IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アクセンスの特許一覧

特開2024-14918水素化処理または水素化転化のためのコイル巻回式熱交換器
<>
  • 特開-水素化処理または水素化転化のためのコイル巻回式熱交換器 図1
  • 特開-水素化処理または水素化転化のためのコイル巻回式熱交換器 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014918
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】水素化処理または水素化転化のためのコイル巻回式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/02 20060101AFI20240125BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20240125BHJP
   C10G 45/58 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F28D7/02
C10G45/02
C10G45/58
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191004
(22)【出願日】2023-11-08
(62)【分割の表示】P 2018235031の分割
【原出願日】2018-12-17
(31)【優先権主張番号】1762993
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】504143038
【氏名又は名称】アクセンス
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】クレール シルベスタイン
(72)【発明者】
【氏名】オディール ラジュネス
(72)【発明者】
【氏名】ジャック ロウ
(72)【発明者】
【氏名】マリエル ガニエール
(57)【要約】
【課題】水素化転化または水素化処理のデバイスおよび方法を、特にエネルギー効率および操作コストの点で改善する。
【解決手段】炭化水素供給原料の水素化転化または水素化処理のためのデバイスおよび方法であって、特に、少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器(S-1)を含み、前記(S-1)は、垂直チャンバによって形成された単流熱交換器であり、垂直チャンバにおいて、1個または複数個のチューブのバンドルが、多数の重畳された層として、中心コアの周りにらせん状に巻回され、炭化水素供給原料/水素の流れの混合物を加熱し、これを水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)に直接的に分配すること、およびこの反応セクション(R-1)からの反応流出物を冷却することのためのものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給原料の水素化転化または水素化処理のためのデバイスであって、
少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器(S-1):前記コイル巻回式熱交換器は、垂直チャンバによって形成された単流熱交換器であり、該垂直チャンバにおいて、1個または複数個のチューブのバンドルが、多数の重畳された層として、中心コアの周りにらせん状に巻回されており、これは、
炭化水素供給原料および場合による水素の流れまたは炭化水素供給原料/水素の流れの混合物を加熱し、かつ、これを水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)に直接的に流通させること、および
水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)からの反応流出物を冷却すること
のために適したものである;
炭化水素供給原料を水素の流れと混合するのに適した第1の混合セクション;前記第1の混合セクションは、少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器(S-1)の上流または下流にある;
炭化水素供給原料を水素化処理または水素化転化するのに適した水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1);
冷却済みの反応流出物の少なくとも一部を、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物と、水素を含む第1のガス状流出物とに分離するのに適した高圧低温分離器(B-2);および
少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物を、底部液と、塔頂流出物とに分離するのに適した分離塔(C-1)
を含む、デバイス。
【請求項2】
単一のコイル巻回式熱交換器(S-1)を含む、請求項1に記載の水素化転化または水素化処理のデバイス。
【請求項3】
バイパス(19)をさらに含み、該バイパス(19)は、炭化水素供給原料の一部または炭化水素供給原料/水素の流れの混合物の一部を、コイル巻回式熱交換器(S-1)の入口からコイル巻回式熱交換器(S-1)の出口に直接的に流通させるのに適したものである、請求項1または2に記載の水素化転化または水素化処理のデバイス。
【請求項4】
高圧高温分離器(B-1)をさらに含み、該高圧高温分離器(B-1)は、冷却済みの反応流出物を、少なくとも1種の重質フラクションを含む第1の液状流出物と、軽質フラクションを含む第1のガス状流出物とに分離するのに適したものであり、該第1のガス状流出物は、高圧低温分離器(B-2)に流通させられる、請求項1~3のいずれか1つに記載の水素化転化または水素化処理のデバイス。
【請求項5】
中圧高温分離器(B-3)をさらに含み、該中圧高温分離器(B-3)は、少なくとも1種の重質フラクションを含む第1の液状流出物を、少なくとも1種の重質フラクションを含む第2の液状流出物と、軽質フラクションを含む第2のガス状流出物とに分離するのに適したものであり、該第2の液状流出物は、分離塔(C-1)に流通させられる、請求項4に記載の水素化転化または水素化処理のデバイス。
【請求項6】
中圧低温分離器(B-4)をさらに含み、該中圧低温分離器(B-4)は、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物を、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第2の液状流出物と、水素を含む第2のガス状流出物とに分離するのに適したものであり、該第2の液状流出物は、分離塔(C-1)に流通させられる、請求項1~5のいずれか1つに記載の水素化転化または水素化処理のデバイス。
【請求項7】
中圧低温分離器(B-4)は、軽質フラクションを含む第2のガス状流出物を分離するのに適している、請求項5に従属する請求項6に記載の水素化転化または水素化処理のデバイス。
【請求項8】
炭化水素供給原料の水素化転化または水素化処理のための方法であって、以下の工程:
少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器(S-1)により、炭化水素供給原料および場合による水素の流れまたは炭化水素供給原料/水素の流れの混合物を加熱し、かつ、これを水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)に直接的に流通させる工程;
第1の混合セクションにおいて炭化水素供給原料を水素の流れと混合する工程であって、前記混合を、加熱工程の前またはその後に行う、工程;
少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器(S-1)により水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)からの反応流出物を冷却する工程であって、前記コイル巻回式熱交換器は、垂直チャンバによって形成された単流熱交換器であり、該垂直チャンバにおいて、1個または複数個のチューブのバンドルが、多数の重畳された層として、中心コアの周りにらせん状に巻回されている、工程;
水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)において炭化水素供給原料を水素化処理または水素化転化する工程であって、該水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)は、少なくとも1基の反応器を含み、該反応器は、周期律表の第VIII族からの元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む少なくとも1種の触媒を含む、工程;
高圧低温分離器(B-2)において冷却済みの反応流出物の少なくとも一部を分離して、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物と、水素を含む第1のガス状流出物とを流通させる工程;および
分離塔(C-1)において少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物を分離して、底部液と、塔頂流出物とを流通させる工程
を含む、方法。
【請求項9】
炭化水素供給原料の水素化処理または水素化転化は、以下の操作条件:
温度は、約200℃~約460℃である;
全圧は、約1MPa~約20MPaである;
液体供給原料の全体的毎時空間速度は、約0.05h-1~約12h-1である;
水素の流れは、水素の流れの体積に対して約50体積%~約100体積%の水素を含む;
液体炭化水素供給原料に対する水素の量は、約50Nm/m~約2500Nm/mである;
の少なくとも1つの下に行われる、請求項8に記載の水素化転化または水素化処理の方法。
【請求項10】
炭化水素供給原料の初留点は、120℃より高い、請求項8または9に記載の水素化転化または水素化処理の方法。
【請求項11】
炭化水素供給原料は、炭化水素供給原料の重量に対して最低5重量%の分解済み供給原料を含むか;または
炭化水素供給原料は、炭化水素供給原料の重量に対して5重量%未満の分解済み供給原料を含み、水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)の入口と出口との間で15℃超の温度上昇が実行される、請求項8~10のいずれか1つに記載の水素化転化または水素化処理の方法。
【請求項12】
高圧低温分離器(B-2)を、水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)の圧力より低い圧力で操作する、請求項8~11のいずれか1つに記載の水素化転化または水素化処理の方法。
【請求項13】
高圧低温分離器(B-2)の温度は、20℃~100℃である、請求項8~12のいずれか1つに記載の水素化転化または水素化処理の方法。
【請求項14】
炭化水素供給原料の水素化転化または水素化処理のための方法におけるコイル巻回式熱交換器(S-1)の使用であって、前記コイル巻回式熱交換器は、垂直チャンバによって形成された単流熱交換器であり、該垂直チャンバにおいて、1個または複数個のチューブのバンドルが、多数の重畳された層として、中心コアの周りにらせん状に巻回されている、使用。
【請求項15】
コイル巻回式熱交換器(S-1)は、
炭化水素供給原料/水素の流れの混合物を加熱し、かつ、これを、水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)に直接的に流通させること;および
水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)からの流出物を冷却すること
のために用いられる、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の説明は、水素化転化(例えば、重質供給原料の水素化分解)および水素化処理(例えば、残渣またはガスオイルの水素化脱金属、水素化脱窒および/または水素化脱硫)のためのデバイスおよび方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
シェルアンドチューブ式熱交換器(shell and tube heat exchanger)が長期にわたって知られている。特許文献1~3には、このタイプの熱交換器の例が記載されている。周知のシェルアンドチューブ式熱交換器は、例えば、BEUまたはDEU規格の熱交換器であり、これらは、U字形の交換チューブのバンドル(Uチューブバンドル)を含んでいる。これらの規格は、Tubular Exchanger Manufactures Association(TEMA:管式熱変換器製造業者協会;www.tema.org)によって規定されている。
【0003】
コイル巻回式熱交換器(coil-wound heat exchanger)は、スパイラル式熱交換器(spiral-wound heat exchanger)とも呼ばれるものであり、当業者に知られている。そのため、特許文献4には、コイル巻回式熱交換器およびLNG液化方法におけるその使用が記載されている。コイル巻回式熱交換器の他の構成は、例えば、特許文献5および6に記載されている。
【0004】
コイル巻回式熱交換器の使用は、他の熱交換器と同様に、種々の方法、例えば、重質供給原料を転化させる方法(特許文献7および8)または極低温空気分離方法(特許文献9)において想定されてきた。しかしながら、この使用は、他のタイプの熱交換器(例えば、シェルアンドチューブ式またはプレート式の熱交換器)が用いられる場合と比べて、レイアウトの改変に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2978226号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1113238号明細書(特開2001-194076号公報)
【特許文献3】欧州特許出願公開第2975353号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1367350号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/063655号
【特許文献6】国際公開第2014/067223号
【特許文献7】米国特許第8152994号明細書
【特許文献8】米国特許第8277637号明細書
【特許文献9】米国特許第671879号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
上記の状況の範囲内で、本発明の説明の第1の目的は、水素化転化または水素化処理のデバイスおよび方法を、特にエネルギー効率および操作コストの点で改善することにある。
【0007】
第1の態様によると、上述の目的、さらには他の利点は、炭化水素供給原料の水素化転化または水素化処理のためのデバイスであって、
少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器;前記コイル巻回式熱交換器は、垂直チャンバによって形成された単流熱交換器であり、この垂直チャンバにおいて、1個または複数個のチューブのバンドルが、多数の重畳された層として、中心コアの周りにらせん状に巻回され、これは、
炭化水素供給原料および場合による水素の流れまたは炭化水素供給原料/水素の流れの混合物を加熱し、かつ、これを水素化処理または水素化転化の反応セクションに直接的に流通させること、および
水素化処理または水素化転化の反応セクションからの反応流出物を冷却すること
のために適している;
炭化水素供給原料を水素の流れと混合するのに適した第1の混合セクション;前記第1の混合セクションを少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器の上流または下流に置くことが可能である;
炭化水素供給原料を水素化処理または水素化転化するのに適した水素化処理または水素化転化の反応セクション;
冷却済みの反応流出物の少なくとも一部を、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物と、水素を含む第1のガス状流出物とに分離するのに適した高圧低温分離器;および
少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物を、底部液と、塔頂流出物とに分離するのに適した分離塔
を含むデバイスによって得られる。
【0008】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、第1の圧縮セクションをさらに含み、この第1の圧縮セクションは、水素を含む第1のガス状流出物を圧縮し、かつ、これを第1の混合セクションまたは少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器に再循環させるのに適したものである。
【0009】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化処理または水素化転化の反応セクションは、少なくとも1基の反応器を含み、この反応器は、周期律表の第VIII族からの元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む少なくとも1種の触媒を含む。
【0010】
1つまたは複数の実施形態によると、本反応器は、少なくとも1個の固定床を含む。
【0011】
1つまたは複数の実施形態によると、本反応器は、少なくとも1個のバブリング床を含む。
【0012】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、ユニットの入口において炭化水素供給原料をろ過するためのデバイスを含む。1つまたは複数の実施形態によると、本ろ過デバイスは、場合による熱交換器の下流に配置され、この熱交換器は、炭化水素供給原料を50℃~100℃または150℃~230℃の温度に加熱するのに適したものである。
【0013】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、供給原料ドラムを含み、この供給原料ドラムは、場合によりろ過された炭化水素供給原料を収容するのに適したものである。前記ドラムは、コイル巻回式熱交換器S-1に供給するためのポンプの上流に配置される。
【0014】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、単一のコイル巻回式熱交換器を含む。
【0015】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、第1のバイパスをさらに含み、この第1のバイパスは、炭化水素供給原料の一部または炭化水素供給原料/水素の流れの混合物の一部を、コイル巻回式熱交換器の入口からコイル巻回式熱交換器の出口に直接的に流通させるのに適したものである。
【0016】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、高圧高温分離器をさらに含み、この高圧高温分離器は、冷却済み反応流出物を、少なくとも1種の重質フラクションを含む第1の液状流出物と、軽質フラクションを含む第1のガス状流出物とに分離するのに適したものであり、この第1のガス状流出物は、高圧低温分離器に流通させられる。
【0017】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、中圧高温分離器をさらに含み、この中圧高温分離器は、少なくとも1種の重質フラクションを含む第1の液状流出物を、少なくとも1種の重質フラクションを含む第2の液状流出物と、軽質フラクションを含む第2のガス状流出物とに分離するのに適したものであり、この第2の液状流出物は、分離塔に流通させられる。
【0018】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、中圧低温分離器をさらに含み、この中圧低温分離器は、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物を、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第2の液状流出物と、水素を含む第2のガス状流出物とに分離するのに適したものであり、この第2の液状流出物は、分離塔に流通させられる。
【0019】
1つまたは複数の実施形態によると、本中圧低温分離器は、軽質フラクションを含む第2のガス状流出物を分離するのに適している。
【0020】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化処理または水素化転化の反応セクションは、反応流出物をコイル巻回式熱交換器に直接的に流通させるのに適している。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、少なくとも第2の熱交換器および/または蒸気発生器および/または第1の空気冷却器をさらに含み、これらは、それぞれ、軽質フラクションを含む第1のガス状流出物を冷却し、かつ/または凝縮させるのに適したものである。
【0022】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、アミン洗浄塔をさらに含み、このアミン洗浄塔は、水素を含む第1のガス状流出物からHSの少なくとも一部を除去するのに適したものである。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、第2の空気冷却器をさらに含み、この第2の空気冷却器は、軽質フラクションを含む第2のガス状流出物を凝縮させ、かつ、軽質フラクションを含む凝縮済みの第2のガス状流出物を中圧低温分離器に流通させるのに適したものである。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、第3の熱交換器をさらに含み、この第3の熱交換器は、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1または第2の液状流出物を加熱し、かつ/または、分離塔からの底部液を冷却するのに適したものである。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、第4の熱交換器をさらに含み、この第4の熱交換器は、少なくとも1種の重質フラクションを含む第1または第2の液状流出物を冷却または加熱するのに適したものである。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、第3の空気冷却器をさらに含み、この第3の空気冷却器は、分離塔からの塔頂流出物を凝縮させるのに適したものである。
【0027】
1つまたは複数の実施形態によると、本デバイスは、環流ドラムをさらに含み、この還流ドラムは、分離塔からの塔頂流出物を、塔頂ガス状フラクションと、少なくとも1種の炭化水素液状留分とに分離するのに適したものである。
【0028】
第2の態様によると、上述の目的、さらには他の利点は、炭化水素供給原料の水素化転化または水素化処理の方法であって、以下の工程:
少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器により、炭化水素供給原料および場合による水素の流れまたは炭化水素供給原料/水素の流れの混合物を加熱し、かつ、これを、水素化処理または水素化転化の反応セクションに直接的に流通させる工程であって、前記コイル巻回式熱交換器は、垂直チャンバによって形成された単流熱交換器であり、この垂直チャンバにおいて、1個または複数個のチューブのバンドルが、多数の重畳された層として、中心コアの周りにらせん状に巻回されている、工程;
第1の混合セクションにおいて炭化水素供給原料を水素の流れと混合する工程であって、前記混合を、加熱工程の前またはその後に行うことができる、工程;
少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器により、水素化処理または水素化転化の反応セクションからの反応流出物を冷却する工程;
水素化処理または水素化転化の反応セクションにおいて炭化水素供給原料を水素化処理または水素化転化する工程であって、この反応セクションは、少なくとも1基の反応器を含み、この反応器は、周期律表の第VIII族からの元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む少なくとも1種の触媒を含む、工程;
高圧低温分離器において冷却済み反応流出物の少なくとも一部を分離して、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物と、水素を含む第1のガス状流出物とを流通させる工程;および
分離塔において少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物を分離して、底部液と、塔頂流出物とを流通させる工程
を含む方法によって得られる。
【0029】
1つまたは複数の実施形態によると、本方法は、第1の圧縮セクションにより、水素を含む第1のガス状流出物を圧縮し、かつ、これを第1の混合セクションまたは少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器に再環させる工程をさらに含む。
【0030】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料の水素化処理または水素化転化は、水素化処理または水素化転化の条件下に、例えば、以下の操作条件うちの少なくとも1つの下に行われる:
温度は、約200℃~約460℃である;
全圧は、約1MPa~約20MPaである;
液体供給原料の全体的な毎時空間速度は、約0.05h-1~約12h-1である;
水素の流れは、水素の流れの体積に対して約50体積%~約100体積%の水素を含む;
液体炭化水素供給原料に対する水素の量は、約50Nm/m~約2500Nm/mである。
【0031】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料の初留点は、120℃超である。例えば、炭化水素供給原料は、以下の供給原料から選ばれてよい:常圧蒸留物、真空蒸留物、常圧または真空の残渣またはフィッシャー・トロプシュユニットからの流出物。好ましくは、炭化水素供給原料は、以下の供給原料から選ばれる:常圧蒸留物(ナフサ、石油、ケロセンおよびガスオイル)、原油の直接蒸留または転化ユニット、例えば、FCC(fluid catalytic cracking unit:流動接触分解ユニット)、コーカーまたはビスブレーキングユニットに由来する真空蒸留物、例えば、ガスオイル、接触分解ユニットに由来するLCO(light cycle oil:ライトサイクルオイル)、芳香族化合物を抽出するためのユニットを起源とする供給原料、潤滑油ベースまたは潤滑油ベースの溶媒脱ろうに由来するベース、ATRs(atmospheric residue:常圧残渣)および/またはVRs(vacuum residue:真空残渣)および/または脱アスファルト油の脱硫または水素化転化のための固定床またはバブリング床の方法を起源とする蒸留物、脱アスファルト油、フィッシャー・トロプシュユニットからの流出物、単独または混合物としての植物油、または動物脂肪。上記のリストは、限定するものではない。
【0032】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料は、炭化水素供給原料の重量に対して最低5重量%の分解済み供給原料を含む;または炭化水素供給原料は、炭化水素供給原料の重量に対して5重量%未満の分解済み供給原料を含み、それによって、水素化処理または水素化転化の反応セクション(R-1)の入口と出口との間で15℃超の温度上昇を実現することが可能である。
【0033】
1つまたは複数の実施形態によると、高圧低温分離器は、水素化処理または水素化転化の反応セクションの圧力より低い圧力で操作される。
【0034】
1つまたは複数の実施形態によると、高圧低温分離器の温度は、20℃~100℃である。
【0035】
1つまたは複数の実施形態によると、高圧高温分離器は、水素化処理または水素化転化の反応セクションの圧力より低い圧力で操作される。
【0036】
1つまたは複数の実施形態によると、高圧高温分離器の温度は、200℃~450℃である。
【0037】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料は、ユニットの入口において、30℃~110℃、優先的には34℃~100℃の温度にある。
【0038】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料は、ユニットの入口において、150℃~280℃、優先的には160℃~260℃の温度にある。
【0039】
1つまたは複数の実施形態によると、本方法は、50℃~100℃または150℃~230℃の温度に加熱する、場合による工程の後に、ユニットの入口において炭化水素供給原料をろ過する工程を含む。1つまたは複数の実施形態によると、本方法は、ろ過済みの炭化水素供給原料を供給原料ドラム内に保持する工程を含む。前記原料をドラムからポンプで汲み上げる工程によって、コイル巻回式熱交換器S-1に供給することが可能になる。
【0040】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料、および場合による水素の流れまたは炭化水素供給原料/水素の流れの混合物の温度は、(コイル巻回式熱交換器の上流に配置された)混合セクションの出口において、および/またはコイル巻回式熱交換器の入口において、および/またはバイパスの入口において、30℃~280℃、好ましくは34℃~260℃である。1つまたは複数の特に好ましい実施形態によると、上述の温度は、40℃~60℃である(低温スキーム)。1つまたは複数の特に好ましい実施形態によると、上述の温度は、200℃~250℃である(高温スキーム)。
【0041】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料および/または水素の流れまたは加熱済みの炭化水素供給原料/水素の流れの混合物の温度は、コイル巻回式熱交換器の出口において、200℃~460℃、好ましくは240℃~440℃である。
【0042】
1つまたは複数の実施形態によると、加熱済みの炭化水素供給原料/水素の流れの混合物の温度は、水素化処理または水素化転化の反応セクションの入口において、200℃~460℃、好ましくは240℃~440℃である。
【0043】
1つまたは複数の実施形態によると、反応流出物の温度は、水素化処理または水素化転化の反応セクションの出口において、および/またはコイル巻回式熱交換器の入口において、205℃~475℃、好ましくは245℃~455℃である。
【0044】
1つまたは複数の実施形態によると、冷却済みの反応流出物の温度は、コイル巻回式熱交換器の出口において、70℃~450℃、好ましくは80℃~380℃である。
【0045】
第3の態様によると、上述の目的、さらには他の利点は、水素化処理または水素転化の方法におけるコイル巻回式熱交換器の使用であって、前記コイル巻回式熱交換器は、垂直チャンバによって形成された単流熱交換器であり、この垂直チャンバにおいて、1個または複数個のチューブのバンドルは、多数の重畳された層として、中心コアの周りにらせん状に巻回されている、使用によって得られる。
【0046】
1つまたは複数の実施形態によると、本コイル巻回式熱交換器は、
炭化水素供給原料/水素の流れの混合物を加熱し、かつ、これを水素化処理または水素化転化の反応セクションに直接的に流通させること;および
水素化処理または水素化転化の反応セクションからの流出物を冷却すること
のために用いられる。
【0047】
上記で言及したデバイス、方法、および使用の実施形態、さらには他の特徴および利点は、下記に続く説明を読む際に明らかとなるだろう。これらの説明は、例証としてのみ与えられ、非限定的であり、以下の図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、参照デバイスのレイアウトを示し、ここでは、反応セクションの供給原料は、シェルアンドチューブ式熱交換器のトレイン中の反応流出物によって予熱され、次いで、炉において加熱され、その後に、反応セクションに入る。
図2図2は、本発明の説明によるデバイスのレイアウトを示し、ここでは、反応セクションの供給原料は、コイル巻回式熱交換器S-1中の反応流出物によって加熱され、その後に、反応セクションに直接的に入る。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(詳細な説明)
本発明の説明は、水素化転化のデバイスおよび方法、例えば、重質な供給原料、例えば真空残渣または真空ガスオイルを水素化分解するデバイスおよび方法の分野に関する。本発明の説明は、水素化処理のデバイスおよび方法、例えば、残渣またはガスオイルの水素化脱金属、水素化脱窒および/または水素化脱硫のためのデバイスおよび方法の分野にも関する。
【0050】
図1を参照すると、炭化水素供給原料、例えば、ガスオイル、真空蒸留物、常圧もしくは真空の残渣またはフィッシャー・トロプシュユニットからの流出物の水素化処理または水素化転化のための参照デバイスは、
- 炭化水素供給原料(ライン1)および水素の流れ(ライン4)を混合するための第1のセクション;
- 第1の混合セクションに由来する炭化水素供給原料/水素の流れの混合物(以降において炭化水素混合物と称する)(ライン5)を水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1からの反応流出物(ライン9)により予熱するためのシェルアンドチューブ式熱交換器の1個または複数個のトレインE-1A/B/C/DおよびE-1E/F/G/H;
- シェルアンドチューブ式熱交換器の1個または複数のトレインE-1に由来する予熱済みの炭化水素混合物(ライン7)を加熱し、かつ、加熱済みの炭化水素混合物(ライン8)を水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1に流通させるための反応器入口の炉F-1;
- 水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1;
- 場合による、バイパス(バイパスライン19);これにより、炭化水素混合物(ライン5)の一部は、シェルアンドチューブ式熱交換器の1個または複数個のトレインE-1を回避することができ、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1の反応温度を調節することができる;
- 場合による、高圧高温分離器B-1;その供給原料は、シェルアンドチューブ式熱交換器のトレインE-1中を通過した後に冷却された反応流出物(ライン11)によって形成され、少なくとも1種の重質フラクションを含む第1の液状流出物(ライン22)と、軽質フラクションを含む第1のガス状流出物(ライン14)とを流通させる;
- 高圧低温分離器B-2;その供給原料は、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1に由来し、かつ、シェルアンドチューブ式熱交換器の1個または複数個のトレインE-1中を通過した後に冷却された反応流出物(ライン11および14)の少なくとも一部によって形成され、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物(ライン25)と、水素を含む第1のガス状流出物(ライン16)とを流通させる;
- 場合による、第2の熱交換器E-3;これは、反応流出物(または場合による、高圧高温分離器B-1を起源とする軽質フラクションを含む第1のガス状流出物)の少なくとも一部を冷却するためのものである;
- 場合による、第1の空気冷却器A-1;これは、反応流出物(または場合による、高圧高温分離器B-1を起源とし、場合によっては第2の熱交換器E-3をさらに起源とする軽質フラクションを含む第1のガス状流出物)の少なくとも一部を凝縮させるためのものである;
- 場合による、アミン洗浄塔C-2;これにより、高圧低温分離器B-2に由来する水素を含む第1のガス状流出物(再循環水素とも称される)(ライン16)からHSの少なくとも一部を除去することが可能になる;
- 場合による、第1の圧縮セクションK-1;これは、再循環させられかつアミン洗浄された水素(ライン17)を圧縮するためのものである;
- 場合による、第2の圧縮セクションK-2;これは、補給水素(ライン2)を圧縮するためのものである;
- 場合による、再循環させられ、洗浄され、かつ圧縮された水素(ライン18)および圧縮された補給水素(ライン3)を混合するための第2のセクション;
- 場合による、中圧高温分離器B-3;その供給原料は、高圧高温分離器B-1に由来する少なくとも1種の重質フラクションを含む第1の液状流出物(ライン22)であり、それの一つの流出物は、少なくとも1種の重質フラクションを含む第2の液状流出物(ライン26)であり、これは、分離塔C-1に流通させられる;
- 場合による、第2の空気冷却器A-2;これは、中圧高温分離器B-3に由来する軽質フラクションを含む第2のガス状流出物(ライン23)を凝縮させ、かつ、軽質フラクションを含む凝縮済みの第2のガス状流出物(ライン24)を流通させる;
- 場合による、中圧低温分離器B-4;これは、高圧低温分離器B-2に由来する少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物(ライン25)(および場合による、中圧高温分離器B-3に由来する軽質フラクションを含む第2のガス状流出物(ライン23)(および場合によっては、第2の空気冷却器A-2において凝縮させられたもの(ライン24))を分離し、かつ、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第2の液状流出物(ライン27および28)を分離塔C-1に流通させ、かつ、水素を含む第2のガス状流出物を除去するためのものである;
- 分離塔C-1(例えば、ライン32を介して加えられる流体を用いる従来の分留塔またはストリッピング塔);これは、高圧低温分離器B-2に由来する液状流出物(ライン25)、場合によっては、高圧高温分離器B-1に由来する液状流出物(ライン22)、場合によっては、中圧分離器B-3に由来する液状流出物(ライン26)、場合によっては、中圧低温分離器B-4に由来する液状流出物(ライン27)から出発して、底部液(ライン39)と、塔頂流出物とを流通させるためのものである;
- 場合による、第3の熱交換器E-4;これは、分離塔C-1の供給原料(ライン25、場合によってはライン27)を加熱し、かつ/または、分離塔C-1からの底部液(ライン39)を冷却するためのものである;
- 場合による、第4の熱交換器(図示なし);これは、少なくとも1種の重質フラクションを含む第1または第2の液状流出物を冷却するかまたは加熱するのに適したものである;
- 場合による、第3の空気冷却器A-3;これは、分離塔C-1に由来する塔頂流出物を凝縮させるためのものである;および
- 場合による、還流ドラムB-6;これは、塔頂流出物を、ガス状塔頂フラクション(例えば、サワーガス(sour gas))(ライン35)と、炭化水素液状留分(例えばナフサ)(ライン38)とに分離するためのものである
を含む。
【0051】
図1および2は、水素化処理または水素化転化のデバイスの同一の機器に対して同一の参照符号(番号)を有している。
【0052】
図2を参照すると、本発明の説明の第1の態様によるデバイスは、参照デバイスの要素を含んでおり、シェルアンドチューブ式熱交換器の1個または複数個のトレインE-1(図1)が少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器S-1によって置き換えられているという例外を伴っている。参照デバイス(図1)において用いられている供給原料を加熱するための反応器入口の炉F-1は、本発明の説明によるデバイスではもはや必要ではないことに留意することも重要である。1つまたは複数の実施形態によると、反応セクションの供給原料は、反応流出物によって、好ましくは単一のコイル巻回式熱交換器S-1により加熱のみされた後に、反応セクションに直接的に入る。
【0053】
具体的には、本発明者らが実証したことは、シェルアンドチューブ式熱交換器の1個または複数個のトレインE-1の代わりとして、少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器S-1を、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1の供給原料を反応流出物により加熱するために含む水素化処理または水素化転化のデバイスは、前記供給原料を加熱するために提供される反応器入口の炉F-1なしで済ますことを可能にすることである。
【0054】
コイル巻回式熱交換器S-1は、垂直チャンバによって形成された単流熱交換器であって、この垂直チャンバにおいて、1個または複数個のチューブのバンドルが、多数の重畳された層として、中心コアの周りにらせん状に巻回されている、ものである(Technique de l’Iingenieur,J 3 601 V2 paragraph 4.2を参照)。前記交換器により、チャンバ中を流通する流体と、チューブバンドル中を流通する少なくとも1種の流体との間で熱交換することが可能になる。
【0055】
1つまたは複数の実施形態によると、コイル巻回式熱交換器S-1は、シェル側の高温流体およびチューブ側の低温流体により用いられる。
【0056】
1つまたは複数の実施形態によると、コイル巻回式熱交換器S-1は、チューブ側の高温流体およびシェル側の低温流体により用いられる。
【0057】
図2からの例において、第1の混合セクションは、少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器S-1の上流に位置決めされる。1つまたは複数の実施形態において、第1の混合セクションは、少なくとも1基のコイル巻回式熱交換器S-1の下流にある。
【0058】
図2からの例において、コイル巻回式熱交換器(S-1)は、炭化水素供給原料/水素の流れの混合物を加熱するように位置決めされる。他方で、コイル巻回式熱交換器(S-1)は、炭化水素供給原料および場合による水素の流れを加熱するように構成されてよい。
【0059】
本発明の説明によるデバイスは、水素化処理または水素化転化の反応セクションの入口(すなわち、S-1とR-1との間のライン7上)に配置される始動炉(図示なし)を含んでよいことも留意されるべきである。他方で、始動炉は、本方法を始動するためだけに用いられる;本方法は、安定的な操作中、コイル巻回式熱交換器と水素化処理または水素化転化の反応セクションとの間に加熱工程を含まない。
【0060】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料の初留点は、120℃より高い。ディーゼルの場合、初留点は、一般に約150℃であり、蒸留範囲は、典型的には170℃~390℃である。常圧残渣の場合、初留点は、典型的には300℃より高く、好ましくは340℃~380℃である。真空残渣の場合、初留点は、典型的には450℃~600℃、好ましくは500℃~550℃である。軽質真空蒸留物(light vacuum gas oil(LVGO):軽質真空ガスオイル)は、300℃~430℃、好ましくは340℃~400℃の蒸留範囲によって特徴付けられる。重質真空蒸留物(heavy vacuum gas oil(HVGO):重質真空ガスオイル)は、400℃~620℃、好ましくは440℃~550℃の蒸留範囲によって特徴付けられる。したがって、使用可能な供給原料は、幅広い沸点の範囲内にある。
【0061】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料は、最低10体積%、一般に最低20体積%、多くの場合最低80体積%の、340℃超で沸騰する化合物を含有する。
【0062】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料の窒素の含有率は、500重量ppmより高く、一般に500~10000重量ppm、より一般には700~4500重量ppm、さらにより一般には800~4500重量ppmである。
【0063】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料の硫黄の含有率は、0.01重量%~5重量%、一般に0.2重量%~4重量%、さらにより一般には0.5重量%~3重量%である。
【0064】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料は金属を含有する。1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料のニッケルおよびバナジウムを合わせた含有率は、10重量ppm未満、好ましくは5重量ppm未満、さらにより好ましくは2重量ppm未満である。
【0065】
1つまたは複数の実施形態によると、炭化水素供給原料のアスファルテンの含有率は、3000重量ppm未満、好ましくは1000重量ppm未満、さらにより好ましくは300重量ppm未満である。
【0066】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1からの反応流出物は、炭化水素留分からなり、この炭化水素留分は、一般的には混合相として、水素、分解に由来するガス、特には前記反応セクションの反応に由来するHSおよびNHを、供給原料中に含有される硫黄および窒素の含有率に比例して含み、場合によっては、COおよび他のガス、二次反応を起源とする軽質留分、例えばLPG(liquefied petroleum gas:液化石油ガス)、および少なくともナフサを含み、場合によっては、以下の炭化水素留分:ディーゼル、ケロセンおよび/または未転化残渣等を供給原料の性質および反応のタイプに応じて含む。
【0067】
1つまたは複数の実施形態によると、少なくとも1種の重質フラクションを含む第1の液状流出物は、反応セクションからの流出物の最も重質なフラクションの少なくとも一部を含み、これは、ナフサ、ディーゼル、ケロセンおよび/または未転化残渣を、供給原料の性質および反応のタイプに応じて含む。少なくとも1種の重質フラクションを含む第1の液状流出物は、反応セクションからの流出物の中間フラクションを含んでもよく、場合によっては、ディーゼル、ケロセンおよび/またはナフサを供給原料の性質および反応のタイプに応じて含む。
【0068】
1つまたは複数の実施形態によると、軽質フラクションを含む第1のガス状流出物は、反応流出物の最も軽質なフラクションの少なくとも一部を含み、これは、水素、分解に由来するガス、特に、反応セクションの反応に由来するHSおよびNHを、供給原料中に含有される硫黄および窒素の含有率に比例して含んでおり、場合によっては、COおよび他のガス、二次反応を起源とする軽質留分、例えばLPG、および少なくともナフサを含む。
【0069】
1つまたは複数の実施形態によると、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物は、反応流出物のフラクションを含み、これは、二次反応を起源とする軽質留分、例えば、LPG、および少なくともナフサを含んでいる。
【0070】
1つまたは複数の実施形態によると、水素を含む第1のガス状流出物は、分解に由来するガス、特に、反応セクションの反応に由来するHSを、供給原料中に含有される硫黄の含有率に比例して含み、場合によっては、COを含む。
【0071】
1つまたは複数の実施形態によると、少なくとも1種の重質フラクションを含む第2の液状流出物は、反応セクションからの流出物の最も重質なフラクションを含み、これは、ディーゼル、ケロセンおよび/または未転化残渣を、供給原料の性質および反応のタイプに応じて含んでいる。
【0072】
1つまたは複数の実施形態によると、軽質フラクションを含む第2のガス状流出物は、反応セクションからの流出物の第1の中間フラクションを含み、これは、場合によっては、ディーゼル、ケロセンおよび/またはナフサを、供給原料の性質および反応のタイプに応じて含んでいる。
【0073】
1つまたは複数の実施形態によると、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第2の液状流出物は、少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物の最も重質なフラクションを含む。少なくとも1種の軽質フラクションを含む第2の液状流出物は、反応セクションからの流出物の第2の中間フラクションを含んでもよく、これは、ディーゼル、ケロセンおよび/またはナフサを、供給原料の性質および反応のタイプに応じて含んでいる。
【0074】
1つまたは複数の実施形態によると、水素を含む第2のガス状流出物は、反応流出物の最も軽質なフラクションの少なくとも一部を含み、これは、水素、分解に由来するガス、特に、反応セクションの反応に由来するHSを、供給原料中に含有される硫黄の含有率に比例して含み、場合によっては、COおよび他のガスを含む。
【0075】
1つまたは複数の実施形態によると、塔頂流出物は、分解に由来するガス、特に、HS、場合によるCOおよび他のガス、LPG、ナフサおよび場合によるストリッピング流体を含む。
【0076】
1つまたは複数の実施形態によると、ガス状塔頂フラクションは、分解に由来するガス、特にHS、場合によるCOおよび他のガス、LPGを含む。
【0077】
1つまたは複数の実施形態によると、液状炭化水素留分はナフサを含む。
【0078】
1つまたは複数の実施形態によると、底部液は、反応セクションからの流出物の最も重質なフラクションを含み、これは、ディーゼル、ケロセンおよび/または未転化残渣を、供給原料の性質および反応のタイプに応じて含んでいる。
【0079】
本発明の説明によるデバイスにおいて、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1は、1基または直列または並列に配置された複数基の反応器、例えば、直列に配置された2基の反応器を含んでよい。反応セクションの各反応器は、少なくとも1個の触媒床を含む。触媒は、固定床において、または、膨張床(expanded bed)において、あるいは、バブリング床において用いられてよい。固定床において用いられる触媒の場合、複数個の触媒床を少なくとも1基の反応器内に位置決めすることが可能である。各反応器は、冷却手段、例えば、液体または気体のクエンチ流を備えてよく、これは、2つの連続する床の間に配置されて、反応器中の床のそれぞれの入口における温度を制御する。他方、水素化処理または水素化転化の反応器は、加熱手段を有していない。
【0080】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1は、水素化分解ユニットの反応セクションである。
【0081】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1は、ディーゼルおよび/またはケロセンおよび/または真空蒸留物の水素化脱硫のためのユニットの反応セクションである。
【0082】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1は、ナフサの水素化脱硫のためのユニットの反応セクションである。
【0083】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1は、バブリング床における残渣または蒸留物または脱アスファルト油の水素化転化のためのユニットに含まれる。
【0084】
分離塔C-1は、特に、分解に由来するガス(一般に、サワーガスと呼ばれる)、特に、反応セクションの反応に由来するHSを除去することを目的とする。この塔は、好ましくは、あらゆるストリッピングガス、例えば、水素または水蒸気を含有するガスによってストリッピングされる。好ましくは、前記ストリッピングを行うために水蒸気が用いられる。
【0085】
第2の態様によると、本発明の説明は、第1の態様によるデバイスを実行するための方法にも関する。
【0086】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1の操作条件は、以下の特徴の少なくとも1つを含む:
- 温度は、約200℃~約460℃、優先的には約240℃~約450℃である;
- 全圧は、約1~約20MPa、例えば2~20MPa、好ましくは2.5~18MPa、非常に好ましくは3~18MPaである;
- 各触媒工程についての液体供給原料の全体的な毎時空間速度は、約0.05h-1~約12h-1、好ましくは約0.05h-1~約10h-1である;
- 用いられる水素の純度は、水素供給(すなわち、再循環水素/補給水素の混合物)の体積に対して約50体積%~100体積%である;
- 液体炭化水素供給原料に対する水素の量は、約50Nm/m~約2500Nm/mである;および
- 炭化水素供給原料中の分解された供給原料の量は、炭化水素供給原料の重量に対して、最低5重量%、好ましくは最低10重量%、例えば10重量%~50重量%である。
【0087】
当業者に知られているあらゆる触媒が、本発明の説明による方法において用いられ得る。例えば、周期律表の第VIII族(新周期律表の8、9および10族)からの元素から選ばれる少なくとも1種の元素と、場合による、周期律表の第VIB族(新周期律表の6族)からの元素から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む触媒である。
【0088】
以下、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、CRCプレス発行、編集長D.R.Lide、第81版、2000~2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列からの金属に相当する;CAS分類による第VIB族は、新IUPAC分類による6列からの金属に相当する。
【0089】
本発明の説明による方法の実行のために、無定形担体上に、水素化・脱水素機能を有する少なくとも1種の金属または金属化合物を含む、従来の水素化転化触媒を用いることが可能である。この触媒は、第VIII族からの金属、例えばニッケルおよび/またはコバルトを、しばしば、第VIB族からの少なくとも1種の金属、例えばモリブデンおよび/またはタングステンと組み合わせて含む触媒であってもよい。例えば、触媒の全重量に対してニッケル0.5重量%~10重量%(酸化ニッケル(NiO)として表される)と、モリブデン1重量%~30重量%、好ましくはモリブデン5重量%~20重量%(酸化モリブデン(MoO)として表される)とを、無定形鉱物担体上に含む触媒の使用がなされてよい。触媒中の第VIB族および第VIII族からの金属の酸化物の全含有率は、触媒の全重量に対して、一般に5重量%~40重量%、優先的には7重量%~30重量%である。第VIB族からの金属(1種または複数種)と第VIII族からの金属(1種または複数種)との間の重量比(金属酸化物に基づいて表される)は、一般に約20~約1、通常は約10~約2である。担体は、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、マグネシア、粘土およびこれら鉱物の少なくとも2種の混合物によって形成される群から選択される。この担体は、他の化合物、例えば、酸化ホウ素、ジルコニア、酸化チタン、無水リン酸から選ばれる酸化物を含有してもよい。
【0090】
用いられ得る別のタイプの触媒は、少なくとも1種のマトリクスと、少なくとも1種のYゼオライトと、少なくとも1種の水素化-脱水素金属とを含有する触媒である。上記のマトリクス、金属および追加元素は、この触媒の組成に組み込まれてもよい。有利なYゼオライトは、特許出願WO00/71641、さらには特許EP 0 911 077、US4,738,940およびUS4,738,941に記載されている。
【0091】
1つまたは複数の実施形態によると、高圧低温分離器B-2は、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1の圧力または高圧高温分離器B-1の圧力より低い圧力で、例えば、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1の圧力または高圧高温分離器B-1の圧力よりも0.1MPa~1.0MPa低い圧力で操作される。
【0092】
高圧低温分離器B-2の温度は、一般に、利用可能な冷却手段を考慮して、可及的に低い。これは、再循環水素の純度を最大限にするためである。高圧低温分離器B-2の温度は、一般に20℃~100℃、好ましくは35℃~70℃である。高圧低温分離器B-2に由来する少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物は、分離塔C-1に送られる。この分離塔C-1は、好ましくは、ストリッパタイプのものであり、好ましくは、還流ドラムB-6を備えている。
【0093】
1つまたは複数の実施形態によると、冷却済みの反応流出物は、場合による高圧高温分離器B-1に送られる。この高圧高温分離器B-1は、より低い圧力、例えば、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1の圧力より0.1MPa~1.0MPa低い圧力で操作される。高圧高温分離器B-1の温度は、一般に200℃~450℃、好ましくは250℃~380℃、非常に好ましくは260℃~360℃である。
【0094】
1つまたは複数の実施形態によると、高圧高温分離器B-1に由来する少なくとも1種の重質フラクションを含む第1の液状流出物は、第1のバルブV-1または場合によるタービンに送られ、場合による中圧高温分離器B-3に送られる。中圧高温分離器B-3の圧力は、場合による中圧低温分離器B-4に、中圧高温分離器B-3に由来する少なくとも1種の重質フラクションを含む第2の液状流出物を供給することができるように選ばれる。
【0095】
1つまたは複数の実施形態によると、中圧高温分離器B-3は、1.0~4.0MPa、好ましくは1.5~3.5MPaの圧力で操作される。中圧高温分離器B-3の温度は、一般に150℃~380℃、好ましくは200℃~360℃である。
【0096】
1つまたは複数の実施形態によると、高圧低温分離器B-2に由来する少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物は、第2のバルブV-2または場合によるタービン内で膨張させられ、場合による中圧低温分離器B-4に送られる。中圧低温分離器B-4の全圧は、優先的には、前記分離器B-4において分離される水素を含む第2のガス状流出物内に水素を有効に回収するのに必要な圧力である。この水素の回収は、好ましくは、圧力スイング吸着ユニットにおいて行われる。中圧低温分離器B-4の全圧は、一般に1.0MPa~4.0MPa、好ましくは1.5MPa~3.5MPaである。中圧低温分離器B-4の温度は、一般に20℃~100℃、好ましくは35℃~70℃である。
【0097】
分離塔C-1からの底部液(ライン39)は、第3の熱交換器E-4によって冷却された後に、ライン40を介して、分留セクション(図示なし)に送られてよい。この分留セクションにより、ナフサ、ケロセンおよびガスオイルの留分と残渣とを分離することが可能になる。
【0098】
本発明の説明による方法は、炭化水素供給原料の全重量に対して最低5重量%、好ましくは最低10重量%の分解済み供給原料を含む供給原料、すなわち、熱分解または接触分解のユニットを起源とするものに特に適している。典型的には、分解済みの供給原料は、ビスブレーキング、コーキングまたはFCCユニットを起源とする。1つまたは複数の実施形態によると、分解済みの供給原料は、接触分解ユニットを起源とし、例えばFCCユニットによって生じさせられたLCO(light cycle oil:ライトサイクルオイル)またはHCO(heavy cycle oil:ヘビーサイクルオイル)を含む。1つまたは複数の実施形態によると、前記分解済み供給原料は、オレフィンを含有し、それらの臭素指数は、典型的には、ASTM D2710の方法に従って測定されて、4~20mg/100g、優先的には7~20mg/100gである。本方法は、ほとんどまたは全く分解されていない供給原料を含む供給原料にも適している。これは、例えば、反応セクションにおける反応が十分に発熱性であり、その結果、反応セクションの入口における供給原料の温度より最低5℃、好ましくは最低15℃高い、反応セクションの出口における流出物の温度で操作することが可能である場合である。
【0099】
本発明の説明による方法は、炭化水素供給原料の全重量に対して5重量%未満の分解済みの供給原料を含む供給原料にも適しており、全く分解されていない(例えば、1重量%未満)供給原料を含む供給原料にも適している。例えば、本方法は、反応セクションの入口と出口との間の温度上昇が15℃より高くなるように行われてよい。
【0100】
第3の態様によると、本発明の説明は、第1の態様によるデバイスまたは第2の態様による方法におけるコイル巻回式熱交換器S-1の使用、特に、炭化水素混合物を加熱し、かつ、これを水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1に直接的に流通させること;および水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1からの流出物を冷却することのための使用にも関する。
【0101】
本発明の説明によるデバイス、方法および使用は、以下の利点を有している:
- コイル巻回式熱交換器S-1および場合による炭化水素供給原料中の分解済みの供給原料の存在(分解済みの供給原料は、反応セクション中の温度上昇を生じさせるので、反応流出物は、コイル巻回式熱交換器の入口において、温度においてより高い)により、炭化水素混合物を、通常の操作において水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1の反応器入口の炉F-1を除去することができるのに十分に高い温度に加熱することが可能になる;
- コイル巻回式熱交換器S-1によって、反応流出物を、参照デバイスにおけるより低い温度に冷却することが可能になり、結果的に、必要とされる第1の空気冷却器A-1の出力がより低くなる;
- コイル巻回式熱交換器S-1によって、デバイスの機器を設置するのに必要な床面積を低減させることが可能になる;
- コイル巻回式熱交換器S-1によって、反応ループにおける圧力降下を低減させ、結果的に第1の圧縮セクションK-1において必要とされる出力を低減させることが可能になる。
【0102】
(実施例)
図1は、参照比較を構成し、図2は、本発明の説明に合致するデバイスおよび方法の実施形態の例を説明している。
【0103】
炭化水素供給原料は、187℃~365℃の沸点を有する留分に、炭化水素供給原料の全重量に対して61重量%の常圧ガスオイル、11重量%の重質真空蒸留物、14重量%の分解済みのガスオイルおよび14重量%のコーカーガスオイルを混合したものであり、以下の特徴を有している。
【0104】
【表1A】
【0105】
本適用において、炭化水素供給原料の比重は無次元である。
【0106】
本発明の説明によると、図2に表されるように、炭化水素供給原料は、ライン1を介して供給される。補給水素は、好ましくは、炭化水素供給原料に対して過剰にあり、このものは、ライン2および第2の圧縮セクションK-2(例えば、コンプレッサ)、次いで、ライン3を介して供給され、ライン4において再循環水素と混合される。次に、水素は、炭化水素供給原料(ライン1)と混合され、その後、このようにして得られた炭化水素混合物を、ライン5を介してコイル巻回式熱交換器S-1に流通させる。コイル巻回式熱交換器S-1によって、炭化水素混合物を反応流出物により加熱することが可能になる。この実施例では、コイル巻回式熱交換器S-1は、特許出願WO2014/067223に記載されたものと同様のものである。この熱交換の後、炭化水素混合物は、ライン7を介して直接的に水素化脱硫セクションに運ばれる。この水素化脱硫セクションは、少なくとも1基の水素化脱硫反応器(水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1の一例)によって形成され、この水素化脱硫反応器は、少なくとも1種の水素化脱硫触媒を含んでいる。水素化脱硫反応に必要な温度は、ライン19を介して(場合によってはバルブV-3により)炭化水素混合物の一部をバイパスすることによって調節される。
【0107】
この実施例において、水素化処理または水素化転化の反応セクションR-1は、3個の触媒床を含む水素化脱硫反応器からなる。水素化脱硫反応器の床は、(Al上CoMoタイプの)Axens HR1248触媒から構成される。床は、約7.50MPaおよび325℃~390℃の温度で操作される。反応セクションにおける化学的水素消費量は、新しい炭化水素供給原料に対して1.1重量%である。
【0108】
反応流出物は、次に、ライン9を介してコイル巻回式熱交換器S-1に送られ、次いで、ライン11を介して第1の空気冷却器A-1に送られ、その後に、ライン15を介して高圧低温分離器B-2に入る。高圧低温分離器B-2により、気-液分離および水性液相のデカンテーションの両方を行うことが可能となる。
【0109】
高圧低温分離器B-2に由来する少なくとも1種の軽質フラクションを含む第1の液状流出物は、ライン25を介して第3の熱交換器E-4に、ライン28を介してストリッパ(分離塔C-1の例)に供給する。ストリッパは、塔の頂部において0.69MPaで操作される。
【0110】
高圧低温分離器B-2に由来する再循環水素は、ライン16を介してアミン洗浄塔C-2に送られる。アミン洗浄塔C-2によって、HSの少なくとも一部を除去することが可能となる。再循環水素は、次いで、ライン17および18を介して第1の混合セクションに流通させられ、次いで、第1の圧縮セクションK-1により圧縮し、かつ、供給原料(ライン1)と混合した後に、炭化水素供給原料と共に水素化処理反応器に流通させられる。
【0111】
ストリッパは、ライン32を介してストリッピング蒸気を供給される。ストリッパの頂部において、塔頂流出物のガス状フラクション(一般に、サワーガスと呼ばれる)がライン35を介して回収され、ナフサタイプの留分が、ライン38を介して回収され、このものの最終沸点は、通常、100℃より高い。ストリッパからの底部液は、ライン39を介して回収され、このものは、第3の熱交換器E-4において冷却された後、ライン40を介して場合による分留セクション(図示なし)に送られる。この分留セクションによりナフサ、ケロセン、ガスオイルの留分と、残渣とを回収することが可能となる。
【0112】
表1は、以下を比較する:
- TEMA BEU規格の3基の供給原料/流出物のシェルアンドチューブ式熱交換器E-1A/B/Cのトレイン(図1)を用い、かつ、反応器入口の炉F-1を用いる参照の水素化処理のデバイスおよび方法;および
- 単一のコイル巻回式熱交換器S-1(図2)を用い、かつ、反応器入口の炉F-1を何等用いることのない本発明の説明に合致する水素化処理のデバイスおよび方法。
【0113】
参照の方法は、本発明の説明に合致する方法の実施例のために上記に記載されたのと同一の供給原料および同一の操作条件により操作される。
【0114】
【表1B】
【0115】
表1に実証されるように、本発明の説明に合致するデバイスおよび方法において:
- 反応器入口の炉F-1は不必要である一方で、参照のデバイスおよび方法のためにそれは必須である;
- 第1の空気冷却器A-1の出力は、参照のデバイスおよび方法に対して1.5で除算される;
- 反応器入口の炉F-1および第1の空気冷却器A-1の合計出力は、参照のデバイスおよび方法に対して2で除算される;および
- 第1の圧縮セクションK-1の出力は、参照のデバイスおよび方法に対して1.3で除算される。
図1
図2