(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001492
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】錐体型プローブ、物性測定装置、土壌物性測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20231227BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G01N27/22 C
G01N27/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100174
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】394008846
【氏名又は名称】大起理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】大石 正行
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA14
2G060AC01
2G060AF03
2G060AF08
2G060AF11
2G060AG03
2G060AG11
2G060CA01
2G060HA02
2G060HC10
2G060JA03
(57)【要約】
【課題】様々な対象物に対する電気の応答特性を安定的に測定可能にする。
【解決手段】対象物に付与する電気の応答特性を測定するプローブ10であって、錐体20と、錐体の錐面の一部に形成される第一電極面33と、錐面の一部に形成される第二電極面53と、錐面の一部に形成され、絶縁体によって第一電極面33と第二電極面53を隔離させる隔離面43と、第一電極面に電気的に接続される第一配線と、第二電極面に電気的に接続される第二配線と、を備えるようにした。この第一電極面33及び第二電極面53は、第一配線及び第二配線を経由して応答検出装置(信号検出装置200)に接続可能とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に付与する電気の応答特性を測定するプローブであって、
錐体と、
前記錐体の錐面の一部に形成される第一電極面と、
前記錐体の錐面の一部に形成される第二電極面と、
前記錐体の錐面の一部に形成され、絶縁体によって前記第一電極面と前記第二電極面を隔離させる隔離面と、
前記第一電極面に電気的に接続される第一配線と、
前記第二電極面に電気的に接続される第二配線と、
を備え、
前記第一電極面及び前記第二電極面は、前記第一配線及び前記第二配線を経由して応答検出装置に接続可能とされることを特徴とする、
錐体型プローブ。
【請求項2】
少なくとも前記第二電極面及び前記隔離面は、前記錐体の周方向に沿った環形状であることを特徴とする
請求項1に記載の錐体型プローブ。
【請求項3】
前記錐体における軸方向の先端側を前方側、後端側を後方側と定義する際に、
前記錐体は、
該錐体の一部を構成する第一錐体部と、
該錐体の一部を構成し、かつ、前記第一錐体部よりも後方側に位置する第二錐体部と、
該錐体の一部を構成し、かつ、前記第一錐体部と前記第二錐体部の間に介在する隔離錐体部と、を有しており、
前記第一錐体部の錐面に前記第一電極面が形成され、
前記第二錐体部の錐面に前記第二電極面が形成され、
前記隔離錐体部の錐面に前記隔離面が形成されることを特徴とする、
請求項1に記載の錐体型プローブ。
【請求項4】
前記第一錐体部の下底面(以下、第一下底面)から軸方向且つ後方側に延びる棒状の第一軸部を備え、
前記第一軸部が、前記第一配線の少なくとも一部となることを特徴とする、
請求項3に記載の錐体型プローブ。
【請求項5】
前記隔離錐体部は、
前記第一錐体部と軸方向に係合可能な前方係合構造と、
前記第二錐体部と軸方向に係合可能な後方係合構造と、を有することを特徴とする
請求項3に記載の錐体型プローブ。
【請求項6】
前記第二錐体部は、軸方向に貫通する孔となる第二軸孔を有しており、
前記第二軸孔の内部に、前記第一配線が通過することを特徴とする、
請求項3に記載の錐体型プローブ。
【請求項7】
前記第二錐体部の下底面(以下、第二下底面)から軸方向且つ後方側に延びる筒状のシェル部を備え、
前記シェル部が、前記第二配線の少なくとも一部となることを特徴とする、
請求項3に記載の錐体型プローブ。
【請求項8】
前記第二錐体部の後方に配置され、絶縁材で構成される基台を備えることを特徴とする
請求項3に記載の錐体型プローブ。
【請求項9】
前記基台の後方側に軸部が接続され、
前記基台によって、前記第二電極面と前記軸部が絶縁されることを特徴とする、
請求項8に記載の錐体型プローブ。
【請求項10】
前記電気は、周波信号であることを特徴とする
請求項1に記載の錐体型プローブ。
【請求項11】
前記錐体は、前記対象物に貫入される貫入コーンを兼ねることを特徴とする、
請求項1に記載の錐体型プローブ。
【請求項12】
請求項1に記載の錐体型プローブと、
前記第一配線及び前記第二配線を介して前記錐体型プローブに電気を印加すると共に、前記電気による前記対象物の応答特性を検出する応答検出装置と、
を備えることを特徴とする、
物性測定装置。
【請求項13】
前記応答検出装置として、
前記第一配線及び前記第二配線を介して前記錐体型プローブに電気信号を印加すると共に、前記錐体型プローブから反射して前記第一配線及び前記第二配線に伝わる前記電気信号を検出する信号検出装置を備えることを特徴とする、
請求項12に記載の物性測定装置。
【請求項14】
前記錐体における軸方向の先端側を前方側、後端側を後方側と定義する際に、
前記錐体型プローブの後方側に同軸状に配置されて、前記錐体型プローブを支持する筒状の軸部が設けられ、
前記軸部の内部に前記応答検出装置が配置されることを特徴とする、
請求項12に記載の物性測定装置。
【請求項15】
前記第一電極面及び/又は前記第二電極面に作用する応力を測定する応力検知装置を備えることを特徴とする、
請求項12に記載の物性測定装置。
【請求項16】
請求項1に記載の錐体型プローブと、
前記第一配線及び前記第二配線を介して前記錐体型プローブに電気を印加すると共に、前記電気による前記対象物の応答特性を検出する応答検出装置と、
前記錐体型プローブが前記対象物に貫入される際の応力を測定する応力検知装置と、
を備えることを特徴とする、
物性測定装置。
【請求項17】
地中内の土壌の物性値の測定方法であって、
測定用のプローブを、地中内に進入させる進入工程と、
前記プローブの地表からの深さが互いに異なる複数位置の各々において、前記プローブに対して複数の周波数となる周波信号を印加して該プローブからの反射信号を検出する実測工程と、
を備えることを特徴とする、
土壌物性値測定方法。
【請求項18】
前記複数位置の各々において、前記反射信号の中から特定の前記周波数を選定する周波数選定工程を備えることを特徴とする、
請求項17に記載の土壌物性値測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に付与する電気の応答特性の測定に利用されるプローブ及びこのプローブを利用した物性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の物性を得るために、対象物に電気(電力)又は電気信号を印加して、その応答(電流の流れるレベルや、電気信号の反射・伝達)を測定することが行われる。例えば、対象物に直流の電気(電力)を印加して電流値(抵抗)を測定すれば、対象物の電気伝導率を得ることができる。また例えば、対象物に周波信号やパルス信号などの電気信号を印加して、その反射特性及び/又は伝送特性を測定することで、対象物の比誘電率や電気伝導率等を得ることができる。このような対象物の電気の応答特性を測定する装置の一種として、ネットワークアナライザが用いられる。ネットワークアナライザの種類としては、スカラネットワークアナライザやベクトルネットワークアナライザがある。スカラネットワークアナライザは、主に周波信号の振幅を測定する。ベクトルネットワークアナライザは、周波信号の振幅に加えて位相も測定する。
【0003】
ネットワークアナライザを用いて対象物を測定する場合、一般的に、ネットワークアナライザから生成される周波数信号を対象物に入射させる送信側接点(プローブ)と、この周波数信号が対象物を透過(伝送)した後の透過信号(透過応答)を受信してネットワークアナライザに受け渡す受信側接点(プローブ)を対象物に配置することで、測定用の回路網を構築する。なお、透過信号の特性測定が不要の場合は、受信側プローブを省略したオープンエンド形式の回路網とし、送信側接点(プローブ)の反射信号(反射応答)を測定しても良い。
【0004】
ネットワークアナライザによって測定される伝送特性及び/又は反射特性に関する情報をSパラメータと称する。Sパラメータは、主として、伝送特性と反射特性を含む。送信側接点(プローブ)の管理記号を「1」、受信側接点(プローブ)の管理記号を「2」とした場合、反射特性(S11)は、送信側接点(プローブ)から対象物に印加された周波数信号が送信側接点(プローブ)に反射される信号特性を意味し、伝送特性(S21)は、送信側接点(プローブ)から対象物に印加された周波数信号が受信側接点(プローブ)に伝送される信号特性を意味する。ベクトルネットワークアナライザの場合、各測定値は、いずれも実数と虚数の複素量となっており、複素量から振幅や位相を算出する。
【0005】
Sパラメータを利用すると、土壌等の対象物の比誘電率、電気伝導率等の各種物性値を算出することが可能となる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、対象物によっては、送信側接点(プローブ)や受信側接点(プローブ)を、対象物に適切に接触させることが難しい場合がある。プローブが対象物に安定的に接触しないと、ネットワークアナライザによる反射特性又は伝送特性の検出にバラツキが生じやすい。例えば、対象物が粉体や土壌、砂等のような複数粒子の集合体の場合、プローブとの安定した接続態様を創出することが難しい。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、様々な対象物に印加される電気の応答特性を測定可能なプローブ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に関連する本発明は、対象物に付与する電気の応答特性を測定するプローブであって、錐体と、前記錐体の錐面の一部に形成される第一電極面と、前記錐体の錐面の一部に形成される第二電極面と、前記錐体の錐面の一部に形成され、絶縁体によって前記第一電極面と前記第二電極面を隔離させる隔離面と、前記第一電極面に電気的に接続される第一配線と、前記第二電極面に電気的に接続される第二配線と、を備え、前記第一電極面及び前記第二電極面は、前記第一配線及び前記第二配線を経由して応答検出装置に接続可能とされることを特徴とする、錐体型プローブである。
【0010】
上記錐体型プローブに関連して、少なくとも前記第二電極面及び前記隔離面は、前記錐体の周方向に沿った環形状であることを特徴としても良い。
【0011】
上記錐体型プローブに関連して、前記錐体における軸方向の先端側を前方側、後端側を後方側と定義する際に、前記錐体は、該錐体の一部を構成する第一錐体部と、該錐体の一部を構成し、かつ、前記第一錐体部よりも後方側に位置する第二錐体部と、該錐体の一部を構成し、かつ、前記第一錐体部と前記第二錐体部の間に介在する隔離錐体部と、を有しており、前記第一錐体部の錐面に前記第一電極面が形成され、前記第二錐体部の錐面に前記第二電極面が形成され、前記隔離錐体部の錐面に前記隔離面が形成されることを特徴としても良い。
【0012】
上記錐体型プローブに関連して、前記第一錐体部の下底面(以下、第一下底面)から軸方向且つ後方側に延びる棒状の第一軸部を備え、前記第一軸部が、前記第一配線の少なくとも一部となることを特徴としても良い。
【0013】
上記錐体型プローブに関連して、前記隔離錐体部は、前記第一錐体部と軸方向に係合可能な前方係合構造と、前記第二錐体部と軸方向に係合可能な後方係合構造と、を有することを特徴としても良い。
【0014】
上記錐体型プローブに関連して、前記第二錐体部は、軸方向に貫通する孔となる第二軸孔を有しており、前記第二軸孔の内部に、前記第一配線が通過することを特徴としても良い。
【0015】
上記錐体型プローブに関連して、前記第二錐体部の下底面(以下、第二下底面)から軸方向且つ後方側に延びる筒状のシェル部を備え、前記シェル部が、前記第二配線の少なくとも一部となることを特徴としても良い。
【0016】
上記錐体型プローブに関連して、前記第二錐体部の後方に配置され、絶縁材で構成される基台を備えることを特徴としても良い。
【0017】
上記錐体型プローブに関連して、前記基台の後方側に軸部が接続され、前記基台によって、前記第二電極面と前記軸部が絶縁されることを特徴としても良い。
【0018】
上記錐体型プローブに関連して、前記電気は、周波信号であることを特徴としても良い。
【0019】
上記錐体型プローブに関連して、前記錐体は、前記対象物に貫入される貫入コーンを兼ねることを特徴としても良い。
【0020】
上記目的に関連する本発明は、上記錐体型プローブと、前記第一配線及び前記第二配線を介して前記錐体型プローブに電気を印加すると共に、前記電気による前記対象物の応答特性を検出する応答検出装置と、を備えることを特徴とする、物性測定装置である。
【0021】
上記物性測定装置に関連して、前記応答検出装置として、前記第一配線及び前記第二配線を介して前記錐体型プローブに電気信号を印加すると共に、前記錐体型プローブから反射して前記第一配線及び前記第二配線に伝わる前記電気信号を検出する信号検出装置を備えることを特徴としても良い。
【0022】
上記物性測定装置に関連して、前記錐体における軸方向の先端側を前方側、後端側を後方側と定義する際に、前記錐体型プローブの後方側に同軸状に配置されて前記錐体型プローブを支持する筒状の軸部が設けられ、前記軸部の内部に前記応答検出装置が配置されることを特徴としても良い。
【0023】
上記物性測定装置に関連して、前記第一電極面及び/又は前記第二電極面に作用する応力を測定する応力検知装置を備えることを特徴としても良い。
【0024】
上記目的に関連する本発明は、上記錐体型プローブと、前記第一配線及び前記第二配線を介して前記錐体型プローブに電気を印加すると共に、前記電気による前記対象物の応答特性を検出する応答検出装置と、前記錐体型プローブが前記対象物に貫入される際の応力を測定する応力検知装置と、を備えることを特徴とする、物性測定装置である。
【0025】
上記目的に関連する本発明は、地中内の土壌の物性値の測定方法であって、測定用のプローブを、地中内に進入させる進入工程と、前記プローブの地表からの深さが互いに異なる複数位置の各々において、前記プローブに対して複数の周波数となる周波信号を印加して該プローブからの反射信号を検出する実測工程と、を備えることを特徴とする、土壌物性値測定方法である。
【0026】
上記土壌物性値測定方法に関連して、前記複数位置の各々において、前記反射信号の中から特定の前記周波数を選定する周波数選定工程を備えることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、様々な対象物に対して安定した電気信号の応答特性を測定可能となるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態にかかる物性測定装置の全体構造を示す正面図である。
【
図2】同物性測定装置の錐体型プローブ及び信号検出装置の近傍を拡大して示す正面図である。
【
図3】(A)は錐体型プローブの正面拡大図であり、(B)は同錐体型プローブの正面拡大断面図であり、(C)は同錐体型プローブの正面分解図である。
【
図4】(A)は同錐体型プローブの第一電極体の正面図(中)、上面図(上)、底面図(下)、正面断面図(右)であり、(B)は同錐体型プローブの隔離体の正面図(中)、上面図(上)、底面図(下)、正面断面図(右)であり、(C)は同錐体型プローブの第二電極体の正面図(中)、上面図(上)、底面図(下)、正面断面図(右)である。
【
図5】(A)は同錐体型プローブの基台の正面図(中)、上面図(上)、底面図(下)、正面断面図(右)であり、(B)は同錐体型プローブのコネクタ部の正面図(中)、上面図(上)、底面図(下)、正面断面図(右)である。
【
図6】同信号検出装置の内部構造を示すブロック図である。
【
図7】同物性測定装置の制御装置の内部構造を示すブロック図である。
【
図8】(A)は同制御装置の制御プログラムの機能構成を示すブロック図であり、(B)は同制御プログラムのフローチャート図である。
【
図9】(A)から(C)は、同物性測定装置の測定手順を示す正面図である。
【
図10】同制御装置の制御プログラムの変形例を示すフローチャート図である。
【
図11】同物性測定装置の変形例を示す正面図である。
【
図12】同物性測定装置の変形例を示す正面図である。
【
図13】同錐体型プローブ変形例を示す正面拡大図である。
【
図14】同錐体型プローブ変形例を示す(A)正面拡大図、(B)底面図である。
【
図15】同物性測定装置の変形例を示す正面図である。
【
図16】同物性測定装置の変形例を示す正面拡大図である。
【
図17】同物性測定装置の変形例を示す正面拡大図である。
【
図18】同信号検出装置の内部構造の変形例を示すブロック図である。
【
図19】(A)及び(B)は、同物性測定装置の変形例の全体構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態の物性測定装置について、以下図面を参照して説明する。なお、ここでは、対象物として土壌を測定する場合を例示するが、対象物は土壌に限定されない。
【0030】
図1に実施形態の物性測定装置1の全体像を示す。物性測定装置1は、デジタル土壌硬度計を兼ねるようになっている。この物性測定装置1は、地中内に先端から貫入される円錐体型プローブ10と、この円錐体型プローブ10の後方に連続する軸部300と、軸部300の後端に配置されて円錐体型プローブ10が土壌から受ける応力(貫入時反力)を検知する応力検知装置400と、応力検知装置400側に配置される操作ハンドル500と、操作ハンドル500の近傍に配置される制御装置600を備える。軸部300には錘310が配置される。応力検知装置400は例えばロードセルであり、円錐体型プローブ10から軸部300に伝達される反力を検出し、その反力データをデジタル値に変換して、通信回線480を介して制御装置600に伝達する。
【0031】
軸部300内には、円錐体型プローブ10に電気的に接続される信号検出装置200が収容されている。信号検出装置200は、通信回線280及び電力供給回線282によって制御装置600と接続される。信号検出装置200は、円錐体型プローブ10を介して土壌に印加する直流電気(電力)又は交流電気(電力)の各種応答特性(例えば電気抵抗値、信号反射応答、信号透過応答等)を検出する応答検出装置の一種である。本実施形態の信号検出装置200は、制御装置600から通信回線280を経て送信される計測指示信号に基づいて、円錐体型プローブ10を介して土壌に印加される電気信号の応答特性(ここでは反射特性)に関する信号(反射信号)を取得し、更にその反射信号をデジタル変換して、制御装置600に伝達する。なお、信号検出装置200は、デジタル信号に変換する際に、例えばSパラメータのような各種計算を行っても良い。
【0032】
詳細は後述するが、制御装置600には、高さ方向の変位を検出可能な高さセンサが内蔵されており、地表面Uから円錐体型プローブ10の貫入深度を測定できるようになっている。この高さセンサは、円錐体型プローブ10、信号検出装置200等に設けても良い。
【0033】
使用者は、操作ハンドル500を把持して、軸部300及び円錐体型プローブ10が地表面Uに対して垂直(または鉛直)となるように物性測定装置1を位置決めし、円錐体型プローブ10をその突端から地中に貫入させる。応力検知装置400はいわゆるロードセルであって、貫入深度に連動して、円錐体型プローブ10に作用する土壌からの反力を、軸部300を介して検出する。同時に、信号検出装置200は、貫入深度に連動して、円錐体型プローブ10を利用して土壌の反射信号(Sパラメータ)等を取得する。結果、土壌内における地表面Uからの深さ情報と、土壌からの反力情報と、土壌のSパラメータの3つがリンクした状態で測定できる。
【0034】
なお、応力検知装置400は、ロードセルの場合を例示したが、例えば
図11に示すように、バネ402の伸縮量を利用して反力を検知する構造を採用することもできる。その場合は、バネ402の伸縮量を測定可能な変位センサ404を利用して、その変位量又は変位量に基づく応力換算値を、通信回線480によって制御装置600に伝達すれば良い。変位センサ404ではなく、バネの伸縮量を目視等で判断しても良い。
【0035】
更に、応力検知装置400は、土壌の硬度を算出する目的の他に、後述する円錐体型プローブ10における第一電極面33及び第二電極面53と測定対象物(土壌)との接触面圧を測定する機能を兼ねている。接触面圧が所定閾値よりも低い場合は、反射信号(Sパラメータ)の測定を中断するか、そのデータを除外することで、測定誤差を低減できる。
【0036】
図2及び
図3に、円錐体型プローブ10及び信号検出装置200を拡大して示す。
【0037】
円錐体型プローブ10は、基台70と、この基台70に設けられて有頭円錐体(頂点を有する円錐体)形状となる錐体20と、コネクタ部80を有する。この錐体20は、土壌硬度を測定するための貫入コーンを兼ねる。錐体20の形状は様々選択できるが、本実施形態では、日本土壌肥料学会監修の土壌環境分析法における貫入式土壌硬度計法に適合させており、SR-II型土壌抵抗測定器の貫入コーンに一致させている。即ち、先端角度は30度、下底面の正円面積が2cm2に設定され、軸部300の直径は12mmに設定される。また例えば、山中式硬度計に適合させる場合、錐体20の先端角度は12度40分、下底面の正円直径18mmとなる。更に、公益社団法人地盤工学会の地盤調査方法となるポータブルコーン貫入試験に適合させる場合、錐体20の先端角度は30度、下底面の正円直径28.6mmに設定され、軸部300の直径は16mmに設定される。また、簡易動的コーン貫入試験におけるスウェーデン式サウンディング試験に適合させる場合、例えば、錐体20の先端角度は60度、下底面の正円直径25mm、軸部300の直径は16mmとなる。また更に、電気式コーン貫入試験に適合させる場合、錐体20の先端角度は60度、下底面の正円直径35.3mm~36.0mm、軸部300の直径は35.3mm~36.0mmとなる。国立研究開発法人土木研究所の土検棒貫入試験に適合させる場合、例えば、錐体20の先端角度は60度、下底面の正円直径15mm、軸部300の直径は10mmとなる。つまり、錐体20の先端角度は、10度以上70度以下の範囲に設定されることが好ましい。また、軸部300の直径は10mm以上が望ましく、40mm以下が望ましい。また、軸部300の長さは15cmが望ましく、30cm以上が更に好ましい。なお、本実施形態では、錐体20が有頭円錐体形状(頂点を有する円錐体形状)となる場合を例示するが、本発明はこれに限定されず、切頭円錐体形状(頂点を有しない円錐台形状)であっても良い。また、円錐体に限られず、三角錐、四角錐等の角錐体形状であっても良い。
【0038】
図3及び
図4に示すように、錐体20を構成する部品として、第一電極体30、隔離体40、第二電極体50を有する。つまり、錐体20を全体錐体とする場合、第一電極体30、隔離体40、第二電極体50は、全体錐体の一部を構成する部分錐体となる。なお、以降、方向や向きを説明する際に、錐体20の軸方向の先端側(使用態様では下側)を前方、軸方向の後端側(使用態様では上側)を後方と称する場合がある。
【0039】
(第一電極体)
【0040】
図4(A)に示すように、第一電極体30は、導電性を有する金属(例えばステンレス)で構成されており、第一錐体部32及び第一軸部36を有する。第一錐体部32は、有頭円錐体形状(頂点を有する円錐体形状)となっており、その円錐面の全体が、土壌と接触する第一電極面33となる。第一電極面33の表面積は、後述する第二電極面53と同じに設定される。第一電極面33は、円錐底辺近傍において周方向に帯状に延びる環状領域K1を含んでいる(
図3(C)参照)。なお、ここでは第一錐体部32が、有頭円錐体形状の場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、切頭円錐体形状(頂点を有しない円錐(台形状)であっても良い。また、第一錐体部32の形状は、円錐体に限られず、三角錐、四角錐等の角錐体形状であっても良い。
【0041】
第一軸部36は、第一錐体部32の第一下底面34から後方に連続して延びる断面円形の棒状部材となる。第一軸部36は、第一錐体部32の中心軸と同軸状に配置される。第一軸部36の少なくとも後端を含む後端近傍領域は筒状になっており、その内部空間36Aには、コネクタ部80の第一配線T1(中心コンタクト部84)の先端が挿入されて、電気的に接続される(
図3(B)参照)。従って、第一軸部36は、第一電極面33に周波信号を案内する第一配線T1の一部を担っている(
図6参照)。
【0042】
第一軸部36の周囲には、雄ねじ36Bが形成されており、隔離体40の雌ねじ46Aと螺合する。第一軸部36の雄ねじ36Bと隔離体40の雌ねじ46Aの螺合によって、隔離体40が、前方の第一電極体30と軸方向に係合する前方係合構造J1が構成される(
図3(B)参照)。なお、前方係合構造J1の結合方式は、ねじ構造に限定されず、爪係合、段差係合、ピン係合、圧入係合(摩擦係合)など、様々な結合構造を採用し得る。
【0043】
第一錐体部32の第一下底面34は、隔離体40の隔離側上底面45と当接しており、第一電極面33が土壌から受ける軸方向反力を、隔離体40に伝達する役割を担う。第一下底面34と隔離側上底面45の微細隙間からの水の浸入を防止するため、これらの間に防水材(例えば、防水絶縁接着剤やシール材)を介在させたり、塗布したりすることが好ましい。
【0044】
なお、本実施形態では、第一電極体30に第一軸部36が形成され、この第一軸部36が隔離体40に挿入されて、前方係合構造J1を実現する構造となるが、本発明はこれに限定されず、隔離体40が、前方側に延びる前方側軸部を備えるようにし、この前方側軸部が第一電極体30内に挿入されて前方係合構造J1を実現しても良い。
【0045】
(第二電極体)
【0046】
図4(C)に示すように、第二電極体50は、導電性を有する金属(例えばステンレス)で構成されており、第二錐体部52を有する。第二錐体部52は、切頭円錐体形状(頂点を有さない円錐台形状)となっており、その円錐面の全体が、土壌と接触する第二電極面53となる。第二電極面53は、第二錐体部52の中心軸周りに帯状に延びる環状領域K2となる(
図3(C)参照)。第二錐体部52の軸長(錐体の高さ)は、第一錐体部32の軸長(錐体の高さ)よりも小さく設定される。これにより、第二電極面53の軸方向の距離(環状領域K2の軸方向帯幅W2)は、第一電極面33の軸方向距離よりも小さい。本実施形態では、第二電極面53の表面積は、第一電極面33と同じに設定される。なお、第二錐体部52の形状は、円錐台に限られず、三角錐台、四角錐台等の角錐台形状であっても良い。
【0047】
第二錐体部52は、軸方向に貫通する孔となる第二軸孔57を有する。第二軸孔57は、第二錐体部52の中心軸と同軸状に形成され、その両端は、第二上底面55及び第二下底面54に開口する。第二軸孔57の内周面には、雌ねじ57Aが形成されており、隔離体40の隔離軸部47の後方雄ねじ47Aと螺合する。第二錐体部52の雌ねじ57Aと、隔離体40の後方雄ねじ47Aの螺合によって、隔離体40が、後方の第二電極体50と軸方向に係合する後方係合構造J2が構成される(
図3(B)参照)。なお、後方係合構造J2の結合方式は、ねじ構造に限定されず、爪係合、段差係合、ピン係合、圧入係合(摩擦係合)など、様々な結合構造を採用し得る。
【0048】
第二軸孔57は、第一電極体30まで周波信号を案内する第一配線T1(中心コンタクト部84)が通過する場所を兼ねている。具体的には、絶縁体となる隔離軸部47が、第二軸孔57と第一配線T1の間に介在することで、両者が絶縁隔離される。
【0049】
第二錐体部52の第二上底面55は、隔離体40の隔離側下底面44に当接しており、ここから伝達される土壌の軸方向反力を受け止める役割を担う。第二上底面55と隔離側下底面44の微細隙間からの水の浸入を防止するため、これらの間に防水材(例えば、防水絶縁接着剤やシール材)を介在させたり、塗布したりすることが好ましい。第二錐体部52の第二下底面54は、基台70に当接しており、第二上底面55が受け止めた土壌の軸方向反力を基台70に伝達する役割を担う。第二下底面54と基台70の微細隙間からの水の浸入を防止するため、これらの間に防水材(例えば、防水絶縁接着剤やシール材)を介在させたり、塗布したりすることが好ましい。
【0050】
第二錐体部52の第二下底面54には、周方向に沿って等間隔となる複数箇所(ここでは四箇所)に、コネクタ係合部54Aが形成される。コネクタ係合部54Aは、凹形状(くぼみ)となっており、コネクタ部80のベース82に形成される係合突起89と周方向に係合する(
図3(B)参照)。また、コネクタ係合部54Aとコネクタ部80の係合突起89の当接によって、電気的な接続を確保する。更に、第二下底面54は、コネクタ部80のベース82と当接することで、同様に電気的な接続を確保する役割を担う。なお、コネクタ係合部54A及び/又はベース82は、第二下底面54に対してハンダ等によって固定しても良い。コネクタ部80のベース82及び係合突起89は、第二配線T2の一部を構成する(
図6参照)。
【0051】
第二錐体部52の第二下底面54には、第二軸孔57を周方向に等間隔で取り囲む複数箇所(ここでは四箇所)に、雌ねじ穴54Bが形成される。この雌ねじ穴54Bと、基台70の複数箇所に貫通形成されるねじ用孔78の位置を合わせた状態で、後方から前方に向かって有頭ねじ90を挿入し、雌ねじ穴54Bと螺合させることで、第二電極体50と基台70が軸方向及び周方向に連結される。つまり、雌ねじ穴54B、ねじ用孔13及び有頭ねじ90が、基台12と第二電極体50を係合させる基台係合構造J3を構成する(
図3(B)参照)。なお、基台係合構造J3の結合方式は、ねじ構造に限定されず、爪係合、段差係合、ピン係合、圧入係合(摩擦係合)など、様々な結合構造を採用し得る。
【0052】
なお、本実施形態では、第二電極体50の第二軸孔57の内周面に、隔離体40の隔離軸部47が挿入されて、後方係合構造J2を実現する構造となるが、本発明はこれに限定されない。第二電極50が、前方側に延びる前方側軸部を備えるようにし、この前方側軸部が、隔離体40に形成される凹部内に挿入されて後方係合構造J2を実現しても良い。
【0053】
(隔離体)
【0054】
図4(B)に示すように、隔離体40は、絶縁材(例えばポリ塩化ビニル等のプラスチック等の樹脂)で構成され、隔離錐体部42及び隔離軸部47を有する。
【0055】
隔離錐体部42は、切頭円錐体形状(頂点を有さない円錐台形状)となっており、その円錐面の全体が、土壌と接触する隔離面43となる。隔離面43は、隔離錐体部42の中心軸周りに帯状に延びる環状領域K3となる(
図3(C)参照)。この隔離面43は、第一電極面33と第二電極面53を電気的に隔離する(絶縁する)役割を担う。隔離錐体部42の形状は、円錐台に限られず、三角錐台、四角錐台等の角錐台形状であっても良い。隔離面43の軸方向の距離(軸方向帯幅W3)は、第一電極面33の軸方向距離よりも小さい。同様に隔離面43の軸方向の距離(軸方向帯幅W3)は、第二電極面53の軸方向距離(軸方向帯幅W2)よりも小さい。隔離面43の面積は、第一電極面33の面積よりも小さい。同様に隔離面43の面積は、第二電極面53の面積よりも小さい。
【0056】
隔離軸部47は、隔離錐体部42の隔離側下底面44から後方に連続して延びる断面円形の棒状部材となる。隔離軸部47は、隔離錐体部42の中心軸と同軸状に配置される。隔離錐体部42及び隔離軸部47の双方には、全体を軸方向に貫通する共通孔となる隔離用軸孔46が形成されており、この内周面に雌ねじ46Aが形成される。隔離用軸孔46には、第一電極体30の第一軸部36が挿入され、その雄ねじ36Bと雌ねじ46Aが螺合する。第一軸部36の雄ねじ36Bと隔離体40の雌ねじ46Aの螺合によって、隔離体40が、前方の第一電極体30と軸方向に係合する前方係合構造J1が構成される(
図3(B)参照)。この隔離用軸孔46は、第一電極体30まで周波信号を案内する第一配線T1(中心コンタクト部84)が通過する場所を兼ねている。また、第一配線T1(中心コンタクト部84)が、絶縁材となる隔離体40に囲われているので、第二電極体50と絶縁隔離される。なお、第一電極体30の第一軸部36の軸長は、隔離錐体部42の軸長(錐体高さ)よりも大きく設定される。結果、第一軸部36は、隔離錐体部42を貫通して、隔離軸部47の内部まで挿入される。
【0057】
隔離軸部47の周囲には雄ねじ47Aが形成されており、第二電極体50の第二軸孔57に挿入されて、その雌ねじ57Aと螺合する。隔離軸部47の雄ねじ47Aと第二電極体50の雌ねじ57Aの螺合によって、隔離体40が、隔離体40が、後方の第二電極体50と軸方向に係合する後方係合構造J2が構成される(
図3(B)参照)。隔離錐体部42の隔離側上底面45は、第一電極体30の第一下底面34から伝達される土壌の軸方向反力を受け止める役割を担う。隔離錐体部42の隔離側下底面44は、隔離側上底面45が受け止めた土壌の軸方向反力を、第二電極体50に伝達する役割を担う。
【0058】
(基台)
【0059】
図5(A)に示すように、基台70は、絶縁材(例えばポリ塩化ビニル等のプラスチック等の樹脂)で構成され、縮径部74及び連結軸部76を有する。
【0060】
縮径部74は、切頭円錐体形状(頂点を有さない円錐台形状)となっているが、その頂点は、後方側に向かう。縮径部74における円錐台形状の下底面75は、第二電極体50の第二下底面54のほぼ全体を覆う。結果、下底面75は、第二電極体50から伝達される土壌の軸方向反力を受け止める役割を担う。縮径部74における円錐台形状の上底面は、そのまま連結軸部76に繋がる。つまり、縮径部74は、第二電極体50の第二下底面54を覆って絶縁機能を発揮すると同時に、基台70全体を、第二下底面54よりも小径となる連結軸部76まで縮径させる役割を担う。ここでは円錐台形状によって、徐々に縮径させているが、円盤形状等による段差で階段状に縮径させても良い。
【0061】
連結軸部76は、第二電極体50の第二下底面54よりも小径となる断面正円形の軸(棒)部材となる。連結軸部76は、縮径部74の中心軸と同軸状に配置される。連結軸部76の外周面には雄ねじ76Aが形成される。
図3(B)に示すように、円筒状の軸部300の内周面の先端近傍には雌ねじ310Aが形成される。連結軸部76は、軸部300内に挿入されることで、雌ねじ310Aと雄ねじ76Aが螺合する。つまり、連結軸部76の雄ねじ76Aと軸部300の雌ねじ310Aの螺合によって、円錐体型プローブ10が、軸部300と軸方向に係合する軸係合構造J4が構成される。軸係合構造J4の結合方式は、ねじ構造に限定されず、爪係合、段差係合、ピン係合、圧入係合(摩擦係合)など、様々な結合構造を採用し得る。
【0062】
縮径部74及び連結軸部76には、全体を軸方向に貫通する孔となる配線用軸孔77が形成される。配線用軸孔77内には、コネクタ部80の中心コンタクト部84及びシェル部86の双方が同軸状に挿入される。なお、シェル部86は第二配線T2の一部を構成し、中心コンタクト部84は第一配線T1の一部を構成する(
図6参照)。
【0063】
縮径部74の下底面75の中央には、ベース収容凹部75Aが形成される。本実施形態では、ベース収容凹部75Aが正方形の窪みとなっており、配線用軸孔77と連通する。このベース収容凹部75Aに、コネクタ部80のベース82が収容される。結果、ベース82が、基台70と第二電極体50によって軸方向に挟持される。なお、ベース収容凹部75Aの深さは、ベース82の肉厚と同じ又は多少小さく設定されることで、基台70と第二電極体50が結合される際に、ベース82を第二電極体50側に押圧させることもできる。
【0064】
縮径部74及び連結軸部76には、配線用軸孔77を周方向に等間隔で取り囲む複数箇所(ここでは四箇所)に、全体を軸方向に貫通するねじ用孔78が形成される。第二電極体50の雌ねじ穴54Bと、基台70のねじ用孔78の位置を合わせた状態で、後方から前方に向かって有頭ねじ90を挿入し、雌ねじ穴54Bと螺合させることで、第二電極体50と基台70が軸方向及び周方向に連結される。
【0065】
縮径部74の周囲に形成される円錐面の少なくとも一部は、軸部300の先端面と接触する。また、同円錐面の残部は、外部に露出される後方隔離面73となる。後方隔離面73は、縮径部74の中心軸周りに帯状に延びる環状領域K4となる(
図3(C)参照)。この後方隔離面73は、第二電極面53と軸部300を電気的に隔離する(絶縁する)役割を担う。なお、縮径部74の形状は、円錐台に限られず、円柱(円盤)形状であっても良い。
【0066】
(コネクタ部)
【0067】
図5(B)に示すように、コネクタ部80は、同軸ケーブルが接続可能な同軸コネクタ構造となっており、本実施形態ではSMA規格のレセプタクル構造となる。なお、同軸コネクタの規格は、SMA以外にも、BNC規格、TNC規格、N規格、SMB規格、SMC規格等を採用できる。更に、コネクタ部80は、インピーダンスが整合していればどのような形状でもよい。また、レセプタクル構造ではなく、プラグ構造を採用しても良い。
【0068】
コネクタ部80は、方形板状で内部に開孔82Aが形成される導電性のベース82と、ベース82の後方面に立設される導電性且つ円筒形状のシェル部86と、シェル部86の内部に同軸状に配置される導電性且つ棒形状の中心コンタクト部84と、シェル部86の内周面と中心コンタクト部84の外周面の隙間に配置される筒形状の絶縁部83を有する。ベース82の開孔82Aとシェル部86の内周面は連続面となっている。絶縁部83は、シェル部86の内周面に保持される。中心コンタクト部84は、絶縁部83の内周面に保持される。絶縁部83によって、シェル部86と中心コンタクト部84は絶縁隔離される。
【0069】
シェル部86の外周面には雌ねじ86Aが形成される。雌ねじ86Aは、これに接続される相手側コネクタ(信号検出装置200の伝送コネクタ部270)のSMAプラグ規格の雄ねじと螺合する。ベース82の前方面の四隅には、軸方向に突出する係合突起89が形成される。係合突起89は、第二電極体50の第二下底面54に形成されるコネクタ係合部54Aと係合する。ベース82の前方面は、第二電極体50の第二下底面54に当接して電気的に接続される。中心コンタクト部84の前方端は、第一電極体30の第一軸部36の内部空間36Aに収容されて、電気的に接続される(
図3(B)参照)。
【0070】
コネクタ部80におけるシェル部86、ベース82及び係合突起89は、第二電極体50に接続される第二配線T2の一部となる。中心コンタクト部84は、第一電極体30に接続される第一配線T1の一部となる。なお、本実施形態では、第一配線T1が、パルス状又は周波状の電気信号を第一電極体30に供給する信号供給配線となり、第二配線T2が、第二電極体50を基準電位とするためのグランド(GND)配線となる。つまり、第一配線T1及び第二配線T2は、パルス状又は周波状の電気信号及びその反射信号が伝達される信号伝送経路Dとなる(
図6参照)。
【0071】
なお、本実施形態では、シェル部86が、コネクタ部80の一部となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば第二電極体50の第二錐体部52の第二下底面54から、シェル部86が一体的に後方に延びるようにしても良い。つまり、シェル部86は第二配線T2の一部を構成し、第一配線T1の周囲を取り囲めば十分であり、コネクタとして機能しない場合を含む。
【0072】
(信号検出装置)
【0073】
図6に示すように、信号検出装置200は、各種電子部品及び電気回路によって構成されており、電力供給回線282に接続されて外部から電力供給を受ける電源部205と、パルス信号又は周波信号等の電気信号を発生する信号発生部210と、信号発生部210からの電気信号を伝送コネクタ部270まで案内する信号伝送経路Dと、信号伝送経路Dの途中に設けられて、同信号伝送経路Dを流れる電気信号を受信する信号受信部220と、信号受信部220が受信したアナログ受信信号をデジタル受信信号に変換するAD変換部250と、AD変換部250によって変換されたデジタル受信信号を利用して、信号の各種特性値(例えばSパラメータ)を計算してパラメータ情報を生成する計算部255と、デジタル受信信号及び/又はパラメータ情報を通信回線280に出力すると共に、外部からの命令信号を受信する入出力部260を有する。信号受信部220は、信号発生部210からの伝送コネクタ部270に向かって流れる伝送側電気信号と、伝送コネクタ部270から信号発生部210に向かって流れる反射側電気信号の少なくとも一方を受信するようになっており、ここでは双方を受信する。
【0074】
本実施形態では、伝送コネクタ部270は同軸コネクタ構造(SMA規格のプラグ構造)となっており、コネクタ部80に接続される。なお、これらの各機能部品は、電源部205の電力によって動作する。
【0075】
計算部255は、制御装置600からの命令信号を参照して、信号発生部210や信号受信部220を制御する役割も兼ねる。計算部255は、例えばマイクロコントローラ(MPU)であり、機能ブロックとして、特性値計算処理部255Aと周波数掃引処理部255Bを有する。特性値計算処理部255Aは、AD変換部250によって変換されたデジタル受信信号を利用して、信号の各種の特性値(例えばSパラメータ)を計算してパラメータ情報を生成する。なお、更に特性値計算処理部255Aは、算出したパラメータ情報を利用して、更に土壌の物性値(比誘電率や電気伝導率)を計算することもできる。周波数掃引処理部255Bは、単位測定処理の間で、信号発生部210が生成する電気信号の周波数を多段に変更したり、周波数を掃引させたりする。これにより、組成や体積含水率が未知となる地中の土壌に対して、様々な周波数の電気信号によって各種特性値(例えばSパラメータ)を計算できるので、その測定結果の中から、事後的に最適な周波数を選定できることになる。なお、この計算部255の全部又は一部は、制御装置600側に設けることもできる。
【0076】
信号発生部210は、TDR法(時間領域反射法)による測定のためのステップパルス形電気信号や、Sパラメータ測定のための様々な周波数となる周波形電気信号を生成できる。周波形の電気信号の周波を、例えば電波分類で表現する場合、本信号発生部210は、長波帯域(30kHzから300kHz)、中波帯域(300kHzから3MHz)、短波帯域(3MHzから30MHz)、超短波帯域(30MHzから0.3GHz)、マイクロ波帯域(0.3GHz以上)の少なくとも一部、好ましくは全部の電気信号を生成できることが好ましい。特に本実施形態の信号発生部210では、マイクロ波帯域、とりわけ、0.3GHzから3GHzの極超短波帯域の電気信号の少なくとも一部を生成できるので、高精度に物性を測定できる点に特徴がある。なお、本実施形態の信号発生部210は、50kHzのから1.5GHzの周波数の信号を生成できるようになっている。
【0077】
信号受信部220は、詳細に、信号伝送経路Dを流れる伝送側電気信号を分離するパワースプリッタとなる伝送信号分離部230と、伝送信号分離部230によって分離された伝送側電気信号を受信する伝送信号受信部235と、信号伝送経路Dを流れる反射側電気信号を分離する方向性結合器となる反射信号分離部240と、反射信号分離部240によって分離された反射側電気信号を受信する反射信号受信部245を備える。伝送信号受信部235及び反射信号受信部245が受信した各アナログ受信信号はAD変換部250によってデジタル受信信号に変換される。
【0078】
なお、本実施形態の信号検出装置200は、上記回路構造によってスカラネットワークアナライザ又はベクトルネットワークアナライザとして機能させる場合を例示しているが、本発明はこれに限定されず、他の構造によって信号受信部を構成させることもできる。また、本実施形態の信号検出装置200の信号受信部220は、伝送側電気信号と反射側電気信号を別々に分離して受信する場合を例示したが、デジタル・オシロスコープ回路等のように、伝送側電気信号と反射側電気信号が混在した状態で同時受信することもできる。また、Sパラメータを計算してパラメータ情報を生成する計算部255の一部又は全部の機能は、後述する制御装置600側に設けても良い。
【0079】
本実施形態では、信号検出装置200と円錐体型プローブ10が、同軸ケーブル構造で電気的に接続される場合を例示するが、本実施形態はこれに限定されず、非同軸状の配線で接続しても良い。
【0080】
なお、信号検出装置200は、必要に応じて適宜校正される。校正手法としては、例えば、SOLT(Short-Open-Load-Thru)校正、Offset Short校正、LRL(Line-Reflect-Line)/TRL(Thru-Reflect-Line)/LRM(Line-Reflect-Match)校正等を採用できる。
【0081】
(制御装置)
【0082】
図7に示すように、制御装置600は、いわゆる計算機であり、CPU641と、RAM642と、ROM643と、入力装置644と、表示装置645と、高さセンサ646と、電源647と、入出力インターフェース648と、バス649とを備える。
【0083】
CPU641は、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能を実現する。RAM642は、いわゆるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)であり、CPU641の作業領域として使用される。ROM643は、いわゆるROM(リード・オンリー・メモリ)であり、CPU641で実行される基本OSや各種プログラム(例えば、測定プログラム)を記憶する。
【0084】
入力装置644は、ボタンやタッチパネル式の入力キーやキーボード、マウスであり、各種情報を入力する。表示装置645は、ディスプレイであり、各種測定進捗や測定結果を表示する。高さセンサ646は、加速度プローブやGPSセンサ、ジャイロセンサ等によって、物性測定装置1(円錐体型プローブ10)の高さを検出する。
【0085】
電源647は、各部品が動作するするための電力を供給する。入出力インターフェース648は、電力供給回線282及び通信回線280が接続されており、電源647から信号検出装置200及び応力検知装置400を動作させるための電力を供給したり、信号検出装置200及び応力検知装置400を制御するための制御信号を出力したり、信号検出装置200及び応力検知装置400から送信されるデジタル信号が入力されたりする。バス649は、CPU641、RAM642、ROM643、入力装置644、表示装置645、高さセンサ646、電源647、入出力インターフェース448などを一体的に接続して通信を行う配線である。
【0086】
ROM643に記憶された基本OSや各種プログラム(土壌測定プログラム)が、CPU641によって実行されると、
図8(A)に示す機能ブロックが実装される。
【0087】
即ち、制御装置600は、機能ブロックとして、高さ判定部660、Sパラメータ取得部662、物性変換部664、硬度取得部666、データ表示部668、周波数選定部669を有する。
【0088】
高さ判定部660は、測定開始時を基準高さとして、物性測定装置1の高さ(円錐体型プローブ10の地表面Uからの深さ)を判定して、一定の間隔(例えば1cm間隔)となる所定深さに到達する都度、測定実行命令を生成する。
Sパラメータ取得部662は、高さ判定部660からの測定実行命令に基づいて、信号検出装置200を制御し、土壌のSパラメータ情報を取得する。Sパラメータ取得部662は、信号検出装置200の計算部255に掃引命令を発することで、1度の測定サイクル中に、複数種類の周波数或いは所定帯域幅で掃引させることが好ましい。地中に存在する土壌の場合、その土質や含水量が未知であることから、測定時の電気信号の最適周波数が不明な場合が多い。従って、Sパラメータ取得部662は、様々な土壌に対応可能な複数周波数又は帯域幅のSパラメータ情報を信号検出装置200から取得しておく。
周波数選定部669は、掃引周波数帯域の全てのSパラメータ情報を参照して、事後的に、最適周波数を決定して、対応するSパラメータを確定させる。なお、複数周波数又は帯域幅の一部には、マイクロ波帯域を含めることが好ましい。
【0089】
物性変換部664は、周波数選定部669で選定されるSパラメータ情報を利用して、土壌の各種物性値(例えば、比誘電率や含水率)等を算出する。なお、ここでは、周波数選定部669が、物性変換分664における変換処理の前に、事前に最適な周波数を特定してSパラメータ情報を絞り込む場合を例示するが、本発明はこれに限定されない。例えば、周波数を掃引させて得られる全てのSパラメータ情報に基づいて、土壌の各種物性値(例えば、比誘電率や含水率)も全て計算できる。その結果、周波数に依存して変動する土壌の各種物性値が得られるので、周波数選定部669は、その物性値の中から、最適な物性値(最適な周波数)を事後的に決定しても良い。
【0090】
硬度取得部666は、高さ判定部660からの測定実行命令に基づいて、応力検知装置400からの応力情報を取得し、土壌の硬度を算出する。データ表示部668は、地中深さに対応させて、土壌の各種物性値及び硬度値を表示装置645に表示させる。
【0091】
物性変換部664における詳細な計算ブロックは以下の通りとなる。
【0092】
(1)Yパラメータ計算部
Yパラメータ計算部664Aでは、Sパラメータ(散乱行列)からYパラメータ(アドミッタンス行列)を計算する。本実施形態は、土壌に対して第一電極体30及び第二電極体50による信号入力側のみが存在するので、SパラメータにおけるS12、S21、S22は0となり、反射特性(S11)を利用した計算となる。具体的に、Yパラメータは、出力信号側が短絡状態と仮定した入力側アドミッタンス特性(Y11)を計算する。この場合の計算式は、Y11=(1-S11)/(1+S11)となる。なお、Yパラメータ(アドミッタンス行列)は、Zパラメータ(インピーダンス行列)の逆行列であるため、SパラメータからZパラメータを算出し、このZパラメータからYパラメータを計算しても良い。
【0093】
(2)基準比例定数・基準浮遊容量計算部
基準比例定数・基準浮遊容量計算部664Bでは、誘電率が既知となる2つの基準対象物(例えば、空気(誘電率ε=1)と水(誘電率ε=78/水温25度時))のYパラメータを実測して、静電容量法から、基準比例定数C0と基準浮遊容量Crを算出する。
【0094】
Y11の実部と虚部をY11=G+jB(G:コンダクタンス、B:サセプタンス)と定義した場合、これをコンダクタンスGとキャパシタンスCpの関係に置き換えると、Y11=G+jωCpの関係となる。コンダクタンスGは、基準対象物の電気伝導率に関連する値となり、キャパシタンスCpは基準対象物の比誘電率に関連する値となる。ここでは、Yパラメータ計算部664Aを利用して、基準対象物のYパラメータを算出することで、キャパシタンスCp(空気)と、キャパシタンスCp(水)を取得し、これらのキャパシタンスと誘電率の関係から得られる、Cp(空気)=ε(空気)*C0+Cr、Cp(水)=ε(水)*C0+Cr の2式を演算して、基準比例定数C0と基準浮遊容量Crを算出する。この計算結果を制御装置600のメモリに保存する。
【0095】
(3)比誘電率及び電気伝導率計算部
比誘電率及び電気伝導率計算部664Cでは、Yパラメータ計算部664Aから得られる測定対象物となる土壌のYパラメータ(Y11)と、基準比例定数・基準浮遊容量計算部664Bによって保存される基準比例定数C0と基準浮遊容量Crから、土壌の比誘電率と電気伝導率を算出する。土壌のY11の実部と虚部をY11=G+jB(G:コンダクタンス、B:サセプタンス)と定義した場合、これをコンダクタンスGとキャパシタンスCpの関係に置き換えると、Y11=G(土壌)+jωCp(土壌)となる。このコンダクタンスG(土壌)は、土壌の電気伝導率k(土壌)に関連する値となり、キャパシタンスCp(土壌)は、土壌の比誘電率ε'(土壌)に関連する値となる。基準比例定数C0と基準浮遊容量Crを利用すると、比誘電率ε'(土壌)=(Cp(土壌)-Cr)/C0、電気伝導率k(土壌)=ε0*G(土壌)/C0 (ε0:真空の誘電率)いう関係式が得られるので、これにより比誘電率ε'(土壌)、電気伝導率k(土壌)を算出する。なお、ここでは特に図示しないが、比誘電率及び/又は電気伝導率計算部から、土壌の体積含水率を計算することもできる。
【0096】
図7(B)に土壌測定プログラムのフローチャートを示し、
図8にその実測態様を示す。
図8(A)に示すように、円錐体型プローブ10の地表面Uに接触させた状態で測定開始ボタンを押すと、ステップS100で測定が開始され、その高さ情報が基準位置(0点深さ)となる。その後、
図8(B)に示すように、測定者が、円錐体型プローブ10を地中に貫入させると、ステップS102において、円錐体型プローブ10が所定の第n深さ(例えば第1深さ)に到達したか否かを判定する。第n深さに到達していない場合は(NO)、このステップS102を繰り返す。一方、ステップS102で第n深さに到達したと判定された場合(YES)、ステップS104に進んで土壌のSパラメータを測定し、かつ、ステップS106に進んで土壌の硬度を測定する。この際、制御装置600は、表示画面のアラートや音声によって、第n深さに到達したことを測定者に報知しても良い。測定者は、第n深さ到達に関する報知を受けた段階で地中への貫入を一時停止しても良い。第n深さにおける測定終了後は、ステップS108に進み、第n値をn+1に更新してから、ステップS102に戻る。この際、制御装置600は、表示画面のアラートや音声によって、前回の測定(第n深さの測定)が終了したことを測定者に報知してもよく、報知を受けた測定者は、
図8(C)に示すように、円錐体型プローブ10の地中への貫入を再開できる。ステップS102では、次の第n深さ(例えば第2深さ)に到達したか否かを判定し、到達した場合には、ステップS104~ステップS108を繰り返す。なお、第n深さの設定値は、事前に設定された深さテーブル情報を利用してもよく、また、単位深さ値H(例えば5cm間隔)等の設定情報を利用して、地表面Uからの判定深さとしてn*H(cm)を採用しても良い。
【0097】
図9に土壌測定プログラムの変形例のフローチャートを示す。ここでは、測定者が一定の速度(例えば2cm/秒)で、円錐体型プローブ10を地中に貫入させる場合を例示する。測定者が測定開始ボタンを押すと、ステップS200で測定が開始され、プログラムのサイクル周期(例えば0.5秒)に従って、ステップS202で円錐体型プローブ10の地中深さ情報を取得し、ステップS204で土壌のSパラメータを測定し、ステップS206で土壌の硬度を測定し、ステップS208で深さ情報とSパラメータ情報と硬度情報を紐づけた状態で、そのデータを保存していく。つまり、
図9の土壌測定プログラムの場合、いわゆるロギング方式によって、単位時間毎に、深さ情報とSパラメータ情報と硬度情報を常にデータ収集することができる。
【0098】
本実施形態の物性測定装置1によれば、円錐体型プローブ10の錐面の一部に形成される第一電極面33及び第二電極面53を、土壌に押し付けながら、土壌に電気信号を印加して物性値を測定できる。結果、土壌の反射信号の測定精度を高めることが可能となっている。この際、錐面の一部に、第一電極面33及び第二電極面53を絶縁隔離する隔離面43が存在するので、第一電極面33と第二電極面53の短絡が抑止され、一層、反射信号の測定精度を高めることが可能となる。
【0099】
とりわけ、本実施形態では、第一電極面33、第二電極面53及び隔離面43が、錐面の周方向に沿った環形の領域を含む。従って、土壌に電気信号を印加する際における、周方向の角度依存特性を低減でき、測定者による測定作業のバラツキを抑制できる。
【0100】
円錐体型プローブ10において、第一電極体30の第一錐体部32、隔離体40の隔離錐体部42、第二電極体50の第二錐体部52が、先端から後端に向かってこの順に連結される。同時に、隔離錐体部42は、第一錐体部32と軸方向に係合可能な前方係合構造J1と、第二錐体部52と軸方向に係合可能な後方係合構造J2を有している。従って、円錐体型プローブ10に作用する土壌からの外力を、第一錐体部32、隔離錐体部42及び第二錐体部52の各々が受け止めながらも、全体が一体化されているので、円錐体型プローブ10の剛性や耐久性を高めることができる。
【0101】
第一電極体30の第一錐体部32は、その第一下底面34から軸方向且つ後方側に延びる棒状の第一軸部36を備えており、この第一軸部36が第一配線T1の少なくとも一部となる。また第二電極体50の第二錐体部52には、第二軸孔57が形成されており、第二軸孔57内に第一配線T1(第一軸部36)が通過している。このように、第一配線T1が、円錐体型プローブ10の内部を通過する構造にすることで、第一配線T1を伝達する電気信号が外乱を受けにくい。特に、第二軸孔57内に第一配線T1(第一軸部36)が通過する際は、絶縁体となる隔離軸部47を介在している。結果、土壌の反射信号の測定精度を、より一層高めることが可能となっている。
【0102】
また第二電極体50の後方には、絶縁材で構成される基台70が配置され、この基台70を介して、軸部300が連結されている。これにより、第二電極体50と軸部300が絶縁される。更に、第二電極体50に接続される第二配線T2(コネクタ部80のシェル部86)が、基台70の内部に形成される配線用軸孔77を通過する。第二配線T2が、基台70の内部を通過する構造にすることで、第二配線T2を伝達する電気信号(基準電位)が外乱を受けにくい。結果、土壌の反射信号の測定精度を、より一層高めることが可能となっている。
【0103】
本物性測定装置1では、信号検出装置200の信号発生部210が周波信号(とりわけマイクロ波帯域の周波信号)を生成できる。結果、信号検出装置200は、高周波信号の反射特性を検出できるので、様々な土壌(対象物)に対して最適な周波数を選定できるので、より精度の高いSパラメータを測定できる。
【0104】
本物性測定装置1では、信号検出装置200が、軸部300内に収容されており、円錐体型プローブ10との距離が短縮される。これにより、信号検出装置200の全部又は一部は、測定中に地中に進入する。結果、信号伝送経路Dが短いので、伝送中の電気信号の外乱が抑制され、測定精度を高めることができる。なお、信号発生部210から第一電極面33及び第二電極面53までの信号伝送経路Dの距離は20cm以下が望ましく、より望ましくは10cm以下とする。
【0105】
信号検出装置200が軸部300に収容される結果、信号検出装置200全体も、軸部300によって外部からシールドされるので、外乱の影響を低減できる。更に信号検出装置200では、測定結果をデジタル変換してから、制御装置600に送信しているので、通信回線280におけるノイズの影響を回避できる。
【0106】
本物性測定装置1の応力検知装置400が、円錐体型プローブ10における第一電極面33及び第二電極面53と測定対象物(土壌)との接触面圧を測定することができるので、接触面圧が所定閾値よりも低い場合は、反射信号(Sパラメータ)の測定を中断するか、そのデータを除外することで測定誤差を低減できる。
【0107】
本物性測定装置1では、円錐体型プローブ10が、土壌の硬度を測定するための貫入コーンを兼ねているので、応力検知装置400によって土壌の硬度を算出できる。従って、一度の貫入測定動作で、土壌の硬度と、土壌の物性値(比誘電率や電気伝導率)を同時測定できる。
【0108】
(実施形態の変形例)
【0109】
本実施形態では、信号検出装置200が軸部300内に収容される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図12に示すように、信号検出装置200を、軸部300の外側(ここでは軸部300の後端側)に配置しても良い。この場合、円錐体型プローブ10と信号検出装置200を、軸部300内に挿入される同軸ケーブル290で接続すれば良い。
【0110】
また本実施形態では、第一電極体30の第一錐体部32(第一電極面33)が有頭円錐体形状となって、円錐体型プローブ10の錐体20の突端まで延びる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図13に示すように、第一錐体部32が円錐台形状としてもよい。この場合は、第一電極体30の前方に、絶縁体で構成される前方側隔離体900を設けることが好ましい。
【0111】
また本実施形態では、第一電極面33及び/又は第二電極面53が、錐体20の錐面の周方向に沿った環形の領域を含む場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図14に示すように、第一電極体30、隔離体40、第二電極体50が、錐体20の一部であって非環状となる範囲を占めるようにしても良い。この場合は、錐体20の錐面に形成される第一電極面33と第二電極面53を、軸方向から視た場合に、特定の直径に対して線対称となることが望ましい。
【0112】
更に本実施形態では、信号検出装置200の計算部255が、反射信号の特性値としてSパラメータを計算する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、TDR法(時間領域反射法)としての時間領域計算を実行してもよい。この場合、信号発生部210は、TDR法の為のステップパルス形電気信号を発生してもよい。一方、周波数を掃引することで得られるSパラメータ(S11)を、逆フーリエ変換処理することで、周波数基準の反射特性を、時間領域基準の反射特性に変換して、時間領域基準の反射特性を計算してもよい。
【0113】
また、本実施形態では、信号検出装置200が、電気信号を印加した際の土壌の反射特性を測定する場合を例示するが、本発明はこれに限定されない。例えば
図15に示すように、一対の円錐体型プローブ10を対象物に接触させて、一方の円錐体型プローブ10から他方の円錐体型プローブ10に伝達される電信信号(矢印Z参照)の伝達特性を取得してもよい。このようにすると、Sパラメータ、Zパラメータ、Yパラメータ等における伝達特性を計算することも可能となり、また、時間領域透過法(TDT法)による計算も可能となる。更に、本実施形態では、電気信号として交流電気信号を印加する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、第一電極面と第二電極面に直流の電気信号を印加し、応答検出装置によってその電流値(抵抗成分)を測定することで、対象物の電気伝導率を測定することもできる。
【0114】
更に、本実施形態では、円錐体型プローブ10が、第一電極面33(第一電極体30)及び第二電極面53(第二電極体50)の2つの電極面(電極体)を有する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、3個以上の電極面(電極体)を備えるようにしても良い。例えば
図16に示すように、円錐体型プローブ10が、第一電極面33
1(第一電極体30
1)、第一隔離面43
1(第一隔離体40
1)及び第二電極面53
1(第二電極体50
1)を有する第一グループG1の錐体と、第一電極面33
2(第一電極体30
2)、第二隔離面43
2(第二隔離体40
2)及び第二電極面53
2(第二電極体50
2)を有する第二グループG2の錐体を備えるようにしてもよい。この場合、第一グループG1に対しては、第一信号伝送経路D
1(第一配線T1
1、第二配線T2
1)を設け、第二グループG2に対しては、第二信号伝送経路D
2(第一配線T1
2、第二配線T2
2)を設けることができる。また、第一グループG1と第二グループG2を軸方向に並列させる際、その間に中間隔離面43T(中間隔離体40T)を設けることができる。この円錐体型プローブ10によれば、例えば、第一グループG1の第一信号伝送経路D
1に電気信号を供給した場合において、第二グループG2の第二信号伝送経路D
2への透過信号を検出することができる。
【0115】
また、
図17及び
図18に示す変形例の物性測定装置1のように、軸部300や円錐体型プローブ10の内部又はその近傍に、サーミスタ等によって構成される温度センサ290を配置することが好ましい。この変形例では、熱伝導性の高い金属で構成される第二電極体30に、温度センサ290を接触させることで、対象物(土壌)の温度を間接的に計測しているが、温度センサ290を対象物(土壌)に直接接触させても良い。この温度センサ290の配線は、基台70に形成される配線孔70Xを経由して、信号検出装置200に接続される。同様に、軸部300や円錐体型プローブ10の内部又はその近傍に、傾斜センサ292を配置することが好ましい。この変形例では、信号検出装置200の基板に傾斜センサ292を実装されている。
図18に示すように、信号検出装置200における信号受信部220は、温度センサ290の検出信号(電流値や抵抗値)を受信する温度信号受信部280と、傾斜センサ292の検出信号を受信する傾斜信号受信部282を有することが好ましい。これらの信号は、必要に応じて、AD変換部250によってデジタル受信信号に変換されて、入出力部280から通信回線280に送信される。この物性測定装置1によれば、対象物の温度を同時に測定することができ、更に、物性測定装置1の姿勢変化を同時測定できる。例えば、測定時に、円錐体型プローブ10や軸部300の中心軸が鉛直方向に対して傾斜しているか否かを検知することもできる。
【0116】
また、本実施形態では、物性測定装置1が土壌硬度計を兼ねる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図19(A)及び(B)に示す変形例の物性測定装置1では、円錐体型プローブ10を地中の任意深さに固定的に埋設しておき、円錐体型プローブ10が、土壌の物性値の経時的な変化を測定する。この場合、制御装置600は、いわゆるデータロガーとして機能しており、更に、無線通信部990によって、外部通信端末(図示省略)と無線通信さることも望ましい。このようにすると、遠隔で、土壌の物性値の経時的な変化を測定・監視・記録可能となる。この物性測定装置1では、
図17及び
図18で示した温度センサ290や傾斜センサ292を備えることが好ましい。傾斜センサ292から得られる円錐体型プローブ10の角度変動データは、地盤の斜面崩壊等の予知に活用できる。
図19(B)のように、軸部を省略して、地中に埋設される円錐体型プローブ10及び信号検出装置200と、地上に設置される制御装置600を、通信回線280及び電力供給回線282で接続しても良い。
【0117】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0118】
1 物性測定装置
10 円錐体型プローブ
20 錐体
30 第一電極体
32 第一錐体部
33 第一電極面
36 第一軸部
40 隔離体
42 隔離錐体部
43 隔離面
46 隔離用軸孔
47 隔離軸部
50 第二電極体
52 第二錐体部
53 第二電極面
57 第二軸孔
70 基台
74 縮径部
76 連結軸部
80 コネクタ部
82 ベース
83 絶縁部
84 中心コンタクト部
86 シェル部
200 信号検出装置(応答検出装置)
205 電源部
210 信号発生部
220 信号受信部
230 伝送信号分離部
235 伝送信号受信部
240 反射信号分離部
245 反射信号受信部
250 AD変換部
255 計算部
260 入出力部
280 通信回線
282 電力供給回線
290 温度センサ
292 傾斜センサ
300 軸部
400 応力検知装置
480 通信回線
500 操作ハンドル
600 制御装置
644 入力装置
645 表示装置
646 高さセンサ
647 電源
660 判定部
662 Sパラメータ取得部
664 物性変換部
664 物性変換分
664A Yパラメータ計算部
664B 基準比例定数・基準浮遊容量計算部
664C 電気伝導率計算部
666 硬度取得部
668 データ表示部
669 周波数選定部
D 信号伝送経路
J1 前方係合構造
J2 後方係合構造
J3 基台係合構造
J4 軸係合構造
K1~K4 環状領域