(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148433
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/11 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
H05K1/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061554
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 武馬
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB12
5E317BB15
5E317CC08
5E317CC32
5E317CC33
5E317GG14
5E317GG20
(57)【要約】
【課題】導体層の厚さのむらが抑制される配線基板の提供。
【解決手段】実施形態の配線基板は、対向する2つの表面を有していて、2つの表面の間を貫く複数の貫通孔4aを備える絶縁層2と、2つの表面の一方及び他方にそれぞれ形成されている第1導体層31及び第2導体層32と、複数の貫通孔4aそれぞれの内側に形成され、第1導体層31と第2導体層32とを接続する複数の層間導体4と、を含んでいる。配線基板1は、それぞれに複数の層間導体4の一部が形成されている第1領域A1及び第2領域A2を有し、複数の層間導体4は、第1領域A1における貫通孔4aの壁面に沿って膜状に形成されている第1層間導体41と、第2領域A2における貫通孔4aに挿通される柱状金属部品からなる第2層間導体42と、を含み、第2領域A2における貫通孔4aの密度は、第1領域A1における貫通孔4aの密度よりも高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの表面を有していて、前記2つの表面の間を貫く複数の貫通孔を備える絶縁層と、
前記2つの表面の一方及び他方にそれぞれ形成されている第1導体層及び第2導体層と、
前記複数の貫通孔それぞれの内側に形成され、前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する複数の層間導体と、
を含む配線基板であって、
前記配線基板は、それぞれに前記複数の層間導体の一部が形成されている第1領域及び第2領域を有し、
前記複数の層間導体は、前記第1領域における貫通孔の壁面に沿って膜状に形成されている第1層間導体と、前記第2領域における貫通孔に挿通される柱状金属部品からなる第2層間導体と、を含み、
前記第2領域における貫通孔の密度は、前記第1領域における貫通孔の密度よりも高い。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記柱状金属部品は前記貫通孔内を充填している。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1領域における前記第1層間導体の密度は、1個/mm2以上、9個/mm2以下であり、
前記第2領域における前記第2層間導体の密度は、10個/mm2以上、25個/mm2以下である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記絶縁層の厚さは、0.7mm以上、2.0mm以下である。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記貫通孔の内径は、100μm以上、150μm以下である。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1層間導体は、前記壁面に接する下層膜と、前記下層膜上に形成されていて電解めっき膜からなる上層膜とを含んでいる。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記貫通孔における前記第1層間導体の内側は、絶縁性樹脂で充填されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3つのスルーホール群が互いに異なる配列密度でコア基板のそれぞれの領域に配列されている配線基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の配線基板では、スルーホール群の配列密度の高い領域と低い領域との間で、スルーホールによって接続されるコア基板の表面に形成されている導体層の厚さに差異が生じることがあると考えられる。配線基板表面の導体層における平坦性が損なわれ、配線基板と配線基板に搭載され得る素子との接続不良が生じる場合があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、対向する2つの表面を有していて、前記2つの表面の間を貫く複数の貫通孔を備える絶縁層と、前記2つの表面の一方及び他方にそれぞれ形成されている第1導体層及び第2導体層と、前記複数の貫通孔それぞれの内側に形成され、前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する複数の層間導体と、を含んでいる。前記配線基板は、それぞれに前記複数の層間導体の一部が形成されている第1領域及び第2領域を有し、前記複数の層間導体は、前記第1領域における貫通孔の壁面に沿って膜状に形成されている第1層間導体と、前記第2領域における貫通孔に挿通される柱状金属部品からなる第2層間導体と、を含み、前記第2領域における貫通孔の密度は、前記第1領域における貫通孔の密度よりも高い。
【0006】
本発明の実施形態によれば、貫通孔の配置密度(層間導体の配置密度)に差がある領域間での導体層の厚さの差異が抑制された配線基板が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3A】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3B】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3C】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3D】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3E】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3F】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3G】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3H】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図3I】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。
図1には、本実施形態の配線基板の一例である配線基板1の断面図が示されている。
図2には、
図1の配線基板1の平面図が示されている。
図1は、配線基板1の
図2に示されるI-I線での断面図である。なお、配線基板1は実施形態の配線基板の一例に過ぎない。例えば、実施形態の配線基板に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数は、
図1の配線基板1に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。すなわち、実施形態の配線基板は、配線基板1が有する絶縁層及び導体層に加えて、任意の数の絶縁層及び導体層を含み得る。なお、以下の説明で参照される各図面では、開示される実施形態が理解され易いように特定の部分が拡大して描かれていることがあり、大きさや長さに関して、各構成要素が互いの間の正確な比率で描かれていない場合がある。
【0009】
図1に示されるように、配線基板1は、絶縁層2と、絶縁層2の表面にそれぞれ形成されている導体層31(第1導体層)及び導体層32(第2導体層)と、導体層31と導体層32とを接続する複数の層間導体4と、を含んでいる。絶縁層2は、配線基板1の厚さ方向と略直交すると共に互いに対向する2つの表面として第1面2a及び第2面2bを有している。導体層31は第1面2a上に形成されており、導体層32は第2面2b上に形成されている。絶縁層2は、その内側に層間導体4が形成される、第1面2aと第2面2bとの間を貫く複数の貫通孔4aを備えている。
【0010】
絶縁層2を貫通して2つの導体層(
図1の例において導体層31と導体層32)同士を接続する層間導体4は、所謂スルーホール導体であり得る。層間導体4はビア導体と称されることもある。層間導体4は、厚さ方向と交差する絶縁層2の2つの表面それぞれの上に直接形成されている導体層同士を接続する導電体である。
【0011】
なお、図示される配線基板1の説明においては、絶縁層2から遠い側を、「上」、「上側」、「外側」、又は「外」と称し、絶縁層2に近い側を、「下」、「下側」、「内側」、又は「内」と称する。また、各構成要素において、絶縁層2と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層2を向く表面は「下面」とも称される。従って、配線基板1を構成する各要素の説明において、絶縁層2から遠い側が「上側」、「上方」、「上層側」、「外側」、又は単に「上」もしくは「外」とも称され、絶縁層2に近い側が「下側」、「下方」、「下層側」、「内側」、又は単に「下」もしくは「内」とも称される。
【0012】
図1に示される配線基板1は、絶縁層2と、導体層31及び導体層32と、層間導体4だけを含んでいるが、前述したように、実施形態の配線基板は、絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれに、さらに1組以上の絶縁層及び導体層を備えていてもよい。その場合、絶縁層2及び導体層31、32は、実施形態の配線基板のコア基板として形成されてコア基板として機能してもよい。その場合、層間導体4は、コア基板の絶縁層を貫通してその両面の導体層同士を接続するスルーホール導体であり得る。
【0013】
配線基板1は、
図1及び
図2に示されるように、それぞれに複数の層間導体4の一部が形成されている第1領域A1及び第2領域A2を有している。第1領域A1と第2領域A2とは別個の領域である。第1領域A1と第2領域A2は、平面視における各領域内での貫通孔4aの配置密度が互いに異なっている領域である。なお「平面視」は、実施形態の配線基板の厚さ方向に沿った視線で対象物を見ることを意味している。
【0014】
第1領域A1に位置する層間導体と第2領域A2に位置する層間導体4とは異なる形態を有している。複数の層間導体4は、第1領域A1に位置する貫通孔4aの内壁に沿って膜状に形成されている第1層間導体41と、第2領域A2に位置する貫通孔4a内に挿通される柱状金属部品から構成されている第2層間導体42とを含んでいる。すなわち、層間導体4のうち、第1領域A1に位置する第1層間導体41は、部分的に膜状の形体を有していて全体的には中空部を有する筒状の形体を有しており、第2領域A2に位置する第2層間導体42は、柱状の形態を有する金属部品から構成されている。筒状の第1層間導体41の中空部は、例えばエポキシ樹脂のような任意の樹脂からなる充填体5で充填されている。図示の例では、第2層間導体42は中空部を有さず貫通孔4aを充填している。
【0015】
絶縁層2は、例えば絶縁性樹脂を用いて形成されている。絶縁層2を構成する絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、又はフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂が例示される。しかし、絶縁層2の材料は、これら例示の熱硬化性樹脂に限定されず、例えば熱可塑性樹脂など、適切な絶縁性と剛性とを有し得る任意の材料を用いて形成され得る。
図1の例において絶縁層2は、例えばガラス繊維やアラミド繊維などで構成される補強材(芯材)21を含んでいる。絶縁層2は、さらに、シリカやアルミナなどからなる無機フィラー(図示せず)を含んでいてもよい。絶縁層2は、例えば0.7mm以上、2.0mm以下の厚さを有し得る。
【0016】
導体層31、導体層32、並びに層間導体41、42は、例えば銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成されている。導体層31、32、及び、第1層間導体41は、それぞれ、無電解めっき、電解めっき、又はスパッタリングなどによって形成される金属膜で構成されている。導体層31、32は、さらに、銅箔やニッケル箔などの金属箔も構成要素として含み得る。すなわち、導体層31及び導体層32、並びに第1層間導体41は、2つ以上の金属膜を含む多層構造を有し得る。また、第2層間導体42を構成する柱状金属部品は、例えば銅を含むスルーホールピンであり得る。
【0017】
図1及び
図2の例において導体層31及び導体層32は、それぞれ、層間導体4に接続されている導体パッド301だけを含んでいる。導体パッド301は、層間導体4が前述したようにスルーホール導体である場合、所謂スルーホールパッドであり得る。しかし、本実施形態の配線基板1において導体層31、32は、それぞれ、任意の導体パターンを含み得る。
【0018】
図1の例の配線基板1において導体パッド301、すなわち、導体層31及び導体層32それぞれは5層構造を有している。具体的には、導体層31及び導体層32それぞれは、絶縁層2の第1面2a又は第2面2b上に順に積層されている第1層30a、第2層30b、第3層30c、第4層30d、及び第5層30eによって構成されている。
【0019】
第1層30aは、例えば銅箔やニッケル箔などからなる金属箔層であり得、第2層30b及び第4層30dは、例えば無電解めっき膜又はスパッタ膜からなる金属膜層であり得、第3層30c及び第5層30eは電解めっき膜からなる金属膜層であり得る。なお、導体層31及び導体層32は、5層構造有さずともよく、例えば、導体層31及び導体層32は、金属箔層であり得る第1層30aを含んでいなくてもよい。さらに、導体層31及び導体層32は、第4層30d及び第5層30eを含んでいない場合も有り得る。
【0020】
第1層間導体41は、貫通孔4aを囲む絶縁層2の壁面に接する下層膜40aと、下層膜40a上に形成されている上層膜40bとを含んでいてこれら2つの膜体によって構成されている。下層膜40aは、例えば無電解めっき膜又はスパッタ膜からなる金属膜であり得、上層膜40bは、電解めっき膜からなる金属膜であり得る。下層膜40aは、導体層31、32それぞれの第2層30bと一体的に形成されていて第2層30bと連続している。上層膜40bは、導体層31、32それぞれの第3層30cと一体的に形成されていて第3層30cと連続している。すなわち、下層膜40aを構成する金属膜は、第1領域A1に位置する貫通孔4aの内部だけでなく、導体層31、32それぞれの第1層30aの上にも形成されている。同様に、上層膜40bを構成する金属膜は、第1領域A1に位置する貫通孔4aの内部だけでなく、導体層31、32それぞれの第2層30b上にも形成されている。
【0021】
貫通孔4aは、絶縁層2をその厚さ方向において貫いている。貫通孔4aは、さらに、導体層31、32それぞれの第1層30aも貫いていて、第1層30aの上面3aa(絶縁層2側と反対側の表面)に開口している。層間導体41の下層膜40aは、絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれにおける貫通孔4aの開口部を介して、導体層31、32それぞれの第2層30bと連続的に形成されている。同様に、層間導体41の上層膜40bは、貫通孔4aの各開口部を介して、導体層31、32それぞれの第3層30cと連続的に形成されている。
【0022】
一方、第2層間導体42は、貫通孔4aに挿通される柱状金属部品によって構成されている。第2層間導体42を構成する柱状金属部品は、導体層31、32それぞれの第1層30aも貫通している。図示されるように、層間導体42を構成する柱状金属部品は、その長さ方向における2つの端部において、一部が第1層30aの上面を覆うように形成され得る。層間導体42を構成する柱状金属部品の2つの端部それぞれの上面は第2層30bに被覆されている。さらに、第2層間導体42の上部には第2層30bを介して第3層30cが形成されている。図示されるように、第2層間導体42の上部を含む、第2領域A2に形成されている第3層30cは、その上面の高さ(第1面2a又は第2面2bからの最短距離)が第1領域A1における第3層30cの上面の高さと略等しくなるように形成されている。換言すれば、第3層30cの上面は略均一な平坦面として形成されている。
【0023】
図1に示されるように、配線基板1には、部品Eが実装され得る。
図2に示されるように、第2領域A2は平面視で配線基板1の中央部を占めている。そして第1領域A1は、平面視で第2領域A2の外側の領域を占めていて第2領域A2を囲んでいる。第2領域A2は、
図1に示される部品Eが配置される領域である部品領域ERと、平面視で全体的に重なっている。一方、第1領域A1は、平面視で部分的に部品領域ERと重なっている。しかし、第1領域A1及び第2領域A2それぞれが平面視において配線基板1内で占める位置、大きさ、及び形状は、
図1及び
図2の例に限定されない。第1領域A1及び第2領域A2は、それぞれ、平面視における配線基板1内の任意の位置において任意の大きさ及び形状を占めることができる。なお、部品Eは、例えばマイコンやメモリなどの任意の半導体集積回路装置の他、個別半導体素子や、抵抗アレイなどの受動素子などであり得る。
【0024】
このように配線基板1では、複数の層間導体4が、第1領域A1に形成されている第1層間導体41と、第2領域A2に形成されている第2層間導体42と、を含んでいる。第2層間導体42は、第1領域A1における第1層間導体41の密度よりも高い密度で第2領域A2に形成されている。すなわち、第2領域A2における複数の層間導体4が形成される貫通孔4aの配置密度は、第1領域A1における複数の層間導体4が形成される貫通孔4aの配置密度よりも高い。例えば、第1領域A1における第1層間導体41の密度は、1個/mm2以上、9個/mm2以下であり得る。一方、第2領域A2における第2層間導体42の密度は、10個/mm2以上、25個/mm2以下であり得る。
【0025】
上述のように、実施形態の配線基板では、層間導体の配置密度が比較的低い領域においては貫通孔の壁面を覆う膜状の導体で層間導体が構成され、層間導体の配置密度が比較的高い領域においては貫通孔に挿通される柱状金属部品で層間導体が構成されている。この構成により、すべての層間導体が貫通孔の壁面を覆う膜状の導体で構成される場合と比較して、導体層31、32それぞれの厚さの均一性が向上する場合がある。
【0026】
具体的には、配線基板における層間導体のすべてを、第1層間導体41と同様の膜状の導体で構成する場合、形成されるべき層間導体の密度が比較的高い領域(貫通孔の密度が比較的高い領域)では、電解めっきによって形成される第3層30cの厚さが他の領域よりも小さくなる場合がある。形成されるべき層間導体の密度が高い領域では、下層膜40aを給電層として形成される上層膜40bの面積が比較的大きい。従って、形成されるべき層間導体の密度が高い領域では、上層膜40b及び第3層30cを形成する際の電解めっきにおける電流密度が比較的低くなり得る。形成されるべき層間導体の密度が高い領域では、形成される層間導体の密度が低い領域と比較して上層膜40b及び第3層30cの厚さが薄く形成される場合がある。従って、配線基板が備える導体層31、32が、層間導体(貫通孔)の密度が比較的低い領域においては厚さが比較的大きく、層間導体(貫通孔)の密度が比較的高い領域においては厚さが比較的小さく形成される場合がある。この場合、配線基板表面における導体層の平坦性が損なわれ、配線基板と配線基板表面に搭載され得る部品との接続に不良が生じる場合があると考えられる。
【0027】
実施形態の配線基板では、貫通孔4aの密度が比較的高い第2領域A2において、層間導体42が貫通孔4aに挿通される柱状金属部品から構成されていることにより、貫通孔4aの内側に電解めっきによって導体層を形成する必要がない。従って、第2領域A2において電解めっきによって形成されるべき層は第3層30cに限られ、電解めっきによって形成されるべき層の領域は比較的小さく限られている。すなわち、前述された、電解めっきにおける電流密度の、領域による差異が低減される構成が採用されている。貫通孔4aの密度が比較的高い第2領域A2において第3層30cの厚さが他の領域よりも小さく形成されることが抑制され得る。
【0028】
実施形態の配線基板では、このように第3層30cが部分的に薄く形成される虞が低減され、従って、均一な厚さを有する平坦性の良好な導体層をその表面に有し得る。導体層31及び導体層32それぞれにおいて、第1領域A1と第2領域A2との間で厚さの差が生じ難く、各導体層の表面の起伏も生じ難いと考えられる。従って、実施形態の配線基板1には部品が適切に搭載され、高い実装品質が得られることがあると考えられる。
【0029】
貫通孔4aは、第1面2aから第2面2bまでの全長に渡って略一定の内径を有している。そのため第1及び第2層間導体41、42は、それぞれ、第1面2aから第2面2bまでの全長に渡って略一定の外径を有している。貫通孔4aの内径、並びに第1及び第2層間導体41、42の外径は、例えば、それぞれ、100μm以上、150μm以下である。なお、便宜上、「内径」及び「外径」という用語が用いられるが、貫通孔4a、並びに第1及び第2層間導体41、42の断面(絶縁層2の厚さ方向と直交する断面)の形状は、円形や楕円形に限定されない。貫通孔4aの「内径」、並びに第1及び第2層間導体41、42の「外径」は、貫通孔4a又は各層間導体における軸方向(絶縁層2の厚さ方向)と直交する断面の外周上の任意の2点間の最長距離である。
【0030】
つぎに、
図1の配線基板1が製造される場合を例に、一実施形態の配線基板を製造する方法の一例が、
図3A~
図3Iを参照して説明される。
【0031】
図3Aに示されるように、配線基板1の絶縁層2となる絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔3aを含む両面銅張積層板10が用意され、複数の貫通孔4aが形成される。両面銅張積層板10の絶縁層は、例えばエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成されており、ガラス繊維などによって構成される補強材21を含んでいる。複数の貫通孔4aは、貫通孔4aの密度が互いに異なる2つの領域(第1領域A1及び第2領域A2)を生じさせる位置であって、複数の層間導体4(
図1参照)が形成されるべき所定の位置に形成される。
図3Aの例において、貫通孔4aについて第1領域A1の密度よりも高い密度を有する第2領域A2が生じている。貫通孔4aは、例えば、ドリル加工によって形成される。
【0032】
次いで、
図3Bに示されるように、第2領域A2に位置する貫通孔4a内に、柱状金属部品MPが挿通される。貫通孔4aに挿通された柱状金属部品MPの両端部は金属箔3aの上面から突出し、柱状金属部品MPの両端面は金属箔3aの上面の外側に露出する。
【0033】
次いで、
図3Cに示されるように、押圧部材PSが、絶縁層2の両面側から、柱状金属部品MPの両端面に接触して柱状金属部品MPを挟むように配置される。柱状金属部品MPは、押圧部材PSによって絶縁層2の厚さ方向における中心部に向かって押圧される。これにより、柱状金属部品MPの両端部は、図示されるように、貫通孔4aの内径よりも大きい径を有する形状に変形し、貫通孔4aの周縁部における金属箔3aの上面を覆うように形成される。柱状金属部品MPが貫通孔4a内に固定される。第2領域A2内の貫通孔4a内に柱状金属部品MPによって構成される第2層間導体42が形成される。
【0034】
次いで、
図3Dに示されるように、第1領域A1に位置する貫通孔4aの内壁上、及び金属箔3aの表面上、及び、柱状金属部品MPの露出面上に、例えば銅などからなる金属膜3bが形成される。金属膜3bは、例えば、スパッタリングや無電解めっきによって形成される。金属膜3bの一部が、第1層間導体41の下層膜40a(
図1参照)、及び、導体層31、32の第2層30b(
図1参照)を構成する。
【0035】
そして、
図3Eに示されるように、金属膜3b上の全面に、例えば銅などからなる金属膜3cが形成される。すなわち、金属膜3cは、貫通孔4a内の金属膜3bの表面、並びに、金属箔3a及び柱状金属部品MPの表面上の金属膜3bの表面の全面に形成される。第1領域A1内の貫通孔4a内に金属膜3bの一部及び金属膜3cの一部からなり、中空部を有する筒状の形体の複数の第1層間導体41が形成される。金属膜3cの一部は、第1層間導体41の上層膜40b(
図1参照)を構成する。金属膜3cの他の一部は、導体層31、32の第3層30c(
図1参照)を構成する。
【0036】
金属膜3cは、金属膜3bを給電層として用いる電解めっきによって形成される。上述されたように、貫通孔4aが比較的高い密度で形成される第2領域A2においては、貫通孔4a内に柱状金属部品MPが挿通されている。従って、第2領域A2において金属膜3cが形成されるべき領域は、金属箔3a及び柱状金属部品MPの表面上の金属膜3bの表面に限られている。第2領域A2における金属膜3cが形成されるべき領域が比較的広いことによる、電解めっきでの電流密度が小さくなる現象は抑制され得る。従って、金属膜3cは、金属膜3b上の全域に亘って比較的均一な厚さで形成され得る。
【0037】
次いで、
図3Fに示されるように、複数の第1層間導体41それぞれの中空部が充填体5で充填される。例えば、エポキシ樹脂などの樹脂が、絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側のいずれか又は両方から各層間導体4の中空部に注入される。層間導体4の中空部に注入された樹脂は、必要に応じて加熱などによって固化される。充填体5の端面、及び、金属膜3cの上面が化学機械研磨などの任意の方法で研磨される。この研磨により、金属膜3cの上面に起伏があっても、その上面は、金属膜3cが形成されている領域の全域に亘って比較的均一な高さ(第1面2a又は第2面2bからの最短距離)を有するように形成される。
【0038】
次いで、
図3Gに示されるように、金属膜3cのうちの絶縁層2の第1面2a及び第2面2bのそれぞれの上の部分、複数の柱状金属部品MPそれぞれの両端面の上の部分、並びに、充填体5の両端面の上の部分に、例えば銅などからなる金属膜3dが形成される。金属膜3dは、例えば、無電解めっきやスパッタリングによって形成される。さらに金属膜3d上に、例えば銅などからなる金属膜3eが、金属膜3dを給電層として用いる電解めっきによって形成される。
【0039】
金属膜3d、3eの形成の結果、それぞれ5層構造の導体層31及び導体層32が形成される。導体層31は、絶縁層2の第1面2a上に形成され、導体層32は第2面2b上に形成される。金属膜3dは導体層31、32それぞれの第4層30d(
図1参照)を構成し、金属膜3eは導体層31、32それぞれの第5層30e(
図1参照)を構成する。
【0040】
次いで、
図3Hに示されるように、導体層31、32が、それそれ、所望の導体パターンを含むようにパターニングされる。例えば、適切な開口を有するエッチングマスクが導体層31、32上に設けられ、導体31、32の不要部分がウェットエッチングやドライエッチングによって除去される。その結果、
図1に示される配線基板1が完成する。
【0041】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。第1層間導体41の中空部は必ずしも充填体5で充填されず、空洞のままであってもよい。前述したように、実施形態の配線基板は、
図1の例の絶縁層2及び導体層31、32以外に、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。実施形態の配線基板は、例えば、
図3Iに示される配線基板1aのように、第1面2a上に交互に積層される絶縁層10及び導体層11、並びに、第2面2b上に交互に積層される絶縁層20及び導体層21を有し得る。配線基板1aにおいては、最も外側の導体層11、21の上には、例えばソルダーレジストであり得る被覆絶縁層10R、20Rが形成されている。被覆絶縁層10R、20Rに形成されている開口10Ro、20Roからは、外部の電子部品との接続に用いられ得る導体パッド11p、21pが露出している。
【符号の説明】
【0042】
1 配線基板
2 絶縁層
2a 第1面
2b 第2面
31 導体層
32 導体層
4 層間導体
41 層間導体(第1層間導体)
42 層間導体(第2層間導体)
4a 貫通孔
40a 下層膜
40b 上層膜
A1 第1領域
A2 第2領域
MP 柱状金属部品