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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148411
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】カラー鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/02 20060101AFI20241010BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241010BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20241010BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20241010BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241010BHJP
【FI】
B05D3/02 Z
B05D7/24 302T
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302Z
B05D7/24 301U
B05D7/14 P
C09D175/04
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061509
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】522344873
【氏名又は名称】日信商事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519282100
【氏名又は名称】アクゾノーベルコーティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】羽根 高志
(72)【発明者】
【氏名】辻田 隆広
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智紀
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC21
4D075AC23
4D075AC28
4D075AC29
4D075AC34
4D075AC88
4D075AE03
4D075BB28Z
4D075BB91Z
4D075BB93Z
4D075BB95Z
4D075CA02
4D075CA03
4D075CA08
4D075CA13
4D075CA37
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075DA04
4D075DA06
4D075DB02
4D075DB05
4D075DB07
4D075DC10
4D075EA27
4D075EA41
4D075EB13
4D075EB38
4D075EB43
4D075EB47
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC02
4D075EC07
4D075EC08
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC30
4D075EC33
4D075EC35
4D075EC37
4J038DG111
4J038DG301
4J038JC32
4J038KA03
4J038NA05
4J038NA25
4J038PB05
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】ウレタン塗料と、オルガノシリケート(I)および/またはその縮合物の組合せを使用して、親水性に優れる硬化塗膜を有するカラー鋼板を安定的に製造する方法を提供すること。
【解決手段】ポリオールを含む(A)成分と、ポリイソシアネートを含む(B)成分と、特定のオルガノシリケートおよび/またはその縮合物を含む(C)成分とを混合することによって得られた3液型ウレタン塗料を、鋼板に塗布して、未硬化塗膜を形成する工程(1)、並びに前記未硬化塗膜を焼き付けして、硬化塗膜を形成する工程(2)を含む、カラー鋼板の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含む(A)成分と、
ポリイソシアネートを含む(B)成分と、
式(I):
【化1】

(前記式中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。)
で示されるオルガノシリケートおよび/またはその縮合物を含む(C)成分と
を混合することによって得られた3液型ウレタン塗料を、鋼板に塗布して、未硬化塗膜を形成する工程(1)、並びに
前記未硬化塗膜を焼き付けして、硬化塗膜を形成する工程(2)
を含む、カラー鋼板の製造方法。
【請求項2】
工程(1)において、
3液混合装置を使用して、前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とを混合して前記3液型ウレタン塗料を調製し、
得られた前記3液型ウレタン塗料をロールコーターに供給し、
前記ロールコーターを使用して、前記3液型ウレタン塗料を前記鋼板に塗布する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(2)における前記未硬化塗膜の焼付を、加熱炉を使用して行い、前記加熱炉の雰囲気温度が、150~250℃であり、および焼付時間が、20~80秒である請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー鋼板とは、一般に、塗膜が表面に形成されている鋼板を意味し、塗装鋼板と呼ばれることもある。なお、本発明におけるカラー鋼板は、顔料または染料のいずれも含まない塗膜が表面に形成されている鋼板も包含する。
【0003】
カラー鋼板の工業的な製造ラインでは、一般に、ロールコーターを用いて塗料を鋼板に塗布して未硬化塗膜を形成し、次いで未硬化塗膜を加熱炉で焼き付けして、硬化塗膜を形成することによって、カラー鋼板が製造される。このような工業的な製造ラインでは、硬化塗膜を形成するために、特許文献1に記載されているような1液型ウレタン塗料(即ち、ポリオールおよびブロックポリイソシアネートを含む塗料)が、従来、用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-179998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、建築建材等の分野では、低汚染性に優れたカラー鋼板が求められている。カラー鋼板の低汚染性を向上させる手段として、その表面の塗膜の親水性を向上させ、雨等によって塗膜に付着した汚れを落とすことが知られている。
【0006】
例えば、ポリエステル-メラミン系塗料から得られる塗膜の親水性を向上させるために、前記塗料にオルガノシリケートおよび/またはその縮合物を添加することは知られている。しかし、1液型ウレタン塗料に含まれるスズ触媒が、オルガノシリケートおよび/またはその縮合物に作用するため、1液型ウレタン塗料にシリケートを添加して得られるウレタン塗料は、後述の比較例1で示されるように安定性に劣り、前記ウレタン塗料を用いてカラー鋼板を安定的に製造することは困難である。
【0007】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、ウレタン塗料と、オルガノシリケートおよび/またはその縮合物との組合せを使用して、親水性に優れる硬化塗膜を有するカラー鋼板を安定的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] ポリオールを含む(A)成分と、
ポリイソシアネートを含む(B)成分と、
式(I):
【0009】
【化1】
【0010】
(前記式中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。)
で示されるオルガノシリケートおよび/またはその縮合物を含む(C)成分と
を混合することによって得られた3液型ウレタン塗料を、鋼板に塗布して、未硬化塗膜を形成する工程(1)、並びに
前記未硬化塗膜を焼き付けして、硬化塗膜を形成する工程(2)
を含む、カラー鋼板の製造方法。
[2] 工程(1)において、
3液混合装置を使用して、前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とを混合して前記3液型ウレタン塗料を調製し、
得られた前記3液型ウレタン塗料をロールコーターに供給し、
前記ロールコーターを使用して、前記3液型ウレタン塗料を前記鋼板に塗布する
前記[1]に記載の方法。
[3] 工程(2)における前記未硬化塗膜の焼付を、加熱炉を使用して行い、前記加熱炉の雰囲気温度が、150~250℃であり、および焼付時間が、20~80秒である前記[1]または[2]に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウレタン塗料と、オルガノシリケートおよび/またはその縮合物との組合せを使用して、親水性に優れる硬化塗膜を有するカラー鋼板を安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一態様で使用することができるロールコーターの概略断面図を示す。
図2図2は、本発明の別の一態様で使用することができるロールコーターの概略断面図を示す。
図3図3は、本発明の別の一態様で使用することができるロールコーターの概略断面図を示す。
図4図4は、本発明の別の一態様で使用することができるロールコーターの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリオールを含む(A)成分と、ポリイソシアネートを含む(B)成分と、上記式(I)で示されるオルガノシリケート(以下「オルガノシリケート(I)」と略称することがある)および/またはその縮合物を含む(C)成分とを混合することによって得られた3液型ウレタン塗料を使用して硬化塗膜を形成することを特徴とする。
【0014】
本明細書中、「3液型ウレタン塗料」とは、ポリオールを含む(A)成分と、ポリイソシアネートを含む(B)成分と、オルガノシリケート(I)および/またはその縮合物を含む(C)成分とからなり、塗布前にこれらを混合して使用される塗料を意味する。一方、「1液型ウレタン塗料」とは、ポリオールおよびブロックポリイソシアネートを含む塗料を意味する。
【0015】
本明細書中、「ブロック」の限定が付けられていない「ポリイソシアネート」とは、イソシアネート基(「イソシアナト基」ともいう)がブロック剤でブロックされていないポリイソシアネートを意味する。一方、「ブロックポリイソシアネート」とは、イソシアネート基がブロック剤でブロックされているポリイソシアネートを意味する。
【0016】
ポリイソシアネートを使用する3液型ウレタン塗料は、ブロックポリイソシアネートを含む1液型ウレタン塗料に比べて反応性が高く、低い焼付温度でも充分な性能を有する硬化塗膜を形成することができる。
【0017】
本発明の製造方法で形成される硬化塗膜は、トップコート、プライマー層または裏面コートのいずれでもよいが、好ましくはトップコートである。
【0018】
本明細書中、「トップコート」とは、建材用途等のための性能を有し、鋼板の最表面に形成される塗膜を意味する。ここで建材としては、例えば、屋根材、壁材等が挙げられる。
本明細書中、「プライマー層」とは、鋼板とトップコートとの付着性、またはカラー鋼板の性能(例えば、耐食性、加工性等)を確保するための塗膜を意味する。
本明細書中、「裏面コート」とは、カラー鋼板のトップコートが形成された面(表面)とは反対側の面(裏面)に形成された塗膜を意味する。
【0019】
3液型ポリウレタン塗料の(A)成分は、ポリオールを含む。ポリオールは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、シリコーン変性ポリエステルポリオール、フッ素系ポリオール等が挙げられる。(A)成分中に含まれるポリオールは、耐候性または加工性の観点から、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0020】
ポリエステルポリオールを形成するためのカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、これらの中で、アジピン酸、無水フタル酸、およびイソフタル酸が好ましい。ポリエステルポリオールを形成するために、カルボン酸は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリエステルポリオールを形成するためのアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中で、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、および1,6-ヘキサンジオールが好ましい。ポリエステルポリオールを形成するために、アルコールは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールを用いるε-カプロラクトンの開環重合によって得られるポリカプロラクトンポリオールも使用することができる。
【0023】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、塗料の粘性または塗装作業性の観点から、好ましくは2,500~7,000、より好ましくは3,000~5,000である。この数平均分子量は、GPC(Gel permeation chromatography)にて測定することができる。
【0024】
ポリエステルポリオールは、溶液の形態で、しばしば(A)成分中に添加される。ポリエステルポリオール溶液の水酸基価は、反応性または耐水性の観点から、好ましくは30~120(mgKOH/g)、より好ましくは50~100(mgKOH/g)である。
【0025】
3液型ポリウレタン塗料の(A)成分は、ポリオールに加えて、通常、溶剤を含有する。溶剤としては、例えば、キシロール、芳香族系炭化水素、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(A)成分の固形分は、塗料の粘性または塗装作業性の観点から、(A)成分全体に対して、好ましくは30~80重量%、より好ましくは40~70重量%である。
【0027】
3液型ポリウレタン塗料の(A)成分は、ポリオールおよび溶剤とは異なる他の成分を含有していてもよい。(A)成分中に含まれる他の成分としては、例えば、顔料、骨材、艶消し材、消泡剤、表面調整剤、傷付き防止剤、硬化触媒(但し、スズ触媒を除く)、硬化抑制剤等が挙げられる。
【0028】
ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応を促進するために、3液型ポリウレタン塗料の(A)成分は、硬化触媒(但し、スズ触媒を除く)を含有することが好ましい。硬化触媒としては、アルミニウム触媒が好ましく、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネートがより好ましい。硬化触媒の市販品としては、例えば、King Industries, Inc. 製「K-KAT5218」等が挙げられる。ここで「スズ触媒」とは、スズ原子を含む触媒を意味し、「アルミニウム触媒」とは、アルミニウム原子を含む触媒を意味する。
【0029】
(A)成分、(B)成分、および(C)成分の混合後のポットライフを延長させるために、3液型ポリウレタン塗料の(A)成分は、硬化抑制剤を含有することが好ましい。硬化抑制剤としては、例えば、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0030】
ウレタン化反応の促進と、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の混合後のポットライフの延長とを両立するために、3液型ポリウレタン塗料の(A)成分は、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート(例えば、King Industries, Inc. 製「K-KAT5218」)およびアセチルアセトンの組合せを含有することが好ましい。
【0031】
3液型ポリウレタン塗料の(B)成分は、ポリイソシアネートを含む。ポリイソシアネートは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、耐候性または耐熱黄変性の観点から、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。
【0032】
ポリイソシアネートとして、上述のジイソシアネートの変性体(例えば、アルコール変性ジイソシアネート)、上述のジイソシアネートの縮合体(例えば、ビウレット(2量体)、イソシアヌレート(3量体))または該縮合体の変性体(例えば、アルコール変性イソシアヌレート)、または上述のジイソシアネートのアダクトを使用してもよい。
【0033】
3液型ポリウレタン塗料の(B)成分は、ポリイソシアネートに加えて、通常、溶剤を含有する。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシロール等が挙げられる。溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(B)成分の固形分は、ハンドリングまたは塗装作業性の観点から、(B)成分全体に対して、好ましくは30~80重量%、より好ましくは40~70重量%である。(B)成分のNCO含有量は、作業性または経済性の観点から、(B)成分全体に対して、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~20重量%である。
【0035】
3液型ポリウレタン塗料の(A)成分と(B)成分とは、(A)成分中のヒドロキシ基:(B)成分中のイソシアネート基のモル比が所望の範囲内になるように混合することが好ましい。(A)成分中のヒドロキシ基:(B)成分中のイソシアネート基のモル比は、好ましくは100:70~100:130、より好ましくは100:80~100:120、最も好ましくは約100:100である。
【0036】
3液型ポリウレタン塗料の(C)成分は、上記式(I)で示されるオルガノシリケートおよび/またはその縮合物を含む。なお、本明細書中、「オルガノシリケート(I)の縮合物」には、オルガノシリケート(I)の加水分解縮合物が含まれる。また、「オルガノシリケート(I)の加水分解縮合物」とは、オルガノシリケート(I)の加水分解および縮合によって得られる化合物を意味する。オルガノシリケート(I)およびその縮合物は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
式(I)中のR~Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよい。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。
【0038】
式(I)中のR~Rは、それぞれ独立して、好ましくは炭素数1~10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、またはイソブチル基であり、特に好ましくはメチル基またはエチル基である。R~Rは、互いに同じものであることが好ましい。
【0039】
オルガノシリケート(I)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシランが挙げられる。
【0040】
オルガノシリケート(I)の縮合物は、好ましくは2~20量体である。ここで、「2~20量体であるオルガノシリケート(I)の縮合物」とは、2~20個のオルガノシリケート(I)から形成された縮合物を意味する。
【0041】
オルガノシリケート(I)および/またはその縮合物は、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、およびこれらの加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはテトラメトキシシランの加水分解縮合物、テトラエトキシシランの加水分解縮合物、またはテトラメトキシシランの加水分解縮合物およびテトラエトキシシランの加水分解縮合物の混合物である。前記加水分解縮合物は、好ましくは2~20量体である。ここで、「2~20量体である加水分解縮合物」とは、2~20個の前記テトラアルコキシシラン(例えばテトラエトキシシラン)から形成された加水分解縮合物を意味する。
【0042】
オルガノシリケート(I)および/またはその縮合物としては、公知の方法によって製造したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。その市販品としては、例えば、MKCシリケート MS51、MS56、MS56S、MS57、MS56SB5、MS58B15、MS58B30、ES40、EMS31、およびBTS(全て三菱化学株式会社製、商品名)、メチルシリケート51、エチルシリケート40、エチルシリケート40T、エチルシリケート48、およびEMS-485(全てコルコート株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0043】
3液型ポリウレタン塗料の(C)成分は、オルガノシリケート(I)および/またはその縮合物に加えて、通常、溶剤を含有する。溶剤としては、例えば、キシロール、トルエン、芳香族系炭化水素、シクロヘキサノン等が挙げられる。溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
(C)成分の固形分は、ハンドリングまたは塗装作業性の観点から、(C)成分全体に対して、好ましくは10~60重量%、より好ましくは20~50重量%である。
【0045】
3液型ポリウレタン塗料中のオルガノシリケート(I)および/またはその縮合物の含有量は、塗膜の親水性の発現および3液混合時の塗料の安定性の観点から、ポリオール100質量部に対して、好ましくは0.5~10重量部、より好ましくは2~7重量部である。なお、オルガノシリケート(I)およびその縮合物の両方を使用する場合、前記含有量は、これらの合計の含有量である。
【0046】
スズ触媒は、(C)成分中に含まれるオルガノシリケート(I)および/またはその縮合物に作用するため、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の混合後の3液型ウレタン塗料の安定性に悪影響を及ぼし得る。そのため、(A)成分、(B)成分、および(C)成分のいずれも、スズ触媒を含まないことが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法の工程(1)では、3液型ウレタン塗料を、鋼板に塗布して、未硬化塗膜を形成する。工程(1)では、3液混合装置を使用して、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを混合して3液型ウレタン塗料を調製し、得られた3液型ウレタン塗料をロールコーターに供給し、ロールコーターを使用して、3液型ウレタン塗料を鋼板に塗布することが好ましい。
【0048】
本明細書中、「3液混合装置」とは、A液(例えば、前記(A)成分)とB液(例えば、前記(B)成分)とC液(例えば、前記(C)成分)を自動的に計量および混合することができる装置を意味する。3液混合装置は、市販品を使用することができる。その市販品としては、例えば、WAGNER社製、2KコンフォートXL型(防爆型、3液仕様)等が挙げられる。
【0049】
ロールコーターは、好ましくは複数のロールを有する装置である。以下、図1を使用して、本発明の一態様で使用することができるロールコーターを説明する。なお、図1は、概略断面図であり、各ロール間の大きさの比率および各ロールの大きさと鋼板の厚さとの比率は、実際の装置の比率と一致していない。
【0050】
図1中のミータリングロール1、ピックアップロール2、アプリケーションロール3およびバックアップロール4内に記載されている矢印が、各ロールの回転方向を示し、鋼板6の横に記載されている矢印が鋼板6の移動方向を示す。
【0051】
本発明の一態様では、図1に示すように、3液型ウレタン塗料の供給口5から、ミータリングロール1およびピックアップロール2の間に3液型ウレタン塗料を供給する。図1に示すロールコーターでは、バックアップロール4が鋼板6を支持するためのロールであり、アプリケーションロール3が、該ロール上の3液型ウレタン塗料を鋼板6に塗布するためのロールであり、ピックアップロール2が、該ロール上の3液型ウレタン塗料をアプリケーションロール3に転写するためのロールであり、ミータリングロール1が塗膜の外観または厚さを調整するためのロールである。
【0052】
図1では、各ロールが接触している。しかし、図1が概略断面図であり、実際のロールコーターでは、例えばミータリングロール1とピックアップロール2との間には、塗膜厚さを調整するために、ある程度の間隔が空いていることは、当業者であれば容易に理解できる。また、各ロール間の間隔および各ロールの回転数は、必要とされる塗膜の厚さまたは外観に応じて、当業者であれば適宜設定することができる。
【0053】
本発明の一態様では、図1に示すようなロールおよび3液型ウレタン塗料の供給口を有するロールコーターを使用して、3液型ウレタン塗料を鋼板に塗布することができる。詳しくは、本発明の一態様では、
ミータリングロール1、ピックアップロール2、アプリケーションロール3、バックアップロール4および3液型ウレタン塗料の供給口5を有し、
ミータリングロール1とピックアップロール2とが隣接し、ピックアップロール2とアプリケーションロール3とが隣接し、アプリケーションロール3とバックアップロール4とが隣接し、
3液型ウレタン塗料の供給口5が、ミータリングロール1とピックアップロール2との間に設けられ、並びに
アプリケーションロール3とバックアップロール4との間を鋼板6が移動するように構成されたロールコーターを使用して、
3液型ウレタン塗料の供給口5からミータリングロール1とピックアップロール2との間に3液型ウレタン塗料を供給し、
ピックアップロール2上の3液型ウレタン塗料をアプリケーションロール3に転写し、および
アプリケーションロール3上の3液型ウレタン塗料を鋼板6に塗布することができる。
【0054】
3液型ウレタン塗料を、ロールコーターのロールに供給するための供給口(例えば、図1中の3液型ウレタン塗料の供給口5)は、複数のスリットを有することが好ましい。このような複数のスリットを有する供給口を使用することによって、3液型ウレタン塗料を、例えばカーテン状に供給して、該塗料をロールに均一に供給することができる。
【0055】
本発明の製造方法では、より綺麗な外観の塗膜を形成するために、ドクターブレードを備えたロールコーターを使用してもよい。例えば、図1に示すロールコーター中のミータリングロール1の横にドクターブレード7を設置してもよい。
【0056】
以下、本発明の一態様で使用することができる、ドクターブレードを備えたロールコーターを、図2を使用して説明する。なお、図2では、図1と同じものは、図1と同じ符号を使用している。また、図2中の矢印の説明は、図1の矢印の説明と同様である。また、図2は、図1と同様に概略断面図であり、各ロール間の大きさの比率等は、実際の装置の比率等と一致していない。
【0057】
図2に示すロールコーターでは、ドクターブレード7がミータリングロール1と隣接している。このドクターブレード7によって、ミータリングロール1上に供給された3液型ウレタン塗料(即ち、未硬化塗膜)の外観が整えられる。また、図2に示すように、3液型ウレタン塗料の供給口5から、ドクターブレード7およびミータリングロール1の間に3液型ウレタン塗料を供給することができる。詳しくは、本発明の一態様では、
ミータリングロール1、ピックアップロール2、アプリケーションロール3、バックアップロール4、3液型ウレタン塗料の供給口5、およびドクターブレード7を有し、
ドクターブレード7とミータリングロール1とが隣接し、ミータリングロール1とピックアップロール2とが隣接し、ピックアップロール2とアプリケーションロール3とが隣接し、アプリケーションロール3とバックアップロール4とが隣接し、
3液型ウレタン塗料の供給口5が、ドクターブレード7とミータリングロール1との間に設けられ、並びに
アプリケーションロール3とバックアップロール4との間を鋼板6が移動するように構成されたロールコーターを使用して、
3液型ウレタン塗料の供給口5から、ドクターブレード7とミータリングロール1との間に3液型ウレタン塗料を供給し、
ピックアップロール2上の3液型ウレタン塗料をアプリケーションロール3に転写し、および
アプリケーションロール3上の3液型ウレタン塗料を鋼板6に塗布することができる。
【0058】
また、ドクターブレード7およびミータリングロール1に供給された3液型ウレタン塗料が、これらの横側からオーバーフローしないようにするため、ドクターブレード7およびミータリングロール1の側面に遮蔽板を取り付けてもよい。
【0059】
本発明の製造方法では、ミータリングロールが無いロールコーターを使用してもよい。以下、本発明の一態様で使用される、ミータリングロールが無いロールコーターを、図3および4を使用して説明する。なお、図3および4では、図1および2と同じものは、図1および2と同じ符号を使用している。また、図3および4中の矢印の説明は、図1の矢印の説明と同様である。また、図3および4は、図1と同様に概略断面図であり、各ロール間の大きさの比率等は、実際の装置の比率等と一致していない。
【0060】
本発明の一態様では、図3に示すように、塗料パン8を有するロールコーターを使用することができる。詳しくは、本発明の一態様では、ピックアップロール2、アプリケーションロール3、バックアップロール4、3液型ウレタン塗料の供給口5、および塗料パン8を有し、
ピックアップロール2とアプリケーションロール3とが隣接し、アプリケーションロール3とバックアップロール4とが隣接し、
3液型ウレタン塗料の供給口5が、塗料パン8に3液型ウレタン塗料を供給できるように設けられ、並びに
アプリケーションロール3とバックアップロール4との間を鋼板6が移動するように構成されたロールコーターを使用して、
3液型ウレタン塗料の供給口5から塗料パン8に3液型ウレタン塗料を供給し、
塗料パン8に供給された3液型ウレタン塗料を、ピックアップロール2上に取り上げ、
ピックアップロール2上の3液型ウレタン塗料をアプリケーションロール3に転写し、および
アプリケーションロール3上の3液型ウレタン塗料を鋼板6に塗布することができる。
【0061】
本発明の製造方法では、より綺麗な外観の塗膜を形成するために、ドクターブレードを備えたロールコーターを使用してもよい。例えば、図3に示すロールコーター中のピックアップロール2の横にドクターブレードを設置してもよい。
【0062】
本発明の一態様では、図4に示すように、ドクターブレード7がアプリケーション2の横に設けられ、3液型ウレタン塗料の供給口5が、ドクターブレード7およびピックアップロール2の間に設けられているロールコーターを使用することができる。詳しくは、本発明の一態様では、
ピックアップロール2、アプリケーションロール3、バックアップロール4、3液型ウレタン塗料の供給口5、およびドクターブレード7を有し、
ドクターブレード7とピックアップロール2とが隣接し、ピックアップロール2とアプリケーションロール3とが隣接し、アプリケーションロール3とバックアップロール4とが隣接し、
3液型ウレタン塗料の供給口5が、ドクターブレード7とピックアップロール2との間に設けられ、並びに
アプリケーションロール3とバックアップロール4との間を鋼板6が移動するように構成されたロールコーターを使用して、
3液型ウレタン塗料の供給口5から、ドクターブレード7とピックアップロール2との間に3液型ウレタン塗料を供給し、
ピックアップロール2上の3液型ウレタン塗料をアプリケーションロール3に転写し、および
アプリケーションロール3上の3液型ウレタン塗料を鋼板6に塗布することができる。
【0063】
また、ドクターブレード7およびピックアップロール2に供給された3液型ウレタン塗料が、これらの横側からオーバーフローしないようにするため、ドクターブレード7とミータリングロール1の側面に遮蔽板を取り付けてもよい。
【0064】
所望の硬化塗膜の乾燥後(焼付後)の厚さが得られるように、3液型ウレタン塗料を鋼板に塗布することが好ましい。本発明の製造方法で形成する硬化塗膜の乾燥後(焼付後)の厚さは、好ましくは5~30μm、より好ましくは10~25μmである。
【0065】
本発明の製造方法の工程(2)では、未硬化塗膜を焼き付けして、硬化塗膜を形成する。カラー鋼板の工業的な製造ラインでは、通常、未硬化塗膜の焼付は、加熱炉を使用して行われる。加熱炉の雰囲気温度は、好ましくは150~250℃、より好ましくは160~230℃、さらに好ましくは170~220℃である。未硬化塗膜の焼付時間は、好ましくは20~80秒、より好ましくは20~70秒、さらに好ましくは30~60秒である。ここで「未硬化塗膜の焼付時間」とは、未硬化塗膜が、加熱炉中に滞在する時間を意味する。
【0066】
カラー鋼板の工業的な製造ラインのラインスピード(即ち、鋼板の移動速度)は、通常30~150m/分、好ましくは50~120m/分である。
【0067】
焼付によって硬化塗膜を形成した後、得られたカラー鋼板を冷却することが好ましく、水冷することがより好ましい。水冷は、例えば、水のシャワーまたはミストを使用して行うことができる。
【0068】
本発明で使用し得る鋼板としては、例えば、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板、銅めっき鋼板、錫めっき鋼板等が挙げられる。鋼板の厚さは、好ましくは0.1~2.0mm、より好ましくは0.25~1.6mmである。
【実施例0069】
以下、実施例等を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の参考例等によって制限を受けるものではない。なお、以下に記載の成分量に関する「%」および「部」は、特段の記載がない限り、「重量%」および「重量部」を意味する。
【0070】
<比較例1および実施例1~4>
比較例1では、1液型ウレタン塗料(HD6000 U 白(1PC))および(C)成分を混合して比較用ウレタン塗料を調製した。
実施例1~4では、(A)成分(HD6000 U 白(2PC))、(B)成分、および(C)成分を混合して3液型ウレタン塗料を調製した。
なお、比較例1および実施例1~4の混合は、3液混合装置ではなく、手動で混合した。また、得られた塗料は、ロールコーターではなく、バーコーターを使用して鋼板に塗布した。
【0071】
鋼板としては、市販のガルバリウム鋼板(アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板、鋼板の厚さ:0.35mm、メッキ中のAl量:55%、メッキ中のZn量:45%、両面のメッキ付着量:150g/m)を使用した。
【0072】
前記鋼板の表面に、アクゾノーベルコーティング株式会社製「プレカラープライマーHP32」を塗布および乾燥することによって、プライマー層を形成した(プライマー層の乾燥厚さ:5μm)。
また、前期鋼板の裏面に、アクゾノーベルコーティング株式会社製「プレカラーNo.7000」を塗布、乾燥することによって、裏面コート(裏面コートの乾燥後の厚さ:8μm)を形成した。
前記鋼板の表面(プライマー層が形成された面)に、以下のようにして比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料を塗布および焼付(乾燥)することによって、トップコートを形成した。
【0073】
1液型ウレタン塗料(HD6000 U 白(1PC))、および3液型ウレタン塗料の(A)成分(HD6000 U 白(2PC))としては、いずれも、アクゾノーベルコーティング株式会社製の塗料を使用した。なお、これらの塗料に、下記の骨材、艶消し剤、レベリング剤、消泡剤、および傷付き防止剤を添加した。また、1液型ウレタン塗料(HD6000 U 白(1PC))には、下記のスズ触媒を添加し、3液型ウレタン塗料の(A)成分(HD6000 U 白(2PC))には、下記のアルミニウム触媒および硬化抑制剤を添加した。使用した1液型ウレタン塗料(HD6000 U 白(1PC))および3液型ウレタン塗料の(A)成分(HD6000 U 白(2PC))中の原料の量を表1に示す。
また、これらの原料は、以下の通りである。
顔料:酸化チタン
ポリエステルポリオール溶液:アクゾノーベルコーティング株式会社製ポリオール溶液(エステルを構成するカルボン酸成分:イソフタル酸、無水フタル酸、およびアジピン酸、エステルを構成するアルコール成分:ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、および1,6-ヘキサンジオール、ポリエステルポリオールの数平均分子量:4,000、ポリエステルポリオールの水酸基価の水酸基価:50(mgKOH/g)、溶剤:シクロヘキサノン、キシロール、芳香族系炭化水素)、
ブロックポリイソシアネート:旭化成株式会社製「デュラネート TPA-B 80E」(HMDIイソシアヌレートタイプ)
骨材:積水化成品工業株式会社「テクポリマー MBX-30」
艶消し剤:富士シリシア化学株式会社製「SYLYSIA 310P」
消泡剤:共栄社化学株式会社製「ミキレベリングMKコンク」
傷付き防止剤:株式会社喜多村製「PTFEワックス KTL-8N」
希釈剤(=溶剤):シクロヘキサノン、キシロール、芳香族系炭化水素
スズ触媒:日東化成株式会社製「ネオスタンU-100」(ジブチルスズジラウレート)
アルミニウム触媒:King Industries, Inc. 製「K-KAT5218」(アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート)
硬化抑制剤:アセチルアセトン
【0074】
3液型ウレタン塗料の(B)成分(1,6ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)系硬化剤またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)系硬化剤)は、アクゾノーベルコーティング株式会社から入手したものである。これら(B)成分(硬化剤)の固形分およびNCO含有量を表2に示す。
【0075】
3液型ウレタン塗料の(C)成分のオルガノシリケート(I)および/またはその縮合物としては、以下のものを使用した:
「エチルシリケート48」(コルコート株式会社製)
「EMS-485」(コルコート株式会社製)
前記オルガノシリケート(I)および/またはその縮合物のキシロール溶液を(C)成分として使用した((C)成分の固形分=オルガノシリケート(I)および/またはその縮合物の濃度=37%)。
【0076】
実施例1~4では、表3に示す量比で(A)成分、(B)成分および(C)成分を手動で混合して、3液型ウレタン塗料を調製した。詳しくは、(A)成分および(B)成分については、(A)成分中のヒドロキシ基:(B)成分中のイソシアネート基のモル比が100:100となるように、表3に示す量比で混合した。また、実施例1~4の3液型ウレタン塗料中のオルガノシリケート(I)および/またはその縮合物の含有量は、ポリオール100部に対して5部であった。
【0077】
<塗料の塗布および焼付>
比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料を、硬化塗膜(トップコート)の乾燥後(焼付後)の厚さが18μmとなるように、バーコーターを使用して前記鋼板に塗布し、株式会社東上熱学製の自動排出型乾燥機を使用して、表3に示す条件で55秒焼き付けして硬化塗膜を形成し、カラー鋼板を製造した。なお、ポリイソシアネートを使用する3液型ウレタン塗料は、ブロックポリイソシアネートを含む1液型ウレタン塗料に比べて反応性が高く、低い焼付温度でも充分な性能を有する硬化塗膜を形成することができるため、表3に示すように、実施例1~4では、比較例1よりも低い雰囲気温度で焼付を行った。
【0078】
<カラー鋼板の特性評価>
得られたカラー鋼板の特性を、以下のようにして評価した。評価結果を表4に示す。
【0079】
(1)硬化性
ラビングテスターにてラビング試験を行い(溶剤:MEK、荷重:1Kg)、以下の基準によって硬化性を評価した。
(基準)
〇:往復100回にてプライマー層が露出しなかった
×:往復100回未満でプライマー層が露出した
【0080】
(2)加工性
硬化塗膜を上にして、得られたカラー鋼板をT状に密着して折り曲げ、プレス機でプレスした後、折り曲げ部のセロハンテープ曲げ試験を行い、以下の基準によって加工性を評価した。
(基準)
〇:硬化塗膜が全く剥離しなかった
×:硬化塗膜が剥離した
【0081】
(3)ブロッキング性
2枚のカラー鋼板を、それらの表面(即ち、トップコートが形成された面)および裏面(即ち、裏面コートが形成された面)が接するように重ね合わせ、得られた積層体を、40℃で硬化塗膜に40Kg/cmの負荷がかかるように、熱プレスを使用してプレスし、その加圧状態を24時間保持した後、加圧を止めて、積層体を室温まで冷却した後、以下の基準によってブロッキング性を評価した。
(基準)
〇:2枚のカラー鋼板が問題なく剥がれた
×:2枚のカラー鋼板が密着して剥がれにくかった
【0082】
(4)色差(ΔE)
比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料の各成分を混合・撹拌した直後に、<塗料の塗布および焼付>に記載したように塗料の塗布および焼付を行って、カラー鋼板を製造した。このようにして得られたカラー鋼板を基準板とした。その後、撹拌機の撹拌翼の速度が500回転/分である条件で比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料を1時間、2時間、または3時間、追加撹拌した後、<塗料の塗布および焼付>に記載したように塗料の塗布および焼付を行って、カラー鋼板を製造した。このようにして得られたカラー鋼板を試験板とした。得られた基準板および試験板の色差(ΔE)を、コニカミノルタ株式会社製「分光測色計 CM-M6」を使用して、JIS Z 8722:2009 色の測定方法に準じて測定し、以下の基準で評価した。
(基準)
〇:ΔEが0.3未満
×:ΔEが0.3以上
【0083】
(5)光沢変化率
比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料の各成分を混合・撹拌した直後に、<塗料の塗布および焼付>に記載したように塗料の塗布および焼付を行って、カラー鋼板を製造した。このようにして得られたカラー鋼板を基準板とした。その後、撹拌機の撹拌翼の速度が500回転/分である条件で比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料を1時間、2時間、または3時間、追加撹拌した後、<塗料の塗布および焼付>に記載したように塗料の塗布および焼付を行って、カラー鋼板を製造した。このようにして得られたカラー鋼板を試験板とした。得られた基準板および試験板の光沢値を、日本電色工業株式会社製、VG7000を使用して測定した。そして、下記式:
光沢変化率(%)=100×(基準板の光沢値-試験板の光沢値)/試験板の光沢値
から光沢変化率を算出し、以下の基準で評価した。
(基準)
〇:光沢変化率が±10%未満
×:光沢変化率が±10%以上
【0084】
(6)流下時間の上昇率
比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料の各成分を混合・撹拌した直後の、これら塗料のフローカップ法による流下時間(秒)(以下「初期の流下時間」と記載する)を測定した(フローカップ:ASTM D1200で定められたFC#4、温度:25℃)。その後、撹拌機の撹拌翼の速度が500回転/分である条件で比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料を1時間、2時間、または3時間、追加撹拌した。このようにして得られた塗料のフローカップ法による流下時間(秒)(以下「x時間後の流下時間」(x:1、2、または3)と記載する)を、初期の流下時間と同じ条件にて測定した。下記式:
流下時間の上昇率(%)
=100×(初期の流下時間-x時間後の流下時間)/初期の流下時間
から流下時間の上昇率を算出し、以下の基準で評価した。
(基準)
〇:流下時間の上昇率が20%未満
×:流下時間の上昇率が20%以上
【0085】
(7)硬化塗膜の親水性
比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料の各成分を混合・撹拌した直後に、<塗料の塗布および焼付>に記載したように塗料の塗布および焼付を行って、カラー鋼板を製造した。このようにして得られたカラー鋼板を60℃の温水に30分浸漬した後、硬化塗膜の濡れ性を目視で確認して、以下の基準で評価した。その後、撹拌機の撹拌翼の速度が500回転/分である条件で比較用ウレタン塗料または3液型ウレタン塗料を1時間、2時間、または3時間、追加撹拌した後、<塗料の塗布および焼付>に記載したように塗料の塗布および焼付を行って、カラー鋼板を製造した。このようにして得られたカラー鋼板を60℃の温水に30分浸漬した後、硬化塗膜の濡れ性を目視で確認して、以下の基準で評価した。
(基準)
〇:十分な濡れ性が確認できた
×:十分な濡れ性が確認できなかった
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
表4に記載の結果から明らかなように、比較用ウレタン塗料(1液型ウレタン塗料および(C)成分の混合物)を使用した比較例1は、硬化性、加工性、ブロッキング性に問題は無いが、色差(ΔE)、光沢変化率、粘度上昇率、および追加撹拌後の硬化塗膜親水性が不良であった。一方、3液型ウレタン塗料を使用した実施例1~4では、硬化性、加工性、ブロッキング性に問題が無く、色差(ΔE)、光沢変化率、流下時間の上昇率、および追加撹拌後の硬化塗膜の親水性についても良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の製造方法によれば、ウレタン塗料と、オルガノシリケート(I)および/またはその縮合物の組合せを使用して、親水性に優れる硬化塗膜を有するカラー鋼板を安定的に製造することができる。本発明の製造方法によって得られるカラー鋼板は、建築建材等の分野に有用である。
【符号の説明】
【0092】
1 ミータリングロール
2 ピックアップロール
3 アプリケーションロール
4 バックアップロール
5 3液型ウレタン塗料の供給口
6 鋼板
7 ドクターブレード
8 塗料パン
図1
図2
図3
図4