(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014907
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】生体試料の冷却条件に関する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/42 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01N1/42
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023190094
(22)【出願日】2023-11-07
(62)【分割の表示】P 2020534552の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】1721820.7
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517322156
【氏名又は名称】アシンプトート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ASYMPTOTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・モリス
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・キルブライド
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・ミルン
(57)【要約】
【課題】新規な冷却装置を提供する。
【解決手段】生体試料への冷却動作の間に冷却装置に供給される電力を示す第1のデータを得るステップであって、冷却動作が所与の冷却条件を有する、ステップと、基準冷却条件に関連付けられた第2のデータを得るステップと、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを、第1のデータおよび第2のデータに基づいて判定するステップと、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するという、判定するステップによる判定に応じて、制御信号を出力するステップとを含む、コンピュータ実装方法が開示される。「ライブ」データ冷却動作に対する所与の冷却条件は、このように基準冷却条件に対して検証され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料への冷却動作の間に冷却装置に供給される電力を示す第1のデータを得るステップであって、前記冷却動作が所与の冷却条件を有する、ステップと、
基準冷却条件に関連付けられた第2のデータを得るステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを、前記第1のデータおよび前記第2のデータに基づいて判定するステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と前記所定の関係を有するとの前記判定するステップによる判定に応答して、制御信号を出力するステップと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記第1のデータおよび前記第2のデータに基づいて類似性メトリックを決定するステップを含み、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と前記所定の関係を有するかどうかを判定する前記ステップが、前記類似性メトリックの所定の閾値との比較に基づく、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記制御信号が、前記冷却動作の中断をもたらすものである、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記制御信号が、ユーザインタフェースを介して、前記所与の冷却条件と前記基準冷却条件との間の前記所定の関係を示す出力をもたらすものである、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記制御信号が第1の制御信号であり、前記所定の関係が第1の所定の関係であり、前記コンピュータ実装方法が、
前記第1のデータおよび前記第2のデータに基づいて、前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と第2の所定の関係を有するかどうかを判定するステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と前記第2の所定の関係を有するとの前記判定するステップによる判定に応答して、第2の制御信号を出力するステップと、
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記第1のデータが、第1の電力値および関連パラメータの第1の値を含み、
前記第2のデータが、第2の電力値および前記関連パラメータの第2の値を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記関連パラメータの前記第1の値と前記関連パラメータの前記第2の値との間の差分を決定するステップであって、前記第1の電力値および前記第2の電力値が互いに一致する、ステップを含む、請求項6に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記第1の電力値と前記第2の電力値との間の差分を決定するステップであって、前記関連パラメータの前記第1の値および前記関連パラメータの前記第2の値が実質的に同じである、ステップを含む、請求項6に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記第1のデータが、電力値および関連パラメータの対応値の第1のデータ系列を含み、
前記第2のデータが、電力値および前記関連パラメータの対応値の第2のデータ系列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを判定するステップが、前記第1のデータ系列と前記第2のデータ系列との間の統計比較に基づく、請求項9に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記関連パラメータが、
時間、または
前記冷却装置のヒートシンクの温度
に対応する、請求項6から10のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記第1のデータが、前記冷却動作の間に前記冷却装置に供給される電力のピーク値に対応する第1の電力値を含み、
前記第2のデータが、第2の電力値を含み、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを判定するステップが、前記第1および第2の電力値間の差分を決定するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記所与の冷却条件および前記基準冷却条件が各々、試料体積;試料組成パラメータ;試料数;試料容器サイズ;試料容器型式;冷却装置型式;冷却率;冷却プロファイル;および試料または前記冷却装置のヒートシンクの初期温度の少なくとも1つに対するそれぞれの値を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記冷却動作が、前記生体試料を実質的に一定の率で冷却する、請求項1から13のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記実質的に一定の率が概ね毎分摂氏1度である、請求項14に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項1から15のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を行わせる一組のコンピュータ可読命令を記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
プログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項1から15のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を行わせる命令を備えたコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を行うように構成されたプロセッサを備え、前記プロセッサが、コンピュータ可読ストレージから前記第2のデータを得るように構成された、システム。
【請求項19】
前記冷却動作の間、前記冷却装置に電力を供給し、
前記冷却装置に供給される前記電力を変調し、
前記第1のデータを送信する
ように構成されたプログラマブル電源を備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記冷却動作を行うように構成された前記冷却装置を備える、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項21】
前記冷却装置がクライオクーラーを含む、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生体物質-例えば(例として)細胞、ワクチンおよび蛋白質-は、しばしば保存される必要がある。例えば、生体物質は、それらが後の時点で科学実験において研究または使用できるように保存する必要があり得る。別の例では、体外受精(IVF)過程の一部として、ヒト卵母細胞または受精卵が保存され得る。これらの例では、生体物質の損傷または劣化が最小限に抑えられるような仕方で生体物質が保存されることが重要である。生体物質を保存するためにしばしば凍結技術が使用される。生体物質を保存するためにそれらを凍結する種々の仕方がある。例えば、凍結保存が、生体物質が凍結され、次いで凍結状態で保管される工程である一方、凍結乾燥(リョフィリゼーション)は、生体試料が凍結され、そして凍結段階に続いて、試料から水分が除去され、その結果、試料が乾燥状態で保管される工程である。
【0002】
凍結保存は、医学、バイオテクノロジーおよび獣医学における後の応用のために生体試料の長期生存性を維持するために使用される技術である。凍結保存は、試料を低温度、典型的には摂氏-196度(℃)-液体窒素の沸点-に冷却し、そして潜在的にそれらを長期間その温度に維持することを要する。生体試料を-196℃に冷却することによって、さもなければ試料を劣化させ得る化学および/または酵素反応の速度が、試料がもはや劣化しないような程度に遅らされる。このように、生体試料は、長期間にわたって保管され、次いで必要に応じて周囲温度に戻すことができる。
【0003】
凍結保存は、細胞および遺伝子療法、特に免疫療法に有用である。これらの療法の効果的な臨床供給に、コールドチェーン、例えば凍結保存された生体試料の生成、流通および保管に関する一連の段階を備える温度制御サプライチェーンが使用され得る。
【0004】
そのようなコールドチェーンの間に、例えば(例として)体積が200ミリリットル(ml)から600mlの、例えば生体細胞を含有する、初期生体試料が凍結されて、いわゆる製造拠点への出荷を許容し得る。臨床供給のために、例えば10mlから500mlの範囲の体積を有する、最終細胞療法製品が凍結保存されて、細胞療法製品の品質管理が行われるのを許容し、患者スケジューリングを可能にし、かつベッドサイドへのバイオマスの輸送を容易にし得る。
【0005】
比較的大体積の凍結保存は、血漿、細胞懸濁液、骨髄(成体幹細胞)およびオルガノイド系などの、他の生体試料にも関連し得る。そのような比較的大体積の細胞懸濁液は、日常的に凍結保存バッグまたは「凍結バッグ」(例えば5mlから1000ml満容量)に凍結保存される。凍結バッグを長期保管の間の機械的損傷から保護するために、それらは別のバッグ(「外装」)内に密閉されかつ/または金属カセットへ入れられてよい。
【0006】
薄肉管であり、典型的に直径が2mmから4mmで、140mmまでの長さおよび0.2mlから0.5mlの容量の、ストロー;典型的に典型的なストローより広い直径(例えば12.5mm)を有しかつ短い管であり、0.5mlから5.0mlの容量の、凍結バイアル;ならびにロボット工学、ハイスループットスクリーニング等に利用されるマルチウェルプレート、マトリックスチューブおよび他のSBS(生体分子科学協会)形式など、凍結保存のための試料を保持するために、他の専用の凍結容器が使用され得る。
【0007】
凍結融解の間の細胞損傷を軽減するために、試料に保護化合物(いわゆる「凍結保護添加物」)が添加されてよい。通常利用される添加物はジメチルスルホキシド(DMSO)であり、典型的に5%w/vから15%w/vの濃度で使用され、ここで%w/vは質量濃度を意味する。エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールを含むグリコールなど、いくつかの他の凍結保護添加物が知られている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】電力値および対応温度値のデータ系列例の表現を示す。
【
図4】記載される方法例を行うハードウェアアーキテクチャ例の概要図を示す。
【
図5】記載される方法例を実施するハードウェアを備えたシステム例の概要系統図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に提示される方法および装置は、冷却動作の間に冷却装置に供給される電力を示すデータに基づいて、試料に対して実行される冷却動作の監視を実施する。そのようなデータは、例ではライブ冷却動作の監視の間に測定される「ライブ」データと考えられ得、冷却動作の冷却条件が基準データの冷却条件と実質的に同じか異なるかを判定するために基準データと比較されてよい。冷却条件は、試料体積;試料組成;試料数;試料容器サイズ;試料容器型式;冷却装置型式;冷却率;冷却プロファイル;および/または試料もしくは冷却装置のヒートシンクの初期温度などのパラメータに対するデータを含んでよい。このようにして、ライブ冷却動作に対する冷却条件(本明細書の他の場所で所与の冷却条件と称される)またはそのパラメータは、基準冷却条件(またはそのパラメータ)に対して検証されて、例えば、例として正確な試料体積、試料組成、試料数が基準冷却条件に関して期待通りであることをユーザに通知してよい。例では、ライブ冷却動作の冷却条件値が基準データに関連付けられた冷却条件の値と実質的に同じでないと判定されれば、警告が生成および送信され(ならびに/または生成されるレポートもしくはログデータの一部として記憶され)てよく、かつ/あるいはライブ冷却動作において冷却されている試料が基準冷却条件に対して期待通りでないという判定により、冷却動作が停止されてよい。
【0010】
そのような方法および装置は、したがって、生体試料、冷却装置および/または冷却動作のパラメータ(所与の冷却条件の一部として含まれ得る)を基準試料の同じパラメータ(パラメータは仮定の基準試料について測定または入力されたかもしれない)に対して検証する際に使用されてよい。これは、例えば患者の治療のために患者特有の細胞を含有し、かつ精緻な取扱いを保証する必要がある、金銭価値の高い生体試料に対して特に有用であり得る。
【0011】
本方法および装置の或る例に従って、具体的な詳細を以下の記述に記載して、その具体的な特徴を説明および詳述することにする。
【0012】
試料を冷却または凍結する各種の機器が存在する。試料には、冷却または凍結されるべき流体または液体、例えば水溶液を含み得る。生体物質(または「生物質」、「生物媒体」)を含有する試料が生体試料と考えられ得る。以下に更に詳細に記載するように、試料は容器、例えば凍結容器内に収容され得る。容器は、例として、ベッセル、試験管、バイアル、ストロー、マルチウェルプレート、ウェルまたはバッグであり得る。
【0013】
そのような冷却機器は、凍結剤として液体窒素を利用する装置、および機械冷凍によって冷却される装置を含む。受動冷却装置も存在する。凍結に続いて、試料は低温度、例えば-50℃を下回るまたは-180℃を下回る、例えば液体窒素の沸点(-196℃)の範囲の極低温度に凍結されたまま保たれ(または「凍結保存され」)てよい。-196℃程度では、生体試料の細胞生存性は、細胞が冷却段階を越えていれば試料の保管の期間から独立していると考えられ得る。細胞を使用する必要がある場合、生体試料は、例えば37℃に維持される水槽で融解されてよい。融解は冷却段階より急速でよい。凍結保存された細胞を、例えば治療のために使用する前に、試料から凍結保護物質が除去されてよい。
【0014】
例えば細胞を備える生体試料は、冷却の間に損傷または「負傷」するおそれがある。例えば、冷却の間に氷核形成が発生して氷晶が形成されると、生体物質は、氷晶からの直接損傷、更には徐々に多くの氷が形成されるにつれて、試料中の溶質の濃度の増加によって引き起こされる損傷を受け得る。
【0015】
生体試料を制御された方式で冷却することは、そのような影響によって引き起こされる生体物質への損傷を軽減し得、それによって試料を使用するために融解した後に細胞生存性および機能を保持するのを援助し得る。例えば、生体試料は、冷却動作の間、冷却プロトコルに従って、一定であり得るまたは時間と共に変化し得る制御された率で冷却されてよい。
【0016】
冷却プロトコルは、例えばAsymptote Limitedによって製造されるVIA Freeze(商標)機器などの冷却システムの一部として含まれる、冷却装置によって実装され得る。一部の冷却システムは試料に冷ガスを吹き付けており、試料にわたってまたは冷却システムによって複数の試料が冷却されるべきである場合に試料間で一様でない冷却率または冷却プロファイル(例えば時間または温度にわたる冷却率の変化を表す)を引き起こす場合がある。VIA Freeze(商標)冷却システムは、試料の下側において伝導によって試料を冷却し、したがって、あらゆる試料が同じ冷却プロファイルを経験し得る。
【0017】
VIA Freeze(商標)冷却システム内でプログラム可能な冷却(または「凍結」)プロトコル例が、融解潜熱から放出されるエネルギーを吸収する、試料の理論凝固点を数度下回るホールド期間を含んでよい。例えば、理論凝固点が-3℃であれば、-10℃で8分間のホールド期間が冷却プロトコルに含まれてよい。
【0018】
凍結転移以降の冷却率は、凍結されている試料の性質に依存し得る。これは、例えば、特定の種類の細胞に対して0.3℃/min(摂氏度毎分)および別の種類に対して2℃/minでよい。凍結後の冷却率が過剰に速いまたは遅い場合、融解時の試料品質、例えば細胞生存性または機能は激しく低下され得る。一旦、例えば-80℃または-100℃に凍結されると、試料はVIA Freeze(商標)システムから取り出され、そして長期凍結保管に移されてよい。
【0019】
公知のシステムでは、試料への率制御冷却動作は、試料内のまたは冷却装置および/もしくは冷却システム内の温度の測定によって監視され得る。そのような温度測定は、1つもしくは複数の熱電対および/または1つもしくは複数の、例えばプラチナから成る抵抗温度計を使用して実施され得る。
【0020】
図1は、試料105を冷却するための冷却装置110を備える冷却システム例100を図示する。冷却システム100は、冷凍機または凍結器装置、例えば率制御凍結器を備えてよい。或る例では、冷却装置110は、試料105、例えば生体試料を極低温度に冷却するために使用可能なクライオクーラーを備える。極低温度は、上記したように、-50℃を下回るまたは-180℃を下回る、例えば液体窒素の沸点(-196℃)程度の温度であると考えられ得る。試料105は容器、この例では凍結バッグに収容されており、
図1に図示される冷却システム例100において冷却装置110の熱伝導板120と接触しているように配置される。熱伝導板120は、冷却装置110の動作の間に冷却されることになる冷却装置110の局所的な部分である、冷却装置110の「コールドフィンガ」115によって冷却される。このようにして、試料105は、冷却装置110の動作の間、試料105から板120への、および板120からコールドフィンガ115への伝導伝熱によって冷却されてよい。そのような例では、コールドフィンガ115および/または伝導板120は、冷却装置110の「ヒートシンク」、言い換えると試料105への冷却動作の間、例えば試料105から熱エネルギーを吸収または回収することになる冷却装置110の領域または部分であると考えられ得る。
【0021】
他の例では、試料105を収容している容器は、冷却装置110の冷却室、例えば極低温流体が導入されて試料105を包囲および対流冷却によって冷却する密閉空間内に位置付けられてよい。極低温流体の例には、ヘリウム、水素、ネオン、窒素、空気、フッ素、アルゴン、酸素およびメタンを含む。そのような例では、冷却室は、冷却装置110のヒートシンクであると考えられ得る。
【0022】
冷却装置110として使用され得るクライオクーラーの例には、スターリングクライオクーラー、「音響スターリング」クライオクーラー、クリメンコサイクルクライオクーラー、パルスチューブクライオクーラーおよびジュール-トムソンクライオクーラーを含む。
【0023】
冷却装置110は生体試料105に冷却動作を行ってよく、そして冷却動作は冷却プロファイルと関連付けられてよい。冷却プロファイルは、冷却工程の時間間隔での目的または目標温度から成るデータセットでよい。例えば、冷却プロファイルは、例えば試料105の温度が、冷却動作の間、時間と共にどのように変化するべきかを記述してよい。目的冷却率、例えば時間にわたる温度の変化が冷却プロファイルの種々の段階において設定され得る。一部の例では、一定の目的冷却率が冷却プロファイルに設定され得る。
【0024】
冷却プロファイルまたは「温度プロファイル」は、冷却システム100の制御モジュール140へ予めプログラムされてよい。制御モジュール140は、例えば1つまたは複数のプロセッサおよびコンピュータ可読ストレージを含む、制御回路網を備え、かつ冷却装置110の動作を制御するように構成されてよい。例えば、制御モジュール140は、
図1に図示されるように、冷却装置110の電源130に連結されてよく、したがって所与の時間に冷却装置110に供給される電力量を調節することができる。
【0025】
冷却装置110の電源130は、供給源からの(例えば電気取出口を介して電力グリッドからの、またはバッテリ、燃料電池、発電機もしくはオルタネータなどの1つもしくは複数のエネルギー貯蔵装置からの)電流を変換して、冷却装置110に給電するために、冷却装置110に適切な特性(例えば電流、電圧および/または周波数)を持つ電気を供給してよい。電源130は、一部の例では冷却システム100に対して別個の独立型装置でよい一方、他の例では電源130は、
図1に図示されるように、冷却システム100の一部で、例えば組み込まれてよい。
【0026】
制御モジュール140は、制御モジュール140へプログラムされ、またはそれによって得られ得る特定の冷却プロファイルに基づいて電源130から冷却装置110に供給される電力量を調節してよい。例えば、制御モジュール140は、冷却動作の間の所与の時間に、一部の例では試料105および/または冷却室の測定温度を表す、1つまたは複数の温度センサまたは「プローブ」からの温度データを受信してよい。制御モジュール140は、受信した温度データを対応する時間で特定の冷却プロファイルに従う目的温度値と比較してよく、そして比較の結果に基づいて冷却装置110に供給される電力を調節してよい。例えば、もし所与の時間での測定温度が温度プロファイルに従う対応する時間での目標温度より高ければ、制御モジュール140は、冷却装置110に供給される電力量を増加させて、記載される例では試料および/または室などの、測定されている実体の温度を下げてよい。そのような比較および起こり得る結果的な調節は、冷却動作の間の所定の時間に発生し得、かつ/または規則的な時間間隔で発生し得る。このようにして、制御モジュール140は、冷却動作の間に冷却プロファイルを追跡して、設定された冷却プロファイルに従うように冷却装置110に供給される電力量を調節してよい。
【0027】
しかしながら、試料105内でなされる温度測定は、凍結された試料105の体積に関するいかなる情報も提供し得ない。臨床的に使用されることになる試料、例えば融解されて、患者へ直接注入され得る試料の品質管理のために、凍結された体積を確認することが有用なはずである。
【0028】
同様に、試料容器の表面でまたは内部でなされる温度測定も、試料105の組成に関する正確な情報を提供し得ない。過冷却された試料内の氷核形成部位の近くに配置された熱電対は、凝固点浸透圧計に類似した方式で試料組成情報を提供することができる。しかしながら、氷核形成部位からの距離が大きいと、温度測定は正確な試料組成情報を提供し得ない。凍結保存された試料の品質管理のために、凍結前の試料105に正確な濃度の凍結保護物質が添加されたことを確認することが有用なはずである。不正確な量の凍結保護物質が添加された結果、例えば試料105中のその濃度が高すぎるまたは低すぎる場合、融解時の細胞生存性および機能は損なわれ得る。臨床治療の有効性も、したがって損なわれ得る。
【0029】
更には、後に臨床的に使用されることになる試料の場合、試料105へ温度測定プローブを入れることは、例えば結果的な汚染ならびに/または関与するプローブおよび試料105の物理的寸法により、可能でない場合がある。
【0030】
上記のように、本明細書に提示される方法および装置は、生体試料、冷却装置および/または冷却動作の或るパラメータ(所与の冷却条件の一部として含まれ得る)の、基準試料の同じパラメータ(パラメータは、例えば仮定の基準試料について測定または入力されたかもしれない)に対する検証を可能にする。
【0031】
本方法および装置は、試料に行われる冷却動作の間に冷却装置に供給される電力を示すデータに基づいて冷却動作の監視を実装する。同データは、1つもしくは複数の電力値、または電力値が導出され得るパラメータの1つもしくは複数の値、例えば、例として電圧および/もしくは電流値から成ってよい。そのようなデータは、冷却動作の間に測定され得、冷却動作の冷却条件が基準データと関連する基準冷却条件と実質的に同じか異なるかを判定するために基準データと比較されてよい。冷却動作に対する冷却条件またはそのパラメータは、基準冷却条件(またはそのパラメータ)に対して確認されて、例えば、試料体積、試料組成、試料数等が基準冷却条件に関して期待通りであることをユーザに通知してよい。一例では、冷却動作の冷却条件値が基準データに関連付けられた冷却条件の値と実質的に同じでないと判定されれば、警告が生成され(例えば生成されるレポートもしくはログデータの一部として送信および/もしくは記憶され)てよく、かつ/または冷却動作において冷却されている試料が基準冷却条件に対して期待通りでないという判定により、冷却動作が停止されてよい。
【0032】
基準データは、「基準試料」への冷却動作の間に電力値が記録された、基準冷却条件と関連するいわゆる「署名電力曲線」または「指紋電力曲線」から成ってよい。冷却動作は、冷却動作の間に電力値および任意の関連パラメータ値が測定されて実施されたかもしれない。代替的に、冷却動作はシミュレートされ得、かつ/または基準データは冷却動作が実施されることなく入力され得る。例えば、冷却動作および実際に基準試料は仮想でよい。生体試料に冷却動作が行われると、冷却動作の間に冷却装置に供給される電力を示すデータが、例えば本明細書に記載される本方法のいずれかに従って得られ、かつ1つまたは複数の基準冷却条件と関連する基準データ、例えば署名電力曲線に対して比較されてよい。このように、本方法の一部として、冷却装置に供給される電力を示すデータおよび基準冷却条件の署名電力曲線に基づいて、所与の冷却条件(生体試料への冷却動作の)が特定の基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかが判定され得る。所与の冷却条件および特定の基準冷却条件が所定の関係を有するまたは有しないとは、それぞれ生体試料および基準冷却条件と関連する基準試料が所定の関係を有するまたは有しないと解釈され得る。例えば、もし実体「A」および「B」間の所定の関係が、AおよびBが実質的に同じであるということであれば、所与の冷却条件および特定の基準冷却条件が実質的に同じであるという判定は、生体試料および基準試料が実質的に同じであると解釈され得る。本明細書に記載される例では、実体AおよびB、例えば所与の冷却条件および基準冷却条件が所定の関係を有すると判定される、例えば実質的に同じであると判定されるかどうかは、手動で設定され得る所定の閾値に依存し得る。例えば、AおよびBに基づいて決定される、その差などのメトリックが所定の閾値と比較されてよい。メトリックが所定の閾値より小さい;以下である;に等しい;より大きい;または以上であるという判定が、AおよびBが所定の関係を有する、例えば実質的に同じであることを示し得る。例えばメトリックがそれぞれ、以上である;より大きい;等しくない;以下である;またはより小さいという相補的判定は、AおよびBが所定の関係を有しない、例えば実質的に同じでないことを示し得る。一部の例では、相補的判定は、2つの異なる所定の関係をそれぞれ示し得る。例えば、相補的判定は、AおよびBが実質的に同じか実質的に異なることを示し得る。
【0033】
ここで方法およびその特徴の例を詳細に記載することにし、一部の特定の例を
図2~
図4を参照しつつ記載する。
【0034】
図2は、ブロック210で、生体試料への冷却動作であって、所与の冷却条件を有する、冷却動作の間に冷却装置に供給される電力を示す第1のデータを得ることを要する方法200を例示するフロー図を示す。上記したように、電力を示す第1のデータは、1つもしくは複数の電力値から成ってよく、または例えば、電力が導出され得る電気的パラメータ、例えば電圧および/もしくは電流の1つもしくは複数の値から成ってよい。第1のデータは、以下の例に説明するように、電力を示すものと同様に他のパラメータ値から成ってよい。
【0035】
所与の冷却条件は、試料体積;試料組成;試料数;試料容器サイズ;試料容器型式;冷却装置型式;冷却率;冷却プロファイル;および/または試料もしくは冷却装置のヒートシンクの初期温度などの1つまたは複数のパラメータに対する値を含んでよい。ヒートシンクは、或る例では冷却装置のコールドフィンガでよい。所与の冷却条件のためのそのようなデータの少なくとも一部が冷却動作の時点で未知または未検証でよい。例えば、試料体積および/または試料組成は、想定または推定されるが未検証でよい。
【0036】
方法200は、ブロック220で、基準冷却条件と関連する第2のデータを得ることを要する。第2のデータは、予め記憶されたデータ、例えばコンピュータ可読ストレージに記憶された電子データでよい。基準冷却条件は、試料体積;試料組成;試料数;試料容器サイズ;試料容器型式;冷却装置型式;冷却率;冷却プロファイル;および/または試料もしくは冷却装置のヒートシンクの初期温度などの1つまたは複数のパラメータに対する値を含んでよい。所与の冷却条件および基準冷却条件は、1つまたは複数の共通パラメータに対する値を含んでよい。
【0037】
方法200は、ブロック230で、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを、第1のデータおよび第2のデータに基づいて判定することも要する。例えば、所与および基準冷却条件間の所定の関係は、それらが実質的に同じ、例えば第1の許容差内である、または実質的に異なる、例えば第2の許容差外であるということでよい。例では、複数の所定の関係を定義する複数の許容差があってよい。
【0038】
一例として、所与の冷却条件は、試料体積などの第1の冷却条件パラメータの未知の値を含んでよい。基準冷却条件は、第1の冷却条件パラメータの既知の値、例えば5mlを含んでよい。所与の冷却条件を有する冷却動作と関連する、例えばその間に測定される第1のデータ;および基準冷却条件と関連する第2のデータに基づいて、ブロック230は、未知の試料体積値が、例えば設定許容差内で既知の値、この場合5mlと実質的に同じであるかどうかを判定することを要し得る。
【0039】
ブロック240で、方法200は、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するとの判定に応じて制御信号を出力することを要する。このように、制御信号は、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するという、同判定することによる、判定に応じて生成および出力されてよい。例えば、所定の関係が、所与および基準冷却条件が実質的に同じであることから成る上記の場合、もし未知の試料体積値が既知の試料体積値と実質的に同じ、例えば設定許容差内であると判定されれば、ブロック240で制御信号を出力することを要するであろう。もし第1および第2のデータに基づいて所与および基準冷却条件が実質的に同じでないと判定されれば、ブロック240で制御信号は出力されなくてよい。
【0040】
他の例では、所定の関係は、所与の冷却条件および基準冷却条件が実質的に異なることから成ってよい。この場合、もし所与の冷却条件および基準冷却条件が実質的に異なるとブロック230で判定されれば、ブロック240で制御信号は出力されるであろう。そうでなければ、制御信号は出力されなくてよい。
【0041】
例では、ブロック240で出力される制御信号は、冷却動作の中断をもたらすものである。例えば、制御信号は、冷却装置の、または冷却システム全体としての制御モジュールに送られて、冷却動作を停止し得る。これにより、例えばもし、所与の冷却条件および基準冷却条件が実質的に異なると判定された、例えば所与の冷却条件の試料体積および/または組成パラメータが基準冷却条件のそれと実質的に異なると判定されたとブロック230で判定されれば、冷却動作を継続する際に更なる電力が使用されないようにし得る。
【0042】
他の例では、ブロック240で出力される制御信号は、ユーザインタフェースを介して、所与の冷却条件と基準冷却条件との間の所定の関係を示す出力をもたらすものである。例えば、所定の関係が、所与の冷却条件および基準冷却条件が実質的に同じであることから成り、ブロック230でこれが事実であると判定されれば、所与の冷却条件および基準冷却条件が実質的に同じであることを示す出力がユーザインタフェースによって出力されてよい。ユーザインタフェースは、表示デバイス、例えば発光ダイオード(LED)または電子視覚ディスプレイでよい。所定の関係を示す出力は、電子視覚ディスプレイに表示される言葉、または特定の色、例えば緑もしくは赤色光から成ってよい。これらの例では、もしブロック230で関与する所定の関係が、所与の冷却条件および基準冷却条件が実質的に異なるということであれば、ユーザインタフェースによる所定の関係を示す出力は、冷却動作を手動で中断するようにユーザに警告してよい。
【0043】
一部の場合、ブロック240で出力される制御信号は、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するというブロック230での判定を表すデータの記憶をもたらし得る。例えば、冷却動作の間のパラメータ値を表すレポートまたはデータログが生成されてよい。所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するという判定を表すデータが、例では、レポートまたはデータログの一部として記憶されてよい。
【0044】
例では、ブロック210で得られる第1のデータは第1の電力値、例えばP1から成り、そしてブロック220で得られる第2のデータは第2の電力値、例えばP2から成る。ブロック230で所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを判定することは、第1および第2の電力値間の差分、例えば(P1-P2)または|P2-P1|を決定することを含んでよい。第1の電力値は、冷却動作の間に冷却装置に供給される電力のピーク値に対応してよい。例えば、これは、冷却装置が冷却動作の間、最大電力使用に達する必要がない、例えば冷却装置に供給される電力が、冷却動作に対する冷却プロファイルに従うために最大電力供給の100パーセント(%)に達する必要がない場合に実装されてよい。そのような場合、第1および第2のデータは、それぞれの冷却動作の間に冷却装置に供給される電力のそれぞれのピーク値から成ってよい。これらのピーク値は、したがって、例えば所与の冷却条件および基準冷却条件が実質的に同じか実質的に異なるかを判定するために比較されてよい。
【0045】
例では、ブロック210で得られる第1のデータは、第1の電力値、例えばP1、および関連パラメータの第1の値、例えばx1から成る。例えば、第1のデータは、第1の電力および関連パラメータ値のタプル(P1,x1)から成ってよい。
【0046】
関連パラメータは、時間または冷却装置のヒートシンクの温度に対応してよい。第1のデータは、したがって、第1の電力値、P1と共に、冷却動作の間の対応する時間値またはヒートシンク温度値、x1から成ってよい。ヒートシンク温度値は、ヒートシンクに位置付けられる1つまたは複数の温度センサによって測定されてよい。ヒートシンクに2つ以上の温度センサが位置付けられてその温度を測定する場合、複数の温度測定から代表、例えば平均温度が計算されてよい。
【0047】
ブロック220で得られる第2のデータは、第2の電力値、例えばP2、および関連パラメータの第2の値、例えばx2から成ってよい。第2のデータは、第2の電力および関連パラメータ値のタプル(P2,x2)から成ってよい。
【0048】
例では、方法200は、第1の電力値P1および第2の電力値P2が互いに相当するとして、関連パラメータの第1の値、x1と関連パラメータの第2の値、x2との間の差分、例えば(x2-x1)を決定することを要する。例えば、第1の電力値P1および第2の電力値P2は実質的に同じでよい。
【0049】
例えば、本方法は、冷却動作の間に記録される電力値および、時間または温度値などの、対応する関連パラメータ値の第1のデータセット;ならびに電力値および対応する関連パラメータ値の第2のデータセットを得ることを含んでよい。第1の電力値P1および対応する関連パラメータ値、x1から成る第1のデータを得ることは、したがって、第1の電力値P1に基づいて第1のデータセットから第1のデータを選択すること、例えば、Pmaxが冷却動作の間に冷却装置に供給される最大電力量であるとして、0.8Pmaxなどの特定の電力値を有する第1のデータセット内のデータ点を選択することを含んでよい。同様に、第2の電力値P2および対応する関連パラメータ値x2から成る第2のデータを得ることは、したがって、第1の電力値P1に相当する第2の電力値P2に基づいて第2のデータセットから第2のデータを選択すること、例えば、Pmaxが第2のデータセットにおける最大電力値であるとして、0.8Pmaxなどの対応する特定の電力値を有する第2のデータセット内のデータ点を選択することを含んでよい。例示的な一例として、ヒートシンクとしての凍結板を有するクライオクーラーを備える冷却装置の場合、第1のデータセットは、第1の温度が、例えば凍結板上の熱電対によって測定される凍結板の絶対測定温度であるとして、0.8Pmaxで-58℃の第1の温度値T1から成る第1のデータを含み得る。第1のデータセットは未知の所与の(第1の)冷却条件と関連付けられ得る。一部の場合、温度データは、例えば凍結板測定温度と周囲温度との間の差を表す相対測定温度から成り得る。この例では、第2のデータセットは、0.8Pmaxで-68.45±3.66℃の第2の温度値T2から成る第2のデータを含み得、同第2のデータセットは、パラメータ:100ml試料体積、10%w/v DMSO、0.9%w/v NaCl(塩化ナトリウム)を含む基準(第2の)冷却条件と関連付けられている。したがって、第1および第2のデータに基づいて、差分|T1-T2|=10.45℃が決定され得る。所定の閾値は、この例では測定の不確かさに基づき、例えば3.66℃でよい。差分|T1-T2|=10.45℃が所定の閾値3.66℃より大きいことは、したがって、第1および第2の冷却条件がこの例では実質的に同じでないことを示し得る。
【0050】
この例示的な例では、第3のデータセットが、0.8Pmaxで-59.1±1.45℃の第3の温度値T3から成る第3のデータを含み得、同第3のデータセットは、パラメータ:150ml試料体積、10%w/v DMSO、0.9%w/v NaClを含む第3の冷却条件と関連付けられている。したがって、第1および第3のデータに基づいて、差分|T1-T3|=1.1℃が決定され得る。所定の閾値は、測定の不確かさに基づいて、この場合1.45℃でよい。差分|T1-T3|=1.1℃が所定の閾値1.45℃より小さいことは、したがって、第1および第3の冷却条件がこの例では実質的に同じであることを示し得る。このように、生体試料への冷却動作と関連する所与の冷却条件は、第3の冷却条件と実質的に同じパラメータ値、例えば150ml試料体積、10%w/v DMSO、0.9%w/v NaClを有すると解釈され得る。
【0051】
他の例では、第1および第2の電力値は、それぞれの第1および第2のデータセットにおける同じ電力値(P1=P2)に対応する関連パラメータ値、x1およびx2間で差分(x2-x1)が計算されるように、実質的に同じでよい。
【0052】
他の例では、方法200は、関連パラメータの第1の値x1および関連パラメータの第2の値x2が実質的に同じであるとして、第1の電力値P1と第2の電力値P2との間の差分を決定することを要する。例えば、方法200は、上記した第1および第2のデータセットを得ること、ならびに関連パラメータの第1の値x1に基づいて第1のデータセットから第1のデータを選択すること、例えば冷却動作の間の、173ケルビン(K)などの特定のヒートシンク温度値を有する第1のデータセット内のデータ点を選択することを要してよい。第2のデータを得ることは、同様に、この例では173Kなどの第1の関連値x1に相当する、例えば実質的に同じである関連パラメータの第2の値x2に基づいて第2のデータセットから第2のデータを選択することを要してよい。
【0053】
一部の例では、第1のデータは、例えば第1のデータセットに関して上記したように、電力値および関連パラメータの対応値の第1のデータ系列から成る。
【0054】
第2のデータは、同様に、例えば第2のデータセットに関して上記したように、電力値および関連パラメータの対応値の第2のデータ系列から成ってよい。
【0055】
図3は、電力値および対応温度値から成るデータ系列例300の表現を示す。前記したように、データ系列例300が第1のデータ系列に相当する場合、温度値は、例えば冷却動作の間のヒートシンクのでよい。データ系列300のそのような表現は「電力曲線」と称され得る。
図3に図示される電力曲線は温度に関してであるが、前記したように、他の電力曲線例は関連パラメータとして時間に関してであり得る。データ系列例300は、データ系列300内の各電力値を対応温度値と関連付けるデータ構造、例えば配列または表に記憶されてよい。
図3の電力曲線によって表されるデータ系列例では、電力値は、データ系列300における最大電力値でよい最大電力値P
maxの百分率として正規化される。第1および/または第2のデータ系列内の電力値は、同様に、特定の電力値、例えばそれぞれのデータ系列の最大電力値に関して正規化され得る。
【0056】
方法200のブロック230で所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを判定することは、第1のデータ系列と第2のデータ系列との間の統計比較に基づき得る。
【0057】
例えば、第1のデータ系列に基づいて、電力曲線の積分などの統計メトリックの第1の値が決定されてよく、そして第2のデータ系列に基づいて、統計メトリック、例えば電力曲線積分の第2の値が決定されてよい。統計メトリックの第1および第2の値が比較されて、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかの判定が比較に基づいてよい。例えば、統計メトリックの第1および第2の値が所定の許容差内で実質的に同じであると判定される場合、所与の冷却条件は、基準冷却条件と所定の関係を有すると判定されてよい。
【0058】
一部の例では、それぞれの電力曲線によって表される第1および第2のデータ系列が分析されて、第1および第2のデータ系列の各々におけるスパイクにおいてそれぞれの関連パラメータ値を決定してよい。例えば、試料の冷却の間、試料内で氷核形成が発生し始めて氷晶が形成し始める点(温度または時間における)で、試料温度が急激に上昇し得る(例えば50%を超える温度変化率の変化を伴う)、すなわち「スパイク」し得るが、氷核形成が発熱反応であるため、それが発生すると熱エネルギーが放出されて、試料温度を上昇させる。急上昇試料温度は、ヒートシンク温度、例えば冷却装置における伝導板またはコールドチャンバを同じく急激に上昇させ得る。冷却システムが、
図1を参照しつつ上記したように、冷却システム制御モジュールを介して、温度センサと電源との間の温度フィードバックシステムを実装する場合、測定温度の上昇により、冷却装置が温度を低下させて冷却プロファイルに合わせようとするので、冷却装置に供給される電力量の増加をもたらし得る。冷却プロファイルは、例えば、実質的に一定の率で試料を冷却することから成ってよい。このように、冷却システム制御モジュールは、試料内の氷核形成の間に温度測定がスパイクしたとき、冷却プロファイルによって定められる一定の冷却率を実質的に維持するために、冷却装置に供給される電力量を増加させることによって反応し得る。冷却装置に供給される電力量のそのような急増は、
図3に図示されるように、データ系列300を表す電力曲線にスパイク305をもたらし得る。
【0059】
方法200は、したがって、一部の場合、そのようなスパイクが電力曲線のどこで発生するか、例えば電力のスパイクがどんな関連パラメータ(温度、時間)値で発生するかを判定することを要し得る。これは、関連パラメータに関する電力の変化率を決定すること、例えばそれぞれのデータ系列において関連パラメータに関する電力の微分を計算することによってなされてよい。電力微分に対する所定の閾値が、所定の閾値を上回る決定された電力微分値が電力曲線におけるスパイクの存在を示すように設定されてよい。そのような場合、ブロック230で所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを第1のデータおよび第2のデータに基づいて判定することは、電力のスパイクが発生する第1および第2のデータ系列内の決定された関連パラメータ値を比較することを要し得る。
【0060】
或る例では、所与のデータ系列において電力曲線における複数のスパイクが決定され得る。そのような例では、ブロック230で所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを第1のデータおよび第2のデータに基づいて判定することは、1つまたは複数の「異常値」スパイクを決定することを要し得る。例えば、第1および第2のデータ系列において電力スパイクのクラスタが互いに相当し得るが、第1のデータ系列は、第2のデータ系列において最も近い電力スパイクの関連パラメータ値から所定の閾値を超えて離れている所与の関連パラメータ値にあると判定される電力スパイクを含み得る。この場合、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有する、例えば実質的に異なると判定されてよい。
【0061】
例では、方法200は、第1のデータおよび第2のデータに基づいて類似性メトリックを決定することを要する。例えば、第1および第2のデータが1次元(1D)である、例えば前記したように電力などの単一のパラメータの1つまたは複数の値から成る場合、類似性メトリックは、第1のデータの第1の電力値P1と第2のデータの第2の電力値P2との間の差分、例えば(P1-P2)または|P2-P1|でよい。
【0062】
他の例では、記載したように、第1および第2のデータは2次元(2D)であり、かつ電力および関連パラメータ、例えば時間または温度などの、2つのパラメータの1つまたは複数のそれぞれの値から成る。そのような例では、類似性メトリックは、上記の例に記載したように、第1の電力値P1および第2の電力値P2が互いに相当するとして、関連パラメータの第1の値、x1と関連パラメータの第2の値、x2との間の差分、例えば(x2-x1)に相当してよい。代替的に、類似性メトリックは、同じく上記の例に記載したように、関連パラメータの第1の値x1および関連パラメータの第2の値x2が実質的に同じであるとして、第1の電力値P1と第2の電力値P2との間の差分、例えば(P2-P1)に相当してよい。
【0063】
更なる例では、第1および第2のデータは2Dであり、かつそれぞれ前記したように、電力値および関連パラメータの対応値の第1のデータ系列;ならびに電力値および関連パラメータの対応値の第2のデータ系列から成り得る。これらの例では、類似性メトリックは、第1のデータ系列と第2のデータ系列との間の統計比較に基づいて決定されてよい。例えば、上記したように、第1のデータ系列に基づいて統計メトリックの第1の値が決定されてよく、そして第2のデータ系列に基づいて統計メトリックの第2の値が決定されてよい。この例での類似性メトリックは、統計メトリックの第1および第2の値間の差分に相当してよい。
【0064】
方法200のブロック230で所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを判定することは、所定の閾値との類似性メトリックの比較に基づき得る。例えば、類似性メトリックが所定の閾値より小さい;以下である;に等しい;より大きい;または以上であれば、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有すると判定されてよい。所与の冷却条件と基準冷却条件との間の所定の関係は、それらが実質的に同じ、例えば同様である;または実質的に異なる、例えば同じでないということでよい。
【0065】
方法200の一部の例では、制御信号は第1の制御信号であり、そして所定の関係は第1の所定の関係である。そのような例での方法200は、所与の冷却条件が基準冷却条件と第2の所定の関係を有するかどうかを、第1のデータおよび第2のデータに基づいて判定することを更に要し得る。
【0066】
所与の冷却条件が基準冷却条件と第2の所定の関係を有するかどうかのそのような「第2の判定」は、所与の冷却条件が基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかの「第1の判定」の前記した例のいずれかに従ってよい。例では、第1および第2の判定は単一の判定の結果として生じてよく:例えば、第1および第2のデータに基づいて差分または類似性メトリックが決定され、そして差分または類似性メトリックが所定の閾値と比較され;比較の第1の結果(例えば差分または類似性メトリックが所定の閾値より大きい)が、所与の冷却条件が基準冷却条件と第1の所定の関係を有することを示してよい一方、第2の結果(例えば差分または類似性メトリックが所定の閾値以下である)が、所与の冷却条件が基準冷却条件と第2の所定の関係を有することを示してよい。そのような比較の第1および第2の結果は、記載した例のように相補的でよい。
【0067】
他の例では、第1の判定および第2の判定は、方法200の一部として行われる別々の判定でよい。例えば、第1の判定は、記載した例での所定の閾値として第1の所定の閾値を要してよい一方、第2の判定は、例では、所定の閾値として第2の所定の閾値を要してよい。
【0068】
所与の冷却条件が基準冷却条件と第2の所定の関係を有するとの判定に応じて、方法200は、第2の制御信号を出力することを含み得る。このように、第2の制御信号は、所与の冷却条件が基準冷却条件と第2の所定の関係を有するという、同判定することによる、判定に応じて発生および出力されてよい。上記した第1の制御信号例と同様に、或る場合に、第2の制御信号は、冷却動作の中断をもたらしてよく、そして追加的または代替的に、ユーザインタフェースを介して、所与の冷却条件と基準冷却条件との間の所定の第2の関係を示す出力をもたらしてよい。ユーザインタフェースは、第1の制御信号が或る例で出力をもたらすことになるのと同じユーザインタフェースでよい。例えば、第1の制御信号は、所与の冷却条件が基準冷却条件と第1の所定の関係を有するとの判定に応じて出力され、第1のユーザインタフェースを介して第1の所定の関係を示す第1の出力をもたらしてよい。第2の制御信号は、所与の冷却条件が基準冷却条件と第2の所定の関係を有するとの判定に応じて出力され、第2のユーザインタフェースを介して第2の所定の関係を示す第2の出力をもたらしてよい。
【0069】
例えば、所与の冷却条件と基準冷却条件との間の第1の所定の関係は、それらが実質的に同じ、例えば同様であるということでよく、そして第2の所定の関係は、それらが実質的に異なる、例えば同じでないということでよい。このように、第1の制御信号は、例えば、冷却条件またはそのパラメータ、例えば生体試料体積および基準試料体積が実質的に同じであることを示す、緑色LEDの出力、表示画面への第1の画像の表示、またはレポートもしくはデータログでのテキストデータの記憶および/もしくは送信をもたらす第1のユーザインタフェースを介して、冷却条件が実質的に同じであることを示してよい。第2の制御信号は、他方で、例えば、冷却条件またはそのパラメータ、例えば生体試料体積および基準試料体積が実質的に異なることを示す、赤色LEDの出力、表示画面への第2の画像の表示、またはレポートもしくはデータログでのテキストデータの記憶および/もしくは送信をもたらす第2のユーザインタフェースを介して、冷却条件が実質的に異なることを示してよい。
【0070】
一部の例では、第1および第2のユーザインタフェースは同じインタフェースであり、すなわち言い換えると、第1および第2の制御信号は、同じ、例えば第1のユーザインタフェースを介してそれぞれの出力をもたらすことになる。例えば、ユーザインタフェースは様々な情報を表示することが可能でよく、そして第1および第2の制御信号は、ユーザインタフェースによってどんな特定の情報が表示されるか、例えばLEDの色、表示されるテキストまたは画像等を決定してよい。
【0071】
上記した方法200の例のいずれでも、例えば冷却システムの一部としての冷却装置によって実装される冷却動作は、実質的に一定の率で生体試料を冷却し得る。例えば、冷却装置は、冷却プロファイル(例えば冷却動作の間の、時間もしくは温度にわたる冷却率の変化および/または時間にわたる温度の変化を表す)に従って生体試料を冷却してよい。冷却プロファイルの少なくとも一部に対して、実質的に(例えば許容可能な測定許容差内で)一定の冷却率が実装されてよい。例えば、実質的に一定の冷却率は、例では実質的に(例えば許容可能な測定許容差内で)1摂氏度毎分あってよく、その結果、冷却装置は、冷却プロファイルの対応する少なくとも一部に対して冷却動作の毎分1摂氏度だけ生体試料を客観的に冷却することになる。
【0072】
上記したように、種々の目的冷却率、例えば時間に関する温度変化率が冷却プロファイルの種々の段階において設定され得る。一部の例では、一定の目的冷却率が冷却プロファイルに設定され得る。
【0073】
図4は、一組のコンピュータ可読命令425を記憶して備えた非一時的コンピュータ可読記憶媒体420を図示する。コンピュータ可読記憶媒体420は、図示されるように、少なくとも1つのプロセッサ450に通信可能に結合されてよい。一組のコンピュータ可読命令425は、少なくとも1つのプロセッサ450によって実行されて、少なくとも1つのプロセッサ450に本明細書に記載される例のいずれかに係る方法を行わせてよい。
【0074】
少なくとも1つのプロセッサ450は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プロセッサモジュールもしくはサブシステム、プログラマブル集積回路、プログラマブルゲートアレイ、または別の制御もしくはコンピューティングデバイスを含んでよい。コンピュータ可読記憶媒体420は、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体として実装されてよい。コンピュータ可読記憶媒体420は、ダイナミックもしくはスタティックランダムアクセスメモリモジュール(DRAMもしくはSRAM)、消去可能かつプログラマブルリードオンリメモリモジュール(EPROM)、電気的消去可能かつプログラマブルリードオンリメモリモジュール(EEPROM)およびフラッシュメモリなどの半導体メモリデバイス;固定、フロッピーおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;テープを含む他の磁気媒体;コンパクトディスク(CD)もしくはデジタルビデオディスク(DVD)などの光媒体;または他の種類の記憶デバイスを含め、種々の形態のメモリを含むことができる。コンピュータ可読命令425は、1つのコンピュータ可読記憶媒体に記憶でき、または代替的に、複数のコンピュータ可読記憶媒体に記憶できる。1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体420は、冷却システムに設けるか、またはコンピュータ可読命令425が少なくとも1つのプロセッサ450による実行のためにデータネットワークを通じてダウンロードできる遠隔サイトに設けることができる。
【0075】
少なくとも1つのプロセッサ450およびコンピュータ可読記憶媒体420は、例えば冷却システムの部品でよい。冷却システムは、
図1を参照しつつ記載した冷却システム100に類似した冷却システムから成ってよい。
【0076】
図5は、プロセッサ550(1つまたは複数のプロセッサを備え得る)およびコンピュータ可読ストレージ540を含むシステム500を図示する。プロセッサ550は、本明細書に記載される方法例のいずれかを行うように構成されてよく、例えばプロセッサは、そのいずれかを行うように動作可能である。
【0077】
例では、プロセッサ550は、
図4を参照しつつ例に記載した少なくとも1つのプロセッサ450に相当する。例えば、プロセッサはコンピュータ記憶媒体に通信可能に結合されてよく、これはコンピュータ可読ストレージ540に対して別個またはその一部でよく、かつプロセッサ550によって実行されるとプロセッサ550に本方法を行わせる一組のコンピュータ可読命令を記憶してよい。
【0078】
プロセッサ550は、コンピュータ可読ストレージ540から、基準冷却条件と関連する第2のデータを得るように構成される。例えば、特定の基準冷却条件と関連する第2のデータが、冷却動作に対する基準データとして、例えばユーザによって選択されてよい。例えば、冷却装置によって冷却されるべき生体試料は、10%濃度DMSOおよび0.9%濃度NaClの150mlの流体から成るとユーザによって考えられてよい。ユーザは、したがって、対応する試料体積および試料組成パラメータ値(この例の場合150ml体積、10%DMSO、0.9%NaCl)を有する基準冷却条件と関連する第2のデータを選択してよい。他の例では、複数の基準条件と関連する複数組の第2のデータが、コンピュータ可読ストレージ540からプロセッサ550によって得られるように選択または予めプログラムされてよい。そのような例では、本明細書に記載される例のいずれかに係る方法が、冷却動作の間に冷却装置に供給される電力を示す第1のデータにより、かつ種々の基準冷却条件とそれぞれ関連する複数の第2のデータの各々により行われてよい。このようにして、プロセッサ550によって行われる方法は、所与の冷却条件が種々の基準冷却条件の1つまたは複数と所定の関係を有すると判定してよい。一部の場合、例えば所定の関係が、所与の冷却条件および基準冷却条件が実質的に同じであることから成る場合、プロセッサ550によって行われる方法は、第2のデータに含まれる種々の基準冷却条件のうち、どの基準冷却条件が所与の冷却条件に最も類似しているかを判定してよい。このように、プロセッサ550によってまたはそれを介して出力される制御信号は、所与の冷却条件が最も類似している基準冷却条件のしるしをもたらしてよい。
【0079】
一部の例では、システム500はプログラマブル電源530を含む。プログラマブル電源530は、冷却動作の間、冷却装置510に電力を供給するように構成される。電源530および冷却装置510は、それぞれ
図1を参照しつつ記載した電源130および冷却装置110に相当してよい。例えば、電源530および冷却装置510は、
図1の冷却システム100に相当する冷却システム505の一部でよい。プログラマブル電源530は、例えば
図1を参照しつつ記載した制御モジュール140に相当する制御モジュールとの相互作用によって、冷却装置510に供給される電力を変調してよい。それ故、電源は、それが、制御モジュールの制御下で、冷却動作の間の所与の時間に所望の電力を出力するようにプログラムできるので、プログラム可能であると考えられてよい。
【0080】
プログラマブル電源530は、冷却装置510に供給される電力を示す第1のデータを送信してもよい。例では、プログラマブル電源530は第1のデータを直接プロセッサ550に送信してよく、これが実装された方法の一部として第1のデータを受信および処理する。一部の場合、電源530は、もし存在すれば、他の部品、例えば冷却システム505の制御モジュールを介してプロセッサ550に第1のデータを送信してよい。送信するための第1のデータはプログラマブル電源によって生成されてよい。例えば、プログラマブル電源は、冷却装置に現在供給されている電力の値を決定し、これに基づき、第1のデータが所与の時点で冷却装置に供給されている電力の値を示すように、第1のデータを生成してよく、次いで第1のデータが上記したように送信される。
【0081】
プロセッサ550は、データネットワークを通じて、直接または間接的に電源530およびコンピュータ可読ストレージ540に接続されてよい。そのような例では、プロセッサ550は、データネットワークを介して第1および第2のデータを受信してよい。例えば、第1および第2のデータは、データネットワークに接続されるサーバに送信されてよく、そしてプロセッサは、実装された方法の一部として第1のデータおよび第2のデータを得るときにサーバから第1および第2のデータをダウンロードしてよい。
【0082】
或る例では、システム500は冷却装置510を含み、これは、前記したように、例えばクライオクーラーでよい。冷却装置510および電源530は冷却システム505の一部でよく、これはプロセッサ550および/またはストレージ540から遠隔でよい。例えば、冷却システム505は、第1の場所に位置し、かつそれぞれ第2および第3の場所に位置してよいプロセッサ550および/またはストレージ540に、例えばデータネットワークを介して通信可能に結合されてよい。
【0083】
一部の他の例では、冷却システム505は、その部品としてプロセッサ550および/またはストレージ540を含む。例えば、プロセッサ550は、本明細書に記載される例のいずれかに係る方法を行うように構成され、冷却システム505の内部部品でよい。同様に、コンピュータ可読ストレージ540は追加的または代替的に冷却システム505の内部部品でよい。或る例では、冷却システム505の内部部品が通信可能に物理的に結合されてよい一方、冷却システム505の外部部品がワイヤレスで、例えばデータネットワークを通じて通信可能に連結されてよい。
【0084】
或る例では、生体試料への冷却動作は複数の冷却装置510によって実装されてよい。例えば、冷却システム505は複数の冷却装置510、例えば複数のクライオクーラーを含んでよい。プロセッサ550は、そのような例では、冷却装置510の各々に供給される電力を示し、かつ/または冷却装置510の全てに供給される電力を示す第1のデータを得てよい。電源530は、冷却動作の間に冷却装置の各々に個々に電力を供給および変調するように構成されてよい。例えば、各冷却装置510のヒートシンクに熱電対などの温度センサが位置付けられてよく、そして各冷却装置510に供給される電力は、それぞれのヒートシンクの測定温度および実装された冷却プロファイルに基づいて電源530によって変調されてよい。或る場合、ヒートシンク温度データおよび電力データは、それぞれ冷却装置510の数により平均、例えば算術平均されてよい。他の場合、ヒートシンク温度データは冷却装置510の数により平均されてよいが、電力データは、各所与のデータ点で、例えば時間または温度間隔で冷却装置510の全てに供給される総電力量から成ってよい。
【0085】
一部の場合、複数の冷却装置510は、試料を直接冷却するための共通のヒートシンク、例えば熱伝導板または凍結室を共有してよい。そのような場合、ヒートシンク温度データは、ヒートシンク上または内に位置付けられた1つまたは複数の温度センサを介して得られてよく、そして複数の温度センサがある場合、温度データは平均されてよい。複数の冷却装置510の各々は、一部の例では異なる冷却容量を有してよい。
【0086】
上記例は例示的な例として理解されるべきである。更なる例として、例えば、プログラムがコンピュータによって実行されると、本明細書に記載される方法例のいずれかに係る方法をコンピュータに行わせる命令を含む、コンピュータソフトウェアなどのコンピュータプログラム製品が想定される。
【0087】
更なる例として、第1のデータが、校正試料へのまたは試料なしの冷却動作の間に冷却装置に供給される電力を示し、そして基準冷却条件が、基準冷却装置(仮定でよく、例えば第2のデータが生成または測定データでよい)によってそれぞれ行われる校正試料へのまたは試料なしの冷却動作と関連付けられ、その結果、本方法が冷却装置の状態を基準冷却装置に対して評価するために使用され得る場合も想定される。そのような方法は、したがって、冷却装置診断方法として実装されてよい。
【0088】
そのような例では、診断方法は、例えば或る記載した例で類似性メトリックを決定するのに類似した仕方で、第1のデータおよび第2のデータに基づいて診断メトリック値を決定することを含んでよい。冷却装置が基準冷却装置に対して所定の状態、例えば良または悪状態にあるかどうかを判定することは、診断メトリック値と所定の閾値との間の比較に基づいてよい。
【0089】
任意の一例に関して記載されるいかなる特徴も単独で、または他の記載される特徴と組み合わせて使用され得、かつ任意の他の例または任意の他の例の任意の組合せの1つまたは複数の特徴と組み合わせても使用され得ることが理解されるはずである。更には、上記されていない均等物および修正も添付の請求項の範囲から逸脱することなく利用され得る。
【符号の説明】
【0090】
100 冷却システム
105 試料
110 冷却装置
115 コールドフィンガ
120 熱伝導板
130 電源
140 制御モジュール
200 方法
300 データ系列
305 スパイク
420 コンピュータ可読記憶媒体
425 コンピュータ可読命令
450 プロセッサ
500 システム
505 冷却システム
510 冷却装置
530 プログラマブル電源
540 コンピュータ可読ストレージ
550 プロセッサ
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、プログラマブル電源と、冷却装置とを備えるシステムにおいて、
前記プログラマブル電源は、
冷却動作の間、前記冷却装置に電力を供給し、
前記冷却装置に供給される前記電力を変調し、
第1のデータを送信する、
ように構成されており、
前記冷却装置は、前記冷却動作を行うように構成されたクライオクーラーであり、
前記プロセッサは、
生体試料への冷却動作の間に前記プログラマブル電源から前記冷却装置に供給される電力を示す前記第1のデータを得るステップであって、前記冷却動作が所与の冷却条件を有し、前記第1のデータが、第1の電力値および関連パラメータの第1の値を含む、ステップと、
基準試料への冷却動作の間に記録された、基準冷却条件に関連付けられた第2のデータを得るステップであって、前記第2のデータが、第2の電力値および前記関連パラメータの第2の値を含む、ステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを、前記第1のデータにおける前記第1の電力値および前記関連パラメータの第1の値および前記第2のデータにおける前記第2の電力値および前記関連パラメータの第2の値に基づいて判定するステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と前記所定の関係を有するとの前記判定するステップによる判定に応答して、制御信号を出力するステップと、
を実施するように構成され、
前記関連パラメータは、時間または冷却装置のヒートシンクの温度であり、
前記所定の関係は、前記所与の冷却条件と前記基準冷却条件とが実質的に同じであることとされ、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有する場合に、前記生体試料における試料体積及び試料組成は、前記基準試料における試料体積及び試料組成と実質的に同じである、システム。
【請求項2】
プロセッサと、プログラマブル電源と、冷却装置とを備えるシステムにおいて、
前記プログラマブル電源は、
冷却動作の間、前記冷却装置に電力を供給し、
前記冷却装置に供給される前記電力を変調し、
第1のデータを送信する、
ように構成されており、
前記冷却装置は、前記冷却動作を行うように構成されたクライオクーラーであり、
前記プロセッサは、
生体試料への冷却動作の間に前記プログラマブル電源から前記冷却装置に供給される電力を示す前記第1のデータを得るステップであって、前記冷却動作が所与の冷却条件を有し、前記第1のデータが、電力値および関連パラメータの対応値の第1のデータ系列を含む、ステップと、
基準試料への冷却動作の間に記録された、基準冷却条件に関連付けられた第2のデータを得るステップであって、前記第2のデータが、電力値および前記関連パラメータの対応値の第2のデータ系列を含む、ステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを、前記第1のデータの前記第1のデータ系列および前記第2のデータの前記第2のデータ系列に基づいて判定するステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と前記所定の関係を有するとの前記判定するステップによる判定に応答して、制御信号を出力するステップと、
を実施するように構成され、
前記関連パラメータは、時間または冷却装置のヒートシンクの温度であり、
前記所定の関係は、前記所与の冷却条件と前記基準冷却条件とが実質的に同じであることとされ、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有する場合に、前記生体試料における試料体積及び試料組成は、前記基準試料における試料体積及び試料組成と実質的に同じである、システム。
【請求項3】
前記システムの前記プロセッサは、前記第1のデータおよび前記第2のデータに基づいて類似性メトリックを決定するステップを実施するように構成され、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と前記所定の関係を有するかどうかを判定する前記ステップが、前記類似性メトリックの所定の閾値との比較に基づく、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御信号が、a)前記冷却動作の中断をもたらすものであるか、またはb)ユーザインタフェースを介して、前記所与の冷却条件と前記基準冷却条件との間の前記所定の関係を示す出力をもたらすものである、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御信号が第1の制御信号であり、前記所定の関係が第1の所定の関係であり、前記システムの前記プロセッサは、
前記第1のデータおよび前記第2のデータに基づいて、前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と第2の所定の関係を有するかどうかを判定するステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と前記第2の所定の関係を有するとの前記判定するステップによる判定に応答して、第2の制御信号を出力するステップと、
を実施するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムの前記プロセッサは、a)前記関連パラメータの前記第1の値と前記関連パラメータの前記第2の値との間の差分を決定するステップであって、前記第1の電力値および前記第2の電力値が互いに一致する、ステップ、またはb)前記第1の電力値と前記第2の電力値との間の差分を決定するステップであって、前記関連パラメータの前記第1の値および前記関連パラメータの前記第2の値が実質的に同じである、ステップを実施するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを判定するステップが、前記第1のデータ系列と前記第2のデータ系列との間の統計比較に基づく、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
プロセッサと、プログラマブル電源と、冷却装置とを備えるシステムにおいて、
前記プログラマブル電源は、
冷却動作の間、前記冷却装置に電力を供給し、
前記冷却装置に供給される前記電力を変調し、
第1のデータを送信する、
ように構成されており、
前記冷却装置は、前記冷却動作を行うように構成されたクライオクーラーであり、
前記プロセッサは、
生体試料への冷却動作の間に前記プログラマブル電源から前記冷却装置に供給される電力を示す前記第1のデータを得るステップであって、前記冷却動作が所与の冷却条件を有する、ステップと、
基準試料への冷却動作の間に記録された、基準冷却条件に関連付けられた第2のデータを得るステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有するかどうかを、前記第1のデータおよび前記第2のデータに基づいて判定するステップと、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と前記所定の関係を有するとの前記判定するステップによる判定に応答して、制御信号を出力するステップと、
を実施するように構成され、
前記第1のデータが、前記生体試料への前記冷却動作の間に前記冷却装置に供給される電力のピーク値に対応する第1の電力値及び関連パラメータを含み、
前記第2のデータが、前記基準試料への前記冷却動作の間に前記冷却装置に供給される電力のピーク値に対応する第2の電力値及び関連パラメータを含み、
前記関連パラメータは、時間または冷却装置のヒートシンクの温度であり、
前記所与の冷却条件が前記基準冷却条件と所定の関係を有する場合に、前記生体試料における試料体積及び試料組成は、前記基準試料における試料体積及び試料組成と実質的に同じである、システム。
【請求項9】
前記冷却動作が、前記生体試料を実質的に一定の率で冷却する、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記実質的に一定の率が毎分摂氏1度である、請求項9に記載のシステム。
【外国語明細書】