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特開2024-148464二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148464
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20241010BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241010BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20241010BHJP
   B01D 7/02 20060101ALI20241010BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20241010BHJP
【FI】
B01D53/14 200
B01D53/62 ZAB
B01D19/00 101
B01D7/02
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061629
(22)【出願日】2023-04-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ムーンショット型研究開発事業/地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現/冷熱を利用した大気中二酸化炭素直接回収の研究開発」委託事業(事業期間:2020年度~2024年度)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一
(72)【発明者】
【氏名】薮下 雅崇
(72)【発明者】
【氏名】水上 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】向江 友佑
(72)【発明者】
【氏名】神谷 健司
【テーマコード(参考)】
4D002
4D011
4D020
4D076
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002BA02
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA32
4D002DA34
4D002DA70
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB04
4D002GB05
4D002HA08
4D011AA16
4D011AB03
4D011AD06
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA18
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB08
4D020CC09
4D020DA01
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB03
4D020DB04
4D020DB05
4D076AA15
4D076BD07
4D076EA12Y
4D076FA02
4D076FA15
4D076HA10
4D076JA04
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC21
4G146JD02
(57)【要約】
【課題】より純度の高い二酸化炭素を、効率良く回収することが可能な二酸化炭素回収装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素回収装置1は、二酸化炭素を含む被分離ガスを、気液接触により吸収液に吸収させる吸収塔10と、吸収液に吸収した二酸化炭素を放散させる再生塔40とを備え、放散した二酸化炭素を回収する。二酸化炭素回収装置1では、被分離ガスは、二酸化炭素と共に不要ガスを混在してなる混合ガスであり、被分離ガスを吸収した状態にある吸収処理後の吸収液から、混在している不要ガスを、選択的に除去して排気する不要ガス除去処理部20を備え、不要ガス除去処理部20は、吸収塔10と再生塔40の上流部とを第1供給管L11で繋いだ第1流路に、吸収処理後の吸収液を収容可能な内部空間20Sと連通可能な態様で設けられ、内部空間20Sの雰囲気を減圧可能な第1真空ポンプ31と、減圧する圧力を調整可能な圧力調整手段34と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む被分離ガスを、気液接触により吸収液に吸収させる吸収塔と、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔とを備え、放散した該二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスは、二酸化炭素と共に不要ガスを混在してなる混合ガスであり、
前記被分離ガスを吸収した状態にある吸収処理後の前記吸収液から、混在している前記不要ガスを、選択的に除去して排気する不要ガス除去手段を備え、
前記不要ガス除去手段は、前記吸収塔と前記再生塔の上流部とを第1管で繋いで形成された第1流路に、前記吸収処理後の吸収液を収容可能な内部空間と連通可能な態様で設けられ、前記内部空間の雰囲気を減圧可能な第1吸引手段と、減圧する圧力を調整可能な圧力調整手段と、を有すること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記不要ガスは、少なくとも窒素、酸素を主成分に含んだ気体であり、
前記第1吸引手段は、前記被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の上限より高い圧力帯域内とする負圧下に、前記内部空間の雰囲気を吸引可能な吸引能力を有すること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
請求項2に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記不要ガス除去手段は、前記被分離ガスに含む窒素成分及び酸素成分を、除去前後比による割合で99%以上除去するものであること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
請求項2に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスが大気である場合、前記第1吸引手段の前記吸引能力は、前記内部空間の雰囲気を、下限値0.04kPaとし、かつ上限値1.20kPaとした範囲内の圧力下に吸引できること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
請求項2に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記被分離ガスが燃焼ガスを含む場合、前記第1吸引手段の前記吸引能力は、前記内部空間の雰囲気を、下限値2kPa以上、かつ上限値66kPaより小さい圧力の範囲内に吸引できること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記不要ガス除去手段では、前記第1吸引手段による吸引を伴って、前記不要ガスの排気を行う排気管路に、二酸化炭素の濃度を計測可能な濃度計を備えていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記再生塔の上流側には、流通する前記吸収処理後の吸収液の圧力を計測可能な圧力計を備えていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記第1管の前記第1流路には、前記吸収処理後の吸収液の流れを制御可能な流量制御弁が配設されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記不要ガス除去手段は、前記第1吸引手段の吸引で排気される前記不要ガスの流れを制御する不要ガス排気制御手段を有していること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項10】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記不要ガス除去手段は、前記内部空間に対し、前記吸収塔から前記吸収処理後の吸収液を流入させる第1流入部と、前記再生塔へと前記吸収処理後の吸収液を流出させる第1流出部を有し、
前記第1流路のうち、前記第1流入部と、前記第1流出部より下流側にある前記再生塔の前記上流部との間には、前記内部空間に収容した前記吸収処理後の吸収液に対し、前記第1流入部から前記再生塔の前記上流部側への流れを規制する流通規制部が設けられていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項11】
請求項10に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記流通規制部は、充填材を装填した状態になっていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項12】
請求項10に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記流通規制部は、前記第1流路のうち、前記第1流入部側から流通する前記吸収処理後の吸収液の流路の断面に絞りを付したオリフィスであること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項13】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記再生塔から放散した前記再生処理後の二酸化炭素を、少なくとも気相から固相への昇華処理を行って回収する二酸化炭素固化処理回収手段を備え、
前記再生塔の下流部が、前記二酸化炭素固化処理回収手段に向けて前記再生処理後の二酸化炭素を供給する第2管の流路と連通可能に接続されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項14】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記再生塔から放散した前記再生処理後の二酸化炭素を、そのまま気相状態で回収する二酸化炭素ガス回収手段と、放散した前記再生処理後の二酸化炭素を吸引可能な第2吸引手段と、を備え、
前記再生塔の下流部が、前記二酸化炭素ガス回収手段に向けて前記再生処理後の二酸化炭素を供給する第3管の流路と連通可能に接続されていると共に、前記第2吸引手段が、前記第3管の流路上に配設されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項15】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記再生塔の内部にある塔内空間に、前記再生塔の前記上流部側で、前記吸収塔から前記吸収処理後の吸収液を流入させる第2流入部と、前記再生塔の下流部側で、放散した再生処理後の二酸化炭素を流出させる第2流出部とを有し、
前記塔内空間のうち、前記第2流入部と前記第2流出部との間に、前記第2流入部側から前記第2流出部側への前記吸収処理後の吸収液の流れを規制する流通規制部が設けられていること、
前記塔内空間のうち、前記流通規制部を挟む前記第2流入部側の空間が、前記不要ガス除去手段の前記内部空間であること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項16】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記不要ガス除去手段に構成されるガス除去処理塔を備え、
前記第1管の前記第1流路上では、前記吸収塔と、前記ガス除去処理塔と、前記再生塔とが直列に連結されており、前記ガス除去処理塔内の空間が、前記内部空間となっていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項17】
請求項16に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記ガス除去処理塔は、前記内部空間に対し、前記吸収塔から前記吸収処理後の吸収液を流入させる第1流入部と、前記再生塔へと前記吸収処理後の吸収液を流出させる第1流出部とを有すると共に、
前記内部空間では、前記内部空間に収容した前記吸収処理後の吸収液に対し、前記第1流入部から前記第1流出部への流れを規制する流通規制部が、前記第1流入部と前記第1流出部との間に設けられ、前記流通規制部は、充填材を装填した状態になっていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項18】
請求項16に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記ガス除去処理塔は、前記再生塔を超える高い位置に配設されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項19】
請求項18に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記ガス除去処理塔と前記再生塔とは、双方で同一の設置エリア内に、上下方向に沿った縦配置で設けられていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項20】
二酸化炭素を含む被分離ガスを、気液接触により吸収液に吸収させる吸収塔の下流側に、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔を設けた設備で、放散した該二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収方法において、
前記被分離ガスは、二酸化炭素と共に不要ガスを混在してなる混合ガスであり、
前記被分離ガスを吸収した状態にある吸収処理後の前記吸収液から、混在している前記不要ガスを、前記再生塔より上流側に設けたガス除去処理塔の内部空間で、選択的に除去して排気する不要ガス除去プロセスを有し、
前記不要ガス除去プロセスは、前記内部空間の雰囲気を、前記被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の上限より高い圧力帯域内とする負圧下に吸引することにより、前記不要ガスを排気すること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項21】
請求項20に記載する二酸化炭素回収方法において、
前記不要ガスは、少なくとも窒素、酸素を主成分に含んだ気体であり、
前記不要ガス除去プロセスでは、前記被分離ガスに含む窒素成分及び酸素成分が、除去前後比による割合で99%以上除去されること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項22】
請求項20または請求項21に記載する二酸化炭素回収方法において、
前記被分離ガスが大気である場合、前記不要ガス除去プロセスでは、前記内部空間の雰囲気が、下限値0.04kPaとし、かつ上限値1.20kPaとした範囲内の圧力下で吸引されること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項23】
請求項20または請求項21に記載する二酸化炭素回収方法において、
前記被分離ガスが燃焼ガスを含む場合、前記不要ガス除去プロセスでは、前記内部空間の雰囲気が、下限値2kPa以上、かつ上限値66kPaより小さい圧力の範囲内に吸引されること、
を特徴とする二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、燃焼排ガス、大気等、被分離ガスに含有する二酸化炭素を、混在する不要ガスと分離して回収する二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動問題が喫緊の課題となっている。そのような中、二酸化炭素の大気放散を回避するために、大気、または工場や発電所での燃焼排ガス等、二酸化炭素を含有するガス(被分離ガス)から、二酸化炭素を分離、回収するための技術が求められている。
【0003】
加えて、我が国では、溶接に用いる炭酸ガスや、物流に用いるドライアイス等、二酸化炭素の需要が増加している。この需要の増加に対して、供給が追い付いていない背景のもと、我が国における二酸化炭素の輸入量は、年々増加する傾向にある。しかし、二酸化炭素をドライアイスとして輸入する場合には、輸送中に一部が融けてしまう等、ロスが大きい。このような中、被分離ガスに含有される二酸化炭素を活用すべく、高純度の二酸化炭素を回収することが可能な装置が求められている。
【0004】
被分離ガスから高純度の二酸化炭素を回収する装置としては、特許文献1に開示されるような、二酸化炭素を含有する被分離ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを気液接触させて、吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)から、二酸化炭素を水蒸気とともに放散する再生塔と、を備える二酸化炭素回収装置が知られている。
【0005】
再生塔においては、二酸化炭素を吸収した吸収液を、二酸化炭素吸収反応の平衡温度まで加熱することで、二酸化炭素と水蒸気の放散が行われる。この加熱のための消費エネルギー量を抑えるため、特許文献1では、再生塔を減圧することで、二酸化炭素を吸収した吸収液の平衡温度をより低温化でき、省エネルギー化を図っている。
【0006】
しかし、特許文献1に開示された二酸化炭素回収装置は、再生塔を減圧するために、真空ポンプを用いており、この真空ポンプを動作するためには、多大な電力が必要である。このため、電力コストの増加や、発電のための新たな二酸化炭素の発生が懸念される。よって、電力コストの増加や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えるため、さらなる省エネルギー化を達成することができる二酸化炭素回収装置が求められていた。
【0007】
このような背景の下、本出願人は、特願2022-518051に開示した二酸化炭素回収装置を提案している。この二酸化炭素回収装置では、被分離ガスから二酸化炭素を分離し放散する分離装置と、二酸化炭素を昇華して固化させる二酸化炭素昇華器とが、直列に接続されている。分離装置は、例えば、吸収塔と再生塔を備えており、吸収塔で分離された二酸化炭素は、再生塔から放散され、二酸化炭素昇華器まで流れる。二酸化炭素昇華器に達した二酸化炭素は、冷熱を有する流体を利用した冷媒により、冷却され昇華して固化する。そして、二酸化炭素が昇華により固化されて生じたドライアイスを、昇華して気化させる等して回収することで、炭酸ガス等として活用することができる。
【0008】
上記の二酸化炭素昇華器は、二酸化炭素を昇華(固化)することで減圧され、負圧状態となる。二酸化炭素昇華器が負圧状態になることで、再生塔から放散された二酸化炭素の吸引が行われる。この吸引により、再生塔から二酸化炭素昇華器までの、二酸化炭素の流れが生じ、二酸化炭素昇華器において、二酸化炭素の昇華(固化)が促進されるのである。つまり、二酸化炭素の吸引は、冷熱を有する流体を利用して行われるものであるため、吸引のためのポンプ等が必要なく、省エネルギー化を達成することができる。そして、省エネルギー化により、電力コストの増大や、発電のための新たな二酸化炭素の発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-270814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
吸収塔は、被分離ガスと吸収液とを気液接触させて、吸収液に二酸化炭素を吸収させるものであるところ、被分離ガス中には、二酸化炭素の他、窒素や酸素も含まれているため、気液接触する過程で、窒素や酸素が、微量ながら吸収液に溶け込んでしまう。そのような窒素や酸素が溶け込んだ吸収液(リッチ液)によって、再生塔で二酸化炭素の放散を行うと、二酸化炭素だけでなく、窒素や酸素も合わせて放散される。
【0011】
このとき、特願2022-518051に開示される二酸化炭素回収装置のように、再生塔から放散された二酸化炭素を二酸化炭素昇華器により昇華(固化)させて回収することとすると、二酸化炭素昇華器には、二酸化炭素だけでなく、窒素や酸素も流入されることになる。そうすると、窒素や酸素は、二酸化炭素に比べ、固化・液化温度が低いため、二酸化炭素の昇華(固化)が行われる中で、窒素と酸素が、気体として残留し、二酸化炭素昇華器内に蓄積してしまう。それ故に、回収される二酸化炭素の純度が、相対的に低下してしまい、問題となる。
【0012】
また、上記の二酸化炭素昇華器は、二酸化炭素の昇華(固化)により負圧状態になることで、再生塔から放散される二酸化炭素を吸引する機能を有するのであるところ、窒素と酸素が二酸化炭素昇華器に蓄積してしまうと、二酸化炭素昇華器内部の二酸化炭素分圧は低下する。それ故に、二酸化炭素が再生塔から放散され難くなり、二酸化炭素の回収効率が低下する虞がある。さらに、ドライアイス生成の阻害により、二酸化炭素昇華器内部に、二酸化炭素、窒素、酸素が蓄積してしまうと、二酸化炭素昇華器内部の全圧が上昇することにより、再生塔が十分に減圧されなくなり、二酸化炭素の放散量が減少してしまう虞がある。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、より純度の高い二酸化炭素を、効率良く回収することが可能な二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における二酸化炭素回収装置は、次のような構成を有している。
【0015】
(1)二酸化炭素を含む被分離ガスを、気液接触により吸収液に吸収させる吸収塔と、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔とを備え、放散した該二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置において、前記被分離ガスは、二酸化炭素と共に不要ガスを混在してなる混合ガスであり、前記被分離ガスを吸収した状態にある吸収処理後の前記吸収液から、混在している前記不要ガスを、選択的に除去して排気する不要ガス除去手段を備え、前記不要ガス除去手段は、前記吸収塔と前記再生塔の上流部とを第1管で繋いで形成された第1流路に、前記吸収処理後の吸収液を収容可能な内部空間と連通可能な態様で設けられ、前記内部空間の雰囲気を減圧可能な第1吸引手段と、減圧する圧力を調整可能な圧力調整手段と、を有すること、を特徴とする。
【0016】
この態様によれば、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の昇華にあたり、不要ガスの残留に伴った阻害要因を完全に排除できる。そのため、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、昇華を経て固相化(ドライアイス)するまでの過程の進行として、ドライアイスの生成速度が急激に低下してしまうのを抑制することができる。それ故に、被分離ガスに混在する二酸化炭素が、より効率良く回収できる。また、吸収塔から送出される吸収処理後の吸収液が、減圧下にある再生塔の内部空間で再生処理後の二酸化炭素(COガス)を放散するまでに、吸収処理後の吸収液に残留する不要ガスが不要ガス除去処理部で除去できるため、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、より放散し易くなる。しかも、放散により回収された二酸化炭素(COガス)の純度は、より高くなっている。
【0017】
(2)(1)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記不要ガスは、少なくとも窒素、酸素を主成分に含んだ気体であり、前記第1吸引手段は、前記被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の上限より高い圧力帯域内とする負圧下に、前記内部空間の雰囲気を吸引可能な吸引能力を有すること、が好ましい。
【0018】
この態様によれば、不要ガス除去処理部内は、第1吸引手段により、吸収処理後の吸収液から二酸化炭素(COガス)の放散を抑止した圧力下となる。そのため、不要ガス除去処理部内では、吸収処理後の吸収液からの二酸化炭素(COガス)の放出を効果的に抑止して、不要ガスの主成分をなす窒素ガス、酸素ガスだけが、外部に排気することができる。
【0019】
(3)(2)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記不要ガス除去手段は、前記被分離ガスに含む窒素成分及び酸素成分を、除去前後比による割合で99%以上除去するものであること、が好ましい。
【0020】
この態様によれば、本発明に係る二酸化炭素回収装置は、再生処理後の二酸化炭素(COガス)に基づいて、ドライアイス化を図る上で、実用可能な装置となる。
【0021】
(4)(2)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記被分離ガスが大気である場合、前記第1吸引手段の前記吸引能力は、前記内部空間の雰囲気を、下限値0.04kPaとし、かつ上限値1.20kPaとした範囲内の圧力下に吸引できること、が好ましい。
【0022】
この態様によれば、本発明に係る二酸化炭素回収装置は、大気中の二酸化炭素を回収の対象とする場合に用いることができる。
【0023】
(5)(2)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記被分離ガスが燃焼ガスを含む場合、前記第1吸引手段の前記吸引能力は、前記内部空間の雰囲気を、下限値2kPa以上、かつ上限値66kPaより小さい圧力の範囲内に吸引できること、が好ましい。
【0024】
この態様によれば、本発明に係る二酸化炭素回収装置は、例えば、LNG火力発電所、石炭火力発電所、製鉄所、セメント工場等のほか、ガスエンジン等に由来する燃焼排ガスに混在する二酸化炭素ガスを、回収の対象とする場合に用いることができる。
【0025】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記不要ガス除去手段では、前記第1吸引手段による吸引を伴って、前記不要ガスの排気を行う排気管路に、二酸化炭素の濃度を計測可能な濃度計を備えていること、が好ましい。
【0026】
この態様によれば、不要ガス除去処理部で、吸収処理後の吸収液から除去する不要ガスの排気に伴って、万が一、二酸化炭素(COガス)が、不要ガス除去処理部内で吸収液から放出されてしまう場合に備え、二酸化炭素(COガス)の放出状況が、濃度計の計測値により、把握できるようになる。
【0027】
(7)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記再生塔の上流側には、流通する前記吸収処理後の吸収液の圧力を計測可能な圧力計を備えていること、が好ましい。
【0028】
この態様によれば、不要ガス除去処理部では、二酸化炭素(COガス)の放出事象は、流通する吸収処理後の吸収液の圧力低下に起因して生じるため、流通する吸収処理後の吸収液の圧力状況を、圧力計で監視することにより、二酸化炭素(COガス)の放出状況が、把握できるようになる。
【0029】
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記第1管の前記第1流路には、前記吸収処理後の吸収液の流れを制御可能な流量制御弁が配設されていること、が好ましい。
【0030】
この態様によれば、不要ガス除去処理部で不要ガス(主に窒素ガス、酸素ガス)の放散後、再生塔で再生処理後の二酸化炭素(COガス)の放散に向けて、ポンプ等の動力手段を伴わず、あるいは動力手段に要するエネルギーを抑えて、吸収処理後の吸収液自体は、再生塔側との圧力差を利用して、再生塔に移送することができる。
【0031】
(9)(1)乃至(8)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記不要ガス除去手段は、前記第1吸引手段の吸引で排気される前記不要ガスの流れを制御する不要ガス排気制御手段を有していること、が好ましい。
【0032】
この態様によれば、不要ガス排気制御手段が、例えば、流速、流量等、不要ガスの流れを制御することで、不要ガスの排気に伴って、放出の蓋然性を有した二酸化炭素(COガス)の放散が、より少量に抑えることができるようになる。
【0033】
(10)(1)乃至(9)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記不要ガス除去手段は、前記内部空間に対し、前記吸収塔から前記吸収処理後の吸収液を流入させる第1流入部と、前記再生塔へと前記吸収処理後の吸収液を流出させる第1流出部を有し、前記第1流路のうち、前記第1流入部と、前記第1流出部より下流側にある前記再生塔の前記上流部との間には、前記内部空間に収容した前記吸収処理後の吸収液に対し、前記第1流入部から前記再生塔の前記上流部側への流れを規制する流通規制部が設けられていること、が好ましい。
【0034】
この態様によれば、再生塔内のうち、上流部側の空間を、吸収処理後の吸収液から再生処理後の二酸化炭素(COガス)を放散不可となる圧力下に、上流部側の雰囲気が制御できるようになる。これにより、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス等)が、吸収処理後の吸収液から選択的に除去すること可能になる。
【0035】
(11)(10)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記流通規制部は、充填材を装填した状態になっていること、が好ましい。
【0036】
この態様によれば、充填材は、吸収処理後の吸収液の微粒化に起因した系外へのロスを防ぎつつ、吸収処理後の吸収液との接触面積を、より大きく確保することができるため、吸収処理後の吸収液から不要ガス(窒素ガス、酸素ガス等)を、促進的に放散させることができる。
【0037】
(12)(10)に記載する二酸化炭素回収装置において、前記流通規制部は、前記第1流路のうち、前記第1流入部側から流通する前記吸収処理後の吸収液の流路の断面に絞りを付したオリフィスであること、が好ましい。
【0038】
この態様によれば、オリフィスでは、吸収処理後の吸収液の流れに圧力損失が生じるようになるため、吸収処理後の吸収液がオリフィスを通過して再生塔側に流通するまでに、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)が、吸収処理後の吸収液から放散し易くなる。
【0039】
(13)(1)乃至(12)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記再生塔から放散した前記再生処理後の二酸化炭素を、少なくとも気相から固相への昇華処理を行って回収する二酸化炭素固化処理回収手段を備え、前記再生塔の下流部が、前記二酸化炭素固化処理回収手段に向けて前記再生処理後の二酸化炭素を供給する第2管の流路と連通可能に接続されていること、が好ましい。
【0040】
この態様によれば、再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、昇華してドライアイス化する上で、阻害要因となる不要ガス(窒素ガス、酸素ガス等)を概ね皆無の状態となっているため、二酸化炭素固化処理回収手段では、ドライアイスは、気相から固相への相変化の進行速度を高めて、生成することができるようになる。
【0041】
(14)(1)乃至(12)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記再生塔から放散した前記再生処理後の二酸化炭素を、そのまま気相状態で回収する二酸化炭素ガス回収手段と、放散した前記再生処理後の二酸化炭素を吸引可能な第2吸引手段と、を備え、前記再生塔の下流部が、前記二酸化炭素ガス回収手段に向けて前記再生処理後の二酸化炭素を供給する第3管の流路と連通可能に接続されていると共に、前記第2吸引手段が、前記第3管の流路上に配設されていること、が好ましい。
【0042】
この態様によれば、再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、不純物となる不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)を概ね皆無の状態となっているため、二酸化炭素ガス回収手段を経て、例えば、液化炭酸ガスを製造する等、製品向けの高品質な材料として、提供することができるようになる。
【0043】
(15)(1)乃至(14)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記再生塔の内部にある塔内空間に、前記再生塔の前記上流部側で、前記吸収塔から前記吸収処理後の吸収液を流入させる第2流入部と、前記再生塔の下流部側で、放散した再生処理後の二酸化炭素を流出させる第2流出部とを有し、前記塔内空間のうち、前記第2流入部と前記第2流出部との間に、前記第2流入部側から前記第2流出部側への前記吸収処理後の吸収液の流れを規制する流通規制部が設けられていること、前記塔内空間のうち、前記流通規制部を挟む前記第2流入部側の空間が、前記不要ガス除去手段の前記内部空間であること、が好ましい。
【0044】
この態様によれば、本発明に係る二酸化炭素回収装置は、よりコンパクト化して構成することができるため、その設置面積が比較的狭い場所でも設置し易くなる。また、本発明に係る二酸化炭素回収装置は、その装置の構成を簡素化できているため、装置コストを安価に抑えることができる。
【0045】
(16)(1)乃至(14)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記不要ガス除去手段の機能を有するガス除去処理塔を備え、前記第1管の前記第1流路上では、前記吸収塔と、前記ガス除去処理塔と、前記再生塔とが直列に連結されており、前記ガス除去処理塔内の空間が、前記内部空間となっていること、が好ましい。
【0046】
この態様によれば、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス等)は、ガス除去処理塔で排気され、再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、ガス除去処理塔と別系統の再生塔で放散される。そのため、吸収液から二酸化炭素(COガス)の放出を回避しながら、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス等)を排気させるのに、ガス除去処理塔で必要とされる種々の排気条件が、設定し易くなる。
【0047】
(17)(16)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記ガス除去処理塔は、前記内部空間に対し、前記吸収塔から前記吸収処理後の吸収液を流入させる第1流入部と、前記再生塔へと前記吸収処理後の吸収液を流出させる第1流出部とを有すると共に、前記内部空間では、前記内部空間に収容した前記吸収処理後の吸収液に対し、前記第1流入部から前記第1流出部への流れを規制する流通規制部が、前記第1流入部と前記第1流出部との間に設けられ、前記流通規制部は、充填材を装填した状態になっていること、が好ましい。
【0048】
この態様によれば、充填材は、吸収処理後の吸収液の微粒化に起因した系外へのロスを防ぎつつ、吸収処理後の吸収液との接触面積を、より大きく確保することができるため、吸収処理後の吸収液から不要ガス(窒素ガス、酸素ガス等)を、促進的に放散させることができる。
【0049】
(18)(1)乃至(14)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記ガス除去処理塔は、前記再生塔を超える高い位置に配設されていること、が好ましい。
【0050】
この態様によれば、吸収処理後の吸収液が、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス等)の放散を終えた状態の下、高圧側となるガス除去処理塔内から、低圧側の再生塔へと、自重に基づく流下により、効率良く移送することができる。これにより、吸収処理後の吸収液を再生塔に移送するためのポンプ等の動力手段が不要となる。
【0051】
(19)(18)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記ガス除去処理塔と前記再生塔とは、双方で同一の設置エリア内に、上下方向に沿った縦配置で設けられていること、が好ましい。
【0052】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の態様における二酸化炭素回収方法は、次のような構成を有している。
【0053】
(20)二酸化炭素を含む被分離ガスを、気液接触により吸収液に吸収させる吸収塔の下流側に、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔を設けた設備で、放散した該二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収方法において、前記被分離ガスは、二酸化炭素と共に不要ガスを混在してなる混合ガスであり、前記被分離ガスを吸収した状態にある吸収処理後の前記吸収液から、混在している前記不要ガスを、前記再生塔より上流側に設けたガス除去処理塔の内部空間で、選択的に除去して排気する不要ガス除去プロセスを有し、前記不要ガス除去プロセスは、前記内部空間の雰囲気を、前記被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の上限より高い圧力帯域内とする負圧下に吸引することにより、前記不要ガスを排気すること、を特徴とする。
【0054】
この態様によれば、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の昇華にあたり、不要ガスの残留に伴った阻害要因を完全に排除できる。そのため、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、昇華を経て固相化(ドライアイス)するまでの過程の進行として、ドライアイスの生成速度が急激に低下してしまうのを抑制することができる。それ故に、被分離ガスに混在する二酸化炭素が、より効率良く回収できる。また、吸収塔から送出される吸収処理後の吸収液が、減圧下にある再生塔の内部空間で再生処理後の二酸化炭素(COガス)を放散するまでに、吸収処理後の吸収液に残留する不要ガスが不要ガス除去処理部で除去できるため、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、より放散し易くなる。しかも、放散により回収された二酸化炭素(COガス)の純度は、より高くなっている。
【0055】
(21)(20)に記載する二酸化炭素回収方法において、前記不要ガスは、少なくとも窒素、酸素を主成分に含んだ気体であり、前記不要ガス除去プロセスでは、前記被分離ガスに含む窒素成分及び酸素成分が、除去前後比による割合で99%以上除去されること、が好ましい。
【0056】
この態様によれば、本発明に係る二酸化炭素回収方法は、再生処理後の二酸化炭素(COガス)に基づいて、より純度の高いドライアイスを、安定した状態で生成することができるようになる。
【0057】
(22)(20)または(21)に記載する二酸化炭素回収方法において、前記被分離ガスが大気である場合、前記不要ガス除去プロセスでは、前記内部空間の雰囲気が、下限値0.04kPaとし、かつ上限値1.20kPaとした範囲内の圧力下で吸引されること、が好ましい。
【0058】
この態様によれば、本発明に係る二酸化炭素回収方法は、大気中の二酸化炭素を回収の対象とする場合に用いることができる。
【0059】
(23)(20)または(21)に記載する二酸化炭素回収方法において、前記被分離ガスが燃焼ガスを含む場合、前記不要ガス除去プロセスでは、前記内部空間の雰囲気が、下限値2kPa以上、かつ上限値66kPaより小さい圧力の範囲内に吸引されること、が好ましい。
【0060】
この態様によれば、本発明に係る二酸化炭素回収方法は、例えば、LNG火力発電所、石炭火力発電所、製鉄所、セメント工場等のほか、ガスエンジン等に由来する燃焼排ガスに混在する二酸化炭素ガスを、回収の対象とする場合に用いることができる。
【0061】
この態様によれば、本発明に係る二酸化炭素回収装置は、よりコンパクト化して構成することができるため、その設置面積が比較的狭い場所でも設置し易くなる。
【発明の効果】
【0062】
従って、本発明に係る二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法によれば、より純度の高い二酸化炭素を、効率良く回収することができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置で、再生塔と別体化態様で設けた不要ガス除去処理部の要部を概略的に示す説明図である。
図2】第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を概略的に示す配管系統図であり、固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔と、不要ガス除去処理部を縦配置で設けた場合の一例(実施例1)を示す説明図である。
図3】第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を概略的に示す配管系統図であり、非固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔と、不要ガス除去処理部を縦配置で設けた場合の一例(実施例2)を示す説明図である。
図4】第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を概略的に示す配管系統図であり、固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔と、不要ガス除去処理部を横配置で設けた場合の一例(実施例3)を示す説明図である。
図5】第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を概略的に示す配管系統図であり、非固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔と、不要ガス除去処理部を横配置で設けた場合の一例(実施例4)を示す説明図である。
図6】第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を概略的に示す配管系統図であり、固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔に、不要ガス除去処理部の機能を施した一体化態様で、不要ガス除去処理部を設けた場合の一例(実施例5)を示す説明図である。
図7】第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を概略的に示す配管系統図であり、非固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔に、不要ガス除去処理部の機能を施した一体化態様で、不要ガス除去処理部を設けた場合の一例(実施例6)を示す説明図である。
図8】被分離ガスの種類毎に、被分離ガスに混在する二酸化炭素の分圧を示すグラフである。
図9】本実施形態に係る二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法の効果を確認する上で、被分離ガスから二酸化炭素を回収するまでの一連のプロセスに対し、被分離ガスを、燃焼ガスとした場合と大気とした場合に分けて行った第1の検証調査について、条件と結果をまとめて掲載した表である。
図10】本実施形態に係る二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法により、二酸化炭素回収ラインで固化する二酸化炭素に対し、時間の経過と共に変化するドライアイス生成速度の挙動を表すグラフである。
図11】従来技術に係る二酸化炭素回収装置の再生塔から放散される二酸化炭素ガスに対し、再生塔内の圧力と発生量との関係を示すグラフである。
図12】従来技術に係る二酸化炭素回収装置の再生塔から放散される窒素ガス、酸素ガスに対し、再生塔内の圧力と発生量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
<第1の実施形態>
以下、本発明に係る二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法について、第1,第2の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法は、例えば、燃焼排ガス、大気等、被分離ガスから、混在する二酸化炭素を分離して回収する目的で用いられる。以下、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法の説明にあたり、第1,第2の実施形態で共通する内容を、最初に第1の実施形態で説明した後、第2の実施形態では、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、実施形態1と共通する部分の説明は、同じ符号を用いて簡略、または省略する。また、本実施形態に係る二酸化炭素回収方法についての説明は、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置を用いた場合で行う。
【0065】
本発明に係る二酸化炭素回収装置は、吸収塔と再生塔とを備えた装置である。吸収塔は、被分離ガスに含む二酸化炭素を、被分離ガスとの気液接触により、吸収液に吸収させる機能を有する。再生塔は、吸収塔で吸収液に吸収された二酸化炭素を、吸収液から放散させる機能を有する。被分離ガスからの二酸化炭素の分離処理(ガス分離処理)は、吸収塔と再生塔で担う。ガス分離処理後、再生塔で放散された二酸化炭素は、そのままガス状で回収することや、二酸化炭素固化処理回収手段により、一旦、固化(ドライアイス)させた後、ドライアイスを気化させた気相状態(炭酸ガス)、または液化させた状態(液化炭酸ガス)に処理されて回収することも可能である。
【0066】
<吸収液について>
はじめに、吸収液と被分離ガスについて、説明する。吸収液は、前述したガス分離処理で用いられる。吸収液は、気相の状態にある二酸化炭素と接触状態の下で、二酸化炭素を吸収可能とする一方、当該吸収液の昇温を伴って、吸収した二酸化炭素を放散可能な物性を有する液状物質である。具体的には、吸収液は、例えば、アミン系物質の溶液、物理吸収液等である。
【0067】
アミン系物質の一例として、モノエタノールアミン(MEA:Monoethanolamine)(CNO)、ジエタノールアミン(DEA:Diethanolamine)(C11NO)、トリエタノールアミン(TEA:Triethanolamine)(C15NO)、ジエチルエタノールアミン(DEEA:Diethylethanolamine)(C15NO)、ジイソプロピルアミン(DIPA:Diisopropylamine)(C15N)、アミノエトキシエタノール(AEE:2-(2-Aminoethoxy)ethanol)(C11NO)、メチルジエタノールアミン(MDEA:Methyldiethanolamine)(C13NO)等が挙げられる。
【0068】
また、物理吸収液の一例として、シクロテトラメチレンスルホン(スルホラン)(Cyclotetramethylene sulfone)(Sulfolane)(分子式CS)及びその化合物の誘導体、脂肪酸とアミンから形成される脂肪族酸アミド(Fatty acid amide)、N-メチルピロリドン(NMP:N-methylpyrrolidone)(CNO)、N-アルキル化ピロリドン及び相応するピペリドン(Piperidone)、メタノール(Methanol)及びポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)のジアルキルエーテル類の混合物等が挙げられる。
【0069】
このような吸収液群の中で、最も好ましい吸収液は、2-(エチルアミノ)エタノール(2-(Ethylamino)ethanol)(C11NO)と、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Ethylene glycol monoethyl ether)(C14)により、アミン濃度を30wt%程度に混合してなるアミン溶液(以下、本実施形態に係るアミン溶液、または特に断りが限り単にアミン溶液と称す)である。第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置では、アミン溶液が吸収液に用いられる。
【0070】
<被分離ガスについて>
次に、被分離ガスについて、説明する。被分離ガスは、二酸化炭素をはじめ、不要ガスとして、酸素、窒素等を主に混在した状態で含む混合ガスであり、具体的には、本発明では、燃焼排ガスや大気等を総称したガスである。燃焼排ガスは、例えば、発電所や製鉄工場、セメント工場等、種々の工業施設で、燃焼により生じた排ガス、浸炭焼入れ炉に代表される熱処理炉、メッキ等を行う化学反応装置等、工業設備から発生するオフガス、バイオガス等とした工業用ガスを主な対象としている。
【0071】
燃焼排ガスがこのような工業用ガスである場合、燃焼排ガスは、当該燃焼排ガスに占める二酸化炭素の含有割合の一例として、数~30wt%超えの二酸化炭素を構成成分に含み、それ以外にも窒素や酸素等を構成成分に含んだ混合物である。なお、被分離ガスは、燃焼排ガス自体や、混在する大気により希釈された状態の燃焼排ガス等の排ガスに限らず、二酸化炭素の含有割合は1wt%未満であるものの、大気も被分離ガスの対象とすることができる。なお、大気で希釈された状態の燃焼排ガスとは、工場等の煙道から燃焼排ガスを回収する際に、必然的に大気が燃焼排ガスに混ざってしまうような場合を想定している。
【0072】
換言すれば、被分離ガスは、二酸化炭素と共に、不要ガスを混在してなる混合ガスであり、不要ガスは、少なくとも窒素、酸素を主成分に含んだ気体である。本発明に係る二酸化炭素回収装置では、二酸化炭素を回収する上で、このような不要ガスの存在は、阻害要因となるため、不要ガス除去手段が、吸収塔と再生塔との間に設けられている。不要ガス除去手段についての説明は、後に詳述する。
【0073】
<第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1の概要について>
次に、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の概要について、実施例1~4の例示を挙げて説明する。図1は、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置で、再生塔と別体化態様で設けた不要ガス除去処理部の要部を概略的に示す説明図である。
【0074】
図1に示すように、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、大別して、前述したガス分離処理を担う分離部2と、ガス分離処理の実施により、より高純度に精製された状態で放散した二酸化炭素の回収を担う回収部3とからなる。分離部2には、吸収塔10、不要ガス除去処理部20(不要ガス除去手段)、及び再生塔40が設けられている。回収部3には、実施例1,3の場合で、固化向けの二酸化炭素回収ライン4(二酸化炭素固化処理回収手段)が、実施例2,4の場合で、非固化向けの二酸化炭素回収ライン5(二酸化炭素ガス回収手段)が、それぞれ設けられている。
【0075】
<吸収塔の構成と機能について>
はじめに、分離部2について、説明する。吸収塔10は、前述したように、被分離ガスに含む二酸化炭素を、被分離ガスとの気液接触により、吸収液に吸収させる機能を有する。吸収塔10は、一例として、ラシヒリング等の充填材11を内部空間10Sに装填した向流型気液接触装置である。吸収塔10は、内部空間10Sの下方部にガス導入口12と第1流出口14とを有すると共に、充填材11を挟み、内部空間10Sの上方部に吸収液導入口13と排気管路15とを有する。ガス導入口12は、燃焼排ガスを供給するガス供給路L1と接続され、燃焼排ガスが、ガス導入口12から吸収塔10の内部空間10Sの下方部に流入可能となっている。
【0076】
なお、硫黄酸化物が燃焼排ガス中に混在する場合には、ガス供給路L1上に設けた脱硫装置により、硫黄酸化物を除去し、脱硫した状態の燃焼排ガスが、吸収塔10に供給されても良い。
【0077】
吸収塔10では、燃焼排ガスが、ガス供給路L1からガス導入口12を通じて内部空間10Sの下方部に供給されると、燃焼排ガスは、内部空間10Sで充填材11に向けて上昇する。その一方で、吸収液が、二酸化炭素を吸収する前の状態にあるリーン液として、還流管L12から吸収液導入口13を通じて内部空間10Sの上方部に導入されると、吸収液(リーン液)は、充填材11に向けて落下する。そのため、吸収液(リーン液)は、滴下した充填材11の表面を流れるときに生じる燃焼排ガスとの気液接触によって、燃焼排ガス中の二酸化炭素を選択的に吸収する。
【0078】
この気液接触に伴い、吸収液は、内部空間10Sの下方部で、リーン液に二酸化炭素を吸収した状態にある吸収処理後の吸収液(以下、「リッチ液」と称する場合もある)となり、この吸収液(リッチ液)は、内部空間10Sの下方部から第1流出口14を通じて流出される。また、二酸化炭素が燃焼排ガスから吸収液(リーン液)に吸収されると、燃焼排ガスのうち、二酸化炭素の除去後に残存する不要ガスは、主として酸素、窒素等となり、その不要ガスの大半が、内部空間10Sの上方部から排気管路15を通じて排気される。
【0079】
<再生塔の構成について>
次に、説明の都合上、不要ガス除去処理部20より先に再生塔40について、説明する。再生塔40は、前述したように、吸収塔10で吸収液に吸収された二酸化炭素を、吸収液から放散させる機能を有する。再生塔40は、一例として、ラシヒリング等の充填材41を内部空間40Sに装填した向流型気液接触装置である。再生塔40は、内部空間40Sの上方部に吸収液導入口42と第2流出口44を有すると共に、充填材41を挟み、内部空間40Sの下方部に第1流出口43を有する。再生塔40は、内部空間40Sの雰囲気の圧力を計測可能な圧力計48を有している。再生塔40は、第1供給管L11(第1管路)により、吸収塔10と連通可能に連結されている。再生塔40の第1流出口43は、吸収塔10の吸収液導入口13と、還流管L12により、熱交換器73を経由して接続されている。
【0080】
また、再生塔40の内部空間40Sの下方部には、ヒートポンプ71とヒートポンプ72が配設されている。ヒートポンプ71とヒートポンプ72は、例えば、廃温熱や環境熱等で加温された熱媒体を利用した装置である。また、ヒートポンプ72は、吸収塔10の内部空間10Sにおいて、吸収液(リーン液)に二酸化炭素の吸収時に生じる発熱も利用可能となっている。再生塔40では、内部空間40Sの下方部に収容された状態にある二酸化炭素吸収後の吸収液(リッチ液)を加熱する。また、このヒートポンプ72は、吸収塔10の内部空間10Sの下方部に供給された燃焼排ガスも加熱可能に配管されている。
【0081】
<再生塔で行う二酸化炭素の放散について>
リッチ液は、後述する不要ガス除去処理部20から吸収液導入口42を通じて再生塔40の内部空間40Sに向けて移送される。再生塔40では、リッチ液が、内部空間40Sの上流側に供給されると、リッチ液は、充填材41に向けて落下する。内部空間40Sでは、リッチ液が、充填材41を通過して落下する間、ヒートポンプ71とヒートポンプ72により、沸騰温度に加熱されると、リッチ液に吸収していた二酸化炭素は放散する。
【0082】
ところで、詳細は後述するが、二酸化炭素の放散にあたり、特に再生塔40の内部空間40Sは、被分離ガスの二酸化炭素の濃度に応じて、次述するように、比較的低圧下に減圧して設定されると良い。すなわち、被分離ガスが燃焼排ガスの場合、内部空間40Sでの減圧後の圧力は、一例として、0.4-3.3KPa程である。被分離ガスが、大気または、大気で希釈された状態の燃焼排ガスの場合、内部空間40Sでの減圧後の圧力は、一例として、10Pa程である。
【0083】
吸収液(リッチ液)から二酸化炭素を放散後、二酸化炭素を放出した吸収液(リーン液)は、再生塔40の内部空間40Sから第1流出口43を通じて排出される。この吸収液(リーン液)は、還流管L12に供給され、熱交換器73を経て、吸収液導入口13より、吸収塔10の内部空間10Sの上方部に還流される。還流した吸収液(リーン液)は、吸収塔10の内部空間10Sで、後続で供給される燃焼排ガスに二酸化炭素を吸収するのに再利用される。
【0084】
<不要ガス除去処理部20について>
次に、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1に構成した不要ガス除去処理部20について、図1図5と共に、実施例1~4の場合を挙げて説明する。図2は、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を概略的に示す配管系統図であり、固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔と、不要ガス除去処理部を縦配置で設けた場合の一例(実施例1)を示す説明図である。図3は、図2と同様の配管系統図であり、非固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔と、不要ガス除去処理部を縦配置で設けた場合の一例(実施例2)を示す説明図である。図4は、図2及び図3と同様の配管系統図であり、固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔と、不要ガス除去処理部を横配置で設けた場合の一例(実施例3)を示す説明図である。図5は、図2図4と同様の配管系統図であり、非固化向けの二酸化炭素回収ラインに接続した再生塔と、不要ガス除去処理部を横配置で設けた場合の一例(実施例4)を示す説明図である。
【0085】
図1に示すように、二酸化炭素回収装置1では、不要ガスの多くが、予め吸収塔10で内部空間10Sから排気管路15を通じて排気される。しかしながら、二酸化炭素以外の不要ガスが、吸収塔10から再生塔40に向けて送出される吸収処理後の吸収液(リッチ液)に、僅かながら溶け込んだまま残留する。後に詳述するが、本出願人は、このような知見を、数多くの調査・シミュレーション等を通じて得ている。第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、その残留する不要ガスを取り除く対策として、不要ガス除去処理部20を備えている。
【0086】
不要ガス除去処理部20は、再生塔40で二酸化炭素を放散させる前の過程で、吸収塔10で被分離ガスを吸収した状態にある吸収処理後の吸収液(リッチ液)から、混在している不要ガスを、選択的に除去して排気する機能を有する。不要ガス除去処理部20は、吸収処理後の吸収液(リッチ液)から二酸化炭素の放散を抑止した上で、被分離ガスに由来する窒素成分及び酸素成分で、吸収処理後の吸収液(リッチ液)に残留していた不要ガスを、除去前後比による割合で99%以上除去する性能を具備したものである。
【0087】
このような不要ガス除去処理部20は、図1図5に示すように、吸収塔10と再生塔40の上流部40SU側とを第1供給管L11で繋ぐ第1流路L11Xの途中で、吸収塔10から送出される吸収処理後の吸収液(リッチ液)を収容可能なガス除去処理ユニット21の内部空間20Sと、連通可能な態様で配設されている。第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、不要ガス除去処理部20は、再生塔40と別体の態様で、設けられている。吸収塔10と、不要ガス除去処理部20と、再生塔40とが、直列接続で連結されている。不要ガス除去処理部20は、ガス除去処理ユニット21と、第1真空ポンプ31(第1吸引手段)と、濃度計32と、圧力計33と、圧力調整手段34と、流量制御弁35と、不要ガス排気制御手段36等を有してなる。
【0088】
第1真空ポンプ31は、ガス除去処理ユニット21の内部空間20Sの雰囲気を減圧可能な吸引手段であり、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の上限より高い圧力帯域内で、内部空間20Sの雰囲気を負圧下に吸引可能とした吸引能力を有する。不要ガス除去処理部20では、用いる第1真空ポンプ31の吸引能力は、被分離ガスの種類、発生源、生成条件等、ガスの構成条件によって異なる。
【0089】
具体的には、図8に例示するように、被分離ガスが、燃焼排ガスであっても、製鉄工場、セメント工場等に由来する燃焼排ガス(図8では、第1燃焼排ガスと表記)の場合では、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の最大値P11は、概ね60kPaである。また、発電所等に由来する燃焼排ガス(図8では、第2燃焼排ガスと表記)の場合では、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の最大値P12は、概ね21kPaである。他方で、被分離ガスが大気の場合、大気に占める二酸化炭素の分圧の最大値P13は、概ね0.045kPaである。
【0090】
このように、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の最大値は、被分離ガスの種類、発生源等、ガスの構成条件によって異なっている。それ故に、被分離ガスが、燃焼ガス単体、あるいは大気と混在した状態の被分離ガスに関らず、燃焼ガスを含む場合、第1真空ポンプ31の吸引能力は、ガス除去処理ユニット21の内部空間20Sの雰囲気を、下限値2kPa以上、かつ上限値66kPaより小さい圧力の範囲内に吸引できる能力である。より好ましくは、第1真空ポンプ31の吸引能力は、内部空間20Sの雰囲気を、4~33kPa程度の圧力下にすることができる能力である。
【0091】
また、被分離ガスが大気の場合、第1真空ポンプ31の吸引能力は、ガス除去処理ユニット21の内部空間20Sの雰囲気を、0.04kPaの圧力下、または許容範囲内とする誤差圧力p(0<p)kPa分を0.04kPaに加えた大きさの圧力下に吸引できる能力である。より好ましくは、第1真空ポンプ31の吸引能力は、内部空間20Sの雰囲気を、限りなく下限値0.04kPaに近付けた上で、一例である0.1kPa近傍の圧力下にすることができる能力である。
【0092】
(実施例1)
実施例1に係る二酸化炭素回収装置1A(1)の分離部2の構成について、図2を用いて説明する。図2に示すように、二酸化炭素回収装置1A(1)では、ガス除去処理ユニット21が、後述する固化向けの二酸化炭素回収ライン4に接続した再生塔40に対し、双方とも同一の設置エリア内に、上下方向(図2中、上下方向)に沿って高低差Hを有した縦配置で配設されている。ガス除去処理ユニット21は、再生塔40を超える高い位置である。
【0093】
ガス除去処理ユニット21は、内部空間20Sに対し、吸収塔10から吸収処理後の吸収液(リッチ液)を流入させる第1流入口23(第1流入部)と、再生塔40へと吸収処理後の吸収液(リッチ液)を流出させる第1流出口24(第1流出部)を有している。第1供給管L11のうち、第1流入口23と、第1流出口24より下流側(図2中、下側)にある再生塔40の内部空間40Sの上流部40SUとの間にある第1流路L11Xには、流通規制部22が設けられている。流通規制部22は、内部空間20S全体を、第1流入口23側の空間部と、第1流出口24側の空間部に区画し、第1流入口23から内部空間20Sに流入した吸収処理後の吸収液(リッチ液)に対し、第1流出口24側への流れを規制する機能を有する。
【0094】
具体的には、本実施例1の場合、流通規制部22は、内部空間20Sのうち、第1流入口23と第1流出口24との間には、流通規制部22が設けられている。流通規制部22では、一例として、ラシヒリング等の充填材22Xが装填された状態になっている。
【0095】
内部空間20S全体のうち、第1流入口23側の空間部には、圧力計33が設けられている。圧力計33は、第1流入口23側の空間部での雰囲気の圧力を計測可能な計測手段である。また、第1流入口23側の空間部と連通可能に接続する排気管路15には、濃度計32が設けられている。濃度計32は、二酸化炭素の濃度を計測可能な計測手段である。
【0096】
また、第1供給管L11のうち、第1流入口23に接続する第1流路L11Xには、圧力調整手段34と流量制御弁35が、それぞれ設けられている。圧力調整手段34は、内部空間20Sへ流入する吸収処理後の吸収液(リッチ液)の圧力を、設定される所定の圧力に制御して調整することを可能とした制御手段である。流量制御弁35は、内部空間20Sへ流入する吸収処理後の吸収液(リッチ液)の流れを、設定される所定の流量に制御して調整することを可能とした弁である。
【0097】
また、内部空間20S全体のうち、第1流入口23側の空間部には、排気管路29が、第2流出口26から配管されている。排気管路29は、吸収処理後の吸収液(リッチ液)に残留していた不要ガスを、内部空間20Sの雰囲気として放散させ、その内部空間20Sからガス除去処理ユニット21の外部へ排気するために設けられている。排気管路29から不要ガスの放散にあたり、第1真空ポンプ31により、外部に向けて吸引される排ガスから、万が一二酸化炭素が放出されてしまうことに備え、排気管路29に設けた濃度計32により、排ガス中に検出された二酸化炭素の濃度を計測することができている。また、この排気管路29上には、不要ガス排気制御手段36、第1真空ポンプ31、及び開閉弁92が設けられている。不要ガス排気制御手段36は、第1真空ポンプ31による吸引で、排気される不要ガスの流れ(例えば、流量、流速等)を制御する機能を有する。
【0098】
ガス除去処理ユニット21の内部空間20Sは、その第1流出口24と吸収液導入口42とを接続する連結管27により、再生塔40の内部空間40Sと連通している。連結管27は、内部空間20Sから流れる吸収処理後の吸収液(リッチ液)に対し、無視できない程の比較的大きい圧力損失を生じさせるよう、絞った流路断面となっている。実施例1に係る二酸化炭素回収装置1A(1)の場合、再生塔40の内部空間40Sにある第2流出口44が、第2供給管L21と接続している。これにより、再生塔40で放散した再生処理後の二酸化炭素が、内部空間40Sの下流部40SLから二酸化炭素回収ライン4に送出されることにより、後述するように、まずドライアイスに処理された後、気相状態(炭酸ガス)、または液化させた状態(液化炭酸ガス)に処理されて回収される。
【0099】
(実施例2)
次に、実施例2に係る二酸化炭素回収装置1B(1)の分離部2の構成について、図3を用いて説明する。なお、実施例2以降では、実施例1とは異なる内容を中心に説明し、実施例1と共通する内容の説明は、同じ符号を用いて簡略、または省略する。
【0100】
図3に示すように、二酸化炭素回収装置1B(1)では、ガス除去処理ユニット21が、後述する非固化向けの二酸化炭素回収ライン5に接続した再生塔40に対し、双方とも同一の設置エリア内に、上下方向(図3中、上下方向)に沿って高低差Hを有した縦配置で配設されている。ガス除去処理ユニット21は、再生塔40を超える高い位置である。
【0101】
実施例1に係る二酸化炭素回収装置1A(1)では、流通規制部22は、ラシヒリング等の充填材22Xを装填した状態になっていたが、実施例2に係る二酸化炭素回収装置1B(1)では、流通規制部22の構成、配設場所が、実施例1と異なっている。
【0102】
具体的には、実施例2に係る流通規制部22は、ガス除去処理ユニット21と再生塔40とを接続する連結管27に設けられている。この流通規制部22は、ガス除去処理ユニット21の第1流入口23から第1流出口24を経て、連結管27の流路を流通する吸収処理後の吸収液に対し、その流路断面に絞りを付したオリフィス22Yとなっている。
【0103】
次に、実施例3に係る二酸化炭素回収装置1C(1)の分離部2の構成について、図4を用いて説明する。図4に示すように、二酸化炭素回収装置1C(1)では、不要ガス除去処理部20が、後述する固化向けの二酸化炭素回収ライン4に接続した再生塔40と、その上流側(図4中、左側)に横配置で配設されている。
【0104】
次に、実施例4に係る二酸化炭素回収装置1D(1)の分離部2の構成について、図5を用いて説明する。図5に示すように、二酸化炭素回収装置1D(1)では、不要ガス除去処理部20が、後述する非固化向けの二酸化炭素回収ライン5に接続した再生塔40と、その上流側(図5中、左側)に横配置で配設されている。
【0105】
次に、回収部3について、説明する。第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、第1の場合として、固化向けの二酸化炭素回収ライン4(二酸化炭素固化処理回収手段)が、再生塔40と連通して接続されることがある。固化向けの二酸化炭素回収ライン4は、再生塔40から放散した再生処理後の二酸化炭素を、少なくとも気相から固相への昇華処理を行ってから回収する機能である。
【0106】
また、第2の場合として、非固化向けの二酸化炭素回収ライン5(二酸化炭素ガス回収手段)が、再生塔40と連通して接続されることもある。非固化向けの二酸化炭素回収ライン5は、再生塔40から放散した再生処理後の二酸化炭素(COガス)を、そのまま気相状態で回収する機能である。以下、最初に二酸化炭素回収ライン4の概要について、図1図2、及び図4を用いて説明した後、二酸化炭素回収ライン5の概要について、図3及び図5を用いて簡単に説明する。
【0107】
<固化向けの二酸化炭素回収ライン4と接続する場合(第1の場合)について>
本発明に係る二酸化炭素回収装置の二酸化炭素固化処理回収手段が、回収部3に構成される場合、再生塔40から放散した再生処理後の二酸化炭素は、第2流出口44から第2供給管L21(第2管路)を通じて、二酸化炭素回収ライン4(4A,4B,4C)に向けて移送される。図1図2、及び図4に示すように、回収部3には、固化向けの二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cが設けられている。再生塔40の第2流出口44は、第2供給管L21(第2管路)により、開閉弁91及び減圧弁81を介して、切替弁82と連結されている。第2供給管L21は、切替弁82と並列接続する3系統の分岐供給管L22A,L22B,L22Cに分岐している。3系統の分岐供給管L22A,L22B,L22Cは、それぞれ開閉弁83A,83B,83Cを介して、3つの二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cと連通可能に接続されている。
【0108】
二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cは、水蒸気凝縮器50A,50B,50Cと、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cを具備している。水蒸気凝縮器50A,50B,50Cは、その内部空間50S毎に、熱交換器51A,51B,51C及び、例えば、廃温熱や環境熱等を利用したヒートポンプ52A,52B,52Cを、それぞれ有している。水蒸気凝縮器50A,50B,50Cは、開閉弁83A,83B,83Cと接続すると共に、開閉弁85A,85B,85Cを介して、ドレン53A,53B,53Cと接続している。水蒸気凝縮器50A,50B,50Cは、開閉弁84A,84B,84Cを配管した連結管L23A,L23B,L23Cにより、それぞれ二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cと連通可能に接続されている。
【0109】
二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cは、その内部空間60S毎に、熱交換器61A,61B,61C及び、例えば、廃温熱や環境熱等を利用したヒートポンプ62A,62B,62Cを、それぞれ有している。二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cは、開閉弁88A,88B,88Cを介して、取り出し管64A,64B,64Cと接続すると共に、ドレン63A,63B,63Cと接続している。
【0110】
二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cでは、外部に敷設された冷媒回路L2(L2A,L2B,L2C)が、水蒸気凝縮器50A,50B,50Cの熱交換器51A,51B,51Cと、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cの熱交換器61A,61B,61Cを、それぞれ経由している。また、この冷媒回路L2は、吸収塔10で、吸収液(リーン液)への二酸化炭素の吸収に伴う発熱に起因して、内部空間10Sでの過度な温度上昇を、冷熱で抑制するため、吸収塔10の内部空間10Sにも経由している。
【0111】
再生塔40から放散された再生処理後の二酸化炭素ガスは、第2供給管L21から分岐供給管L22A,L22B,L22Cを流通し、水蒸気凝縮器50A,50B,50C内に収容される。熱交換器51A,51B,51Cは、冷媒回路L2内を流通する冷媒と熱交換を行うことにより、内部空間50Sに残存する水蒸気と共に、内部空間50Sに収容された再生処理後の二酸化炭素ガスを冷却するために設けられている。また、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cは、冷媒回路L2内を流通する冷媒と熱交換を行うことにより、内部空間60Sに収容された再生処理後の二酸化炭素ガスを昇華させて、固化(ドライアイス化)するために設けられている。
【0112】
二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cでは、再生塔40から放散した再生処理後の二酸化炭素は、切替弁82を制御することで、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cのうち、いずれか一つに選択された二酸化炭素回収ラインを流通するようになっている。その理由について、簡単に説明する。
【0113】
二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cでは、再生塔40から供給された再生処理後の二酸化炭素ガスの昇華処理を開始して以降、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cから、固化した再生処理後の二酸化炭素(ドライアイス)の回収を完了するまでに、大別して、次述する3つの過程(第1過程、第2過程、第3過程)がある。第1過程は、再生塔40から水蒸気凝縮器を経た再生処理後の二酸化炭素ガスを、内部空間60Sに収容し始めてから、収容された再生処理後の二酸化炭素ガスを、二酸化炭素昇華器で完全に固化させるまでの過程である。第2過程は、第1過程を終え、固化(ドライアイス化)した二酸化炭素を二酸化炭素昇華器から回収し始めてから、その回収を完了するまでの過程である。第3過程は、第1過程または第2過程のいずれかに対し、先に実施を終えた過程側から滞りなく受け継ぐために待機している過程である。
【0114】
二酸化炭素回収装置では本来、同一の二酸化炭素回収ラインでは、第1過程と第2過程とが、時系列的に同時に実施できない。また、第1過程と第2過程との間で、第1過程から第2過程への実施変更、あるいは第2過程から第1過程への実施変更を行う際に、二酸化炭素昇華器に対し、再生処理後の二酸化炭素ガスの供給を、一時的に開閉弁(開閉弁83A,83B,83Cに対応する弁)で遮断して、二酸化炭素昇華器での固化処理を一旦、中断する必要がある。
【0115】
このような固化処理の中断を回避するべく、本実施形態では、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cは、切替弁82から並列に3系統に分岐して構成されている。そのため、再生処理後の二酸化炭素ガスで昇華を開始して以降、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cからドライアイスの回収を完了するまでの一連の処理を行う上で、第1過程の実施と、第2過程の実施と、第3過程の実施を、二酸化炭素回収ライン4A、二酸化炭素回収ライン4B、及び二酸化炭素回収ライン4Cによる系統毎に、それぞれ分担することができている。従って、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cでは、切替弁82を制御するだけで、再生処理後の二酸化炭素ガスが、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cのうち、第3過程の実施を担う二酸化炭素昇華器とスイッチ操作を交えながら、第1過程の実施を担う二酸化炭素昇華器に継続的に供給され、第2過程の実施を担う二酸化炭素昇華器から継続的に、固化した二酸化炭素(ドライアイス)を、効率良く回収することができる。
【0116】
<冷媒について>
次に、冷媒について、説明する。冷媒回路L2内を流通する冷媒は、本実施形態では、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)である。LNGは、天然ガス(NG:Natural Gas)を、大気圧に近い圧力下で、約-162℃まで冷却して液化させたものであり、無臭、無色、無毒、及び無腐食の物性である。冷媒は、-162℃(沸点)以下にあるLNGをガス化した状態の冷熱であり、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cでは、LNGの沸点よりやや高い温度、例えば、-150℃程度の天然ガスを冷媒としたその冷熱により、再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、固化した状態で、固化槽から回収可能となっている。
【0117】
ここで、液化天然ガスの概要について、簡単に説明する。液化天然ガスとは、二酸化炭素の凝固点(1.013×10-1MPaの下、-78.5℃)より低い温度の沸点を有した物質として、例えば、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)(沸点-162℃)、液体水素(liquid hydrogen)(沸点-252.6℃)、液化メタン(liquefied methane)(沸点-161.6℃)、液体窒素(liquid nitrogen)(1.013×10-1MPaの下、沸点-196℃)、液体酸素(liquid oxygen)(沸点-183℃)等である。
【0118】
特に、公的なインフラストラクチャー(通称「インフラ」)で供給されるLNGや液体水素等を整圧する施設をはじめ、液体窒素や液体酸素、液化メタンを製造・精製する施設等で、これらの液化ガスの流通を図るために敷設されている既存の冷媒回路を用いて、本発明に係る二酸化炭素回収装置の二酸化炭素固化処理回収手段に液化ガスを供給する場合、冷媒回路を流れる上述の液化ガスは、概ね液相状態になっている。それ故に、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、冷媒回路L2内を流通する冷媒は、このような液化ガスによる冷媒を二酸化炭素回収ライン4に供給するにあたり、液化ガスを液相状態にして冷媒回路内を流通させるため、冷媒回路L2内の流通時では、液化ガスの温度を、沸点より高く、二酸化炭素の凝固点より低くした状態になっている。
【0119】
なお、冷媒を、本実施形態では、LNGとしたが、冷媒は、LNG以外にも、例えば、液体水素や液化メタン等に挙げられる液化燃料のほか、例えば、液化窒素や液化酸素等に挙げられる液化ガスであっても良く、液化燃料、液化ガスの場合でも、冷媒は、本実施形態のように、ガス化した状態で冷媒回路L2内を流通していても良い。また、冷媒回路L2内の冷媒は、前述した液化ガスを、その沸点より低温の液相状態であって良い。あるいは、冷熱を有する流体の状態は、気相や液相以外にも、気液混相、スラリーのいずれであっても良い。
【0120】
次に、被分離ガスに該当するガスの種類と、冷媒の冷熱により、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cで再生処理後の二酸化炭素(COガス)を冷却する温度との関係について、説明する。本実施形態のように、冷媒がLNGの場合、冷媒の沸点は-162℃であり、冷媒が液化水素の場合には、冷媒の沸点は-253℃である。
【0121】
他方、被分離ガスを、例えば、製鉄工場、セメント工場から出される燃焼排ガスとした場合、冷媒の冷熱により、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cで冷却する再生処理後の二酸化炭素(COガス)の温度は、約-85℃以下であることが好ましい。また、被分離ガスを、例えば、発電所から出される燃焼排ガスとした場合、冷媒の冷熱により、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cで冷却する再生処理後の二酸化炭素(COガス)の温度は、約-96℃以下であることが好ましい。また、被分離ガスを大気とした場合、冷媒の冷熱により、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cで冷却する再生処理後の二酸化炭素(COガス)の温度は、約-140℃以下であることが好ましい。
【0122】
再生処理後の二酸化炭素(COガス)の冷却温度が、被分離ガスの種類毎に異なる理由について、図8を用いて説明する。図8は、被分離ガスの種類毎に、被分離ガスに混在する二酸化炭素の分圧を示すグラフである。まず、製鉄工場、セメント工場等に由来する燃焼排ガス(図8では、第1燃焼排ガスと表記)の場合、図8に示すように、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の最大値P11は、概ね60kPaであり、最大値P11の分圧下では、二酸化炭素は、-85℃で気相と固相との間で平衡状態となる。このことから、二酸化炭素が、-85℃以下で冷却されると、気相から固相に昇華して固化するため、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cでは、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の冷却温度は、約-85℃以下としている。
【0123】
続いて、発電所等に由来する燃焼排ガス(図8では、第2燃焼排ガスと表記)の場合、図8に示すように、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の最大値P12は、概ね21kPaであり、最大値P12の分圧下では、二酸化炭素は、-96℃で気相と固相との間で平衡状態となる。このことから、二酸化炭素が、-96℃以下で冷却されると、気相から固相に昇華して固化するため、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cでは、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の冷却温度は、約-96℃以下としている。
【0124】
続いて、大気の場合、図8に示すように、大気に占める二酸化炭素の分圧の最大値P13は、概ね0.045kPaであり、最大値P12の分圧下では、二酸化炭素は、-140℃で気相と固相との間で平衡状態となる。このことから、二酸化炭素が、-140℃以下で冷却されると、気相から固相に昇華して固化するため、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cでは、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の冷却温度は、約-140℃以下としている。
【0125】
ところで、再生処理後の二酸化炭素(COガス)を、冷媒の冷熱を利用して冷却するにあたり、運用する冷媒の温度が、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の固化に要する冷却温度と大きく乖離して、COガスの冷却温度との温度差を小さく抑えることが必要となる場合がある。この場合には、ヒートポンプ52A,52B,52Cやヒートポンプ62A,62B,62Cの利用、あるいは冷媒回路L2の冷媒とは別の冷媒を用いることで、水蒸気凝縮器50A,50B,50Cの雰囲気温度や二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cの雰囲気温度を制御して、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の固化に適す温度に調節する。
【0126】
二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cの内部空間60Sが、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の固化に適す温度に冷却されると、内部空間60Sにある再生処理後の二酸化炭素は、昇華して固化し、ドライアイスとなる。ドライアイスは、熱交換器61A,61B,61Cの表面に付着した態様で生成される。固化処理後に内部空間60Sに残った吸収液は、ドレン63A,63B,63Cを通じて排出される。ドライアイス化した再生処理後の二酸化炭素を回収する場合には、開閉弁84A,84B,84Cを閉弁した下、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cの内部空間60Sでは、ドライアイス化した再生処理後の二酸化炭素は、ヒートポンプ62A,62B,62Cによる熱や、環境熱を享受する。これにより、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cの内部空間60Sを常温下に戻すことで、再生処理後の二酸化炭素は、ドライアイス(固相)からの昇華で気化され、開閉弁88A,88B,88Cの開弁後、取り出し管64A,64B,64Cから気相状態で回収される。回収された二酸化炭素は、炭酸ガス等として活用される。
【0127】
他方、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cで、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、固化に適す温度に冷却されると、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cでは、冷媒回路L2内の冷媒の温度が、内部空間60Sの再生処理後の二酸化炭素(COガス)との熱交換に伴って、約-1℃まで上昇する。冷媒が、冷媒回路L2内で一時的に-1℃程の冷熱となって、水蒸気凝縮器50A,50B,50Cの熱交換器51A,51B,51Cを流通することで、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cの内部空間60Sは負圧となる。
【0128】
再生塔40で放散した再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、内部空間60Sでの負圧化により、吸引されて水蒸気凝縮器50A,50B,50Cの内部空間50Sに流入し、熱交換器51A,51B,51Cで、-20℃程に冷却される。これにより、水蒸気凝縮器50A,50B,50Cでは、内部空間50Sに残留する水蒸気は、氷に変化する。さらに、この氷は、ヒートポンプ62A,62B,62Cからの熱の享受により、凝縮されて水となり、内部空間50Sの底に貯められる。貯められた水は、開閉弁85A,85B,85Cを通じて、ドレン53A,53B,53Cから排水される。
【0129】
一方、水蒸気凝縮器50A,50B,50Cでは、内部空間50Sの雰囲気は、約-20℃であり、この温度下では、この雰囲気をなす再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、気相状態のままである。それ故に、再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、内部空間60Sでの負圧を利用して、固化に向けて二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cへと、連結管L23A,L23B,L23Cを通じて内部空間60Sに移送される。
【0130】
ところで、二酸化炭素回収ライン4では、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が昇華すると、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cの内部空間60Sは、負圧下になり、昇華前の状態から減圧される。再生塔40で放散した再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、この負圧を利用した二酸化炭素回収ライン4A,4B,4C側への吸引により、内部空間60Sに移送して収容される。換言すれば、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cにおいて、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の昇華に伴う負圧の発現により、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、再生塔40から二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cに向けた流れで移送される。
【0131】
また、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の昇華に伴う負圧の発現により、二酸化炭素昇華器60A,60B,60Cの内部空間60Sが減圧されるのに伴って、二酸化炭素回収ライン4A,4B,4Cと直列に接続する再生塔40でも、内部空間40Sの圧力も減圧される。それ故に、再生塔40の内部空間40Sで加熱を伴って、リッチ液から、吸収していた二酸化炭素を放散させるにあたり、内部空間40Sがより低い圧力下になっているため、この吸収液(リッチ液)の沸騰温度を、より低く抑えることができる。従って、前述した通り、二酸化炭素を放散する際、再生塔40の内部空間40Sは、必要に応じて減圧弁81で圧力調整を行うことで、先に例示した0.4-3.3KPa程(燃焼排ガスの場合)まで減圧することが可能になっている。
【0132】
かくして、再生塔40から放散した再生処理後の二酸化炭素は、二酸化炭素回収ライン4を通じて、炭酸ガス等として回収される。
【0133】
<非固化向けの二酸化炭素回収ライン5と接続する場合(第2の場合)について>
本発明に係る二酸化炭素回収装置の二酸化炭素ガス回収手段が、回収部3に構成される場合、再生塔40から放散した再生処理後の二酸化炭素は、第2流出口44から送出管6(第3管)を通じて、非固化向けの二酸化炭素回収ライン5に向けて移送される。
【0134】
図3及び図5に示すように、回収部3には、非固化向けの二酸化炭素回収ライン5が構成されている。二酸化炭素回収ライン5では、再生塔40の第2流出口44は、送出管6により、送出用真空ポンプ7(第2吸引手段)、及び開閉弁89を介して、特定の提供先8と連通可能に連結されている。送出用真空ポンプ7は、送出管6の流路上に配設され、再生塔40の下流部40SLで放散した再生処理後の二酸化炭素を吸引可能な吸引手段である。二酸化炭素回収ライン5では、再生塔40で放散した再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、送出用真空ポンプ7により、内部空間40Sから送出管6内を通じて吸引され、特定の提供先8に向けて供給される。提供先8では、再生塔40で放散した再生処理後の二酸化炭素(COガス)をそのまま活用して、例えば、コンプレッサにより高圧に圧縮して液化炭酸ガスを製造する等、産業界で使用できる製品に変換するにあたり、必要な製造処理が施される。
【0135】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置100に構成した不要ガス除去処理部20について、図6及び図7と共に、実施例5,6の場合を挙げて説明する。第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、不要ガス除去処理部20は、再生塔40と別体の態様で構成されていた。これに対し、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置は、不要ガス除去処理部を再生塔に組み込んだ一体化の態様で構成されている。
【0136】
図6及び図7に示すように、二酸化炭素回収装置100では、再生塔140は、吸収塔10で吸収液に吸収された二酸化炭素を、吸収液から放散させる機能を有する。再生塔140は、その内部にある塔内空間140Sに、一例として、ラシヒリング等の充填材141を装填した向流型気液接触装置である。再生塔140は、塔内空間140Sの上流部140SU側で、吸収塔10から吸収処理後の吸収液を流入させる吸収液導入口142(第2流入部)と、充填材141を挟み、塔内空間140Sの下流部140SL側の空間で、放散した再生処理後の二酸化炭素を流出させる第2流出口144(第2流出部)とを有する。また、再生塔140は、充填材141を挟み、塔内空間140Sの下流部140SL側に第1流出口43を有する。
【0137】
再生塔140では、充填材141は、塔内空間140Sに収容した吸収処理後の吸収液(リッチ液)に対し、2つの役割を果たす。第1の役割は、ヒートポンプ71とヒートポンプ72により、リッチ液を沸騰温度に加熱しながら、吸収していた二酸化炭素を選択的にこのリッチ液から放散するにあたり、塔内空間140Sを流入したリッチ液の流れを充填材141で規制することにより、リッチ液を微粒子状(細かな霧状)にするためである。また、リッチ液から二酸化炭素を放散する場合と、塔内空間140Sの雰囲気条件は異なるが、第2の役割は、塔内空間140Sを流入したリッチ液の流れを充填材141で規制することにより、リッチ液に僅かに残存している不要ガス(主として窒素ガス、酸素ガス)を、選択的に放散するためである。
【0138】
すなわち、二酸化炭素回収装置100では、充填材141が、塔内空間140Sのうち、吸収液導入口142と第2流出口144との間に、塔内空間140Sの上流部140SU側の空間から下流部140SL側の空間へ、吸収処理後の吸収液の流れを規制する流通規制部145となっている。そして、塔内空間140Sのうち、流通規制部145(充填材141)を挟み、塔内空間140Sの上流部140SU側の空間が、本発明に係る不要ガス除去手段(不要ガス除去処理部120)の内部空間120Sとなっている。
【0139】
再生塔140は、上流部140SU側の空間に対し、その雰囲気の圧力を計測可能な圧力計48を有している。再生塔140は、第1供給管L11により、吸収塔10と連通可能に連結されている。再生塔140の第1流出口43は、吸収塔10の吸収液導入口13と、還流管L12により、熱交換器73を経由して接続されている。
【0140】
このような不要ガス除去処理部120は、図6及び図7に示すように、吸収塔10と再生塔140の上流側とを第1供給管L11で繋ぐ第1流路L11Xの途中で、吸収塔10から送出される吸収処理後の吸収液(リッチ液)を収容可能な再生塔140の上流部140SU側の空間と、連通可能な態様で配設されている。不要ガス除去処理部120は、ガス除去処理ユニット21と、第1真空ポンプ31と、濃度計32と、圧力計33と、圧力調整手段34と、流量制御弁35と、不要ガス排気制御手段36等を、内部空間120Sに有してなる。
【0141】
図6に示すように、実施例5に係る二酸化炭素回収装置100A(100)の回収部3では、固化向けの二酸化炭素回収ライン4が、不要ガス除去処理部120を設けた再生塔140と接続されている。また、図7に示すように、実施例6に係る二酸化炭素回収装置100B(100)の回収部3では、非固化向けの二酸化炭素回収ライン5が、不要ガス除去処理部120を設けた再生塔140と接続されている。
【0142】
<不要ガス除去処理部20,120の役割>
従来技術に係る二酸化炭素回収装置では、前述したように、不要ガスの多くは、予め吸収塔で内部空間から排気されるが、二酸化炭素以外の不要ガスが、吸収塔から再生塔に向けて送出される吸収処理後の吸収液(リッチ液)に、僅かながら溶け込んだまま残留する。このような事象の一例として、図11及び図12に示すように、第1のシミュレーションによるデータを用いて説明する。
【0143】
図11は、従来技術に係る二酸化炭素回収装置の再生塔から放散される二酸化炭素ガスに対し、再生塔内の圧力と発生量との関係を示すグラフである。図12は、従来技術に係る二酸化炭素回収装置の再生塔から放散される窒素ガス、酸素ガスに対し、再生塔内の圧力と発生量との関係を示すグラフである。なお、図11及び図12では、横軸が再生塔内の雰囲気圧力であり、縦軸が、図11では、再生塔の内部空間から再生処理後の二酸化炭素(COガス)の放散量であり、図12では、再生塔の内部空間からの窒素ガス、酸素ガスの放散量である。また、図11及び図12に示す両データは、被分離ガスを空気(大気)とした場合のシミュレーション結果である。
【0144】
第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100の不要ガス除去処理部20,120のような、不要ガスを除去する手段は、従来技術に係る二酸化炭素回収装置に構成されていない。それ故に、図11及び図12に示すように、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が再生塔の内部空間から放散するにあたり、放散開始時において、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の発生量(約4.4E-3[kmol/h])を1とした場合の対比で、窒素ガスの発生量は0.09%相当であり、酸素ガスの発生量は0.03%相当である。
【0145】
これらの不要ガスは、再生処理後の二酸化炭素(COガス)と共に、再生塔の内部空間から放散する。しかも、再生塔内の雰囲気圧力が上昇しても、窒素ガスや酸素ガスの発生量は、双方ともほぼコンスタントである。その一方で、再生処理後の二酸化炭素(COガス)では、再生塔内の雰囲気圧力が上昇するにつれ、発生量は減少して、再生塔内の雰囲気圧力が40Pa超えになると、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の放散は終了する。
【0146】
次に、実施形態に係る二酸化炭素回収方法について、簡単に説明する。実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、例えば、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100のような設備を用いて実施される。すなわち、実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素を含む被分離ガスを、気液接触により吸収液に吸収させる吸収塔10の下流側に、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔40,140を設けた設備で、放散した該二酸化炭素を回収する。
【0147】
実施形態に係る二酸化炭素回収方法では、被分離ガスは、二酸化炭素と共に不要ガスを混在してなる混合ガスであり、被分離ガスを吸収した状態にある吸収処理後の吸収液から、混在している不要ガスを、再生塔40,140より上流側に設けた不要ガス除去処理部20,120(ガス除去処理塔)の内部空間20S,120Sで、選択的に除去して排気する不要ガス除去プロセスを有する。不要ガス除去プロセスは、内部空間20S,120Sの雰囲気を、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の上限より高い圧力帯域内とする負圧下に吸引することにより、不要ガスを排気する。不要ガスは、少なくとも窒素、酸素を主成分に含んだ気体であり、不要ガス除去プロセスでは、被分離ガスに含む窒素成分及び酸素成分が、除去前後比による割合で99%以上除去される。
【0148】
また、被分離ガスが大気である場合、不要ガス除去プロセスでは、内部空間20S,120Sの雰囲気が、下限値0.04kPaとし、かつ上限値1.20kPaとした範囲内の圧力下で吸引される。被分離ガスが燃焼ガスを含む場合には、不要ガス除去プロセスでは、内部空間20S,120Sの雰囲気が、下限値2kPa以上、かつ上限値66kPaより小さい圧力の範囲内に吸引される。
【0149】
ここで、本出願人は、被分離ガスの種類と、被分離ガスに含まれる二酸化炭素ガスの濃度、窒素ガスの濃度、及び酸素ガスの濃度との関係についての知見を、数多くの調査等を通じて確認しているため、簡単に説明する。被分離ガスが、例えば、LNG火力発電所に由来する燃焼排ガスの場合、燃焼排ガスに占める二酸化炭素の含有割合は約4mol%であり、この場合には、再生塔内から放散される再生処理後の二酸化炭素(COガス)の発生量に対し、再生塔内から放散される窒素ガスの発生量は、モル基準で11.8~39.7mol%程である。
【0150】
また、例えば、ガスエンジンに由来する燃焼排ガスの場合、燃焼排ガスに占める二酸化炭素の含有割合は約6mol%であり、この場合には、再生塔内から放散される再生処理後の二酸化炭素(COガス)の発生量に対し、再生塔内から放散される窒素ガスの発生量は、モル基準で7.5~33.7mol%程である。また、例えば、石炭火力発電所に由来する燃焼排ガスの場合、燃焼排ガスに占める二酸化炭素の含有割合は約14mol%であり、この場合には、再生塔内から放散される再生処理後の二酸化炭素(COガス)の発生量に対し、再生塔内から放散される窒素ガスの発生量は、モル基準で3.1~34.5mol%程である。
【0151】
また、例えば、製鉄所に由来する燃焼排ガスの場合、燃焼排ガスに占める二酸化炭素の含有割合は約20mol%であり、この場合には、再生塔内から放散される再生処理後の二酸化炭素(COガス)の発生量に対し、再生塔内から放散される窒素ガスの発生量は、モル基準で2.9~33.6mol%程である。また、例えば、セメント工場に由来する燃焼排ガスの場合、燃焼排ガスに占める二酸化炭素の含有割合は約33mol%であり、この場合には、再生塔内から放散される再生処理後の二酸化炭素(COガス)の発生量に対し、再生塔内から放散される窒素ガスの発生量は、モル基準で2.4~30.3mol%程である。
【0152】
また、被分離ガスが、大気または、大気で希釈された燃焼排ガスである場合、被分離ガスに占める二酸化炭素の含有割合は約400ppmであり、この場合には、再生塔内から放散される再生処理後の二酸化炭素(COガス)の発生量に対し、再生塔内から放散される窒素ガス、酸素ガスの発生量は、モル基準で0.18~2.97mol%程である。
【0153】
このように、本出願人は、被分離ガスの種類や発生源等によって、含有する二酸化炭素ガスの濃度、窒素ガス等の濃度の違いを有することを踏まえて、次述する第1の検証調査を行った。第1の検証調査は、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1に基づいて行われたものである。第1の検証調査では、被分離ガスを、燃焼排ガスと大気に場合分けして、再生塔の内部空間から放散される再生処理後の二酸化炭素(COガス)を、昇華槽(二酸化炭素回収ライン4の二酸化炭素昇華器60A等に相当)で固化(ドライアイス)する温度を確認した。
【0154】
図9は、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法の効果を確認する上で、被分離ガスから二酸化炭素を回収するまでの一連のプロセスに対し、被分離ガスを、燃焼ガスとした場合と大気とした場合に分けて行った第1の検証調査について、条件と結果をまとめて掲載した表である。図9に示すように、条件として、吸収塔10の内部空間10Sは、常温下であり、内部空間10Sの雰囲気は、吸収塔10内で生じる圧力損失を考慮して、100kPaより少し高圧の概ね100kPa(図9には、(100+α)kPaと表記)である。
【0155】
また、不要ガス除去処理部20において、ガス除去処理ユニット21の内部空間20Sは、常温下である。一方、前述したように、燃焼ガスの種類や発生源等によって、含有する二酸化炭素ガスの濃度、及び窒素ガスの濃度等に違いがあることから、被分離ガスが燃焼ガスの場合、燃焼排ガスに占める二酸化炭素の含有割合は、概ね4(LNG火力発電所の場合)~33(セメント工場の場合)mol%である。そのため、ガス除去処理ユニット21の内部空間20Sの全圧約100kPaに占める二酸化炭素の分圧は、概ね4(LNG火力発電所の場合)~33(セメント工場の場合)kPaである。また、被分離ガスが大気の場合、大気に占める二酸化炭素の含有割合は、約400ppmであるため、ガス除去処理ユニット21の内部空間20Sの全圧約100kPaに占める二酸化炭素の分圧は、概ね0.04kPaである。
【0156】
第1の検証調査では、窒素ガス等が不要ガス除去処理部20で排気され、被分離ガスに占める二酸化炭素の含有割合のうち、90%に相当する再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、再生塔40から昇華槽で、燃焼ガスの場合では-129~-113℃に、大気の場合では-150℃に、それぞれ冷却されて固化しドライアイスとなる。
【0157】
次に、本出願人は、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100に設けた不要ガス除去処理部20,120の有意性について、第2のシミュレーションによる第2の検証調査で確認を行った。第2の検証調査は、二酸化炭素回収装置1等をモデル化した第2のシミュレーションに基づいて実施された(以下の説明では、便宜上、二酸化炭素回収装置1の各部分をそのまま用いている)。
【0158】
第2の検証調査では、再生塔40(再生塔140の場合を含む)の内部空間40Sから放散される再生処理後の二酸化炭素(COガス)を、二酸化炭素回収ライン4の二酸化炭素昇華器60A等(昇華槽)で固化させてドライアイスを生成するにあたり、二酸化炭素昇華器60A等で生成する時間と、時間及び体積当たりに生成するドライアイスの質量(ドライアイス生成速度)との関係を調査した。第2の検証調査にあたり、再生処理後の二酸化炭素(COガス)である試料を、4つの水準に分けて、時間の経過と共に変化するドライアイス生成速度の挙動を、水準毎に確認した。これら4つの水準は、二酸化炭素を吸収した状態にある吸収処理後の吸収液(リッチ液)に、僅かながら残留している窒素ガスと酸素ガスを、不要ガス除去処理部20,120で除去するにあたり、除去前後比による割合で、除去率100%(第1水準)、除去率99%(第2水準)、除去率95%(第3水準)、除去処理なし(第4水準)である。
【0159】
<第2のシミュレーションの結果>
第2のシミュレーションの結果を図10に示す。図10は、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法により、昇華槽で固化する二酸化炭素に対し、時間の経過と共に変化するドライアイス生成速度の挙動を表すグラフである。図10に示すように、第4水準の場合、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が昇華槽に送出された直後、ドライアイス生成速度は、急峻な挙動で低下して、9.2secという僅かな経過時間で、その送出開始時の50%に相当する0.0025kg/sec・m以下となり、経過時間500secを過ぎると、ドライアイスはほとんど生成されなかった。
【0160】
第3水準の場合、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が昇華槽に送出開始後、経過時間173.4secで、ドライアイス生成速度は、その送出開始時の50%に相当する0.0025kg/sec・m以下となり、第4水準に比べて緩やかな挙動で低下した。また、第4水準と同様、生成の終焉間近な経過時間500secを過ぎると、ドライアイスの生成はほとんどなかった。
【0161】
第2水準の場合、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が昇華槽に送出された直後、経過時間580.2secで、ドライアイス生成速度は、その送出開始時の50%に相当する0.0025kg/sec・m以下となり、ドライアイスは、生成の終焉となる経過時間2500secになるまで生成され続けた。そして、第1水準の場合、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が昇華槽に送出された直後、経過時間5000secを超えても、ドライアイス生成速度は大幅に低下しない挙動で、ドライアイスは生成され続けた。
【0162】
<考察>
二酸化炭素の融点は、-56.6℃(5.18×10kPaの条件下)である。被分離ガスに含有する場合での二酸化炭素の圧力下では、前述した第1の検証調査では、再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、被分離ガスを燃焼ガスとする場合に-129~-113℃で、被分離ガスを大気とする場合に-150℃で、それぞれ昇華して固化する。
【0163】
他方、窒素の融点は-210℃であり、酸素の融点は-218.8である。被分離ガスが空気(大気)の場合、再生塔内から放散される雰囲気のうち、含有する窒素ガスや酸素ガス(不要ガス)は、元々僅かであり、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の発生量対比で、その0.1%未満(窒素ガスは0.09%相当、酸素ガスは0.03%相当)である。このような不要ガスでの圧力下、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の昇華温度では、窒素ガスと酸素ガスは、相変化を起こさず気相のままである。そのため、窒素ガスや酸素ガス(不要ガス)が、たとえ僅かであっても昇華槽に残留していると、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が昇華する過程で、ドライアイスの生成に悪影響を及ぼすことが判る。
【0164】
しかも、窒素ガスや酸素ガス(不要ガス)が、再生塔40から放散される雰囲気ガスから予め不要ガス除去処理部で除去され、不要ガス除去処理部による不要ガスの除去後割合が、たとえ除去前の95%(第3水準)であっても、ドライアイスの生成に与える悪影響は、許容範囲から外れており無視できない。つまり、第2のシミュレーションの結果より、不要ガス除去処理部は、実用上の許容範囲として、少なくとも除去率99%で、窒素ガスや酸素ガス(不要ガス)の昇華槽への流入をほぼ阻止していないと、再生処理後の二酸化炭素(COガス)のドライアイス化を実現できないものと考えられる。
【0165】
次に、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1(1A、1B、1C、1D),100(100A、100B)、及び二酸化炭素回収方法の作用・効果について説明する。
【0166】
第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、二酸化炭素を含む被分離ガスを、気液接触により吸収液に吸収させる吸収塔10と、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔40,140とを備え、放散した該二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置において、被分離ガスは、二酸化炭素と共に不要ガスを混在してなる混合ガスであり、被分離ガスを吸収した状態にある吸収処理後の吸収液から、混在している不要ガスを、選択的に除去して排気する不要ガス除去処理部20,120を備え、不要ガス除去処理部20,120は、吸収塔10と再生塔40,140の上流部40SU,140SUとを第1供給管L11で繋いで形成された第1流路L11Xに、吸収処理後の吸収液を収容可能な内部空間20S,120Sと連通可能な態様で設けられ、内部空間20S,120Sの雰囲気を減圧可能な第1真空ポンプ31と、減圧する圧力を調整可能な圧力調整手段34と、を有すること、を特徴とする。
【0167】
この特徴により、吸収塔10から送出される吸収処理後の吸収液(リッチ液)が、減圧下にある再生塔40,140の内部空間40Sで再生処理後の二酸化炭素(COガス)を放散するまでに、吸収処理後の吸収液(リッチ液)に残留する不要ガス(主に窒素ガス、酸素ガス)が不要ガス除去処理部20,120で除去できるため、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、より放散し易くなる。しかも、放散により回収された二酸化炭素(COガス)の純度は、極めて高くなっている。加えて、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の昇華にあたり、不要ガスの残留に伴った阻害要因を完全に排除できる。そのため、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、昇華を経て固相化(ドライアイス)するまでの過程の進行として、ドライアイスの生成速度が急激に低下してしまうのを抑制することができる。それ故に、被分離ガスに混在する二酸化炭素が、より効率良く回収できる。
【0168】
加えて、不要ガス除去処理部20,120では、吸収処理後の吸収液(リッチ液)から除去する不要ガスの排気に伴って、不要ガス除去処理部20,120の内部空間20S,120Sの雰囲気圧力の低下に起因して、二酸化炭素(COガス)が、吸収液(リッチ液)から放出されてしまうことも想定される。しかしながら、二酸化炭素(COガス)は、たとえ放出されとしても、例えば、数%未満程度と、極微量である。そのため、再生塔40,140内から放散される再生処理後の二酸化炭素(COガス)に基づいて、回収する二酸化炭素への影響も小さく、二酸化炭素の回収効率が大幅に低下することもない。
【0169】
従って、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100によれば、より純度の高い二酸化炭素を、効率良く回収することができる、という優れた効果を奏する。
【0170】
また、第1,第2の本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、不要ガスは、少なくとも窒素、酸素を主成分に含んだ気体であり、第1真空ポンプ31は、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の上限より高い圧力帯域内とする負圧下に、内部空間20S,120Sの雰囲気を吸引可能な吸引能力を有すること、を特徴とする。
【0171】
この特徴により、不要ガス除去処理部20,120の内部空間20S,120Sは、第1真空ポンプ31により、吸収処理後の吸収液(リッチ液)に対し、二酸化炭素(COガス)を放散できる圧力下となる。そのため、内部空間20S,120Sでは、吸収処理後の吸収液(リッチ液)からの二酸化炭素(COガス)の放出を効果的に抑止して、不要ガスの主成分をなす窒素ガス、酸素ガスだけが、排気管路29を通じて外部に排気することができる。
【0172】
また、第1,第2の本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、不要ガス除去処理部20,120は、被分離ガスに含む窒素成分及び酸素成分を、除去前後比による割合で99%以上除去するものであること、を特徴とする。
【0173】
この特徴により、当該二酸化炭素回収装置1,100は、再生処理後の二酸化炭素(COガス)に基づいて、ドライアイス化を図る上で、実用可能な装置となる。
【0174】
また、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、被分離ガスが大気である場合、第1真空ポンプ31の吸引能力は、不要ガス除去処理部20,120の内部空間20S,120Sの雰囲気を、下限値0.04kPaとし、かつ上限値1.20kPaとした範囲内の圧力下に吸引できること、を特徴とする。
【0175】
この特徴により、当該二酸化炭素回収装置1,100は、大気中の二酸化炭素を回収の対象とする場合に用いることができる。
【0176】
また、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、被分離ガスが燃焼ガスを含む場合、第1真空ポンプ31の吸引能力は、不要ガス除去処理部20,120の内部空間20S,120Sの雰囲気を、下限値2kPa以上、かつ上限値66kPaより小さい圧力の範囲内に吸引できること、を特徴とする。
【0177】
この特徴により、当該二酸化炭素回収装置1,100は、例えば、LNG火力発電所、石炭火力発電所、製鉄所、セメント工場等のほか、ガスエンジン等に由来する燃焼排ガスに混在する二酸化炭素ガスを、回収の対象とする場合に用いることができる。
【0178】
また、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、不要ガス除去処理部20,120では、第1真空ポンプ31による吸引を伴って、不要ガスの排気を行う排気管路29に、二酸化炭素の濃度を計測可能な濃度計32を備えていること、を特徴とする。
【0179】
この特徴により、不要ガス除去処理部20,120で、吸収処理後の吸収液(リッチ液)から除去する不要ガスの排気に伴って、万が一、二酸化炭素(COガス)が、内部空間20S,120Sで吸収液(リッチ液)から放出されてしまう場合に備え、二酸化炭素(COガス)の放出状況が、濃度計32の計測値により、把握できるようになる。特に、二酸化炭素(COガス)の放出を不要ガス除去処理部20,120で抑えるため、濃度計32の計測値に対し、許容範囲内かどうかの基準を設けることで、許容範囲外の場合に、二酸化炭素回収装置1,100の運転条件を変更する指針とすることができる。
【0180】
また、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、再生塔40,140の上流部40SU,140SU側には、流通する吸収処理後の吸収液の圧力を計測可能な圧力計33を備えていること、を特徴とする。
【0181】
この特徴により、不要ガス除去処理部20,120では、二酸化炭素(COガス)の放出事象は、流通する吸収処理後の吸収液の圧力低下に起因して生じるため、流通する吸収処理後の吸収液の圧力状況を、圧力計33で監視することにより、二酸化炭素(COガス)の放出状況が、把握できるようになる。
【0182】
また、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、第1供給管L11の第1流路L11Xには、吸収処理後の吸収液の流れを制御する流量制御弁35が配管されていること、を特徴とする。
【0183】
この特徴により、不要ガス除去処理部20,120で不要ガス(主に窒素ガス、酸素ガス)の放散後、再生塔40,140で再生処理後の二酸化炭素(COガス)の放散に向けて、ポンプ等の動力手段を伴わず、あるいは動力手段に要するエネルギーを抑えて、吸収処理後の吸収液自体は、再生塔40,140側との圧力差を利用して、再生塔40,140に移送することができる。
【0184】
また、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、第1真空ポンプ31による吸引で、排気管路29から排気される不要ガスの流れを制御する不要ガス排気制御手段36を備えていること、を特徴とする。
【0185】
この特徴により、不要ガス排気制御手段36が、排気管路29から排気される流速、流量等、不要ガスの流れを制御することで、不要ガスの排気に伴って、放出の蓋然性を有した二酸化炭素(COガス)の放散が、より少量に抑えることができるようになる。
【0186】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、不要ガス除去処理部20は、内部空間20Sに対し、吸収塔10から吸収処理後の吸収液を流入させる第1流入口23と、再生塔40へと吸収処理後の吸収液を流出させる第1流出口24を有し、第1流路L11Xのうち、第1流入口23と、第1流出口24より下流側にある再生塔40の上流部40SUとの間には、内部空間20Sに収容した吸収処理後の吸収液に対し、第1流入口23から再生塔40の上流部40SU側への流れを規制する流通規制部22が設けられていること、を特徴とする。
【0187】
この特徴により、再生塔40の内部空間40Sのうち、上流部40SU側の空間を、吸収処理後の吸収液(リッチ液)から再生処理後の二酸化炭素(COガス)を放散不可となる圧力下に、上流部40SU側の雰囲気が制御できるようになる。これにより、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)が、吸収処理後の吸収液(リッチ液)から選択的に除去することが可能になる。
【0188】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A,1C,1D(1)では、流通規制部22は、充填材22Xを装填した状態になっていること、を特徴とする。
【0189】
この特徴により、充填材22Xは、吸収処理後の吸収液(リッチ液)の微粒化に起因した系外へのロスを防ぎつつ、吸収処理後の吸収液(リッチ液)との接触面積を、より大きく確保することができるため、吸収処理後の吸収液(リッチ液)から不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)を、促進的に放散させることができる。
【0190】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1B(1)では、流通規制部22は、第1流路L11Xのうち、第1流入口23側から流通する吸収処理後の吸収液の流路である連結管27の断面に絞りを付したオリフィス22Yであること、を特徴とする。
【0191】
この特徴により、オリフィス22Yでは、吸収処理後の吸収液の流れに圧力損失が生じるようになるため、吸収処理後の吸収液がオリフィス22Yを通過して再生塔40側に流通するまでに、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)が、吸収処理後の吸収液から放散し易くなる。
【0192】
また、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、再生塔40,140から放散した再生処理後の二酸化炭素を、少なくとも気相から固相への昇華処理を行って回収する二酸化炭素回収ライン4を備え、再生塔40,140の下流部40SL,140SLが、二酸化炭素回収ライン4に向けて再生処理後の二酸化炭素を供給する第2供給管L21と連通可能に接続されていること、を特徴とする。
【0193】
この特徴により、再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、昇華してドライアイス化する上で、阻害要因となる不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)を概ね皆無の状態になっているため、二酸化炭素回収ライン4では、ドライアイスは、気相から固相への相変化の進行速度を高めて、生成することができるようになる。
【0194】
また、第1,第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100では、再生塔40,140から放散した再生処理後の二酸化炭素を、そのまま気相状態で回収する二酸化炭素回収ライン5と、放散した再生処理後の二酸化炭素を吸引可能な送出用真空ポンプ7と、を備え、再生塔40,140の下流部40SL,140SLが、二酸化炭素回収ライン5に向けて再生処理後の二酸化炭素を供給する送出管6の流路と連通可能に接続されていると共に、送出用真空ポンプ7が、送出管6の流路上に配設されていること、を特徴とする。
【0195】
この特徴により、再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、不純物となる不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)を概ね皆無の状態になっているため、二酸化炭素回収ライン5を経て、例えば、液化炭酸ガスを製造する等、製品向けの高品質な材料として、提供することができるようになる。
【0196】
また、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置100では、再生塔140の内部にある塔内空間140Sに、再生塔140の上流部140SU側で、吸収塔10から吸収処理後の吸収液を流入させる吸収液導入口142と、再生塔140の下流部140SL側で、放散した再生処理後の二酸化炭素を流出させる第2流出口144とを有し、塔内空間140Sのうち、吸収液導入口142と第2流出口144との間に、吸収液導入口142側から第2流出口144側への吸収処理後の吸収液の流れを規制する流通規制部145が設けられていること、塔内空間140Sのうち、流通規制部145を挟む吸収液導入口142側の空間が、不要ガス除去処理部120の内部空間120Sであること、を特徴とする。
【0197】
この特徴により、二酸化炭素回収装置100は、よりコンパクト化して構成することができるため、その設置面積が比較的狭い場所でも設置し易くなる。また、二酸化炭素回収装置100は、その装置の構成を簡素化できているため、装置コストを安価に抑えることができる。
【0198】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、不要ガス除去処理部20に構成されるガス除去処理ユニット21を備え、第1供給管L11の第1流路L11X上では、吸収塔10と、ガス除去処理ユニット21と、再生塔40とが直列に連結されており、ガス除去処理ユニット21内の空間が、内部空間20Sとなっていること、を特徴とする。
【0199】
この特徴により、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)は、ガス除去処理ユニット21で排気され、再生処理後の二酸化炭素(COガス)は、ガス除去処理ユニット21と別系統の再生塔40で放散される。吸収液(リッチ液)から二酸化炭素(COガス)の放出を回避しながら、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)を排気させるのに、不要ガス除去処理部20に必要とされる種々の排気条件が、設定し易くなる。また、再生塔40で再生処理後の二酸化炭素(COガス)を放散させるのに、再生塔40に必要とされる種々の放散条件が、設定し易くなる。すなわち、排気条件と放散条件が、不要ガス除去処理部20と再生塔40で、別々にして設定できるため、不要ガス除去処理部と再生塔の双方を一体化した機能に比べ、二酸化炭素回収装置1では、最適な運転条件を設定し易くすることができる。
【0200】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A,1C,1D(1)では、ガス除去処理ユニット21は、内部空間20Sに対し、吸収塔10から吸収処理後の吸収液を流入させる第1流入口23と、再生塔40へと吸収処理後の吸収液を流出させる第1流出口24とを有すると共に、内部空間20Sでは、内部空間20Sに収容した吸収処理後の吸収液に対し、第1流入口23から第1流出口24への流れを規制する流通規制部22が、第1流入口23と第1流出口24との間に設けられ、流通規制部22は、充填材22Xを装填した状態になっていること、を特徴とする。
【0201】
この特徴により、充填材22Xは、吸収処理後の吸収液(リッチ液)の微粒化に起因した系外へのロスを防ぎつつ、吸収処理後の吸収液(リッチ液)との接触面積を、より大きく確保することができるため、吸収処理後の吸収液(リッチ液)から不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)を、促進的に放散させることができる。
【0202】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A,1B(1)では、ガス除去処理ユニット21は、再生塔40を超える高い位置に配設されていること、を特徴とする。
【0203】
この特徴により、吸収処理後の吸収液(リッチ液)が、不要ガス(窒素ガス、酸素ガス)の放散を終えた状態の下、高圧側となるガス除去処理ユニット21の内部空間20Sから、低圧側の再生塔40へと、自重に基づく流下により、効率良く移送することができる。これにより、吸収処理後の吸収液(リッチ液)を再生塔40に移送するためのポンプ等の動力手段が不要となる。
【0204】
また、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A,1B(1)では、不要ガス除去処理部20と再生塔40とは、双方で同一の設置エリアS内に、上下方向に沿って高低差Hを有した縦配置で設けられていること、を特徴とする。
【0205】
この特徴により、二酸化炭素回収装置1A,1B(1)は、よりコンパクト化して構成することができるため、その設置面積が比較的狭い場所でも設置し易くなる。
【0206】
実施形態に係る二酸化炭素回収方法では、二酸化炭素を含む被分離ガスを、気液接触により吸収液に吸収させる吸収塔10の下流側に、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔40,140を設けた設備で、放散した該二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収方法において、被分離ガスは、二酸化炭素と共に不要ガスを混在してなる混合ガスであり、被分離ガスを吸収した状態にある吸収処理後の吸収液から、混在している不要ガスを、再生塔40,140より上流側に設けた不要ガス除去処理部20,120(ガス除去処理塔)の内部空間20S,120Sで、選択的に除去して排気する不要ガス除去プロセスを有し、不要ガス除去プロセスは、内部空間20S,120Sの雰囲気を、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の上限より高い圧力帯域内とする負圧下に吸引することにより、不要ガスを排気すること、を特徴とする。
【0207】
この特徴により、吸収塔10から送出される吸収処理後の吸収液(リッチ液)が、減圧下にある再生塔40,140の内部空間40Sで再生処理後の二酸化炭素(COガス)を放散するまでに、吸収処理後の吸収液(リッチ液)に残留する不要ガス(主に窒素ガス、酸素ガス)が不要ガス除去処理部20,120で除去できるため、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、より放散し易くなる。しかも、放散により回収された二酸化炭素(COガス)の純度は、極めて高くなっている。加えて、再生処理後の二酸化炭素(COガス)の昇華にあたり、不要ガスの残留に伴った阻害要因を完全に排除できる。そのため、再生処理後の二酸化炭素(COガス)が、昇華を経て固相化(ドライアイス)するまでの過程の進行として、ドライアイスの生成速度が急激に低下してしまうのを抑制することができる。それ故に、被分離ガスに混在する二酸化炭素が、より効率良く回収できる。
【0208】
また、実施形態に係る二酸化炭素回収方法では、不要ガスは、少なくとも窒素、酸素を主成分に含んだ気体であり、不要ガス除去プロセスでは、被分離ガスに含む窒素成分及び酸素成分が、除去前後比による割合で99%以上除去されること、を特徴とする。
【0209】
この特徴により、実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、再生処理後の二酸化炭素(COガス)に基づいて、より純度の高いドライアイスを、安定した状態で生成することができるようになる。
【0210】
また、実施形態に係る二酸化炭素回収方法では、被分離ガスが大気である場合、不要ガス除去プロセスでは、不要ガス除去処理部20,120の内部空間20S,120Sの雰囲気が、下限値0.04kPaとし、かつ上限値1.20kPaとした範囲内の圧力下で吸引されること、を特徴とする。
【0211】
この特徴により、実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、大気中の二酸化炭素を回収の対象とする場合に用いることができる。
【0212】
また、実施形態に係る二酸化炭素回収方法では、被分離ガスが燃焼ガスを含む場合、不要ガス除去プロセスでは、不要ガス除去処理部20,120の内部空間20S,120Sの雰囲気が、下限値2kPa以上、かつ上限値66kPaより小さい圧力の範囲内に吸引されること、を特徴とする。
【0213】
この特徴により、実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、例えば、LNG火力発電所、石炭火力発電所、製鉄所、セメント工場等のほか、ガスエンジン等に由来する燃焼排ガスに混在する二酸化炭素ガスを、回収の対象とする場合に用いることができる。
【0214】
以上において、本発明に係る二酸化炭素回収装置、及び二酸化炭素回収方法について、第1の実施形態では実施例1~4を挙げて、第2の実施形態では実施例5,6を挙げて、それぞれ説明したが、本発明は上記第1の実施形態に係る実施例1~4と、第2の実施形態に係る実施例5,6に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0215】
例えば、第1の実施形態では、実施例1,3,4に係る二酸化炭素回収装置1A,1C,1Dの場合に、第2の実施形態では、実施例5,6に係る二酸化炭素回収装置100A,100Bの場合に、流通規制部を充填材22Xとした。また、実施例2に係る二酸化炭素回収装置1Bの場合には、流通規制部をオリフィス22Yとした。しかしながら、本発明に係る二酸化炭素回収装置の流通規制部には、充填材とオリフィスが、適宜装置仕様に合わせて、自在に選択可能である。
【0216】
また、本発明に係る二酸化炭素回収方法について、第1,第2実施形態では、実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100を用いて説明したが、本発明に係る二酸化炭素回収方法の実施で用いる設備は、第1,第2実施形態に係る二酸化炭素回収装置1,100の態様に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0217】
1,1A,1B,1C,1D,100,100A,100B 二酸化炭素回収装置
4,4A,4B,4C 固化向けの二酸化炭素回収ライン(二酸化炭素固化処理回収手段)
5 非固化向けの二酸化炭素回収ライン(二酸化炭素ガス回収手段)
6 送出管(第3管)
7 送出用真空ポンプ(第2吸引手段)
10 吸収塔
20,120 不要ガス除去処理部(不要ガス除去手段、ガス除去処理塔)
20S,120S 内部空間
21 ガス除去処理ユニット(ガス除去処理塔)
22 流通規制部
22X 充填材
22Y オリフィス
23 第1流入口(第1流入部)
24 第1流出口(第1流出部)
29 排気管路
31 第1真空ポンプ(第1吸引手段)
32 濃度計
33 圧力計
34 圧力調整手段
35 流量制御弁
36 不要ガス排気制御手段
40,140 再生塔
40SU,140SU 再生塔の上流部
40SL,140SL 再生塔の下流部
140S 塔内空間(再生塔の塔内空間)
141 再生塔の流通規制部
142 吸収液導入口(第2流入部)
144 第2流出口(第2流出部)
L11 第1供給管(第1管)
L21 第2供給管(第2管)
S 設置エリア
図1
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図12