(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149368
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ポリプロピレンフィルム、包装材料、及び包装体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20241010BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241010BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20241010BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241010BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C08L23/10
C08J5/18 CES
C08K5/524
B32B27/32 Z
B32B27/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216855
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2023061133
(32)【優先日】2023-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山川 卓真
(72)【発明者】
【氏名】深谷 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】岡安 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】松井 章光
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA82
4F071AC15
4F071AE05
4F071AF15Y
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4F071AH04
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4F100AK07A
4F100AK07B
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4F100JN01
4J002BB121
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4J002EW066
4J002FD076
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】環境負荷低減のため、バイオナフサ由来のプロピレンを用いて製造されたポリプロピレンフィルムであって、色目や強度の経時変化の少ない、ポリプロピレンフィルムを提供する。
【解決手段】ポリプロピレンフィルムの質量に対して、バイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位を10質量%以上50質量%以下含有し、かつ、ポリプロピレンフィルムの質量に対して、リン系酸化防止剤を300質量ppm以上1000質量ppm以下含有するポリプロピレンフィルム。前記リン系酸化防止剤は、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオナフサ由来のプロピレンを用いて製造されたポリプロピレンフィルムであって、前記ポリプロピレンフィルムの質量に対して、前記バイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位を10質量%以上50質量%以下含有し、かつ、前記ポリプロピレンフィルムの質量に対して、リン系酸化防止剤を300質量ppm以上1000質量ppm以下含有するポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
前記リン系酸化防止剤が、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトを含む、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
複数の層が積層された積層体であって、少なくとも1層が、請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルムからなる、積層体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルムを備えた包装材料。
【請求項5】
物品が請求項4に記載の包装材料で包装された包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオナフサ由来の原料を用いて製造されたポリプロピレンフィルム、ならびに前記ポリプロピレンフィルムを用いた包装材料及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、工業製品等の包装材料又は、工業製品の部品として、ポリプロピレンフィルムが広く使用されている。使用形態としては、単層のポリプロピレンフィルムからなる単層シート、ポリプロピレンフィルムを他のシート材料と積層した積層シート等が挙げられる。ポリプロピレンフィルムと積層する他のシート材料としては、ポリエステル系樹脂フィルム、塩化ビニルフィルム、紙等が挙げられる。
【0003】
近年、環境負荷を低減するため各種工業製品や包装材料において、石油系原料を非石油系原料に置き換える試みがなされている。例えば、特許文献1においては、生物由来の原料から、クラッキングによりポリオレフィン樹脂を製造することが提案されている。
しかしながら、クラッキングにより得られたポリオレフィンからフィルムを製造したところ、色目や強度の経時変化が見られ、工業製品や包装材料の顧客の要求に十分対応できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、石油化学材料の使用量を抑えながら、色目や強度の経時変化の少ない、優れたフィルム材料を提供し、プラスチック製品の環境負荷の問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、原材料として環境負荷が小さい非石油化学材料を使用してフィルムを製造する方法を鋭意検討した結果、フィルム中のリン系酸化防止剤の配合量を特定範囲とすることにより、経時での色目変化や透明度の変化が少なく、機械的物性に優れ、かつ環境負荷が低減されたポリプロピレンフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]バイオナフサ由来のプロピレンを用いて製造されたポリプロピレンフィルムであって、前記ポリプロピレンフィルムの質量に対して、前記バイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位を10質量%以上50質量%以下含有し、かつ、前記ポリプロピレンフィルムの質量に対して、リン系酸化防止剤を300質量ppm以上1000質量ppm以下含有するポリプロピレンフィルム。
[2]前記リン系酸化防止剤が、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトを含む、[1]に記載のポリプロピレンフィルム。
[3]複数の層が積層された積層体であって、少なくとも1層が、前記[1]又は[2]に記載のポリプロピレンフィルムからなる、積層体。
[4]前記[1]又は[2]に記載のポリプロピレンフィルムを備えた包装材料。
[5]物品が前記[4]に記載の包装材料で包装された包装体。
[6]ポリプロピレンを含むポリプロピレンフィルムであって、
前記ポリプロピレンは、バイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位を含む第1のポリプロピレン(A)を含み、
前記ポリプロピレンフィルムの質量に対して、前記バイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位が10質量%以上50質量%以下であり、
前記ポリプロピレンフィルムの質量に対して、リン系酸化防止剤を300質量ppm以上1000質量ppm以下含有する、ポリプロピレンフィルム。
[7]前記第1のポリプロピレン(A)が、さらに、石油ナフサ由来のプロピレンに基づく単位を含む、[6]に記載のポリプロピレンフィルム。
[8]前記第1のポリプロピレン(A)が、バイオナフサと石油ナフサの混合物に由来するプロピレンに基づく単位を含む、[7]に記載のポリプロピレンフィルム。
[9]前記第1のポリプロピレン(A)の全単位に対して、前記バイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位が20~90質量%である、[6]~[8]のいずれか一項に記載のポリプロピレンフィルム。
[10]前記ポリプロピレンが、さらに、石油ナフサ由来のプロピレンに基づく単位を含み、かつバイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位を含まない第2のポリプロピレン(B)を含む、[6]~[9]のいずれか一項に記載のポリプロピレンフィルム。
[11]前記ポリプロピレンフィルムが、前記第1のポリプロピレン(A)を含むコア層と、前記コア層とは組成が異なるスキン層を有する、[6]~[10]のいずれか一項に記載のポリプロピレンフィルム。
[12]前記コア層が、さらに、石油ナフサ由来のプロピレンに基づく単位を含み、かつバイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位を含まない第2のポリプロピレン(B)を含む、[11]に記載のポリプロピレンフィルム。
[13]前記スキン層が、石油ナフサ由来のプロピレンに基づく単位を含み、かつバイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位を含まない第2のポリプロピレン(B)を含む、[11]又は[12]に記載のポリプロピレンフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、石油化学材料の使用量を抑えながら、色目や強度の経時変化の少ない、優れたポリプロピレンフィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
本明細書に開示の数値範囲の下限値及び上限値は任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
【0010】
<ポリプロピレンフィルム>
本発明の一実施形態に係るポリプロピレンフィルム(以下、「ポリプロピレンフィルム(F)」とも記す。)は、プロピレンが重合してなるポリプロピレンを含むものである。前記プロピレンの一部は、バイオナフサ由来の原料から生成されたものである。
本明細書において「バイオナフサ」はバイオマスを原料として製造されたナフサを意味する。「石油ナフサ」は石油を原料として製造されたナフサを意味する。
【0011】
ポリプロピレンフィルム(F)は、バイオナフサ由来の原料から製造されたプロピレンに基づく単位(以下、「バイオナフサ由来P単位」とも記す。)を、ポリプロピレンフィルム(F)中に10質量%以上50質量%以下、好ましくは10質量%以上25質量%以下含有する。バイオナフサ由来P単位の含有量が10質量%未満では、環境負荷の低減効果が少ない。また、バイオナフサ由来P単位の含有量が50質量%を超えると色目や強度の経時変化が目立ちやすく、製品の商品価値が低下しやすい。
前記バイオナフサ由来P単位の含有量は40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0012】
ポリプロピレンフィルム(F)は、リン系酸化防止剤をポリプロピレンフィルム(F)中に300ppm以上1000ppm以下、好ましくは300ppm以上700ppm以下含有する。リン系酸化防止剤の含有量が300ppm以上であると色目や強度の経時変化を抑制する効果に優れる。リン系酸化防止剤の含有量が1000ppmを超えると経時でのブリードアウトにより、透明性や印刷特性などの低下が生じやすい。
【0013】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ジフェニレンジホスナイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、2-(2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル)-5-エチル-5-ブチル-1,3,2-オキサホスホリナン、2,2’,2’’-ニトリロ[トリエチル-トリス(3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト等が挙げられる。この中でもトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
リン系酸化防止剤が、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトを含むことが好ましい。ポリプロピレンフィルム(F)に含まれるリン系酸化防止剤の総質量に対して、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトの割合は80質量%以上が好ましく、85質量%がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。100質量%でもよい。
【0014】
ポリプロピレンフィルム(F)は、品質要求に応じて、ポリプロピレン以外のその他の材料を、本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。
その他の材料としては、例えば、顔料、染料、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、鮮度保持剤、消臭剤、相溶化剤、ポリプロピレン以外の樹脂、リン系酸化防止剤以外の酸化防止剤等が挙げられる。
ポリプロピレンフィルム(F)の質量に対して、その他の材料の合計の含有量は、例えば3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。ゼロでもよい。
【0015】
ポリプロピレンフィルム(F)に含まれるポリプロピレンは、プロピレンに基づく単位を主体とするものであり、プロピレンの単独重合体、又はプロピレンに基づく単位を80質量%以上有する共重合体である。
前記共重合体としては、例えばプロピレンに基づく単位とα-オレフィンの1種以上に基づく単位を有する共重合体である。α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-ペンテン-1等が例示できる。
前記ポリプロピレンの全単位に対して、プロピレンに基づく単位は85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
【0016】
[第1のポリプロピレン(A)]
ポリプロピレンフィルム(F)の好ましい一態様において、ポリプロピレンフィルム(F)に含まれるポリプロピレンは、バイオナフサ由来P単位を含む第1のポリプロピレン(A)を含む。
第1のポリプロピレン(A)の全単位に対して、バイオナフサ由来P単位の含有量は20~90質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~50質量%がさらに好ましい。
【0017】
第1のポリプロピレン(A)は、バイオナフサ由来P単位と、石油ナフサ由来のプロピレンに基づく単位(以下、「石油由来P単位」とも記す。)を含むことが好ましい。
第1のポリプロピレン(A)の全単位に対して、石油由来P単位の含有量は10~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、50~60質量%がさらに好ましい。
【0018】
第1のポリプロピレン(A)は、プロピレン以外の単量体に基づくその他の単位を有する共重合体であってもよい。第1のポリプロピレン(A)の全単位に対して、バイオナフサ由来P単位と石油由来P単位の合計の含有量は80質量%以上が好ましく、85質量%がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。100質量%でもよい。
【0019】
第1のポリプロピレン(A)は、バイオナフサと石油ナフサの混合物から生成したプロピレンに基づく単位を含むことが好ましい。
バイオナフサと石油ナフサの混合物を原料ナフサとして生成したプロピレンは、バイオナフサ由来のプロピレンと、石油ナフサ由来のプロピレンの混合物となる。原料ナフサにおけるバイオナフサと石油ナフサとの比率によって、生成したプロピレンにおけるバイオナフサ由来のプロピレンと石油ナフサ由来のプロピレンとの比率が決まる。
例えば、バイオナフサ50質量%と石油ナフサ50質量%からなる混合物から生成したプロピレン(50/50)は、バイオナフサ由来のプロピレン50質量%と、石油ナフサ由来のプロピレン50質量%との混合物となる。
前記プロピレン(50/50)を重合してなるポリプロピレンの全単位に対して、バイオナフサ由来P単位の含有量は50質量%、石油由来P単位の含有量は50質量%となる。
【0020】
ポリプロピレンフィルム(F)に含まれる第1のポリプロピレン(A)は1種でもよく、2種以上でもよい。
ポリプロピレンフィルム(F)に対する第1のポリプロピレン(A)の含有量は、バイオナフサ由来P単位がポリプロピレンフィルムの質量に対して10質量%以上50質量%以下となるように設計することができる。
【0021】
[第2のポリプロピレン(B)]
ポリプロピレンフィルム(F)に含まれるポリプロピレンは、第1のポリプロピレン(A)のほかに、石油由来P単位を含み、かつバイオナフサ由来P単位を含まない第2のポリプロピレン(B)を含むことが好ましい。
第2のポリプロピレン(B)は、プロピレン以外の単量体に基づくその他の単位を有する共重合体であってもよい。
第2のポリプロピレン(B)の全単位に対して、石油由来P単位の含有量は80質量%以上が好ましく、85質量%がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。100質量%でもよい。
【0022】
ポリプロピレンフィルム(F)に含まれる第2のポリプロピレン(B)は1種でもよく、2種以上でもよい。
ポリプロピレンフィルム(F)に対する第2のポリプロピレン(B)の含有量は、第1のポリプロピレン(A)中のバイオナフサ由来P単位が、ポリプロピレンフィルム(F)の質量に対して10質量%以上50質量%以下となるように設計することができる。
【0023】
[フィルム]
ポリプロピレンフィルム(F)は、フィルム全体にわたって組成が均一であってもよく、組成が互いに異なるコア層とスキン層を有してもよい。
例えば、ポリプロピレンフィルム(F)が、前記第1のポリプロピレン(A)と第2のポリプロピレン(B)の混合物を含むコア層と、第2のポリプロピレン(B)を含み第1のポリプロピレン(A)を含まないスキン層を有してもよい。
スキン層は、コア層の表面側及び裏面側の一方にのみ設けてもよく、両方に設けてもよい。
【0024】
ポリプロピレンフィルム(F)は一軸延伸又は二軸延伸されていてもよい。延伸倍率は、例えばMD方向の延伸は3~6倍で行うことが好ましく、TD方向の延伸は8~12倍で行うことが好ましい。
ポリプロピレンフィルム(F)の密度は特に限定されるものではないが、例えば0.90~0.92g/cm3である。前記密度は乾式密度計や密度勾配管等により測定される値である
ポリプロピレンフィルム(F)の厚さは特に限定されるものではないが、例えば15μm~80μmである。
【0025】
<ポリプロピレンフィルムの製造方法>
ポリプロピレンフィルム(F)の製造方法としては、ポリプロピレンを含む樹脂組成物をシート状に成形して未延伸シートを得て、前記未延伸シートを二軸延伸してポリプロピレンフィルム(F)を得る方法が挙げられる。中でもテンター逐次二軸延伸法が好ましい。
コア層とスキン層を有するポリプロピレンフィルム(F)の製造方法は、共押しダイスを用いたテンター逐次二軸延伸法が好ましい。
【0026】
<積層体>
本発明の一実施形態に係る積層体は、複数の層が積層された積層体であって、少なくとも1層がポリプロピレンフィルム(F)からなる。
例えば、ポリプロピレンフィルム(F)同士を複数枚積層した積層体、ポリプロピレンフィルム(F)からなる1層以上と、ポリプロピレンフィルム(F)とは異なる材質からなる1層以上を積層した積層体が挙げられる。
ポリプロピレンフィルム(F)とは異なる材質からなる層としては、ポリプロピレンフィルム(F)以外の樹脂フィルム、紙等が例示できる。
積層体の製造方法としては、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法など他のフィルム等とラミネートする方法が挙げられる。中でもグラビアロール塗工設備を用いたドライラミネート法が好ましい。
【0027】
<包装材料>
本発明の一実施形態に係る包装材料は、ポリプロピレンフィルム(F)を備える。
ポリプロピレンフィルム(F)をそのまま包装材料としてもよく、ポリプロピレンフィルム(F)に何らかの加工を施して包装材料としてもよい。加工としては、公知の加工方法を適用できる。
例えば、ポリプロピレンフィルム(F)の端部どうしを、接着剤を用いて接着、又は熱融着して袋状の包装材料としてもよい。また、ポリプロピレンフィルム(F)の端部と、ポリプロピレンフィルム(F)以外の包装材料の端部とを接着、又は熱融着して袋状の包装材料としてもよい。
【0028】
<包装体>
本発明の一実施形態に係る包装体は、物品が本発明の包装材料で包装されたものである。
物品としては、一般雑貨、食品、衣料品等が例示できる。包装方法としては、公知の包装方法を適用できる。
【0029】
<実施例>
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、含有量の単位である「%」は「質量%」である。各例で用いた測定、評価方法を以下に示す。
【0030】
(1)色目
日本電色工業社製の分光色彩・ヘーズメーター「COH7700(製品名)」でフィルムのYI値を測定した。フィルムを23℃で3ヶ月保存し、保存開始時のYI値(初期YI)と、3ヶ月経時のYI値(3ヶ月後YI)を測定し、下記式によりYI値変化率(単位:%)を求めた。下記の基準により色目の経時変化の抑制効果を評価した。
YI値変化率=(3ヶ月後YI-初期YI)/初期YI×100
○:23℃、3ヶ月経時のYI値変化率が20%以内
×:23℃、3ヶ月経時のYI値変化率が20%を超える場合
【0031】
(2)引張強さ
JISK7127に準拠して流れ方向の引張強さを引張試験機で測定した。サンプルは幅方向15mm×流れ方向200mmの大きさに切り、引張速度200mm/minの条件で行った。フィルムが破断した時の強度を測定した。フィルムを90℃で1ヶ月保存し、保存開始時の強度(初期強度)と、1ヶ月経時の強度(1ヶ月後強度)を測定し、下記式により強度変化率(単位:%)を求めた。下記の基準により引張強さの経時変化の抑制効果を評価した。
強度変化率=(初期強度-1ヶ月後強度)/初期強度×100
○:90℃、1ヶ月経時の強度変化率が20%以内
×:90℃、1ヶ月経時の強度変化率が20%を超える場合
【0032】
(3)透明度
村上色彩技術研究所社製の透明度計「CLARITY-METER TM-1D(製品名)」でフィルムの透明度を測定した。フィルムを23℃で3ヶ月保存し、保存開始時の透明度(初期透明度)と、3ヶ月経時の透明度(3ヶ月後透明度)を測定し、下記式により透明度変化率(単位:%)を求めた。下記の基準により透明度の経時変化の抑制効果を評価した。
透明度変化率=(初期透明度-3ヶ月後透明度)/初期透明度×100
○:23℃、3ヶ月経時の透明度変化率が20%以内
×:23℃、3ヶ月経時の透明度変化率が20%を超える場合
【0033】
(4)環境負荷の低減
○:バイオナフサ由来のポリプロピレンが含まれているため環境負荷が小さい。
×:バイオナフサ由来のポリプロピレンが含まれていないため環境負荷が大きい。
【0034】
(5)ポリプロピレンフィルム中のリン系酸化防止剤の含有量は、フィルム中の酸化防止剤を抽出しHPLC-PDA分析によって測定した。
【0035】
ポリプロピレンフィルム中のバイオナフサ由来P単位の含有量は、各原料樹脂組成物中のバイオナフサ由来P単位の含有量と、各原料樹脂組成物の配合比率に基づいて算出した。
加速器質量分析法(AMS法)を用いてC14濃度を測定する方法によっても測定できる。
【0036】
<原料>
[第1のポリプロピレン(A)を含む原料樹脂組成物]
下記バイオPP(A1)~(A3)はいずれも、バイオナフサ50質量%と石油ナフサ50質量%の混合物である原料ナフサから生成したプロピレンを重合してなるポリプロピレンと、リン系酸化防止剤であるトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトを含む樹脂組成物である。ポリプロピレンの全単位に対して、バイオナフサ由来P単位の含有量は50質量%である。
バイオPP(A1):ポリプロピレン99.20質量%、リン系酸化防止剤0.10質量%、リン系酸化防止剤以外の添加剤0.70質量%。
バイオPP(A2):ポリプロピレン99.19質量%、リン系酸化防止剤0.01質量%、リン系酸化防止剤以外の添加剤0.80質量%。
バイオPP(A3):ポリプロピレン98.90質量%、リン系酸化防止剤0.40質量%、リン系酸化防止剤以外の添加剤0.70質量%。
【0037】
[第2のポリプロピレン(B)を含む原料樹脂組成物]
下記石油PP(B1)、(B2)はいずれも、石油ナフサ100%の原料ナフサから生成したプロピレンを重合してなるポリプロピレンと、リン系酸化防止剤であるトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトを含む樹脂組成物である。
石油PP(B1):ポリプロピレンポリプロピレン99.16質量%、リン系酸化防止剤0.04質量%、リン系酸化防止剤以外の添加剤0.80質量%。
石油PP(B2):ポリプロピレン99.17質量%、リン系酸化防止剤0.03質量%、リン系酸化防止剤以外の添加剤0.80質量%。
【0038】
<実施例1>
表1に記載の構成で、原料樹脂組成物を押出機により230℃で溶融し、第1スキン層/コア層/第2スキン層の厚さ比が5/90/5となるように押出機内で積層させ、共押しダイスから押出し積層シートを得た。コア層は石油PP(B1)とバイオPP(A1)の混合物からなる。
前記積層シートは30℃のロールに接触し冷却後、140℃で4.7倍に縦延伸後、引き続き165℃で10倍に横延伸し、厚さ30μm、密度0.90g/cm3の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
本例において、ポリプロピレンフィルムの質量に対して、バイオナフサ由来P単位の含有量は10質量%であり、リン系酸化防止剤の含有量は350ppmである。
【0039】
<実施例2>
バイオナフサ由来P単位の含有量が25質量%となるように原料配合を変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製した。
【0040】
<比較例1>
リン系酸化防止剤の含有量が260ppmとなるように原料配合を変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製した。
【0041】
<比較例2>
リン系酸化防止剤の含有量が1500ppmとなるように原料配合を変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製した。
【0042】
<比較例3>
バイオナフサ由来P単位の含有量が0%となるように原料配合を変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製した。
【0043】
<評価>
実施例1~2、及び比較例1~3で得た各ポリプロピレンフィルムについて、表に記載の項目について評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
上記結果に示す通り、実施例1~2のポリプロピレンフィルムは、環境負荷が小さく、経時での色目変化、機械物性変化、及び透明度変化が小さい結果であった。
一方、比較例1のポリプロピレンフィルムは環境負荷が小さいものの、経時での色目変化及び機械物性変化が大きく、使用上の問題発生が懸念された。
比較例2のポリプロピレンフィルムは環境負荷が小さく、経時での色目変化及び機械物性変化も小さい結果であったが、経時で透明性が悪化する結果であった。
比較例3のポリプロピレンフィルムは、経時での色目変化、機械物性変化、及び透明度変化が小さい結果であったが、原料にバイオナフサ由来ポリプロピレンを使用していないため、環境負荷が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のポリプロピレンフィルムは、石油化学材料の使用量を抑えながら、色目や強度の経時変化の少ない、優れたポリプロピレンフィルムであり、優れた包装材料として有用である。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオナフサ由来のプロピレンを用いて製造されたポリプロピレンフィルムであって、前記ポリプロピレンフィルムの質量に対して、前記バイオナフサ由来のプロピレンに基づく単位を10質量%以上50質量%以下含有し、かつ、前記ポリプロピレンフィルムの質量に対して、リン系酸化防止剤を300質量ppm以上1000質量ppm以下含有するポリプロピレンフィルム(ただし非イオン性界面活性剤を含むものを除く)。
【請求項2】
前記リン系酸化防止剤が、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトを含む、請求項1に記載のポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
複数の層が積層された積層体であって、少なくとも1層が、請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルムからなる、積層体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリプロピレンフィルムを備えた包装材料。
【請求項5】
物品が請求項4に記載の包装材料で包装された包装体。