(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149406
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】計時器の回転車セットのための速度調整デバイス
(51)【国際特許分類】
G04C 21/02 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G04C21/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024047659
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】23167065.4
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ジャック・ボルン
(72)【発明者】
【氏名】ピエルパスクヮーレ・トルトラ
(72)【発明者】
【氏名】バティスト・イノー
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ニコラ
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101EC01
2F101EC06
2F101EE03
2F101EL00
(57)【要約】
【課題】 計時器の回転車セットのための速度調整デバイスを提供する。
【解決手段】 本発明の一態様は、回転車セットの回転速度を調整するための調整デバイスを備える計時器に関する。この調整デバイスは、マイクロジェネレーターと、このマイクロジェネレーターによってパワー供給される少なくとも1つのLEDを備え、電気エネルギーを格納せず、回転車セットの機能的速度範囲(V
min~V
max)において、マイクロジェネレーターのローターの回転の対応する周波数範囲(F
min~F
max)は、コイルにおいて、最大周波数(F
max)に対する最大誘導電圧値がしきい電圧(U
S)、また、最小周波数(F
min)に対する最小誘導電圧値よりも大きいような誘導電圧範囲を発生させ、回転車セットを駆動する動力デバイスは、回転車セットが実質的に機能的速度範囲内にて駆動されることを可能にする有効動力トルク範囲を有する。本発明は、さらに、回転車セットの回転速度を調整するための方法に関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転車セット(1)と、前記回転車セットを駆動することができるように構成している動力デバイス(200)と、前記回転車セットの回転速度を調整するための調整デバイス(1000)とを備える計時器(2000)であって、
前記調整デバイスは、ステーター(20)と、前記回転車セット(1)に機械的に結合されたローター(10)とを備えるマイクロジェネレーター(100)を備え、
前記ステーター(20)は、永久磁石(25)とコイル(11)の一方を担持し、前記ローター(10)は、永久磁石(25)とコイル(11)の他方を担持し、
前記調整デバイス(1000)は、さらに、前記マイクロジェネレーター(100)によって直接的又は間接的にパワー供給される少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)を備え、
前記少なくとも1つの発光ダイオードが前記マイクロジェネレーターによって間接的にパワー供給されている場合、前記少なくとも1つの発光ダイオードは、いずれの実質的な電気エネルギー格納コンポーネントをもなしで電気的及び/又は電子的回路を介して前記マイクロジェネレーターに接続され、
前記マイクロジェネレーター(100)と前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)は、最小速度(Vmin)と、この最小速度(Vmin)よりも厳密に大きい最大速度(Vmax)との間の回転車セット(1)の機能的速度範囲において、最小周波数(Fmin)と最大周波数(Fmax)の間にある、前記ローター(10)の回転の対応する周波数範囲は、前記コイル(11)において、前記最大周波数(Fmax)に対して発生する最大誘導電圧値が前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)のしきい電圧(US)よりも大きいような誘導電圧範囲を発生させ、
前記少なくとも1つの発光ダイオードと、適切な場合にいずれの実質的な電気エネルギー格納コンポーネントもない前記電気的及び/又は電子的回路とは、実質的に、前記調整デバイスにおける唯一の電気エネルギー消費デバイスを構成し、
前記動力デバイスは、前記回転車セットが実質的に前記機能的速度範囲内にて駆動されることを可能にする有効動力トルク範囲を有するように構成している
ことを特徴とする計時器(2000)。
【請求項2】
前記誘導された電圧範囲の、前記最小周波数(Fmin)に対して発生する、最小の誘導電圧値も、前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)の前記しきい電圧(US)よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器(2000)。
【請求項3】
前記調整デバイスは、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)の運動エネルギーを消散させる手段をいずれも備えない
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器(2000)。
【請求項4】
前記動力デバイスは、その有効動力トルク範囲が、前記回転車セット(1)を機能的速度範囲の前記最小速度(Vmin)にて駆動する最小トルク(CMotMin)を有し、前記回転車セット(1)を前記機能的速度範囲の前記最大速度(Vmax)にて駆動する最大トルク(CMotMax)を有するように構成している
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項5】
前記調整デバイス(1000)は、最小動力トルク(CMotMin)と最大動力トルク(CMotMax)の間の前記動力デバイスの有効トルク範囲に対して、前記ローター(10)の回転周波数を、前記最小周波数(Fmin)と前記最大周波数(Fmax)の間の前記周波数範囲内に維持することによって、調整する
ことを特徴とする請求項4に記載の計時器(2000)。
【請求項6】
前記動力デバイスは、前記回転車セット(1)を含む機構を駆動すること専用のバレル(200)によって形成され、
このバレル(200)は、最小動力トルク(CMotMin)と最大動力トルク(CMotMax)の間の、自身が出力するトルクの有効範囲が、以下の条件に合うように構成しており、
この条件とは、前記最小動力トルク(CMotMin)が、前記回転車セット(1)が最小速度(Vmin)にて回転しているときに、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)を例外として、前記機構を駆動するために必要な機械的トルク(CMecVmin)と、前記ローター(10)の最小周波数(Fmin)に対応する最小ローター駆動トルク(CEDmin)との和に等しく、かつ、前記最大動力トルク(CMotMax)が、前記回転車セット(1)が最大速度(Vmax)にて回転しているときの、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)を例外として、前記機構を駆動するために必要な機械的トルク(CMecVmax)と、前記ローター(10)の最大周波数(Fmax)に対応する最大ローター駆動トルク(CEDmax)との和に等しいことである
ことを特徴とする請求項5に記載の計時器(2000)。
【請求項7】
前記調整デバイス(1000)は、一又は複数の発光ダイオード(31、32)を備え、前記調整デバイス(1000)に含まれる前記発光ダイオード(31、32)の数は、前記発光ダイオード(31、32)のタイプや大きさに応じて、前記調整デバイス(1000)が備えるすべての発光ダイオード(31、32)が、前記ローター(10)の最小周波数(Fmin)に対応する、最小ローター駆動トルク(CEDmin)と、前記ローター(10)の最大周波数(Fmax)に対応する、最大ローター駆動トルク(CEDmax)との間の、前記ローター(10)の駆動トルクで、電気エネルギーを消散させるような数である
ことを特徴とする請求項6に記載の計時器(2000)。
【請求項8】
少なくとも1つの前記発光ダイオード(31、32)は、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ステーター(20)に対して前記ローターが回転しているときに誘導される電流を供給する少なくとも1つのコイル(11)によって、唯一の電気的及び又は電子的回路を形成するグレーツブリッジ整流器を介して、間接的にパワー供給される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項9】
少なくとも1つの前記発光ダイオード(31、32)は、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ステーター(20)に対して回転するときに、少なくとも1つのコイル(11)によって直接パワー供給される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項10】
前記ステーター(20)は、前記永久磁石(25)を担持し、前記ローター(10)は、前記コイル(11)を担持し、
各発光ダイオード(31、32)は、前記ローター(10)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項11】
前記永久磁石(25)は、軸方向の射影において、前記ローター(10)が回転しているときにそのローター(10)によって定められる円状面の範囲内に配置される
ことを特徴とする請求項10に記載の計時器(2000)。
【請求項12】
前記ローター(10)は、好ましくは直径方向にて反対側にあり互いに反対の極性を有するように構成している、少なくとも1対の発光ダイオード(31、32)を担持する
ことを特徴とする請求項10に記載の計時器(2000)。
【請求項13】
前記調整デバイス(1000)は、前記マイクロジェネレーター(100)の近傍に、少なくとも1つの静的光ガイド構造を有し、この静的光ガイド構造は、前記ローター(10)が回転しているときに前記ローター(10)が任意の角位置にあるときに、少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)によって発された光の前記少なくとも過半分を集め、そして、この発された光を計時器の前記少なくとも1つの可視部分の方へと導いて、前記少なくとも1つの発光ダイオードが発光しているときに、前記可視部分の実質的に一定かつ/又は実質的に均一な照明を得る
ことを特徴とする請求項10に記載の計時器(2000)。
【請求項14】
前記計時器に含まれるいずれの電気的及び/又は電子的装置も、前記マイクロジェネレーター(100)の要素である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項15】
前記計時器に含まれるいずれの電気的及び/又は電子的回路も、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項10に記載の計時器(2000)。
【請求項16】
前記計時器に含まれるいずれの電気的及び/又は電子的回路も、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項14に記載の計時器(2000)。
【請求項17】
前記計時器は、前記マイクロジェネレーター(100)を解放し停止させる解放停止デバイスを備え、この解放停止デバイスは、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)の駆動をトリガーするようにユーザーによってアクチュエートすることができ、制御メンバー、及び/又は押しボタン、及び/又はボルトばねを備えるボルトを備える制御デバイス(400)、又は前記計時器(2000)が備える機構(600)によってアクチュエートすることができる係合機構を備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項18】
前記ローター(10)は、ラチェット(18)を備え、前記解放停止デバイスは、前記ラチェット(18)と連係して前記マイクロジェネレーター(100)の回転をオンデマンドでトリガーするクリック機構(92)を備える
ことを特徴とする請求項17に記載の計時器(2000)。
【請求項19】
前記解放停止デバイスは、前記ローター(10)の回転の持続時間を制限するための機械的な遅延デバイスを備える
ことを特徴とする請求項17に記載の計時器(2000)。
【請求項20】
前記計時器には、少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)によって前記発光ダイオード(31、32)が光を発しているときに直接的又は間接的に明るくすることができる特定の領域がある
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項21】
前記計時器は、前記調整デバイス(1000)によって回転速度が調整される回転車セット(1)を備えるストライク機能付き、リピーター機能付き又は音楽機能付きの動的表示機構である音響的な動的表示機構を備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項22】
前記計時器は、前記調整デバイス(1000)によって回転速度が調整される回転車セット(1)を備える視覚的な動的表示機構を備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項23】
少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)は、前記計時器(2000)の音響的な運動又は視覚的な運動のシーケンスの間に、所定の領域の方へと光を発する
ことを特徴とする請求項20に記載の計時器(2000)。
【請求項24】
前記調整デバイスには、電気エネルギー格納キャパシターがない
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の計時器(2000)。
【請求項25】
計時器(2000)の回転車セット(1)の回転速度を調整する方法であって、
この調整は、最小速度(Vmin)と、この最小速度よりも厳密に大きい最大速度(Vmax)との間の回転車セット(1)の機能的速度範囲において行われ、
前記回転車セット(1)は、前記計時器(2000)が備える動力デバイス(200)によって駆動され、
前記方法は、前記回転車セット(1)に機械的に結合されたローター(10)を備えるマイクロジェネレーター(100)によって形成される、前記回転車セット(1)の回転速度を調整するための調整デバイス(1000)を実装するものであり、
前記ローター(10)は、ステーター(20)に対して回転軸(D)を中心に運動可能であり、前記ステーター(20)は、永久磁石(25)とコイル(11)の一方を担持し、
前記ローター(10)は、永久磁石(25)とコイル(11)の他方を担持し、
前記コイル(11)は、少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)に、直接的又は間接的に、接続され、
前記マイクロジェネレーター(100)と前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)は、適切な場合に前記コイル(11)の間に配置される実質的な電気エネルギー格納コンポーネントがない電気回路及び/又は電子回路とともに、電気エネルギーを消費する唯一のデバイスを構成し、かつ、前記回転車セット(1)と前記ローター(10)の間の前記調整デバイス(1000)と組み合わさって、前記回転車セット(1)の機能的速度範囲に対して、最小周波数(Fmin)と最大周波数(Fmax)の間の前記ローター(10)の回転の対応する周波数範囲が、前記コイル(11)において、前記最大周波数(Fmax)に対して発生する最大誘導電圧値が前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)のしきい電圧(US)よりも大きいような誘導電圧範囲を発生させるような特徴を有し、
前記動力デバイス(200)は、その有効動力トルク範囲が、前記回転車セット(1)を機能的速度範囲の前記最小速度にて駆動する最小トルク(CMotMin)を有し、前記回転車セット(1)を機能的速度範囲の最大速度にて駆動する最大トルク(CMotMax)を有するように構成される
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記誘導された電圧範囲の、前記最小周波数(Fmin)に対して発生する、最小の誘導電圧値も、前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)の前記しきい電圧(US)よりも大きい
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記調整デバイス(1000)は、最小動力トルク(CMotMin)と最大動力トルク(CMotMax)の間の、前記動力デバイスの有効トルク範囲に対して、前記ローター(10)の回転周波数を、最小周波数(Fmin)と最大周波数(Fmax)の間の前記周波数範囲内に維持することによって、調整するように設計されている
ことを特徴とする請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記調整デバイスは、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)の運動エネルギーを消散させる手段をいずれも備えないように構成している
ことを特徴とする請求項25又は26に記載の方法。
【請求項29】
前記動力デバイスは、バレル(200)を備え、このバレル(200)は、最小動力トルク(CMotMin)と最大動力トルク(CMotMax)の間の、自身が出力するトルクの有効範囲が、以下の条件に合うように構成しており、
この条件とは、前記最小動力トルク(CMotMin)が、前記回転車セット(1)が最小速度(Vmin)にて回転しているときに、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)を例外として、前記機構を駆動するために必要な機械的トルク(CMecVmin)と、前記ローター(10)の最小周波数(Fmin)に対応する最小ローター駆動トルク(CEDmin)との和に等しく、かつ、前記最大動力トルク(CMotMax)が、前記回転車セット(1)が最大速度(Vmax)で回転しているときに、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)を例外として、前記機構を駆動するために必要な機械的トルク(CMecVmax)と、前記ローターの最大周波数(Fmax)に対応する最大ローター駆動トルク(CEDmax)との和に等しいことである
ことを特徴とする請求項25又は26に記載の方法。
【請求項30】
一又は複数の前記発光ダイオード(31、32)の数は、それらのタイプや大きさに応じて、前記調整デバイス(1000)が備えるすべての発光ダイオード(31、32)が、最小周波数(Fmin)に対応する、最小ローター駆動トルク(CEDmin)と、最大周波数(Fmax)に対応する、最大ローター駆動トルク(CEDmax)の間の前記ローターの駆動トルクで、電気を消散させるように構成しているように選択される
ことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)へのパワー供給は、前記マイクロジェネレーター(100)によって間接的に行われるように選択され、
前記少なくとも1つの発光ダイオード(31、32)は、前記マイクロジェネレーター(100)の前記ローター(10)が回転しているときに前記コイル(11)において誘導される電流を格納するための実質的なコンポーネントなしで、電気的及び/又は電子的回路を介して、マイクロジェネレーター(100)に接続される
ことを特徴とする請求項25又は26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転車セットと、前記回転車セットを駆動することができるように構成している動力デバイスと、前記回転車セットの回転速度を調整するための調整デバイスとを備える計時器に関し、この調整デバイスは、ステーターと、前記回転車セットに機械的に結合されたローターとを備えるマイクロジェネレーターを備え、前記ステーターは、永久磁石とコイルの一方を担持し、前記ローターは、永久磁石とコイルの他方を担持する。
【0002】
本発明は、さらに、計時器の回転車セットの回転速度を調整する方法に関し、この調整は、最小速度と、この最小速度よりも厳密に大きい最大速度との間の回転車セットの機能的速度範囲において行われ、前記回転車セットは、前記計時器が備える動力デバイスによって駆動され、この方法は、回転車セット実装の回転速度を調整するための調整デバイスを実装することを可能にし、この調整デバイスは、前記回転車セットに機械的に結合されたローターを備えるマイクロジェネレーターを備え、前記ローターは、ステーターに対して回転軸を中心に運動可能であり、前記ステーターは、永久磁石とコイルの一方を担持し、前記ローターは、永久磁石とコイルの他方を担持し、前記コイルは、少なくとも1つの発光ダイオードに、直接的又は間接的に、接続される。
【0003】
本発明は、計時器、特に、携行型時計、さらに具体的には、機械的エネルギー源を備える携行型時計、の分野に関し、前記計時器は、時間の計測の専用ではなく、典型的には、音や視覚的なディスプレー機能の専用である補助的機構を備えるタイプのものであり、例えば、ストライク機能付き又は視覚的運動の携行型時計、又はミュージックボックスであり、この機構は、少なくとも1つの回転車セットを備える。本発明は、より詳細には、典型的にはばねによって活性化される、前記のような回転車セットの速度を調整する分野に関し、調整機構がないと、ディスチャージによって、回転車セットの速度が大きく変わることとなる。
【背景技術】
【0004】
計時器の車セットの速度を調整することは、昔からある課題であり、元々はベルのリングを調整することと関連している。昔の解決策は、ボールガバナーなどを用いる車セットの慣性の変動、あるいは空気摩擦による制動に基づく純粋に機械的なものであったが、このような解決策は、置き時計や振り子時計に適用されることがあるにしても、携行型時計に適用することはできなかった。
【0005】
携行型時計のケース内にて利用可能な空間が制限されているために、電磁的又は渦電流ガバナーのような新しい手法が開発された。このような手法は、機能的であるが、高コストであり、高級品向けに限られ、そのコンポーネントの一部は非常にデリケートであり、特別なメンテナンスを必要とする。
【0006】
The Swatch Group Research & Development Ltdによる欧州特許文献EP3838424は、計時器やミュージックボックスのための音楽機構やストライク機構について記載しており、これは、機械的トルクを出力するエネルギー源と、そのエネルギー源から音楽やチャイムを発生させる車セットへと機械的トルクを伝達する手段とを備える。この機構は、さらに、車セットガバナーを備える。ガバナーは、基準速度値の付近で、ピボット軸を車セットが回転する速度を調整するように構成しており、車セットの回転速度を基準速度に戻すように構成している、車セットを制動するための手段を備える。この車セットのガバナーは、「ジェネレーター」とも呼ばれるマイクロジェネレーターと、そのマイクロジェネレーターの回転周波数を調整するための電子的回路とを備えるシステムからなり、そのマイクロジェネレーターのローターは、機械的トルクを出力するエネルギー源に機械的に接続されている。この回路は、時刻を示すジェネレーターを備える携行型時計と同様に、電子的に周波数を調整する。すなわち、電子的なタイムベースを必要とする、ローター回転をカウントする技術を用いて、回転周波数をタイムベースと比較して、短絡制動パルスによってコイルにおける電流を調整するトランジスターに作用する。短く書くと、電子的な制動回路が制動パルスの生成を制御する。
【0007】
電子的又は電気的回路を用いると、機械式ムーブメントが取り付けられた携行型時計、特に、携行型時計の機械的性質を可能なかぎり維持することが重要な最高級の携行型時計、に大きな課題を発生させてしまう。実際に、これらの既知のシステムは、マイクロジェネレーターの周辺に位置する電気的回路(典型的には、PCB)上に配置された様々な電子的要素を含む電子回路を備え、このマイクロジェネレーターは、この携行型時計に比較的広範囲にわたる電子デバイスを導入することとなる。したがって、このような固定的な電気的及び電子的な部品のすべては、マイクロジェネレーターによって境界が定められる表面積にわたって又はその上において、比較的大きな表面積を占め、このアセンブリーは、典型的には目に見え、このことによって、消費者にとって携行型時計のハイブリッド性が目立つこととなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特に、上記の従来技術の問題を解決することを目的とする。本発明についての以下の説明を読むことによって、他の目的も明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、請求項1に記載の計時器に関し、この計時器は、回転車セットと、この回転車セットを駆動することができるように構成している動力デバイスと、回転車セットの回転速度を調整するための調整デバイスとを備える。この調整デバイスは、ステーター、及び回転車セットに機械的に結合するローターを備えるマイクロジェネレーターと、マイクロジェネレーターによって直接的又は間接的にパワー供給される少なくとも1つの発光ダイオードを備える。
【0010】
本発明は、さらに、請求項25に記載の計時器の回転車セットの回転速度を調整するための方法に関し、この調整は、最小速度と、この最小速度よりも厳密に大きい最大速度との間の回転車セットの機能的速度範囲において行われる。
【0011】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴を一層明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】照明デバイスを備える携行型時計に適用された本発明の例示的なアプリケーションの斜視図を示している。図の左側には、バレルを示しており、このバレルは、ギア列を介してマイクロジェネレーターにパワー供給し、このマイクロジェネレーターは、ステーターに対して回転することができるローターを備える。このマイクロジェネレーターは、少なくとも1つのコイルによってパワー供給されローターの回転軸に対して偏心してローターに取り付けられた少なくとも1つの発光ダイオードを担持し、一方、ステーターは永久磁石を担持する。このローターは、ラチェットを担持し、このラチェットは、クリック機構と連係して、そのラチェットの回転を許可したり防いだりする。矢印は、ジェネレーターを停止し開放するように回転することができるクリック機構をアクチュエートするためのデバイスを概略的に示している。
【
図2】
図2Aは、
図1のマイクロジェネレーターの斜視図であり、ステーターの2つのリングは、交番構成の極性の永久磁石を担持しており、ローターは、その2つのリングのエア間隙内にてコイルを担持する。矢印は、ローターの回転軸に平行な単一方向における交番構成の磁場の向きを示している。ローターは、この回転軸を中心に対称的に取り付けられた2つの発光ダイオードを担持しており、これらは両方とも偏心している。
図2Bは、
図1のマイクロジェネレーターを上から見た図を示している。
【
図3】
図1、2A及び2Bに示しているマイクロジェネレーターの分解斜視図である。ここで、ローターディスクは、12個のコイルを担持しており、ステーターリング内に12個の磁石の列が二重あることがわかる。
【
図4】
図1~3のマイクロジェネレーターのローターについての回転軸の方向において上側から見た図を示している。この図は、コイルの間及びコイルと発光ダイオードの間の接続構成を示しており、これらはすべてローターによって担持される。
【
図5】前の図におけるマイクロジェネレーターの断面の図であり、この断面は、マイクロジェネレーターの回転軸を通過している。この特定の例において、マイクロジェネレーターの寸法構成は非常に小さく、ステーターケージの直径は約8mm、厚みは約1.4mmである。
【
図6】発光ダイオードの端子間に与えられた電圧(横軸)に応じた、発光ダイオードにおける電流の強さ(縦軸)の特徴的な曲線のグラフである。しきい電圧U
Sの上において、電圧に対して実質的に線形的に電流の強さが急に増加していることがわかる。
【
図7】横軸にローターの周波数を示し、縦軸にローターの駆動トルクを示している、本発明に係る調整デバイスにおける電気エネルギーの消費を表しているグラフであり、この駆動トルクは、機能的トルク範囲の最小期待ローター周波数に対応する最小値と、最大期待ローター周波数に対応する最大値との間にあり、ローター周波数に応じたローターの駆動トルクの特徴は、選択された範囲において実質的に線形である。短く書くと、横軸は、ローター周波数の最小値と最大値の間にて、動作範囲内における回転車セットの回転速度に対するローター周波数の「許容される」範囲を示しており、縦軸は、駆動トルクの最小値と最大値の間にて、機能的なトルク範囲に対して用意されるローターの駆動トルクにおける変動に対応する、LEDが消費するトルクの範囲を示しており、これによって、変動する動力トルクが存在するときのローターの回転周波数を調整して、この周波数を比較的制限された範囲内に維持することが可能になる。
【
図8】提案している調整デバイスの好ましい代替的実施形態に対応する同等な電気回路を概略的に示しており、マイクロジェネレーターが交流信号を、発生させ逆極性の2つの発光ダイオードと並列に接続されている。したがって、信号の交番動作中に、ダイオードの一方又は他方が発光する。30Hzよりも大きい周波数の場合、目はこの交番動作を識別することができず、両方のダイオードが同時に点灯していると認識する。
【
図9】150Hzの周波数の場合における、発光ダイオードにおける誘導電流(縦軸)を時間(横軸)の関数として示したグラフである。実線の曲線は、第1のLEDに対応し、破線の曲線は、第1のLEDと並列に接続され、第1のLEDと直接的に接続され、第1のLEDに対して逆極性に構成している第2のLEDに対応するものである。
【
図10】2つの発光ダイオードを流れる平均電流(縦軸)をローターの回転周波数(横軸)の関数として示したグラフである。
【
図11】2つの発光ダイオードによってローターに与えられる平均制動トルク(縦軸)をローターの回転周波数(横軸)の関数として示したグラフである。
【
図12】コイル抵抗(縦軸)に対するコイル線の厚み(横軸)の影響を示した曲線のグラフである。
【
図13】発光ダイオードにおける電流(縦軸)に対するコイル線の厚み(横軸)の影響を示した曲線のグラフである。
【
図14】誘導電圧(縦軸)に対するコイル線の厚み(横軸)の影響を示した曲線のグラフである。
【
図15】バレルの合計ディスチャージ時間(縦軸)に対するコイル線の厚み(横軸)の影響を示した曲線のグラフである。
【
図16】本発明の1つの一般的な実施形態に係る計時器を概略的に示している。
【
図17】マイクロジェネレーターを解放し停止するためのデバイスを備える計時器を部分的に示しており、このマイクロジェネレーターは、このマイクロジェネレーターのローターの駆動又は停止をトリガーするようにユーザーによってアクチュエートすることができる押しボタン制御デバイスに関連づけられている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、動力デバイスによって回転車セットに供給されるエネルギーの一部を消費させるように少なくとも1つの発光ダイオードにパワー供給するマイクロジェネレーターを用いて、この回転車セットの速度を調整することを提案するものである。
【0014】
本発明は、回転車セット1と、前記回転車セットを駆動することができるように構成している動力デバイスと、前記回転車セットの回転速度を調整するための調整デバイス1000とを備える計時器2000に関する。この動力デバイスは、特に、機械的な動力デバイスであり、特に、バレル200によって形成されるものである。
【0015】
前記調整デバイス1000は、計時器向けのタイプのマイクロジェネレーター100と、少なくとも1つの発光ダイオード31、32(「LED」とも呼ばれる)を備え、このマイクロジェネレーター100は、ステーター20と、回転車セット1に機械的に結合するローター10とを備え、前記発光ダイオード31、32は、マイクロジェネレーター100によって、具体的には、マイクロジェネレーター100が備える少なくとも1つのコイルによって、直接的又は間接的に、パワー供給される。一般的には、ステーターが永久磁石25とコイル11の一方を担持し、ローターが永久磁石25とコイル11の他方を担持する。以下において、回転車セット1の回転の「速度」と、ローター10の回転の「周波数」とは、区別して用いる。ローター10がステーター20に対して回転するときに誘導された電流によって、各コイル11は前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32にパワー供給する。
【0016】
図1~5は、コイル11、特に平形(ウェハー状)のコイル、を含むローター10と、ステーター20とを備えるマイクロジェネレーター100の例を示しており、このステーター20は、永久磁石25の第1の部分を担持する、L字状の半径方向の断面がある環状ベース21と、前記環状ベース21を閉じ、永久磁石25の第2の部分を担持する環状フランジ22とを含む。環状ベース21と環状フランジ22は、3つのまっすぐな部分があるC字状(コの字状)の半径方向の断面があるステーターケージを形成する。マイクロジェネレーター100の直径は、典型的には、6mm~15mmの範囲内である。
【0017】
環状ベース21とフランジ22は、好ましくは、永久磁石25の磁場のための外側クロージャーを形成する強磁性材料によって作られ、この永久磁石25は、軸方向に磁化されており、ローター10のコイル11に対向するようにステーターケージの内側に配置される。より一般的には、コイル11と永久磁石25は、ローター10が回転し動力デバイスが備えるバレル200や任意の適切な駆動手段によって直接的に又は間接的に駆動されるときに、コイル11が永久磁石25の上を少なくとも部分的に通るように構成している。したがって、これによって、永久磁石25が軸方向に磁化されており、コイル11の軸方向の両側にそれぞれ位置する永久磁石25の2つのレベルの間の空間においてローター10が中間レベルに配置されたコイル11を担持するようなタイプの「3レベル」構造を有するマイクロジェネレーター100が得られる。軸方向に対向する磁石25どうしは、同じ極性を有し、同じレベルにある2つの隣り合う磁石どうしは、反対の磁気的極性を有する。したがって、伝統的な形態で、磁石の2つのレベルのそれぞれにおける極性は、交番構成になる。
【0018】
好ましい1つの代替的実施形態において、
図4に示しているように、少なくとも1つの発光ダイオード31又は32はそれぞれ、マイクロジェネレーター100のステーター20に対して回転するに従って少なくとも1つのコイル11によって直接パワー供給され、このパワー供給は、金などで作られた接触パッド及び2つの環状トラックを例外として、前記少なくとも1つの発光ダイオードと前記少なくとも1つのコイルの間にいずれの電気的及び/又は電子的回路がないように行われ、特にキャパシター及び/又は他の電気的及び/又は電子的部品がないように行われる。
【0019】
本発明の好ましい代替的実施形態において、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、マイクロジェネレーター100と一緒に、前記調整デバイス1000を形成する。
【0020】
前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32がマイクロジェネレーター100によって間接的にパワー供給されている場合、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、いずれの実質的な電気エネルギー格納コンポーネントをもなしで電気的及び/又は電子的回路を介してマイクロジェネレーター100に接続される。本発明のこの有利な代替的実施形態において、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32と、いずれの実質的な電気エネルギー格納コンポーネントもない電気的及び/又は電子的回路と、マイクロジェネレーター100とは、一緒に調整デバイスを形成する。
【0021】
前記マイクロジェネレーター100と前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、最小速度Vminと、この最小速度Vminよりも厳密に大きい最大速度Vmaxとの間の回転車セット1の機能的速度範囲において、最小周波数Fminと最大周波数Fmaxの間にある、ローター10の回転の対応する周波数範囲は、コイル11において、最大周波数Fmaxに対して発生する最大誘導電圧値(ピーク電圧)Umaxが前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32のしきい電圧USよりも大きいような誘導電圧範囲を発生させる。好ましくは、誘導された電圧範囲の、前記最小周波数Fminに対して発生する、最小の誘導電圧(ピーク電圧)値Uminも、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32のしきい電圧USよりも大きい。
【0022】
前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32と、適合する場合に、前記電気的及び/又は電子的回路とは、調整デバイス1000に組み入れられる唯一の電気的エネルギー消費デバイスを構成し、前記動力デバイスは、回転車セット1が実質的に機能的速度範囲内において駆動されることを可能にする有効動力トルク範囲を有するように構成している。
【0023】
これらの特徴の組み合わせのおかげで、前記一又は複数のLED31、32がローター10の回転周波数、したがって、回転車セット1の回転速度、を動力デバイスによって供給される有効機械的トルク範囲に対して、調整することが可能になり、調整デバイス1000をこの目的のために構成することが可能になり、このデバイスは、前記一又は複数のLED31、32と、場合によって、いずれの実質的な電気的エネルギー格納コンポーネントもない、電気的及び/又は電子的回路と、マイクロジェネレーター100とによって形成されるアセンブリーに制限される。したがって、前記一又は複数のLED31、32と、前記マイクロジェネレーター100は、前記マイクロジェネレーター100において誘導される電圧が、有効機械的トルク範囲に対する、誘導電圧の範囲内に留まり、この有効機械的トルク範囲は、
図6に示しているLEDの電流/電圧曲線の特徴に対する、各LED31、32の作動電圧範囲に対応する。
【0024】
また、1つの特定の特徴によると、最小周波数Fminに対応する、誘導電圧の範囲の最小の誘導電圧(ピーク電圧)値Uminは、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32のしきい電圧USよりも大きい。したがって、これらのLEDは、回転車セット1の全体の速度範囲にわたって動作して、この回転車セットに対する通常の動作に対して用意される速度範囲全体にわたって、この回転車セットの回転速度を調整する。
【0025】
1つの特定の特徴によると、調整デバイスは、マイクロジェネレーター100のローター10の運動エネルギーを消散させる手段をいずれも備えず、その目的は、ローターの周波数が減ることではなく増えることを防ぐことである。
【0026】
1つの特定の特徴によると、動力デバイスは、その有効動力トルク範囲が、回転車セット1を機能的速度範囲の最小速度Vminにて駆動する最小トルクCMotMinを有し、回転車セット1をこの機能的速度範囲の最大速度Vmaxにて駆動する最大トルクCMotMaxを有するように構成している。
【0027】
有利なことに、調整デバイス1000は、最小動力トルクCMotMinと最大動力トルクCMotMaxの間の動力デバイスの有効トルク範囲に対して、ローター10の回転周波数を、最小周波数Fminと最大周波数Fmaxの間の周波数範囲内に維持することによって、調整する。
【0028】
具体的には、動力デバイスは、回転車セット1を含む機構を駆動すること専用のバレル200によって形成され、このバレル200は、最小動力トルクCMotMinと最大動力トルクCMotMaxの間の、自身が出力するトルクの有効範囲が、以下の条件に合うように構成している。この条件とは、最小動力トルクCMotMinが、回転車セット1が最小速度Vminにて回転しているときに、マイクロジェネレーター100のローター10を例外として、前記機構を駆動するために必要な機械的トルクCMecVminと、ローター10の最小周波数Fminに対応する最小ローター駆動トルクCEDminとの和に等しく、かつ、出力するトルクの有効範囲(CMotMin、CMotMax)が、回転車セット1が最大速度Vmaxにて回転しているときに、マイクロジェネレーター100のローター10を例外として、前記機構を駆動するために必要な機械的トルクCMecVmaxと、ローター10の最大周波数Fmaxに対応する最大ローター駆動トルクCEDmaxとの和に等しいことである。したがって、以下となる。
CMotMin=CMecVmin+CEDmin
CMotMax=CMecVmax+CEDmax
【0029】
調整デバイス1000は、一又は複数の発光ダイオード31、32を備え、これは、発光ダイオード31、32のタイプや大きさに応じて、この調整デバイス1000が備えるすべての発光ダイオード31、32が、ローター10の最小周波数Fminに対応する、最小ローター駆動トルクCEDminと、ローター10の最大周波数Fmaxに対応する、最大ローター駆動トルクCEDmaxの間のローター10の駆動トルクで、電気エネルギーを消散させるように構成しているように行われる。
【0030】
2つの特定の代替的実施形態によると、コイル11は、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32に、直接的又は間接的に、接続される。
【0031】
1つの好ましい特徴によると、少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、グレーツブリッジ(Graetz bridge)整流器37を備える電気的及び又は電子的回路を介して、マイクロジェネレーター100のステーター20に対して回転しているときに誘導電流を供給する少なくとも1つの前記コイル11によって、間接的にパワー供給され、前記グレーツブリッジ整流器37は、唯一の電気的及び又は電子的回路を形成する。
【0032】
図面に示しているいくつかの有利な特徴によると、ステーター20は永久磁石25を担持し、ローター10はコイル11を担持し、各発光ダイオード31、32はローター10に取り付けられる。
【0033】
具体的には、前記永久磁石25は、軸方向の射影において、ローター10が回転しているときにそのローター10によって定められる円状面の範囲内に配置される。
【0034】
好ましくは、少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、マイクロジェネレーター100のステーター20に対して回転するときに、少なくとも1つのコイル11によって直接パワー供給される。
【0035】
具体的には、
図1~5に示している有利な代替的実施形態において示しているように、ローター10は、好ましくは直径的に反対側にあり互いに逆極性であるように構成している、少なくとも一対の発光ダイオード31、32を担持する。
【0036】
具体的には、図示していない1つの代替的実施形態において、ローター10は、互いに90°離れた位置にあり逆極性の対を形成するように構成している4つの発光ダイオード(「LED」とも呼ばれる)(好ましくは、同じ極性の2つの直径的に反対側のLED)を担持する。
【0037】
1つの有利な特徴によると、計時器2000が備えるいずれの電気的及び/又は電子的デバイスも、マイクロジェネレーター100や調整デバイスのコンポーネントである。
【0038】
好ましくは、計時器2000に含まれるいずれの電気的及び/又は電子的装置も、マイクロジェネレーター100のローター10に取り付けられる。この電気的及び/又は電子的装置は、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32と、前記一又は複数のコイルと、適切な場合には前記コイルの少なくとも1つと前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32の間に配置された電気的及び/又は電子的回路とによって形成される。したがって、機械式計時器は、ローター10の外側に電気的エネルギーを伝達するための配線又は手段を使用しないことができる。
【0039】
特に、
図1~5に示しているように、ローター10とステーター20は、マイクロジェネレーター100の回転軸Dを中心に同軸に取り付けられ、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、前記回転軸Dに対して偏心して取り付けられ、したがって、各発光ダイオード31、32は、ローター10が回転しているときに環状面を描く。
【0040】
また、1つの特定の実施形態において、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、計時器1000のユーザーに見える計時器1000の少なくとも1つの可視部分に発する光70の少なくとも過半分を与えて、この少なくとも1つの可視部分を明るくするように構成している。したがって、発光ダイオード31、32は、最良の結果を得るためにローター10上に配置され、外側構造は、光が発される側にて、発された光70の大部分がこの外側構造を通過することができるように穴が開いていなければならず、これによって、好ましくは、発された光の実質的にすべてがこの外側構造を通過することができるようにする。
【0041】
また、具体的には、
図4及び5に示しているように、ローター10には、駆動ピニオン19aがあるハブ19があり、このハブ19は、下側環状構造52と、セラミックスなどによって作られたディスク54と、開口17があり穴が開いた歯車18とを担持し、前記ディスク54は、このディスク54の周部開口内に配置されたコイル11のため、そして、ディスクの2つの対応する開口55内に配置された2つのLED31、32のための支持体を形成し、前記歯車18は、LED31、32の発光面の上に配置され、前記開口17は、前記LED31、32それぞれが発する光70が、この発された光を計時器の前記少なくとも1つの可視部分の方へと導くための手段の方へと通ることを可能にするように構成している。
【0042】
歯車18は、マイクロジェネレーター100をロックし解放するためのデバイスを形成するラチェットである。下側環状構造52は、好ましくは、開口55、接触パッド65、接着剤ドロップ68及び環状トラック66をマスクするために、不透明であり開口がない。接触パッド60、及びコイル11とそれらの接触パッド60の間の接続は、ステーターケージのベース22によって観察者が見えないように隠されている。したがって、環状構造52とベース22の間に位置する円状溝を通して見ることができることがある2つの接触パッド64のごく一部はさておき、マイクロジェネレーター100は、高貴な外観を有し前記マイクロジェネレーター100の内側領域に位置しているLED発光面を例外として、いずれの電気的又は電子的要素をも隠す。このような構成は、高級機械式ムーブメントに組み込まれる照明デバイスに特に適している。また、電気接続は、金によって作ることができる。
【0043】
具体的には、調整デバイス1000は、マイクロジェネレーター100の近傍に、少なくとも1つの静的光ガイド構造を有し、この静的光ガイド構造40は、ローター10が回転しているときにローター10が任意の角位置にあるときに、少なくとも1つの発光ダイオード31、32によって発された光の前記少なくとも過半分を集め、そして、この発された光を計時器の前記少なくとも1つの可視部分の方へと導いて、前記少なくとも1つの発光ダイオードが発光しているときに、この可視部分の実質的に一定かつ/又は実質的に均一な照明を得る。
【0044】
1つの特定の実施形態において、ローター10は、バレルギア列300を通してバレル200によって駆動される。マイクロジェネレーター100は、ローターをロックし解放するデバイス400を備え、このデバイス400は、ラチェット18とクリック機構92を備え、このデバイス400は、特に音楽又はストライク機能付き携行型時計における、ガバナーの場合と同様に、マイクロジェネレーターをオンデマンドで活性化させることを可能にする。このデバイス400は、オンデマンドでマイクロジェネレーターの回転を開始させ停止させるために用いられる。したがって、1回のバレルのチャージの際にローターの回転を数回素早くオンにすることができる。
【0045】
ローター10は、特定の数の小さなコイル11と、少なくとも1つの発光ダイオード、特に2つのLED31、32、を周部に担持する支持ディスク54(特に、セラミックス材料によって作られているもの)からなるモジュールを備える。ステーター20の磁石25の磁場におけるコイル11の回転は、誘導電圧、したがって、誘導交流を発生させ、これは、
図8に示している対応する配線図に従って発光ダイオードにパワー供給する。コイル11は、極性が交番構成となるように直列に接続され、各コイルの内端61と外端62はそれぞれ、支持ディスク54に形成された2つの接触パッド60に接続される。この複数のコイルは、特に、一連のコイルの2つの端コイルの対応する2つの端のため、そして、これらのコイルへの第1のLED31の電気接続67のための2つの接触パッド64と、第2のLED32の電気接続67のための2つの接触パッド65と、2つの接触パッド64をそれぞれ2つの接触パッド65に接続する2つの環状トラック66とからなるプリント回路ボードを介して、2つのLEDに接続されている。2つのLED31、32は、コイル11を用いてLEDに直接パワー供給するためにこのシステムにおいて発生する電流の交番性を利用するために、逆バイアスされている。図示している有利な代替的実施形態において、接触パッド64及び65、2つの環状トラック66は、支持ディスクに直接印刷/堆積される。これによって、合成材料によって作られた伝統的なPCBが不要になる。なお、電気接続67は、さらに、支持ディスク54にある対応する開口55内にてLEDを固定するために役立つ接着剤ドロップ68によって保護されている。
【0046】
したがって、
図8に示しているような単純な電気回路を用いることができる。
【0047】
そして、各発光ダイオード31、32を流れる電流i
LEDは、経時的に
図9に示している形態となる。
【0048】
マイクロジェネレーターの回転周波数に影響するのは、2つの発光ダイオードを通り抜ける
図10に示している平均電流i
LED AVGである。これによって、ローターに与えられる平均制動トルクC
MFRは、
図11のようになる。なお、発光ダイオードに間接的にパワー供給されいずれの実質的な電気的エネルギー格納コンポーネントもない電気的及び/又は電子的回路を備えるような1つの代替的実施形態において、この回路は、発光ダイオードと比べて非常にわずかしか電気エネルギーを消費せず、その衝撃が低く、あるいは無視できるほどであるように構成することが容易にできる。特に、このような回路は、受動的な要素のみによって構成していることができる。いずれの場合であっても、発光ダイオードへのパワー供給を管理するための電気的及び/又は電子的回路は、実質的に一定な小さな電流しか消費せず、この結果、この回路の電流を含む合計電流を考慮する場合に、
図10のグラフにおいてオフセットを発生させる。同様に、
図11のグラフにおいても小さなオフセットがある。また、この電気的及び/又は電子的回路の消費が、発光ダイオードのしきい電圧が超過し、この電気的及び/又は電子的回路に、より大きい電流が流れる場合に、多少増加したとしても、このしきい電圧の上には小さなオフセットがあり、したがって、マイクロジェネレーターを調整するための機能的範囲内にある。このようなオフセットは、調整の原理を変えない。なぜなら、電気エネルギー消費曲線が、
図11に示したプロファイルと同様なプロファイルを維持して、本発明に関連して行われる調整を可能にする。
【0049】
1つの特定の例において、バレルは、初期にローターに20μN・mの最大トルクを出力し、約120Hzであるこのローターの初期回転周波数が得られ、これは、バレルがディスチャージされるに従って、特に、ローターに供給される12μN・mの最小トルクに粗く対応する、約100Hzまで下がるまで、徐々に遅くなり、最小トルクと最大トルクは、被駆動機構の正しい動作のために、バレルの動力トルクの有効範囲に対応する。発光ダイオード(LED)によって消費される電力がなければ、このアセンブリーは、もっと速く回転する。コイルにおいて誘導される電圧に関して、KUがコイルの誘導電圧係数(コイルの誘導電圧の最大値)であり、nBOBがコイルの巻数であり、ωが回転周波数(rad/s)であり、すべてのコイルが直列にて交番構成になっていることを考慮すると、誘導電圧は、以下のVINDとなる。
【0050】
VIND=ω・nBOB・KU・sin(ω・nBOB/2t)
である。
【0051】
電気脈動は、(nBOB/2)・(回転周波数ω)となる。なぜなら、誘導電圧は、磁束の変化の導関数であり、これは最初は+から-に変わり、次に-から+に変わるためである。したがって、誘導電圧は、回転周波数の線形関数である。
【0052】
発光ダイオードにおける誘導電圧と電流の関係は、理論的には以下のショックレー式で与えられる。ここで、Vtは室温で26mVであり、nは1~2の範囲内の品質パラメーターである。
I=I
S(e
VIND/nVt-1)
図6に、良好な近似が与えられている。すなわち、ダイオードは、負かつ低い電圧において逆バイアスされており、特徴的な曲線I
D=f(U
D)は、LEDにおける電流の強い増加を示しており、これは、しきい電圧U
Sの上において実質的に線形であり、しきい電圧U
Sの上における電圧の小さな増加が、電流の大きな増加を発生させ、結果的にエネルギーの消散を発生させることがわかる。この近似は、上記のショックレーの式によって与えられるLEDの実際の挙動に非常に近い。
【0053】
図5に示しているように、磁石とコイルの寸法構成は、外径8.4mm、ハブを除く合計厚み1.4mmの比較的小さなステーターケージに最適化されている。
【0054】
ワイヤの巻数と直径は、発光ダイオードの動作を確実にするように構成している。異なる数のコイルの巻数、磁石、異なる寸法構成も可能である。磁石25の体積を増加させたりエア間隙を小さくしたりすることによって、コイル11と磁石25の間の結合を大きくすることができる。磁束の変動を最大化するために、磁石25とコイル11どうしを可能なかぎり近くに配置する。コイル11の体積を大きくしたりワイヤの直径を小さくしたりすることによって、誘導電圧係数Ku(回転周波数に対する誘導電圧の比として定められる)を大きくすることができるが、コイルの抵抗も大きくなる。この場合、発光ダイオードにおける電流の強度は低下するが、ローターの回転周波数も低下するため、バレルのディスチャージ時間と照明時間が増加する。
図12~15は、コイル11のワイヤの太さが、抵抗に及ぼす影響(
図12)、ダイオードの電流に及ぼす影響(
図13)、誘導電圧に及ぼす影響(
図13)、及びバレルの合計ディスチャージ時間に及ぼす影響(
図15)を示している。
【0055】
14μmのワイヤ直径を選択すると、バレルがチャージされた状態で、毎秒120回転のローター周波数が得られ、これは、ローターに対して約5500回転のパワーリザーブによって、40秒よりも長い動作時間を与える。
【0056】
1つの特定の特徴によると、計時器2000は、マイクロジェネレーター100を解放し停止させるデバイスを備え、これは、制御デバイス400と係合機構500を備え、前記制御デバイス400は、マイクロジェネレーター100のローター10の駆動を少なくともトリガーし、好ましくはさらにその後に停止させるようにユーザーによってアクチュエートすることができ、前記制御デバイス400は、外側の制御メンバー、特に、押しボタンや、ボルトばねを備えるボルト、を備え、前記係合機構500は、計時器2000が備えるムーブメント600によってアクチュエートして、例えば、時刻についてのストライクをしたり、要求に応じて又は所与の時間においてメロディーを発生させたりすることができる。
【0057】
図17に示している1つの代替的実施形態において、ユーザーは、回転車セット、ローター10、及びマイクロジェネレーター100を、特に、アクチュエート用アーム403に作用するレバー402と、前記解放し停止させるデバイスに含まれるクリック機構92を制御する弾性要素404とをアクチュエートする押しボタン401を押すことによって、解放することができ、前記弾性要素404は、アクチュエート用アーム403によって、そして、ムーブメントによって駆動される係合機構500によって自動的に、アクチュエートすることができる。この回転は、押しボタンが解放されるまで又は設定された期間が経過するまで、継続する。計時器用ムーブメント600によってアクチュエートされる係合機構500は、好ましくは特定の時間間隔の間に、特にアラーム機能のために、弾性要素404に作用する。回転車セット1の回転と停止をコマンドに応じて制御するように、任意の同様なシステムを構成させることができる。特に、説明している様々な機構は、少しの時間、ローター10のラチェット18からクリック機構92を解放し、したがって、マイクロジェネレーター100のローター10の回転を許可して、回転車セットを駆動することを可能にするように構成している。
【0058】
なお、リピーター機能及び/又はストライク機能付きの機構のうち最も洗練されたものは、アイソレーターと呼ばれるレバーを備える安全デバイスを備え、これによって、メロディーや音の表現全体を再生することが可能になり、この時間にユーザーによるいずれの操作をも防ぎ、あるいは計時器自体によるいずれの他の制御をも防ぐ。ストライク機能付きのバレル又はボルトばねなどにおいて、この目的のために格納されるエネルギーは、最も長く続く音の範囲を再生するために必要なエネルギーよりも大きい。
【0059】
具体的には、前記解放し停止させるデバイスは、ローター10の回転の持続時間を制限するための機械的な遅延デバイスを備える。
【0060】
1つの特定の特徴によると、計時器2000には、光を発しているときに少なくとも1つの発光ダイオード31、32によって直接的又は間接的に明るくすることができる特定の領域がある。
【0061】
1つの特定の特徴によると、計時器2000は、調整デバイス1000によって回転速度が調整される回転車セット1を備えるストライク機能付き、リピーター機能付き又は音楽機能付きの動的表示機構である音響的な動的表示機構を備える。
【0062】
1つの特定の特徴によると、計時器2000は、調整デバイス1000によって回転速度が調整される回転車セットを備える視覚的な動的表示機構を備える。
【0063】
具体的には、少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、計時器2000の音響的な運動又は視覚的な運動のシーケンスの間に、所与の領域の方へと光を同期的に発する。発光ダイオードは、ステンドガラス装飾、音符のような、携行型時計の、機構、視覚的な運動、特定の装飾要素の一又は複数の特定の領域を特に明るくすることができる。
【0064】
1つの特定の特徴によると、計時器2000には、電気エネルギー格納キャパシターがない。
【0065】
本発明は、さらに、最小速度Vminと、この最小速度よりも厳密に大きい最大速度Vmaxとの間の回転車セット1の機能的速度範囲において、計時器2000の回転車セット1の回転速度を調整する方法に関し、この回転車セット1は、動力デバイス、特に、計時器2000が備えるバレル200、によって駆動される。
【0066】
この方法は、回転車セット1の回転速度を調整するための調整デバイス1000を備え、この調整デバイス1000は、回転車セット1に機械的に結合するローター10を備えるマイクロジェネレーター100を備え、このローター10は、ステーター20に対して回転軸Dを中心に運動可能であり、ステーター20は、永久磁石25とコイル11の一方を担持し、ローター10は、永久磁石25とコイル11の他方を担持し、前記コイル11は、少なくとも1つの発光ダイオード31、32に、直接的又は間接的に、接続される。
【0067】
本発明によると、前記マイクロジェネレーター100と前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、適切な場合に実質的な電気エネルギー格納コンポーネントがない電気回路及び/又は電子回路とともに、マイクロジェネレーター100が発生させる電気エネルギーを消費する唯一のデバイスを構成し、かつ、回転車セット1とローター10の間の調整デバイス1000と組み合わさって、回転車セット1の機能的速度範囲に対して、最小周波数Fminと最大周波数Fmaxの間のローター10の回転の対応する周波数範囲が、コイル11において、最大周波数Fmaxに対応する最大電圧値Umaxが前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32のコイル11のしきい電圧USよりも大きいような誘導電圧範囲を発生させるような特徴を有する。また、前記動力デバイスは、その有効動力トルク範囲が、回転車セット1を機能的速度範囲の最小速度Vminにて駆動する最小トルクCMotMinを有し、回転車セット1を機能的速度範囲の最大速度Vmaxにて駆動する最大トルクCMotMaxを有するように選択される。好ましくは、前記誘導電圧の範囲は、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32の機能的な電圧範囲内に、しきい電圧USの上の電圧範囲内に、あり、前記少なくとも1つの発光ダイオードが、通常の動作時に、関連する誘導電圧範囲を通して光を発するようにして、意図した動作範囲を通して友好的な調整が可能になる。
【0068】
具体的には、調整デバイス1000は、最小動力トルクCMotMinと最大動力トルクCMotMaxの間の、動力デバイスの有効トルク範囲に対して、ローター10の回転周波数を、最小周波数Fminと最大周波数Fmaxの間の周波数範囲内に維持することによって、制御するように設計されている。また、最小周波数Fminに対する最小電圧値Uminは、前記しきい電圧よりも上にされる。
【0069】
具体的には、調整デバイス1000は、マイクロジェネレーター100のローター10の運動エネルギーを消散させる手段をいずれも備えないように構成している。本発明がローターの周波数を減らすためにローターを制動するのではなく、単にその周波数が増えることを防ぐために行うことがわかる。
【0070】
具体的には、動力デバイスは、バレル200を備え、このバレル200は、最小動力トルクCMotMinと最大動力トルクCMotMaxの間の、自身が出力するトルクの有効範囲が、以下の条件に合うように構成している。この条件とは、最小動力トルクCMotMinが、回転車セット1が最小速度Vminにて回転しているときに、マイクロジェネレーター100のローター10を例外として、前記バレルによって駆動される前記機構を駆動するために必要な機械的トルクCMecVminと、ローター10の最小周波数Fminに対応する最小ローター駆動トルクCEDminとの和に等しく、かつ、最大動力トルクCMotMaxが、回転車セット1が最大速度Vmaxで回転しているときに、マイクロジェネレーター100のローター10を例外として、前記機構を駆動するために必要な機械的トルクCMecVmaxと、ローターの最大周波数Fmaxに対応する最大ローター駆動トルクCEDmaxとの和に等しいことである。
【0071】
具体的には、
図7に示しているように、前記一又は複数の発光ダイオード31、32の数は、それらのタイプや大きさに応じて、調整デバイス1000が備えるすべての発光ダイオード31、32が、最小周波数F
minに対応する、最小ローター駆動トルクC
EDminと、最大周波数F
maxに対応する、最大ローター駆動トルクC
EDmaxの間のローターの駆動トルクで、電気を消散させるように構成しているように選択される。
【0072】
特定の代替的実施形態によると、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、マイクロジェネレーター100によって間接的にパワー供給され、前記少なくとも1つの発光ダイオード31、32は、マイクロジェネレーター100のローター10が回転しているときにコイル11において誘導される電流を格納するためのいずれの実質的なコンポーネントなしで、電気的及び/又は電子的回路を介して、マイクロジェネレーター100に接続される。
【0073】
短く書くと、本発明は、データ処理や調整制御のための電子的回路を必要とせずに、受動的な調整を実装する。車セットの回転速度を調整するための調整デバイスのためのマイクロジェネレーターを利用して、いずれの実質的な電気エネルギー格納コンポーネントなしで、電気的/電子的回路を介して直接的又は間接的にLEDにパワー供給することは、新しい概念であり、これによって、高い効率と、高い度合いの小型化と、少ない部品数と、低コストとを組み合わせて発揮させることができる。また、このようなデバイスによって、高級な携行型時計に適した、堅牢で比較的高級な構成を得ることができる。
【0074】
また、本発明によって、慣性ガバナー、空力的ガバナー、渦電流ガバナーなどにおいて用いられるもののような、脆く摩耗する機械的コンポーネントを使用しないことができる。また、ばねのような機械的戻し手段も必要なくなる。
【0075】
本発明には、以下のような多くの利点がある。
【0076】
発光ダイオードをマイクロジェネレーター上に直接配置することは、こすれ合う接触、導線、又はPCBトラックを必要としないことを意味する。これによって、高級携行型時計の製造との適合性が確実になる。ローターにおける有利な構成のおかげで、最高級の機械式携行型時計にふさわしくない材料によって作られる電子的コンポーネントの存在をいずれも防ぐことができる。したがって、好ましい代替的実施形態において、発光ダイオードは、「電子的」と表現することができる唯一のコンポーネントであるが、その構成は無機的であり、体積のほとんどは結晶と金属によって構成される。この結果、提案している構成は、審美的に目立たず、システムが露出されるスケルトンウォッチの構成にも適合性が高い。また、電気的及び/又は電子的回路にはいずれも実質的な電流格納コンポーネントがない、発光ダイオードに間接的にパワー供給を行う有利な代替的実施形態において、「電子的」タイプの要素に対して、特にケイ素と金属である、結晶のみによって構成し、非常に長い寿命を与えることができる。したがって、この代替的実施形態は、精巧な機械式ムーブメントのための高級な携行型時計の製造に適している。
【0077】
一次電池を必要とせずに、1つ又は複数の発光ダイオードにパワー供給することができる。当然、ローターに取り付けられたレベリングキャパシターを用いることができるが、ローターが比較的高い周波数で回転して、計時器の可視部分を明るくするためにLEDの照明機能を用いる場合に、明るさの周期的な変動が人間の目に知覚されないために、必ずしも必要ない。実際に、本発明の好ましい実施形態には、必ずしも誘導電圧整流器やレベリングキャパシターを必要とせずに、各ダイオードがコイルから直接パワー供給されることのおかげで、いずれの中間エネルギー格納器もない受動回路となることができるという利点がある。
【0078】
回転車セット1の回転にリンクされた別の機能と組み合わさって、発光機能を活性化できることと、設定された時間の後にその発光を停止させることができることは、非常に有利である。この選択肢は、従来技術において知られる携行型時計では利用することができない。このように、回転車セットが回転しているときに、付加的な照明機能を有して、例えば、表盤、ユーザーに見える車セット、又は他の要素を明るくすることができる。
【0079】
電流がオフになっているときには、発光ダイオードは持続性の発光をしない。しかし、ユーザーの目は持続性の発光を感じることとなる。なぜなら、100Hzのオーダーの回転と、例えばマイクロジェネレーターにおいて12又は14の極があることによって、1kHzのオーダーで点滅し、これを目が知覚できないためである。マイクロジェネレーターの回転に関して、毎秒1000回発生する小さな制動トルクが回転速度を平準化させる。エネルギー格納キャパシターは、誘導電圧の変動に電圧変動が十分速く追従せず、速度調整にあまり効果的ではないため、望ましくない。発光ダイオード(LED)は、高周波数で回転するときに、人間の目にはほぼ連続的で均一であり面への到達性が発光ダイオードのものよりもはるかに大きいような環状の光分布を発生させる。
【0080】
ローターに取り付けられる(受動的な)グレーツブリッジを除いて電子的部品を用いず、電気エネルギー格納器を用いない手法によって、高級携行型時計の製造のアプリケーションに完全に適合することが確実になる。
【符号の説明】
【0081】
1 回転車セット
10 ローター
11 コイル
18 ラチェット
20 ステーター
25 永久磁石
31、32 発光ダイオード
92 クリック機構
100 マイクロジェネレーター
200 動力デバイス
300 バレルギア列
400 制御デバイス
1000 調整デバイス
2000 計時器
【外国語明細書】