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特開2024-148455圧着端子の止水構造及び圧着端子の止水方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148455
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】圧着端子の止水構造及び圧着端子の止水方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061612
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂彦
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB03
5E085BB12
5E085DD14
5E085FF01
5E085HH07
5E085HH08
5E085JJ13
(57)【要約】
【課題】確実な止水性を維持することのできる圧着端子の止水構造及び圧着端子の止水方法を提供する。
【解決手段】圧着端子の止水構造は、複数本の素線102の束よりなる導体103を含む電線100と、防水コネクタのハウジング内部に収容される端子であって、相手側端子と接続される電気接続部1を先端側に有し、防水コネクタのハウジングの外部から内部に導入される電線100の先端に圧着された電線圧着部5を後端側に有する圧着端子1と、を備える。電線圧着部5のうち、電線の導体103に圧着された導体圧着部3が、後端側に位置して通常荷重により導体に圧着された通常荷重圧着部3aと、それより先端側に位置して通常荷重圧着部3aより高荷重で導体に圧着された高荷重圧着部3bと、を有する。高荷重圧着部3bでは、圧着により導体103を構成する複数本の素線102が潰れることで、隙間が全て封じられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の素線の束よりなる導体を含む電線と、
防水コネクタのハウジング内部に収容される端子であって、相手側端子と接続される電気接続部を先端側に有し、前記防水コネクタのハウジングの外部から内部に導入される前記電線の先端に圧着された電線圧着部を後端側に有する圧着端子と、
を備え、
前記電線圧着部のうち、前記電線の導体に圧着された導体圧着部が、
後端側に位置して通常荷重により前記導体に圧着された通常荷重圧着部と、前記通常荷重圧着部より先端側に位置して前記通常荷重圧着部より高荷重で前記導体に圧着された高荷重圧着部と、を有し、
前記高荷重圧着部では、圧着により前記導体を構成する複数本の素線が潰れることで、隙間が封じられた、
圧着端子の止水構造。
【請求項2】
前記導体圧着部が、連続する圧着片の圧着高さを異ならせた二段構造を有し、先端側の圧着高さの小さい部分が前記高荷重圧着部とされ、後端側の圧着高さの大きい部分が前記通常荷重圧着部とされ、前記高荷重圧着部と前記通常荷重圧着部との間に段差が設けられている、
請求項1に記載の圧着端子の止水構造。
【請求項3】
前記導体圧着部が、連続する圧着片の圧着高さが徐々に変化する傾斜構造になっており、圧着高さの小さい側が前記高荷重圧着部とされ、圧着高さの大きい側が前記通常荷重圧着部とされている、
請求項1に記載の圧着端子の止水構造。
【請求項4】
前記ハウジング内部に位置する前記導体の露出部が止水材により覆われた、
請求項1に記載の圧着端子の止水構造。
【請求項5】
前記電線が、前記導体と該導体を包囲する絶縁被覆とを有する被覆電線であり、
前記電線圧着部には、前記導体圧着部と、該導体圧着部より後端側に位置して前記電線の被覆に圧着される被覆圧着部が設けられ、
前記導体圧着部は、前記電線の先端の被覆が除去されることで露出した前記導体に圧着され、
前記被覆圧着部は、前記導体を覆う状態で残された前記被覆の外周に圧着され、
前記ハウジング内部に位置する前記導体の露出部であって、前記被覆圧着部と前記導体圧着部との間に露出する導体部分が、止水材により覆われた、
請求項1に記載の圧着端子の止水構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の圧着端子の止水構造において、
前記通常荷重圧着部と前記高荷重圧着部とを、1組の圧着金型による1回の圧着操作により前記導体に圧着する、
圧着端子の止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子の止水構造及び圧着端子の止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のエンジンルーム内に配置される防水コネクタは、-30℃から100℃に亘って雰囲気温度が変化する環境で使用される。このような環境下では、温度変化に伴って空気が膨張・収縮し、それに伴うポンプ作用や表面張力などによって、電線に接続された防水コネクタ内に、電線の素線(芯線)間の隙間を通って水が浸入する場合がある。
【0003】
図5は、防水コネクタの内部に外部から水が浸入する原理を説明するための図である。
図5に示すように、防水コネクタCNは、コネクタハウジング内に圧着端子61を収容するものであり、圧着端子61には、防水コネクタCNの外部から導入される電線(被覆電線)100の先端が圧着接続されている。圧着端子61は、先端側に相手側端子と接続される電気接続部62を有し、後端側に電線100の先端に圧着される電線圧着部65を有している。
【0004】
電線100は、複数本の素線102の束よりなる導体103と、導体103を包囲する絶縁樹脂性の被覆104とを有する。圧着端子61の電線圧着部65には、導体103に圧着される導体圧着部63と、導体圧着部63より後端側に位置して電線100の被覆104に圧着される被覆圧着部64とが設けられている。そして、導体圧着部63は、電線100の先端の被覆104が除去されて露出した導体103に圧着され、被覆圧着部64は、導体103を覆う状態で残された被覆104の外周に圧着されている。
【0005】
一方、防水コネクタCNの外部にある電線100の他方の端末部には、LA端子150が接続されている。このLA端子150の電線圧着部152が被水すると、ポンプ作用や表面張力によって、水が電線圧着部152から電線100内に浸入するおそれがある。導体103を構成する素線102間には微小な隙間が存在しており、電線100内に水が浸入すると、その水は、素線102間の隙間を通って、防水コネクタCNのハウジング内にまで到達することがある。図5において、矢印N1は水の浸入経路を示している。なお、防水コネクタCNのハウジングへの電線100の導入部には、電線100の外周とコネクタハウジングとの隙間を封止するゴム栓が通常設けられており、電線100の外周を伝っての水の浸入がゴム栓によって防止されている。
【0006】
図5中の矢印N1で示すように、電線100の素線102間の隙間を通って、水が防水コネクタCNの内部に浸入すると、リーク等の不具合のおそれがあり、避けなければならない。
【0007】
そこで、従来では、圧着端子61の導体103の露出部Cに液状硬化性の止水材Sを塗布することが行われている(例えば、特許文献1参照)。液状硬化性の止水材Sは、被覆圧着部64と導体圧着部63との間に露出する導体103を覆うように塗布されるので、素線102間を通って来た水は、ここで防水コネクタCNの内部に浸入することが阻止される。
【0008】
ところが、このように塗布された止水材Sは、図6に導体103の露出部Cの断面を示すように、露出した導体103の表面を単に覆うに留まることがあり、必ずしも十分に素線102間の隙間Kまで浸透するわけではない。従って、素線102間の隙間を伝って来た水は、その先の導体圧着部63に浸入しようとする。なお、図6中の符号71は、圧着端子61の電気接続部62から被覆圧着部64まで共通に延在する基板部である。
【0009】
図7は、導体圧着部63の断面を示す。
この図7に示すように、導体圧着部63は、素線102の束よりなる導体103に圧着されるが、このときの圧着仕様は、固着力を保持観点等から制限され、所定の規格に適合したものとされる。固着力の要素としては、電線100と圧着端子61との間の固着力と、素線102同士の間の固着力とを含む。規格で定められた荷重より大きい荷重で強く圧着(過圧着)すると、素線102の歪みが大きくなったり素線102が損傷したりすることにより、導体103の断面積が小さくなり、固着力が低下する場合がある。
【0010】
しかし、定められた通常の圧着荷重で圧着を行った場合には、素線102の過度の歪みなどを抑制して良好な固着力を得ることはできるものの、図7に示すように、素線102間に隙間Kが残ることがあり得る。図7において、符号73は圧着のための一対の加締片(圧着片)を示す。
【0011】
導体圧着部63において、素線102間に隙間Kがあると、この隙間Kにまで水が浸入する可能性がある。図6に示すように、C点で塗布した止水材Sは、導体103内の隙間を通って、導体圧着部63の素線102間の隙間Kにまで浸透していることが望ましいが、止水材Sは、導体圧着部63の素線102間の隙間Kにまで行き渡らないことが多い。そのため、導体圧着部63の素線102間に止水材Sによって封じられない隙間Kが残ることになり、この隙間Kを通って、水が防水コネクタCNの内部に浸入してしまう可能性があることが分かった。
【0012】
その対策として、止水材Sを、図5のDで示す位置、即ち、導体圧着部63の先の導体103の先端を覆う位置までの範囲にわたって塗布することが考えられる。しかし、その場合、圧着端子61の電気接続部62にまで止水材Sが流れてしまう可能性が高く、電気接続性の安定性を損なう可能性があるため、この対策を採用することは好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012-164523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、従来では、導体圧着部63の素線102間の隙間Kに止水材Sが行き渡らないことにより、導体圧着部63の先端側にまで水が抜けてしまい、防水コネクタCNの内部に水が浸入するおそれがあった。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、確実な止水性能を維持することのできる圧着端子の止水構造及び圧着端子の止水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係る圧着端子の止水構造は、下記を特徴としている。
複数本の素線の束よりなる導体を含む電線と、
防水コネクタのハウジング内部に収容される端子であって、先端側に相手側端子と接続される電気接続部を有し、後端側に前記防水コネクタのハウジングの外部から内部に導入される前記電線の先端に圧着された電線圧着部を有する圧着端子と、
を具備し、
前記電線圧着部のうち、前記電線の導体に圧着された導体圧着部が、
後端側に位置して通常荷重により前記導体に圧着された通常荷重圧着部と、それより先端側に位置して前記通常荷重圧着部より高荷重で前記導体に圧着された高荷重圧着部と、を有しており、
前記高荷重圧着部では、圧着により前記導体を構成する複数本の素線が潰れることで、前記素線間の隙間が封じられた、
圧着端子の止水構造。
【0017】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る圧着端子の止水方法は、下記を特徴としている。
上記圧着端子の止水構造において、
前記通常荷重圧着部と前記高荷重圧着部とを、1組の圧着金型による1回の圧着操作により前記導体に圧着する、
圧着端子の止水方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、確実な止水性能を維持することができる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態の止水構造の要部構成を示す平面図である。
図2図2は、本発明の実施形態の止水構造の要部構成を示す側面図である。
図3図3は、図2のA1-A1矢視断面図である。
図4図4は、図2のA2-A2矢視断面図である。
図5図5は、従来において防水コネクタの内部に外部から水が浸入する原理を説明するための図である。
図6図6は、図5のB-B矢視断面図である。
図7図7は、図5のA-A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
図1は実施形態の止水構造の要部構成を示す平面図、図2は実施形態の止水構造の要部構成を示す側面図、図3図2のA1-A1矢視断面図、図4図2のA2-A2矢視断面図である。
【0022】
図1および図2は、電線100の先端に取り付けられた圧着端子1の止水構造の要部を示す。
電線100は、複数本の素線102の束よりなる導体103と、導体103を包囲する絶縁樹脂製の被覆104とを有する被覆電線である。圧着端子1は、防水コネクタのハウジング内部に収容される端子である。圧着端子1は、先端側に、相手側端子と接続される電気接続部2を有し、後端側に、防水コネクタのハウジング(図5参照)の外部から内部に導入される電線100の先端に圧着された電線圧着部5を有する。図1及び図2において、左側が圧着端子1の先端側であり、右側が圧着端子1の後端側である。
【0023】
電線圧着部5には、導体圧着部3と、導体圧着部3より後端側に位置して電線の被覆104に圧着される被覆圧着部4が設けられている。導体圧着部3は、電線100の先端の被覆104が除去されることで露出した導体103の部分(露出部分)に圧着されており、被覆圧着部4は、導体103を覆う状態で残された被覆104の外周に圧着されている。導体圧着部3は、図3図4に示すように、左右一対の圧着片13、13を内側に丸めながら導体103に押し込むことで、導体103に圧着されている。圧着端子1の基板部11は、電気接続部2から被覆圧着部4まで共通して延在している。
【0024】
本実施形態の止水構造においては、電線の導体103に圧着された導体圧着部3が、前後方向に連続する左右一対の圧着片13、13を内側に丸めて導体103に押し込むことで構成されており、圧着高さの異なる二段構造とされている。即ち、この導体圧着部3は、後端側に位置して通常荷重により導体103に圧着された通常荷重圧着部3aと、それより先端側に位置して通常荷重圧着部3aより高荷重で導体103に圧着された高荷重圧着部3bとを有している。図2において、先端側の圧着高さ(クランパハイト)の小さい部分が高荷重圧着部3bとされ、後端側の圧着高さの大きい部分が通常荷重圧着部3aとされており、高荷重圧着部3bと通常荷重圧着部3aとの間に段差3cが設けられている。図2において、a1で示す部分が通常荷重圧着部3aの範囲、a2で示す部分が高荷重圧着部3bの範囲である。
【0025】
図3に断面を示すように、通常荷重圧着部3aでは、規格により定められた通常荷重により左右一対の圧着片13、13が導体103に圧着されている。通常荷重圧着部3aでは、素線102間に隙間Kが残っている。一方、高荷重圧着部3bでは、通常荷重より高荷重がかかるように左右一対の圧着片13、13が導体103に圧着(過圧着)されていることにより、導体103を構成する複数本の素線102が潰れて、素線102間の隙間が封じられている。高荷重圧着部3bにおいては、複数本の素線102が潰れることで、素線102間の隙間Kだけでなく、素線102と基板部11との隙間及び素線102と圧着片13との隙間も封じられている。つまり、複数本の素線102よりなる導体103が密閉状態となっている。従って、この部分に、通常荷重圧着部3aの素線102間の隙間Kを通って来た水が流れ込もうとしても、高荷重圧着部3bには素線102間の隙間Kが存在しないため水が通過できず、確実に止水されることになる。図2中の矢印Nは、素線102間の隙間を通って浸入する水の進む方向を示している。
【0026】
ここで、通常荷重圧着部3aでの圧着は、圧着端子1と導体103の固着力、および、導体103を構成する素線102同士の固着力を確保するために行われるもので、必要な固着性能を維持するための圧着強度を発揮できるように規格が定められている。通常荷重圧着部3aの固着力の強度は、圧着高さが規格で決まっているので、取り付く部品の仕様に応じて、通常荷重圧着部3aの前後方向の長さで調整することになる。
【0027】
上述の役割の違いにより、固着力を優先して圧着した通常荷重圧着部3aを固着力確保部と呼び、過圧着により隙間を無くして素線間の隙間を密閉した高荷重圧着部3bを止水確保部と呼ぶことができる。なお、高荷重圧着部3bにおいて過圧着が行われても、通常荷重圧着部3aの固着性能には影響が及ばない。
【0028】
液状硬化性の止水材Sは、被覆圧着部4と導体圧着部3との間に露出する導体103を覆うように設けられている。導体圧着部3に高荷重圧着部3bを設けたことにより、止水材Sを導体103の露出部のみに塗布すれば、必要な性能の止水構造を簡単に完成させることができる。
【0029】
以上のように、本実施形態の止水構造によれば、導体圧着部3のうち高荷重圧着部3bにおいて素線102間の隙間が全て封じられている。よって、この止水構造によれば、通常荷重圧着部3aに残る素線102間の隙間Kに水が浸入した場合であっても、高荷重圧着部3bで止水されるため、確実な止水性能を確保することができる。このため、止水材Sが、通常荷重圧着部3aに残る素線102間の隙間Kに行き渡らない場合であっても、確実な止水性能を確保することができる。従って、止水材Sは、被覆圧着部4と導体圧着部3との間に露出する導体103を覆うように塗布するだけで十分であり、電気接続部2にまで流れ込むおそれはない。また、本実施形態の止水構造は、導体圧着部3の前後部で圧着高さが異なるように圧着荷重を加えるだけで、高荷重圧着部3bと通常荷重圧着部3aを作り出すことができる。よって、圧着金型(上型)の構造を段差付きの形状に変えるだけで、上下1組の圧着金型による1回の圧着操作により、この止水構造を実現できる。
【0030】
なお、高荷重圧着部3bと通常荷重圧着部3aの圧着は、別々の金型を用いて、それぞれタイミングをずらして実施してもよい。
【0031】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0032】
上記実施形態では、高荷重圧着部3bと通常荷重圧着部3aとの間に段差3cを設けた場合を示したが、高荷重圧着部及び通常荷重圧着部の構造はこれに限定されない。例えば、導体圧着部3を、連続する圧着片13、13の圧着高さを、荷重の変化に伴って徐々に変化させたテーパ状の傾斜構造とし、圧着高さの小さい側を高荷重圧着部とし、圧着高さの大きい側を通常荷重圧着部としてもよい。導体圧着部3が傾斜構造を有する場合であっても、圧着金型(上型)の構造を傾斜形状に変えることで、上下1組の圧着金型による1回の圧着操作により、この止水構造を実現できる。
【0033】
また、上記実施形態では、電線100が被覆を有する場合を示したが、本発明は、被覆を備えない裸電線を用いる場合にも適用可能である。その場合は、防水コネクタのハウジング内部に位置する電線の導体の露出部を止水材により覆えばよい。
【0034】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る圧着端子の止水構造及び圧着端子の止水方法の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 複数本の素線(102)の束よりなる導体(103)を含む電線(100)と、
防水コネクタ(CN)のハウジング内部に収容される端子であって、相手側端子と接続される電気接続部(2)を先端側に有し、前記防水コネクタのハウジングの外部から内部に導入される前記電線(100)の先端に圧着された電線圧着部(5)を後端側に有する圧着端子(1)と、
を備え、
前記電線圧着部(5)のうち、前記電線の導体(103)に圧着された導体圧着部(3)が、
後端側に位置して通常荷重により前記導体に圧着された通常荷重圧着部(3a)と、前記通常荷重圧着部(3a)より先端側に位置して前記通常荷重圧着部(3a)より高荷重で前記導体に圧着された高荷重圧着部(3b)と、を有し、
前記高荷重圧着部(3b)では、圧着により前記導体(103)を構成する複数本の素線(102)が潰れることで、隙間(K)が封じられた、
圧着端子の止水構造。
【0035】
上記[1]の構成によれば、導体圧着部(3)のうち高荷重圧着部(3b)において素線(102)間の隙間(K)が全て封じられている。よって、この構成によれば、通常荷重圧着部(3a)に残る素線(102)間の隙間(K)に水が浸入した場合であっても、高荷重圧着部(3b)で止水されるため、確実な止水性能を確保することができる。
【0036】
[2] 前記導体圧着部(3)が、連続する圧着片(13)の圧着高さを異ならせた二段構造を有し、先端側の圧着高さの小さい部分が前記高荷重圧着部(3b)とされ、後端側の圧着高さの大きい部分が前記通常荷重圧着部(3a)とされ、前記高荷重圧着部と前記通常荷重圧着部との間に段差(3c)が設けられている、
上記[1]に記載の圧着端子の止水構造。
【0037】
上記[2]の構成によれば、導体圧着部(3)の前後部で圧着高さが異なるように圧着荷重を加えるだけで、高荷重圧着部(3b)と通常荷重圧着部(3a)を作り出すことができて、確実な止水性能を確保することができる。
【0038】
[3] 前記導体圧着部(3)が、連続する圧着片の圧着高さが徐々に変化する傾斜構造になっており、圧着高さの小さい側が前記高荷重圧着部とされ、圧着高さの大きい側が前記通常荷重圧着部とされている、
上記[1]に記載の圧着端子の止水構造。
【0039】
上記[3]の構成によれば、導体圧着部(3)の前後部で圧着高さが傾斜するように圧着荷重を加えるだけで、高荷重圧着部と通常荷重圧着部を作り出すことができて、確実な止水性能を確保することができる。
【0040】
[4] 前記ハウジング内部に位置する前記導体(103)の露出部が止水材(S)により覆われた、
上記[1]から[3]のいずれか1つに記載の圧着端子の止水構造。
【0041】
上記[4]の構成によれば、止水材(S)により、導体圧着部(3)の手前の導体(103)の露出部を覆うことにより、確実な止水性能を確保することができる。液状硬化性の止水材(S)を塗布する場合、通常荷重圧着部(3a)に残る素線(102)間の隙間(K)に止水材(S)が行き渡らない場合であっても、高荷重圧着部(3b)によって止水されるため、止水材(S)は、導体圧着部(3)の手前の導体(103)の露出部に塗布するだけで十分である。よって、止水材(S)が電気接続部(2)にまで流れ込むおそれはない。
【0042】
[5] 前記電線(100)が、前記導体(103)と該導体を包囲する絶縁被覆(104)とを有する被覆電線であり、
前記電線圧着部(5)には、前記導体圧着部(3)と、該導体圧着部より後端側に位置して前記電線の被覆に圧着される被覆圧着部(4)が設けられ、
前記導体圧着部(3)は、前記電線の先端の被覆が除去されることで露出した前記導体(103)に圧着され、
前記被覆圧着部(4)は、前記導体を覆う状態で残された前記被覆(104)の外周に圧着され、
前記ハウジング内部に位置する前記導体(103)の露出部であって、前記被覆圧着部(4)と前記導体圧着部(3)との間に露出する導体部分が、止水材(S)により覆われた、
上記[1]から[4]のいずれか1つに記載の圧着端子の止水構造。
【0043】
上記[5]の構成によれば、止水材(S)により、被覆圧着部(4)と導体圧着部(3)との間に露出する導体(103)を覆うだけで、確実な止水性能を確保することができる。
【0044】
[6] 上記[1]から[5]のいずれか1つに記載の圧着端子の止水構造において、
前記通常荷重圧着部(3a)と前記高荷重圧着部(3b)とを、1組の圧着金型による1回の圧着操作により前記導体に圧着する、
圧着端子の止水方法。
【0045】
上記[6]の方法によれば、1組の金型による1回の圧着操作により、高荷重圧着部(3b)と通常荷重圧着部(3a)を作り出すことができて、確実な止水性能を確保することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 圧着端子
2 電気接続部
3 導体圧着部
3a 通常荷重圧着部
3b 高荷重圧着部
4 被覆圧着部
5 電線圧着部
100 電線
102 素線
103 導体
104 被覆
S 止水材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7