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特開2024-14863組織白色化に基づく外科用デバイス設定の調節
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014863
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】組織白色化に基づく外科用デバイス設定の調節
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/22 20060101AFI20240125BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61B18/22
A61B17/94
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023120013
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】63/369,099
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500498763
【氏名又は名称】ジャイラス エーシーエムアイ インク ディー/ビー/エー オリンパス サージカル テクノロジーズ アメリカ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カート・ジー・シェルトン
(72)【発明者】
【氏名】クリステン・アール・トゥータン
【テーマコード(参考)】
4C026
4C160
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026BB07
4C026GG07
4C026HH12
4C160EE15
4C160MM53
(57)【要約】
【課題】内視鏡処置の間の手術部位の温度の自動制御のためのシステム、デバイス、および方法を提供すること。
【解決手段】例示の内視鏡外科システムは、処置の間にエネルギーを手術部位へと送達するために医療機器に制御可能に連結される内視鏡外科デバイスと、処置の間に手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームを生成するための撮像センサと、手術部位における第1の標的においての熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えるかどうかを決定するために、生成された画像または映像フレームを分析するための制御回路とを備える。このような決定に基づいて、制御回路は、処置の間に第1の標的を損傷させることを回避する一方で、手術部位における異なる第2の標的の治療効果を達成または維持するために、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整するかどうかを決定することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡外科システムであって、
処置の間にエネルギーを手術部位へと送達するために、医療機器に制御可能に連結される内視鏡外科デバイスと、
前記処置の間に前記手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームを生成するように構成される撮像センサと、
前記手術部位における第1の標的においての熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えるかどうかを決定するために、生成された前記画像または前記映像フレームを分析することと、
前記決定に基づいて、前記処置の間に前記第1の標的を損傷させることを回避する一方で、前記手術部位における前記第1の標的と異なる第2の標的の治療効果を達成または維持するように、前記内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整するかどうかを決定することと、
を行うように構成される制御回路と、
を備える内視鏡外科システム。
【請求項2】
前記第1の標的は泌尿器系における組織を含み、前記第2の標的は結石の標的を含み、前記医療機器は、前記手術部位における前記結石の標的を治療するために、レーザエネルギーを送達するための少なくとも1つのレーザシステムを備える、請求項1に記載の内視鏡外科システム。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記画像または前記映像フレームにおいて、前記画像または前記映像フレームにおける前記第1の標的と関連付けられる1つ以上の色成分の強度の時間に伴う変化を検出することと、
前記1つ以上の色成分の強度における検出された前記変化に基づいて、組織白色化が前記第1の標的において起こったかどうかを決定することと、
を行うようにさらに構成される、請求項1または2に記載の内視鏡外科システム。
【請求項4】
前記内視鏡外科デバイスは、照準ビームを光源から前記手術部位へと向かわせるように構成され、前記照準ビームは特徴的な色成分を有し、
前記制御回路は、生成された前記画像または前記映像フレームにおける前記照準ビームのフットプリントを特定することと、前記照準ビームの前記フットプリントの近傍における前記特徴的な色成分の強度における増加に基づいて、前記第1の標的における前記熱蓄積の度合いを決定することと、を行うようにさらに構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の内視鏡外科システム。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記処置の間の異なる時間において撮られる前記画像または前記映像フレームの比較に基づいて、前記第1の標的における熱蓄積の速さを決定することと、
決定された前記組織白色化の度合いまたは速さに応じて、前記内視鏡外科システムと関連付けられる前記少なくとも1つの動作パラメータを調整することと、
を行うようにさらに構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の内視鏡外科システム。
【請求項6】
調整される前記少なくとも1つの動作パラメータは、前記少なくとも1つのレーザシステムのレーザ出力設定を含み、
前記制御回路は、非平衡灌漑流れを生み出すために、または、前記レーザエネルギーによって誘発される蒸発による泡の崩壊を促進するために、前記レーザ出力設定を調整するようにさらに構成される、請求項2に記載の内視鏡外科システム。
【請求項7】
調整される前記レーザ出力設定は、特定の時間間隔の中でのレーザパルスの時間分布を表すパルスシーケンシングを含み、前記レーザパルスは、調整された前記パルスシーケンシングに従って前記第2の標的に送達される、請求項6に記載の内視鏡外科システム。
【請求項8】
前記レーザ出力設定を調整するために、前記制御回路は、前記レーザパルスの平均出力の調整よりもパルス形状の調整またはパルスシーケンシングの調整の優先順位を付けるようにさらに構成される、請求項6に記載の内視鏡外科システム。
【請求項9】
前記手術部位への灌注液を提供するように、および、前記手術部位からの流体の吸引を提供するように構成される灌漑および/または吸引システムをさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の内視鏡外科システム。
【請求項10】
前記内視鏡外科システムと関連付けられる前記少なくとも1つの動作パラメータは、灌漑システムおよび吸引システムとそれぞれ関連付けられる灌漑流れまたは吸引流れの少なくとも一方を含む、請求項9に記載の内視鏡外科システム。
【請求項11】
前記処置の間に前記手術部位における圧力を感知するように構成される圧力センサをさらに備え、
前記制御回路は、
感知された前記圧力が圧力上限を超えるとき、前記吸引流れを増加させるが前記灌漑流れを増加させないことと、
感知された前記圧力が、前記圧力上限および圧力下限によって定められる範囲内にあるとき、前記灌漑流れまたは前記吸引流れの一方または両方を増加させることと、
感知された前記圧力が前記圧力下限未満に低下するとき、前記灌漑流れを増加させるが前記吸引流れを増加させないことと、
を含め、前記灌漑および/または吸引システムを介して前記灌漑流れまたは前記吸引流れを選択的に増加させるようにさらに構成される、請求項10に記載の内視鏡外科システム。
【請求項12】
前記灌注液の温度を変更するように構成される灌注液処理ユニットをさらに備え、
前記制御回路は、前記第1の標的における前記熱蓄積の度合いが前記所定の閾値を超えることを決定すると、前記手術部位に到達する前の前記灌注液の温度を調整するように、前記灌注液処理ユニットへの制御信号を生成するようにさらに構成される、請求項9に記載の内視鏡外科システム。
【請求項13】
前記内視鏡外科デバイスは、調整可能な遠位部分を伴う光学経路を含み、前記光学経路は、前記レーザエネルギーを前記手術部位へと向かわせるように構成され、
前記制御回路は、前記第1の標的における前記熱蓄積の度合いが前記所定の閾値を超えることを決定すると、前記手術部位に対する前記光学経路の前記遠位部分の位置または配向を調整するために、前記光学経路に連結されるアクチュエータに制御信号を生成するようにさらに構成される、請求項2に記載の内視鏡外科システム。
【請求項14】
前記内視鏡外科システムと関連付けられる前記少なくとも1つの動作パラメータは、
前記手術部位に適用される前の灌注液の温度、
灌漑流れ速さ、
吸引流れ速さ、または、
レーザシステムのレーザ出力設定、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の内視鏡外科システム。
【請求項15】
前記制御回路は、前記第1の標的における前記熱蓄積の度合い、または、前記手術部位における圧力の少なくとも一方に少なくとも部分的に基づく、前記動作パラメータのうちの1つに向けてのバイアスによって、前記調整を実施するようにさらに構成される、請求項14に記載の内視鏡外科システム。
【請求項16】
内視鏡外科システムを使用して、内視鏡処置の間に患者の手術部位において温度を制御するための方法であって、
医療機器によって生み出されるエネルギーを前記手術部位へと向かわせるステップと、
撮像センサを使用して、前記手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームを生成するステップと、
生成された前記画像または前記映像フレームを分析し、前記手術部位における第1の標的においての熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えるかどうかを決定するステップと、
前記決定に基づいて、前記処置の間に前記第1の標的を損傷させることを回避する一方で、前記手術部位における前記第1の標的と異なる第2の標的の治療効果を達成または維持するように、前記内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整するかどうかを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記第1の標的は泌尿器系における組織を含み、前記第2の標的は結石の標的を含み、前記医療機器によって生み出される前記エネルギーは、前記手術部位における前記結石の標的を治療するために、少なくとも1つのレーザシステムによって生み出されるレーザエネルギーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
調整される前記少なくとも1つの動作パラメータは、特定の時間間隔の中でのレーザパルスの時間分布を表すパルスシーケンシングを含み、前記レーザパルスは、非平衡灌漑流れを生み出し、前記レーザパルスによって誘発される蒸発による泡の崩壊を促進する調整された前記パルスシーケンシングに従って、前記手術部位に送達される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記パルスシーケンシングを調整することは、前記特定の時間間隔の中で前記レーザパルスのそれぞれのタイミングを無作為化することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記画像または前記映像フレームにおいて、前記画像または前記映像フレームにおける前記第1の標的と関連付けられる1つ以上の色成分の強度の時間に伴う変化を検出するステップと、
前記1つ以上の色成分の強度における検出された前記変化に少なくとも部分的に基づいて、組織白色化が前記第1の標的において起こったかどうかを決定するステップと、
をさらに含む、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
照準ビームを光源から前記手術部位へと向かわせるステップであって、前記照準ビームは特徴的な色成分を有する、ステップと、
生成された前記画像または前記映像フレームにおける前記照準ビームのフットプリントを特定するステップと、
前記照準ビームの前記フットプリントの近傍における前記特徴的な色成分の強度における増加に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の標的における前記熱蓄積の度合いを決定するステップと、
をさらに含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記処置の間の異なる時間において撮られる前記画像または前記映像フレームの比較に基づいて、前記第1の標的における熱蓄積の速さを決定するステップと、
決定された前記組織白色化の度合いまたは速さに応じて、前記内視鏡外科システムと関連付けられる前記少なくとも1つの動作パラメータを調整するステップと、
をさらに含む、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記内視鏡外科システムと関連付けられる前記少なくとも1つの動作パラメータを調整することは、前記手術部位への灌注液の灌漑流れ、または、前記手術部位から外への流体の吸引流れの少なくとも一方を調整することを含む、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの動作パラメータを調整することは、前記第1の標的における前記熱蓄積の度合いが前記所定の閾値を超えることを決定すると、灌漑および/または吸引システムに連結される灌注液処理ユニットを介して、前記手術部位に到達する前の前記灌注液の温度を調整することを含む、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの動作パラメータを調整することは、前記第1の標的における前記熱蓄積の度合いが前記所定の閾値を超えることを決定すると、前記手術部位に対する光学経路の遠位部分の位置または配向を調整し、前記エネルギーを、前記光学経路を介して前記手術部位へと向かわせることを含む、請求項16から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記手術部位に適用される前の灌注液の温度と、
灌漑流れ速さと、
吸引流れ速さと、
レーザシステムのレーザ出力設定と、
を含む、前記内視鏡外科システムの2つ以上の動作パラメータの調整の優先順位を付けるステップを含む、請求項16から25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2022年7月22日に出願された米国仮特許出願第63/369,099号の優先権の利益を主張し、この特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般に内視鏡外科システムに関し、より詳細には、手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームから検出される組織白色化に基づいて、内視鏡外科システムの1つ以上の設定を調節するための手法に関する。
【背景技術】
【0003】
内視鏡は、典型的には、医師に視覚的なアクセスを提供するように、患者の内部の場所へのアクセスを提供するために使用される。いくつかの内視鏡は、望ましくない組織または異物を患者の身体から除去するために、低侵襲手術で使用される。例えば、腎盂尿管鏡が、腎臓系を検査するために、および、直接的な視覚制御の下で様々な処置を実施するために、臨床医によって使用される。経皮的腎切石術(PCNL)処置では、腎盂尿管鏡が患者の横腹を通じて腎盂へと配置される。例えば、泌尿器系、胆嚢、鼻道、消化管、胃、または扁桃腺を含む、身体の様々な領域からの結石または塊が、視覚化され、抽出され得る。
【0004】
レーザシステムまたはプラズマシステムなどの様々な医療機器が、軟組織または硬組織などの様々な標的治療領域に外科レーザエネルギーを送達するために使用されてきた。レーザ治療の例には、アブレーション、凝固、蒸発、断片化などがある。砕石術の用途では、レーザが、数ある石形成領域の中でも、腎臓、胆嚢、尿管における結石構造を破壊するために、または、大きい結石をより小さい断片へとアブレーションするために、使用されてきた。結石断片は、内視鏡(例えば、尿管鏡)のワーキングチャネルを介して除去され得る、または、処置の後に患者によって自然に通過させられ得る。
【0005】
熱蓄積は、特に、特定の大きさ、形、硬さ、または組成の結石標的をアブレーションまたは断片化するためのレーザ砕石術など、比較的高い強度のレーザ出力が治療において使用される場合、解剖学的標的または結石の標的のレーザ治療の潜在的に危険な結末である。手術部位またはその近くでの過度の熱蓄積は、標的でない組織または器官の熱損傷をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
効果的な手術部位の温度制御は、レーザ砕石術または超音波砕石術の処置など、医学的処置の間の熱蓄積によって引き起こされる組織熱損傷を防止するのを助けることができる。従来では、温度が手術部位から感知され、処置の間に使用者(例えば、医師)に表示されている。使用者は、手術部位の温度が安全限度に到達する場合、または安全限度を超える場合、(レーザ出力強度などの)医療機器の設定を手動で変更することができるか、または、レーザを一時的に切ることができる。このような手動の温度調整技術は、手術部位における正確な温度制御を提供しない可能性がある。また、(レーザ出力強度などの)医療機器の設定の調整は、手術部位における適切な素早い温度除去を達成できない可能性がある。例えば、ある場合には、レーザ出力強度を低減またはレーザ出力を遮断することは、治療効率を損なう可能性がある、および/または、処置時間を引き延ばす可能性がある。本明細書における医療機器はレーザシステムに言及しているが、標的の治療または診断を提供するために内視鏡に連結され得るかまたは内視鏡で実施され得る超音波システムなどの任意の適切な医療機器が、本発明の範囲内にあることも、留意されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームから検出され得る組織白色化(組織白化とも称される)に基づいて1つ以上のデバイス設定を自動的に調整することで、手術部位温度制御を向上させるためのシステム、デバイス、および方法を記載している。組織白色化は、レーザで誘発される組織の熱損傷の危険性の早期の指示であり得る。一実施形態によれば、例示の内視鏡外科システムは、医療機器(例えば、レーザシステム)に制御可能に連結され、処置の間にエネルギー(例えば、レーザエネルギー)を手術部位へと送達するように構成される内視鏡外科デバイスと、処置の間に手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームを生成するように構成される撮像センサと、手術部位における第1の標的においての熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えるかどうかを決定するために、生成された画像または映像フレームを分析するように構成される制御回路と、を備える。異なる種類の組織について異なり得る所定の閾値は、組織における望ましくない臨床効果を引き起こし始める閾値温度(例えば、42℃)によって表すことができる。組織白色化の度合いと熱蓄積の度合いとの間に正の相関があるため、熱蓄積の度合いは、第1の標的における組織白色化の度合いを評価することで推測でき、熱蓄積についての所定の閾値は、組織白色化の閾値の度合いによって表すことができる。このような決定に基づいて、制御回路は、処置の間に第1の標的を損傷させることを回避する一方で、手術部位における第1の標的と異なる第2の標的の治療効果を達成または維持するように、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整するかどうかを決定することができる。本明細書に記載されている手術部位の温度制御手法は、組織部位に送達されるエネルギー(例えば、レーザエネルギー)によって誘発される組織の熱損傷を有利に防止する、または組織の熱損傷の重度を有利に低減することができる。様々な温度制御手段は、手術部位の状態に応じた手術部位の温度のより多彩な制御を可能にする。代替の温度制御手段(例えば、灌漑または吸引の流れ、および灌注液治療)は、内視鏡処置(例えば、レーザまたは超音波の砕石術処置)において出力されるエネルギーの中止または実質的な低減を回避するのを助けることができる。それによって、より正確でより素早い温度制御と、向上したレーザ治療の有効性および組織の安全性とが、達成され得る。
【0008】
例1は、処置の間にエネルギーを手術部位へと送達するために医療機器に制御可能に連結される内視鏡外科デバイスと、処置の間に手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームを生成するように構成される撮像センサと、手術部位における第1の標的においての熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えるかどうかを決定するために、生成された画像または映像フレームを分析することと、決定に基づいて、処置の間に第1の標的を損傷させることを回避する一方で、手術部位における第1の標的と異なる第2の標的の治療効果を達成または維持するように、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整するかどうかを決定することと、を行うように構成される制御回路と、を備える内視鏡外科システムである。
【0009】
例2では、第1の標的は泌尿器系における組織を含み、前記第2の標的は結石の標的を含み、医療機器は、手術部位における結石の標的を治療するために、レーザエネルギーを送達するための少なくとも1つのレーザシステムを備えることを、例1の主題が任意選択で含む。
【0010】
例3では、制御回路は、画像または映像フレームにおいて、画像または映像フレームにおける第1の標的と関連付けられる1つ以上の色成分の強度の時間に伴う変化を検出することと、1つ以上の色成分の強度における検出された変化に基づいて、組織白色化が第1の標的において起こったかどうかを決定することと、を行うようにさらに構成されることを、例1~2のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0011】
例4では、内視鏡外科デバイスは、照準ビームを光源から手術部位へと向かわせるように構成され、照準ビームは特徴的な色成分を有し、制御回路は、生成された画像または映像フレームにおける照準ビームのフットプリントを特定することと、照準ビームのフットプリントの近傍における特徴的な色成分の強度における増加に基づいて、第1の標的における熱蓄積の度合いを決定することと、を行うように構成されることを、例1~3のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0012】
例5では、制御回路は、処置の間の異なる時間において撮られる画像または映像フレームの比較に基づいて、第1の標的における熱蓄積の速さを決定することと、決定された組織白色化の度合いまたは速さに応じて、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整することと、を行うようにさらに構成されることを、例1~4のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0013】
例6では、調整される少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも1つのレーザシステムのレーザ出力設定を含むことを、例2の主題が任意選択で含む。
【0014】
例7では、レーザ出力設定は、レーザパルスのパルス幅、レーザパルスのパルス形状、レーザパルスのピーク出力、または、単位時間あたりのレーザパルスの数を表すパルス周波数のうちの少なくとも1つを含むことを、例6の主題が任意選択で含む。
【0015】
例8では、制御回路は、第1の標的における熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えることを決定すると、レーザ出力設定の調整を自動的に実施するようにさらに構成されることを、例7の主題が任意選択で含む。
【0016】
例9では、制御回路は、非平衡灌漑流れを生み出すために、または、レーザエネルギーによって誘発される蒸発による泡の崩壊を促進するために、レーザ出力設定を調整するようにさらに構成されることを、例6~8のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0017】
例10では、調整されるレーザ出力設定は、特定の時間間隔の中でのレーザパルスの時間分布を表すパルスシーケンシングを含み、レーザパルスは、調整されたパルスシーケンシングに従って第2の標的に送達されることを、例9の主題が任意選択で含む。
【0018】
例11では、パルスシーケンシングを調整するために、制御回路は、特定の時間間隔の中でレーザパルスのそれぞれのタイミングを無作為化するようにさらに構成されることを、例10の主題が任意選択で含む。
【0019】
例12では、レーザ出力設定を調整するために、制御回路は、レーザパルスの平均出力の調整よりもパルス形状の調整またはパルスシーケンシングの調整の優先順位を付けるようにさらに構成されることを、例6~11のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0020】
例13では、手術部位への灌注液を提供するように、および、手術部位からの流体の吸引を提供するように構成される灌漑および/または吸引システムを、例1~12のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0021】
例14では、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータは、灌漑システムおよび吸引システムとそれぞれ関連付けられる灌漑流れまたは吸引流れの少なくとも一方を含むことを、例13の主題が任意選択で含む。
【0022】
例15では、処置の間に手術部位における圧力を感知するように構成される圧力センサであって、制御回路は、感知された圧力が圧力上限を超えるとき、吸引流れを増加させるが灌漑流れを増加させないことと、感知された圧力が、圧力上限および圧力下限によって定められる範囲内にあるとき、灌漑流れまたは吸引流れの一方または両方を増加させることと、感知された圧力が圧力下限未満に低下するとき、灌漑流れを増加させるが吸引流れを増加させないことと、を含め、灌漑および/または吸引システムを介して灌漑流れまたは吸引流れを選択的に増加させるようにさらに構成される、圧力センサを、例14の主題が任意選択で含む。
【0023】
例16では、灌注液の温度を変更するように構成される灌注液処理ユニットであって、制御回路は、第1の標的における熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えることを決定すると、手術部位に到達する前の灌注液の温度を調整するように、灌注液処理ユニットへの制御信号を生成するようにさらに構成される、灌注液処理ユニットを、例13~15のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0024】
例17では、内視鏡外科デバイスは、調整可能な遠位部分を伴う光学経路を含み、光学経路は、レーザエネルギーを手術部位へと向かわせるように構成され、制御回路は、第1の標的における熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えることを決定すると、手術部位に対する光学経路の遠位部分の位置または配向を調整するために、光学経路に連結されるアクチュエータに制御信号を生成するようにさらに構成されることを、例2および例6~12のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0025】
例18では、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータは、手術部位に適用される前の灌注液の温度、灌漑流れ速さ、吸引流れ速さ、または、レーザシステムのレーザ出力設定のうちの少なくとも1つを含むことを、例1~17のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0026】
例19では、制御回路は、第1の標的における熱蓄積の度合い、または、手術部位における圧力の少なくとも一方に少なくとも部分的に基づく、動作パラメータのうちの1つに向けてのバイアスによって、調整を実施するようにさらに構成されることを、例18の主題が任意選択で含む。
【0027】
例20では、制御回路は、手術部位における圧力が実質的に最大許容可能圧力未満であることを決定すると、レーザ出力設定を調整する前に、灌漑流れ速さまたは吸引流れ速さの少なくとも一方を調整するようにさらに構成されることを、例19の主題が任意選択で含む。
【0028】
例21では、制御回路は、手術部位における圧力が実質的に最大許容可能圧力に実質的に近いことを決定すると、灌漑流れ速さまたは吸引流れ速さを調整する前に、レーザ出力設定を調整するようにさらに構成されることを、例19~20のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0029】
例22では、第1の標的における熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えることを決定すると警告を生成するように構成されるユーザインターフェースデバイスを、例1~21のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0030】
例23では、制御回路は、少なくとも1つの動作パラメータの推奨された調整を生成するように、および、推奨された調整を確定、拒否、または変更するための使用者入力を受け入れるようにさらに構成される、ユーザインターフェースデバイスを、例1~22のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0031】
例24は、内視鏡外科システムを使用して、内視鏡処置の間に患者の手術部位において温度を制御するための方法であって、医療機器によって生み出されるエネルギーを手術部位へと向かわせるステップと、撮像センサを使用して、手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームを生成するステップと、生成された画像または映像フレームを分析し、手術部位における第1の標的においての熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えるかどうかを決定するステップと、決定に基づいて、処置の間に第1の標的を損傷させることを回避する一方で、手術部位における第1の標的と異なる第2の標的の治療効果を達成または維持するように、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整するかどうかを決定するステップと、を含む方法である。
【0032】
例25では、第1の標的は泌尿器系における組織を含み、第2の標的は結石の標的を含み、医療機器によって生み出されるエネルギーは、手術部位における結石の標的を治療するために、少なくとも1つのレーザシステムによって生み出されるレーザエネルギーを含むことを、例24の主題が任意選択で含む。
【0033】
例26では、調整される少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも1つのレーザシステムのレーザ出力設定を含み、レーザ出力設定は、レーザパルスのパルス幅、レーザパルスのパルス形状、レーザパルスのピーク出力、または、単位時間あたりのレーザパルスの数を表すパルス周波数のうちの少なくとも1つを含むことを、例25の主題が任意選択で含む。
【0034】
例27では、調整されるレーザ出力設定は、特定の時間間隔の中でのレーザパルスの時間分布を表すパルスシーケンシングを含み、レーザパルスは、非平衡灌漑流れを生み出し、レーザパルスによって誘発される蒸発による泡の崩壊を促進する調整されたパルスシーケンシングに従って、手術部位に送達されることを、例26の主題が任意選択で含む。
【0035】
例28では、パルスシーケンシングを調整することは、特定の時間間隔の中でレーザパルスのそれぞれのタイミングを無作為化することを含むことを、例27の主題が任意選択で含む。
【0036】
例29では、画像または映像フレームにおいて、画像または映像フレームにおける第1の標的と関連付けられる1つ以上の色成分の強度の時間に伴う変化を検出するステップと、1つ以上の色成分の強度における検出された変化に少なくとも部分的に基づいて、組織白色化が第1の標的において起こったかどうかを決定するステップと、を例24~28のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0037】
例30では、照準ビームを光源から手術部位へと向かわせるステップであって、照準ビームは特徴的な色成分を有する、ステップと、生成された画像または映像フレームにおける照準ビームのフットプリントを特定するステップと、照準ビームのフットプリントの近傍における特徴的な色成分の強度における増加に少なくとも部分的に基づいて、第1の標的における熱蓄積の度合いを決定するステップと、を例24~29のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0038】
例31では、処置の間の異なる時間において撮られる画像または映像フレームの比較に基づいて、第1の標的における熱蓄積の速さを決定するステップと、決定された組織白色化の度合いまたは速さに応じて、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整するステップと、を例24~30のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0039】
例32では、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整することは、手術部位への灌注液の灌漑流れ、または、手術部位から外への流体の吸引流れの少なくとも一方を調整することを含むことを、例24~31のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0040】
例33では、圧力センサを使用して、処置の間に手術部位における圧力を感知するステップであって、灌漑流れまたは吸引流れの少なくとも一方を調整することは、感知された圧力が圧力上限を超えるとき、吸引流れを増加させるが灌漑流れを増加させないことと、感知された圧力が、圧力上限および圧力下限によって定められる範囲内にあるとき、灌漑流れまたは吸引流れの一方または両方を増加させることと、感知された圧力が圧力下限未満に低下するとき、灌漑流れを増加させるが吸引流れを増加させないことと、を含む、ステップを、例32の主題が任意選択で含む。
【0041】
例34では、少なくとも1つの動作パラメータを調整することは、第1の標的における熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えることを決定すると、灌漑および/または吸引システムに連結される灌注液処理ユニットを介して、手術部位に到達する前の灌注液の温度を調整することを含むことを、例24~33のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0042】
例35では、少なくとも1つの動作パラメータを調整することは、第1の標的における熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えることを決定すると、手術部位に対する光学経路の遠位部分の位置または配向を調整し、エネルギーを、光学経路を介して手術部位へと向かわせることを含むことを、例24~34のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0043】
例36では、手術部位に適用される前の灌注液の温度と、灌漑流れ速さと、吸引流れ速さと、レーザシステムのレーザ出力設定と、を含む、内視鏡外科システムの2つ以上の動作パラメータの調整の優先順位を付けるステップを、例24~35のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0044】
例37では、第1の標的における熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えることを決定すると、警告を生成するステップ、または、少なくとも1つの動作パラメータの推奨される調整を生成し、推奨された調整を確定、拒否、または変更するための使用者入力を受け入れるステップを、例24~36のうちの任意の1つ以上の主題が任意選択で含む。
【0045】
このまとめは、本出願の教示の一部の概説であり、本主題の排他的または徹底的な論じ方となるように意図されていない。本主題についてのさらなる詳細は、詳細な記載および添付の特許請求の範囲において見出される。本開示の他の態様は、以下の詳細な記載を読んで理解し、その詳細な記載の一部を形成する図面を見ることで、当業者には明らかになり、詳細な記載および図面の各々は、限定の意味で理解されるものではない。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的な等価によって定められる。
【0046】
様々な実施形態が、添付の図面の図における例を用いて示されている。このような実施形態は、例証的であり、本主題の徹底的または排他的な実施形態になるように意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】手術部位またはその近くにおける解剖学的標的にレーザ治療を提供するように構成されるレーザエネルギー送達システムの例を示すブロック図である。
図2】自動手術部位状態制御を伴う内視鏡外科システムと、システムが動作し得る環境の少なくとも一部とを示すブロック図である。
図3】自動手術部位状態制御を伴う内視鏡レーザ砕石術システムの例の図である。
図4】照準ビームのフットプリントを含む照らされた標的部位の内視鏡画像の図である。
図5A】レーザパルスシーケンシングと結果生じる灌漑流れおよび泡状態とを変える例の図である。
図5B】レーザパルスシーケンシングと結果生じる灌漑流れおよび泡状態とを変える例の図である。
図5C】レーザパルスシーケンシングと結果生じる灌漑流れおよび泡状態とを変える例の図である。
図5D】レーザパルスシーケンシングと結果生じる灌漑流れおよび泡状態とを変える例の図である。
図6】解剖学的標的を治療するためのレーザ処置の間の手術部位の温度を制御する例の方法の流れ図である。
図7A】手術部位における組織白色化および/または圧力などの手術部位の状態に基づいて温度管理計画を生成する例の方法を示す流れ図である。
図7B】手術部位の温度を制御するための優先順位付け手段による温度管理計画の例を示す流れ図である。
図8】本明細書で検討されている技術(例えば、方法論)のうちの任意の1つ以上が実施され得る例の機械を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
内視鏡処置は、具体的な診断効果または治療効果を達成するために、内部器官を見て手術する、および/または、エネルギー(例えば、レーザエネルギーまたは超音波エネルギー)を標的の身体領域へと送達する医療処置である。例えば、レーザ内視鏡が、軟組織および硬組織の治療のために(例えば、癌細胞を損傷または破壊する)、または、砕石術の用途において、使用されてきた。処置の間、施術者は、患者の尿管における切開を通じて、患者の腎臓へと、スコープを挿入することができる。スコープを通じて、施術者は、腎臓または尿管上部において特定の石を見つけ、スコープを通じて比較的高い出力の赤外線レーザビームで石を照らすことで、石をより小さい断片へと破壊することができる。レーザビームは、石をより小さい断片へとアブレーションすることができる。そのため、石断片は腎臓から引き出すことができる。スコープには、内視鏡、腎盂尿管鏡、および/または膀胱鏡があり得る。
【0049】
手術部位の少なくとも一部分および解剖学的標的のレーザ治療(例えば、結石の標的のアブレーションおよび断片化)の環境に送達されるレーザエネルギーは、手術部位またはその近くにおいて熱蓄積を引き起こす可能性があり、具体的には、特定の大きさ、硬さ、または組成の結石の標的をアブレーションまたは断片化するためなど、比較的高い強度のレーザ出力が使用される場合に、熱蓄積を引き起こす可能性がある。組織の熱損傷などの危険な結末を防止するために、体内または手術部位の温度が、安全な温度範囲内に留まることを確保するように、処置の間に監視され得る。従来の手術部位の温度制御は、リアルタイムで温度を監視することを伴う。温度読み取りが安全限度(例えば、あらかじめ設定された閾値)に到達または超過する場合、使用者(例えば、医師)は、レーザ出力強度を低下または一時的に無効にすることができる。このような手動の温度調整は、いくつかの制限を有する。第一に、手術部位の温度は、特には高いレーザ出力が処置の間に使用されるとき、急激に上昇する可能性があり、温度読み取りが安全限度に到達または超過するときにレーザ出力を低下または遮断することが、レーザによって誘発される組織の熱損傷を防止するには遅すぎる可能性がある。第二に、レーザ出力調整のタイミングが、アブレーションまたは断片化の効率を損なうことなく組織損傷を防止するために重要である。レーザ出力の手動の調整は、手術する医師に負担を掛けるだけでなく、特に経験の浅い医師にとって、精度および予測性を欠く可能性がある。第三に、レーザ出力を低減または遮断することは、特定の手術部位または組織生体構造における適切な素早い温度除去を生み出さない可能性がある。ある場合には、アブレーションの効率を損なうことなくレーザ出力を遮断または相当に低減することは、実現可能ではない。少なくとも上記の理由について、本発明者は、レーザ砕石術処置などの処置の間に手術部位における熱蓄積を防止するために、自動的でより効率的な温度制御のためのデバイスおよび方法についての満たされていない要求を認識していた。
【0050】
本発明は、手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームから検出され得る組織白色化に基づく外科デバイス設定の自動制御のためのシステム、デバイス、および方法を記載している。例示の内視鏡外科システムは、医療機器(例えば、レーザシステム)に制御可能に連結され、処置の間にエネルギー(例えば、レーザエネルギー)を手術部位へと送達するように構成される内視鏡外科デバイスと、処置の間に手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームを生成するように構成される撮像センサと、手術部位における第1の標的(例えば、組織)においての熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えるかどうかを決定するために、生成された画像または映像フレームを分析するように構成される制御回路と、を備える。組織白色化の度合いと熱蓄積の度合いとの間に正の相関があるため、熱蓄積の度合いの決定は、組織白色化が起こったかどうかと、第1の標的における熱蓄積の度合いとに基づき得る。このような決定に基づいて、制御回路は、処置の間に第1の標的を損傷させることを回避する一方で、手術部位における第1の標的と異なる第2の標的(例えば、結石の標的)の治療効果を達成または維持するように、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整するかどうかを決定することができる。
【0051】
本明細書において検討されている様々な実施形態によるシステム、デバイス、および方法は、レーザ内視鏡処置の間にリアルタイムでの手術部位の温度制御を向上させる。本明細書に記載されている特徴は、内視鏡、レーザ手術、レーザ砕石術もしくは超音波砕石術、照射パラメータ設定、および/または分光学に関して、さらに使用されてもよい。標的および適用の例には、腎臓結石のレーザ砕石術または超音波砕石術、および、軟組織のレーザ切除または蒸発があり得る。本明細書に記載されているような特徴を組み込む内視鏡システムの例では、過度の熱蓄積などの手術部位の状態は、処置の間に撮られる手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームを分析し、画像または映像フレームから、組織白色化を組織熱損傷の初期の合図として特定することで検出できる。温度測定の従来の表示と比較して、本文書において記載されているような画像に基づく手術部位の温度制御は、組織白色化を、手術部位の熱蓄積の早期の段階において検出させる。組織白色化の特定は、温度が危機的なレベルまで上昇する前に、早期のより効果的な予防処置をうまく取らせることができ、それによって組織の熱損傷を防止し、患者の安全を向上させる。
【0052】
本文書は、温度を危機的なレベル未満に保つ、または、望まれる安全範囲内に保つなど、手術部位の温度を規制するために、様々な温度制御手段を記載している。例では、レーザ出力強度または1つ以上のレーザ照射パラメータ(例えば、出力、期間、周波数、もしくはパルス形状などの1つ以上のレーザパルスパラメータか、曝露時間か、または発射角度)が調整され得る。いくつかの例では、パルスシーケンシング(特定の時間内のレーザパルスの時間分布を表す)が、灌漑流れの非平衡状態を生み出すために調整または無作為化され得る。このような流れは、局所的な熱蓄積を悪化させ得る組織の同じ領域に連続的に当てることによる蒸発による泡(レーザパルスによって誘発される)の可能性を防止または低減するのを助けることができる。例えば、レーザ設定を調整することは、レーザエネルギーによって作り出される泡を、組織白色化が観察される単一の組織領域ではなく広い範囲の組織領域に当てる非平衡流れをもたらすことができる。一実施形態において、非平衡灌漑流れは、手術部位またはその近くにおいて、蒸発による泡の崩壊を促進することができる。レーザ出力設定を調整することの追加または代替で、手術部位への灌漑の流入および/または手術部位から外への流出(吸引)を規制することは、手術部位の温度を制御下に置くこともできる。いくつかの実施形態では、灌注液は、手術部位の温度をより迅速かつ効果的に低減するために、手術部位へと流れる前に処理(例えば、冷却)されてもよい。このような温度制御手段のうちの1つ以上が、手術部位の状態に基づいて最適化されてもよい。例えば、手術部位またはその近くにおける組織の圧力に基づいて、灌漑または吸引の流れが、温度制御効果を生み出す一方で、手術部位またはその近くで所望の環境圧力を達成または維持するために、調整されてもよい。いくつかの例では、複数の温度制御手段(例えば、レーザ出力または照射パラメータを調整する、灌漑または吸引の流れを調整するか、または、灌注液治療を提供する)が、手術部位の状態に基づいて段階的な温度制御戦略を形成するように組み合わせまたは配置され得る。レーザ出力を制御することに集中する従来の手法と比較して、本文書で検討されているような様々な温度制御手段および段階的な温度制御戦略は、手術部位の状態に応じた手術部位の温度のより多彩な制御を有利に可能にする。灌漑または吸引の流れ、および灌注液治療などの代替の温度制御手段を使用することで、レーザ治療の有効性が大幅に損なわれることのないように、レーザ砕石術処置の間のレーザエネルギー出力の中止または実質的な低減を回避するのを助けることができる。結果として、より正確でより素早い温度制御と、向上したレーザ治療の有効性および組織の安全性と、が達成され得る。
【0053】
図1は、解剖学的構造(例えば、軟組織、硬組織、もしくは、癌組織などの異常)または結石構造(例えば、腎臓結石、膵臓胆管結石、もしくは胆嚢結石)など、被験者の身体における手術部位122またはその近くにおける解剖学的標的に、レーザ治療を提供するように構成されるレーザエネルギー送達システム100の例を示すブロック図である。いくつかの例では、レーザエネルギー送達システム100は、組織または他の解剖学的構造の正確に制御された治療処置(例えば、組織アブレーション、凝固、もしくは蒸発など)、または、非解剖学的な構造の治療(例えば、結石構造のアブレーションもしくは除塵)を送達することができる。
【0054】
レーザエネルギー送達システム100は、フィードバック制御システム101と、フィードバック制御システム101と動作可能に通信している少なくとも1つのレーザシステム102と、を備え得る。例を用いると、限定ではなく、図1は、第1のレーザシステム102と、任意選択で(点線で示されている)第2のレーザシステム104と、に接続されるレーザフィードバックシステムを示している。追加のレーザシステムが本開示の範囲内で検討されている。第1のレーザシステム102は、第1のレーザ源106と、電力供給部、表示装置、および冷却システムなど、関連付けられる構成要素と、を備え得る。第1のレーザシステム102は、第1のレーザ源106と動作可能に連結される第1の光学経路108も備え得る。例では、第1の光学経路108は光ファイバを備える。第1の光学経路108は、レーザビームを、第1のレーザ源106から、手術部位122またはその近くにおける標的構造へと伝送するように構成され得る。
【0055】
フィードバック制御システム101は、標的からフィードバック信号130を受信することができる。様々なフィードバック信号が、治療の有効性を向上させるために、および、レーザで誘発される組織の熱損傷を防止するか、または熱損傷の重度を低減するように、手術部位またはその近くにおける所望の温度などの所望の状態を達成または維持するために、レーザ送達、レーザエネルギー出力、および/または他のシステムパラメータを制御するために使用され得る。例では、フィードバック信号130は、処置の間の手術部位またはその近くにおける温度または圧力など、手術部位の状態を指示する信号を含み得る。例では、フィードバック信号130は、レーザパルスが媒体(例えば、液体および蒸気)を通じて伝搬し、標的へと投射し、標的を振動させることによって生み出される音響信号を含み得る。別の例では、フィードバック信号130は、反射した電磁信号(例えば、光源から放出されて反射した照明光)を含み得る。なおも別の例では、フィードバック信号130は、反射したレーザ信号を含み得る。フィードバック制御システム101は、フィードバック信号130を分析することができ、フィードバック信号130から信号特性を生成することができ、レーザ出力(例えば、エネルギー強度か、出力、期間、周波数、もしくはパルス形状などの他のレーザ照射パラメータか、曝露時間か、または発射角度)を制御することができる。例では、フィードバック信号130は、処置の間に撮像センサによって生成されるものなど、手術部位の少なくとも一部分の画像または映像フレームを備え得る。フィードバック制御システム101は、手術部位における第1の標的(例えば、組織)においての熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えるかどうかを決定するために、画像または映像フレームを分析することができる。異なる種類の組織について異なり得る所定の閾値は、組織における望ましくない臨床効果を引き起こし始める閾値温度(例えば、42℃)によって表すことができる。組織白色化の度合いと熱蓄積の度合いとの間に正の相関があるため、熱蓄積の度合いは、第1の標的における組織白色化の度合いを評価することで推測でき、熱蓄積についての所定の閾値は、組織白色化の閾値の度合いによって表すことができる。熱蓄積(例えば、第1の標的における組織白色化)の度合いの決定に基づいて、フィードバック制御システム101は、処置の間に第1の標的を損傷することを回避しつつ、第1の標的と異なる手術部位における第2の標的(例えば、結石の標的)の治療効果を達成または維持するために、レーザ出力もしくはレーザ送達、および/または他のシステムパラメータを調整することができる。例では、第1の標的は泌尿器系における組織であり得、第2の標的は腎臓結石の標的であり得る。フィードバック制御システム101は、腎臓結石の標的をアブレーションまたは断片化する治療効果を維持しつつ、レーザによって誘発される組織の熱損傷を防止する、または熱損傷の重度を低減するように、砕石術処置の間の所望の手術部位の温度など、所望の手術部位の状態を達成または維持するために、レーザ出力もしくはレーザ送達、および/または他のシステムパラメータを調整することができる。
【0056】
図1に示されているように、フィードバック信号130の分析に基づいて、フィードバック制御システム101は、適切なレーザ出力を生成して、所望の治療効果を達成するために、および、レーザで誘発される組織の熱損傷を防止するか、または熱損傷の重度を低減するように、手術部位またはその近くにおける所望の温度などの所望の状態を達成または維持するために、第1のレーザシステム102および/または第2のレーザシステム104を制御することができる。例えば、フィードバック制御システム101は、組織が別の治療処置(例えば、血管の凝固)の前に適切にアブレーションされたかどうかを決定するために、治療処置(例えば、腎臓結石などの結石をより小さい断片へとアブレーションする)の間に標的構造の特性を監視することができる。
【0057】
例では、第1のレーザ源106は、第1の出力110を提供するように構成され得る。第1の出力110は、標的構造の吸収スペクトルの一部分に対応するものなど、第1の波長範囲にわたって延びることができる。第1の出力110は、組織の吸収スペクトルに対応する波長範囲にわたるため、標的構造の効果的なアブレーションおよび/または炭化を提供することができる。
【0058】
例では、第1のレーザ源106は、第1の波長範囲において放出される第1の出力110が、組織による入射した第1の出力110の高い吸収(例えば、約250cm-1を超える)に対応するように構成され得る。例の態様では、第1のレーザ源106は、約1900ナノメートル(nm)と約3000nm(例えば、水による高い吸収に対応する)との間、および/または、約400nmと約520nm(例えば、酸素ヘモグロビンおよび/またはデオキシヘモグロビンによる高い吸収に対応する)との間で、第1の出力110を放出することができる。明らかに、組織との光相互作用の2つの主要な仕組み、すなわち、吸収および散乱がある。組織の吸収が高い場合(250cm-1を超える吸収係数)、初めの吸収の仕組みが支配的であり、例えば800~1100nmの波長範囲でのレーザといった、吸収が低い場合(250cm-1未満の吸収係数)、散乱の仕組みが支配的である。
【0059】
様々な市販の医療グレードのレーザシステムが第1のレーザ源106のために適し得る。例えば、約515nmおよび約520nm、または約370nmから約493nmの間の第1の波長範囲で第1の出力110を提供するInXGa1-XN半導体レーザなどの半導体レーザが、使用され得る。代替で、以下の表1にまとめられているものなどの赤外線(IR)レーザが使用されてもよい。
【0060】
【表1】
【0061】
任意選択の第2のレーザシステム104は、第2の出力120を提供するための第2のレーザ源116と、電力供給部、表示装置、および冷却システムなど、関連付けられる構成要素と、を備え得る。第2のレーザシステム104は、第1のレーザ源106から動作可能に分離されるか、第1のレーザ源106に動作可能に連結されるかのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、第2のレーザシステム104は、第2の出力120を伝送するための第2のレーザ源116に動作可能に連結される第2の光学経路118(第1の光学経路108とは別)を含み得る。代替で、第1の光学経路108は第1の出力110と第2の出力120との両方を伝送するように構成されてもよい。
【0062】
特定の態様において、第2の出力120は、第1の波長範囲と別の第2の波長範囲にわたって延びることができる。したがって、第1の波長範囲と第2の波長範囲との間に重なりがなくてもよい。代替で、第1の波長範囲と第2の波長範囲とは互いと少なくとも部分的な重なりを有してもよい。本開示の有利な態様では、入射する放射が、以前にアブレーションまたは炭化された組織によって強力に吸収される標的構造の吸収スペクトルの一部分に、第2の波長範囲が対応しない可能性がある。いくつかのこのような態様では、第2の出力120は、炭化されていない組織を有利にアブレーションしないことができる。別の実施形態では、第2の出力120は、先にアブレーションされて炭化された組織をアブレーションすることができる。追加の実施形態では、第2の出力120は、追加の治療効果を提供することができる。例えば、第2の出力120は、凝固する組織または血管により適し得る。
【0063】
図2は、自動手術部位状態制御を伴う内視鏡外科システム200と、システム200が動作し得る環境の少なくとも一部分と、を示すブロック図である。システム200は、レーザエネルギー送達システム100の実施形態、または、数ある結石構造の中でも、腎臓結石、胃石、胆石のような硬化した質量を破壊するために使用され得る砕石術システムの実施形態であり得る。システム200は、処置の間に手術部位の温度を実質的の所望のレベルで維持して、レーザで誘発される組織の熱損傷を防止するか、または熱損傷の重度を低減するために、レーザ処置の間に手術部位122またはその周りの状態を監視および制御することができる。本文書において、「実質的に」という用語は、±10%を意味し、いくつかの実施形態では±5%を意味する。
【0064】
内視鏡外科システム200は、フィードバック制御システム210と、1つ以上のセンサ220と、レーザシステム230と、灌漑および/または吸引システム240と、ユーザインターフェースデバイス250と、を備え得る。レーザエネルギー送達システム100のフィードバック制御システム101の実施形態であるフィードバック制御システム210は、フィードバック分析装置212と、制御回路218と、を備え得る。例の実施形態によれば、フィードバック制御システム210は、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または任意の他の等価の一体化もしくは離散の論理回路の他に、フィードバック制御システム210のおかげとされる機能のうちの1つ以上を実施するためのこのような構成要素の任意の組み合わせなどの処理装置を備え得る。フィードバック分析装置212は、1つ以上のセンサ220に通信可能に連結させることができ、センサ220からフィードバック信号を受信でき、手術部位の状態を制御するために使用され得る1つ以上の信号特性を生成するために、フィードバック信号を分析することができる。図2に示されているような例では、1つ以上のセンサ220は、処置の間に手術部位122の少なくとも一部分の画像または映像フレームを生成するように構成された撮像センサ222を備え得る。撮像センサ222は、レンズ系をさらに含む撮像システムに含まれ得る。画像センサ222の例には、紫外線(UV)、可視光(VIS)、または赤外線(IR)の波長で感知できるCCDもしくはCMOSカメラがあり得る。撮像センサ222は、処置の間に使用するための内視鏡の遠位部分を位置付けることができ、その例が図3に示されている。撮像センサ222は、異なる時間において画像または映像フレームを生成することができる。1つ以上のセンサ220は、処置の間に手術部位の圧力を感知するために、圧力センサ224を追加的に備え得る。
【0065】
手術部位の画像または映像フレームはフィードバック分析装置212へと伝送され得る。フィードバック分析装置212は画像分析回路214と組織白色化検出回路216とを備え得る。画像分析回路214は、組織の色の時間に伴う変化を指示する画像特徴を、画像または映像フレームから検出するために、画像または映像フレームを処理することができる。組織白色化検出回路216は、検出された画像特徴を使用して、組織白色化の指示を検出することができる。組織白色化は、手術部位において第1の標的(例えば、組織)における熱蓄積の度合いを指示することができる。例では、画像分析回路214は、処置の間の異なる時間において撮られた画像または映像フレームを比較することができ、画像または映像フレームにおける登録された場所において、1つ以上の特徴的な色成分(例えば、CMOSまたはCCDの色成分)の強度における変化を特定することができる。特定の組織部位に対応する登録された場所は、使用者によって特定することができる。例では、照準ビームが、後で検討されるように、特定の組織部位に対応する登録された場所を特定するのを支援するために使用できる。組織白色化検出回路216は、登録された場所の1つ以上の特徴的な色成分(例えば、RGB値)の強度を、「白」色(RGB(255、255、255))または所定の「白化された」色(例えば、RGB(240、240、240))についてのそれぞれの閾値値(例えば、閾値RGB値、RGBTH)と比較することができる。1つ以上の色成分の強度の値(例えば、0から255まで)が、特定のマージン(例えば、(240~255、240~255、240~255)の範囲内のRGB値)内の「白」色に十分に近い場合、組織白色化が検出されたと見なされる。いくつかの例では、画像分析回路214は、連続的にキャプチャされた画像を比較することができるか、または、映像フレームのフレームごとの比較を実施することができ、登録された場所における「白」色または所定の「白化された」色に向けて、色強度変化速さを決定することができる。組織白色化検出回路216は、色強度変化速さを速さ閾値と比較することができ、色強度変化速さが速さ閾値を超える場合、組織白色化の存在を決定することができる。このように検出された組織白色化は、手術部位における組織においての熱蓄積の度合いが、RGBTHまたは閾値色強度変化速さに対応する所定の閾値を超えることを指示している。
【0066】
制御回路218は、フィードバック分析装置212への有線または無線の接続によって連結され得る。制御回路218は、特定された組織白色化に応答して、手術部位における所望の温度(例えば、±10%、または、ある場合には±5%)を実質的に達成または維持するために、システム200と関連付けられる動作パラメータを調整するための制御信号を生成することができる。例では、組織白色化検出回路216は、時間t(RGB)において撮られた画像または映像フレームの色成分の強度の値(例えば、RGB値)と、「白」色(RGB(255、255、255))または所定の「白化された」色(例えば、RGB(240、240、240))についての閾値値RGBTHと、の間の差に基づく組織白色化の度合いΔRGB、つまり、ΔRGB=RGB-RGBTHを決定することができる。より小さいΔRGB値は、組織白色化のより高い度合い(つまり、「白」または所定の「白化された」色により近い)を指示し、したがって、手術部位におけるより高い温度、および、組織熱損傷のより高い危険性を指示する。別の例では、組織白色化検出回路216は、組織白色化の速さΔRGB/Δt(つまり、単位時間における「白」色または所定の「白化された」色に向けての色強度変化の量)を決定することができる。より高い組織白色化速さΔRGB/Δtは、手術部位におけるより早い熱蓄積を指示し、延いては、組織熱損傷のより高い危険性を指示する。制御回路218は、組織白色化の度合いΔRGB、または組織白色化の速さΔRGB/Δtに基づいて、パラメータ調整の積極性を(例えば、レーザ出力設定、灌漑流れ速さおよび/もしくは吸引流れ速さ、または灌注液温度制御などを調整することで)決定することができる。例えば、組織白色化のより高い度合い、またはより高い速さの組織白色化速さ(つまり、より速い組織白色化)が検出される場合、制御回路218は、手術部位の温度を制御下にするために、1つ以上のシステムパラメータのより積極的な調整(例えば、レーザ出力におけるより大きな低減、より高い灌漑流れ速さおよび/もしくはより高い吸引流れ速さ、または、手術部位へと流れる前の灌注液のより大きな冷却)を提供することができる。
【0067】
図1に示されているようなレーザシステム102またはレーザシステム104の例であるレーザシステム230は、レーザ源(第1のレーザ源106など)と、レーザエネルギーを手術部位へと向かわせるための光学経路(第1の光学経路108など)と、を含み得る。レーザ源は、レーザ出力強度または1つ以上のレーザ照射パラメータ(例えば、出力、期間、周波数、もしくはパルス形状などの1つ以上のレーザパルスパラメータか、曝露時間か、または発射角度)に応じて、レーザエネルギーを生成することができる。このようなレーザパラメータのうちの少なくとも一部は、制御回路218などによって自動的に、または、ユーザインターフェースデバイス250を介して使用者によって手動で、のいずれかで、プログラム可能にまたは調整可能である。(組織白色化検出回路216によって検出されるような)組織白色化の指示に応答して、制御回路218は、組織白色化の度合いΔRGBまたは組織白色化の速さΔRGB/Δtのうちの1つ以上に応じて、レーザ出力設定を自動的に調整することができる。例えば、制御回路218は、レーザパルスのパルス幅、レーザパルスのピーク出力、または、単位時間当たりのレーザパルスの数を表すパルス周波数のうちの1つ以上を減らすことなどで、手術部位へと送達されるレーザパルスの平均出力を自動的に低減することができる。レーザパルスの平均出力を低減することは、手術部位またはその近くにおけるレーザで誘発される加熱効果を低減することができ、それによって、組織の熱損傷を防止し、処置の間の患者の安全性を向上させることができる。
【0068】
1つ以上のレーザ出力パラメータを調整することの追加または代替で、制御回路218は、組織白色化の度合いΔRGB、または組織白色化速さΔRGB/Δtに応じて、異なるエネルギー出力レベルを伴う複数の所定のレーザ出力設定またはパルスプロフィールのうちの1つを自動的に選択することができる。例では、制御回路218は、それぞれの所定のパラメータの値を伴う、第1の「高出力」設定と第2の「低出力」設定との間で自動的に切り換わることができる。「低出力」設定は「高出力」設定より低い平均出力を有する。組織白色化の度合いΔRGBまたは組織白色化の速さΔRGB/Δtがそれぞれの閾値を超えるとき、「低出力」設定が自動的に選択されることになる。
【0069】
いくつかの例では、レーザシステム230は、第1のレーザ源232と、異なる第2のレーザ源234と、を備え得る。第1のレーザ源232は、第1の光学経路108などの光学経路を通じて、手術部位における標的に向けられる治療レーザエネルギーを生成することができる。第1のレーザ源232の例には、数ある中でも、ツリウムレーザ、Ho:YAG、Nd:YAG、およびCOがあり得る。第2のレーザ源234は、第2の光学経路118など、同じまたは異なる光学経路に光学的に連結され得る。第2のレーザ源234は、同じまたは異なる光学経路を通じて、標的に向けられる照準ビームを生成することができる。例えば、照準ビームの波長は500~550nmの範囲であり得る。いくつかの例では、第2のレーザ源234は、波長、出力レベル、または放出パターンのうちの1つ以上など、異なる特性を伴う少なくとも2つの異なる照準ビームを放出することができる。例えば、第1の照準ビームは、500nmから550nmまでの範囲での波長を有することができ、第2の照準ビームは、635nmから690nmまでの範囲での波長を有することができる。異なる照準ビームの特性は、手術部位の画像または映像フレームにおける照準ビームの視認性に基づいて選択され得る。
【0070】
照準ビームは、標的が照らされた光(図3に示されているような照明光源324など)によって照らされるとき、放出され得る。いくつかの例では、照準ビームは、第2のレーザ源234と異なる光源を使用して生成され得る。光源は、手術部位の照らされた背景から区別するために、はっきりと異なる色を伴う照準ビームを生成することができる。例を用いると、限定ではなく、照準ビームは、おおよそ520nmの範囲において緑色の光であり得る、または、別の例ではおおよそ620nmの範囲において赤色であり得る。
【0071】
手術部位において組織に入射する照準ビームは、撮像センサ222によってキャプチャさせることができ、画像または映像フレームにおける照準ビームのフットプリントとして示すことができる。図4は、撮像センサ222の視野の中にある照らされた標的部位のグラフィック描写を含む内視鏡画像410と、円形の照準ビームフットプリント412と、を示している。同じく画像410に示されているのは、光学経路の遠位先端413の画像(例えば、図3に示されているような光学経路334の遠位端336)、および、内視鏡(図3に示されているような内視鏡301など)の遠位部分414の画像である。色付けされた(例えば、緑色)の照準ビームが使用されるとき、照準ビームフットプリント412は、内視鏡画像410においても緑色で現れることができる。組織白色化検出回路216は、手術部位の一連の画像または映像フレームの各々から照準ビームフットプリント412を特定することができ、照準ビームフットプリントまたはその近傍において、画像または映像フレームの一部分から組織白色化を検出することができる。一実施形態では、組織が「白化」になるとき、「白化された」組織に入射する色付き(例えば、緑色または赤色)の照準ビームは、「非白色化」の組織においてより、画像または映像フレームにおいてより輝いて現れることができる。例えば、緑色の照準ビームについて、より輝いた緑色のフットプリントは、くすんだ緑色のフットプリントより高い度合いの組織白色化を指示することができる。フットプリントの色の輝きは、色の強度または彩度(例えば、RGB値)として測定することができる。例では、組織白色化検出回路216は、照準ビームフットプリントまたはその近傍における色強度の増加に基づいて、組織白色化を検出することができる(および、組織白色化の度合いΔRGBおよび/または組織白色化速さΔRGB/Δtをさらに決定することができる)。照準ビームで指示された組織白色化に基づいて、制御回路218は、手術部位の温度を制御下にするために1つ以上のシステムパラメータを調整することができる。
【0072】
先に述べられているように、(組織白色化検出回路216による)組織白色化の検出に応答して、制御回路218は、手術部位の温度を低下させるために、組織白色化の度合いΔRGBまたは組織白色化の速さΔRGB/Δtに応じて1つ以上のレーザ照射パラメータを含むレーザ出力設定を自動的に調整することができる。所望の手術部位の状態(例えば、温度)を維持することは、手術部位における治療の標的における所望の治療効果(例えば、結石の標的のアブレーションまたは断片化)を達成または維持するのを助けることができる一方で、処置の間の治療の標的の近傍における組織を損傷することを回避することができる。手術部位の温度を制御するために調整されるレーザ照射パラメータの一例は、パルスシーケンシング(パルスプロフィールとも称される)である。パルスシーケンシングは、特定の時間の中でのレーザパルスのタイミングまたは時間分布を表している。パルスシーケンシングを調整することは、パルスレーザビームによって生み出される蒸発による泡の形成、流れ、および量を変更することなどで、外科空間の中の熱分布を変更することができる。このような蒸発による泡は、レーザパルスが外科空間を通じて組織壁との接触へと伝搬するときに形成され得る。蒸発による泡と接触している組織領域は、泡によって加熱させられる傾向がある。例えば、いくつかの場合には、25℃~30℃の温度上昇が、泡が接触する組織領域において起こり得る。また、手術部位またはその近くにおける組織の温度上昇は、泡の大きさ、および光学経路の位置(例えば、ファイバ-組織の距離)によっても影響され得る。したがって、蒸発による泡の大きさおよび数を低減すること、ならびに/または、(泡が同じ組織領域と常に接触することを防止するために)幅広い範囲の組織領域にわたって泡を再分配することは、手術部位の温度を低下させるのを助け、組織の熱損傷を防止する、または熱損傷の重度を低減するのを助けることができる。
【0073】
レーザの一定のパルスシーケンシングは、泡が組織の壁との一定の接触の点へと平衡状態で進むのを容易にする可能性がある。このような平衡状態の下で、同じ組織領域に向かう泡の予測可能な乱流は、組織領域に常に当たり、熱蓄積を引き起こす可能性がある。泡の流れを介してレーザで誘発される熱を絶えず吸収する組織の単一の点の錯乱効果を軽減するために、制御回路218は、泡が平衡状態で進み、組織の同じ領域に連続的に当たるのを防止するように、レーザパルスシーケンシングを含め、レーザ出力設定を調整するために、第1のレーザ源232へと制御信号を生成することで、画像または映像フレームの中の組織白色化の特定に応答する。具体的には、パルスシーケンシングを変更すること(つまり、特定の時間の中でのレーザパルスの時間分布を変更すること)で、組織白色化が観察される可能性のある単一の組織領域よりも幅広い範囲の組織領域に泡が当たる非平衡な灌漑流れ、またはより無秩序で予測不可能な灌漑流れを生み出すことができる。パルスシーケンシングは、周期的に、または、使用者が指定した時間に、変更され得る。図5A図5Dは、所与の時間期間Tの中で、第1のパルスプロフィール510(図5Aにおける)から、異なる第2のパルスプロフィール520(図5Bにおける)へと、パルスシーケンシングを変更する例と、結果生じた灌漑流れおよび泡状態と、を示している。第2のパルスプロフィール520は、第1のパルスプロフィール510のパルス512の分布とは異なる無秩序なレーザパルス522の分布によって特徴付けられている。例では、乱数発生器が、所与の時間期間Tの中でのレーザパルス522についてのタイミングを決定するために使用され得る。図5Cは、第1のパルスプロフィール510に従って、遠位端501から組織502の外科空間へと放出されるレーザパルスによって生み出される平衡状態を示している。平衡状態は、予測可能で定常的な乱流530によって特徴付けられ、乱流530では、蒸発による泡532が組織502の部位「A」に向けて流れ、同じ組織部位「A」に常に当たり、そこで熱蓄積を引き起こす。対照的に、図5Dは、第2のパルスプロフィール520に応じて送達されるレーザパルスによって生み出される非平衡状態を示している。非平衡状態は、泡の崩壊のより高い可能性のため、より少ない蒸発による泡542を伴うより予測不可能な灌漑流れ540によって特徴付けられる。非平衡状態における泡542は、単一の組織領域「A」ではなく、組織502の幅広い範囲の領域に当たることができ、それによって、手術部位における組織の熱損傷を防止するか、または熱損傷の重度を低減することができる。
【0074】
いくつかの例では、(組織白色化検出回路216によって検出されるような)組織白色化の指示に応答して、制御回路218は、手術部位またはその近くにおける解剖学的標的に対する光学経路の調整可能な遠位部分(レーザ発射部分)の位置または配向を調整するために、レーザシステム230の光学経路(例えば、レーザファイバ)に連結されるアクチュエータへの制御信号を生成することができる。光学経路の調整可能な遠位部分の位置または配向の調整は、組織白色化検出回路216によって提供される組織白色化の度合いΔRGBまたは組織白色化の速さΔRGB/Δtのうちの1つ以上に応じて、遠位部分と解剖学的標的との間の距離(「ファイバ-標的」距離)、または、解剖学的標的に対する遠位部分の照準角度を調整することを含み得る。例えば、制御回路218は、アクチュエータを介して、光学経路の遠位部分を手術部位から遠くに離すように自動的に移動させる(つまり、ファイバ-標的距離を増加させる)ことができる、および/または、レーザを手術部位から離すように狙うために(照準角度を増加させるために)光学経路の遠位部分を回転させることができる。ファイバ-標的距離を増加させること、および/または、照準角度を増加させることによって、手術部位に入射するレーザエネルギーの密度と、手術部位へと伝わるレーザで誘発された熱と、を減少させることができる。
【0075】
治療されるように意図されている標的が解剖学的な組織または器官ではないが、手術部位における結石構造などの塊である特定の処置(例えば、砕石術)では、組織白色化の特定は、レーザファイバの不十分な狙いの指示であり得る。組織白色化を表すアクチュエータを介してなど、(照準角度または「ファイバ-標的」距離を変更するために)光学経路の遠位部分の位置または配向を調整することは、治療の有効性を向上する一方で組織の熱損傷を防止するために、レーザエネルギーを意図されている結石の標的へと再び向かわせることができる。
【0076】
灌漑および/または吸引システム240は、処置の間に内視鏡に含まれるものなどの少なくとも1つの灌漑通路を通じた手術部位への灌漑流体(例えば生理食塩水溶液といった灌注液とも称される)の流れを提供することができる1つ以上の灌漑および/または吸引の供給源を備え得る。灌漑流体は、吸引通路を通じた組織破片、石断片、および他の望まれない物質の除去を容易にすることができる。灌漑流れは、手術部位および外科工具(例えば、内視鏡組織除去デバイス)またはその近くにおける組織に冷却効果を有してもよく、結石のアブレーションの間に生成される熱を消散するのを助けることができる。灌漑および/または吸引システム240の例は、図3を参照して以下で検討されている。
【0077】
いくつかの例では、(組織白色化検出回路216によって検出されるような)組織白色化の指示に応答して、制御回路218は、組織白色化検出回路216によって提供される組織白色化の度合いΔRGBまたは組織白色化速さΔRGB/Δtに応じて、灌漑流れまたは吸引流れなどの1つ以上の灌漑パラメータを自動的の調整することができる。例えば、制御回路218は、対流の熱伝達を増加させるために、灌漑供給源から手術部位への灌漑流れを自動的に増加させることができる。追加または代替で、制御回路218は、流体を手術部位から離すようにより効果的に引き出して、熱消散を向上させ、手術部位の温度を低減するために、吸引流れ(または吸引圧力)を自動的に増加させることができる。
【0078】
手術部位の温度を制御するための灌漑または吸引の流れの適用は、手術部位またはその近くにおける圧力を変動させることができる。例えば、手術部位への灌漑流れは、手術部位の圧力(正の圧力変化)を概して増加させることになり、一方、吸引の圧力(つまり、流出)は、手術部位の圧力(負の圧力変化)を概して低下させることになる。このような灌漑および/または吸引に誘導される正または負の圧力変化は、適切に規制されない場合、手術部位またはその近くにおける組織または器官にとって有害であり得る。処置の間に解剖学的環境の圧力を制御下に保つために、および、圧力に関する組織損傷を回避または低減するために、システム200は、処置の間に手術部位の圧力を感知するために圧力センサ224を備えることができる。組織白色化の度合いΔRGBまたは組織白色化速さΔRGB/Δtがそれぞれの条件(例えば、ΔRGBが閾値より小さい、または、ΔRGB/Δtが閾値を超える)を満たすとき、制御回路218は、測定された手術部位の圧力(P)に基づいて、灌漑流れまたは吸引流れを選択的に作動または調整することができる。例えば、手術部位への灌漑流れの増加は、手術部位またはその近くにおいて、正の圧力変化を導入することができ、測定された手術部位の圧力が所定または使用者が指定した圧力上限(最大許容可能圧力とも称される)Pmaxを超える場合(P>Pmax)、制御回路218は、手術部位の圧力におけるさらなる増加を防止するために、手術部位の温度を低下させるが、灌漑流れを増加させることを回避するために、吸引流れを増加させることができる。例えば、灌漑流れは、その流れの速さで維持され得るか、低減した速さへと設定され得るか、または一時的に作動停止され得る。増加した吸引流れは、手術部位の圧力を、所望の圧力範囲内のレベルへと低下させるのを助けることもできる。測定された手術部位の圧力が、圧力上限Pmaxと圧力下限Pminとの間の所望の圧力範囲内にある場合(Pmin<P<Pmax)、制御回路218は、手術部位の温度を低下させるために、灌漑流れおよび吸引流れの一方または両方を増加させることができる。吸引流れの増加は、手術部位またはその近くにおいて、負の圧力変化を導入することができ、測定された手術部位の圧力が圧力下限Pminを下回る場合(P<Pmin)、制御回路218は、手術部位の温度を低下させるために、手術部位への灌漑流れを増加させることができるが、手術部位の圧力におけるさらなる低下を防止するために、吸引流れを増加させることを回避することができる。例えば、吸引流れは、その流れの速さで維持され得るか、低減した速さへと設定され得るか、または一時的に作動停止され得る。増加した灌漑流れは、手術部位の圧力を、所望の圧力範囲内のレベルへと増加させるのを助けることもできる。
【0079】
いくつかの例では、灌漑および/または吸引システム240は、手術部位に適用される前、灌漑流体(灌注液)の温度を調整することができる灌注液処理ユニットを含むことができる。いくつかの例では、(組織白色化検出回路216によって検出されるような)組織白色化の指示に応答して、制御回路218は、組織白色化検出回路216によって提供される組織白色化の度合いΔRGBまたは組織白色化速さΔRGB/Δtのうちの1つ以上に応じて灌注液の温度を変更するために、灌注液処理ユニットへの制御信号を生成することができる。例では、灌注液処理ユニットは、制御回路218の制御の下で、手術部位に到達する前に灌注液を冷却することができる冷却システム(例えば、放熱器、またはインライン冷却器)を備えることができる。別の例では、灌注液処理ユニットは、制御回路218の制御の下で、手術部位に到達する前に異なる温度の少なくとも2つの灌注液を混合することができる流体混合器を備える。冷却システムを介しての冷却された灌漑、または、流体混合器を介しての混合された灌注液は、手術部位に適用されるとき、対流の熱伝達を向上させることができ、手術部位の温度を効果的および効率的に低減することができる。
【0080】
いくつかの例では、制御回路218は、手術部位の温度を、温度管理計画に応じて、実質的に所望のレベルまたは範囲で維持することができる。温度管理計画は、数ある中でも、例えば、レーザ出力設定または1つ以上のレーザ照射パラメータを変更すること、光学経路(例えば、レーザファイバ)の遠位部分の位置または配向を調整すること、手術部位への灌漑流れおよび/または手術部位から離れる吸引流れを作動または調整すること、あるいは、手術部位へと適用される前に灌注液の温度を変更すること、を含め、先に記載されている2つ以上の温度制御手段の優先順位の付けられた順番を含み得る。温度管理計画は、ユーザインターフェースデバイス250を介してなど、使用者によってプログラムまたは改良させることができる。温度制御手段の順番は、利用可能性(例えば、灌注液冷却システム)、温度制御の効率、または、手術部位における潜在的な悪影響に基づいて決定され得る。例では、温度管理計画は、最適なレーザ出力設定または使用者が選択したレーザ出力設定を維持する一方で、手術部位の温度を維持するのに適した他のデバイス設定(例えば、光学経路の遠位部分の位置または配向、灌漑および/または吸引の流れ、灌注液温度)を調整することに向けてのバイアスを伴ってプログラムされ得る。レーザ出力設定を維持することは、処置時間を短縮し、治療の有効性および効率を確保するために、レーザ砕石術処置の間に望ましい可能性がある。また、レーザ出力設定を調整すること(例えば、平均レーザ出力を低減すること)は、手術部位の温度にゆっくりとした効果を有し得る。別の例では、手術部位またはその近くでの灌漑および/または吸引に誘発される圧力変動を防止するために、灌注液温度制御(例えば、手術部位に適用される前に灌注液を冷却する)が、灌漑または吸引の流れを調整しようとする試みの前に使用され得るように、温度管理計画がプログラムされ得る。例えば、(組織白色化検出回路216によって検出されるような)組織白色化の指示に応答して、制御回路218は、初めに、手術部位へと適用される前に灌注液を冷却するために、灌漑および/または吸引システム240の灌注液処理ユニットへの制御信号を生成することができる。次に、フィードバック制御システム210は、画像または映像フレームを再評価して、組織白色化がなおも存続するのか、または悪化するのかを決定することができ、そのような場合、制御回路218は、灌漑流れおよび/または吸引流れを増加して手術部位の温度を低下させるために、灌漑および/または吸引システム240への制御信号を生成することができる。灌漑流れと吸引流れとの間の選択、または、灌漑流れおよび吸引流れを適用する順番は、先に検討されているように、手術部位の圧力に基づき得る。例えば、処置の間に手術部位の温度を実質的に所望のレベルまたは範囲で維持するために、システムは、現在の手術部位の圧力Pを、所定の圧力上限または使用者が指定した圧力上限Pmaxと比較することができる。現在の手術部位の圧力Pが実質的にPmax未満である場合(例えば、PとPmaxとの間の差が閾値を超える場合)、灌漑を介しての対流の熱伝達を増加させるために、灌漑流入速さが増加させられ得る。追加または代替で、吸引流れは、熱を手術部位から効率的に離すために増加させられ得る。対照的に、現在の手術部位の圧力Pが実質的にPmaxに近い場合(例えば、±10%といった使用者が指定したマージンまたは所定のマージンの中にある場合)、灌漑流入速さを増加させるのではなく、レーザ出力設定が低下させられ得る。吸引流れが(例えば、ポンプを介して)積極的に制御される実施形態では、現在の手術部位の圧力Pが実質的にPmaxに近い場合、吸引流れ速さは、レーザ出力設定を低下させることの代替または追加で、手術部位の圧力を低下させるために増加させることができる。身体の組織がいくつかの正の圧力変化を概して制限し得る一方で、多くの器官は、負の圧力変化に対して比較的無防備である。したがって、いくつかの例では、灌漑流れを増加させることが、吸引流れを作動または増加させる前に試みられ得る。
【0081】
次に、フィードバック制御システム210は、画像または映像フレームを再評価して、組織白色化がなおも存続するのか、または悪化するのかを決定することができ、そのような場合、制御回路218は、光学経路の遠位部分の位置または配向を調整するために、または、レーザ出力設定または1つ以上のレーザ照射パラメータを変更するために、レーザシステム230への制御信号を生成することができる。レーザ照射パラメータは、所定の順番または優先順位で調整され得る。例えば、パルス形状の調整またはパルスシーケンシングの調整(特定の時間内のレーザパルスの時間分布)が、レーザパルスの平均出力の調整に対して優先順位が付けられる。異なる温度制御手段の積み上げられた連続的な作動または調整が、治療の有効性および効率を損なうことなく、または、手術部位またはその近くにおける組織損傷の追加の危険性を課すことなく、処置の間に所望の手術部位の状態(例えば、温度、圧力)を維持するのを助けることができる。
【0082】
ユーザインターフェースデバイス250は、フィードバック制御システムと動作可能に通信し得る。ユーザインターフェースデバイス250は、例えば、センサ220によって感知される画像、圧力、または他の情報や、組織白色化の検出された指示を含め、フィードバック分析装置212によって生成されるフィードバック信号や、組織白色化の度合いΔRGBや、組織白色化速さΔRGB/Δtや、または、レーザ出力設定、灌漑の流れ速さ、もしくは吸引の流れ速さなどの現在のデバイスの設定などを含む手術部位の状態を含め、情報を表示するための出力/表示ユニット252を備え得る。出力/表示ユニット252は、視覚的要素、警告、触覚フィードバック、またはそれらの任意の組み合わせを含め、UI要素を表示することができる。出力/表示ユニット252は、組織白色化によって指示された上昇した温度、または上昇した手術部位の圧力など、手術部位またはその近くにおける潜在的に危険な状態について、警告を生成することができる。警告は、可聴式の形態、視認可能な形態、触知性の形態、または他の人が認識可能な形態で提供され得る。
【0083】
ユーザインターフェースデバイス250は、組織白色化を検出するために使用されるパラメータ値(例えば、「白化された」の色をあらかじめ決定したRGB値、組織白色化の度合いΔRGBおよび/または組織白色化速さΔRGB/Δtについての閾値値を含む)など、使用者のデバイスのプログラミングを受け入れるために、1つ以上の入力ユニット254を備え得る。使用者入力は、手術部位の温度を制御するための数あるデバイスパラメータの中でも、レーザ出力設定、灌漑流れ、または吸引流れのパラメータ調整を含み得る。いくつかの例では、使用者が、1つ以上の入力ユニット254を介して、先に記載されているような2つ以上の温度制御手段の優先順位の付けられた順番を定める温度管理計画を提供することができる。例えば、使用者は、初めに、灌漑流れ速さのレーザ出力を調整することなく灌注液温度を低減するように(利用可能な場合)、制御回路218を導くことができる。次に、手術部位における組織白色化が存続または悪化する場合、流れの速さが増加させられ得る、および/または、灌注液温度が低下させられ得る。手術部位を制御するための優先順位付け手段の例は図7A図7Bを参照して以下で検討されている。
【0084】
いくつかの例では、出力/表示ユニット252は、レーザ出力または他のシステムパラメータの推奨される調整など、組織の損傷を防止するための予防的な行動を取るための推奨を生成することができる。使用者は、推奨された調整を確定、拒否、または変更するために1つ以上の入力ユニット254を介して入力を提供することができる。
【0085】
図3は、内視鏡外科システム200の例であり得る自動手術部位状態制御を伴う内視鏡レーザ砕石術システム300の例を示している。内視鏡レーザ砕石術システム300は、内視鏡301と、フィードバック制御システム310と、アクチュエータ338と、灌漑および/または吸引システム340と、灌注液処理ユニット342と、を備え得る。内視鏡301は、近位部分と、内視鏡レーザ砕石術処置の間に患者の手術部位へと挿入されるように構成される細長い遠位部分と、を有する。内視鏡301は、軟組織(例えば、非石灰化組織)または硬組織(例えば、石灰化組織)の視覚的な検査または治療を提供するだけでなく、腎臓結石、他の石、または他の標的を視覚化、破壊、または他に治療することを提供することができる。図3に示されているように、内視鏡301は、内視鏡301の細長い本体に沿って長手方向に各々が延び得る視覚化光学経路360および照明光学経路350など、視覚化および照明の光学系を備えるかまたは提供することができる。接眼レンズ、カメラ、または撮像表示装置が、内視鏡301の遠位端またはその近くにおける標的領域の使用者または機械の視認を可能とするために、視覚化光学経路360に提供され得る、または視覚化光学経路360に連結され得る。標的領域は、照明光学経路350の近位端において照明光源324によって提供され、照明光学経路350の遠位端から放出されるなどの光370によって照らすことができる。光源324は、例えば、キセノンランプ、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、またはそれらの任意の組み合わせを備え得る。例では、光源324は、照明モードと称される異なる照明特性を有する光を放出する2つ以上の光源を備え得る。例では、照明モードには、白色光照明モード、または、狭帯域撮像モード、自動蛍光撮像モード、もしくは赤外線撮像モードなどの特別光照明モードがあり得る。特別光照明は、特定の波長の光を集中して増大することができ、その結果、例えば、手術部位における組織または他の構造のより良好な視覚化をもたらすことができる。
【0086】
砕石術システム300は、第1のレーザ源106、第2のレーザ源116、または、レーザシステム230に含まれるレーザ源の例であり得る少なくとも1つのレーザ源332を備えることができるか、またはそのようなレーザ源332に連結させることができる。レーザ源332は、単一の光ファイバまたは光ファイバの束を備え得る光学経路334に、機械的および光学的に接続され得る。第1の光学経路108もしくは第2の光学経路118の実施形態である光学経路334、またはレーザシステム230に含まれる光学経路は、内視鏡301または同様の器具のワーキングチャネル、他の長手方向の通路、または内腔の中で延びるために、近位アクセスポートを介して導入され得る。
【0087】
いくつかの例では、レーザ源332は、治療ビームを生成するための第1のレーザ源(第1のレーザ源232など)と、照準ビーム(第2のレーザ源234など)を生成するための第2の異なるレーザ源と、を備え得る。治療ビームおよび照準ビームは、同じまたは異なる光学経路を通じて、標的に向けられ得る。いくつかの例では、照準ビームは、第2のレーザ源と異なる光源を使用して生成され得る。図2を参照して先に記載されているように、照準ビームは、手術部位の照らされた背景から区別するために、はっきりと異なる色(例えば、緑色または赤色)を有し得る。
【0088】
砕石術システム300は、カメラまたは撮像デバイス325を備え得る。カメラまたは撮像デバイス325は、手術部位またはその近くにおける標的の電磁放射(例えば、照明光370)に応答して、標的の撮像信号を生成することができる撮像センサ(撮像センサ222など)を備え得る。撮像信号は、光学経路360を通じて、または代替で、光学経路334を通じて、フィードバック制御システム310(フィードバック制御システム210の実施形態)へと伝送され得る。フィードバック制御システム310はフィードバック分析装置312と制御回路318とを備え得る。例では、撮像信号は、フィードバック分析装置312に到達する前に光学スプリッタを通過することができる。フィードバック分析装置312は、撮像データから1つ以上の分光特性を生成することができる分光計を備え得る。フィードバック分析装置312は、1つ以上の分光特性を使用して、標的を、手術部位またはその近くにおける結石の標的または解剖学的標的として認識することができるか、または、標的を、はっきりと異なる組成のある種類の組織またはある種類の結石として分類することができる。いくつかの例では、フィードバック分析装置312は、分光特性を使用して、ファイバ-標的距離を計算または推定することができる。制御回路318は、レーザ出力設定を調整するためのレーザ源332への制御信号、灌漑および/または吸引通路344の遠位端346の位置または配向を調整するためのアクチュエータ338への制御信号(例えば、ファイバ-組織の距離、または照準角度)、または、標的の構造、組成、または種類に基づいて灌漑流れまたは吸引流れを調整するための灌漑および/または吸引システム340への制御信号を生成することができる。
【0089】
いくつかの例では、カメラまたは撮像デバイス325は、標的の画像または映像フレームを生成することができる撮像センサ(撮像センサ222など)を備えることができる。手術部位の画像または映像フレームはフィードバック分析装置312へと伝送され得る。フィードバック分析装置212と同様に、フィードバック分析装置312(フィードバック分析装置212の実施形態)は、手術部位の画像または映像フレームから組織白色化の指示を検出することができる。例では、組織白色化は、所定の「白化」の色についての閾値値(RGBTH)との色成分の強度(例えば、RGB値)の比較に基づいて決定され得る。別の例では、フィードバック分析装置312は、「白」色(RGB(255、255、255))または所定の「白化された」色に向けての色強度変化速さを決定するために、映像フレームのフレームごとの比較を実施することができる。フィードバック分析装置312は、図2を参照して先に検討されているように、時間tに撮られた画像または映像フレームの強度値(RGB値)(RGB)と閾値値RGBTHとの間の差に基づく組織白色化の度合いΔRGB、または、組織白色化の速さΔRGB/Δtを決定することができる。
【0090】
いくつかの例では、フィードバック分析装置312は、図4を参照して記載されているように、手術部位において組織に入射する照準ビームのフットプリントまたはその近傍における画像または映像フレームの一部分から、組織白色化を検出することができる(および、組織白色化度合いΔRGBまたは組織白色化速さΔRGB/Δtを決定することができる)。組織白色化(組織白色化の度合いおよび速さを含む)は、照準ビームフットプリントまたはその近傍における色強度における増加に基づいて検出され得る。
【0091】
組織白色化の度合いおよび/または速さを含め、組織白色化の検出は、レーザ源332、灌漑および/もしくは吸引システム340、または灌注液処理ユニット342などの1つ以上のデバイスの動作パラメータを調整することなどで手術部位の温度を規制するために、制御回路318によって使用され得る。
【0092】
灌漑および/または吸引システム340(灌漑および/または吸引システム240の実施形態)は、灌漑および/または吸引通路344など、内視鏡301のワーキングチャネルに各々が流体的に連結される灌漑供給源および吸引供給源を含み得る。灌漑および/または吸引通路344は、異なる時間において灌漑の流入と吸引の流出とを実施するための共通の統一された通路であり得る。代替で、いくつかの例では、灌漑および/または吸引通路344は、灌漑通路および吸引通路など、2つの別々の通路を備えてもよい。別々の灌漑通路と吸引通路とは、互いと平行であり得るか、または、入れ子の構成などで、共通の軸で同軸に配置され得る。灌漑供給源は、灌漑流体(灌注液)を灌漑および/または吸引通路344に提供するように機能することができる。灌漑流体は重力で送り込みまたは加圧され得る。例では、ポンプは、灌漑および/または吸引通路344を通る手術部位への加圧された灌漑流れを生み出すことができる。吸引供給源は、手術部位から容器へと流体および望ましくない物質を引っ張る、吸い込む、引き込む、吸引する、または他の方法で移動もしくは除去するように機能することができる。吸引供給源は、真空、吸引、または負圧を生成して灌漑および/または吸引通路344に適用することで、前述の機能を実施することができる。
【0093】
フィードバック制御システム310のフィードバック分析装置312は、例えば、カメラまたは撮像デバイス325における撮像センサ、および、処置の間に手術部位の圧力を感知するように構成される圧力センサ224を含め、1つ以上のセンサによって生み出されるフィードバック情報を受信することができる。圧力センサ224は、光学経路334の遠位端336に位置付けられ得る。代替で、圧力センサ224は、灌漑および/または吸引通路344の遠位端346など、他の場所に位置付けられてもよい。先に記載されているように、フィードバック分析装置312は、手術部位の画像または映像フレームから組織白色化の指示を検出することができ、組織白色化度合いΔRGBまたは組織白色化速さΔRGB/Δtを決定することができる。特定された組織白色化の度合いおよび/または速さによれば、制御回路318(制御回路218の実施形態)が、レーザで誘発される組織の熱損傷を防止する、または熱損傷の重度を低減するように手術部位の温度を規制するために、1つ以上のシステムパラメータを、自動で調整することができるか、または、手動で調整するように使用者に促すことができる。
【0094】
様々な温度制御手段が、処置の間に手術部位の温度を規制するために使用され得る。例では、制御回路318は、組織白色化の度合いΔRGB、または組織白色化の速さΔRGB/Δtに応じて、1つ以上のレーザ照射パラメータを含め、レーザ出力設定を自動的に調整するために、レーザ源332への制御信号を生成することができる。例では、レーザ出力設定は、図5Bおよび図5Dを参照して先に記載されているように、組織白色化が観察される可能性のある単一の組織領域よりも幅広い範囲の組織領域に泡が当たる非平衡な灌漑流れ、またはより無秩序で予測不可能な灌漑流れを生み出すために、パルスシーケンシングを変更すること(つまり、特定の時間の中でのレーザパルスの時間分布を変更すること)によって調整され得る。
【0095】
レーザ出力設定を調整することの追加または代替において、いくつかの例では、制御回路318は、手術部位における標的に対してレーザ放出端の位置を調整するために、アクチュエータ338への制御信号を生成することができる。アクチュエータ338は、光学経路334の一部分に連結でき、制御回路318と電気連通することができる。例では、アクチュエータ338は、内視鏡301の遠位端またはその近くに位置付けられ得る。アクチュエータ338は、内視鏡301のワーキングチャネルまたは他の長手方向の通路に対して、または、内視鏡301が座標系として供することができる別の基準場所に対して、光学経路334の遠位端336を作動させるように、または、遠位端336の長手方向または回転の位置決めを他に可能とするように、電磁要素、静電要素、圧電要素、または他の作動要素のうちの1つ以上を備え得る。特定された組織白色化に応答して、制御回路318は、(ファイバ-標的距離を増加させるために)遠位端336を手術部位から離してさらに遠くへ移動させることで長手方向の位置を調整すること、および/または、(照準角度を増加させるために)遠位端336を手術部位から離すように操縦することで回転位置を調整すること、など、光学経路334の遠位端336の位置または配向を調整するためにアクチュエータ338を作動させることができる。
【0096】
なおも別の例では、制御回路318は、灌漑流れまたは吸引流れなど、1つ以上の灌漑パラメータを自動的に調整するために、灌漑および/または吸引システム340への制御信号を生成することができる。灌漑流れまたは吸引流れは、処置(組織のレーザ治療または結石の断片化)の間に生成される熱を消散するのを助けることができる。灌漑流れまたは吸引流れは、流体および望ましくない物質(例えば、組織破片または石断片)の除去を支援することもでき、使用者が指定した圧力レベル(例えば、±5~10%などの公差を伴う使用者が指定した圧力)において圧力を実質的に維持するためになど、手術部位の圧力を制御下で維持することができる。特定された組織白色化に応答して、制御回路318は、熱消散を向上させ、手術部位の温度を低下させるために、手術部位への灌漑流れを自動的に増加させて対流の熱伝達を増加させるように、および/または、吸引流れ(または吸引圧力)を増加させて流体を手術部位から離すように引き出すように、灌漑および/または吸引システム340を制御することができる。いくつかの例では、灌漑流れまたは吸引流れは、図2を参照して先に記載されているように、圧力センサ224を介して監視されている手術部位の圧力に基づいて選択的に作動または調整され得る。
【0097】
別の例では、制御回路318は、手術部位に適用される前に灌漑の温度を自動的に調整するために、灌注液処理ユニット342への制御信号を生成することができる。灌注液処理ユニット342は、異なる温度の少なくとも2つの灌注液を混合するために、灌注液または流体混合器を冷却するための冷却システム(例えば、放熱器、またはインライン冷却器)を備え得る。特定された組織白色化に応答して、制御回路318は、冷却システムまたは流体混合器を介して灌注液を自動的に冷却するために、灌漑および/または吸引システム340を制御することができる。そのため、灌注液/吸引システム340は、手術部位において対流の熱伝達を向上させ、手術部位の温度を効果的および効率的に低下させるために、冷却された灌漑を、灌漑および/または吸引通路344を介して手術部位へと適用することができる。
【0098】
制御回路318は、数ある中でも、例えば、レーザ出力設定または1つ以上のレーザ照射パラメータを変更すること、光学経路(例えば、レーザファイバ)の遠位部分の位置または配向を調整すること、手術部位への灌漑流れおよび/または手術部位から離れる吸引流れを作動または調整すること、あるいは、手術部位へと適用される前に灌注液の温度を変更すること、を含め、先に記載されている2つ以上の温度制御手段の優先順位の付けられた順番を定める温度管理計画を、生成することができる、または使用者から受け入れることができる。
【0099】
図6は、解剖学的標的(例えば、軟組織、硬組織、癌組織、または、腎臓結石、膵臓胆管結石、もしくは胆嚢結石などの結石構造)を治療するための内視鏡処置の間に手術部位の状態(手術部位の温度など)を制御するための方法600を示す流れ図である。方法600は、内視鏡外科システム200もしくは内視鏡レーザ砕石術システム300において実施され得るか、または、内視鏡外科システム200もしくは内視鏡レーザ砕石術システム300によって実行され得る。方法600の過程は、1つの流れ図で描かれているが、特定の順番で実施される必要はない。様々な例において、過程のうちの一部は、本明細書で図示されている順番とは異なる順番で実施されてもよい。
【0100】
610において、レーザエネルギー(例えば、レーザビームまたは一連のレーザパルス)が解剖学的標的へと送達される。レーザエネルギーは、レーザ源(第1のレーザ源106、第2のレーザ源116、またはレーザ源332)によって生成され得、光学経路(第1の光学経路108、第2の光学経路118、または光学経路334)を通じて伝送され得る。620において、異なる時間に撮られた手術部位の画像または映像フレームが、撮像センサ222などの撮像センサを使用して生成され得る。630において、画像または映像フレームは、画像分析回路214などを使用して分析することができ、手術部位における第1の標的(例えば、組織)においての熱蓄積の度合いが所定の閾値を超えるかどうかを決定するために使用される。例では、熱蓄積の度合いの決定は、組織白色化(組織の色の明るくなること)が、画像または映像フレーム、および検出された組織白色化の度合いにおいて検出され得る。例では、異なる時間に撮られた画像または映像フレームは、画像または映像フレームにおける登録された場所においての1つ以上の色成分(例えば、RGB値)の強度における変化を特定するために、互いと比較され得る。組織部位に対応する登録された場所は、使用者によって特定することができる。例では、1つ以上の色成分の強度が、「白」色(RGB(255、255、255))または所定の「白化された」色(例えば、RGB(240、240、240))についてのそれぞれの閾値値(RGBTH)と比較され得る。1つ以上の色成分の強度の値(例えば、0から255まで)が、特定のマージン(例えば、(240~255、240~255、240~255)の範囲内のRGB値)内の「白」色に十分に近い場合、630において、組織白色化が検出されたと見なされる。いくつかの例では、映像フレームのフレームごとの比較、または、連続的にキャプチャされた画像の比較が、画像または映像フレームにおける登録された場所においての「白」色(RGB(255、255、255))または所定の「白化された」色に向けて色強度変化速さを決定するために使用され得る。色強度変化速さが速さ閾値を超える場合、組織白色化と見なされる。このように検出された組織白色化は、手術部位における組織においての熱蓄積の度合いが、RGBTHまたは閾値色強度変化速さに対応する閾値を超えることを指示している。
【0101】
いくつかの例では、組織白色化の指示を検出することに加えて、組織白色化の度合いおよび/または組織白色化の速さが630において決定され得る。組織白色化の度合いは、時間t(RGB)において撮られた画像または映像フレームの色成分の強度の値(例えば、RGB値)と、「白」色または所定の「白化された」色を表す色成分についての閾値値RGBTHとの間の差、つまり、ΔRGB=RGB-RGBTHに基づいて決定できる。より小さいΔRGB値は、組織白色化のより高い度合いを指示し、したがって、手術部位におけるより高い温度、および、組織熱損傷のより高い危険性を指示する。組織白色化の速さΔRGB/Δtは、単位時間における「白」色または所定の「白化された」色に向けての色強度変化の量を表す。より高い組織白色化速さΔRGB/Δtは、手術部位におけるより早い熱蓄積を指示し、延いては、組織熱損傷のより高い危険性を指示する。
【0102】
例では、照準ビームが、画像または映像フレームにおける登録された場所においての組織白色化を特定するのを支援するために使用され得る。第2のレーザ源234または他の光源によって生成されるものなど、照準ビームは、標的が照らされるときに放出されてもよい。照準ビームは、図4に示されているように、手術部位の照らされた背景から区別するために、はっきりと異なる色(おおよそ520nmの範囲における緑色の光、または、おおよそ620nmの範囲における赤色)を有し得る。手術部位において組織に入射する照準ビームが、撮像センサの視野の中にあるとき、撮像センサによってキャプチャさせることができる。照準ビームのフットプリントが、手術部位の画像または映像フレームから特定され得る。色付けされた(例えば、緑色)の照準ビームが使用されるとき、照準ビームフットプリントは、画像または映像フレームにおいても緑色で示され得る。図4を参照して先に記載されているように、組織が「白化」になるとき、「白化された」組織に入射する色付き(例えば、緑色または赤色)の照準ビームは、「非白色化」の組織においてより、画像または映像フレームにおいてより輝いて現れることができる。組織白色化は、照準ビームのフットプリントまたはその近傍における画像または映像フレームの一部分から検出できる。組織白色化の度合いΔRGB、または組織白色化速さΔRGB/Δtも、照準ビームフットプリントまたはその近傍における色強度における増加に基づいて決定することができる。
【0103】
640において、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータが、制御回路218または制御回路318を使用して、画像または映像フレームから検出される組織白色化など、手術部位における第1の標的においての熱蓄積の度合いに少なくとも部分的に基づいて調整され得る。少なくとも1つの動作パラメータを調整することによって、手術部位における所望の温度など、所望の手術部位の状態が処置の間に維持され得る。所望の手術部位の状態(例えば、温度)を維持することは、手術部位におけるレーザで誘発される過熱による潜在的な組織の熱損傷を回避する一方で、手術部位における治療効果(例えば、結石の標的のアブレーションまたは断片化)を達成または維持するのを助けることができる。少なくとも1つの動作パラメータの調整は、内視鏡外科システムの様々なデバイスに電気的に連結される、例えば制御回路218または制御回路318などによって、自動的に実行され得る。代替で、特定された組織白色化は、ユーザインターフェースデバイス250などを介して使用者に提示され得る。使用者は、手術部位における温度上昇について警告され得る、および、レーザ出力または他のシステムパラメータを調整するなど、適切な防止活動を取るように推奨され得る。
【0104】
様々な温度制御手段が、図2および図3を参照して先に記載されているように、数ある中でも、例えば、レーザ出力設定または1つ以上のレーザ照射パラメータを変更すること、光学経路(例えば、レーザファイバ)の遠位部分の位置または配向を調整すること、手術部位への灌漑流れおよび/または手術部位から離れる吸引流れを作動または調整すること、あるいは、手術部位へと適用される前に灌注液の温度を変更すること、を含め、試みられ得る。いくつかの例では、手術部位の温度は温度管理計画に従って制御され得る。温度管理計画は、先に記載されている2つ以上の温度制御の優先順位の付けられた順番を含むことができる。温度管理計画は、ユーザインターフェースデバイス250を介してなど、使用者によってプログラムまたは改良させることができる。温度制御手段の順番は、利用可能性(例えば、灌注液冷却システム)、温度制御の効率、または、手術部位における潜在的な悪影響に基づいて決定され得る。いくつかの例では、(例えば、レーザ出力設定、灌漑流れ速さおよび/もしくは吸引流れ速さ、または灌注液温度制御などを調整することによる)パラメータ調整の積極性が、組織白色化の度合いΔRGB、または組織白色化の速さΔRGB/Δtに基づいて決定され得る。例えば、組織白色化のより高い度合い、またはより高い速さの組織白色化速さ(つまり、より速い組織白色化)が検出される場合、制御回路218は、手術部位の温度を制御下にするために、1つ以上のシステムパラメータのより積極的な調整(例えば、レーザ出力におけるより大きな低減、より高い灌漑流れ速さおよび/もしくはより高い吸引流れ速さ、または、手術部位へと流れる前の灌注液のより大きな冷却)を提供することができる。
【0105】
図7Aは、例えば手術部位の白色化および圧力を含め、手術部位の状態に基づいてこのような温度管理計画を生成する例の方法を示す流れ図である。温度管理計画は、先に記載されているような2つ以上の温度制御の優先順位の付けられた順番を含むことができる。701において、630において特定された組織白色化は、速さ閾値を超える組織白色化の閾値または速さ未満になる組織白色化の度合いΔRGBなど、組織白色化の基準に対して評価され得る。702において、圧力センサ224を使用してなど、圧力が手術部位において感知され得る。703において、測定された手術部位の圧力Pが、最大許容可能圧力とも称される所定の圧力上限Pmax、または使用者が指定した圧力上限Pmaxと比較され得る。704において温度管理計画が、701における温度確認と、703における圧力確認と、に基づいて決定され得る。温度制御手段の利用可能性(例えば、灌注液冷却システム)および効率、または、手術部位への潜在的な悪影響が、患者についての個別の温度管理計画を決定するために考慮されてもよい。温度管理計画は、数ある中でも、例えば、レーザ出力設定または1つ以上のレーザ照射パラメータを変更すること、光学経路(例えば、レーザファイバ)の遠位部分の位置または配向を調整すること、手術部位への灌漑流れおよび/または手術部位から離れる吸引流れを作動または調整すること、あるいは、手術部位へと適用される前に灌注液の温度を変更すること、を含め、先に記載されているような2つ以上の温度制御手段の優先順位の付けられた順番を含み得る。図7Aに示されているような例では、将来の手術部位の温度の温度傾向または予測が、701において温度調整基準を満たすとき、レーザ出力設定を調整することと、灌漑または吸引の流れを調整することと、の間の優先付けの順番は、手術部位の圧力Pが705における圧力上限Pmaxに実質的に近いレベルに到達しているどうかに少なくとも部分的に基づき得る。手術部位の圧力Pが実質的にPmax未満である場合(例えば、PとPmaxとの間の差が閾値を超える場合)、灌漑流れ速さが706において増加させられ得る。手術部位の圧力Pが実質的にPmaxに近い場合(例えば、±10%など、Pmaxの使用者が指定したマージン内または所定のマージン内である場合)、温度制御手段の優先付けは、吸引流れを増加させるための選択肢が707において利用可能であるかどうかに基づいて決定され得る。吸引流れが利用可能ではない場合、または使用者によって作動させられない場合、708においてレーザ出力を低下させることなどによって、レーザ出力設定が調整され得る。しかしながら、707において、吸引流れが利用可能であり、使用者によって作動させられる場合、709において吸引流れ速さが増加させられ得る。ステップ706、708、および709のいずれかにおける温度制御動作に続いて、他の温度制御手段がオンデマンドモードで試みられてもよい(例えば、使用者によって作動させられる)。手術部位の温度の監視は、620において続けられ得る。
【0106】
図7Bは、手術部位の温度を制御するための優先順位付け手段による温度管理計画の例を示す流れ図であり、これは、手術部位において実質的に所望の温度を達成または維持するために、内視鏡外科システムと関連付けられる少なくとも1つの動作パラメータを調整するステップ640の実施形態であり得る。710において、630において特定された組織白色化は、速さ閾値を超える組織白色化の閾値または速さ未満になる組織白色化の度合いΔRGBなど、組織白色化の基準に対して評価され得る。基準が710において満たされない場合、手術部位の温度は通常と見なされ、パラメータは調整されず、手術部位の温度の監視が620において続けられ得る。基準が710において満たされる場合、手術部位へと流れる前に灌注液を冷却するための選択肢が720において提供される。灌注液冷却の選択肢が利用可能であり、(例えば、使用者によって)選択される場合、722において、灌注液は、冷却システム(例えば、灌注液処理ユニット342に含まれる放射器またはインライン冷却器)を用いて、または、異なる温度の少なくとも2つの灌注液供給源を混合することなどで、手術部位に到達する前に冷却され得る。冷却された灌漑は、手術部位において対流の熱伝達を向上させるために、手術部位に適用され得る。手術部位の温度の監視は、620において続けられ得る。
【0107】
灌注液冷却の選択肢が利用可能でない場合、または720において選択されない場合、灌漑および/または吸引システム(灌漑および/もしくは吸引システム240、または灌漑および/もしくは吸引システム340など)を使用する選択肢が、730において提供される。図2および図3を参照して先に検討されているように、灌漑および/または吸引システムは、手術部位への灌漑流入および/または手術部位からの流体の吸引流れ(流出)を提供することができる。処置の間の組織破片、石断片、および他の望ましくない物質の除去を支援することに加えて、灌漑流れおよび吸引流れは、手術部位またはその近くにおける組織への冷却効果も有する。730において、灌漑および/または吸引の選択肢が利用可能でない場合、または(例えば、使用者によって)選択されない場合、レーザ出力設定は732において調整され得る。例えば、レーザパルスの平均出力は、レーザパルスのパルス幅、レーザパルスのピーク出力、または、単位時間当たりのレーザパルスの数を表すパルス周波数のうちの1つ以上を減らすことなどで、低減することができる。レーザパルスの平均出力を低減することは、手術部位またはその近くにおけるレーザで誘発される加熱効果を低減することができ、それによって、組織の熱損傷を防止し、処置の間の患者の安全性を向上させることができる。1つ以上のレーザ照射パラメータを含め、レーザ出力設定の調整の量(積極性)は、組織白色化の度合いまたは組織白色化の速さに応じることができる。例では、732において調整されるレーザ照射パラメータは、特定の時間内でのレーザパルスのタイミングまたは時間分布を表すパルスシーケンシングパラメータを含み得る。図5Aおよび図5Cを参照して先に記載されているように、レーザの一定のパルスシーケンシングは、レーザで誘発された蒸発による泡が組織の壁との一定の接触の点へと平衡状態で進むのを容易にする可能性がある。このような平衡状態の下で、同じ組織領域に向かう泡の予測可能な乱流は、組織領域に常に当たり、熱蓄積を引き起こす可能性がある。図5Bおよび図5Dを参照して先に記載されているように、レーザパルスシーケンシングを調整することは、幅広い範囲の組織領域にわたって泡を再分配するのを助けることができ、泡が平衡状態で進み、組織の同じ領域に当たり続けるのを防止することができる。流れの非平衡状態は、蒸発による泡の崩壊を促進し、蒸発による泡の数および大きさを低減することもでき、それによって手術部位の温度を低下させ、組織の熱損傷を防止する。
【0108】
1つ以上のレーザ照射パラメータを含め、レーザ出力設定を調整することの追加または代替で、いくつかの例では、手術部位における解剖学的標的に対する光学経路の遠位部分の位置または配向が、光学経路334の遠位端336の位置または配向を調整するために、アクチュエータ338を介してなど、調整することができる。位置または配向は、ファイバ-標的距離を増加させることで、および/または、照準角度を増加させることで、手術部位に入射するレーザエネルギーの密度と、手術部位へと伝わるレーザで誘発された熱と、を減少させるように調整することができる。手術部位の温度の監視は、620において続けられ得る。
【0109】
灌漑および/または吸引の選択肢が利用可能であり、730において選択される場合、740において、圧力センサ224を用いてなどで、圧力が手術部位において感知され得る。手術部位における感知された圧力(P)に依存して、灌漑流れまたは吸引流れの一方または両方が、手術部位の温度における温度制御を達成するために選択的に作動または調整され得る。750において、測定された手術部位の圧力が、所定の圧力上限Pmax、または使用者が指定した圧力上限Pmaxと比較される。測定された手術部位の圧力がPmaxを超える場合(P>Pmax)、752において、手術部位の温度を低下させるために、吸引流れ速さだけが増加させられる(灌漑流れ速さは増加させられない)。追加または代替で、灌漑流れ速さは、手術部位において圧力を下降させるために減少させられ得る。手術部位への灌漑流れにおける増加は、手術部位またはその近くにおいて正の圧力変化を誘導する可能性があるため、灌漑流れにおけるさらなる増加は、手術部位の圧力のさらなる上昇を防止するために回避されるべきである。測定された手術部位の圧力がPmaxより小さい場合、測定された手術部位の圧力は、760において、所定の圧力下限Pminまたは使用者が指定した圧力下限Pminとさらに比較され得る。測定された手術部位の圧力がPminおよびPmaxによって定められる範囲内にある場合(Pmin<P<Pmax)、770において、灌漑流れ速さまたは吸引流れ速さの一方または両方が、手術部位の温度を低下させるために増加させられ得る。しかしながら、560において、測定された手術部位の圧力が圧力下限Pmin未満に低下する場合(P<Pmin)、762において、手術部位の温度を低下させるが、吸引流れを増加させることを回避して手術部位の圧力におけるさらなる低下を防止するために、手術部位への灌漑流れ速さだけが増加させられる(吸引流れ速さは増加させられない)。追加または代替で、吸引流れ速さは、手術部位において圧力を上昇させるために減少させられ得る。吸引流れにおける増加は、手術部位またはその近くにおいて負の圧力変化を誘導する可能性があるため、吸引流れにおけるさらなる増加は、手術部位の圧力のさらなる下降を防止するために回避されるべきである。752、762、または770における灌漑または吸引の流れの調整の後、手術部位の温度の監視は、620において続けられ得る。
【0110】
図8は、本明細書で検討されている技術(例えば、方法論)のうちの任意の1つ以上が実施され得る例の機械800のブロック図を概して示している。この記載の一部分は、内視鏡外科システム200または内視鏡外科システム300の様々な部分の計算フレームワークに当てはめることができる。
【0111】
代替の実施形態において、機械800は、スタンドアローンのデバイスとして動作し得る、または、他の機械に接続され得る(例えば、ネットワークでつながれ得る)。ネットワークでの展開では、機械800は、サーバ-クライアントネットワークの環境において、サーバマシン、クライアントマシン、または、両方の能力で動作することができる。例では、機械800は、ピアツーピア(P2P)(または他の分配された)ネットワーク環境において、ピアマシンとして作動することができる。機械800は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ウェブアプライアンス、ネットワークルータ、スイッチもしくはブリッジ、または、そのマシンによって取られる行動を明示する命令(順次または他のもの)を実行することができる任意のマシンであり得る。さらに、単一の機械だけが示されているが、「機械」という用語は、クラウドコンピューティング、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、他のコンピュータクラスタ構成など、本明細書で検討されているような方法論のうちの任意の1つまたは複数を実施するために、命令のセット(または複数のセット)を個別または一緒に実行するマシンの任意の集まりを含むように解釈されるものである。
【0112】
本明細書に記載されているような例は、論理的もしくはいくつかの構成要素、または機構を含み得る、またはそれらによって動作することができる。回路セットは、ハードウェア(例えば、単純回路、ゲート、論理回路など)を含む有形物で実施される回路の集まりである。回路セットの構成要素は、時間に対して、および、基本となるハードウェアの多様性に対して、柔軟であり得る。回路セットは、動作するときに特定の動作を単独または組み合わせで実施することができる構成要素を含み得る。例では、回路セットのハードウェアは、特定の動作を実行するように不変に設計され得る(例えば、ハードウェアにより実現され得る)。例では、回路セットのハードウェアは、特定の動作の命令を符号化するために物理的に変更される(例えば、磁気的に、電気的に、不変質量粒子の移動可能な配置など)コンピュータ読み取り可能媒体を含む可変的に接続される物理要素(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単純回路など)を備え得る。物理的な構成要素を接続するとき、ハードウェア構成要素の基本の電気特性が、例えば絶縁体から導体へと、またはその反対で、変更される。命令は、動作しているときに特定の動作の一部分を実行するために、可変接続を介してハードウェアにおける回路セットの部材を作り出すための埋め込まれたハードウェア(例えば、実行ユニットまたはローディング機構)を可能にする。したがって、コンピュータ読み取り可能媒体は、デバイスが動作しているとき、回路セット部材の他の構成要素に通信可能に連結される。例では、物理的構成要素のいずれかが、2つ以上の回路セットの2つ以上の部材で使用されてもよい。例えば、動作中、実行ユニットは、時間における一点において第1の回路セットの第1の回路で使用されてもよく、異なる時間において、第1の回路セットにおける第2の回路によって、または、第2の回路セットにおける第3の回路によって再使用されてもよい。
【0113】
機械(例えば、コンピュータシステム)800は、ハードウェア処理装置802(例えば、中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理装置(GPU)、ハードウェアプロセッサコア、またはそれらの任意の組み合わせ)と、主記憶装置804と、スタティックメモリ806と、を備えることができ、それらのいくつかまたは全部が、インターリンク(例えば、バス)808を介して互いと通信し得る。機械800は、表示ユニット810(例えば、ラスタ表示、ベクタ表示、ホログラフィック表示など)と、英数字入力デバイス812(例えば、キーボード)と、ユーザインターフェース(UI)誘導デバイス814(例えば、マウス)と、をさらに備え得る。例では、表示ユニット810、入力デバイス812、およびUI誘導デバイス814は、タッチスクリーン表示装置であり得る。機械800は、保存デバイス(例えば、ドライブユニット)816と、信号生成デバイス818(例えば、スピーカ)と、ネットワークインターフェースデバイス820と、グローバルポジショニングシステム(GPS)センサ、コンパス、加速度計、または他のセンサなどの1つ以上のセンサ821と、を追加的に備え得る。機械800は、1つ以上の周辺デバイス(例えば、プリンタ、カード読み取り装置など)と通信または制御するために、シリアル(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、パラレル、または他の有線もしくは無線(例えば、赤外線(IR)、近距離無線通信(NFC)など)の接続など、出力制御装置828を備え得る。
【0114】
保存デバイス816は、本明細書に記載されている技術または機能のうちのいずれかの1つ以上を具現化する、またはそれによって利用されるデータ構造または命令824(例えば、ソフトウェア)の1つ以上のセットが保存される機械読み取り可能媒体822を備え得る。命令824は、機械800によるその実行の間、主記憶装置804、スタティックメモリ806、またはハードウェア処理装置802の中に完全に、または少なくとも部分的に存在してもよい。例では、ハードウェア処理装置802、主記憶装置804、スタティックメモリ806、または保存デバイス816の1つまたは任意の組み合わせが、機械読み取り可能媒体を構成し得る。
【0115】
機械読み取り可能媒体822は単一の媒体として示されているが、「機械読み取り可能媒体」という用語は、1つ以上の命令824を保存するように構成される単一の媒体以上の媒体(例えば、集中もしくは分散のデータベース、および/または、関連するキャッシュもしくはサーバ)を備え得る。
【0116】
「機械読み取り可能媒体」という用語は、機械800による実行のための命令を保存、符号化、または担持することができる任意の媒体であって、機械800に本開示の技術のうちのいずれか1つ以上を実施させるか、または、このような命令によって使用される、もしくはこのような命令と関連付けられるデータ構造を保存、符号化、もしくは担持することができる任意の媒体を備え得る。非限定的な機械読み取り可能媒体の例には、ソリッドステートメモリ、光学媒体、および磁気媒体があり得る。例では、質量機械読み取り可能媒体は、不変(例えば、静止)質量を有する複数の粒子を伴う読み取り可能媒体を備える。したがって、質量機械読み取り可能媒体は一時的な伝播信号ではない。質量機械読み取り可能媒体の具体的な例には、半導体メモリデバイス(例えば、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM))、およびフラッシュメモリデバイスなどの不揮発性メモリや、内蔵ハードディスクやリムーバブルディスクなどの磁気ディスクや、光磁気ディスクや、CD-ROMおよびDVD-ROMディスクがあり得る。
【0117】
命令824は、さらに、いくつかの転送プロトコル(例えば、フレームリレー、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、ハイパテキスト転送プロトコル(HTTP)など)のうちのいずれか1つを利用するネットワークインターフェースデバイス820を介して、伝送媒体を使用する通信ネットワーク826にわたって伝送または受信され得る。例の通信ネットワークには、数ある中でも、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、パケットデータネットワーク(例えば、インターネット)、携帯電話ネットワーク(例えば、セルラネットワーク)、プレインオールドテレフォン(POTS)ネットワーク、および無線データネットワーク(例えば、無線データネットワーク)、WiFi(登録商標)として知られている電気電子学会(IEEE)802.11の規格群、WiMax(登録商標)として知られているIEEE 802.16の規格群)、IEEE 802.15.4の規格群、ピアツーピア(P2P)ネットワークがあり得る。例では、ネットワークインターフェースデバイス820は、1つ以上の物理的ジャック(例えば、イーサネットジャック、同軸ジャック、または電話用ジャック)、または、通信ネットワーク826に接続するための1つ以上のアンテナを備え得る。例では、ネットワークインターフェースデバイス820は、単入力多出力(SIMO)技術、多入力多出力(MIMO)技術、または多入力単出力(MISO)技術のうちの少なくとも1つを用いて無線通信するために、複数のアンテナを備え得る。「伝送媒体」という用語は、機械800による実行のための命令を保存、符号化、または担持することができる任意の無形媒体を含むように解釈され、このようなソフトウェアの通信を容易にするために、デジタルまたはアナログの通信の信号または他の無形媒体を含む。
【0118】
追加の注記
上記の詳細な記載は、詳細な記載の一部を形成し得る添付の図面への参照を含む。図面は、例示を用いて、本発明が実施され得る特定の実施形態を示している。これらの実施形態も、本明細書では「例」として参照されている。これらの例は、図示または記載されているものに加えて、要素を含む可能性がある。しかしながら、本発明者は、図示または記載されている要素だけが設けられている例も検討している。さらに、本発明者は、具体的な例(または、それらの1つ以上の態様)、または、本明細書に図示もしくは記載されている他の例(または、それらの1つ以上の態様)のいずれかに関して、図示または記載されている要素(または、それらの1つ以上の態様)の任意の組み合わせまたは並び替えを使用する例も検討している。
【0119】
本書では、「1つ(「a」または「an」)」という用語が、特許文献では一般的であるように、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の任意の他の例または使用から独立して、1つまたは2つ以上を含むように使用されている。本書では、「または、もしくは(or)」という用語が、他に指示されていない場合、「AまたはB」が、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、および「AおよびB」を含むように、非排他的に言及するために使用されている。本書では、「including(~を含む)」および「in which(~では)」という用語は、「comprising(~を備える)」および「wherein(~において)」というそれぞれの用語のプレインイングリッシュの等価として使用されている。また、添付の特許請求の範囲では、「including(~を含む)」および「comprising(~を備える)」という用語はオープンエンドとされており、つまり、特許請求の範囲においてこのような用語の後に列記された要素に加えて要素を含むシステム、デバイス、物品、組成、処方、または過程は、その特許請求の範囲内になおもあると見なされる。さらに、添付の特許請求の範囲において、「第1の~」、「第2の~」、および「第3の~」などの用語は、単にラベルとして使用されており、それらの対象物に数字上の要件を課すようには意図されていない。
【0120】
先の記載は、例示となるように意図されており、限定となるようには意図されていない。例えば、先の記載の例(または、その1つ以上の態様)は、互いと組み合わせて使用できる。他の実施形態が、当業者などによって、先の記載を検討することで使用される可能性がある。要約は、37 C.F.R. §1.72(b)に適合し、読者に本技術の開示の本質を素早く確認させるために提供されている。要約は、特許請求の範囲または意味を解釈または限定するように使用されないという理解で提出されている。また、上記の詳細な記載では、様々な特徴が、本開示を簡素化するために一緒にグループ化される可能性がある。これは、請求されていない開示されている特徴がいずれの請求項にとっても必須であることを意図しているとして解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、具体的な開示されている実施形態のすべての特徴未満のところにあり得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書により、例または実施形態として詳細な記載に組み込まれており、各々の請求項は別の実施形態として自立しており、このような実施形態が、様々な組み合わせまたは並び替えで互いと組み合わせることができることは、検討されている。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、このような特許請求の範囲に与えられるのと等価の完全な範囲と共に決定されるべきである。
【符号の説明】
【0121】
100 レーザエネルギー送達システム
101 フィードバック制御システム
102 第1のレーザシステム
104 第2のレーザシステム
106 第1のレーザ源
108 第1の光学経路
110 第1の出力
116 第2のレーザ源
118 第2の光学経路
120 第2の出力
122 手術部位
130 フィードバック信号
200 内視鏡外科システム
210 フィードバック制御システム
212 フィードバック分析装置
214 画像分析回路
216 組織白色化検出回路
218 制御回路
220 センサ
222 撮像センサ、画像センサ
224 圧力センサ
230 レーザシステム
232 第1のレーザ源
234 第2のレーザ源
240 灌漑および/または吸引システム
250 ユーザインターフェースデバイス
252 出力/表示ユニット
254 入力ユニット
300 内視鏡レーザ砕石術システム
301 内視鏡
310 フィードバック制御システム
312 フィードバック分析装置
318 制御回路
324 照明光源
325 カメラ、撮像デバイス
332 レーザ源
334 光学経路
336 遠位端
338 アクチュエータ
340 灌漑および/または吸引システム
342 灌注液処理ユニット
344 灌漑および/または吸引通路
346 遠位端
350 照明光学経路
360 視覚化光学経路
370 照明光
410 内視鏡画像
412 照準ビームフットプリント
413 遠位先端
501 遠位端
502 組織
510 第1のパルスプロフィール
512 第1のパルスプロフィール510のパルス
520 第2のパルスプロフィール
522 第2のパルスプロフィール520のレーザパルス
530 予測可能で定常的な乱流
532 蒸発による泡
540 予測不可能な灌漑流れ
542 蒸発による泡
800 機械
802 ハードウェア処理装置
804 主記憶装置
806 スタティックメモリ
808 インタリング
810 表示ユニット
812 英数字入力デバイス
814 ユーザインターフェース(UI)誘導デバイス
816 保存デバイス
818 信号生成デバイス
820 ネットワークインターフェースデバイス
821 センサ
822 機械読み取り可能媒体
824 データ構造、命令
826 通信ネットワーク
828 出力制御装置
A 組織部位、組織領域
T 時間期間
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8
【外国語明細書】