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特開2024-149408巻線支持部材、アンテナ、及び、アンテナを製造するための方法
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  • 特開-巻線支持部材、アンテナ、及び、アンテナを製造するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149408
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】巻線支持部材、アンテナ、及び、アンテナを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/08 20060101AFI20241010BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20241010BHJP
   H01F 21/04 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01Q7/08
H01F5/02 J
H01F21/04
H01F5/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024049132
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】23166758
(32)【優先日】2023-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504103641
【氏名又は名称】シャフナー・エーエムファウ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ムラド
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト・オトマー・シェラー
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB04
5E070BA07
5E070CA14
5E070DA03
5E070GG04
(57)【要約】
【課題】本発明は、コイルの巻線を支持し、アンテナの磁性コアを収容するための巻線支持部材に関する。さらに、本発明は、アンテナに関し、アンテナを製造するための方法に関する。
【解決手段】当該巻線支持部材は、第1端部とこの第1端部に対向する第2端部との間で縦軸に沿って延在する主巻線支持部材と、前記主巻線支持部材に可動に係合された副巻線支持部材とから構成されている。この場合、前記主巻線支持部材及び前記副巻線支持部材はそれぞれ、複数の巻線を保持するように形成されている。この場合、前記主巻線支持部材及び前記副巻線支持部材は、この副巻線支持部材の移動を前記縦軸に沿って案内し、この副巻線支持部材を初期位置と最終位置との間に位置決めするために互いに補完的に形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの巻線を支持し、アンテナの磁性コアを収容するための巻線支持部材であって、
当該巻線支持部材は、
-第1端部とこの第1端部に対向する第2端部との間で縦軸に沿って延在する主巻線支持部材と、
-前記主巻線支持部材に可動に係合された副巻線支持部材とから構成されていて、
前記主巻線支持部材及び前記副巻線支持部材はそれぞれ、複数の巻線を保持するように形成されていて、
前記主巻線支持部材及び前記副巻線支持部材は、この副巻線支持部材の移動を前記縦軸に沿って案内し、この副巻線支持部材を初期位置と最終位置との間に位置決めするために互いに補完的に形成されている当該巻線支持部材。
【請求項2】
前記主巻線支持部材は、2つの端部区間と前記2つの端部区間の間に設けられた1つの中央区間とから構成されていて、
前記副巻線支持部材は、前記2つの端部区間のうちの1つの端部区間に設置されていて、
前記副巻線支持部材が設置されている端部区間は、前記第1端部よりも前記第2端部の近くに設置されている請求項1に記載の巻線支持部材。
【請求項3】
前記主巻線支持部材は、前記縦軸に沿った前記副巻線支持部材の移動を限定するために、好ましくは前記初期位置と前記最終位置との間の移動を制限するために複数のエンドストップを有して形成されている請求項1に記載の巻線支持部材。
【請求項4】
前記主巻線支持部材は、ガイド構造部を含み、
前記副巻線支持部材は、前記主巻線支持部材を把持するように形成されていて、且つ前記縦軸に沿った移動を案内して縦方向以外の方向への移動を回避するために前記ガイド構造部に係合するように形成されている請求項1に記載の巻線支持部材。
【請求項5】
前記主巻線支持部材の前記ガイド構造部は、ガイドストリップとして形成されていて、このガイド構造部に係合している前記副巻線支持部材の一部が、ガイド爪として形成されている請求項4に記載の巻線支持部材。
【請求項6】
前記副巻線支持部材は、フレキシブルな部材を含み、前記主巻線支持部材は、このフレキシブルな部材に対して補完的な構造部を含み、
前記フレキシブルな部材は、前記初期位置と前記最終位置との間で前記副巻線支持部材をステップごとに位置決めするために前記補完的な構造部に係合するように形成されている請求項1に記載の巻線支持部材。
【請求項7】
複数の突出スペーサが、前記巻線支持部材をこの巻線支持部材の外側にあるハウジング内の中心に設置するために、前記第2端部に配置されている前記複数の突出スペーサを含む請求項1に記載の巻線支持部材。
【請求項8】
-巻線支持部材と、
-コイルと、
-磁性コアとを有するアンテナであって、
前記巻線支持部材は、第1端部とこの第1端部に対向する第2端部との間で縦軸に沿って延在する主巻線支持部材と、この主巻線支持部材に可動に係合された副巻線支持部材とから構成されていて、前記主巻線支持部材及び前記副巻線支持部材はそれぞれ、複数の巻線を保持するように形成されていて、前記主巻線支持部材及び前記副巻線支持部材は、この副巻線支持部材の移動を前記縦軸に沿って案内し、この副巻線支持部材を初期位置と最終位置との間に位置決めするために互いに補完的に形成されていて、
前記コイルは、少なくとも2つの巻線区間に配置された複数の巻線から構成されていて、第1巻線区間が、前記主巻線支持部材に巻き付けられていて、第2巻線区間が、前記副巻線支持部材に巻き付けられていて、
前記磁性コアは、前記巻線支持部材の内容積に形成されている当該アンテナ。
【請求項9】
前記第2巻線区間は、前記第1巻線区間よりも多い単位面積当たりの巻線回数を有する請求項8に記載のアンテナ。
【請求項10】
第3巻線区間が、前記第1巻線区間よりも多い単位面積当たりの巻線回数を有する、前記主巻線支持部材に巻き付けられた前記第3巻線区間を有する請求項8に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記第2巻線区間は、前記第1端部よりも近く前記巻線支持部材の前記第2端部に配置されていて、及び/又は、前記第3巻線区間は、前記第2端部よりも近く前記巻線支持部材の前記第1端部に配置されている請求項10に記載のアンテナ。
【請求項12】
アンテナを製造し、このアンテナのインダクタンスを調整するための方法であって、
-第1端部とこの第1端部に対向する第2端部との間で縦軸に沿って延在する主巻線支持部材と、この主巻線支持部材に可動に係合された副巻線支持部材とから構成される巻線支持部材を提供するステップであって、前記主巻線支持部材及び前記副巻線支持部材はそれぞれ、複数の巻線を保持するように形成され、前記主巻線支持部材及び前記副巻線支持部材は、この副巻線支持部材の移動を前記縦軸に沿って案内し、この副巻線支持部材を初期位置と最終位置との間に位置決めするために互いに補完的に形成される、当該ステップと、
-前記巻線支持部材の内容積に磁性コアを挿入するステップと、
-前記副巻線支持部材に密巻線区間を巻き付け、前記主巻線支持部材に疎巻線区間を巻き付けることによってコイルを形成するステップと、
-試験装置によってアセンブリのインダクタンスを測定するステップと、
-前記アセンブリのインダクタンスが、既定のインダクタンスの値又はインダクタンスの範囲に一致するように、前記縦軸に沿って前記副巻線支持部材を移動させるステップとを含む当該方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線支持部材と、アンテナと、アンテナを製造しインダクタンスを調整するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アンテナは、強磁性体のコアとコイルとから構成されていて、多くの場合にハウジングに埋め込まれている。伝送周波数及び帯域幅に応じて、コア及びコイルは、適切に設計されなければならない。例えばUWBアンテナ向けのアンテナの帯域幅は、より広くなりつつあり、当該アンテナの領域は、より大きくなりつつある。その結果、例えば、コアも、より長くなりつつある。自動車の用途で使用されるような、例えばキーレスエントリーシステムで使用されるアンテナは、通常は、共振回路を構成するためにコンデンサと共同して作動する。従来では、共振回路は、キーのような送受信機と交信するために特定の周波数又は帯域幅に同調される必要がある。当該共振回路の同調は、コンデンサのキャパシタンスを変化させることによって、又はアンテナのインダクタンスを変化させることによって実行され得る。多くの場合、キャパシタンスを変化させることによって共振回路を同調することは、多大な労力と広範囲に及ぶ様々なコンデンサの確保とを伴うので、インダクタンスを変化させることは、多くの場合により望ましい。
【0003】
米国特許第7372421B2号明細書のような従来の技術から公知の解決手段は、製造中のアンテナのインダクタンスの柔軟な調整を可能にする。この種類の柔軟性は、特にその後のアンテナを埋め込むような製造ステップに関して欠点も引き起こす。インダクタンスが設定された場合、インダクタンスのさらなる任意の変更は阻止される。多くの場合、インダクタンスの設定が製造中に変化することを阻止するために接着剤を使用することは、アンテナの大量生産のためには望ましくない追加の労力を必要とする。他方では、従来の技術から公知の解決手段は、設計書にしたがってアンテナのインダクタンスを調整するために多くの場合に高い技術の製造業者を必要とする。その後に続く手順は、失敗することが多く、時間がかかり、多くの場合に望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7372421B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来の技術の欠点及び制約を克服する、巻線支持部材と、アンテナと、アンテナを製造しアンテナのインダクタンスを調整するための方法と提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
アンテナのための巻線支持部材が、請求項1に記載の特徴を含む本発明の第1の観点にしたがって開示されている。本発明の巻線支持部材のさらなる特徴及び実施の形態が、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明は、コイルの巻線を支持し、アンテナの磁性コアを収容するための巻線支持部材に関する。当該巻線支持部材は、
-第1端部とこの第1端部に対向する第2端部との間で縦軸に沿って延在する主巻線支持部材と、
-当該主巻線支持部材に可動に係合された副巻線支持部材とから構成されている。
【0008】
この場合、当該主巻線支持部材及び当該副巻線支持部材はそれぞれ、複数の巻線を保持するように形成されている。この場合、当該主巻線支持部材及び当該副巻線支持部材は、この副巻線支持部材の移動を当該縦軸に沿って案内し、この副巻線支持部材を初期位置と最終位置との間に位置決めするために互いに補完的に 形成されている。巻線は、電線を巻いたものである。
【0009】
代わりに、副巻線支持部材は、初期位置と当該最終位置との間に可動に位置決めされるように構成され得る。この場合、主巻線支持部材は、副巻線支持部材を位置決めするために縦軸に沿った移動を案内するように配置され得る。
【0010】
場合によっては、巻線支持部材は、コア支持部材(core support)、ボビン(bobbin)又はアンテナ巻線支持部材(antenna winding carrier)とも呼ばれる。この場合、これらの用語は、この明細書においてはほとんど同じ意味で使用され得る。原則として、巻線支持部材は、主巻線支持部材と副巻線支持部材とから構成されている。主巻線支持部材は、磁性コアを支持し収容するための内容積部を有して形成され得る。巻線が、主巻線支持部材と副巻線支持部材とに巻き付けられ得る。しかしながら、磁性コア及びコイルは、巻線支持部材の一部でない。
【0011】
上記のように、副巻線支持部材は、この副巻線支持部材が縦軸に沿って2つの端部位置間で移動され得るように主巻線支持部材に可動に係合され得る。副巻線支持部材は、主巻線支持部材によって支持され得て、この主巻線支持部材に可動に固定され得る。縦軸は、第1端部から巻線支持部材の中心を介して第2端部まで延在する軸でもよい。
【0012】
語句「互いに補完的に形成される」は、主巻線支持部材と副巻線支持部材とがそれぞれ、共同して特定の機能を提供するように、すなわち副巻線支持部材の移動を案内するように構成され得ることを示す。したがって、主巻線支持部材の機能と副巻線支持部材の機能とが、互いに補完し合い、プラグとソケットとに相当する。特に、主巻線支持部材と副巻線支持部材とは、互いに機械式に補完し合って機械機能を提供するように構成されている。
【0013】
主巻線支持部材と副巻線支持部材とが、巻線を支持する場合、副巻線支持部材によって支持される巻線は、縦軸に沿って変位され得るか又は可変に位置決めされ得る。副巻線支持部材は、主巻線支持部材に可動に係合されているので変位可能である。この明細書においてより詳しく説明される当該変位は、副巻線支持部材がアンテナのインダクタンスの調整を可能にするので有益である。さらに、縦軸に沿った副巻線支持部材の移動が案内されるので、インダクタンスが高精度に且つ予想通りに変更され得る。
【0014】
主巻線支持部材及び副巻線支持部材は、プラスチックのような同じ非磁性材料から製造され得る。当該巻線支持部材が、最後の製造ステップで埋め込まれるならば、使用される材料は、埋め込み用樹脂と互換性がなければならない。
【0015】
上記の特徴を呈する巻線支持部材は、多大な労力なしに製造され得て、したがって大量に製造するのに非常に適している。代わりに又はさらに、巻線支持部材は、調整可能なインダクタンスを有するアンテナを製造するのに適している。
【0016】
本発明の第1の観点の第1の実施の形態では、主巻線支持部材は、2つの端部区間と当該2つの端部区間の間に設けられた1つの中央区間とから構成され得て、副巻線支持部材は、2つの端部区間のうちの1つの端部区間に設置され得て、副巻線支持部材が設置されている端部区間は、第1端部よりも第2端部の近くに設置され得る。それぞれの端部区間は、主巻線支持部材の全長の好ましくは32%未満、好ましくは25%未満、最も好ましくは20%未満を覆っている。副巻線支持部材は、主巻線支持部材の縦方向の延在部分の好ましくは30%未満から成る主巻線支持部材の領域内で移動され得る。副巻線支持部材を第2端部に設置することは、様々な目的のために、例えば、磁性コアを挿入するための挿入区間を提供するために、及び/又はコネクタを機械式に固定するために第1端部を使用することを可能にする。最も好ましくは、磁性コアが、第2端部で挿入され得る。この場合、主巻線支持部材は、磁性コアの組み立てを可能にする開口部のような専用の挿入区間を有して形成され得る。
【0017】
本発明の第1の観点の第2の実施の形態では、主巻線支持部材は、縦軸に沿った副巻線支持部材の移動を制限するために、好ましくは又は専ら初期位置と最終位置との間の移動を制限するために複数のエンドストップを有して形成され得る。エンドストップは、端部位置同士間の副巻線支持部材の移動を制限するために、主巻線支持部材から延在する突起部又は突出部の形態で設けられ得る。
【0018】
本発明の第1の観点の第3の実施の形態では、主巻線支持部材は、ガイド構造部を含み得て、副巻線支持部材は、主巻線支持部材を把持するように形成され得て、且つ縦軸に沿った移動を案内して縦方向以外の方向への移動を回避するためにガイド構造部に係合するように形成され得る。縦方向は、主巻線支持部材の最も長い軸に対して平行に延在する方向を示す。換言すれば、縦方向は、主巻線支持部材の長さに追従する第1端部から第2端部まで(又は第2端部から第1端部まで)向かう方向であり得る。したがって、縦軸に沿った副巻線支持部材の移動は直線であり得る。コイルの巻線と結合すると、これは、アンテナのインダクタンスの線形の調整を可能にできる。
【0019】
本発明の第1の観点のさらなる実施の形態では、主巻線支持部材のガイド構造部は、ガイドストリップとして形成され得て、このガイド構造部に係合している副巻線支持部材の一部が、ガイド爪として形成され得る。ガイドストリップとガイド爪とは、効率的な機構で互に補完し合い、製造が比較的簡単である。
【0020】
本発明の第1の観点の異なる実施の形態では、副巻線支持部材は、フレキシブルな部材を含み得て、主巻線支持部材は、このフレキシブルな部材に対して補完的な構造部を含み得て、フレキシブルな部材は、初期位置と最終位置との間で副巻線支持部材をステップごとに位置決めするために補完的な構造部に係合するように形成され得る。
【0021】
フレキシブルな部材は、印加された力の下で変形され得て、力が解放されると、その初期位置に戻るスプリング部材として形成され得る。浮力又は押圧力が、埋め込み中に副巻線支持部材に印加されたとしても、当該力がないときは、副巻線支持部材が、所定の位置に確実に保持される。
【0022】
この特徴は、副巻線支持部材が直線状に移動されるだけではなくて、ステップごとに直線状に移動されることも可能にできる。巻線と結合されていれば、アンテナのインダクタンスのステップごとの調整が可能である。それぞれのステップが、アンテナのインダクタンスの既定の変化を引き起こすので、ステップごとの調整は、アンテナの製造工程を簡略化できる。要約すると、この特徴は、2倍の機能、すなわち副巻線支持部材の位置のステップごとの調整と、副巻線支持部材の位置の係止とをもたらし得る。
【0023】
本発明の第1の観点の別の実施の形態では、補完的な構造部は、複数のスロットから成る鋸歯状ストリップとして形成され得て、フレキシブルな部材は、ノーズ部を含むフレキシブル突起部として形成され得る。この場合、ノーズ部は、複数のスロットのうちの少なくとも1つのスロットに係合するように形成され得る。さらに、フレキシブルな部材は、副巻線支持部材の位置を確実に固定できるスプリング部材と解され得る。
【0024】
本発明の第1の観点のさらなる特徴では、巻線支持部材は、複数の突出スペーサを含み得る。この場合、複数の突出スペーサは、巻線支持部材をこの巻線支持部材の外側にあるハウジング内の中心に設置するために、第2端部に配置されている。この実施の形態は、第2端部に配置された突出スペーサに限定されなくてもよい。追加の突出スペーサが、主巻線支持部材の異なる位置に設置されてもよい。突出は、当該スペーサが主巻線支持部材から突き出る又は延在することを示し得る。突出スペーサは、スプリング部材として形成されてもよく、したがってフレキシブルであり得る。
【0025】
当該第1の観点の個々の実施の形態が、本発明の様々な特徴を網羅するとしても、技術的な観点から有益であり且つ適切であるときは、幾つかの実施の形態又は全ての実施の形態が結合され得る。
【0026】
本発明の第2の観点にしたがって、アンテナが開示されている。
【0027】
アンテナは、
-少なくとも2つの区間に配置された複数の巻線から成るコイルと、
-磁性コアと、
-(任意の実施の形態又は任意の実施の形態の組み合わせを含む)第1の観点の巻線支持部材とを含む。この場合、磁性コアが、巻線支持部材の内容積部に形成されていて、巻線が、巻線支持部材に巻き付けられている。
【0028】
磁性コアは、複数のフェライトブロック又はフェライトキューブのような複数の磁性コア部材から組み立てられ得るか又は複数の磁性コア部材によって組み立てられ得る。磁性コアの材料は、特に、周波数帯域を操作する複数のアンテナから選択されたソフトフェライトのようなフェライトでもよい。従来では、例えば約25MHzよりも上の高い周波数の用途に対して、Ni-Zn系フェライトが使用される。
【0029】
巻線は、特に、主巻線支持部材と副巻線支持部材とに、それぞれの部材が、当該巻線の一部を収容できるように巻き付けられ得る。磁性コアと巻線支持部材と主巻線支持部材に巻き付けられたコイルとの組み合わせが、アンテナを提供できる。この場合、特に大量生産されるアンテナのために、インダクタンスが、簡単に且つ有益に調整可能である。
【0030】
本発明の第2の観点の第1の実施の形態では、アンテナは、主巻線支持部材に巻き付けられ得る第1巻線区間と、副巻線支持部材に巻き付けられ得る第2巻線区間とを含み得る。
【0031】
本発明の第2の観点の第2の実施の形態では、第2巻線区間は、第1巻線区間よりも多い単位面積当たりの巻線回数を有し得る。副巻線支持部材が、大量の巻線を比較的小さいスペースに収容できるので、この第2巻線区間は有益であり得て、大量の巻線が変位されるので、インダクタンスの大部分が変化され得る。副巻線支持部材が、単位面積当たりにより多くの巻線を支持するほど、インダクタンスの変化がより大きくなり得る。
【0032】
本発明の第2の観点の第3の実施の形態では、アンテナは、主巻線支持部材に巻き付けられた第3巻線区間を含み得る。この場合、第3巻線区間は、第1巻線区間よりも多い単位面積当たりの巻線回数を有し得る。第3巻線区間は、特に副巻線支持部材の位置に対向する端部に設置されているときに主巻線支持部材を機械的に安定化させるために使用され得る。さらに、磁性コアを挿入するための挿入区間が、端部に設けられている場合、第3巻線区間は、巻線支持部材に挿入された磁性コアの固定を支援できる。最も好ましくは、第3巻線区間は、磁性コアにわたって分布される磁場密度を得られるようなこの磁性コア内の磁場の分布を均一にできる。
【0033】
本発明の第2の観点のさらなる実施の形態では、第2巻線区間は、第1端部よりも巻線支持部材の第2端部の近くに配置され得て、及び/又は、第3巻線区間は、第2端部よりも巻線支持部材の第1端部の近くに配置され得る。一般に、第2巻線区間が、巻線支持部材の端部により近く配置されると、アンテナのインダクタンスの変化が、より顕著に且つより敏感になる。第2巻線区間が、中心に近づくほど、インダクタンスの変化は、敏感でなくなる(より小さくなる)。
【0034】
好ましくは、第2巻線区間は、第1端部よりも巻線支持部材の第2端部の近くに配置され得て、第3巻線区間は、第2端部よりも巻線支持部材の第1端部の近くに配置され得る。上記のように、第3巻線区間を第1端部のより近くに設置すると、磁性コアを挿入するための挿入区間を巻線支持部材に設けるためのスペースが確保され得る。
【0035】
当該第2の観点の個々の実施の形態が、本発明の様々な特徴を網羅するとしても、技術的な観点から有益であり且つ適切であるときは、幾つかの実施の形態又は全ての実施の形態が結合され得る。
【0036】
本発明の第3の観点によれば、アンテナを製造しインダクタンスを調整するための方法が開示されている。アンテナは、(任意の実施の形態又は任意の実施の形態の組み合わせを含む)第2の観点の特徴を含み得る。
【0037】
当該方法は、
-(任意の実施の形態又は任意の実施の形態の組み合わせを含む)第1の観点の巻線支持部材を提供するステップと、
-磁性コアを巻線支持部材の内容積に挿入するステップと、
-副巻線支持部材を初期位置に設置するステップと、
-副巻線支持部材に密巻線区間を巻き付け、主巻線支持部材に疎巻線区間を巻き付けることによってコイルを形成するステップと、
-巻線支持部材と磁性コアとコイルとを含むアセンブリを試験装置に挟持するステップと、
-コイルの端子を試験装置の対応する端子に接続するステップと、
-試験装置によってアセンブリのインダクタンスを測定するステップと、
-測定されたインダクタンスが、既定のインダクタンスの値又はインダクタンスの範囲に一致するまで、密巻線区間を支持する副巻線支持部材を初期位置から縦軸に沿ってステップごとに移動させるステップ、又は密巻線区間を支持する副巻線支持部材を初期位置から最終位置まで縦軸に沿ってステップごとに移動させ、最終位置が、インダクタンスの測定と既定の定数とに基づいて計算されるステップとを含む。
【0038】
開示された製造方法は、従来の技術から公知の製造方法よりも有益であり得る。当該製造方法は、簡単であり、アンテナが、特別に訓練された製造業者によらなくて製造されるときでも、インダクタンスが確実に設定されるアンテナの製造を達成できる。他方では、第1の観点にしたがって、特に巻線支持部材を使用することによって、インダクタンスが、確実に設定され得て既定の値に固定され得る。
【0039】
コイルの端子を試験装置に直接に接続する必要はない。コイルの端子は、コネクタに接続され得て、試験装置は、インダクタンスを測定するためにコネクタの端子に接続する。
【0040】
副巻線支持部材を最終位置へ移動させると、インダクタンスの変化と位置の変化との間の線形関係が有利に得られる。副巻線支持部材の最終位置が、アンテナの初期のインダクタンスを測定し、測定されたインダクタンスを位置の変化ごとのインダクタンスの変化の関係によって調整することによって決定され得る。この定数は、所定の形状の任意のアンテナに対して代表的な定数でもよい。アンテナのインダクタンスを位置の調整中に連続して測定する必要がない。ここでは、インダクタンスは、開ループ式に設定され得る。ステップ(クリック)の数は、インダクタンスの変化に比例し得るので、ステップごとの調整は有益であり得る。したがって、位置の変化又は最終位置を測定するための測長カウンタ(例えば、ルーラー)は要求されず、工程を簡略化し、当該工程をより失敗させなくする。
【0041】
第3の観点の第1の実施の形態では、測定ステップ及び移動ステップが、試験装置によって自動的に実行され得て、及び/又は、密巻線区間を支持する副巻線支持部材が、試験装置内に構成されたリニアアクチュエータを使用して縦軸に沿ってステップごとに移動され得る。
【0042】
本発明のさらなる観点は、自動車に関する。この場合、自動車は、本発明の第2の観点の(任意の実施の形態又は任意の実施の形態の組み合わせを含む)アンテナを含み得る。代わりに又はさらに、本発明の第3の観点に対して開示されているように、自動車は、アンテナを製造しインダクタンスを調整するための方法によって製造されるアンテナを含み得る。
【0043】
本発明の代表的な実施の形態が、明細書に記載されていて、図によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明によるアンテナを概略的に示す。
図2図1のアンテナの変形例を示す。
図3図2のアンテナの端部区間を詳細に示す。
図4a】分離された状態でのスレッドを示す。
図4b】主巻線支持部材の上にある分離された状態でのスレッドを示す。
図5a】多重巻線を支持する主巻線支持部材に可動に係合されたスレッドを上から見て示す。
図5b】多重巻線を支持する主巻線支持部材に可動に係合されたスレッドを下から見て示す。
図6】ハウジングに埋め込まれたアンテナを示す。
図7】本発明によるアンテナを製造するための工程を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明によるアンテナ1を概略的に例示する。アンテナ1は、信号を送信し又は受信するための面を増大させ、最終的にアンテナ1の送受信範囲を広げる細長い形状を有する。アンテナ1は、自動車の用途のために設計されていて、したがってアンテナ1は、要求される全ての自動車規格に適合し且つ軽量である。アンテナ1は、キーレスエントリーシステムのために使用され得て、スマートキー又はキーレスゴーとして公知でもある。しかしながら、アンテナ1は、上記の用途以外の産業の用途のような様々な用途で使用され得る。
【0046】
アンテナ1は、主巻線支持部材10と副巻線支持部材20とを特徴とする細長い巻線支持部材を含む。2つの支持部材10,20は、熱可塑性材料から成る。しかしながら、ガラス繊維強化重合体、特にポリアミドのような他の材料も可能である。当該細長い巻線支持部材は、中心縦軸に対して軸対称に構成されている。主巻線支持部材10は、第1端部11と第2端部12とを含む。この場合、副巻線支持部材20は、右側の一番遠い端部に設置されていて、したがって第1端部11よりも第2端部12に近い。副巻線支持部材20が設置されている区間は、第2端部区間とも呼ばれ得る。主巻線支持部材10自体は、上部が開口した両側壁を有する細長いU字形の断面から成る。ロッド13が、これらの側壁を繋げ、結果として構造を強化する。ロッド13は、細長い巻線支持部材の縦軸xに対して直角方向に延在する。主巻線支持部材10のU字形の断面は、アンテナ1の重量を減少させる。複数の巻線を支持し、これらの巻線を固定するため、複数の小さい溝が、主巻線支持部材の外縁に形成され得る。
【0047】
U字形の断面及びロッド13は、複数のフェライトコア30が挿入されている内容積部を包囲する。これらのフェライトコア30は、2つの列になって内容積部に配置されていて、小さいエアギャップが2つの列を互に分離していることが分かる。これらのフェライトコア30から成る2つの列は、ほぼ第1端部10から第2端部12まで延在する。第2端部12にある空間は、空のままであるが、(図示されていない)複数のフェライトコア30が、副巻線支持部材20の下にも配置されていることが分かる。これらのフェライトコア30は、全体として磁性コア組立体(略して、磁性コア)を形成する。
【0048】
細長い巻線支持部材は、コイルに取り付けられている。この場合、このコイルは、2つの巻線区間又はコイル区間に区分されている。このコイルのための導体としては、エナメル被覆された銅が使用される。疎巻線区間40が、主巻線支持部材10に巻き付けられていて、主巻線支持部材10の縦方向の延在部分のほぼ全体に沿って延在する。密巻線区間41が、副巻線支持部材20に巻き付けられていて、副巻線支持部材20の縦方向の延在部分だけに延在する。見て取れるように、密巻線区間41は、単位面積当たりより多くの巻付回数を有し、したがって疎巻線区間40に比べてより高い巻線密度を有する。しかしながら、両巻線区間40,41の巻付回数は等しくてもよく、又は、疎巻線区間40は、全体で疎巻線区間40よりも多い巻付回数を有してもよい。疎巻線区間40及び密巻線区間41は、単層に巻き付けられているように図示されているが、複層に巻き付けられているコイルを形成することが可能である。この場合、それぞれの層は、異なる巻付方向に巻き付けられてもよい。
【0049】
副巻線支持部材20は、主巻線支持部材10に可動に係合されている。これは、副巻線支持部材20が2つの最端位置間の限定された範囲内で縦軸xに沿って移動され得ることを意味する。密巻線区間41が、副巻線支持部材20に巻き付けられているので、又は、密巻線区間41が、副巻線支持部材20によって支持されているので、巻線区間41も、(両矢印によって示されているように)同じに限定された当該範囲内で縦軸xに沿って移動され得る。
【0050】
2つの巻線区間40,41の相互の巻付回数の比は、アンテナ1の設計における重要なパラメータであり得る。アンテナ1の合計インダクタンスは、磁性コアの透磁率とコイルの巻付回数の合計とに比例する。電流が、コイルに通電すると、このコイルは、磁性コアに結合する磁場を生成する。これは、特に密巻線区間41にも当てはまる。しかしながら、巻線区間41によって生成される磁場は、磁性コアの1つの端部だけに結合する。密巻線区間41を支持している副巻線支持部材20を縦軸xに沿って移動させることによって、結合係数が、固有に制御又は設定され得る。第2端部12に対する密巻線区間41の位置が、磁性コアにおける磁場分布に直接に影響する。疎らな磁場分布は、インダクタンスを低下させる。集中した磁場分布は、インダクタンスを上昇させる。密巻線区間41を主巻線支持部材10の中心に接近させると、磁場分布がより集中し、インダクタンスが増大する。疎巻線区間41を第2端部に接近させると、疎らな磁場分布が増大する。密巻線区間41の位置の任意の変化が、アンテナ1のインダクタンスの合計に直接に影響する。要約すると、このアンテナのインダクタンスの合計が、密巻線区間41を支持している副巻線支持部材20を縦軸xに沿って移動させることによって調整され得る。
【0051】
インダクタンスの変化と位置の変化との間の関係も、特に2つの巻線区間40,41の相互の巻付回数の比によって特定される。密巻線区間41が、疎巻線区間40に比べてより多くの巻付け回数を有するならば、インダクタンスの変化は、位置の変化に比べてより大きい。さらに、磁性コアの位置及び副巻線支持部材20よりも少ない磁性コアの総量も、インダクタンスの変化に影響し得る。上記の全てのパラメータが最適に選択されるならば、インダクタンスの変化と位置の変化との間の非常に望ましい関係は、ほぼ線形である関係である。
【0052】
主巻線支持部材10は、第2端部12にある突出しているフレキシブルスペーサ14を有するリムも含む。アンテナ1の最終組立品が、ハウジングに挿入されると、突出しているフレキシブルスペーサ14の端部が、このハウジングの内壁を押圧し、これによってアンテナ1がこのハウジング内の中心に設置される。しかしながら、突出しているフレキシブルスペーサ14の柔軟性は、主巻線支持部材10のために使用される材料によって決定される。要求通りに正確に設定するため、様々な材料が、フレキシブルスペーサ14のために使用されてもよい。
【0053】
コネクタ50が、主巻線支持部材10に機械式に取り付けられる。コイルの2つの端子が、コネクタ50の対応する端子に接続される、例えばはんだ付けされるか、ねじ止めされるか又は溶接される。コネクタ50は、自動車内に設置され得る制御装置の対応するプラグコネクタに差し込まれ得る。
【0054】
図1に示されているような座標系を、縦軸x及び横軸yをさらなる説明のための基準として示す。
【0055】
図2は、図1のアンテナ1の変形例を示す。図示されているように小さいが重要である違いを有するアンテナ1は、図1のアンテナ1と同等に構成されている。アンテナ1も、主巻線支持部材10を特徴とする細長い巻線支持部材と、副巻線支持部材20とを含む。副巻線支持部材20は、主巻線支持部材10に可動に係合されていて、第2端部12に設置されている。主巻線支持部材10も、コネクタ50が機械式に取り付けられる第2端部12に対向する第1端部11を含む。複数のフェライトコア30から成る2つの列も、細長い巻線支持部材の内容積に挿入される。
【0056】
細長い巻線支持部材は、コイルに取り付けられている。この場合、このコイルは、3つの巻線区間又はコイル区間に区分されている。疎巻線区間40が、主巻線支持部材10に巻き付けられていて、第1密巻線区間41と第2密巻線区間42とによって挟まれている。見て取れるように、密巻線区間41,42は、単位面積当たりより多くの巻付回数を有し、したがって疎巻線区間40に比べてより高い巻線密度を有する。しかしながら、全ての3つの巻線区間40,41,42の巻付回数は等しくてもよく、又は、疎巻線区間40は、密巻線区間41,42内の巻付回数の合計数よりも多い巻付回数を有してもよい。密巻線区間41,42は、等しい巻付回数を有してもよい。主巻線支持部材10に可動に係合された副巻線支持部材20は、第1端部11に存在しないが、第2密巻線区間42の位置が固定されている。主巻線支持部材10の端部区間の機械的安定性が向上されるように、第2密巻線区間42の巻線が、主巻線支持部材10により高い張力で巻き付けられ得る。他方で、第2密巻線区間42の巻線は、フェライトコア30が主巻線支持部材10の内容積部から抜け落ちることを防止する。さらに、主巻線支持部材10の2つの側面部分同士が、当該巻線の張力によって互いに押圧される。これは、主巻線支持部材10内のフェライトコア30の機械的安定性をさらに向上させる。主巻線支持部材10は、例えば複数のフェライトコア30同士を押圧する専用の固定構造によって、これらのフェライトコア30を別の方法で固定するように構成されてもよい。
【0057】
図示されていない例では、2つの副巻線支持部材が存在する。それぞれの副巻線支持部材が、主巻線支持部材10に可動に係合されている。この場合、第1副巻線支持部材が、図2の第1密巻線区間の位置に設置されていて、第1密巻線区間を支持する。第2副巻線支持部材が、図2の第2密巻線区間の位置に設置されていて、したがって第2密巻線区間の巻線を支持する。第1巻線区間及び第2巻線区間は、異なる巻付回数によって構成され得る。第1密巻線区間は、第2密巻線区間よりも多い巻付回数によって巻き付けられ得る。したがって、第1密巻線区間の巻線を支持する第1副巻線支持部材が縦軸に沿って移動するときのアンテナの合計インダクタンスの変化は、第2密巻線区間の巻線を支持する第2副巻線支持部材が移動するときよりも大きい。したがって、第1副巻線支持部材の変位は、アンテナのインダクタンスを粗調整するために使用され得る。このため、第2副巻線支持部材の変位は、アンテナのインダクタンスを微調整するために使用され得る。疎巻線区間は、図2と同様に構成されてもよい。
【0058】
図3は、図2のアンテナ1の第1端部11にある端部区間の詳細図である。以下で説明するように、図示されたような当該端部区間は、フェライトコア挿入区間として機能する。
【0059】
主巻線支持部材10、第2密巻線区間42及び疎巻線区間40が図示されている。アンテナ1は、主巻線支持部材10に機械式に取り付けられたコネクタ50も含む。主巻線支持部材10のU字形の断面が、縦軸に対して直角方向に延在するロッド13によって補強されている。アンテナ1は、複数のフェライトコア30から成る2つの列も含む。これらのフェライトコア30が、細長いロッドとして構成されているならば、これらのフェライトコア30は、コネクタ50がないときに第1端部11から主巻線支持部材10内に挿入され得る。
【0060】
しかしながら、これらのフェライトコア30が、複数の短いロッド又はブロックとして設計されているならば、当該2つの列が、これらの短いロッド又はブロックをコネクタ50にある領域内に挿入し、これらの短いロッド又はブロックを(複数の矢印によって示された)第2端部に向かって移動させることによって形成され得る。代わりに、これらのフェライトコア30が、主巻線支持部材10内に挿入された後に、コイルが巻き付けられるならば、これらのフェライトコア30は、移動当該巻線支持部内に挿入され得て、図示されているように第2密巻線区間42によって覆われる領域を通じて第2端部に向かって移動され得る。示されたような全ての可能性が、フェライトコア30を内容積部に効率的に挿入することを可能にし、アンテナ1を大量生産するために適し得る。フェライトコア30を挿入するためのさらなる可能性を図4bに関して説明する。
【0061】
図4a,4bは、図1,2の主巻線支持部材10の上にあるスレッド21を、分離された状態で示す。スレッド21が、図1,2の副巻線支持部材20として機能する。
【0062】
図4aに示されたようなスレッド21は、密巻線区間の巻線を受け止めて支持するための主表面を有して形成されている。固定のために当該巻線を受け止めるように設計された複数の小さい溝23が、縁部に見て取れる。また、スレッド21は、主巻線支持部材に形成された対応する構造体に係合し得る2つのガイド爪22を有して形成されている。2つのフレキシブル突起部24が、スレッド21から離れるように延在する。フレキシブル突起部24は、スプリング部材として形成されている。その結果、フレキシブル突起部24は、僅かに湾曲され得るが、初期位置に戻り得る。フレキシブル突起部24のそれぞれの端部が、突出歯部25を有して形成されている。
【0063】
主巻線支持部材10の第2端部12が、図4bに示されている。また、主巻線支持部材10は、アンテナをハウジングの中心に位置決めするためのフレキシブルスペーサ14を含む。主巻線支持部材10は、ガイドストリップ15を有して形成されている。ガイドストリップ15は、主巻線支持部材10の縁部で突出し、スレッド21のガイド爪22が、当該縁部に係合し得る。当該巻線支持部材の生産中に、スレッド21が、ガイドストリップ15に嵌め込まれる。その結果、ガイド爪22が、ガイドストリップ15を把持する。次いで、スレッド21が、主巻線支持部材10の縦軸に沿って移動され得るように、スレッド21は、ガイドストリップ15とガイド爪22との組み合わせによって案内される。縦軸に沿った移動とは違う任意の移動が防止される。
【0064】
さらに、主巻線支持部材10は、2つの鋸歯状ストリップ18を有して形成されている。スレッド21が、ガイドストリップ15に嵌め込まれると、それぞれの突出歯部25が、対応するガイドストリップ15に係合する。スレッド21が移動されると、対応する突出歯部25が、鋸歯状ストリップ18の直ぐ隣のスロットに再び係合するまで、フレキシブル突起部24が反り曲げられている。これは、フレキシブル突起部24をフレキシブル突起部24の初期位置に戻す。フレキシブル突起部24と突出歯部25と鋸歯状ストリップ17との組み合わせが、スレッド21を主巻線支持部材10の縦軸に沿ってステップ移動させることを可能にする。さらに、フレキシブル突起部24の柔軟性に起因して、スレッド21が、1つの位置に固定され得る。スレッド21と主巻線支持部材10とが、一対のフレキシブル突起部24と鋸歯状ストリップ18とから構成されていても、スレッド21が、対応する1つの鋸歯状ストリップ18に係合する1つのフレキシブル突起部24だけを有して形成されているときでも、当該ステップ移動及びスレッド21の固定が機能する。
【0065】
図示されていないさらなる例では、図4a,4bのスレッドは、フレキシブル突起部24を有して形成されない。代わりに、ガイド爪22は、少なくとも1つの内向き歯部を含む。他方で、主巻線支持部材は、図4bに示されているような位置にある鋸歯状ストリップを有しない。主巻線支持部材のガイドストリップが、2つの機能を有するように、この主巻線支持部材のガイドストリップは、その外向きの側面に複数の歯部を備える。ガイド爪をガイドストリップに嵌め込むことによって、スレッドが、縦軸に沿って移動される。このスレッドの内向きの歯部が、この主巻線支持部材の歯部の列に係合する。その結果、ステップ移動が可能になる。これにより、図4bに示されているのと同じ機能が提供される。
【0066】
複数のフェライトコア30から成る2つの列も、図4bに示されている。主巻線支持部材10が、(スレッド21によって隠されている)1つの開口部を有して形成されている。これらのフェライトコア30は、この開口部を通じて主巻線支持部材10の内容積に挿入され得る。特に、これらのフェライトコア30が、複数のフェライトブロックとして形成されているときに、これらのフェライトブロックは、この開口部内に別々に設置され、(図示されていない)第1端部に向けて押される。これにより、磁性コアが組み立てられる。主巻線支持部材10は、当該開口部を有して形成され得るか、又は図3に対して説明されたような可能性を追加して形成され得る。磁性コアが組み立てられた後に、スレッド21が、主巻線支持部材10に係合され、これらのフェライトコア30が抜け落ちることを防止する障壁を提供する。
【0067】
図5a,5bは、密巻線区間41の巻線を支持する主巻線支持部材10に係合された図4a,4bのスレッド21の上面図及び下面図である。
【0068】
図5aは、図1,2の第2端部12の部分の詳細な上面図である。スレッド21の形態の副巻線支持部材が、主巻線支持部材10に可動に係合されている。この副巻線支持部材は、密巻線区間41の巻線によって巻き付けられている。複数のフェライトコア30から成る2つの列が、主巻線支持部材10内に挿入されていて、左側には疎巻線区間40の一部も示されている。主巻線支持部材10のU字形の断面の側面が、ロッド13によって強化されている。複数のフレキシブルスペーサ14が、主巻線支持部材10から離れるように延在することが見て取れる。主巻線支持部材10は、複数のガイドストリップ15を有して形成されている(1つのガイドストリップ15だけが図示されている)。この場合、ガイドストリップ15は、スレッド21の対応するガイド爪22によって把持されて係合されている。スレッド21は、嵌め込み機能によって主巻線支持部材10上に保持されている。しかしながら、密巻線区間41の巻線も、主巻線支持部材10上のスレッド21の位置を保持する。さらに、それぞれのフレキシブル突起部24の歯部25が、鋸歯状ストリップ18の対応するスロットに係合する。副巻線支持部材が縦軸に沿って移動され得るステップ幅が、特に当該スロットの幅及び歯部25の寸法によって決定されることが見て取れる。アンテナのインダクタンスが、それぞれのステップによって希望通りに変更されるように、当該スロットの幅及び歯部25の寸法は互いに調整されなければならない。縦軸に沿ったスレッド21の移動を制限するため、巻線支持部材10は、図示されているような隆起形状の2つのエンドストップ16を有して配置されている。スレッド21が、第2端部12に向かって移動される場合に、フレキシブル突起部24が、縦軸に沿ったさらなる移動を回避するようにこのエンドストップに当たる。同様に形成されたエンドストップが、鋸歯状ストリップ18の他の端部に設けられてもよい。代わりに又はさらに、図示されていない第1端部に向かうスレッド21の移動が、図示されているようなロッド13によって阻止される。
【0069】
図5bは、図5aの第2端部12の一部の詳細な下面図である。密巻線区間41の巻線が、スレッド21に巻き付けられている。また、疎巻線区間40の巻線が、主巻線支持部材10に巻き付けられている。スレッド21のガイド爪22が、主巻線支持部材10のガイドストリップを把持し、したがって可動に係合されている。1つのフレキシブルスペーサ14が、主巻線支持部材10の底部にも配置されている。
【0070】
図6は、ハウジング60に埋め込まれた図1,2に示されたのと同様に形成されたアンテナを示す。ハウジング60は、プラスチック材料から成り、例えば主巻線支持部材及び副巻線支持部材のために使用される材料と同じ材料から成る。当該埋め込みのため、ハウジング60は、既定量の硬化性の埋め込み用樹脂によって充填されている。当該埋め込み用樹脂は、シリコン又はウレタンのような半塑性材料、又はアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリブチレンテレフタレート又はポリフェニレンスルフィドのような樹脂材料から組成されてもよい。代わりに、ポリウレタン発泡材のような気泡ゴムが使用されてもよい。
【0071】
第2ステップでは、図1,2のようなアンテナ又はアンテナアセンブリが、液体状態にある埋め込み用樹脂によって充填されたハウジング60に挿入される。湿気又は埃が、ハウジング60に入り得ないように、このハウジングの開口部が、アンテナのコネクタに結合される。次のステップでは、液体の埋め込み用樹脂に潜在的に含まれる気泡が消失されるように、アンテナが、真空チャンバに入れられ得る。次いで、当該埋め込まれたアンテナを熱サイクル処理し、これにより当該液体の埋め込み用樹脂を固体化するため、当該埋め込み用樹脂は、温度制御チャンバに入れられる。熱サイクル処理の代わりに、埋め込み用樹脂は、室温で固体化されてもよい。当該固体化された埋め込み用樹脂が、フェライトコア及び副巻線支持部材を含むアンテナの全ての部品を最終的に固定するので、インダクタンスが、当該アンテナを埋め込むことによって最終的に設定される。アンテナは、専用のハウジングなしに自働車のサイドパネル内に直接に設置され得るので、アンテナを埋め込むことは任意でもよい。
【0072】
図7は、図1,2のアンテナを製造するための工程、特にアンテナのインダクタンスを設定するための工程を示す。以下では、アンテナが、最終的に組み立てられている仮定する。すなわち、フェライトコアが、主巻線支持部材内に挿入され、副巻線支持部材が、主巻線支持部材に係合され、この主巻線支持部材の第1端部に最も近い位置であり得る初期位置に移動されたと仮定する。さらに、当該コイルが、当該巻線支持部材に巻き付けられてあり、このコイルの端子が、コネクタに結合されていると仮定する。
【0073】
第1ステップP)では、アンテナ又はアンテナアセンブリが、図示された試験装置に設置される。コネクタが、試験装置の対応する端子に結合される。試験装置のアクチュエータ(このアクチュエータは、リニアアクチュエータでもよい)が、副巻線支持部材に係合される。第2ステップi)では、アンテナのコイルが励磁され、このアンテナのインダクタンスが測定される。次のステップii)では、当該測定されたインダクタンスが、既定のインダクタンスの閾値と比較される。測定されたインダクタンスが、既定のインダクタンスの閾値に一致するか又は僅かに高い場合、この工程が終了され、アンテナが、図6に示されたように埋め込まれ得るか又は他の方法によって使用され得る。試験装置が、この工程の終了を表示してもよい。
【0074】
測定されたインダクタンスが、当該既定のインダクタンスの閾値未満である場合、アクチュエータが、ステップiii)で起動され、副巻線支持部材が、初期位置から離れるように、好ましくは主巻線支持部材の第1端部に対向する方向に1ステップ(又は1歯部)だけ移動される。続くステップi)では、アンテナのコイルが励磁され、アンテナのインダクタンスが、再度測定される。次いで、ステップii)では、当該測定されたインダクタンスが、既定のインダクタンスの閾値と比較され、測定されたインダクタンスが、既定のインダクタンスの閾値に一致するか又は僅かに高い場合、この工程が終了される。測定されたインダクタンスが、既定のインダクタンスの閾値よりも遥かに高い場合、副巻線支持部材が、反対方向(後方)に移動されてもよい。
【0075】
ステップi)、ii)及びiii)は、測定されたインダクタンスが既定のインダクタンスの閾値に一致するか又は僅かに高くなるまで繰り返される。インターロック機構(鋸歯状ストリップ、フレキシブル突起部の歯部)に起因して、副巻線支持部材の位置が、埋め込みのような、次の製造ステップのために保持される。しかしながら、試験装置が、工程の終了を表示したときに、当該位置が、瞬間接着剤又は接着テープをさらに使用することによって保持されてもよい。
【0076】
別の例では、第1ステップP)に、アンテナ又はアンテナアセンブリが、試験装置に設置される。コネクタが、試験装置の対応する端子に結合される。第2ステップi)では、アンテナのコイルが励磁され、このアンテナのインダクタンスが測定される。次のステップii)では、当該測定されたインダクタンスが、希望したインダクタンスの値と比較される。副巻線支持部材のステップごとに考慮されなければならないステップが、当該測定されたインダクタンスと当該希望したインダクタンスの値とに基づいて計算される。上記のように、1つのステップが、アンテナのインダクタンスの所定の変化に関連付けされ得る。
【0077】
アクチュエータが、ステップiii)で起動され、副巻線支持部材が、希望したインダクタンスの値の位置に直接に移動される。アクチュエータを使用する代わりに、これは、製造業者が副巻線支持部材をその最終位置に押すだけによって実行されてもよい。要約すると、その結果、インダクタンスが、副巻線支持部材を移動させることによって予め設定可能なステップ量に設定され得るので、インダクタンスを連続して測定する必要がない。最後のステップでは、例えば、副巻線支持部材の位置が、接着剤を使用して固定される前に、インダクタンスが適切に設定されたことを保証するため、当該インダクタンスが最後に測定される。
【符号の説明】
【0078】
1 アンテナ
10 主支持部材(主巻線支持部材)
11 第1端部
12 第2端部
13 ロッド
14 突出部、フレキシブルスペーサ
15 ガイドストリップ
16,17 エンドストップ、突起部
18 鋸歯状ストリップ
20 副支持部材(副巻線支持部材)
21 スレッド
22 ガイド爪
23 溝
24 フレキシブル突起部
25 ノーズ部、突出歯部
30 フェライトコア
40 疎巻線区間、固定式
41 密巻線区間、変位式
42 密巻線区間、固定式
50 コネクタ
60 ハウジング
P) 準備ステップ
x 縦軸
y 横軸
i) 測定ステップ
ii) 比較ステップ
iii) 調整ステップ
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
【外国語明細書】