(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148461
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】リンク機構、リンク装置及び延伸機
(51)【国際特許分類】
B29C 55/16 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
B29C55/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061626
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 柾紀
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一郎
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210AM14
4F210AM19
4F210AR01
4F210QA02
4F210QC07
4F210QL02
4F210QL04
4F210QL06
4F210QL07
4F210QL16
(57)【要約】
【課題】各掴み子の姿勢を保持する力にばらつきが生じることを抑制する。
【解決手段】リンク機構が備えるクリップ21は、本体部41に回転可能に設けられるレバー部421と、レバー部421の一端に回転可能に設けられ、樹脂膜の一方側の面に押し当てられて本体部41の一部と共に樹脂膜を挟み込んで樹脂膜を掴む掴み子422と、掴み子422の姿勢を保持する姿勢保持部423と、を有する。姿勢保持部423は、リンク機構が樹脂膜と対向する膜側で、レバー部421と掴み子422とに亘って設けられ、掴み子422に対して樹脂膜の一方側の面から離間する方向に力を作用させる。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むリンク機構:
一対のレールホルダに跨るベース部材;及び
前記ベース部材の一端に設けられ、膜を把持するクリップ、
ここで、前記クリップは、
本体部と、
前記本体部に回転可能に設けられるレバー部と、
前記レバー部の一端に回転可能に設けられ、前記膜の一方側の面に押し当てられて前記本体部の一部と共に前記膜を挟み込んで前記膜を掴む掴み子と、
前記掴み子の姿勢を保持する姿勢保持部と、を有し、
前記姿勢保持部は、前記リンク機構が前記膜と対向する膜側で、前記レバー部と前記掴み子とに亘って設けられ、前記掴み子に対して前記膜の前記一方側の面から離間する方向に力を作用させる。
【請求項2】
請求項1に記載のリンク機構において、
前記姿勢保持部は弾性部材であり、
前記弾性部材の一方端は、前記レバー部に設けられたピンに取り付けられ、前記弾性部材の他方端は、前記掴み子に設けられたピンに取り付けられる、リンク機構。
【請求項3】
請求項1に記載のリンク機構において、
前記本体部に取り付けられ、前記レバー部に形成された貫通孔に挿入される軸と、
前記軸と前記レバー部との間に介在し、前記レバー部を回転可能に支持する軸受と、を有するリンク機構。
【請求項4】
請求項3に記載のリンク機構において、
前記軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された転動体と、を有し、
前記内輪のうち前記軸が延びる方向と交わる面は、前記本体部と接触する、リンク機構。
【請求項5】
以下を含むリンク装置:
2本のレールに沿って移動可能な複数のリンク機構、
ここで、それぞれの前記リンク機構は、一対のレールホルダに跨るベース部材と、前記ベース部材の一端に設けられ、膜を把持するクリップと、を有し、
前記クリップは、
本体部と、
前記本体部に回転可能に設けられるレバー部と、
前記レバー部の一端に回転可能に設けられ、前記膜の一方側の面に押し当てられて前記本体部の一部と共に前記膜を挟み込んで前記膜を掴む掴み子と、
前記掴み子の姿勢を保持する姿勢保持部と、を有し、
前記姿勢保持部は、前記リンク機構が前記膜と対向する膜側で、前記レバー部と前記掴み子とに亘って設けられ、前記掴み子に対して前記膜の一方側の面から離間する方向に力を作用させる。
【請求項6】
請求項5に記載のリンク装置において、
前記姿勢保持部は弾性部材であり、
前記弾性部材の一方端は、前記レバー部に設けられたピンに取り付けられ、前記弾性部材の他方端は、前記掴み子に設けられたピンに取り付けられる、リンク装置。
【請求項7】
請求項5に記載のリンク装置において、
前記本体部に取り付けられ、前記レバー部に形成された貫通孔に挿入される軸と、
前記軸と前記レバー部との間に介在し、前記レバー部を回転可能に支持する軸受と、を有するリンク装置。
【請求項8】
請求項7に記載のリンク装置において、
前記軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された転動体と、を有し、
前記内輪のうち前記軸が延びる方向と交わる面は、前記本体部と接触する、リンク装置。
【請求項9】
以下を含む延伸機:
膜の搬送及び延伸を行う一対のリンク装置、
ここで、それぞれのリンク装置は、2本のレールに沿って移動可能な複数のリンク機構を有し、
それぞれの前記リンク機構は、一対のレールホルダに跨るベース部材と、前記ベース部材の一端に設けられ、前記膜を把持するクリップと、を有し、
前記クリップは、
本体部と、
前記本体部に回転可能に設けられるレバー部と、
前記レバー部の一端に回転可能に設けられ、前記膜の一方側の面に押し当てられて前記本体部の一部と共に前記膜を挟み込んで前記膜を掴む掴み子と、
前記掴み子の姿勢を保持する姿勢保持部と、を有し、
前記姿勢保持部は、前記リンク機構が前記膜と対向する膜側で、前記レバー部と前記掴み子とに亘って設けられ、前記掴み子に対して前記膜の一方側の面から離間する方向に力を作用させる。
【請求項10】
請求項9に記載の延伸機において、
前記姿勢保持部は弾性部材であり、
前記弾性部材の一方端は、前記レバー部に設けられたピンに取り付けられ、前記弾性部材の他方端は、前記掴み子に設けられたピンに取り付けられる、延伸機。
【請求項11】
請求項9に記載の延伸機において、
前記本体部に取り付けられ、前記レバー部に形成された貫通孔に挿入される軸と、
前記軸と前記レバー部との間に介在し、前記レバー部を回転可能に支持する軸受と、を有する延伸機。
【請求項12】
請求項11に記載の延伸機において、
前記軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された転動体と、を有し、
前記内輪のうち前記軸が延びる方向と交わる面は、前記本体部と接触する、延伸機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク機構、リンク装置及び延伸機に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜(例えば、樹脂シート又は樹脂フィルム)を搬送しながら縦方向や横方向に引き延ばす延伸機が知られている。特許文献1には、シート状物の縦延伸と横延伸とを行う同時二軸延伸機が記載されている。特許文献1に記載されている同時二軸延伸機は、無端リンク装置を有している。無端リンク装置は、レール及びレールに沿って移動する複数の等長リンク装置から構成されており、それぞれの等長リンク装置は、薄膜を掴む掴み装置を備えている。掴み装置が開閉手段によって開閉させられると、掴み装置による薄膜の掴み、又は掴み装置からの薄膜の取り外しが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それぞれの掴み装置では、薄膜を把持する掴み子の姿勢が保持されている。しかしながら、姿勢を保持する構造によっては、取り付け時の変形等に起因して、各掴み装置の掴み子の姿勢を保持する力にばらつきが生じ、掴み子に把持される薄膜の品質に悪影響を与える虞がある。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態のリンク機構は、膜を把持するクリップを有する。クリップは、本体部と、本体部に回転可能に設けられるレバー部と、レバー部の一端に回転可能に設けられ、膜の一方側の面に押し当てられて本体部の一部と共に膜を挟み込んで膜を掴む掴み子と、掴み子の姿勢を保持する姿勢保持部と、を有する。姿勢保持部は、リンク機構が膜と対向する膜側で、レバー部と掴み子とに亘って設けられ、掴み子に対して膜の一方側の面から離間する方向に力を作用させる。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態によれば、各掴み子の姿勢を保持する力にばらつきが生じることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る薄膜製造システムを示す模式図である。
【
図2】実施の形態に係る延伸機の構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】実施の形態に係る延伸機の構造を模式的に示す他の平面図である。
【
図4A】実施の形態に係るリンク機構及びレールを模式的に示す平面図である。
【
図4B】実施の形態に係るリンク機構及びレールを模式的に示す他の平面図である。
【
図5】実施の形態に係る複数のリンク機構の1つを拡大して示す平面図である。
【
図6A】
図5に示されるA-A線での実施の形態に係る把持部の断面図である。
【
図6B】
図5に示されるB-B線での実施の形態に係るクリップの断面図である。
【
図7A】
図5に示されるB-B線での実施の形態に係るクリップの断面図である。
【
図7B】
図5に示されるB-B線での実施の形態に係るクリップの断面図である。
【
図8A】第1比較例に係るクリップの断面図である。
【
図8B】第2比較例に係るクリップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図にて、同一または実質的に同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
<製造システムの構成>
図1は、実施の形態に係る延伸機を含む薄膜製造システムを示す模式図である。
図1に示される薄膜製造システム1は、押出装置(押出機,混練押出機)2,Tダイ3,原反冷却装置4,延伸機5,引き取り装置6および巻き取り装置7を有する。
【0011】
薄膜製造システム1では、次のようなプロセスによって膜、具体的には樹脂膜が製造される。まず、押出装置2に原料が供給される。より特定的には、押出装置2の原料供給部(原料投入口,ホッパ)2aに、樹脂材料(例えば、ペレット状の熱可塑性樹脂材料)が供給される。
【0012】
押出装置2に供給された原料は、混練(混合)されながら搬送される。より特定的には、押出装置2に供給された原料は、押出装置2が備えるスクリューの回転によって前方(Tダイ3へ向かう方向)へ送られながら溶融され、かつ、混練される。
【0013】
押出装置2によって混練された原料(混練物)は、Tダイ3に送り込まれる。Tダイ3に送り込まれた混練物は、Tダイ3を通過し、Tダイ3のスリットから原反冷却装置4に向けて押し出される。混練物は、Tダイ3を通過することにより、所望の形状(ここでは、フィルム形状)に成形される。
【0014】
混練物は、Tダイ3から原反冷却装置4によって連続的に押し出される。Tダイ3から押し出された混練物は、原反冷却装置4によって冷却されて樹脂膜8になる。その後、樹脂膜8は延伸機5に供給される。
【0015】
延伸機5に供給された樹脂膜8は、延伸機5によってMD方向およびTD方向に延伸される。延伸機5によって延伸処理(引き伸ばし処理)が施された樹脂膜8は、引き取り装置6を介して巻き取り装置7に搬送され、巻き取り装置7に巻き取られる。巻き取り装置7に巻き取られた樹脂膜8は、必要に応じて切断される。
【0016】
図1に示される薄膜製造システム1は、上記のようなプロセスによって薄膜を製造する。もっとも、薄膜製造システム1は、製造する薄膜の特性などに応じて種々の変更が可能である。例えば、
図1に示される引き取り装置6の近傍に抽出槽が設置され、樹脂膜8に含まれる可塑剤(例えば、パラフィン)が除去される場合もある。
【0017】
薄膜製造システム1を構成している延伸機5は、樹脂膜8をMD方向に搬送しながら、その樹脂膜8をMD方向およびTD方向に引き延ばす。言い換えれば、MD(Machine Direction)方向は、樹脂膜8の搬送方向である。また、TD(Transverse Direction)方向は、樹脂膜8の搬送方向と交差する方向である。そこで、以下の説明では、MD方向を“搬送方向”または“縦方向”と呼び、TD方向を“横方向”と呼ぶ場合がある。MD方向(搬送方向,縦方向)とTD方向(横方向)とは、互いに交差する方向であり、より特定的には、互いに直交する方向である。つまり、
図1に示される延伸機5は、樹脂膜8を搬送しながら、その樹脂膜8を互いに交差する二方向に同時に延伸させることが可能な延伸機であり、一般的に“同時二軸延伸機”と呼ばれる。
【0018】
<延伸機>
図2及び
図3は、実施の形態に係る延伸機5の構造を模式的に示す平面図である。延伸機5は、一対のリンク装置10を有している。一対のリンク装置10は、平面視にて互いに離間している。以下の説明では、一対のリンク装置10の一方を“リンク装置10R”と呼び、一対のリンク装置10の他方を“リンク装置10L”と呼ぶ場合がある。
【0019】
図2及び
図3では、リンク装置10Rは、搬送方向(MD方向)に対して右側(R側)に配置されおり、リンク装置10Lは、搬送方向(MD方向)に対して左側(L側)に配置されている。リンク装置10Rとリンク装置10Lとは、TD方向に離間しており、樹脂膜8を挟んでTD方向に対向している。樹脂膜8は、リンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペース内でMD方向に搬送される。言い換えれば、対向するリンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペースは、樹脂膜8を搬送するための搬送路として機能する。
【0020】
図3を参照する。延伸機5は、搬送方向(MD方向)に沿って3つの領域20A,20B,20Cに分けられる。領域20Aは、予熱領域(プレヒート領域)であり、領域20Bは、延伸領域であり、領域20Cは、熱固定領域である。領域20A,20B,20Cは、この順で搬送方向(MD方向)に並んでいる。
【0021】
延伸機5の樹脂膜8の入口(
図2及び
図3中に「IN」と示されている部分)は、領域20Aに存在している。また、延伸機5の樹脂膜8の出口(
図2及び
図3中に「OUT」と示されている部分)は、領域20Cに存在している。そして、樹脂膜8の入口がある領域20Aと樹脂膜8の出口がある領域20Cとの間に、延伸処理が行われる領域20Bが存在している。
【0022】
熱処理部9は、領域20Aの一部,領域20Bの全部および領域20Cの一部を覆っている。また、熱処理部9は、リンク装置10R,10Lの中央部を覆っており、リンク装置10R,10Lによって搬送される樹脂膜8を加熱する。本実施形態の熱処理部9は、樹脂膜8を所望の温度に加熱可能なオーブンによって形成されている。樹脂膜8は、リンク装置10R,10Lに把持された状態で、熱処理部9としてのオーブンの庫内を通過する。
【0023】
<リンク装置>
リンク装置10R,10Lのそれぞれは、無端チェーンを構成するように連結された複数のリンク機構11を有している。それぞれのリンク機構11は、樹脂膜8を把持する治具であるクリップ21を備えている。樹脂膜8は、リンク装置10Rを構成しているリンク機構11が備えるクリップ21と、リンク装置10Lを構成しているリンク機構11が備えるクリップ21と、によって保持される。すなわち、樹脂膜8の一側(R側/右側)は、リンク装置10Rが備える複数のクリップ21によって把持され、樹脂膜8の他側(L側/左側)は、リンク装置10Lが備える複数のクリップ21によって把持される。
【0024】
リンク装置10R,10Lが備えるリンク機構11は、支持台(ベッド)の上に配置された一対の延伸機用レールであるレール13,14上を走行する。レール14は、レール13の外側に配置され、レール13を取り囲んでいる。別の見方をすると、レール13は、レール14の内側に配置され、レール14に取り囲まれている。
【0025】
レール13,14は、領域20A,20B,20Cに亘って環状に配置されている。より特定的には、レール13,14は、樹脂膜8の入口がある領域20Aで折り返されるとともに、樹脂膜8の出口がある領域20Cで折り返されて、領域20A,20B,20Cに亘って環状に配置されている。
【0026】
リンク装置10Rは、レール13の内側に配置された3つのスプロケット15,16,17を有する。同様に、リンク装置10Lは、レール13の内側に配置された3つのスプロケット15,16,17を有する。それぞれのリンク装置10R,10Lが有するスプロケット15,16は、領域20Aに配置されており、それぞれのリンク装置10R,10Lが有するスプロケット17は、領域20Cに配置されている。もっとも、スプロケット15,16は、領域20Aの一部を覆っている熱処理部9の外に配置されている。また、スプロケット17は、領域20Cの一部を覆っている熱処理部9の外に配置されている。つまり、それぞれのリンク装置10R,10Lのスプロケット15,16,17は、熱処理部9としてのオーブンの庫外に配置されている。
【0027】
リンク装置10R,10Lが備える複数のリンク機構11は、レール13,14に沿って移動可能な状態で、レール13,14上に配置されている。リンク装置10Rのスプロケット15,16,17は、リンク装置10Rの複数のリンク機構11と噛み合う。よって、スプロケット15,16,17が回転すると、リンク装置10Rの複数のリンク機構11に駆動力が働き、それらリンク機構11がレール13,14に沿って移動(走行)する。
【0028】
リンク装置10Lのスプロケット15,16,17は、リンク装置10Lの複数のリンク機構11と噛み合う。よって、スプロケット15,16,17が回転すると、リンク装置10Lの複数のリンク機構11に駆動力が働き、それらリンク機構11がレール13,14に沿って移動(走行)する。つまり、レール13,14は、複数のリンク機構11を所定方向に移動(走行)させるためのガイドレールである。
【0029】
以下の説明では、
図3に示されるリンク装置10R,10Lのそれぞれについて、樹脂膜8と対向する側を“膜側”と呼び、膜側と反対側を“リターン側”と呼ぶ場合がある。つまり、クリップ21が樹脂膜8を把持した状態で、複数のリンク機構11が入口(IN)から出口(OUT)に向かって移動する側(サイド)が膜側である。また、膜側の反対に位置し、クリップ21が樹脂膜8を把持しない状態で、複数のリンク機構11が出口(OUT)から入口(IN)に向かって移動する側(サイド)がリターン側である。
【0030】
複数のリンク機構11のうち、隣り合うリンク機構11間の間隔(“リンクピッチ”と呼ばれることもある。)は、レール13とレール14との間の間隔(離間距離)に応じて変化する。言い換えれば、レール13とレール14との離間距離が調節されることにより、隣り合うリンク機構11間の間隔が調節可能である。
【0031】
図4A及び
図4Bは、
図3に示される実施の形態に係るリンク機構11およびレール13,14を模式的に示す平面図である。
図4A及び
図4Bに示されるように、レール13,14の離間距離L1が小さくなるほど、隣り合うリンク機構11が成す角度が大きくなり、隣り合うリンク機構11間のピッチP1が大きくなる。一方、レール13,14の離間距離L1が大きくなるほど、隣り合うリンク機構11が成す角度が小さくなり、隣り合うリンク機構11間のピッチP1が小さくなる。
【0032】
既述のとおり、それぞれのリンク機構11は、樹脂膜8を把持するクリップ21を有している。よって、隣り合うリンク機構11間のピッチP1の増減に応じて、隣り合うクリップ21間のピッチP2も増減する。具体的には、レール13,14の離間距離L1が減少すると、リンク機構11間のピッチP1が増大する。リンク機構11間のピッチP1が増大すると、クリップ21間のピッチP2も増大する。すなわち、
図4Aに示される状態から
図4Bに示される状態に移行する。一方、レール13,14の離間距離L1が増大すると、リンク機構11間のピッチP1が減少する。リンク機構11間のピッチP1が減少すると、クリップ21間のピッチP2も減少する。すなわち、
図4Bに示される状態から
図4Aに示される状態に移行する。
【0033】
尚、複数のリンク機構11のそれぞれがクリップ21を備えているので、隣り合う2つのリンク機構11間のピッチP1と、それらリンク機構11が備える2つのクリップ21間のピッチP2とは、同一である。すなわち、
図4A及び
図4Bのそれぞれにて、P1=P2が成り立つ。
【0034】
<延伸機(同時二軸延伸機)の動作>
原反冷却装置4から延伸機5に供給された樹脂膜8は、延伸機5の入口でリンク装置10R,10Lにより把持される。具体的には、樹脂膜8は、
図2及び
図3に示されるリンク装置10R,10Lのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持される。より具体的には。樹脂膜8の幅方向一側がリンク装置10Rのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持され、樹脂膜8の幅方向他側がリンク装置10Lのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持される。
【0035】
幅方向両側がクリップ21によって把持された樹脂膜8は、クリップ21を含むリンク機構11の移動に伴って、延伸機5の入口から出口に向かって搬送され、領域20A(予熱領域),領域20B(延伸領域),領域20C(熱固定領域)をこの順で通過する。樹脂膜8は、領域20B(延伸領域)を通過する過程でMD方向およびTD方向に引き伸ばされる。その後、樹脂膜8は、領域20C(熱固定領域)を経て出口に到達し、クリップ21から外される。クリップ21から外された樹脂膜8は、引き取り装置6に搬送され、引き取り装置6から巻き取り装置7に搬送される。
【0036】
図3に示されるように、領域20A(予熱領域)では、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2は、ほぼ一定である。このため、領域20Aでは、樹脂膜8に対するTD方向の延伸処理は行われない。従って、領域20Aでは、搬送される樹脂膜8の幅(TD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。
【0037】
また、領域20Aでは、リンク装置10Rの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Aでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Rの膜側でのクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。また、領域20Aでは、リンク装置10Lの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Aでは、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Lの膜側でのクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。この結果、領域20Aでは、樹脂膜8に対するMD方向の延伸処理は行われない。つまり、領域20Aでは、TD方向にもMD方向にも、樹脂膜8に対する延伸処理は行われない。
【0038】
次に、領域20Bでの延伸機5の動作について説明する。領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2が徐々に大きくなっている。このため、領域20Bでは、樹脂膜8は、搬送方向(MD方向)に進むに従ってTD方向に引っ張られて引き伸ばされる。言い換えれば、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、樹脂膜8の幅(TD方向の寸法)が徐々に大きくなる。
【0039】
また、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、徐々に小さくなっている。そして、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Lの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1も、徐々に小さくなっている。このため、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1が徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Rの膜側でのクリップ21のピッチP2も徐々に大きくなる。また、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1が徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Rの膜側でのクリップ21のピッチP2も徐々に大きくなる。この結果、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、樹脂膜8は、MD方向に引っ張られて引き伸ばされる。
【0040】
従って、領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、樹脂膜8は、TD方向およびMD方向に引き伸ばされる(延伸される)。すなわち、領域20Bでは、TD方向およびMD方向の延伸処理が、樹脂膜8に対して施される。
【0041】
次に、領域20Cでの延伸機5の動作について説明する。領域20Cでは、リンク装置10Rの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Cでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Rの膜側でのクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。また、領域20Cでは、リンク装置10Lの膜側でのレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、領域20Cでは、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Lの膜側でのクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。この結果、領域20Cでは、樹脂膜8に対するMD方向の延伸処理は行われない。
【0042】
上述のように、領域20Aでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1は一定に維持され、かつ、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1も一定に維持される。その後、領域20Bでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1およびリンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1が徐々に拡大される。そして、領域20Cでは、リンク装置10Rの膜側でのリンク機構11のピッチP1は、再び一定に維持され、リンク装置10Lの膜側でのリンク機構11のピッチP1も再び一定に維持される。このため、リンク装置10R,10Lのそれぞれの膜側では、領域20Cでのリンク機構11のピッチP1は、領域20Aでのリンク機構11のピッチP1よりも大きい。別の見方をすると、リンク装置10R,10Lのそれぞれの膜側では、領域20Cでのクリップ21のピッチP2は、領域20Aでのクリップ21のピッチP2よりも大きい。さらに別の見方をすると、リンク装置10R,10Lのそれぞれの膜側では、領域20Cでのレール13,14の離間距離L1は、領域20Aでのレール13,14の離間距離L1よりも小さい。
【0043】
<リンク機構の構成>
図5は、
図3に示される実施の形態に係る複数のリンク機構11の1つを拡大して示す斜視図である。尚、以下の説明では、リンク機構11から見てレール13,14側を下方側、リンク機構11から見てレール13,14とは反対側を上方側とも呼ぶ場合がある。
【0044】
図5に示されるように、リンク装置10R,10Lが備えるリンク機構11のそれぞれは、クリップ21に加えて、上段側リンクプレート22と、下段側リンクプレート23と、一対のレールホルダ24a,24bと、一対のレールホルダ24a,24bに跨るベース部材25と、を有している。一方のレールホルダ24aは、レール14上に配置され、他方のレールホルダ24bは、レール13上に配置される。
【0045】
上段側リンクプレート22および下段側リンクプレート23は、平面視で直線的に延びる板状の部材である。ベース部材25は、平面視で直線的に延びている点で上段側リンクプレート22および下段側リンクプレート23と共通しているが、これらよりも厚みが厚い。なお、以下の説明では、レールホルダ24a,24bを特に区別しない場合、これらを“レールホルダ24”と総称する。
【0046】
<レールホルダ>
レールホルダ24aは、ローラ保持部31aと、ローラ保持部31aの長手方向中央に設けられたシャフト32aと、を有する。ローラ保持部31aは、レール14上に、当該レール14を横断するように配置される。よって、レール14上に配置されたローラ保持部31aの長手方向一端側は、レール14の内側(レール13と対向する側)に突出し、ローラ保持部31aの長手方向他端側は、レール14の外側(レール13と対向する側と反対側)に突出する。また、ローラ保持部31aがレール14上に配置されると、シャフト32aは、レール14の直上に位置する。
【0047】
レールホルダ24aのシャフト32aは、上段側リンクプレート22,下段側リンクプレート23およびベース部材25の長手方向一端側を貫通している。ベース部材25の基端側,上段側リンクプレート22の基端および下段側リンクプレート23の基端は、シャフト32aに串刺しにされており、シャフト32aを介して互いに回転可能に連結されている。言い換えれば、シャフト32aは、上段側リンクプレート22,下段側リンクプレート23およびベース部材25の基端側の回転軸である。
【0048】
レールホルダ24bは、ローラ保持部31bと、ローラ保持部31bの長手方向中央に設けられたシャフト32bと、を有する。ローラ保持部31bは、レール13上に、当該レール13を横断するように配置される。よって、レール13上に配置されたローラ保持部31bの長手方向一端側は、レール13の内側(レール14と対向する側)に突出し、ローラ保持部31bの長手方向他端側は、レール13の外側(レール14と対向する側と反対側)に突出する。また、ローラ保持部31bがレール13上に配置されると、シャフト32bは、レール13の直上に位置する。
【0049】
レールホルダ24bのシャフト32bは、ベース部材25の長手方向一端(先端)を貫通して当該ベース部材25から突出している。つまり、当該リンク機構11のベース部材25の先端,隣接する他のリンク機構11の上段側リンクプレート22および下段側リンクプレート23の先端は、当該リンク機構11のシャフト32bを介して互いに回転可能に連結される。別の見方をすると、シャフト32bは、上段側リンクプレート22,下段側リンクプレート23およびベース部材25の先端側の回転軸である。
【0050】
<ガイドローラ>
レールホルダ24aの下部には、レール14を挟んで対向する一対のガイドローラ51a,51bが設けられており、レールホルダ24bの下部には、レール13を挟んで対向する一対のガイドローラ52a,52bが設けられている。ガイドローラ51a,51b,52a,52bは、金属製である。それぞれのガイドローラ51a,51b,52a,52bは、軸方向両端が開口した筒形の形状を有しており、軸方向一端側(上部)には、径方向外側に突出するフランジ53が一体成形されている。
【0051】
レールホルダ24aの下部に設けられているガイドローラ51a,51bのフランジ53は、レール14上に配置され、レールホルダ24bの下部に設けられているガイドローラ52a,52bのフランジ53は、レール13上に配置されている。より具体的には、ガイドローラ51aのフランジ53は、レール14の上面の外側(レール13と対向する側と反対側)の縁に重ねられ、ガイドローラ51bのフランジ53は、レール14の上面の内側(レール13と対向する側)の縁に重ねられている。また、ガイドローラ52aのフランジ53は、レール13の上面の外側(レール14と対向する側と反対側)の縁に重ねられ、ガイドローラ52bのフランジ53は、レール13の上面の内側(レール14と対向する側)の縁に重ねられている。これにより、レールホルダ24aのガイドローラ51a,51bおよびレールホルダ24bのガイドローラ52a,52bを介して、リンク機構11の全体がレール13,14によって支持されている。
【0052】
言い換えれば、ガイドローラ51a,51b,52a,52bは、リンク機構11を支持する支持ローラである。より特定的には、ガイドローラ51a,51b,52a,52bは、軸方向一端側(上部)に設けられたフランジ53によってリンク機構11を支持する片持ち支持ローラである。別の見方をすると、ガイドローラ51a,51b,52a,52bは、一体成形されたフランジ53を有する鍔付きローラである。
【0053】
レールホルダ24がレール14上を移動する際、ガイドローラ51aは回転しながらレール14の外側面に沿って移動する。レールホルダ24がレール14上を移動する際、ガイドローラ51bは回転しながらレール14の内側面に沿って移動する。同様に、レールホルダ24がレール13上を移動する際、ガイドローラ52aは回転しながらレール13の外側面に沿って移動する。レールホルダ24がレール13上を移動する際、ガイドローラ51bは回転しながらレール13の内側面に沿って移動する。
【0054】
<クリップ>
クリップ21は、ベース部材25の基端に設けられている。クリップ21は、本体部41,把持部42,バネ部43などを有している。本体部41は、ベース部材25の基端に固定されている。把持部42は、本体部41に上下に動作可能に取り付けられている。バネ部43は、把持部42が下方に向かって動作するように、把持部42に力を付与する。バネ部43から受ける力によって把持部42が下方に向かって動作することにより、本体部41と把持部42との間に樹脂膜8が挟まれる。つまり、クリップ21によって樹脂膜8が把持される。一方、バネ部43から受ける力に抗して把持部42を上方に向かって動作させると、樹脂膜8の把持が解除される。以下、把持部42の詳細について説明する。
【0055】
<把持部>
図6Aは、
図5に示されるA-A線での実施の形態に係るクリップ21の断面図である。
図6B、
図7A及び
図7Bは、
図5に示されるB-B線での実施の形態に係るクリップ21の断面図である。把持部42は、レバー部421と、掴み子422と、姿勢保持部423と、軸受424とを有する。
【0056】
<レバー部>
レバー部421は、上下方向に延びる形状を有する。レバー部421は、
図5に示されるように、本体部41から膜側に向けて伸びるアーム411a,411bの間に、回転可能に設けられる。具体的には、
図6Aに示されるように、アーム411a,411bに形成された貫通孔412a,412bと、レバー部421に形成された貫通孔420とにシャフト430が挿入される。これにより、レバー部421は、シャフト430を軸として回転可能に本体部41に取り付けられる。シャフト430が延びる方向では、レバー部421の長さ(幅)は、アーム411aとアーム411bとの間の距離(間隔)よりも小さい。このため、レバー部421は、アーム411a,411bと接触することなく回転する。
【0057】
レバー部421の下端には、下端面421aと、下端斜面421bとが形成される。下端面421aは、
図6Bに示されるように、後述する閉状態のときに本体部41に設けられた下部把持面417と平行になる面である。下端斜面421bは、下端面421aの膜側に形成され、
図7Aに示されるように、後述する開状態のときに本体部41に設けられた下部把持面417と平行になる面である。
【0058】
シャフト430は、レバー部421が延びる方向と交差する方向、より特定的には直交する方向に延びる。シャフト430の一方側の端部近傍には、シャフト430が延びる方向と交差する方向、より特定的には上下方向に沿って貫通孔431が形成されている。また、アーム411bには、上下方向に延びる貫通孔413が形成されている。シャフト430に形成された貫通孔431と、アーム411bに形成された貫通孔413とに、上下方向に延びる固定ピン432が挿入されることにより、シャフト430がアーム411bに固定される。
【0059】
シャフト430とレバー部421との間には、軸受424が介在している。すなわち、レバー部421は、軸受424により、シャフト430及びアーム411a,411bを有する本体部41に対して回転可能に支持されている。具体的には、シャフト430が延びる方向に沿って、軸受424a及び軸受424bが設けられる。軸受424aは、レバー部421の貫通孔420の周囲に形成された収容部423aに収容される。収容部423aは、レバー部421のうちアーム411aと対向する側の面に形成された凹部である。また、軸受424bは、レバー部421の貫通孔420の周囲に形成された収容部423bに収容される。収容部423bは、レバー部421のうちアーム411bと対向する側の面に形成された凹部である。
【0060】
<軸受>
軸受424a,424bのそれぞれは、内輪425と、内輪425を取り囲む外輪426と、内輪425と外輪426との間に配置された複数の転動体(ボール)427と、を有する転がり軸受(ボールベアリング)である。内輪425と外輪426との間の隙間には、グリースなどの潤滑剤が封入されている。
【0061】
軸受424aの内輪425は、シャフト430が延びる方向と交わる面425aを有する。この面425aは、レバー部421と対向するアーム411aの面414aの一部と接触する。具体的には、面414aには、貫通孔412aの外周に沿ってレバー部421に向けて突出する突部415aが形成される。
【0062】
突部415aはシャフト430が延びる方向と交わる面416aを有する。この面416aが、内輪425の面425aと接触する。これにより、軸受424aの内輪425はアーム411aによって固定される。ただし、突部415aは、面416aが軸受424aの外輪426と接触しないように形成されている。すなわち、アーム411aと外輪426とは接触していない。
【0063】
同様に、軸受424bの内輪425は、シャフト430が延びる方向と交わる面425bを有する。この面425bは、レバー部421と対向するアーム411bの面414bの一部と接触する。具体的には、面414bには、貫通孔412bの外周に沿ってレバー部421に向けて突出する突部415bが形成される。
【0064】
突部415bは、シャフト430が延びる方向と交わる面416bを有する。この面416bが、軸受424bの内輪425の面425bと接触する。これにより、軸受424bの内輪425はアーム411bによって固定される。ただし、突部415bは、面416bが軸受424bの外輪426と接触しないように形成されている。すなわち、アーム411bと外輪426とは接触していない。
【0065】
上述した構成により、軸受424の内輪425は、シャフト430が延びる方向では、アーム411a,411bによって保持される。また、シャフト430の外側面は、軸受424の内輪425の内側面と接触している。そして、軸受424の外輪426は、アーム411a,411bと接触していない。このため、内輪425はシャフト430とアーム411a,411bとにより固定され、外輪426とレバー部421とがシャフト430を中心として回転できる。
【0066】
図8Aは、第1比較例のレバー部421とシャフト430とを模式的に示す断面図である。尚、第1比較例は、実施の形態の理解を容易にするために、本発明者らが先だって検討した構成である。第1比較例では、レバー部421に形成された貫通孔420とシャフト430との間の空間に、軸受424に代えて、ブッシュ524が設けられている。レバー部421が回転すると、ブッシュ524の内側面とシャフト430の外側面とが摺動する。このため、ブッシュ524とシャフト430との摺動面である領域R1にはグリース等の潤滑剤が供給される必要がある。しかし、レバー部421が回転すると、領域R1に供給されたグリースが飛散し、樹脂膜8に付着する等の不具合が発生する虞がある。
【0067】
また、第1比較例ではレバー部421は、アーム411a,411bと接触している。このため、レバー部421が回転すると、レバー部421とアーム411a,411bとの接触面である領域R2が摩耗して、摩耗粉が発生する虞がある。
【0068】
これに対して本実施の形態では、レバー部421と外輪426とは、アーム411a、411bと摺動せずに回転するので、摺動に伴う摩耗や摩耗粉の発生が抑制される。また、本実施の形態では、グリース等の潤滑剤が内輪425と外輪426との間に封入されている。このため、摩耗対策の潤滑剤がレバー部421に付着した状態でスプロケット15,16,17にリンク機構11が噛み込み、この際に生じる振動によりレバー部421に付着した潤滑剤が飛散し、樹脂膜8に付着する等の不具合の発生が抑制される。
【0069】
<掴み子>
次に、本実施の形態の掴み子422について説明する。
図6B,
図7A及び
図7Bに示されるように、掴み子422は、レバー部421の下端近傍に取り付けられ、レバー部421の回転による上下方向の移動とともに移動する。レバー部421の下端近傍にはシャフト430が延びる方向に沿って延びるシャフト436が設けられている。掴み子422はこのシャフト436に支持されて、レバー部421の移動に応じて上下方向に移動する。また、掴み子422は、シャフト436を軸としてレバー部421に対して回転可能に取り付けられている。
【0070】
掴み子422の下端には上部把持面433が形成される。樹脂膜8は、掴み子422の上部把持面433と、本体部41に設けられた下部把持面417とによって上下方向から挟み込まれて把持される。上部把持面433は、樹脂膜8の一方側の面である上面に上方から押し当てられる面であり、下部把持面417は、樹脂膜8の他方側の面である下面に下方から接する面である。換言すると、掴み子422は、本体部41の一部である下部把持面417と共に樹脂膜8を挟み込むことにより、樹脂膜8を掴む。
【0071】
レバー部421がシャフト430を軸として回転すると、掴み子422はレバー部421と共に上下方向に移動し、かつ、レバー部421に対して回転する。このため、樹脂膜8に対する掴み子422の位置が変化する。樹脂膜8に対する掴み子422の相対位置が変化する際に、掴み子422の上部把持面433の姿勢は姿勢保持部423によって保持される。
【0072】
<姿勢保持部>
姿勢保持部423は、例えばコイルばね等の弾性部材であり、レバー部421及び掴み子422に亘って設けられる。姿勢保持部423は、リンク機構11が樹脂膜8と対向する膜側に設けられる。具体的には、掴み子422に設けられた取付ピン434に姿勢保持部423の一方端が取り付けられ、レバー部421に設けられた取付ピン435に姿勢保持部423の他方端が取り付けられる。
【0073】
取付ピン434は、掴み子422上でシャフト436よりも樹脂膜8に近接する位置に設けられる。取付ピン435は、レバー部421上でシャフト430よりも樹脂膜8に近接する位置に設けられる。取付ピン434,435は、シャフト430,436が延びる方向に沿って延びるロット状の部材である。姿勢保持部423が設けられることによって、掴み子422は、
図6B、
図7A及び
図7Bの矢印AR1に示されるように、樹脂膜8から離間する方向に向かう力が付与される。
【0074】
<クリップの動作>
図6B、
図7A及び
図7Bを参照して、上述した構成を有するクリップ21の動作について説明する。
図6Bは、実施の形態に係るクリップ21が樹脂膜8を把持するときのクリップ21の断面図である。尚、以下の説明では、
図6Bに示されるクリップ21の状態を閉状態と呼ぶことがある。
図7Aは、実施の形態に係るクリップ21が樹脂膜8を把持しないときのクリップ21の断面図である。尚、以下の説明では、
図7Aに示されるクリップ21の状態を開状態と呼ぶことがある。
図7Bは、開状態から閉状態へ移行するときのクリップ21の断面図である。
【0075】
図6Bに示される閉状態のときには、バネ部43(
図5参照)によって、把持部42には下方に向かう力が作用する。このため、掴み子422の上部把持面433は、樹脂膜8を挟んで下部把持面417の上部に位置する。上述したように、リンク機構11の膜側に設けられた姿勢保持部423により掴み子422には矢印AR1に示される力が付与される。姿勢保持部423により付与される力により、掴み子422には、
図6Bの矢印AR2に示されるように、シャフト436を中心とする反時計回りの力が作用する。
【0076】
しかし、掴み子422の上部把持面433の矢印AR2に沿った回転は、レバー部421の下端面421aと下部把持面417とによって規制される。このため、上部把持面433と下部把持面417とが互いに対向し合う状態、すなわち上部把持面433が下方を向いた状態で、掴み子422の姿勢が保持される。
【0077】
この結果、樹脂膜8は、上部把持面433と下部把持面417との間に挟み込まれ、上部把持面433と下部把持面417とによって上下方向から把持される。リンク機構11が延伸機5の入口から出口に向かって領域20A,20B,20Cを通過する際に、クリップ21は上記の閉状態となる。
【0078】
図6Bに示される閉状態のときに、レバー部421の上部が矢印AR3に示される方向、すなわち膜側に向けて押されると、
図7Aに示される開状態に移行する。開状態への移行に際して、レバー部421は、シャフト430を軸として回転する。具体的には、レバー部421は、バネ部43から付与される力に抗して、シャフト430を中心として矢印AR4に示される時計回りの方向に回転する。このレバー部421の回転により、レバー部421の下端と、レバー部421の下端に設けられた掴み子422とは、膜側から離れる方向、かつ、上方に向けて移動する。
【0079】
このとき、掴み子422には、姿勢保持部423により付与される力によって、シャフト436を中心として矢印AR2に示される反時計回りの方向に力が作用している。掴み子422は、レバー部421の移動に伴い膜側から離れる方向、かつ、上方に向けて移動しているため、掴み子422の矢印AR2の方向への移動は下部把持面417により規制されない。このため、掴み子422は、シャフト436を軸として矢印AR2に沿って反時計回りに回転する。掴み子422が反時計回りに回転すると、レバー部421の下端と掴み子422との相対的な位置関係が変化し、上部把持面433の上面がレバー部421の下端斜面421bと接触する。これにより、掴み子422がさらに反時計回りに回転することが規制される。
【0080】
この結果、上部把持面433と下部把持面417とが互いに離間し、上部把持面433が下方を向いた状態で、掴み子422の姿勢が保持される。上部把持面433と下部把持面417とが互いに離間していることから、クリップ21に把持されていた樹脂膜8が取り外される、あるいは、クリップ21に樹脂膜8を把持させることができる。すなわち、リンク機構11が延伸機5の入口又は出口に位置するときには、クリップ21は上記の開状態となる。
【0081】
クリップ21が開状態から閉状態に移行する際には、レバー部421の上部に矢印AR3の方向に作用する力が解除される。そして、レバー部421はバネ部43から付与される力によってシャフト430を軸として矢印AR4と反対方向(反時計回り)に回転する。レバー部421の回転により、掴み子422は、下方の下部把持面417に接近する方向に移動する。このとき、姿勢保持部423によって矢印AR1の方向への力が付与されている掴み子422は、レバー部421の下端斜面421bに回転が規制された状態で、下部把持面417に接近する方向に移動する。すなわち、掴み子422はレバー部421に対して相対移動することなく、レバー部421の移動と連動して移動する。
【0082】
そして、
図7Bに示されるように、掴み子422の上部把持面433の一部が、下部把持面417の端部417aに接触する。このとき、掴み子422の上部把持面433のうち範囲422aは下部把持面417及び下部把持面417上の樹脂膜8に対して上方側に離間している。尚、範囲422aは、上部把持面433のうち下部把持面417の端部417aと接触している位置よりも膜側の範囲である。
【0083】
この状態から、レバー部421がさらに矢印AR4と反対方向に回転すると、掴み子422のレバー部421と連動した移動が端部417aによって規制される。これにより、掴み子422はレバー部421に対して相対移動を行い、上部把持面433の上面とレバー部421の下端面421aとが接触する。このため、レバー部421の移動に伴い、上部把持面433は、レバー部421の下端面421aから力を受ける。この結果、上部把持面433の範囲422aは、樹脂膜8の上方から矢印AR5に沿って移動する。そして、掴み子422の上部把持面433が、樹脂膜8の上部に位置することにより、クリップ21は
図6Bに示される閉状態に移行して、樹脂膜8が把持される。
【0084】
掴み子422が姿勢保持部423によって姿勢が保持されているため、上部把持面433が樹脂膜8の上面と接触しながら移動した後にクリップ21が閉状態に移行することが抑制される。この結果、上部把持面433が樹脂膜8の上面と接触しながら移動することに起因する樹脂膜8の破れや皺の発生が抑制された状態で、樹脂膜8の把持を行うことができる。
【0085】
図8Bは、第2比較例の把持部42cを模式的に示す外観図である。尚、第2比較例は、実施の形態の理解を容易にするために、本発明者らが先だって検討した構成である。第2比較例の把持部42cは、上述した実施の形態のレバー部421と、掴み子422と、軸受424とを有している。しかし、把持部42cは、実施の形態の姿勢保持部423に代えて、板バネ523を有している。板バネ523は、リンク機構11の膜側とは反対側の面に設けられる。板バネ523は、一方側(上方側)の端部近傍にて、レバー部421にボルト等により取り付けられる。板バネ523の他方側(下方側)の端部は掴み子422と接触する。これにより、板バネ523は、掴み子422に対して矢印AR6に示される膜側に向かう力を付与して、掴み子422の姿勢を保持する。
【0086】
第2比較例の場合には、板バネ523をレバー部421に取り付ける際に、板バネ523の曲げ角がずれる虞がある。曲げ角がずれて板バネ523が取り付けられた場合、複数のリンク機構11にそれぞれ設けられる掴み子422に板バネ523により付与される力にばらつきが発生する可能性がある。
【0087】
また、板バネ523と掴み子422とが接触する箇所には、開状態と閉状態との移動に際して摩擦が生じるため、グリース等の潤滑剤が供給される必要がある。しかし、レバー部421の移動に伴い、供給されたグリースが飛散し、樹脂膜8に付着する等の不具合が発生する虞がある。
【0088】
これに対して、本実施の形態では、レバー部421に設けられた取付ピン434と掴み子422に設けられた取付ピン435とに姿勢保持部423のそれぞれの端部が取り付けられる。このため、第2比較例のように板バネ523を取り付ける場合とは異なり、姿勢保持部423の取り付け時に曲げ角がずれる等の不具合が抑制される。この結果、複数のリンク機構11のそれぞれが備える掴み子422に付与される力にばらつきが生じることが抑制される。従って、複数のリンク機構11のそれぞれが備える掴み子422の姿勢が安定的に保持される。
【0089】
また、レバー部421及び掴み子422の移動に際して、姿勢保持部423と掴み子422との間で摩擦が生じる箇所が無いため、姿勢保持部423に対してグリース等の潤滑剤を供給する必要性が低減される。この結果、レバー部421の移動に伴い、供給されたグリースが飛散し、樹脂膜8に付着する等の不具合の発生が抑制される。
【0090】
上述した実施の形態によれば、以下の作用効果の少なくとも一つが得られる。
【0091】
(1)クリップ21は、掴み子422の姿勢を保持する姿勢保持部423を有する。姿勢保持部423は、膜側で、レバー部421と掴み子422とに亘って設けられ、掴み子422に対して樹脂膜8の一方側(上面側)から離間する方向に力を作用させる。これにより、第2比較例のように板バネ523を用いる場合とは異なり、複数のリンク機構11のそれぞれが備える掴み子422に姿勢保持部423から付与される力にばらつきが発生することが抑制される。この結果、複数の掴み子422により把持される樹脂膜8に作用する力にばらつきが生じることが抑制されるので、製造される樹脂膜8の品質を維持できる。また、第2比較例の板バネ523を用いる場合のようにグリース等の潤滑剤が供給される必要がない。このため、レバー部421の移動に伴い、供給されたグリースが飛散し、樹脂膜8に付着する等の不具合が抑制される。
【0092】
(2)姿勢保持部423は弾性部材であり、一方端はレバー部421に設けられた取付ピン435に取り付けられ、他方端は掴み子422に設けられた取付ピン434に取り付けられる。これにより、姿勢保持部423をレバー部421と掴み子422とに簡単に取り付けることができるので、第2比較例の場合のように板バネ523の取り付ける時とは異なり、姿勢保持部423の形状が変形する等の不具合が抑制される。この結果、各掴み子422に作用する矢印AR1に沿った力にばらつきが生じることが抑制される。
【0093】
(3)シャフト430とレバー部421との間に介在して、レバー部421を回転可能に支持する軸受424が設けられる。これにより、第1比較例のブッシュ524が設けられる場合とは異なり、レバー部421がアーム411a、411bと摺動せずに回転するので、摺動に伴う摩耗や摩耗粉の発生が抑制される。また、グリース等の潤滑剤が軸受424内に封入されている。このため、第1比較例のように摺動面にグリース等が供給される場合とは異なり、スプロケット15,16,17にリンク機構11が噛み込む際に生じる振動によってレバー部421に付着した潤滑剤が飛散し、樹脂膜8に付着する等の不具合が抑制される。
【0094】
(4)軸受424が有する内輪425のうちシャフト430が延びる方向と交わる面425a,425bは、本体部41のアーム411a,411bと接触する。これにより、レバー部421の回転時に、レバー部421がシャフト430の延びる方向に沿って移動することが抑制され、レバー部421とアーム411a,411bとが摩耗して摩耗粉の発生が抑えられる。
【0095】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0096】
5 延伸機
8 樹脂膜
10,10R,10L リンク装置
11 リンク機構
13,14 レール
21 クリップ
25 ベース部材
41 本体部
421 レバー部
422 掴み子
423 姿勢保持部