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特開2024-14876汚損に抵抗する材料およびそれを同定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014876
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】汚損に抵抗する材料およびそれを同定するための方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240125BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240125BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C09D201/00
C09K3/00 112Z
C09D5/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023185454
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2020519062の分割
【原出願日】2018-10-01
(31)【優先権主張番号】62/567,707
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ピー. ショート
(72)【発明者】
【氏名】マックス ビー. カールソン
(57)【要約】
【課題】汚損に抵抗する材料およびそれを同定するための方法の提供。
【解決手段】一般的に、本発明は、使用時に、それらの表面上の汚損に抵抗する、材料を対象とする。そのような材料は、表面上に堆積、またはそれに付着し、その後、表面上で成長し続け、機器およびプロセスの悪化された性能をもたらし得る、汚損物質または化学物質を含有する、所与の流体に暴露される表面を有する、種々のプロセス機器の構成において使用され得る。材料は、具体的には、表面が暴露される流体および表面自体の誘電スペクトルを考慮する方法を使用して選択される。表面および流体の誘電スペクトルが、相対的整合の範囲内で合致される場合、表面上への汚損物質の付着が生じるはずではないことが、予想外に見出されている。いくつかの実施形態では、合致されるべき誘電スペクトルは、固有の屈折率を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料または構成要素表面上の汚損の低減または排除のための方法を対象とする。より具体的には、本発明は、表面が暴露される流体のものに合致または類似する誘電スペクトルを有する、そのような表面のための構成材料の、コーティングまたは材料自体のいずれかとしての同定のための方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
表面の汚損、または所与の表面上への材料の望ましくない堆積は、エネルギーから輸送、薬品の範囲に及ぶ、複数の分野に影響を及ぼす問題である。エネルギーの生産および流通システムは、特に、それらが、例えば、熱を伝達し、化学反応に触媒作用を及ぼし、かつ腐食に耐えるために、それらの機能表面の継続される清潔性に依拠するため、汚損と関連付けられる損害を受けやすい。微粒子汚損または微粒子の表面への付着は、地熱発電所、石油精製所、原子力発電所、化学処理、および海洋システムの殆ど全てにおいて、ある程度存在する。内部パイプ表面の汚損は、構成要素を横断した圧力低下を増加させ、熱伝導効率を低下させ、冷却剤チャネルを完全に閉塞させ、プロセス効率の損失をもたらし、可能性として、構成要素の交換を必要とさせ得る。増加されるエネルギー消費のコスト、低減されるスループット、および汚損と関連付けられる保守を考慮するステップは、2013年単独で150億アメリカドルの費用がかかると推定される、数十億ドルの推定される経済的影響を提示する。
【0003】
テフロン(登録商標)または他の易滑性ポリマーは、それらが殆ど全ての潜在的汚損物質の蓄積に耐えるため、いくつかの状況において、汚損を低減または最小限にさせるために使用され得る。しかしながら、汚損が生じる多くのエネルギーシステムは、過酷すぎる条件で動作し、テフロン(登録商標)または任意の有機材料が、安定したままであることができない。したがって、汚損の問題に対するより一般的な解決策が、必要とされている。具体的には、種々のエネルギーシステムにおけるもの等の過酷な環境における汚損に対する解決策が、必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
初期の汚損または表面上への汚損物質の初期の堆積は、ファンデルワールス力によって引き起こされ得、多くの場合、主力が、エネルギーシステム内での汚損物質の付着を決定する。したがって、そのような力を防止することが、ファンデルワールス力によって引き起こされる汚損物質のいかなる初期の堆積も低減または排除するはずであり、これは、ひいては、低減された汚損または汚損の排除をもたらすであろう。ファンデルワールス力の理論は、汚損されている表面または汚損物質のいずれかの誘電スペクトルと流体のものとの間の厳密な合致を取得または設計することによって、ファンデルワールス力の有意な低減または排除につながるであろうことを示す。当然ながら、所与のシステムに関して、潜在的な汚損物質および流体は、システムによって本質的に固定または決定され、変動することが可能ではない場合がある。言い換えると、汚損物質と流体との組成物は、そもそものシステムの主要目的を犠牲にすることなく、汚損を防止するためのみには変化され得ない。したがって、これが暴露される流体のものに合致または近似する誘電スペクトルを伴う、潜在的な汚損に暴露される表面のための構成材料を、コーティングまたは材料自体のいずれかとして選択することによって、汚損物質の堆積が防止されるように、ファンデルワールス力を低減または排除するべきである。
【0005】
一実施形態では、本発明は、汚損物質を有する流体に暴露される、表面のための構成材料を選択するための方法であって、使用の間に汚損物質を含む流体に暴露される、表面のための構成材料を選択するステップであって、構成材料、すなわち、材料上のコーティングまたは材料自体のいずれかは、流体に暴露されると、流体の全屈折率スペクトル内の屈折率に合致または近似する、全屈折率スペクトル内の屈折率を有する、ステップを含む、方法を提供する。
【0006】
一実施形態では、本発明は、汚損物質を有する流体に暴露される、表面のための構成材料を選択するための方法であって、使用の間に汚損物質を含む流体に暴露される、表面のための構成材料を選択するステップであって、構成材料は、流体の全屈折率スペクトル内の屈折率の20%以内である、全屈折率スペクトル内の屈折率を有する、ステップを含む、方法を提供する。一実施形態では、全スペクトル内の少なくとも1つの値が、20%以内に合致する必要があることを理解されたい。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、汚損物質を有する流体に暴露される、表面のための構成材料を選択するための方法であって、使用の間に、汚損物質を含む流体に暴露される表面のためのコーティングを選択するステップであって、コーティングは、流体の全屈折率スペクトル内の屈折率の20%以内である、全屈折率スペクトル内の屈折率を有する、ステップを含む、方法を提供する。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、使用の間に汚損物質を含む流体に暴露される表面を有する、本体と、流体の全屈折率スペクトル内の屈折率の20%以内である、全屈折率スペクトル内の屈折率とを含む、構成材料を提供する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、表面のためのコーティングであって、使用の間に汚損物質を含む流体に暴露される表面のための、コーティングと、流体の全屈折率スペクトル内の屈折率の20%以内である、全屈折率スペクトル内の屈折率とを含む、コーティングを提供する。一実施形態では、コーティングは、材料の表面上に配置される。
(項目1)
汚損物質を有する流体に暴露される表面のための構成材料を選択するための方法であって、
使用の間に汚損物質を含む流体に暴露される表面のための構成材料を選択することであって、前記構成材料は、全光学スペクトルのある部分における前記流体の屈折率の20%以内である屈折率を有する、こと
を含む、方法。
(項目2)
汚損物質を有する流体に暴露される表面のための構成材料を選択するための方法であって、
使用の間に汚損物質を含む流体に暴露される表面のためのコーティングを選択することであって、前記コーティングは、前記全光学スペクトルのある部分における前記流体の屈折率の20%以内である屈折率を有する、こと
を含む、方法。
(項目3)
構成材料であって、
使用の間に汚損物質を含む流体に暴露される表面を有する本体と、
前記全光学スペクトルのある部分における前記流体の屈折率の20%以内である屈折率と
を含む、構成材料。
(項目4)
表面のためのコーティングであって、
使用の間に汚損物質を含む流体に暴露される表面のためのコーティングと、
前記全光学スペクトルのある部分における前記流体の屈折率の20%以内である屈折率と
を含む、コーティング。
(項目5)
前記コーティングは、前記表面上に配置される、項目4に記載のコーティング。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、清浄表面から始まり、次いで、粒子の単分子層の付着、後に継続されるスケールの成長が続く、汚損プロセスを図示する。
【0011】
図2図2は、典型的なVEELSを用いて計算および測定されたスペクトルに加えて、EELSの略図を図示する。
【0012】
図3図3は、全スペクトルおよびTabor-Winterton計算を使用した、種々の材料のハマーカー定数を示す。
【0013】
図4図4は、AFM-FSを使用して付着力を測定するために使用される、片持ち梁の一実施例を図示する。
【0014】
図5図5は、真空不活性AFMチャンバを図示する。
【0015】
図6図6は、USPEXアルゴリズムの使用を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の種々の実施形態が、図と併せて下記に説明される。しかしながら、本説明は、本発明の範囲を限定するものとして、または本発明の唯一の実施形態を記載するものとして見なされるべきではない。むしろ、これは、発明が、発明の精神および範囲内の代替物、修正、および均等物等の、本説明に具体的に列挙されていない、他の実施形態を包含するため、本発明の種々の実施形態の実施例として、かつ請求項によって定義されるものとして見なされるべきである。故に、「the invention(本発明)」または「the present invention(本発明)」の言及は、本発明が、一実施例のみを対象とする、またはあらゆる実施形態が、別の実施形態に関連して説明される、またはそのような語句の使用に関連して説明される、所与の特徴を含有しなければならないことを意味するように解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0017】
一般的に、本発明は、使用中に、それらの表面上の汚損に耐える、材料を対象とする。そのような材料は、表面上に堆積、またはそれに接着し、その後、表面上で成長し続け、機器および/またはプロセスの悪化された性能をもたらし得る、汚損物質または化学物質を含有する、所与の流体に暴露される表面を有する、種々のプロセス機器の構成において使用され得る。材料は、具体的には、表面が暴露される流体の(それに直接関連する)誘電/屈折スペクトルを考慮する方法を使用して選択される。表面および流体の誘電スペクトルが、合致されるまたは近接している場合、表面上への汚損物質の付着が生じるはずではないことが、予想外に見出されている。いくつかの実施形態では、合致されるべき誘電スペクトルは、固有の屈折率を含む。
【0018】
より具体的には、かつ理論によって限定されることなく、表面上への汚損物質または汚損物質粒子の初期の堆積または付着は、表面と汚損物質との間のファンデルワールス力に起因するものと考えられている。ファンデルワールス力のリフシッツ理論に基づいて、汚損物質または表面材料のいずれかの誘電スペクトルが、汚損物質を担持し、かつ表面が暴露される流体のものと同一である場合、ファンデルワールス力は、生じるはずはないと決定されている。そのような力を排除することによって、表面上への汚損物質の付着、または表面上への汚損物質粒子の初期単分子層の形成は生じず、したがって、表面上でのいかなる汚損物質の継続される成長も生じないはずである。図1は、清浄表面から始まり、次いで、粒子の部分的または完全な単分子層の付着、後に継続されるスケールの成長が続く、汚損プロセスを図示する。本発明は、粒子の単分子層の初期の堆積を低減または排除することに焦点をあてる。
【0019】
汚損物質の誘電スペクトルを流体に合致させるステップは、同一の結果を生産するであろうが、しかしながら、大部分の実践的用途では、これらは、使用されているプロセスによって固定されているため、汚染物質または流体のいずれも「選択され」得ないことを理解されたい。したがって、唯一の実践的方法は、流体に暴露される表面のための適切な構成材料を選択することであろう。構成材料は、流体に暴露される表面のために使用される材料を含み、いくつかの実施形態では、使用される下層の材料の上のコーティングを含むことを理解されたい。したがって、所与の表面がコーティングされる場合、コーティングは、その誘電スペクトルを流体のものに合致させることに基づいて、同様に選択され得ることを理解されたい。誘電スペクトルを「合致させる」ステップは、必ずしも、表面および流体の誘電スペクトルが、厳密に合致しなければならないことを意味するものではないこともまた、理解されたい。いくつかの実施形態では、「合致」は、相互の±0~20%以内であり得る。いくつかの実施形態では、「合致」は、±5%、±10%、または±20%以内であり得、これらの「合致」は、波長または周波数に依存し得、ファンデルワールス力を最も有意に決定する波長または周波数に調節され得る。
【0020】
理論によって拘束されることなく、以下は、誘電スペクトルを合致させることによって、ファンデルワールス(vdW)力の低減または排除が生じるであろうということの発見の分析を提示する。流体f中の2つの材料aとbとの間のvdW力は、クーロン相互作用に類似する、分離rを伴う逆2乗形式である。
【化1】
【0021】
力は、ハマーカー定数として既知の
【化2】

に正比例する。本定数は、力の大きさと、力が引力または斥力(後者は、稀である)であるかどうかとを定義する。vdW力は、誘導される双極子を生成する結合電子運動から生じるため、ハマーカー定数は、振動電場、言い換えると、屈折率または反射率のような光学性質への材料の応答を考慮することによって計算される。材料の虚数周波数誘電応答ε(ζ)からハマーカー定数を計算することが、最も直接的であるが、本解釈することが困難である量は、反射率またはエリプソメトリ等のより従来の測定に直接関連する。これはまた、価電子エネルギー損失分光法(VEELS)等のより高度な測定によっても、高い正確度が得られ得る。全スペクトルの相対論的ハマーカー定数のための公式(より少ない仮定および限定を伴うが、最も複雑でもある公式)は、以下の通りである。
【化3】

式中、kは、
【化4】

におけるボルツマン定数であり、Tは、ケルビン単位における温度であり、R(r)は、光学遅延係数(異なるように分極化された光子伝播のための異なる経路長を考慮する)であり、Δjkは、虚数(複素)周波数
【化5】

(式中、nは、0から∞までの離散エネルギーレベルである)における、仮想光子に対する誘電応答の差異である。Δjk変数は、異なる周波数における異なる分極率、または異なる周波数における電子振動の差異に基づく、付着エネルギーへの寄与として考えられることができる。これらはそれぞれ、以下のように表現されることができる。
【化6】

式中、ε(ζ)は、虚数周波数ζにおける材料jの誘電応答関数である。最終的に、これらはそれぞれ、クラマースクローニッヒ(KK)関係式を適用し、任意の因果関係の実数成分と虚数成分とを接続することによって、その実数の測定可能成分の観点から表現されることができる。
【化7】

式中、ωは、実周波数である。このように、表にされた光学データをハマーカー定数に変換することができ、これはまた、付着力を介した原子間力顕微鏡力分光法(AFM-FS)を使用して測定されることもできる。本知識を使用して、1つの決定論性の迎え角、すなわち、方程式3における、差項を得る。流体f中の材料aおよびbのいずれかの2つの虚数誘電スペクトルが、等しい場合、理論上では、付着は、生じないはずである。誘電スペクトルの実数および虚数成分が、方程式4によって連結されるため、流体と材料の誘電スペクトルのいずれかとの間の合致を発見することは、汚損を有意に低減または排除させるために十分である、vdW力を介した付着が、殆ど/全く生じないことにつながるはずである。
【0022】
既存の表にされていない材料のための全誘電スペクトルを決定するための方法が、要求される。これらのスペクトルは、静電容量ブリッジ設定またはエリプソメトリ測定を使用して直接的に、かつ反射分光法およびVEELSによって間接的に決定され得る。加えて、スペクトルは、密度関数理論(DFT)シミュレーション等のab initioバンド構造計算によって得られ得る。ハマーカー係数を正確に計算するために、静的からIR(水のために重要である)、そしてUVまでの広い周波数範囲にわたる実験的誘電応答データを有することが、重要である。VEELSは、非常に広い範囲の周波数(0~100eVが、典型的である)の実験的試験を可能にする。しかしながら、光学反射率測定が、実験的に実行するために最も容易なままである。
【0023】
図2は、典型的なVEELSを用いて計算および測定されたスペクトルに加えて、EELSの略図を図示する。VEELSは、電子エネルギー損失技法であり、これは、非常に薄い試料を通して横断するにつれて、単一散乱衝突において電子によって喪失される、エネルギー量を測定する。試料の厚さは、媒体内の電子範囲よりはるかに薄くなるように選定され、これは、電子ビームの非透過部分の殆ど全ての単一散乱事象を確実にする。これは、DFT等の方法が、価電子のエネルギーレベルを直接予測するため、測定されたデータの確実性の付加的測定を提供し、これは、VEELSを使用して探査されるものである。ここで、ある量のエネルギーを喪失する電子の数が、測定され、強度の任意の単位として表にされる。これは、ある波長における既知の絶対値に正規化され(おそらく、反射分光法によって得られる)、材料の誘電スペクトルをもたらす。
【0024】
全ての実践実験では、限界が、試験され得る上限および下限周波数に関して存在するが、しかしながら、KK変換は、(方程式4の積分の限界に見られるように)無限周波数にわたった測定を要求する。したがって、測定されたものより低いまたは高い周波数に関して、実験データを近似値で補完することが、一般的である。本近似に関する典型的な選択肢は、高側および低側に関して異なる指数値βを伴う、冪法則
【化8】

である。本冪則近似はまた、測定されたデータ点間の周波数を補間するためにも使用される。近似の別の選択肢は、最小の測定周波数に対応する低周波数に関して、一定値
【化9】

であり、高周波数範囲に関して、自由電子結果
【化10】

(式中、ωeは、自由電子ガスのプラズマ周波数である)である。
【0025】
材料上の反射率を測定するための方法は、誘電スペクトルを得るための変換と同様に、良好に確立されている。周波数に依存する反射率を決定した後、KK変換が、適用され、周波数依存の位相測定値を得る。反射率および位相は、連立一次方程式内で組み合わせられ、周波数に依存する、実数および虚数の誘電応答ε(ω)を得、これは、次いで、方程式4に直接代入され、虚数周波数ε(ζ)に対する誘電応答をもたらす。ファンデルワールス相互作用に起因する力が、次いで、方程式3、2、および1に従うことによって決定される。
【0026】
可視スペクトルにおける、類似する吸収周波数ωと、低屈折率nとを伴う材料に関して有効である、Tabor-Winterton近似(TWA)が、初期の候補材料検索のために使用され得ることを理解されたい。TWAは、以下の通りである。
【化11】

このように、ゼロ周波数誘電率(分極率)に加えて、可視スペクトル屈折率nは、材料が滑らかであるべきである、または汚損耐久性であるべきであるかの最初の推測を行うために使用されることができる。付着力を低減させる材料を見出す目的は、したがって、流体および汚染粒子の性質が、すでに与えられているため、システムに好適な具体的な光学性質を伴う材料を発見することとして、系統的にアプローチされる。比較的に冗長な実験測定は、材料の測定されたスペクトルを含有する文献の計算分析によって(方程式2および3を適用する)、そしてスペクトルがDFTシミュレーションからのエネルギーバンドに基づいて計算される、新しい材料のモデル化によって、有意に拡張され得る。シミュレートするための膨大な数のサンプル材料の置換、および付着力の材料性質への複雑な依存に起因して、一般的なアルゴリズムが、本計算設計空間を追究するために適切であろう。
【0027】
TWAから、vdW相互作用を最小限にさせるための1つの方法は、方程式5における分子内の差項を最小限にさせることである。動作条件に関して現実的な値を代入して、方程式5の第2の項は、第1の項を支配する。したがって、初期の候補汚損耐久性材料が有するべき基準は、流体のものに近接する屈折率nであり、誘電性質がまだ既知ではない材料に関して方程式5の第1項を無視することが、正当化される。
【0028】
一実施形態では、1つの着目システムは、非常に硬質、地球上に豊富に存在する、かつ水に不溶である傾向にある、非水溶性フッ化物を含む。図3は、全スペクトルおよびTabor-Winterton計算を使用した、種々の材料のハマーカー定数を示す。示されるように、フッ化物の多くのものは、低いハマーカー係数と、屈折率との両方を保有する。
【0029】
高温水を流体として使用し、SiO微粒子汚損を被る、地熱発電所に焦点をあてる一実施形態では、表にされたデータが、非水溶性、(SiOによる腐食を回避するために)比較的に硬質であり、低屈折率を有する、鉱物を同定するために使用されることができ、TWAは、室温における水中の予期されるvdW力を計算するために適用されることができる。表1は、これまでのところ、そのように同定された材料を要約する。
【表1】
【0030】
表1を参照して、それらがそれぞれ、通常、炭素鋼(Fe)およびステンレス鋼またはニッケル系超合金(Cr)上に形成する、不動態酸化物層と比較した、水のものに非常に近接する可視反射率を有することに留意されたい。表1に見られ得るように、水の屈折率に十分に近接する相当な数の材料が、実施例として、地液中または原子炉内の構造的材料上で自然に成長する、不動態酸化物に優る有意な改良をもたらすことが予測される。
【0031】
図4は、AFM-FSを使用して付着力を測定するために使用される、片持ち梁の一実施例を図示する。付着モデルの確認は、AFM-FSを使用して付着力を直接測定するステップから生じる。本技法では、汚損物質/スケール材料の粒子、本場合では、SiOが、薄いSiN片持ち梁の端部に添着される。本片持ち梁は、測定されるべき表面と接触され、レーザが、図4に示されるように、片持ち梁の背面に反射される。本レーザの偏向は、本片持ち梁の屈曲に比例し、片持ち梁を屈曲させるために要求される力をもたらす(本ばね定数kの較正に続いて)。次いで、片持ち梁は、表面から引き上げられ、粒子を除去するために要求される力が、同一の技法を使用して測定される。空気中の湿気、水中イオン、および周囲の炭化水素からの汚染が、正確なAFM-FSデータを得るために、考慮され、減ぜられなければならないことを理解されたい。
【0032】
一実施形態では、真空不活性AFMチャンバが、使用されてもよい。図5は、真空不活性AFMチャンバを図示する。示されるように、真空チャンバは、ターボ分子ポンプを使用して、システム全体を、10-3トルまで下がるように圧送することを可能にする一方、差動圧送アルゴンイオンスパッタガンが、材料の表面をスパッタ清掃し、酸化物および有機汚染物質を除去するために使用されるであろう。空気への暴露を伴わずに、AFM-FSは、真空または乾燥不活性ガス雰囲気のいずれかにおける新鮮表面上で実施されることができる。
【0033】
本発明は、所与の材料の光学性質の使用を通して、具体的には、汚損傾向の数学測定値としてハマーカー定数を使用して、材料または表面上での汚損を低減または排除するための方法を提供するが、可能性として考えられる結晶構造の多次元空間を追究し、最もエネルギー的に好ましいものを見出すために最適化された、USPEX等の進化アルゴリズムアプローチもまた、結晶構造のハマーカー定数を計算するために使用され得る。
【0034】
VASP(Vienna Ab-initioシミュレーションパッケージ)等の密度関数理論(DFT)パッケージが、以前の研究によって支持されるような周波数依存誘電応答を見出すために要求され得る。次いで、スクリプトが、全スペクトルの和(方程式2)を解き、計算されたハマーカー定数をもたらす。DFT計算はまた、結晶構造のエネルギーの測定値も提供し、これは、構造が、動作条件において現実的かつ安定しているかどうかのインジケーションである。
【0035】
図6は、USPEXアルゴリズムの使用を図式的に示す。USPEXアルゴリズムでは、結晶構造は、進化的方式で最適化される。アルゴリズムは、原子の数およびタイプ等の初期の「ハード」制約を満たす、ランダム構造を形成することによって開始する。これらの構造は、次いで、評価され、それぞれのための適合値を得、これは、構造が後続の世代において存続するかどうかを決定する。USPEXの標準的な使用では、本適合値は、構造の全体的エネルギーであり、これは、最も化学的に安定した(最も低いエネルギーの)結晶をもたらす。本発明に関して、適合値は、代わりに、最も低い付着力を伴う構造に好都合である、ハマーカー定数である。本場合では、依然として現実的な材料を見出すために要求される、局在的なエネルギーの最小限化は、DFTシミュレーションにおける構造の緩和として実装される。存続する構造は、次いで、3つのオペレータ、すなわち、遺伝、突然変異、および置換によって修正される。結果として生じる構造のいくつかのものは、より好ましい適合値を有し、プロセスは、申し分のないほど良好な数の高性能構造が見出されるまで、再び繰り返される。
【0036】
前述のものに基づいて、多くの材料が、汚損物質または汚損物質粒子が付着せず、したがって、初期の単分子層の形成を防止し、ひいては、汚損物質またはスケールの継続される成長を不可能にするであろう、「滑らかな」表面を提供するように選択され得ることを理解されたい。さらに、大部分の場合では、汚損物質の同一性または化学的組成は、材料またはその表面が暴露される所与の流体に関してどの構成材料またはコーティングを使用するかの決定に対して重要ではないことも理解されたい。言い換えると、材料または構成材料またはコーティングの選択は、材料/コーティングおよび作用流体の各対に対して汎用であり、所与のシステム内の多数の潜在的汚損材料には依存しない。また、エネルギーシステム内の全ての作用流体は、1.2~1.7の範囲に及ぶ可視屈折率を有するため、TWAは、非真空作用流体中に浸漬される汚損物質と材料表面との間の合計vdW力の有効かつ正確な推定値である。さらに、TWA(方程式5)内の分子が、複数の差(
【化12】

項)を含有するため、作用表面(材料a)と流体(f)、または流体と汚損物質とのいずれかの間の近合致のみが、要求される。汚損物質を制御することよりも作用表面を制御することが、より容易であるため、作用表面と流体との間の近合致のみが、可視またはUVスペクトル内での固有屈折率を単に合致させることによって要求される。
【0037】
いくつかの実施形態では、選択された材料が、表面または材料が暴露される流体の全光学スペクトルのある部分における可視屈折率に、±20%以内で合致する。いくつかの実施形態では、流体は、ガスまたは液体であってもよく、1.00~1.76の範囲に及ぶ可視屈折率を有してもよい。いくつかの実施形態では、材料は、1.00~1.76または1.06~1.60の範囲に及ぶ可視屈折率を有してもよい。いくつかの実施形態では、材料は、固体、バルク材料、またはコーティングが下層の材料の表面化学的性質を改質するように、別の材料に適用される、コーティングであってもよい。いくつかの実施形態では、材料は、より一般的には、酸化、フッ素添加、表面窒化、炭素浸透等のプロセスを通した材料表面の改質を受けてもよい。いくつかの実施形態では、材料は、具体的には、全光学スペクトルのある部分における、囲繞流体の可視屈折率に、±20%の相対的整合の範囲内で合致するように選定または設計される、結晶質材料であってもよい。いくつかの実施形態では、流体は、水であってもよく、いかなる汚損物質も含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、流体は、水であり、1つを上回る汚損物質を含んでもよい。いくつかの実施形態では、流体は、水であってもよく、材料は、1.06~1.60の範囲に及ぶ、固有の可視屈折率を有してもよい。いくつかの実施形態では、流体は、水であってもよく、材料は、フッ素を含有してもよい。いくつかの実施形態では、流体は、水であってもよく、材料は、フッ素含有結晶質固体を含有してもよい。いくつかの実施形態では、流体は、水であってもよく、材料は、蛍石(CaF)、氷晶石(NaAlF)、曹長石、または微斜長石(KAlSi)を含有してもよい。いくつかの実施形態では、材料は、具体的には、全光学スペクトルのある部分における、囲繞流体の可視屈折率に、±20%の相対的整合の範囲内で合致するように選定または設計される、非晶質物であってもよい。(可視範囲と、非可視範囲とを含む)全光学スペクトルは、実質的であり得るが、いくつかの実施形態では、合致は、可視スぺクトルにおいて400~800nmの範囲内で決定される。
【0038】
いくつかの実施形態では、材料の屈折率と囲繞流体の屈折率との間の合致は、可視屈折率と対照的な、紫外線(UV)屈折率、またはUV範囲のスペクトル部分の合致であり得ることを理解されたい。UVスペクトル全体は、実質的であり得るが、いくつかの実施形態では、合致は、UVスペクトルにおいて10~400nmの範囲内で決定される。
【0039】
いくつかの実施形態では、材料は、原子力発電所等の中で放射線を受け得る。そのような場合では、付着物は、核燃料被覆管を劣化させる、汚損の形態である。したがって、使用の間、その性質を維持するために放射線耐性を提供する、材料が、選択されなければならない。上記に説明されるフッ素系鉱物は、放射線による損傷に耐えるだけではなく、照射よって作成される原子欠陥が、実際に、経時的にそれらの濡れ性を向上させ、それらの汚損耐性を犠牲にすることなく、熱伝達性質も改良させる。いくつかの実施形態では、ZrNおよびTiCaが、PWR環境における付着物の形成に耐えることが可能である。いくつかの実施形態では、TiNもまた、PWR環境における付着物形成に耐えることが可能である。
【0040】
汚損物質を担持する流体に暴露される表面を構成するステップにおける使用のためのある材料の選択は、広い適用性を有することを理解されたい。例えば、汚損は、2013年に米国単独で150億ドルの収入減を負わせた。不純物を含有する、あらゆる主要なエネルギー集約型の熱伝達、エネルギー生産、および化学処理システムは、汚損を被り、これらのシステムの全てのものが、潜在的な収入流を構成する。例えば、本発明は、核燃料上への付着物の蓄積、原子力発電所の二次熱伝達サイクルにおけるスラッジの蓄積、地熱発電所の深い掘削孔上へのシリカの蓄積、石油精製所内の熱交換器における鉄および鋼系腐食生成物および「黒色粉末」の蓄積、および商業施設および住宅の給水配管システムを含む、実質的にあらゆる場所で生じる、硬水堆積物の蓄積を低減させるために使用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】