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  • 特開-超純水製造装置とその水質管理方法 図1
  • 特開-超純水製造装置とその水質管理方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014871
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】超純水製造装置とその水質管理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240125BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20240125BHJP
   B01D 61/18 20060101ALI20240125BHJP
   G01N 1/40 20060101ALI20240125BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20240125BHJP
   G01N 27/62 20210101ALN20240125BHJP
【FI】
C02F1/44 J
C02F1/42 B
B01D61/18
G01N1/40
G01N33/18 C
G01N27/62 V
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023162449
(22)【出願日】2023-09-26
(62)【分割の表示】P 2019212249の分割
【原出願日】2019-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】津田 晃彦
(57)【要約】
【課題】ユースポイントにおいて超純水の金属濃度が要求仕様を満足しなくなった際に、
その原因となる異常の発生箇所を特定することが容易な超純水製造装置の水質管理方法を
提供する。
【解決手段】一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜
装置に接続され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水
送液ラインから分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水
製造装置の水質管理方法であって、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置
の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、お
よび前記返送ラインを流れる水の金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析工程を
含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続
され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ライン
から分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置の
水質管理方法であって、
前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液
ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水の
金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析工程を含むことを特徴とする、水質管理
方法。
【請求項2】
前記超純水製造装置が、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側
であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、及び前記返
送ラインを流れる水をそれぞれサンプリングするサンプリングラインを有し、
前記サンプリングラインがいずれも、少なくとも接液部が非金属製であるバルブを備え
る、請求項1に記載の水質管理方法。
【請求項3】
前記分析工程で分析する金属が、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、Zn、N
i、CrおよびPbからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に
記載の水質管理方法。
【請求項4】
前記分析工程で分析する金属の少なくとも1種について、前記超純水の金属濃度が1n
g/L以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水質管理方法。
【請求項5】
前記分析工程で分析する金属の少なくとも1種について、金属濃度の定量下限値が0.
1ng/L以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水質管理方法。
【請求項6】
前記定量下限値が0.01ng/L以下である、請求項5に記載の水質管理方法。
【請求項7】
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続
され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ライン
から分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置で
あって、
さらに、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超
純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流
れる水の金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析手段を含むことを特徴とする、
超純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置とその水質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおけるシリコンウエハの洗浄用水など、多くの用途に、不純物が
高度に除去された超純水が用いられている。超純水は、一般に、原水(工業用水、市水、
井水等)を、必要に応じて前処理システムで処理し、そして一次純水システムおよび二次
純水システム(サブシステム)で順次処理することにより製造する。
【0003】
特許文献1には、超純水製造装置において、超純水を使用点(ユースポイント)に供給
するための供給ラインに、サンプリング用分岐ラインを設け、そこから超純水をサンプリ
ングし水質を確認することが記載される。この分岐ラインには、接液部がフッ素樹脂で構
成されたバルブが設けられる。特許文献2には、ユースポイントに供給される超純水の分
析のための試料を、バルブに起因する汚染を生じさせずに採取するために、金属製のバル
ブの接液部に金属溶出を低減する表面処理を施すことが開示される。特許文献3には、超
純水中の不純物の濃度の分析を連続的に行って、流体中の濃度変化等を精度良く監視でき
るようにした不純物濃度分析方法が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-105349号公報
【特許文献2】特開2008-128375号公報
【特許文献3】特開2001-153855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの文献に開示されるように、超純水製造装置における水質管理のために、製造し
た超純水の不純物濃度を測定する。しかし、製造した超純水の水質を管理するだけでは、
ユースポイントにおいて不純物濃度が要求仕様を満足しなくなった際に、その原因となる
異常の発生箇所を特定することが容易ではない。特に、超純水中の金属濃度に関しては、
要求仕様がいっそう厳しくなりつつあり、金属濃度が要求仕様を満足しなくなった場合に
異常の発生箇所を容易に特定する技術に対するニーズが高まっている。
【0006】
本発明の目的は、ユースポイントにおいて超純水の金属濃度が要求仕様を満足しなくな
った際に、その原因となる異常の発生箇所を特定することが容易な超純水製造装置および
その水質管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続
され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ライン
から分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置の
水質管理方法であって、
前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液
ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水の
金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析工程を含むことを特徴とする、水質管理
方法が提供される。
【0008】
本発明の別の態様によれば、
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続
され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ライン
から分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置で
あって、
さらに、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超
純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流
れる水の金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析手段を含むことを特徴とする、
超純水製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユースポイントにおいて超純水の金属濃度が要求仕様を満足しなくな
った際に、その原因となる異常の発生箇所を特定することが容易な超純水製造装置および
その水質管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】超純水製造装置の概略構成例を示すプロセスフローダイアグラムである。
図2】参考例で用いた試験装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれによって限定され
るものではない。なお、本明細書において、特に断りの無い限り、用語「上流」「下流」
はそれぞれ、被処理水の流れ方向についての上流および下流を意味する。
【0012】
図1に、本発明の一態様に係る超純水製造装置1の概略構成例を示す。超純水製造装置
1は、一次純水タンク2と、紫外線酸化装置3と、イオン交換装置4と、限外ろ過膜装置
5と、を有している。これらは、超純水製造装置の二次純水システム(サブシステム)を
構成し、一次純水システム(図示せず)で製造された一次純水をこの順に処理して超純水
を製造し、超純水をユースポイントに供給する。超純水の抵抗率(25℃)は例えば15
MΩ・cm超であり、場合によっては18MΩ・cm超である。一次純水の抵抗率は、超
純水の抵抗率よりも低く、例えば0.1~15MΩ・cmである。
【0013】
一次純水タンク2には、ラインL1を経て一次純水システムから一次純水が適宜供給さ
れ、一次純水が被処理水として貯留される。一次純水タンク2と紫外線酸化装置3とを接
続するラインL2を経て、一次純水タンク2に貯留された被処理水が紫外線酸化装置3に
供給される。ここで被処理水に紫外線が照射され、被処理水中の有機物が分解される。紫
外線酸化装置3とイオン交換装置4とを接続するラインL3を経て、紫外線酸化装置3か
ら抜き出された被処理水がイオン交換装置4に供給される。ここで被処理水中の金属イオ
ンなどがイオン交換処理により除去される。イオン交換装置4と限外ろ過膜装置5とを接
続するラインL4を経て、イオン交換装置4から抜き出された被処理水(イオン交換装置
4の出口の水)が限外ろ過膜装置5に供給される。ここで被処理水中の微粒子が除去され
る。限外ろ過膜装置5から、限外ろ過膜を透過した被処理水(限外ろ過膜装置出口水)が
、超純水としてラインL5に抜き出される。ラインL5は、ユースポイントに向けて超純
水を送液する超純水送液ラインであり、限外ろ過膜装置5の透過水出口とユースポイント
とを接続する。図示しないが、限外ろ過膜装置5から、濃縮水(限外ろ過膜を透過しなか
った被処理水)を排出することができる。
【0014】
超純水送液ラインL5から、分岐点9において、超純水の一部を一次純水タンクに戻す
返送ラインL6が分岐する。ラインL6は一次純水タンク2に接続される。超純水送液ラ
インL5の分岐点9より上流側を流れる水のうちの一部がユースポイントに供給され、残
余の部分が返送ラインL6を経て一次純水タンク2に還流する。
【0015】
必要に応じて、図1に示す機器以外の機器を用いることもできる。例えば、被処理水を
送液するためのポンプ、および被処理水の温度調節のための熱交換器を、一次純水タンク
2と紫外線酸化装置3との間(ラインL2)に設けることができる。さらに、イオン交換
装置4と限外ろ過膜装置5との間(ラインL4)に、酸素を除去する膜脱気装置を設ける
こともできる。
【0016】
前処理システム、一次純水システムおよび二次純水システムを含めて超純水製造装置を
構成する各機器には、超純水製造の分野で公知の機器を適宜利用することができる。例え
ばイオン交換装置4として、非再生型混床式イオン交換樹脂塔(カートリッジポリッシャ
ー)を用いることができる。限外ろ過膜装置5は、例えば、ハウジング中に適宜の中空糸
膜モジュールを備える。なお、例えばラインL4、L5、L6には、金属の溶出を防止す
るために、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの非金属
材料(樹脂)を使用することができる。
【0017】
分岐点6において、ラインL4からサンプリングラインL11が分岐する。分岐点7に
おいて、ラインL5からサンプリングラインL12が分岐する。分岐点7は、分岐点9よ
りも上流側に位置する。分岐点8において、ラインL6からサンプリングラインL13が
分岐する。サンプリングラインL11、L12およびL13に、それぞれイオン交換装置
出口水、限外ろ過膜装置5の下流側であって超純水送液ラインL5の分岐点9より上流側
を流れる水(限外ろ過膜装置出口水)および返送ラインを流れる水の金属分析用試料がサ
ンプリングされる。例えば、ラインL4に膜脱気装置を設ける場合、分岐点6の下流に膜
脱気装置を設けることができる。この場合、膜脱気装置の下流、かつ限外ろ過膜装置5の
上流に、別途サンプリングラインを設けて、金属分析を行うことができる。これによって
、膜脱気装置からの汚れと限外ろ過膜からの汚れを分離して評価可能となる。
【0018】
サンプリングラインL11、L12およびL13にはそれぞれ、弁11、12および1
3が設けられ、また分析手段14、15および16が弁11、12および13の下流側に
接続される。弁11、12および13として、開閉弁を用いることができる。これらの弁
は、サンプリング時に開とし、サンプリングを行わない際には閉とすることができる。
【0019】
分析手段14、15および16は、イオン交換装置出口水、超純水送液ラインの返送ラ
インの分岐点より上流側を流れる水(限外ろ過膜装置出口水)および返送ラインを流れる
水の金属濃度をそれぞれ分析する分析工程で使用される。分析工程で分析する金属は、特
に限定しないが、例えばNa、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、Zn、Ni、Cr、
およびPbからなる群から選ばれる1種または2種以上である。例えば、NaおよびCa
はイオン交換樹脂から、Al、Cr、Fe、NiおよびCuは金属製部材から、Znは限
外ろ過膜から、溶出する可能性がある。
【0020】
例えば、分析工程で分析する金属の少なくとも1種について、典型的には分析工程で分
析する全ての金属について、超純水の金属濃度(正常値)は1ng/L以下である。した
がって、金属濃度異常の的確な検知の観点から、分析工程の金属濃度の定量下限値は、0
.1ng/L以下が好ましく、0.01ng/L以下がより好ましい。また、分析工程に
おける金属濃度の定量下限値が1pg/L程度であれば、1ng/Lの1/1000のレ
ベルまで金属濃度を定量分析できる。したがって、分析工程の金属濃度の定量下限値は、
1pg/L以上であってよい。なお、分析工程でただ1種の金属を分析する場合、ここで
いう定量下限値は、その金属の定量下限値を意味する。分析工程で複数種の金属を分析す
る場合、分析する複数種の金属のうちの少なくとも1種について定量下限値が上記範囲に
あることが好ましいが、全ての金属についての定量下限値が上記の範囲にあることがより
好ましい。
【0021】
近年、半導体工場からはng/Lよりさらに低いレベルの水質管理が求められている。
また、IRDS(International Technology Roadmap
for Semiconductors)によると超純水中の金属要求水質は1ng/
Lであるが、実際には、要求水質の1/1000のレベルの分析を行う必要がある場合も
ある。微量の金属をより正確に定量分析するためには、サンプル水中に弁から金属が溶出
することを防止することが好ましい。そのため、サンプリングラインに設けられる弁11
、12および13の少なくとも接液部が非金属製であることが好ましく、これらの弁の全
体が非金属製であることがより好ましい。弁に用いる非金属材料は、典型的には樹脂、特
にはフッ素樹脂である。フッ素樹脂としては、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン
)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカ
ン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂)、PCTFE(三フ
ッ化塩化エチレン)、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)などを使用で
きる。
【0022】
分析工程では、サンプル水中の金属を濃縮したうえで、金属濃度の測定装置、例えば誘
導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いてサンプル水(もしくは濃縮液)中の
金属濃度を測定することができる。その濃縮法としては、例えば、イオン吸着膜によって
サンプル水中の金属を捕捉し、捕捉した金属を酸等の溶離液を用いて溶離する方法を採用
することができる。濃縮法として、イオン吸着膜濃縮法のほかに加熱濃縮法(サンプル水
を加熱して濃縮する)があるが、高倍率でクリーンに濃縮するにはイオン吸着膜濃縮法が
好ましい。濃縮操作の濃縮倍率は、適宜決めることができる。イオン吸着膜に替えて、モ
ノリス状の樹脂からなるイオン交換体を用いてもよい。モノリス状の樹脂からなるイオン
交換体を用いると、イオン交換体にかかる差圧がイオン吸着膜法と比較して小さいため、
高SV(空間速度)でイオン交換体に通水でき、所要時間の短縮が可能である。上記以外
にも、分析工程(濃縮操作を含む)に、超純水中の金属定量分析の分野で公知の方法を適
宜採用することができる。
【0023】
分析手段は、金属濃度の測定装置を含む。濃縮操作を行う場合、分析手段は、さらに濃
縮手段を含む。濃縮手段は、例えば前述のようにイオン吸着膜、あるいはモノリス状の樹
脂からなるイオン交換体を含む。なお、図1では分析手段14、15、16がサンプリン
グラインL11、L12、L13ごとに別個に設けられているが、必ずしもその限りでは
ない。例えば、濃縮手段はサンプリングラインごとに別個に設けて各サンプル水を濃縮し
、それぞれの濃縮液を共用の測定装置で分析することができる。
【0024】
なお、サンプリングラインL11、L12、L13や分析手段14、15、16におい
て、弁11、12および13以外の部材についても、サンプル水に接する部分の材料とし
て、適宜非金属材料(樹脂)を用いることができる。
【0025】
ユースポイントにおいて超純水の金属濃度が要求仕様を満たさなかった場合、すなわち
水質異常があった場合、イオン交換装置出口水、超純水送液ラインL5の分岐点9より上
流側を流れる水(限外ろ過膜装置出口水)および返送ラインを流れる水の金属濃度がそれ
ぞれ要求仕様を満たしているか否かという情報に基づいて、容易に異常発生箇所を特定す
ることができる。図1に示される超純水製造装置について、その具体的な方法の例を以下
に説明する。表1には、ラインL11、L12およびL13のサンプリング水の金属濃度
が「○」(正常)と判断とされるか「×」(異常)と判断されるかによって、ケース分け
した例を示す。ここで各水は正常時に0.1ng/L以下の金属濃度を有し、各水の金属
濃度が0.1ng/L以下の場合に「〇」(正常)、0.1ng/L超の場合に「×」(
異常)と判断するものとする。いずれのケースも、ユースポイントにおいて水の金属濃度
が0.1ng/L超であったものとする。
【0026】
ケース1は、ユースポイントで水質異常があるが、いずれのサンプル水にも異常が認め
られない場合である。この場合、水質異常の原因は、ユースポイントの内部にあると推定
できる。
【0027】
ケース2は、ラインL11およびL12のサンプル水には異常が認められないが、ライ
ンL13のサンプル水に異常が認められた場合である。この場合、水質異常の原因は、分
岐点7から分岐点9までの配管にあると推定できる。
【0028】
ケース3は、ラインL11のサンプル水には異常が認められないが、ラインL12およ
びL13のサンプル水に異常が認められた場合である。この場合、水質異常の原因は、分
岐点7より上流かつ分岐点6より下流、特には限外ろ過膜装置5にあると推定できる。
【0029】
ケース4は、ラインL11、L12およびL13のサンプル水に異常が認められた場合
である。この場合、水質異常の原因は、分岐点6より上流、特にはイオン交換装置4にあ
ると推定できる。
【0030】
【表1】
【0031】
〔参考例〕
以下、サンプリングラインに、金属(SUS316)製の弁を設けた場合と、流体(サ
ンプル水)に接する部分の材質がフッ素樹脂(PFAもしくはPTFE)である非金属製
の弁を設けた場合について、サンプル水を濃縮分析して、サンプル水の金属濃度(金属イ
オン濃度)を調べた例について説明する。図2に示すように、メイン配管20に、分岐管
21を2つ設けた。一方の分岐管に、全体が金属製の開閉弁22を接続し、他方の分岐管
に、全体が非金属性の開閉弁23を接続した。それぞれの弁の出口にコネクタ24をねじ
込み、コネクタにチューブ25を接続した。それぞれのチューブ25に、多孔質イオン吸
着膜を備える濃縮装置26を接続した。上記部材および装置(開閉弁を除く)の少なくと
もサンプル水に接する部分は非金属製とした。
【0032】
開閉弁22および23を開にしてメイン配管20にサンプル水を供給し、濃縮装置26
に備わるイオン吸着膜に約2000Lのサンプル水を通水し、サンプル水中の金属をイオ
ン吸着膜に捕捉した。その後、多摩化学社製の高純度硝酸(商品名:TAMAPURE
AA-100)を希釈した2N硝酸100mlを用いて、イオン吸着膜から金属を溶離し
た。得られた溶離液中の金属量をICP-MSで測定した。濃縮倍率は2000/0.1
=20000倍であるから、溶離液中の金属量(ng)を濃縮倍率で除した値からサンプ
ル水中の金属濃度を求めた。
【0033】
その結果を表2に示す。金属製の開閉弁22を用いた場合と比べて、非金属製の開閉弁
23を用いた場合のほうが、いずれの金属濃度も低かったか、あるいは同等であった。
【0034】
表2によれば、例えばNiについては、金属製の弁による汚染分が約0.03ng/L
ある。したがって、サンプリングラインに金属製の弁を用いた場合、金属分析の分析値が
、この程度の誤差を含む可能性がある。非金属製の弁を用いると、このような誤差を排除
することが容易である。その結果、異常箇所の特定も、より容易となる。また、金属製の
弁を用いると金属が溶出されて超純水の金属濃度を低濃度で評価することが困難になるこ
とがあるが、非金属性の弁を用いることで超純水中の金属濃度を低濃度で評価することが
可能となる。
【0035】
【表2】
【符号の説明】
【0036】
1 超純水製造装置
2 一次純水タンク
3 紫外線酸化装置
4 イオン交換装置
5 限外ろ過膜装置
6、7、8、9 分岐点
11、12、13 弁
14、15、16 分析手段
20 メイン配管
21 分岐管
22 金属製の弁
23 非金属製の弁
24 非金属製コネクタ
25 非金属製チューブ
26 濃縮装置
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ラインから分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置の水質管理方法であって、
前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水の金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析工程を含み、
前記濃縮法は、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水をそれぞれイオン交換体に通水して不純物を捕捉させた後、捕捉させた不純物を溶離液を用いて溶離し、得られた溶離液中の不純物濃度を測定することを特徴とする、水質管理方法。
【請求項2】
前記超純水製造装置が、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、及び前記返送ラインを流れる水をそれぞれサンプリングするサンプリングラインを有し、
前記サンプリングラインがいずれも、少なくとも接液部が非金属製であるバルブを備える、請求項1に記載の水質管理方法。
【請求項3】
前記分析工程で分析する金属が、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、Zn、Ni、CrおよびPbからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の水質管理方法。
【請求項4】
前記分析工程で分析する金属の少なくとも1種について、前記超純水の金属濃度が1ng/L以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水質管理方法。
【請求項5】
前記分析工程で分析する金属の少なくとも1種について、金属濃度の定量下限値が0.1ng/L以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水質管理方法。
【請求項6】
前記定量下限値が0.01ng/L以下である、請求項5に記載の水質管理方法。
【請求項7】
一次純水タンクと、イオン交換装置と、限外ろ過膜装置と、前記限外ろ過膜装置に接続され、ユースポイントに向けて超純水を送液する超純水送液ラインと、超純水送液ラインから分岐して超純水の一部を一次純水タンクに戻す返送ラインとを含む超純水製造装置であって、
さらに、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水の金属濃度をそれぞれ濃縮法を用いて分析する分析手段を含み、
前記濃縮法は、前記イオン交換装置の出口の水、前記限外ろ過膜装置の下流側であって前記超純水送液ラインの返送ラインの分岐点より上流側を流れる水、および前記返送ラインを流れる水をそれぞれイオン交換体に通水して不純物を捕捉させた後、捕捉させた不純物を溶離液を用いて溶離し、得られた溶離液中の不純物濃度を測定することを特徴とする、超純水製造装置。