(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149325
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】半導体アレイ素子および半導体光装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20241010BHJP
H01S 5/22 20060101ALI20241010BHJP
H01S 5/023 20210101ALI20241010BHJP
H01S 5/02345 20210101ALI20241010BHJP
【FI】
H01S5/042 612
H01S5/22 610
H01S5/023
H01S5/02345
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101753
(22)【出願日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2023062198
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515288122
【氏名又は名称】ルーメンタム オペレーションズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Lumentum Operations LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 匡洋
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA05
5F173AA08
5F173AD04
5F173AH14
5F173AK22
5F173AK23
5F173AR72
5F173MC12
5F173MD16
5F173MD53
5F173MD59
5F173MD62
5F173MD63
5F173MD65
5F173ME63
(57)【要約】
【課題】特性差を小さくすることを目的とする。
【解決手段】半導体アレイ素子100は、複数のメサストライプ構造12の対応する1つの活性層16に電気的に接続する複数の個別電極26と、半導体基板10に電気的に接続する複数の共通電極28と、を有する。複数のメサストライプ構造12は、第1メサストライプ構造12Aを挟む一対の第2メサストライプ構造12Bを含む。複数の共通電極28は、第1電極28Aを挟む一対の第2電極28Bを含む。第1電極28Aは、複数のメサストライプ構造12の中で、第1メサストライプ構造12Aに最も近い。一対の第2電極28Bのそれぞれは、複数のメサストライプ構造12の中で、一対の第2メサストライプ構造12Bの対応する1つに最も近い。第2電極28Bは、面積において、第1電極28Aよりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
第1方向にそれぞれが延び、前記第1方向に直交する第2方向に隣り合って等間隔で並び、前記半導体基板に電気的に接続する活性層をそれぞれが有する複数のメサストライプ構造と、
前記第2方向に隣り合って並び、前記複数のメサストライプ構造の対応する1つの前記活性層にそれぞれが電気的に接続する複数の個別電極と、
前記第2方向に隣り合って並び、前記半導体基板にそれぞれが電気的に接続する複数の共通電極と、
を有し、
前記複数のメサストライプ構造は、第1メサストライプ構造と、前記第1メサストライプ構造を挟む一対の第2メサストライプ構造と、を含み、
前記複数の共通電極は、第1電極と、前記第1電極を挟む一対の第2電極と、を含み、
前記第1電極は、前記複数のメサストライプ構造の中で、前記第1メサストライプ構造に最も近く、
前記一対の第2電極のそれぞれは、前記複数のメサストライプ構造の中で、前記一対の第2メサストライプ構造の対応する1つに最も近く、
前記一対の第2電極のそれぞれは、面積において、前記第1電極よりも小さい半導体アレイ素子。
【請求項2】
請求項1に記載された半導体アレイ素子であって、
前記一対の第2電極のそれぞれは、前記第1方向の長さにおいて、前記第1電極と同じであり、
前記一対の第2電極のそれぞれは、前記第2方向の幅において、前記第1電極よりも小さい半導体アレイ素子。
【請求項3】
請求項1に記載された半導体アレイ素子であって、
前記複数の個別電極は、面積において相互に等しい半導体アレイ素子。
【請求項4】
請求項1に記載された半導体アレイ素子であって、
前記第1メサストライプ構造は、複数の第1メサストライプ構造であり、
前記第1電極は、1つの第1電極であり、
前記1つの第1電極は、前記複数の第1メサストライプ構造と同じ個数で均等な大きさの複数の部分を有し、
前記一対の第2電極のそれぞれは、面積において、前記複数の部分のそれぞれよりも小さい半導体アレイ素子。
【請求項5】
請求項1に記載された半導体アレイ素子であって、
前記第1メサストライプ構造は、複数の第1メサストライプ構造であり、
前記第1電極は、分離された複数の第1電極である半導体アレイ素子。
【請求項6】
請求項5に記載された半導体アレイ素子であって、
前記複数の第1電極は、面積において相互に等しい半導体アレイ素子。
【請求項7】
請求項5に記載された半導体アレイ素子であって、
前記複数の第1電極は、前記一対の第2電極のいずれかに近いほど、面積において小さい半導体アレイ素子。
【請求項8】
請求項1に記載された半導体アレイ素子であって、
前記複数のメサストライプ構造は、前記半導体基板の上面にあり、
前記複数の共通電極は、前記半導体基板の下面にあり、
前記第1電極は、前記第1メサストライプ構造に重なり、
前記一対の第2電極のそれぞれは、前記一対の第2メサストライプ構造の近い方の1つに重なる半導体アレイ素子。
【請求項9】
請求項1に記載された半導体アレイ素子であって、
前記複数のメサストライプ構造は、前記半導体基板の上面にあり、
前記複数の共通電極は、前記半導体基板の前記上面に接触し、
前記第1電極は、前記第1メサストライプ構造に隣り合い、
前記一対の第2電極のそれぞれは、前記一対の第2メサストライプ構造の近い方の1つの隣にある半導体アレイ素子。
【請求項10】
請求項9に記載された半導体アレイ素子であって、
前記複数の共通電極のそれぞれは、前記半導体基板の前記上面から上方に屈曲し、前記上面に接触する最下部と、前記最下部よりも高い位置にある最上部と、を含み、
前記一対の第2電極のそれぞれの前記最上部は、面積において、前記第1電極の前記最上部よりも小さい半導体アレイ素子。
【請求項11】
請求項1に記載された半導体アレイ素子であって、
前記複数のメサストライプ構造のそれぞれを両側で埋め込む埋め込み層をさらに有する半導体アレイ素子。
【請求項12】
請求項1に記載された半導体アレイ素子であって、
前記複数のメサストライプ構造は、前記第1メサストライプ構造および前記一対の第2メサストライプ構造を挟む一対の第3メサストライプ構造をさらに含み、
前記複数の共通電極は、前記第1電極および前記一対の第2電極を挟む一対の第3電極をさらに含み、
前記一対の第3電極は、面積において、前記一対の第2電極以上である半導体アレイ素子。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載された半導体アレイ素子と、
前記半導体アレイ素子が搭載されるサブマウントと、
を有し、
前記サブマウントは、複数の個別端子および複数の共通端子を有し、
前記複数の個別端子のそれぞれは、前記複数の個別電極の対応する1つに電気的に接続され、
前記複数の共通端子のそれぞれは、前記複数の共通電極の対応する1つに電気的に接続される半導体光装置。
【請求項14】
請求項13に記載された半導体光装置であって、
前記複数の共通端子は、前記第1電極に対向して接合される第1端子と、前記一対の第2電極にそれぞれ対向して接合される一対の第2端子と、を含み、
前記一対の第2端子のそれぞれは、面積において、前記第1端子よりも小さい半導体光装置。
【請求項15】
請求項14に記載された半導体光装置であって、
前記一対の第2端子のそれぞれは、前記共通電極の対応する前記1つとの接合面積において、前記第1端子よりも小さい半導体光装置。
【請求項16】
請求項13に記載された半導体光装置であって、
前記複数の個別端子のそれぞれと前記複数の個別電極の前記対応する1つを電気的に接続するワイヤをさらに有し、
前記複数の共通端子のそれぞれと前記複数の共通電極の前記対応する1つは、対向して電気的に接続される半導体光装置。
【請求項17】
請求項13に記載された半導体光装置であって、
前記複数の個別端子のそれぞれと前記複数の個別電極の前記対応する1つは、対向して電気的に接続され、
前記複数の共通端子のそれぞれと前記複数の共通電極の前記対応する1つは、対向して電気的に接続される半導体光装置。
【請求項18】
請求項13に記載された半導体光装置であって、
前記複数のメサストライプ構造は、前記第1メサストライプ構造および前記一対の第2メサストライプ構造を挟む一対の第3メサストライプ構造をさらに含み、
前記複数の共通電極は、前記第1電極および前記一対の第2電極を挟む一対の第3電極をさらに含み、
前記一対の第3電極のそれぞれは、面積において、前記一対の第2電極のいずれよりも大きく、
前記複数の個別端子は、前記一対の第3メサストライプ構造の前記活性層には電気的に接続されない半導体光装置。
【請求項19】
請求項18に記載された半導体光装置であって、
前記複数の共通端子は、前記第1電極に対向して接合される第1端子と、前記一対の第2電極にそれぞれ対向して接合される一対の第2端子と、前記一対の第3電極に対向して接合される第3端子と、を含む半導体光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体アレイ素子および半導体光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の発光部が集積された半導体アレイ素子が知られている(特許文献1)。発光部の特性は、温度変化によって変化する。温度変化は、隣の発光部で生じる熱の影響を受ける。例えば、3つの発光部が一列に並ぶ半導体アレイ素子では、中央の発光部は両側から熱の影響を受けるが、両側の発光部のそれぞれは片側のみから熱の影響を受ける。熱量が違うので3つの発光部の実効的な動作温度に差が生じ、特性が不均一になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、発光部ごとの個別電極の幅が配列位置によって異なっている。詳しくは、内側の個別電極は、最も外側の個別電極よりも広い。これによって、個別電極からの放熱量を異ならせて、動作温度の差を小さくすることができる。しかし、個別電極の幅が異なると寄生容量も異なるので、特性のばらつきが生じる。
【0005】
本発明は、特性差を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
半導体アレイ素子は、半導体基板と、第1方向にそれぞれが延び、前記第1方向に直交する第2方向に隣り合って等間隔で並び、前記半導体基板に電気的に接続する活性層をそれぞれが有する複数のメサストライプ構造と、前記第2方向に隣り合って並び、前記複数のメサストライプ構造の対応する1つの前記活性層にそれぞれが電気的に接続する複数の個別電極と、前記第2方向に隣り合って並び、前記半導体基板にそれぞれが電気的に接続する複数の共通電極と、を有し、前記複数のメサストライプ構造は、第1メサストライプ構造と、前記第1メサストライプ構造を挟む一対の第2メサストライプ構造と、を含み、前記複数の共通電極は、第1電極と、前記第1電極を挟む一対の第2電極と、を含み、前記第1電極は、前記複数のメサストライプ構造の中で、前記第1メサストライプ構造に最も近く、前記一対の第2電極のそれぞれは、前記複数のメサストライプ構造の中で、前記一対の第2メサストライプ構造の対応する1つに最も近く、前記一対の第2電極のそれぞれは、面積において、前記第1電極よりも小さい。
【0007】
半導体光装置は、半導体アレイ素子と、前記半導体アレイ素子が搭載されるサブマウントと、を有し、前記サブマウントは、複数の個別端子および複数の共通端子を有し、前記複数の個別端子のそれぞれは、前記複数の個別電極の対応する1つに電気的に接続され、前記複数の共通端子のそれぞれは、前記複数の共通電極の対応する1つに電気的に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る半導体アレイ素子の概略平面図である。
【
図2】
図1に示す半導体アレイ素子のII-II線断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る半導体光装置の概略平面図である。
【
図4】
図3に示す半導体光装置のIV-IV線断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る半導体アレイ素子の断面図である。
【
図6】第3の実施形態に係る半導体アレイ素子の断面図である。
【
図7】チャネル間のピッチを変えて動作温度がどう変化するかのシミュレーション結果の図である。
【
図8】第4の実施形態に係る半導体アレイ素子の断面図である。
【
図9】第5の実施形態に係る半導体アレイ素子の断面図である。
【
図10】第5の実施形態に係る半導体光装置の概略平面図である。
【
図11】
図10に示す半導体光装置のXI-XI線断面図である。
【
図12】第6の実施形態に係る半導体アレイ素子の概略平面図である。
【
図13】
図12に示す半導体アレイ素子のXIII-XIII線断面図である。
【
図14】第6の実施形態に係る半導体光装置の概略平面図である。
【
図15】
図14に示す半導体光装置のXV-XV線断面図である。
【
図16】第7の実施形態に係る半導体アレイ素子の概略平面図である。
【
図17】
図16に示す半導体アレイ素子のXVII-XVII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体アレイ素子の概略平面図である。
図2は、
図1に示す半導体アレイ素子のII-II線断面図である。半導体アレイ素子100は、リッジ型であり、マルチチャネル(例えば4チャネル)に対応する。
【0011】
半導体アレイ素子100は、半導体基板10を有する。半導体アレイ素子100は、複数のメサストライプ構造12を有する。複数のメサストライプ構造12は、半導体基板10の上面にある。複数のメサストライプ構造12は、第1方向D1に延び、第1方向D1に直交する第2方向D2に隣り合って等間隔で並ぶ。
【0012】
メサストライプ構造12は、第1導電型の半導体基板10上の半導体多層を有する。半導体多層は、半導体基板10から、第1導電型のバッファ層14、活性層16、第2導電型のメサエッチング停止層18、第2導電型のクラッド層20、そして第2導電型のコンタクト層22を含む。半導体基板10およびバッファ層14はn型のInPである。バッファ層14は無くしても構わない。活性層16は、InGaAlAsまたはInGaAsPを含む多重量子井戸構造であり、ここではアンドープ層である。活性層16の上下に光閉じ込め層を配置してもよい。メサエッチング停止層18は、p型のInGaAlAsまたはInGaAsPである。クラッド層20は、p型のInPである。メサエッチング停止層18とクラッド層20の間に回折格子層を配置してもよい。コンタクト層22は、p型のInGaAsである。なお、ここで挙げた材料は一例に過ぎない。
【0013】
メサストライプ構造12は、一対の分離溝24に挟まれている。一対の分離溝24の間の間隔がメサストライプ構造12の幅である。複数のメサストライプ構造12の幅は同一である。メサストライプ構造12および分離溝24は、半導体アレイ素子100の両端面に至るように延伸している。分離溝24は、少なくともバッファ層14に至る深さ(例えば、半導体基板10に至る深さ)を有する。
【0014】
メサストライプ構造12は、半導体基板10に電気的に接続する活性層16を有する。電気信号が入力されることで、メサストライプ構造12の下部にある、一対の分離溝24で挟まれた活性層16が発光する。半導体アレイ素子100は、第1方向D1の先端にある端面から光を出力するようになっており、出力光が光通信に用いられる。
【0015】
半導体アレイ素子100の表面には、絶縁膜のパッシベーション膜25が形成されている。パッシベーション膜25は、分離溝24の内側にも配置されている。パッシベーション膜25はメサストライプ構造12の上面には配置されていない。パッシベーション膜25は例えば酸化シリコン膜や窒化シリコン膜である。
【0016】
複数のメサストライプ構造12は、第1メサストライプ構造12Aを含む。第1メサストライプ構造12Aは、複数の第1メサストライプ構造12Aである。複数のメサストライプ構造12は、第1メサストライプ構造12Aを挟む一対の第2メサストライプ構造12Bを含む。
【0017】
[個別電極]
半導体アレイ素子100は、複数の個別電極26を有する。複数の個別電極26は、第2方向D2に隣り合って並ぶ。複数の個別電極26のそれぞれは、複数のメサストライプ構造12の対応する1つの活性層16に電気的に接続する。複数の個別電極26は、面積において相互に等しく、形状も同一である。
【0018】
個別電極26はメサストライプ構造12に接する。個別電極26とコンタクト層22が電気的に接続されている。個別電極26は、メサストライプ構造12を介して活性層16と導通する。個別電極26は、メサストライプ構造12および分離溝24の一部を覆うように第1方向D1に延びる領域と、第2方向D2にメサストライプ構造12の一方側に配置された領域と、両者をつなぐ領域を含む。
【0019】
[共通電極]
半導体アレイ素子100は、複数の共通電極28を有する。複数の共通電極28は、半導体基板10の下面にある。複数の共通電極28は、第2方向D2に隣り合って並ぶ。共通電極28は、半導体基板10に電気的に接続する。共通電極28は、半導体基板10を介して、活性層16に導通する。共通電極28は半導体基板10に接する。複数の共通電極28は、第1方向D1の長さにおいて同一である。
【0020】
[第1電極]
複数の共通電極28は、第1電極28Aを含む。第1電極28Aは、分離された複数の第1電極28Aである。複数の第1電極28Aは、幅において同一である。複数の第1電極28Aは、面積において相互に等しい。第1電極28Aは、第1メサストライプ構造12Aに重なる。それぞれの第1電極28Aは、複数の第1メサストライプ構造12Aの対応する1つに最も近い。
【0021】
[第2電極]
複数の共通電極28は、複数の第1電極28Aを挟む一対の第2電極28Bを含む。それぞれの第2電極28Bは最も外側の共通電極28であり、それぞれの第1電極28Aは内側の共通電極28である。一対の第2電極28Bは幅において同一である。一対の第2電極28Bのそれぞれは、一対の第2メサストライプ構造12Bの対応する1つに最も近い。一対の第2電極28Bのそれぞれは、一対の第2メサストライプ構造12Bの近い方の1つに重なる。一対の第2電極28Bのそれぞれは、第1方向D1の長さにおいて、第1電極28Aと同じである。一対の第2電極28Bのそれぞれは、第2方向D2の幅において、第1電極28Aよりも小さい。一対の第2電極28Bのそれぞれは、面積において、第1電極28Aよりも小さい。
【0022】
[半導体光装置]
図3は、第1の実施形態に係る半導体光装置の概略平面図である。
図4は、
図3に示す半導体光装置のIV-IV線断面図である。半導体光装置は、半導体アレイ素子100およびサブマウント30を有する。半導体アレイ素子100はサブマウント30に搭載されている。搭載方式はジャンクションアップである。サブマウント30の基板は、AlNなどのセラミックで形成されている。
【0023】
[個別端子]
サブマウント30は、複数の個別端子32を有する。複数の個別端子32のそれぞれは、複数の個別電極26の対応する1つに電気的に接続されている。電気的接続は、ワイヤ34によってなされている。
【0024】
[共通端子]
サブマウント30は、複数の共通端子36を有する。複数の共通端子36のそれぞれは、複数の共通電極28の対応する1つに電気的に接続され、例えば対向して電気的に接続される。電気的接続には、はんだや導電性接着剤などの接合剤が使用される。複数の共通端子36は、共通電極28の対応する1つの幅に応じた大きさの幅を有しているが、すべての幅が同一であっても構わない。
【0025】
複数の共通端子36は、複数の第1電極28Aにそれぞれ対向して接合される複数の第1端子36Aを含む。複数の共通端子36は、一対の第2電極28Bに対向して接合される一対の第2端子36Bを含む。一対の第2端子36Bのそれぞれは、面積において、第1端子36Aよりも小さい。一対の第2端子36Bのそれぞれは、共通電極28の対応する1つとの接合面積において、第1端子36Aよりも小さい。
【0026】
[動作]
図示しない外部の電気回路より、電気信号が共通端子36および個別端子32に入力され、半導体アレイ素子100の共通電極28および個別電極26に伝達され、活性層16にて光が発生し、光信号が生成される。それぞれの共通電極28および対応する1つの個別電極26の重複領域が発光部38である。分離溝24は、隣同士の発光部38の電気的および光学的な分離のためにある。
【0027】
電気信号が半導体アレイ素子100に入力されると、発光部38で熱が生じる。それぞれの発光部38で生じる熱は、隣接する発光部38にも伝わる。内側の発光部38Aは、両側で他の発光部38に隣接するので、両側から熱が伝わる。一方、最も外側の発光部38Bは、片側だけで他の発光部38に隣接するので、片側から熱が伝わる。
【0028】
従来技術では、内側の発光部38Aと最も外側の発光部38Bとでは実効的な動作温度に違いが生じていた。具体的には、最も外側の発光部38Bの動作温度は、内側の発光部38Aの動作温度より低かった。動作温度の差は、発光部38の特性差を生じる原因となる。ここで、動作温度とは、発光部38に電気信号が入力されて、駆動された状態の活性層16の温度を示す。
【0029】
発光部38の特性は、一般的に、動作温度が高いほど低下する傾向にある。放熱量を大きくするためには、複数の共通電極28は、いずれもできるだけ大きい方が好ましい。しかし、複数の共通電極28を同じように大きくした場合、放熱量が同じとなるので、動作温度の差が変わらず、発光部38の特性差を引き起こす。
【0030】
本実施形態では、最も外側の発光部38Bに対する放熱性を意図的に低減させている。具体的には、第2電極28Bを第1電極28Aよりも面積(例えば幅)において小さくした。面積(例えば幅)は、大きい方が放熱量は大きい。そのため、第2電極28Bより第1電極28Aの方が放熱量において大きい。これにより、実効的な動作温度の差を低減させ、発光部38間の特性のばらつきを低減する。
【0031】
半導体基板10に接する共通電極28の幅は、放熱性には強く影響を与えるが、寄生容量や抵抗値への影響はほとんどない。そのため、幅を変えることによる特性のばらつきを最小限に抑えつつ、放熱量の調整が可能となる。共通電極28は、サブマウント30の共通端子36と接続されており、発光部38で発生した熱はサブマウント30に伝達され放熱される。
【0032】
これに対して、複数の個別電極26は、面積(幅)において同一である。個別電極26の幅は、特に寄生容量に影響を与える。そのため、個別電極26の面積(幅)を変えることで放熱性を調整した場合、寄生容量が変わるために周波数応答特性のばらつきを引き起こし、むしろ発光部38間の特性差を大きくする恐れがある。半導体アレイ素子100を連続波レーザ(CWレーザ)として使用した場合であっても、個別電極26の面積(幅)を変えると、コンタクト層22との接触抵抗値に影響を与える。抵抗値のばらつきも特性のばらつきを引き起こす要因であり、好ましくない。
【0033】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係る半導体アレイ素子の断面図である。断面図の切断位置は、第1の実施形態と同じである。第1の実施形態との違いは、発光部238の数にあり、半導体アレイ素子200は8チャネルに対応する。
【0034】
複数の個別電極226の幅(面積)は同一である。共通電極228は、最も外側の第2電極228Bと、内側の第1電極228Aを含み、第2電極228Bは第1電極228Aよりも幅(面積)において小さい。その他の構成は、第1の実施形態で説明した内容を適用可能である。本実施形態でも第1の実施形態の効果が得られる。
【0035】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態に係る半導体アレイ素子の断面図である。断面図の切断位置は、第1の実施形態と同じである。半導体アレイ素子300は、8チャネル(Ch1~Ch8)に対応しているが、第2の実施形態よりもチャネル間の距離(ピッチ)が狭い。チャネル間のピッチとは、隣接するメサストライプ構造312の中央間の距離で定義される。チャネル間のピッチは、第2の実施形態では250μmであるのに対し、本実施形態では125μmである。
【0036】
チャネル間のピッチが狭いと、隣接する発光部338のみならず、さらに離れた発光部338からも熱が伝わる。そのため、発光部338は、配列の中央に近いほど、熱の影響が大きい。逆に、発光部338は、最も外側に近いほど、熱の影響が小さい。
【0037】
図7は、チャネル間のピッチを変えて動作温度がどう変化するかのシミュレーション結果の図である。ピッチは、250μmおよび125μmである。動作温度は、チャネルでの活性層316の温度である。シミュレーションでは、共通電極328の幅は全て同じとした。
【0038】
シミュレーション結果より明らかなように、250μmピッチの場合は、Ch2~Ch7の動作温度はほぼ同一で、Ch1およびCh8でのみ動作温度が低い。この場合、動作温度の差を低減するためには、第2の実施形態のように、第2電極328Bの幅を狭くすればよい。一方、チャネル間のピッチが125μmの場合、動作温度は、Ch4およびCh5で最も高く、Ch1およびCh8に向かって徐々に低くなっている。
【0039】
そこで、本実施形態では、熱による影響の程度に応じて、複数の第1電極328Aの幅を変えることで、内側のチャネル間でも動作温度の差を低減し、特性差を低減させている。具体的には、複数の第1電極328Aは、一対の第2電極328Bのいずれかに近いほど、面積(幅)において小さい。
【0040】
一対の第2電極328Bの一方に最も近い第1電極328Aは、面積(幅)において、一対の第2電極328Bの他方に最も近い第1電極328Aと同じである。同様に、一対の第2電極328Bの一方にn番目に最も近い第1電極328Aは、面積(幅)において、一対の第2電極328Bの他方にn番目に最も近い第1電極328Aと同じである。
【0041】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態に係る半導体アレイ素子の断面図である。断面図の切断位置は、第1の実施形態と同じである。半導体アレイ素子400は、第2の実施形態と同様に、8チャネルに対応し、チャネル間のピッチは250μmである。
【0042】
従来の250μmピッチでは、
図7に示されるように、動作温度は、Ch1およびCh8で低くなり、Ch2~Ch7では同等であった。Ch2~Ch7の全体の放熱性を向上させるためには、第1電極428Aは幅において広い方が好ましく、隣同士の第1電極428Aの間隔を無くすことが好ましい。
【0043】
本実施形態では、第1電極428Aは、1つの第1電極428Aである。1つの第1電極428Aは、複数の第1メサストライプ構造412A(発光部438)と同じ個数で均等な大きさの複数の部分440を有する。複数の部分440の境目は、隣同士の発光部438の中間点の直下にある。それぞれの部分440の幅Wは、発光部438のピッチPと等しい。つまり、幅Wは、隣同士の発光部438の中間点から、両側に、半ピッチP/2の大きさを有する。
【0044】
一対の第2電極428Bのそれぞれは、面積において、複数の部分440のそれぞれよりも小さい。その結果、チャネル間の温度差を低減できる。複数の部分440が一体になっていても、複数の発光部438の温度差はないので、特性差は発生しない。その他の内容については、第2の実施形態で説明した内容を適用可能である。
【0045】
[第5の実施形態]
図9は、第5の実施形態に係る半導体アレイ素子の断面図である。断面図の切断位置は、第1の実施形態と同じである。半導体アレイ素子500は、第2の実施形態と同様に、8チャネルに対応している。
【0046】
複数のメサストライプ構造512は、一対の第3メサストライプ構造512Cをさらに含む。一対の第3メサストライプ構造512Cは、第1メサストライプ構造512Aおよび一対の第2メサストライプ構造512Bを挟む。第3メサストライプ構造512Cが最も外側のメサストライプ構造512であり、片側でのみ他のメサストライプ構造512に隣接する。一対の第2メサストライプ構造512Bは、内側のメサストライプ構造512であり、両側で他のメサストライプ構造512に隣接する。複数のメサストライプ構造512の間隔は均一である。
【0047】
複数の共通電極528は、一対の第3電極528Cをさらに含む。一対の第3電極528Cは、第1電極528Aおよび一対の第2電極528Bを挟む。一対の第3電極528Cのそれぞれは、面積において、一対の第2電極528Bのいずれよりも大きい。あるいは、第3電極528Cは、幅において第2電極528Bと同じであってもよい。第3電極528Cは、幅において第1電極528Aと同じであってもよい。なお、第3の実施形態で説明したように、複数の第1電極528Aの幅を徐々に変化させても構わない。
【0048】
図10は、第5の実施形態に係る半導体光装置の概略平面図である。
図11は、
図10に示す半導体光装置のXI-XI線断面図である。
【0049】
サブマウント530は、複数の共通端子536を有する。複数の共通端子536は、第1電極528Aに対向して接合される第1端子536Aと、一対の第2電極528Bにそれぞれ対向して接合される一対の第2端子536Bと、一対の第3電極528Cに対向して接合される第3端子536Cを含む。
【0050】
サブマウント530は、複数の個別端子532を有する。複数の個別端子532のそれぞれ(最も外側の個別端子532を除く)は、第1メサストライプ構造512Aおよび一対の第2メサストライプ構造512Bの活性層516に、ワイヤ534によって電気的に接続されている。
【0051】
最も外側の一対の個別端子532には、ワイヤがボンディングされていない。一対の第3メサストライプ構造512Cの活性層516は、複数の個別端子532のいずれにも電気的に接続されない。したがって、最も外側の第3メサストライプ構造512Cはダミー構造であり、最も外側のチャネルは、駆動しないダミーチャネルである。ダミーチャネルは、構造において、駆動されるチャネルと同一だが、電気信号は入力されない。ダミーチャネルには発光が生じないので熱が生じない。そのため、最も外側のダミーチャネルの内側にあるチャネルは、片側からのみ熱の影響を受けるので、駆動されるチャネルのうちでは最も外側にある。本実施形態でも、一対の第2電極528Bは、片側からのみ熱の影響を受けるという意味で、他の実施形態の一対の第2電極528Bと変わりない。
【0052】
[第6の実施形態]
図12は、第6の実施形態に係る半導体アレイ素子の概略平面図である。
図13は、
図12に示す半導体アレイ素子のXIII-XIII線断面図である。
【0053】
半導体アレイ素子600は、リッジ型であり、半導体基板610上の4つの発光部638を有し、4チャネルに対応している。発光部638にはメサストライプ構造612がある。
【0054】
複数のメサストライプ構造612は、長さおよび一対の分離溝624で挟まれる幅も同一である。メサストライプ構造612は、第1導電型の半導体基板610上の半導体多層により構成されている。半導体多層は、半導体基板610から、第1導電型のバッファ層614、活性層616、第2導電型のメサエッチング停止層618、第2導電型のクラッド層620、そして第2導電型のコンタクト層622で構成されている。
【0055】
半導体基板610およびバッファ層614は、n型のInPである。バッファ層614は、半導体基板610の上に広く配置されてもよい。あるいは、バッファ層614は無くしても構わない。活性層616は、InGaAlAsまたはInGaAsPを含む多重量子井戸構造であり、ここではアンドープ層である。活性層616の上下に光閉じ込め層を配置してもよい。メサエッチング停止層618とクラッド層620の間に、回折格子層を配置してもよい。メサエッチング停止層618は、p型のInGaAlAsまたはInGaAsPである。クラッド層620は、p型のInPである。コンタクト層622は、p型のInGaAsである。なお、ここで挙げた材料は一例に過ぎない。
【0056】
半導体アレイ素子600の表面には、絶縁膜であるパッシベーション膜625が形成されている。パッシベーション膜625は例えば酸化シリコン膜や窒化シリコン膜である。パッシベーション膜625は分離溝624の内側にも配置されている。パッシベーション膜625はメサストライプ構造612の上面には配置されない。
【0057】
半導体基板610の、半導体多層が配置されている側に、半導体基板610に接する共通電極628と、メサストライプ構造612に接する個別電極626が配置されている。
【0058】
個別電極626とコンタクト層622は電気的に接続されている。個別電極626は、メサストライプ構造612を介して活性層616に導通する。個別電極626は、メサストライプ構造612および分離溝624の一部を覆うように第1方向D1に延びる領域と、第2方向D2にメサストライプ構造612の隣に配置された領域と、その間をつなぐ領域を含む。4つの個別電極626の面積はすべて同じであり、かつ形状も同一である。4つの共通電極628は、第1方向D1の長さにおいて同一である。
【0059】
パッシベーション膜625は、半導体基板610の、複数の共通電極628と接する複数の領域には配置されない。共通電極628は、バッファ層614または半導体基板610を介して活性層616に導通する。共通電極628がバッファ層614と接してもよい。バッファ層614は、半導体基板610と同一の導電型であり、同一材料から形成され、両者は実質的に一体的なものである。一対の第2電極628Bのそれぞれは、幅において、隣接する第1電極628Aより狭い。一対の第2電極628Bの幅は同一である。第1電極628Aの幅は同一である。
【0060】
複数の共通電極628のそれぞれは、
図13に示すように、半導体基板610の上面から上方に屈曲し、半導体基板610の上面に接触する最下部642を含み、最下部642よりも高い位置にある最上部644を含む。
【0061】
第1電極628Aは、第1メサストライプ構造612Aの隣にある。一対の第2電極628Bのそれぞれは、一対の第2メサストライプ構造612Bの近い方の1つの隣にある。一対の第2電極628Bのそれぞれの最上部644は、面積において、第1電極628Aの最上部644よりも小さい。
【0062】
半導体基板610の上面には、複数のメサストライプ構造612に加えて、複数のスペーサ646がある。複数のスペーサ646も、第1方向D1に延びており、第2方向D2に隣同士が並び、複数のメサストライプ構造612と同じ材料の複数層からなる。
【0063】
複数のスペーサ646は、第1電極628Aが載る第1スペーサ646Aと、第2電極628Bが載る第2スペーサ646Bを含む。第1スペーサ646Aおよび第2スペーサ646Bは、複数のメサストライプ構造612の、第2方向D2に沿った同じ側(
図13では右側)にある。
【0064】
複数のスペーサ646は、複数の個別電極626がそれぞれ載る複数の個別スペーサ648を含む。複数の個別スペーサ648は、それぞれ、複数のメサストライプ構造612の、第2方向D2に沿った同じ側(
図13では左側)にある。個別電極626は、メサストライプ構造612の上にある部分と、個別スペーサ648の上にある部分と、両者を接続する部分を含む。
【0065】
図14は、第6の実施形態に係る半導体光装置の概略平面図である。
図15は、
図14に示す半導体光装置のXV-XV線断面図である。半導体アレイ素子600はサブマウント630にジャンクションダウン搭載されている。サブマウント630は、AlNなどのセラミックで形成された基板650を有する。サブマウント630は、複数の個別端子632および複数の共通端子636を有する。
【0066】
複数の個別端子632のそれぞれと複数の個別電極626の対応する1つは、対向して電気的に接続される。両者は機械的にも接続される。個別端子632は、半導体アレイ素子600の個別電極626とはんだや導電性接着剤などを介して接続される。
【0067】
複数の共通端子636のそれぞれと複数の共通電極628の対応する1つは、対向して電気的に接続される。両者は機械的にも接続される。共通端子636は、半導体アレイ素子600の共通電極628とはんだや導電性接着剤などの接合剤を介して接続される。
【0068】
図示しない外部の電気回路より、電気信号が、共通端子636および個別端子632に入力され、共通電極628および個別電極626に伝達され、活性層616にて光が発生し、光信号が生成される。
【0069】
本実施形態においても、最も外側の発光部638Bは、内側の発光部638Aよりも熱の影響が小さいので、第2電極628Bを第1電極628Aよりも幅を小さくすることで、他の実施形態と同様の効果を得ることができる。第2電極628Bが面積において第1電極628Aより小さければ、両者の第1方向D1の長さは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0070】
共通電極628は、共通端子636に接する接触領域652と、共通端子636に接しない非接触領域654を含む。内側の第1電極628Aは、最も外側の第2電極628Bよりも、接触領域652の面積において大きい。非接触領域654においても放熱は行われるが、放熱量が多いのは接触領域652である。そのため、接触領域652の面積を調整することで、各発光部638間の実効的な動作温度のばらつきを抑制する効果が高くなる。なお、個別電極626と個別端子632が接する領域の面積はすべて同一としている。これは上述したように寄生容量などの特性のばらつきを発生させないためである。
【0071】
本実施形態で示したように、個別電極626および共通電極628は、半導体基板610の同じ側に配置してもよい。なお、同一側に共通電極628を配置する構造を他の実施形態に適用しても同様の効果が得られる。
【0072】
[第7の実施形態]
図16は、第7の実施形態に係る半導体アレイ素子の概略平面図である。
図17は、
図16に示す半導体アレイ素子のXVII-XVII線断面図である。
【0073】
半導体アレイ素子700は、埋め込み型であり、複数のメサストライプ構造712のそれぞれは両側で埋め込み層756によって埋め込まれている。埋め込み層756は、例えば半絶縁性のInPである。
【0074】
半導体アレイ素子700は、半導体基板710上の複数の発光部738を有し、例えば4チャネルに対応している。発光部738にはメサストライプ構造712がある。発光部738には、半導体基板710に接する共通電極728と、メサストライプ構造712に接する個別電極726が配置されている。発光部738は、共通電極728および個別電極726の重複領域で定義される。電気信号が入力されることで、メサストライプ構造712に含まれる活性層716が発光する。
【0075】
個別電極726は、メサストライプ構造712より幅広で第1方向D1に延びる領域と、第2方向D2にメサストライプ構造712の隣に配置された領域と、その間をつなぐ領域を含む。4つの個別電極726の面積はすべて同じであり、かつ形状も同一である。
【0076】
メサストライプ構造712は、半導体アレイ素子700の両端面に至るように延伸している。複数のメサストライプ構造712は幅において同一である。メサストライプ構造712は、第1導電型の半導体基板710上の半導体多層により構成されている。半導体多層は、半導体基板710から、第1導電型の光閉じ込め層758、活性層716、第2導電型の光閉じ込め層760、第2導電型のクラッド層720、そして第2導電型のコンタクト層722で構成されている。
【0077】
半導体基板710は、n型のInPである。光閉じ込め層758、活性層716,光閉じ込め層760は、InGaAlAsまたはInGaAsPである。活性層716は、アンドープの多重量子井戸層である。クラッド層720は、p型のInPである。コンタクト層722は、p型のInGaAsである。半導体基板710と光閉じ込め層758との間にバッファ層を配置してもよい。光閉じ込め層760とクラッド層720の間に回折格子層を配置してもよい。なお、ここで挙げた材料は一例に過ぎない。
【0078】
半導体アレイ素子700の表面には、絶縁膜のパッシベーション膜725が形成されている。パッシベーション膜725は、メサストライプ構造712の上面を除いて配置されている。パッシベーション膜725は、例えば酸化シリコン膜や窒化シリコン膜である。
【0079】
本実施形態でも、内側の発光部738Aは、最も外側の発光部738Bよりも熱の影響が大きい。そこで、1つの発光部738のみに隣接する発光部738Bの第2電極728Bが、面積(幅)において、一対の発光部738に挟まれる発光部738Aの第1電極728Aよりも小さくなっている。これにより、複数の発光部738の動作温度の差を低減し、特性差を低減することができる。なお、他の実施形態を組み合わせても同様の効果が得られる。
【0080】
第2電極728Bが面積(幅)において第1電極728Aより小さくなるのであれば、両者の第1方向D1の長さは、同一であってもよいし異なっていてもよい。第1電極728Aおよび第2電極728Bは、いずれも半導体基板710に導通する。一方、メサストライプ構造712に接続される複数の個別電極726の面積は、特性に強く影響を与えるので同じである。
【0081】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態を説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【0082】
[実施形態の概要]
(1)半導体基板10と、第1方向D1にそれぞれが延び、前記第1方向D1に直交する第2方向D2に隣り合って等間隔で並び、前記半導体基板10に電気的に接続する活性層16をそれぞれが有する複数のメサストライプ構造12と、前記第2方向D2に隣り合って並び、前記複数のメサストライプ構造の対応する1つの前記活性層16にそれぞれが電気的に接続する複数の個別電極26と、前記第2方向D2に隣り合って並び、前記半導体基板10にそれぞれが電気的に接続する複数の共通電極28と、を有し、前記複数のメサストライプ構造12は、第1メサストライプ構造12Aと、前記第1メサストライプ構造12Aを挟む一対の第2メサストライプ構造12Bと、を含み、前記複数の共通電極28は、第1電極28Aと、前記第1電極28Aを挟む一対の第2電極28Bと、を含み、前記第1電極28Aは、前記複数のメサストライプ構造の中で、前記第1メサストライプ構造12Aに最も近く、前記一対の第2電極28Bのそれぞれは、前記複数のメサストライプ構造の中で、前記一対の第2メサストライプ構造12Bの対応する1つに最も近く、前記一対の第2電極28Bのそれぞれは、面積において、前記第1電極28Aよりも小さい半導体アレイ素子100。
【0083】
第2電極28Bが面積において第1電極28Aよりも小さいので、熱に起因する特性差を小さくすることができる。いずれも複数の共通電極28に含まれるので、熱以外の要因による特性のばらつきを引き起こさない。
【0084】
(2)(1)に記載された半導体アレイ素子100であって、前記一対の第2電極28Bのそれぞれは、前記第1方向D1の長さにおいて、前記第1電極28Aと同じであり、前記一対の第2電極28Bのそれぞれは、前記第2方向D2の幅において、前記第1電極28Aよりも小さい半導体アレイ素子100。
【0085】
(3)(1)又は(2)に記載された半導体アレイ素子100であって、前記複数の個別電極26は、面積において相互に等しい半導体アレイ素子100。
【0086】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載された半導体アレイ素子400であって、前記第1メサストライプ構造412Aは、複数の第1メサストライプ構造412Aであり、前記第1電極428Aは、1つの第1電極428Aであり、前記1つの第1電極428Aは、前記複数の第1メサストライプ構造412Aと同じ個数で均等な大きさの複数の部分440を有し、前記一対の第2電極428Bのそれぞれは、面積において、前記複数の部分440のそれぞれよりも小さい半導体アレイ素子400。
【0087】
(5)(1)から(3)のいずれか1項に記載された半導体アレイ素子100であって、前記第1メサストライプ構造12Aは、複数の第1メサストライプ構造12Aであり、前記第1電極28Aは、分離された複数の第1電極28Aである半導体アレイ素子100。
【0088】
(6)(5)に記載された半導体アレイ素子100であって、前記複数の第1電極28Aは、面積において相互に等しい半導体アレイ素子100。
【0089】
(7)(5)に記載された半導体アレイ素子300であって、前記複数の第1電極328Aは、前記一対の第2電極328Bのいずれかに近いほど、面積において小さい半導体アレイ素子300。
【0090】
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載された半導体アレイ素子100であって、前記複数のメサストライプ構造12は、前記半導体基板10の上面にあり、前記複数の共通電極28は、前記半導体基板10の下面にあり、前記第1電極28Aは、前記第1メサストライプ構造12Aに重なり、前記一対の第2電極28Bのそれぞれは、前記一対の第2メサストライプ構造12Bの近い方の1つに重なる半導体アレイ素子100。
【0091】
(9)(1)から(7)のいずれか1項に記載された半導体アレイ素子600であって、前記複数のメサストライプ構造612は、前記半導体基板610の上面にあり、前記複数の共通電極628は、前記半導体基板610の前記上面に接触し、前記第1電極628Aは、前記第1メサストライプ構造612Aに隣り合い、前記一対の第2電極628Bのそれぞれは、前記一対の第2メサストライプ構造612Bの近い方の1つの隣にある半導体アレイ素子600。
【0092】
(10)(9)に記載された半導体アレイ素子600であって、前記複数の共通電極628のそれぞれは、前記半導体基板610の前記上面から上方に屈曲し、前記上面に接触する最下部642と、前記下端部よりも高い位置にある最上部644と、を含み、前記一対の第2電極628Bのそれぞれの前記最上部644は、面積において、前記第1電極628Aの前記最上部644よりも小さい半導体アレイ素子600。
【0093】
(11)(1)から(10)のいずれか1項に記載された半導体アレイ素子700であって、前記複数のメサストライプ構造712のそれぞれを両側で埋め込む埋め込み層756をさらに有する半導体アレイ素子700。
【0094】
(12)(1)から(11)のいずれか1項に記載された半導体アレイ素子500であって、前記複数のメサストライプ構造512は、前記第1メサストライプ構造512Aおよび前記一対の第2メサストライプ構造512Bを挟む一対の第3メサストライプ構造512Cをさらに含み、前記複数の共通電極528は、前記第1電極528Aおよび前記一対の第2電極528Bを挟む一対の第3電極528Cをさらに含み、前記一対の第3電極528Cは、面積において、前記一対の第2電極528B以上である半導体アレイ素子500。
【0095】
(13)(1)から(12)のいずれか1項に記載された半導体アレイ素子100と、前記半導体アレイ素子100が搭載されるサブマウント30と、を有し、前記サブマウント30は、複数の個別端子32および複数の共通端子36を有し、前記複数の個別端子32のそれぞれは、前記複数の個別電極26の対応する1つに電気的に接続され、前記複数の共通端子36のそれぞれは、前記複数の共通電極28の対応する1つに電気的に接続される半導体光装置。
【0096】
(14)(13)に記載された半導体光装置であって、前記複数の共通端子36は、前記第1電極28Aに対向して接合される第1端子36Aと、前記一対の第2電極28Bにそれぞれ対向して接合される一対の第2端子36Bと、を含み、前記一対の第2端子36Bのそれぞれは、面積において、前記第1端子36Aよりも小さい半導体光装置。
【0097】
(15)(14)に記載された半導体光装置であって、前記一対の第2端子36Bのそれぞれは、前記共通電極28の対応する前記1つとの接合面積において、前記第1端子36Aよりも小さい半導体光装置。
【0098】
(16)(13)から(15)のいずれか1項に記載された半導体光装置であって、前記複数の個別端子32のそれぞれと前記複数の個別電極26の前記対応する1つを電気的に接続するワイヤ34をさらに有し、前記複数の共通端子36のそれぞれと前記複数の共通電極28の前記対応する1つは、対向して電気的に接続される半導体光装置。
【0099】
(17)(13)から(15)のいずれか1項に記載された半導体光装置であって、前記複数の個別端子632のそれぞれと前記複数の個別電極626の前記対応する1つは、対向して電気的に接続され、前記複数の共通端子636のそれぞれと前記複数の共通電極628の前記対応する1つは、対向して電気的に接続される半導体光装置。
【0100】
(18)(13)から(15)のいずれか1項に記載された半導体光装置であって、前記複数のメサストライプ構造512は、前記第1メサストライプ構造512Aおよび前記一対の第2メサストライプ構造512Bを挟む一対の第3メサストライプ構造512Cをさらに含み、前記複数の共通電極528は、前記第1電極528Aおよび前記一対の第2電極528Bを挟む一対の第3電極528Cをさらに含み、前記一対の第3電極528Cのそれぞれは、面積において、前記一対の第2電極528Bのいずれよりも大きく、前記複数の個別端子532は、前記一対の第3メサストライプ構造512Cの前記活性層516には電気的に接続されない半導体光装置。
【0101】
(19)(18)に記載された半導体光装置であって、前記複数の共通端子536は、前記第1電極528Aに対向して接合される第1端子536Aと、前記一対の第2電極528Bにそれぞれ対向して接合される一対の第2端子536Bと、前記一対の第3電極528Cに対向して接合される第3端子536Cと、を含む半導体光装置。
【符号の説明】
【0102】
10 半導体基板、12 メサストライプ構造、12A 第1メサストライプ構造、12B 第2メサストライプ構造、14 バッファ層、16 活性層、18 メサエッチング停止層、20 クラッド層、22 コンタクト層、24 分離溝、25 パッシベーション膜、26 個別電極、28 共通電極、28A 第1電極、28B 第2電極、30 サブマウント、32 個別端子、34 ワイヤ、36 共通端子、36A 第1端子、36B 第2端子、38 発光部、38A 発光部、38B 発光部、100 半導体アレイ素子、200 半導体アレイ素子、226 個別電極、228 共通電極、228A 第1電極、228B 第2電極、238 発光部、300 半導体アレイ素子、312 メサストライプ構造、316 活性層、328 共通電極、328A 第1電極、328B 第2電極、338 発光部、400 半導体アレイ素子、412A 第1メサストライプ構造、428A 第1電極、428B 第2電極、438 発光部、440 部分、500 半導体アレイ素子、512 メサストライプ構造、512A 第1メサストライプ構造、512B 第2メサストライプ構造、512C 第3メサストライプ構造、516 活性層、528 共通電極、528A 第1電極、528B 第2電極、528C 第3電極、530 サブマウント、532 個別端子、534 ワイヤ、536 共通端子、536A 第1端子、536B 第2端子、536C 第3端子、600 半導体アレイ素子、610 半導体基板、612 メサストライプ構造、612A 第1メサストライプ構造、612B 第2メサストライプ構造、614 バッファ層、616 活性層、618 メサエッチング停止層、620 クラッド層、622 コンタクト層、624 分離溝、625 パッシベーション膜、626 個別電極、628 共通電極、628A 第1電極、628B 第2電極、630 サブマウント、632 個別端子、636 共通端子、638 発光部、638A 発光部、638B 発光部、642 最下部、644 最上部、646 スペーサ、646A 第1スペーサ、646B 第2スペーサ、648 個別スペーサ、650 基板、652 接触領域、654 非接触領域、700 半導体アレイ素子、710 半導体基板、712 メサストライプ構造、716 活性層、720 クラッド層、722 コンタクト層、725 パッシベーション膜、726 個別電極、728 共通電極、728A 第1電極、728B 第2電極、738 発光部、738A 発光部、738B 発光部、756 埋め込み層、758 光閉じ込め層、760 光閉じ込め層、D1 第1方向、D2 第2方向、P ピッチ、W 幅。