IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイ・ティ・シ・コンサルティングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149383
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】塔状構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/32 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
E02D27/32
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017816
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023062496
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513239287
【氏名又は名称】株式会社アイ・ティ・シ・コンサルティング
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】石井 桂吾
(72)【発明者】
【氏名】谷口 明雄
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA00
(57)【要約】
【課題】塔状部を支える基礎部の規模を塔状部の規模、敷地条件等に応じて複数種類に統一して基礎部の工業製品化等を実現した塔状構造物を提供する。
【解決手段】軸方向に互いに接合された下部鋼管ユニット材と複数の上部鋼管ユニット材からなる複数の鋼管柱を備えた塔状部Aと塔状部Aの下端部に塔状部Aと一体に配置された基礎部Bを備え、基礎部Bは掘り下げられた地盤の底部に配置された基礎スラブ23と、基礎スラブ23の上に間隔をおいて配置され、各鋼管柱1の下端部を構成する複数の下部鋼管柱ユニット材4と、基礎スラブ23の上に配置された複数の基礎パネルユニット材を備え、基礎パネルユニット材は外側基礎パネルユニット材19aとその内側に配置された内側基礎パネルユニット材19bからなり、かつ外側基礎パネルユニット材19aと内側基礎パネルユニット材19bが構成する基礎型枠19内にコンクリート20を充填する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に互いに接合された下部鋼柱ユニット材と複数の上部鋼柱ユニット材からなる複数の鋼柱を備えた塔状部と前記塔状部の下端部に前記塔状部と一体に配置された基礎部を備え、前記基礎部は掘り下げられた地盤の底部に配置された基礎スラブと、前記基礎スラブの上に間隔をおいて配置され、前記各鋼柱の下端部を構成する前記複数の下部鋼柱ユニット材と、前記基礎スラブの上に配置された複数の基礎パネルユニット材を備え、前記基礎パネルユニット材は外側基礎パネルユニット材とその内側に配置された内側基礎パネルユニット材からなり、かつ前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材が構成する基礎型枠内に固化材が充填されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項2】
請求項1記載の搭状構造物において、前記基礎型枠と前記固化材は前記各鋼柱の下端部に柱脚部基礎を、前記各柱脚部基礎間に前記柱脚部基礎と一体の基礎梁をそれぞれ構成していることを特徴とする塔状構造物。
【請求項3】
請求項2記載の搭状構造物において、前記柱脚部基礎の基礎型枠を構成する前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材は、それぞれ前記下部鋼柱ユニット材の外側と内側に配置され、かつ前記内側基礎パネルユニット材は前記下部鋼柱ユニット材の外周面に沿って平面視略U字状に配置されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項4】
請求項1記載の搭状構造物において、前記基礎パネルユニット材の側部に複数の基礎鋼柱ユニット材が前記塔状部の周方向に間隔をおいて配置され、かつ前記基礎鋼柱ユニット材と前記下部鋼柱ユニット材間に基礎鋼梁ユニット材および/または基礎鋼ブレースユニット材が架設されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項5】
請求項2記載の搭状構造物において、前記基礎パネルユニット材の側部に複数の基礎鋼柱ユニット材が前記塔状部の周方向に間隔をおいて配置され、かつ前記基礎鋼柱ユニット材と前記下部鋼柱ユニット材間に基礎鋼梁ユニット材および/または基礎鋼ブレースユニット材が架設されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項6】
請求項3記載の搭状構造物において、前記基礎パネルユニット材の側部に複数の基礎鋼柱ユニット材が前記塔状部の周方向に間隔をおいて配置され、かつ前記基礎鋼柱ユニット材と前記下部鋼柱ユニット材間に基礎鋼梁ユニット材および/または基礎鋼ブレースユニット材が架設されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項7】
請求項4記載の塔状構造物において、前記基礎パネルユニット材の側部に複数の基礎鋼梁ユニット材および/または基礎鋼ブレースユニット材が前記塔状部の周方向に配置されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項8】
請求項5記載の塔状構造物において、前記基礎パネルユニット材の側部に複数の基礎鋼梁ユニット材および/または基礎鋼ブレースユニット材が前記塔状部の周方向に配置されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項9】
請求項6記載の塔状構造物において、前記基礎パネルユニット材の側部に複数の基礎鋼梁ユニット材および/または基礎鋼ブレースユニット材が前記塔状部の周方向に配置されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項10】
請求項1、4または請求項7記載の塔状構造物において、前記基礎パネルユニット材の内側に土が充填されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項11】
請求項2、5または請求項8記載の塔状構造物において、前記基礎パネルユニット材の内側に土が充填されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項12】
請求項3、6または請求項9記載の塔状構造物において、前記基礎パネルユニット材の内側に土が充填されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項13】
請求項4,5または請求項6記載の塔状構造物において、前記下部鋼柱ユニット材、前記上部鋼柱ユニット材、前記基礎鋼柱ユニット材、前記基礎鋼梁ユニット材および/または前記基礎ブレースユニット材は、鋼管、H形鋼、溝形鋼または山形鋼から形成されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項14】
請求項7,8または請求項9記載の塔状構造物において、前記下部鋼柱ユニット材、前記上部鋼柱ユニット材、前記基礎鋼柱ユニット材、前記基礎鋼梁ユニット材および/または前記基礎鋼ブレースユニット材は、鋼管、H形鋼、溝形鋼または山形鋼から形成されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項15】
請求項2,3,5,8または請求項11記載の塔状構造物において、前記柱脚部基礎と前記基礎梁はそれぞれ複数の地中アンカーによって地盤に定着されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項16】
請求項1~9のいずれかに記載の塔状構造物において、前記塔状部は、前記複数の鋼柱と前記鋼柱間に架設された複数の水平材および斜材を有し、平面視略三角形状、平面視略四角形または平面視略多角形状に構成されていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項17】
軸方向に互いに接合された下部鋼柱ユニット材と複数の上部鋼柱ユニット材からなる複数の鋼柱を備えた塔状部と前記塔状部の下端部に前記塔状部と一体に配置された基礎部を備え、
前記基礎部は掘り下げられた地盤の底部に配置された基礎スラブと、前記基礎スラブの上に間隔をおいて配置され、前記各鋼柱の下端部を構成する前記複数の下部鋼柱ユニット材と、前記基礎スラブの上に配置された複数の基礎パネルユニット材を備え、前記基礎パネルユニット材は外側基礎パネルユニット材とその内側に配置された内側基礎パネルユニット材からなり、かつ前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材が構成する基礎型枠内に固化材が充填されてなる塔状構造物の構築工法であって、以下の工程を含むことを特徴とする塔状構造物の構築工法。
(1)地上において前記複数の下部鋼柱ユニット材を前記塔状部の周方向に間隔をおいて配置する工程。
(2)前記下部鋼柱ユニット材間に前記外側基礎パネルユニット材と前記内側パネルユニット材をそれぞれ前記塔状部の周方向に連続させて配置する工程。
(3)前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材を互いに連結して前記塔状部の周方向に連続する前記基礎型枠を構成する工程。
(4)前記基礎型枠内に固化材を充填して前記塔状部の周方向に連続する基礎部を構成する工程。
(5)前記基礎部直下および前記基礎部内側の地盤を掘り下げて前記基礎部を沈下させる工程。
(6)掘り下げた地盤の底部に基礎スラブを形成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隔をおいて立設される、鋼管または形鋼からなる複数の鋼柱と、隣接する各鋼柱間に架設される複数の水平材および斜材とからなる上部構造体としての塔状部と、前記塔状部の下端部に前記塔状部と一体に形成される下部構造体としての基礎部とからなる塔状構造物に関し、特に前記基礎部を前記塔状部と一体化し、前記基礎部の形状、大きさ等を前記塔状部の規模(高さ、径等)や前記基礎部の敷地条件(広さ、高低差等)、地盤条件等に応じて、複数種類に統一することにより(規格化、標準化)、前記基礎部の工業製品化を実現し、これにより前記基礎部を構成する部材、部品の製作コストの削減と、特に車両の入りにくい住宅密集地やアクセス困難な山岳地帯などの地における短縮施工、省力化、簡略化施工等を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
近年、送電・送信用の電柱や照明柱、標識柱などとして一または複数の鋼管柱を用いた塔状構造物が、住宅密集地やアクセスの困難な山岳地帯に建設されてきている。
【0003】
鋼管柱は閉断面材であり、開断面材としてのアングル材やH形鋼などの形鋼からなる支柱に比べて形状的に断面性能が高く、また、RC柱などの他の合成柱に比べて軽量なことから、近年、送信・送電用の電柱や照明柱などの支柱として広く用いられている。
【0004】
また、鋼管柱は美観上、径を細くして見た目の圧迫感を与えないように製作することができ、しかも風力係数が小さいため風荷重に対して構造的に有利とされ、また交通事故などの不慮の衝撃によって簡単に折れる等の恐れが無い等多くのメリットを有する。
【0005】
しかし、継手ボルトによる接合が容易とされるアングル材などの開断面材に比べて、鋼管どうしの接合方法に課題がある。また、近年、電柱や照明柱などの鋼管柱として、10mを超える長尺な鋼管柱が用いられることがあり、10mを超えるような長尺鋼管柱は現地への搬送に際し、途中、交通規制を受けて現地への搬送が困難になったり、大型トレーラーを必要とする等してコストが嵩む等の課題があった。
【0006】
このため、特にアクセスの困難な山岳地帯や車両の入りにくい住宅密集地などに設置される鋼管柱は、複数の短尺鋼管を現地にて互いに接合して必要とする長さに製作している。
【0007】
短尺鋼管どうしを管軸方向に接合する方法としては、接合される鋼管の端部に継手プレートを鍔状に溶接し、当該継手プレートどうしを管軸方向に貫通する複数の継手ボルトによってボルト締結する方法(フランジジョイント接合)が広く用いられている。
【0008】
また、例えば特許文献1には、二本以上の杭を直列に接合する杭の接合構造の改良に関する発明が開示されている。簡単に説明すると、管状の杭が管軸方向に整列され、該整列された二つの杭間に接合部材が掛け渡され、該接合部材と前記杭とには共通の貫通孔が穿設され、該貫通孔をナットがネジ嵌合される雄ねじロッドが貫通している。
【0009】
雄ねじロッドには軸心に沿って一端から他端側へ向けて中心孔が穿設され、かつ該雄ねじロッドの他端に前記中心孔へ至る割りが形成されている。そして、前記割りが前記雄ねじロッドの一端側から強制的に嵌入されるピンによって拡開され、かつ前記雄ねじロッドの一端からねじ嵌合されたナットが締め付けられることで前記拡開部との間で前記杭と接合部材とが緊締されている。
【0010】
また、前記塔状体を支える基礎部は、前記塔状部と切り離し、敷地の大きさ、高低差、地耐力、水位、アクセス道路などをもとに個々に設計され、現場では上部構造体としての塔状体と切り離し、別々に個々の設計図に基づいて施工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000-329118号公報
【特許文献2】特開2011-069071号公報
【特許文献3】実開昭60-195330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、前述のフランジジョイントには、継手プレートの製作精度と継手プレートを鋼管の端部に溶接する高い溶接精度が求められ、また、溶接に伴う高熱によって母材(鋼管等の鋼柱)の塑性化(本来鉄は弾性材で折れにくい)が進み、溶接部の劣化、破断等の重大事故を招く恐れがあった。
【0013】
さらに、フランジジョイントは、主としてパイプライン等のような地盤上に水平に設置され、水や油種類などの流動物を移送する送液管の継手に用いられ、塔状構造物などの縦方向の構造物に使用すると、構造、施工性等の問題が多い。
【0014】
特に、継手プレートは強度を確保する観点から一定の厚さにする必要があり、継手プレートを取り付けた鋼管は重量が嵩み運搬等の取扱いが困難になるという課題があった。さらに、継手部に継手プレートを取り付けると、継手部に継手プレートによって「てこ反力」が発生することがあった。
【0015】
また、継手ボルトが鋼管柱の周方向に所定ピッチで配置されるため、ボルト本数が多いとボルトピッチが狭まって継手ボルトの締付けが困難になることがあった。
【0016】
また、保管や運搬等に際して、継手プレートが邪魔になることがあり、特に重量と共に荷が嵩んで取り扱いが困難なることがあった。
【0017】
一方、特許文献1の接合方法は、特に杭どうしを直列に接合する方法として開発されたものであるが、杭どうしの継手部には主に軸圧縮力が作用し、該軸圧縮力は杭端部が互いに当接することにより杭間で直接伝達されるため、軸圧縮力によって継手ボルトに作用するせん断力は小さい。
【0018】
このため、図示するように継手ボルトの本数は少なく、継手部の引張強度が圧縮強度に比べてかなり小さいという課題があった。
【0019】
雄ねじロッドの一端に前記雄ねじロッドの他端に締め付けられるナットの割りを入れることにより反力受けを形成する必要があるため、雄ねじロッドの製作が面倒なことが推測される。
【0020】
また、電柱や照明柱などの鋼管柱の基礎は、一般に敷地の大きさ、高低差、地耐力、水位、アクセス道路などの現場条件を基に個々に設計され、現場では上部構造体とは別途に個々の設計図に基づいて施工されるため、以下に記載するような解決すべき課題がある。
【0021】
(1)施工品質が施工者によりバラツキが生じる。
(2)型枠材等の廃材が現場ごとで発生し環境問題が生じる。
(3)仮設構造物の場合、RC基礎の解体費用とコンクリートの廃材が発生する。
(4)アクセス道路がなく重機を使用できない現場では工期が長く、工事コスト増となる。
(5)塔状構造物の基礎の理想的な形状は平面視円形状とされているが、現場での型枠製作が難しいこと等実際に行われていない。
【0022】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、特に上部構造体としての塔状部を支える基礎部を前記塔状部と一体化し、前記基礎部の形状、大きさ等を前記塔状部の規模(高さ、径等)や前記基礎部の敷地条件(広さ、高低差等)、地盤条件等に応じて、複数種類に統一することにより(規格化、標準化)、前記基礎部の工業製品化を実現し、これにより前記基礎部を構成する部材、部品の製作コストの削減と、特に車両の入りにくい住宅密集地やアクセス困難な山岳地帯などの地における短縮施工、省力化、簡略化施工等を可能にした塔状構造物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、軸方向に互いに接合された下部鋼柱ユニット材と複数の上部鋼柱ユニット材からなる複数の鋼柱を備えた塔状部と前記塔状部の下端部に前記塔状部と一体に配置された基礎部を備え、前記基礎部は掘り下げられた地盤の底部に配置された基礎スラブと、前記基礎スラブの上に間隔をおいて配置され、前記各鋼柱の下端部を構成する前記複数の下部鋼柱ユニット材と、前記基礎スラブの上に配置された複数の基礎パネルユニット材を備え、前記基礎パネルユニット材は外側基礎パネルユニット材とその内側に配置された内側基礎パネルユニット材からなり、かつ前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材が構成する基礎型枠内に固化材が充填されていることを特徴とするものである。
【0024】
前記塔状部は、前記基礎スラブの上に間隔をおいて配置された複数の鋼柱(単体柱)と、前記鋼柱間に配置され、各鋼柱どうしを繋ぐ複数の水平材および斜材の各ユニット材からなるトラス構造の塔状部として構築することができる。
前記鋼柱は下部鋼柱ユニット材と複数の上部鋼柱ユニット材を軸方向に互いに接合することにより構築することができる。また、前記塔状部は下部鋼柱ユニット材と複数の上部鋼柱ユニット材を軸方向に単に接合した単柱として構築してもよい。
【0025】
また、トラス構造の塔状部としては、間隔をおいて立設された複数の鋼柱と、隣接する各鋼柱間に架設された複数の水平材および斜材の各ユニット材とから、例えば、平面視略三角形、四角形または六角形などの多角形の塔状に構築してもよい。
また、前記下部鋼柱ユニット材および前記上部鋼柱ユニット材には円形鋼管または角形鋼管(鋼管パイプ)などを、前記水平材および斜材の各ユニット材にはH形鋼や溝形鋼、或は山形鋼(アングル材)などを用いることができる。
【0026】
前記基礎部は、掘り下げた地盤の底部に配置された基礎スラブと、前記基礎スラブの上に配置され、各鋼柱の下端部を構成する複数の下部鋼柱ユニット材と、前記基礎スラブの周縁部に前記塔状部の周方向に配置された複数の基礎パネルユニット材を備え、かつ前記複数の基礎パネルユニット材が構成する基礎型枠内にコンクリートまたはソイルセメント等の固化材を充填することにより塔状部の周方向に連続する基礎梁(布基礎)または地中連続壁として一体的に形成することができる。
【0027】
前記下部鋼柱ユニット材は前記基礎スラブの上に間隔をおいて配置し、また、前記基礎パネルユニット材として複数の外側基礎パネルユニット材とその内側に内側基礎パネルユニット材を配置し、かつ前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材が前記塔状部の周方向に連続して構成する前記基礎型枠内にコンクリートまたはソイルセメント等の固化材を充填することにより塔状部の周方向に連続する基礎梁(布基礎)または地中連続壁として一体的に形成することができる。
【0028】
また特に、前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材は、それぞれ前記各下部鋼柱ユニット材の外側と内側に前記塔状部の周方向に連続して配置し、また特に前記内側基礎パネルユニット材は前記下部鋼柱ユニット材の柱脚部において前記下部鋼柱ユニット材の外周面に沿って平面視略U字状に配置することにより、各下部鋼柱ユニット材の周囲に柱脚部基礎を、各下部鋼柱ユニット材間に前記柱脚部基礎と一体の基礎梁(布基礎)をそれぞれ形成することができる。
【0029】
なお、前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材は、基礎部の深さに応じて複数段に配置し、また、前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材は、複数のフォームタイ(登録商標)ボルトによって互いに連結し、前記各下部鋼柱ユニット材の外側と内側に配置された前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材は前記下部鋼柱ユニット材に複数のフォームタイ(登録商標)ボルトによって連結することにより、前記外側基礎パネルユニット材と前記内側基礎パネルユニット材を強固に組み立てることができる。
【0030】
また、前記基礎パネルユニット材(外側基礎パネルユニット材および/または内側基礎パネルユニット材)の側部(内側または外側)に複数の基礎鋼柱ユニット材を前記搭状部の周方向に間隔をおいて配置し、かつ各基礎鋼柱ユニット材と前記塔状部の下端部を構成する各下部鋼柱ユニット材間に複数の基礎鋼梁ユニット材および/または基礎鋼ブレースユニット材を架設することにより基礎部全体を一体化させて基礎部の剛性を著しく高めることができる。
【0031】
また、前記基礎鋼梁ユニット材および/または基礎鋼ブレースユニット材は、塔状部の周方向に間隔をおいて配置された各基礎鋼柱ユニット材間にも架設することにより基礎部全体の剛性をさらに高めることができる。
【0032】
なお、この場合の各ユニット部材どうしは連結金具によって簡単に連結することができる。また、前記基礎鋼柱ユニット材、基礎鋼梁ユニット材および基礎鋼ブレースユニット材には山形鋼(アングル材)やH形鋼等の形鋼材、或いは鋼管を用いることができる。
【0033】
また、前記基礎梁(布基礎)または地中連続壁の内側および塔状部の下端部を構成する下部鋼柱ユニット材の周囲、すなわち前記基礎梁(布基礎)または地中連続壁と塔状部の下端部を構成する下部鋼柱ユニット材との間に地盤を掘り下げることにより発生した掘削土などの土、砕石またはソイルセメント等を充填してもよい。
【0034】
また、基礎パネルユニット材(内側基礎パネルユニット材および外側パネルユニット材)は、軽量薄鋼板(厚さ1mm程度の薄鉄板等)や軽量薄波鋼板、或いはメッシュ鋼板(例えば、ラス金網板)等から形成し、また、人力のみで運搬、組立て、接合等が可能な大きさ、形状等にユニット化することにより現地における組立を、特別な重機を用いなくても人力のみできわめて効率的に行うことができて好ましい。
【0035】
[塔状部]
鋼柱からなる塔状部は、一本の鋼柱からなる単体柱であってもよいが、複数の鋼柱を備えた組立柱が強度上好ましい。例えば、間隔をおいて立設された形鋼または鋼管からなる複数の鋼柱と、隣接する各鋼柱間に架設された、形鋼などからなる複数の水平ユニット材および斜材ユニット材とから平面視略三角形の塔状に構築されたものが平面および立面上トラス構造を構成して好ましい。
【0036】
鋼柱にはH形鋼や山形(アングル材)あるいは溝形鋼等からなる形鋼柱、或いは円形または角形断面の鋼管からなる鋼管柱を用いることができ、いずれも入手容易な規格品(JIS規格、ISO規格またはBS規格)を用いることができる。
【0037】
特に、鋼管柱は形状的に断面性能が高い上に、RC柱などの他の合成柱に比べて軽量であり、また美観上、径を細くして見た目の圧迫感を与えないように製作することができるため、特に市街地の送信・送電用電柱や照明柱、標識柱などに適している。
【0038】
また、例えば鋼管柱は、規格化された複数の下部鋼管ユニット材と上部鋼管ユニット材とを継手鋼管ユニット材を介し、複数の継手ボルトによって接合することにより必要な長さに容易に形成することができる。
【0039】
なお、前記上部鋼管ユニット材、下部鋼管ユニット材および継手鋼管ユニット材に規格品を用いることにより、必要とする鋼管を容易に入手することができて、きわめて経済的である。規格品としてはJIS規格、ISO規格またはBS規格の鋼管を用いることができる。
【0040】
[基礎部]
基礎部は、塔状部下端部の周囲を取り囲むように枠状に形成し、例えば、各鋼柱の柱脚部にその周囲を取り囲むように柱脚部基礎を、各柱脚部基礎と柱脚部基礎間に基礎梁(または布基礎)を各柱脚部基礎と一体に形成することにより平面視略円形、矩形または六角形等の多角形の枠状に連続して形成することができる。
【0041】
前記柱脚部基礎はフーチング基礎とすることにより接地面積を増大させて柱脚部の安定性と支持力増大を図ることができる。
【0042】
基礎部は、平面視略円形の枠状に形成するのが経済的であり、また、塔状部の任意方向の水平荷重による転倒に対する抵抗力を著しく高めることができて好ましい。また、平面視略円形の基礎部は、設計上最少の材料で所要の設計性能を満たすことができて好ましい。
【0043】
なお、基礎部の平面形状は、必ずしも円形である必要はなく、矩形または六角形や八角形等といた多角形状であってもよく、鋼柱の断面形状、本数、設置間隔、或いは設置地盤の状況等により最適な平面形状を選択することができる。
【0044】
また、基礎部を複数の各鋼柱の柱脚部(下部鋼柱ユニット材)と一体に形成することで、塔状部の転倒に対する抵抗力を高めることができ、また施工の簡略化と経済施工を図ることができる。
【0045】
また、枠状に形成された周囲の基礎部(柱脚部基礎および基礎梁)と各鋼柱の下部鋼柱ユニット材間に、H形鋼などの形鋼からなる一または複数の基礎鋼梁ユニット材を前記基礎部および前記各鋼柱と一体に架設することで、鉄骨鉄筋コンクリート構造の基礎部とすることができ、強度および剛性を著しく高めることができる。この場合の基礎鋼梁ユニット材は、各鋼柱の下部鋼柱ユニット材間に下部鋼柱ユニット材どうしを繋ぐように、例えば平面視四角形または三角形の格子状(井桁状)に架設し、さらにその両端部を延長して周囲基礎部の基礎鋼柱ユニット材に接合するのが好ましい。また、基礎部の深さに応じて複数段に架設するのが好ましい。さらに、基礎鋼梁ユニット材に当該基礎鋼梁ユニット材に軸力を導入するジャッキ(プレロードジャッキ)を設置するのが好ましい。
【0046】
また特に、前記基礎部を前記塔状部と一体化し、前記基礎部の形状、大きさ等を前記塔状部の規模(高さ、径等)や前記基礎部の敷地条件(広さ、高低差等)、地盤条件等に応じて複数種類に統一することにより(標準化、規格化)、前記基礎部の工業製品化を実現し、これにより前記基礎部を構成する部材、部品の製作コストの削減と現地における短縮施工、省力化、簡略化施工等を図ることができる。
【0047】
すなわち、前記基礎部の基礎型枠の外型枠および内型枠を構成する基礎パネルユニット材とフォームタイ(登録商標)ボルト等の金具類の形状や寸法、さらには前記基礎部と鋼柱間に架設される基礎梁ユニット材の種類、径、長さ等の寸法を前記塔状部の規模(高さ、径等)、前記塔状部が構築される敷地条件(広さ、高低差等)に応じて複数種類に統一することにより(規格化、標準化)、これらのユニット部材、部品の製作コストの削減と現地における短縮施工、省力化、簡略化施工等を図ることができ、特に車両の入りにくい住宅密集地やアクセス困難な山岳地帯などの地にあっても、大型重機や特別な技術を必要とせず、短期間内でほぼ人力のみで効率的にかつ低コストで構築することができる。
【0048】
前記基礎部の施工方法としては、例えば、地上において柱脚部基礎と各柱脚部基礎間の基礎梁(または布基礎)を平面視略円形の枠状に形成し、次に各柱脚部基礎および各基礎梁の直下および各柱脚部基礎および各基礎梁の内側を全体にわたって均等に掘り下げて、基礎部全体を自重によって徐々に沈下させる。そして、沈下させた基礎部の内側の底部に基礎スラブを形成する(図15(b)等)。
【0049】
なお、基礎部の直下および内側は、人力による潜函工法とほぼ同様の方法によって掘り下げることにより周囲の土を乱さず、塔状構造物の基礎側面の受動土圧が有効に働いて、転倒に対する安定性を一定に確保することができる。
【0050】
また特に、防火用貯水槽等として深く形成するには、基礎部の直下およびその内側をさらに掘り下げて基礎全体を徐々に沈下させ、同時に各柱脚部基礎と基礎梁の上に新たに基礎型枠(柱脚部基礎および基礎梁の型枠)を順次組み上げ、その中にコンクリートを打設することにより基礎部の周方向および鉛直方向に連続する側壁を基礎部と一体に連続させて形成する。
【0051】
そして、掘り下げた底部に基礎スラブを形成する。この場合、各鋼柱の柱脚部基礎は、柱脚部の底部にのみ形成し、それより上方部分は壁部のみとしてもよい。
【0052】
この施工方法によれば、基礎型枠が地山の崩落や周囲の地盤沈下等を防止する山留を兼ねるため、別途山留工事の必要がなく、大幅なコスト削減が可能になり、また安全施工が可能である。
【0053】
基礎部と鋼柱間の空間は空間のまま放置してもよいが、現地掘削土を充填して花壇などの植栽スペースとしたり、基礎部の柱脚部基礎および基礎梁と一体にコンクリートを打設したり、或いは基礎スラブを設けて注水することにより塔状構造物の転倒に対する抵抗体(重量体)や市街地等における防火用貯水槽、さらには基礎スラブと屋根スラブを設けて山岳災害時等の避難用シェルター等として利用することもできる。
【0054】
なお、前記基礎スラブは、基礎の設計条件により受動土圧のみで基礎反力に対して設計可能な場合は省略することができる(図15(a),(b)参照)。例えば、街中に立設される電柱のような構造物の場合、電柱は周囲の受動土圧により構造的に成り立っているため、基礎スラブを省略することができる。
【0055】
[下部鋼管ユニット材と上部鋼管ユニット材との継手部]
下部鋼柱ユニット材と上部鋼柱ユニット材として、それぞれ下部鋼管ユニット材と上部鋼管ユニット材を用いる場合、上部鋼管ユニット材と下部鋼管ユニット材間は、これら上下鋼管ユニット材より小径に形成され、かつ前記上部鋼管ユニット材の下端部と前記下部鋼管ユニット材の上端部にそれぞれ挿入される継手鋼管ユニット材と、前記継手鋼管ユニット材の内周壁に取り付けられた複数の継手ナットと、前記上部鋼管ユニット材および前記下部鋼管ユニット材の端部周壁と前記継手鋼管ユニット材の周壁に形成されたボルト孔を通して前記継手ナットに螺合される複数の継手ボルトによって接合することで、溶接等の特別な接合手段を用いなくても、継手ボルトの締付けによってきわめて容易にかつ確実に接合することができる。
【0056】
また、前記継手鋼管ユニット材の外周壁に前記上部鋼管ユニット材と前記下部鋼管ユニット材を同一管軸線上にセットする複数の位置決め金具を取り付けることで、前記上部鋼管ユニット材と前記下部鋼管ユニット材を同一管軸線上にセットして接合することができる。前記位置決め金具は継手鋼管ユニット材の周方向の少なくとも三カ所に取り付けるのが好ましい。
【0057】
また、前記上部鋼管ユニット材および前記下部鋼管ユニット材の端部内周壁と前記継手鋼管ユニット材の外周壁との間に、接着剤または無収縮モルタル等の充填剤を充填することにより、前記下部鋼管ユニット材と上部鋼管ユニット材間を剛接合状態に接合することができる。
【0058】
また、前記上部鋼管ユニット材および前記下部鋼管ユニット材の継手部に作用する管軸方向の引張り荷重に対しては、前記複数の継手ボルトがせん断抵抗し、管軸方向の圧縮荷重に対しては、前記上部鋼管ユニット材と下部鋼管ユニット材の端部突合せ部において鋼管が直接抵抗することで、従来のフランジジョイント接合で問題とされた、継手部に発生する継手プレートによる「てこ反力」の問題、継手プレートを取り付けることによる鋼管の重量増大、さらには継手プレートを溶接によって取り付けることによる溶接不良や溶接熱等の問題を解消することができる。
【0059】
また、前記基礎部と同様に前記上部鋼管ユニット材、下部鋼管ユニット材および継手鋼管ユニット材、さらには前記継手ボルトと継手ナット等の長さや径等を、前記塔状部の規模(高さ、径等)、前記塔状部が構築される敷地等の条件(広さ、高低差等)に応じて複数種類に統一することにより(規格化、標準化)、これらの部材、部品の製作コストの削減と現地における短縮施工、省力化、簡略化施工等を図ることができる。
【0060】
また、径の異なる下部鋼管ユニット材と上部鋼管ユニット材間も容易に接合することができる。この場合、上部鋼管ユニット材の下端部内周壁に複数の継手ナットを取り付け、前記上部鋼管ユニット材の下端部を前記上部鋼管ユニット材より大径の下部鋼管ユニット材の上端部に挿入する。そして、前記下部鋼管ユニット材の上端部周壁および前記上部鋼管の下端部周壁に形成されたボルト孔を貫通させ、前記継手ナットに継手ボルトを螺合することによりきわめて容易にかつ確実に接合することができる。
【0061】
また、前記下部鋼管ユニット材の端部内周壁と前記上部鋼管ユニット材の端部外周壁との間に、接着剤または無収縮モルタルを充填することにより径の異なる下部鋼管ユニット材と上部鋼管ユニット材も容易に剛接合状態に接合することができる。
【0062】
また、基礎梁(または布基礎)の基礎型枠を構成する内型枠と外型枠(基礎パネルユニット材)は、軽量薄鋼板や軽量薄波鋼板、或いはメッシュ鋼板(例えば、ラス金網板)等から形成し、また、人力のみで運搬、組立て、接合等が可能な大きさ、形状等にユニット化することにより現地における組立を、特別な重機を用いなくても人力のみできわめて効率的に行うことができて好ましい。
【発明の効果】
【0063】
本発明は、上部構造体としての塔状部と、前記塔状部の下端部に前記塔状部と一体に形成された基礎部が共にユニット化され、かつ前記塔状部は軸方向に互いに接合された複数の上部鋼柱ユニット材と下部鋼柱ユニット材とから構築され、前記基礎部は前記塔状部の周囲に間隔をおいて設置され、かつ下端の前記下部鋼柱ユニット材に接合された複数の基礎鋼柱ユニット材と、前記基礎鋼柱ユニット材の外側に前記塔状部の周方向に設置された複数の基礎パネルユニット材とから形成されているため、特に前記基礎部の形状、大きさ等を前記塔状部の規模(高さ、径等)や前記基礎部の敷地条件(広さ、高低差等)、地盤条件等に応じて複数種類に統一することにより(規格化、標準化)、前記塔状部および基礎部の工業製品化が可能となる。
【0064】
また、これにより前記塔状部および基礎部を構成する各ユニット材の製作コストの削減と現地における短縮施工、省力化施工および経済施工等を図ることができる。
【0065】
さらに、車両の入りにくい住宅密集地やアクセス困難な山岳地帯などの地にあっても、大型重機や特別な技術を必要とせず、短期間内でほぼ人力のみで効率的にかつ低コストで構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】塔状構造物の塔状部として構築された鋼管柱と、当該鋼管柱を支える基礎部とからなる塔状構造物の縦断面図である。
図2図1に図示する鋼管柱の柱脚部を図示したものであり、図(a)は図1におけるm-m線拡大断面図、図(b)は図1における柱脚部の拡大図である。
図3】鋼管柱と当該鋼管柱を支える基礎部とからなる塔状構造物における、鋼管柱の下部鋼管ユニット材と基礎鋼柱ユニット材間に基礎鋼梁ユニット材と基礎鋼ブレースユニット材が配置された基礎部を図示したものであり、図(a)は縦断面図、図(b)は図(a)におけるn-n線断面図である。
図4】鋼管柱と当該鋼管柱を支える基礎部とからなる塔状構造物における、鋼管柱の下部鋼管ユニット材と基礎鋼柱ユニット材間に基礎鋼梁ユニット材と簡易ジャッキが配置された基礎部を図示したものであり、図(a)は縦断面図、図(b)は図(a)におけるo-o線断面図である。
図5】鋼管柱と当該鋼管柱を支える基礎部とからなる塔状構造物における、鋼管柱の下部鋼管ユニット材と基礎鋼柱ユニット材間に基礎鋼梁ユニット材と簡易ジャッキが配置された基礎部を図示したものであり、図(a)は縦断面図、図(b)は図(a)におけるp-p線断面図である。
図6】鋼管柱と当該鋼管柱を支える基礎部とからなる塔状構造物における、鋼管柱の下部鋼管ユニット材と基礎鋼柱ユニット材間に基礎鋼梁ユニット材と簡易ジャッキが配置され、かつ基礎鋼柱ユニット材の背面側にアンカーが配置された基礎部を図示したものであり、図(a)は縦断面図、図(b)は図(a)におけるq-q線断面図、図(c)は図(a)におけるr-r線断面図である。
図7】図(a)~(e)は、図3に図示する塔状構造物の基礎部の潜函工法による施工手順を示す説明図である。
図8】同一径の上部鋼管ユニット材と下部鋼管ユニット材との継手部を示す図であり、図(a)は縦断面図、図(b)は図(a)におけるb-b線断面図である。
図9】図(a)は図8に図示する鋼管継手部の斜視図、図(b)は位置決め金具の斜視図である。
図10】図(a),(b)は下部鋼管ユニット材と上部鋼管ユニット材との継手部に接着剤を充填する方法を示す説明図である。
図11】径の異なる上部鋼管ユニット材と下部鋼管ユニット材との継手部を示す図であり、図(a)は縦断面図、図(b)は図(a)におけるc-c線断面図である。
図12】図(a)は図11に図示する鋼管継手部の斜視図、図(b)は位置決め金具の斜視図である。
図13】塔状部が複数の鋼管柱と各鋼管柱間に架設された複数の水平ユニット材および斜材ユニット材と基礎ユニット材からなる上下一体化塔状構造物の一部正面図である。
図14図13に図示する塔状構造物の塔状部の一部を拡大した図であり、図(a)はその正面図、図(b)は図(a)におけるa-a線断面図である。
図15図13に図示する塔状構造物の基礎部を拡大した図あり、図(a)は図13におけるd-d線拡大断面図、図(b)は図15(a)に図示する基礎部の正面図である。
図16】地盤面下深く形成された基礎部を図示したものであり、図(a)は図13におけるd-d線拡大断面図、図(b)は図16(a)におけるe―e線断面である。
図17】本発明の他の実施形態の基礎部を図示したものであり、図(a)は基礎部の縦断面図、図(b)は図17(a)におけるf-f線断面図である。
図18】本発明の他の実施形態の基礎部を図示したものであり、図(a),(b)は基礎部の縦断面図である。
図19】図(a)は図18(a),(b)におけるt-t線断面図、図(b)は図19(a)におけるu-u線断面図である。
図20】本発明の他の実施形態の基礎部を図示したものであり、図(a)は基礎部の縦断面図、図(b)は図20(a)におけるg-g線断面図である。
図21】本発明の他の実施形態の基礎部を図示したものであり、図(a)は基礎部の縦断面図、図(b)は図(a)におけるh-h線断面図である。
図22】本発明の他の実施形態であり、塔状部がアングル材からなるアングルトラス構造の基礎部を図示したものであり、図(a)は基礎部の縦断面図、図(b)は図(a)におけるi-i線断面図である。
図23】本発明の他の実施形態であり、塔状部がアングル材からなるアングルトラス構造の基礎部を図示したものであり、図(a)は基礎部の縦断面図、図(b)は図(a)におけるj-j線断面図である。
図24】本発明の他の実施形態であり、塔状部がアングル材からなるアングルトラス構造の基礎部を図示したものであり、図(a)は基礎部の縦断面図、図(b)は図(a)におけるk-k線断面図である。
図25】接合金具による鋼管柱と水平ユニット材および上下斜材ユニット材との接合部を図示したものであり、図(a)は正面図、図(b)は図(a)におけるl-l線断面図である。
図26】鋼管柱に溶接によって取り付けられた接合プレートによる鋼管柱と水平ユニット材および上下斜材ユニット材との接合部を図示したものであり、鋼管継手部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1図12は、本発明の一実施形態であり、上部構造体としての塔状部Aと当該塔状部Aの下端部に塔状部Aと一体に形成され、塔状部Aを支える下部構造体としての基礎部Bとから構築された塔状構造物を図示したものである。
【0068】
[塔状部]
塔状部Aは単体の鋼管柱であり、鋼管柱1は管軸方向に互いに接合された複数の鋼管から形成され、その下側に位置する鋼管(以下「下部鋼管ユニット材4」)と当該下部鋼管ユニット材4の上側に位置する鋼管(以下「上部鋼管ユニット材5」)どうしは継手鋼管ユニット材6と複数の継手ボルト11によって互いに接合されている。
【0069】
下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5は同一径の円形鋼管または角形鋼管(実施形態では「円形鋼管」)より形成され、また、各下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5の端部どうしは管軸方向に互いに突き合わされている。
【0070】
継手鋼管ユニット材6は、下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5より小径の円形鋼管(角形鋼管柱では「角形鋼管」)より形成され、当該継手鋼管ユニット材6の管軸方向の中間部より下方の下側部6aと上方の上側部6bは、それぞれ下部鋼管ユニット材4の上端部と上部鋼管ユニット材5の下端部にそれぞれ挿入されている(図8(a),図9(a)参照)。
【0071】
また、下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の内周壁と継手鋼管ユニット材6の外周壁との間に間隙部Sが継手鋼管ユニット材6の管軸方向および周方向に均等幅に形成されている。
【0072】
なお、下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5と継手鋼管ユニット6の径および長さは数種類に統一されており(標準化、規格化)、これによりこれらの部材の工業製品化が実現でき、また現地における組立等を特別な熟練を必要とせず、一般作業員でもきわめて効率的な施工が可能になる
また、継手鋼管ユニット材6の管軸方向の中間部における外周壁に、継手鋼管ユニット材6を下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の同一管軸線上にセットする位置決め金具7が取り付けられている。
【0073】
位置決め金具7は、継手鋼管ユニット材6の周方向の少なくとも三カ所に等間隔に取り付けられている。また、継手鋼管ユニット材6の周壁より下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との端部突合せ部側に水平に突出する水平リブ7aと、水平リブ7aの上下両側部に対称に取り付けられ、先端が下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の内周壁に当接する上下垂直リブ7b,7bを備えている。
【0074】
水平リブ7aと上下垂直リブ7b,7bは一体に形成され、かつ継手鋼管ユニット材6の外周壁に溶接等により一体に取り付けられている。
【0075】
なお、下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5の端部突合せ部には水平リブ7aが係合する切欠き部8が形成されている。
【0076】
そして、各位置決め金具7の水平リブ7aが切欠き部8に篏合することにより、継手鋼管ユニット材6は下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との継手部に保持されている。
【0077】
また、各位置決め金具7の上下垂直リブ7b,7bの先端部が下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の内周壁に当接することにより、継手鋼管ユニット材6は下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の同一管軸線上に鉛直にセットされ、これにより下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5は同一管軸線上に鉛直に配置されている。
【0078】
また、継手鋼管ユニット材6の下側部6aと下部鋼管ユニット材4の上端部に複数のボルト孔9が形成され、同様に継手鋼管ユニット材6の上側部6bと上部鋼管ユニット材5の下端部に複数のボルト孔9が形成されている。
【0079】
ボルト孔9は、下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の周壁と継手鋼管ユニット材6の周壁にその周方向および管軸方向に等間隔に形成され、かつ下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5と継手鋼管ユニット材6の直径方向に連通して形成されている。
【0080】
また、継手鋼管ユニット材6の下側部6aおよび上側部6bの内周壁に複数の継手ナット10が各ボルト孔9に連通して取り付けられている。継手ナット10は継手鋼管ユニット材6の内周壁に溶接または接着剤によって一体的に取り付けられている。
【0081】
そして、下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の外側から各ボルト孔9を貫通して各継手ナット10に継手ボルト11が締め付けられている。これにより各下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5が継手鋼管ユニット材6と複数の継手ボルト11によって脱着可能に接合されている。
【0082】
なお、継手鋼管ユニット材6の長さと継手ボルト11の径、本数および間隔等は、下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との継手部に作用する曲げおよびせん断力等を参酌して最適に決定されている。
【0083】
また特に、下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の内周壁と継手鋼管ユニット材6の外周壁間の間隙部Sに接着剤または無収縮モルタル(以下「接着剤」)12が充填され、これにより各下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5間が完全一体(剛接合)に接合されている。
【0084】
符号13は、固化する前の接着剤12が間隙部Sから流出するのを防止するためのパッキン・シールであり、当該パッキン・シール13は、継手鋼管ユニット材6の下端部に当該継手鋼管ユニット材6の周方向に連続して取り付けられ、これにより継手鋼管ユニット材6の外周壁と下部鋼管ユニット材4の内周壁との間に形成された間隙部Sの下端部が塞がれている。
【0085】
なお、パッキン・シール13は、特に図示しないが各継手ボルト11の周囲および下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との端部突合せ部にも取り付けられている。
【0086】
間隙部S内に接着剤12を充填する方法としては、下部鋼管ユニット材4の上端部に継手鋼管ユニット材6を設置し、その上に上部鋼管ユニット材5を建て付ける。その際、予め間隙部Sの下端部、下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との端部突合せ部をパッキン・シール13によってそれぞれ塞ぐ。
【0087】
また、スチールまたはプラスチック等からなる蓋(例えば、プレート状の蓋)14によって継手鋼管ユニット材6の上端部を塞ぐ(図10(a)参照)。なお、継手鋼管ユニット材6の上端部を解放し下端部を塞いでもよい(図10(b)参照)。この場合、接着材12は継手鋼管ユニット材6内にも充填される。
【0088】
そして、下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5と継手鋼管ユニット材6とをそれぞれ複数の継手ボルト11によって接合すると共に各継手ボルト11の周囲をパッキン・シール材でシールする。
【0089】
なお、接着剤12は、特に上部鋼管ユニット材5内に注入管15を挿入して充填することにより狭い間隙部Sに接着剤を確実にかつ効率的に充填することができる。また、下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の内周面(特に継手部分の内周面)に接着剤12の充填量を示す、目視可能なメモリー表示ラインとしてテープ等(図省略)を貼り付けて予め表示しておくか、或いは間隙部Sの容量から接着剤12の充填量を予め計量しておくことにより、間隙部Sに必要量の接着剤12を無駄なく確実に充填することができる。
【0090】
この場合、充填時のメモリー表示ラインの目視と接着剤充填量の計量の両方によって、接着剤12の充填状況を確認することにより接着剤12の充填をより正確に確認することができる。
【0091】
さらに、接着剤12の充填時に下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の継手部を木製ハンマー(図小略)等によって外から叩いて振動させることにより気泡等の巻き込みを防止して接着剤12を緻密に充填することができる。
【0092】
図11図12は、塔状部としての鋼管柱1が特に径の異なる複数の下部鋼管ユニット材と上部鋼管ユニット材からなる鋼管柱の継手部を図示したものである。
【0093】
上部鋼管ユニット材5は下部鋼管ユニット材4より小径に形成されている。また上部鋼管ユニット材5と下部鋼管ユニット材4は同一管軸線上に配置され、かつ上部鋼管ユニット材5の下端部が下部鋼管ユニット材4の上端部に所定長挿入されている。
【0094】
さらに、上部鋼管ユニット材5の下端部外周壁に、下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5とを同一管軸線上にかつ鉛直にセットする位置決め金具16が取り付けられている。
【0095】
位置決め金具16は、上部鋼管ユニット材5の下端部外周壁より下部鋼管ユニット材4の上端縁部側に水平に突出する水平リブ16aと、当該水平リブ16aの下側に位置し、先端が下部鋼管ユニット材4の内周壁に当接する垂直リブ16bとを備え、側面視略T字状に形成されている(図12(b)参照)。
【0096】
水平リブ16aと垂直リブ16bは溶接によって一体的に形成され、かつ上部鋼管ユニット材5の下端部外周壁に溶接などによって一体的に取り付けられている。また、下部鋼管ユニット材4の上端縁部に水平リブ16aの先端部が嵌り込む凹溝状の切欠き部8が形成されている。
【0097】
そして、各位置決め金具16の水平リブ16aが、下部鋼管ユニット材4の切欠き部8に篏合することにより、上部鋼管ユニット材5は下部鋼管ユニット材4の上端部に保持され、かつ各位置決め金具16の垂直リブ16bの先端部が下部鋼管ユニット材4の内周壁に当接することにより、下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5が同一管軸線上に配置されている。
【0098】
また、下部鋼管ユニット材4の上端部と上部鋼管ユニット材5の下端部がラップする部分にそれぞれ複数のボルト孔9が形成されている。ボルト孔9は下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の周方向および管軸方向に等間隔に形成され、かつ下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の直径方向に連通して形成されている。
【0099】
また、上部鋼管ユニット材5の下端部内周壁に複数の継手ナット10が各ボルト孔9に連通して取り付けられている。継手ナット10は上部鋼管ユニット材5の下端部内周壁に溶接または接着剤によって一体的に取り付けられている。
【0100】
そして、下部鋼管ユニット材4の外側から各継手ナット10に継手ボルト11が各ボルト孔9を貫通して脱着可能に締め付けられ、これにより各下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5どうしが脱着可能に接合されている。
【0101】
なお、継手ボルト11の径、数量およびピッチ等は、下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との継手部に作用する主にせん断力を参酌して最適に決定される。
【0102】
また特に、下部鋼管ユニット材4の上端部と上部鋼管ユニット材5の下端部がラップする部分の間隙部Sに接着剤12が充填され、これにより下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5の端部どうしが完全一体(剛接合)に接合されている。
【0103】
また、上部鋼管ユニット材5の下端部外周壁に、下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5間の間隙部Sの下端部を塞ぐパッキン・シール13が上部鋼管ユニット材5の周方向に連続して取り付けられている。なお、パッキン・シール13は、特に図示しないが各継手ボルト11の周囲にも取り付けられている。
【0104】
間隙部Sに接着剤12を充填するには、下部鋼管ユニット材4の上端部に上部鋼管ユニット材5の下端部を建て込む。また、間隙部Sの下端部を塞ぎ、下部鋼管ユニット材4の上端部と上部鋼管ユニット材5の下端部とを複数の継手ボルト11によって接合する。そして、下部鋼管ユニット材4の上端部から注入管などを用いて間隙部Sに接着剤12を充填する。
【0105】
[基礎部]
基礎部Bは、塔状部A(以下、「鋼管柱1」)の柱脚部の周囲地盤面下に、鋼管柱1の周方向に等間隔に立設された複数の基礎鋼柱ユニット材31と、当該複数の基礎鋼柱ユニット材31の外側に鋼管柱1の周方向および上下方向に互いに隣接し、かつ鋼管柱1の周方向および上下方向に連続して配置された複数の基礎パネルユニット材19aと、各基礎鋼柱ユニット材31と鋼管柱1との間に放射状に架設された複数の基礎鋼梁ユニット材27、さらに必要に応じて各基礎鋼柱ユニット材31と鋼管柱1間、隣接する各基礎鋼柱31,31間に架設された複数の基礎鋼ブレースユニット材40(図3参照)とから平面視略円形または矩形、或いは六角形等の多角形の枠状に形成されている。
【0106】
なお、基礎鋼梁ユニット材27と基礎鋼ブレースユニット材40は、鋼管柱1の下端部を構築する下部鋼管ユニット材4と各基礎鋼柱ユニット材31間にトラス構造を構成するように架設されている。
【0107】
また、基礎鋼梁ユニット材27、基礎鋼柱ユニット材31および基礎鋼ブレースユニット材40にはH形鋼、I形鋼、L形鋼或はCT(カットティー)形鋼などの形鋼または鋼管が用いられ、特に基礎鋼柱ユニット材31は背面側の地山にアンカー材32によって固定され(図6(a),(b)参照)、また、基礎鋼梁ユニット材27には周囲土圧に備えてネジ式ジャッキ等の簡易なジャッキ33が取り付けられている(図4(a),(b)等参照)。
【0108】
また、鋼管柱1の下端部にコンクリートブロックまたは鋼板(ベースプレート)等からなる基礎ユニット材34が設置され(図1図3参照)、鋼管柱1の下端部、すなわち鋼管柱1の下端部を構築する下部鋼管ユニット材4(後述する図7等参照)の下端部は、基礎ユニット材34の上にL形鋼などからなるアングル材35と複数の固定ボルト36によって基礎ユニット材34に固定されている(図2(a),(b)参照)。なお、アングル材35は基礎ユニット材34の上に溶接またはアンカーボルト(図省略)によって固定されている。
【0109】
また、基礎ユニット材34に代えて基礎鋼柱ユニット材31と基礎パネルユニット材19aとからなる基礎型枠内の底部全体に基礎スラブ23が形成され(図3(a),(b)参照)、この場合、鋼管柱1の下端部、すなわち鋼管柱1の下端部に配置された下部鋼管柱4の下端部は基礎スラブ23の上に固定されている。
【0110】
さらに、必要に応じて基礎鋼柱ユニット材31と基礎パネルユニット材19aとからなる型枠内に埋戻し土(現地掘削土)が充填されている。
【0111】
特に、各基礎鋼柱ユニット材31と鋼管柱(下端の鋼柱ユニット材)1との間に複数の基礎鋼梁ユニット材27を放射状に架設し、かつ基礎鋼柱ユニット材31と基礎パネルユニット材19aとからなる型枠内に埋戻し土を充填することにより、複数の基礎鋼梁ユニット材27が樹木の根のような構造となることで、鋼管柱1に作用する引抜き力に対して埋戻し土の重量による抵抗力が増大するため、基礎部Bに作用する曲げモーメントに対する抵抗モーメントが増加する等の効果が期待される。
【0112】
また、各基礎鋼梁ユニット材27に周囲の土圧に備えてネジ式ジャッキ等の簡易なジャッキ33を取り付け、各基礎鋼柱ユニット材31を周囲の地山側に押圧して圧着する機械的工法を採用することで、受動土圧を有効に活用することができ、基礎鋼柱ユニット材31の建て方精度(垂直性)を調整することが可能になる(図4(a),(b)参照)。
【0113】
さらに、各基礎鋼柱ユニット材31の下端側部を背面側の地山にアンカー材32によって固定することにより、鋼管柱(塔状部A)1に作用する引抜き力に対して、「まだ乱されていない土の粘着力」を利用した引抜き抵抗力が期待できる。この場合、アンカー材32を背面側の地山に斜め下向きに施工することによりアンカー材32の引抜き抵抗力を高めることができる。
【0114】
基礎パネルユニット材19aは鋼管柱1の周方向に矩形板状に形成され、かつ人力でも持ち運びと組立て等が容易な形状、大きさに鋼管柱1の周方向および上下方向にユニット化され、また、現地における組立と接合作業を可能な限り少なくして、組立ておよび接合作業の標準化と品質のバラツキ防止が図られている。
【0115】
また、特に熟練を有しない一般の作業員でも、基礎鋼柱ユニット材31に固定するための固定金具、その他の接合金具によって容易に組立てと接合が可能なように形成されている。
【0116】
さらに、基礎パネルユニット材19aは、薄鋼板(1mm程度の薄鉄板等)または薄波鋼板、或いはメッシュ鋼板(メッシュパネル等)などから人力でも容易に持ち運び可能な寸法に形成されている。
【0117】
また、基礎パネルユニット材19aと固定金具、その他の接合金具等の形状、大きさ等は鋼管柱1の規模(高さ、径等)、設置地盤の地盤条件等に応じて数種類に統一され(標準化、規格化)、これにより基礎部を構成する部品、部材の工業製品化が実現でき、また現地における組立等を特別な熟練を必要とせず、一般作業員でもきわめて効率的な施工が可能になる。
【0118】
次に、図3に図示する塔状構造物の基礎部Bの施工方法について説明する(図7(a)~(e)参照)。
(1)最初に、塔状構造物の構築される地盤上に工業製品化された鋼管柱1の下端部を構築する下部鋼管ユニット材4、基礎鋼柱ユニット材31、基礎鋼梁ユニット材27および基礎鋼ブレースユニット材40等の各基礎ユニット材を組み立てて基礎部Bの軸組(骨組)41を構築する(図(a),(b)参照)。
(2)また、軸組41の外周に複数の基礎パネルユニット材19aを軸組41の周方向および上下方向に互いに接合しながら設置して軸組41の周方向に連続する基礎型枠42を組み立てる(図(a),(b)参照)。
【0119】
(3)次に、基礎型枠42の組立てが完了したら、基礎型枠42内の軸組41を一旦解体して撤去する。その際、掘削工事の妨げにならないように軸組41を撤去するものの、基礎型枠(基礎パネルユニット材19a)42の支保工材として一部を残すのが好ましい。
(4)次に、基礎型枠42の内側の地盤を全体にわたって均等に掘り下げて基礎型枠(基礎パネルユニット材19a)42を徐々に沈下させる(図(c),(d)参照)。この場合、基礎型枠(基礎パネルユニット材19a)42の下端部に刃を形成することにより基礎型枠(基礎パネルユニット材19a)42を効率的に沈下させることができる(図(c),(d)参照)。
(5)次に、基礎型枠(基礎パネルユニット材19a)42を所定の支持地盤面まで沈下させたら、支持地盤面上に基礎スラブ23を形成し、その上に基礎部Bの軸組を改めて組み立てる(図(e)参照)。そして、基礎型枠(基礎パネルユニット材19a)42と下部鋼管4との間に掘削土を充填する。
【0120】
図13図16は、本発明の他の実施形態であり、特に上部構造体としての塔状部Aは、間隔をおいて立設された複数の鋼管柱1と各鋼管柱1,1間に架設された複数の水平ユニット材2および斜材ユニット材3とから地上から最上部までほぼ同一径断面の平面視略正三角形の塔状に構築されている。
【0121】
各鋼管柱1は、管軸方向に互いに隣接して配置された複数の下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5とから構築され、各下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5は継手鋼管ユニット材6と複数の継手ボルト11によって接合されている。
【0122】
また、下部鋼管ユニット材4、上部鋼管ユニット材5および継手鋼管ユニット材6の大きさ、形状、位置決め金具7等の接合部材の形状、ボルト孔の位置等に関する構成、および各下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5間の接合方法は、図8図12で説明した通りである。
【0123】
基礎部Bは、各鋼管柱1の柱脚部に形成された柱脚部基礎17と各柱脚部基礎17,17間に形成された複数の基礎梁(布基礎を含む)18とから平面視略円形の枠状に連続しかつ一体に形成されている。
【0124】
各柱脚部基礎17と基礎梁18は、それぞれ各鋼管柱1の柱脚部と各柱脚部間の地盤面下に配置された基礎型枠19と基礎型枠19内に打設されたコンクリート20によって一体に形成され、また、コンクリート20内に補強鉄筋(図省略)が配筋され、各柱脚部基礎17と基礎鋼梁18は、それぞれ複数の地中アンカー21によって地盤に定着されている。
【0125】
基礎型枠19は、各鋼管柱1の柱脚部および隣接する各柱脚部間に、各鋼管柱1を挟んで鋼管柱1の外側と内側にそれぞれ平面視略円形の枠状に連続して設置された外側の基礎パネルユニット材19a(以下「外型枠19a」)および内側の基礎パネルユニット材(以下「内型枠19b」)と、外型枠19aと内型枠19b間に設置され、外型枠19aと内型枠19bとを互いに連結する複数のフォームタイ(登録商標)ボルト22によって構成されている。
【0126】
外型枠19aと内型枠19bは、いずれも塔状部Aの周方向に矩形板状に形成され、かつ人力でも持ち運びと組立て等が容易に可能な形状、大きさに塔状部Aの周方向および上下方向にユニット化され、また、熟練を有しない一般の作業員でもフォームタイ(登録商標)ボルト22その他の接合金具によって容易に組立てと接合が可能なように形成されている。
【0127】
また、外型枠19aおよび内型枠19bとフォームタイ(登録商標)ボルト22その他の接合金具等の形状、大きさ等は塔状部Aの規模(高さ、径等)、設置地盤の地盤条件等に応じて数種類に統一され(標準化、規格化)、これにより基礎部を構成する部品、部材の工業製品化が実現でき、また現地における組立等を特別な熟練を必要とせず、一般作業員でもきわめて効率的な施工が可能になる。
【0128】
また、各鋼管柱1の内側周囲に配置された内型枠19bは、鋼管柱1の外周面に沿って基礎型枠19の内方に平面視略U字形状に大きく膨出する形状に形成されている(図15(a),16(a)参照)。
【0129】
また、外型枠19aと内型枠19bは、いずれも薄鋼板または薄波鋼板、或いはメッシュ鋼板(メッシュパネル等)などから人力でも容易に持ち運び可能な寸法に形成されている。
【0130】
このように形成されかつ配置された外型枠19aと内型枠19bは、複数のフォームタイ(登録商標)ボルト22によって互いに接合され、かつ各鋼管柱1の柱脚部に複数のフォームタイ(登録商標)ボルト22によって固定されている(図15(a),16(a)参照)。
【0131】
なお、外型枠19aと内型枠19bの設置に際しては、鋼管柱1の下端部を構築する下部鋼管ユニット材4を支持部材とすることで、外型枠19aと内型枠19bを平面視略円形状に保持するための支保工材は必要としない。また、外型枠19aと内型枠19bは、基礎型枠としての強度を保持しつつ、人力のみで曲げ変形できるように形成されている。
【0132】
また、柱脚部基礎17は省略することができる。この場合、各柱脚部の外側と内側には外型枠19aと内型枠19bを基礎型枠19の周方向に平行に配置すればよい。
【0133】
そして、外型枠19aと内型枠19bとの間にコンクリート20が打設され、特に簡易な仮設構造物の場合はソイルセメント等が打設されている。
【0134】
なお、基礎部Bの平面形状が特に平面視略円形の枠状であれば、上部構造体としての塔状部の転倒に対する抵抗力が著しく高められて構造的に安定して好ましい。
【0135】
また、基礎部Bの内側に現地掘削土を充填して花壇などの植栽スペースとしたり、或いは周囲の柱脚部基礎17および基礎梁18と一体にコンクリートを打設したり、さらには底部に基礎スラブ23を形成し、注水することにより塔状構造物の転倒を防止する重量体、或いは市街地等における防火貯水槽等として利用することができる。
【0136】
また、基礎部Bの内側は空間のまま放置してもよく、さらには基礎スラブ23と屋根スラブ(図省略)を設けて山岳災害時等の避難用シェルターとすることもできる。
【0137】
なお、基礎スラブ23は、基礎部Bの設計条件により受動土圧のみで基礎反力に対して設計可能な場合は省略することができる。
【0138】
次に、図15(a),(b)に図示する基礎部Bの施工方法について説明すると、特に潜函工法によって施工する場合は基本的に図7(a)~(b)で説明した施工手順で施工することができる。また、基礎型枠として外側の基礎パネルユニット材(外型枠)19aと内側の基礎パネルユニット材(内型枠)19bを設置する。
【0139】
さらに具体的に説明すると、
(1)最初に、地上において各鋼管柱1の柱脚部、すなわち各鋼管柱の下端部を構築する下部鋼管ユニット材4の各柱脚部間に、下部鋼管ユニット材4を挟んでその外側と内側に外型枠19aと内型枠19bを塔状部Aの周方向にそれぞれ配置する。そして、隣接する各外型枠19aどうしおよび各内型枠19bどうしを互いに接合する。また、外型枠19aと内型枠19b間を複数のフォームタイ(登録商標)ボルト22によって互いに接合して、平面視略円形の枠状に連続する基礎型枠19を組み立てる。
【0140】
なお、基礎部Bの深さに応じて外型枠19aと内型枠19bを複数段積層する。また、この段階での各鋼管柱1の下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5は1,2段程度接合する。
【0141】
(2)次に、基礎型枠19内に必要量の補強鉄筋(図省略)を配筋し、コンクリート20を打設して各柱脚部基礎17と各基礎梁18が平面視略円形の枠状に連続する基礎部Bを形成する。
(3)次に、基礎部B(各柱脚部基礎17および基礎梁材18)の直下およびその内側の地盤を均等に掘り下げて排土することにより、基礎部Bを自重により掘削地盤面まで徐々に沈下させる。そして、掘り下げた掘削底部に基礎スラブ23を形成する。
【0142】
(4)また、防火用貯水槽等として深く形成するには(図16(a),(b)参照)、基礎部B(各柱脚部基礎17および基礎梁18)の直下およびその内側をさらに掘り下げて基礎部Bを必要な深さまで徐々に沈下させる。
(5)また同時に、各柱脚部基礎17と基礎梁18の上に新たに基礎型枠19の外型枠19aと内型枠19bを順次積層し、その中にコンクリート20を打設して基礎部Bの周方向および鉛直方向に連続する基礎部B(柱脚部基礎17と基礎梁18)を形成する。そして、掘り下げた底部に基礎スラブ23を形成する(図16(a),(b)参照)。
【0143】
以下、同様にして掘削と基礎部Bの形成を設定された深さまで繰り返すことにより基礎部Bを設定された深さに形成することができる。
【0144】
この施工方法によれば、基礎部B(各柱脚部基礎17および基礎梁18)が、地山の崩落や周囲の地盤沈下等を防止する山留を兼ねるため安全施工が可能であり、また、出来上がりが工事施工者の技量に殆ど左右されず、常に一定の品質を確保することができる。
【0145】
また特に、基礎部Bの内側を人力による潜函工法と同様の方法によって掘り下げることにより、周囲の土を乱すことなく塔状構造物の基礎側面の受動土圧が有効に働いて、転倒に対する安定性を一定に確保することができる。なお、柱脚部基礎17を掘削底よりある程度の高さまで形成し、基礎梁18のみを擁壁として地表部まで連続して形成してもよい。
【0146】
図17図24は、本発明の他の実施形態を図示したものであり、いずれの実施形態においても、各鋼管柱1の下端部を構築する複数の下部鋼管ユニット材4と、下部鋼管ユニット材4の周囲に配置された基礎型枠19と、基礎型枠19の内側(ここでは、「平面視略円形状に組み立てられた基礎型枠19の枠内」をいう)に配置された形鋼柱ユニット材24と基礎鋼梁ユニット材25および基礎鋼梁ユニット材26を備えている。
【0147】
具体的に説明すると、基礎型枠19は1又は複数の鋼管柱1または形鋼柱ユニット材24の周囲を囲むように平面視略円形の枠状に配置されている。基礎型枠19は外型枠19aおよび内型枠19bと、外型枠19aと内型枠19bとを連結する複数のフォームタイ(登録商標)ボルト22から構成されている(図15(a)参照)。また、基礎型枠19内に補強鉄筋(図省略)が配筋され、かつコンクリートが打設されている。
【0148】
また特に、図17に図示する基礎部Bにおいては、基礎型枠19内に想定される平面視略正略三角形の各頂点と対応する地点に鋼管柱1がそれぞれ立設されている。また、隣接する各鋼管柱1,1の下端部を構築する下部鋼管ユニット材4,4間に基礎鋼梁ユニット材25が平面視略正三角形の枠状に架設され、さらに各鋼管柱1と当該鋼管柱1と対峙する基礎鋼梁ユニット材25間に基礎鋼梁ユニット材26が架設されている。
【0149】
各基礎鋼梁ユニット材25の両端部および基礎鋼梁ユニット材26の基礎鋼梁ユニット材25側の端部は、それぞれ基礎型枠19の周壁まで延長され、かつ鋼管柱1の側部と基礎型枠19の周壁にそれぞれ接合されている。
【0150】
また、図18図19に図示する基礎部Bにおいては、平面視略円形の枠状に連続して配置された基礎パネルユニット材19a内に想定される平面視略正略三角形の各頂点と対応する地点に鋼管柱1の下端部を構築する下部鋼管ユニット材4がそれぞれ立設されている。
【0151】
また、隣接する各鋼管柱1,1の柱脚部間、すなわち各鋼管柱1,1の下端部を構築する下部鋼管ユニット材4,4間に基礎鋼梁ユニット材37,37が配置され、各基礎鋼梁ユニット材37,37間に基礎鋼梁ユニット材38,38が複数段に配置され、いずれも平面トラスを構成するように配置されている。
【0152】
また、各基礎鋼梁ユニット材37の中間部と基礎鋼柱ユニット材31間に基礎鋼梁ユニット材39が複数段に配置され、また、各鋼管柱1の下端部、すなわち下部鋼管ユニット材4は、近傍の基礎鋼柱ユニット材31にそれぞれ接合されている。
【0153】
また、平面視略円形の枠状に連続して配置された基礎パネルユニット材19a内には、必要に応じてコンクリートやソイルセメント等の固化材、あるいは現地掘削土が充填されている。
【0154】
また、図20に図示する基礎部Bにおいては、想定される平面視略正三角形の頂点と対応する三地点に、基礎型枠19がそれぞれ平面視略円形の枠状に配置されている。
【0155】
また、各鋼管柱1の下端部を構築する下部鋼管ユニット材4の周囲に基礎型枠19が設置され、各鋼管柱1と基礎型枠19の周壁間に複数の基礎鋼梁ユニット材27が平面視放射状に架設され、その両端部はそれぞれ鋼管柱1の側部と基礎型枠19の周壁に接合されている。
【0156】
図21は、塔状部としての鋼管柱1の柱脚部に形成された基礎部を図示したものであり、図20に図示する塔状部の基礎部Bとほぼ同様の構成により形成されている。
【0157】
すなわち、鋼管柱1の周囲に基礎型枠19が平面視略円形の枠状に設置されている。また、鋼管柱1と基礎型枠19の周壁間に複数の基礎鋼梁ユニット材27が平面視放射状に架設され、各基礎鋼梁ユニット材27の両端部はそれぞれ鋼管柱1の側部と基礎型枠19の周壁に接合されている。
【0158】
図22に図示する塔状部の基礎部Bにおいては、基礎型枠19内に想定される平面視略正四角形の各頂点と対応する各地点に、鋼管柱に代えて形鋼柱24が立設されている。また、隣接する各形鋼柱24,24の柱脚部間に基礎鋼梁ユニット材25が平面視略正四角形の枠状(井桁状)に架設されている。そして、基礎梁ユニット材26が各形鋼柱24の側部を通って基礎梁ユニット材25によって形成される平面視略正四角形枠の対角線方向と平行に架設されている。
【0159】
形鋼柱24は、H形鋼やL形鋼などの形鋼からなる複数の上部形鋼ユニット材と下部形鋼ユニット材を軸方向に互いに接合することにより構築され、各上部形鋼ユニット材と下部形鋼ユニット材間は複数の接合プレートと接合ボルトによって接合されている。
【0160】
また、基礎鋼梁ユニット材25および基礎鋼梁ユニット材26の両端側部は、それぞれ基礎型枠19の周壁まで延長され、かつ形鋼柱24の側部と基礎型枠19の周壁にそれぞれ接合されている。
【0161】
また、図23図示する基礎部Bにおいては、基礎型枠19内に複数の形鋼柱24が基礎型枠19の周方向に間隔をおいて立設されている。また、各形鋼柱24の柱脚部に柱脚部基礎17がそれぞれ形成されている。
【0162】
そして、図24に図示する基礎部Bにおいては、想定される平面視略正四角形の各頂点に対応する四地点に基礎型枠19が平面視略円形の枠状に配置され、各基礎型枠19内に形鋼柱ユニット材24がそれぞれ立て付けられている。さらに、形鋼柱24と基礎型枠19の周壁間に複数の基礎鋼梁ユニット材27が放射状に架設され、その両端部はそれぞれ形鋼柱24の側部と基礎型枠19の周壁に接合されている。
【0163】
いずれの実施形態においても、基礎型枠19(外型枠および内型枠とフォームタイ(登録商標)ボルトその他の接合金具等)の形状、大きさ等と、基礎鋼梁ユニット材25,26,27および当該基礎鋼梁ユニット材25、26および27を接合する接合金具の形状、寸法等は、塔状部Aの規模(高さ、径等)、設置地盤の地盤条件等に応じて一または数種類に統一されている(標準化、規格化)。
【0164】
これにより車両の入りにくい住宅密集地やアクセスの困難な山岳地帯などの現地における施工の簡略化と省力化が可能になり、組立等を特別な熟練を必要とせず、一般作業員でもきわめて効率的に行うことができる。
【0165】
そして、鋼管柱1または形鋼柱24と基礎部Bとの間にコンクリート、ソイルセメント、或いは現地掘削土が充填されている。また、注水して防火用貯水槽などとして利用することもできる。なお、基礎型枠19と鋼管柱1および基礎鋼梁ユニット材25.26および基礎鋼梁ユニット材27は、現地で組み立てられてもよいが、工場などで工業製品として組み立てることにより、品質の向上が図れると共に、廃材の発生等を防止することができる。
【0166】
また、形鋼柱24を構成する上下形鋼柱ユニット材4,5には山形やH形鋼が用いられ、また、基礎鋼梁ユニット材25,26および27にはH形鋼などの形鋼が用いられ、かつ形成される基礎部Bの深さに応じて複数段に配置されている。
【0167】
[鋼管柱と水平ユニット材および斜材ユニット材との接合部]
図25図26は、鋼管柱1と鋼管柱1の側部に接合された水平ユニット材2および上下斜材ユニット材3,3との接合部を図示したものである。
【0168】
図25において、水平ユニット材2は、隣接する鋼管柱1,1の下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との継手部間に水平に架設され、また、上下斜材ユニット材3,3は下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との上下継手部間に対角線状に架設され、これにより塔状部Aは鉛直方向に連続する側面視トラス構造として構築されている。
【0169】
また、各水平ユニット材2の両端部と上下斜材ユニット材3,3の上下両端部は、それぞれ下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との継手部に接合金具28を介し、複数の接合ボルト29によって接合されている。
【0170】
接合金具28は、下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5との継手部に下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の外周面に沿って管軸方向に添え付けられ、かつ下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の外周壁に複数の継手ボルト11によって止め付けられている。なお、継手ボルト11は下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5とを接合する継手ボルトを兼ねている。
【0171】
接合金具28は、下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の外周壁に複数の継手ボルト11によってボルト止めされた取付け部28aと、取付け部28aの両側縁端部に形成され、水平ユニット材2および上下斜材ユニット材3,3の端部がそれぞれ接合ボルト29によって接合された接合部28b,28bを有している。
【0172】
取付け部28aは下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の外周面に沿って下部鋼管ユニット材4および上部鋼管ユニット材5の周方向に円弧状に形成され、また取付け部28aの両縁端部および接合部28b,28bに、それぞれ継手ボルト11と接合ボルト29が貫通する複数のボルト孔が形成されている。
【0173】
なお、接合金具28は、一枚の鋼板から簡単に形成することができ、中央部分の取付け部28aと両端の接合部28b,28を曲げ加工により簡単に形成することができる。
【0174】
また、水平ユニット材2と上下斜材ユニット材3,3は、いずれもアングル材(山形鋼)または溝形鋼などから形成され、また水平ユニット材2と上下斜材ユニット材3,3はいずれも、図示するように2本抱き合わせて用いることができる。
【0175】
なお、基礎部Bと同様に水平ユニット材2および上下斜材ユニット材3の径と長さ、接合金具28の形状と寸法、さらに接合ボルト29の径等を、前記塔状部Aの規模(高さ、径等)、前記塔状部Aが構築される敷地条件(広さ、高低差等)に応じて複数種類に統一することにより(規格化、標準化)、これらの部材、部品の製作コストの削減と現地における短縮施工、省力化、簡略化施工等を図ることができる。
【0176】
また、図26に図示するように、下部鋼管ユニット材4と上部鋼管ユニット材5の外周壁に連結プレート30を直に溶接し、当該連結プレート30に水平ユニット材2と上下斜材ユニット材3,3の端部が接合ボルト29によってボルト締結される簡単な接合方法でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、上部構造体としての塔状部を支える基礎部を前記塔状部と一体化し、前記基礎部の形状、大きさ等を前記塔状部の規模(高さ、径等)や前記基礎部の敷地条件(広さ、高低差等)、地盤条件等に応じて、複数種類に統一することにより(標準化、規格化)、前記基礎部の工業製品化を実現し、これにより前記基礎部を構成する部材、部品の製作コストの削減と、現地における短縮施工、省力化、簡略化施工等を可能とし、特に車両の入りにくい住宅密集地やアクセス困難な山岳地帯などの地にあっても、大型重機や特別な技術を必要とせず、短期間内でほぼ人力のみで効率的にかつ低コストで構築することができる。
【符号の説明】
【0178】
A 塔状部、B 基礎部、S 間隙部
1 鋼管柱(鋼柱)、2 水平ユニット材、3 斜材ユニット材、
4 下部鋼管ユニット材(下部鋼柱ユニット材)、
5 上部鋼管ユニット材(上部鋼柱ユニット材)、
6 継手鋼管ユニット材、7 位置決め金具、7a 水平リブ、
7b 垂直リブ、8 切欠き部、9 ボルト孔、
10 継手ナット、11 継手ボルト、
12 接着剤または無収縮モルタル、
13 パッキン・シール材、14 蓋、15 充填用チューブ、16 位置決め金具、17 柱脚部基礎、
18 基礎梁(布基礎含む)、
19 基礎型枠、19a 外型枠(外側基礎パネルユニット材)、
19b 内型枠(内側基礎パネルユニット材)、20 コンクリート、21 地中アンカー、22 フォームタイ(登録商標)ボルト、
23 基礎スラブ、24 形鋼柱、
25、26、27 基礎鋼梁ユニット材、28 接合金具、
29 接合ボルト、30 接合プレート、
31 基礎鋼柱ユニット材、32 アンカー材、
33 簡易なジャッキ、34 基礎ユニット材、
35 アングル材、36 固定ボルト、
37 基礎鋼梁ユニット材、38,39 基礎鋼梁ユニット材、
40 基礎鋼ブレースユニット材、41 基礎部の軸組、
42 基礎型枠。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26