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特開2024-148437人工衛星システム、及び人工衛星間の距離測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148437
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】人工衛星システム、及び人工衛星間の距離測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/84 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G01S13/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061559
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 寿利
(72)【発明者】
【氏名】舟根 司
(72)【発明者】
【氏名】田部 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康一
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB15
5J070AC02
5J070AC06
5J070AE20
5J070AF08
5J070AH25
5J070AH31
5J070AH35
5J070BC16
(57)【要約】
【課題】複数の人工衛星の間で、時刻同期を行わずに相対距離を測定することができるシステムを提供する。
【解決手段】本発明による人工衛星システムは、第1と第2の人工衛星10、20を備え、第1の人工衛星10のアンテナ13は、第2の人工衛星20に電波31(送信信号)を送信し、第2の人工衛星20のアンテナ13は、送信信号を受信し、第2の人工衛星20のソフトウェア無線機12は、送信信号と同じ周波数と位相を持つ信号を生成し、第2の人工衛星20のアンテナ13は、第2の人工衛星20が生成した信号の電波32を第1の人工衛星10に送信し、第1の人工衛星10のアンテナ13は、第2の人工衛星20が送信した電波32(受信信号)を受信し、第1の人工衛星10のデータ処理装置11は、送信信号の送信時刻と受信信号の受信時刻との差と、送信信号と受信信号との位相差を用いて、第1の人工衛星10と第2の人工衛星20の相対距離を求める。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の人工衛星と第2の人工衛星とを含む、複数の人工衛星を備え、
前記人工衛星のそれぞれは、データ処理装置と、ソフトウェア無線機と、アンテナとを備え、
前記第1の人工衛星の前記アンテナは、前記第2の人工衛星に電波を送信信号として送信し、
前記第2の人工衛星の前記アンテナは、前記送信信号を受信し、
前記第2の人工衛星の前記ソフトウェア無線機は、前記送信信号と同じ周波数と位相を持つ信号を生成し、
前記第2の人工衛星の前記アンテナは、前記第2の人工衛星の前記ソフトウェア無線機が生成した信号の電波を前記第1の人工衛星に送信し、
前記第1の人工衛星の前記アンテナは、前記第2の人工衛星が送信した電波を受信信号として受信し、
前記第1の人工衛星の前記データ処理装置は、前記送信信号の送信時刻と前記受信信号の受信時刻との差と、前記送信信号と前記受信信号との位相差を用いて、前記第1の人工衛星と前記第2の人工衛星との相対距離を求める、
ことを特徴とする人工衛星システム。
【請求項2】
前記第2の人工衛星の前記ソフトウェア無線機は、
前記第2の人工衛星が受信した前記送信信号のうち、前記第2の人工衛星に割り当てられた周波数帯域の信号を通過させる周波数フィルタ機能を備え、
前記周波数フィルタ機能で通過させた信号と同じ周波数と位相を持つ信号を生成し、
前記第2の人工衛星の前記アンテナは、前記第2の人工衛星の前記ソフトウェア無線機が生成した信号の電波を前記第1の人工衛星に送信する、
請求項1に記載の人工衛星システム。
【請求項3】
前記第1の人工衛星は、前記第1の人工衛星を駆動するための推進機構を備え、
前記第1の人工衛星の前記データ処理装置は、前記送信信号に対する前記受信信号の周波数シフト量に基づき、前記推進機構を用いて、前記第1の人工衛星の速度と位置を調整する、
請求項1に記載の人工衛星システム。
【請求項4】
前記第1の人工衛星の前記データ処理装置は、
前記第1の人工衛星と地上にある地上局との相対位置を求め、
前記第1の人工衛星と前記第2の人工衛星との相対距離と、前記相対位置を用いて、前記第1の人工衛星と前記第2の人工衛星の、前記地上局の位置を基準とした位置を求める、
請求項1に記載の人工衛星システム。
【請求項5】
前記ソフトウェア無線機は、前記送信信号の生成での周波数変換処理と、前記受信信号に対する周波数変換処理とを行う局部発振器を備える、
請求項1に記載の人工衛星システム。
【請求項6】
前記ソフトウェア無線機は、
前記送信信号の生成での周波数変換処理を行う第1の局部発振器と、
前記受信信号に対する周波数変換処理を行う第2の局部発振器と、
前記データ処理装置から受信したリファレンス信号に、前記第1の局部発振器を用いて周波数変換処理を行う第1のフィードバック回路と、
前記第1のフィードバック回路から受信した前記リファレンス信号に、前記第2の局部発振器を用いて周波数変換処理を行う第2のフィードバック回路と、
を備え、
前記データ処理装置は、前記第1のフィードバック回路に送信した前記リファレンス信号の位相と、前記第2のフィードバック回路から受信した前記リファレンス信号の位相との差を求め、求めた位相の差を用いて、前記第1の局部発振器と前記第2の局部発振器の間の位相差を補正する、
請求項1に記載の人工衛星システム。
【請求項7】
前記ソフトウェア無線機は、信号の振幅を増幅する増幅器を備え、
前記増幅器のゲインは、前記第1の人工衛星と前記第2の人工衛星との相対距離として想定された距離に基づいて決定されている、
請求項1に記載の人工衛星システム。
【請求項8】
前記第1の人工衛星が送信する前記送信信号の周波数は、前記第1の人工衛星と前記第2の人工衛星との相対距離として想定された距離に基づいて決定されている、
請求項1に記載の人工衛星システム。
【請求項9】
前記人工衛星の前記データ処理装置は、前記人工衛星の間の相対距離から、前記人工衛星の互いの相対位置を求める、
請求項1に記載の人工衛星システム。
【請求項10】
前記第1の人工衛星と前記第2の人工衛星は、互いに同じ構成を備え、前記送信信号の送信と、前記送信信号の受信とが可能であるように構成されている、
請求項1に記載の人工衛星システム。
【請求項11】
第1の人工衛星が、第2の人工衛星に電波を送信信号として送信するステップと、
前記第2の人工衛星が、前記送信信号を受信するステップと、
前記第2の人工衛星が、前記送信信号と同じ周波数と位相を持つ信号を生成するステップと、
前記第2の人工衛星が、前記第2の人工衛星が生成した信号の電波を前記第1の人工衛星に送信するステップと、
前記第1の人工衛星が、前記第2の人工衛星が送信した電波を受信信号として受信するステップと、
前記第1の人工衛星が、前記送信信号の送信時刻と前記受信信号の受信時刻との差と、前記送信信号と前記受信信号との位相差を用いて、前記第1の人工衛星と前記第2の人工衛星との相対距離を求めるステップと、
を有することを特徴とする、人工衛星間の距離測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の人工衛星を有する人工衛星システムと、人工衛星間の距離を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の人工衛星を組み合わせて一体的に機能させるコンステレーション化が進んでいる。複数の人工衛星を組み合わせるためには、各人工衛星の位置の測定と、人工衛星群の形状の把握が重要である。人工衛星の位置の測定は、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて行われる場合があるが、人工衛星の位置によっては、人工衛星はGNSSからの信号を受信できないことがある。小型の人工衛星の活用範囲が今後広がることが予想されており、GNSSを利用できない場合でも複数の人工衛星の位置や人工衛星間の距離を測定する技術の確立が必要となってきている。
【0003】
複数の人工衛星(宇宙機)の位置を測定する従来技術の例は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された技術では、ホスト船が、3つのアンテナで無線周波数信号を連続的に送信し、コンパニオン船が、ホスト船から送信された信号をアンテナで連続的に受信する。コンパニオン船は、ホスト船の3つのアンテナのそれぞれから発生する各受信信号の伝播時間を測定し、主アンテナから発生する信号が伝搬した経路と2つの副アンテナのそれぞれから発生する信号が伝搬した経路との経路差を導出する測定装置を備える。ホスト船は、コンパニオン船から送信された経路差の測定結果から、ホスト船とコンパニオン船間の相対的角度位置を決定する処理装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-155897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、上述したように、ホスト船とコンパニオン船の間での電波の伝播時間差(経路差)を利用して、複数の人工衛星(宇宙機)の相対的な位置や距離を測定する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術などの従来の技術では、複数の人工衛星の間で互いの距離を測定するためには、人工衛星間で時刻を同期する必要がある。この時刻同期を行うためには、原子時計などの時刻同期用の装置やシステムが必要である。このため、従来の技術には、装置が複雑で大型になるとともに、装置が実行する処理が煩雑になるので、コストが増加するという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、複数の人工衛星の間で、時刻同期を行わずに相対距離を測定することができるシステムと方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による人工衛星システムは、少なくとも第1の人工衛星と第2の人工衛星とを含む、複数の人工衛星を備える。前記人工衛星のそれぞれは、データ処理装置と、ソフトウェア無線機と、アンテナとを備える。前記第1の人工衛星の前記アンテナは、前記第2の人工衛星に電波を送信信号として送信する。前記第2の人工衛星の前記アンテナは、前記送信信号を受信する。前記第2の人工衛星の前記ソフトウェア無線機は、前記送信信号と同じ周波数と位相を持つ信号を生成する。前記第2の人工衛星の前記アンテナは、前記第2の人工衛星の前記ソフトウェア無線機が生成した信号の電波を前記第1の人工衛星に送信する。前記第1の人工衛星の前記アンテナは、前記第2の人工衛星が送信した電波を受信信号として受信する。前記第1の人工衛星の前記データ処理装置は、前記送信信号の送信時刻と前記受信信号の受信時刻との差と、前記送信信号と前記受信信号との位相差を用いて、前記第1の人工衛星と前記第2の人工衛星との相対距離を求める。
【0008】
本発明による工衛星間の距離測定方法は、第1の人工衛星が、第2の人工衛星に電波を送信信号として送信するステップと、前記第2の人工衛星が、前記送信信号を受信するステップと、前記第2の人工衛星が、前記送信信号と同じ周波数と位相を持つ信号を生成するステップと、前記第2の人工衛星が、前記第2の人工衛星が生成した信号の電波を前記第1の人工衛星に送信するステップと、前記第1の人工衛星が、前記第2の人工衛星が送信した電波を受信信号として受信するステップと、前記第1の人工衛星が、前記送信信号の送信時刻と前記受信信号の受信時刻との差と、前記送信信号と前記受信信号との位相差を用いて、前記第1の人工衛星と前記第2の人工衛星との相対距離を求めるステップとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、複数の人工衛星の間で、時刻同期を行わずに相対距離を測定することができるシステムと方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の実施例1による人工衛星システムが備える複数の人工衛星(2つの人工衛星)の例を示す図である。
図1B】本発明の実施例1による人工衛星システムが備える複数の人工衛星(4つの人工衛星)の例を示す図である。
図2】実施例1による人工衛星システムの概略構成の例を示すブロック図である。
図3】送信人工衛星と受信人工衛星の基本構成の例をより詳細に示す図である。
図4】送信人工衛星と受信人工衛星とを相互に切り替えて、送信人工衛星と受信人工衛星の相対距離を測定する際のシーケンス制御の例を示す図である。
図5】実施例1による人工衛星システムのシーケンス制御の例を示す図である。
図6A】周波数フィルタ機能を説明するための図である。
図6B】局部発振器が発生する信号の周波数を調整する周波数フィルタ機能を説明するための図である。
図7】実施例1による、人工衛星間の距離測定方法のフローチャートの例を示す図である。
図8】本発明の実施例2において、人工衛星の速度を制御するシーケンス制御のフローチャートの例を示す図である。
図9】本発明の実施例3において、人工衛星の絶対位置を測定するための構成の例を示す図である。
図10】本発明の実施例4において、ソフトウェア無線機の概略構成の例を示すブロック図である。
図11】複数の人工衛星で構成された人工衛星群の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による人工衛星システムと人工衛星間の距離測定方法では、1つの人工衛星と1つまたは複数の人工衛星との間の相対距離を、これらの人工衛星の間で時刻同期を行わずに、測定することができる。このため、時刻同期に必要な装置や機能を削減でき、人工衛星システムの構築コストを低減させることができる。
【0012】
本発明による人工衛星システムでは、送信人工衛星である第1の人工衛星は、受信人工衛星である第2の人工衛星に電波を送信し、第2の人工衛星は、第1の人工衛星から受信した電波と同じ周波数と位相を持つ電波を第1の人工衛星に送信し、第1の人工衛星は、第1の人工衛星と第2の人工衛星との相対距離を求める。また、第1の人工衛星と第2の人工衛星は、互いに同じ構成を備えており、ソフトウェア無線機を備えることで、第1の人工衛星としての機能と第2の人工衛星としての機能の両方を有することができる。
【0013】
第2の人工衛星は、受信した電波のうち自らに割り当てられた周波数帯域の電波を通過させる周波数フィルタ機能を備えるのが好ましい。第2の人工衛星は、周波数フィルタ機能で通過させた電波と同じ周波数と位相の電波を第1の人工衛星に送信することができる。この周波数フィルタ機能により、本発明による人工衛星システムは、3つ以上の人工衛星の間のそれぞれの相対距離を同時に求めることができる。
【0014】
以下、本発明の実施例による人工衛星システムと人工衛星間の距離測定方法を、図面を参照して説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0015】
本発明の実施例1による人工衛星システムと人工衛星間の距離測定方法を説明する。本実施例による人工衛星間の距離測定方法は、本実施例による人工衛星システムが実施することができる。
【0016】
図1A図1Bは、本実施例による人工衛星システムが備える複数の人工衛星の例を示す図である。本実施例による人工衛星システムは、複数の人工衛星、すなわち、1つの送信人工衛星10と1つまたは複数の受信人工衛星20を備える。送信人工衛星10は、受信人工衛星20としての構成と機能も備え、受信人工衛星20は、送信人工衛星10としての構成と機能も備える。送信人工衛星10と受信人工衛星20は、例えば、静止軌道(赤道上の高度約3.6万kmの軌道)を飛行する地球観測用の人工衛星である。
【0017】
図1Aには、本実施例による人工衛星システムが、2つの人工衛星で構成されている例を示している。図1Aに示す人工衛星システムは、単一の送信人工衛星10と、単一の受信人工衛星20を備える。
【0018】
例えば、送信人工衛星10は、受信人工衛星20との相対距離を測定するための電波31を受信人工衛星20に送信する。受信人工衛星20は、電波31を受信した後に、電波31が受信人工衛星20に割り当てられた周波数帯域の電波であれば、受信した電波31と同じ周波数と位相の電波32を送信人工衛星10に送信する。以下では、送信人工衛星10と受信人工衛星20について、送信する電波を送信信号とも呼び、受信する電波を受信信号とも呼ぶ。
【0019】
送信人工衛星10は、受信人工衛星20から送信された電波32を受信し、電波31の送信時刻と電波32の受信時刻の差と、送信信号(電波31)と受信信号(電波32)の位相差と、送信人工衛星10と受信人工衛星20の回路内処理時間から、送信人工衛星10と受信人工衛星20との間の相対距離を演算して求める。なお、回路内処理時間とは、送信人工衛星10と受信人工衛星20が備える回路が信号処理に要する時間である。送信人工衛星10と受信人工衛星20の回路内処理時間は、事前に測定して求めることができる。
【0020】
本実施例による人工衛星システムは、このように、送信人工衛星10が送信した電波31を受信人工衛星20が受信し、受信した電波31と同じ周波数と位相の電波32を人工衛星20が送信し、送信人工衛星10がこの電波32を受信する。すなわち、送信人工衛星10は、受信人工衛星20に送信した電波31と同じ周波数と位相の電波32を、受信人工衛星20から受信する。
【0021】
送信人工衛星10と受信人工衛星20は、互いに同じ構成を備え、送信人工衛星としての運用と受信人工衛星としての運用を切り替えることができる。すなわち、送信人工衛星10を、送信信号を受信する受信人工衛星20として運用し、受信人工衛星20を、送信信号を送信する送信人工衛星10として運用することもできる。例えば、送信人工衛星10と受信人工衛星20は、送信信号の送信と、受信信号の受信と、送信信号の受信と、受信信号の送信とが可能であるように構成されている。
【0022】
本実施例による人工衛星システムでは、このようにして、複数の人工衛星の間で、時刻同期を行わずに相対距離を測定することができる。また、受信人工衛星20は、自らに割り当てられた周波数帯域の電波について、受信した電波31と同じ周波数と位相の電波32を送信人工衛星10に送信する。本実施例による人工衛星システムでは、人工衛星が処理する周波数帯域を人工衛星ごとに変えて割り当てることで、複数の人工衛星の相対距離を同時に測定することができる。
【0023】
図1Bには、本実施例による人工衛星システムが、4つの人工衛星1a~1dを備える例を示している。4つの人工衛星1a~1dは、互いに同じ構成を備え、送信人工衛星10としての運用と受信人工衛星20としての運用を切り替えることができる。
【0024】
例えば、人工衛星1aを送信人工衛星10として運用し、人工衛星1b~1dを受信人工衛星20として運用して、人工衛星1aが電波31を送信して電波32を受信することで、人工衛星1aと人工衛星1b~1dのそれぞれとの間の相対距離を測定することができる。また、例えば、人工衛星1bを送信人工衛星10として運用し、人工衛星1a、1c~1dを受信人工衛星20として運用して、人工衛星1bが電波31を送信して電波32を受信することで、人工衛星1bと人工衛星1a、1c~1dのそれぞれとの間の相対距離を測定することができる。
【0025】
上述したように、人工衛星1a~1dには、それぞれが処理する周波数帯域が割り当てられているので、本実施例による人工衛星システムでは、複数の人工衛星1a~1dの相対距離を同時に測定することができる。
【0026】
図2は、本実施例による人工衛星システムの概略構成の例を示すブロック図である。本実施例による人工衛星システム4は、送信人工衛星10と受信人工衛星20を備える。
【0027】
送信人工衛星10は、電波31を送信し、受信人工衛星20との相対距離を測定する人工衛星である。受信人工衛星20は、受信した電波31と同じ周波数と位相の電波32を送信人工衛星10に送り返し、送信人工衛星10によって相対距離が測定される人工衛星である。
【0028】
送信人工衛星10は、データ処理装置11a、11b、ソフトウェア無線機12a、12b、及びアンテナ13a、13bを備える。受信人工衛星20は、データ処理装置21a、21b、ソフトウェア無線機22a、22b、及びアンテナ23a、23bを備える。さらに、送信人工衛星10と受信人工衛星20は、それぞれ、人工衛星10、20の姿勢を制御するための制御装置18、28と、人工衛星10、20を駆動するための推進機構17、27と、人工衛星10、20の状態を把握するためのセンサー19、29を備える。推進機構17、27には、例えば、任意のスラスタや電気推進装置などを用いることができる。
【0029】
データ処理装置11a、11b、21a、21bは、演算装置であり、送信信号(電波31)の送信時刻と受信信号(電波32)の受信時刻の差と、送信信号と受信信号の位相差を用いて、送信人工衛星10と受信人工衛星20の相対距離を演算する機能を備える。また、データ処理装置11a、11b、21a、21bは、それぞれ、ソフトウェア無線機12a、12b、22a、22bを制御する機能を備える。送信人工衛星10が備えるデータ処理装置11a、11bは、1つのデータ処理装置で構成してもよく、互いに異なるデータ処理装置で構成してもよい。受信人工衛星20が備えるデータ処理装置21a、21bは、1つのデータ処理装置で構成してもよく、互いに異なるデータ処理装置で構成してもよい。
【0030】
ソフトウェア無線機12a、22a、12b、22bは、送信する電波の信号を生成する機能や、受信した電波を処理する機能を備える。
【0031】
ソフトウェア無線機12a、22aは、それぞれデータ処理装置11a、21aからの指令に従い、この指令に応じたアナログ信号を生成する機能を備える。例えば、受信人工衛星20が備えるソフトウェア無線機22aは、受信人工衛星20が送信人工衛星10から受信した電波と同じ周波数と位相を持つ電波(アナログ信号)を生成する。ソフトウェア無線機22aが後述する周波数フィルタ機能を備える場合には、ソフトウェア無線機22aは、周波数フィルタ機能で通過させた信号と同じ周波数と位相を持つ電波を生成する。
【0032】
ソフトウェア無線機12b、22bは、受信した電波を処理する機能、例えば、それぞれ送信人工衛星10と受信人工衛星20が受信したアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を備える。送信人工衛星10において、ソフトウェア無線機12aとソフトウェア無線機12bは、1つのソフトウェア無線機で構成してもよく、互いに異なるソフトウェア無線機で構成してもよい。受信人工衛星20において、ソフトウェア無線機22aとソフトウェア無線機22bは、1つのソフトウェア無線機で構成してもよく、互いに異なるソフトウェア無線機で構成してもよい。
【0033】
アンテナ13a、23aは、それぞれソフトウェア無線機12a、22aが生成したアナログ信号を電波として送信するための機能を備える。アンテナ13b、23bは、電波を受信するための機能を備える。送信人工衛星10と受信人工衛星20のそれぞれにおいて、電波を送信するアンテナと電波を受信するアンテナは、1つのアンテナで構成してもよく、互いに異なるアンテナで構成してもよい。また、送信人工衛星10と受信人工衛星20は、それぞれ、電波を受信するアンテナ13b、23bを複数備えてもよい。
【0034】
以下では、データ処理装置11a、11bをデータ処理装置11と、ソフトウェア無線機12a、12bをソフトウェア無線機12と、アンテナ13a、13bをアンテナ13と、データ処理装置21a、21bをデータ処理装置21と、ソフトウェア無線機22a、22bをソフトウェア無線機22と、アンテナ23a、23bをアンテナ23と、それぞれ代表して表すこともある。
【0035】
制御装置18、28は、データ処理装置11からの指令により、推進機構17、27を制御して、人工衛星10、20を駆動することができる。
【0036】
図3は、送信人工衛星10と受信人工衛星20の基本構成の例をより詳細に示す図である。上述したように、送信人工衛星10と受信人工衛星20は、互いに同じ構成を備える。このため、以下では、代表して送信人工衛星10について説明し、図3には送信人工衛星10の基本構成を示している。また、図3では、図の簡略化のために、データ処理装置11a、11bとソフトウェア無線機12a、12bを、それぞれ1つのデータ処理装置11とソフトウェア無線機12で示している。
【0037】
ソフトウェア無線機12は、電波を送信するための構成として、D/A変換器121a、フィルタ122a、増幅器123a、ミキサー124a、増幅器125a、及びフィルタ126aを備える。また、ソフトウェア無線機12は、電波を受信するための構成として、フィルタ126b、増幅器125b、ミキサー124b、増幅器123b、フィルタ122b、及びA/D変換器121bを備える。さらに、ソフトウェア無線機12は、局部発振器127を備える。局部発振器127は、アナログ信号の変調(周波数変換)のための信号を発生する装置である。
【0038】
まず、送信人工衛星10について、電波を送信するための構成を説明する。
【0039】
D/A変換器121a(デジタルアナログ変換器121a)は、データ処理装置11からの指令に従い、D/A変換(デジタルアナログ変換)を行ってアナログ信号を生成する。フィルタ122aは、生成されたアナログ信号から、D/A変換に伴って生じた高周波ノイズを除去する。増幅器123aは、生成されたアナログ信号の振幅を増幅する。ミキサー124aは、生成されたアナログ信号を変調する。すなわち、ミキサー124aは、生成されたアナログ信号と局部発振器127からの信号を掛け合わせることで、アナログ信号の周波数を変換する。増幅器125aは、変調したアナログ信号の振幅を増幅する。フィルタ126aは、変調したアナログ信号からノイズ成分を除去する。アンテナ13aは、変調したアナログ信号(電気信号)を電波に変換する。
【0040】
なお、ソフトウェア無線機12は、フィルタ122a、フィルタ126a、増幅器123a、及び増幅器125aのうち1つまたは複数を備えてもよく、これらを全く備えなくてもよい。
【0041】
次に、送信人工衛星10について、電波を受信するための構成を説明する。
【0042】
アンテナ13bは、受信した電波を電気のアナログ信号に変換する。フィルタ126bは、このアナログ信号からノイズ成分を除去する。増幅器125bは、このアナログ信号の振幅を増幅する。ミキサー124bは、このアナログ信号を変調する。すなわち、ミキサー124bは、このアナログ信号と局部発振器127からの信号を掛け合わせることで、アナログ信号の周波数を変換する。増幅器123bは、変調したアナログ信号の振幅を増幅する。フィルタ122bは、周波数変換に伴って生じたノイズまたは不要な周波数帯を、変調したアナログ信号から除去する。A/D変換器121b(アナログデジタル変換器121b)は、A/D変換(アナログデジタル変換)を行って、変調したアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0043】
なお、ソフトウェア無線機12は、フィルタ126b、フィルタ122b、増幅器125b、及び増幅器123bのうち1つまたは複数を備えてもよく、これらを全く備えなくてもよい。
【0044】
本実施例では、送信人工衛星10は、電波を送信する際と受信する際とで、同じ局部発振器127を使用する。すなわち、ソフトウェア無線機12は、同一の局部発振器127で、送信信号の生成での周波数変換処理と、受信信号に対する周波数変換処理とを行う。局部発振器127に初期位相の誤差があると、ミキサー124a、124bがアナログ信号の周波数を変換したときに位相誤差が生じる。本実施例では、電波の送信時と受信時で同じ局部発振器127を使用するため、この位相誤差を互いに打ち消しあうことができ、局部発振器127による初期位相の誤差が発生しないようにすることができる。
【0045】
また、送信人工衛星10と受信人工衛星20が互いに同じ構成を備えるので、送信人工衛星10と受信人工衛星20とを相互に切り替えることが容易である。このため、1つの人工衛星と1つまたは複数の人工衛星との間の相対距離を、どの人工衛星からでも容易に測定することができる。
【0046】
図4は、送信人工衛星10と受信人工衛星20とを相互に切り替えて、送信人工衛星10と受信人工衛星20の相対距離を測定する際のシーケンス制御の例を示す図である。図4には、2つの人工衛星2a、2bを示している。
【0047】
図4を用いて、人工衛星2aが送信人工衛星10であって人工衛星2bが受信人工衛星20である場合と、人工衛星2bが送信人工衛星10であって人工衛星2aが受信人工衛星20である場合を説明する。初めに、送信人工衛星10である人工衛星2aが、受信人工衛星20である人工衛星2bとの相対距離を測定し、次に、送信人工衛星10である人工衛星2bが、受信人工衛星20である人工衛星2aとの相対距離を測定する。
【0048】
まず、地上にある地上局3が、送信人工衛星10である人工衛星2aに測定開始指令c101を送信する。すると、人工衛星2aは、受信人工衛星20である人工衛星2bに電波31を送信する。そして、人工衛星2aは、人工衛星2bから電波32を受信して、人工衛星2bとの相対距離を求め、相対距離の測定が完了したことを示す信号を地上局3に送信する。
【0049】
次に、地上局3が、送信人工衛星10である人工衛星2bに測定開始指令c101を送信する。すると、人工衛星2bは、受信人工衛星20である人工衛星2aに電波31を送信する。そして、人工衛星2bは、人工衛星2aから電波32を受信して、人工衛星2aとの相対距離を求め、相対距離の測定が完了したことを示す信号を地上局3に送信する。
【0050】
なお、送信人工衛星10と受信人工衛星20との相互の切り替えは、図4に示す例のように、地上局3が測定開始指令c101を送信することによって行ってもよく、他の任意の方法で行ってもよい。
【0051】
図5は、本実施例による人工衛星システムのシーケンス制御の例を示す図である。図5を参照して、本実施例による人工衛星システムの構成を説明する。
【0052】
以下では、説明を簡単にするために、人工衛星システムが、1つの送信人工衛星10と2つの受信人工衛星20(受信人工衛星20aと受信人工衛星20b)を備える例について説明する。但し、本実施例による人工衛星システムは、この例に限らず、任意の数の送信人工衛星10と受信人工衛星20を備えることができる。
【0053】
図5において、送信人工衛星10が受信人工衛星20aとの相対距離を測定する処理50と、送信人工衛星10が受信人工衛星20bとの相対距離を測定する処理51は、並行して実行される。
【0054】
送信人工衛星10のデータ処理装置11は、送信信号(すなわち電波31)を送信するためのデジタル信号を生成する。
【0055】
送信人工衛星10のソフトウェア無線機12のD/A変換器121aは、データ処理装置11からの指令に従い、例えば、式(1)で表されるアナログ信号を生成する。なお、式(1)のアナログ信号は、一例として一般的な信号であり、送信人工衛星10は、他の任意の信号、例えば、ある周波数帯域幅を持った信号を生成してもよい。
【0056】
【数1】
【0057】
式(1)において、jは虚数単位、fとfはアナログ信号の周波数、ΔtDA1はデジタルアナログ変換に伴う処理時間、φDA11は周波数f1の信号における処理時間差により生じる位相差、φDA12は周波数fの信号における処理時間差により生じる位相差を表す。周波数fは、受信人工衛星20aに割り当てられた周波数帯域に含まれる。周波数fは、受信人工衛星20bに割り当てられた周波数帯域に含まれる。
【0058】
処理時間ΔtDA1は、D/A変換器121aの処理性能に依存する値であり、ノイズによる影響を考えなければ、一定の信号量に対しては一定の値となる。このため、処理時間ΔtDA1は、回路内処理時間として事前に測定して求めることができる値である。位相差φDA11と位相差φDA12も、事前に測定した回路内処理時間から求めることができる。
【0059】
ソフトウェア無線機12のミキサー124aは、アナログ信号の周波数を変換し、送信人工衛星10の送信信号(すなわち電波31)を生成する。周波数を変換したアナログ信号は、式(2)で表される。
【0060】
【数2】
【0061】
式(2)において、φは送信人工衛星10の局部発振器127の初期位相の誤差を表し、fL.O.は、局部発振器127が発生する信号の周波数を表す。
【0062】
送信人工衛星10のアンテナ13は、送信信号を受信人工衛星20aと受信人工衛星20bに送信する。
【0063】
受信人工衛星20aと受信人工衛星20bのアンテナ23は、送信人工衛星10からの送信信号を受信する。受信人工衛星20aと受信人工衛星20bが受信する信号は、それぞれ式(3)と式(4)で表される。
【0064】
【数3】
【0065】
【数4】
【0066】
式(3)において、位相差φla1とφla2は、送信人工衛星10から受信人工衛星20aへ電波が伝搬していく過程で生じる位相差である。式(4)において、位相差φlb1とφlb2は、送信人工衛星10から受信人工衛星20bへ電波が伝搬していく過程で生じる位相差である。
【0067】
式(3)と式(4)で表される信号は、どちらも、周波数(f1+L.O.)の信号と周波数(f2+L.O.)の信号との和で表され、受信人工衛星20aが処理する信号と受信人工衛星20bが処理する信号を含む。
【0068】
式(3)と式(4)に含まれる位相差は、人工衛星間の距離と送信信号の周波数に依存し、光速cを用いて、それぞれ式(5)と式(6)で表される。
【0069】
【数5】
【0070】
【数6】
【0071】
式(5)において、lは、送信人工衛星10と受信人工衛星20aの間の距離である。式(6)において、lは、送信人工衛星10と受信人工衛星20bの間の距離である。
【0072】
受信人工衛星20a、20bのソフトウェア無線機22のミキサー124bは、受信人工衛星20a、20bが受信した信号の周波数を変換する。受信人工衛星20a、20bのミキサー124bが周波数を変換して生成した信号(ベースバンド信号)は、それぞれ式(7)と式(8)で表される。
【0073】
【数7】
【0074】
【数8】
【0075】
式(7)において、φ2aは、受信人工衛星20aの局部発振器127の初期位相の誤差である。式(8)において、φ2bは、受信人工衛星20bの局部発振器127の初期位相の誤差である。
【0076】
上述したように、受信人工衛星20a、20bのそれぞれには、処理すべき信号(電波)の周波数帯域が割り当てられている。受信人工衛星20a、20bのソフトウェア無線機22は、受信人工衛星20a、20bのそれぞれに割り当てられた周波数帯域の信号(電波)のみを通過させる周波数フィルタ機能を備える。すなわち、受信人工衛星20a、20bは、ソフトウェア無線機22の周波数フィルタ機能を用いて、受信した信号のうち自らに割り当てられた周波数帯域の信号のみを処理し、周波数フィルタ機能で通過させた信号と同じ周波数と位相の信号を第1の人工衛星10に送信することができる。
【0077】
ここで、ソフトウェア無線機22の周波数フィルタ機能について説明する。
【0078】
図6Aは、周波数フィルタ機能を説明するための図である。図6Aには、信号の周波数に対する強度の分布の例が示されている。
【0079】
例えば、図6Aの左の図に示すように、受信人工衛星20aで受信した信号の周波数帯域をf1l~f2uとする。そして、受信人工衛星20aに割り当てられた周波数帯域は、f1l~fであるとする。すると、受信人工衛星20aは、フィルタ機能s101を用いて、図6Aの右の図に示すように、受信した信号のうち周波数帯域がf1l~fの範囲の信号のみを通過させる。
【0080】
受信人工衛星20bに割り当てられた周波数帯域がf~f2uであり、受信人工衛星20bが周波数帯域f1l~f2uの信号を受信したとすると、受信人工衛星20bは、フィルタ機能を用いて、受信した信号のうち周波数帯域がf~f2uの範囲の信号のみを通過させる。
【0081】
また、受信人工衛星20a、20bでの周波数フィルタ機能は、フィルタする周波数帯域を固定して、局部発振器127が発生する信号の周波数を調整することで、通過させる信号を抜き出してもよい。すなわち、周波数フィルタ機能は、フィルタする周波数帯域を受信人工衛星20a、20bに割り当てられた周波数帯域に応じて変えなくても、周波数変換させる周波数(シフトさせる周波数)を変えることにより、実現することができる。
【0082】
図6Bは、局部発振器127が発生する信号の周波数を調整する周波数フィルタ機能を説明するための図である。図6Bには、信号の周波数に対する強度の分布の例が示されている。図6Bは、上段の強度分布と下段の強度分布とで、対応する周波数の大きさが互いに等しくなるように描かれている。図6Bに示す例では、説明を分かり易くするために、受信人工衛星20aと受信人工衛星20bが、互いに同じ周波数帯域f1l~fの範囲の信号のみを通過させるとする。
【0083】
受信人工衛星20aにおいて、フィルタする周波数帯域がf1l~fで固定されているとする。受信人工衛星20aでは、図6Bの上段の左の図と中央の図に示すように、周波数変換機能s102で、送信人工衛星10と同じ量(局部発振器127が発生する信号の周波数fL.O.)だけ周波数をシフトさせる。一方、受信人工衛星20bでは、図6Bの下段の左の図と中央の図に示すように、周波数変換機能s102で、周波数f’L.O.(=fL.O.+f-f1l)だけ周波数をシフトさせる。この後、図6Bの上段の中央の図と右の図と、下段の中央の図と右の図に示すように、フィルタ機能s101を用いて、受信人工衛星20aと受信人工衛星20bに対して周波数帯域f1l~fの範囲の信号のみを通過させる。
【0084】
図5を参照して、人工衛星システムの構成の説明に戻る。
【0085】
既に説明したように、受信人工衛星20a、20bのソフトウェア無線機22のミキサー124bにより、受信人工衛星20a、20bが受信した信号の周波数が変換されてベースバンド信号(式(7)と式(8))が生成される。
【0086】
受信人工衛星20a、20bが送信人工衛星10に送信する信号は、それぞれ式(9)と式(10)で表される。
【0087】
【数9】
【0088】
【数10】
【0089】
式(9)において、φAD2aとφDA2aは、それぞれ、受信人工衛星20aのアナログデジタル変換とデジタルアナログ変換についての処理時間に伴って生じる位相差である。式(10)において、φAD2bとφDA2bは、それぞれ、受信人工衛星20bのアナログデジタル変換とデジタルアナログ変換についての処理時間に伴って生じる位相差である。これらの処理時間は、A/D変換器121bとD/A変換器121aの性能に依存し、ノイズによる影響を考えなければ、一定の信号量に対しては一定の値となる。このため、これらの処理時間は、回路内処理時間として事前に測定して求めることができる値である。上記の位相差も、事前に測定した回路内処理時間から求めることができる。
【0090】
受信人工衛星20a、20bは、それぞれ、式(3)と式(4)で表される信号を送信人工衛星10から受信し、式(3)と式(4)で表される信号と同じ周波数と位相を持つ電波を送信人工衛星10に送信する。式(9)と式(10)で表される信号は、受信人工衛星20a、20bが送信人工衛星10に送信する信号であり、式(3)と式(4)で表される信号と同じ周波数と位相を持つとみなすことができる。
【0091】
但し、式(9)と式(10)では、受信人工衛星20a、20bが、それぞれの周波数フィルタ機能により通過させた信号を示している。このため、式(9)で表される信号は、周波数(f1+L.O.)の信号であり、式(10)で表される信号は、周波数(f2+L.O.)の信号である。また、受信人工衛星20a、20bが受信する信号と送信する信号とでは、位相を互いに同じ値にしようとしても、実際にはアナログデジタル変換とデジタルアナログ変換に伴う位相差が生じる。このため、式(9)と式(10)には、この位相差(式(9)ではφAD2a+φDA2a、式(10)ではφAD2b+φDA2b)を考慮した位相を持つ信号を示している。
【0092】
送信人工衛星10が受信する信号は、式(11)で表される。
【0093】
【数11】
【0094】
送信人工衛星10のソフトウェア無線機12のミキサー124bは、式(11)で表される信号の周波数を変換し、式(12)で表される信号を得る。
【0095】
【数12】
【0096】
送信人工衛星10のデータ処理装置11は、式(12)で表される信号を、式(13)で表される信号として計測する。
【0097】
【数13】
【0098】
ここで、φAD11とφAD12は、送信人工衛星10のアナログデジタル変換についての処理時間に伴って生じる位相差である。この処理時間は、A/D変換器121bの性能に依存し、ノイズによる影響を考えなければ、一定の信号量に対しては一定の値となる。このため、この処理時間は、回路内処理時間として事前に測定して求めることができる値である。位相差φAD11とφAD12も、事前に測定した回路内処理時間から求めることができる。
【0099】
式(13)に示すように、送信人工衛星10が受信した信号は、送信人工衛星10と受信人工衛星20aの距離に対応した位相差φla1と、送信人工衛星10と受信人工衛星20bの距離に対応した位相差φlb2についての情報を持つことが分かる。
【0100】
送信人工衛星10のデータ処理装置11は、送信信号と受信信号の周波数解析を実施する。データ処理装置11は、式(14)に従い、送信信号(電波31)の送信時刻と受信信号(電波32)の受信時刻の差から、送信人工衛星10と受信人工衛星20a、20bとの相対距離の概算値を計算する。
【0101】
【数14】
【0102】
式(14)において、lは、送信人工衛星10と受信人工衛星20aの相対距離であり、lは、送信人工衛星10と受信人工衛星20bの相対距離である。また、ΔTは、送信人工衛星10が信号を送信した時刻(送信時刻)と、受信人工衛星20aが送信した信号を送信人工衛星10が受信した時刻(受信時刻)との時間差を表す。ΔTは、送信人工衛星10が信号を送信した時刻と、受信人工衛星20bが送信した信号を送信人工衛星10が受信した時刻との時間差を表す。
【0103】
データ処理装置11は、送信信号と受信信号のクロスパワースペクトルを計算し、各周波数成分の位相差φを計算する。データ処理装置11は、計算した位相差φを、事前に測定して求めた、送信人工衛星10のアナログデジタル変換とデジタルアナログ変換の処理によって生じる位相差を用いて、式(15)のように補正する。
【0104】
【数15】
【0105】
式(15)において、φcaは、送信人工衛星10と受信人工衛星20aに関する、補正した位相差であり、φcbは、送信人工衛星10と受信人工衛星20bに関する、補正した位相差である。
【0106】
データ処理装置11は、式(15)のように補正した位相差を用いて、送信人工衛星10と受信人工衛星20a、20bとの相対距離の概算値(式(14))を、式(16)のように補正して、送信人工衛星10と受信人工衛星20aの相対距離lと、送信人工衛星10と受信人工衛星20bの相対距離lを求める。
【0107】
【数16】
【0108】
式(16)において、quotientは、割り算の商を表す。
【0109】
図7は、本実施例による、人工衛星間の距離測定方法のフローチャートの例を示す図である。図7に示すフローチャートは、受信人工衛星20との相対距離を測定する送信人工衛星10が実施する。
【0110】
図7を用いて、人工衛星間の距離測定方法の手順の一例を説明する。なお、本実施例による、人工衛星間の距離測定方法は、図7のフローチャートに示す手順や方法に限らず、他の手順や方法で実施してもよい。
【0111】
処理ステップs103で、作業者または送信人工衛星10のデータ処理装置11は、測定したい人工衛星間の相対距離について想定距離を決定する。本実施例では、この想定距離は、送信人工衛星10と受信人工衛星20との相対距離として想定されたおおよその距離である。この想定距離は、例えば、人工衛星の運用条件で決めてもよいし、各人工衛星の軌道投入条件から決めてもよい。
【0112】
処理ステップs104で、作業者またはデータ処理装置11は、送信人工衛星10が送信する電波31の周波数を決定する。この周波数は、処理ステップs103で決定した想定距離に基づいて決定されるのが好ましい。例えば、電波31の周波数は、電波31が想定距離よりも長い波長を持つように決定されるのが望ましい。
【0113】
処理ステップs105で、作業者またはデータ処理装置11は、送信人工衛星10と受信人工衛星20の増幅器123a、123b、125a、125bのゲインを決定する。このゲインは、処理ステップs103で決定した想定距離に基づいて決定されるのが好ましい。例えば、電波は伝搬に伴い強度が減少するので、ゲインは、処理ステップs103で決定した想定距離が長いほど大きいのが望ましい。
【0114】
処理ステップs106で、送信人工衛星10は、データ処理装置11で送信信号(電波31の信号)を生成し、アンテナ13aで電波31を送信する。
【0115】
処理ステップs107で、データ処理装置11は、送信信号に高速フーリエ変換(FFT)の処理を行う。この高速フーリエ変換の処理により、データ処理装置11は、送信した電波31の信号(送信信号)の周波数解析を行うことができる。
【0116】
処理ステップs108で、データ処理装置11は、受信人工衛星20からの電波32(受信信号)を受信したか否か、すなわち受信信号があるかないかを判断する。受信信号がある場合は、処理ステップs109の処理を実行する。なお、送信人工衛星10は、複数の受信人工衛星20からの電波32を受信することができる。
【0117】
処理ステップs109で、データ処理装置11は、受信信号に高速フーリエ変換(FFT)の処理を行う。この高速フーリエ変換の処理により、データ処理装置11は、受信した電波32の信号(受信信号)の周波数解析を行い、受信信号がどの人工衛星から送信された信号であるかを判断することができる。
【0118】
処理ステップs110で、データ処理装置11は、受信信号と送信信号のクロスパワースペクトルを計算する。データ処理装置11は、送信信号の高速フーリエ変換処理の結果と受信信号の高速フーリエ変換処理の結果の共役を取ったものを掛け合わせて、クロスパワースペクトルを計算する。
【0119】
処理ステップs111で、データ処理装置11は、相対距離を測定する受信人工衛星20を決定する。データ処理装置11は、例えば、複数の受信人工衛星20のうち、予め定めた受信人工衛星20または外部から指令された受信人工衛星20を、相対距離を測定する受信人工衛星20と決定することができる。
【0120】
処理ステップs112で、データ処理装置11は、処理ステップs110で計算したクロスパワースペクトルから、処理ステップs111で決定した受信人工衛星20に割り当てられた周波数帯域の電波について、送信信号(電波31)と受信信号(電波32)の位相差を求める。これにより、送信人工衛星10は、相対距離を測定する受信人工衛星20から受信した電波32について、送信した電波31との位相差を取得することができる。
【0121】
処理ステップs113で、データ処理装置11は、処理ステップs112で求めた位相差から、事前に測定して得られている補正値(送信人工衛星10と受信人工衛星20の回路内処理時間を位相に直した値)を引き、この位相差を補正する。データ処理装置11は、この位相差の補正により、送信人工衛星10と受信人工衛星20にて生じる処理時間差を補正することができる。なお、データ処理装置11は、内部にフィードバック回路を備えることなどにより(例えば、実施例4)、この補正値を運用中にアップデートしてもよい。
【0122】
処理ステップs114で、データ処理装置11は、補正した位相差と、送信信号(電波31)の送信時刻と受信信号(電波32)の受信時刻の差を用いて、送信人工衛星10と受信人工衛星20との相対距離を計算する。
【0123】
本実施例による人工衛星システムと人工衛星間の距離測定方法は、以上説明した構成を備え、複数の人工衛星の間で、時刻同期を行わずに相対距離を測定することができる。さらに、本実施例による人工衛星システムと人工衛星間の距離測定方法は、1つの人工衛星と複数の人工衛星との間の相対距離を、同時に測定することもできる。
【実施例0124】
本発明の実施例2による人工衛星システムと人工衛星間の距離測定方法を説明する。以下では、本実施例について、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0125】
本実施例では、送信人工衛星10は、送信人工衛星10と受信人工衛星20との間の相対速度に起因するドップラー効果によって生じる、送信信号(電波31)に対する受信信号(電波32)の周波数シフト(ドップラーシフト)を利用して、人工衛星の速度と位置を調整する。本実施例では、人工衛星の速度を調整することにより、人工衛星間の相対距離を保つことができ、人工衛星間の相対位置を一定にすることができる。
【0126】
図8は、本実施例において、人工衛星の速度を制御するシーケンス制御のフローチャートの例を示す図である。図8に示すフローチャートは、送信人工衛星10が実施する。図8の処理ステップs103から処理ステップs109は、実施例1と同様である。
【0127】
処理ステップs115で、送信人工衛星10のデータ処理装置11は、送信信号と受信信号の高速フーリエ変換(FFT)の処理による周波数解析の結果を比較して、送信信号に対する受信信号の周波数シフトがあるか否かを求める。データ処理装置11は、周波数シフトがある場合には、周波数シフト量を求めて、処理ステップs116の処理を実行する。
【0128】
処理ステップs116で、データ処理装置11は、式(17)を用いて、処理ステップs115で求めた周波数シフト量から、送信人工衛星10に対する受信人工衛星20の相対速度vを計算する。
【0129】
【数17】
【0130】
式(17)において、ft1とft2は、送信人工衛星10が送信した信号(送信信号)の周波数を表し、fr1とfr2は、送信人工衛星10が受信した信号(受信信号)の周波数を表す。
【0131】
処理ステップs117で、データ処理装置11は、処理ステップs116で求めた相対速度vが小さくなるように、送信人工衛星10の速度と姿勢を調整する。データ処理装置11は、スラスタや電気推進装置などの推進機構17(図2)を用いて、送信人工衛星10の速度と姿勢を調整することができる。データ処理装置11は、送信人工衛星10の速度と姿勢を調整することで、送信人工衛星10の位置を調整することができる。
【0132】
本実施例では、人工衛星の速度を調整して、人工衛星間の相対距離や相対位置を一定にすることができ、複数の人工衛星の分布の形状を保つことができる。
【実施例0133】
本発明の実施例3による人工衛星システムと人工衛星間の距離測定方法を説明する。以下では、本実施例について、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0134】
本実施例では、送信人工衛星10と地上局3との相対位置(相対距離)を測定することで、地上局3の位置を基準とした人工衛星の絶対位置を測定する。
【0135】
図9は、本実施例において、人工衛星の絶対位置を測定するための構成の例を示す図である。送信人工衛星10は、受信信号(電波32)を受信する複数のアンテナ13(図2)を備え、複数の受信人工衛星20との相対距離をデータ処理装置11で測定する。地上には、地上局3が設置されている。送信人工衛星10は、複数のアンテナ13で、地上局3から送信された電波を受信することができ、地上局3との相対距離をデータ処理装置11で測定することができる。
【0136】
送信人工衛星10のデータ処理装置11は、送信人工衛星10と複数の受信人工衛星20との相対距離を用いて、三角測量の原理に従い、送信人工衛星10と複数の受信人工衛星20との相対位置を求める。また、データ処理装置11は、複数のアンテナ13によって得られた、送信人工衛星10と地上局3との複数の相対距離を用いて、三角測量の原理に従い、送信人工衛星10と地上局3との相対位置を求める。
【0137】
地上局3は、地上に設置されており、絶対位置を測定可能である。送信人工衛星10のデータ処理装置11は、地上局3の絶対位置を取得し、この絶対位置を基準として、送信人工衛星10と地上局3との相対位置から、送信人工衛星10の絶対位置を求めることができる。そして、データ処理装置11は、送信人工衛星10の絶対位置と、送信人工衛星10と受信人工衛星20の相対位置から、受信人工衛星20の絶対位置を求めることができる。
【0138】
本実施例では、以上のようにして、送信人工衛星10と複数の受信人工衛星20のそれぞれの絶対位置を測定することができる。
【実施例0139】
本発明の実施例4による人工衛星システムと人工衛星間の距離測定方法を説明する。以下では、本実施例について、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0140】
本実施例では、送信人工衛星10と受信人工衛星20のソフトウェア無線機12、22が、フィードバック回路を備え、リファレンス信号を用いて局部発振器127の初期位相の誤差(φ、φ2a、φ2b)を補正する。
【0141】
図10は、本実施例において、ソフトウェア無線機12の概略構成の例を示すブロック図である。送信人工衛星10のソフトウェア無線機12は、フィードバック回路401a、401bを備える。図には示していないが、受信人工衛星20のソフトウェア無線機22も、同様のフィードバック回路を備える。以下では、送信人工衛星10について説明する。
【0142】
本実施例では、ソフトウェア無線機12において、信号の送信時に使用する局部発振器127aと、信号の受信時に使用する局部発振器127bが、互いに異なるものであるとする。局部発振器127aは、アンテナ13aで信号を送信する際に、アナログ信号の周波数を変換するために用いられる。局部発振器127bは、アンテナ13bで受信したアナログ信号の周波数を変換するために用いられる。
【0143】
フィードバック回路401aは、D/A変換器402aとミキサー403aを備える。フィードバック回路401bは、A/D変換器402bとミキサー403bを備える。
【0144】
データ処理装置11は、フィードバック回路401aにデジタル信号(リファレンス信号R)を送信する。リファレンス信号Rは、局部発振器127a、127bの間の位相差を計測して補正するための基準信号である。リファレンス信号Rには、任意の信号を用いることができる。
【0145】
フィードバック回路401aは、データ処理装置11から受信したデジタル信号(リファレンス信号R)を、D/A変換器402aでアナログ信号に変換する。そして、フィードバック回路401aは、ミキサー403aにて局部発振器127aからの信号を用いてこのアナログ信号に周波数変換を行い、周波数変換を行ったリファレンス信号Rをフィードバック回路401bに送信する。
【0146】
フィードバック回路401bは、フィードバック回路401aからリファレンス信号Rを受信し、ミキサー403bにて局部発振器127bからの信号を用いてリファレンス信号Rに周波数変換を行う。そして、フィードバック回路401bは、このリファレンス信号RをA/D変換器402bでデジタル信号に変換する。
【0147】
データ処理装置11は、フィードバック回路401bからリファレンス信号Rを受信する。そして、データ処理装置11は、フィードバック回路401aに送信したデジタル信号とフィードバック回路401bから受信したデジタル信号との位相差、すなわち、送信したリファレンス信号Rの位相と受信したリファレンス信号Rの位相との差を求める。この位相差は、2つの局部発振器127a、127bの間の位相差であり、人工衛星の間の相対距離を測定する際の誤差の要因となる。
【0148】
そこで、データ処理装置11は、リファレンス信号Rを用いてこの位相差を求め、データ処理装置11が受信した受信信号Sから得られた位相から、この位相差(送信したリファレンス信号Rと受信したリファレンス信号Rとの位相差)を引くことで、局部発振器127a、127bの間の位相差を補正する。
【0149】
本実施例では、信号の送信時と信号の受信時とで互いに同じ局部発振器を用いず異なる局部発振器を用いても、フィードバック回路401a、401bを備えてリファレンス信号Rを用いることにより、2つの局部発振器の間の位相差を補正することができる。
【実施例0150】
本発明の実施例5による人工衛星システムと人工衛星間の距離測定方法を説明する。以下では、本実施例について、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0151】
本実施例では、複数の人工衛星で構成された人工衛星群の形状(複数の人工衛星の分布の形状)を推定する。
【0152】
図11は、複数の人工衛星で構成された人工衛星群の例を示す図である。図11には、説明を分かり易くするために、一例として、3つの人工衛星1a、1b、1cで構成された人工衛星群を示している。但し、人工衛星群は、2つまたは4つ以上の人工衛星を有することができる。
【0153】
人工衛星1a、1b、1cのそれぞれは、送信人工衛星10と同じ構成を備え(すなわち、受信人工衛星20と同じ構成を備え)、送信人工衛星10としての運用と受信人工衛星20としての運用を切り替えることができる。本実施例では、初めに、人工衛星1aを基準とし、人工衛星1aが人工衛星1b、1cとの相対距離を測定する。次に、人工衛星1cを基準とし、人工衛星1cが人工衛星1bとの相対距離を測定する。
【0154】
これらの測定結果から、人工衛星1a、1b、1cの位置は、予め任意に定めた直交座標系において、式(18)で表される。
【0155】
【数18】
【0156】
式(18)において、(x,y,z)は、人工衛星1aの位置を表し、(x,y,z)は、人工衛星1bの位置を表し、(x,y,z)は、人工衛星1cの位置を表す。また、Rabは、人工衛星1aと人工衛星1bとの相対距離を表し、Racは、人工衛星1aと人工衛星1cとの相対距離を表し、Rcbは、人工衛星1cと人工衛星1bとの相対距離を表す。
【0157】
次に、人工衛星群の形状を推定するために、人工衛星1aを基準点とし、人工衛星1aと人工衛星1cを結んだ線を基準線k103とすると、人工衛星1aと人工衛星1cの位置は、式(19)で表される。
【0158】
【数19】
【0159】
式(18)と式(19)を用いると、人工衛星1bの位置は、式(20)に従うことが分かる。
【0160】
【数20】
【0161】
式(20)より、人工衛星1bは、半径Rの円k102の上に位置することが分かる。なお、図11では、円k102を斜め方向から見た円(楕円)として描いている。
【0162】
そして、人工衛星1a、1b、1cで構成された人工衛星群の形状は、三辺の長さが相対距離Rab、Rac、Rcbである特定の三角形であることが分かる。
【0163】
人工衛星1a、1b、1cのデータ処理装置11は、以上のようにして、人工衛星1a、1b、1cの互いの相対距離Rab、Rac、Rcbを求め、これらの相対距離から各人工衛星1a、1b、1cの位置を求めることで、人工衛星群の形状を推定することができる。
【0164】
なお、人工衛星1a~1cのアンテナの数を増やすことなどにより、受信信号(電波32)の到来角なども測定した場合には、データ処理装置11は、人工衛星群の形状を一意に決定することができる。
【0165】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0166】
1a~1d…人工衛星、2a、2b…人工衛星、3…地上局、4…人工衛星システム、10…送信人工衛星、11、11a、11b…データ処理装置、12、12a、12b…ソフトウェア無線機、13、13a、13b…アンテナ、17…推進機構、18…制御装置、19…センサー、20、20a、20b…受信人工衛星、21、21a、21b…データ処理装置、22、22a、22b…ソフトウェア無線機、23、23a、23b…アンテナ、27…推進機構、28…制御装置、29…センサー、31、32…電波、50、51…相対距離を測定する処理、121a…D/A変換器、121b…A/D変換器、122a、122b…フィルタ、123a、123b…増幅器、124a、124b…ミキサー、125a、125b…増幅器、126a、126b…フィルタ、127、127a、127b…局部発振器、401a、401b…フィードバック回路、402a…D/A変換器、402b…A/D変換器、403a、403b…ミキサー、c101…測定開始指令、k102…円、k103…基準線、R…リファレンス信号、S…受信信号、s101…フィルタ機能、s102…周波数変換機能。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11