(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148457
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】地盤掘削用拡径ドリル
(51)【国際特許分類】
E21B 10/32 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
E21B10/32
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061620
(22)【出願日】2023-04-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000158910
【氏名又は名称】株式会社亀山
(74)【代理人】
【識別番号】100081824
【弁理士】
【氏名又は名称】戸島 省四郎
(72)【発明者】
【氏名】東芝 崇
(72)【発明者】
【氏名】新井 英夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正道
(72)【発明者】
【氏名】亀山 元則
(72)【発明者】
【氏名】坂口 穂積
(72)【発明者】
【氏名】早田 恭士
(72)【発明者】
【氏名】堤 孝秋
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA10
2D129DA21
2D129GA21
2D129GA34
(57)【要約】
【課題】 ドリル打込機の打込先端に取付けたドリルに対し、地盤に向けた押付力と回転力にダウンザホールハンマーによって往復打撃力を加えて地盤を効果的に拡径掘削するドリルにあって、ドリルが拡径削孔しても、ドリルが地盤からのトルク・力によって構造破損することが少なくドリル寿命を長くできる構造のドリルの提供。
【解決手段】 円柱状のドリルの先部の外周部を切削して三つドリル外径に内接する切削面を形成し、各切削面に板状の揺動羽根をその後部で軸支し、前記切削面に揺動羽根の内面は摺動して回動して且つドリル外径より拡径でき、しかも前記軸支ピンまわりの径差がある切削面上の径差間領域を底面にして所定厚みの二つの突出部を設け、前記揺動羽根の内面にアリ溝を設け、同アリ溝内に前記突出部を嵌入し、前記揺動羽根のアリ溝内に前記突出部を嵌合することで揺動羽根を強固に係合して破損しにくくする。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削用ビット又は刃部を有するドリルを地盤に向って進退可能に取り付ける構造を有するとともに、前記ドリルの後部に前記ドリルをそのドリル軸心まわりに回動させる回転力と,地盤に向けて前記ドリルを加圧する押付力及び又はこれらに打撃力を与える回転装置とを備えた構成のドリル打込機、又はこれらにドリルに対し往復打撃振動を与えるダウンザホールハンマーを組み込んだ構成のドリル打込機に使用される地盤掘削用拡径ドリルであって、
前記地盤掘削用拡径ドリルは所定外径で所要の軸心方向の長さを有する円柱状であって、しかも前記拡径ドリルの後部は前記ドリル打込機の前記回転装置が発生させる回転力を伝達できる構造とし且つ前記拡径ドリルに前記ドリル打込機が発生させるドリルの軸心方向の押付力・打撃力又は振動を前記拡径ドリルに負荷できる構造とするとともに、
前記拡径ドリル本体の先端から所定長さの先部の外周部分を切削し、前記拡径ドリルの外周部の切削面がドリル本体の外径円内に内接する三つの平面を形成するように整形し、前記先部が断面三角形状の三角柱部となるようにし、
更に前記の三つの各切削面それぞれに先端にビット又は刃部を有してその左右巾が各切削面の左右巾より短く且つ羽根内面が前記切削面と摺動する板状の揺動羽根を配置し、しかも前記揺動羽根の後端近くで前記揺動羽根を前記切削面に対して直角の軸支ピンで枢支して前記揺動羽根をその軸支ピンまわりに前記切削面と摺動しながら回転可能に軸着する構造とし、更に前記軸支ピンを中心とした径差がある二つの半径が描く円弧軌跡の間にある前記切削面領域を底面として外方に所定厚み突出した突出部をドリル軸心方向に二個所以上設け、しかも前記突出部のドリル軸心方向の縦断面形状が底面の径差の下面長さより突出部の上面の長さが長くなる逆台形の形状寸法とし、又前記揺動羽根の内側に前記切削面に設けた逆台形状の前記突出部を嵌入できる断面逆台形状の空間のアリ溝を前記揺動羽根の内側に設け、しかも前記揺動羽根が前記軸支ピンまわりに回動して揺動羽根の側辺部がドリル本体の外径より外側に突出した所定角度の拡径位置で前記揺動羽根に取付けた切削面に向けてスプリングで付勢されたストッパーピンが切削面に設けたピン受溝の一方の溝端にあるストッパーピン用丸ザグリに向けて圧接させて回転停止させるとともに前記揺動羽根のアリ溝に前記突出部の嵌合状態を保持することで拡径状態を保持して拡径削孔できるようにし、更に揺動羽根の後部の軸支部JBまわりの外周側面α,βと凹んだ前記切削面CFの外周に垂直に立ち上がった切削壁面GFとのα’,β’の当接により、揺動羽根SFに地盤側から高い回転トルクと押付力が作用しても前記の拡径構造の破損を少なく拡径削孔ができることを特徴とするドリル打込機に使用される地盤掘削用拡径ドリル。
【請求項2】
前記揺動羽根に設けた前記アリ溝の前記揺動羽根の回転方向の溝終端及び始端ともに開口されていて、前記アリ溝に前記揺動羽根が回動することでアリ溝内の異物を外方に排出できることを特徴とする請求項1記載のドリル打込機に使用される地盤掘削用拡径ドリル。
【請求項3】
前記三つの切削面の各揺動羽根を拡径方向にした状態で、ドリル本体の外周で拡径した隣り合う揺動羽根の羽根間に排泥用空間が形成されて、同排泥空間をドリルの外周に確保できるようにした、請求項1又は2いずれか記載のドリル打込機に使用される地盤掘削用拡径ドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤掘削用ドリルに回転力と押付力を与えて削孔する回転装置を備えた構成のドリル打込機、又は管内で往復動してドリルに振動又は打撃力を与えるダウンザホールハンマーを備えた構成のドリル打込機に使用されるドリルであって、ドリル本体の外径より広い径の削孔を可能とする拡径削孔ドリルの構造の改良発明に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地盤削孔工法でドリル打込機に用いる掘削工法としては、下記1),2),3),4)の工法があり、これらを大きく分けると単管削孔工法と二重管削孔工法に分けられる。
1):ドリル打込機のトップハンマー方式(打撃・左正回転・押込み)によるケーシング(外管)の内側にインナーロッド(内管)を配置した二重管削孔工法。
2):前記1)の二重管削孔工法のケーシング(外管)かインナーロッド(内管)のみを用いる単管削孔工法。
3):ドリル打込機が左正回転・押込みするとともにケーシング(外管)とインナーロッド(内管)の上端にダウンザホールハンマー(先端打撃)を接続して削孔した二重管削孔工法。
4):前記3)のケーシング(外管)もしくはインナーロッド(内管を外管に使用)にダウンザホールハンマーを接続した単管削孔工法。
上記に記した種々の掘削工法等があり、削孔後はアンカー体(テンドン)を挿入しセメントミルク注入を行う。
【0003】
しかしながら、上記各削孔工法には下記イ,ロの問題点があった。
イ):ドリル打込機の二重管削孔ツールスは3種類程(他大径あり)ある。ケーシング(外管)のオスネジ部内径側が肉厚(アプセット加工)となりケーシング内径に見合うインナーロッドと取り付けるビットサイズが変更され、ドリル打込機の性能にもよるが、大深度削孔に対する打撃力低下、排泥(スライム)沈殿によるジャーミング(スライムによる締め付け)等で削孔不能となる場合がある。
ロ):ケーシングのみの単管削孔工法の場合も上記と同じことが起こる。
ダウンザホールハンマー(先端打撃)二重管削孔の場合、ドリル打込機に用いる拡径ビットが左回転用となるが使用できる拡径ビットがなく、従来のケーシング等削孔ツールスを右回転仕様へ変更する必要がある。ただしケーシングがアプセット加工材となるため、対応できる拡径ビットサイズを同時製作する必要があり、コスト高となってしまう。
単管削孔工法の場合も、上記ダウンザホールエアハンマー二重管削孔と同じくツールスの変更が必要となり、ケーシングを回収後、孔壁が保持できればよいが崩落した場合はアンカー体を挿入することが出来ない為、再度削孔する必要がある。単管掘りは排泥の粉塵対策も必要となり、コスト高となってしまう。
【0004】
ハ):更に、拡径ドリルとして、地盤を所定深さ削孔した後ドリル本体の先端の掘削羽根がドリル軸心まわりに回転してドリルの軸心まわりに展開して拡がって、広い拡径範囲削孔できる構造の拡径ドリル構造も特許文献1,2で周知である。
【0005】
しかし、かかるドリルの下端で掘削羽根がドリルの軸心まわりに拡径する場合、ドリルの拡径した掘削羽根のドリル本体先部の回転取付部には地盤からの大きなトルク、力が作用してこの回転取付部が破損し易く、十分な拡径削孔が困難であるという問題点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2005-299217号公報
【特許文献2】特開2014-43732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の拡径ドリルの構造が地盤からの抗力・トルクで破損し易い点を解決し、拡径してもドリルの破損が少なく長時間使用できる長寿命の構造の拡径ドリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 先端に掘削用ビット又は刃部を有するドリルを地盤に向って進退可能に取り付ける構造を有するとともに、前記ドリルの後部に前記ドリルをそのドリル軸心まわりに回動させる回転力と,地盤に向けて前記ドリルを加圧する押付力及び又はこれらに打撃力を与える回転装置とを備えた構成のドリル打込機、又はこれらにドリルに対し往復打撃振動を与えるダウンザホールハンマーを組み込んだ構成のドリル打込機に使用される地盤掘削用拡径ドリルであって、
前記地盤掘削用拡径ドリルは所定外径で所要の軸心方向の長さを有する円柱状であって、しかも前記拡径ドリルの後部は前記ドリル打込機の前記回転装置が発生させる回転力を伝達できる構造とし且つ前記拡径ドリルに前記ドリル打込機が発生させるドリルの軸心方向の押付力・打撃力又は振動を前記拡径ドリルに負荷できる構造とするとともに、
前記拡径ドリル本体の先端から所定長さの先部の外周部分を切削し、前記拡径ドリルの外周部の切削面がドリル本体の外径円内に内接する三つの平面を形成するように整形し、前記先部が断面三角形状の三角柱部となるようにし、
更に前記の三つの各切削面それぞれに先端にビット又は刃部を有してその左右巾が各切削面の左右巾より短く且つ羽根内面が前記切削面と摺動する板状の揺動羽根を配置し、しかも前記揺動羽根の後端近くで前記揺動羽根を前記切削面に対して直角の軸支ピンで枢支して前記揺動羽根をその軸支ピンまわりに前記切削面と摺動しながら回転可能に軸着する構造とし、更に前記軸支ピンを中心とした径差がある二つの半径が描く円弧軌跡の間にある前記切削面領域を底面として外方に所定厚み突出した突出部をドリル軸心方向に二個所以上設け、しかも前記突出部のドリル軸心方向の縦断面形状が底面の径差の下面長さより突出部の上面の長さが長くなる逆台形の形状寸法とし、又前記揺動羽根の内側に前記切削面に設けた逆台形状の前記突出部を嵌入できる断面逆台形状の空間のアリ溝を前記揺動羽根の内側に設け、しかも前記揺動羽根が前記軸支ピンまわりに回動して揺動羽根の側辺部がドリル本体の外径より外側に突出した所定角度の拡径位置で前記揺動羽根に取付けた切削面に向けてスプリングで付勢されたストッパーピンが切削面に設けたピン受溝の一方の溝端にあるストッパーピン用丸ザグリに向けて圧接させて回転停止させるとともに前記揺動羽根のアリ溝に前記突出部の嵌合状態を保持することで拡径状態を保持して拡径削孔できるようにし、更に揺動羽根の後部の軸支部JBまわりの外周側面α,β と凹んだ前記切削面CFの外周に垂直に立ち上がった切削壁面GFとのα’,β’の当接により、揺動羽根SFに地盤側から高い回転トルクと押付力が作用しても前記の拡径構造の破損を少なく拡径削孔ができることを特徴とするドリル打込機に使用される地盤掘削用拡径ドリル
2) 前記揺動羽根に設けた前記アリ溝の前記揺動羽根の回転方向の溝終端及び始端ともに開口されていて、前記アリ溝に前記揺動羽根が回動することでアリ溝内の異物を外方に排出できることを特徴とする前記1)記載のドリル打込機に使用される地盤掘削用拡径ドリル
3) 前記三つの切削面の各揺動羽根を拡径方向にした状態で、ドリル本体の外周で拡径した隣り合う揺動羽根の羽根間に排泥用空間が形成されて、同排泥空間をドリルの外周に確保できるようにした、前記1)又は2)いずれか記載のドリル打込機に使用される地盤掘削用拡径ドリル
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の拡径ドリルによれば、ドリル本体の各ドリル切削面に揺動羽根を取付けたのでドリル本体の外径に収まった状態とこれから突出した拡径状態の揺動羽根により、回転装置又はダウンザホールハンマーにより発生する回転力と押付力又はこれらと往復打撃力とでドリル本体の外径程の削孔ができる。次に削孔の最下位置又は削孔途中でドリルの回転を左又は右の一方向にさせることで、揺動羽根に削孔の地盤内面との押付力と摩擦力が加わって揺動羽根はその軸支ピンまわりに拡径方向に回動して前記ストッパーピンがピン受溝の丸ザグリに係止して拡径状態で削孔する。しかし揺動羽根は断面逆台形状の空間のアリ溝内にドリル切削面から突出した二つ以上ある断面逆台形の突出部を強固に嵌入していることで揺動羽根は前記アリ溝で前記突出部を抱合されながら且つ揺動羽根の内面をドリル本体側の切削面に圧接した状態で接触させながら、その軸支ピンまわりに摺動しながら回転して所定の拡径角度で拡径削孔可能となっている。そして揺動羽根は回転方向及び外方に向った外力・モーメントに対して、アリ溝を介して強固に前記突出部を係合していて切削面から外方に引きはがされること及び押付力・打撃振動が加わってもドリル軸心方向の先後移動されることはない。尚、本発明で押付力のみの負荷では削孔径はドリル本体の外径程であり、小さい。これに回転と押付力と振動・往復打撃力を与えれば拡径して大きく削孔できるものとなる(
図10参照)。
【0010】
又、拡径した揺動羽根の軸支ピンまわりに作用するトルク・力は、揺動羽根の後部の外周面と前記軸支ピンまわりに形成される凹んだ切削面の外周に形成されるドリル本体の垂直の切削壁面とが
図2,4,10(a)の如くαとα’及びβとβ’の個所で当接し、揺動羽根に働く地盤からの反力トルク・外力は当接する切削壁面αとα’,βとβ’によって受け止められて、拡径の状態を強固に保持して、地盤の拡径削孔の作業を長時間可能にする。又、この拡径の状態は、揺動羽根の内面に設けられて切削面に向けてスプリングで付勢されたストッパーピンSPが切削面に設けたピン受溝SPMの溝端の丸ザグリSPM1に押し当てられて、ストッパーピンSPとピン受溝SPMとの拡径状態を安定保持するようにしている。
【0011】
前記拡径ドリルに加えられるドリルの軸心方向の押付力・打撃力・振動は、揺動羽根SFのアリ溝の溝壁面と、ドリルの切削面CFの突出部TSの側面とが全面的に圧接して、揺動羽根SFの軸心方向の荷重と振動にも十分に耐えられるものとなっている。
【0012】
更に詳しくは、本発明は下記の利点と応用可能性を有する。
1.前記三角柱部SANの各切削面に付属した三枚の揺動羽根SFにより、羽根スライド拡径方式で回転と押付力並びに地盤との強い摩擦圧に対して、円周方向に三枚の揺動羽根SFで分散して拡径を保持可能となる。
2.揺動羽根SFの拡径削孔できることで、二重管削孔工法のドリル打込機用ケーシングパイプ(アプセット材)に対応したサイズのドリルとして使用できる。
3.上記2.によって、拡径率アップの6インチケーシング用でインナー4インチ仕様を可能としている。
4.回転と押付力並びに地盤との強い摩擦圧による拡径、縮径は逆転の回転で、もしくはインナーロッド引抜にて行うことができる。
5.ストッパーピンSPとピン受溝SPMとによる拡径保持の簡易的なロック機構が可能で、簡易的なロックのため、上記4.の
図13に示す縮径状態へと移行することが容易である。
6.三枚ある各揺動羽根SFの個別交換が
図12に示すように容易に行えることで、損傷が大きい揺動羽根SFだけの交換で長く使用できるためコストダウンとなる。
7.拡径すると揺動羽根間のドリル本体DHの外周に広い排泥空間HSを3個所確保でき、排泥空間HSをドリルDR自体に特別に設ける必要もなく、排泥効率を上げるための工夫を行っている。(
図10参照)
8.拡径偏心を三角柱部の各切削面のセンターで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例の地盤掘削用ドリルの非拡径状態の正面図である。
【
図2】
図2は、実施例の地盤掘削用ドリルの拡径状態の正面図である。
【
図3】
図3は、実施例の地盤掘削用ドリルの非拡径状態の拡大図である。
【
図4】
図4は、実施例の地盤掘削用ドリルの拡径状態の拡大説明図である。
【
図5】
図5は、実施例の地盤掘削用ドリルのドリル本体の先部の外周部を切削した切削面が露出した揺動羽根を枢着する前の状態のドリルの正面図である。
【
図6】
図6は、実施例の地盤掘削用ドリルのドリル本体先端に形成された切削面と,同切削面に突出させた二つの突出部と、揺動羽根の枢支軸の軸支ピン穴と,ストッパーピンのピン受溝と,切削面の境界に形成されるドリル本体の垂直な切削壁面の状態を示す拡大説明図である。
【
図7】
図7は、本実施例の地盤掘削用ドリルの縦断面図である。
【
図8】
図8は、実施例のストッパーピンのストッパーピンカバーとその止ネジを示すストッパーピンカバーを示す平面図である。
【
図9】
図9は、本実施例の地盤掘削用ドリルの揺動羽根の逆台形状の嵌挿空間の二つのアリ溝と軸支ピンと軸孔と取付穴との取付構造を示す説明図である。
【
図10】
図10は、実施例の地盤掘削用ドリルに枢支された揺動羽根の揺動による拡径と非拡径の状態における地盤掘削用ドリルの底面を示す説明図である。
【
図11】
図11は、本実施例の地盤掘削用ドリルにおける拡径のストッパーピンのピン受溝の丸ザグリSPM1の位置と非拡径でのピン位置SPM2を示す説明図である。
【
図12】
図12の(a)~(e)は、実施例のドリル本体の切削面に揺動羽根を取り付ける組立行程を示す説明図である。
【
図13】
図13は、実施例の地盤方向に押し出されたドリルを外管GK内に収容する行程を示す説明図である。
【
図14】
図14は、実施例のドリルを外管GK先端へ引き出して回転装置からドリルに対し回転と押付力と与え、同時に外管の内管内に内蔵した内蔵ピストンをダウンザホールハンマーとして使用して往復打撃力をドリルに与える構造を示す説明図である。
【
図16】
図16は、実施例のドリルの使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の請求項2の発明及び実施例では揺動羽根SFの円弧状アリ溝AMの終端及び始端は開口されており、アリ溝AM内に進入した異物は揺動羽根SFが回動することで始端及び終端の開口から異物を排出でき、揺動羽根が円滑に回動でき、更に有用性が高い。
又、本発明の切削面CFに突出される突出部TSの製作方法として、ドリル本体DHからその外周部を切削して切削面CFを整形する作業工程で、前記突出部が切除されず残るように切削加工することで切削面CFと一体的になった突出部TSを作製できる。又はフラットとなった切削面CFに突出部形状の平板部分をボルト・ネジ等で切削面CFに固着させることによって作製してもよい
【実施例0015】
以下、
図1~
図16に示す本発明の実施例の地盤掘削用の拡径ドリルについて、図面に基づいて説明する。
DRは地盤掘削用拡径ドリル、DHはNi合金のドリル本体、DKは拡径ドリルDRの後部、DSは拡径ドリルDRの先部、OUFは拡径ドリルDRの押付力受面、SPは揺動羽根SFに取付けて切削面CFに向けてコイルスプリングSPSで付勢されたストッパーピン、SPCはストッパーピンカバー、SPSはストッパーピンSPを付勢するコイルスプリング、SRはドリル後部DKに設けた回転力伝達のためのスプライン突条、SPMはピン受溝、SPM1はピン受溝SPMの丸ザグリ、SPM2はピン受溝SPMの非拡径状態のピン位置、KHはドリル打込機DUKに装置され、ドリルDRに回転力と押付力を与える回転装置、KH1は回転伝達部、KH2は内管である打込管、KH3は最下段の打込管で下記のダウンザホールハンマーDHHのケーシングとなっている。KH31は最下段の打込管KH3(DHH)の内側に形成したスプライン係合部、KH4は管受部、DUKはドリル打込機、DUK0は打込機DUKのリーダー、GKは外管、GKGは外管外輪、CFはドリルDRの外周部を切削して三個形成された切削面、SFは先端にビットBを設けた揺動羽根、JBは同揺動羽根SFをドリル後部DKで前記切削面CFに枢支する軸支部、JB0は軸支部JBの軸支ピン、JB1は軸支ピンJB0のC型止め輪、JHは切削面CFに設けた軸支部JBのための軸孔、SPMは切削面CFに設けた前記ストッパーピンSPを嵌入して非拡径位置で揺動羽根SFを静止できるピン受溝、SPCはストッパーピンSPのストッパーピンカバー、GFは切削面CFの軸支部JBの外周の切削壁面の垂直の外周壁面、TSは切削面CFから突出する二つの突出部であって、ドリル本体DHから切削面CFを切削加工で作製する際に切削面CFから一体的に突出するように切削加工することで作製する。Bは揺動羽根SFの先端に設けた削孔用ビット、AMは揺動羽根SFの内面に設けた二つのアリ溝である。HSは拡径した揺動羽根SFの間に形成される排泥空間、FSはエア又は水の噴出孔、HWは拡径ドリルDR内部の給水路、α・α’,β・β’は揺動羽根SFと外周壁面GFとの当接個所、DHHは振動を与える内管KH3内を往復動するダウンザホールハンマーである。
【0016】
本実施例は、外径が125mmで軸方向の長さが570mmのNi合金を用いた円柱状の拡径ドリルDRであって、その後部DKに(下向き掘削の場合はドリル上部に相当)260mmの巾の円周部に拡径ドリルDRの軸心方向の複数のスプライン突条SRを設けて回転入力部としている。回転装置KHの回転伝達部KH1の回転出力軸KSJと外管GKとはネジ連結部KSSと連結され、更に外管GKと内管K2とは連結ネジNKNで固着している。押圧を伝える最下段打込管KH3はダウンザホールハンマーDHHになっていてその下端は拡径ドリルDRの中間段部に設けた押付力受面OUFに加圧していて、前記最下段打込管KH3のスプライン係合部KH31と拡径ドリルDRのスプライン突条SRと嵌合して50~70RPM程の回転数でドリル回転が伝達される。又前記最下段打込管KH3の下端の管端から拡径ドリルDRの中間にある前記押付力受面OUFへ回転装置KHの押付力又はダウンザホールハンマー装置DHHを組み込んだ構造の場合は打撃力・振動が拡径ドリルDRに荷重されて拡径ドリルDRを回転させながら地盤方向に押圧又は加圧して拡径ドリルDRによる削孔AHの拡径を効率的に行われる。尚、この削孔方向に拡径ドリルDRを押圧する回転装置KH及びダウンザホールハンマーDHH(KH3)を使用する削孔工法は、周知でその機械はドリル打込機DUKとして広く知られている。
【0017】
又、
図14に示す如く、外管GKの内側の内管KH2の下端にドリルDRに対して往復打撃力を与えるダウンザホールハンマーDHH(KH3)を接続し、回転装置KHから送られる水、又は空気圧を作動流体としてダウンザホールハンマーDHH内の内蔵ピストンDHPを先後方向に往復させて、ドリルDRに往復打撃力を加えて削孔力を高めている。ダウンザホールハンマーDHD(KH3)は外管GK、回転出力軸KSJ、回転伝達部KH1を介して回転装置KHで回転し、ダウンザホールハンマーDHH下部内側に取付けたチャックCHKと拡径ドリルDRのスプラインSRが係合して拡径ドリル DRは回転する(
図14,15参照)。
【0018】
この回転装置KHは、ドリル打込機DUHのリーダーDUK0に打込方向に進退自在にセットされた拡径ドリルDRを内管KH2・KH3を介してドリルDRの押付力受面OUFで削孔方向に押付しながらダウンザホールハンマーDHHの往復動する内蔵ピストンDHPで往復打撃力とを与えて回転させて地盤を削孔する。この削孔技術は、削孔工法で古くから使用されてきて周知であるので、詳細は省略する。
【0019】
本発明の実施例の拡径ドリルDRでは、正又は負の回転方向に回転すれば、ドリル先部DSの三つの切削面CFにそれぞれ軸支部JBの軸支ピンJB0まわりに揺動可能としている。揺動羽根SFは、無回転の場合はストッパーピンSPがピン受溝SPMの丸ザグリSPM1の反対の溝端の位置SPM2にある。拡径ドリルDRの回転速度が高くなると軸支ピンJB0まわりに揺動羽根SFの重さと回転により遠心力が発生して回転しようとする。回転数が増加して拡径すれば、ストッパーピンSPがストッパーピン受溝SPMに嵌合して、
図2,4,10(a),11の如く揺動羽根SFの先端はドリル本体DHの外径より外方に拡径する。この拡径は、削孔面と揺動羽根SFと地盤の抵抗で拡径状態は保持され、更にスプリングで付勢されたストッパーピンSPがピン受溝PMの丸ザグリSPM1に係合した状態を安定維持する(
図11参照)。尚、非拡径ではストッパーピンSPはピン受溝SPMの丸ザグリSPM1の反対溝の溝端SPM2にある(
図11参照)。
【0020】
拡径した揺動羽根SFは、拡径した分だけ削孔SHから強い拡力、反トルクを受ける。これに対しては、アリ溝AMと二つの突出部TSとの逆台形の嵌合状態が強固に連結し分離することはない。
【0021】
図1~16に示す実施例の符号について説明する。
DRは、実施例のNi合金の軸心方向の長さ570mmで最大径125mm直径の円柱状の地盤掘削用拡径ドリル,DHは拡径ドリルDRの中央にある125mm外径のドリル本体、DKは拡径ドリルDRの後部、DSは拡径ドリルDRの先部、CFはドリル本体DHを切削して三個形成された切削面、SANは三つの切削面CFがあるドリル本体DHの部位の三角柱部である。TSは同切削面から10mm厚みに断面逆台形状に一体的に突出させた突出部、SFは先端にビットBを設けた揺動羽根、JBは同揺動羽根SFの後部で前記切削面CFに枢支する軸支部、JB0はその軸支ピン、JB1は同軸支ピンJB0のC型抜止リング、JHは切削面CFに設けた軸支部JBのための軸孔、AMは揺動羽根SFの内側に2個所設けた逆台形状の空間のアリ溝で、前記突出部TSを嵌入できる逆台形断面の空間となっている。Bは揺動羽根SFの先端に設けた削孔用ビット、SPは揺動羽根SFに取付けたコイルスプリングSPSで半径方向に付勢されたストッパーピン、SPMは設けた前記ストッパーピンSPを嵌入して拡径位置と非拡径位置で揺動羽根SFを静止できるピン受溝である。外周壁面GFは揺動羽根SFの軸支部JB近くに設けて、ドリル本体DHの切削した凹んだ切削面CFの境界に形成される切削面CFに垂直な切削壁面で、揺動羽根SFの後部DKの外周面とα,α’,β,β’で当接して、揺動羽根SFの拡径状態を保持し、揺動羽根SFに働く削孔からの外力、回転トルクを相殺するようにして、揺動羽根SFの取付構造が破損しにくいようにしている(
図2,4参照)。
【0022】
更に、揺動羽根SFは、三つの切削面CFから突出した断面逆台形状の突出部TSが揺動羽根SFの断面逆台形状アリ溝AMに挿入して係合して支持される。揺動羽根SFをドリル本体DHから軸心方向の先後方向に強い剥離力が生じても、揺動羽根SFの逆台形状のアリ溝AMと突出部TSの逆台形状の嵌合は強く係合して、ドリル軸心方向の強い力又トルクに対して充分この部分の破損がないようにしている。よって揺動羽根SFに大きな拡力・反トルクが作用しても揺動羽根SFが拡径ドリルDRの切削面CFから分離破砕されることなく、よって高い掘削力でドリルは削孔できる。
【0023】
又、前記のように揺動羽根SFで働くドリル軸心方向の強い力に対して揺動羽根SFのアリ溝AM内面と切削面CFと連接した複数の突出部TSの外周面が面接触して重なるようにあって、軸心方向の高い打撃力・押付力に対しても、本実施例の拡径ドリルDRは破損することなく耐えることができるようになっている。
【0024】
このように拡径して、大きい径の削孔を可能にするとともに掘削の削孔力・トルクに対して充分に耐えられる構造であり、長作動時でも削孔力が低下することなく掘削可能としている。
【0025】
よって、本願実施例では段落0012の1.~8.の効果を達成できるものとなっている。
【0026】
更に本実施例による詳細な1~8の効果を説明する。
本発明の拡径ドリルの特徴として、下記a),b),c),d),e),f),g)のメリットがある。
a)回転体を三面にし、各切削面CFに羽根状の板を配置することにより回転時に羽根状の板が広がりやすい。又、拡径時は削孔穴が安定した形状になりやすい。(前記8.の効果)(
図9参照)
b)拡径した状態を保持する機構があるので、多様な状況の面に対して削孔穴が安定した形状になりやすい。(前記5.の効果)(
図6参照)
c)本発明を二重管削孔の内管に使用すれば、拡径は回転と押付力並びに地盤との摩擦圧にて可能であり、縮径は拡径ドリルを二重管の外管に引き込むことで可能である。簡単な操作で行うことができる。(前記4.の効果)(
図13参照)
d)請求項2記載のアリ溝構造と、拡径時のストッパー(回転トルク、押付力、打撃力を受ける面と共用)を揺動羽根SFの外側に置くことで、アリ溝AMの回転方向の溝が終端及び始端ともに開口されている。揺動羽根SFの回動によって噛みこんだ異物を外方へ排出しやすくしている。(前記4.の効果)(
図11参照)
e)前記d)の通り、施工中の管を繋ぐ操作時に拡径ドリルを外管内部に引き込むので揺動羽根が非拡径状態になる。その際、揺動羽根SFが回動し異物除去ができる。異物除去した揺動羽根は再度削孔する際も円滑に拡径し、削孔穴も安定した形状になりやすい。(前記4.の効果)(
図11,13参照)
f)拡径ドリル全体の一式交換ではなく、損傷した揺動羽根SFのみの交換で再度使用することが可能なのでコストダウンできる。又交換により地盤の変化に対応できる。(前記6の効果)(
図12の揺動羽根SFの組立行程参照)
g)揺動羽根が拡径した空間を排泥空間HSに利用している。排泥の効率を上げ、削孔能力を維持しやすい。(前記7.の効果)(
図2,10参照)
【0027】
よって、本実施例の三枚揺動羽根SFのドリルDRは段落0012の1~8の利点を有する。
本発明は、地盤掘削を主用途とするが、地盤以外のプラスチック材・その他地盤以外の材料の削孔にも使用できる。本発明は押付力、打撃力又は振動力を回転装置で発生させる場合には内管内のダウンザホールハンマー装置を不要にできる場合もある。