IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンセン ハイタイド バイオファーマシューティカル リミテッドの特許一覧

特開2024-14894組成物、ならびにその適用および薬学的調製の方法
<>
  • 特開-組成物、ならびにその適用および薬学的調製の方法 図1
  • 特開-組成物、ならびにその適用および薬学的調製の方法 図2
  • 特開-組成物、ならびにその適用および薬学的調製の方法 図3
  • 特開-組成物、ならびにその適用および薬学的調製の方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014894
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】組成物、ならびにその適用および薬学的調製の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20240125BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 31/232 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61K31/202
A61K31/232
A61P3/06
A61P3/10
A61P3/04
A61P9/10
A61P1/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189115
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2021180724の分割
【原出願日】2016-11-10
(31)【優先権主張番号】201610303976.5
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】516316912
【氏名又は名称】シンセン ハイタイド バイオファーマシューティカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リュー リーピン
(57)【要約】
【課題】糖尿病、糖尿病合併症、脂質異常症、肥満、代謝症候群、糖尿病前症、心疾患、神経変性疾患、NAFLD、NASH、筋萎縮症、炎症およびがんなどの疾患または障害を処置するための新規および改善された治療および方法を提供する。
【解決手段】(a)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;および(b)オメガ-3脂肪酸またはその許容されるエステルを含む、組成物を使用する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;および
(b)オメガ-3脂肪酸またはその許容されるエステル
を含む、組成物。
【請求項2】
構成要素(b)が、ドコサヘキサエン酸またはその許容されるエステル、エイコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、ドコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、α-リノレン酸またはその許容されるエステル、エイコサトリエン酸またはその許容されるエステル、ヘキサデカトリエン酸またはその許容されるエステル、ステアリドン酸またはその許容されるエステル、エイコサテトラエン酸またはその許容されるエステル、ヘンエイコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、テトラコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、およびニシン酸またはその許容されるエステルからなる群の1つまたは複数より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
構成要素(b)が、エイコサペンタエン酸もしくはその許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸もしくはその許容されるエステルの両方を含むか;または、構成要素(b)が、エイコサペンタエン酸もしくはその許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸もしくはその許容されるエステルのうちの1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
エイコサペンタエン酸の許容されるエステルが、エイコサペンタエン酸のエチルエステルであり、ドコサヘキサエン酸の許容されるエステルが、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
構成要素(b)が、ドコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、α-リノレン酸またはその許容されるエステル、エイコサトリエン酸またはその許容されるエステル、ヘキサデカトリエン酸またはその許容されるエステル、ステアリドン酸またはその許容されるエステル、エイコサテトラエン酸またはその許容されるエステル、ヘンエイコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、テトラコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、およびニシン酸またはその許容されるエステルの1つまたは複数をさらに含む、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
組成物における構成要素(a)対構成要素(b)の重量比が、3:1~1:8の範囲にわたる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンA、ベンフォチアミン、ピコリン酸クロム、およびバナジウムの1つまたは複数をさらに含む、請求項1~4および6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ベルベリンの薬学的に許容される塩が、塩酸ベルベリン、硫酸ベルベリン、クエン酸ベルベリン、または他のベルベリン有機酸塩の1つまたは複数である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
代謝疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患もしくは障害、サルコペニア、筋萎縮症、炎症、がん、および/または肝疾患もしくは障害の1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造における、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
脂質およびグルコースの疾患または障害の1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造における、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
脂質異常症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高脂血症、糖尿病性脂質異常症、糖尿病性高脂血症、およびスタチン不耐性患者における脂質異常症の1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造における、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
1型および/または2型糖尿病の予防および/または処置のための医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、または、心臓発作、卒中、もしくは脚への血流の不足を含む大血管合併症の1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
脂肪肝、NAFLD、およびNASHの1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
血糖、総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、および低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-c)レベルの1つまたは複数を低下させるための医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-c)レベルを増大させるための医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
肝酵素レベルを正常化するための医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
インスリンシグナル伝達経路を調整するための医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
インスリンの分泌の増大、インスリン感受性の改善、肝臓における糖新生の低減、グルコース吸収の低減、脂質異常症の寛解、および抗炎症の1つまたは複数のための医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤とを含む、薬学的調製物。
【請求項21】
ソフトゲルカプセル用である、請求項20に記載の薬学的調製物。
【請求項22】
100 mg~300 mgの範囲にわたる重量の構成要素(a)と、100 mg~800 mgの範囲にわたる重量の構成要素(b)とを含む、請求項20または21に記載の薬学的調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年11月13日に提出された米国特許仮出願第62/254,739号の優先権を主張し、それはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、概して、新規組成物、ならびにその調製法および治療的使用法に関する。特に、本発明は、ベルベリン(BBR)をオメガ-3脂肪酸、例えば、エイコサペンタエン酸(EPA)および/もしくはドコサヘキサエン酸(DHA)、またはそのエステルと組み合わせた新規薬学的組成物、およびその使用法に関する。本発明の薬学的組成物は、脂質異常症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高脂血症、糖尿病性脂質異常症、糖尿病性高脂血症、スタチン不耐性患者における脂質異常症、糖尿病、糖尿病合併症、高コレステロール血症、または肥満などの代謝疾患または障害を含む、様々な疾患または障害を処置および/または予防する際に有用である。加えて、本発明の薬学的組成物は、アテローム性動脈硬化症、心疾患、神経変性疾患、炎症、がん、および、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、胆汁うっ滞性肝疾患、または肝臓の移植片対宿主病などの様々な肝疾患または障害を処置および/または予防する際に有用である。さらに、本発明の薬学的組成物は、慢性ウイルス関連肝疾患およびアルコール関連肝疾患における肝機能を改善する際に有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
脂質異常症は、リポタンパク質の過剰産生(高脂血症)または欠乏を含む、リポタンパク質代謝の障害である。脂質異常症は、血中の総コレステロール、「悪玉」低密度リポタンパク質コレステロール、およびトリグリセリド濃度の上昇、ならびに「善玉」高密度リポタンパク質コレステロール濃度の低下によって顕在化され得る。脂質異常症は、脂質異常症の一般的原因である糖尿病を含む多くの状況で想定されている。
【0004】
高脂血症(または高リポタンパク血症)は、脂質異常症の最も一般的な形である。高脂血症は、血中のいずれかのまたはすべての脂質および/またはリポタンパク質の異常に上昇したレベルによって特徴付けられる。診断は、総コレステロール、トリグリセリド、および個々のリポタンパク質の血漿レベルを測定することによる。処置には、食事の変更、運動、および脂質低下薬が含まれる。高脂血症は、原発性サブタイプおよび続発性サブタイプに分けられる。原発性高脂血症は通常、遺伝的原因(受容体タンパク質における変異など)によるものであり、他方、続発性高脂血症は、糖尿病などの他の根底にある原因により生じる。脂質およびリポタンパク質の異常は、アテローム性動脈硬化症に対するその影響により、心血管疾患の修正可能な危険因子と考えられる。
【0005】
高血糖症は、血漿中の過剰量のグルコース循環によって特徴付けられる状態である。高血糖症は、命を脅かす状態であるケトアシドーシスが起こる可能性があるため、適時に処置されない場合は重篤な状態となる恐れがあり、速やかな処置を必要とする。慢性高血糖症は、心臓に対する傷害を引き起こし、冠動脈心疾患または心不全歴を有さない対象における心臓発作および死亡と強く関連している。
【0006】
糖尿病は代謝の障害である。これは大流行しており、今日では世界中で3億人を超える人々が糖尿病を抱えて生きていると推定される。有効な予防はなく、この数は2030年までに5億人にまで増えるであろう。糖尿病には1型糖尿病、2型糖尿病、および妊娠糖尿病の3つの主な型がある。この中で、2型糖尿病は糖尿病の最も一般的な形であり、症例の90~95%を占める。2型糖尿病は、インスリン分泌障害、肝糖産生増大、および末梢組織のインスリンへの反応低下、すなわち、インスリン抵抗性によって特徴付けられる。2型糖尿病の管理のために多くの治療処置が利用可能であるが、様々な副作用を伴うことが多い。最適な治療法は、安全であるべきであり、かつ、相補的な作用機序を有する複合薬の早期開始を含むべきである。
【0007】
糖尿病の理解および管理における過去数十年間におよぶ持続的な努力と有意義な進歩にもかかわらず、糖尿病患者は、高血糖、高コレステロール、および高血圧により、心血管、眼、腎臓、および神経に波及するいくつかの重篤な合併症の高いリスクを有し続け、多くは実際にそれらを患っている。心血管疾患は、糖尿病患者における最も一般的な死因である。腎臓の小血管の損傷が原因で起こる糖尿病性腎症は、全体で腎機能低下または腎機能不全をきたす。糖尿病性神経障害は、血糖レベルおよび血圧が高すぎる場合の体中の神経への損傷により引き起こされる。ほとんどの糖尿病患者は、視力低下または失明を引き起こす糖尿病性網膜症を発生する。一貫して高レベルの血糖は、高血圧および高コレステロールと共に、糖尿病性網膜症の主因である。いくつかの抗糖尿病薬の開発にもかかわらず、糖尿病合併症の処置および管理のために有効に使用し得る治療薬に対する必要性は満たされていない。
【0008】
代謝症候群は、一緒に起こる危険因子群(例えば、腹部(中心性)肥満、血圧上昇、空腹時血漿グルコース上昇、高血清トリグリセリド、および低い高密度コレステロール(HDL)レベル)を意味する用語である。代謝症候群は、心血管疾患、特に心不全、および糖尿病を発生するリスクを高めることが明らかにされている。研究により、米国における代謝症候群の有病率は成人集団で約34%であると推定されている。治療薬が利用可能であるが、第一選択の処置は生活様式の変更である。高用量スタチンは、心血管リスクを低減するために推奨されているが、特に代謝症候群を有する患者では、糖尿病へのより高度な進行に結びつけられている。
【0009】
心血管疾患(CV)は、「心疾患」なる用語と交換可能に用いられることが多く、冠動脈疾患、不整脈、うっ血性心不全、脳血管疾患などの心臓に影響をおよぼす一連の状態を意味する。CVの多くの形は健康的な生活様式の選択、アテローム性動脈硬化症、高血圧、糖尿病または肥満などの状態を抗血小板薬、抗凝固薬、ジギタリス、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、ベータ遮断薬、およびLDLコレステロール低下薬などの様々な薬剤でコントロールすることにより、予防または処置することができる。併存疾患により、患者は複数の薬剤を服用する必要があることが多く、1つの丸剤が複数の異常を標的とし得るとすれば、それは望ましいであろう。
【0010】
スタチンは、心血管疾患を予防する能力が立証されているため、最も広く処方される薬剤の1つである。スタチンは一般によく耐容されるが、一部の患者ではスタチン不耐性が起こり、注意深い考慮を必要とする。加えて、患者は時に、真性糖尿病、がん、および記憶喪失を引き起こすスタチンの潜在的リスクについて心配し、その薬剤を続けるべきかどうか疑うことが多い。スタチン不耐性患者に対し、非スタチンLDL-C-低下薬を用いることができる;しかし、PCSK9阻害剤が承認されるまで、スタチンと同じくらい有効な承認薬はなかった。これらの患者のために、代わりとなる有効な治療薬の開発が非常に必要とされている。
【0011】
神経変性疾患は、主にヒトの脳のニューロンに影響をおよぼす一連の状態に対する総称である。ニューロンは、脳および脊髄を含む神経系の構成単位である。ニューロンは、損傷するかまたは死滅した場合、通常はそれら自体を再生または交換することはない。神経変性疾患の例には、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病が含まれる。神経変性疾患は、神経細胞の進行性変性および/または死滅をきたす、不治で衰弱性の状態である。神経変性疾患に対する満たされていない医学的必要性は、有効な治療薬の開発を切迫して必要としている。
【0012】
がんは、体の他の部分に侵襲または拡散する可能性を有する、異常な細胞成長に関連する疾患群である。2012年には、世界で約1400万件の新しいがん症例が発生した。最も一般的ながんの型には、男性では肺がん、前立腺がん、直腸結腸がんおよび胃がん、ならびに女性では乳がん、直腸結腸がん、肺がんおよび子宮頸がんが含まれる。がんに対して、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、標的治療および緩和ケアを含む、多くの処置選択肢が存在するが、がんは依然として健康に対する最も大きな脅威であり、ヒトの全死亡の約15%の原因である。
【0013】
脂肪肝は、脂肪変性のプロセスを介してトリグリセリド脂肪の大きい空胞が肝細胞中に蓄積する、可逆性の状態である。複数の原因を有するにもかかわらず、脂肪肝は、アルコール摂取が過剰な肥満の人において世界中で起こっている単一の疾患と考えることができる。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、過剰なアルコールを摂取することなく、過剰な脂肪が患者の肝臓に沈着したときに起こる、脂肪性肝疾患の1つの形である。NAFLDは、一般には、インスリン抵抗性、高血圧および肥満などの代謝症候群に関連すると認識されている。先進国の成人集団の約3分の1がNAFLDに罹っている。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、進行性線維症(瘢痕化)、硬変、ならびに最終的には肝機能不全および死亡につながり得る慢性炎症を伴う、NAFLDの最も極端な形である。NASHはアルコール性肝疾患に似ているが、アルコールをほとんど、またはまったく飲まない人で起こる。NASHの主な特徴は、炎症および損傷を伴う、肝臓内の脂肪である。「無症状」の肝疾患であることが多いNASHの患者のほとんどは、体調が良く、肝臓の問題を有していると気づいていない。それにもかかわらず、NASHは重症であり得、肝臓が永久的に損傷され、瘢痕化し、もはや適切にはたらかなくなれば、硬変につながり得る。
【0014】
現在のところ、NAFLD患者の約4分の1で起こる、NASHの処置のために承認された薬物はない。NASHに対するケアの現行の標準は、体重減少と、身体活動性の増大を含む。米国人の2~5%がNASHに罹っており、肥満の米国人の数が増大しているために、おそらくより一般的になりつつある。過去10年間で、肥満の割合は成人では2倍、小児では3倍になっている。
【0015】
糖尿病、糖尿病合併症、脂質異常症、肥満、代謝症候群、糖尿病前症、心疾患、神経変性疾患、NAFLD、NASH、筋萎縮症、炎症およびがんなどの疾患または障害の管理に利用可能な治療および方法は最適以下である。そのような疾患または障害を処置するための新規および改善された治療および方法が進行中かつ緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、部分的には、ベルベリンをオメガ-3脂肪酸、例えば、EPAおよび/もしくはDHA、またはそのエステルと組み合わせた新規薬学的組成物、ならびに、様々な疾患または障害を処置および/または予防する際の関連するその使用法に基づいている。
【0017】
本発明の薬学的組成物は、脂質異常症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高脂血症、糖尿病性脂質異常症、糖尿病性高脂血症、スタチン不耐性患者における脂質異常症、糖尿病、糖尿病合併症、高コレステロール血症、肥満、代謝症候群、糖尿病前症、心疾患、神経変性疾患、炎症、およびがんなどの脂質およびグルコースの疾患または障害、ならびに、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、胆汁うっ滞性肝疾患、または肝臓の移植片対宿主病などの様々な肝疾患または障害を含む、様々な疾患または障害を処置するために利用することができる。
【0018】
1つの局面において、本発明は、概して、(a)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;(b)エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの1つまたは両方;ならびに(c)任意で、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む、薬学的組成物に関する。ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの1つまたは両方は、対象に投与したときに、ヒトを含む哺乳動物の、代謝疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、神経変性疾患もしくは障害、炎症、がん、および肝疾患もしくは障害、またはその関連する状態から選択される1つまたは複数の疾患または障害を処置、予防、または軽減するのに十分な量で存在する。
【0019】
もう1つの局面において、本発明は、概して、約100 mg~約300 mgの範囲にわたるBBRと、約100 mg~約800 mg EPA/DHAの範囲にわたるEPA/DHAとを含む、薬学的組成物の単位剤形に関する。
【0020】
さらにもう1つの局面において、本発明は、概して、医薬の製造における使用に関する。
【0021】
さらにもう1つの局面において、本発明は、概して、疾患または障害を処置、軽減、または予防する際の使用に関する。使用は、それを必要としている対象に、(a)治療的有効量のベルベリン;(b)治療的有効量の、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの1つまたは両方、ならびに(c)任意で、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む、薬学的組成物を投与する段階を含み、疾患または障害は、ヒトを含む哺乳動物の、代謝疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、神経変性疾患もしくは障害、サルコペニア、筋萎縮症、炎症、がん、および肝疾患もしくは障害、またはその関連する状態から選択される。
【0022】
さらにもう1つの局面において、本発明は、概して、本明細書において開示する組成物と、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤とを含む、薬学的製剤に関する。
【0023】
さらにもう1つの局面において、本発明は、概して、下記を含むキットに関する:(i)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;(ii)エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの1つまたは両方;(iii)ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンA、ベンフォチアミン、ピコリン酸クロム、およびバナジウムからなる群より選択される1つまたは複数の作用物質;ならびに(iv)作用物質(i)、(ii)、および(iii)を、代謝障害、アテローム性動脈硬化症、心疾患、神経変性疾患、および肝疾患から選択される1つまたは複数の疾患または障害を有するか、またはそれを有するリスクのある患者に投与するための説明書。
[本発明1001]
(a)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;および
(b)オメガ-3脂肪酸またはその許容されるエステル
を含む、組成物。
[本発明1002]
構成要素(b)が、ドコサヘキサエン酸またはその許容されるエステル、エイコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、ドコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、α-リノレン酸またはその許容されるエステル、エイコサトリエン酸またはその許容されるエステル、ヘキサデカトリエン酸またはその許容されるエステル、ステアリドン酸またはその許容されるエステル、エイコサテトラエン酸またはその許容されるエステル、ヘンエイコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、テトラコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、およびニシン酸またはその許容されるエステルからなる群の1つまたは複数より選択される、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
構成要素(b)が、エイコサペンタエン酸もしくはその許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸もしくはその許容されるエステルの両方を含むか;または、構成要素(b)が、エイコサペンタエン酸もしくはその許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸もしくはその許容されるエステルのうちの1つを含む、本発明1001の組成物。
[本発明1004]
エイコサペンタエン酸の許容されるエステルが、エイコサペンタエン酸のエチルエステルであり、ドコサヘキサエン酸の許容されるエステルが、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルである、本発明1003の組成物。
[本発明1005]
構成要素(b)が、ドコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、α-リノレン酸またはその許容されるエステル、エイコサトリエン酸またはその許容されるエステル、ヘキサデカトリエン酸またはその許容されるエステル、ステアリドン酸またはその許容されるエステル、エイコサテトラエン酸またはその許容されるエステル、ヘンエイコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、テトラコサペンタエン酸またはその許容されるエステル、およびニシン酸またはその許容されるエステルの1つまたは複数をさらに含む、本発明1003または1004の組成物。
[本発明1006]
組成物における構成要素(a)対構成要素(b)の重量比が、3:1~1:8の範囲にわたる、本発明1001~1004のいずれかの組成物。
[本発明1007]
ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンA、ベンフォチアミン、ピコリン酸クロム、およびバナジウムの1つまたは複数をさらに含む、本発明1001~1004および1006のいずれかの組成物。
[本発明1008]
ベルベリンの薬学的に許容される塩が、塩酸ベルベリン、硫酸ベルベリン、クエン酸ベルベリン、または他のベルベリン有機酸塩の1つまたは複数である、本発明1001~1004のいずれかの組成物。
[本発明1009]
代謝疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患もしくは障害、サルコペニア、筋萎縮症、炎症、がん、および/または肝疾患もしくは障害の1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造における、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1010]
脂質およびグルコースの疾患または障害の1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造における、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1011]
脂質異常症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高脂血症、糖尿病性脂質異常症、糖尿病性高脂血症、およびスタチン不耐性患者における脂質異常症の1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造における、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1012]
1型および/または2型糖尿病の予防および/または処置のための医薬の製造のための、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1013]
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、または、心臓発作、卒中、もしくは脚への血流の不足を含む大血管合併症の1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造のための、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1014]
脂肪肝、NAFLD、およびNASHの1つまたは複数の予防および/または処置のための医薬の製造のための、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1015]
血糖、総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、および低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-c)レベルの1つまたは複数を低下させるための医薬の製造のための、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1016]
高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-c)レベルを増大させるための医薬の製造のための、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1017]
肝酵素レベルを正常化するための医薬の製造のための、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1018]
インスリンシグナル伝達経路を調整するための医薬の製造のための、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1019]
インスリンの分泌の増大、インスリン感受性の改善、肝臓における糖新生の低減、グルコース吸収の低減、脂質異常症の寛解、および抗炎症の1つまたは複数のための医薬の製造のための、本発明1001~1008のいずれかの組成物の使用。
[本発明1020]
本発明1001~1008のいずれかの組成物と、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤とを含む、薬学的調製物。
[本発明1021]
ソフトゲルカプセル用である、本発明1020の薬学的調製物。
[本発明1022]
100 mg~300 mgの範囲にわたる重量の構成要素(a)と、100 mg~800 mgの範囲にわたる重量の構成要素(b)とを含む、本発明1020または1021の薬学的調製物。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】BBRの、グルコースおよび脂質を調節する作用機序を示す。
図2】Cmaxについて、BBRの生物学的利用能の改善を示す。
図3】AUC(0-t)について、BBRの生物学的利用能の改善を示す。
図4】イヌにおけるBBR血漿中濃度対時間の曲線のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
図面および実施例に関連する以下の説明は、本発明によって解決される問題および本発明の有益な実施を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
【0026】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。有機化学の一般原則、ならびに特定の官能部分および反応性は、"Organic Chemistry", Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 2006に記載されている。
【0027】
本発明の一定の化合物は、特定の幾何または立体異性型で存在してもよい。本発明は、シス-およびトランス-異性体、R-およびS-鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、そのラセミ混合物、ならびにその他の混合物を含む、すべてのそのような化合物を、本発明の範囲内に入るとして企図する。さらなる不斉炭素原子が、アルキル基などの置換基に存在してもよい。すべてのそのような異性体、ならびにその混合物は、本発明に含まれることが意図される。
【0028】
任意の様々な異性体比を含む異性体混合物を、本発明に従って用いてもよい。例えば、2つだけの異性体を組み合わせる場合、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10、95:5、96:4、97:3、98:2、99:1、または100:0の異性体比を含む混合物が本発明によって企図される。当業者であれば、より複雑な異性体混合物に対して、同様の比が企図されることを容易に理解するであろう。
【0029】
例えば、本発明の化合物の特定の鏡像異性体が望まれる場合、それを不斉合成により、または、得られるジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断して、純粋な所望の鏡像異性体を得る、キラル補助物質を用いての誘導体化により調製してもよい。または、分子がアミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合、適切な光学活性酸または塩基とジアステレオマー塩を形成し、続いてそのように形成したジアステレオマーを当技術分野において周知の分別結晶化またはクロマトグラフィ法によって分割し、その後に純粋な鏡像異性体を回収する。
【0030】
本開示の利点を考慮して、当業者であれば、本明細書に記載の合成法は様々な保護基を使用し得ることを理解するであろう。本明細書において用いられる「保護基」なる用語は、反応を多官能性化合物の別の反応性部位で選択的に実施し得るように、特定の官能部分、例えば、O、S、またはNを一時的にブロックすることを意味する。好ましい態様において、保護基は、良好な収率で選択的に反応して、計画した反応に対して安定な保護基質を生じ;保護基は、好ましくは他の官能基を攻撃しない、容易に利用可能な、非毒性試薬により、良好な収率で選択的に除去可能であるべきであり;保護基は、容易に分離可能な誘導体を形成し(より好ましくは、新しいステレオジェン中心の生成なしに);かつ保護基は、さらなる反応部位を避けるために、最低限のさらなる官能基を有する。酸素、硫黄、窒素、および炭素保護基を用いてもよい。様々な保護基の例は、Protective Groups in Organic Synthesis, Third Ed. Greene, T.W. and Wuts, P.G., Eds., John Wiley & Sons, New York: 1999に見出すことができる。
【0031】
本明細書に記載の化合物は、任意の数の置換基または官能部分で置換されていてもよいことが理解されるであろう。本明細書の全体を通して、基およびその置換基は、安定な部分および化合物を提供するように選択してもよい。
【0032】
本明細書において用いられる、活性物質の「有効量」なる用語は、所望の生物反応を誘発するのに十分な量を意味する。当業者には理解されるとおり、本発明の化合物の有効量は、所望の生物学的終点、化合物の薬物動態、処置中の疾患、投与の様式、および患者などの因子に応じて変動することがある。
【0033】
本明細書において用いられる「疾患または障害を処置、軽減、または予防すること」なる用語は、そのような状態が起こる前または起こった後にそれを改善することを意味する。同等の未処置の対照と比べて、そのような軽減または予防の程度は、任意の標準の技術により測定して、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、または100%である。
【0034】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤」なる用語は、対象となる薬剤を体の1つの器官または部分から、体の別の器官または部分へと運搬または輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの、薬学的に許容される材料、組成物または媒体を意味する。各担体は、製剤中の他の成分と適合性であり、患者に有害でないとの意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例には下記が含まれる:ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどの、セルロースおよびその誘導体;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびプロピレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;および薬学的製剤中で用いられる他の非毒性適合性物質。湿潤剤、乳化剤と、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、およびポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマーなどの滑沢剤、ならびに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、着香および芳香剤、保存剤および抗酸化剤も、組成物中に存在し得る。
【0035】
本明細書において用いられる「単離した」または「精製した」なる用語は、その天然状態で通常それに付随する構成要素を実質的または本質的に含まない材料を意味する。純度および均質性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高性能液体クロマトグラフィなどの分析化学技術を用いて判定する。
【0036】
本明細書において用いられる「対象」なる用語は、特定の処置の受容者となる、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類などを含むが、それらに限定されるわけではない、任意の動物(例えば、哺乳動物)を意味する。典型的には、「対象」および「患者」なる用語は、ヒト対象に関して本明細書において交換可能に用いられる。
【0037】
本明細書において用いられる「十分な量」とは、糖尿病などの代謝障害を、臨床的に適切な様式で処置、予防、または軽減するのに必要とされる、単独または別の治療法と組み合わせての、化合物の量を意味する。糖尿病が原因の、または糖尿病に寄与する状態の治療的処置のために、本発明を実施するのに用いる活性化合物の十分な量は、投与の様式、哺乳動物または患者の年齢、体重、および全身の健康に応じて変動する。最終的に、処方者が適切な量および投与法を決定することになる。加えて、有効量は、規制当局(米国食品医薬品局などの)により決定され、承認されている、各作用物質単独よりも、糖尿病などの代謝障害を有する患者の処置において安全かつ有効な、本発明の組み合わせにおける化合物の量であってもよい。
【0038】
本明細書において用いられる「低用量」とは、任意のヒト疾患または状態の処置のために所与の投与経路用に製剤された特定の化合物の、最も低い標準推奨用量よりも少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、20%、50%、80%、90%、または95%)少ないことを意味する。例えば、グルコースレベルを低下させ、吸入による投与用に製剤された作用物質の低用量は、経口投与用に製剤された同じ作用物質の低用量とは異なる。
【0039】
本明細書において用いられる「高用量」とは、任意のヒト疾患または状態の処置用の特定の化合物の、最も高い標準推奨用量よりも少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、20%、50%、100%、200%、または300%)多いことを意味する。
【0040】
同位体標識化合物も、本開示の範囲内である。本明細書において用いられる「同位体標識化合物」とは、1つまたは複数の原子が、天然で通常見られる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられている、それぞれ本明細書に記載の、その薬学的塩およびプロドラッグを含む、本開示の化合物を意味する。本開示の化合物に組み込むことができる同位体の例には、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体が含まれる。
【0041】
本開示の化合物を同位体標識することにより、化合物は薬物および/または基質組織分布検定において有用であり得る。トリチウム(3H)および炭素-14(14C)標識した化合物は、それらの調製の容易さおよび検出可能性により、特に好ましい。さらに、重水素(2H)などのより重い同位体による置換は、代謝安定性の増大、例えば、インビボでの半減期延長または必要とされる用量低減の結果、一定の治療的利点を提供することができ、したがって、いくつかの状況において好まれ得る。その薬学的塩、エステル、およびプロドラッグを含む、本開示の同位体標識化合物は、当技術分野において公知の任意の手段によって調製することができる。
【0042】
さらに、通常多く存在する水素(1H)の重水素などのより重い同位体による置換は、例えば、吸収、分布、代謝および/または排出(ADME)特性の改善の結果、一定の治療的利点を提供することができ、有効性、安全性、および/または耐容性が改善された薬物を創製する。利点は、通常多く存在する12Cの13Cによる置き換えからも得られることがある。WO 2007/005643、WO 2007/005644、WO 2007/016361、およびWO 2007/016431を参照されたい。
【0043】
本開示の化合物の立体異性体(例えば、シスおよびトランス異性体)およびすべての光学異性体(例えば、RおよびS鏡像異性体)、ならびにそのような異性体のラセミ、ジアステレオマーおよび他の混合物は、本開示の範囲内である。
【0044】
本発明の化合物は、それらの調製の後、好ましくは単離および精製して、95%以上の重量を含む(「実質的に純粋な」)組成物を得、次いでこれを本明細書に記載のとおりに使用または製剤する。一定の態様において、本発明の化合物は99%よりも高純度である。
【0045】
本発明の化合物の溶媒和物および多形も本明細書において企図される。本発明の化合物の溶媒和物には、例えば、水和物が含まれる。
【0046】
可能性のある製剤には、経口、舌下、口腔内、非経口(例えば、皮下、筋肉内、または静脈内)、直腸、経皮を含む局所、鼻内および吸入投与に適したものが含まれる。特定の患者に対して最も適切な投与手段は、処置中の疾患もしくは状態の性質および重症度、または使用中の治療法の性質、ならびに活性化合物の性質に依存することになる。
【0047】
本発明は、ベルベリンをオメガ-3脂肪酸、例えば、EPAおよび/もしくはDHA、またはそのエステルと組み合わせた様々な新規組成物、ならびに、様々な疾患または障害を処置および/または予防する際の関連するその使用法を提供する。
【0048】
本発明の鍵となる特徴は、(1)EPAおよび/もしくはDHA、またはそのエステルの生物学的利用能を増大させ、かつ、その一定の副作用のリスクを低減するベルベリンによって、ならびに(2)ベルベリンの生物学的利用能を有意に改善するEPAおよび/もしくはDHA、またはそのエステルによって生じる、独特のかつ相乗的な薬理作用、および副作用の低減である。薬学的組成物におけるこれらの作用物質の各々の注意深く選択された用量は、患者に対して最適化された全体的な治療的利点を提供する。したがって、初めて、単一の薬学的組成物が、2つ以上の疾患および障害、例えば、脂質異常症および高血糖症に有効に対処することができる。
【0049】
本明細書において開示する薬学的組成物および方法によって処置および/または予防され得る疾患および障害には、脂質異常症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高脂血症、糖尿病性脂質異常症、糖尿病性高脂血症、スタチン不耐性患者における脂質異常症、糖尿病、糖尿病合併症、高コレステロール血症、肥満、代謝症候群、または糖尿病前症などの代謝疾患または障害、心疾患、神経変性疾患、炎症、およびがん、ならびに、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、胆汁うっ滞性肝疾患、または肝臓の移植片対宿主病などの様々な肝疾患または障害が含まれる。本発明の化合物はまた、慢性ウイルス関連肝疾患およびアルコール関連肝疾患における肝機能を改善する際にも有用である。
【0050】
1つの局面において、本発明は、概して、(a)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;(b)エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの1つまたは両方;ならびに(c)任意で、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む、薬学的組成物に関する。ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの1つまたは両方は、対象に投与したときに、ヒトを含む哺乳動物の、代謝疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、神経変性疾患もしくは障害、サルコペニア、筋萎縮症、炎症、がん、および肝疾患もしくは障害、またはその関連する状態から選択される1つまたは複数の疾患または障害を処置、予防、または軽減するのに十分な量で存在する。
【0051】
黄連(Rhizoma Coptidis)から単離されたイソキノリンアルカロイドである、ベルベリン(5,6-ジヒドロ-9,10-ジメトキシベンゾ[g]-1,3-ベンゾジオキソロ[5,6-a]キノリジニウム)は、中国において、様々な胃腸疾患を処置するための医薬用途の長い歴史を有してきた。ベルベリンは、メギ属(Berberis)、ヒドラスチス(Hydrastis canadensis)、ヒイラギナンテンモドキ(Xanthorhiza simplicissima)、キハダ(Phellodendron amurense)、トウオウレン(Coptis chinensis)、イボツヅラフジ(Tinospora cordifolia)、アザミゲシ(Argemone mexicana)、およびハナビシソウ(Eschscholzia californica)などの様々な植物中で見出される。過去20年間に、インビトロおよびインビボの研究により、糖尿病、脂質異常症、がん、神経保護、および心血管疾患に対して単独または組み合わせで用いたときのベルベリンの有効性が立証されている。
【0052】
図1は、様々なベルベリンの、グルコースおよび脂質を調節する作用機序を示す。
【0053】
現在、ベルベリンは、塩化物塩、硫酸塩、またはタンニン酸塩の形で商業的に入手することができ、これまでの研究のほぼすべてにおいて塩酸ベルベリンが用いられてきた。現在入手可能な形のベルベリンは生物学的利用能が低いため、慢性および全身性の疾患の処置のためのその適用は極めて困難である。
【0054】
一定の態様において、薬学的組成物は、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの両方を含む。
【0055】
エイコサペンタエン酸(EPAまたは(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-5,8,11,14,17-イコサペンタエン酸)、およびドコサヘキサエン酸(DHAまたは(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエン酸)は、2つの最もよく研究されているオメガ-3多価不飽和脂肪酸である。EPAおよびDHAに加えて、天然に存在し、一連の治療的利点を有する多くのさらなるオメガ-3脂肪酸には、ドコサペンタエン酸(DPA)、α-リノレン酸(ALA)、エイコサトリエン酸(ETE)などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0056】
一定の態様において、薬学的組成物は、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルのうちの1つを含む。
【0057】
エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸の1つまたは両方に加えてまたはそれらの代わりに、他のオメガ-3脂肪酸もまた、本明細書で用いられてもよい。例えば、ドコサペンタエン酸、α-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ヘキサデカトリエン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、ヘンエイコサペンタエン酸、テトラコサペンタエン酸、およびニシン酸が、EPAおよびDHAに加えてまたはそれらの代わりに、薬学的組成物ベルベリンにおいて用いられてもよい。したがって、本発明の薬学的組成物は、BBRまたはその薬学的に許容される塩、および、ドコサヘキサエン酸(DHA)またはその薬学的に許容されるエステル、エイコサペンタエン酸(EPA)またはその薬学的に許容されるエステル、ドコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、α-リノレン酸またはその薬学的に許容されるエステル、エイコサトリエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、ヘキサデカトリエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、ステアリドン酸またはその薬学的に許容されるエステル、エイコサテトラエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、ヘンエイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、テトラコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、ニシン酸またはその薬学的に許容されるエステルを含む。
【0058】
一定の態様において、薬学的組成物は、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンA、ベンフォチアミン、ピコリン酸クロム、およびバナジウムからなる群から選択される1つまたは複数の作用物質をさらに含む。
【0059】
一定の態様において、疾患または障害は、脂質およびグルコースの疾患または障害から選択される。
【0060】
一定の態様において、脂質およびグルコースの疾患または障害は、脂質異常症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高脂血症、糖尿病性脂質異常症、糖尿病性高脂血症、スタチン不耐性患者における脂質異常症から選択される。
【0061】
一定の態様において、疾患または障害は、1型または2型糖尿病である。
【0062】
一定の態様において、疾患または障害は、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、または、心臓発作、卒中、もしくは脚への血流の不足を含む大血管合併症である。
【0063】
一定の態様において、疾患または障害は、心疾患またはアテローム性動脈硬化症である。
【0064】
一定の態様において、疾患または障害は、神経変性疾患である。
【0065】
一定の態様において、疾患または障害は、脂肪肝、NAFLD、およびNASHから選択される。
【0066】
一定の態様において、薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む。
【0067】
一定の態様において、エイコサペンタエン酸の薬学的に許容されるエステルは、エイコサペンタエン酸のエチルエステルであり、ドコサヘキサエン酸の薬学的に許容されるエステルは、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルである。
【0068】
一定の態様において、薬学的組成物は、(a)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;(b)エイコサペンタエン酸のエチルエステルおよびドコサヘキサエン酸のエチルエステル;ならびに(c)薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む。
【0069】
本明細書において用いられる、「薬学的に許容される塩」なる用語は、それが含有され得る薬学的組成物の任意の他の構成要素との、結果として生じるいかなる実質的な望ましくない生物学的効果も、または結果として生じるいかなる有害性相互作用もなく投与され得る、開示されている化合物の薬学的に許容される酸付加塩または薬学的に許容される塩基付加塩のいずれかを意味する。
【0070】
一定の態様において、ベルベリンの薬学的に許容される塩は、ベルベリンカチオンと、塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルファート、ビスルファート、ヘミスルファート、ニトラート、ホスファート、酸性ホスファート、イソニコチナート、アセタート、ラクタート、サリチラート、シトラート、タルタラート、パントテナート、ビタルタラート、アスコルバート、スクシナート、タンナート、マレアート、ゲンチシナート、フマラート、グルコナート、グルクロナート、サッカラート、ホルマート、ベンゾアート、グルタマートなどのアニオンとの塩から選択され得る。
【0071】
一定の態様において、薬学的組成物は、約3:1~約1:8(例えば、約3:1~約1:5、約3:1~約1:3、約3:1~約1:2、約3:1~約1:1、約3:1~約2:1、約2:1~約1:8、約2:1~約1:5、約2:1~約1:2、約2:1~約1:1、約1:1~約1:8、約1:1~約1:5、約1:1~約1:3、約3.33:1~約1:3、約3.33:1~約3:1、約3.33:1~約2:1、約3.33:1~約1:1、約3.33:1~約1:2等)のBBR対EPA/DHAの重量比の、BBR対EPA/DHAを含む。
【0072】
本明細書において用いられる、「薬学的に許容されるエステル」なる用語は、インビボで加水分解し、ヒトの身体において容易に分解して親化合物またはその塩を残すものを含む、エステルを意味する。特定のエステルの例には、酸と、置換または非置換の脂肪族アルコール(R-OH、式中、RはC1-C6アルキル基である)とによって形成されるエステル、例えば、エチルエステルまたはプロピルエステルが含まれる。
【0073】
もう1つの局面において、本発明は、概して、約100 mg~約300 mg(例えば、約100 mg~約250 mg、約100 mg~約200 mg、約100 mg~約150 mg、約150 mg~約300 mg、約200 mg~約300 mg、約250 mg~約300 mg、約150 mg~約250 mg)の範囲にわたるBBRと、約100 mg~約800 mg EPA/DHA(例えば、約100 mg~約700 mg、約100 mg~約600 mg、約100 mg~約500 mg、約100 mg~約400 mg、約100 mg~約300 mg、約100 mg~約200 mg、約200 mg~約800 mg、約300 mg~約800 mg、約400 mg~約800 mg、約500 mg~約800 mg、約600 mg~約800 mg、約700 mg~約800 mg、約250 mg~約750 mg、約500 mg~約750 mg)の範囲にわたるEPA/DHAとを含む、薬学的組成物の単位剤形に関する。
【0074】
さらにもう1つの局面において、本発明は、概して、疾患または障害を処置、軽減、または予防する方法に関する。方法は、それを必要としている対象に、(a)治療的有効量のベルベリン;(b)治療的有効量の、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの1つまたは両方、ならびに(c)任意で、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む、薬学的組成物を投与する段階を含む。疾患または障害は、ヒトを含む哺乳動物の、代謝疾患もしくは障害、心疾患もしくは障害、神経変性疾患もしくは障害、サルコペニア、筋萎縮症、炎症、がん、および肝疾患もしくは障害、またはその関連する状態から選択される。
【0075】
一定の態様において、薬学的組成物は、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの両方を含む。
【0076】
使用の一定の態様において、薬学的組成物は、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルのうちの1つを含む。
【0077】
使用の一定の態様において、薬学的組成物は、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンA、ベンフォチアミン、ピコリン酸クロム、およびバナジウムからなる群より選択される1つまたは複数の作用物質をさらに含む。
【0078】
使用の一定の態様において、エイコサペンタエン酸の薬学的に許容されるエステルは、エイコサペンタエン酸のエチルエステルであり、ドコサヘキサエン酸の薬学的に許容されるエステルは、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルである。
【0079】
使用の一定の態様において、薬学的組成物は、(a)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;(b)エイコサペンタエン酸のエチルエステルおよびドコサヘキサエン酸のエチルエステル;ならびに(c)薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む。
【0080】
使用の一定の態様において、ベルベリンの薬学的に許容される塩は、塩化物塩である。方法の一定の態様において、ベルベリンの薬学的に許容される塩は、硫酸塩である。
【0081】
使用の一定の態様において、薬学的組成物は、約3:1~約1:8(例えば、約3:1~約1:5、約3:1~約1:3、約3:1~約1:2、約3:1~約1:1、約3:1~約2:1、約2:1~約1:8、約2:1~約1:5、約2:1~約1:2、約2:1~約1:1、約1:1~約1:8、約1:1~約1:5、約1:1~約1:3、約3.33:1~約1:3、約3.33:1~約3:1、約3.33:1~約2:1、約3.33:1~約1:1、約3.33:1~約1:2等)のBBR対EPA/DHAの重量比の、BBRおよびEPA/DHAを含む。
【0082】
一定の態様において、使用は、約100 mg~約300 mg(例えば、約100 mg~約250 mg、約100 mg~約200 mg、約100 mg~約150 mg、約150 mg~約300 mg、約200 mg~約300 mg、約250 mg~約300 mg、約150 mg~約250 mg)のBBRと、約100 mg~約800 mg(例えば、約100 mg~約700 mg、約100 mg~約600 mg、約100 mg~約500 mg、約100 mg~約400 mg、約100 mg~約300 mg、約100 mg~約200 mg、約200 mg~約800 mg、約300 mg~約800 mg、約400 mg~約800 mg、約500 mg~約800 mg、約600 mg~約800 mg、約700 mg~約800 mg、約250 mg~約750 mg、約500 mg~約750 mg)のEPA/DHAとを含む、単位剤形を投与する段階を含む。方法の一定の態様において、単位剤形は、ソフトゲルカプセルである。方法の一定の態様において、単位剤形は、1日に1回、2回、または3回投与される。
【0083】
使用の一定の態様において、疾患または障害は、脂質およびグルコースの疾患または障害から選択される。方法の一定の態様において、脂質およびグルコースの疾患または障害は、脂質異常症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高脂血症、糖尿病性脂質異常症、糖尿病性高脂血症、スタチン不耐性患者における脂質異常症から選択される。方法の一定の態様において、疾患または障害は、1型または2型糖尿病である。方法の一定の態様において、疾患または障害は、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、または、心臓発作、卒中、もしくは脚への血流の不足を含む大血管合併症である。方法の一定の態様において、疾患または障害は、心疾患またはアテローム性動脈硬化症である。方法の一定の態様において、疾患または障害は、神経変性疾患である。方法の一定の態様において、疾患または障害は、脂肪肝、NAFLD、およびNASHから選択される。
【0084】
使用の一定の態様において、疾患または障害を処置、軽減、または予防することは、対象の血糖レベルを低減することによる。方法の一定の態様において、疾患または障害を処置、軽減、または予防することは、対象の総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、および低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-c)レベルを低減すること、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-c)レベルを増大させることによる。方法の一定の態様において、疾患または障害を処置、軽減、または予防することは、対象の肝酵素レベルを正常化することによる。方法の一定の態様において、疾患または障害を処置、軽減、または予防することは、グルコースレベルが低減するようにインスリンシグナル伝達経路を調整することによる。方法の一定の態様において、疾患または障害を処置、軽減、または予防することは、所望の薬理作用を達成するために、インスリンの分泌の増大、インスリン感受性の改善、肝臓における糖新生の低減、グルコース吸収の低減、脂質異常症の寛解、抗炎症など、複数の代謝経路を調節することによる。
【0085】
本明細書において開示するように、本発明は、代謝疾患または障害、心疾患または障害、神経変性疾患または障害、サルコペニア、筋萎縮症、炎症、がん、および肝疾患または障害の1つまたは複数を処置、軽減、または予防する際の、開示する組成物の使用を提供する。
【0086】
一定の態様において、開示する組成物は、脂質および/またはグルコースの疾患または障害を処置、軽減、または予防するための医薬の製造の際に有用である。
【0087】
一定の態様において、開示する組成物は、脂質異常症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高脂血症、糖尿病性脂質異常症、糖尿病性高脂血症、およびスタチン不耐性患者における脂質異常症の1つまたは複数を処置、軽減、または予防するための医薬の製造の際に有用である。
【0088】
一定の態様において、開示する組成物は、1型および/または2型糖尿病を処置、軽減、または予防するための医薬の製造の際に有用である。
【0089】
一定の態様において、開示する組成物は、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、または、心臓発作、卒中、または脚への血流の不足を含む大血管合併症の1つまたは複数を処置、軽減、または予防するための医薬の製造の際に有用である。
【0090】
一定の態様において、開示する組成物は、脂肪肝、例えば、非アルコール性またはアルコール性の脂肪性肝疾患、および非アルコール性脂肪性肝炎の1つまたは複数を処置、軽減、または予防するための医薬の製造の際に有用である。
【0091】
一定の態様において、開示する組成物は、血糖、総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、および低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-c)レベルから選択される、1つまたは複数の対象のレベルを低減するための医薬の製造の際に有用である。
【0092】
一定の態様において、開示する組成物は、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-c)レベルを増大させるための医薬の製造の際に有用である。
【0093】
一定の態様において、開示する組成物は、肝酵素レベルを正常化するための医薬の製造の際に有用である。
【0094】
一定の態様において、開示する組成物は、インスリンシグナル伝達経路を調整するための医薬の製造の際に有用である。
【0095】
一定の態様において、開示する組成物は、インスリンの分泌の増大、インスリン感受性の改善、肝臓における糖新生の低減、グルコース吸収の低減、脂質異常症の寛解、および抗炎症の1つまたは複数のための医薬の製造の際に有用である。
【0096】
さらにもう1つの局面において、本発明は、概して、下記を含むキットに関する:(i)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;(ii)エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの1つまたは両方;(iii)ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンA、ベンフォチアミン、ピコリン酸クロム、およびバナジウムからなる群より選択される1つまたは複数の作用物質;ならびに(iv)作用物質(i)、(ii)、および(iii)を、代謝障害、アテローム性動脈硬化症、心疾患、神経変性疾患、および肝疾患から選択される1つまたは複数の疾患または障害を有するか、またはそれを有するリスクのある患者に投与するための説明書。
【0097】
本発明はまた、本明細書において開示する組成物と、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤とを含む、薬学的調製物も提供する。様々な公知の賦形剤、担体、または希釈剤、例えば、可溶化剤、抗酸化剤、乳化剤などが使用されてもよい。
【0098】
一定の態様において、薬学的調製物は、ソフトゲルカプセル調製物である。ソフトゲルカプセル剤形は、ソフトカプセルまたはソフトピルとも呼ばれ、ゼラチンを溶解しない油または水に不溶性の液体もしくは懸濁液が、(例えば、円形、楕円、または管状の形状を有する)カプセル殻の中に封入されている調製物である。ソフトゲルカプセル調製物は、錠剤、硬カプセル、顆粒剤などと比較して、高い生物学的利用能、速やかな効果の発現、正確な用量、採用しやすさを有する。図4に示すように、同じ用量のベルベリンソフトゲルカプセルの生物学的利用能は、ベルベリン硬カプセルと比較して有意に改善され、Cmaxに達する時間も有意に加速された。
【0099】
本明細書において述べるように、一定の好ましい態様において、構成要素(b)は、好ましくは、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルの両方を含む。
【0100】
一定の他の態様において、構成要素(b)は、エイコサペンタエン酸またはその薬学的に許容されるエステル、およびドコサヘキサエン酸またはその薬学的に許容されるエステルのうちの1つを含む。
【0101】
一定の他の態様において、薬学的調製物は、約100 mg~約300 mgの範囲にわたる構成要素(a)と、約100 mg~約800 mgの範囲にわたる構成要素(b)とを含む。
【0102】
キットの一定の態様において、エイコサペンタエン酸の薬学的に許容されるエステルは、エイコサペンタエン酸のエチルエステルであり、ドコサヘキサエン酸の薬学的に許容されるエステルは、ドコサヘキサエン酸のエチルエステルである。キットの一定の態様において、ベルベリンの薬学的に許容される塩は、塩化物塩である。キットの一定の態様において、ベルベリンの薬学的に許容される塩は、硫酸塩である。
【0103】
キットの一定の好ましい態様において、BBR対EPA/DHAの重量比は、約3:1~約1:8(例えば、約3:1~約1:5、約3:1~約1:3、約3:1~約1:2、約3:1~約1:1、約3:1~約2:1、約2:1~約1:8、約2:1~約1:5、約2:1~約1:2、約2:1~約1:1、約1:1~約1:8、約1:1~約1:5、約1:1~約1:3、約3.33:1~約1:3、約3.33:1~約3:1、約3.33:1~約2:1、約3.33:1~約1:1、約3.33:1~約1:2等)である。一定の態様において、キットは、約100 mg~約300 mg(例えば、約100 mg~約250 mg、約100 mg~約200 mg、約100 mg~約150 mg、約150 mg~約300 mg、約200 mg~約300 mg、約250 mg~約300 mg、約150 mg~約250 mg)のBBRと、約100 mg~約800 mg(例えば、約100 mg~約700 mg、約100 mg~約600 mg、約100 mg~約500 mg、約100 mg~約400 mg、約100 mg~約300 mg、約100 mg~約200 mg、約200 mg~約800 mg、約300 mg~約800 mg、約400 mg~約800 mg、約500 mg~約800 mg、約600 mg~約800 mg、約700 mg~約800 mg、約250 mg~約750 mg、約500 mg~約750 mg)のEPA/DHAとを含む。
【0104】
キットは、例えば、対象の血糖レベルを低減することにより、対象の総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、および低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-c)レベルを低減し、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-c)レベルを増大させることにより、対象の肝酵素レベルを正常化することにより、グルコースレベルが低減するようにインスリンシグナル伝達経路を調整することにより、所望の薬理作用を達成するために、インスリンの分泌の増大、インスリン感受性の改善、肝臓における糖新生の低減、グルコース吸収の低減、脂質異常症の寛解、抗炎症など、複数の代謝経路を調節することにより、疾患または障害を処置、軽減、または予防するために用いられ得る。
【0105】
以下の実施例は、本発明の実施を例示するものであり、いかなる様式でも限定するものではない。
【実施例0106】
実施例1:ラットおよびイヌにおけるベルベリンとEPA/DHAとの組み合わせの薬物動態特性
本実施例は、本発明において開示するベルベリン(BBR)とEPAおよび/またはDHAとの組み合わせの薬物動態(PK)特性についての、ラットおよびイヌにおけるインビボ研究を記載する。
【0107】
7日間の馴化後、体重210~250 gの健常雄Sprague-Dawley(SD)ラットを、以下のように3群に無作為に分けた(1群あたり3匹のラット)。

【0108】
各群におけるラットを、それぞれ0.5%トラガカントガム中の上記に示した対応する試験品の懸濁液で経口処置した。試験動物の血液試料を、投薬前、および投薬後15分、30分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、8時間、24時間の時点で収集した。収集した血液試料(およそ400μL)を、ヘパリンナトリウムを含有するチューブに入れ、8,000 rpmで6分間、4℃で遠心分離して、血漿を分離した。各試料から取得した血漿を、分析するまで-80℃で保存した。
【0109】
BBRおよびEPAの血漿中濃度を、タンデム質量分析(LC-MS/MS)を用いて決定した。WinNonlin(登録商標)Professional 5.2(Pharsight; St. Louis MO)の非コンパートメントモジュールを用いて、PKパラメータを計算した。略語AUC(0-t)は、投薬時から最後の観察時までの曲線下面積を表し、AUC(0-∞)は、投薬時から無限大までの曲線下面積を表し、Cmaxは、検出された最大濃度を表す。濃度-時間曲線および選択したPKパラメータを、下記の表1に示す。
【0110】
(表1)単回経口投与後のSDラットにおけるBBRの選択薬物動態パラメータ
【0111】
ラットにおけるもう1つの単回投与薬物動態研究において、7日間の馴化後、体重210~250 gの健常雄Sprague-Dawley(SD)ラットを、以下のように6群に無作為に分けた(1群あたり5匹のラット)。
【0112】
各群におけるラットを、それぞれ0.5%トラガカントガム中の上記に示した対応する試験品の懸濁液で経口処置した。試験動物の血液試料を、投薬前、および投薬後15分、30分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、8時間、24時間の時点で収集した。収集した血液試料(およそ400μL)を、ヘパリンナトリウムを含有するチューブに入れ、8,000 rpmで6分間、4℃で遠心分離して、血漿を分離した。各試料から取得した血漿を、分析するまで-80℃で保存した。
【0113】
BBRおよびEPAの血漿中濃度を決定し、PKパラメータを計算した。濃度-時間曲線および選択したPKパラメータを、図2~3および下記の表2に示す。
【0114】
(表2)単回経口投与後のSDラットにおけるBBRの選択薬物動態パラメータ
【0115】
イヌにおける単回投与薬物動態研究において、体重9.95~11.45 Kgの6頭の健常雄ビーグル犬を、以下のように2群に無作為に分けた(1群あたり3頭のイヌ)。

【0116】
各群におけるイヌを、上記に示した対応する試験品で経口処置した。試験動物の血液試料を、投薬前、および投薬後15分、30分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、8時間、24時間の時点で収集した。血液試料(およそ400μL)を収集して、ヘパリンナトリウムを含有するチューブに入れ、8000 rpmで6分間、4℃で遠心分離して、血漿を分離した。各試料から取得した血漿を、分析するまで-80℃で保存した。
【0117】
BBRの血漿中濃度を測定し、PKパラメータを計算した。硬カプセル(200 mg BBR/カプセル)の単回経口投与後に、3頭のイヌのうちの2頭における、すべての収集点のBBR血漿中濃度は、LLOQ(0.1 ng/mL)よりも下であり;1頭のイヌのみが、測定可能なBBR血漿中濃度を有し、それぞれ0.42 ng/mLおよび7.40 ng/mL*hのCmaxおよびAUC(0-24h)であった。ソフトゲルカプセル(200 mg BBR/カプセル)の単回経口投与後に、CmaxおよびAUC(0-24h)の平均値は、それぞれ8.67 ng/mLおよび63.42 ng/mL*hであった。濃度-時間曲線および選択したPKパラメータを、図および下記の表3に示す。
【0118】
(表3)単回経口投与後のビーグル犬におけるBBRの選択薬物動態パラメータ
*1頭のイヌのみが、測定可能なBBR血漿中濃度を有した。
【0119】
上記の実験結果により、BBRとEPA/DHAとの組み合わせは、BBR単独投与と比較して、CmaxおよびAUCの増大によって証明されるように、BBRの生物学的利用能を相乗的に改善することが示された。曝露レベルの増大は、BBRとEPA/DHAとの比によって影響を受ける;しかし、厳密に用量依存性ではない。BBR対EPA/DHAの好ましい比は、約1:1~約1:3の範囲にあることが見出された。
【0120】
結果により、BBRとEPA/DHAとの組み合わせは、有意に改善された薬物動態特性を提供することが立証される。より具体的には、HFD/STZ誘導性糖尿病性脂質異常症マウスモデルにおいて、BBRとEPA/DHAとの組み合わせは、単独で用いたBBRと比較して、有効に、グルコース恒常性を改善し;血清中のTC、TG、およびLDL-cを低減し;肝組織中のTC、TGを低減し;上昇した肝酵素を低減して、肝機能を改善し;肝臓の酸化ストレスを低減し;肝臓の指数を低減し;かつ膵臓の指数を改善することが示されている。
【0121】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈が明らかにそうではないと示さないかぎり、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は複数の言及を含む。
【0122】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の任意の方法および材料も、本開示の実施または試験において用い得るが、好ましい方法および材料をここで記載する。本明細書において示す方法は、開示する特定の順序だけでなく、論理的に可能な任意の順序で実施してもよい。
【0123】
特許、特許出願、特許公報、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書の参照および引用が、本開示においてなされている。すべてのそのような文書は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。参照により本明細書に組み入れられると言われているが、既存の定義、言明、または本明細書において明白に示される他の開示材料と矛盾する、任意の材料、またはその一部は、その組み入れられた材料と本開示材料との間に矛盾が生じない程度に組み入れられるにすぎない。矛盾がある場合、その矛盾は好ましい開示として本開示を支持して解決されることになる。
【0124】
本明細書に開示する代表例は、本発明の例示を助けることが意図され、本発明の範囲を限定することが意図されることはなく、そのように解釈されるべきでもない。事実、本明細書において示し、記載するものに加えて、本発明の様々な改変およびその多くのさらなる態様は、当業者であれば、実施例ならびに本明細書において引用する科学および特許文献への言及を含む、本文書の全内容から明らかになるであろう。本明細書中の実施例は、その様々な態様およびその等価物において本発明の実施に適合させ得る、重要な追加の情報、例示および指標を含む。
【0125】
上記の説明は、本発明を限定するものではない好ましい態様のみを示す。変化、置換、および変更の他の実施例が、当業者によって確かめられ、本明細書において開示する精神および範囲から逸脱することなく作成され得る。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベルベリンまたはその薬学的に許容される塩;および
(b)オメガ-3脂肪酸またはその許容されるエステル
を含む、組成物。
【外国語明細書】