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特開2024-149357正極材料、電気化学装置及び電子機器
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  • 特開-正極材料、電気化学装置及び電子機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149357
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】正極材料、電気化学装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20241010BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241010BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241010BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241010BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M4/58
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207110
(22)【出願日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】202310374051.X
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】呉 冠宏
(72)【発明者】
【氏名】王 文旭
(72)【発明者】
【氏名】莫 方杰
(72)【発明者】
【氏名】王 雲輝
(72)【発明者】
【氏名】劉 胡▲ユン▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 文龍
(72)【発明者】
【氏名】孫 化雨
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA05
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CA30
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】正極材料、電気化学装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】正極材料は、第1の活物質と第2の活物質とを含む。第1の活物質は、リチウム遷移金属酸化物を含む。第2の活物質の一般式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)6/(2+a)-2である。式中、0.5≦a≦1であり、Mは、Ni、Co、Mn、Mg、Al、Ti、Zr、Nb、La、Sr、Wのうちの1つ又は複数から選択され、第2の活物質は、Xボルト(V)より高い対リチウム電位を有するときにMnOコーティング層を生成する。ここで、4.3≦X≦4.6である。本発明の正極材料は、電池に使用した場合、より高い高温サイクル安定性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の活物質と、第2の活物質と、を含む正極材料であって、
前記第1の活物質は、リチウム遷移金属酸化物を含み、
前記第2の活物質の一般式が、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)6/(2+a)-2であり、式中、0.5≦a≦1であり、Mは、Ni、Co、Mn、Mg、Al、Ti、Zr、Nb、La、Sr、Wのうちの1つ又は複数から選択され、
前記第2の活物質が、Xボルト(V)より高い対リチウム電位を有するときに、MnOコーティング層を生成し、ここで、4.3≦X≦4.6である、正極材料。
【請求項2】
前記正極材料が、下記(a)~(b)の条件のうちの1つ又は複数を満たす、請求項1に記載の正極材料。
(a)リチウム遷移金属酸化物は、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム(LCO)、リチウムリッチマンガン系材料、及びマンガンニッケル酸リチウムのうちの1つ又は複数を含む。
(b)前記第2の活物質の前記一般式が、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)-A6/(2+a)-22-2A/AMnOである。式中、0≦A≦0.05、0.5≦a≦1である。
【請求項3】
前記リチウム遷移金属酸化物が炭素コーティング層を含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
前記正極材料が、下記(c)~(e)の条件のうちの1つ又は複数を満たす、請求項1に記載の正極材料。
(c)前記第2の活物質の質量百分率が1%~30%であり、前記質量百分率は、第1の活物質と第2の活物質の合計質量に占める前記第2の活物質の質量の百分率である。
(d)前記MnOコーティング層のコーティング量が5%~30%であり、前記コーティング量の百分率は、前記第2の活物質の前記質量に対する前記MnOの質量の百分率である。
(e)前記MnOが非晶質形態である。
【請求項5】
前記正極材料は、第3の活物質を含み、前記第3の活物質の一般式はLi6-x1-y4-zであり、式中、0≦x≦5.95、0≦y≦1、0≦z≦2であり、Mは、Fe、Ni、Co、及びCuのうちの1つ又は複数から選択され、Nは、Al、Mn、Ti、及びSiのうちの1つ又は複数から選択される、請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
前記第2の活物質と前記第3の活物質との合計質量に対する質量百分率が1%~30%であり、前記質量百分率は、前記第1の活物質、前記第2の活物質及び前記第3の活物質の合計質量に対する、前記第2の活物質及び前記第3の活物質の合計質量の百分率であり、前記第2の活物質と前記第3の活物質との質量比は(2~20):1である、請求項5に記載の正極材料。
【請求項7】
前記第2の活物質の一次粒子径が40nm~600nmである、請求項1に記載の正極材料。
【請求項8】
正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備え、前記正極シートが請求項1~7のいずれか1項に記載の正極材料を含む電気化学装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気化学装置を含む電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極材料、電気化学装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の発展とモバイル機器の需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池の需要が急速に高まっている。これらの二次電池の中でも、エネルギー密度や電圧が高く、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商品化され、広く使用されている。
【0003】
しかし、リチウムイオン電池に使用される正極材料(マンガン酸リチウム(LiNi1.5Mn0.5)、三元系材料(NCM/NCA)、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウムなど)はすべて、高温サイクル性能が低いという欠点がある。例えば、40℃以上で使用すると、そのサイクル性能が著しく低下するため、リチウムイオン電池の使用は著しく制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術における正極材料の高温サイクル安定性が低いなどの課題を克服するために、正極材料、正極シート、電気化学装置及び電子機器が提供される。本発明の正極材料は電気化学装置に使用され、45℃での電気化学装置のサイクル性能を効果的に改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明が採用する技術的解決策は以下のとおりである。
第1の態様において、本発明は、第1の活物質と第2の活物質とを含む正極材料を提供する。
ここで、第1の活物質はリチウム遷移金属酸化物を含む。
ここで、第2の活物質の一般式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)6/(2+a)-2である。式中、0.5≦a≦1であり、Mは、Ni、Co、Mn、Mg、Al、Ti、Zr、Nb、La、Sr、Wのうちの1つ又は複数から選択され、第2の活物質は、Xボルト(V)より高い対リチウム電位を有するときに、MnOコーティング層を生成する。ここで、4.3≦X≦4.6である。
【0006】
第2の態様では、本発明は、上記正極材料を含む正極シートも提供する。
【0007】
第3の態様では、本発明は、正極シートを含む電気化学装置も提供する。
【0008】
第4の態様では、本発明は、上記電気化学装置を含む電子機器も提供する。
【0009】
当技術分野の常識に基づいて、上記の好ましい条件を任意に組み合わせて、本発明の好ましい例を得ることができる。
【0010】
本発明で使用される試薬及び原材料はすべて市販されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明による有利な効果は次のとおりである。
本発明の正極材料は、電気化学装置に用いられ、同じ第1の活物質のみを用いた溶液と比較して、その45℃サイクル容量維持率の改善率が1.1%以上であり、高温サイクル容量維持率が向上し、電池セル全体のサイクル性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1と比較例1の500サイクルのサイクル容量維持率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例とともに本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。以下の実施例において特に条件を明示していない実験方法については、慣用の方法及び条件、又は製品の説明書に従って選択される。
【0014】
正極材料
【0015】
本発明の第1の態様の正極材料は、第1の活物質と、第2の活物質と、を含み、第1の活物質は、リチウム遷移金属酸化物を含む。第2の活物質の一般化学式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)6/(2+a)-2である。式中、0.5≦a≦1であり、Mは、Ni、Co、Mn、Mg、Al、Ti、Zr、Nb、La、Sr、Wのうちの1つ又は複数から選択され、
ここで、第2の活物質は、Xボルト(V)より高い対リチウム電位を有するときに、MnOコーティング層を生成する。ここで、4.3≦X≦4.6である。
【0016】
本発明において、対リチウム電位は、リチウム金属を基準電極とし、そのリチウム金属を基準電極として試験することによって得られる作用電極の電位である。
【0017】
好ましくは、第1の活物質は、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)、ニッケルコバルトマンガン三元材料(NCM)、コバルト酸リチウム(LCO)、リチウムリッチマンガン系酸化物(LRMO)、ニッケルマンガン酸リチウム(LiNi0.5Mn1.5)のうちの1つ又は複数を含むことが好ましい。
【0018】
いくつかの特定の実施形態において、第1の活物質は、LiNi0.9Co0.06Mn0.04、LiCoO、LiNi1.5Mn0.5、LiMn0.6Fe0.4PO、LiFePO、及びLi1.1Ni0.4Mn0.6のうちの1つ又は複数であって良い。
【0019】
いくつかの特定の実施形態において、第1の活物質は、リン酸鉄リチウム及び/又はリン酸マンガン鉄リチウムを含み、リン酸鉄リチウム及び/又はリン酸マンガン鉄リチウムは、LiMn0.6Fe0.4PO/0.02C及び/又はLiFePO/0.013Cなどの炭素コーティング層を含む。
【0020】
本発明では、第2の活物質を導入することにより、第1の活物質の高温サイクル性能が向上する。
【0021】
好ましくは、第2の活物質の一般式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)-A6/(2+a)-22-2A/AMnOであって良い。ここで、0≦A≦0.05、0.5≦a≦1である。
【0022】
いくつかの特定の実施形態において、第2の活物質は、Li1.09Mn0.5Ni0.5、Li1.27Mn0.55Ni0.19、Li1.23Mn0.46Ni0.31及びLi1.2Mn0.4Ni0.4のうちの1つ又は複数であって良い。
【0023】
好ましくは、第2の活物質の質量百分率は1%~30%である。より好ましくは、5%~15%であり、百分率は、第1の活物質と第2の活物質の合計質量に占める第2の活物質の質量の百分率である。第2の活物質の質量百分率が高すぎると、正極シートのサイクル特性が低下する。質量百分率が低すぎると、サイクル性能を向上させる効果が顕著ではない。
【0024】
いくつかの特定の実施形態において、第2の活物質の質量百分率は0.9%、1%、5%、10%、15%、30%、又は31%であり、百分率は、第1の活物質と第2の活物質の合計質量に占める第2の活物質の質量の百分率である。
【0025】
好ましくは、MnOコーティング層は5%~30%であり、より好ましくは、10%~20%である。コーティング量の百分率は、第2の活物質の質量に占めるMnOの質量の百分率である。第2の活物質は、そのサイクル中の安定性を改善し、その界面副反応を低減し、電池コアのサイクル性能を改善するためにMnOコーティング層を有する。
【0026】
好ましくは、MnOは非晶質形態である。非晶質MnOは、第2の活物質中の貴金属の溶解を抑制し、正極材料のサイクル安定性を向上させることができる。
【0027】
好ましくは、第2の活物質の一次粒子径は40nm~600nmである。より好ましくは、100nm~200nmである。本発明の粒径範囲内では、第2の活物質の容量性能及びサイクル性能がより優れている。一次粒子径は当該技術分野における共通知識であり、一般に、単一の微結晶粒子の粒子径を指し、元の粒子径ともいう。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の活物質はLiFePOであり、第2の活物質はLi1.09Mn0.5Ni0.5であり、MnOコーティング層のコーティング量は10%~20%である。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の活物質はLi1.1Ni0.4Mn0.6であり、第2の活物質はLi1.09Mn0.5Ni0.5であり、MnOコーティング層のコーティング量は10%~20%である。
【0030】
いくつかの特定の実施形態において、正極材料は第3の活物質も含み、第3の活物質の一般式はLi6-x1-y4-zである。式中、0≦x≦5.95、0≦y≦1、0≦z≦2である。Mは、Fe、Ni、Co、及びCuのうちの1つ又は複数を含み、Nは、Al、Mn、Ti、及びSiのうちの1つ又は複数を含む。
【0031】
特に、第3の活物質は、LiFeO、LiCoO、LiNiO、及びLiNi0.5Cu0.5ののうちの1つ又は複数であることが好ましい。
【0032】
好ましくは、第2の活物質と第3の活物質との合計質量に対する質量百分率は1%~30%であり、百分率は、第1の活物質、第2の活物質及び第3の活物質の合計質量に対する第2の活物質及び第3の活物質の合計質量の百分率であり、第2の活物質と第3の活物質との質量比は(2~20):1である。
【0033】
いくつかの特定の実施形態において、第2の活物質と第3の活物質の質量比は、4:1、9:1、又は7:3である。
【0034】
いくつかの特定の実施形態では、第1の活物質、第2の活物質、及び第3の活物質の質量比は、90:8:2、90:9:1、又は90:7:3である。
【0035】
正極シート
【0036】
本発明の第2の態様で提供される正極シートは、正極材料を含む。
【0037】
正極シートは、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質層と、を含む。正極活物質層は、正極材料と、導電剤と、バインダーと、を含む。
【0038】
特に、正極集電体としては、電池内で化学変化を起こさず、導電性を有するものであれば特に限定されない。例えば、正極集電体としては、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成カーボン、又は、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたアルミニウム又はステンレス鋼などを採用することができるが、これらに限定されない。
【0039】
正極材料については上述したとおりであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0040】
特に、導電剤は、導電性を有し、電池内で化学変化を引き起こさない限り、実際の必要性に応じて選択することができる。例えば、具体的には、天然黒鉛又は人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、カーボンファイバー等の炭素系材料;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維;酸化亜鉛ウィスカー及びチタン酸カリウムウィスカーなどの導電性ウィスカー;二酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマーなどが用いられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いても良い。
【0041】
特に、バインダーは、正極活物質粒子間の密着性や、正極活物質と正極集電体間の密着性を向上させる役割を有する。その種類は特に限定されず、バインダーの具体例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、又はこれらの各種共重合体、及びこれらのいずれか1種又は2種以上の混合物であって良い。
【0042】
特に、導電剤、バインダー及び正極材料の質量比は、好ましくは、(95~98):(0.5~3):(1~3)であり、より好ましくは、97:1.5:1.5である。
【0043】
電気化学装置
【0044】
本発明の第3の態様は、上記正極シートを備える電気化学装置を提供する。
【0045】
本発明において、電気化学装置は、正極シートと、正極シートに対向して配置された負極シートと、正極シートと負極シートとの間に配置されたセパレータと、電解質とを含む電池であって良く、ここで、正極シートについては上述の通りである。また、電池は、必要に応じて、正極シート、負極シート、セパレータを収容する電池ケースと、電池ケースを封止する封止部材とを備えていても良い。
【0046】
この電池において、負極シートは、負極集電体と、負極集電体上に形成された負極活物質層と、を含む。負極活物質層は、負極活物質と、必要に応じて導電剤及びバインダーと、を含む。
【0047】
特に、負極活物質としては、可逆的にリチウムを吸蔵・放出可能な化合物を用いることができる。負極活物質の具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質カーボンなどの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金、Al合金などのリチウムと合金化可能な(半)金属状材料;SiOβ(0<β<2)、SnO、酸化バナジウム、又はリチウムバナジウム酸化物などのリチウムをドープ及び非ドープすることができる金属酸化物;Si‐C複合材料やSn‐C複合材料などの(半)金属状材料や炭素質材料を含む複合材料を含んで良く、これらを単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0048】
特に、導電剤は、電極の充放電性能を良好にするために使用される試薬である。天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト材料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック材、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末などの非金属粉末;アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;二酸化チタンなどの導電性金属酸化物又はポリフェニレン誘導体などから選択されて良い。
【0049】
特に、バインダーは、活物質と導電剤との結合、及び活物質と集電体の結合を促進する成分である。通常、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、各種コポリマーから選択されて良い。
【0050】
特に、負極集電体は、電極活物質を支持する基材として機能し、通常、厚さ3ミクロン~500ミクロンの金属箔である。導電性が高く、二次電池システム内で化学反応を起こさない材料であれば特に制限はない。例えば、材料は、ニッケル、チタン、アルミニウム、銀、ステンレス、カーボンなどを表面処理した箔材であって良い。負極集電体の表面は通常平滑であるが、正極活物質と集電体との密着性を向上させるために表面に細線等が形成されていても良い。負極集電体としては、箔材以外にも、フィルム、メッシュ、多孔質、発泡体、不織布等の種々の形態を単独又は組み合わせて使用しても良い。
【0051】
本発明において、セパレータは、正極シートと負極シートとの間に配置され、耐薬品性及び疎水性を有し、イオン透過性及び機械的強度が高い絶縁膜である。セパレータの一般的な厚さは9μm~18μmである。細孔径は5μm~300μmである。通気性は180秒/100mL~380秒/100mLである。気孔率は30%~50%である。セパレータとしては、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマーからなるシートや不織布が挙げられる。ガラス繊維又はポリエチレンを使用しても良い。
【0052】
本発明において、電解液は、通常、非水溶媒、リチウム塩、及び添加剤を含む。
【0053】
特に、非水溶媒は、当該技術分野における従来の非水溶媒であって良く、好ましくは、エステル溶媒であり、より好ましくは、カーボネート系溶媒である。特に、カーボネート系溶媒は、好ましくは、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、及びブチレンカーボネート(BC)のうちの1つ又は複数である。
【0054】
特に、リチウム塩の例としては、LiPF、LiBF、LiN(SOF)(LiFSIと略す)、LiClO、LiAsF、LiB(C(LiBOBと略す)、LiBF(C)(LiDFOBと略す)、LiN(SORF)、LiN(SOF)(SORF)のうちの少なくとも1つを含んで良い。好ましくは、電解液中の含有量は5%~20%である。
【0055】
特に、添加剤は、好ましくは、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、硫酸エチレン(DTD)、硫酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン(PS)、1-プロペン1,3-スルトン、及び1,4-ブタンスルトンのうちの1つ又は複数である。電解液中の添加剤の従来の使用量は、電解液の1%~4%であり、例えば2%である。
【0056】
本発明は電池の形状に特に制限はなく、円筒形、角形、又は他の形状であっても良い。
【0057】
電子機器
【0058】
本発明の電子機器は、第3の態様の電気化学装置を備える。
【0059】
例示的に、本発明の電子装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータ、ビデオレコーダ、ポータブルプリンタ/コピー機など)、電気自動車(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電動ゴルフカート、電気トラックなど)、電気機関車、船舶、人工衛星、エネルギー貯蔵システム、バックアップ電源などであって良いが、これらに限定されない。
【0060】
当技術分野の常識に基づいて、上記の好ましい条件を任意に組み合わせて、本発明の好ましい例を得ることができる。
【0061】
実施例1
【0062】
本実施形態は、85%のLiMn0.6Fe0.4PO/0.02C及び15%のLi1.09Mn0.5Ni0.5を含有するカソード材料を有する正極シートを提供する。同時に、正極シートは導電性カーボンブラック(スーパーP)を含有し、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と正極材料の質量比は1.5:1.5:97である。
【0063】
(1)正極シートの作製方法は、以下の工程を含む。
【0064】
まず、正極シート、スーパーP、PVDFを上記の割合で混合し、高速撹拌しながら窒素メチルピロリドン(NMP)を徐々に添加して、所定の粘度の正極スラリーを調製した。次に、調製したスラリーをアルミ箔上に均一に塗布し、120℃の送風乾燥オーブンで10分間乾燥させた。最後に、乾燥させた電極シートを圧延、切断して正極シートを作製した。
【0065】
(2) 電解液の調製:
【0066】
有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びポリカーボネート(PC)の混合物であり、ここで、EC、EMC、DMC及びPCの体積比は30:35:30:5であった。水分含有量が10ppm未満のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、十分に乾燥させたリチウム塩(LiPF)を有機溶媒に溶解し、均一に混合して、LiPFの濃度が1mol/Lの電解液を得た。
【0067】
(3)セパレータの作製:厚さ12μmのポリプロピレン製セパレータを使用した。
【0068】
(4)負極シートの作製:
負極活物質の黒鉛、導電剤のアセチレンブラック、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム、接着剤のスチレンブタジエンゴムを質量比97:1:1:1で混合した。脱イオン水を添加した後、真空ミキサーの作用下で負極スラリーを得た。負極スラリーを8μmの銅箔集電体上に均一に塗布した。室温で乾燥させた後、銅箔集電体をオーブンに移して乾燥させ、冷間プレスして切断して負極シートを得た。
【0069】
(5)電池の準備:
上記で作製した正極シート、セパレータ及び負極シートを、正極シートと負極シートとの間にセパレータが位置して絶縁の役割を果たすように、この順に積層した。次に、製品をアルミニウムプラスチックフィルムで包み、真空オーブンに移して120℃で乾燥させ、3.0g/Ahの電解液を注入して開口部を密封した。放置、熱間プレス、冷間プレス、4.5Vの化成、固定、グレーディングなどの工程を経て、最終的に容量1Ahのソフトパック電池(すなわち、リチウムイオン電池)を作製した。
【0070】
他の実施例及び比較例における正極シートの作製方法は実施例1と同様である。ここで、実施例2~23及び比較例1~8における調製パラメータの設定を表1に示す。実施例24~27における正極シートの作製パラメータ設定を表2に示す。
【0071】
効果に関する実施例
【0072】
容量維持率試験方法:所望の電圧範囲において、電圧範囲の最大値をリチウムイオン電池の充電電圧とし、その最小値を放電電圧とした。45℃において1C/1Cで充放電を行い、500サイクル目と1サイクル目の放電容量の比を容量維持率とした。
【表1】
【0073】
表1のデータから、同じ第1の活物質のみを使用する溶液と比較して、本発明の技術的解決策は、その45℃サイクル容量維持率の増加率が著しく高いことが分かる。
【0074】
実施例3と比較例1を比較すると、第1の活物質がLiNi0.9Co0.06Mn0.04であり、第2の活物質が添加されなかった場合、図1に示すように、45℃で500サイクル後の電池の容量維持率は86.5%に過ぎないが、第2の活物質が添加された場合、電池の45℃のサイクル容量維持率は88.4%に増加したことが分かる。
【0075】
実施例4と比較例2を比較すると、第1の活物質がLiCoOである場合、第2の活物質を添加しない電池の45℃サイクル容量維持率は84.8%に過ぎないが、第2の活物質が添加された場合、電池の45℃サイクル容量維持率は86.2%に向上したことが分かる。
【0076】
実施例5と比較例3を比較すると、第1の活物質がLiNi1.5Mn0.5の場合、第2の活物質を添加しない電池の45℃サイクル容量維持率は78.8%に過ぎないが、第2の活物質が添加された場合、電池の45℃サイクル容量維持率は81.9%に増加したことが分かる。実施例5の効果は大幅に向上したことが分かる。
【0077】
第1の活物質がLiMn0.6Fe0.4POであり、特定の第2の活物質及び他の条件と組み合わせた場合、電池の45℃サイクル容量維持率は常に89.9%以上であった。比較例4と比較すると、高温容量維持率はある程度向上した。実施例1と実施例6との比較は、LiMn0.6Fe0.4POを炭素コーティングすると、電池の高温容量維持率がより顕著に向上することを示している。実施例1の500サイクルの容量維持率は図1に示すとおりであり、それは93.1%に達し得る。これは、LiMn0.6Fe0.4POが炭素コーティングされていない場合、その表面は電解液に曝され、電解液との副反応が起こりやすく、活性リチウムが消費されてサイクル減衰が発生するためである。したがって、炭素コーティングはより優れたサイクル安定性を実現し得る。
【0078】
実施例7と比較例5を比較すると、第1の活物質がLiFePOである場合、第2の活物質を添加しない電池の45℃サイクル容量維持率は93.3%に過ぎないが、第2の活物質が添加された場合、電池の45℃サイクル容量維持率は94.3%に向上したことが分かる。
【0079】
実施例8と比較例6を比較すると、第1の活物質がLi1.1Ni0.4Mn0.6である場合、第2の活物質を添加しない電池の45℃サイクル容量維持率は86.5%に過ぎないが、第2の活物質が添加された場合、電池の45℃サイクル容量維持率が93.4%に増加したことが分かる。実施例8の効果は大幅に向上したことが分かる。
【0080】
同じ第1の活物質のみを使用する解決策と比較して、本発明の技術的解決策は、表2に示すように、45℃サイクル容量維持率の改善率を有した。改善率の計算式は、改善率=(実施例の容量維持率‐比較例の容量維持率)/比較例の容量維持率である。
【表2】
【0081】
表2のデータから、同じ第1の活物質のみを使用する溶液と比較して、本発明の技術的解決策の45℃サイクル容量維持率は1.1%以上増加し、いくつかの好ましい実施形態では、8%増加し得ることが分かる。第2の活物質に存在する特定の構造(不可逆相LiMnOなど)が第2の活物質を長いサイクルで活性化し、4.3V~4.4V未満の低電位ではリチウムがゆっくり放出される活性化現象が存在し、電池のサイクル安定性を向上させることができる。
【0082】
実施例9~実施例14から、第2の活物質の質量百分率が電池の高温サイクル安定性に一定の影響を与えたことが分かる。ある範囲内では、第2の活物質が増加するにつれて、電池の容量維持率が増加した。第2の活物質の質量百分率が15%の場合、容量維持率は93%となり得る。第2の活物質はリチウムを補給し、サイクル中の熱力学的損失を補う役割を演じた。しかしながら、第2の活物質の導入は、正極のインピーダンスの増加をもたらし、その結果、サイクル中の分極が増加し、その結果、サイクル中の運動損失が生じる。したがって、第2の活物質の割合が一定の範囲内であれば、サイクル性能が向上し得る。
【0083】
実施例16~20から、第2の活物質の一次粒子径も電池の高温容量維持率に影響を与えることが分かる。粒径が適切な範囲にあると、電池の容量維持率が向上し得る。第2の活物質の一次粒子径が大きすぎると、第2の活物質のインピーダンスが大きくなり、電気化学活性が弱く、リチウム補給効果が乏しくなった。一次粒子径が小さすぎると、第2の活物質の電気化学活性が強すぎた。リチウム補給効果は良好であったが、サイクル中の運動損失が大きくなった。したがって、第2の活物質の一次粒子径が一定の範囲内であれば、サイクル特性が向上し得る。
【0084】
実施例24~27では、正極材料に第3の活物質も含まれており、そのパラメータ設定とサイクル容量維持率の影響を表3に示す。
【表3】
【0085】
表3のデータから、正極材料が第3の活物質をも含む場合、45℃サイクル容量維持率がある程度増加することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
さらに、本発明の正極材料、電気化学装置及び電子装置は、エレクトロニクス分野で利用することができ、産業上の利用可能性が高い。
【0087】
上記の説明は、本発明の特定の実施形態にすぎない。しかしながら、本発明は、上記の実施形態の特定の詳細に限定されない。本発明の技術的思想の範囲内で、本発明の技術的解決策に対して様々な簡単な変更を加えることができ、これらの簡単な変更はすべて本発明の範囲に属する。
【0088】
また、特定の実施形態に記載された特定の技術的特徴は、矛盾しない限り、任意の適切な方法で組み合わせることができることに留意されたい。不必要な繰り返しを避けるために、本発明では可能な様々な組み合わせについてはより詳細な説明を割愛する。
【0089】
さらに、本発明の様々な異なる実施形態を任意に組み合わせることができ、本発明の様々な異なる実施形態が本発明の思想に違反しない限り、本発明の様々な異なる実施形態も本発明の開示内容とみなされるべきである。
図1
【外国語明細書】