(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149321
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】赤色光照射装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20241004BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20241004BHJP
G02C 5/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61F9/007 180
A61N5/06 Z
G02C5/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088279
(22)【出願日】2023-05-30
(62)【分割の表示】P 2023059667の分割
【原出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】513077162
【氏名又は名称】株式会社坪田ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110003904
【氏名又は名称】弁理士法人MTI特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪田 一男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 眞一郎
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA02
4C082PC07
4C082PJ11
(57)【要約】
【課題】赤色光(610~900nmの範囲内の波長の光)を眼に向けて効果的に照射することを可能とする赤色光照射装置を提供する。
【解決手段】610~900nmの範囲内の波長の光(赤色光13)を少なくとも発する光源11を有し、眼球近くに装着される赤色光照射装置であって、光源11は、赤色光照射装置10を装着した際に眼球方向D(
図4参照)に照射する位置に配置されているとともに、眼球20の表面から0mm超100mm以下の位置に配置されて上記課題を解決する。このとき、610~900nmの範囲内の波長の光の放射照度が、めがね型装置10Aを装着した際の眼球表面で100W/m
2未満であるように構成できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
610~900nmの範囲内の波長の光を少なくとも発する光源を有し、眼球近くに装着される赤色光照射装置であって、前記光源は、前記赤色光照射装置を装着した際に眼球方向に照射する位置に配置されており、眼球の表面から0mm超100mm以下の位置に配置されている、ことを特徴とする赤色光照射装置。
【請求項2】
前記610~900nmの範囲内の波長の光の放射照度が、前記器具を装着した際の眼球表面で100W/m2未満である、請求項1に記載の赤色光照射装置。
【請求項3】
前記器具が、めがね、帽子又は耳掛け具である、請求項1又は2に記載の赤色光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼に向けて赤色光を効果的且つ効率的に照射する赤色光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光の人体への影響は、近年、様々な観点から検討され、新たな知見に基づいた報告がなされている。例えば、太陽光を浴びることによりサーカディアンリズムが改善すること(非特許文献1)、LED照明やLEDをバックライトに使用した液晶ディスプレイ等から発する光が身体や心に大きく影響すること(非特許文献2)、バイオレットライトが近視の予防及び近視の発症を抑制すること(特許文献1)等が報告されている。特に最近、本発明者は、バイオレットライトが近視に及ぼす影響について報告しており、例えば特許文献1には、特定波長の光が近視の進行を予防したり抑制したりする効果があることを提案し、近視の人口が依然として世界的に増えている近年、大きな期待が寄せられている。また、本発明者は、360nm~400nmの範囲内の波長のバイオレットライトを照射して脈絡膜の菲薄化を抑制する装置についても提案している(特許文献2)。
【0003】
一方、特許文献3には、一定の波長範囲、一定のエネルギー密度範囲、一定の照射時間の赤色光又は近赤外光を用いて、瞳孔を通して眼底を照射することにより、眼底の血流及び代謝率を高める方法が提案されている。この方法によれば、瞳孔を通して生成される生成物は、到達する眼底組織の血流と代謝率を増加させ、眼組織の損傷修復の効果を改善し、強膜線維芽細胞及び視覚機能細胞のリモデリングを修復することができるとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】羽鳥恵、坪田一男、アンチ・エイジング医学-日本抗加齢医学会雑誌、Vol.11、No.3、065(385)-072(392),(2015).
【非特許文献2】坪田一男、「ブルーライト 体内時計への脅威」、集英社、2013年11月20日発行.
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2015/186723A1
【特許文献2】特開2022-49654号公報
【特許文献3】米国特許第11420072号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、赤色光(610~900nmの範囲内の波長の光)を眼に向けて効果的且つ効率的に照射することを可能とする赤色光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る赤色光照射装置は、610~900nmの範囲内の波長の光を少なくとも発する光源を有し、眼球近くに装着される赤色光照射装置であって、前記光源は、前記赤色光照射装置を装着した際に眼球方向に照射する位置に配置されており、眼球の表面から0mm超100mm以下の位置に配置されている、ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、光源から発する赤色光を眼球に適切に照射することができる。そして、その光源は、上記範囲内の波長の光を少なくとも発するとともに、眼球の表面から0mm超100mm以下の位置に配置されているので、照射した光が適切に眼球に届く。その結果、必要十分な放射照度の光を眼球に届けるのに必要な光源のパワーを比較的小さくすることができる。これにより、眼球に向けて効果的且つ効率的に照射することができ、赤色光の照射効果を実効的なものとすることができる。
【0009】
本発明に係る赤色光照射装置において、前記610~900nmの範囲内の波長の光の放射照度が、前記器具を装着した際の眼球表面で100W/m2未満であるように構成できる。
【0010】
本発明に係る赤色光照射装置において、前記器具が、めがね、帽子又は耳掛け具であるように構成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る赤色光照射装置によれば、照射した光が適切に眼球に届くので、必要十分な放射照度の光を眼球に届けるのに必要な光源のパワーを比較的小さくすることができる。これにより、眼球に向けて効果的且つ効率的に照射することができ、赤色光の照射効果を実効的なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】赤色光の光源を下側リムに設けた本発明に係る赤色光照射装置の一例(めがね型)を示す模式図である。
【
図2】赤色光の光源をヨロイに設けた本発明に係る赤色光照射装置の一例(めがね型)を示す模式図である。
【
図3】赤色光の光源を上側リムに設けた本発明に係る赤色光照射装置の一例(めがね型)を示す模式図である。
【
図4】赤色光が眼に向かって照射される態様を示す模式図である。
【
図5】花粉や粉塵防止、作業、スポーツに使用される機能用や、ゲームのAR用、VR用又はMR用に使用されるゴーグル型の赤色光照射装置の一例を示す概略構成図である。
【
図6】耳掛け型の赤色光照射装置の一例を示す概略構成図である。
【
図7】実験1で用いた赤色光の分光放射照度と波長との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る赤色光照射装置について図面を参照しつつ説明する。本発明は、本願記載の要旨を含む限り以下の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、種々の態様に変形可能である。
【0014】
[赤色光照射装置]
本発明に係る赤色光照射装置10は、
図1~
図6に示すように、610~900nmの範囲内の波長の光(赤色光13)を少なくとも発する光源11を有し、眼球近くに装着される赤色光照射装置であって、光源11は、赤色光照射装置10を装着した際に眼球方向D(
図4参照)に照射する位置に配置されているとともに、眼球20の表面から0mm超100mm以下の位置に配置されている。
【0015】
こうした赤色光照射装置10は、
図4に示すように、光源11から発する赤色光13を眼球20に適切に照射することができる。そして、その光源11は、上記範囲内の波長の赤色光13を少なくとも発するとともに、眼球の表面から0mm超100mm以下の位置に配置されているので、照射した光が適切に眼球に届く。その結果、必要十分な放射照度の光を眼球に届けるのに必要な光源のパワーを比較的小さくすることができる。これにより、眼球に向けて正確且つ効果的且つ効率的に照射することができ、赤色光13の照射効果を実効的なものとすることができる。
【0016】
[各構成要素]
各構成要素について詳しく説明する。
【0017】
以下の各態様において、符号Xは、めがね型の赤色光照射装置10Aを装着した態様における左右方向(水平方向)であり、符号Yは、めがね型の赤色光照射装置10Aを装着した態様における上下方向(鉛直方向)である。以下において、
図4及び
図5に示すように、「眼球の正面下方の位置A」とは、身体と頭を正面に正対して眼球が正面を見ている場合に、眼球20の正面方向に水平に延びる仮想線Z1から下方の位置のことを意味し、「眼球の正面下方から側方の位置B」とは、上記した「正面下方」の位置Aにおいて、その位置Aから側方の左右方向に水平に延びる仮想線Z2上の位置のことを意味している。「眼球の側方の位置B」は、上記した「眼球の正面下方から側方の位置B」とは少し異なり、眼球20の側方の左右方向(言い換えれば「真横方向」)に水平に延びる仮想線上の位置のことを意味している。なお、「眼球の側方の位置B」では、前記と同じ符号Bを便宜的に使用している。また、「上」、「下」、「上方」、「下方」という場合は、上下方向Yを基準にしており、「横」、「右」、「左」、「側方」という場合は、水平方向Xを基準にしている。また、「光」の語は、電磁波の意味で用いているので、「光」を「電磁波」に置き換えても同義である。
【0018】
(めがね型の赤色光照射装置)
めがね型の赤色光照射装置10A(以下「めがね型装置10A」という。)は、
図1~
図3に示すように、610~900nmの範囲内の波長の赤色光13を少なくとも発する光源11を有し、眼球近くに装着される照射装置である。このめがね型装置10Aは、日常生活や仕事で使用できるめがねであり、そうしためがね型装置10Aの基本構造は、
図1で説明するように、一般的には、透過性のレンズ2、リム3(レンズを固定している部分のこと。)、ヨロイ4(リム3からテンプル6につながるめがねの両端部分のこと。)、ヒンジ5(リム3とテンプル6をつなぐ開閉部分のこと。)、テンプル6(めがねを支える部分のこと。)、モダン7(テンプル6の先の耳にかかる部分のこと。)、ノーズパッド8(鼻を両脇から挟んでめがねを支えるための部分のこと。)、ブリッジ9(左右のレンズをつなぐ部分のこと。)等で基本的に構成されている。めがね型装置10Aの形態は、これらに限定されなくてもよく、流行や個性的なめがね形態等により、それらのいずれかの部位が省略されたものであったり、形状が大小さまざまなものであったりしてもよい。例えばめがね型装置10Aには、通常、ヒンジ5が存在するが、
図1に示すように張り出し部分3aが大きい場合には、テンプル6をヒンジ5で折りにくいため、ヒンジ5は設けられていなくてもよい場合もある。
【0019】
めがねには、病院等の処置室でのみ眼の治療等に使用されるような特殊なめがね型装置として、めがねと顔面との隙間を生じ難くした治療用の密閉型ゴーグル形態のめがねや、眼の治療にのみ使用される治療用のめがね等が存在する。しかし、このめがね型装置10Aは、そうした特殊なめがねではなく、
図1~
図3に示すように、一般的に使用されて日常的に装着可能な開放型のめがね型装置10A等であることが好ましい。こうした一般的な構造又はそれに近い構造のめがね型装置10Aに本発明の特徴を適用することで、日常生活や仕事中等の様々な場面で使用できるとともに、医療現場での眼の治療装置としても使用できる。そのため、日常的にめがねをかける人もかけない人のいずれであっても、日常生活や仕事をしながら眼を治療できる新しい医療機器として使用でき、より多くの人々が本発明の効果(赤色光13の照射効果を実効的なものとすること)を享受できる。
【0020】
レンズ2は、透過性であれば、ガラス製レンズでもプラスチック製レンズでもよい。「透過性」としたのは、従来のような治療や処理専門のめがねのように、視覚が妨げられるものではないことを明確にするためである。さらに、日常で使用できることを明確にするためである。また、所望の波長をカットできるレンズでもよいし、近視矯正、遠視矯正、乱視矯正等されたレンズであってもよいし、矯正されていない単なるガラス等であってもよいし、サングラス等のような着色されたレンズであってもよい。
【0021】
リム3、ヨロイ4、ヒンジ5、テンプル6、モダン7、ノーズパッド8等、めがね型装置10Aを構成する各部位の材質についても、樹脂製でも金属製でもそれ以外でも特に限定されない。また、各部で異なる材質で構成しためがねであってもよい。樹脂製のものは成形性や加工性がよく、好ましく採用できる。また、透明(無色透明又は有色透明を含む。)であっても、着色した不透明又は半透明であってもよい。なお、これらの各部位は、めがねのデザインによって各部位のエリア面積が様々であるので、そうしためがねに本発明の構成要素を適用する場合には、設置エリアが小さいリム3ではなく、設置エリアに余裕がある部位(ヨロイ4やテンプル6等)に光源11を設けることができ、めがね全体をスリム化することができる。
【0022】
このめがね型装置10Aは、
図1~
図3に示すように、日常使用するめがねの構成要素に光源11を取り付けて一体化して構成してなるものである。一方、日常使用するめがねの構成要素はそのままとし、光源11を着脱可能部品(アタッチメント部品ともいう。)としてめがねに取り付けてもよい。具体的には、例えば平常時に使っているめがねに着脱可能なアタッチメントめがね型装置(図示しない)であってもよいし、
図5に示す耳掛け型の赤色光照射装置10Bの先端部が備える光源11だけを着脱可能部品として、平常時に使っているめがねの下側リム3bや横側リム3dに着脱可能に取り付けてなるものであってもよい(図示しない)。こうすることで、眼球20に赤色光13を照射したいときに、平常時に使っているめがねに手軽に着脱することができ、めがね型装置10Aと同じ効果を実現できる。なお、アタッチメントとは、平常時に使用するめがねに着脱可能に取り付けるという意味で使用している。
【0023】
(光源)
光源11は、めがね型装置10Aを人が装着した際に、赤色光13を眼球方向Dに照射する位置に配置されている。光源11を配置する位置は、めがね型装置10Aの形態によって異なり、例えば
図1のめがね型装置10Aでは下側リム3bに光源11を設けることができる。
図1の例では、右眼側と左眼側にそれぞれ2箇所(総計4箇所)に間隔をあけて設けられている。光源11を設ける位置は特に限定されないが、
図2に示すように横側リム3d又はヨロイ4に設けてもよいし、
図3に示すように上側リム3cに設けてもよいし、下側リム3b、上側リム3c、横側リム3d又はヨロイ4のいずれか1又は2以上の位置に設けられていればよい。
【0024】
光源11から発する赤色光13は、610~900nmの範囲内の波長の光である。この範囲内の波長の赤色光13を眼球20に照射することができ、赤色光の照射効果を実効的なものとすることができる。「610~900nmの範囲内の波長の光」とは、波長が610~900nmの範囲内であればよい。例えば610~750nmの光であってもよい。例えば650~900nmの光であってもよい。例えば750~900nmの光であってもよい。
【0025】
また、そうした赤色光13は、610~900nmの範囲内の波長の光を少なくとも含んでいればよい。例えば610~900nmの波長範囲内にピークを有する光スペクトラムの光であってもよい。例えば610~900nmの波長範囲内にピークを有しない光スペクトラムの光であってもよい。
【0026】
なお、赤色光13は、610~900nmの範囲内の波長の光だけであってもよい。この場合、610~900nmの波長範囲外(610nm未満の波長の光や、900nm超の光)の光が少し含まれていてもよい。「少し」とは、後述する放射照度よりもかなり小さいノイズとして含まれる態様や、光スペクトラムの裾野部分として僅かに含まれる態様を挙げることができる。その程度は特に限定されるものではないが、近視を予防(発生を抑える)又は近視の進行を抑制に寄与しない程度の光であり、610~900nmの範囲内の光量の10%未満程度ということができる。
【0027】
本発明では、光源11を眼球20の表面から100mm以下の所定位置に装着した際、眼球20の表面での放射照度において、610~900nmの波長範囲の積分値で0.02W/m2以上が好ましい。より好ましい放射照度は、0.25W/m2以上であり、さらに好ましくは0.5W/m2以上である。また、610~900nmの波長範囲の積分値で100W/m2未満が好ましい。より好ましい放射照度は、10W/m2以下であり、さらに好ましくは1W/m2以下である。こうした放射照度の赤色光13を眼の表面に照射することにより、その赤色光13の特有の作用を実効的なものとすることができる。なお、100W/m2は、0.01W/cm2と換算される。
【0028】
こうした放射照度の光源11としては、上市されているLED等を選定して採用することができる。また、光透過性をコントロールできるフィルター等を用いて放射照度をコントロールすることができる。分光放射照度は、分光器によって測定でき、また、積分値(放射照度)も分光放射照度を求めたい波長領域で積分することで算出できる。その分光放射照度は、めがね型装置10Aを装着した際の眼球20の表面での値として測定する。したがって、後述のように、めがね型装置10Aに装着した光源11は、眼球20の表面から0mm超100mm以下の位置に配置されるので、その範囲内に配置された光源11からの赤色光13が眼球20の位置に届く位置で評価する。
【0029】
(他の波長域の光)
光源11から発する赤色光13は、少なくとも波長が610~900nmであればよいので、610~900nmの波長の光だけであってもよいし、他の波長域の光を含んでいてもよい。610~900nmの波長の光だけの場合は、その範囲の光だけを発光するLEDを採用してもよいし、他の波長域の光を含む光から610~900nmの波長の光以外の光を透過させないフィルター(光吸収フィルター)を用いたものであってもよい。
【0030】
また、光源11は、赤色光以外の、近赤外光や遠赤外光から選ばれる1種又は2種以上の光をさらに発するものでもよいし、又は、近赤外光及び遠赤外光から選ばれる1種又は2種以上の光を発する他の光源をさらに備えるものでもよい。なお、近赤外光は約900nm~約3000乃至4000nmの波長の光のことであり、遠赤外光はそれ以上で1000μm以下の波長の光と言うことができる。なお、化学分析分野では、さらに中間赤外光や超遠赤外光の概念が加わり、近赤外光は約900nm~約1500nmの波長の光のことであり、中間赤外光は約1500nm~約5600nmの波長の光であり、遠赤外光は約5600nm~約25000nmの波長の光であり、超遠赤外光は約25000nm~約1000μm以下の波長の光と言われている。また、例えば、光源11は、必要に応じて、白色光をさらに発するものでもよいし、又は、白色光を発する他の光源をさらに備えるものでもよい。
【0031】
(光源から眼球までの距離)
本発明では、めがね型装置10Aに装着した光源11を、眼球20の表面から0mm超100mm以下の位置に配置されるようにすることが好ましい。眼球20の表面から0mm超というのは、例えば光源を眼球20に直接接触しない場合を指している。こうした位置に配置することにより、眼球に向けて正確で効果的且つ効率的に照射することができ、照射する光の作用を実効的なものとすることができる。なお、眼球20の表面から100mm以下としたのは、100mmを超える位置に配置した場合、顔や頭から光源11が離れてしまい、眼球に対する照射の精度が低下するとともに、邪魔になるおそれもあり、さらに光源11の選択の幅が減ることを考慮したものである。また、眼球20の表面から100mm以下とすることで、照射した光が適切に眼球に届く。その結果、必要十分な放射照度の光を眼球に届けるのに必要な光源11のパワーを比較的小さくすることができる。これにより、省電力の照射装置とすることができる。
【0032】
(その他)
めがね型装置10Aへの光源11の取り付けは、接着剤で取り付けてもよいし、ネジやカシメ具で機械的に取り付けてもよい。また、光源11に電力を供給するための電源(図示しない)は、めがね型装置10Aに埋設又は装着したバッテリーであってもよいし、別の位置に装着したバッテリーまでケーブルで引き回したものであってもよい。また、一箇所で動かない場合には、家庭用電源等に接続する形態であってもよい。
【0033】
さらに、光源11のコントローラーやタイマー機能を備えていてもよい。コントローラーは、放射照度を可変したり、眼球への照射角度を調整したりする機能等を挙げることができる。また、タイマー機能は、光の放射照度時間を設定できるものを挙げることができる。こうしたコントローラーやタイマー機能は、めがね型装置10Aと一体として設けられていてもよいし、別部材としてもよい。
【0034】
めがね型装置10Aには、光センサ、温度センサ、湿度センサ等が設けられていてもよい。その取付位置は特に限定されないが、センサの種類に応じた位置を選択して取り付けることが好ましい。
【0035】
(制御装置)
制御装置12は、光源11の出力、照射時間、照射間隔等を制御する。制御装置12で制御することで、必要量の赤色光を眼球に向けて照射することができる。制御装置12は、電気回路を備え、電源から供給された電力を基に、光源11を制御する制御回路であり、電気回路で制御する電圧や電流により任意に制御することができる。なお、電源は、小型蓄電池をめがね(例えばテンプル6等)に設けてもよいし、めがねに電線でつないで電源供給してもよい。制御は、自動でも手動でもよい。手動の場合には、段階的に出力する複数のスイッチを押す手段とすることができる。
【0036】
制御装置12はめがね型装置10Aのどの位置に設けられていても構わない。めがね型装置10Aが、光源11を有線制御する有線通信素子を有する場合には、制御装置12はリム3以外の部位(例えばテンプル6等)に好ましく設けられていてもよいし、有線で繋いでポケットや身体又は衣服の一部に取り付けてもよい。また、めがね型装置10Aが光源11を無線制御する無線通信素子を有する場合には、制御装置12はめがね以外に設けられていてもよい。めがね以外とは、例えばスマートフォン等の移動体端末に制御用アプリケーションソフト(これも本願では制御装置12という。)がインストールされ、そのアプリケーションソフトを動作させて制御する場合等を挙げることができる。
【0037】
制御装置12で光源11を制御する場合、具体的な態様例としては、例えば仕事中に5分間だけ出力を強めにし、その後は弱めにした段階的制御を継続して使用したり、タイマー設定して10分間だけ出力してその後はOFFにしたりするON/OFF制御等で使用可能な制御装置12であることが好ましい。
【0038】
[他の形態の赤色光照射装置]
上記ではめがね型照射装置10Aについて説明したが、ここでは、
図5に示す耳掛け型の赤色光照射装置10B(耳掛け型装置10B)と、
図6に示す機能用、AR用、VR用及びMR用のゴーグル型の赤色光照射装置10C(ゴーグル型装置10C)とを説明する。なお、眼前カバー型の赤色光照射装置(図示しない)については説明しないが、他の赤色光照射装置10(10A,10B,10C)と同様である。
【0039】
(耳掛け型の赤色光照射装置)
図5は、耳掛け型装置10Bの代表的な形態を示している。耳掛け型装置10Bは、より簡易的な赤色光照射装置10Aとして利用できる。符号41は、耳掛けアームであり、その先端側には光源11が取り付けられており、後端側は耳に安定して掛けることができる構造に工夫されている。この耳掛け型装置10Bもめがね型装置10Aが備える各構成要素を同様に備えている。特に光源11を設ける方向と位置も同様であり、眼球20に赤色光13を照射することに適した方向と位置に光源11を設けることが望ましい。
【0040】
(ゴーグル型の赤色光照射装置)
図6は、ゴーグル型装置10Cの代表的な形態を示している。ゴーグル型装置10Cは、花粉や粉塵防止用として、作業用として、スキー等のスポーツに使用される機能用として、ゲームのAR用、VR用又はMR用として使用されるものに適用できる。なお、VR用は、シースルー型のAR用やMR用とは異なり、ゴーグル前面が視認性なく閉じているが、上記いずれのゴーグル型装置10Cも、眼を開けている状態で使用されるものである。こうしたゴーグル型装置10Cは、めがね型装置10Aが備える各構成要素を同様に備えている。特に光源11を設ける方向と位置も同様であり、眼球20に赤色光13を照射することに適した方向と位置に光源11を設けることが望ましい。
【0041】
(加温素子の設置位置)
光源11の設置位置を
図5を用いて説明する。上記した各形態の赤色光照射装置1(10A~10C)のいずれにおいても、光源11は、眼球の正面下方の位置A、眼球の正面下方から側方の位置B、又は眼球それぞれの側方の位置B、に設けられており、且つそれら位置A及び位置Bのいずれにおいても、眼球20から離れた距離が0mm超100mm以下であることが望ましい。なお、下方や側方に限らず、上方や斜め上方であってもかまわない。
【0042】
「眼球の正面下方の位置A」とは、身体と頭を正面に正対して眼球が正面を見ている場合に、眼球20の正面方向に水平に延びる仮想線Z1から下方の位置のことを意味し、好ましくはその水平に延びる仮想線Z1から下方に5°以上45°以下の角度θ1をなす方向で、眼球20から離れた距離が10mm超60mm以下の位置である。また、「眼球の正面下方から側方の位置B」とは、上記した「正面下方」の位置Aにおいて、その位置Aから側方の左右方向に水平に延びる仮想線Z2上の位置のことを意味し、好ましくは仮想線Z1から下方に5°以上45°以下の角度θ1をなす方向の位置Aから、左右方向に水平に延びる仮想線Z2上の位置であって、その仮想線Z2上で眼球20から離れた距離が10mm超60mm以下の位置である。
【0043】
また、「眼球それぞれの側方の位置」とは、眼球の真横の側方位置のことであり、上記した「眼球の正面下方から側方の位置B」とは少し異なり、眼球20の側方の左右方向(言い換えれば「真横方向」)に水平に延びる仮想線上の位置のことを意味している。具体的には、めがね型装置では、ヨロイ又はヨロイ側の側方リムであって、眼球20から離れた距離が0mm超100mm以下の位置である。
【0044】
光源11を、眼球20の正面下方の位置A、眼球の正面下方から側方の位置B、又は眼球それぞれの側方の位置、に設けることにより、光源11を眼球20に方向性よく向けることができる。また、光源11の位置を、眼球20から離れた距離が0mm超100mm以下の位置とすることにより、光源11から放射された光は、指向性を持って眼球方向に放射し、瞼で遮られることなく眼球に直接且つ効果的・効率的に届けることができる。なお、光源11を眼球20に方向性よく向けることができれば、光源11の位置は下方や側方に限らず、上方や斜め上方であってもかまわない。
【0045】
上記した各形態の赤色光照射装置10(10A~10C)で例示したように、本発明の赤色光照射装置10は様々なタイプの装置とすることができ、日常生活、仕事又は娯楽をしながら装着できる新しい装置として使用できる。これらのうち、日常使用しているめがねが備えているめがね型装置10Aの場合は、近視や遠視等のめがね自体を赤色光照射装置とすることができる。また、日常使用しているめがねに装着できるアタッチメントめがね型装置(図示しない)の場合は、日常使用するめがねとは別体とし、赤色光13を照射したい場合にだけアタッチメントめがねとして装着することができる。また、機能用、AR用、VR用又はMR用のゴーグル型装置10Cや眼前カバー型装置(図示しない)は、例えば花粉や粉塵防止用、作業用、スポーツ用、ゲーム用、IT業務用等として使用しながら装着できる。また、耳掛け型装置10Bや眼前カバー型装置は、簡易な構造で着脱が容易なものとして装着できる。
【実施例0046】
[実験1]
図7に示すスペクトラムのピーク波長850nmのLED(L850-40M00:AlGaAsLED、epitex社製)を3つ使用し、
図3に示す態様でめがねフレームの上方に取り付けた。3つのLEDを直列につなぎ、通過電流値が75mAとなるようにした。マネキンの眼球表面での分光放射照度を測定した。700~1000nm活きでの放射照度は132W/m
2であった。なお、IEC62471の安全基準では、780~3500nm域での評価なため、780~1000nmで積分をすると131W/m
2となる。IECが提示する安全性の条件はmax100W/m
2なので、今回の実験では30%超えている。これに対しては、LEDの数を減らすか、パワーをダウンさせて使えば解決できる。
【0047】
[実験1の評価と考察]
850nmLED3つでの出力パワーは、単位面積あたりで132W/m2(=0.0132W/cm2)であった(積分波長域は700~1000nm)。特許文献3(米国特許第11420072号)で触れられている単位面積あたりの出力エネルギーは0.5~25J/cm2又は0.5~15J/cm2であり、時間としては150~210s又は180sである。ここで、15J/cm2で180sという典型的なケースで計算すると、15/180=0.0833W/cm2となる。上記実験結果のパワーと比べると、0.0833/0.0132=6.3倍と大きい。特許文献3において、最小の場合は0.5J/cm2で210sという組み合わせになり、0.5/210=0.0024W/cm2となり、これは上記実験結果のパワーよりも小さく、0.0132/0.0024=5.5倍となる。つまり、上記実験の850nmLED3つのユニットは、特許文献3で指定しているエネルギーと照射時間の組み合わせから求められるパワーの一部を出すことができるとともに、安全性を考慮してパワーダウン等を行って0.01W/cm2未満とすることも容易である。特許文献3で指定されているエネルギーと照射時間の組み合わせから求められるパワーは、上記IECによる安全性条件を上回る部分があることが分かる。
【0048】
上記実験の850nmLED3つのユニットは、LED3つが直列でつながっていて、5.1Ωの抵抗1つがさらに直接でつながっているものである。それら全体に5Vが付加され、75mAの電流が流れている(全体のパワーとして、5V×0.075A=0.375W)。上記実験でのユニットの入力パワーである0.375Wは、特許文献3での装置(EyerisingInternational社の装置マニュアル(p.20参照)に記載されている値である30W(24VDC、1.25A)と比べると、1/80と非常に小さいパワーで実現できていることがわかる。
【0049】
これらのことから、本発明に係る赤色光照射装置によれば、上記範囲内の波長の光を発する光源を、眼球の表面から0mm超100mm以下の位置に配置しているので、照射した光が適切に眼球に届けることができる。その結果、必要十分な放射照度の光を眼球に届けるのに必要な光源のパワーを比較的小さくすることができる。これにより、眼球に向けて効果的且つ効率的に照射することができ、赤色光の照射効果を実効的なものとすることができる。