(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001489
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】頭蓋穿孔キャップおよび脳深部診断治療システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100170
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】522250220
【氏名又は名称】藤本 礼尚
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】藤本 礼尚
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF45
4C160LL22
4C160MM22
(57)【要約】
【課題】一次的に脳の深部まで線状部材を挿入する診断または治療における患者の負担を軽減できる技術を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る頭蓋穿孔キャップ30は、弾性を有する樹脂材料から形成され、脳の深部まで挿入される線状部材10を案内するガイドパイプ20を挿入するために頭蓋骨に形成される穿孔に嵌合するプラグ部31と、前記プラグ部31の端部外周に設けられ、前記頭蓋骨の外面に載置されるフランジ部32と、を備え、前記プラグ部31を貫通するよう形成され、前記ガイドパイプを挿入可能なガイド孔33を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する樹脂材料から形成され、
脳の深部まで挿入される線状部材を案内するガイドパイプを挿入するために頭蓋骨に形成される穿孔に嵌合するプラグ部と、
前記プラグ部の端部の外周に設けられ、前記頭蓋骨の外面に載置されるフランジ部と、
を備え、
前記プラグ部を貫通するよう形成され、前記ガイドパイプを挿入可能なガイド孔を有する、頭蓋穿孔キャップ。
【請求項2】
前記プラグ部および前記フランジ部の全長に亘って形成され、前記ガイド孔から前記プラグ部および前記フランジ部の外縁に達するスリットをさらに有する、請求項1に記載の頭蓋穿孔キャップ。
【請求項3】
前記フランジ部に隣接するよう、前記プラグ部の外径を局所的に小さくするくびれ部を有する、請求項1または2に記載の頭蓋穿孔キャップ。
【請求項4】
前記樹脂材料のショア硬さは、60以上85以下である、請求項1または2に記載の頭蓋穿孔キャップ。
【請求項5】
前記フランジ部の外径は、前記プラグ部の最大径の2倍以上3倍以下である、請求項1または2に記載の頭蓋穿孔キャップ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の頭蓋穿孔キャップと、
前記ガイド孔に挿入可能なガイドパイプと、
前記ガイドパイプに挿入可能な線状部材と、
を備える、脳深部診断治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭蓋穿孔キャップおよび脳深部診断治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパーキンソン病、てんかん等の治療または診断のために、人の脳の深部に電極(脳深部電極)を有する電極リード等の線状部材を挿入する場合がある。このような電極リードは一般的に十分な剛性を有していないため、脳深部電極を脳内の適切な位置に正確に配置するために、電極リードを案内するガイドパイプが用いられ得る。例えば特許文献1には、電極リードを案内するガイドパイプに、頭蓋骨に形成される穿孔に螺合する外ねじを有するキャップを設け、ガイドパイプを脳深部電極とともに皮下に埋め込むことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脳深部電極を適切な位置および向きに挿入するためには、目的の位置まで脳に経路を作る為に穿刺針で穿刺し脳深部電極を入れるのが一般的である。その際、脳深部電極の基端側を頭蓋骨の外側で把持する必要がある。したがって、基端側を把持して挿入された脳深部電極は、穿刺針と入れ替える際に位置がずれたり、髄液が大量に漏れたりする状態となるため、不具合が生じる可能性がある。そのため本ガイドパイプを用いれば脳深部電極とガイドパイプを挿入した後で、穿刺針と入れ替えが不要である事から位置をずらす事なく深部電極を残しガイドパイプを引き抜く事ができ、髄液流失を抑える技術も提案されている。ガイドパイプをこの方法で引き抜くことにより、患者への負担も軽減され得る。
【0005】
診断のための脳深部電極を埋め込む場合には、頭蓋骨の穿孔を封止し、頭皮を縫合することが想定される。しかしながら、例えばてんかん焦点や脳腫瘍を切除すべき位置を決定するための診断等の目的で、一次的に電極リードを挿入する場合もある。このような診断の際には頭皮を切開した状態で測定が行われ得るが、時間の経過とともに患者が不調を感じたり、脳深部電極の位置がずれたりする場合がある。例えばてんかんの原因となる異常部位の特定のためには、脳内の電気信号をある程度の時間にわたってモニタリングすることが必要となる。このような場合に、従来の脳深部電極留置方法では頭皮の縫合等を行って脳深部電極を埋め込んだとしても、傷が閉じる前に髄液が継続的に流出することになり、感染のリスク、頭痛・嘔吐など患者の負担が増大する。
【0006】
そこで、本発明は、一次的に脳の深部まで線状部材を挿入する診断または治療における患者の負担を軽減できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、臨床を通じて、頭蓋骨の穿孔からの髄液の漏出が患者の負担を増大することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一態様に係る頭蓋穿孔キャップは、弾性を有する樹脂材料から形成され、脳の深部まで挿入される線状部材を案内するガイドパイプを挿入するために頭蓋骨に形成される穿孔に嵌合するプラグ部と、前記プラグ部の端部の外周に設けられ、前記頭蓋骨の外面に載置されるフランジ部と、を備え、前記プラグ部を貫通するよう形成され、前記ガイドパイプを挿入可能なガイド孔を有する。
【0009】
上述の頭蓋穿孔キャップは、前記プラグ部および前記フランジ部の全長に亘って形成され、前記ガイド孔から前記プラグ部および前記フランジ部の外縁に達するスリットをさらに有してもよい。
【0010】
上述の頭蓋穿孔キャップにおいて、前記フランジ部の外径は、前記プラグ部の最大径の2倍以上3倍以下であることが好ましい。
【0011】
上述の頭蓋穿孔キャップはて、前記フランジ部に隣接するよう、前記プラグ部の外径を局所的に小さくするくびれ部を有してもよい。
【0012】
上述の頭蓋穿孔キャップにおいて、前記樹脂材料のショア硬さは、60以上85以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る脳深部診断治療システムは、上述の頭蓋穿孔キャップと、前記ガイド孔に挿入可能なガイドパイプと、前記ガイドパイプに挿入可能な線状部材と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一次的に脳の深部まで線状部材を挿入する診断または治療における患者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る脳深部診断治療システムの構成を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1の脳深部診断治療システムによる診断治療の準備を説明する模式図である。
【
図3】
図1の脳深部診断治療システムによる診断治療を行う状態を示す模式図である。
【
図4】
図1の脳深部診断治療システムの電極リードの拡大図である。
【
図5】
図1の脳深部診断治療システムのガイドパイプの拡大図である。
【
図6】
図1の脳深部診断治療システムの頭蓋穿孔キャップの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る脳深部診断治療システム1の構成を示す分解斜視図である。
図2は、脳深部診断治療システム1による診断治療の準備を説明する模式図である。
図3は、脳深部診断治療システム1による診断治療を説明する模式図である。なお、各図は、分かりやすくするために、誇張、省略等がなされている。
【0017】
脳深部診断治療システム1は、患者の頭皮Hを切開して露出させた頭蓋骨Sに形成される穿孔Pから脳Bの深部まで挿入される線状部材の一態様である電極リード10と、電極リード10を案内するガイドパイプ20と、電極リード10が挿入される穿孔Pに嵌合する頭蓋穿孔キャップ30と、を備える。頭蓋穿孔キャップ30は、電極リード10に対して糸状体Tによって結び付けられる。また、脳深部診断治療システム1は、ガイドパイプ20を患者の脳Bに挿入する際に電極リード10に換えてガイドパイプ20に挿入される中芯40をさらに備えてもよい。
【0018】
電極リード10は、
図4に詳しく示すように、遠位側(脳Bに挿入される側)の端部に露出し、電気信号を送信または受信するための複数の脳深部電極11と、近位端(脳Bに挿入される側と反対側の端部)端部に露出し、測定機器または電源装置に接続するための複数の端子12と、脳深部電極11と端子12とを接続する複数の配線13と、絶縁性および可撓性を有し、脳深部電極11、端子12および配線13を収容し、一定の径を有するストリング状に形成される保持体14と、を備える。
【0019】
電極リード10としては、従来使用されているものが使用され得る。具体的な構成として、電極リード10の径は、例えば1mm以上1.5mm以下とされ得る。電極リード10の長さは、例えば30cm以上60cm以下とされ得る。脳深部電極11の数および配置は、脳深部診断治療システム1の使用目的等に応じて適宜選定され得る。
【0020】
ガイドパイプ20は、例えばステンレス鋼等の剛性を有する材料から形成され、電極リード10を案内するために、頭蓋骨Sの穿孔Pひいては脳Bに挿入される。ガイドパイプ20は、
図5に詳しく示すように、内部に電極リード10を挿入可能な内腔21を有する。また、ガイドパイプ20は、遠位端に開放するよう形成され、内腔21の中の電極リード10に縛り付けられる糸状体Tを外側に導出するためのガイドスリット22を有する。つまり、ガイドパイプ20は、少なくとも遠位側の部分が断面視でCの字状に形成される。さらに、ガイドパイプ20は、近位端に把持を容易にするグリップ23を有する。
【0021】
ガイドパイプ20の内径(内腔21の径)は、電極リード10の径よりも僅かに大きいことが好ましくい。ガイドパイプ20の外径(グリップ23を除く)は、ガイドパイプ20の剛性を担保できるよう設定され、例えば内径との差が0.3mm以上1.0mm以下となるよう設計され得る。ガイドパイプ20の長さとしては、例えば15cm以上30cm以下とされ得る。ガイドスリット22の幅としては、糸状体Tを引き出すことができ、かつ内腔21の径よりも小さければよく、例えば0.5mm以上1.5mm以下とされ得る。ガイドスリット22は、ガイドパイプ20の全長に亘って形成されてもよいが、ガイドパイプ20の把持される近位端側部分の強度を担保するために、遠位端側にのみ形成され得る。ガイドスリット22の長さとしては、ガイドパイプ20の頭蓋骨Sに挿入され得る部分の長さ以上であればよい。
【0022】
頭蓋穿孔キャップ30は、それ自体が本発明に係る頭蓋穿孔キャップの一実施形態である。
図6に詳しく示すように、頭蓋穿孔キャップ30は、概略円筒状または円錐台状に形成され得るプラグ部31と、プラグ部31の近位側の端部の外周に設けられるフランジ部32と、を備える。
図2および3に示すように、プラグ部31は頭蓋骨Sに形成される穿孔Pに嵌合し、フランジ部32は頭蓋骨Sの外面に載置される。
【0023】
頭蓋穿孔キャップ30は、プラグ部31を軸方向に貫通するよう形成され、ガイドパイプ20を挿入可能なガイド孔33と、プラグ部31およびフランジ部32の全長に亘って形成され、ガイド孔33からプラグ部31およびフランジ部32の外縁に達するキャップスリット34と、フランジ部32に隣接するよう形成され、プラグ部31の外径を局所的に小さくするくびれ部35と、を有する。
【0024】
頭蓋穿孔キャップ30は、弾性を有する樹脂材料から形成される。頭蓋穿孔キャップ30を形成する樹脂としては、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム等を挙げることができる。頭蓋穿孔キャップ30のショア硬さとしては、60以上85以下程度とされることが好ましい。このような弾性を有する樹脂材料を用いることで、頭蓋穿孔キャップ30のガイドパイプ20への装着および穿孔Pへの挿入が比較的容易となるとともに、穿孔Pを適切に封止して髄液の漏出を防止できる。
【0025】
プラグ部31は、穿孔Pの中に係止されやすいよう、概略円筒状または円錐台状に形成されることが好ましいが、球状、楕円球状等の形状を有してもよい。プラグ部31の最大径は、ガイドパイプ20の外径ひいてはそれに合わせて形成される穿孔Pの径に応じて設定されるが、例として、3mm以上8mm以下とされ得る。プラグ部31のフランジ部32からの遠位側への突出長さとしては、穿孔Pに嵌合しつつ頭蓋骨Sの内側に突出しない程度、例えば3mm以上8mm以下とされ得る。
【0026】
フランジ部32は、頭蓋骨Sの外面に当接することにより、頭蓋穿孔キャップ30ひいては糸状体Tによって頭蓋穿孔キャップ30に接続される電極リード10を位置決めする。このため、頭蓋穿孔キャップ30を使用することで、従来のように電極リード10に結び付けたプレートを頭蓋骨Sにねじ止めする方法と比べて、頭蓋骨Sの傷が小さく、患者の負担を軽減できる。フランジ部32は、均等な変形能が得られるよう、一定の厚みを有することが好ましい。フランジ部32の厚みとしては、十分な強度と適度な可撓性を付与するために、例えば0.5mm以上2.0mmとすることができる。フランジ部32の外径は、頭蓋穿孔キャップ30の全体が穿孔Pの中に入り込むことを防止しつつ、取り扱い性を低下させないよう、プラグ部31の最大径の2倍以上3倍以下とされることが好ましい。
【0027】
ガイド孔33は、プラグ部31の中心部を軸方向に貫通するよう形成される。ガイド孔33の径は、ガイドパイプ20の外径と同程度とすることができ、ガイドパイプ20への装着を容易にするためにガイドパイプ20の外径より僅かに大きくてもよい。例として、ガイド孔33の径は、ガイドパイプ20の外径よりも0.1mm以上0.3mm以下大きくなるよう設定される。
【0028】
キャップスリット34は、ガイド孔33から単一の径方向に延びるよう、一定の幅で形成される。キャップスリット34は、頭蓋穿孔キャップ30をガイドパイプ20に径方向に装着することを可能にする。また、キャップスリット34は、プラグ部31の変形能を向上して穿孔Pへの嵌合を容易にする。さらに、キャップスリット34は、ガイド孔33の内側から外側まで糸状体Tを通す経路を提供する。キャップスリット34の幅は、特に限定されないが、金型により成形するために、例えば1mm程度とすることができる。
【0029】
くびれ部35は、省略されてもよいが、糸状体Tを結び付けたときに糸状体Tが抜け落ちることを防止するために設けられ得る。くびれ部35は、糸状体Tひいては電極リード10の結束部を正確に頭蓋骨Sの外面に保持できるよう、フランジ部32の遠位側の面と連続する平面状の側面と、この側面に向かって傾斜する円錐面状の傾斜面とから形成されることが好ましい。くびれ部35の深さとしては、例えば0.3mm以上0.8mm以下とすることができる。
【0030】
中芯40は、ガイドパイプ20を患者の脳Bに挿入する際にガイドパイプ20を補強するとともに、先端に頭蓋骨Sと脳Bとの間に存在する厚さ1mm程度の硬膜Dを貫通するための電気メスとしての機能を付与する。具体的には、中芯40は、例えばステンレス鋼等の堅固な導体からなり、先端部を除いてガイドパイプ20に挿入される領域の外面に例えばエポキシ樹脂等からなる絶縁層41が積層されている。中芯40の先端部は、テーパ状に形成されていてもよい。この中芯40とガイドパイプ20との間に電圧を印加すると、中芯40の先端とガイドパイプ20の先端との間で接触している硬膜D等の人体組織を通して電流が流れ、ジュール熱を生じて人体組織を焼き切ることができる。したがって、中芯40を挿入したガイドパイプ20は、焼灼止血性を有するため、患者への負担を抑制しつつ硬膜Dを貫通することができる。
【0031】
以上の構成を備える脳深部診断治療システム1では、先ず、電極リード10に患者に挿入される長さの目印となる糸状体Tが結び付けられる。具体的には、電極リード10を脳Bの適切な深度まで挿入した場合に頭蓋骨Sの外面に合致する位置に、糸状体Tが結び付けられる。この糸状体Tが結び付けた電極リード10が。ガイドパイプ20に先端を合わせて挿入され、ガイドスリット22から糸状体Tが外側に引き出される。
【0032】
この状態で、頭蓋穿孔キャップ30が、ガイドパイプ20の外側にキャップスリット34をガイドスリット22に重ねるよう装着される。このとき、頭蓋穿孔キャップ30はキャップスリット34を広げるようにして、ガイドパイプ20に対して径方向に装着され得る。そして、電極リード10から延出する糸状体Tが、頭蓋穿孔キャップ30のくびれ部35に結び付けられる。これにより、頭蓋穿孔キャップ30は、電極リード10に対して軸方向の相対移動しないように接続される。糸状体Tとしては、縫合糸等を用いることもできるが、荷札用結束材として用いられるようなワイヤを用いることによって、電極リード10および頭蓋穿孔キャップ30への結束が容易かつ確実となる。
【0033】
このように電極リード10および頭蓋穿孔キャップ30が装着されたガイドパイプ20は、
図2に示すように、頭蓋骨Sの穿孔Pから患者の脳Bに挿入される。このとき、頭蓋穿孔キャップ30のフランジ部32が頭蓋骨Sの外面に当接することにより、電極リード10は所望の深さまで挿入され得る。そして、
図3に示すように、電極リード10および頭蓋穿孔キャップ30を残してガイドパイプ20が引き抜かれる。具体的にはフランジ部32を頭蓋骨Sに押圧しつつガイドパイプ20を脳Bから引き抜くことで、頭蓋穿孔キャップ30ひいては電極リード10が所望の位置に残留する。その後、電極リード10の近位端の端子12に測定装置または電源装置を接続することにより、脳Bの治療または診断を行うことができる。つまり、頭蓋穿孔キャップ30により穿孔Pを封止する状態で、脳深部電極11により、脳Bの深部の電気信号を検出または外部から入力される電気信号を脳Bの深部に対する電気刺激として出力することができる。
【0034】
頭蓋穿孔キャップ30は、完全に穿孔Pを塞ぎ得るものではないが、穿孔Pから脳Bの髄液が漏出することを効果的に抑制するには十分である。頭蓋穿孔キャップ30により髄液の漏出を抑制することで、患者への負担を大幅に軽減できることが確認されている。このため、一次的に電極リード10を挿入して診断または治療を行う場合には、頭蓋穿孔キャップ30により髄液の漏出を抑制する方が、頭皮の縫合手術および頭皮の再切開手術を行うよりも患者の負担を小さくできる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例として、本発明に係る脳深部診断治療システムは、電極リードに換えて、遠位側の端部に抵抗発熱体を有する電気ヒータ等の定位脳手術を行うための線状部材を備えてもよい。また、本発明に係る頭蓋穿孔キャップにおいて、キャップスリットは、例えばフランジ部を除いて部分的に形成されてもよく、線状部材と接続するための糸状体を挿通できる貫通孔等に置換されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 脳深部診断治療システム
10 電極リード(線状部材)
11 脳深部電極
12 端子
13 配線
14 保持体
20 ガイドパイプ
21 内腔
22 ガイドスリット
23 グリップ
30 頭蓋穿孔キャップ
31 プラグ部
32 フランジ部
33 ガイド孔
34 キャップスリット
35 くびれ部
40 中芯
41 絶縁層
B 脳
D 硬膜
H 頭皮
P 穿孔
S 頭蓋骨
T 糸状体