(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014838
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】植物バイオマス糖化酵素組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 9/42 20060101AFI20240125BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20240125BHJP
C13K 1/02 20060101ALI20240125BHJP
C12P 7/06 20060101ALI20240125BHJP
C12P 19/00 20060101ALI20240125BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240125BHJP
C12N 9/88 20060101ALI20240125BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20240125BHJP
C12N 15/60 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
C12N9/42 ZNA
C12N9/24
C13K1/02
C12P7/06
C12P19/00
C12N1/15
C12N9/88
C12N15/56
C12N15/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118598
(22)【出願日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2022115849
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 孟宜
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 桜子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 望
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史員
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC03
4B064AF02
4B064AF03
4B064AF04
4B064CA21
4B064CB07
4B064CC24
4B064DA16
4B065AA58X
4B065AA58Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA29
4B065CA31
4B065CA55
(57)【要約】
【課題】植物バイオマスを糖化処理する際の低粘度化に有効な酵素製剤及びその製造法を提供する。
【解決手段】以下の(A)、(B)及び(C)を含む酵素組成物:
(A)セルラーゼ、
(B)ポリガラクツロナーゼ及びペクチンリアーゼを含むホモガラクツロナン分解酵素、
(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)、(B)及び(C)を含む酵素組成物:
(A)セルラーゼ、
(B)ポリガラクツロナーゼ、及びペクチンリアーゼを含むホモガラクツロナン分解酵素、
(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上。
【請求項2】
植物バイオマスを糖化するための、請求項1記載の酵素組成物。
【請求項3】
糖化処理された植物バイオマスの粘度を、セルラーゼのみを用いて糖化処理された場合に比べて低下させるものである、請求項2記載の酵素組成物。
【請求項4】
セルラーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり2.0~3.5Uである、請求項1~3のいずれか1項記載の酵素組成物。
【請求項5】
ポリガラクツロナーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり30U~1200である、請求項1~4のいずれか1項記載の酵素組成物。
【請求項6】
ペクチンリアーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり、1~27Uである、請求項1~5のいずれか1項記載の酵素組成物。
【請求項7】
アラビノフラノシダーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり0.1~50Uである、請求項1~6のいずれか1項記載の酵素組成物。
【請求項8】
ガラクタナーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり3~250Uである、請求項1~7のいずれか1項記載の酵素組成物。
【請求項9】
酵素組成物中の(B)ホモガラクツロナン分解酵素及び(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上((B)+(C))のタンパク質に含まれる割合が1質量%~50質量%である、請求項1~8のいずれか1項記載の酵素組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項記載の酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマスの糖化方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項記載の酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマスからの糖の製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項記載の酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマスからのエタノールの製造方法。
【請求項13】
植物バイオマスがペクチン含有植物バイオマスである、請求項10~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
植物バイオマスがキャッサバ又はその残渣である、請求項10~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項記載の酵素組成物と接触した植物バイオマスの粘度を、セルラーゼのみを用いて接触場合に比べて低下させるものである、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子、及び(c)アラビノフラノシダーゼ遺伝子及びガラクタナーゼ遺伝子から選択される1種以上の遺伝子を導入した組換え糸状菌。
【請求項17】
請求項16記載の組換え糸状菌を培養することを含む、請求項1~9のいずれか1項記載の酵素組成物の製造方法。
【請求項18】
(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子がPgaB遺伝子であり、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子がPelD遺伝子であり、(c)Abf遺伝子又はGal遺伝子である、請求項16記載の組換え糸状菌。
【請求項19】
(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子がPgaB遺伝子であり、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子がPelD遺伝子であり、(c)Abf遺伝子又はGal遺伝子である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
請求項1~2,4~9のいずれか1項に記載の酵素組成物を有効成分とする植物バイオマス粘度低下剤。
【請求項21】
請求項1~2,4~9のいずれか1項に記載の酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマス粘度低下方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物バイオマスの糖化酵素組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能資源の植物バイオマス原料から糖や付加価値製品を製造するバイオリファイナリーの技術は持続可能な社会の構築方法として期待されている。バイオマス原料の中でも、デンプンやセルロースを含有する農産廃棄物は分解することで発酵原料として最もよく利用される糖であるグルコースが多く得られることから、これらのバイオマス原料から糖を回収する技術開発が多く実施されてきている。また、植物バイオマス原料中にはデンプンやセルロース以外にも、ヘミセルロースやペクチン、リグニンも含まれていることが知られている。
【0003】
ペクチンは、植物の一次細胞壁や細胞の間隙にある中葉に多く存在し、主にホモガラクツロナン(HG)、ラムノガラクツロナンI(RG-I)及びラムノガラクツロナンII(RG-II)の三つのドメインから構成される複合多糖類である。HGは6位のカルボキシル基の一部がメチルエステル化、2位及び3位の水酸基の一部がアセチル化修飾を受けたD-ガラクツロン酸がα-1,4-結合したポリガラクツロン酸を主とする重合体である。ラムノガラクツロナンI(RG-I)はラムノースとガラクツロン酸の2糖のくり返し構造を主鎖とし、ガラクトース残基が連なったガラクタン側鎖やアラビノース残基が連なったアラビナン側鎖やアラビノース残基とガラクトース残基から構成したアラビノガラクタン側鎖をもつ重合体である。ラムノガラクツロナンII(RG-II)はHGと同じくα-1,4-結合したポリガラクツロン酸を主鎖とし、ガラクツロン酸のO-2位又はO-3位に、L-ラムノース、D-又はL-ガラクトース、L-アラビノース、D-ガラクツロン酸、D-グルクロン酸、D-アピオース、L-フコース、2-O-メチル-L-フコース、2-O-メチル-D-キシロース、アセリン酸(aceric acid,3-O-カルボキシ-5-デオキシ-L-キシロース)、2-ケト-3-デオキシ-D-マンノ-2-オクツロン酸、3-デオキシ-D-リクソ-2-ヘプツロン酸など、約30種類の糖から構成された側鎖が結合した、ペクチンの中で最も複雑な構造を持つドメインである。
【0004】
ペクチンの構成成分にはグルコースは含まれておらず、植物残渣から回収可能なグルコース量には影響しないと考えられるが、ペクチンの高粘性は植物バイオマスを分解して得られる糖液からの糖の回収効率と糖製造プロセスに大きな課題となる。
酵素を用いたペクチン含有植物バイオマスの糖化工程は、デンプンをグルコースに変換するアミラーゼ及びアミログルコシダーゼと、セルロースをグルコースに変換するセルラーゼが必要であるが、これに加えて糖液の粘度を低減させるために、セルラーゼにペクチナーゼを併用することが行われている。例えば、ポリガラクツロナーゼを添加すること(特許文献1)、アラビナンエンド-1、5-α-L-アラビノシダーゼを添加すること(特許文献2)等が知られている。
【0005】
しかしながら、その粘度低減効果は必ずしも十分なものではなく、また、市販されているペクチナーゼ製剤には粘度低減に関わる酵素以外にも多種の酵素が混入しており、結果的に必要量が多くなるため、コストの面で実用的ではない。
したがって、ペクチン含有植物バイオマスの糖化に当たり、低コストで糖液を低粘度化できる酵素製剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭59-37953号公報
【特許文献2】国際特許公開第2015/097017号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、植物バイオマスを糖化処理する際の低粘度化に有効な酵素製剤及びその製造法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、セルラーゼと特定のペクチナーゼを配合した酵素組成物が、ペクチン含有植物バイオマスを糖化する際のスラリーの高粘度化を効果的に抑制できること、また、当該酵素組成物は組換え糸状菌を用いて容易に製造できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の1)~8)に係るものである。
1)以下の(A)、(B)及び(C)を含む酵素組成物:
(A)セルラーゼ、
(B)ポリガラクツロナーゼ及びペクチンリアーゼを含むホモガラクツロナン分解酵素、
(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上。
2)1)の酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマスの糖化方法。
3)1)の酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマスからの糖の製造方法。
4)1)の酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマスからのエタノールの製造方法。
5)(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子、及び(c)アラビノフラノシダーゼ遺伝子及びガラクタナーゼ遺伝子から選択される1種以上の遺伝子を導入した組換え糸状菌。
6)5)の組換え糸状菌を培養することを含む、1)の酵素組成物の製造方法。
7)1)の酵素組成物を有効成分とする植物バイオマス粘度低下剤。
8)1)の酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマス粘度低下方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ペクチン質を含む植物バイオマスの糖化処理工程におけるスラリーの高粘度化を抑制し、植物バイオマスの効率的な糖化処理を可能とする糖化酵素組成物を安価に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.酵素組成物)
本発明の酵素組成物は、以下の(A)、(B)及び(C):
(A)セルラーゼ、
(B)ポリガラクツロナーゼ及びペクチンリアーゼを含むホモガラクツロナン分解酵素、
(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上、
を含むものである。
【0012】
(A)のセルラーゼは、セルロースを分解する酵素の総称であり、セルロースの分子内部から切断するエンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)、セルロースの還元末端又は非還元末端から分解し、セロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(セロビオヒドロラーゼ、EC 3.2.1.91)及びβ-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)を包含するが、本発明においては、これらの何れのクラスに属するものであって良く、複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0013】
斯かるセルラーゼの起源としては、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、イルぺクス・ラクトース(Irpex lacteus)、ヒュミクラ・インソレンス(Humicura insorens)、トリコデルマ・ヴィリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)等が知られているが、本発明においては、トリコデルマ属由来のセルラーゼを用いるのが好ましい。
【0014】
本発明において、セルラーゼは、上記セルラーゼ生産菌を常法に従って固形培養又は液体培養して得られた培養物、これを精製した濃縮物又はこれらを乾燥した粗酵素粉末等の態様であり得る。また、市販されているセルラーゼ製剤、例えば、Celluclast(NOVOZYME)、メイセラーゼ(Meiji Seikaファルマ株式会社)、スミチームC、スミチームAC(新日本化学工業株式会社)等を使用することもできる。
【0015】
セルラーゼは、バイオマスの糖化及びスラリーの高粘度化抑制の点から、例えば、酵素組成物のセルラーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり2.0U以上、好ましくは2.2U以上で、より好ましくは2.4U以上、かつ5.0U以下、好ましくは4.0U以下、より好ましくは3.6U以下であるか、又は2.0~5.0U、好ましくは2.2~4.0U、より好ましくは2.4~3.6Uとなるように配合される。
ここで、セルラーゼ活性は、ろ紙を基質としてセルラーゼをpH4.8、50℃で作用させ、酵素反応生成物である還元糖を比色法により定量して測定した値であり、酵素1単位(1U)は、1分間にグルコース相当の還元糖1μmolを生成する酵素量を意味する。
【0016】
(B)のホモガラクツロナン分解酵素は、ペクチン中のホモガラクツロナン(HG)ドメインを分解する酵素であり、本発明においては、少なくともポリガラクツロナーゼ及びペクチンリアーゼを含むものである。
ポリガラクツロナーゼは、ペクチン酸を構成するD-ガラクツロン酸のα-1,4-グリコシド結合を加水分解する酵素(EC3.2.1.15)である。
ペクチンリアーゼは、ペクチンを末端残基のC-4、C-5間に不飽和結合をもつオリゴ糖に変換する反応を触媒する酵素(EC4.2.2.10)である。
【0017】
本発明のポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼとしては、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属等に由来するものを使用することができる。当該ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼは、それぞれポリガラクツロナーゼ生産能又はペクチンリアーゼ生産能を有する微生物を常法に従って固形培養又は液体培養して得られた培養物、これを精製した濃縮物又はこれらを乾燥した粗酵素粉末等の態様であり得る。また、市販のポリガラクツロナーゼ製剤、ペクチンリアーゼ製剤、例えば、スミチームAP2(新日本化学工業株式会社)、スクラーゼN(三菱ケミカル)、ポリガラクツロナーゼ 溶液 from Aspergillus niger(Sigma、P4716)を用いることもできる。
【0018】
ポリガラクツロナーゼは、例えば、酵素組成物のポリガラクツロナーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり30U以上となるように配合されるのが好ましく、具体的には30U以上、好ましくは60U以上、より好ましくは90U以上、より好ましくは150U以上で、1200U以下、好ましくは600U以下、より好ましくは450U以下であるか、又は好ましくは30~1200U、より好ましくは60~600U、より好ましくは90~450U、より好ましくは150~450Uとなるように配合される。
ここで、ポリガラクツロナーゼ活性は、ポリガラクツロン酸溶液を基質としてポリガラクツロナーゼをpH4.0、50℃で作用させ、酵素反応生成物である還元糖を比色法により定量して測定した値であり、酵素1単位(1U)は、1分間にD-ガラクツロン酸相当の還元糖1μmolを生成する酵素量を意味する。
【0019】
ペクチンリアーゼは、例えば、酵素組成物のペクチンリアーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり1U以上となるように配合されるのが好ましく、具体的には1U以上、好ましくは1.5U以上、より好ましくは1.7U以上で、27U以下、好ましくは16U以下、より好ましくは10U以下であるか、又は好ましくは1~27U、より好ましくは1.5~16U、より好ましくは1.7~10Uとなるように配合される。
ここで、ペクチンリアーゼ活性は、ポリガラクツロン酸溶液を基質としてペクチンリアーゼをpH4.0、50℃で作用させ、酵素反応生成物である不飽和オリゴガラクツロニドを不飽和ジガラクツロニドのモル分子吸光係数4600M-1cm-1を用いて測定した値であり、酵素1単位(1U)は、1分間に不飽和オリゴガラクツロニド1μmolを生成する酵素量を意味する。
【0020】
(c)のアラビノフラノシダーゼは、アラビノース側鎖を非還元末端側から加水分解する酵素でありEC3.2.1.55に分類される。
また、ガラクタナーゼは、ガラクタンのグリコシド結合を加水分解するヒドロラーゼでありEC3.2.1.89、EC3.2.1.164、EC3.2.1.181に分類される。
ペクチン中のラムノガラクツロナンI(RG-I)は、ラムノースとガラクツロン酸の2糖のくり返し構造を主鎖とし、ガラクトース残基が連なったガラクタン側鎖やアラビノース残基が連なったアラビナン側鎖やアラビノース残基とガラクトース残基から構成したアラビノガラクタン側鎖をもつ重合体である。アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼは、ペクチン中のラムノガラクツロナンI(RG-I)構造の側鎖の分解に寄与する。斯かる意味から、本発明においては、当該アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼをペクチナーゼと称する場合もある。
【0021】
本発明のアラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼとしては、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属等に由来するものを使用することができる。当該アラビノフラノシダーゼ、ガラクタナーゼは、それぞれアラビノフラノシダーゼ生産能又はガラクタナーゼ生産能を有する微生物を常法に従って固形培養又は液体培養して得られた培養物、これを精製した濃縮物又はこれらを乾燥した粗酵素粉末等の態様であり得る。また、市販のアラビノフラノシダーゼ製剤、ガラクタナーゼ製剤、例えば、α-L-アラビノフラノシダーゼ(Aspergillus niger)(Megazyme、E-AFASE)、α-L-アラビノフラノシダーゼ(Aspergillus nidulans)(Megazyme、E-ABFAN)、エンドβ-1,4-ガラクタナーゼ(Aspergillus niger)(Megazyme、E-EGALN)、エンドβ-1,4-ガラクタナーゼ(Cellvibrio japonicus)(Megazyme、E-GALCJ)、エンドβ-1,4-ガラクタナーゼ(Clostridium thermocellum)(Megazyme、E-GALCT)を用いることもできる。
【0022】
アラビノフラノシダーゼは、例えば、酵素組成物のアラビノフラノシダーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり0.1U以上となるように配合されるのが好ましく、具体的には0.1U以上、好ましくは1U以上、より好ましくは3U以上で、50U以下、好ましくは25U以下、より好ましくは15U以下であるか、又は好ましくは0.1~50U、より好ましくは1~25U、より好ましくは3~15Uとなるように配合される。
ここで、アラビノフラノシダーゼ活性は、4-ニトロフェニル-α-L-アラビノフラノシド溶液を基質としてアラビノフラノシダーゼをpH4.0、50℃で作用させ、酵素反応生成物である4-ニトロフェノールを比色法により定量して測定した値であり、酵素1単位(1U)は、1分間に4-ニトロフェノール1μmolを生成する酵素量を意味する。
【0023】
ガラクタナーゼは、例えば、酵素組成物のガラクタナーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり3U以上となるように配合されるのが好ましく、具体的には3U以上、好ましくは5U以上、より好ましくは20U以上で、250U以下、好ましくは100U以下、より好ましくは80U以下であるか、又は好ましくは3~250U、より好ましくは5~100U、より好ましくは20~80Uとなるように配合される。
ここで、ガラクタナーゼ活性は、ガラクタン溶液を基質としてガラクタナーゼをpH4.0、50℃で作用させ、酵素反応生成物である還元糖を比色法により定量して測定した値であり、酵素1単位(1U)は、1分間にガラクトース相当の還元糖1μmolを生成する酵素量を意味する。
【0024】
本発明の酵素組成物は、上述した(A)、(B)及び(C)の3種類の酵素及び必要に応じてこの種の酵素製剤に従来より用いられている種々の担体、賦形剤、その他の添加剤を配合して製剤化することができる。剤型は、錠剤、散剤、顆粒剤、液剤等であり、常法により製剤化することができる。
【0025】
また、本発明の酵素組成物において、(B)ホモガラクツロナン分解酵素及び(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上((B)+(C))の含有割合は、酵素組成物中のタンパク質に含まれる割合が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、且つ好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。また、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~45質量%、より好ましくは10質量%~40質量%である。
なお、(B)ホモガラクツロナン分解酵素において、ポリガラクツロナーゼ及びペクチンリアーゼの使用比率は特に限定されず、任意の比率で配合できる。
【0026】
また、本発明の酵素組成物には、(A)~(C)以外の酵素、例えば、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、β-グルコシダーゼ、グルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等を適宜配合してもよい。
【0027】
本発明の酵素組成物は、植物バイオマス、好ましくはペクチン含有植物バイオマスを糖化するための酵素組成物(植物バイオマス糖化剤)であり、より詳細には、糖化処理された植物バイオマスの粘度を、セルラーゼのみを用いて糖化処理された場合に比べて低下させる酵素組成物である。
当該酵素組成物により処理されるバイオマスとしては、例えば、セルロース及びペクチン含有物質、例えば、キャッサバ、サツマイモ、ジャガイモ等の芋類又はこれらの残渣、コーン、コーンハル、リンゴの残渣、柑橘類の皮等が挙げられ、好ましくはキャッサバ又はキャッサバ残渣である。
【0028】
(2.組換え糸状菌による酵素組成物の製造)
本発明の酵素組成物は、(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子、及び(c)アラビノフラノシダーゼ遺伝子及びガラクタナーゼ遺伝子から選択される1種以上の遺伝子を導入した組換え糸状菌を培養することによっても製造することができる。
【0029】
(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子としては、例えば、PgaB遺伝子、PgaI遺伝子、PgaII遺伝子等が挙げられる。
斯かるポリガラクツロナーゼ遺伝子は、糸状菌に由来するものが好ましく、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属微生物(例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・アクリータス(Aspergillus aculeatus))、リゾプス(Rhizopus)属微生物(例えば、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス・デレマ(Rhizopus delemar))、タラロマイセス(Talaromyces)属微生物(例えば、タラロマイセス・セルロリティカス(Talaromyces cellulolyticus))、ペニシリウム(Penicillium)属微生物(例えば、ペニシリウム・ロッケフォーティ(Penicillium roqueforti))等に由来するものが好適に挙げられる。
このうち、アスペルギルス・ニガーのPgaB遺伝子、PgaI遺伝子、PgaII遺伝子がより好ましい。
【0030】
アスペルギルス・ニガーのPgaB遺伝子は、NCBIの公開データベースにアクセッション番号XM_025597756として登録されている(配列番号1)。
アスペルギルス・ニガーのPgaI遺伝子は、NCBIの公開データベースにアクセッション番号XM_025596768として登録されている(配列番号3)。
アスペルギルス・ニガーのPgaII遺伝子は、NCBIの公開データベースにアクセッション番号XM_025602343.1として登録されている(配列番号5)。
【0031】
(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子としては、例えば、PelD遺伝子、PelF遺伝子等が挙げられる。
斯かるペクチンリアーゼ遺伝子は、糸状菌に由来するものが好ましく、例えば、アスペルギルス属微生物(例えば、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・ジャポニクス、アスペルギルス・ルチュエンシス(Aspergillus ludhuensis)、アスペルギルス・アクリータス(Aspergillus aculeatus))、ペニシリウム属微生物(例えば、ペニシリウム・ディギタータム(Penicillium digitatum)、ペニシリウム・ソリタム(Penicillium solitum))、タラロマイセス属微生物(例えば、タラロマイセス・ルガロサス(Talaromyces rugulosus)、タラロマイセス・セルロリティカス))等に由来するものが挙げられる。
このうち、アスペルギルス・ニガーのPelD遺伝子、PelF遺伝子がより好ましい。
【0032】
上記アスペルギルス・ニガーのPelD遺伝子は、NCBIデータベースにアクセッション番号XM_025604039.1として登録されている(配列番号7)。
上記アスペルギルス・ニガーのPelF遺伝子は、NCBIデータベースにアクセッション番号:XM_001401024.2として登録されている(配列番号9)。
【0033】
(c)アラビノフラノシダーゼ遺伝子としては例えばAbf遺伝子、ガラクタナーゼ遺伝子としては例えばGal遺伝子が挙げられる。
斯かるアラビノフラノシダーゼ遺伝子及びガラクタナーゼ遺伝子は、糸状菌に由来するものが好ましく、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属微生物(例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・アクリータス(Aspergillus aculeatus))、リゾプス(Rhizopus)属微生物(例えば、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス・デレマ(Rhizopus delemar))、タラロマイセス(Talaromyces)属微生物(例えば、タラロマイセス・セルロリティカス(Talaromyces cellulolyticus))、トリコデルマ(Trichoderma)属微生物(例えば、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei))、ペニシリウム(Penicillium)属微生物(例えば、ペニシリウム・ロッケフォーティ(Penicillium roqueforti)、ぺニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum))等に由来するものが好適に挙げられる。
このうち、アスペルギルス・ニガーのAbf遺伝子、Gal遺伝子がより好ましい。
【0034】
上記アスペルギルス・ニガーのAbf遺伝子は、NCBIデータベースにアクセッション番号L29005.1(アミノ酸配列AAC41644.1)として登録されている(配列番号11)。上記アスペルギルス・ニガーのGal遺伝子は、NCBIデータベースにアクセッション番号AJ305303.1(アミノ酸配列CAC83735.1)として登録されている(配列番号13)。
【0035】
本発明の(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子、及び(c)アラビノフラノシダーゼ遺伝子及びガラクタナーゼ遺伝子から選択される1種以上の遺伝子を糸状菌に導入する手段としては、例えば、各酵素遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含有するベクター又はDNA断片を宿主糸状菌(親株)に導入することが挙げられる。
ここで、各酵素遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターは発現ベクターであり、好ましくは該ポリヌクレオチドを宿主糸状菌に導入することができ、かつ宿主内で該ポリヌクレオチドを発現することができる発現ベクターである。また、該ベクターは、好ましくは当該ポリヌクレオチド、及びこれと作動可能に連結された制御領域を含む。該ベクターは、プラスミド等の染色体外で自立増殖及び複製可能なベクターであってもよく、又は染色体内に組込まれるベクターであってもよい。
ここで、「作動可能な連結」とは、遺伝子と制御領域とが、該遺伝子が該制御領域の制御の下で発現し得るように連結されていることをいう。遺伝子と制御領域との「作動可能な連結」の手順は当業者に周知である。
【0036】
具体的なベクターの例としては、例えば、pBluescript II SK(-)(Stratagene)、pUC18/19、pUC118/119等のpUC系ベクター(タカラバイオ)、pET系ベクター(タカラバイオ)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア)、pCold系ベクター(タカラバイオ)、pHY300PLK(タカラバイオ)、pUB110(Mckenzie,T.et al.,1986,Plasmid 15(2):93-103)、pBR322(タカラバイオ)、pRS403(Stratagene)、pMW218/219(ニッポンジーン)、pRI909/910等のpRI系ベクター(タカラバイオ)、pBI系ベクター(クロンテック)、IN3系ベクター(インプランタイノベーションズ)、pPTR1/2(タカラバイオ)、pDJB2(D.J.Ballance et al.,Gene,36,321-331,1985)、pAB4-1(van Hartingsveldt W et al.,Mol Gen Genet,206,71-75,1987)、pLeu4(M.I.G.Roncero et al.,Gene,84,335-343,1989)、pPyr225(C.D.Skory et al.,Mol Genet Genomics,268,397-406,2002)、pFG1(Gruber,F.et al.,Curr Genet,18,447-451,1990)等が挙げられる。
【0037】
各酵素遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含有するDNA断片の例としては、例えば、PCR増幅DNA断片及び制限酵素切断DNA断片が挙げられる。好ましくは、該DNA断片は、本発明のポリヌクレオチド、及びこれと作動可能に連結された制御領域を含む発現カセットであり得る。
【0038】
上記ベクター又はDNA断片に含まれる制御領域は、該ベクター又はDNA断片が導入された宿主内で、本発明の各酵素遺伝子を発現させるための配列であり、例えばプロモーターやターミネーター等の発現調節領域、複製開始点等が挙げられる。該制御領域の種類は、ベクター又はDNA断片を導入する宿主細胞の種類に応じて適宜選択することができる。必要に応じて、該ベクター又はDNA断片はさらに、抗生物質耐性遺伝子、アミノ酸合成関連遺伝子等の選択マーカーを有していてもよい。
【0039】
好ましくは、上記ベクター又はDNA断片に含まれる制御領域は、(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子及び(c)アラビノフラノシダーゼ遺伝子及びガラクタナーゼ遺伝子から選択される1種以上の遺伝子の上流に作動可能に連結され、下流遺伝子を構成的に発現又は高発現させる機能を有する制御領域(いわゆる強制御領域)である。当該強制御領域の例としては、例えば、トリコデルマ・リーセイのcbh1プロモーター、cbh2プロモーター、egl1プロモーター、xyn1プロモーター、xyn2プロモーター、xyn3プロモーター等が挙げられる。
強制御領域のさらなる例としては、これらに限定されないが、rRNAオペロンの制御領域、リボソームタンパク質をコードする遺伝子の制御領域等が挙げられる。
【0040】
上記ベクター又はDNA断片に含まれる目的のポリヌクレオチド及び制御領域は、宿主の核に導入されてもよいが、宿主ゲノムに導入されてもよい。あるいは、上記ベクター又はDNA断片に含まれる目的のポリヌクレオチドを、宿主ゲノムに直接導入して、該ゲノム上の高発現プロモーターと作動可能に連結させてもよい。ポリヌクレオチドをゲノムに導入する手段としては、相同組換え法が挙げられる。
【0041】
上記宿主細胞へのベクター又はDNA断片の導入には、一般的な形質転換法、例えばエレクトロポレーション法、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト法、パーティクル・ガン法、アグロバクテリウム法等を用いることができる。
【0042】
目的のベクター又はDNA断片が導入された組換え糸状菌は、選択マーカーを利用して選択することができる。例えば、選択マーカーが抗生物質耐性遺伝子である場合、該抗生物質添加培地で細胞を培養することで、目的のベクター又はDNA断片が導入された形質転換細胞を選択することができる。また例えば、選択マーカーがアミノ酸合成関連遺伝子である場合、該アミノ酸要求性の糸状菌株に遺伝子導入した後、該アミノ酸要求性の有無を指標に、目的のベクター又はDNA断片が導入された糸状菌株を選択することができる。あるいは、PCR等によって組換え株のDNA配列を調べることで目的のベクター又はDNA断片の導入を確認することもできる。
【0043】
以上の手順で、糸状菌株に、本発明の(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子及び(c)アラビノフラノシダーゼ遺伝子及びガラクタナーゼ遺伝子から選択される1種以上の遺伝子が導入された組換え糸状菌を作製することができる。本発明の組換え糸状菌はセルラーゼ、ホモガラクツロナン分解酵素、並びにアラビノフラノシダーゼ及び/又はガラクタナーゼ生産能を有している。
【0044】
本発明において宿主(親株)として用いる糸状菌は、バイオマス糖化酵素としてセルラーゼを生産する菌であって、導入する(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子及び(c)アラビノフラノシダーゼ遺伝子及びガラクタナーゼ遺伝子から選択される1種以上の遺伝子と異なる属又は種の糸状菌であれば、限定されず、真菌門(Eumycota)及び卵菌門(Oomycota)に属する糸状菌が挙げられる。具体的には、上記糸状菌としては、トリコデルマ(Trichoderma)属、アルペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、フサリウム(Fusarium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、フミコーラ(Humicola)属、エメリセラ(Emericella)属、ハイポクレア(Hypocrea)属、アクレモニウム(Acremonium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、ミセリオフトラ(Myceliophthora)属、ピロマイセス(Piromyces)属、タラロマイセス(Talaromyces)属、サーモアスカス(Thermoascus)属、チエラビア(Thielavia)属等の糸状菌が挙げられるが、好ましくはトリコデルマ属の糸状菌である。
【0045】
前記トリコデルマ属の糸状菌としては、トリコデルマ・リーセイ、トリコデルマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・ハリジアウム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)及びトリコデルマ・ヴィリデ(Trichoderma viride)等が挙げられるが、好ましくはトリコデルマ・リーセイであり、より好ましくはトリコデルマ・リーセイPCD-10株(FERM P-8172)及びトリコデルマ・リーセイPC-3-7株(ATCC66589)である。
【0046】
親株である糸状菌は、野生型株であってもよく、当該野生型株から人工的に育種された株でもよく、そのゲノム中のヌクレオチド配列が置換、付加、欠失又は修飾された変異型株(変異体)又は突然変異体であってもよい。
【0047】
本発明の組換え糸状菌の好適な例としては、トリコデルマ・リーセイ PC-3-7株(ATCC66589)やその変異体に、アスペルギルス・ニガーのPgaB遺伝子、アスペルギルス・ニガーのPelD遺伝子、及びアスペルギルス・ニガーのAbf遺伝子又はアスペルギルス・ニガーのGal遺伝子を導入した組換え糸状菌が挙げられ、具体的には、後述する実施例に開示した株を挙げることができる。
【0048】
上記の組換え糸状菌をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養し、培養物中に酵素を生成、蓄積させ、当該培養物から当該酵素を採取することにより、(A)セルラーゼ、(B)ポリガラクツロナーゼ及びペクチンリアーゼを含むホモガラクツロナン分解酵素、(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上、を含む酵素組成物を製造することができる。
【0049】
ここで、「セルラーゼ誘導物質」としては、セルラーゼ生産性糸状菌のセルラーゼ生産を誘導する物質であれば制限はないが、例えばセルロース;ソホロース;並びにセロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース及びセロヘキサオース等のセロオリゴ糖から選ばれる化合物を挙げることができる。
【0050】
ここで、セルロースには、グルコースがβ-1,4-グルコシド結合により重合した重合体及びその誘導体が包含される。グルコースの重合度は特に限定されない。また、誘導体としては、カルボキシメチル化、アルデヒド化、又はエステル化等の誘導体が挙げられる。さらに、セルロースは、配糖体であるβグルコシド、リグニン及び/又はヘミセルロースとの複合体であるリグノセルロース、さらにペクチン等との複合体であってもよい。セルロースは、結晶性セルロースであってもよいし、非結晶性セルロースであってもよい。
【0051】
セルラーゼ誘導物質は、一括(バッチ法)、分割添加(フェドバッチ法)あるいは連続添加(フィード法)等の任意の方法で添加することができる。培地中に添加するセルラーゼ誘導物質の量は、本発明の糸状菌がセルラーゼ及びペクチナーゼ産生を誘導できる量であればよく、添加法によっても異なるが、培地に対して、総量で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、かつ好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。また、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.5~35質量%、より好ましくは1~30質量%である。
このうち、一括添加する場合の添加量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、かつ好ましくは16質量%以下、より好ましくは14質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。また、好ましくは0.1~16質量%、より好ましくは0.5~14質量%、より好ましくは1~12質量%である。
【0052】
本発明の方法で用いられる培地は、炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン等、本発明の糸状菌の増殖並びにセルラーゼ及びペクチナーゼの生産に必要な栄養素を含む限り、合成培地、天然培地のいずれでもよい。
【0053】
炭素源としては、本発明の組換え糸状菌が資化できる炭素源であればいずれでもよく、具体的には、上記したセルラーゼ誘導物質の他、グルコース、フラクトースのような糖質、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸のような有機酸類等を挙げることができる。これらは単独で、又は複数を組み合わせて使用することができる。炭素源としては、グルコース、フラクトースのような糖質が望ましく、グルコースがより好ましい。その際のグルコースの添加量は、培地に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上であり、かつ好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。また、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは2.5~5質量%である。また、培地中のセルラーゼ誘導物質とグルコースの量は、質量比で10:1~1:1であるのが好ましく、4:1~2:1であるのがより好ましい。
【0054】
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アミン等の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解物のような天然窒素源等をあげることができる。
【0055】
無機塩としては、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カリウム等をあげることができる。
【0056】
ビタミンとしては、ビオチンやチアミン等を挙げることができる。さらに必要に応じて本発明の組換え糸状菌が生育に要求する物質を添加することができる。
【0057】
培養は、好ましくは振とう培養や通気攪拌培養のような好気的条件で行う。培養温度は好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上であり、且つ好ましくは50℃以下、より好ましくは42℃以下、より好ましくは35℃以下である。また、好ましくは10~50℃、より好ましくは20~42℃、より好ましくは25~35℃である。
培養時のpHは3~9、好ましくは4~5である。培養時間は、10時間~10日間、好ましくは2~7日間である。
【0058】
培養終了後、培養物を回収し、必要に応じて超音波や加圧等による菌体破砕処理を行い、ろ過や遠心分離等によって固液分離した後、限外ろ過、塩析、透析、クロマトグラフィー等を適宜組み合わせることにより、(A)セルラーゼ、(B)ポリガラクツロナーゼ及びペクチンリアーゼを含むホモガラクツロナン分解酵素、(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上、を含む酵素組成物を取得できる。なお、分離精製の程度は特に限定されない。培養上清やその粗分離精製物自体を本発明の酵素組成物として利用することもできる。
【0059】
(3.植物バイオマスの糖化)
本発明の酵素組成物を用いることにより、植物バイオマスを分解、糖化し、単糖を製造することができる。具体的には、本発明の酵素組成物とバイオマスを水性媒体中に接触(共存)させ、撹拌又は振とうしながら加温することにより、植物バイオマスを糖化し、単糖を製造することができる。この場合において、糖化処理したスラリーの粘度を、セルラーゼのみを用いて糖化処理した場合に比べて、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上低下することが可能となる。すなわち、本発明の酵素組成物によれば、ペクチン質を多く含むキャッサバ等の植物バイオマスの糖化処理において、高粘度化を抑制し、糖化効率を高めることができる。したがって、本発明の酵素組成物は、植物バイオマス粘度低下剤にもなり得、植物バイオマスの粘度低下のために使用することができる。すなわち、本発明の酵素組成物を植物バイオマスと接触させることにより、植物バイオマスの粘度低下を図ることができる。
なお、粘度としては、例えば、B型粘度計で、固形分濃度10-20質量%及び50℃にて測定される粘度が挙げられる。
【0060】
植物バイオマスの糖化において、反応液のpH及び温度は、セルラーゼ及びペクチナーゼが失活しない範囲内であればよく、一般的に、常圧で反応を行う場合、温度は5~95℃、pHは1~11の範囲で行われる。
植物バイオマスの糖化の工程は、バッチ式で行っても、連続式で行ってもよい。
【0061】
(4.エタノールの製造)
植物バイオマスを糖化し得られた糖液に対して、エタノール発酵微生物を添加し、発酵させることによってエタノールを製造することができる。エタノール発酵微生物としては、例えばサッカロミセス属(Saccharomyces)、クリュイベロマイセス属(Kluyveromyces)の酵母や、ザイモモナス属(Zymomonas)の細菌などが知られているが、これらに限定されるものではない。発酵は、例えば、24~96時間、温度は、26~34℃、pHは、pH3~6、好ましくはpH4~5前後で実施される。また、糖化工程と発酵工程は別々に実施されてもよく、同時に実施する並行複発酵(SSF)であってもよい。SSFは、酵母と酵素を一緒に添加することで実施され、例えば、24~96時間、温度は、26~34℃、pHは、pH3~6、好ましくはpH4~5前後で実施される。SSFを実施する際、50℃を超える温度での前糖化ステップを発酵の直前に実施しても良い。糖化、発酵を実施する方法に関するさらなる詳細について当業者は周知である。
【0062】
本発明はまた、例示的実施形態として以下を包含する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
<1>以下の(A)、(B)及び(C)を含む酵素組成物:
(A)セルラーゼ、
(B)ポリガラクツロナーゼ及びペクチンリアーゼを含むホモガラクツロナン分解酵素、
(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上。
<2>植物バイオマスを糖化するための、<1>の酵素組成物。
<3>糖化処理された植物バイオマスの粘度を、セルラーゼのみを用いて糖化処理された場合に比べて低下させるものである、<2>の酵素組成物。
<4>植物バイオマスのスラリー粘度を、セルラーゼのみを用いて糖化処理した場合に比べて、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上低下させる、<3>の酵素組成物。
<5>セルラーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり2.0U以上、好ましくは2.2U以上で、より好ましくは2.4U以上、かつ5.0U以下、好ましくは4.0U以下、より好ましくは3.6U以下であるか、又は2.0~5.0U、好ましくは2.2~4.0U、より好ましくは2.4~3.6Uである、<1>~<4>のいずれかの酵素組成物。
<6>ポリガラクツロナーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり30U以上、好ましくは60U以上、より好ましくは90U以上、より好ましくは150U以上で、1200U以下、好ましくは600U以下、より好ましくは450U以下であるか、または、好ましくは30~1200U、より好ましくは60~600U、より好ましくは90~450U、より好ましくは150~450Uである、<1>~<5>のいずれかの酵素組成物。
<7>ペクチンリアーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり1U以上、好ましくは1.5U以上、より好ましくは1.7U以上で、27U以下、好ましくは16U以下、より好ましくは10U以下であるか、または、好ましくは1~27U、より好ましくは1.5~16U、より好ましくは1.7~10Uである、<1>~<6>のいずれかの酵素組成物。
<8>アラビノフラノシダーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり0.1U以上、好ましくは1U以上、より好ましくは3U以上で、50U以下、好ましくは25U以下、より好ましくは15U以下であるか、または、好ましくは0.1~50U、より好ましくは1~25U、より好ましくは3~15Uである、<1>~<7>のいずれかの酵素組成物。
<9>ガラクタナーゼ活性が、酵素組成物中のタンパク質1mgあたり3U以上、好ましくは5U以上、より好ましくは20U以上で、250U以下、好ましくは100U以下、より好ましくは80U以下であるか、または、好ましくは3~250U、より好ましくは5~100U、より好ましくは20~80Uである、<1>~<8>のいずれかの酵素組成物。
<10>酵素組成物中の(B)ホモガラクツロナン分解酵素及び(C)アラビノフラノシダーゼ及びガラクタナーゼから選択される1種以上((B)+(C))のタンパク質あたりの含有比率が好ましくは1以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、且つ好ましくは50以下、より好ましくは45以下、より好ましくは40以下であるか、または、好ましくは1~50、より好ましくは5~45、より好ましくは10~40である、<1>~<9>のいずれかの酵素組成物。
<11><1>~<10>のいずれかの酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマスの糖化方法。
<12><1>~<10>のいずれかの酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマスからの糖の製造方法。
<13><1>~<10>のいずれかの酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマスからのエタノールの製造方法。
<14>植物バイオマスがペクチン含有植物バイオマスである、<11>~<13>のいずれかの方法。
<15>植物バイオマスがキャッサバ又はその残渣である、<11>~<13>のいずれかの方法。
<16><1>~<10>のいずれかの酵素組成物と接触した植物バイオマスの粘度を、セルラーゼのみを用いて接触場合に比べて低下させるものである、<14>又は<15>の方法。
<17>(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子、及び(c)アラビノフラノシダーゼ遺伝子及びガラクタナーゼ遺伝子から選択される1種以上の遺伝子を導入した組換え糸状菌。
<18><17>の組換え糸状菌を培養することを含む、<1>~<10>のいずれかの酵素組成物の製造方法。
<19>(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子がPgaB遺伝子であり、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子がPelD遺伝子であり、(c)Abf遺伝子又はGal遺伝子である、<17>の組換え糸状菌。
<20>(b1)ポリガラクツロナーゼ遺伝子がPgaB遺伝子であり、(b2)ペクチンリアーゼ遺伝子がPelD遺伝子であり、(c)Abf遺伝子又はGal遺伝子である、<18>の方法。
<21><1>~<2>,<5>~<10>のいずれかの酵素組成物を有効成分とする植物バイオマス粘度低下剤。
<22><1>~<2>,<5>~<10>のいずれかの酵素組成物を植物バイオマスと接触させる工程を含む、植物バイオマス粘度低下方法。
<23><1>~<2>,<5>~<10>のいずれかの酵素組成物の、植物バイオマス粘度低下のための使用。
【実施例0063】
<実施例1 セルラーゼの調製>
セルラーゼは、トリコデルマ・リーセイE1AB1株(Enzyme and Microbial Technology Volume 82, January 2016, Pages 89-95)を培養することで得た。
培養は以下のように行った。酵素生産培地(3% KCフロック W-400G(日本製紙)、0.14% (NH4)2SO4、1.28% クエン酸水素二アンモニウム、0.2% KH2PO4、0.03% Cacl2・2H2O、0.03% MgSO4・7H2O、0.1% Bacto Peptone、0.05% Bacto Yeast Extract、0.1% Tween 80、0.1% Trace element、50mM 酒石酸バッファー(pH4.0);%はいずれもw/v%)に、菌株の胞子を2×105個/mLとなるよう植菌し、28℃にて5日間振とう培養を行った。
Trace elementの組成は以下のとおりである:6mg H3BO3、26mg (NH4)6Mo7O24・4H2O、100mg FeCl3・6H2O、40mg CuSO4・5H2O、8mg MnCl2・4H2O、200mg ZnCl2を蒸留水にて100mLにメスアップ。得られた培養物を遠心分離した後に上清をフィルターろ過したものをセルラーゼとして以下の検討に使用した。
【0064】
<実施例2 ペクチナーゼの調整>
(1)Aspergillus niger NBRC105649株のcDNA合成
A.niger NBRC105649株は、製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターより購入した。NBRC105649株を、ペクチン培地(1% Pectin, from citrus(和光純薬)、0.14% (NH4)2SO4、0.2% KH2PO4、0.03% Cacl2・2H2O、0.03% MgSO4・7H2O、0.1% Bacto Peptone、0.05% Bacto Yeast Extract、0.1% Trace element、50mM 酒石酸バッファー(pH4.0)に植菌した。28℃にて3日間振とう培養を行い、培養した菌体をMiracloth(ミリポア)を用いて回収後、液体窒素にて凍結し、マルチビーズショッカー(安井器械)を用いて破砕した。この際、粉砕媒体にはメタルコーンを使用し1700rpmにて30秒破砕を行った。破砕した菌体からはRNeasy Mini Kit(キアゲン)を用いプロトコルに従ってRNAを抽出した。その後、RNA溶液はSuperScript III First-Strand Synthesis System for RT-PCR(Thermo Fisher Scientific)に供することで、NBRC105649株のcDNAを合成した。
【0065】
(2)Pga、Pel、Abf、Gal、Bga1発現用ベクターの作製
ピキア発現ベクターpD912(ATUM社)を鋳型とし、表1に示したFwプライマー1(配列番号15)とRvプライマー1(配列番号16)を用いてPCRすることで断片(A)を増幅した。NBRC105649株のcDNAを鋳型として表1に示したFwプライマー2(配列番号17)とRvプライマー2(配列番号18)を用いてPCRすることで増幅された断片(B)を増幅した。得られたDNA断片(A)及び(B)はIn-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)のプロトコルに従って処理し、連結されたプラスミドpD912-Pgaを構築した。
NBRC105649株のcDNAを鋳型として表1に示したFwプライマー3(配列番号19)とRvプライマー3(配列番号20)を用いてPCRすることで増幅された断片(C)を増幅した。得られたDNA断片(A)及び(C)はIn-Fusion HD Cloning Kitのプロトコルに従って処理し、連結されたプラスミドpD912-Pelを構築した。
NBRC105649株のcDNAを鋳型として表1に示したFwプライマー4(配列番号21)とRvプライマー5(配列番号22)を用いてPCRすることで増幅された断片(D)を増幅した。得られたDNA断片(A)及び(D)はIn-Fusion HD Cloning Kitのプロトコルに従って処理し、連結されたプラスミドpD912-AnAbfを構築した。
NBRC105649株のcDNAを鋳型として表1に示したFwプライマー5(配列番号23)とRvプライマー5(配列番号24)を用いてPCRすることで増幅された断片(E)を増幅した。得られたDNA断片(A)及び(E)はIn-Fusion HD Cloning Kitのプロトコルに従って処理し、連結されたプラスミドpD912-AnGalを構築した。
NBRC105649株のcDNAを鋳型として表1に示したFwプライマーX(配列番号48)とRvプライマーX(配列番号49)を用いてPCRすることで増幅された断片(I)を増幅した。得られたDNA断片(A)及び(I)はIn-Fusion HD Cloning Kitのプロトコルに従って処理し、連結されたプラスミドpD912-Bga1を構築した。
【0066】
【0067】
(3)形質転換体の作製
(2)で作製した各目的遺伝子発現ベクターをPichia pastoris PPS-90102(ATUM社)に対して、ATUM社のプロトコルに従って形質転換を行った。
【0068】
(4)形質転換体の培養
P.pastorisの培養は以下のように行った。BMD1%培地(0.2M リン酸カリウム(pH6.0)、13.4g/L Yeast Nitrogen Base、0.4mg/L Biotin、1.1% グルコース)に各形質転換体を植菌し、28℃で振とう培養し、菌体が一定量に増えたらメタノールを添加し、発現誘導を行い、3-5日後に得られた各培養物はSDS-PAGEで酵素発現量を確認した後、各培養物を遠心分離した後フィルターろ過することで、各培養上清を取得した。得られた培養上清を濃縮し、各種ペクチナーゼ(Pga、Pel、Abf、Gal)酵素液として使用した。
【0069】
<実施例3>タンパク質の定量
酵素溶液のタンパク質濃度の定量は、Bradford法にて測定した。Bradford法はQuick Startプロテインアッセイ(Bio-Rad)を使用し、ウシ血清アルブミンを標準タンパク質とした検量線をもとにタンパク質濃度を計算した。
【0070】
<実施例4>酵素ユニットの測定
(1)ペクチン酸リアーゼ活性
ペクチン酸リアーゼ活性測定は、25μLの1%(w/v)ポリガラクツロン酸(ポリガラクツロン酸 ナトリウム塩、Sigma-Aldrich)、10μLの0.5M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)、45μLのmilliQ水を混合した80μLの基質液に対して、milliQ水にて適宜希釈した酵素液20μLを加え、50℃で5分反応させた後、100μLの50mM塩酸水溶液を添加し、酵素反応を停止させた。攪拌・混合後に、235nmの吸光度を測定した。ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液に塩酸水溶液を加えた後に酵素液を添加したものを用意した。生成される不飽和オリゴガラクツロニド量を不飽和ジガラクツロニドのモル分子吸光係数4600M-1cm-1を用いて求めた。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolの不飽和ジガラクツロニド相当の不飽和オリゴガラクツロニドを生成する酵素量と定義した。
【0071】
(2)ポリガラクツロナーゼ活性
ポリガラクツロナーゼ活性の測定は、25μLの1%(w/v)ポリガラクツロン酸(ポリガラクツロン酸 ナトリウム塩、Sigma-Aldrich)、10μLの0.5M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)、45μLのmilliQ水を混合した80μLの基質液に対して、milliQ水にて適宜希釈した酵素液20μLを加え、50℃で5分反応させた後、100μLの3,5-ジニトロサリチル酸試薬を添加し、99℃で10分間還元糖の発色を行った。氷水中で急冷した後、540nmにおける吸光度を測定し還元糖の生成量を求めた。ブランクは酵素を加えずに処理した反応液に3,5-ジニトロサリチル酸試薬を加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolのD-ガラクツロン酸相当の還元糖を遊離する酵素量と定義した。ただし、酵素溶液中にポリガラクツロナーゼとペクチンリアーゼの両方が存在する場合においては、還元糖量から計算されたユニットから(1)で得られたペクチンリアーゼのユニットを減算したものとポリガラクツロナーゼ活性とした。
【0072】
(3)アラビノフラノシダーゼ活性
アラビノフラノシダーゼ活性は20μLの5mM 4-ニトロフェニル-α-L-アラビノフラノシド(Sigma-Aldrich)、10μLの0.5M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)、40μLのmilliQ水を混合した80μLの基質液に対して、milliQ水にて適宜希釈した酵素液20μLを加え、50℃で5分反応した後、100μLの0.4M炭酸ナトリウムを加えた後、420nmの吸光度を測定した。ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液に炭酸ナトリウム溶液を加えた後に99℃で失活させた酵素液を添加したものを用意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolの4-ニトロフェノールを生成する酵素量と定義した。
【0073】
(4)ガラクタナーゼ活性
ガラクタナーゼ活性の測定は、25μLの1%(w/v)ガラクタン(Galactan(Potato)、Megazyme)、10μLの0.5M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)、45μLのmilliQ水を混合した80μLの基質液に対して、milliQ水にて適宜希釈した酵素液20μLを加え、50℃で5分反応した後、100μLの3,5-ジニトロサリチル酸試薬を添加し、99℃で10分間還元糖の発色を行った。氷水中で急冷した後、540nmにおける吸光度を測定し還元糖の生成量を求めた。ブランクは酵素を加えずに処理した反応液に3,5-ジニトロサリチル酸試薬を加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolのガラクトース相当の還元糖を遊離する酵素量と定義した。
【0074】
(5)セルラーゼ活性
セルラーゼの活性は、MICROPLATE-BASED FILTER PAPERASSAY TO MEASURE TOTAL CELLULASE ACTIVITY(BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING. 2004 DEC 30;88(7):832―7.DOI:10.1002/BIT.20286.)が報告したマイクロプレートスケールろ紙分解活性試験法で測定した。直径7mmに裁断したろ紙(WHATMAN NO.1、GE HEALTHCARE)を含む40μLのクエン酸緩衝液(50mM、pH 4.8)に、20μLの適宜希釈した試料を加え、50℃で1時間反応を行った。ろ紙を含まないサンプルを同様に用意し、ブランクサンプルとして用意した。その後120μLのDNS溶液を添加し反応を停止し、95℃で5分間加熱し、氷水中5分間冷却した。得られた溶液を36μLとmilliQ水160μLを混合し、混合液の540nmの吸光度を測定し、ブランクを引いた値で吸光度増加量を算出した。次に、段階的に希釈したグルコース濃度と540nmの吸光度で作成した検量線を用いて、反応液中生成した還元糖量をグルコース量換算で算出した。同様の操作を異なる希釈率の試料で行い、0.08mgグルコース/20μLセルラーゼ溶液に相当する還元糖を生成するのに必要な試料の希釈率を求め、希釈前の試料のろ紙分解活性(FPU/mL)を算出した。さらに、セルラーゼの濃度を実施例4の方法で測定し、セルラーゼ活性の表示単位をFPU/mg-PROTEINに換算した。活性単位は、1分間に1μmolのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素活性を「1U」とした。
【0075】
<実施例5>粘度の測定
粘度の測定には、音叉振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ社製SV-10H)を用いた。
【0076】
試験例:キャッサバ残渣の糖化
<試験例1-比較例>
キャッサバ残渣を100mL容バッフル付き三角フラスコに乾燥重量として4gとなるよう量りとり、α-アミラーゼを0.002mg-protein/g-基質、milli-Q水を基質濃度が15wt%となるように加えた。その後、バッフルフラスコを十分に混和し、綿栓で封をした上にアルミホイルを被せ、90℃、2h(オートクレーブ、TOMY社製LSX-700)の糊化処理を行った。その後、50℃に設定した振盪機(PRECI社製PRXY-30-R-3F)にて50℃になるまで冷却した後、グルコアミラーゼを0.05mg-protein/g-基質となるように添加し、50℃、200rpmで18時間反応させた。糖化後は液体の状態とならず、粘度は測定不可であった。
【0077】
<試験例2-比較例>
糊化処理後の基質に更に、表2に示す酵素組成物1を0.2mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーは液体の状態とならず、粘度は測定不可であった。
【0078】
<試験例3-比較例>
糊化処理後の基質に更に、表2に示す酵素組成物2を0.2mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は84mPa・sであった。
【0079】
<試験例4-比較例>
糊化処理後の基質に更に、表2に示す酵素組成物3を0.2mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は79mPa・sであった。
【0080】
<試験例5-比較例>
糊化処理後の基質に更に、表2に示す酵素組成物4を0.2mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は459mPa・sであった。
【0081】
<試験例6>
糊化処理後の基質に更に、表3に示す酵素組成物5を0.16mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は26.8mPa・sであった。
【0082】
<試験例7>
糊化処理後の基質に更に、表3に示す酵素組成物6を0.16mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は16.6mPa・sであった。
【0083】
<試験例8>
糊化処理後の基質に更に、表3に示す酵素組成物7を0.16mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は14.5mPa・sであった。
【0084】
<試験例9>
糊化処理後の基質に更に、表3に示す酵素組成物8を0.16mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は17.3mPa・sであった。
【0085】
<試験例10>
糊化処理後の基質に更に、表4に示す酵素組成物9を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は47.3mPa・sであった。
【0086】
<試験例11>
糊化処理後の基質に更に、表4に示す酵素組成物10を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は37.9mPa・sであった。
【0087】
<試験例12>
糊化処理後の基質に更に、表4に示す酵素組成物11を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は19.7mPa・sであった。
【0088】
<試験例13>
糊化処理後の基質に更に、表4に示す酵素組成物12を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は17.3mPa・sであった。
【0089】
<試験例14>
糊化処理後の基質に更に、表4に示す酵素組成物13を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は23.1mPa・sであった。
【0090】
<試験例15>
糊化処理後の基質に更に、表4に示す酵素組成物14を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は23.8mPa・sであった。
【0091】
<試験例16>
糊化処理後の基質に更に、表4に示す酵素組成物15を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は19.9mPa・sであった。
【0092】
<試験例17>
糊化処理後の基質に更に、表4に示す酵素組成物16を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は39.0mPa・sであった。
【0093】
<試験例18-比較例>
糊化処理後の基質に更に、表5に示す酵素組成物17を0.14mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は115mPa・sであった。
【0094】
<試験例19>
糊化処理後の基質に更に、表5に示す酵素組成物18を0.14mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は71.8mPa・sであった。
【0095】
<試験例20>
糊化処理後の基質に更に、表6に示す酵素組成物19を0.13mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は49.1mPa・sであった。
<試験例21>
糊化処理後の基質に更に、表6に示す酵素組成物20を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は47.5mPa・sであった。
【0096】
<試験例22-比較例>
糊化処理後の基質に更に、表7に示すペクチン側鎖分解酵素のAnBga1を含む酵素組成物21を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は1440mPa・sであった。なお、AnBga1はエキソタイプのガラクタン分解酵素であるβ-ガラクトシダーゼである。
【0097】
<試験例23-比較例>
糊化処理後の基質に更に、表7に示すペクチン側鎖分解酵素のE-ARABCJ(Megazyme)を含む酵素組成物22を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は4010mPa・sであった。なお、E-ARABCJはエンドタイプのアラビナン分解酵素である。
【0098】
<試験例24-比較例>
糊化処理後の基質に更に、表7に示すペクチン側鎖分解酵素のE-BGLAN(Megazyme)酵素組成物23を0.15mg-protein/g-基質で添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は530mPa・sであった。なお、E-BGLANはエキソタイプのガラクタン分解酵素であるβ-ガラクトシダーゼである。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
<実施例6> セルラーゼ・ペクチナーゼ生産株の構築
(1)Gal発現用べクターの構築
pUC118(タカラバイオ)のHincII制限酵素切断点にトリコデルマ・リーセイ由来のeg3遺伝子の上流から下流までの領域(配列番号47)を挿入したプラスミドpUC-eg3を鋳型とし、表7に示したFwプライマー6(配列番号25)とRvプライマー6(配列番号26)を用いてPCRすることで断片(A)を増幅した。また、トリコデルマ・リーセイのゲノムDNAを鋳型として表7に示したFwプライマー7(配列番号27)とRvプライマー7(配列番号28)を用いてPCRすることで増幅された断片(B)を増幅した。得られたDNA断片(A)及び(B)はIn-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)のプロトコルに従って処理し、eg3遺伝子下流にpyr4遺伝子が連結されたプラスミドpUC-eg3-pyr4を構築した。
さらに、このpUC-eg3-pyr4を鋳型とし、表7に示したFwプライマー8(配列番号29)とRvプライマー8(配列番号30)を用いてPCRすることで増幅した断片(C)と、トリコデルマ・リーセイのゲノムDNAを鋳型として表7に示したFwプライマー9(配列番号31)とRvプライマー9(配列番号32)を用いてPCRすることで増幅された断片(D)とを、同様にはIn-Fusion HD Cloning Kitによって処理することで、プラスミドpUC-Δeg3::Pcbh1-cbh1-pyr4を得た。
続いて、このpUC-Δeg3::Pcbh1-cbh1-pyr4を鋳型とし、表7に示したFwプライマー10(配列番号33)とRvプライマー10(配列番号34)を用いてPCRすることで増幅した断片(E)と、プラスミドpUC-eg3を鋳型として表7に示したFwプライマー11(配列番号35)とRvプライマー11(配列番号36)を用いてPCRすることで増幅された断片(F)とを、同様にIn-Fusion HD Cloning Kitによって処理することで、プラスミドpUC-Δeg3::Pcbh1-cbh1-pyr4#1000を得た。
次に、pUC-Δeg3::Pcbh1-cbh1-pyr4#1000を鋳型とし、表7に示したFwプライマー7(配列番号27)とRvプライマー9(配列番号32)を用いてPCRすることで増幅した断片(G)と、トリコデルマ・リーセイのゲノムDNAを鋳型とし、表8に示したFwプライマー12(配列番号37)とRvプライマー12(配列番号38)を用いてPCRすることで増幅した断片(H)とを、同様にIn-Fusion HD Cloning Kitによって処理することで、プラスミドpUC-Δeg3::Pcbh1-cbh1-pyr4(re)を得た。
pUC-Δeg3::Pcbh1-cbh1-pyr4(re)を鋳型とし、表7に示したFwプライマー13(配列番号39)とRvプライマー13(配列番号40)を用いてPCRすることで増幅した断片(I)と、トリコデルマ・リーセイのゲノムDNAを鋳型とし、表7に示したFwプライマー14(配列番号41)とRvプライマー14(配列番号42)を用いてPCRすることで増幅した断片(J)とを、同様にIn-Fusion HD Cloning Kitによって処理することで、プラスミドpUC-Δeg3::Pxyn1-cbh1-pyr4(re)を得た。
そして、pUC-Δeg3::Pxyn1-cbh1-pyr4(re)を鋳型とし、表7に示したFwプライマー15(配列番号43)とRvプライマー15(配列番号44)を用いてPCRすることで増幅した断片(K)と、Aspergillus niger NBRC105649株のcDNAを鋳型とし、表7に示したFwプライマー16(配列番号45)とRvプライマー16(配列番号46)を用いてPCRすることで増幅した断片(L)とを、同様にIn-Fusion HD Cloning Kitによって処理することで、GAL2発現用プラスミドpUC-Δeg3::Pxyn1-AnGAL-pyr4(re)を得た。
【0106】
【0107】
(2)形質転換体の作製
トリコデルマ・リーセイE1AB1株のウラシル要求性株に対してpgaB、pelDを発現させた株(特願2021-154749)をSP21とし、この株に対して上記(1)で構築したベクターの形質転換を行った。導入はプロトプラストPEG法で行った。形質転換体はアセトアミドを単一窒素源とした選択培地(2.0% グルコース、1.1M ソルビトール、2.0% アガー、0.2% KH2PO4、0.06% CaCl2・2H2O、0.06% MgSO4・7H2O、0.06% アセトアミド、0.1% Trace element2;%はいずれもw/v%)にて選抜した。Trace element2の組成は以下のとおりである:0.5g FeSO4・7H2O、0.2g CoCl2、0.16g MnSO4・H2O、0.14g ZnSO4・7H2Oを蒸留水にて100mLにメスアップ。選抜した形質転換体を植え継ぎにより安定化した後、コロニーPCRにより目的の遺伝子が安定に保持された菌株をさらに選別した。得られた形質転換体をSP21・Galとした。
【0108】
(3)酵素の生産
酵素生産培地に、SP21、又はSP21・Galの胞子を2×105個/mLとなるよう植菌し、28℃にて5日間振とう培養を行った。得られた培養物を遠心分離した後フィルターろ過することで、各培養上清を取得した。得られた培養上清は酵素溶液として検討に使用した。
【0109】
試験例:キャッサバ残渣の糖化
<試験例21>
糊化処理した基質に対し、グルコアミラーゼ0.05mg-protein/g-基質、SP21由来培養上清0.2mg-protein/g-基質を添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は60.0mPa・sであった。
【0110】
<試験例22>
糊化処理した基質に対し、グルコアミラーゼ0.05 mg-protein/g-基質、SP21・Gal由来培養上清0.2mg/g-protein/g-基質を添加した以外は、試験例1と同様の検討を行った。糖化後のスラリーの粘度の値は18.0mPa・sであった。
【0111】
<試験例23>
SP21、SP21・Gal由来の培養上清中における酵素ユニットを測定した。その結果、これらの酵素における各酵素ユニットは表9に示した通りであった。
【0112】