2であり、最も好ましくは0.1~0.65(cal/cm1/2である。
なお、粘度指数向上剤中に含酸素原子基油(B)を2種以上含む場合は、粘度指数向上剤中のそれぞれの含酸素原子基油(B)のSP値を前記の方法で算出し、それぞれのSP値を質量分率に基づいて加重平均して算出した含酸素原子基油(B)のSP値と共重合体(A)のSP値との差の絶対値が上記範囲内であることが好ましい。
【0115】
粘度指数向上剤中の共重合体(A)と含酸素原子基油(B)との質量比(A/B)は、一般的には99/1~1/99であり、粘度指数の観点から、99/1~10/90が好ましく、さらに好ましくは99/1~20/80である。
【0116】
本発明の粘度指数向上剤は、冷媒及び含酸素原子基油に対する溶解性に優れ、冷凍機油に用いた場合に粘度指数向上効果が高く、さらに低温での動粘度が低い冷凍機油を得ることができるので、冷凍機油用の粘度指数向上剤として用いることができ、特に冷媒(C)と冷凍機油とを含む冷凍機用作動流体組成物に用いられる粘度指数向上剤として極めて有用である。
【0117】
<冷凍機油>
本発明の冷凍機油は、潤滑油基油と本発明の粘度指数向上剤とを含む。ここで、潤滑油基油としては、一般的に潤滑油に用いる基油であれば用いることができ、冷媒及び前記粘度指数向上剤の双方との相溶性に優れる点で、含酸素原子基油を用いることが好ましい。つまり、本発明の冷凍機油は、含酸素原子基油を含むことが好ましい。粘度指数向上剤が含酸素原子基油(B)を含む場合はそのまま冷凍機油として用いてもよく、さらに含酸素原子基油(B)又は粘度指数向上剤が含む含酸素原子基油(B)以外の含酸素原子基油を含有させて冷凍機油として用いてもよい。
【0118】
本発明の冷凍機油に用いられる潤滑油基油としての含酸素原子基油としては、一般的に潤滑油に用いることができるものであれば用いることができ、冷凍機油に用いる観点から、エステル及びエーテルから選ばれる少なくとも1種が好ましく、エステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。エステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
潤滑油基油としての含酸素原子基油におけるエステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)としては、先述した粘度指数向上剤中に用いられる含酸素原子基油(B)として例示したエステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)と同様のものが挙げられる。
潤滑油基油としての含酸素原子基油におけるエステル油(B1)としてはポリオールエステル(B12)が好ましく、多価(2~10価)アルコール(x2)と一価カルボン酸(y1)とのポリオールエステル(B12-2)がより好ましい。
また、本発明の冷凍機油には、上記含酸素原子基油の他の基油も更に含有してもよい。その他の基油としては、例えば炭化水素油又は他の含酸素原子基油であってよい。炭化水素油としては、鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等が挙げられる。他の含酸素原子基油としては、コンプレックスエステル等のエステル、脂肪族エーテル、ポリフェニルエーテル、パーフルオロエーテル等のエーテルが挙げられる。
【0119】
冷凍機油中の含酸素原子基油のSP値は、共重合体(A)の溶解性の観点から、好ましくは8.0~10.0(cal/cm1/2であり、さらに好ましくは8.4~9.5(cal/cm1/2である。
なお、冷凍機油中に含酸素原子基油を2種以上含む場合(例えば、潤滑油基油としての含酸素原子基油と、粘度指数向上剤中の重合基油又は希釈溶剤としての含酸素原子基油とが異なる場合等)は、冷凍機油中のそれぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれのSP値を質量分率に基づいて加重平均した値が上記範囲内であることが好ましい。
【0120】
冷凍機油中の共重合体(A)のSP値と含酸素原子基油のSP値との差の絶対値は、その溶解性及び冷媒への溶解性の観点から、好ましくは2.0(cal/cm1/2以下であり、さらに好ましくは1.5(cal/cm1/2以下であり、特に好ましくは1.0(cal/cm1/2以下である。
なお、冷凍機油中に含酸素原子基油を2種以上含む場合は、冷凍機油中のそれぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれのSP値を質量分率に基づいて加重平均して算出した含酸素原子基油のSP値と共重合体(A)のSP値との差の絶対値が上記範囲内であることが好ましい。
【0121】
冷凍機油中の含酸素原子基油の40℃における動粘度(JIS-K2283に準じて測定したもの)は、一般的には、1~200mm/sであり、粘度指数向上効果及び低温での動粘度の観点から、5~100mm/sが好ましく、より好ましくは7~50mm/sであり、さらに好ましくは7~20mm/sである。
冷凍機油中の含酸素原子基油の100℃における動粘度(JIS-K2283に準じて測定したもの)は、一般的には、1~50mm/sであり、粘度指数向上効果及び低温での動粘度の観点から、1~10mm/sが好ましく、更に好ましくは1~9mm/sである。
冷凍機油中の含酸素原子基油の粘度指数(JIS-K2283に準じて測定したもの)は、一般的には0以上であり、冷凍機油の粘度指数向上効果の観点から、50以上が好ましく、更に好ましくは50~180である。
【0122】
本発明において冷凍機油は、本発明の粘度指数向上剤、含酸素原子基油(B)に加えて、必要に応じて更に各種添加剤を含有していてもよい。係る添加剤としては、酸捕捉剤、酸化防止剤、極圧剤、油性剤、消泡剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、流動点降下剤、清浄分散剤などが挙げられる。なお、添加剤の含有量は、冷凍機油全量に対する各種添加剤の合計量基準で、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0123】
本発明の冷凍機油において、含酸素原子基油の含有量は、一般的には、冷凍機油全量基準で、50質量%以上、好ましくは60質量%以上であり、潤滑性、相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性など冷凍機油に要求される特性に優れるためには、冷凍機油全量基準で、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
また、冷凍機油において、本発明の粘度指数向上剤を含有する場合、粘度指数向上剤又は共重合体(A)の含有量は、冷凍機油全量基準で、一般的には50質量%以下であり、粘度指数の観点から、冷凍機油全量基準で、1~20質量%が好ましく、更に好ましくは2~10質量%である。
【0124】
冷凍機油の40℃における動粘度は、特に限定されないが、好ましくは3~1000mm/s、より好ましくは4~500mm/s、さらに好ましくは5~400mm/sである。動粘度を高く維持しつつ、低温における動粘度を低くできる点及び冷媒相溶性とのバランスで、さらに好ましくは15mm/s以上又は30mm/s以上であり、200mm/s以下、100mm/s以下又は85mm/s以下であってよい。
冷凍機油の100℃における動粘度は、特に限定されないが、好ましくは1~100mm/s、より好ましくは2~50mm/sである。動粘度を高く維持しつつ、低温における動粘度を低くできる点及び冷媒相溶性とのバランスで、さらに好ましくは5mm/s以上又は7mm/s以上であり、25mm/s以下、20mm/s以下又は15mm/s以下であってよい。
冷凍機油の-20℃における動粘度は、特に限定されないが、好ましくは10000mm/s以下、6000mm/s以下、4000mm/s以下又は2000mm/s以下であり、低いほど低温環境下における冷凍機用作動流体組成物の流動性を向上することができる。
冷凍機油の粘度指数は、特に限定されないが、好ましくは90以上であり、より好ましくは100以上であり、さらに好ましくは120以上であり、さらにより好ましくは200以上、250以上又は300以上であってよい。粘度指数は、100℃における動粘度を高く維持しつつ、低温における動粘度を低くできる点及び冷媒相溶性とのバランスで、含酸素原子基油の粘度指数と粘度指数向上剤の配合量を調節することで自由に設定することができ、例えば、400以下、350以下、300以下又は250以下であってよい。また、同様の理由で、冷凍機油中に含まれる含酸素原子基油の粘度指数に対する冷凍機油の粘度指数の向上倍率(冷凍機油の粘度指数/含酸素原子基油の粘度指数)は、例えば、1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上、さらに好ましくは3倍以上、好ましくは10倍以下、より好ましくは8倍以下、さらに好ましくは6倍以下であってよい。
【0125】
冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは1.0×10Ω・m以上、より好ましくは1.0×1010Ω・m以上、最も好ましくは1.0×1011Ω・m以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、本発明において、体積抵抗率とは、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を意味する。
【0126】
冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0127】
冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機又は配管に用いられている金属への腐食を防止するため、及び本発明において冷凍機油に含有されるエステルの分解を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK2501「石油製品及び潤滑油-中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
【0128】
冷凍機油の灰分は特に限定されないが、本発明において冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK2272「原油及び石油製品-灰分及び硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
【0129】
本発明の冷凍機油は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機、遠心式の圧縮機を有する冷凍機等に好適に用いられる。
【0130】
<冷凍機用作動流体組成物>
本発明の粘度指数向上剤は、冷凍機油用の粘度指数向上剤として用いられる場合、冷凍機において、冷媒(C)と混合された冷凍機用作動流体組成物中に存在させることができる。すなわち、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、本発明の冷凍機油(潤滑油基油と本発明の粘度指数向上剤との混合物)と冷媒(C)とを含有する。本発明の粘度指数向上剤は、冷媒(C)と含酸素原子基油(B)とを含む冷凍機用作動流体組成物に用いられることが好ましい。
【0131】
冷媒(C)としては、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、自然冷媒、自然冷媒以外の炭化水素冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド冷媒、及びこれらの冷媒から選ばれる2種以上の混合冷媒が例示される。
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、ジフルオロメタン(R32)、トリフルオロメタン(R23)、トリフルオロヨードメタン(13I1)、ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、フルオロエタン(R161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R227ea)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(R245fa)及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(R365mfc)等が挙げられる。
不飽和フッ化炭化水素冷媒としては、炭素数2~4の不飽和フッ化炭化水素冷媒が好ましく、例えば、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(R1225ye)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ye)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)等のフッ素原子を1~5個有する炭素数3のフルオロプロペン冷媒、モノフルオロエチレン(HFO-1141)、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、(E)-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、(Z)-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1,2-トリフルオロエチレン(R1123)等のフッ素原子を1~3個有する炭素数2のフルオロエチレン冷媒、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(R1336mzz(E))、(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(R1336mzz(Z))等のフッ素原子を1~7個有する炭素数4のフルオロブテン冷媒、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HCFO-1122)、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))等の塩素原子及びフッ素原子含有不飽和フッ化炭化水素冷媒が挙げられる。
自然冷媒としては、二酸化炭素、アンモニア、プロパン、n-ブタン及びイソブタン等が挙げられる。
【0132】
飽和フッ化炭化水素冷媒は2種以上の混合物であってもよく、例えば、R134a/R32=60~80質量%/40~20質量%の混合物、R32/R125=40~70質量%/60~30質量%の混合物、R125/R143a=40~60質量%/60~40質量%の混合物、R134a/R32/R125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物、R134a/R32/R125=40~70質量%/15~35質量%/5~40質量%の混合物、R125/R134a/R143a=35~55質量%/1~15質量%/40~60質量%の混合物等が挙げられる。
【0133】
更に具体的には、R134a/R32=70/30質量%の混合物;R32/R125=60/40質量%の混合物;R32/R125=50/50質量%の混合物(R410A);R32/R125=45/55質量%の混合物(R410B);R125/R143a=50/50質量%の混合物(R507C);R32/R125/R134a=30/10/60質量%の混合物;R32/R125/R134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);R32/R125/R134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);R125/R134a/R143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)等が挙げられる。
【0134】
冷媒(C)としては、共重合体(A)との相溶性の観点から、好ましくは、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒及び自然冷媒から選ばれる少なくとも1種の冷媒又は2種以上の混合冷媒であり、炭素数1~3の飽和フッ化炭化水素冷媒、炭素数2~4の不飽和フッ化炭化水素冷媒並びに二酸化炭素、アンモニア、プロパン、n-ブタン及びイソブタンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはR32、R125、R134a、R410A、R407C、R1234yf,R1234ze、二酸化炭素、アンモニア、プロパン、n-ブタン及びイソブタンであり、更に好ましくはR32、R125、R134a、R410A、R407C,R1234yf及びR1234zeであり、特に好ましくはR32、R125、R134a、R410A,R407C及びR1234yfである。
また、冷媒(C)としては、共重合体(A)との相溶性に加え、GWPがより低いことが好ましく、不飽和フッ化炭化水素冷媒又は不飽和フッ化炭化水素混合冷媒であることが望ましい。不飽和フッ化炭化水素混合冷媒は、不飽和フッ化炭化水素から選ばれる2種以上の混合冷媒でも、不飽和フッ化炭化水素から選ばれる少なくとも1種と、他の冷媒、例えば飽和フッ化炭化水素冷媒、自然冷媒、自然冷媒以外の炭化水素冷媒等から選ばれる1種又は2種以上の混合冷媒であってよい。
不飽和フッ化炭化水素混合冷媒としては、例えば、上記炭素数2~4の不飽和フッ化炭化水素を含む混合冷媒として、具体的には、例えば、R444A、R444B、R445A、R446A、R447A、R447B、R448A、R448B、R449A、R449B、R449C、R450A、R451A、R451B、R452A、R452B、R452C、R454A、R454B、R454C、R455A、R456A、R457A、R457B、R457C、R459A、R459B、R460A、R460B、R460C、R463A、R464A、R465A、R468A、R468B、R468C、R470A、R470B、R471A、R473A、R474A、R475A、R476A、R513A、R513B、R514A、R515A、R515B、R516A、HFO-1123、R32及びR1234yf含有冷媒、HFO-1123及びR1234yf含有冷媒等が挙げられる。
このような不飽和フッ化炭化水素冷媒又は不飽和フッ化炭化水素混合冷媒のGWPは、例えば、1500以下、1000以下、500以下、300以下、150以下、100以下又は10以下であってよい。
【0135】
冷凍機用作動流体組成物における共重合体(A)の含有量は、冷媒(C)100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、更に好ましくは0.2~10質量部である。
冷凍機用作動流体組成物において冷媒(C)と冷凍機油(共重合体(A)及び潤滑油基油の合計質量)との質量比(冷媒(C)/冷凍機油)は、好ましくは99/1~1/99が好ましく、更に好ましくは95/5~40/60である。
【0136】
本発明の冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機、遠心式の圧縮機を有する冷凍機等に好適に用いられる。
【0137】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0138】
本開示(1)は、下記一般式(1)で表されるフッ素原子を有する単量体(a)、下記一般式(2)で表される単量体(b)及び下記一般式(3)で表されるケイ素原子を有する単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する粘度指数向上剤であり、共重合体(A)中のフッ素原子濃度が5~50質量%である粘度指数向上剤である。
【化8】
[一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;pは0又は1の整数;qは0~20の整数であり、qが2以上の場合、Rは同一でも異なっていても良い。;Yは炭素数1~40の炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている一価の基である。]
【化9】
[一般式(2)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;rは0又は1の整数;sは0~20の整数であり、sが2以上の場合、Rは同一でも異なっていても良い。;Rは炭素数1~40のアルキル基である。]
【化10】
[一般式(3)において、R11は水素原子又はメチル基;R12は炭素数1~6のアルキレン基;R13~R17はそれぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基;tは0又は1の整数;uは5~200の整数である。]
【0139】
本開示(2)は、前記共重合体(A)中のケイ素原子濃度が0.5~25質量%である本開示(1)に記載の粘度指数向上剤である。
【0140】
本開示(3)は、前記単量体(c)に由来する構成単位の溶解性パラメータが6.5~9.0(cal/cm1/2である本開示(1)又は(2)に記載の粘度指数向上剤である。
【0141】
本開示(4)は、前記共重合体(A)の重量平均分子量が1,000~2,000,000である本開示(1)~(3)のいずれかに記載の粘度指数向上剤である。
【0142】
本開示(5)は、さらに含酸素原子基油を含有する本開示(1)~(4)のいずれかに記載の粘度指数向上剤である。
【0143】
本開示(6)は、潤滑油基油と、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の粘度指数向上剤とを含有する冷凍機油である。
【0144】
本開示(7)は、前記潤滑油基油が含酸素原子基油を含有する本開示(6)に記載の冷凍機油である。
【0145】
本開示(8)は、前記含酸素原子基油が、エステル油(B1)、ポリビニルエーテル(B2)及びポリアルキレングリコール(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種である本開示(7)に記載の冷凍機油である。
【0146】
本開示(9)は、前記共重合体(A)の溶解性パラメータと前記含酸素原子基油の溶解性パラメータとの差の絶対値が2.0(cal/cm1/2以下である本開示(7)又は(8)に記載の冷凍機油である。
【0147】
本開示(10)は、前記含酸素原子基油の溶解性パラメータは、8.0~10.0(cal/cm1/2である本開示(7)~(9)のいずれかに記載の冷凍機油である。
【0148】
本開示(11)は本開示(6)~(10)のいずれかに記載の冷凍機油と、冷媒とを含有する冷凍機用作動流体組成物である。
【0149】
本開示(12)は、前記冷媒が飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒及び自然冷媒からなる群より選ばれる少なくとも1種の冷媒又は2種以上の混合冷媒である本開示(11)に記載の冷凍機用作動流体組成物である。
【実施例0150】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0151】
<実施例1>
[粘度指数向上剤(R-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、単量体配合物{単量体(a-2)[メタクリル酸2-(ペルフルオロヘキシル)エチル]40質量部、単量体(b-2)[メタクリル酸エチル]5質量部、単量体(b-4)[メタクリル酸イソブチル]35質量部、単量体(c-1)[KF-2012]20質量部}合計100質量部、重合基油として含酸素原子基油(B-1)[ネオペンチルグリコールと2-エチルヘキサン酸のジエステル化物]150質量部、及び、重合触媒として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4質量部、ドデシルメルカプタン0.02質量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った。密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で5時間重合反応を行った。90℃に昇温後、2時間熟成を行い、120℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を1時間かけて除去し、共重合体(A-1)を含有する粘度指数向上剤(R-1)を得た。
【0152】
<実施例2~22、比較例1~8>
[粘度指数向上剤(R-2)~(R-22)、(R’-1)~(R’-8)の製造]
実施例1において、単量体配合物と重合基油を表2-1~表2-3に記載したものに変更する以外は同様に反応を行い、それぞれ重合体を含有する重合体溶液(R-2)~(R-22)及び(R’-1)~(R’-8)を得た。
【0153】
【表2-1】
【0154】
【表2-2】
【0155】
【表2-3】
【0156】
なお、表2-1~表2-3に記載の単量体と、各単量体に由来する構成単位のSP値は、以下に記載した通りである。
【0157】
【表3】
【0158】
また、表2-1~表2-3に記載の含酸素原子基油(B)は以下のとおりである。
(B-1)ネオペンチルグリコールと2-エチルヘキサン酸とのジエステル(40℃動粘度:7.45mm/s、100℃動粘度:2.05mm/s、粘度指数:52、SP値:8.79)
(B-2)2-エチルヘキサノールとアジピン酸とのジエステル(40℃動粘度:7.80mm/s、100℃動粘度:2.40mm/s、粘度指数:135、SP値:8.91)
【0159】
<粘度指数向上剤中の共重合体(A)又は(A’)と含酸素原子基油(B)との相溶性>
以下の評価基準で粘度指数向上剤中の共重合体(A)又は(A’)と含酸素原子基油(B)との相溶性を評価した。結果を表2-1~表2-3に示す。
[評価基準]
○:外観が均一であり、共重合体の不溶解物がない
×:外観が不均一であり、共重合体の不溶解物が認められる
【0160】
<実施例23~44、比較例9~12>
[冷凍機油(1)~(22)、(1’)、(3’)、(5’)及び(8’)の製造]
粘度指数向上剤(R-1)~(R-22)及び(R’-1)、(R’-3)、(R’-5)及び(R’-8)と含酸素原子基油(B)とをそれぞれ25℃の雰囲気下に1日間置いて温調した。さらに、上記各粘度指数向上剤と含酸素原子基油(B)とを、冷凍機油における共重合体(A)又は(A’)と含酸素原子基油(B)の配合割合が表2-1~表2-3に記載した値となるように、含酸素原子基油(B)をさらに添加して撹拌(回転速度500rpm)し、冷凍機油(1)~(22)及び比較用の冷凍機油(1’)、(3’)、(5’)及び(8’)を製造した。
<粘度指数向上剤(R)又は(R’)の含酸素原子基油(B)への溶解性>
上記冷凍機油の製造において、撹拌開始から5分及び1時間の時点での各冷凍機油の外観を、25℃の室温下で、蛍光白色灯下で目視にて観察し、以下の評価基準で粘度指数向上剤(R)又は(R’)の含酸素原子基油(B)への溶解性を評価した。結果を表2-1~表2-3に示す。
[評価基準]
◎:撹拌開始から5分で溶解し、外観が均一であり、共重合体の不溶物がない
○:撹拌開始から1時間で溶解し、外観が均一であり、共重合体の不溶解物がない
×:撹拌開始から1時間後も外観が不均一であり、共重合体の不溶解物が認められる
【0161】
<冷凍機油の動粘度及び粘度指数>
冷凍機油(1)~(22)、(1’)、(3’)、(5’)及び(8’)について、JIS-K2283に記載の方法で-20℃、40℃、100℃における動粘度を測定し、40℃及び100℃の動粘度の測定結果を用いて粘度指数を計算した。結果を表2-1~表2-3に示す。粘度指数が大きいほど粘度指数向上効果が高いことを意味する。
なお、粘度指数向上剤(R’-2)、(R’-4)、(R’-6)及び(R’-7)は、共重合体が含酸素原子基油(B)に溶解しなかったため、冷凍機油を製造しなかった。
【0162】
<実施例45~66、比較例13~16>
[冷凍機用作動流体組成物の製造]
冷凍機油(1)~(22)又は比較用の冷凍機油(1’ )、(3’ )、(5’ )、(8’ )各0.5gに、冷媒(C)としてR1234yf(代表的な不飽和フッ化炭化水素冷媒)を9.5g配合(冷凍機油5質量%)し、冷凍機用作動流体組成物を製造した。
<冷媒(C)との相溶性試験>
得られた作動流体組成物を-40℃で1時間冷却した。その後、20℃で1時間温調して外観を確認し、40℃で1時間温調して外観を確認した。各温度で冷媒と冷凍機油が相溶しているかを目視確認した。
[評価基準]
◎:-40℃、20℃、40℃全ての温度において外観が均一であり不溶解物がない
○:-40℃、20℃においては外観が均一であり不溶解物がないが、40℃においては外観が不均一であり不溶解物が認められる
△:-40℃においては外観が均一であり不溶解物がないが、20℃及び40℃においては外観が不均一であり不溶解物が認められる
×:-40℃において外観が不均一であり不溶解物が認められる
【0163】
表2-1~表2-3の結果から、本発明の粘度指数向上剤は、含酸素原子基油及び冷媒に対する溶解性に優れ、冷凍機油に用いた場合に粘度指数向上効果が高く、低温での動粘度が十分に低い冷凍機油を提供できることがわかる。一方、比較例の粘度指数向上剤は、含酸素原子基油又は冷媒に対する溶解性が低いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明の粘度指数向上剤は、冷媒及び含酸素原子基油に対する溶解性に優れ、冷凍機油に用いた場合に粘度指数向上効果が高く、さらに低温での動粘度が低い冷凍機油を得ることができるので、冷凍機油用の粘度指数向上剤として好適に用いることができる。また、当該粘度指数向上剤を配合した本発明の冷凍機油は、粘度指数が高く、さらに低温での動粘度が低いとともに、冷媒に対する相溶性にも優れるという効果を奏し、それゆえ、本発明の冷凍機油と冷媒とを含有する本発明の冷凍機用作動流体組成物は、冷凍システムを滞りなく循環できるため、極めて有用である。また、本発明の粘度指数向上剤を含有する本発明の冷凍機油又は冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機、遠心式の圧縮機を有する冷凍機等に好適に用いられる。