(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149413
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】認証対象特定方法、規制解除方法、および入退室管理セキュリティシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 12/06 20210101AFI20241010BHJP
H04W 92/12 20090101ALI20241010BHJP
H04W 12/63 20210101ALI20241010BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20241010BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241010BHJP
G07C 9/29 20200101ALI20241010BHJP
【FI】
H04W12/06
H04W92/12
H04W12/63
H04W24/08
G08B25/04 F
G07C9/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024055322
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023062688
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(71)【出願人】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小暮 慶伍
(72)【発明者】
【氏名】川島 到
【テーマコード(参考)】
3E138
5C087
5K067
【Fターム(参考)】
3E138AA01
3E138JA01
3E138JB14
3E138JC05
5C087AA21
5C087BB20
5C087DD06
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF16
5C087FF25
5C087GG10
5C087GG17
5K067AA33
5K067EE02
5K067EE25
5K067HH36
(57)【要約】
【課題】入退室管理セキュリティシステムにおいて、認証対象者を正確に特定することが可能な認証対象特定方法を提供する。
【解決手段】認証装置は、マスタ携帯端末と認証装置との距離であるマスタ距離と、マスタ携帯端末の電波強度であるマスタ電波強度と、が対応付けられた基準情報を予め記憶しており、基準情報が有するマスタ距離に対応した位置でユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する取得工程と、取得工程で取得された電波強度と、基準情報と、を用いて、ハンズフリー認証の際にユーザ携帯端末が送信する電波強度を補正するための補正値を算出し、ユーザ携帯端末または認証装置が有する記憶部に補正値を保存する補正値決定工程と、認証可能エリア内の任意の位置でユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を補正値により補正した補正後電波強度を用いて、認証対象のユーザ携帯端末を特定する特定工程と、を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末及び前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信が可能であって前記ユーザ携帯端末の認証を行う認証装置を備えた入退室管理セキュリティシステムにおいて、認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する認証対象特定方法であって、
前記認証装置は、
電波を送信するマスタ携帯端末と前記認証装置との距離であるマスタ距離と、前記マスタ携帯端末から送信される電波の電波強度であるマスタ電波強度と、が対応付けられた基準情報を予め記憶しており、
前記基準情報が有する前記マスタ距離に対応した位置で前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記電波強度と、前記基準情報と、を用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態、かつ、前記認証装置からの距離が前記マスタ距離よりも長い領域を含む認証可能エリア内に存在する状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する補正値決定工程と、
前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末から受信した電波の電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する特定工程と、
を実行する、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項2】
前記入退室管理セキュリティシステムは、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされた状態で認証を行う携帯かざし認証と、前記ハンズフリー認証とが可能であり、
前記特定工程において、前記ユーザにより前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされた場合には、前記携帯かざし認証を実行するため、前記認証装置にかざされた前記ユーザ携帯端末を前記認証対象として特定する、請求項1に記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項3】
前記マスタ距離は、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされたと判定可能な距離であり、
前記取得工程は、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされる行為により実行される、請求項2に記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項4】
前記補正値決定工程では、前記マスタ電波強度と、前記取得工程で取得された前記電波強度との差分を前記補正値として算出し、
前記補正後電波強度は、前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度に前記補正値を加算または減算した値であり、
前記特定工程では、電波を受信した1以上の前記ユーザ携帯端末のうち前記補正後電波強度が最も大きい前記ユーザ携帯端末を前記認証対象であると特定する、請求項1に記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項5】
前記基準情報は、前記マスタ距離と前記マスタ電波強度とが対応付けされたデータを異なる前記マスタ距離ごとに複数有しており、
前記認証装置は、
前記認証装置から前記ユーザ携帯端末までの距離を測定する測距部を有し、
前記取得工程では、前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度に加えて前記認証装置から前記ユーザ携帯端末までの距離を取得し、
前記補正値決定工程では、前記測距部により測定された実測の距離に対して前記基準情報が有するデータにおいて対応関係にある前記マスタ電波強度と、前記取得工程で取得された実測の電波強度とを用いて、前記補正値を算出する、請求項1に記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項6】
入退室管理セキュリティシステムにおける規制解除方法であって、
前記認証装置は、
入室管理の対象エリアであるセキュリティエリアへの移動を物理的に規制する規制手段の規制を解除する規制解除制御部を有し、
請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法を用いて特定された前記ユーザ携帯端末の認証判定を行う認証判定工程を実行し、
前記認証判定工程において認証が成立した場合には、前記規制解除制御部により前記規制を解除し、前記認証判定工程において認証が成立しなかった場合には、前記規制を解除しない、入退室管理セキュリティシステムにおける規制解除方法。
【請求項7】
ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末及び前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信が可能であって前記ユーザ携帯端末の認証を行う認証装置を備えた入退室管理セキュリティシステムにおいて、認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する認証対象特定方法であって、
前記認証装置は、
基準の電波強度であるマスタ電波強度を予め記憶しており、
前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされた状態における当該ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する第一取得工程と、
前記マスタ電波強度と前記第一取得工程で取得された前記電波強度とを用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する補正値決定工程と、
前記認証装置にかざされない状態、かつ、認証可能エリア内に存在する前記ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する第二取得工程と、
前記第二取得工程で取得された前記電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する特定工程と、
を実行する、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項8】
ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末の認証を行って前記ユーザの入退室を管理する入退室管理セキュリティシステムであって、
前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信を行う通信部と、
前記認証を実行する認証装置と、
を備え、
前記認証装置は、
前記認証の対象となる前記ユーザ携帯端末である対象端末を特定する特定部と、
特定された前記対象端末を対象として、前記認証を実行する認証判定部と、
電波を送信するマスタ携帯端末と前記認証装置との距離であるマスタ距離と、前記マスタ携帯端末から送信される電波の電波強度であるマスタ電波強度と、が対応付けられた基準情報を予め記憶する記憶部と、
前記基準情報が有する前記マスタ距離に対応した位置で前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度を、前記通信部を介して取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記電波強度と、前記基準情報と、を用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態、かつ、前記認証装置からの距離が前記マスタ距離よりも長い領域を含む認証可能エリア内に存在する状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末が送信する電波強度を補正するための補正値を算出し、前記記憶部または前記ユーザ携帯端末に前記補正値を保存する補正値決定部と、
を有し、
前記特定部は、前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記対象端末を特定する、
入退室管理セキュリティシステム。
【請求項9】
ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末の認証を行って前記ユーザの入退室を管理する入退室管理セキュリティシステムであって、
前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信を行う通信部と、
前記認証を実行する認証装置と、
を備え、
前記認証装置は、
基準の電波強度であるマスタ電波強度を予め記憶する記憶部と、
前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされた状態における当該ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する第一取得部と、
前記マスタ電波強度と前記第一取得部で取得された前記電波強度とを用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する補正値決定部と、
前記認証装置にかざされない状態、かつ、認証可能エリア内に存在する前記ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する第二取得部と、
前記第二取得部で取得された前記電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する特定部と、
前記特定部により特定された前記ユーザ携帯端末を対象として、前記認証を実行する認証判定部と、
を備える、入退室管理セキュリティシステム。
【請求項10】
ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末及び前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信が可能であって前記ユーザ携帯端末の認証を行う認証装置を備えた入退室管理セキュリティシステムにおいて、認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する認証対象特定方法であって、
(a)前記認証装置において、ビーコンを無線送信する工程と、
(b)前記ユーザ携帯端末において、受信する前記ビーコンの受信信号強度を特定する工程と、
(c)前記ユーザ携帯端末において、前記工程(b)で特定された前記受信信号強度が予め定められた強度閾値以上であることを含む予め定められた開始条件が成立した場合に、補正値算出用信号を無線送信する工程と、
(d)前記認証装置において、前記ユーザ携帯端末が無線送信する前記補正値算出用信号の電波強度を取得する工程と、
(e)前記認証装置において、前記工程(d)で取得された前記電波強度と基準となるマスタ電波強度とを用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態、且つ、前記ユーザ携帯端末が認証可能エリア内に存在する状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する工程と、
(f)前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末から受信した電波の電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する工程と、
を備える、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項11】
請求項10に記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、
前記工程(c)は、
(c1)前記ユーザ携帯端末において、前記開始条件が満たされた場合に、前記補正値算出用信号を複数回無線送信する工程、を含み、
前記工程(d)は、
(d1)前記認証装置において、前記ユーザ携帯端末が複数回無線送信する前記補正値算出用信号の電波強度をそれぞれ取得する工程、を含み、
前記工程(e)は、
(e1)前記認証装置において、前記工程(d1)で複数回取得された前記電波強度の統計値を算出し、前記統計値を用いて前記補正値を算出する工程、を含む、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、
前記統計値は、移動平均値である、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項13】
請求項10に記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、
前記入退室管理セキュリティシステムは、複数の前記認証装置を備えており、
(f)前記ユーザ携帯端末において、前記複数の認証装置のうち、受信する前記ビーコンの受信信号強度が前記強度閾値以上である前記認証装置を示す情報を一覧表示し、且つ、前記補正値算出用信号の無線送信を指示するための操作画面を表示する工程、を更に備え、
前記工程(c)における前記開始条件は、前記操作画面において、一覧表示された前記認証装置のうちから前記補正値算出用信号の送信対象となる認証装置が選択されたことと、前記補正値算出用信号の無線送信が指示されたことと、を含み、
前記工程(c)は、
(c2)前記操作画面において選択された前記認証装置に対して、前記補正値算出用信号を無線送信する工程、を含む、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法。
【請求項14】
入退室管理セキュリティシステムにおける規制解除方法であって、
前記認証装置は、
入室管理の対象エリアであるセキュリティエリアへの移動を物理的に規制する規制手段の規制を解除する規制解除制御部を有し、
請求項10から請求項13のうちいずれか一項に記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法を用いて特定された前記ユーザ携帯端末の認証判定を行う認証判定工程を実行し、
前記認証判定工程において認証が成立した場合には、前記規制解除制御部により前記規制を解除し、前記認証判定工程において認証が成立しなかった場合には、前記規制を解除しない、入退室管理セキュリティシステムにおける規制解除方法。
【請求項15】
ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末の認証を行って前記ユーザの入退室を管理する入退室管理セキュリティシステムであって、
前記ユーザ携帯端末と、
前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信を行う通信部と、
前記認証を実行する認証装置と、
を備え、
前記認証装置は、
前記認証の対象となる前記ユーザ携帯端末である対象端末を特定する特定部と、
特定された前記対象端末を対象として、前記認証を実行する認証判定部と、
前記通信部を介してビーコンを無線送信するビーコン送出部と、
前記ユーザ携帯端末が無線送信する補正値算出用信号の電波強度を、前記通信部を介して取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記電波強度と基準となるマスタ電波強度とを用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態、且つ、前記ユーザ携帯端末が認証可能エリア内に存在する状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する補正値決定部と、
を有し、
前記ユーザ携帯端末は、
受信する前記ビーコンの受信信号強度を特定する信号強度特定部と、
特定された前記受信信号強度が予め定められた強度閾値以上であることを含む予め定められた開始条件が成立した場合に、前記補正値算出用信号を無線送信する補正値算出用信号送信部と、
を有し、
前記特定部は、前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末から受信した電波の電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する、
入退室管理セキュリティシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法、入退室管理セキュリティシステムにおける規制解除方法、および入退室管理セキュリティシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されるように、セキュリティエリアへの入場を規制する扉を通行しようとするユーザの認証処理を実行する認証システムが知られている。この認証システムでは、ユーザが、扉付近に設置された認証装置に、認証用の携帯端末をかざすことなく、ハンズフリーでユーザの認証が行われる。
【0003】
このようなハンズフリーの認証システムでは、携帯端末を所持するユーザが扉に近づくと、携帯端末は自動的に携帯端末の識別情報を、扉付近に設置された認証装置へ送信する。そして、認証装置は、受信した識別情報が認証可能なIDであるかを判定し、OK判定であれば扉を解錠するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、上記のような認証システムにおいて、認証用の携帯端末やIDカードなどは、セキュリティを管理する会社等から支給された統一のものであることが多かった。しかし、近年、携帯端末として個人がスマートフォンを所有することが広く一般的となり、上記のような認証システムにおいても個人所有の携帯端末を認証用の端末として使用したいニーズが高まっている。個人所有のスマートフォンでは、様々な機種があり、機種ごとに通信性能の差がある。
【0006】
なお、ハンズフリー認証を行う際に、一般に、認証装置から携帯端末までの距離が短いほど、携帯端末が送信する電波の電波強度は大きいことからして、電波強度がより大きいものが認証装置により近い位置にあると推定し、当該携帯端末が認証対象とされる。しかし、単純に、携帯端末が送信する電波の電波強度をそのまま用いて遠近を判断すると、認証可能エリア内に携帯端末を所持する複数のユーザが存在する場合には、携帯端末の機体差(出力電波強度の差)によっては遠近を正しく特定できない虞があった。このため、認証装置に最も近い携帯端末であって、本来認証対象とすべき携帯端末ではなく、他の携帯端末を認証対象として誤って特定する虞があった。
【0007】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入退室管理セキュリティシステムにおいて、認証対象者を正確に特定することが可能な認証対象特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本開示の一形態によれば、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法が提供される。この方法は、ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末及び前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信が可能であって前記ユーザ携帯端末の認証を行う認証装置を備えた入退室管理セキュリティシステムにおいて、認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する認証対象特定方法であって、前記認証装置は、電波を送信するマスタ携帯端末と前記認証装置との距離であるマスタ距離と、前記マスタ携帯端末から送信される電波の電波強度であるマスタ電波強度と、が対応付けられた基準情報を予め記憶しており、前記基準情報が有する前記マスタ距離に対応した位置で前記ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記電波強度と、前記基準情報と、を用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態、かつ、前記認証装置からの距離が前記マスタ距離よりも長い領域を含む認証可能エリア内に存在する状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する補正値決定工程と、前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する特定工程と、を実行する。
この形態の認証対象特定方法によれば、認証対象のユーザ携帯端末を特定する特定工程において、各ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度をそのまま利用するのではなく、基準情報に基づいて算出された補正値により補正された補正後電波強度が用いられる。すなわち、ユーザ携帯端末間の機体差の影響が解消された正確な電波強度である補正後電波強度が用いられるため、認証装置に最も近いユーザ携帯端末を正確に特定できる。そして、認証対象のユーザ携帯端末を正確に特定した上で認証を行うことができる。
したがって、複数のユーザ携帯端末に機体差があっても、電波強度を補正することで、認証可能エリア内に存在する複数のユーザの中から、認証対象者を正確に特定することができる。さらに、例えば、認証を行うために認証装置に最も近くにいるユーザのユーザ携帯端末の識別IDではなく、認証可能エリア内の別のユーザの携帯端末の識別IDによって入退室の認証可否判断が誤って行われることを抑制できる。
(2)上記形態の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、前記入退室管理セキュリティシステムは、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされた状態で認証を行う携帯かざし認証と、前記ハンズフリー認証とが可能であり、前記特定工程において、前記ユーザにより前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされた場合には、前記携帯かざし認証を実行するため、前記認証装置にかざされた前記ユーザ携帯端末を前記認証対象として特定してもよい。
この形態の認証対象特定方法によれば、携帯かざし認証とハンズフリー認証とが可能な退室管理セキュリティシステムにおいて、ユーザによりユーザ携帯端末が認証装置にかざされた場合には、かざされたユーザ携帯端末が認証対象として特定される。よって、特定処理が容易となる。
(3)上記形態の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、前記マスタ距離は、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされたと判定可能な距離であり、前記取得工程は、前記携帯端末が前記認証装置にかざされる行為により実行されてもよい。
この形態の認証対象特定方法によれば、かざされる行為により、認証装置と携帯端末との距離がある程度想定され得る。よって、基準情報を固定値として少なくとも一つ持っていれば、補正値を決定できる。このため、予め記憶しておく基準情報のデータ量が少なくてすむ。また、補正値を算出するために、認証行為とは別の機会に、ユーザ携帯端末を認証装置にかざす必要がないため、ユーザの煩わしさを軽減できる。
(4)上記形態の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、前記補正値決定工程では、前記マスタ電波強度と、前記取得工程で取得された前記電波強度との差分を前記補正値として算出し、前記補正後電波強度は、前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度に前記補正値を加算または減算した値であり、前記特定工程では、電波を受信した1以上の前記ユーザ携帯端末のうち前記補正後電波強度が最も大きい前記ユーザ携帯端末を前記認証対象であると特定してもよい。
この形態の認証対象特定方法によれば、補正値決定工程において、容易な演算処理により補正値および補正後電波強度を算出できるため、認証装置の処理負荷を低減できる。
(5)上記形態の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、前記基準情報は、前記マスタ距離と前記マスタ電波強度とが対応付けされたデータを異なる前記マスタ距離ごとに複数有しており、前記認証装置は、前記認証装置から前記ユーザ携帯端末までの距離を測定する測距部を有し、前記取得工程では、前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度に加えて前記認証装置から前記ユーザ携帯端末までの距離を取得し、前記補正値決定工程では、前記測距部により測定された実測の距離に対して前記基準情報が有するデータにおいて対応関係にある前記マスタ電波強度と、前記取得工程で取得された実測の電波強度とを用いて、前記補正値を算出してもよい。
この形態の認証対象特定方法によれば、基準情報は、マスタ距離とマスタ電波強度とが対応付けされたデータを異なるマスタ距離ごとに複数有している。そして、測距部による測距を行い、実測の距離に対応するマスタ電波強度と、実測の電波強度とを用いて補正値が算出される。よって、基準情報として、単一の対応データを用いる場合と比較して、補正値算出の精度を向上させることができる。
(6)本開示の第二の形態によれば、入退室管理セキュリティシステムにおける規制解除方法が提供される。この方法は、入退室管理セキュリティシステムにおける規制解除方法であって、前記認証装置は、入室管理の対象エリアであるセキュリティエリアへの移動を物理的に規制する規制手段の規制を解除する規制解除制御部を有し、上記形態のうちいずれかに記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法を用いて特定された前記ユーザ携帯端末の認証判定を行う認証判定工程を実行し、前記認証判定工程において認証が成立した場合には、前記規制解除制御部により前記規制を解除し、前記認証判定工程において認証が成立しなかった場合には、前記規制を解除しない。
この形態の規制解除方法によれば、セキュリティエリアへの移動を希望するユーザが所持する認証対象のユーザ携帯端末を正確に特定した上で、認証判定を行い、規制手段を解除するか否かを決定できる。
(7)本開示の一形態によれば、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法が提供される。この方法は、ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末及び前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信が可能であって前記ユーザ携帯端末の認証を行う認証装置を備えた入退室管理セキュリティシステムにおいて、認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する認証対象特定方法であって、前記認証装置は、基準の電波強度であるマスタ電波強度を予め記憶しており、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされた状態における当該ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する第一取得工程と、前記マスタ電波強度と前記第一取得工程で取得された前記電波強度とを用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する補正値決定工程と、前記認証装置にかざされない状態、かつ、認証可能エリア内に存在する前記ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する第二取得工程と、前記第二取得工程で取得された前記電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する特定工程と、を実行する。
この形態の認証対象特定方法によれば、認証対象のユーザ携帯端末を特定する特定工程において、第二取得工程で取得された各ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度をそのまま利用するのではなく、第一取得工程で取得された電波強度とマスタ電波強度とを用いて算出された補正値により補正された補正後電波強度が用いられる。すなわち、ユーザ携帯端末間の機体差の影響が解消された正確な電波強度である補正後電波強度が用いられるため、認証装置に最も近いユーザ携帯端末を正確に特定できる。そして、認証対象のユーザ携帯端末を正確に特定した上で認証を行うことができる。
(8)本開示の第三の形態によれば、入退室管理セキュリティシステムが提供される。この入退室管理セキュリティシステムは、ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末の認証を行って前記ユーザの入退室を管理する入退室管理セキュリティシステムであって、前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信を行う通信部と、前記認証を実行する認証装置と、を備え、前記認証装置は、前記認証の対象となる前記ユーザ携帯端末である対象端末を特定する特定部と、特定された前記対象端末を対象として、前記認証を実行する認証判定部と、電波を送信するマスタ携帯端末と前記認証装置との距離であるマスタ距離と、前記マスタ携帯端末から送信される電波の電波強度であるマスタ電波強度と、が対応付けられた基準情報を予め記憶する記憶部と、前記基準情報が有する前記マスタ距離に対応した位置で前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度を、前記通信部を介して取得する取得部と、前記取得部により取得された前記電波強度と、前記基準情報と、を用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態、かつ、前記認証装置からの距離が前記マスタ距離よりも長い領域を含む認証可能エリア内に存在する状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末が送信する電波強度を補正するための補正値を算出し、前記記憶部または前記ユーザ携帯端末に前記補正値を保存する補正値決定部と、を有し、前記特定部は、前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記対象端末を特定する。
この形態によれば、認証装置に最も近いユーザ携帯端末を正確に特定した上で認証を行うことができ、認証精度を向上させることができる。
(9)本開示の第三の形態によれば、入退室管理セキュリティシステムが提供される。この入退室管理セキュリティシステムは、ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末の認証を行って前記ユーザの入退室を管理する入退室管理セキュリティシステムであって、前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信を行う通信部と、前記認証を実行する認証装置と、を備え、前記認証装置は、基準の電波強度であるマスタ電波強度を予め記憶する記憶部と、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされた状態における当該ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する第一取得部と、前記マスタ電波強度と前記第一取得部で取得された前記電波強度とを用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する補正値決定部と、前記認証装置にかざされない状態、かつ、認証可能エリア内に存在する前記ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を取得する第二取得部と、前記第二取得部で取得された前記電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する特定部と、前記特定部により特定された前記ユーザ携帯端末を対象として、前記認証を実行する認証判定部と、を備える。
この形態によれば、認証装置に最も近いユーザ携帯端末を正確に特定した上で認証を行うことができ、認証精度を向上させることができる。
(10)本開示の第四の形態によれば、入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法が提供される。この方法は、ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末及び前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信が可能であって前記ユーザ携帯端末の認証を行う認証装置を備えた入退室管理セキュリティシステムにおいて、認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する認証対象特定方法であって、(a)前記認証装置において、ビーコンを無線送信する工程と、(b)前記ユーザ携帯端末において、受信する前記ビーコンの受信信号強度を特定する工程と、(c)前記ユーザ携帯端末において、前記工程(b)で特定された前記受信信号強度が予め定められた強度閾値以上であることを含む予め定められた開始条件が成立した場合に、補正値算出用信号を無線送信する工程と、(d)前記認証装置において、前記ユーザ携帯端末が無線送信する前記補正値算出用信号の電波強度を取得する工程と、(e)前記認証装置において、前記工程(d)で取得された前記電波強度と基準となるマスタ電波強度とを用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態、且つ、前記ユーザ携帯端末が認証可能エリア内に存在する状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する工程と、(f)前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末から受信した電波の電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定する工程と、を備える。
この形態の認証対象特定方法によれば、認証対象のユーザ携帯端末を特定する特定工程において、各ユーザ携帯端末が送信する電波の電波強度をそのまま利用するのではなく、補正値により補正された補正後電波強度が用いられる。すなわち、ユーザ携帯端末間の機体差の影響が解消された正確な電波強度である補正後電波強度が用いられるため、認証装置に最も近いユーザ携帯端末を正確に特定できる。そして、認証対象のユーザ携帯端末を正確に特定した上で認証を行うことができる。また、この形態によれば、ユーザ携帯端末において、認証装置から受信するビーコンの受信信号強度が強度閾値以上であることを含む開始条件が成立した場合に、補正値算出用信号を送信し、認証装置において、補正値算出用信号の電波強度を取得すると共に、取得された電波強度を用いて補正値を算出するので、ユーザ携帯端末が認証装置の近傍に存在する場合に受信する信号(補正値算出用信号)の電波強度を用いて補正値を算出できる。このため、ハンズフリー認証の際にユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を補正するための補正値として、適切な補正値を算出することができる。加えて、補正値算出用信号の電波強度を取得すると共に、取得された電波強度を用いて補正値を算出するので、認証装置においてユーザ携帯端末までの距離を特定するための測距機能を省略できる。このため、認証装置の製造コストを抑えることができる。また、認証装置から送信される信号であるビーコンの受信信号強度に応じて補正値算出用信号の出力から始まる一連の補正値決定のための処理が実行されるので、ユーザ携帯端末と認証装置との間の距離が概ね等しい状況下で、補正値決定のための処理を実行できる。したがって、複数のユーザ携帯端末のそれぞれの出力電波強度が異なることに起因して、ユーザ携帯端末と認証装置との間の距離が互いに大きく異なる状況下で補正値決定のための処理が実行されてしまい、適切でない補正値が算出されてしまうことを、抑制できる。
(11)上記形態の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、前記工程(c)は、(c1)前記ユーザ携帯端末において、前記開始条件が満たされた場合に、前記補正値算出用信号を複数回無線送信する工程、を含み、前記工程(d)は、(d1)前記認証装置において、前記ユーザ携帯端末が複数回無線送信する前記補正値算出用信号の電波強度をそれぞれ取得する工程、を含み、前記工程(e)は、(e1)前記認証装置において、前記工程(d1)で複数回取得された前記電波強度の統計値を算出し、前記統計値を用いて前記補正値を算出する工程、を含んでもよい。
この形態によれば、ユーザ携帯端末が複数回無線送信する補正値算出用信号の電波強度をそれぞれ取得し、複数回取得された電波強度の統計値を算出し、かかる統計値を用いて補正値を算出するので、外乱を抑えて、補正値としてより適切な値を算出できる。外乱としては、例えば、ユーザが携帯端末を認証装置にかざす際の手の位置のぶれに起因するユーザ携帯端末と認証装置との間の距離の変化や、ユーザ携帯端末とは異なる装置から出力される信号による影響や、ユーザ携帯端末から出力された信号であって、周囲の壁や床や障害物の表面などに反射して認証装置に入力する、いわゆるマルチパスの信号の影響などが該当する。
(12)上記形態の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、前記統計値は、移動平均値であってもよい。
この形態によれば、統計値は移動平均値であるので、比較的算出が容易な電波強度の移動平均値を用いて補正値を算出でき、補正値の算出の処理負荷を抑えることができる。
(13)上記形態の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法において、前記入退室管理セキュリティシステムは、複数の前記認証装置を備えており、(f)前記ユーザ携帯端末において、前記複数の認証装置のうち、受信する前記ビーコンの受信信号強度が前記強度閾値以上である前記認証装置を示す情報を一覧表示し、且つ、前記補正値算出用信号の無線送信を指示するための操作画面を表示する工程、を更に備え、前記工程(c)における前記開始条件は、前記操作画面において、一覧表示された前記認証装置のうちから前記補正値算出用信号の送信対象となる認証装置が選択されたことと、前記補正値算出用信号の無線送信が指示されたことと、を含み、前記工程(c)は、(c2)前記操作画面において選択された前記認証装置に対して、前記補正値算出用信号を無線送信する工程、を含んでもよい。
この形態によれば、開始条件は、操作画面において、一覧表示された認証装置のうちから補正値算出用信号の送信対象となる認証装置が選択されたことと、補正値算出用信号の無線送信が指示されたことと、を含み、操作画面において選択された認証装置に対して補正値算出用信号が無線送信されるので、ユーザが意図していない認証装置を対象として補正値を算出してしまうことを抑制できる。
(14)本開示の第五の形態によれば、入退室管理セキュリティシステムにおける規制解除方法が提供される。この方法において、前記認証装置は、入室管理の対象エリアであるセキュリティエリアへの移動を物理的に規制する規制手段の規制を解除する規制解除制御部を有し、上記形態のうちのいずれかに記載の入退室管理セキュリティシステムにおける認証対象特定方法を用いて特定された前記ユーザ携帯端末の認証判定を行う認証判定工程を実行し、前記認証判定工程において認証が成立した場合には、前記規制解除制御部により前記規制を解除し、前記認証判定工程において認証が成立しなかった場合には、前記規制を解除しなくてもよい。
この形態によれば、セキュリティエリアへの移動を希望するユーザが所持する認証対象のユーザ携帯端末を正確に特定した上で、認証判定を行い、規制手段を解除するか否かを決定できる。
(15)本開示の第六の形態によれば、入退室管理セキュリティシステムが提供される。この入退室管理セキュリティシステムは、ユーザにより携帯されるユーザ携帯端末の認証を行って前記ユーザの入退室を管理する入退室管理セキュリティシステムであって、前記ユーザ携帯端末と、前記ユーザ携帯端末と相互に無線通信を行う通信部と、前記認証を実行する認証装置と、を備え、前記認証装置は、前記認証の対象となる前記ユーザ携帯端末である対象端末を特定する特定部と、特定された前記対象端末を対象として、前記認証を実行する認証判定部と、前記通信部を介してビーコンを無線送信するビーコン送出部と、前記ユーザ携帯端末が無線送信する補正値算出用信号の電波強度を、前記通信部を介して取得する取得部と、前記取得部により取得された前記電波強度と基準となるマスタ電波強度とを用いて、前記ユーザ携帯端末が前記認証装置にかざされない状態、且つ、前記ユーザ携帯端末が認証可能エリア内に存在する状態で認証が行われるハンズフリー認証の際に前記ユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を補正するための補正値を算出し、前記ユーザ携帯端末または前記認証装置が有する記憶部に前記補正値を保存する補正値決定部と、を有し、前記ユーザ携帯端末は、受信する前記ビーコンの受信信号強度を特定する信号強度特定部と、特定された前記受信信号強度が予め定められた強度閾値以上であることを含む予め定められた開始条件が成立した場合に、前記補正値算出用信号を無線送信する補正値算出用信号送信部と、を有し、前記特定部は、前記認証可能エリア内の任意の位置で前記ユーザ携帯端末から受信した電波の電波強度を前記補正値により補正した補正後電波強度を用いて、前記認証対象の前記ユーザ携帯端末を特定してもよい。
この形態によれば、認証装置に最も近いユーザ携帯端末を正確に特定した上で認証を行うことができ、認証精度を向上させることができる。また、ユーザ携帯端末において、補正値算出用信号送信部は、認証装置から受信するビーコンの受信信号強度が強度閾値以上であることを含む開始条件が成立した場合に、補正値算出用信号を送信し、認証装置において、取得部は、補正値算出用信号の電波強度を取得し、補正値決定部は、取得された電波強度を用いて補正値を算出するので、ユーザ携帯端末が認証装置の近傍に存在する場合に受信する信号(補正値算出用信号)の電波強度を用いて補正値を算出できる。このため、ハンズフリー認証の際にユーザ携帯端末から受信する電波の電波強度を補正するための補正値として、適切な補正値を算出することができる。加えて、認証装置においてユーザ携帯端末までの距離を特定するための測距機能を省略できるので、認証装置の製造コストを抑えることができる。また、認証装置から送信される信号であるビーコンの受信信号強度に応じて補正値算出用信号の出力から始まる一連の補正値決定のための処理が実行されるので、ユーザ携帯端末と認証装置との間の距離が概ね等しい状況下で、補正値決定のための処理を実行できる。したがって、複数のユーザ携帯端末のそれぞれの出力電波強度が異なることに起因して、ユーザ携帯端末と認証装置との間の距離が互いに大きく異なる状況したで補正値決定のための処理が実行されてしまい、適切でない補正値が算出されてしまうことを、抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態における入退室管理セキュリティシステムの概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】入退室管理セキュリティシステムにおける携帯端末、認証装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】入退室管理セキュリティシステムにおける認証の流れの概要を説明するシーケンス図である。
【
図4】入退室管理セキュリティシステムにおいて、認証装置が実行する処理を説明するメインフローチャートである。
【
図5】認証対象の携帯端末を特定する処理を説明するフローチャートである。
【
図6】補正値を決定する処理を説明するフローチャートである。
【
図7】キャリブレーション情報のデータの一例を示す図である。
【
図9】携帯端末ごとの機種および補正値の一例を示す図である。
【
図10】第2実施形態における入退室管理セキュリティシステムにおける携帯端末、認証装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図11】第2実施形態における補正値決定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】S310の詳細手順を示すフローチャートである。
【
図13】S410において表示される認証装置一覧を含む操作画面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
A.第1実施形態:
A1.入退室管理セキュリティシステム1の全体構成:
第1実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。まず、入退室管理セキュリティシステム1の全体構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本開示の第1実施形態における入退室管理セキュリティシステム1の概略構成を模式的に示す図である。
図1に示す入退室管理セキュリティシステム1は、例えば、会社内の特定の部屋への従業者の入退室管理や、入室許可のない者がセキュリティエリアに入室しないようにセキュリティ管理を行うシステムである。セキュリティエリアは、入室管理の対象エリアである。
【0012】
図1に示すように、入退室管理セキュリティシステム1は、ユーザ2A,2Bにより携帯されるユーザ携帯端末3A、3B(以下、単に「携帯端末」ともいう)と、携帯端末3A、3Bの認証を行う認証装置4と、を備えている。以下、複数のユーザ2A,2Bを特に区別しないときは、単に「ユーザ2」と言い、複数のユーザ携帯端末3A、3Bを特に区別しないときは、単に「携帯端末3」と言う。
図1では、携帯端末3を所持するユーザが2人図示されているが、これは一例であり、通常、このようなシステムでは、3人以上の複数のユーザによる利用が想定されている。ここで、携帯端末3は、例えば会社が支給する一律のIDカードや無線タグではなく、各ユーザがそれぞれ所持する個人持ちのスマートフォン等である。よって、各携帯端末3は共通のものではなく、互いに機種が異なり、通信性能にも差がある。すなわち、複数の携帯端末3は、共通のものと比較して、互いに機体差が大きい。
【0013】
入退室管理セキュリティシステム1では、認証装置4に携帯端末3をかざした状態で認証処理を行う「端末かざし認証」と、携帯端末3をポケットや鞄の中に所持したままで携帯端末3が認証装置4にかざされていないハンズフリーの状態で認証処理を行う「ハンズフリー認証」との、両方が可能である。「ハンズフリー認証」は、ユーザ携帯端末3が認証装置4にかざされない状態、かつ、認証装置4からの距離がマスタ距離よりも長い領域を含む認証可能エリア内に存在する状態で行われる認証である。
【0014】
携帯端末3はBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)規格に準拠したものであり、定期的、例えば1秒毎に、ビーコン信号を送信するようになっている。携帯端末3から送信されるビーコン信号には、その携帯端末3を識別するための識別情報が含まれている。なお、「識別情報」は、自端末を識別するための情報であり、例えば、ユーザ2が保持する携帯端末3ごとに設定された機種情報を含む識別番号又はシリアル番号である。さらに、識別情報は、ユーザ2ごとに付与されるID番号又は社員番号を含んでもよい。
【0015】
認証装置4は、入退室の管理対象となる部屋の扉5や、扉5の周辺、例えば、扉5の横に位置する壁等に設けられている。認証装置4は、ユーザ2による手かざし操作が可能な操作部42を有している。操作部42に対して手かざし操作が行われることをきっかけに、最終的な認証判定が行われる構成となっている。認証の詳細については後述する。携帯端末3と、認証装置4とは、相互に無線通信が可能である。認証装置4は、複数の端末が認証可能エリア内に存在するときに、認証装置4に最も近い認証対象の携帯端末3を特定し、特定された携帯端末3の識別情報を用いて認証可否判定および、扉5の解錠制御を行う。扉5は、セキュリティエリアへの移動を物理的に規制する規制手段に相当する。
【0016】
A2.携帯端末3および認証装置4の構成:
[携帯端末3の構成]
図2は、入退室管理セキュリティシステム1における携帯端末3、認証装置4の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、携帯端末3は、制御部31と、操作部32と、通信部33と、記憶部34と、表示部35と、の各機能部を備えている。制御部31は、記憶部34に記憶されたプログラムを実行し、携帯端末3による動作全般を制御する。制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。
【0017】
携帯端末3は、図示しない操作ボタンを備えており、操作部32は、このような操作ボタンに対する操作を受け付け、その結果を表す操作受付信号を制御部31へ出力する。制御部31は、操作受付信号が与えられると、それに応じた各種の処理を実行する。
【0018】
通信部33は、認証装置4との間で無線通信を行う。通信部22としては、例えばBLE、ZigBee(登録商標)、又はWi-fi等の無線通信インターフェースを有する無線モジュールが用いられる。通信部33は、認証装置4に対し、無線通信により、ユーザ2の識別情報が含まれたビーコン信号を送信する。
【0019】
記憶部34は、制御部31によって実行される携帯端末3の制御及び演算を行うためのプログラムを記憶している。また、記憶部34は、携帯端末3を所持するユーザ2の識別情報、認証装置4の識別情報等を予め記憶している。
【0020】
記憶部34は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)等の半導体メモリを有することができる。また、記憶部34は、フラッシュメモリ、磁気記憶装置、光学記憶装置等の任意のタイプの記憶装置を有してもよい。
【0021】
表示部35は、液晶パネル又は有機ELディスプレイ等の表示装置であって、例えば、認証装置4から受信した情報を表示装置に表示して、ユーザ2に通知する。
【0022】
[認証装置4の構成]
認証装置4は、制御部41と、操作部42と、通信部43と、記憶部44と、測距部45と、の各機能部を備えている。制御部41は、記憶部44に記憶されたプログラムを実行し、認証装置4による動作全般を制御する。制御部41は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。
【0023】
操作部42は、ユーザ2による手かざし等の操作を受け付け、その結果を表す操作受付信号を制御部へ出力する。制御部41は、操作受付信号が与えられると、それに応じた各種の処理を実行する。通信部43は、携帯端末3から無線通信を介して送信されるビーコン信号を受信し、その受信したビーコン信号を制御部41へ出力する。
【0024】
通信部43は、携帯端末3との間で無線通信を行う。通信部43としては、例えばBLE、ZigBee(登録商標)、又はWi-fi(登録商標)等の無線通信インターフェースを有する無線モジュールが用いられる。通信部43は、無線通信により、携帯端末3からビーコン信号を受信する。
【0025】
記憶部44は、制御部41によって実行される認証装置4の制御及び演算を行うためのプログラムを記憶している。また、記憶部44は、認証可能な携帯端末3識別情報を予め記憶している。記憶部44は、電波を送信するマスタ携帯端末と認証装置4との距離であるマスタ距離と、マスタ携帯端末から送信される電波の電波強度であるマスタ電波強度と、が対応付けられた基準情報テーブルを予め記憶している。マスタ距離は、携帯端末3が認証装置4にかざされたと判定可能な距離である。基準情報テーブルの詳細については後述する。さらに、記憶部44は、ユーザ2に入場を許可したことを示す入場記録情報(ユーザ名、入室許可時間等)を記憶する。
【0026】
記憶部44は、RAM、EPROM等の半導体メモリを有することができる。また、記憶部44は、フラッシュメモリ、磁気記憶装置、光学記憶装置等の任意のタイプの記憶装置を有してもよい。
【0027】
測距部45は、測距センサを有して構成され、認証装置4から、電波を送信した携帯端末3までの距離を測定する。測距センサは、例えば、電波以外の手段を用いて距離を測定する熱感センサである。その他、測距部45の構成としては、カメラによる画像解析や、認証に用いる電波とは周波数が異なり、認証処理を妨げない電波による測距など、種々の形態により構成できる。
【0028】
制御部41は、取得部46と、補正値決定部47と、特定部48と、認証判定部49と、電気錠制御部51と、を備えている。取得部46は、携帯端末3が送信する識別情報と電波強度、および測距部45により測定された距離値を取得する。補正値決定部47は、ハンズフリー認証時に用いる補正値であって、携帯端末3が送信する電波強度(以下、単に「携帯端末3の電波強度」ともいう)を補正するための補正値を算出し、認証装置4が有する記憶部44に保存する。取得部46は、「第一取得部」および「第二取得部」の一例に相当する。
【0029】
特定部48は、認証対象の携帯端末3を特定する。特定部48は、ハンズフリー認証時には、認証可能エリア内の任意の位置で携帯端末3が送信する電波の電波強度を補正値により補正した補正後電波強度を用いて、認証対象の携帯端末3を特定する。詳細は後述する。なお、特定部48により特定された、認証の対象となるユーザ携帯端末は、「対象端末」に相当する。
【0030】
認証判定部49は、特定された携帯端末3の認証判定を行う。認証判定部49は、記憶部44に記憶された各種の情報に基づいて、ビーコン信号を送信した携帯端末3について認証可能であるか否か、つまり認証成立であるか、認証不成立であるかを判断する。具体的には、認証判定部49は、特定された携帯端末3のビーコン信号に含まれる識別情報と記憶部44に記憶された識別情報とを照らし合わせることにより、認証可否を判定する。
【0031】
電気錠制御部51は、扉5の図示しない電気錠の施解錠を制御する。電気錠制御部51は、無線又は有線により扉5の電気錠と接続され、扉5の電気錠の施解錠を制御するインターフェース回路を有する。電気錠制御部51と扉5の電気錠との間の通信には、通信部43が用いられてもよい。電気錠制御部51は、「規制解除制御部」に相当する。
【0032】
A3.認証処理について:
[認証の全体の流れ]
認証装置4は、前述したように、携帯かざし認証とハンズフリー認証の両方が可能である。入退室管理セキュリティシステム1の運用において、上記補正値が決定されていない携帯端末3については、まずは「端末かざし認証」が要求されている。そして、初回の端末かざし認証と併せて、このときに補正値を決定する。補正値が決定された携帯端末3については、次の入室時からハンズフリー認証が可能となる。
【0033】
上記構成の入退室管理セキュリティシステム1では、
図3に示すような流れで認証が行われる。
図3は、入退室管理セキュリティシステム1における認証の流れの概要を説明するシーケンス図である。
図3に示すように、複数のユーザ2が、認証可能な一定距離、例えば認証装置4から2~3mの認証可能エリア内へ入ると、認証装置4は、各携帯端末3から各種情報をアドバタイズ受信する。そして、受信した識別情報と対応させて予め記憶された補正値を読み出しておく。そして、入室の最終的な意思確認としてユーザ2が認証装置4に手をかざした行為を契機に、認証可能エリア内の各携帯端末3から送信される電波強度を、補正値を用いて補正し認証端末を特定する。そして、特定された認証端末の情報を用いてセキュリティ解除通信等を行う。以下、これらの流れについて、さらに詳細に説明する。
【0034】
[認証処理]
図4は、入退室管理セキュリティシステム1において、認証装置4が実行する処理を説明するメインフローチャートである。上述したように、認証装置4は、S10において、携帯端末3から識別情報をアドバタイズ受信した後、S20において、認証対象の携帯端末3を特定する。そして、S30において、特定された認証端末の識別情報を用いて認証判定を行う。S30の処理は、「認証判定工程」に相当する。
【0035】
図5は、認証対象の携帯端末3を特定する処理を説明するフローチャートであって、
図4におけるS20の処理の詳細である。S20の処理は、「特定工程」に相当する。
図5に示すように、まずS21において、携帯端末3が認証装置4にかざれたか否かが判断される。かざされたと判断された場合には(S21:YES)、S22に進み、かざされた携帯端末3を認証対象の携帯端末として特定する。これは、入室を希望するユーザ2が端末かざし認証による認証を希望し、その操作をしたということであり、当該ユーザ2が認証端末の最も近くにいることを意味する。よって、かざされた携帯端末3を認証対象の携帯端末3として特定する。
【0036】
なお、「かざす」とは、例えば、認証装置4までの距離を20cm未満となるように、携帯端末3(または後述の「手」)を認証装置4に近づけることを意味する。このとき、認証装置4と携帯端末3(または後述の「手」)とは、接触していてもよいし、非接触でもよい。かざされたか否かの判定は、測距部45で測定した距離が所定距離値以下である場合にかざされたと判定する。なお、携帯端末3から受信した電波強度のみを用いて判定する構成とし、かざされたと判定できる電波強度(例えば、-30)以上である場合に携帯端末3がかざされたと判定してもよい。
【0037】
一方、S21において、携帯端末3がかざされなかったと判断された場合には(S21:NO)、S23に進み、手かざし操作がされたか否かが判断される。手かざし操作がされていない場合には(S22:NO)、S21の処理に戻る。S22において、手かざし操作がされたと判断された場合には(S22:YES)、ハンズフリー認証が要求されたことを意味し、S24に進み、認証可能エリア内の携帯端末3の電波強度を取得し、補正値を用いて補正する。なお、補正値の決定についての詳細は後述する。補正値を用いて補正された電波強度を、「補正後電波強度」という。そして、S25において、補正後電波強度が最も大きい携帯端末3を認証端末として特定する。以上で、本処理ルーチンは終了する。
【0038】
[補正値決定処理]
次に、補正値決定処理について説明する。
図6に示すように、S61において、測距および携帯端末3の電波強度が取得される。測距の処理は、測距部45により行われ、S61において認証装置4から携帯端末3までの実測の距離および、携帯端末3の電波強度(言わば、生の電波強度であり、以下「実測電波強度」ともいう)が取得される。S61の処理は、「取得工程」に相当する。
【0039】
図7は、携帯端末3のキャリブレーション情報のデータの一例を示す図である。キャリブレーション情報とは、後述の補正値算出のために必要な携帯端末3の発信電波性能を示す情報であり、本実施形態では、「端末ID」、「電波強度」、「距離」の3つの情報を含んでいる。
図7に示すキャリブレーション情報のテーブルT7の例では、端末IDとして「端末A」として登録され、電波強度は「-45」であり、距離は「10cm」である。
【0040】
再び、
図6を参照する。測距および電波強度が取得された後は、S62において、記憶部44から、基準情報が読み出される。「基準情報」とは、上述したように、マスタ携帯端末を用いて予め取得される情報であり、マスタ距離とマスタ電波強度と、が対応付けされた複数のデータである。
図8は、基準情報のデータの一例を示す図である。
図8に示すように、基準情報は、マスタ距離とマスタ電波強度とが対応付けされたデータを異なる距離ごとに複数有した基準情報テーブルT8として構成されている。なお、本実施形態では、携帯がかざされる行為により取得工程が実行されるため、ユーザ2による個人差はあるものの、認証装置4から携帯端末3までの距離は、概ね2cm~20cm程度の範囲内となる。
【0041】
次に、S63において、携帯端末3の補正値が算出される。
図7に示す携帯端末3(端末A)の例では、測距した距離が「10cm」であり、この距離での実測電波強度が「-45」であった。一方、
図8に示す基準情報テーブルT8において、マスタ距離「10cm」に対応関係にあるマスタ電波強度は「-30」である。補正値は、実測電波強度のマスタ電波強度からのずれを補正するものであるため、マスタ電波強度から実測電波強度を差し引いた差分として算出できる。よって、マスタ電波強度「-30」から実測の電波強度「-45」を引いた差分の「15」が、携帯端末3(端末A)の補正値として算出される。
【0042】
補正値が算出された後は、S64において、補正値が認証装置4の記憶部44に保存される。S62,S63の各処理は、「補正値決定工程」に相当する。
図9は、携帯端末3ごとの機種および補正値の一例を示す図である。
図9に示すように、携帯端末3ごとに、端末ID、機種名、および補正値が対応付けされてテーブルT9として保存される。
図9に示す補正値により補正された補正後電波強度は、携帯端末3間の機体差が解消された値である。なお、認証装置4と携帯端末3の距離が20cm以上離れても、携帯端末3の電波強度の減衰する関係は、2cm~20cmの比例関係のままほぼ変わらない。
【0043】
[システムでの処理(認証対象特定方法、および規制解除方法)のまとめ]
ハンズフリー認証では、認証可能エリア内に複数の携帯端末3が存在する場合、認証装置4に手かざしをして実際に入室しようとしているユーザ2の携帯端末3を、正確に特定した上で、当該携帯端末3の識別情報を用いて認証処理を実行する必要がある。手かざしをしたユーザ2A(
図1参照)が所持する携帯端末3Aの電波強度が、後ろにいるユーザ2Bが所持する携帯端末3Bの電波強度よりも弱い場合に、単純に電波強度の強さで認証対象を特定してしまうと、実際に入室するのはユーザ2Aであるのに、ユーザ2Bが入室したものと入退室ログを誤ったり、認証許可のないユーザ2の入室を許可してしまったり、という事態にもなりうるからである。
【0044】
その点、上記詳述した方法では、上述したように、補正後電波強度の最も大きい端末が、認証対象として特定される(
図5、S24,S25)。複数の携帯端末3における補正後電波強度は、認証装置4からの距離と正しく比例関係を有するため、補正後電波強度の最も大きい端末が認証装置4に最も近い位置にある。よって、補正後電波強度の最も大きい端末を特定することで、認証装置4に最も近い位置にある携帯端末3を正確に特定することができる。
【0045】
また、セキュリティ解除通信が行える電波強度の閾値が決定されている場合に、電波強度が当該閾値より弱いと、実際はセキュリティ解除通信(
図3参照)を行ってもよい距離にあるにもかかわらず、セキュリティ解除通信を行うことができない。しかし、上記補正後電波強度を用いることによって、認証装置4から所定の距離内に近づいたときに、セキュリティ解除通信へ良好に以降することができる。
【0046】
さらに、携帯端末3の補正値は、認証装置4の記憶部44に記憶されるため、ユーザ2は、入室に際して、初回は携帯かざし認証を行う必要があるが、2回目以降はハンズフリー認証により入室が可能となる。
【0047】
S30の認証判定処理において、具体的には、認証装置4は、受信した信号に含まれる識別情報と記憶部44に予め記憶された識別情報とを比較することによってユーザ2の認証判定を実行する。認証装置4は、信号に含まれるユーザ2の識別情報が、予め記憶部44に登録された識別情報のいずれかと一致する場合には、ユーザ2が扉5を通行する正当な利用者であると判定し、認証が成功したと判定する。一方、認証装置4は、認証要求信号に含まれるユーザ2の識別情報が、予め記憶部44に登録された識別情報と一致しない場合には、ユーザ2は正当な利用者ではないと判定し、認証が失敗したと判定する。
【0048】
そして、認証成功の場合には、電気錠制御部51により扉5の規制を解除する。認証失敗の場合には、電気錠制御部51により扉5の規制を解除しない。なお、規制を解除する際には、制御部41は、電気錠制御部51を介して、扉5に解錠信号を送信し、扉5の電気錠を一定期間だけ解錠する。そして、制御部41は、ユーザ2がセキュリティエリアに入場したことを示す入場記録信号を記憶部44に記憶する。この入場記録信号には、ユーザ2の識別情報が含まれる。入場記録情報には、エリア情報及び時間情報等を付加してもよい。
【0049】
なお、入場記録情報は、認証装置4とは別の中央管理装置において管理してもよい。その場合、ユーザ2がセキュリティエリアへ入場する度に通信部43を介して中央管理装置へ入場記憶情報を送信してもよいし、まとめて送信してもよい。また、入場記録情報に、エリア情報及び時間情報等を付加する処理を中央管理装置において実行してもよい。
【0050】
A4.効果:
(1)上記第1実施形態の入退室管理セキュリティシステム1の認証対象特定方法によれば、認証対象の携帯端末3を特定する特定工程において、各携帯端末3が送信する電波の電波強度をそのまま利用するのではなく、基準情報に基づいて算出された補正値により補正された補正後電波強度が用いられる。すなわち、携帯端末3間の機体差の影響が解消された距離と比例関係となる正確な電波強度である補正後電波強度が用いられるため、認証可能エリア内に存在する複数のユーザ2の中から、認証装置4に最も近い携帯端末3を正確に特定できる。そして、このように、認証対象の携帯端末3を正確に特定した上で認証を行うことができる。
【0051】
このため、例えば、認証を行うために認証装置4の最も近くにいるユーザ2の携帯端末3の識別情報ではなく、認証可能エリア内の別のユーザ2の携帯端末3の識別情報によって入退室の認証可否判断が誤って行われることを抑制できる。したがって、セキュリティシステムの入退室管理を正しく行うことができるとともに、認証許可のないユーザ2がセキュリティエリアに入室することを抑制できる。セキュリティ面においても好ましい形態とできる。
【0052】
特に、上記説明した効果は、ユーザ2が個人で所持し、機種などの仕様が異なる複数の携帯端末3を対象として、認証対象を特定しなくてはならないセキュリティ認証において、良好に奏する。なお、上記第1実施形態では、各携帯端末3はそれぞれ機種等が異なる例で説明したが、同じ機種であっても、仕様年数や使用環境の違いによって機体差が生じることがあるため、上記方法により同様の効果を奏する。
【0053】
(2)上記第1実施形態の入退室管理セキュリティシステム1の認証対象特定方法によれば、取得工程は、携帯端末3が認証装置4にかざされる行為により実行される。かざす行為時における認証装置4と携帯端末3との距離は、かざす行為におけるユーザ2の個人差を鑑みても、ある程度の範囲に想定され得る。例えば、
図8にテーブルT8として示したように、概ね2cm~20cmの範囲内のように特定できる。よって、マスタ距離とマスタ電波強度とが対応付けされた記憶データを、かざす行為に限定しない場合と比較して、少なくでき、記憶容量を低減できる。
【0054】
(3)また運用面において、初回の携帯かざし認証時に、認証と同時に併せて補正値を取得できるため、システム利用者は、わざわざ携帯端末3ごとの補正値を別の機会に取得してシステムに記憶させておくという手間を省略できる。煩雑な操作をユーザ2に要求することがなく、また、システムの処理負荷も低減できる。
【0055】
(4)さらに、
図8にテーブルT8として示したように、マスタ距離とマスタ電波強度とが対応付けされたデータを、異なるマスタ距離ごとに複数有している。そして、測距を行い、対応するマスタ電波強度との差分を補正値としているため、携帯をかざす行為を、ある程度の距離、例えば概ね6cm等に固定できるものとして単一の対応データを用いて補正値を算出する場合と比較して、ユーザ2の個人差による誤差をなくすことができ、認証対象の携帯端末を特定する精度を向上させることができる。
【0056】
B.第2実施形態:
B1.システム全体構成:
図10は、第2実施形態における入退室管理セキュリティシステム1aにおける携帯端末、認証装置の構成を示す機能ブロック図である。第2実施形態の入退室管理セキュリティシステム1aは、認証装置4に代えて認証装置4aを備える点と、携帯端末3に代えて携帯端末3aを備える点とにおいて、
図2に示す第1実施形態の入退室管理セキュリティシステム1と異なる。第2実施形態の入退室管理セキュリティシステム1aにおけるその他の構成は、第1実施形態の入退室管理セキュリティシステム1と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、第2実施形態においては、入退室管理セキュリティシステム1aは、認証装置4aとして2台の認証装置(後述の認証装置Aおよび認証装置B)を備えている。これら2台の認証装置は、設定されているIDが互いに異なる他は、互いに同じ構成を有する。
【0057】
第2実施形態の認証装置4aは、測距部45が省略されている点と、制御部41がビーコン送出部52として追加して機能する点とにおいて、第1実施形態の認証装置4と異なり、その他の点は認証装置4と同じである。ビーコン送出部52は、認証装置4aの電源がオンすると、所定の時間間隔で通信部43を介してビーコンを無線送信する。ビーコンには、認証装置4a(認証装置Aおよび認証装置B)のIDが含まれている。ビーコンは、ブロードキャストされ、認証装置4aから所定距離範囲内において受信され得る。
【0058】
第2実施形態の携帯端末3aは、制御部31が信号強度特定部311および補正値算出用信号送信部312として機能する点において、第1実施形態の携帯端末3と異なり、その他の点は携帯端末3と同じである。信号強度特定部311および補正値算出用信号送信部312は、いずれも、携帯端末3aが備える図示しないCPUが記憶部34に予め記憶されているプログラムを実行することにより実現される機能部である。信号強度特定部311は、認証装置4aから送出されるビーコンの受信信号強度を特定する。補正値算出用信号送信部312は、通信部33を介して補正値算出用信号を無線送信する。「補正値算出用信号」とは、第1実施形態において説明した「補正値」、すなわち、ハンズフリー認証時に用いる補正値であって、携帯端末3aの電波強度を補正するための補正値を算出するための信号である。信号強度特定部311および補正値算出用信号送信部312が実行する処理内容の詳細については、後述する。
【0059】
第1実施形態の入退室管理セキュリティシステム1では、補正値を決定するために、測距部45による測距結果を用いていた。これに対して、第2実施形態の入退室管理セキュリティシステム1aでは、測距を行わずに補正値を決定する。また、第1実施形態の入退室管理セキュリティシステム1では、基準情報テーブルには、複数のマスタ距離と、各マスタ距離に対応付けられたマスタ電波強度が記憶されていた。これに対して、第2実施形態の入退室管理セキュリティシステム1aでは、基準情報テーブルには、1つのマスタ電波強度のみが距離と対応付けられずに記憶されている。以下、補正値決定処理について説明する。
【0060】
B2.補正値決定処理:
図11は、第2実施形態における補正値決定処理の手順を示すフローチャートである。
図11において、左側はユーザの手順を示し、中央は認証装置4aの手順を示し、右側は携帯端末3aの手順を示す。ユーザは、例えば、携帯端末3aを最初に利用する際などにおいて、補正値決定用のアプリケーションを立ち上げて実行ボタンを押す等の補正操作を実行する(S105)。かかる補正操作を契機として、携帯端末3aにおいて、補正値決定処理が開始される。
【0061】
認証装置4aでは、電源がオンすると、補正値決定処理が実行される。認証装置4aにおいて、ビーコン送出部52は、通信部43を介してビーコンを無線送信する(S205)。
【0062】
携帯端末3aにおいて、信号強度特定部311は、認証装置4aから無線送信されるビーコンを受信し、その受信信号強度を特定する(S305)。携帯端末3aにおいて、補正値算出用信号送信部312は、開始条件が成立したか否かを判定する(S310)。「開始条件」とは、補正値算出用信号の無線送信を開始するための条件を意味する。
【0063】
図12は、S310の詳細手順を示すフローチャートである。S310は、S405~S430の手順を含む。S405において、補正値算出用信号送信部312は、S305で特定された電波強度が予め定められた第1強度閾値以上の認証装置が存在するか否かを判定する。「予め定められた第1強度閾値」は、携帯端末3aが認証装置4aにかざされた場合の受信信号強度以下であり、かつ、携帯端末3aが認証装置4aから所定距離以上に離れて位置する場合の受信信号強度よりも大きな値として、予め実験やシミュレーションにより特定されて設定されている。「所定距離」とは、携帯端末3aを用いた認証を行おうとして認証装置4aに近づいている場合を想定した距離であり、例えば、2m(メートル)であってもよい。なお、上述のS105を実行した結果、携帯端末3aを認証装置4aに近づけるように促すガイダンスを、携帯端末3aの表示部35に表示させてもよい。また、設定した第1強度閾値が示す携帯端末3aと認証装置4aとの間の距離よりも極めて近い距離で補正値決定のための処理を実行することを抑制するため、受信したビーコン信号が、第1強度閾値以上、且つ、第1強度閾値よりも高い第2強度閾値以下の場合に補正値算出用の無線送信を開始してもよい。なお、開始条件を、携帯端末3aが認証装置4aにかざされた場合としてもよく、例えば、携帯端末3aと認証装置4aとの距離が30cm~10cmの場合に無線信号の送信が開始されるよう第1強度閾値と第2強度閾値とをそれぞれ設定する。
【0064】
電波強度が予め定められた強度閾値以上の認証装置が存在しないと判定された場合(S405:NO)、補正値算出用信号送信部312は、開始条件が成立していないと判定する(S430)。
【0065】
電波強度が予め定められた強度閾値以上の認証装置が存在すると判定された場合(S405:YES)、補正値算出用信号送信部312は、電波強度が予め定められた強度閾値以上の認証装置を、表示部35に一覧表示させる(S410)。なお、電波強度が予め定められた強度閾値以上の認証装置は、後述の補正値算出用信号の送信先の候補となる装置であり、「送信候補認証装置」とも呼ぶ。
【0066】
図13は、S410において表示される認証装置一覧L1を含む操作画面F1を示す説明図である。操作画面F1は、認証装置一覧L1と、送信指示ボタンB1と、終了ボタンB2とを備える。認証装置一覧L1には、送信候補認証装置が一覧表示されている。なお、
図13では、理解を容易とするために、送信候補認証装置として、「認証装置A」および「認証装置B」との名称が一覧表示(リストアップ)されている。但し、かかる名称に変えて、IDを表示させてもよい。一覧表示された各送信候補認証装置の右側には、選択ボタンが表示されている。具体的には、認証装置Aに対応付けて、選択ボタンBaが表示されている。また、認証装置Bに対応付けて、選択ボタンBbが表示されている。ユーザは、選択ボタンBaまた、選択ボタンBbを押下することにより、認証装置Aまたは認証装置Bを選択できる。そして、ユーザは、いずれかの認証装置を選択した状態で、送信指示ボタンB1を押下することができる(
図11:S110)。なお、
図13に示す終了ボタンB2が押下された場合、操作画面F1は閉じてメニューは終了する。
【0067】
図12に示すように、補正値算出用信号送信部312は、操作画面F1において、送信候補認証装置の選択および補正値算出用信号の送信指示があるか否かを判定する(S415)。
【0068】
送信候補認証装置の選択および送信指示が無いと判定された場合(S415:NO)、処理はS410に戻る。これに対して、送信候補認証装置の選択および送信指示が有ると判定された場合(S415:YES)、補正値算出用信号送信部312は、携帯端末3aを認証装置4aに近づけることを促すガイダンスを、携帯端末3aの表示部35に表示させる(S420)。補正値算出用信号送信部312は、開始条件が成立したと判定する(S425)。なお、S420とS425とは、逆の順序で実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。
図11に示すように、ユーザは、S420により表示部35に表示されたガイダンスを見て、携帯端末3aを認証装置4aにかざす(S115)。
【0069】
上述のS430またはS425の完了により、S310は完了する。
図11に示すように、開始条件が成立していないと判定された場合(S310:NO)、処理はS305に戻る。これに対して、開始条件が成立したと判定された場合(S310:YES)、補正値算出用信号送信部312は、アドバタイズ315を送信する(S315)。その後、携帯端末3aと認証装置4aとの間で、セキュリティ解除通信が実行される(S250)。このとき、複数の信号(電文)が、携帯端末3aから認証装置4aに無線送信される。これらの複数の信号は、本開示における「補正値算出用信号」に相当する。また、本実施形態では複数の信号(電文)を「補正値算出用信号」として用いているが、アドバタイズ315を「補正値算出用信号」として用いても良い。
【0070】
認証装置4aにおいて、取得部46は、受信する複数の補正値算出用信号のそれぞれについて、電波強度を取得する(S210)。S220において、補正値決定部47は、補正値算出・記憶処理を実行する。このS220は、S221、S222およびS223を含む。
【0071】
S221において、補正値決定部47は、S210で取得された複数回の電波強度の統計値を取得する。上述の「統計値」は、本実施形態では、移動平均値である。具体的には、携帯端末3aから認証装置4aへの補正値算出用信号の送信開始から3回送信分の補正値算出用信号の電波強度の平均値が、統計値として算出されて取得される。なお、3回に限らず任意の回数分の補正値算出用信号の電波強度の平均値が統計値として算出されてもよい。また、補正値算出用信号の送信開始後、2回目の送信から3回送信分の補正値算出用信号の電波強度の平均値が、統計値として算出されてもよい。
【0072】
S222において、補正値決定部47は、S221で取得された統計値(移動平均値)を用いて、補正値を算出する(S222)。S222の具体的な手順は、第1実施形態におけるS63と同様である。すなわち、記憶部34に予め記憶されているマスタ電波強度からS221で取得された統計値(移動平均値)を差し引くことにより、補正値を算出する。S223において、補正値決定部47は、S222で算出された補正値を、認証装置4aの記憶部44に保存する。
【0073】
以上説明した第2実施形態の入退室管理セキュリティシステム1aは、第1実施形態の入退室管理セキュリティシステム1と同様な効果を奏する。加えて、ユーザ携帯端末3aにおいて、認証装置4aから受信するビーコンの受信信号強度が強度閾値以上であることを含む開始条件が成立した場合に、補正値算出用信号を送信し、認証装置4aにおいて、補正値算出用信号の電波強度を取得すると共に、取得された電波強度を用いて補正値を算出するので、ユーザ携帯端末3aが認証装置4aの近傍に存在する場合に受信する信号(補正値算出用信号)の電波強度を用いて補正値を算出できる。このため、ハンズフリー認証の際にユーザ携帯端末3aから受信する電波の電波強度を補正するための補正値として、適切な補正値を算出することができる。
【0074】
また、補正値算出用信号の電波強度を取得すると共に、取得された電波強度を用いて補正値を算出するので、認証装置4aにおいてユーザ携帯端末3aまでの距離を特定するための測距機能(測距部45)を省略できる。このため、認証装置4aの製造コストを抑えることができる。また、認証装置4aから送信される信号であるビーコンの受信信号強度に応じて補正値算出用信号の出力から始まる一連の補正値決定のための処理が実行されるので、ユーザ携帯端末3aと認証装置4aとの間の距離が概ね等しい状況下で、補正値決定のための処理を実行できる。したがって、複数のユーザ携帯端末3aのそれぞれの出力電波強度が異なることに起因して、ユーザ携帯端末3aと認証装置4aとの間の距離が互いに大きく異なる状況下で補正値決定のための処理が実行されてしまい、適切でない補正値が算出されてしまうことを、抑制できる。
【0075】
また、認証装置4aでは、ユーザ携帯端末3aが複数回無線送信する補正値算出用信号の電波強度をそれぞれ取得し、複数回取得された電波強度の統計値を算出し、かかる統計値を用いて補正値を算出するので、外乱を抑えて、補正値としてより適切な値を算出できる。外乱としては、例えば、ユーザがユーザ携帯端末3aを認証装置4aにかざす際の手の位置のぶれに起因するユーザ携帯端末3aと認証装置4aとの間の距離の変化や、ユーザ携帯端末3aとは異なる装置から出力される信号による影響や、ユーザ携帯端末3aから出力された信号であって、周囲の壁や床や障害物の表面などに反射して認証装置4aに入力する、いわゆるマルチパスの信号の影響などが該当する。
【0076】
また、「統計値」は、移動平均値であるので、比較的算出が容易な電波強度の移動平均値を用いて補正値を算出でき、補正値の算出の処理負荷を抑えることができる。
【0077】
また、開始条件は、操作画面F1において、一覧表示された認証装置のうちから補正値算出用信号の送信対象となる認証装置が選択されたことと、補正値算出用信号の無線送信が指示されたことと、を含み、操作画面F1において選択された認証装置に対して補正値算出用信号が無線送信されるので、ユーザが意図していない認証装置を対象として補正値を算出してしまうことを抑制できる。
【0078】
C.他の実施形態:
(C1)上記第1実施形態では、認証装置4は測距部45を有するものとしたが、有していなくてもよい。この構成では、取得工程において、携帯端末3までの実測距離については取得せず、携帯かざし行為時に、携帯端末3が送信する電波強度のみを取得する。また、マスタ距離とマスタ電波強度とが対応付けされたデータは、複数ではなく一つのデータを基準情報として有する。マスタ距離は、例えば、携帯かざし行為時の場合に予め推定される代表的な距離値(例えば6cm)に設定されており、当該マスタ距離と対応付けされたマスタ電波強度が一つ設定されていればよい。このマスタ電波強度と、携帯かざし行為によって取得された携帯端末3の電波強度とを用いて、上記第1実施形態と同様にして補正値を決定できる。この形態によれば、装置構成が容易になるとともに、記憶しておく基準情報が少なくてすむ。
【0079】
なお、携帯かざし行為時のマスタ電波強度のみを記憶する構成とし、このマスタ電波強度と、携帯かざし行為によって取得された携帯端末3の電波強度とを用いて、補正値を決定してもよい。携帯かざし行為における認証装置4と携帯端末3との距離は、個人差が生じるとはいえ、おおよそ数cm~20cm程度の範囲で特定できるので、厳密なマスタ距離と対応付けされたマスタ電波強度でなくてもよいためである。
【0080】
この形態では、認証装置4は、例えば、第一取得工程と、補正値決定工程と、第二取得工程と、特定工程と、を実行する。第一取得工程では、携帯端末3が認証装置4にかざされた状態における当該携帯端末3から受信する電波の電波強度を取得する。補正値決定工程では、マスタ電波強度と第一取得工程で取得された電波強度とを用いて、ハンズフリー認証の際に携帯端末3から受信する電波強度を補正するための補正値を算出し、記憶部44に補正値を保存する。第二取得工程では、認証装置4にかざされない状態、かつ、認証可能エリア内に存在する携帯端末3から受信する電波の電波強度を取得する。特定工程では、第二取得工程で取得された電波強度を補正値により補正した補正後電波強度を用いて、認証対象の携帯端末3を特定する。
【0081】
(C2)上記第1実施形態において、キャリブレーション情報を取得する工程は、ユーザ2による初回の入室の認証時に、携帯端末3が認証装置4にかざされる行為において実行されるものとしたが、入室の認証ルートではない他の場面において、予め、キャリブレーション情報の取得から補正値保存までを行ってもよい。
【0082】
(C3)上記第1実施形態および第2実施形態における入退室管理セキュリティシステム1、1aでは、規制手段としての扉5が一つである例を用いて説明したが、図示した扉5の奥のエリアとは別の他のセキュリティエリアへの移動を物理的に規制する規制手段に設けられる認証装置4、4aにおいて、携帯端末3、3aの補正値の情報を共有し、ハンズフリー認証を許可する構成としてもよい。
【0083】
具体的な運用としては、例えば、100人以上の従業員を有する会社の敷地内へ入る正門において、初回の携帯かざし認証を行い、このときに補正値を取得する。この補正値の情報は、中央管理装置等により統括管理し、会社の敷地内の各セキュリティエリアに設けられる複数の認証装置4、4aに共有される。そして、ユーザ2が正門通過後に、さらに歩き進んでユーザ2が所属する部署の建物や部屋へ入室する際に、共有された補正値を用いて各認証装置4、4aにおいてハンズフリー認証を可能とするようにしてもよい。この構成によれば、複数の認証装置4、4aのそれぞれにおいて、キャリブレーション情報を取得して補正値を決定するという手間を省略できる。
【0084】
(C4)上記第1実施形態および第2実施形態におけるハンズフリー認証は、手かざし操作がされた場合にハンズフリー認証が要求されたと判定していたが、手かざし操作はしなくてもよい。例えば、認証装置4、4aは、認証可能エリア内の携帯端末3、3aの電波強度を取得したら補正値を用いて補正し、複数の携帯端末3、3aのうち、最も補正後電波強度が高い携帯端末3、3aを認証対象の携帯端末3、3aと特定し、認証判定を実行してもよい。なお、補正後電波強度が、セキュリティ解除通信が行える電波強度の閾値を超えた場合に、認証判定を実行してもよい。また、手かざし操作ではなく、人感センサや画像を用いて、扉5近傍にユーザ2が存在することを検知した場合に、ハンズフリー認証が要求されたと判定してもよい。
【0085】
(C5)上記第1実施形態および第2実施形態において、補正値は、予め定められた期間を経過するごとに再度取得するようにしてもよい。例えば、期間は1日、1週間など適宜設定できる。このような補正値の更新は、上記したように複数または単一の認証装置4、4aを有するどちらのシステムにも、適用可能である。また、補正値の更新方法については種々の方法がある。例えば、取得の度に、前回の補正値はクリアして、最新の補正値に上書きしてもよいし、複数回の取得で得られた補正値の平均値を採用するようにしてもよい。
【0086】
このように、経時的に複数回にわたって補正値を算出して記録し直すことにより、仮にキャリブレーション情報を取得する際に外乱の影響を受けて補正値を算出するために最適な電波強度が取得できなかった場合でも、複数回の測定によりこうした誤差を解消して補正値の精度を向上させることができる。ひいては、精度良く認証対象を特定できる。
【0087】
(C6)上記第1実施形態および第2実施形態の入退室管理セキュリティシステム1、1aでは、ユーザ2は初回の認証時には携帯かざし認証を実行し、そのときに補正値を決定するものとしたが、同じ機種の携帯端末3、3aの補正値が既に決定されているものについては、既に決定された補正値を流用してハンズフリー認証を可能としてもよい。
【0088】
(C7)上記第1実施形態および第2実施形態では、マスタ電波強度から実測電波強度を差し引いた差分を補正値とし、補正値を電波強度に加算した値を補正後電波強度としたが、最終的に補正後電波強度が、マスタ電波強度とのずれを反映したものとなっていれば、補正値および補正後電波強度の演算手法は問わない。例えば、実測電波強度からマスタ電波強度を差し引いた差分を補正値とし、電波強度から補正値を減算して補正後電波強度としてもよい。または、マスタ電波強度に対する実測電波強度の割合から乗算率を算出し、乗算率を補正値とし、実測電波強度を乗算(例えば、携帯端末Aは0.8倍、携帯端末Bは1.1倍等)して、補正後電波強度を求めてもよい。
【0089】
(C8)上記第1実施形態および第2実施形態において、携帯端末3、3aとしては、スマートフォンに限らずともよく、例えばタブレット端末など、様々な形態のものを用いることができる。
【0090】
(C9)上記第1実施形態および第2実施形態において、携帯端末3、3aと認証装置4、4aとの間における無線通信は、BLE規格に準拠したものに限らず、様々な規格の無線通信を採用することができる。
【0091】
(C10)上記第1実施形態および第2実施形態の入退室管理セキュリティシステム1において、事前のアドバタイズ受信で、認証可能エリア内に入った携帯端末3、3aの補正値が決定されていないと分かった場合に、補正値が決定されていないため、ハンズフリー認証を許可できない旨を携帯端末3、3aの表示部35に表示してもよい。併せて、入室希望の際には、端末かざし操作を行うように催促する案内文を認証装置4、4aまたは携帯端末3、3aに表示してもよい。または、音声などによりユーザ2に通知してもよい。
【0092】
(C11)上記第1実施形態および第2実施形態において、決定された補正値は、認証装置4、4aの記憶部44に保存されるものとしたが、携帯端末3、
aの記憶部34に保存してもよい。例えば、運用において、家庭のようなユーザ数が比較的少ない場面において入退室管理セキュリティシステム1、1aが適用される場合には、保存しておく補正値の数も少なくてよいため、認証装置4、4aの記憶部44に保存する。他方、従業員数が1000人を超えるようなユーザ数が多い会社において入退室管理セキュリティシステム1が適用される場合には、ユーザ個々の補正値の数が膨大となるため、携帯端末3、3aの記憶部34に記憶することが好ましい。
【0093】
(C12)上記第1実施形態および第2実施形態において、認証装置4、4aにおける制御部41における各処理を、物理的に異なる中央管理システムで行ってもよい。例えば、認証判定部49や記憶部44は、中央管理サーバが持つようにしてもよい。この構成によれば、認証装置4、4aにおいて、手かざしや携帯かざしが行われるリーダーとしての操作部42は扉5に設けておく必要があり、「認証装置4、4aと携帯端末3、3aとの距離」は、「認証装置4、4aが有する操作部42と携帯端末3、3aとの距離」である。
【0094】
(C13)上記第1実施形態において、セキュリティエリアへの移動を物理的に規制する規制手段としては扉5としたが、開閉可能なバーなどその他の構造であってもよい。また、セキュリティエリアとの境界に特に規制手段を設けず、例えばガードマンのみを配置し、入室しようとしたユーザ2の認証判定がNGの場合には、ブザー音等で周知する、というような構成でもよい。
【0095】
(C14)第2実施形態において、「統計値」は、移動平均値であったが、本開示はこれに限定されない。例えば、補正値算出用信号の複数回の受信の際の電波強度の分布における中央値であってもよい。また、例えば、最大値や最小値など、補正値算出用信号の複数回の受信の際の電波強度の統計に基づき算出され得る任意の値を、「統計値」としてもよい。
【0096】
(C15)第2実施形態のS220において、補正値算出用信号の複数回の受信の際の電波強度の統計値に代えて、補正値算出用信号の1回または複数回の受信のうちの、単一の電波強度に基づき、補正値を算出してもよい。
【0097】
(C16)第2実施形態において、S410およびS415を省略してもよい。すなわち、送信候補認証装置の一覧表示、および操作画面F1における選択および送信指示(送信指示ボタンB1の押下)の有無を判定することを省略してもよい。かかる構成においても、ビーコンを受信する距離に1台の認証装置のみが存在する環境においては、第2実施形態と同様な効果を奏する。
【0098】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1,1a…入退室管理セキュリティシステム、2A,2B…ユーザ、3,3A,3B,3a…携帯端末、4,4a…認証装置、5…扉(規制手段)、22…通信部、31…制御部、32…操作部、33…通信部、34…記憶部、35…表示部、41…制御部、42…操作部、43…通信部、44…記憶部、45…測距部、46…取得部、47…補正値決定部、48…特定部、49…認証判定部、51…電気錠制御部(規制解除制御部)、52…ビーコン送出部、311…信号強度特定部、312…補正値算出用信号送信部