(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148374
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】アノード触媒、水電解セル及び水電解セルスタック
(51)【国際特許分類】
C25B 11/081 20210101AFI20241010BHJP
C25B 11/032 20210101ALI20241010BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20241010BHJP
C25B 11/093 20210101ALI20241010BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241010BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241010BHJP
B01J 23/58 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C25B11/081
C25B11/032
C25B11/052
C25B11/093
C25B1/04
C25B9/00 A
B01J23/58 M
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061468
(22)【出願日】2023-04-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 祐希
(72)【発明者】
【氏名】宇根本 篤
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA36A
4G169BB06A
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC12A
4G169BC12B
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC74A
4G169BC74B
4G169CB81
4G169CC40
4G169DA06
4G169EB14X
4G169EB14Y
4G169EC23
4G169FC08
4K011AA12
4K011AA33
4K011AA34
4K011BA07
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB16
4K021DB18
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB53
(57)【要約】
【課題】高触媒活性と長寿命とが両立されたアノード触媒を提供する。
【解決手段】Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに4価の金属イオン及びIrイオンと、を含むペロブスカイト型酸化物を含み、Aサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンが、CaイオンとSrイオン、CaイオンとBaイオン、又は、CaイオンとSrイオンとBaイオンを含み、Bサイトイオンに含まれる4価の金属イオンが、Zrイオン及び/又はTiイオンを含み、Bサイトイオンに含まれるIrイオンのモル濃度が35mol%以上であり、Aサイトイオンのイオン半径をr
A、Aサイトイオンに含まれる、アルカリ土類金属イオンのイオン半径をr
i、アルカリ土類金属イオンのモル濃度をm
i、Caイオンのイオン半径をr
caとした場合、下記の式で定義されるイオン半径差(r
A-r
Ca)が、0.0175Å~0.2616Åであるアノード触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに4価の金属イオン及びイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物を含み、
前記Aサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンが、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとの組み合わせ、カルシウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせ、又は、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせを含み、
前記Bサイトイオンに含まれる前記4価の金属イオンが、ジルコニウムイオン及びチタンイオンから選ばれる少なくとも1種を含み、
前記Bサイトイオンに含まれる前記イリジウムイオンのモル濃度が、35mol%以上であり、
前記Aサイトイオンのイオン半径をr
A、並びに、前記Aサイトイオンに含まれる、前記アルカリ土類金属イオンのイオン半径をr
i、前記アルカリ土類金属イオンのモル濃度をm
i、及び、前記カルシウムイオンのイオン半径をr
caとした場合、下記の式で定義される前記Aサイトイオンと前記カルシウムイオンのイオン半径差(r
A-r
Ca)が、0.0175Å~0.2616Åであるアノード触媒。
【数1】
【請求項2】
前記イオン半径差(rA-rCa)が、0.0474Å~0.2316Åである請求項1に記載のアノード触媒。
【請求項3】
前記イオン半径差(rA-rCa)が、0.0668Å~0.2122Åである請求項1に記載のアノード触媒。
【請求項4】
アノードガス拡散層と、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアノード触媒と、電解質膜と、カソード触媒と、カソードガス拡散層と、セパレータと、を備える水電解セル。
【請求項5】
請求項4に記載の水電解セルを複数積層させた水電解セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アノード触媒、水電解セル及び水電解セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解(以下、「水電解」という場合がある。)は、電気分解によって水から水素及び酸素を生成する方法である。例えば、エネルギー源として水素を利用する技術において、水電解は、持続可能な水素生成のための有望な技術である。
【0003】
水電解に用いる水電解セルは、アノードセパレータ、アノードガス拡散層、アノード触媒、電解質膜、カソード触媒、カソードガス拡散層、カソードセパレータ等を備えている。アノード触媒及びカソード触媒については、水電解に適した触媒が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、パラジウム(Pd)とルテニウム(Ru)を含むPdRu固溶体ナノ粒子が開示され、このナノ粒子は、水電解反応用触媒として用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ルテニウム、イリジウム等のアノード活性を有する元素を含むアノード触媒は、高い触媒活性を有する。しかし、アノード触媒は、水電解中に強酸化雰囲気に晒されるため、例えば、ルテニウム、イリジウム等の元素が溶解し、短寿命化しやすい。
【0007】
例えば、特許文献1のようなルテニウムを含む水電解反応用触媒では、ルテニウムが溶解し、触媒が短寿命化するおそれがある。
【0008】
本開示の目的は、高触媒活性と長寿命とが両立されたアノード触媒、並びに、これを含む水電解セル及び水電解セルスタックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに4価の金属イオン及びイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物を含み、
上記Aサイトイオンに含まれる上記アルカリ土類金属イオンが、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとの組み合わせ、カルシウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせ、又は、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせを含み、
上記Bサイトイオンに含まれる上記4価の金属イオンが、ジルコニウムイオン及びチタンイオンから選ばれる少なくとも1種を含み、
上記Bサイトイオンに含まれる上記イリジウムイオンのモル濃度が、35mol%以上であり、
上記Aサイトイオンのイオン半径をrA、並びに、上記Aサイトイオンに含まれる、上記アルカリ土類金属イオンのイオン半径をri、上記アルカリ土類金属イオンのモル濃度をmi、及び、上記カルシウムイオンのイオン半径をrcaとした場合、下記の式で定義される上記Aサイトイオンと上記カルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)が、0.0175Å~0.2616Åであるアノード触媒。
【0010】
【0011】
<2> 上記イオン半径差(rA-rCa)が、0.0474Å~0.2316Åである<1>に記載のアノード触媒。
<3> 上記イオン半径差(rA-rCa)が、0.0668Å~0.2122Åである<1>に記載のアノード触媒。
<4> アノードガス拡散層と、<1>~<3>のいずれか1つに記載のアノード触媒と、電解質膜と、カソード触媒と、カソードガス拡散層と、セパレータと、を備える水電解セル。
<5> <4>に記載の水電解セルを複数積層させた水電解セルスタック。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、高触媒活性と長寿命とが両立されたアノード触媒、並びに、これを含む水電解セル及び水電解セルスタックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2は、各実施例及び各比較例におけるイオン半径差(r
A-r
Ca)と電流密度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら制限されず、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
【0015】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値に置き換えられてもよく、ある数値範囲で記載された下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値に置き換えられてもよい。本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えられてもよい。
【0017】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0018】
[アノード触媒]
本開示のアノード触媒は、Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに4価の金属イオン及びイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物を含み、上記Aサイトイオンに含まれる上記アルカリ土類金属イオンが、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとの組み合わせ、カルシウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせ、又は、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせを含み、上記Bサイトイオンに含まれる上記4価の金属イオンが、ジルコニウムイオン及びチタンイオンから選ばれる少なくとも1種を含み、上記Bサイトイオンに含まれる上記イリジウムイオンのモル濃度が、35mol%以上であり、上記Aサイトイオンのイオン半径をrA、並びに、上記Aサイトイオンに含まれる、上記アルカリ土類金属イオンのイオン半径をri、上記アルカリ土類金属イオンのモル濃度をmi、及び、上記カルシウムイオンのイオン半径をrcaとした場合、下記の式で定義される上記Aサイトイオンと上記カルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)が、0.0175Å~0.2616Åである。
本開示のアノード触媒は、高触媒活性と長寿命とが両立されたアノード触媒である。ここで、「長寿命」とは、高い触媒活性が長期間損なわれ難いことを意味する。
【0019】
【0020】
本開示のアノード触媒は、ペロブスカイト型構造を有する酸化物を含み、当該ペロブスカイト型構造を有する酸化物のBサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度が35mol%以上と比較的高いことで、高い触媒活性を有する傾向にある。また、本開示のアノード触媒は、ペロブスカイト型構造が安定な結晶構造であることで、高い触媒活性が長期間損なわれ難い傾向にある。さらに、本開示のアノード触媒は、当該ペロブスカイト型構造を有する酸化物のAサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンが、特定の種類、組み合わせ及び混合比であり、Aサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差が、前述のような数値範囲であることで、より高い触媒活性を有し、かつ、その高い触媒活性が長期間損なわれ難い傾向にある。
本開示のアノード触媒によれば、水電解セルの電流密度を高め、かつ、高めた電流密度を長期間良好に保持させることが可能となる。
【0021】
<ペロブスカイト型構造を有する酸化物>
本開示のアノード触媒は、ペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む。
ペロブスカイト型構造を有する酸化物は、一般的にABO3の化学式で表される。
ペロブスカイト型構造の酸化物には、酸素不定性を有するものもある。ペロブスカイト型構造の酸化物の酸素量は、3より欠損していてもよく、過剰となっていてもよい。Aサイトイオン及びBサイトイオンは、それぞれ別の元素に部分的に置換されていてもよい。
【0022】
ペロブスカイト型構造のAサイトイオンは、アルカリ土類金属イオンを含み、アルカリ土類金属イオンは、カルシウム(Ca)イオンとストロンチウム(Sr)イオンとの組み合わせ、カルシウムイオンとバリウム(Ba)イオンとの組み合わせ、又は、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせを含む。
ペロブスカイト型構造のAサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンは、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとの組み合わせ、又は、カルシウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせを含むことが好ましく、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとの組み合わせ、又は、カルシウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせであることがより好ましい。
【0023】
ペロブスカイト型構造のAサイトイオンは、アルカリ土類金属イオン以外の金属イオンを含んでいてもよい。当該金属イオンとしては、例えば、3価の金属イオンが挙げられる。3価の金属イオンとしては、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉄(Fe)等の金属のイオンが挙げられる。
本開示の効果をより良好に奏する観点からは、ペロブスカイト型構造のAサイトイオンは、アルカリ土類金属イオン以外の金属イオンを含まないことが好ましい。
【0024】
ペロブスカイト型構造のAサイトイオンは、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン及びバリウムイオン以外のアルカリ土類金属イオンを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
ペロブスカイト型構造のAサイトイオンが、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン及びバリウムイオン以外のアルカリ土類金属イオンを含む場合、当該アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、ベリリウム(Be)イオン及びマグネシウム(Mg)イオンが挙げられる。
【0025】
ペロブスカイト型構造のBサイトイオンは、4価の金属イオン及びイリジウム(Ir)イオンを含み、4価の金属イオンは、ジルコニウムイオン及びチタンイオンから選ばれる少なくとも1種を含む。
ペロブスカイト型構造のBサイトイオンは、ジルコニウム(Zr)イオン及びイリジウムイオンを含んでいてもよく、チタン(Ti)イオン及びイリジウムイオンを含んでいてもよく、ジルコニウムイオン、チタンイオン及びイリジウムイオンを含んでいてもよい。
ジルコニウムイオン及びチタンイオンは、いずれも安定な元素であり、アノード触媒の長寿命化に寄与する。4価の金属イオンは、ジルコニウムイオン及びチタンイオンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ジルコニウムイオン又はチタンイオンであることがより好ましい。
【0026】
ペロブスカイト型構造のBサイトイオンは、ジルコニウムイオン及びチタンイオン以外の4価の金属イオンを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0027】
ペロブスカイト型構造のBサイトイオンは、4価の金属イオン及びイリジウムイオン以外の金属イオンを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
ペロブスカイト型構造のBサイトイオンが、4価の金属イオン及びイリジウムイオン以外の金属イオンを含む場合、当該金属イオンとしては、Bサイトに位置することが可能なイオンであれば、特に限定されず、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)等の金属のイオンが挙げられる。
【0028】
ペロブスカイト型構造のBサイトイオンに含まれる4価の金属イオンのモル濃度(当該金属イオンが2種以上の場合は、2種以上の金属イオンの合計モル濃度)は、1mol%~65mol%であってもよく、20mol%~65mol%であってもよく、33mol%~65mol%であってもよい。
【0029】
ペロブスカイト型構造のBサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度は、アノード触媒の触媒活性の観点から、35mol%以上である。ペロブスカイト型構造のBサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度の上限は、例えば、アノード触媒の長寿命化の観点から、99mol%以下であることが好ましく、80mol%以下であることがより好ましく、67mol%以下であることが更に好ましい。
ペロブスカイト型構造のBサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度は、ある態様では、35mol%~99mol%であってもよく、35mol%~80mol%であってもよく、35mol%~67mol%であってもよい。
【0030】
ペロブスカイト型構造を有する酸化物に含まれる金属イオン及びその濃度は、例えば、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析、エネルギー分散型X線分光分析、電子線マイクロアナライザ、X線光電子分光分析等の分析方法により特定することができる。
【0031】
本開示のアノード触媒に含まれるペロブスカイト型構造を有する酸化物では、以下の式で定義されるAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)が、0.0175Å~0.2616Åである。
【0032】
【0033】
前述の式中、rAは、Aサイトイオンのイオン半径であり、rCaは、カルシウムイオンのイオン半径であり、riは、Aサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンのイオン半径であり、miは、Aサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンのモル濃度である。
【0034】
rAは、Aサイトイオンのモル基準での平均イオン半径(Å)を意味する。
rCaは、1.34Åである。
前述の式の右辺は、アルカリ土類金属イオンiの種類ごとに、アルカリ土類金属イオンのイオン半径(Å)に当該アルカリ土類金属イオンのモル濃度を乗じた値の合計から、カルシウムイオンのイオン半径(Å)の値を引くことで算出される。
本開示において、「イオン半径」の値は、文献「R. D. Shannon, Revised effective ionic radii and systematic studies of interatomic distances in halides and chalcogenides, Acta Crystallogr. Sect. A 32, 751 (1976).」に記載の値を採用する。
【0035】
前述の式で定義されるAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、アノード触媒の触媒活性の観点から、0.0175Å~0.2616Åであり、0.0474Å~0.2316Åであることが好ましく、0.0668Å~0.2122Åであることがより好ましい。
【0036】
例えば、Aサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンがカルシウムイオンとストロンチウムイオンとの組み合わせである場合、Aサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、0.0091Å~0.1113Åであることが好ましく、0.0258Å~0.0947Åであることがより好ましく、0.0385Å~0.0820Åであることが更に好ましい。
例えば、Aサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンがカルシウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせである場合、Aサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、0.0176Å~0.2639Åであることが好ましく、0.0478Å~0.2336Åであることがより好ましく、0.0674Å~0.2140Åであることが更に好ましい。
【0037】
本開示のアノード触媒は、本開示における前述のペロブスカイト型構造を有する酸化物以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、ペロブスカイト型構造を有する酸化物以外の触媒活性を有する成分、ペロブスカイト型構造を有する酸化物の生成に用いた原料の未反応成分、副反応成分等の成分が挙げられる。
【0038】
本開示のアノード触媒中の本開示における前述のペロブスカイト型構造を有する酸化物の含有率は、特に限定されないが、例えば、アノード触媒の全量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることが更に好ましい。
【0039】
本開示のアノード触媒中の本開示における前述のペロブスカイト型構造を有する酸化物の含有率は、X線回折法により測定できる。
本開示のアノード触媒中の本開示における前述のペロブスカイト型構造を有する酸化物の含有率が、アノード触媒の全量に対して50質量%以上であることは、本開示における前述のペロブスカイト型構造を有する酸化物が、本開示のアノード触媒の主相として含まれていることを意味する。
【0040】
アノード触媒は、担体に担持された触媒を含んでいてもよい。
担体としては、例えば、酸化チタン及び酸化スズが挙げられる。
触媒の形態は、粒子であってもよい。
【0041】
アノード触媒の一次粒子径は、特に限定されないが、例えば、1nm~10μmであることが好ましく、2nm~1μmであることがより好ましく、5nm~100nmであることが更に好ましい。
アノード触媒の一次粒子径が1nm以上であると、接触面積を増加させるために必要なアイオノマーの混合比が大きくなりすぎず、アノード触媒層内部での電子伝導パスを多く確保できるため、高抵抗化し難くなる傾向にある。
アノード触媒の一次粒子径が10μm以下であると、アイオノマーとの接触面積の低下が抑制されるため、高抵抗化し難くなる傾向にある。
アノード触媒の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いることにより測定できる。
【0042】
Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに4価の金属イオン及びイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物であって、Aサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンが、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとの組み合わせ、カルシウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせ、又は、カルシウムイオンとストロンチウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせを含み、Bサイトイオンに含まれる上記4価の金属イオンが、ジルコニウムイオン及びチタンイオンから選ばれる少なくとも1種を含む酸化物については、従来公知の方法により作製できる。
当該ペロブスカイト型構造を有する酸化物は、例えば、従来公知の固相法、液相法等の方法により作製可能である。
固相法としては、例えば、固体原料の直接反応による方法が挙げられる。
液相法としては、例えば、ペッチーニ法、錯体重合法及び水熱合成法が挙げられる。
【0043】
[水電解セル]
本開示の水電解セルは、アノードガス拡散層と、前述の本開示のアノード触媒と、電解質膜と、カソード触媒と、カソードガス拡散層と、セパレータとを備える。
【0044】
本開示のアノード触媒は、前述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
アノードガス拡散層、電解質膜、カソード触媒、カソードガス拡散層及びセパレータには、従来公知の水電解セルにて使用される部材を適用してもよい。
【0045】
例えば、アノードガス拡散層及びカソードガス拡散層には、それぞれ独立に、多孔質体、粉末焼結体、繊維焼結体、金属メッシュ、フェルト等の、層内における流体の流通を可能とする物質を用いることができる。
【0046】
アノードガス拡散層は、酸化による高抵抗化を抑制する観点から、耐食性の導電性材料(所謂、コーティング材)でコーティングされていてもよい。コーティング材としては、例えば、白金、金、銀、窒化チタン、炭化チタン及び炭窒化チタンが挙げられる。
【0047】
電解質膜は、水電解に使用される公知の電解質膜(イオン交換膜であってもよい)から選択されてもよい。電解質膜は、プロトン(H+)を選択的に透過する性質を有することが好ましい。
電解質膜としては、例えば、高分子電解質膜(PEM)が挙げられる。高分子電解質膜としては、例えば、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン膜が挙げられる。スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン膜としては、例えば、ナフィオン膜が挙げられる。
【0048】
電解質膜は、イオン性基を有することによりプロトン伝導性を有するポリマーである。電解質膜は、例えば、フッ素系高分子電解質であってもよく、炭化水素系高分子電解質であってもよい。
【0049】
ここで、フッ素系高分子電解質とは、ポリマー中のアルキル基及び/又はアルキレン基における水素の大部分又は全部がフッ素原子に置換されたものを意味する。
イオン性基を有するフッ素系高分子電解質の代表例としては、“ナフィオン”(登録商標)〔ケマーズ(株)製〕、“アクイビオン”(登録商標)〔ソルベイ社製〕、“フレミオン”(登録商標)〔AGC(株)製〕、“アシプレックス”(登録商標)〔旭化成(株)製〕等の市販品が挙げられる。
【0050】
炭化水素系電解質としては、主鎖に芳香環を有する芳香族炭化水素系ポリマーが好ましい。ここで、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン骨格等の炭素原子及び水素原子のみからなる炭化水素系芳香環だけでなく、ピリジン環、イミダゾール環、チオール環等のヘテロ環などを含んでいてもよい。また、芳香環ユニットと共に一部脂肪族系ユニットがポリマーを構成していてもよい。
【0051】
芳香族炭化水素系ポリマーの具体例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンオキシド、ポリエーテルホスフィンオキシド、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及び、ポリイミドスルホンからなる群より選ばれる構造を芳香環とともに主鎖に有するポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合等を有している構造の総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホン等を含む。芳香族炭化水素系ポリマーは、これらの構造を複数有していてもよい。
芳香族炭化水素系ポリマーとしては、ポリエーテルケトン骨格を有するポリマー、すなわち、ポリエーテルケトン系ポリマーが特に好ましい。
【0052】
電解質膜は、補強材と組み合わせてもよい。補強材を用いることで、例えば、ホットプレス法により電解質膜と電極とを接合する際に、膜が破損することによるガスのリーク、電極内の短絡等が生じ難くなる。
【0053】
補強材の具体例としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、FEP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素系高分子、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等の熱可塑性樹脂、PI(ポリイミド)、PSF(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPSS(ポリフェニレンスルフィドスルホン)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PEK(ポリエーテルケトン)、PBI(ポリベンズイミダゾール)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPP(ポリパラフェニレン)、PPQ(ポリフェニルキノキサリン)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)等のエンジニアリングプラスチックなどからなる均質な多孔質膜が挙げられる。
【0054】
カソード触媒は、水電解に使用される公知の触媒から選択されてもよい。触媒の成分としては、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム及びこれらの合金、並びに、これらの酸化物が挙げられる。
カソード触媒は、担体に担持された触媒を含んでいてもよい。担体としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。触媒の形態は、粒子であってもよい。
【0055】
水電解セルは、アノード触媒(好ましくはアノード触媒粒子)及びアイオノマーを含むアノード触媒層を備えていてもよく、カソード触媒(好ましくはカソード触媒粒子)及びアイオノマーを含むカソード触媒層を備えていてもよい。これにより、触媒層内での触媒とアイオノマーとの接触面積が増えるため、反応が促進される傾向にある。
【0056】
セパレータとしては、例えば、アノードガス拡散層側に配置されるアノードセパレータ、及び、カソードガス拡散層側に配置されるカソードセパレータが挙げられる。
セパレータの材質としては、例えば、チタン、ステンレス及びカーボンが挙げられる。
アノードセパレータは、アノード側に発生する酸素による酸化抑制の観点から、チタンを含むことが好ましい。
アノードセパレータは、酸化による高抵抗化を抑制する観点から、耐食性の導電性材料(所謂、コーティング材)でコーティングされていてもよい。コーティング材としては、例えば、白金、金、銀、窒化チタン、炭化チタン及び炭窒化チタンが挙げられる。
【0057】
水電解セルは、他の構成要素を更に含んでいてもよい。
他の構成要素は、公知の水電解セルの構成要素から選択されてもよい。
他の構成要素としては、例えば、ガスケット及びシール材が挙げられる。
【0058】
水電解セルにおける各構成要素の配置は、公知の水電解セルを参考に決定されてもよい。水電解セルにおいて、電解質膜は、アノード触媒とカソード触媒との間に位置することが好ましい。水電解セルにおいて、電解質膜、並びに、アノード触媒及びカソード触媒は、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層との間に位置することが好ましい。水電解セルにおいて、電解質膜、アノード触媒及びカソード触媒、並びに、アノードガス拡散層及びカソードガス拡散層は、2つのセパレータの間に位置することが好ましい。
【0059】
水電解セルの一例を
図1に示す。
図1は、水電解セルの概略断面図である。
図1に示すように、水電解セル100は、
図1の上側から順に、アノードセパレータ60と、アノードガス拡散層20と、アノード触媒12と、電解質膜11と、カソード触媒13と、カソードガス拡散層30と、カソードセパレータ70と、を備える。さらに、水電解セル100では、アノードセパレータ60と電解質膜11との間にガスケット40が配置されており、カソードセパレータ70と電解質膜11との間にガスケット50が配置されている。
【0060】
[水電解装置]
本開示の水電解装置は、前述の本開示の水電解セルを複数積層してなる水電解セルスタックであってもよく、当該水電解セルスタック又は本開示の水電解セルと、他の構成要素とを備える装置であってもよい。
【0061】
他の構成要素は、公知の水電解装置の構成要素から選択されてもよい。
他の構成要素としては、例えば、パワーコンディショナー、水ポンプ、イオン交換樹脂、熱交換器、除湿器等の補機類が挙げられる。
【実施例0062】
以下、実施例により本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例に示される事項は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されてもよい。
【0063】
<実施例1>
ペッチーニ法により、Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンであるカルシウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせを含み、かつ、Bサイトイオンにイリジウムイオンと4価の金属イオンであるジルコニウムイオンとを含む、ペロブスカイト型構造を有する酸化物を含有する触媒の粉末を作製した。
出発原料は、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、塩化酸化ジルコニウム八水和物(ZrOCl2・8H2O)、及び、ヘキサクロロイリジウム酸カリウム(K2IrCl6)とした。BaCO3を0.9869g、CaCO3を0.0556g、ZrOCl2・8H2Oを0.1917g、K2IrCl6を0.1920g、クエン酸一水和物(C6H8O7・H2O)を4.708g、硝酸(1.38)を2mL、及び、エチレングリコール(C2H6O2)を8mL秤量し、20mLの純水に投入して混合した後、室温(「20℃」;以下、同じ。)で15分以上撹拌して溶解した。得られた混合溶液を、ホットスターラーを使用し、75℃で3時間以上撹拌混合した。次いで、得られた混合溶液をジルコニア製のるつぼに移し、180℃で12時間、200℃で6時間、300℃で6時間、500℃で3時間、600℃で6時間、及び、700℃で6時間熱処理した。次いで、熱処理により得られた粉末を回収し、濃度1Mの塩酸水溶液50mLが入ったビーカーに投入した後、3時間以上撹拌し、未反応成分を取り除いた。次いで、未反応成分を取り除いた混合溶液を、吸引ろ過器を使用して水洗した後、オーブンにて60℃で乾燥させ、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。
また、得られた触媒の粉末について、電界放射型走査電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分析により触媒の構成元素を分析した。具体的には、触媒の粉末をカーボンテープ状に塗布し、倍率1万倍の画像範囲3箇所についてマッピング分析を実施し、各画像における構成元素の元素濃度の平均値として評価した。その結果、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのバリウムイオンのモル濃度(mBa)は90mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は10mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるBa0.9Ca0.1Zr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
Aサイトのカルシウムイオンのイオン半径(rca)は1.34Åであり、Aサイトのバリウムイオンのイオン半径(rBa)は1.61Åである。
Aサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)は1.5830Åであり、Aサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は0.2430Åであった。
【0064】
<実施例2>
実施例2では、BaCO3の使用量を0.8224g、及び、CaCO3の使用量を0.1390gに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのバリウムイオンのモル濃度(mBa)は75mol%であAサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は25mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるBa0.75Ca0.25Zr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0065】
<実施例3>
実施例3では、BaCO3の使用量を0.1097g、及び、CaCO3の使用量を0.5005gに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのバリウムイオンのモル濃度(mBa)は10mol%であAサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は90mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるBa0.1Ca0.9Zr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0066】
<実施例4>
実施例4では、出発原料をBaCO3からSrCO3に変更して使用量を0.7383gとし、かつ、CaCO3の使用量を0.0556gに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのストロンチウムイオンのモル濃度(mBa)は90mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は10mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるSr0.9Ca0.1Zr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
Aサイトのストロンチウムイオンのイオン半径(rSr)は1.44Åである。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0067】
<実施例5>
実施例5では、SrCO3の使用量を0.6153g、及び、CaCO3の使用量を0.1391gに変更したこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのストロンチウムイオンのモル濃度(mBa)は75mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は25mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるSr0.75Ca0.25Zr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0068】
<実施例6>
実施例6では、SrCO3の使用量を0.4102g、及び、CaCO3の使用量を0.2781gに変更したこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのストロンチウムイオンのモル濃度(mBa)は50mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は50mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるSr0.5Ca0.5Zr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0069】
<実施例7>
実施例7では、SrCO3の使用量を0.2051g、及び、CaCO3の使用量を0.4172gに変更したこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのストロンチウムイオンのモル濃度(mBa)は25mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は75mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるSr0.25Ca0.75Zr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0070】
<実施例8>
実施例8では、BaCO3の使用量を0.4174g、CaCO3の使用量を0.2743g、及び、ZrOCl2・8H2Oの使用量を00626gに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は67mol%であり、Aサイトのバリウムイオンのモル濃度(mBa)は25mol%であAサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は75mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるBa0.25Ca0.75Zr0.33Ir0.67O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0071】
<実施例9>
実施例9では、ペッチーニ法により、Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンであるカルシウムイオンとストロンチウムイオンとの組み合わせを含み、かつ、Bサイトイオンにイリジウムイオンと4価の金属イオンであるチタンイオンとを含む、ペロブスカイト型構造を有する酸化物を含有する触媒の粉末を作製した。
出発原料は、SrCO3、CaCO3、K2IrCl6、及びテトラブトキシチタン(C16H36O4Ti)とした。SrCO3を0.0474g、CaCO3を0.2095g、K2IrCl6を0.08g、及び、C6H8O7・H2Oを0.28g、及び、硝酸(1.38)を0.3mL秤量し、10mLの純水に投入して混合した後、室温で15分以上撹拌して溶解した。得られた混合溶液を溶液Aとした。C16H36O4Tiを0.1047g秤量し、4mLのC2H6O2に投入した後、15分以上撹拌して溶解した。得られた混合溶液を溶液Bとした。溶液Aを溶液Bに投入した後、ホットスターラーを使用し、70℃で3時間以上撹拌混合した。次いで、得られた混合溶液をジルコニア製のるつぼに移し、180℃で12時間、200℃で6時間、300℃で6時間、500℃で3時間、及び、600℃で6時間熱処理した。次いで、熱処理により得られた粉末を回収し、濃度1Mの塩酸水溶液50mLが入ったビーカーに投入した後、3時間以上撹拌し、未反応成分を取り除いた。次いで、未反応成分を取り除いた混合溶液を、吸引ろ過器を使用して水洗した後、オーブンにて60℃で乾燥させ、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は35mol%であり、Aサイトのストロンチウムイオンのモル濃度(mBa)は75mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は25mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるSr0.75Ca0.25Ti0.65Ir0.35O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0072】
<比較例1>
比較例1では、出発原料にBaCO3を使用せず、CaCO3の使用量を0.5562gに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は100mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるCaZr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0073】
<比較例2>
比較例2では、BaCO3の使用量を0.0110g、及び、CaCO3の使用量を0.5506gに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのバリウムイオンのモル濃度(mBa)は1mol%であAサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は99mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるBa0.01Ca0.99Zr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0074】
<比較例3>
比較例3では、SrCO3の使用量を0.0082g、及び、CaCO3の使用量を0.5506gに変更したこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は40mol%であり、Aサイトのストロンチウムイオンのモル濃度(mBa)は1mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は99mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるSr0.01Ca0.99Zr0.6Ir0.4O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0075】
<比較例4>
比較例4では、CaCO3の使用量を0.5560g、及び、ZrOCl2・8H2Oの使用量を0.5120gに変更したこと以外は、比較例1と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は20mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は100mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるCaZr0.8Ir0.2O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0076】
<比較例5>
比較例5では、BaCO3の使用量を0.8230g、CaCO3の使用量を0.1391g、及び、ZrOCl2・8H2Oの使用量を0.5120gに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は20mol%であり、Aサイトのバリウムイオンのモル濃度(mBa)は75mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は25mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるBa0.75Ca0.25Zr0.8Ir0.2O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0077】
<比較例6>
比較例6では、BaCO3の使用量を0.5487g、及び、CaCO3の使用量を0.2783gに変更したこと以外は、比較例5と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は20mol%であり、Aサイトのバリウムイオンのモル濃度(mBa)は50mol%であAサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は50mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるBa0.5Ca0.5Zr0.8Ir0.2O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0078】
<比較例7>
比較例7では、BaCO3の使用量を0.2744g、及び、CaCO3の使用量を0.4175gに変更したこと以外は、比較例5と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は20mol%であり、Aサイトのバリウムイオンのモル濃度(mBa)は25mol%であAサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は75mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるBa0.25Ca0.75Zr0.8Ir0.2O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0079】
<比較例8>
比較例8では、出発原料にCaCO3を使用せず、BaCO3の使用量を1.0973gに変更したこと以外は、比較例5と同様の操作を行い、触媒の粉末を得た。
得られた触媒の粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。また、実施例1と同様に、得られた触媒の粉末を分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は20mol%であり、Aサイトのカルシウムイオンのモル濃度(mCa)は0mol%であった。以上により、得られた触媒が、ペロブスカイト型構造を有する酸化物であるBaZr0.8Ir0.2O3を含有することを確認した。
実施例1と同様にして求めたAサイトイオンのイオン半径(モル基準での平均イオン半径、rA)及びAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)は、表1に示すとおりであった。
【0080】
<比較例9>
市販のルチル型構造を有する二酸化ルテニウム(RuO2)を使用した。
【0081】
[評価]
実施例1~9にて得たペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒の粉末、比較例1~8にて得たペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒の粉末、及び、比較例9のルチル型構造を有する酸化物を含む触媒の粉末を、それぞれアノード触媒として用い、以下の評価を行った。
【0082】
1.電流密度の測定
触媒の電流密度と電圧との関係は、回転ディスク電極法により室温にて評価した。
触媒粉末を10mg、5質量%ナフィオン分散溶液を0.1mL、2-プロパノールを0.4mL、及び、純水を1.5mL秤量してガラス容器に移し、ホモジナイザーを用いて30分以上混合した。得られた混合溶液を10μL取り分けて、直径5mmのグラッシーカーボン電極上に塗布した。乾燥後、回転ディスク電極装置によりセッティングし、作用極とした。対極には白金線を使用し、参照極には水溶媒系Ag/AgCl参照電極を使用し、これらと作用極とを、0.5M硫酸水溶液を投入したビーカー内に配置した。開回路で10分以上保持した後、室温において水素可逆電極(RHE)基準で0.05V~1.4Vの範囲、掃引速度100mV/秒、及び、回転速度1,600rpm(revolution per minute;以下、同じ。)の条件で、サイクリックボルタンメトリー測定を10サイクル実施し、触媒表面の電気化学的クリーニングを実施した。その後、RHE基準で1.2V~1.6Vの範囲、掃引速度5mV/秒、及び、回転速度1,600rpmの条件で、サイクリックボルタンメトリー測定を30サイクル実施し、初回サイクルと30サイクル目の1.6Vにおける電流を計測した。グラッシーカーボン電極の面積で電流値を割り算して電流密度(単位:mA/cm
2)とした。初回サイクルの電流密度及び30サイクル目の電流密度の測定結果を表1に示す。また、30サイクル目の電流密度とイオン半径差(r
A-r
Ca)との関係を
図2に示す。
【0083】
2.電流密度の維持率
上記にて測定した初回サイクルの電流密度及び30サイクル目の電流密度に基づいて、電流密度の維持率(単位:%)を求めた。結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
表1に示すように、実施例1~9では、比較例1~8と比較して電流密度の維持率が高かった。このことから、実施例1~9に示したペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒は、比較例1~8に示したペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒よりも長寿命であることがわかった。さらに、実施例1~9に示したペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒は、比較例1~8に示したペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒と比較して、30サイクル目の電流密度が高く、優れた触媒活性を維持していることがわかった。
比較例9では、電流密度が比較例1~8と比較しても大きく劣っていた。この理由としては、RHE基準で1.6Vという高電位では、ルチル型構造が不安定であるため、触媒成分が溶出して失活したことが原因として考えられる。
【0086】
図2は、各実施例及び各比較例におけるAサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(r
A-r
Ca)と電流密度との関係を示すグラフである。
図2に示すように、Aサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差を適正な範囲に調整することで、高い電流密度が得られる傾向にあることがわかった。
実施例1~9によれば、Aサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(r
A-r
Ca)と電流密度との関係は、近似式Y=-1559.1X
2+435.22X+22.9で表され、例えば、電流密度が30mA/cm
2以上40mA/cm
2未満となる閾値1では、イオン半径差(r
A-r
Ca)は0.0175Å~0.2616Åであり、電流密度が40mA/cm
2以上45mA/cm
2未満となる閾値2では、イオン半径差(r
A-r
Ca)は0.0474Å~0.2316Åであり、電流密度が45mA/cm
2以上となる閾値3では、イオン半径差(r
A-r
Ca)は0.0668Å~0.2122Åであった。イオン半径差(r
A-r
Ca)の数値範囲を徐々に狭めていくことで高い電流密度が得られることがわかった。イオン半径差を調整することでアノード触媒が高性能となる特長は、AサイトとBサイトに異なる価数の金属イオンを含むペロブスカイト型構造を有する触媒に特有のものである。
【0087】
なお、Aサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンがカルシウムイオンとストロンチウムイオンとの組み合わせである場合、Aサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)と電流密度との関係は、近似式Y=-7006X2+844.08X+22.9で表され、例えば、電流密度が30mA/cm2以上40mA/cm2未満となる閾値1では、イオン半径差(rA-rCa)は0.0091Å~0.1113Åであり、電流密度が40mA/cm2以上45mA/cm2未満となる閾値2では、イオン半径差(rA-rCa)は0.0258Å~0.0947Åであり、電流密度が45mA/cm2以上となる閾値3では、イオン半径差(rA-rCa)は0.0385Å~0.0820Åであった。
また、Aサイトイオンに含まれるアルカリ土類金属イオンがカルシウムイオンとバリウムイオンとの組み合わせである場合、Aサイトイオンとカルシウムイオンのイオン半径差(rA-rCa)と電流密度との関係は、近似式Y=-1532.2X2+431.2X+22.9で表され、例えば、電流密度が30mA/cm2以上40mA/cm2未満となる閾値1では、イオン半径差(rA-rCa)は0.0176Å~0.2639Åであり、電流密度が40mA/cm2以上45mA/cm2未満となる閾値2では、イオン半径差(rA-rCa)は0.0478Å~0.2336Åであり、電流密度が45mA/cm2以上となる閾値3では、イオン半径差(rA-rCa)は0.0674Å~0.2140Åであった。