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特開2024-149328冷却パン生地を用いたパンの製造システム
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  • 特開-冷却パン生地を用いたパンの製造システム 図1A
  • 特開-冷却パン生地を用いたパンの製造システム 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149328
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】冷却パン生地を用いたパンの製造システム
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/00 20170101AFI20241010BHJP
   A21D 8/02 20060101ALI20241010BHJP
   A21D 6/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A21D13/00
A21D8/02
A21D6/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116188
(22)【出願日】2023-07-14
(62)【分割の表示】P 2023062809の分割
【原出願日】2023-04-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】503067502
【氏名又は名称】株式会社福盛ドゥ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福盛 幸一
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB02
4B032DB03
4B032DG02
4B032DG15
4B032DK03
4B032DK11
4B032DK12
4B032DK31
4B032DK45
4B032DK51
4B032DK70
4B032DL20
4B032DP08
4B032DP19
4B032DP25
4B032DP33
4B032DP37
4B032DP40
4B032DP80
(57)【要約】
【課題】焼成後のスライス面の気泡のきめ細かさ、ばらつきの少ない均一性、食感、風味を改善できる冷却パン生地用いたパンの製造システムを提供する。
【解決手段】製造システムは、パン生地を所定の量に分割する分割工程で得られた分割パン生地を急速冷却手段で分割パン生地の中心部温度が10℃以下になるまで急速冷却する。次いで、急速冷却した冷却分割パン生地を、-6℃から5℃の温度範囲の冷凍・冷蔵手段で冷却分割パン生地を保存する。保存した後の冷却分割パン生地をパン生地の中心部温度が8℃~10℃になるまで温度制御し、次いでパン生地を成型した後で、多段式ホイロ発酵手段で、少なくとも3段階の温度および期間を設定してホイロ発酵を行い、次いで焼成手段で多段式ホイロ発酵手段で発酵されたパン生地を焼成する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却パン生地を用いた、フランスパン用、ハード系パン用または食パン用のパンの製造システムであって、
本捏ね工程の後のパン生地あるいは本捏ねおよび一次発酵工程後のパン生地を所定の量に分割する分割工程で得られた分割パン生地を、-30℃で、分割パン生地の中心部温度が-5℃以上10℃以下になるまで15分から50分で急速冷却する急速冷却手段と、
前記急速冷却手段で急速冷却された冷却分割パン生地を、-6℃から5℃の温度範囲で、冷却分割パン生地を10時間以上30日以内で保存する冷却分割パン生地の保存手段と、
前記保存した後の前記冷却分割パン生地をパン生地の中心部温度が8℃~10℃になるまで温度制御し、次いでパン生地を成型した後で、少なくとも3段階の温度および期間を設定してホイロ発酵を行う多段式ホイロ発酵手段と、
前記多段式ホイロ発酵手段で発酵されたパン生地を焼成する焼成手段と、
を備える、
パンの製造システム。
【請求項2】
多段式ホイロ発酵手段は、前記成型した後のパンを常温状態から-2℃以上5℃以下の範囲に低下させる第一段階と、その温度を超える段階的な温度におけるホイロ発酵を行う、請求項1に記載のパンの製造システム。
【請求項3】
前記パン生地組成物は、
前処理種分の一種として、0.25~0.55質量%の酵母と、
前処理種分の一種として、0.15~0.45質量%のモルトと、
を含む、
請求項1に記載のパンの製造システム。
【請求項4】
前記パン生地組成物は、
前処理種分の一種として、1.0~1.5質量%の酵母と、
前処理種分の一種として、0.5~0.7質量%のモルトと、
を含む、
請求項1に記載のパンの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却パン生地を用いたパンの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、長期保存に耐える製パン用冷凍生地の製造方法を開示している。この方法は、中種を作り、0℃から10℃で4-24時間発酵させた後、本捏配合物を加えて本捏する工程を有する。別の方法としては、中種を作り、0℃から10℃で4-24時間発酵させた後、本捏配合物を加えて本捏し、完全に凍結(例えば、-20℃)させた後、冷凍生地保護剤粉末(小麦粉、コーンフラワー、デンプン、グリセリン脂肪酸エステル、アスコルビン酸)をこの凍結生地に表面に付着させ、再度、冷凍保存する工程を有する。特許文献1では、イーストの冷凍耐性が弱い点、グルテン蛋白が凍結によって変性する点が課題であった。0℃より低温では発酵が十分に進まず、10℃より高温では発酵が進みすぎる点、4時間未満では発酵が十分に進まず、24時間を超えると発酵が進みすぎる点も記載されている。中種配合物をミキサーで混捏し、乾燥を防止した状態で10℃の冷蔵庫中で10時間発酵させる。中種に本ごね配合物を加え、十分グルテンがディベロップするまでミキシングし20℃の生地を作り、分割(分割重量230g)、丸めた後、生地温度が-20℃で凍結保存した。この生地を一旦室温で1時間解凍した後、30℃、80%のホイロで最後発酵後常法により焼成して白パンを製造した。12週間貯蔵後も焼成できた。
【0003】
特許文献2は、湯種生地と中種生地を別々に作成し、パン生地を本捏ね工程で作成するパン生地の製造方法である。
【0004】
特許文献3は、ストレート法でのもっちりとした弾力のある食感を有し、常温保存下あるいは冷蔵保存下における老化耐性を有する、中種法によるパン類を製造する方法である。製造方法は、小麦粉、生イースト又はインスタントドライイースト、並びに水分を含有する液体材料を含む材料を混捏し、中種生地を調製する混捏工程、及び前記中種生地を発酵させ、中種を調製する発酵工程を含む。水分の添加量(すなわち、加水量)が、小麦粉100質量部に対して45~54質量部であり、生イーストを配合する場合の添加量が、小麦粉100質量部に対して0.2~4.3質量部であり、インスタントドライイーストを配合する場合の添加量が、小麦粉100質量部に対して0.07~1.5質量部であり、中種の膨倍率が、120~300%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-59859号公報
【特許文献2】特許第6807187号
【特許文献3】特許2022-50138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、従来において、焼き上がりのパンを完全に冷凍し、冷凍パンとして販売したり、解凍して販売することが行われている。本開示は、焼き上がりのパンを完全に冷凍する冷凍パンとは異な製法である。
しかしながら、従来の方法とは別の方法で、焼成後のスライス面の気泡のきめ細かさ、ばらつきの少ない均一性、食感、風味を改善することが要望されている。
また、中種法による冷凍保存期間よりも柔軟に、本捏ねして分割後からホイロ(最終発酵)完了までの(焼成する前段階まで)の期間をコントロールすることが要望されている。
【0007】
本開示は、焼成後のスライス面の気泡のきめ細かさ、ばらつきの少ない均一性、食感、風味を改善できる冷却パン生地を用いたパンの製造システムを提供する。
また、本捏ねして分割後からホイロ(最終発酵)完了までの(焼成する前段階まで)の期間(例えば、12時間から72時間)をコントロールできる、冷却パン生地を用いたパンの製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の冷却パン生地あるいはパン生地組成物は、例えば、フランスパンあるいはハード系パン、食パンなどに適用される。
第一実施例の冷却パン生地あるいはパン生地組成物は、
前処理種分の一種として、0.25~0.55質量%の酵母(例えば、パン酵母、イースト)と、
前処理種分の一種として、0.15~0.45質量%のモルト(発芽させた大麦)と、
前処理種分の一種として、1~3質量%の35℃~42℃の水と、
本捏ね成分の一種として、小麦粉と、
本捏ね成分の一種として、食塩と、
本捏ね成分の一種として、製パン安定剤と、
本捏ね成分の一種として、水と、
を有し、
全配合量が170質量%に対し、前記小麦粉が99~101質量%、前記前処理種分が2.4~3.0質量%、前記食塩が1.8~2.4質量%、前記製パン安定剤が0.07~0.13質量%、前記水が67.7~68.3質量%であってもよい。
「イースト」は、例えば、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイースト、普通用イースト、冷凍用イーストなどが挙げられる。冷凍用イーストを使用することで、<5℃までイースト菌の働きを制限することができ(つまり、5℃未満で長期保存が可能となる)、普通用イーストを使用することで<0℃までイースト菌の動きを制限できる(つまり、0℃未満で保存が可能となる)。
「小麦粉」は、例えば、強力粉、準強力粉(リスドオル(日清製粉製))、中力粉、薄力粉などが挙げられる。
「製パン安定剤」は、例えば、乳化剤、ビタミンC、BBJ(ルサッフル製)などが挙げられる。
「水」は、例えば、純水、精製水、水道水、天然水、アルカリイオン水などが挙げられる。
【0009】
第二実施例の冷却パン生地あるいはパン生地組成物は、
前処理種分の一種として、1.0~1.5質量%の酵母と、
前処理種分の一種として、0.5~0.7質量%のモルトと、
前処理種分の一種として、5~7質量%の35℃~42℃の水と、
本捏ね成分の一種として、小麦粉と、
本捏ね成分の一種として、食塩と、
本捏ね成分の一種として、製パン安定剤と、
本捏ね成分の一種として、コーンフラワーと、
本捏ね成分の一種として、胚芽と、
本捏ね成分の一種として、水と、
を有し、
全配合量が175.5質量%に対し、前記小麦粉が99~101質量%に対し、前記前処理種分が7.6~8.0質量%、前記食塩が2.0~2.4質量%、前記製パン安定剤が0.15~0.25質量%、前記コーンフラワーが0.15~0.25質量%、前記胚芽が0.05~0.15質量%、前記水が64.0~66.0質量%であってもよい。
【0010】
第三実施例の冷却パン生地あるいはパン生地組成物は、
第一、第二実施例の組成物に、さらに、
糖(砂糖、上白糖)、甘味料(例えば、トレハロース)、液糖(糖分50%)、ベーカリークリーム、加糖練乳、果汁酵素、バターの内1種以上が配合されていてもよい。
【0011】
第一、二、三実施例の冷却パン生地あるいはパン生地組成物は、
前記小麦粉の配合分の内で、薄力粉および/または小麦胚芽が含まれていてもよい。
【0012】
強力粉は硬質小麦、薄力粉は軟質小麦を有する。
小麦粉は、グルテニンとグリアジン(タンパク質)有する。
グルテニンやグリアジンが多く含まれている(=タンパク含有量の多い)小麦の方が、よくふくらむキメの細かいソフトなパンになり、少ないと、パリッとした食感ともちっとした食感を合わせ持つハード系のパンになる。
【0013】
本開示の焼成前の冷却パン生地の製造方法は、
前処理種分(酵母とモルトと水)を予備捏ねする前処理工程と、
前記前処理工程で得られた前処理種分を所定期間(例えば、24℃で10分から20分)、予備発酵する予備発酵工程と、
前記前処理種分と、少なくとも小麦粉と食塩(および製パン安定剤)とを含む本捏ね成分と、水とを本捏ね(例えば、24℃でL6M4=低速6分中速4分混捏する、L6M6)する本捏ね工程と、
前記本捏ね工程で得られた生地(あるいは本捏ね工程後で一次発酵工程後の生地)を所定の量に分割する分割工程と、
前記分割工程で得られた分割パン生地(必要に応じで容器に収納した状態の分割パン生地)を、-30℃から-20℃の温度範囲(好ましくは一定冷却温度)の急速冷却手段で、分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が10℃以下(上限は好ましくは6℃以下、より好ましくは5℃以下、下限は-5℃以上、-3℃以上、-1℃以上、0℃以上になるまで)で急速冷却(例えば、15分から50分で急速冷却)する急速冷却工程と、
前記急速冷却工程で得られた冷却分割パン生地(必要に応じで容器に収納した状態の冷却分割パン生地)を、-6℃から5℃の温度範囲(好ましくは一定温度、パーシャル温度(-1℃から-3℃))の冷凍・冷蔵手段で、冷却分割パン生地を所定期間(例えば、12時間以上~30日以内)保存する冷却分割パン生地保存工程と、
を含んでいてもよい。
【0014】
前記急速冷却工程において、分割パン生地の中心部温度は、接触式のデジタル温度計などで測定されてもよい。過去データによって中心部温度が所定温度(例えば5℃以下-1℃以上になる冷却にかかる時間を設定し、冷却時間を設定してもよい。
分割パン生地を、仮にゆっくり冷却するとイーストの作用により不均一な気泡やなし肌を生じる原因になるので好ましくない。本開示の急速冷却工程では、分割パン生地を急速冷却することでイーストの作用を極力抑えることができ、冷却分割パン生地保存工程へ移行できる。一方で、分割パン生地の中心部までパン生地を完全に凍結(固く冷凍された状態)すると、パン生地の解凍に時間が掛かかる。本開示の急速冷却工程では、パン生地の中心部まで凍結することなく、パン生地を手で押して弾力感を残している。冷却分割パン生地での保存期間に応じて、イーストの作用を少なくすることが好ましい。1日から15日程度の保存期間であれば、普通用イーストを使用して、急速冷却工程で、パン生地の中心部温度を5℃以下3℃以上、好ましくは5℃にして、15日以上の保存期間(例えば20~30日)であれば、冷凍用イーストを使用して、急速冷却工程でパン生地の中心部温度を2℃以下-1℃以上、好ましくは0℃にしてもよい。
2以上の分割パン生地のすべての中心温度を測定してもよく、予め設定された測定サンプル数(1つ以上5つ以下など)に対応して測定してもよい。
【0015】
前記本捏ね工程と分割工程の間に、前記本捏ね工程で得られた生地を所定期間(例えば、24℃で10分から20分)、一次発酵する一次発酵工程を含んでいてもよい。一次発酵工程において一次発酵中にパンチ工程を含んでいてもよい。
冷却分割パン生地保存工程は、パーシャル温度(-1℃から-3℃)で少なくとも10時間以上、好ましくは12時間以上で、イーストの働きを制限しつつ酵素によって、パン生地をゆっくりと熟成させ、旨味を向上させることが好ましい。
【0016】
他の冷却パン生地の製造方法は、
分割工程前の工程として、
全成分を仮捏ねする仮捏ね工程と、
仮捏ねした生地を所定期間(例えば、12時間から72時間)保存する冷蔵(チルド温度)保存するチルド保存工程と、
前記チルド保存工程で保存されていた仮捏ね生地を本捏ねする本捏ね工程と、
を含んでいてもよく、
分割工程は、前記本捏ね工程で得られた生地(あるいは本捏ね工程後で一次発酵工程後の生地)を所定の量に分割してもよい。
仮捏ね工程の後で保存工程はなく、本捏ね工程を行ってもよい。
前記本捏ね工程と分割工程の間に、前記本捏ね工程で得られた生地を所定期間(例えば、24℃で10分から20分)、一次発酵する一次発酵工程を含んでいてもよい。一次発酵工程において一次発酵中にパンチ工程を含んでいてもよい。
【0017】
本開示の冷却パン生地を用いるパン製造方法は、
前記冷却パン生地の製造方法で得られた冷却分割パン生地(冷却分割パン生地保存工程で保存されていたパン生地)を、常温常湿下(例えば、15℃~25℃、相対湿度45~80%)で、パン生地の中心部温度が所定温度(例えば、8℃~10℃)になるまで温度制御する常温戻し工程と、
前記常温戻し工程で得られたパン生地を成型する成型工程と、
前記成型工程の後で、少なくとも3段階の温度および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う多段式ホイロ発酵工程(例えば、-2℃から38℃の間で3ステップ以上での発酵工程)と、
前記多段式ホイロ発酵工程で得られたパン生地(必要に応じで容器に収納した状態のパン生地)を、焼成する焼成工程と、
を含んでいてもよい。
【0018】
前記常温戻し工程において、パン生地の中心部温度は、接触式のデジタル温度計などで測定されてもよい。過去データによって中心部温度が所定温度(例えば8℃以上10℃以下になるまでの時間を設定し、戻し時間を設定してもよい。常温戻し工程は、例えば、30分から60分あるいは40分から55分でパン生地の中心部温度が所定温度になるようにすることが好ましい。
2以上の分割パン生地のすべての中心温度を測定してもよく、予め設定された測定サンプル数(1つ以上5つ以下など)に対応して測定してもよい。
【0019】
前記多段式ホイロ発酵工程は、
焼成工程を開始する時刻から逆算して少なくとも3時間以上の期間を要していてもよい。
第一段階において、-2℃以上5℃以下の範囲で2時間から12時間、
第二段階において、6℃以上15℃以下の範囲で0.5時間から2時間、
第三段階において、16℃以上から25℃以下の範囲で0.5時間から2時間、
第四段階において、26℃以上から35℃以下の範囲で0.5時間から2時間、
を含んでいてもよい。
前記段階的ホイロ発酵工程は、第三段階の替わりに、あるいは追加で、
第五段階において、37℃~38℃で0.5時間から2時間を含んでいてもよい。
前記段階的ホイロ発酵工程は、
焼成工程を開始する時刻から逆算して少なくとも10時間、11時間、12時間、13時間、14時間または15時間以上の期間を要していてもよい。
【0020】
他の開示の冷却パン生地を用いるパン製造方法は、
前記冷却パン生地の製造方法で得られた冷却分割パン生地(冷却分割パン生地保存工程で保存されていたパン生地)を、常温常湿下(例えば、15℃~25℃、相対湿度45~80%)で、パン生地の中心部温度が所定温度(例えば、8℃~10℃)になるまで温度制御する常温戻し工程と、
前記常温戻し工程で得られたパン生地を成型する成型工程と、
前記成型工程の後で、ホイロ発酵(最終発酵)を行うホイロ発酵工程(例えば、30℃または38℃での発酵工程)と、
前記ホイロ発酵工程で得られたパン生地(必要に応じで容器に収納した状態のパン生地)を、焼成する焼成工程と、
を含んでいてもよい。
【0021】
(作用効果)
(1)焼成後のスライス面の気泡のきめ細かさ、ばらつきの少ない均一性、食感、風味を改善できる。
急速冷却によりイースト作用を抑制させ、かつパーシャル温度でのゆっくり発酵とイースト効果の抑制により、常温戻し工程の後のホイロ発酵した焼成、または、3ステップ以上の多段式温度での発酵コントロールした焼成でも同様の効果を発揮する。
(2)本捏ねして分割後からホイロ(最終発酵)完了までの(焼成する前段階まで)の期間をコントロールできる。
(3)焼成工程のタイミングに合わせて、冷却分割パン生地を長期保存できるため、パン生地をまとめて作っておける。
(4)冷却パン生地をホイロ発酵させるまでの期間をコントロールできる。
(5)ホイロ発酵工程を3ステップ以上の多段式温度での発酵コントロールをできることで、焼成工程のタイミングを柔軟に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】実施形態1の製造工程を説明する図である。
図1B】別実施形態の製造工程を説明する図である。
図2】多段式ホイロ発酵工程(食パン)を説明する図である。
図3】多段式ホイロ発酵工程(フランスパン)を説明する図である。
図4A】実施例の食パンの断面図である。
図4B】比較例の食パンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。
【0024】
(実施形態1)
実施形態1では、ハードパンの一例としてフランスパンについて説明する。
フランスパンの配合組成物の一例を以下に示すが、これに制限されず、他の材料が配合されてもよい。
【表1】
【表2】
【0025】
図1Aにおいて実施形態1の製造工程を説明する。
冷却パン生地の製造方法は、以下の工程を含む。
(S1)前処理工程
酵母(ドライイースト)とモルトと水を予備捏ねする。予備捏ねは、手捏ねでもよく、ミキサーを用いて行ってもよい。
(S2)予備発酵工程
前処理工程で得られた前処理種分を所定期間(例えば、24℃で10分から20分)、予備発酵する。
【0026】
(S3)本捏ね工程
前処理配合分と、少なくとも強力粉(純強力粉を含む)と食塩と製パン安定剤とを含む本捏ね成分と、水とを本捏ねする。
例えば、ミキサーを用いて、24℃でL6M4(低速6分中速4分)、あるいはL6M6(低速6分中速6分)など本捏する。本捏ねする条件は、配合成分によっても異なる。ミキサーとともに、手捏ねをしてもよい。
【0027】
(S4)一次発酵工程
本捏ね工程で得られた生地を所定期間(例えば、24℃で10分から20分)、一次発酵する。
一次発酵工程において一次発酵中にパンチ工程を含む。
【0028】
(S5)分割工程
一次発酵工程後の生地を所定の量に分割する。分割する量は、最終のパンの形状、サイズによって決定される。
分割工程において、分割した後で、ベンチタイム(例えば、30分から2時間など)をとってもよい。分割した後で、最終のパンの形状、サイズに合わせて成型する成型工程を含んでいてもよい。分割したパン生地は、容器に収容してもよい。
【0029】
(S6)急速冷却工程
分割パン生地(あるいは容器に収納した状態の分割パン生地)を、-30℃から-20℃の温度範囲の急冷冷却手段(例えば、急速冷却装置、ブラストチラー)で、分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が-5℃以上6℃以下になるまで急速冷却(例えば、15分から50分で急速冷却)する。
冷却分割パン生地での保存期間に応じて、イースト菌の作用を少なくすることが好ましい。1日から15日程度の保存期間であれば、普通用イーストを使用して、急速冷却工程で、パン生地の中心部温度を5℃以下3℃以上にし、15日以上の保存期間(例えば20~30日)であれば、冷凍用イーストを使用して、急速冷却工程でパン生地の中心部温度を2℃以下-1℃以上にしてもよい。
【0030】
(S7)冷却分割パン生地保存工程
冷却分割パン生地(あるいは容器に収納した状態の冷却分割パン生地)を、冷凍・冷蔵手段(例えば、パーシャル温度機能の冷蔵庫)で、冷却分割パン生地をパーシャル温度(-1℃から-3℃))で所定期間(12時間以上~30日以内)保存する。
保存期間は、焼成工程のタイミングに対応して設定される。
【0031】
(S8)常温戻し工程
冷却分割パン生地保存工程で保存されていた冷却分割パン生地を、常温常湿下(例えば、15℃~25℃、相対湿度45~80%)で、パン生地の中心部温度が所定温度(例えば、8℃~10℃)になるまで温度制御する。室内あるいは恒温恒湿庫で実行されてもよい。常温戻し工程は、例えば、30分から50分である。
【0032】
(S9)成型工程
常温戻し工程で得られたパン生地を成型する。必要なパンの形状に成型する、あるいはパン生地を容器に収納する工程である。
一旦常温に戻すことで、パンの成型を行える。
【0033】
(S10)多段式ホイロ発酵工程
成型工程の後で、少なくとも3段階の温度および期間を設定してホイロ発酵(最終発酵)を行う。リターダーなどを用いて、チルド(0℃)の状態にしてから段階的に温度を上げて、ホイロ発酵をコントロールする工程である。
【0034】
図2に多段式ホイロ発酵工程(フランスパン)の一例を示す。
前日の17時に段階的ホイロ工程を開始でき、翌日の9時に焼成工程をする例を示す。
第一段階:0℃で12時間
第二段階:10℃で1時間(40分から120分)
第二段階:20℃で1時間(40分から120分)
第三段階:30℃で1時間(40分から120分)
【0035】
(S11)焼成工程
多段式ホイロ発酵工程で得られたパン生地(容器に収納した状態のパン生地)を、焼成する。例えば、オーブンで190℃~220℃で20分~30分で焼成する。
焼成の条件は、パンの種類に応じて設定される。
【0036】
(別実施形態)
図1Bに別実施形態の製造工程を説明する。
冷却パン生地の製造方法は、以下の工程を含む。
(S1)前処理工程、(S2)予備発酵工程、(S3)本捏ね工程、(S4)一次発酵工程、(S5)分割工程、(S6)急速冷却工程、(S7)冷却分割パン生地保存工程、(S8)常温戻し工程、(S9)成型工程、は実施形態1と同じ工程である。
【0037】
(S10-1)ホイロ発酵工程
成型工程の後で、ホイロ発酵(最終発酵)を行う。リターダーなどを用いて、ホイロ発酵を行う工程である。食パンの場合は、例えば、38℃で40から60分のホイロ発酵を行う。フランスパンの場合は、例えば、30℃で40から60分のホイロ発酵を行う。
(S11)焼成工程
ホイロ発酵工程で得られたパン生地(容器に収納した状態のパン生地)を、焼成する。例えば、オーブンで190℃~220℃で20分~30分で焼成する。
焼成の条件は、パンの種類に応じて設定される。
【0038】
図3において食パンの製造工程を説明する。
実施形態1との違いは、多段式ホイロ発酵工程(食パン)である。
【0039】
図3に多段式ホイロ発酵工程(食パン)の一例を示す。
前日の17時に段階的ホイロ工程を開始でき、翌日の9時に焼成工程をする例を示す。
第一段階:0℃で12時間
第二段階:10℃で1時間(40分から120分)
第二段階:20℃で1時間(40分から120分)
第三段階:30℃で1時間(40分から120分)
第四段階:38℃で1時間(40分から120分)
【0040】
(実施形態2)
実施形態2では、食パンの一例について説明する。
食パンの配合組成物の一例を以下に示すが、これに制限されず、他の材料が配合されてもよい。
【表3】
【0041】
上記の配合組成において以下の工程で食パンを作成した。
実施例1は、図3の製造工程において前処理工程はなく、本捏ね工程から行う。
(S3)本捏ね工程
表3に記載の全成分をミキサーで捏ねる。
(S4)一次発酵工程
本捏ね工程で得られた生地を所定期間(例えば、24℃で10分から20分)、一次発酵する。一次発酵工程において一次発酵中にパンチ工程を含む。
(S5)分割工程
一次発酵工程後の生地を所定の量に分割する。分割した後で、ベンチタイム(例えば、30分から2時間など)をとってもよい。
【0042】
(S6)急速冷却工程
分割パン生地を、-30℃で、急速冷却手段(例えば、急速冷却装置、ブラストチラー)で、分割パン生地の中心部(実質的に中心近傍箇所を含む)の温度が5℃になるまで急速冷却(例えば、30分から50分で急速冷却)する。
(S7)冷却分割パン生地保存工程
冷却分割パン生地を、-4℃で冷凍・冷蔵手段(例えば、パーシャル温度機能の冷蔵庫)で、冷却分割パン生地を所定期間(例えば、10日)保存する。
(S8)常温戻し工程
冷却分割パン生地保存工程で保存されていた冷却分割パン生地を、常温常湿下で、パン生地の中心部温度が所定温度(例えば、8℃~10℃)になるまで温度制御する。常温戻し工程は、例えば、30分から50分である。
(S9)
常温戻し工程で得られたパン生地を成型する。食パン容器に収納する。
【0043】
(S10)多段式ホイロ発酵工程(あるいはS10-1ホイロ発酵工程)
容器に収納したパン生地を、段階的にホイロ発酵(最終発酵)をする。
第一段階:0℃で12時間
第二段階:10℃で1時間
第二段階:20℃で1時間
第三段階:30℃で1時間
第四段階:38℃で1時間
【0044】
(S11)焼成工程
段階的ホイロ発酵工程(あるいはホイロ発酵工程)で得られたパン生地(成型容器に収納した状態のパン生地)を、焼成する。
【0045】
比較例1は、以下の工程で食パンを作成した。
表3に記載の全成分をミキサーで仮捏ねをする。
次いで、パン生地をチルド温度で12時間保存する。
翌日、本仕込として、パン生地を再度ミキサーで捏ねる。次いで、発酵させる。
その後に、焼成する。
【0046】
図4Aに実施例1の食パンのスライス断面を示し、図4Bに比較例1の食パンのスライス断面を示す。
実施例1では、空隙のサイズが細かく均一であり、ケービング(パンの側面または、上部がへこむ現象)がない。一方、比較例1では、空隙のサイズが大きいものが点在し、均一ではなく、ケービングがあった。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B