(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148459
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】延伸機および延伸機用のレール
(51)【国際特許分類】
B29C 55/16 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
B29C55/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061623
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 柾紀
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一郎
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210AJ14
4F210QA02
4F210QC07
4F210QD25
4F210QL04
4F210QL05
4F210QL06
4F210QL16
(57)【要約】
【課題】リンク機構の移動時に振動が発生することを抑制する。
【解決手段】延伸機は、無端チェーンを構成するように連結された複数のリンク機構と、リンク機構が走行するレール14とを備える。レール14は、レール14が延びる延伸方向に沿って複数の部分レール141が連結されて構成される。レール14の2つの側面142の少なくとも一方に板部材147が取り付けられる。板部材147の延伸方向に沿った長さは、部分レール141の延伸方向に沿った長さよりも長い。
【選択図】
図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む延伸機:
無端チェーンを構成するように連結された複数のリンク機構;及び
前記リンク機構が走行するレール、
ここで、前記レールは、前記レールが延びる延伸方向に沿って複数の部分レールが連結されて構成され、
前記レールの2つの側面の少なくとも一方に板部材が取り付けられ、
前記板部材の前記延伸方向に沿った長さは、前記部分レールの前記延伸方向に沿った長さよりも長い。
【請求項2】
請求項1に記載の延伸機において、
前記レールが配置される支持台を備え、
前記支持台には、前記レールが配置される配置面と交差する面を有する取付側面が形成され、
前記板部材は、前記取付側面と前記レールの前記側面との間に挟み込まれている、延伸機。
【請求項3】
請求項2に記載の延伸機において、
前記板部材は、前記レールの前記側面に接着されている、延伸機。
【請求項4】
請求項2または3に記載の延伸機において、
前記レールの2つの前記側面と接続する上面に設けられる固定板、を備え、
前記板部材は、前記支持台の前記配置面と前記固定板との間に挟み込まれている、延伸機。
【請求項5】
以下を含む、延伸機が有するリンク機構が走行する延伸機用のレール:
前記レールが延びる延伸方向に沿って連結される複数の部分レール;及び
前記レールの2つの側面の少なくとも一方に取り付けられる板部材、
ここで、前記板部材の前記延伸方向に沿った長さは、前記部分レールの前記延伸方向に沿った長さよりも長い。
【請求項6】
請求項5に記載の延伸機用のレールにおいて、
前記レールが配置される支持台を備え、
前記支持台には、前記レールが配置される配置面と交差する面を有する取付側面が形成され、
前記板部材は、前記取付側面と前記レールの前記側面との間に挟み込まれている、延伸機用のレール。
【請求項7】
請求項6に記載の延伸機用のレールにおいて、
前記板部材は、前記レールの前記側面に接着されている、延伸機用のレール。
【請求項8】
請求項6または7に記載の延伸機用のレールにおいて、
前記レールの2つの前記側面と接続する上面に設けられる固定板、を備え、
前記板部材は、前記支持台の前記配置面と前記固定板との間に挟み込まれている、延伸機用のレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸機および延伸機用のレールに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜(例えば、樹脂シート又は樹脂フィルム)を搬送しながら縦方向や横方向に引き延ばす延伸機が知られている。特許文献1には、シート状物の縦延伸と横延伸とを行う同時二軸延伸機が記載されている。特許文献1に記載されている同時二軸延伸機は、無端リンク装置を有している。無端リンク装置は、レール及びレールに沿って移動する複数の等長リンク装置から構成されており、それぞれの等長リンク装置は、レール上を転がりながら移動するローラを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レールは、複数の部分レールを連結することで構成される。このようなレール上をリンク装置が移動する場合には、ローラが部分レール同士の連結部を通過する時に振動が発生する。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態の延伸機が有するレールは、複数の部分レールが連結されて構成される。レールの2つの側面の少なくとも一方には、板部材が取り付けられる。板部材の延伸方向に沿った長さは、部分レールの延伸方向に沿った長さよりも長い。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態によれば、リンク装置の移動時に振動が発生することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る薄膜製造システムを示す模式図である。
【
図2】実施の形態に係る延伸機の構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】実施の形態に係る延伸機の構造を模式的に示す他の平面図である。
【
図4A】実施の形態に係るリンク機構及びレールを模式的に示す平面図である。
【
図4B】実施の形態に係るリンク機構及びレールを模式的に示す他の平面図である。
【
図5】実施の形態に係る複数のリンク機構の1つを拡大して示す平面図である。
【
図6】実施の形態に係るリンク機構の断面図である。
【
図7】実施の形態に係るガイドローラ及びその周辺の構造を示す部分拡大断面図である。
【
図8】実施の形態に係るレールの一部の外観斜視図である。
【
図9A】
図8に示されるA-A線での実施の形態に係るレールの断面図である。
【
図9B】
図8に示されるB-B線での実施の形態に係るレールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図にて、同一または実質的に同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
<製造システムの構成>
図1は、実施の形態に係る延伸機を含む薄膜製造システムを示す模式図である。
図1に示される薄膜製造システム1は、押出装置(押出機,混練押出機)2,Tダイ3,原反冷却装置4,延伸機5,引き取り装置6および巻き取り装置7を有する。
【0011】
薄膜製造システム1では、次のようなプロセスによって樹脂膜が製造される。まず、押出装置2に原料が供給される。より特定的には、押出装置2の原料供給部(原料投入口,ホッパ)2aに、樹脂材料(例えば、ペレット状の熱可塑性樹脂材料)が供給される。
【0012】
押出装置2に供給された原料は、混練(混合)されながら搬送される。より特定的には、押出装置2に供給された原料は、押出装置2が備えるスクリューの回転によって前方へ送られながら溶融され、かつ、混練される。
【0013】
押出装置2によって混練された原料(混練物)は、Tダイ3に送り込まれる。Tダイ3に送り込まれた混練物は、Tダイ3を通過し、Tダイ3のスリットから原反冷却装置4に向けて押し出される。混練物は、Tダイ3を通過することにより、所望の形状(ここでは、フィルム形状)に成形される。
【0014】
混練物は、Tダイ3から原反冷却装置4によって連続的に押し出される。Tダイ3から押し出された混練物は、原反冷却装置4によって冷却されて樹脂膜8になる。その後、樹脂膜8は延伸機5に供給される。
【0015】
延伸機5に供給された樹脂膜8は、延伸機5によってMD方向およびTD方向に延伸される。延伸機5によって延伸処理(引き伸ばし処理)が施された樹脂膜8は、引き取り装置6を介して巻き取り装置7に搬送され、巻き取り装置7に巻き取られる。巻き取り装置7に巻き取られた樹脂膜8は、必要に応じて切断される。
【0016】
図1に示される薄膜製造システム1は、上記のようなプロセスによって薄膜を製造する。もっとも、薄膜製造システム1は、製造する薄膜の特性などに応じて種々の変更が可能である。例えば、
図1に示される引き取り装置6の近傍に抽出槽が設置され、樹脂膜8に含まれる可塑剤(例えば、パラフィン)が除去される場合もある。
【0017】
薄膜製造システム1を構成している延伸機5は、樹脂膜8をMD方向に搬送しながら、その樹脂膜8をMD方向およびTD方向に引き延ばす。言い換えれば、MD(Machine Direction)方向は、樹脂膜8の搬送方向である。また、TD(Transverse Direction)方向は、樹脂膜8の搬送方向と交差する方向である。そこで、以下の説明では、MD方向を“搬送方向”または“縦方向”と呼び、TD方向を“横方向”と呼ぶ場合がある。MD方向(搬送方向,縦方向)とTD方向(横方向)とは、互いに交差する方向であり、より特定的には、互いに直交する方向である。つまり、
図1に示される延伸機5は、樹脂膜8を搬送しながら、その樹脂膜8を互いに交差する二方向に同時に延伸させることが可能な延伸機であり、一般的に“同時二軸延伸機”と呼ばれる。
【0018】
<延伸機>
図2及び
図3は、実施の形態に係る延伸機の構造を模式的に示す平面図である。延伸機5は、一対のリンク装置10を有している。一対のリンク装置10は、平面視にて互いに離間している。以下の説明では、一対のリンク装置10の一方を“リンク装置10R”と呼び、一対のリンク装置10の他方を“リンク装置10L”と呼ぶ場合がある。
【0019】
図2及び
図3では、リンク装置10Rは、搬送方向(MD方向)に対して右側(R側)に配置されおり、リンク装置10Lは、搬送方向(MD方向)に対して左側(L側)に配置されている。リンク装置10Rとリンク装置10Lとは、TD方向に離間しており、樹脂膜8を挟んでTD方向に対向している。樹脂膜8は、リンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペース内でMD方向に搬送される。言い換えれば、対向するリンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペースは、樹脂膜8を搬送するための搬送路として機能する。
【0020】
図3を参照する。延伸機5は、搬送方向(MD方向)に沿って3つの領域20A,20B,20Cに分けられる。領域20Aは、予熱領域(プレヒート領域)であり、領域20Bは、延伸領域であり、領域20Cは、熱固定領域である。領域20A,20B,20Cは、この順で搬送方向(MD方向)に並んでいる。
【0021】
延伸機5の樹脂膜8の入口(
図2及び
図3中に「IN」と示されている部分)は、領域20Aに存在している。また、延伸機5の樹脂膜8の出口(
図2及び
図3中に「OUT」と示されている部分)は、領域20Cに存在している。そして、樹脂膜8の入口がある領域20Aと樹脂膜8の出口がある領域20Cとの間に、延伸処理が行われる領域20Bが存在している。
【0022】
熱処理部9は、領域20Aの一部,領域20Bの全部および領域20Cの一部を覆っている。また、熱処理部9は、リンク装置10R,10Lの中央部を覆っており、リンク装置10R,10Lによって搬送される樹脂膜8を加熱する。本実施形態の熱処理部9は、樹脂膜8を所望の温度に加熱可能なオーブンによって形成されている。樹脂膜8は、リンク装置10R,10Lに把持された状態で、熱処理部9としてのオーブンの庫内を通過する。
【0023】
<リンク装置>
リンク装置10R,10Lのそれぞれは、無端チェーンを構成するように連結された複数のリンク機構11を有している。それぞれのリンク機構11は、樹脂膜8を把持する治具であるクリップ21を備えている。樹脂膜8は、リンク装置10Rを構成しているリンク機構11が備えるクリップ21と、リンク装置10Lを構成しているリンク機構11が備えるクリップ21と、によって保持される。すなわち、樹脂膜8の一側(R側/右側)は、リンク装置10Rが備える複数のクリップ21によって把持され、樹脂膜8の他側(L側/左側)は、リンク装置10Lが備える複数のクリップ21によって把持される。
【0024】
リンク装置10R,10Lが備えるリンク機構11は、支持台(ベッド)140(
図8、
図9A及び
図9B参照)の上に配置された一対の延伸機用レールであるレール13,14上を走行する。レール14は、レール13の外側に配置され、レール13を取り囲んでいる。別の見方をすると、レール13は、レール14の内側に配置され、レール14に取り囲まれている。
【0025】
レール13,14は、領域20A,20B,20Cに亘って環状に配置されている。より特定的には、レール13,14は、樹脂膜8の入口がある領域20Aで折り返されるとともに、樹脂膜8の出口がある領域20Cで折り返されて、領域20A,20B,20Cに亘って環状に配置されている。
【0026】
リンク装置10Rは、レール13の内側に配置された3つのスプロケット15,16,17を有する。同様に、リンク装置10Lは、レール13の内側に配置された3つのスプロケット15,16,17を有する。それぞれのリンク装置10R,10Lが有するスプロケット15,16は、領域20Aに配置されており、それぞれのリンク装置10R,10Lが有するスプロケット17は、領域20Cに配置されている。もっとも、スプロケット15,16は、領域20Aの一部を覆っている熱処理部9の外に配置されている。また、スプロケット17は、領域20Cの一部を覆っている熱処理部9の外に配置されている。つまり、それぞれのリンク装置10R,10Lのスプロケット15,16,17は、熱処理部9としてのオーブンの庫外に配置されている。
【0027】
リンク装置10R,10Lが備える複数のリンク機構11は、レール13,14に沿って移動可能な状態で、レール13,14上に配置されている。リンク装置10Rのスプロケット15,16,17は、リンク装置10Rの複数のリンク機構11と噛み合う。よって、スプロケット15,16,17が回転すると、リンク装置10Rの複数のリンク機構11に駆動力が働き、それらリンク機構11がレール13,14に沿って移動(走行)する。
【0028】
リンク装置10Lのスプロケット15,16,17は、リンク装置10Lの複数のリンク機構11と噛み合う。よって、スプロケット15,16,17が回転すると、リンク装置10Lの複数のリンク機構11に駆動力が働き、それらリンク機構11がレール13,14に沿って移動(走行)する。
【0029】
つまり、レール13,14は、複数のリンク機構11を所定方向に移動(走行)させるためのガイドレールである。レール13,14のそれぞれは、詳細を後述する複数の部分レールが連結されて構成される。
【0030】
以下の説明では、
図3に示されるリンク装置10R,10Lのそれぞれについて、樹脂膜8と対向する側を“膜側”と呼び、膜側と反対側を“リターン側”と呼ぶ場合がある。つまり、クリップ21が樹脂膜8を把持した状態で、複数のリンク機構11が入口(IN)から出口(OUT)に向かって移動する側(サイド)が膜側である。また、膜側の反対に位置し、クリップ21が樹脂膜8を把持しない状態で、複数のリンク機構11が出口(OUT)から入口(IN)に向かって移動する側(サイド)がリターン側である。
【0031】
複数のリンク機構11のうち、隣り合うリンク機構11間の間隔(“リンクピッチ”と呼ばれることもある。)は、レール13とレール14との間の間隔(離間距離)に応じて変化する。言い換えれば、レール13とレール14との離間距離が調節されることにより、隣り合うリンク機構11間の間隔が調節可能である。
【0032】
図4A及び
図4Bは、
図3に示される実施の形態に係るリンク機構およびレールを模式的に示す平面図である。
図4A及び
図4Bに示されるように、レール13,14の離間距離L1が小さくなるほど、隣り合うリンク機構11が成す角度が大きくなり、隣り合うリンク機構11間のピッチP1が大きくなる。一方、レール13,14の離間距離L1が大きくなるほど、隣り合うリンク機構11が成す角度が小さくなり、隣り合うリンク機構11間のピッチP1が小さくなる。
【0033】
既述のとおり、それぞれのリンク機構11は、樹脂膜8を把持するクリップ21を有している。よって、隣り合うリンク機構11間のピッチP1の増減に応じて、隣り合うクリップ21間のピッチP2も増減する。具体的には、レール13,14の離間距離L1が減少すると、リンク機構11間のピッチP1が増大する。リンク機構11間のピッチP1が増大すると、クリップ21間のピッチP2も増大する。すなわち、
図4Aに示される状態から
図4Bに示される状態に移行する。一方、レール13,14の離間距離L1が増大すると、リンク機構11間のピッチP1が減少する。リンク機構11間のピッチP1が減少すると、クリップ21間のピッチP2も減少する。すなわち、
図4Bに示される状態から
図4Aに示される状態に移行する。
【0034】
尚、複数のリンク機構11のそれぞれがクリップ21を備えているので、隣り合う2つのリンク機構11間のピッチP1と、それらリンク機構11が備える2つのクリップ21間のピッチP2とは、同一である。すなわち、
図4A及び
図4Bのそれぞれにて、P1=P2が成り立つ。
【0035】
<延伸機(同時二軸延伸機)の動作>
原反冷却装置4から延伸機5に供給された樹脂膜8は、延伸機5の入口でリンク装置10R,10Lにより把持される。具体的には、樹脂膜8は、
図2及び
図3に示されるリンク装置10R,10Lのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持される。より具体的には、樹脂膜8の幅方向一側がリンク装置10Rのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持され、樹脂膜8の幅方向他側がリンク装置10Lのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持される。
【0036】
幅方向両側がクリップ21によって把持された樹脂膜8は、クリップ21を含むリンク機構11の移動に伴って、延伸機5の入口から出口に向かって搬送され、領域20A(予熱領域),領域20B(延伸領域),領域20C(熱固定領域)をこの順で通過する。樹脂膜8は、領域20B(延伸領域)を通過する過程でMD方向およびTD方向に引き伸ばされる。その後、樹脂膜8は、領域20C(熱固定領域)を経て出口に到達し、クリップ21から外される。クリップ21から外された樹脂膜8は、引き取り装置6に搬送され、引き取り装置6から巻き取り装置7に搬送される。
【0037】
図3に示されるように、領域20A(予熱領域)では、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2は、ほぼ一定である。このため、領域20Aでは、樹脂膜8に対するTD方向の延伸処理は行われない。従って、領域20Aでは、搬送される樹脂膜8の幅(TD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。
【0038】
また、領域20Aでは、リンク装置10Rの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Aでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Rの膜側でのクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。また、領域20Aでは、リンク装置10Lの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Aでは、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Lの膜側でのクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。この結果、領域20Aでは、樹脂膜8に対するMD方向の延伸処理は行われない。つまり、領域20Aでは、TD方向にもMD方向にも、樹脂膜8に対する延伸処理は行われない。
【0039】
次に、領域20Bでの延伸機5の動作について説明する。領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2が徐々に大きくなっている。このため、領域20Bでは、樹脂膜8は、搬送方向(MD方向)に進むに従ってTD方向に引っ張られて引き伸ばされる。言い換えれば、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、樹脂膜8の幅(TD方向の寸法)が徐々に大きくなる。
【0040】
また、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、徐々に小さくなっている。そして、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Lの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1も、徐々に小さくなっている。このため、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1が徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Rの膜側でのクリップ21のピッチP2も徐々に大きくなる。また、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1が徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Rの膜側でのクリップ21のピッチP2も徐々に大きくなる。この結果、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、樹脂膜8は、MD方向に引っ張られて引き伸ばされる。
【0041】
従って、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、樹脂膜8は、TD方向およびMD方向に引き伸ばされる(延伸される)。すなわち、領域20Bでは、TD方向およびMD方向の延伸処理が、樹脂膜8に対して施される。
【0042】
次に、領域20Cでの延伸機5の動作について説明する。領域20Cでは、リンク装置10Rの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Cでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Rの膜側でのクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。また、領域20Cでは、リンク装置10Lの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Cでは、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Lの膜側でのクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。この結果、領域20Cでは、樹脂膜8に対するMD方向の延伸処理は行われない。
【0043】
上述のように、領域20Aでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1は一定に維持され、かつ、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1も一定に維持される。その後、領域20Bでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1およびリンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1が徐々に拡大される。そして、領域20Cでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1は、再び一定に維持され、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1も再び一定に維持される。このため、リンク装置10R,10Lのそれぞれの膜側では、領域20Cでのリンク機構11のピッチP1は、領域20Aでのリンク機構11のピッチP1よりも大きい。別の見方をすると、リンク装置10R,10Lのそれぞれの膜側では、領域20Cでのクリップ21のピッチP2は、領域20Aでのクリップ21のピッチP2よりも大きい。さらに別の見方をすると、リンク装置10R,10Lのそれぞれの膜側では、領域20Cでのレール13,14の離間距離L1は、領域20Aでのレール13,14の離間距離L1よりも小さい。
【0044】
<リンク機構の構成>
図5は、
図3に示される実施の形態に係る複数のリンク機構の1つを拡大して示す斜視図である。
図6は、
図5に示される実施の形態に係るリンク機構の断面図である。
【0045】
図5及び
図6に示されるように、リンク装置10R,10Lが備えるリンク機構11のそれぞれは、クリップ21に加えて、上段側リンクプレート22と、下段側リンクプレート23と、一対のレールホルダ24a,24bと、一対のレールホルダ24a,24bに跨るベース部材25と、を有している。一方のレールホルダ24aは、レール14上に配置され、他方のレールホルダ24bは、レール13上に配置される。
【0046】
上段側リンクプレート22および下段側リンクプレート23は、平面視で直線的に延びる板状の部材である。ベース部材25は、平面視で直線的に延びている点で上段側リンクプレート22および下段側リンクプレート23と共通しているが、これらよりも厚みが厚い。なお、以下の説明では、レールホルダ24a,24bを特に区別しない場合、これらを“レールホルダ24”と総称する。
【0047】
<レールホルダ>
レールホルダ24aは、ローラ保持部31aと、ローラ保持部31aの長手方向中央に設けられたシャフト32aと、を有する。ローラ保持部31aは、レール14上に、当該レール14を横断するように配置される。よって、レール14上に配置されたローラ保持部31aの長手方向一端側は、レール14の内側(レール13と対向する側)に突出し、ローラ保持部31aの長手方向他端側は、レール14の外側(レール13と対向する側と反対側)に突出する。また、ローラ保持部31aがレール14上に配置されると、シャフト32aは、レール14の直上に位置する。
【0048】
図6に示されるように、レールホルダ24aのシャフト32aは、上段側リンクプレート22,下段側リンクプレート23およびベース部材25の長手方向一端側を貫通している。ベース部材25の基端側,上段側リンクプレート22の基端および下段側リンクプレート23の基端は、シャフト32aに串刺しにされており、シャフト32aを介して互いに回転可能に連結されている。言い換えれば、シャフト32aは、上段側リンクプレート22,下段側リンクプレート23およびベース部材25の基端側の回転軸である。
【0049】
レールホルダ24bは、ローラ保持部31bと、ローラ保持部31bの長手方向中央に設けられたシャフト32bと、を有する。ローラ保持部31bは、レール13上に、当該レール13を横断するように配置される。よって、レール13上に配置されたローラ保持部31bの長手方向一端側は、レール13の内側(レール14と対向する側)に突出し、ローラ保持部31bの長手方向他端側は、レール13の外側(レール14と対向する側と反対側)に突出する。また、ローラ保持部31bがレール13上に配置されると、シャフト32bは、レール13の直上に位置する。
【0050】
レールホルダ24bのシャフト32bは、ベース部材25の長手方向一端(先端)を貫通して当該ベース部材25から突出している。つまり、当該リンク機構11のベース部材25の先端,隣接する他のリンク機構11の上段側リンクプレート22および下段側リンクプレート23の先端は、当該リンク機構11のシャフト32bを介して互いに回転可能に連結される。別の見方をすると、シャフト32bは、上段側リンクプレート22,下段側リンクプレート23およびベース部材25の先端側の回転軸である。
【0051】
<クリップ>
クリップ21は、ベース部材25の基端に設けられている。クリップ21は、本体部41,把持部42,バネ部43などを有している。本体部41は、ベース部材25の基端に固定されている。把持部42は、本体部41に上下に動作可能に取り付けられている。バネ部43は、把持部42が下方に向かって動作するように、把持部42に力を付与する。バネ部43から受ける力によって把持部42が下方に向かって動作することにより、本体部41と把持部42との間に樹脂膜8が挟まれる。つまり、クリップ21によって樹脂膜8が把持される。一方、バネ部43から受ける力に抗して把持部42を上方に向かって動作させると、樹脂膜8の把持が解除される。
【0052】
<ガイドローラ>
レールホルダ24aの下部には、レール14を挟んで対向する一対のガイドローラ51a,51bが設けられており、レールホルダ24bの下部には、レール13を挟んで対向する一対のガイドローラ52a,52bが設けられている。ガイドローラ51a,51b,52a,52bは、金属製である。それぞれのガイドローラ51a,51b,52a,52bは、軸方向両端が開口した筒形の形状を有しており、軸方向一端側(上部)には、径方向外側に突出するフランジ53が一体成形されている。
【0053】
レールホルダ24aの下部に設けられているガイドローラ51a,51bのフランジ53は、レール14上に配置され、レールホルダ24bの下部に設けられているガイドローラ52a,52bのフランジ53は、レール13上に配置されている。より具体的には、ガイドローラ51aのフランジ53は、レール14の上面の外側(レール13と対向する側と反対側)の縁に重ねられ、ガイドローラ51bのフランジ53は、レール14の上面の内側(レール13と対向する側)の縁に重ねられている。また、ガイドローラ52aのフランジ53は、レール13の上面の外側(レール14と対向する側と反対側)の縁に重ねられ、ガイドローラ52bのフランジ53は、レール13の上面の内側(レール14と対向する側)の縁に重ねられている。これにより、レールホルダ24aのガイドローラ51a,51bおよびレールホルダ24bのガイドローラ52a,52bを介して、リンク機構11の全体がレール13,14によって支持されている。
【0054】
言い換えれば、ガイドローラ51a,51b,52a,52bは、リンク機構11を支持する支持ローラである。より特定的には、ガイドローラ51a,51b,52a,52bは、軸方向一端側(上部)に設けられたフランジ53によってリンク機構11を支持する片持ち支持ローラである。別の見方をすると、ガイドローラ51a,51b,52a,52bは、一体成形されたフランジ53を有する鍔付きローラである。
【0055】
4つのガイドローラ51a,51b,52a,52bの形状,構造,寸法などは共通である。そこで、レールホルダ24aに設けられているガイドローラ51a,51bの形状や構造などについてさらに詳細に説明することにより、レールホルダ24bに設けられているガイドローラ52a,52bの形状や構造などについても明らかにする。
【0056】
図6に示されるように、レールホルダ24aのローラ保持部31aは、ベース部材25の下方に突出しているシャフト32aの下端に、シャフト32aを回転軸として回転可能な状態で取り付けられている。具体的には、ローラ保持部31aは、シャフト32aの下端に軸受を介して取り付けられている。
【0057】
図7は、
図6に示される実施の形態に係るガイドローラ51a,51bおよびその周辺の構造を示す部分拡大断面図である。
図7に示されるように、レール14の外側に突出しているローラ保持部31aの一端側には、シャフト(中空シャフト54及びフランジ付きシャフト58)が設けられており、レール14の内側に突出しているローラ保持部31aの他端側には、他のシャフト(中空シャフト55及びフランジ付きシャフト59)が設けられている。尚、以下の説明では、ローラ保持部31aに対してレール14側を下方側、ローラ保持部31aに対してレール14とは反対側を上方側とも呼ぶ場合がある。
【0058】
<中空シャフト>
中空シャフト54は、上下方向に沿って延びる中空の筒状部材である。中空シャフト54の一方側(上部)は、ローラ保持部31aの一端側に設けられている取付け孔に圧入され、中空シャフト54の他方側(下部)は、ローラ保持部31aの下方側に突出している。同様に、中空シャフト55の一方側(上部)は、ローラ保持部31aの他端側に設けられている取付け孔に圧入され、中空シャフト55の他方側(下部)は、ローラ保持部31aの下方側に突出している。これにより、中空シャフト54,55はローラ保持部31aに対して固定された状態で取り付けられるので、レールホルダ24に加わる振動に起因する中空シャフト54,55の脱落等の発生が抑制される。すなわち、中空シャフト54,55の耐振性が向上される。
【0059】
尚、中空シャフト54,55がローラ保持部31aに圧入されるものに限定されない。中空シャフト54,55のローラ保持部31aへの取り付けには、耐振性を有して中空シャフト54,55を固定可能なあらゆる取り付け方法が適用される。
【0060】
ローラ保持部31aの下方側にはカバー27が設けられる。カバー27には開口が形成され、その開口に中空シャフト54,55のうちローラ保持部31aの下方側に突出した突出部が挿入されることによりカバー27が装着される。カバー27は、例えば金属や樹脂を材料として作成され、リンク機構11がレール13,14を移動(走行)する際にはねた油等が後述する軸受56a,56b,57a,57b内に侵入することを防ぐ。
【0061】
<軸受>
中空シャフト54のうちローラ保持部31aの下方側に突出した突出部には、カバー27の下方側でガイドローラ51aが回転可能な状態で取り付けられている。具体的には、中空シャフト54の他方側(下部)は、ガイドローラ51aに挿入されており、ガイドローラ51aと中空シャフト54の下部との間に、軸受56aおよび軸受56bが介在している。軸受56aおよび軸受56bは中空シャフト54の軸方向に重なって設けられる。つまり、ガイドローラ51aは、2つの軸受56a,56bにより、中空シャフト54に対して回転可能に支持されている。尚、軸受56a,56bは上下二段に重なっていることから、以下の説明では、軸受56aを“下側軸受56a”と呼び、軸受56bを“上側軸受56b”を呼ぶ場合がある。
【0062】
また、中空シャフト55のうちローラ保持部31aの下方側に突出した突出部には、カバー27の下方側でガイドローラ51bが回転可能な状態で取り付けられている。中空シャフト55の他方側(下部)は、ガイドローラ51bに挿入されており、ガイドローラ51bと中空シャフト55の下部との間に、軸受57aおよび軸受57bが介在している。軸受57aおよび軸受57bは中空シャフト55の軸方向に重なって設けられる。つまり、ガイドローラ51bは、2つの軸受57a,57bにより、中空シャフト55に対して回転可能に支持されている。尚、軸受57a,57bは上下二段に重なっていることから、以下の説明では、軸受57aを“下側軸受57a”と呼び、軸受57bを“上側軸受57b”を呼ぶ場合がある。
【0063】
軸受56a,56bのそれぞれは、内輪61と、内輪61を取り囲む外輪62と、内輪61と外輪62との間に配置された複数の転動体(ボール)63と、を有する転がり軸受(ボールベアリング)である。内輪61と外輪62との間の隙間には、グリースなどの潤滑剤が封入されている。尚、ガイドローラ51bを支持している軸受57a及び軸受57bは、上述の軸受56a及び軸受56bと同一の非接触式のシールベアリングである。すなわち、軸受57a及び軸受57bは、内輪61,外輪62及び転動体(ボール)63を有し、内輪61と外輪62との間には、グリースなどの潤滑剤が封入されている。
【0064】
<フランジ付きシャフト>
フランジ付きシャフト58は、シャフト部58aと、フランジ部58bとを有する。シャフト部58aは中空シャフト54の軸方向(上下方向)に沿って延び、下方側から中空シャフト54に挿入される。シャフト部58aの一部(上部)は中空シャフト54の上方側に突出する。フランジ付きシャフト58は、シャフト部58aの突出した上部にてワッシャー等の緩み止めを介してナット等の抜け止部材60により中空シャフト54に固定される。
【0065】
フランジ付きシャフト59は、シャフト部59aと、フランジ部59bとを有する。シャフト部59aは中空シャフト55の軸方向(上下方向)に沿って延び、下方側から中空シャフト55に挿入される。シャフト部59aの一部(上部)は中空シャフト55の上方側に突出する。フランジ付きシャフト59は、シャフト部59aの突出した上部にてワッシャー等の緩み止めを介してナット等の抜け止部材60により中空シャフト55に固定される。
【0066】
上述したように中空シャフト54,55は耐振性が向上された状態でローラ保持部31aに取り付けられている。このため、この中空シャフト54,55に固定されたフランジ付きシャフト58,59の耐振性も同様に向上される。
【0067】
フランジ部58bは、シャフト部58aの下方側に形成される。フランジ部58bは、中空シャフト54とガイドローラ51aとの間に介在する下側軸受56aを下方側から支持する支持部である。具体的には、フランジ部58bは、下側軸受56aの内輪61の下方側に接触して、下方側から支持する。フランジ付きシャフト59のフランジ部59bは、シャフト部59aの下方側に形成される。フランジ部59bは、フランジ部58bと同様に、中空シャフト55とガイドローラ51bとの間に介在する下側軸受57aを下方側から支持する支持部である。具体的には、フランジ部59bは、下側軸受57aの内輪61の下方側に接触して、下方側から支持する。
【0068】
これにより、フランジ付きシャフト58,59は、ガイドローラ51a,51bの回転を妨害することなく、ガイドローラ51a,51bを支持することができる。
【0069】
レールホルダ24がレール14上を移動する際、ガイドローラ51aは回転しながらレール14の外側面に沿って移動する。レールホルダ24がレール14上を移動する際、ガイドローラ51bは回転しながらレール14の内側面に沿って移動する。同様に、レールホルダ24がレール13上を移動する際、ガイドローラ52aは回転しながらレール13の外側面に沿って移動する。レールホルダ24がレール13上を移動する際、ガイドローラ51bは回転しながらレール13の内側面に沿って移動する。
<延伸機用のレール>
上述したリンク機構11が移動(走行)する延伸機用のレール13,14について詳細な説明を行う。
図8は実施の形態に係るレール14の一部の外観斜視図である。
図9Aは
図8のA-A線での実施の形態に係るレール14の断面図であり、
図9Bは
図8のB-B線での実施の形態に係るレール14の断面図である。以下、延伸機用レールとしてレール14を用いて説明を行う。しかし、レール13もレール14と同様の構造を有しているため、レール14に対して行った説明はレール13に対しても適用される。
【0070】
レール14は複数の部分レール141が連結されて構成される。部分レール141は、側面142a,142b(総称する場合と側面142と呼ぶ)と、上面143と、端面144a,144bとを有する。上面143は、リンク機構11と対向し、2つの側面142a,142bと接続する面である。側面142a,142bは、上面143と直交する面に平行な面である。上面143及び側面142a、142bは部分レール141が延びる方向、すなわちレール14が延びる方向(延伸方向)を長手方向とする面である。
【0071】
端面144a,144bは、部分レール141が延びる方向の両端に形成され、上面143及び側面142a,142bと直交する面である。複数の部分レール141のうち、部分レール141Aの端面144aと、部分レール141Bの端面144bとが互いに対向する。すなわち、部分レール141が支持台(ベッド)140に固定されると、部分レール141Aの端面144aと、部分レール141Bの端面144bとが部分レール141同士が連結される連結面となる。
【0072】
各部分レール141は、上面143側から挿入された複数のボルト145により支持台(ベッド)140に固定される。具体的には、支持台140の上面には、レール14が延びる方向に沿って溝が形成され、この溝の底面140a上に各部分レール141が配置され、固定される。すなわち、底面140aは、レール14が配置される配置面である。
【0073】
部分レール141は、支持台140上に配置される位置に応じて、レール14が延びる方向に沿う長さが異なる。本実施の形態では、部分レール141がレール14の延びる方向に沿う長さは、最大で2m程度である。
【0074】
レール14は、板部材147a,147b(総称する場合は、板部材147と呼ぶ)と、固定板148とを有する。板部材147は、例えばSK材(炭素工具鋼鋼材)等の薄板であり、レール14が延びる方向に沿って延びる。1枚の板部材147aは、レール14を構成する全ての部分レール141の側面142aに亘って取り付けられる。同様に、1枚の板部材147bは、レール14を構成する全ての部分レール141の側面142bに亘って取り付けられる。
【0075】
尚、レール14に1枚の板部材147aと1枚の板部材147bとが取り付けられるものに限定されず、複数の部分レール141に亘って1枚の板部材147a,147bが取り付けられてもよい。例えば、領域20A,20B,20Cごとに、1枚ずつの板部材147a,147bが側面142a,142bに取り付けられてもよい。あるいは、領域20A,20B,20Cごとに、複数枚ずつの板部材147a,147bが側面142a,142bに取り付けられてもよい。すなわち、板部材147が延びる方向の長さは、部分レール141が延びる方向の長さより長ければよい。
【0076】
図9Bに示されるように、板部材147aの下端側面は底面140a上に配置される。板部材147aの下部は、底面140aに配置された部分レール141の側面142aと、底面140aと交差する面である支持台140の取付側面140bとの間の空間に挿入される。すなわち、板部材147aは、レール14の側面142aと、支持台140の取付側面140bとの間に挟み込まれて取り付けられる。
【0077】
同様に、板部材147bの下端側面は底面140a上に配置される。板部材147bの下部は、底面140aに配置された部分レール141の側面142bと、底面140aと交差する支持台140の取付側面140cとの間の空間に挿入される。すなわち、板部材147bは、レール14の側面142bと、支持台140の取付側面140cとの間に挟み込まれて取り付けられる。これにより、板部材147は、側面142a,142bと直交する方向にて、支持台140の取付側面140b,140cとレール14の側面142a,142bとによって挟み込まれて固定される。これにより、板部材147が側面142から外れることが抑制される。
【0078】
尚、板部材147は、更に接着剤を用いてレール14の側面142a,142bに接着されることにより固定されてもよい。これにより、取付側面140b,140cとレール14の側面142a,142bとによって挟み込まれた板部材147が側面142から外れることが抑制される。
【0079】
固定板148は、レール14が延びる方向に沿って延びる。レール14が延びる方向及び上下方向と交差するレール14の幅方向では、固定板148の長さ(幅)はレール14の長さ(幅)よりも大きい。固定板148は、部分レール141の上面143上に、取付ボルト149によって取り付けられる。尚、固定板148は、取付ボルト149により上面143に取り付けられるものに限定されない。例えば、固定板148には、部分レール141を支持台140に固定するボルト145が挿入される穴が形成され、この穴に挿入されたボルト145によって共締めされて固定板148が上面143に固定されてもよい。
【0080】
固定板148の下面150には、レール14が延びる方向に沿って延びる取付溝151a,151bが形成される。具体的には、レール14よりも幅が大きい固定板148では、下面150のうちレール14の幅方向の両端から突出する領域が存在する。この下面150がレール14から突出する幅方向の一方側の領域に取付溝151aが形成され、レール14から突出する幅方向の他方側の領域に取付溝151bが形成される。
【0081】
取付溝151aには板部材147aの上部が挿入され、取付溝151bには板部材147bの上部が挿入される。これにより、板部材147は、固定板148と支持台140の溝の底面140aとによって上下方向から挟み込まれて固定される。この結果、取付側面140b,140cとレール14の側面142a,142bとによって挟み込まれた板部材147がさらに上下方向から挟み込まれるため、板部材147が側面142から外れることが抑制される。
【0082】
レール14の側面142a,142bに上記のように板部材147が取り付けられることにより、部分レール141同士の連結部分が、ガイドローラ51a,51bのレール14上の走行面に露出することが低減される。すなわち、部分レール141Aの端面144aと部分レール141Bの端面144bとの連結部分に生じる段差等をガイドローラ51a,51bが走行することを抑制できる。
【0083】
部分レール141A上を部分レール141Bに向けて走行するガイドローラ51a,51bによって、部分レール14Aにはレール14が延びる方向と交差する方向に力が作用する。実施の形態とは異なり板部材147が設けられていない場合には、ガイドローラ51a、51bの走行によって、部分レール141Aの端面144aは、部分レール141Bの端面144bに対してレール14が延びる方向と交差する方向に変形し、段差が生じる。さらに、ガイドローラ51a,51bが部分レール141Bに向けて走行すると、部分レール141Bの端面144bに衝突し、この端面144bを乗り越えて走行する。すなわち、ガイドローラ51a,51bは、部分レール141Aと部分レール141Bとの連結部分に生じた段差を乗り越えるため振動が発生する。上述したように、部分レール141は、最大で2m程度の長さを有する。このため、ガイドローラ51a,51bの走行により、2m毎あるいはそれよりも短い間隔で振動が発生することとなる。
【0084】
これに対して本実施の形態では、レール14の側面142に板部材147が取り付けられている。このため、ガイドローラ51a,51bは、板部材147を走行するので、部分レール141Aと部分レール141Bとの連結部分に生じる段差を乗り越えることなく走行できる。ガイドローラ51a,51bが段差を乗り越えることなく走行できるので、段差を乗り越える際に生じる振動の発生が抑制される。
【0085】
尚、上述した実施の形態のレール14は固定板148を有するものとして説明したが、レール14が固定板148を有していなくてもよい。すなわち、板部材147が、部分レール141の側面142と取付側面140b,140cとの間に挟まれて固定されていればよい。この場合、板部材147と部分レール141の側面142とは接着により固定されるとよい。
【0086】
また、支持台140に溝を形成することによって、支持台140に底面140aと底面140aと交差する取付側面140bとが形成されるものに限定されない。例えば、支持台140に溝を形成することなく、底面140aと取付側面140bとが支持台140に形成されてもよい。例えば、支持台140の上面をレール14が配置される配置面とし、この配置面から上方に突出し、レール14が延びる方向に沿って延びる突起部が形成されればよい。この突起部の側面を取付側面とて、突起部の側面と部分レール141の側面142との間に板部材147が挟み込まれて取り付けられればよい。
【0087】
また、実施の形態の部分レール141には、側面142a及び側面142bの両面に板部材147が取り付けられていた。しかし、板部材147は、部分レール141の側面142a及び側面142bの何れか一方の面に取り付けられてもよい。この場合、例えば、領域20Bに配置される部分レール141では、レール13と対向する側と反対側、すなわち膜側の側面142のみに板部材147が取り付けられてよい。また、領域20Cに配置される部分レール141では、レール13と対向する側、すなわちリターン側の側面142のみに板部材147が取り付けられてよい。
【0088】
本実施の形態では、複数の部分レールが連結されて構成されるレール14の2つの側面142の少なくとも一方に板部材147が取り付けられる。板部材147のレール14の延伸方向に沿った長さは、部分レール141の延伸方向に沿った長さよりも長い。これにより、部分レール141同士の連結部分が、ガイドローラ51a,51bの走行面に露出することが抑制される。すなわち、部分レール141Aと部分レール141Bとの間の連結部分に生じる段差をガイドローラ51a,51bが走行する機会が低減するので、ガイドローラ51a,51bの走行に伴う振動の発生が抑制される。
【0089】
これにより、ガイドローラ51a,51bの周辺に配置される構成(周辺機械)への振動による影響が抑制され、例えば軸受56a,56b,57a,57bからグリースが漏出することが抑制されたり、周辺機械の寿命を延ばすことが可能となる。このように、ガイドローラ51a,51bの走行による振動の発生と、振動に伴う周辺機械への影響とが抑制されることから、リンク機構11の走行の高速化を実現できる。そして、リンク機構11の高速移動が可能となることにより、樹脂膜8の生成に要する時間が短縮可能となり、樹脂膜8の生産性向上に寄与することができる。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、それぞれのリンク機構11が有するガイドローラは、鍔付きローラに限られない。また、ガイドローラを支持する軸受は、非接触式のボールベアリングに限られず、例えば、接触式のシールベアリングであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
5 延伸機
11 リンク機構
13,14 レール
140 支持台(ベッド)
141,141A,141B 部分レール
142,142a,142b 側面
147,147a,147b 板部材