(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149405
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】マイクロジェネレーターと光源を備える計時器
(51)【国際特許分類】
G04C 10/00 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G04C10/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024047651
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】23167062.1
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエルパスクヮーレ・トルトラ
(72)【発明者】
【氏名】バティスト・イノー
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ジャック・ボルン
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101DA00
2F101DE06
2F101DE12
2F101DE13
2F101DJ04
(57)【要約】
【課題】 照明手段にパワー供給するためのマイクロジェネレーターを備える計時器を提供する。
【解決手段】 本発明の一態様は、マイクロジェネレーター(100)と、少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)とを備える計時器に関し、マイクロジェネレーター(100)は、ステーター(20)及びローター(10)によって形成され、少なくとも1つのコイル(11)を備え、発光ダイオード(31、32)は、電気的及び/又は電子的回路を介して直接的に又は間接的に、少なくとも1つのコイル(11)によってパワー供給され、コイル(11)は、ステーター(20)に対して回転するときに誘導された電流を供給する。ローターは、少なくとも1つの発光ダイオード、コイル、及び適切な場合には電気的及び/又は電子的回路、によって形成されるすべての電気的及び電子的装置を担持する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロジェネレーター(100)と、少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)とを備える計時器(1000)であって、
前記マイクロジェネレーター(100)は、ステーター及びローターによって形成され、少なくとも1つのコイル(11)と、永久磁石(25)とを備え、
前記発光ダイオード(31、32)は、電気的及び/又は電子的回路(37、38)を介して直接的に又は間接的に、少なくとも1つの前記コイル(11)によってパワー供給され、
前記ステーターは、前記永久磁石を担持し、前記ローターは、前記ローターが前記ステーター(20)に対して回転するときに誘導電流にパワー供給する前記少なくとも1つのコイルを担持し、
前記ローター(10)は、前記少なくとも1つの発光ダイオード、前記少なくとも1つのコイル、及び適切な場合には前記電気的及び/又は電子的回路、によって形成されるすべての電気的及び電子的装置を担持する
ことを特徴とする計時器(1000)。
【請求項2】
前記永久磁石は、軸方向の射影において、前記ローターが回転しているときに前記ローターによって定められる円状面の範囲内に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器(1000)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記発光ダイオード(31、32)は、前記少なくとも1つの前記発光ダイオードが前記マイクロジェネレーター(100)の前記ステーター(20)に対して回転するときに、少なくとも1つの前記コイル(11)によって直接パワー供給される
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器(1000)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記発光ダイオード(31、32)は、グレーツブリッジ整流器(37)を備える前記電気的及び/又は電子的回路を介して、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ステーター(20)に対して回転しているときに誘導電流を供給する少なくとも1つの前記コイル(11)によって、間接的にパワー供給される
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器(1000)。
【請求項5】
前記ローター(10)は、好ましくは直径方向にて反対側にあり反対の極性を有するように構成している、少なくとも1対の前記発光ダイオード(31、32)を担持する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の計時器(1000)。
【請求項6】
前記計時器に含まれるいずれの電気的及び/又は電子的デバイスも、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の計時器(1000)。
【請求項7】
前記ローター(10)と前記ステーター(20)は、前記マイクロジェネレーター(100)の回転軸(D)を中心に同軸に取り付けられ、
前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)は、前記回転軸(D)に対して偏心して取り付けられ、
したがって、各発光ダイオード(31、32)は、前記ローター(10)が回転しているときに円状面を描き、
前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)は、前記計時器(1000)のユーザーに見える前記計時器(1000)の少なくとも1つの可視部分に発する光の少なくとも過半分を供給して、前記計時器の前記少なくとも1つの可視部分を明るくするように構成している
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の計時器(1000)。
【請求項8】
前記ローター(10)には、開口(17)がある穴あきリング(18)を担持しているハブ(19)があり、これによって、前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)が発する光が、この発された光を前記計時器の前記少なくとも1つの可視部分の方へと誘導する手段の方へと通ることを可能にする
ことを特徴とする請求項7に記載の計時器(1000)。
【請求項9】
前記計時器は、前記マイクロジェネレーター(100)の近くに、少なくとも1つの静的光ガイド構造(40)を有し、
前記静的光ガイド構造(40)は、前記ローターが回転しているときに、前記ローターの任意の角位置において、前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)が発する光の少なくとも過半分を集め、
そして、この発された光を前記計時器の前記少なくとも1つの可視部分の方へと導いて、前記少なくとも1つの発光ダイオードが発しているときに、前記可視部分の実質的に一定かつ/又は実質的に均一な照明を得るように構成している
ことを特徴とする請求項7に記載の計時器(1000)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの静的光ガイド構造(40)は、少なくとも1つの光ガイド(45)を備え、
前記光ガイド(45)には、一方において、前記少なくとも1つのマイクロジェネレーター(100)が回転しているときに前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)が発する光を受けて、この発された光を前記光ガイド(45)内へと導入するように構成している少なくとも1つの導入及び注入領域(41)があり、
また、他方において、前記光ガイド内へと導入された光が出て前記光ガイドから抽出される少なくとも1つの出口及び抽出領域(42)があり、
前記少なくとも1つの出口及び抽出領域は、前記計時器(1000)の前記少なくとも1つの可視部分の特定の照明を得るように構成している
ことを特徴とする請求項9に記載の計時器(1000)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの導入及び注入領域(41)は、前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)の発光領域に対向しており、前記光ガイド(45)の内部の光を結合するように構成している少なくとも1つの結合パターン化領域(805)を含み、
これによって、前記光ガイド(45)と前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)の間に遠隔光結合をもたらし、
前記光ガイド(45)の受けコーンに位置する光線のいくつかは、それらの光線が前記少なくとも1つの出口及び抽出領域に入射されるまで、前記光ガイド(45)の内部の全反射によって導かれ続ける
ことを特徴とする請求項10に記載の計時器(1000)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの出口及び抽出領域(42)は、少なくとも1つの抽出パターン化領域(804)を含み、
前記抽出パターン化領域(804)には、それぞれ0.2mm未満の直径を有する小さな別個の反射パターンの分布があり、前記光ガイド(45)内に導入された光を抽出し、その光を前記計時器(1000)の前記少なくとも1つの可視部分の方へと実質的に均一に分配するように設けられる
ことを特徴とする請求項10に記載の計時器(1000)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの抽出パターン化領域(804)は、抽出が均一ではなく単位面積当たりの抽出された光の強度の係数が面積全体にわたって一定の値ではないようにパターン化されている
ことを特徴とする請求項12に記載の計時器(1000)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの抽出パターン化領域(804)は、抽出された前記光の強度が実質的に一定であるように構成している
ことを特徴とする請求項13に記載の計時器(1000)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの導入及び注入領域(41)及び前記少なくとも1つの出口及び抽出領域(42)は、前記マイクロジェネレーター(100)の前記回転軸(D)に垂直な平面への射影において、重なり合わない
ことを特徴とする請求項10に記載の計時器(1000)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)の前記発光領域は、不透明部分(801)によって、前記計時器(1000)のユーザーが見えないように隠されている
ことを特徴とする請求項15に記載の計時器(1000)。
【請求項17】
前記計時器は、前記静的光ガイド構造(40)の上に配置される表盤(800)を備え、前記表盤(800)の第1の部分は、前記静的光ガイド構造(40)によって明るくすることができる前記計時器の前記可視部分である第1の部分であり、
前記表盤(800)の第2の部分は、前記不透明部分(801)である
ことを特徴とする請求項16に記載の計時器(1000)。
【請求項18】
前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)からの光を拡散させて前記計時器(1000)の一部を間接的に明るくすることができる前記少なくとも1つの静的光ガイド構造(40)は、前記計時器(1000)の前記少なくとも1つの可視部分において少なくとも1つの部分的透過部分(802)を含む
ことを特徴とする請求項9に記載の計時器(1000)。
【請求項19】
前記計時器は、前記マイクロジェネレーター(100)を解放し停止するための解放停止デバイスを備え、
前記解放停止デバイスは、ユーザーによってアクチュエートされて前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)の駆動をトリガーすることができる制御デバイス(400)を備え、
前記制御デバイス(400)は、制御メンバー、及び/又は押しボタン、及び/又はボルト、及び/又は前記計時器に含まれる機構(600)によってアクチュエートすることができる係合機構(500)を備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の計時器(1000)。
【請求項20】
前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)を駆動するように構成している少なくとも1つの駆動機構を備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の計時器(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器の分野、より詳細には、特定の回路、特に照明手段、にパワー供給するためのマイクロジェネレーターを備える機械式ムーブメントが装着された計時器の分野、に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な付加的な照明システムを備える機械式の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)が市販されている。欧州特許文献EP3838424に開示されている1つの特定の形態において、「ジェネレーター」とも呼ばれるマイクロジェネレーターによって照明デバイスが駆動され、その回転はメインばねによって確実にされ、この照明デバイスは、マイクロジェネレーターのローターの周部に位置する領域にある計時器用ムーブメントの固定支持体上に配置される。マイクロジェネレーターのコイルは、そのステーターによって担持され、ローターは、典型的には、永久磁石を担持している。
【0003】
既知の照明システムは、機械式ムーブメントが取り付けられた携行型時計、特に、携行型時計の機械的性質を可能なかぎり維持することが重要な最高級の携行型時計、に大きな課題を発生させてしまう。実際に、このような既知の照明システムは、少なくとも1つの発光要素と、マイクロジェネレーターのローターの周部の固定支持体上に配置される電子回路及び電気回路を備え、この電子回路及び電気回路は、一方において、電子的なものを携行型時計に組み入れ、他方において、照明デバイス自体(すなわち、光生成に関わる要素)を、ローターによって定められる水平面を超えて拡張する。これは、まず、ステーターコイルの範囲によって行われ、次に、少なくとも1つの発光要素、電子回路、及び前記コイルに、そして、前記少なくとも1つの発光要素に、電子回路を接続する電気回路(典型的にはPCB)の構成によって行われる。これらの静的な電気的及び電子的部品は、一緒に、マイクロジェネレーターのローターによって定められる面にわたって、また、その上に、比較的大きな面積を占め、消費者に対して携行型時計のハイブリッド的な性質を強調する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に、従来技術の上記の問題を解決することを目的とする。本発明についての以下の説明を読むことによって、他の目的も理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、請求項1に記載の計時器に関し、この計時器は、少なくとも1つのコイル、及び少なくとも1つの前記コイルによって駆動される少なくとも1つの発光ダイオードを担持するローターと、永久磁石を備えるステーターとを備えるマイクロジェネレーターを備える。
【0006】
本発明の第1の特徴によると、前記ローターは、前記少なくとも1つの発光ダイオード、前記少なくとも1つのコイル、及び適切な場合に前記少なくとも1つのコイルと前記少なくとも1つの発光ダイオードの間に配置される電気的及び/又は電子的回路によって形成されるすべての電気的及び電子的装置を担持する。
【0007】
1つの有利な特徴によると、前記永久磁石は、軸方向への射影において、前記ローターが回転しているときに前記ローターによって定められる円状面の範囲内に配置される。
【0008】
別の有利な特徴によると、少なくとも1つの前記発光ダイオード、好ましくは前記少なくとも1つの発光ダイオードは、前記マイクロジェネレーターの前記ステーターに対して回転するときに、少なくとも1つの前記コイルによって直接パワー供給される。
【0009】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴を一層明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】照明デバイスを備える携行型時計に適用された本発明の例示的なアプリケーションの斜視図を概略的に示している。図の左側には、バレルを示しており、このバレルは、ギア列を介してマイクロジェネレーターにパワー供給し、このマイクロジェネレーターは、ステーターに対して回転することができるローターを備える。このマイクロジェネレーターは、少なくとも1つのコイルによってパワー供給されローターの回転軸に対して偏心してローターに取り付けられた少なくとも1つの発光ダイオードを担持し、一方、ステーターは永久磁石を担持する。ローターは、ラチェットを担持し、このラチェットは、その回転を許可したり防いだりするようにクリック機構と連係する。矢印は、ジェネレーターを停止し解放するために回転することができるクリック機構をアクチュエートするためのデバイスを概略的に示している。
【
図2】
図2Aは、
図1に示しているマイクロジェネレーターの斜視図を概略的に示している。ステーターの2つのリングは、交番構成の極性の永久磁石を担持しており、ローターは、2つのリングのエア間隙内にてコイルを担持する。矢印は、ローターの回転軸に平行な単一方向における交番構成の磁場の向きを示している。ローターは、この回転軸を中心に対称的に取り付けられた2つの発光ダイオードを担持しており、これらは両方とも偏心している。
図2Bは、
図1のマイクロジェネレーターを上から見た図を示している。
【
図3】
図1及び2A、2Bに示しているマイクロジェネレーターの分解斜視図を概略的に示している。ローターディスクは、12個のコイルを担持しており、ステーターリング内に12個の磁石の列が二重あり、発光ダイオードの位置が偏心していることがわかる。
【
図4】
図1~3のマイクロジェネレーターのローターについての回転軸の方向において上側から見た図を概略的に示している。この図は、コイルの間及びコイルと発光ダイオードの間の接続構成を示している。軸ハブが、ローターを支持し、さらに、8つの開口がある穴あきリングを担持して、各発光ダイオードが発した光がその開口を通過して計時器の照明デバイスの方へと進むことができる。
【
図5】
図1~4のマイクロジェネレーターの回転軸を通過するV-V線に沿った断面の図を示している。この有利な例において、マイクロジェネレーターの寸法構成は非常に小さく、ステーターケージの直径は8.4mm、厚みは1.4mmである。
【
図6】特定の例示的な場合についての、
図1~5のマイクロジェネレーターの回転軸を通過する、本発明に係る計時器の照明デバイスについての断面図を概略的に示している。この場合は、図の上部に示している携行型時計の表盤の環状領域を明るくするものであり、この表盤の環状領域には、不透明の中央部分と、部分的透過性の環状周部があり、その下に、静的光ガイド構造があり、この静的光ガイド構造は、それ自体が光マイクロジェネレーターの上に位置しており、この光マイクロジェネレーターは、ここでは、表盤の不透明部分によって、隠れている。この静的光ガイド構造には、不透明部分の下、かつ、表盤の部分的透過部分の下に、光ガイドがあり、この光ガイドには、一方において、光ガイドにおいて第1の矢印によって表しているように、マイクロジェネレーターのローターが回転しているときに各発光ダイオードの軌道に重なり合い各発光ダイオードが発する光を光ガイドに導入するように構成している導入及び注入領域があり、他方では、表盤の部分的透過部分の下において、周部にある第2の矢印によって表しているように、光が出て光ガイドから抽出される領域がある。マイクロジェネレーターと第1の矢印の上に、不透明部分によって隠された領域を識別することができ、この領域から2つの小さな矢印が広がっており、この領域は、光ガイドと発光ダイオードの間の遠隔光結合のための、拡散性のプロファイルによってパターン化された結合領域である。この結合領域の隣の周部の方において、出口及び抽出領域には、光ガイドの内側から光を抽出し明るくする可視部分の方へと実質的に均一に分配するために、小さな並置反射パターンの分布を有する抽出パターン化領域がある。
【
図7】提案しているデバイスに対応する電気回路を概略的に示しており、マイクロジェネレーターが交流信号を発生させ逆極性の2つの発光ダイオードと並列に接続されている。したがって、信号の交番動作中に、ダイオードの一方又は他方が発光する。30Hzよりも大きい周波数の場合、目はこの交番動作を識別することができず、両方のダイオードが同時に点灯していると認識する。
【
図8】150Hzでの回転の場合における、発光ダイオードにおける電流(縦軸)を時間(横軸)の関数として示したグラフである。
【
図9】発光ダイオードにおける平均電流(縦軸)をローターの回転周波数(横軸)の関数として示したグラフである。
【
図10】発光ダイオードによってローターに与えられる平均制動トルク(縦軸)をローターの回転周波数(横軸)の関数として示したグラフである。
【
図11】ローターを備える回路の1つの代替的実施形態を概略的に示しており、各発光ダイオードは、グレーツブリッジ(Graetz bridge)整流器とこの整流器のための出力キャパシターを備える電気的及び/又は電子的回路を介してコイルから間接的にパワー供給される。
【
図12】
図11に示している接続による時間経過に応じた発光ダイオードの端子の間の電圧変化を示したグラフである。
【
図13】コイル抵抗(縦軸)に対するコイル線の厚み(横軸)の影響を示した曲線のグラフである。
【
図14】発光ダイオードにおける電流(縦軸)に対するコイル線の太さ(横軸)の影響を示す曲線のグラフである。
【
図15】誘導電圧(縦軸)に対するコイル線の太さ(横軸)の影響を示す曲線のグラフである。
【
図16】バレルの合計ディスチャージ時間(縦軸)に対するコイル線の厚み(横軸)の影響を示す曲線のグラフである。
【
図17】マイクロジェネレーターを解放し停止するためのデバイスを備える計時器を概略的に示しており、このマイクロジェネレーターは、このマイクロジェネレーターのローターの駆動をトリガーするようにユーザーによってアクチュエートすることができる制御デバイスに関連づけられており、あるいは計時器用ムーブメントに組み込まれた係合機構に関連づけられている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、光マイクロジェネレーターを用いて計時器の特定の領域を明るくすることを提案するものであり、以下において添付の図面を参照しながら説明する。
【0012】
本発明は、計時器タイプのマイクロジェネレーター100を備える計時器1000に関する。このマイクロジェネレーター100は、永久磁石25を備えるステーター20と、コイル11と少なくとも1つの発光ダイオード31、32を含むローター10とによって形成され、前記発光ダイオード31、32は、直接的に、又は電気的及び/又は電子的回路37、38を介して間接的に、ステーター20に対して回転するときに誘導電流を供給する前記コイル11の少なくとも1つによって、パワー供給される。本発明によると、ローター10は、前記少なくとも1つの発光ダイオードと、前記コイルとによって形成され、適切な場合に、前記少なくとも1つのコイルと前記少なくとも1つの発光ダイオード(以下、「LED」とも呼ばれる)の間に配置される前記電気的及び/又は電子的回路とによっても形成される、すべての電気的及び電子的装置を担持する。
【0013】
有利なことに、永久磁石25は、ローター10の回転軸に平行な方向における軸方向の射影において、ローター10が回転しているときにローター10によって定められる円状面の範囲内に配置される。
【0014】
図1~5は、コイル11、特に平形(ウェハー状)のコイル、を含むローター10と、ステーター20とを示しており、このステーター20は、永久磁石25の第1の部分を担持する、L字状の半径方向の断面がある環状ベース21と、前記環状ベース21を閉じ、永久磁石25の第2の部分を担持する環状フランジ22とを含む。環状ベース21と環状フランジ22は、3つのまっすぐな部分があるC字状(コの字状)の半径方向の断面があるステーターケージを形成する。マイクロジェネレーター100の直径は、典型的には、6mm~15mmの範囲内である。
【0015】
環状ベース21とフランジ22は、好ましくは、永久磁石25の磁場のための外側クロージャーを形成する強磁性材料によって作られ、この永久磁石25は、軸方向に磁化されており、ローター10のコイル11に対向するようにステーターケージの内側に配置される。より一般的には、コイル11と永久磁石25は、ローター10が回転しバレル200や任意の適切な駆動手段によって直接的に又は間接的に駆動されるときに、コイル11が永久磁石25の上を少なくとも部分的に通るように構成している。したがって、これによって、永久磁石25が軸方向に磁化されており、コイル11の軸方向の両側にそれぞれ位置する永久磁石25の2つのレベルの間の空間においてローター10が中間レベルに配置されたコイル11を担持するようなタイプの「3レベル」構造を有するマイクロジェネレーター100が得られる。軸方向に対向する磁石25どうしは、同じ極性を有し、同じレベルにある2つの隣り合う磁石どうしは、反対の磁気的極性を有する。したがって、伝統的な形態で、磁石の2つのレベルのそれぞれにおける極性は、交番構成になる。
【0016】
好ましい1つの代替的実施形態において、
図4に示しているように、少なくとも1つの発光ダイオード31又は32はそれぞれ、マイクロジェネレーター100のステーター20に対して回転するに従って少なくとも1つのコイル11によって直接パワー供給され、このパワー供給は、金などで作られた接触パッド及び2つの環状トラックを例外として、前記少なくとも1つの発光ダイオードと前記少なくとも1つのコイルの間にいずれの電気的及び/又は電子的回路がないように行われ、特にキャパシター及び/又は他の電気的及び/又は電子的部品がないように行われる。
【0017】
別の1つの代替的実施形態において、
図11に示しているように、少なくとも1つの前記発光ダイオード31、32は、グレーツブリッジ整流器37及びこの整流器37の出力キャパシター38を備える電気的及び/又は電子的回路を介して間接的に、マイクロジェネレーター100の、ステーター20に対して回転しているときに誘導電流を供給する少なくとも1つのコイル11によって、パワー供給される。
【0018】
具体的には、
図1~5に示しているように、ローター10は、好ましくは直径的に反対側にあり互いに逆極性であるように構成している、一対の発光ダイオード31、32を担持する。
【0019】
具体的には、図示していない1つの代替的実施形態において、ローター10は、互いに90°離れた位置にあり逆極性の対を形成するように構成している4つの発光ダイオード(「LED」とも呼ばれる)(好ましくは、同じ極性の2つの直径的に反対側のLED)を担持する。
【0020】
有利な1つの代替的実施形態において、計時器が備えるいずれの電気的及び/又は電子的デバイスも、マイクロジェネレーター100のローター10に取り付けられる。したがって、機械式計時器は、ローター10の外側に電気的エネルギーを伝達するための配線又は手段をなしですますことができる。
【0021】
特に、
図1~5に示しているように、ローター10とステーター20は、マイクロジェネレーター100の回転軸Dを中心に同軸に取り付けられ、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、前記回転軸Dに対して偏心して取り付けられ、したがって、各発光ダイオード31、32は、ローター10が回転しているときに環状面を描く。また、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、計時器1000のユーザーに見える計時器1000の少なくとも1つの可視部分に発する光70の少なくとも過半分を与えて、この少なくとも1つの可視部分を明るくするように構成している。
【0022】
したがって、発光ダイオード31、32は、最良の結果を得るためにローター10上に配置され、外側構造は、光が発される側にて、発された光70の大部分がこの外側構造を通過することができるように穴が開いていなければならず、これによって、好ましくは、発された光の実質的にすべてがこの外側構造を通過することができるようにする。
【0023】
また、具体的には、
図4及び5に示しているように、ローター10には、駆動ピニオン19aがあるハブ19があり、このハブ19は、下側環状構造52と、セラミックスなどによって作られたディスク54と、開口17がある歯車18とを担持し、前記ディスク54は、このディスク54の周部開口内に配置されたコイル11のため、そして、ディスクの2つの対応する開口55内に配置された2つのLED31、32のための支持体を形成し、前記歯車18は、LED31、32の発光面の上に配置され、前記開口17は、前記LED31、32それぞれが発する光70が、この発された光を計時器の前記少なくとも1つの可視部分の方へと導くための手段の方へと通ることを可能にするように構成している。歯車18は、マイクロジェネレーター100をロックし解放するためのデバイスを形成するラチェットである。下側環状構造52は、好ましくは、開口55、接触パッド65、接着剤ドロップ68及び環状トラック66をマスクするために、不透明であり開口がない。接触パッド60、及びコイル11とそれらの接触パッド60の間の接続は、ステーターケージのベース22によって観察者が見えないように隠されている。したがって、環状構造52とベース22の間に位置する円状溝を通して見ることができることがある2つの接触パッド64のごく一部はさておき、光マイクロジェネレーター100は、高貴な外観を有し前記光マイクロジェネレーターの内側領域に位置しているLED発光面を例外として、いずれの電気的又は電子的要素をも隠す。このような構成は、最高級の機械式ムーブメントに組み込まれる照明デバイスに特に適している。また、電気接続は、金によって作ることができる。
【0024】
ローター10は、バレルギア列300を通してバレル200によって駆動される。上記のように、マイクロジェネレーター100は、ローターをロックし解放するデバイス400を備え、このデバイス400は、ラチェット18とクリック機構92を備え、このデバイス400は、音楽又はストライク機能付き携行型時計におけるガバナーの場合と同様に、マイクロジェネレーターをオンデマンドで活性化させることを可能にする。このデバイス400は、オンデマンドでマイクロジェネレーターの回転を開始させ停止させるために用いられる。したがって、1回のバレルのチャージの際に照明システム(光マイクロジェネレーター)を数回素早くオンにすることができる。
【0025】
ローター10は、特定の数の小さなコイル11と、少なくとも1つの発光ダイオード、特に2つのLED31、32、を周部に担持する支持ディスク54(特に、セラミックス材料によって作られているもの)からなるモジュールを備える。ステーター20の磁石25の磁場におけるコイル11の回転は、誘導電圧、したがって、誘導交流を発生させ、これは、
図7に示している対応する配線図に従って発光ダイオードにパワー供給する。コイル11は、極性が交番構成となるように直列に接続され、各コイルの内端61と外端62はそれぞれ、支持ディスク54に形成された2つの接触パッド60に接続される。この複数のコイルは、特に、一連のコイルの2つの端コイルの対応する2つの端のため、そして、これらのコイルへの第1のLED31の電気接続67のための2つの接触パッド64と、第2のLED32の電気接続67のための2つの接触パッド65と、2つの接触パッド64をそれぞれ2つの接触パッド65に接続する2つの環状トラック66とからなるプリント回路ボードを介して、2つのLEDに接続されている。2つのLED31、32は、コイル11によってLEDに直接パワー供給するためにこのシステムにおいて発生する電流の交番性を利用するために、逆バイアスされている。図示している有利な代替的実施形態において、接触パッド64及び65、2つの環状トラック66は、支持ディスクに直接印刷/堆積される。これによって、合成材料によって作られた伝統的なPCBが不要になる。なお、電気接続67は、さらに、支持ディスク54にある対応する開口55内にてLEDを固定するために役立つ接着剤ドロップ68によって保護されている。
【0026】
したがって、
図7に示しているような単純な電気回路を用いることができる。
【0027】
そして、各発光ダイオード31、32を流れる電流i
LEDは、経時的に
図8に示している形態となる。
【0028】
マイクロジェネレーターの回転周波数に影響するのは、
図9に示している平均電流i
LED AVGであり、これによって、
図10に示しているような平均制動トルクC
M FRがローターに与えられる。
【0029】
1つの特定の例において、バレルは初期に20μNmをローターに出力し、約140Hzの初期回転速度が得られ、この回転速度は、バレルがディスチャージされるに従って減速する。発光ダイオード(LED)によって消費される電力がなければ、このアセンブリーは、もっと速く回転する。コイルにおいて誘導される電圧に関して、KUがコイルの誘導電圧係数(コイルの誘導電圧の最大値)であり、nBOBがコイルの巻数であり、ωが回転速度(rad/s)であり、すべてのコイルが直列にて交番構成になっていることを考慮すると、誘導電圧は、以下のVINDとなる。
【0030】
VIND=ω・nBOB・KU・sin(ω・nBOB/2t)
である。
【0031】
電気脈動は、(nBOB/2)・(回転速度ω)となる。なぜなら、誘導電圧は、磁束の変化の導関数であり、これは最初は+から-に変わり、次に-から+に変わるためである。したがって、誘導電圧は、回転速度、したがって、回転周波数、の線形関数である。
【0032】
発光ダイオードにおける誘導電圧と電流の関係は、以下のショックレー式で与えられる。ここで、Vtは室温で26mVであり、nは1~2の範囲内の品質パラメーターである。
I=IS(eVIND/nVt-1)
【0033】
図5に示しているように、磁石とコイルの寸法構成は、外径8.4mm、ハブを除く合計厚み1.4mmの比較的小さなステーターケージに最適化されている。
【0034】
ワイヤの巻数と直径は、発光ダイオードの動作を確実にするように構成している。異なる数のコイルの巻数、磁石、異なる寸法構成も可能である。磁石25の体積を増加させたりエア間隙を小さくしたりすることによって、コイル11と磁石25の間の結合を大きくすることができる。磁束の変動を最大化するために、磁石25とコイル11どうしを可能なかぎり近くに配置する。コイル11の体積を大きくしたりワイヤの直径を小さくしたりすることによって、誘導電圧係数Ku(回転速度に対する誘導電圧の比として定められる)を大きくすることができるが、コイルの抵抗も大きくなる。この場合、発光ダイオードにおける電流の強度は低下するが、ローターの回転速度も低下するため、バレルのディスチャージ時間と照明時間が増加する。
図13~16は、コイル11のワイヤの太さが、抵抗に及ぼす影響(
図13)、ダイオードの電流に及ぼす影響(
図14)、誘導電圧に及ぼす影響(
図15)、及びバレルの合計ディスチャージ時間に及ぼす影響(
図16)を示している。
【0035】
例えば、14μmのワイヤ直径を選択すると、バレルがチャージされた状態で、毎秒120回転のローター速度が得られ、これは、ローターに対して約5500回転のパワーリザーブによって、40秒よりも長く続く照明が可能になる。
【0036】
そして、この潜在的な光エネルギーを用いて、ユーザーに見える計時器1000の領域を効率的に明るくするために最適な効果を得る。
【0037】
上で説明したように、ローター10は、開口17がある穴あき車18を担持して、各発光ダイオード31、32が発する光70が、この発された光を計時器の少なくとも1つの可視部分の方に導くための手段の方へと通ることを可能にする。
【0038】
計時器1000は、マイクロジェネレーター100の近傍に、少なくとも1つの静的光ガイド構造40を有し、この静的光ガイド構造40は、ローターが回転しているときにローターが任意の角位置にあるときに、各発光ダイオード31、32によって発された光の前記少なくとも過半分を集め、そして、この発された光を計時器の前記少なくとも1つの可視部分の方へと導いて、前記少なくとも1つの発光ダイオードが発光しているときに、この可視部分の実質的に一定かつ/又は実質的に均一な照明を得る。
【0039】
具体的には、この少なくとも1つの静的光ガイド構造40は、少なくとも1つの光ガイド45を備え、この光ガイド45には、一方では、マイクロジェネレーター100が回転しているときに発光ダイオード31、32が発する光の軌道に重なり合いこの発された光をこの光ガイド45に導入するように構成している少なくとも1つの導入及び注入領域41があり、他方では、前記光ガイド45内に導入された光が出て前記光ガイド45から光が抽出される少なくとも1つの出口及び抽出領域42がある。この少なくとも1つの出口及び抽出領域42は、計時器1000のこの少なくとも1つの可視部分の特定の照明を得るように構成している。
【0040】
具体的には、前記少なくとも1つの導入及び注入領域41は、発光ダイオード31、32の発光領域に対向し、少なくとも1つの結合パターン化領域805を含む。この結合パターン化領域805は、光ガイド45内の光を結合して光ガイド45と前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32の間に遠隔光結合をもたらすように構成している拡散性の粗いプロファイルを有するようにパターン化され、その光線の一部は、光ガイド45の受容コーン内へとそらされ、前記少なくとも1つの出口及び抽出領域に入射するまで光ガイド45の内部の全反射によってガイドされ続ける。
【0041】
具体的には、前記少なくとも1つの出口及び抽出領域42は、それぞれが0.2mm未満の直径を有する小さな別個の反射パターンの分布を有する少なくとも1つの抽出パターン化領域804を含み、この抽出パターン化領域804は、光ガイド45内へと導かれた光を抽出し、その光を計時器1000の前記少なくとも1つの可視部分の方へと実質的に均一に分配するように設けられる。
【0042】
具体的には、前記少なくとも1つの導入及び注入領域41と前記少なくとも1つの出口及び抽出領域42は、マイクロジェネレーター100の回転軸Dに垂直な平面への射影において、重なり合っていない。
【0043】
前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32のあらゆる角位置においても光ガイド45内の光を集めるような光ガイド45の特定の構成が有利であることを理解することができる。
【0044】
好ましい1つの代替的実施形態は、各発光ダイオード31、32が発生させる光のリングを完全に隠す。したがって、より具体的には、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32の発光領域は、不透明部分801によって、計時器1000のユーザーが見えないようにされる。
【0045】
光源が全体的に環状であることを強調するような異なる光学的効果を発揮する別の代替的実施形態も選択することができ、その場合、光のリングが隠されない。
【0046】
具体的には、発光ダイオード31、32からの光を拡散させて計時器1000の一部を間接的に明るくすることができる前記少なくとも1つの静的光ガイド構造40は、計時器1000の前記少なくとも1つの可視部分において少なくとも1つの部分的透過部分802を含む。
【0047】
具体的には、前記少なくとも1つの抽出パターン化領域804は、抽出が均一ではなく、単位面積当たりの抽出された光の強度の係数が面積全体にわたって一定値を持たないようにパターン化される。
【0048】
具体的には、前記少なくとも1つの抽出パターン化領域804は、抽出された光の強度が実質的に一定であるように構成している。
【0049】
具体的には、計時器1000は、少なくとも1つの表盤800を備え、その表盤800の第1の部分は、計時器の前記のような可視部分であり、前記少なくとも1つの静的光ガイド構造40の少なくとも1つの部分的透過部分802によって明るくすることができ、表盤800の第2の部分は、前記少なくとも1つの静的光ガイド構造40の不透明部分801によって隠される。具体的には、例えば、この不透明部分801は、前記少なくとも1つのマイクロジェネレーター100及び各発光ダイオード31、32を隠す。
【0050】
具体的には、上記のように、サファイア製の光ガイド構造と、光マイクロジェネレーター、すなわち、光源を備えるマイクロジェネレーター、によって表盤が明るくされる。
【0051】
暗闇において表盤の周部を明るくするために特殊な光学的システムを開発した。この方法は、「LightTools(商標)」レイトレーシングソフトウェアの「バックライト最適化」モジュールなどを用いて、システムをモデル化することを伴う。まず、光源の性質を定めた。前記のように、マイクロジェネレーター100のローター10上の直径的に反対の位置に2つの発光ダイオードが配置される。このローター10が高速回転しているときに、これら2つの発光ダイオード31、32も回転し、光のリングを発生させる。したがって、このシミュレーションにおいては、光源として静的な光のリングを用いた。
【0052】
図6に示しているように、サファイア製の光ガイド45が表盤800の下に配置される。高級計時器(高級携行型時計)に適しているため、サファイアを選択した。光ガイド45は、例えば厚み0.4mm、外径38mm、内径14mmを有する、環状ディスクの形態である。この形態は、光が部品の周部を循環するようにし、明るくする領域内に集中させるために選択した。(マイクロジェネレーター100に対向している)ディスクの下の面には、結合パターン化領域805と、抽出パターン化領域804との2タイプのパターンがある。
【0053】
結合パターン化領域805は、粗い拡散性のプロファイルを有するようにパターン化されており、その機能は、ディスク内の光を結合することである。光源が動くことによって、光ガイドとの近い光結合を防ぐことができる。したがって、光結合は遠くから行われる。光のリングからの光線の一部は、結合領域を通過するときに、サファイア製の光ガイド45の受けコーン内へとそらされ、その中の全反射によってガイドされ続ける。結合領域の大きさは、マイクロジェネレーター100の寸法構成、及びマイクロジェネレーター100と光ガイド45の間の距離に適合するようにされる。光コーンが占めるガイドの面を超えて結合領域を大きくすることは、不要であり、場合によっては有害となる。実際に、結合構造は、明るくする領域の全輝度に悪影響を与える光の抽出にも寄与する可能性がある。
【0054】
第2の面パターン化は、特に直径約0.12mmの円状である(これに限定されない)、小さな反射パターンの分布によって特徴づけられる抽出パターン化領域804であり、この部分周辺に均一に分布することによって光ガイド45の内側から光を抽出する機能を有する。このような反射パターンの分布は、ソフトウェアアルゴリズムによって計算される。この反射パターンの分布は、均一ではなく、抽出された光は部品周辺ですべて同じであって均一であるように、密度が局所的に変わる。計算の開始点は、明るくされる領域全体に分布する円形の均一な密度である。そして、ソフトウェアアルゴリズムは、光がディスク周辺全体に均一に抽出されるようにパターン密度分布を探す。この分布を計算する際に、ソフトウェアは、光ガイドの形、光ガイドが作られる材料、光が光ガイドに注入される注入領域、及びこの注入領域にわたっての入射光の分布を正確に考慮する。このパターンアレイ、特に小さな別個の円、を計算するための方法の利点は、照明の均一性が、通常、パターンの実際の反射の性質とは無関係に、確実になることである。
【0055】
パターンの反射率が低いと、抽出される光の総量が少なくなる。パターンの反射率が高いと、抽出される光の総量が多くなる。しかし、照明の均一性はどちらの場合も同じである。光ガイドから抽出された光は、表盤の周部領域を通過し、これを後方から明るくする。これを実現するために、表盤は、ファインホワイトセラミックスのような部分的透過材料によって作られ、あるいは携行型時計の製造においてより一般的に用いられるようにエナメルセラミックスによって作られる。
【0056】
上述した光ガイドの面パターン化は、サファイアのような硬質材料に対して機械的に達成することが難しい。しかし、ピコ秒及びフェムト秒のレーザー加工によって完全に達成することができる。
【0057】
良好な結果を達成するためには、光が光ガイドに局所的に注入されることを考慮すると、光抽出領域は、抽出が一定ではないように、すなわち、単位面積当たりの抽出された光の強度の係数が一定の係数ではないように構成しなければならないことがわかる。光抽出領域の構造は、有利なことに、抽出された光の強度が実質的に一定であるように構成している。
【0058】
非常に異なる使用の構成が可能である。なぜなら、本発明のために開発された光学系は、各発光ダイオードが発する光のリングによって構成する光源と、計時器のマイクロジェネレーターから比較的離れていることができる、明るくされる可視領域との間に相当に大きいオフセットがあることを可能にする。
【0059】
例えば、表盤800を明るくするための構成であって、表盤800の少なくとも1つの領域が明るくされ、光ガイド45がこの表盤800の下に配置されるものを選択することができる。また、時円及び/又は目盛りに重なり合う光のリングも可能である。
【0060】
有利なことに、計時器1000は、マイクロジェネレーター100を制御するための少なくとも1つの制御デバイス400を備え、この制御デバイスは、この制御デバイスが含むローター10をロックし解放するためのデバイスを介して、コマンドを受けてこのマイクロジェネレーター100を解放し停止することを可能にする。制御デバイス400は、マイクロジェネレーター100のローター10の駆動をトリガーし、停止するようにユーザーによってアクチュエートすることができ、この制御デバイスは、外側の制御メンバー、特に押しボタン又はボルト、を備える。別の実施形態において、制御デバイスは、計時器1000が含む計時器用ムーブメント600によってアクチュエートすることができる係合機構500を備える。これらの機構は、ストライク機能付き携行型時計やリピーター機能付き携行型時計において、よく知られている。特に、ユーザーは、レバーをアクチュエートする押しボタンを押すことで、マイクロジェネレーターを解放することができる。押しボタンを離すまで、光はオンのままであり続ける。上記の他の実施形態において、計時器用ムーブメントを係合するための機構は、例えば同じレバーに、特に中間レバーを利用して、好ましくは所与の期間にわたって、作用する。コマンドによって光のオンとオフを切り替えるように、いずれの同様のシステムをも構成することができる。特に、説明している様々な機構は、少しの時間、クリック機構92をラチェット18から解放し、したがって、ローター10が回転することを可能にするように構成している。
【0061】
具体的には、計時器1000は、マイクロジェネレーター100のローター10を駆動するように構成している少なくとも1つの駆動機構を備える。
【0062】
本発明には、以下のような多くの利点がある。
【0063】
発光ダイオードをマイクロジェネレーター上に直接配置することは、摺動する接触接続、導線、又はPCBトラックを必要としないことを意味する。これによって、高級携行型時計の製造との適合性が確実になる。ローターにおける有利な構成のおかげで、最高級の機械式携行型時計にふさわしくない材料によって作られる電子的コンポーネントの存在をいずれも防ぐことができる。したがって、発光ダイオードは、「電子的」と表現することができる唯一のコンポーネントである。しかし、それらの組成は無機的であり、体積の大部分は、結晶と金属によって作られる。この結果、提案しているレイアウトは審美的に目立たず、システムが露出されるスケルトンウォッチの構成にも適合性が高い。
【0064】
一次電池を必要とせずに、1つ又は複数の発光ダイオードにパワー供給することができる。当然、ローターに埋め込まれたレベリングキャパシターを用いることができるが、ローターが比較的高速で回転して、明るさの周期的な変動が人間の目に知覚されないために、必ずしも必要ない。実際に、本発明の好ましい実施形態には、必ずしも誘導電圧整流器やレベリングキャパシターを必要とせずに、各ダイオードがコイルから直接パワー供給されることによって、いずれの中間エネルギー格納器もない受動回路となることができるという利点がある。電流がオフになっているときには、発光ダイオードは持続性の発光をしない。しかし、ユーザーの目は持続性の発光を感じることとなる。なぜなら、100Hzのオーダーの回転と、例えばマイクロジェネレーターにおいて12又は14の極があることによって、1kHzのオーダーで点滅し、これを目が知覚できないためである。マイクロジェネレーターの回転に関して、毎秒1000回発生する小さな制動トルクが回転速度を平準化させる。エネルギー格納キャパシターは、誘導電圧の変動に電圧変動が十分速く追従せず、速度調整にあまり効果的ではないため、望ましくない。
【0065】
ローターに(パッシブ)グレーツブリッジを除いて電子的部品が埋め込まれず、バッテリーを用いない手法によって、高級携行型時計の製造に完全に適合することを確実にする。
【0066】
照明機能を活性化し設定時間後に停止することが可能であることは、非常に有利である。この選択肢は、従来技術の携行型時計では利用することができない。
【0067】
発光ダイオード(LED)は、高速で回転するときに、人間の目にはほぼ連続的で均一であり面への到達性が発光ダイオードのものよりもはるかに大きいような環状の光分布を発生させる。また、ローターが回転するときにLEDが発生させる光のリングからの光を集めるように構成している結合領域がある光ガイドの構成は、非常に有利である。なぜなら、このことによって、光のリングを、好ましくは観察者が直接見ることができないように隠される、その光のリングではない携行型時計の少なくとも1つの可視部分の特定の照明に変換することができ、このことによって、発生する照明の安定性を改善することができるからである。
【0068】
携行型時計における他の箇所に光を分配するために光マイクロジェネレーターを遠隔光ガイドと組み合わせて使うことは、光ガイドから光を抽出するための1つ又は複数の領域のおかげで、魅力的な光効果(発光性装飾)や機能的光効果(時刻や他の表示を読み取るもの)を与えて、非常に有利である。このことは、好ましくは、可視の発光面の実質的に均一な抽出のために、特に、時目盛りを含む携行型時計の表盤のリングを明るくするために構成している、光ガイドから光を抽出するための一又は複数の領域のおかげである。
【符号の説明】
【0069】
D マイクロジェネレーターの回転軸
10 ローター
11 コイル
17 ラチェットにある開口
18 ラチェット
19 ハブ
19a ピニオン
20 ステーター
21 ステーターの環状カバー
22 ステーターの環状ベース
25 永久磁石
31、32 発光ダイオード(LED)
37 グレーツブリッジ
38 グレーツブリッジ出力キャパシター
40 静的光ガイド構造
41 導入及び注入領域
42 出口及び抽出領域
45 光ガイド
52 ローターの環状構造
54 ローターの支持ディスク
55 支持ディスクにある開口
60 接触パッド
61、62 コイルの端
64、65 接触パッド
67 LEDの電気接続
68 樹脂のドロップ
70 発された光
100 マイクロジェネレーター
200 バレル
300 バレルギア列
400 制御デバイス
500 係合機構
600 ムーブメント
800 表盤
801 不透明部分
802 部分的透過部分
1000 計時器
【外国語明細書】