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特開2024-148463二酸化炭素回収装置および二酸化炭素回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148463
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置および二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20241010BHJP
   B01D 53/74 20060101ALI20241010BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20241010BHJP
   C01B 32/55 20170101ALI20241010BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/74
F25J1/00 D
C01B32/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061628
(22)【出願日】2023-04-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ムーンショット型研究開発事業/地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現/冷熱を利用した大気中二酸化炭素直接回収の研究開発」委託事業(事業期間:2020年度~2024年度)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一
(72)【発明者】
【氏名】薮下 雅崇
(72)【発明者】
【氏名】水上 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】向江 友佑
(72)【発明者】
【氏名】神谷 健司
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝義
(72)【発明者】
【氏名】藤本 高義
【テーマコード(参考)】
4D002
4D047
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA13
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA32
4D002DA33
4D002DA34
4D002DA70
4D002EA05
4D002EA08
4D002FA01
4D002HA08
4D047AA07
4D047AB00
4D047CA06
4D047CA07
4D047DA01
4G146JA03
4G146JB09
4G146JC08
4G146JC28
4G146JD03
4G146JD10
4G146LA01
(57)【要約】
【課題】より効率良く二酸化炭素を回収することが可能な二酸化炭素回収装置を提供すること。
【解決手段】二酸化炭素を含有する被分離ガスから二酸化炭素を分離し、放散する分離装置60と、分離装置60から放散された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器5Aと、が直列に接続されていること、二酸化炭素昇華器5Aには、冷熱を有する流体を冷媒とする冷媒回路12Aが接続されていること、二酸化炭素昇華器5Aに、二酸化炭素昇華器5Aの内部の気体を、二酸化炭素昇華器5Aの外部に排出する真空ポンプ71が接続されていること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有する被分離ガスから前記二酸化炭素を分離し、放散する分離装置を備える二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスが供給される上流側から順に、前記分離装置と、前記分離装置から放散された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器と、が直列に接続されていること、
前記二酸化炭素昇華器には、冷熱を有する流体を冷媒とする冷媒回路が接続されていること、
前記二酸化炭素昇華器に、前記二酸化炭素昇華器の内部の気体を、前記二酸化炭素昇華器の外部に排出する排気装置が接続されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスは、燃焼排ガスまたは大気または大気で希釈された燃焼排ガスであり、少なくとも窒素を含有していること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスは、バイオガスであり、少なくともメタン等炭化水素を含有していること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
請求項2に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスは、燃焼排ガスであること、
前記排気装置は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
請求項4に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記排気装置は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の3以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
請求項2に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスは、大気または大気で希釈された燃焼排ガスであること、
前記排気装置は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の1000分の1以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
請求項6に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記排気装置は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の500分の1以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収装置において、
前記排気装置により前記二酸化炭素昇華器から排出される気体すなわち排出気体の二酸化炭素の濃度を計測する濃度計を備えること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
請求項8に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記分離装置に、2基以上の前記二酸化炭素昇華器が並列に接続されていること、
前記分離装置と2基以上の前記二酸化炭素昇華器との間には、2基以上の前記二酸化炭素昇華器のうちから、昇華(固化)を行う任意の一基を選択し、前記分離装置において分離された二酸化炭素を流入させる第1切替手段を備えること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項10】
請求項8に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記排気装置に、前記二酸化炭素昇華器から排出した気体を、前記二酸化炭素昇華器に還流する還流ラインが接続されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項11】
請求項10に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記分離装置に、2基以上の前記二酸化炭素昇華器が並列に接続されていること、
前記還流ラインは、分岐され、2基以上の前記二酸化炭素昇華器のそれぞれに接続されていること、
前記還流ラインは、2基以上の前記二酸化炭素昇華器のうちから、任意の一基を選択し、前記排出気体を還流する第2切替手段を備えること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項12】
請求項11に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っている前記二酸化炭素昇華器であること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項13】
請求項11に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っていない待機中の前記二酸化炭素昇華器であること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項14】
請求項8に記載の二酸化炭素回収装置において、
前記排気装置に、前記二酸化炭素昇華器から排出した気体を、前記分離装置に還流する還流ラインが接続されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項15】
二酸化炭素を含有する被分離ガスから前記二酸化炭素を分離し、放散する分離装置と、前記分離装置から放散された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器とが、前記被分離ガスが供給される上流側から順に直列に接続された二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法であって、
前記二酸化炭素昇華器において、冷熱を有する流体を冷媒として、二酸化炭素の昇華(固化)を行う昇華工程を行うこと、
前記昇華工程において、二酸化炭素の昇華(固化)により前記二酸化炭素昇華器を減圧し、前記分離装置と前記二酸化炭素昇華器の間に圧力差を生じさせることで、前記分離装置から放散された二酸化炭素の吸引を行うこと、
前記二酸化炭素昇華器の内部の気体を、前記二酸化炭素昇華器の外部に排出をする排出工程を行うこと、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項16】
請求項15に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記被分離ガスは、燃焼排ガスまたは大気または大気で希釈された燃焼排ガスであり、少なくとも窒素を含有していること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項17】
請求項15に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記被分離ガスは、バイオガスであり、少なくともメタン等炭化水素を含有していること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項18】
請求項16に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記被分離ガスは、燃焼排ガスであること、
前記排出工程は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上の気体量を排出すること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項19】
請求項18に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記排出工程は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の3以上の気体量を排出すること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項20】
請求項16に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記被分離ガスは、大気または大気で希釈された燃焼排ガスであること、
前記排出工程は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の1000分の1以上の気体量を排出すること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項21】
請求項20に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記排出工程は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の500分の1以上の気体量を排出すること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項22】
請求項15乃至21のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収方法において、
前記排出工程において、前記二酸化炭素昇華器から排出される気体すなわち排出気体の二酸化炭素の濃度を計測すること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項23】
請求項22に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記分離装置に、2基以上の前記二酸化炭素昇華器を並列に接続すること、
2基以上の前記二酸化炭素昇華器のうちから、昇華(固化)を行う任意の一基を選択し、前記分離装置において分離された二酸化炭素の昇華(固化)を行い、
該任意の一基から排出される前記排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上であるとき、昇華(固化)を行う前記二酸化炭素昇華器を切り替えること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項24】
請求項22に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上であるとき、前記排出気体の前記二酸化炭素昇華器への還流をすること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項25】
請求項24に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記分離装置に、2基以上の前記二酸化炭素昇華器を並列に接続すること、
前記還流は、2基以上の前記二酸化炭素昇華器のうちから、任意の一基を選択して行うこと、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項26】
請求項25に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っている前記二酸化炭素昇華器であること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項27】
請求項25に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っていない待機中の前記二酸化炭素昇華器であること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項28】
請求項22に記載の二酸化炭素回収方法において、
前記排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上であるとき、前記排出気体の前記分離装置への還流をすること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する被分離ガスから二酸化炭素を分離する分離装置を備える二酸化炭素回収装置および二酸化炭素回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動問題が喫緊の課題となっている。そのような中、二酸化炭素の大気放散を回避するために、大気、または、工場や発電所の燃焼排ガスなどの二酸化炭素を含有するガス(被分離ガス)から、二酸化炭素を分離、回収するための技術が求められている。
【0003】
加えて、我が国では、溶接に用いる炭酸ガスや、物流に用いるドライアイス等、二酸化炭素の需要が増加している。この需要の増加に対して、供給が追い付いていない背景のもと、我が国における二酸化炭素の輸入量は年々増加する傾向にある。しかし、二酸化炭素をドライアイスとして輸入する場合には、輸送中に一部が溶けてしまうなど、ロスが大きい。
このような中、被分離ガスに含有される二酸化炭素を活用すべく、高純度の二酸化炭素を回収することが可能な装置が求められている。
【0004】
被分離ガスから高純度の二酸化炭素を回収する装置としては、特許文献1に開示されるような、二酸化炭素を含有する被分離ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを気液接触させて、吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)から、二酸化炭素を水蒸気とともに放散する再生塔と、を備える二酸化炭素回収装置が知られている。
【0005】
再生塔においては、二酸化炭素を吸収した吸収液を沸騰温度まで加熱することで、二酸化炭素と水蒸気の放散が行われる。この加熱のための消費エネルギー量を抑えるため、特許文献1では、再生塔を減圧することで、二酸化炭素を吸収した吸収液の沸騰温度を下げ、省エネルギー化を図っている。
【0006】
しかし、特許文献1に開示される二酸化炭素回収装置は、再生塔を減圧するために、真空ポンプを用いており、この真空ポンプを動作するためには、多大な電力が必要である。このため、電力コストの増加や、発電のための新たな二酸化炭素の発生が懸念される。よって、電力コストの増加や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えるため、さらなる省エネルギー化を達成することができる二酸化炭素回収装置が求められていた。
【0007】
そのような中、出願人は、特願2022-518051に開示される二酸化炭素回収装置を提案している。該二酸化炭素回収装置は、被分離ガスから二酸化炭素を分離し放散する分離装置と、二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器と、が直列に接続されている。分離装置は、例えば、吸収塔と再生塔とを備えており、吸収塔で分離された二酸化炭素は、再生塔から放散され、二酸化炭素昇華器まで流れる。二酸化炭素昇華器に達した二酸化炭素は、冷熱を有する流体を利用した冷媒により冷却され、昇華(固化)される。そして、二酸化炭素が昇華(固化)されて生じたドライアイスを、昇華(気化)するなどして回収することで、炭酸ガス等として活用することができる。
【0008】
上記の二酸化炭素昇華器は、二酸化炭素が昇華(固化)されることで減圧され、負圧状態となる。二酸化炭素昇華器が負圧状態になることで、再生塔から放散された二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、再生塔から二酸化炭素昇華器までの、二酸化炭素の流れが生じ、二酸化炭素昇華器における二酸化炭素の昇華(固化)が促進されるのである。つまり、二酸化炭素の吸引は、冷熱を有する流体を利用して行われるものであるため、吸引のためのポンプ等が必要なく、省エネルギー化を達成することができる。そして、省エネルギー化により、電力コストの増大や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-270814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
吸収塔は、被分離ガスと吸収液とを気液接触させて、吸収液に二酸化炭素を吸収させるものであるところ、被分離ガス中には、二酸化炭素の他、窒素や酸素(以下、窒素等)も含まれているため、気液接触する過程で、吸収液に窒素等が微量ながら溶け込んでしまう。そのような窒素等が溶け込んだ吸収液(リッチ液)によって、再生塔で二酸化炭素の放散を行うと、二酸化炭素だけでなく、窒素等も合わせて放散される。
【0011】
このとき、特願2022-518051に開示される二酸化炭素回収装置のように、再生塔から放散された二酸化炭素を二酸化炭素昇華器により昇華(固化)させて回収することとすると、二酸化炭素昇華器には、二酸化炭素だけでなく、窒素等も流入されることになる。そうすると、窒素等は、二酸化炭素よりも固化・液化温度が低いため、二酸化炭素の昇華(固化)が行われる中で、窒素等は気体として残留し、二酸化炭素昇華器内に蓄積してしまう。
【0012】
上記の二酸化炭素昇華器は、二酸化炭素の昇華(固化)により負圧状態になることで、再生塔から放散される二酸化炭素を吸引する機能を有するのであるところ、二酸化炭素昇華器に窒素等が蓄積してしまうと、二酸化炭素昇華器内部の二酸化炭素分圧が低下することにより二酸化炭素の昇華(固化)に必要な温度が低下し、冷熱源による冷却が困難になる結果ドライアイス生成が阻害され、十分に再生塔から二酸化炭素を吸引することができなくなってしまう。つまり、二酸化炭素昇華器への二酸化炭素の流入量が低下し、二酸化炭素の回収効率が低下するおそれがある。さらに、ドライアイス生成の阻害により、 二酸化炭素昇華器内部に二酸化炭素、窒素、酸素が蓄積してしまうと、二酸化炭素昇華器内部の全圧が上昇することにより、再生塔が十分に減圧されなくなり、二酸化炭素の放散量が減少してしまうおそれがある。
【0013】
なお、被分離ガスとしては、上記の燃焼排ガスの他、大気や大気で希釈された燃焼排ガスを利用することが考えられるが、これらを利用した場合も、同様の問題がある。また、被分離ガスとして、バイオガスを利用することも考えられるが、バイオガスを利用した場合には、バイオガスに含有されるメタン等炭化水素が、二酸化炭素昇華器に蓄積し、上記同様の問題が生じるおそれがある。
【0014】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能な二酸化炭素回収装置および二酸化炭素回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における二酸化炭素回収装置は、次のような構成を有している。
【0016】
(1)二酸化炭素を含有する被分離ガスから前記二酸化炭素を分離し、放散する分離装置を備える二酸化炭素回収装置において、前記被分離ガスが供給される上流側から順に、前記分離装置と、前記分離装置から放散された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器と、が直列に接続されていること、前記二酸化炭素昇華器には、冷熱を有する流体を冷媒とする冷媒回路が接続されていること、前記二酸化炭素昇華器に、前記二酸化炭素昇華器の内部の気体を、前記二酸化炭素昇華器の外部に排出する排気装置が接続されていること、を特徴とする。
【0017】
(2)(1)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記被分離ガスは、燃焼排ガスまたは大気または大気で希釈された燃焼排ガスであり、少なくとも窒素を含有していること、が好ましい。
【0018】
(3)(1)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記被分離ガスは、バイオガスであり、少なくともメタン等炭化水素を含有していること、が好ましい。
【0019】
上記の二酸化炭素回収装置によれば、排気装置(例えば真空ポンプ)により、二酸化炭素昇華器の内部の気体(窒素等またはメタン等炭化水素)を排出可能であるため、二酸化炭素昇華器における窒素等またはメタン等炭化水素の蓄積を防止することができる。これにより、二酸化炭素昇華器内部の二酸化炭素分圧の低下を抑制することが可能であるため、二酸化炭素昇華器の二酸化炭素の流入量の低下、ひいては、二酸化炭素の回収効率の低下を防止することが可能である。
【0020】
(4)(2)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記被分離ガスは、燃焼排ガスであること、前記排気装置は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、が好ましい。
【0021】
(5)(4)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記排気装置は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の3以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、が好ましい。
【0022】
(6)(2)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記被分離ガスは、大気または大気で希釈された燃焼排ガスであること、前記排気装置は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の1000分の1以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、が好ましい。
【0023】
(7)(6)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記排気装置は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の500分の1以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、が好ましい。
【0024】
分離装置において分離された二酸化炭素の、二酸化炭素昇華器への流れは、排気装置が二酸化炭素昇華器の内部の気体を排出することにより生じるのではなく、二酸化炭素の昇華(固化)が行われることにより二酸化炭素昇華器が減圧されることで生じる。したがって、排気装置は、二酸化炭素昇華器の内部の気体を吸引できる程度の排気容量を備えていれば良い。
【0025】
具体的には、排気装置の排気容量は、被分離ガスが燃焼排ガスであるときには、分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましく、100分の3以上の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが更に好ましい。これは、被分離ガスが燃焼排ガスであるときには、分離装置における窒素等の発生量が、分離装置から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で2.4から39.7%程度であることを、本願発明者がシミュレーションにより確認したことによる。
【0026】
また、排気装置の排気容量は、被分離ガスが大気または大気で希釈された燃焼排ガスであるときには、分離装置から放散される二酸化炭素の量の1000分の1の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましく、500分の1以上の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが更に好ましい。これは、被分離ガスが大気であるときには、分離装置における窒素等の発生量が、分離装置から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で0.18から2.97%程度であることを、本願発明者がシミュレーションにより確認したことによる。よって、排気装置は大容量である必要がなく、排気装置自体のコスト、排気装置を動作するための消費電力を抑えることが可能である。
【0027】
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収装置において、前記排気装置により前記二酸化炭素昇華器から排出される気体すなわち排出気体の二酸化炭素の濃度を計測する濃度計を備えること、が好ましい。
【0028】
上記二酸化炭素回収装置によれば、濃度計により、排気装置により二酸化炭素昇華器から排出される排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視することができる。二酸化炭素昇華器における二酸化炭素の昇華(固化)速度(ドライアイス生成速度)が低下するなどし、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇した場合、その分、二酸化炭素の回収量の低下につながる。しかし、濃度計により、排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視することで、二酸化炭素の回収量の低下を防止することができる。
【0029】
具体的には、(9)(8)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記分離装置に、2基以上の前記二酸化炭素昇華器が並列に接続されていること、前記分離装置と2基以上の前記二酸化炭素昇華器との間には、2基以上の前記二酸化炭素昇華器のうちから、昇華(固化)を行う任意の一基を選択し、前記分離装置において分離された二酸化炭素を流入させる第1切替手段を備えること、が好ましい。
【0030】
上記の二酸化炭素回収装置は、分離装置に、2基以上の二酸化炭素昇華器が並列に接続されているため、例えば、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器と、二酸化炭素の昇華(固化)を行う準備のできている待機中の二酸化炭素昇華器と、を設けることができる。さらに、上記の二酸化炭素回収装置は、第1切替手段を備えるため、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器において、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器を、例えば待機中の二酸化炭素昇華器に切り替えることができる。これにより、二酸化炭素回収装置の動作を停止させることなく、二酸化炭素の昇華(固化)を継続することができるため、効率的に二酸化炭素の回収を行うことが可能である。
【0031】
または、(10)(8)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記排気装置に、前記二酸化炭素昇華器から排出した気体を、前記二酸化炭素昇華器に還流する還流ラインが接続されていること、前記濃度計により計測される二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上であるとき、前記還流ラインにより、前記排出気体を前記二酸化炭素昇華器に還流すること、が好ましい。
【0032】
(11)(10)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記分離装置に、2基以上の前記二酸化炭素昇華器が並列に接続されていること、前記還流ラインは、分岐され、2基以上の前記二酸化炭素昇華器のそれぞれに接続されていること、前記還流ラインは、2基以上の前記二酸化炭素昇華器のうちから、任意の一基を選択し、前記排出気体を還流する第2切替手段を備えること、が好ましい。
【0033】
(12)(11)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っている前記二酸化炭素昇華器であること、が好ましい。
【0034】
(13)(11)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っていない待機中の前記二酸化炭素昇華器であること、が好ましい。
【0035】
または、(14)(8)に記載の二酸化炭素回収装置において、前記排気装置に、前記二酸化炭素昇華器から排出した気体を、前記分離装置に還流する還流ラインが接続されていること、が好ましい。
【0036】
上記の二酸化炭素回収装置は、還流ラインを備えているため、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、排出気体を二酸化炭素昇華器または分離装置に還流することができる。これにより、排出気体中の二酸化炭素の昇華(固化)を行うことができる。よって、二酸化炭素を無駄なく回収することが可能である。
【0037】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様における二酸化炭素回収方法は、次のような構成を有している。
【0038】
(15)二酸化炭素を含有する被分離ガスから前記二酸化炭素を分離し、放散する分離装置と、前記分離装置から放散された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器とが、前記被分離ガスが供給される上流側から順に直列に接続された二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法であって、前記二酸化炭素昇華器において、冷熱を有する流体を冷媒として、二酸化炭素の昇華(固化)を行う昇華工程を行うこと、前記昇華工程において、二酸化炭素の昇華(固化)により前記二酸化炭素昇華器を減圧し、前記分離装置と前記二酸化炭素昇華器の間に圧力差を生じさせることで、前記分離装置から放散された二酸化炭素の吸引を行うこと、前記二酸化炭素昇華器の内部の気体を、前記二酸化炭素昇華器の外部に排出をする排出工程を行うこと、を特徴とする。
【0039】
(16)(15)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記被分離ガスは、燃焼排ガスまたは大気または大気で希釈された燃焼排ガスであり、少なくとも窒素を含有していること、が好ましい。
【0040】
(17)(15)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記被分離ガスは、バイオガスであり、少なくともメタン等炭化水素を含有していること、が好ましい。
【0041】
上記の二酸化炭素回収方法によれば、二酸化炭素昇華器の内部の気体を、二酸化炭素昇華器の外部に排出をする排出工程を行うため、二酸化炭素昇華器における窒素等またはメタン等炭化水素の蓄積を防止することができる。これにより、二酸化炭素昇華器内部の二酸化炭素分圧の低下を抑制することが可能であるため、二酸化炭素昇華器の二酸化炭素の流入量の低下、ひいては、二酸化炭素の回収効率の低下を防止することが可能である。
【0042】
(18)(16)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記被分離ガスは、燃焼排ガスであること、前記排出工程は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上の気体量を排出すること、が好ましい。
【0043】
(19)(18)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記排出工程は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の3以上の気体量を排出すること、が好ましい。
【0044】
(20)(16)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記被分離ガスは、大気または大気で希釈された燃焼排ガスであること、前記排出工程は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の1000分の1以上の気体量を排出すること、が好ましい。
【0045】
(21)(20)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記排出工程は、少なくとも、前記分離装置から放散される二酸化炭素の量の500分の1以上の気体量を排出すること、が好ましい。
【0046】
分離装置において分離された二酸化炭素の、二酸化炭素昇華器への流れは、排出工程により生じるのではなく、二酸化炭素の昇華(固化)が行われることにより二酸化炭素昇華器が減圧されることで生じる。したがって、排出工程で排出する気体量は、二酸化炭素昇華器の内部の気体を排出できる程度であれば良い。
【0047】
具体的には、被分離ガスが燃焼排ガスであるときには、分離装置から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上の気体量を排出することが好ましく、100分の3以上の気体量を排出することが更に好ましい。これは、被分離ガスが燃焼排ガスであるときには、分離装置における窒素等の発生量が、分離装置から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で2.4から39.7%程度であることを、本願発明者がシミュレーションにより確認したことによる。
【0048】
また、被分離ガスが大気または大気で希釈された燃焼排ガスであるときには、分離装置から放散される二酸化炭素の量の1000分の1の気体量を排出することが好ましく、500分の1以上の気体量を排出することが更に好ましい。これは、被分離ガスが大気であるときには、分離装置における窒素等の発生量が、分離装置から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で0.18から2.97%程度であることを、本願発明者がシミュレーションにより確認したことによる。よって、排出工程は、例えば真空ポンプ等の排気装置により行うものであるところ、排気装置は大容量である必要がなく、排気装置自体のコスト、排気装置を動作するための消費電力を抑えることが可能である。
【0049】
(22)(15)乃至(21)のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収方法において、前記排出工程において、前記二酸化炭素昇華器から排出される気体すなわち排出気体の二酸化炭素の濃度を計測すること、が好ましい。
【0050】
上記二酸化炭素回収方法によれば、二酸化炭素昇華器から排出される排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視することができる。二酸化炭素昇華器における二酸化炭素の昇華(固化)速度(ドライアイス生成速度)が低下するなどし、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇した場合、その分、二酸化炭素の回収量の低下につながる。しかし、排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視することで、二酸化炭素の回収量の低下を防止することができる。
【0051】
具体的には、(23)(22)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記分離装置に、2基以上の前記二酸化炭素昇華器を並列に接続すること、2基以上の前記二酸化炭素昇華器のうちから、昇華(固化)を行う任意の一基を選択し、前記分離装置において分離された二酸化炭素の昇華(固化)を行い、該任意の一基から排出される前記排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上であるとき、昇華(固化)を行う前記二酸化炭素昇華器を切り替えること、が好ましい。
【0052】
上記の二酸化炭素回収方法は、分離装置に、2基以上の二酸化炭素昇華器が並列に接続されているため、例えば、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器と、二酸化炭素の昇華(固化)を行う準備のできている待機中の二酸化炭素昇華器と、を設けることができる。さらに、上記の二酸化炭素回収方法は、第1切替手段により、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器において、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器を、例えば待機中の二酸化炭素昇華器に切り替えることができる。これにより、二酸化炭素回収装置の動作を停止させることなく、二酸化炭素の昇華(固化)を継続することができるため、効率的に二酸化炭素の回収を行うことが可能である。
【0053】
または、(24)(22)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上であるとき、前記排出気体の前記二酸化炭素昇華器への還流をすること、が好ましい。
【0054】
(25)(24)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記分離装置に、2基以上の前記二酸化炭素昇華器を並列に接続すること、前記還流は、2基以上の前記二酸化炭素昇華器のうちから、任意の一基を選択して行うこと、が好ましい。
【0055】
(26)(25)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っている前記二酸化炭素昇華器であること、が好ましい。
【0056】
(27)(25)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っていない待機中の前記二酸化炭素昇華器であること、が好ましい。
【0057】
または、(28)(22)に記載の二酸化炭素回収方法において、前記排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上であるとき、前記排出気体の前記分離装置への還流をすること、が好ましい。
【0058】
上記の二酸化炭素回収方法は、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、排出気体を二酸化炭素昇華器または分離装置に還流する。これにより、排出気体中の二酸化炭素の昇華(固化)を行うことができる。よって、二酸化炭素を無駄なく回収することが可能である。
【発明の効果】
【0059】
本発明の二酸化炭素回収装置および二酸化炭素回収方法は、上記構成を有することにより、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
図2】第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
図3】第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の還流ラインの構成を概略的に表した図である。
図4】第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を概略的に表した図である。
図5】再生塔内の圧力値と、再生塔から放散される二酸化炭素の量との関係を表すグラフである。
図6】再生塔内の圧力値と、再生塔から放散される窒素および酸素の量との関係を表すグラフである。
図7】二酸化炭素昇華器におけるドライアイス生成速度と、時間の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
(第1の実施形態)
本発明の二酸化炭素回収装置の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0062】
図1は、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aの構成を概略的に表した図である。二酸化炭素回収装置1Aは、図1に示すように、分離装置60と、分離装置60に接続された二酸化炭素回収ライン10A,10B,10と、を備えている。
【0063】
分離装置60は、吸収塔2と再生塔3とを備える。吸収塔2は、例えば向流型気液接触装置であり、内部にラシヒリングなどの充填材21が充填されている。
【0064】
また、吸収塔2は、充填材21よりも下部にガス導入口22を備え、ガス導入口22には、ガス供給路L11が接続されている。ガス供給路L11から、吸収塔2に被分離ガスが供給される。被分離ガスとしては、例えば、LNG火力発電所や、ガスエンジン、石炭火力発電所、製鉄所、セメント工場で発生する燃焼排ガスや、大気を用いることが可能である。その他にも、バイオガスを利用することも可能であるし、浸炭炉などの熱処理炉や化学反応装置から発生する、二酸化炭素を含有するオフガスを利用することも可能である。なお、被分離ガスとして燃焼排ガスを用いる場合、燃焼排ガスには硫黄酸化物が含有されていることが考えられるため、ガス供給路L11上に脱硫装置を設け、硫黄酸化物を除去した燃焼排ガスを吸収塔2に供給するものとしても良い。
【0065】
また、吸収塔2は、充填材21よりも上部に吸収液(リーン液)を導入するための吸収液導入口23を備えている。なお、吸収液としては、アミン系水溶液や物理吸収液を用いることが可能である。アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジエチルエタノールアミン(DEEA)、ジイソプロピルアミン(DIPA)、アミノエトキシエタノール(AEE)およびメチルジエタノールアミン(MDEA)が挙げられる。物理吸収液としては、シクロテトラメチレンスルホン(スルホラン)および該化合物の誘導体、脂肪族酸アミド、NMP(N-メチルピロリドン)、N-アルキル化ピロリドンおよび相応するピペリドン、メタノールおよびポリエチレングリコールのジアルキルエーテル類の混合物が挙げられる。
【0066】
ただし、吸収液として最も望ましいのは、2-(エチルアミノ)エタノールと、ジエチレングリコールモノエチルエーテルとを、アミン濃度が30%程度となるように混合したアミン溶液(以下、本実施形態に係るアミン溶液、または特に断りが限り単にアミン溶液と称す)である。本実施形態に係るアミン溶液を用いることで、従来から知られているアミン溶液(アミン濃度が30%程度となるように混合されたMEA溶液)と比べて、吸収した二酸化炭素の再生を、より効率良く行うことが可能である。
【0067】
ガス導入口22から吸収塔2に供給された被分離ガスは、吸収塔2内で充填材21に向かって上昇する。また、吸収液導入口23から吸収塔2に導入された吸収液(リーン液)は、充填材21に向かって落下する。このため、吸収液(リーン液)は、充填材21の表面を落下する間に被分離ガスと気液接触し、被分離ガス中の二酸化炭素を選択的に吸収する。また、被分離ガス中には、二酸化炭素の他、窒素や酸素(以下、窒素等)も含まれているため、気液接触する過程で、微量ながら窒素等が吸収液に溶け込む。
【0068】
気液接触後の被分離ガス(主に窒素および酸素)は、吸収塔2の頂部に接続された排出流路L12から排出される。そして、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)は、吸収塔2の底部の排出口24から排出される。
【0069】
吸収塔2の排出口24には、取り出し管L13の一端が接続されており、取り出し管L13の他端は、再生塔3に接続されている。吸収塔2から取り出し管L13に排出された吸収液(リッチ液)は、熱交換器6を経て、再生塔3に移送される。
【0070】
再生塔3は、例えば向流型気液接触装置であり、内部にラシヒリングなどの充填材31が充填されている。
【0071】
再生塔3は、充填材31よりも上部に、取り出し管L13が接続された吸収液導入口32を備えており、吸収液導入口32から、取り出し管L13を経て移送される吸収液(リッチ液)が、に供給される。吸収液導入口32から供給された吸収液(リッチ液)は充填材31に向かって落下する。
【0072】
そして、吸収液(リッチ液)は、再生塔3内で落下する間に、沸騰温度に達するように加熱される。吸収液(リッチ液)の加熱は、例えば、廃温熱や環境熱を利用したヒートポンプ7や、吸収塔2において吸収液(リーン液)が二酸化炭素を吸収する際の発熱を利用したヒートポンプ8によって、行われる。再生塔3内は、例えば約0.4-3.3KPaに減圧されているため(再生塔3を減圧する手段についての詳細は後述)、沸騰温度が低下されている。よって、吸収液(リッチ液)を加熱するための消費エネルギーを抑えることが可能になっている。なお、再生塔3の圧力値は、被分離ガスの二酸化炭素の濃度に応じて設定されるものであり、再生塔3を約0.4-3.3KPaに減圧するのは、被分離ガスが燃焼排ガスの場合である。また、被分離ガスを大気または大気により希釈された燃焼排ガスとする場合には、再生塔3を約10Paに減圧することが望ましい。なお、大気で希釈された燃焼排ガスとは、工場等の煙道から燃焼排ガスを回収する際に、大気が燃焼排ガスに混入してしまうような場合を想定している。
【0073】
吸収液(リッチ液)が沸騰することにより、二酸化炭素が放散される。このとき、水蒸気や、吸収液(リッチ液)に溶け込んでいた窒素等がともに放散される。
【0074】
ここで、再生塔3から放散される窒素等の量は、被分離ガス中の二酸化炭素の濃度により異なることを、発明者はシミュレーションにより確認した。例えば、被分離ガスがLNG火力発電所の燃焼排ガスである場合、当該燃焼排ガスの二酸化炭素の濃度は約4%であり、再生塔3から放散される窒素等の量は、二酸化炭素の放散される量に対して、モル基準で11.8から39.7%程度である。
【0075】
また例えば、被分離ガスがガスエンジンの燃焼排ガスである場合、当該燃焼排ガスの二酸化炭素の濃度は約6%であり、再生塔3から放散される窒素等の量は、二酸化炭素の放散される量に対して、モル基準で7.5から33.7%程度である。
【0076】
また例えば、被分離ガスが石炭火力発電所の燃焼排ガスである場合、当該燃焼排ガスの二酸化炭素の濃度は約14%であり、再生塔3から放散される窒素等の量は、二酸化炭素の放散される量に対して、モル基準で3.1から34.5%程度である。
【0077】
また例えば、被分離ガスが製鉄所の燃焼排ガスである場合、当該燃焼排ガスの二酸化炭素の濃度は約20%であり、再生塔3から放散される窒素等の量は、二酸化炭素の放散される量に対して、モル基準で2.9から33.6%程度である。
【0078】
また例えば、被分離ガスがセメント工場の燃焼排ガスである場合、当該燃焼排ガスの二酸化炭素の濃度は約33%であり、再生塔3から放散される窒素等の量は、二酸化炭素の放散される量に対して、モル基準で2.4から30.3%程度である。
【0079】
また、被分離ガスが大気または大気で希釈された燃焼排ガスである場合、二酸化炭素の濃度は約400ppmであり、再生塔3から放散される窒素等の量は、二酸化炭素の放散される量に対して、モル基準で0.18から2.97%程度である。
【0080】
一例として、図5および図6を用いて、被分離ガスを大気とした場合の二酸化炭素の発生量と、窒素および酸素の発生量について説明する。図5は、被分離ガスを大気とした場合の、再生塔3内の圧力値と、再生塔3から放散される二酸化炭素(CO)の量との関係を表すグラフである。横軸は、再生塔3内の圧力値を示し、縦軸が放散される二酸化炭素の量を示している。図6は、再生塔3内の圧力値と、再生塔3から放散される窒素(N)および酸素(O)の量との関係を表すグラフである。横軸は、再生塔3内の圧力値を示し、縦軸が放散される窒素および酸素の量を示している。
【0081】
図5に示すグラフから、再生塔3内の圧力を10Paとすれば、放散される二酸化炭素の量は、約2.8E-3 kmol/hである。これに対し、図6に示すグラフの通り、放散される窒素の量は、約3.7E-6 kmol/hであり、放散される酸素の量は、約1.3E-6 kmol/hであるため、合計して約5E-6 kmol/hである。以上から、再生塔3から放散される窒素や酸素の量が、二酸化炭素の放散される量に対して、0.18%程度であることが分かる。なお、ここまで説明した窒素および酸素の発生量は、用いる吸収液により増減することが考えられるため、あくまで一例である。
【0082】
二酸化炭素を放散した後の吸収液(リーン液)は、再生塔3の底部の排出口33から排出される。再生塔3から取り出し管L14に排出された吸収液(リーン液)は、熱交換器6を経て、吸収塔2に戻される。取り出し管L14は、吸収塔2の吸収液導入口23に接続されているため、吸収塔2に戻された吸収液(リーン液)は、充填材21に向かって落下し、二酸化炭素を吸収するために再利用される。
【0083】
また、再生塔3において放散された二酸化炭素および窒素、酸素、水蒸気(以下、特に必要な場合を除いて二酸化炭素等という)は、再生塔3の頂部から第1移送管L15に排出される。この排出は、再生塔3と二酸化炭素昇華器5A,5Bとの間に生じる圧力差により、二酸化炭素等が吸引されることで行われるものである(再生塔3と二酸化炭素昇華器5A,5Bに生じる圧力差については後述する。)
【0084】
第1移送管L15は切替弁11(第1切替手段の一例)によって、分岐移送管L151Aと、分岐移送管L151Bと、分岐移送管L151Cとに分岐されている。この分岐により、再生塔3には、二酸化炭素回収ライン10Aと、二酸化炭素回収ライン10Bと、二酸化炭素回収ライン10Cとが、並列に接続されている。そして、切替弁11の動作により、再生塔3から排出される二酸化炭素等を、二酸化炭素回収ライン10A,10B,10Cのいずれに流すのか選択することが可能になっている。
【0085】
二酸化炭素回収ライン10A(10B,10C)は、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)と、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)に直列に接続された二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)と、を備えている。
【0086】
水蒸気凝縮器4A(4B,4C)は、第1移送管L15と分岐移送管L151A(L151B,L151C)を介し、再生塔3と接続されている。なお、分岐移送管L151A(L151B,L151C)は、切替弁11と、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)との間に、開閉弁13A(13B,13C)を備えている。
【0087】
水蒸気凝縮器4A(4B,4C)は、内部に熱交換器41A(41B,41C)を備えている。該熱交換器41Aは、後述する冷媒回路12A(12B,12C)を流れる冷媒により、内部の水蒸気と二酸化炭素を冷却するために用いられる。さらに、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)は、廃温熱や環境熱を利用したヒートポンプ42A(42B,42C)や、ドレン43A(43B,43C)が接続されている。該ドレン43A(43B,43C)は、開閉弁15A(15B,15C)を有している。
【0088】
また、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)は、第2移送管L16A(L16B,L16C)を介して、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)に接続されている。なお、第2移送管L16A(L16B,L16C)は、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)と、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)との間に、開閉弁14A(14B,14C)を備えている。
【0089】
二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)は、内部に熱交換器51A(51B,51C)を備えている。該熱交換器51A(51B,51C)は、後述する冷媒回路12A(12B,12C)を流れる冷媒により、内部の二酸化炭素を冷却し、ドライアイス化するために用いられる。さらに、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)は、廃温熱や環境熱を利用したヒートポンプ52A(52B,52C)や、ドレン53A(53B,54C)、取り出し管54A(54B,54C)が接続されている。ドレン53A(53B,54C)は、開閉弁16A(16B,16C)を有し、取り出し管54A(54B,54C)は、開閉弁17A(17B,17C)を有している。
【0090】
また、二酸化炭素回収ライン10A(10B,10C)には、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)の順に冷媒が流れるように、冷媒回路12A(12B,12C)が構成されている。冷媒回路12A,12B,12Cは、それぞれ水蒸気凝縮器4A,4B,4Cを通った後に合流し、水蒸気凝縮器4A,4B,4Cを流れた冷媒が、更に吸収塔2に流れるように構成されている。
【0091】
冷媒には、冷熱を有する流体が用いられる。冷熱を有する流体とは、例えば、液化燃料や、液化ガスが挙げられる。液化燃料とは、例えば、液化天然ガス(LNG)、液体水素、液化メタンなどが挙げられる。都市ガスの主原料となる天然ガスは、LNGの状態で輸入され、LNG受入基地において再ガス化され、パイプラインにより出荷される。LNGの再ガス化の際には、大量の冷熱エネルギーが放出されており、この冷熱エネルギーは、未利用エネルギーであるため、未利用エネルギーの活用という点で、環境問題に配慮した二酸化炭素回収装置1Aとすることが出来る。なお、液化燃料としては、LNGの他、液体水素なども挙げられる。また、液化ガスとは、例えば、液化窒素や液化酸素などが挙げられる。その他、冷熱を有する流体としては、液体である必要はなく、気体、スラリー、気液混相流であっても良い。
【0092】
冷媒と、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)と、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の機能について、より詳細に説明する。
【0093】
冷媒は、冷媒回路12A(12B,12C)を通り、まず、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の有する熱交換器51A(51B,51C)により、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内を冷却する。液化燃料として液化天然ガスを用いた場合の冷熱は、摂氏マイナス162度であり、液体水素を用いた場合の冷熱は、摂氏マイナス253度であるが、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内の温度は、熱交換器51A(51B,51C)の温度差制御や別途作動媒体または冷媒を介することで、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却される。ただし、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度は、被分離ガスの二酸化炭素の濃度により異なる。被分離ガスとして燃焼排ガスを用いる場合は、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内の温度を、摂氏約マイナス129度以上、摂氏約マイナス113度以下に冷却することが好ましい。より具体的には、被分離ガスとして製鉄工場またはセメント工場からの燃焼排ガスを用いる場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内の温度を、摂氏約マイナス85度以下に冷却することが好ましい。また、被分離ガスとして発電所からの燃焼排ガスを用いる場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内の温度を、摂氏約マイナス96度以下に冷却することが好ましい。さらにまた、被分離ガスとして大気または大気で希釈された燃焼排ガスを用いる場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内の温度を、摂氏約マイナス140度以下に冷却することが好ましい。
【0094】
被分離ガスの種類によって、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内の二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度が異なるのは、被分離ガス中の二酸化炭素の分圧が、被分離ガスの種類によって異なるためである。このことは、特願2022-518051に詳しい。
【0095】
二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内の温度が、二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度に冷却されることで、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内の二酸化炭素は昇華(固化)され、ドライアイスとなる(昇華工程)。このドライアイスは、熱交換器51A(51B,51C)の表面に付着するようにして生成される。昇華(固化)の際に残った吸収液は、開閉弁16A(16B,16C)を開弁することで、ドレン53A(53B,53C)から排出される。また、ドライアイス化された二酸化炭素を回収する際には、開閉弁17A(17B,17C)を開弁し、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)を常温に戻すことで、ドライアイスを昇華(気化)し、取り出し管54A(54B,54C)から回収する。この際、開閉弁14A(14B,14C),16A(16B,16C)は、閉弁状態とし、昇華(気化)した二酸化炭素が取り出し管54A(54B,54C)以外に流入しないようにしておく。そして、回収された二酸化炭素は、炭酸ガス等として活用される。
【0096】
二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから二酸化炭素を回収する際には、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにおける二酸化炭素の昇華(固化)を停止させる必要がある。しかし、上述したように、切替弁11によって、再生塔3から排出される二酸化炭素等を、二酸化炭素回収ライン10A,10B,10Cのいずれに流すのか選択することが可能であるため、例えば、二酸化炭素回収ライン10Aの二酸化炭素昇華器5Aから二酸化炭素の回収を行う間、二酸化炭素回収ライン10Bの二酸化炭素昇華器5B、または、二酸化炭素回収ライン10Cの二酸化炭素昇華器5Cで二酸化炭素の昇華(固化)を行い続けることができる。よって、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能である。
【0097】
本実施形態における二酸化炭素回収ライン10A,10B,10C(二酸化炭素昇華器5A,5B,5C)は、3つ並列して設けられているが、数量はこれに限定されるものではない。しかし、二酸化炭素回収ライン(二酸化炭素昇華器)は、少なくとも2つ並列して設けることが好ましく、3つ以上並列して設けることが更に好ましい。例えば、二酸化炭素回収ライン10A,10Bを2つ並列して設けたとする。この場合、一方の二酸化炭素昇華器5Aで二酸化炭素を回収(ドライアイスを昇華(気化))している間、他方の二酸化炭素昇華器5Bで二酸化炭素を昇華(固化)することができ(当然にこの逆も可能である)、効率よく二酸化炭素を回収可能である。しかし、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器を、二酸化炭素昇華器5Bから二酸化炭素昇華器5Aに切り替えようとしたとき、二酸化炭素昇華器5Aでの二酸化炭素の回収が完了していなければ、切り替えを行うことができず、二酸化炭素の昇華(固化)を中断しなければならなくなるおそれがある。
【0098】
そこで、二酸化炭素回収ライン10A,10B,10Cを3つ並列して設ければ、二酸化炭素昇華器5Aで二酸化炭素を回収(ドライアイスを昇華(気化))し、二酸化炭素昇華器5Bで二酸化炭素を昇華(固化)している間、二酸化炭素昇華器5Cを、いつでも二酸化炭素の昇華(固化)を行うことが可能なよう待機させることが可能である。そうすれば、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器を、二酸化炭素昇華器5Bから切り替えなければならない時に、二酸化炭素昇華器5Aでの二酸化炭素の回収が完了していなくても、二酸化炭素昇華器5Cに切り替えることで、二酸化炭素の昇華(固化)を継続することが可能である。このように、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの間で、昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器と、回収を行う二酸化炭素昇華器と、待機させる二酸化炭素昇華器と、に適宜分担させれば、より効率良く二酸化炭素の回収を行うことが可能である。
【0099】
また、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)は、再生塔3において放散された二酸化炭素等の吸引を行うためのポンプの役割を果たす。具体的に説明すると、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)において、二酸化炭素の昇華(固化)が行われる際、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)は減圧される。具体的には、被分離ガスが燃焼排ガスである場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)は約0.4-3.3KPaに減圧され、被分離ガスが大気または大気で希釈された燃焼排ガスである場合には、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)は約10Paに減圧される。これにより、再生塔3と二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)との間に圧力差が生じる。よって、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)がポンプの役割を果たし、再生塔3において放散された二酸化炭素等の吸引が行われる。この吸引により、二酸化炭素等の、二酸化炭素回収ライン10A(10B,10C)に向かう流れが生じる。
【0100】
また、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)が減圧されるに伴い、直列に接続されている再生塔3も減圧されるため、再生塔3における吸収液の沸騰温度が低下される。よって、吸収液を加熱するための消費エネルギーを抑えることが可能となっている。再生塔3は、上述の通り、被分離ガスを燃焼排ガスとする場合には約0.4-3.3KPaに減圧され、被分離ガスを大気とする場合には約10Paに減圧される。なお、再生塔3の圧力の調整は、第1移送管L15上に設けられた減圧弁9により行うことが可能である。
【0101】
また、冷媒は、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内の冷却を行った後、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)の有する熱交換器41A(41B,41C)により水蒸気凝縮器4A(4B,4C)内を冷却する。冷媒は、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の熱交換器51A(51B,51C)における熱交換により温度が上昇されており、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)を摂氏約1度に冷却する。
【0102】
水蒸気凝縮器4A(4B,4C)が摂氏約1度とされていることで、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)によって吸引されて、再生塔3から排出された二酸化炭素等は、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)に流入されると、摂氏約20度に冷却される。これにより、水蒸気が凝縮されて水となる。当該水は、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)の底部に貯められ、貯められた水は、開閉弁15A(15B,15C)を開弁することで、ドレン43A(43B,43C)により排出される。なお、ドレン43A(43B,43C)を再生塔3に接続し、再生塔3で再利用することとしても良い。
【0103】
水蒸気凝縮器4A(4B,4C)に、水蒸気とともに流入された二酸化炭素および窒素、酸素は、摂氏約20度では気体のままであるため、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)に吸引にされることで、第2移送管L16A(L16B,L16C)を通り、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)へ流入される。そして、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)に流入した二酸化炭素は、上述したように昇華(固化)され、ドライアイスとされる。
【0104】
さらに、冷媒は、水蒸気凝縮器4A(4B,4C)内の冷却を行った後、吸収塔2の冷却に利用される。吸収塔2を冷却する目的は、吸収液が二酸化炭素を吸収する際に発熱するため、この発熱による吸収塔2の温度上昇を抑制することにある。
【0105】
また、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cには、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの内部の気体を吸引し、排出するための真空ポンプ71(排気装置の一例)が接続されている。具体的には、二酸化炭素昇華器5Aから分岐排気ラインL181Aが延伸し、二酸化炭素昇華器5Bから分岐排気ラインL181Bが延伸し、二酸化炭素昇華器5Cから分岐排気ラインL181Cが延伸しており、分岐排気ラインL181A,L181B,L181Cが合流した第1排気ラインL18上に、真空ポンプ71が配設されている。
【0106】
分岐排気ラインL181A,L181B,L181Cが合流する箇所には切替弁72が設けられており、この切替弁72により、分岐排気ラインL181A,L181B,L181Cのうち、二酸化炭素の昇華(固化)を行っている二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cに接続されている分岐排気ラインL181A,L181B,L181Cを、第1排気ラインL18と連通させる。具体的には、二酸化炭素昇華器5Aで二酸化炭素の昇華(固化)を行っている時には、第1排気ラインL18と分岐排気ラインL181Aとを連通させる。これにより、真空ポンプ71が、二酸化炭素昇華器5Aの内部の気体を二酸化炭素昇華器5Aから排出する(排出工程)。また、二酸化炭素昇華器5Bで二酸化炭素の昇華(固化)を行っている時には、第1排気ラインL18と分岐排気ラインL181Bとを連通させる。これにより、真空ポンプ71が、二酸化炭素昇華器5Bの内部の気体を二酸化炭素昇華器5Bから排出する(排出工程)。また、二酸化炭素昇華器5Cで二酸化炭素の昇華(固化)を行っている時には、第1排気ラインL18と分岐排気ラインL181Cとを連通させる。これにより、真空ポンプ71が、二酸化炭素昇華器5Cの内部の気体を二酸化炭素昇華器5Cから排出する(排出工程)。
【0107】
なお、真空ポンプ71により二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの内部の気体の排出が開始されるタイミングは、特に限定されないが、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにおける二酸化炭素の昇華(固化)が開始された後、遅くとも25秒以内が望ましい。これは、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにおけるドライアイス生成速度が、ドライアイスの生成開始直後から急激に低下するためである(図7参照)。また、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにおける二酸化炭素の昇華(固化)が開始されるのと同時であっても良いし、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの内部の圧力値を監視しながら、ある一定の値以上になった場合に開始するものとしても良い。この、ある一定の値とは、例えば、再生塔3から放散される二酸化炭素の吸引を十分に行えるか否かにより定める。
【0108】
そして、真空ポンプ71により二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから排出された気体(以下、排出気体)は、第1排気ラインL18を通して、二酸化炭素回収装置1Aの外部(例えば大気中)に排出される。
【0109】
ここで、真空ポンプ71により排出される排出気体とは、例えば、窒素、酸素、ドライアイス化せずに残った二酸化炭素である。上述の通り、再生塔3は、吸収液(リッチ液)を沸騰させることで、二酸化炭素を放散するが、この際、吸収液(リッチ液)に溶け込んでいた窒素等も放散される。このため、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cには、二酸化炭素だけでなく、窒素等も流入される。窒素等は、二酸化炭素よりも固化・液化温度が低いため、二酸化炭素の昇華が行われる中で、窒素等は気体として残留する。この残留した窒素等を排出しないとすると、二酸化炭素昇華器5A,5B,5C内に蓄積していく。二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cは、二酸化炭素の昇華(固化)により減圧されることで、再生塔3から放散される二酸化炭素を吸引する機能を有するところ、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cに窒素等が蓄積してしまうと、二酸化炭素昇華器内部の二酸化炭素分圧が低下することにより二酸化炭素の昇華(固化)に必要な温度が低下し、冷熱源による冷却が困難になる結果ドライアイス生成が阻害され、十分に再生塔3から二酸化炭素を吸引することができなくなってしまう。つまり、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cへの二酸化炭素の流入量が低下し、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにおいて、ドライアイスの生成速度が低下する。すなわち、二酸化炭素の回収効率が低下してしまう。この点、真空ポンプ71により、二酸化炭素昇華器5A,5B,5C内部の気体を排出可能であるため、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにおける窒素等の蓄積を防止することができる。これにより、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの減圧状態を維持することが可能であるため、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cへの二酸化炭素の流入量の低下、ドライアイスの生成速度が低下を防止することが可能である。
【0110】
図7は、シミュレーションにより得た、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにおけるドライアイス生成速度と、時間の関係を表すグラフであり、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから窒素および酸素を排出しない場合(従来技術)におけるドライアイス生成速度と、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから窒素および酸素を排出する場合(本実施形態)におけるドライアイス生成速度を比較するものである。なお、縦軸はドライアイス生成速度を表すが、速度の最大値を1としてスケーリングした無次元数である。横軸は時間を表しており、0秒時点がドライアイスの生成速度を開始した時点である。また、時点t11は、真空ポンプ71が動作を開始する時点、すなわち、真空ポンプ71による二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの内部の気体の排出が開始される時点である。
【0111】
二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの内部の気体の排出を行わない場合(従来技術)では、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにおけるドライアイス生成速度が、ドライアイスの生成開始直後から急激に低下している。具体的には、約9秒で生成速度が半減している。そして、グラフ中には表れていないが、500秒経過した時点では、ドライアイスの生成が全く生行われない状態になる。
【0112】
一方で、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの内部の気体の排出を行う場合(本実施形態)では、真空ポンプ71が動作を開始する時点t11までは、従来技術同様に、ドライアイスの生成速度が低下するが、時点t11以降は、ドライアイスの生成速度が低下することなく維持され続けている。このように、真空ポンプ71により、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから窒素や酸素を排出することで、より多くのドライアイスを生成することができる、すなわち、より効率良く二酸化炭素を回収することが可能である。
【0113】
ここで、真空ポンプ71の排気容量は、再生塔3における窒素等の発生量に応じて適宜設定される。例えば、被分離ガスが燃焼排ガスであるときには、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の3以上、100分の40以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましい。ただし、再生塔3における窒素等の発生量は、用いる吸収液により増減することが考えられるため、真空ポンプ71の排気容量を、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上、100分の80以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものとしても良い。以下に、燃焼排ガスの種類により細かく説明する。
【0114】
燃焼排ガスがLNG火力発電所から発生するものである場合、真空ポンプ71の排気容量は、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の12以上、100分の40以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましい。これは、被分離ガスがLNG火力発電所の燃焼排ガスであるときには、再生塔3における窒素等の発生量が、再生塔3から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で11.8から39.7%程度であることに対応するものである。ただし、再生塔3における窒素等の発生量は、用いる吸収液により増減することが考えられるため、真空ポンプ71の排気容量を、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の6以上、100分の80以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものとしても良い。
【0115】
燃焼排ガスがガスエンジンから発生するものである場合、真空ポンプ71の排気容量は、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の8以上、100分の34以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましい。これは、被分離ガスがガスエンジンの燃焼排ガスであるときには、再生塔3における窒素等の発生量が、再生塔3から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で7.5から33.7%程度であることに対応するものである。ただし、再生塔3における窒素等の発生量は、用いる吸収液により増減することが考えられるため、真空ポンプ71の排気容量を、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の4以上、100分の68以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものとしても良い。
【0116】
燃焼排ガスが石炭火力発電所から発生するものである場合、真空ポンプ71の排気容量は、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の4以上、100分の35以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましい。これは、被分離ガスが石炭火力発電所の燃焼排ガスであるときには、再生塔3における窒素等の発生量が、再生塔3から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で3.1から34.5%程度であることに対応するものである。ただし、再生塔3における窒素等の発生量は、用いる吸収液により増減することが考えられるため、真空ポンプ71の排気容量を、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上、100分の70以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものとしても良い。
【0117】
燃焼排ガスが製鉄所から発生するものである場合、真空ポンプ71の排気容量は、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の3以上、100分の34以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましい。これは、被分離ガスが製鉄所の燃焼排ガスであるときには、再生塔3における窒素等の発生量が、再生塔3から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で2.9から33.6%程度であることに対応するものである。ただし、再生塔3における窒素等の発生量は、用いる吸収液により増減することが考えられるため、真空ポンプ71の排気容量を、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上、100分の68以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものとしても良い。
【0118】
燃焼排ガスがセメント工場から発生するものである場合、真空ポンプ71の排気容量は、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の3以上、100分の31以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましい。これは、被分離ガスがセメント工場の燃焼排ガスであるときには、再生塔3における窒素等の発生量が、再生塔3から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で2.4から30.3%程度であることに対応するものである。ただし、再生塔3における窒素等の発生量は、用いる吸収液により増減することが考えられるため、真空ポンプ71の排気容量を、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上、100分の62以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものとしても良い。
【0119】
また、真空ポンプ71の排気容量は、被分離ガスが大気または大気で希釈された燃焼排ガスであるときには、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の500分の1以上、100分の3以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましい。これは、既に述べた通り、被分離ガスが大気であるときには、再生塔3における窒素等の発生量が、再生塔3から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で0.18から2.97%程度であることに対応するものである。ただし、再生塔3における窒素等の発生量は、用いる吸収液により増減することが考えられるため、真空ポンプ71の排気容量を、再生塔3から放散される二酸化炭素の量の1000分の1以上、100分の6以下の気体量を排気可能な排気容量を備えるものとしても良い。
【0120】
以上のように、真空ポンプ71は大容量である必要がなく、真空ポンプ71自体のコスト、真空ポンプ71を動作するための消費電力を抑えることが可能である。
【0121】
図7に示すグラフおいて、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの内部の気体の排出を行う場合(本実施形態)でも、ドライアイス生成速度がドライアイスの生成開始後に低下しているのは、ドライアイスの生成が進められると、熱交換器51A(51B,51C)の表面がドライアイスで覆われ、熱交換器51A(51B,51C)が、ドライアイスの生成に十分なほど、二酸化炭素を冷却できなくなるためである。
【0122】
二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの内部の気体の排出によりドライアイス生成速度を維持できるが、時間の経過とともに、前記熱交換器51A(51B,51C)の表面のドライアイス層が厚くなり、ドライアイス層の表面温度が高くなると、固化する前に昇華槽を通過してしまう二酸化炭素が生じ、真空ポンプ71により排出される排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇する。排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇する分だけ、二酸化炭素の回収量の低下につながる。そこで、二酸化炭素回収装置1Aは、第1排気ラインL18の真空ポンプ71の上流側に濃度計73を備えることで、第1排気ラインL18を通る排出気体に含有される二酸化炭素の濃度を監視している。
【0123】
そして、二酸化炭素回収装置1Aは、排出気体に含有される二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上となったとき、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの切り替えを行う。具体的には以下に説明する。なお、所定の閾値とは、例えば10%であるが、特に限定されるものではなく、必要な二酸化炭素の回収量等に基づいて適宜設定される。
【0124】
例えば、再生塔3から排出される二酸化炭素等が二酸化炭素回収ライン10Aに流されることで二酸化炭素昇華器5Aにおいて二酸化炭素の昇華(固化)が行われており、二酸化炭素回収ライン10Bおよび二酸化炭素回収ライン10Cの少なくともいずれか一方が待機中であるとする。
【0125】
二酸化炭素の昇華(固化)を行っている二酸化炭素昇華器5Aにおいては、時間経過とともにドライアイスの生成速度が低下してくる(図6参照)。すると、分岐排気ラインL181Aおよび第1排気ラインL18を通って二酸化炭素昇華器5Aから排出される排出気体の二酸化炭素の濃度が上昇していく。そして、この排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上となったとき、切替弁11が動作され、再生塔3から排出される二酸化炭素等の流れが、待機中の二酸化炭素回収ラインに向かうように切り替えられる。なお、ここでは、二酸化炭素回収ライン10Bに切り替えられるものして説明するが、二酸化炭素回収ライン10Cに切り替えるとしても良く、待機中の二酸化炭素回収ライン(二酸化炭素昇華器)が適宜選択される。
【0126】
再生塔3から排出される二酸化炭素等の流れが、二酸化炭素回収ライン10Bに切り替えられると、二酸化炭素昇華器5Aにおける二酸化炭素の昇華(固化)は停止され、二酸化炭素昇華器5Bおいて二酸化炭素の昇華(固化)が行われるようになる。そして、二酸化炭素の昇華(固化)は停止された二酸化炭素昇華器5Aでは、ドライアイスの昇華(気化)が行われ、取り出し管54Aから二酸化炭素の回収が行われる。
【0127】
そして、二酸化炭素昇華器5Bにおけるドライアイスの生成速度が低下し、分岐排気ラインL181Bおよび第1排気ラインL18を通って二酸化炭素昇華器5Bから排出される排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上となったときには、再び切替弁11が動作され、再生塔3から排出される二酸化炭素等の流れが、待機中の二酸化炭素回収ラインに向かうように切り替えられる。ここでは、二酸化炭素回収ライン10Cに切り替えられるものとして説明するが、二酸化炭素昇華器5Aにおける二酸化炭素の回収が既に完了していれば、二酸化炭素回収ライン10Aに切り替えても良く、待機中の二酸化炭素回収ラインが適宜選択される。
【0128】
再生塔3から排出される二酸化炭素等の流れが、二酸化炭素回収ライン10Cに切り替えられることで、二酸化炭素昇華器5Bにおける二酸化炭素の昇華(固化)は停止され、二酸化炭素昇華器5Cにおいて二酸化炭素の昇華(固化)が行われるようになる。
【0129】
そして、二酸化炭素昇華器5Cにおけるドライアイスの生成速度が低下し、分岐排気ラインL181Cおよび第1排気ラインL18を通って二酸化炭素昇華器5Cから排出される排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上、上記同様に切替弁11の動作により、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素回収ラインを切り替える。以上のように、濃度計73により排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視しながら、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素回収ラインの切り替えを繰り返すことにより、二酸化炭素回収装置1Aの動作を停止させることなく効率的に二酸化炭素の回収を行うことが可能である。
【0130】
なお、濃度計73を配設する位置は、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから排出される排出気体の二酸化炭素の濃度を計測することができる位置であれば良く、本実施形態に限定されない。例えば、真空ポンプ71の下流側に配設されるものとしても良いし、分岐排気ラインL181A,L181B,L181Bのそれぞれに濃度計を配設するものとしても良い。
【0131】
以上説明したように、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aは、二酸化炭素を含有する被分離ガスから二酸化炭素を分離し、放散する分離装置60を備える二酸化炭素回収装置において、被分離ガスが供給される上流側から順に、分離装置60と、分離装置60から放散された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)と、が直列に接続されていること、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)には、冷熱を有する流体を冷媒とする冷媒回路12A(12B,12C)が接続されており、冷媒により、二酸化炭素の昇華(固化)が行われること、二酸化炭素の昇華(固化)が行われることにより二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)が減圧され、分離装置60と二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の間に圧力差が生じることで、分離装置60から放散された二酸化炭素の吸引が行われること、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)に、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の内部の気体を、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の外部に排出する排気装置(例えば、真空ポンプ71)が接続されていること、を特徴とする。
【0132】
また、上記の二酸化炭素回収装置1Aにおいて、被分離ガスは、燃焼排ガスまたは大気または大気で希釈された燃焼排ガスであり、少なくとも窒素を含有していること、分離装置60は、二酸化炭素とともに、少なくとも前記窒素を放散し、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)は、二酸化炭素とともに、少なくとも窒素を吸引すること、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の内部の気体とは、少なくとも窒素を含有していること、が好ましい。
【0133】
上記の二酸化炭素回収装置1Aによれば、排気装置(例えば真空ポンプ71)により、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の内部の気体(窒素等)を排出可能であるため、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)における窒素等の蓄積を防止することができる。これにより、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内部の二酸化炭素分圧の低下を抑制することが可能であるため、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の二酸化炭素の流入量の低下、ひいては、二酸化炭素の回収効率の低下を防止することが可能である。
【0134】
また、上記の二酸化炭素回収装置1Aにおいて、被分離ガスは、燃焼排ガスであること、排気装置(例えば、真空ポンプ71)は、少なくとも、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、が好ましく、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の100分の3以上の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが更に好ましい。
【0135】
また、上記の二酸化炭素回収装置1Aにおいて、被分離ガスは、大気または大気で希釈された燃焼排ガスであること、排気装置(例えば、真空ポンプ71)は、少なくとも、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の1000分の1以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、が好ましく、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の500分の1以上の気体量を排気可能な排気容量を備えること、が更に好ましい。
【0136】
分離装置60において分離された二酸化炭素の、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)への流れは、排気装置(真空ポンプ71)が二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の内部の気体を排出することにより生じるのではなく、二酸化炭素の昇華(固化)が行われることにより二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)が減圧されることで生じる。したがって、排気装置(真空ポンプ71)は、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の内部の気体を吸引できる程度の排気容量を備えていれば良い。
【0137】
具体的には、排気装置(真空ポンプ71)の排気容量は、被分離ガスが燃焼排ガスであるときには、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の100分の2の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましく、100分の3以上の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが更に好ましい。これは、被分離ガスが燃焼排ガスであるときには、分離装置60における窒素等の発生量が、分離装置60から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で2.4から39.7%程度であることを、本願発明者がシミュレーションにより確認したことによる。
【0138】
また、排気装置(真空ポンプ71)の排気容量は、被分離ガスが大気または大気で希釈された燃焼排ガスであるときには、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の1000分の1の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが好ましく、500分の1以上の気体量を排気可能な排気容量を備えるものであることが更に好ましい。これは、被分離ガスが大気であるときには、分離装置60における窒素等の発生量が、分離装置60から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で0.18から2.97%程度であることを、本願発明者がシミュレーションにより確認したことによる。つまり、大容量の排気装置(真空ポンプ71)は必要なく、排気装置(真空ポンプ71)自体のコスト、排気装置(真空ポンプ71)を動作するための消費電力を抑えることが可能である。
【0139】
また、上記の二酸化炭素回収装置1Aにおいて、排気装置(真空ポンプ71)により二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)から排出される気体すなわち排出気体の二酸化炭素の濃度を計測する濃度計73を備えること、が好ましい。
【0140】
上記二酸化炭素回収装置1Aによれば、濃度計73により、排気装置(真空ポンプ71)により二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)から排出される排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視することができる。二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)における二酸化炭素の昇華(固化)速度(ドライアイス生成速度)が低下するなどし、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇した場合、その分、二酸化炭素の回収量の低下につながる。しかし、濃度計73により、排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視することで、二酸化炭素の回収量の低下を防止することができる。
【0141】
具体的には、上記の二酸化炭素回収装置1Aにおいて、分離装置60に、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cが並列に接続されていること、分離装置60と2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cとの間には、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cのうちから、昇華(固化)を行う任意の一基を選択し、分離装置60において分離された二酸化炭素を流入させる第1切替手段(例えば、切替弁11)を備えること、濃度計73により計測される二酸化炭素の濃度が所定の閾値(例えば、10%)以上であるとき、第1切替手段(切替弁11)により、昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cを切り替えること、が好ましい。
【0142】
上記の二酸化炭素回収装置1Aは、分離装置60に、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cが並列に接続されているため、例えば、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器と、二酸化炭素の昇華(固化)を行う準備のできている待機中の二酸化炭素昇華器と、を設けることができる。さらに、上記の二酸化炭素回収装置1Aは、第1切替手段(切替弁11)を備えるため、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器において、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器を、例えば待機中の二酸化炭素昇華器に切り替えることができる。これにより、二酸化炭素回収装置1Aの動作を停止させることなく、二酸化炭素の昇華(固化)を継続することができるため、効率的に二酸化炭素の回収を行うことが可能である。
【0143】
また、以上説明したように、本実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素を含有する被分離ガスから二酸化炭素を分離し、放散する分離装置60と、分離装置60から放散された二酸化炭素を昇華(固化)させる二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)とが、被分離ガスが供給される上流側から順に直列に接続された二酸化炭素回収装置1Aを用いた二酸化炭素回収方法であって、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)において、冷熱を有する流体を冷媒として、二酸化炭素の昇華(固化)を行う昇華工程を行うこと、昇華工程において、二酸化炭素の昇華(固化)により二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)を減圧し、分離装置60と二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の間に圧力差を生じさせることで、分離装置60から放散された二酸化炭素の吸引を行うこと、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の内部の気体を、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の外部に排出をする排出工程を行うこと、を特徴とする。
【0144】
また、上記の二酸化炭素回収方法において、被分離ガスは、燃焼排ガスまたは大気または大気で希釈された燃焼排ガスであり、少なくとも窒素を含有していること、が好ましい。
【0145】
上記の二酸化炭素回収方法によれば、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の内部の気体を、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の外部に排出をする排出工程を行うため、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)における窒素等またはメタン等炭化水素の蓄積を防止することができる。これにより、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)内部の二酸化炭素分圧の低下を抑制することが可能であるため、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の二酸化炭素の流入量の低下、ひいては、二酸化炭素の回収効率の低下を防止することが可能である。
【0146】
また、上記の二酸化炭素回収方法において、被分離ガスは、燃焼排ガスであること、排出工程は、少なくとも、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上の気体量を排出すること、が好ましく、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の100分の3以上の気体量を排出することが更に好ましい。
【0147】
また、上記の二酸化炭素回収方法において、被分離ガスは、大気または大気で希釈された燃焼排ガスであること、排出工程は、少なくとも、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の1000分の1以上の気体量を排出すること、が好ましく、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の500分の1以上の気体量を排出することが更に好ましい。
【0148】
分離装置60において分離された二酸化炭素の、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)への流れは、排出工程により生じるのではなく、二酸化炭素の昇華(固化)が行われることにより二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)が減圧されることで生じる。したがって、排出工程で排出する気体量は、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の内部の気体を排出できる程度であれば良い。
【0149】
具体的には、被分離ガスが燃焼排ガスであるときには、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の100分の2以上の気体量を排出することが好ましく、100分の3以上の気体量を排出することが更に好ましい。これは、被分離ガスが燃焼排ガスであるときには、分離装置60における窒素等の発生量が、分離装置60から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で2.4から39.7%程度であることを、本願発明者がシミュレーションにより確認したことによる。
【0150】
また、被分離ガスが大気または大気で希釈された燃焼排ガスであるときには、分離装置60から放散される二酸化炭素の量の1000分の1の気体量を排出することが好ましく、500分の1以上の気体量を排出することが更に好ましい。これは、被分離ガスが大気であるときには、分離装置60における窒素等の発生量が、分離装置60から放散される二酸化炭素の量に対して、モル基準で0.18から2.97%程度であることを、本願発明者がシミュレーションにより確認したことによる。よって、排出工程は、例えば真空ポンプ71等の排気装置により行うものであるところ、排気装置は大容量である必要がなく、排気装置自体のコスト、排気装置を動作するための消費電力を抑えることが可能である。
【0151】
また、上記の二酸化炭素回収方法において、排出工程において、前記二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)から排出される気体すなわち排出気体の二酸化炭素の濃度を計測すること、が好ましい。
【0152】
上記二酸化炭素回収方法によれば、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)から排出される排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視することができる。二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)における二酸化炭素の昇華(固化)速度(ドライアイス生成速度)が低下するなどし、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇した場合、その分、二酸化炭素の回収量の低下につながる。しかし、排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視することで、二酸化炭素の回収量の低下を防止することができる。
【0153】
具体的には、上記の二酸化炭素回収方法において、分離装置60に、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cを並列に接続すること、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cのうちから、昇華(固化)を行う任意の一基を選択し、分離装置60において分離された二酸化炭素の昇華(固化)を行い、該任意の一基から排出される排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値(例えば、10%)以上であるとき、昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cを切り替えること、が好ましい。
【0154】
上記の二酸化炭素回収方法は、分離装置60に、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cが並列に接続されているため、例えば、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器と、二酸化炭素の昇華(固化)を行う準備のできている待機中の二酸化炭素昇華器と、を設けることができる。さらに、上記の二酸化炭素回収方法は、第1切替手段(切替弁11)により、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにおいて、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器を、例えば待機中の二酸化炭素昇華器に切り替えることができる。これにより、二酸化炭素回収装置1Aの動作を停止させることなく、二酸化炭素の昇華(固化)を継続することができるため、効率的に二酸化炭素の回収を行うことが可能である。
【0155】
なお、ここまで再生塔3から二酸化炭素とともに窒素等が放散される例について説明しているが、被分離ガスとしてバイオガスを用いる場合には、再生塔3から二酸化炭素とともにメタン等炭化水素が放散される。この場合も、窒素等の場合と同様に、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)は、二酸化炭素とともにメタン等炭化水素を吸引する。このため、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cにメタン等炭化水素が蓄積するおそれがある。しかし、二酸化炭素回収装置1Aによれば、真空ポンプ71により、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)の内部の気体(メタン等炭化水素)を排出可能であるため、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)におけるメタン等炭化水素の蓄積を防止することができる。
【0156】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Bについて、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aと異なる点のみ説明する。図2は、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Bの構成を概略的に表した図である。図3は、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Bの還流ラインL20の構成を概略的に表した図である。
【0157】
第1排気ラインL18は、真空ポンプ71の下流側で、切替弁74により第2排気ラインL19と還流ラインL20とに分岐されている点が、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aと異なっている。つまり、第1排気ラインL18は、切替弁74の動作により、第2排気ラインL19と還流ラインL20とのいずれか一方と連通可能とされている。
【0158】
第1排気ラインL18が切替弁74により第2排気ラインL19に連通されると、真空ポンプ71により二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから排出された排出気体が、第1排気ラインL18および第2排気ラインL19を通して、二酸化炭素回収装置1Bの外部(例えば大気中)に排出される。
【0159】
還流ラインL20は、図3に示すように、二酸化炭素昇華器5Aに接続された分岐還流ラインL201Aと、二酸化炭素昇華器5Bに接続された分岐還流ラインL201Bと、二酸化炭素昇華器5Cに接続された分岐還流ラインL201Cとに分岐されている。この分岐されている箇所には、切替弁75(第2切替手段の一例)が配設されており、この切替弁75の動作により、分岐還流ラインL201A、分岐還流ラインL201B、分岐還流ラインL201Cのいずれかが還流ラインL20に連通する。したがって、第1排気ラインL18が還流ラインL20と連通した状態で、還流ラインL20が分岐還流ラインL201Aと連通すれば、排出気体を二酸化炭素昇華器5Aに還流することができる。また、第1排気ラインL18が還流ラインL20と連通した状態で、還流ラインL20が分岐還流ラインL201Bと連通すれば、排出気体を二酸化炭素昇華器5Bに還流することができる。また、第1排気ラインL18が還流ラインL20と連通した状態で、還流ラインL20が分岐還流ラインL201Cと連通すれば、排出気体を二酸化炭素昇華器5Cに還流することができる。
【0160】
以上のような構成の二酸化炭素回収装置1Bにより、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cのいずれかで二酸化炭素の昇華(固化)を開始したとする。このとき、第1排気ラインL18は、第2排気ラインL19と連通されている。これにより、昇華(固化)を行っている二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから、真空ポンプ71により窒素等を排出する。このとき、濃度計73により、排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視している。
【0161】
ドライアイスの生成が進むと、ドライアイス生成速度が低下する(図6の本実施形態を参照)。ドライアイス生成速度が低下すると、真空ポンプ71により排出される排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇する。そして、排出気体に含有される二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上となったとき、切替弁74を動作し、第1排気ラインL18と還流ラインL20を連通させる。ここで、所定の閾値とは、例えば10%であるが、特に限定されるものではなく、必要な二酸化炭素の回収量等に基づいて適宜設定される。
【0162】
そして、還流ラインL20は、切替弁75により、昇華(固化)を行っている二酸化炭素昇華器に接続されている分岐還流ラインL201A,L201B,L201Cに連通される。これにより、排出気体は、昇華(固化)を行っている二酸化炭素昇華器に還流されるため、排出気体に含まれている二酸化炭素の昇華(固化)を行うことができる。
【0163】
または、還流ラインL20を、切替弁75により、待機中の二酸化炭素昇華器に接続されている分岐還流ラインL201A,L201B,L201Cに連通させても良い。これにより、排出気体は、二酸化炭素の昇華(固化)を行っている二酸化炭素昇華器とは別の、待機中の二酸化炭素昇華器に還流される。 そして、切替弁11の動作により、二酸化炭素の昇華(固化)を行う二酸化炭素昇華器を、排出気体を還流した二酸化炭素昇華器に切り替えれば、還流した排出気体に含まれている二酸化炭素の昇華(固化)を行うことができる。
【0164】
排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇すると、その分、ドライアイスが生成されず、二酸化炭素の回収が行われないことを意味する。しかし、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Bのように、排出気体中の二酸化炭素の濃度が所定の閾値を超えた場合に、二酸化炭素昇華器に還流すれば、排出気体中の二酸化炭素の昇華(固化)を行うことができる。よって、二酸化炭素を無駄なく回収することが可能である。
【0165】
なお、濃度計73の配設される位置は、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから排出される排出気体の二酸化炭素の濃度を計測することができる位置であれば良く、本実施形態に限定されない。例えば、第1排気ラインL18の真空ポンプ71の下流側、または、第2排気ラインL19上に配設されるものとしても良いし、分岐排気ラインL181A,L181B,L181Bのそれぞれに濃度計を配設するものとしても良い。
【0166】
以上説明したように、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Bは、排気装置(真空ポンプ71)に、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)から排出した気体を、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)に還流する還流ラインL20が接続されていること、濃度計73により計測される二酸化炭素の濃度が所定の閾値(例えば、10%)以上であるとき、還流ラインL20により、排出気体を二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)に還流すること、を特徴とする。
【0167】
上記の二酸化炭素回収装置1Bにおいて、分離装置60に、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cが並列に接続されていること、還流ラインL20は、分岐され、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cのそれぞれに接続されていること、還流ラインL20は、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cのうちから、任意の一基を選択し、排出気体を還流する第2切替手段(例えば、切替弁75)を備えること、が好ましい。
【0168】
上記の二酸化炭素回収装置1Bにおいて、任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っている二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cであること、または、二酸化炭素の昇華(固化)を行っていない待機中の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cであること、が好ましい。
【0169】
上記の二酸化炭素回収装置1Bは、還流ラインL20を備えており、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、排出気体を二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cに還流する。これにより、排出気体中の二酸化炭素の昇華(固化)を行うことができる。よって、二酸化炭素を無駄なく回収することが可能である。
【0170】
また、以上説明したように、本実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値(例えば、10%)以上であるとき、排出気体の二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)への還流をすること、が好ましい。
【0171】
上記の二酸化炭素回収方法において、分離装置60に、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cを並列に接続すること、還流は、2基以上の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cのうちから、任意の一基を選択して行うこと、が好ましい。
【0172】
上記の二酸化炭素回収方法において、任意の一基とは、二酸化炭素の昇華(固化)を行っている二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cであること、または、二酸化炭素の昇華(固化)を行っていない待機中の二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cであること、が好ましい。
【0173】
上記の二酸化炭素回収方法は、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、排出気体を二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cに還流する。これにより、排出気体中の二酸化炭素の昇華(固化)を行うことができる。よって、二酸化炭素を無駄なく回収することが可能である。
【0174】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Cについて、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aと異なる点のみ説明する。図4は、第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Cの構成を概略的に表した図である。
【0175】
第1排気ラインL18は、真空ポンプ71の下流側で、切替弁74により第2排気ラインL19と還流ラインL21とに分岐されている点が、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Aと異なっている。つまり、第1排気ラインL18は、切替弁74の動作により、第2排気ラインL19と還流ラインL21とのいずれか一方と連通可能とされている。
【0176】
第1排気ラインL18が切替弁74により第2排気ラインL19に連通されると、真空ポンプ71により二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから排出された排出気体が、第1排気ラインL18および第2排気ラインL19を通して、二酸化炭素回収装置1Cの外部(例えば大気中)に排出される。
【0177】
還流ラインL21は、吸収塔2の、充填材21よりも下方に接続されている。これにより、排出気体を吸収塔2に還流することができる。
【0178】
以上のような構成の二酸化炭素回収装置1Cにより、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cのいずれかで二酸化炭素の昇華(固化)を開始したとする。このとき、第1排気ラインL18は、第2排気ラインL19と連通されている。これにより、昇華(固化)を行っている二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから、真空ポンプ71により窒素等を排出する。このとき、濃度計73により、排出気体中の二酸化炭素の濃度を監視している。
【0179】
そして、排出気体に含有される二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上となったとき、切替弁74を動作し、第1排気ラインL18と還流ラインL21を連通させる。ここで、所定の閾値とは、例えば10%であるが、特に限定されるものではなく、必要な二酸化炭素の回収量等に基づいて適宜設定される。
【0180】
第1排気ラインL18と還流ラインL21とが連通することで、排出気体は、吸収塔2に還流され、吸収塔2内で充填材21に向かって上昇する。これにより、排出気体と吸収液(リーン液)とが気液接触するため、吸収液は、排出気体中の二酸化炭素を選択的に吸収する。吸収された二酸化炭素は、再生塔3で放散され、再び二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cに流入するため、二酸化炭素を無駄なく昇華(固化)することができる。
【0181】
以上説明したように、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1Cは、排気装置(真空ポンプ71)に、二酸化炭素昇華器5A(5B,5C)から排出した気体を、分離装置60(吸収塔2)に還流する還流ラインL21が接続されていること、濃度計73により計測される二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上であるとき、還流ラインL21により、排出気体を分離装置60(吸収塔2)に還流すること、を特徴とする。
【0182】
上記の二酸化炭素回収装置1Cは、還流ラインL21を備えており、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、排出気体を吸収塔2に還流する。これにより、排出気体中の二酸化炭素の昇華(固化)を行うことができる。よって、二酸化炭素を無駄なく回収することが可能である。
【0183】
以上説明したように、本実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、排出気体の二酸化炭素の濃度が所定の閾値以上であるとき、排出気体の分離装置60(吸収塔2)への還流をすること、を特徴とする。
【0184】
上記の二酸化炭素回収方法は、排出気体中の二酸化炭素の濃度が上昇し、その濃度が所定の閾値以上になったとき、排出気体を吸収塔2に還流する。これにより、排出気体中の二酸化炭素の昇華(固化)を行うことができる。よって、二酸化炭素を無駄なく回収することが可能である。
【0185】
なお、上記した二酸化炭素回収装置1A,1B,1Cは単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、真空ポンプ71は、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから主に窒素等またはメタン等炭化水素を排出するために用いられるものとして説明しているが、窒素等またはメタン等炭化水素以外の気体を排出するものであっても良い。具体的には、二酸化炭素よりも固化・液化温度が低い気体が想定される。二酸化炭素よりも固化・液化温度が低い気体は、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cで固化されずに蓄積し、二酸化炭素昇華器5A,5B,5C内部の二酸化炭素分圧が低下することにより二酸化炭素の昇華(固化)に必要な温度が低下し、冷熱源による冷却が困難になる結果ドライアイスの生成を阻害するため、排出する必要があるからである。
【0186】
また、水蒸気凝縮器4A,4B,4Cの温度が摂氏1度にされることや、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの二酸化炭素の昇華(固化)に適した温度にされることや、再生塔3の圧力が約0.4-3.3KPaまたは約10Paに減圧されることは、あくまで例示であり、これらに限定されるものではない。例えば、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの温度をより低温にすることで、より急速に二酸化炭素のドライアイス化を進めることが可能である。しかし、あまり温度を低下させ過ぎると、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cから二酸化炭素を回収する際に、ドライアイスを昇華(気化)させるのに時間がかかってしまうことや、再生塔3の圧力が下がり過ぎてしまい、吸収液が液体と固体の共存状態となり、二酸化炭素の放散する効率が低下することが考えられ、却って、二酸化炭素の回収効率が低下するおそれがある。よって、二酸化炭素昇華器5A,5B,5Cの温度は、二酸化炭素の回収効率を見ながら適宜調整される。
【符号の説明】
【0187】
1A 二酸化炭素回収装置
60 分離装置
5A 二酸化炭素昇華器
5B 二酸化炭素昇華器
5C 二酸化炭素昇華器
12A 冷媒回路
12B 冷媒回路
12C 冷媒回路
71 真空ポンプ(排気装置の一例)
図1
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図7