(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149415
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】洗車装置
(51)【国際特許分類】
B60S 3/06 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
B60S3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056660
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023063081
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐介
(72)【発明者】
【氏名】松村 義郎
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026AA03
3D026AA13
3D026AA19
3D026AA25
3D026AA34
3D026AA35
3D026AA40
3D026AA50
3D026AA59
3D026AA72
3D026AA76
(57)【要約】
【課題】非常停止後に効率的に洗浄処理可能な状態に戻ることができる洗車装置を提供する。
【解決手段】
門型に形成された本体部と、該本体部の動作を制御する制御部を備えた洗車装置であって、前記本体部は、走行手段と洗浄手段を有し、停止した車両の前後方向に移動しながら該車両を洗浄可能であり、前記制御部は、前記走行手段を制御する走行制御手段と、前記洗浄手段を制御する洗浄制御手段と、前記本体部の状態を監視する監視手段と、該本体部の洗浄動作を停止させる非常停止手段を有し、洗浄動作中に前記監視手段が異常を検出した場合に該洗浄動作を停止させ、その後、前記本体部を移動させて前記車両から離間させることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
門型に形成された本体部と、該本体部の動作を制御する制御部を備えた洗車装置であって、
前記本体部は、走行手段と洗浄手段を有し、停止した車両の前後方向に移動しながら該車両を洗浄可能であり、
前記制御部は、前記走行手段を制御する走行制御手段と、前記洗浄手段を制御する洗浄制御手段と、前記本体部の状態を監視する監視手段と、該本体部の洗浄動作を停止させる非常停止手段を有し、
洗浄動作中に前記監視手段が異常を検出した場合に該洗浄動作を停止させ、
その後、前記本体部を移動させて前記車両から離間させる
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項2】
前記本体部は、前記本体部の移動方向へ突出して設けられ、障害物との接触を検出する障害物検出手段を有し、
前記制御部は、洗浄動作中に前記障害物検出手段が障害物を検出した場合に該洗浄動作を停止させ、
その後前記本体部を移動させて前記車両から離間させる
ことを特徴とする請求項1に記載の洗車装置。
【請求項3】
前記制御部は、洗浄動作を停止させた後、所定の停止理由により前記洗浄動作を停止させた場合は前記本体部を移動させて前記車両から離間させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の洗車装置。
【請求項4】
前記本体部は、停止した前記車両を跨いで前後に往復移動しながら該車両を洗浄可能であり、
前記制御部は、前記洗浄動作を前記本体部の往移動の途中で停止させた場合、前記本体部を移動させて前記車両から離間させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の洗車装置。
【請求項5】
前記制御部は、洗浄動作を停止させたら前記洗浄手段を前記洗浄動作開始時の位置へ戻し、前記監視手段により前記洗浄手段の状態を監視し、前記洗浄手段に異常が発生していない場合に前記本体部を移動させて前記車両から離間させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の洗車装置。
【請求項6】
前記本体部は報知手段を有し、前記洗浄動作の停止後、前記本体部を移動させる場合と前記本体部を移動させない場合で異なる内容の指示を報知する
ことを特徴とする請求項3に記載の洗車装置。
【請求項7】
前記本体部は、表示部を有し、前記制御部は、前記洗浄動作の非常停止後、前記表示部に前記車両の洗浄処理を実行するかどうかを選択できる選択画面を表示することを特徴とする請求項1に記載の洗車装置。
【請求項8】
前記選択画面において洗浄処理を実行しないことが選択された場合、前記本体部は前記車両の後方へ移動することを特徴とする請求項7に記載の洗車装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記本体部を移動させて前記車両から離間させた後、所定の停止理由により前記洗浄動作を停止させた場合に前記車両に所定の停止位置へ車両を止め直すよう報知することを特徴とする請求項2に記載の洗車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄処理中に非常停止可能な洗車装置が知られている。例えば特許文献1には、障害物との接触により状態が切り替わるスイッチと、該スイッチの状態に基づき本体部の移動を停止させる制御手段を備えた洗車装置が記載されている。このような洗車装置は、本体部を走行路上で移動させながら車両を洗浄する。このような洗車装置は、洗浄処理中にスイッチの状態が切り替わると、本体部をその場で非常停止させて安全を図る。非常停止により、本体部による障害物の挟み込みなどが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本体部が走行路の途中に位置するときに非常停止したら、洗浄処理をやり直したり次の洗浄処理を開始したりするために本体部を洗浄処理開始前の位置へ動かす必要がある。本体部を洗浄処理開始前の位置へ動かすにあたっては、例えば人が本体部の操作パネルのもとへ行き、「本体部前進」「本体部後進」などのボタンを押して対処するといった方法が採られている。
【0005】
この際のボタンの操作者としては、通常、洗浄されていた車両の持ち主や洗車装置の管理者が想定されている。しかし、車両の持ち主は洗車装置の操作に慣れていなかったり、本体部が車両を跨ぐように非常停止しており車内から出られなかったりするため、操作パネルのボタンを押すことができない場合がある。同様に、洗車装置の管理者も、他の業務で手間取っていたり、そもそも洗車場にいなかったりするため、操作パネルのボタンを押すことができない場合がある。
【0006】
こうした事情から、従来の洗車装置は、非常停止後に本体部を洗浄処理開始前の位置へ戻すことができず、洗浄処理を再開できない場合がある。洗浄処理を再開できないと、洗車装置を利用しようとしていた者が利用を諦めてしまうこともあり、売上の損失は大きい。
【0007】
本発明の一目的は、非常停止後に効率的に洗浄処理可能な状態に戻ることができる洗車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一解決手段に係る洗車装置は、門型に形成された本体部と、該本体部の動作を制御する制御部を備えた洗車装置であって、前記本体部は、走行手段と洗浄手段を有し、停止した車両の前後方向に移動しながら該車両を洗浄可能であり、前記制御部は、前記走行手段を制御する走行制御手段と、前記洗浄手段を制御する洗浄制御手段と、前記本体部の状態を監視する監視手段と、該本体部の洗浄動作を停止させる非常停止手段を有し、洗浄動作中に前記監視手段が異常を検出した場合に該洗浄動作を停止させ、その後、前記本体部を移動させて前記車両から離間させることを一特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一解決手段によれば、非常停止後に効率的に洗浄処理可能な状態に戻ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る洗車装置10の概念的な正面図である。
【
図2】
図1に示す洗車装置10の概念的な側面図である。
【
図3】
図1に示す洗車装置10の制御系を示す構成図である。
【
図4】
図1に示す洗車装置10の洗浄処理の流れの一例を示すフロー図である。
【
図5】
図1に示す洗車装置10の非常停止時の動作の一例を示すフロー図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る洗車装置10Aの概念的な正面図である。
【
図7】
図6に示す洗車装置10Aの制御系を示す構成図である。
【
図8】非常停止時における本体部11と車両Cの位置関係の一例を示す図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る洗車装置10Bの非常停止時の動作の流れの一例を示すフロー図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る洗車装置10Dの正面図である。
【
図11】
図10に示す洗車装置10Dの非常停止時の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらは互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0012】
(第一実施形態)
図面をもとに本発明の一実施形態について説明する。
図1は洗車装置10の正面図、
図2は洗車装置10の側面図である。
【0013】
洗車装置10は、地面Gに起立して設けられた本体部11を備えている。本体部11は、車両Cに対して洗浄処理を行うことができる。本体部11は、処理対象となる車両Cを跨ぐことができるよう門型に構成されている。このため、本体部11は、地面Gから起立する脚部12および脚部13と、この脚部12および脚部13にかかる梁部14を備えている。
【0014】
洗車装置10は、レール15と、レール16と、車輪17を備えている。レール15とレール16は、互いが平行となるように地面Gに敷設されている。車輪17は、脚部12および脚部13の底部に設けられている。本体部11は、レール15とレール16の間に車両Cが停車した状態で、車輪17を介してレール15およびレール16上を前後に移動(往復移動)することができる。
【0015】
洗車装置10は、スイッチ18と、ドック19およびドック20を備えている。スイッチ18は脚部12の底部に設けられている。ドック19およびドック20はレール15に設けられている。スイッチ18は本体部11の移動によりドック19およびドック20とスイッチングし、本体部11の移動限界を検出する。このため、本体部11は、停車した車両Cを跨いで車長方向に通過するようにドック19およびドック20の間で移動することができる。
【0016】
洗車装置10は、モータ21とエンコーダ22を備えている。モータ21は脚部12および脚部13に設けられており、車輪17と接続されている。モータ21は正逆転可能に構成されており、接続された車輪17を介して本体部11を前後に移動させる。エンコーダ22はいずれかのモータ21の出力軸に連結されている。エンコーダ22は、モータ21の回転方向を検出しながら単位角度回転ごとにパルス信号を出力する。
【0017】
洗車装置10は、車両Cを洗浄する手段としてトップブラシ30と一対のサイドブラシ31を備えている。トップブラシ30は脚部12および脚部13に回転可能に軸支されて設けられている。トップブラシ30は本体部11の移動に伴い回転しながら上下に昇降し、主に車両Cの上面をブラッシングすることができる。一対のサイドブラシ31は梁部14に回転可能に軸支されて設けられている。サイドブラシ31は本体部11の移動に伴い回転しながら開閉動作(互いが近づいたり離れたりする動作)し、主に車両Cの前面、側面、および後面をブラッシングすることができる。トップブラシ30の回転駆動や昇降駆動には例えばモータを用いることができる。同様に、サイドブラシ31の回転駆動や開閉駆動には例えばモータを用いることができる。
【0018】
洗車装置10は、車両Cを洗浄する手段としてトップスプレー32およびサイドスプレー33を備えている。トップスプレー32は梁部14に設けられている。トップスプレー32は複数のノズルから水や洗剤などの洗浄液を噴射し、本体部11の移動に伴い主に車両Cの上面を洗浄することができる。サイドスプレー33は脚部12および脚部13に設けられている。サイドスプレー33は複数のノズルから水や洗剤などの洗浄液を噴射し、本体部11の移動に伴い主に車両Cの側面を洗浄することができる。
【0019】
洗車装置10は、車両Cを洗浄する手段としてトップノズル34(ブロワノズル)およびサイドノズル35(ブロワノズル)を備えている。トップノズル34は、脚部12および脚部13に揺動可能に軸支されて設けられている。トップノズル34は、本体部11の移動に伴い上下に昇降し、主に車両Cの上面を乾燥することができる。サイドノズル35は、脚部12および脚部13に設けられている。サイドノズル35は、本体部11の移動に伴い主に車両Cの側面を乾燥することができる。トップノズル34の昇降動作には例えばモータを用いることができる。
【0020】
洗車装置10は、車両Cの形状を検出する手段として光電センサ36を備えている。光電センサ36は、複数の発光素子を有する発光部37と、複数の受光素子を有する受光部38を備えている。発光部37は脚部12に、受光部38は脚部13に設けられている。発光部37が有する複数の発光素子からの投光により、発光部37と受光部38の間には複数本の光軸が形成される。車両Cの形状は各光軸の通光・遮光状態に基づき検出される。
【0021】
洗車装置10は、車両Cの有無を検出する手段として光電センサ39を備えている。光電センサ39は発光素子を有する発光部40と受光素子を有する受光部41からなり、レール15とレール16の間に設けられている。発光部40が有する発光素子からの投光により、発光部40と受光部41の間には光軸が形成される。車両Cの有無はこの光軸の通光・遮光状態に基づき検出される。
【0022】
本体部11はスイッチ18がドック19とスイッチングする位置において洗車処理開始を待機する。以下の説明において、この位置を本体部11の待機位置とする。本体部11が待機位置で洗車処理開始を待機している間、車両Cを洗浄するための各手段はそれぞれの待機位置で保持される。例えばトップブラシ30とトップノズル34は梁部14に収容された状態で洗車処理開始を待機する。サイドブラシ31とサイドノズル35は脚部12と脚部13に収容された状態で洗車処理開始を待機する。反射式の光電センサなどを用いて各洗浄手段が待機位置にあるかどうかを検出可能としてもよい。
【0023】
洗車装置10は制御部50を備えている。
図3は制御部50を含む洗車装置10のシステム構成図である。制御部50はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、外部メモリなどのストレージ手段を備えている。制御部50は、任意の通信路を介して本体部11の走行や洗浄処理に係る各部と通信可能に接続されている。制御部50はストレージ手段に格納されたプログラムを実行することにより、本体部11の動作を統括的に制御することができる。
【0024】
制御部50は走行位置検出手段51と走行制御手段52を有している。走行位置検出手段51はエンコーダ22のパルス信号から本体部11の走行位置を検出することができる。走行制御手段52はプログラムされたシーケンスに従いモータ21の動作を制御し、本体部11を走行させたり本体部11の走行を停止させたりすることができる。
【0025】
制御部50は車形検出手段53と車形データ作成手段54を有している。車形検出手段53はエンコーダ22のパルス信号をトリガに光電センサ36を駆動して、車両Cの高さ位置を検出することができる。車形データ作成手段54は走行位置検出手段51と車形検出手段53の検出結果から、車両Cの側方からの形状のデータ(車形データ)を作成することができる。
【0026】
制御部50は洗浄制御手段55を有している。洗浄制御手段55はプログラムされたシーケンスに従い車両Cの洗浄に係る各部を制御し、車両Cの洗浄処理を実行することができる。車両Cの洗浄に係る各部は車形データ作成手段54で作成した車形データに基づき制御される。例えばトップブラシ30は車両Cの上面輪郭に沿うように洗浄制御手段55に昇降制御される。
【0027】
制御部50は監視手段56を有している。監視手段56は監視対象とした各部の状態を監視することができる。監視手段56の監視対象は、洗車装置10の仕様や運用形態などに合わせて適宜設定するとよい。例えば光電センサ39を監視対象として、洗浄処理中に光電センサ39が通光状態であるか遮光状態であるかを監視してもよい。そのほか、例えばトップブラシ30を監視対象として、洗浄処理の開始時にトップブラシ30が待機位置にあるかどうかを監視してもよい。トップブラシ30を車両Cの上面輪郭に沿って駆動している間のトップブラシ30のモータの電流値を監視してもよい。なお、監視手段56は監視対象ごとに個別に設けてもよい。
【0028】
制御部50は非常停止手段57を有している。非常停止手段57は、監視手段56の監視結果が所定の条件を満たしたとき、走行制御手段52と洗浄制御手段55に停止信号を送り、本体部11の走行と洗浄動作を停止させる。
【0029】
非常停止手段57による停止信号の送信に係る条件は、洗車装置10の仕様や運用形態などに合わせて適宜設定するとよい。例えば洗浄処理中に光電センサ39が通光状態であるか遮光状態であるかを監視手段56で監視し、通光状態となった場合に走行制御手段52と洗浄制御手段55に停止信号を送ってもよい。洗浄処理中に光電センサ39が遮光状態から通光状態となった場合、車両Cが前後に動いたと考えられる。洗浄処理中に車両Cが動くと、車形データ上の車両Cの位置と実際の車両Cの位置にずれが生じ、車両Cの形状に沿って洗浄することが困難となる。そのため、洗浄処理中に光電センサ39が通光状態となったら本体部11の走行と洗浄動作を停止させるとよい。
【0030】
同様に、例えば洗浄処理中のトップブラシ30のモータの電流値を監視手段56で監視し、所定の値以上となった場合に走行制御手段52と洗浄制御手段55に停止信号を送ってもよい。トップブラシ30のモータの電流値が異常に高い値を示している場合、例えばトップブラシ30の毛が車両Cに絡まり、トップブラシ30の駆動の負荷になっていると考えられる。そのまま洗浄処理を続けるとトップブラシ30の毛が引きちぎれるおそれがあるため、洗浄処理中にトップブラシ30のモータの電流値が所定値以上となったら本体部11の走行と洗浄動作を停止させるとよい。
【0031】
このようにして、監視手段56の監視対象と非常停止手段57の停止信号送信に係る条件は洗車装置10が有する手段や機能に基づき適宜設定するとよい。監視手段56の監視対象と非常停止手段57の停止信号送信に係る条件は例示したものに限られない。例えば監視手段56は制御部50と接続された各部の通信の応答結果を監視対象としてもよい。制御部50から送信された信号に対していずれかの箇所が所定時間内に応答しない場合、その箇所で機器異常が生じているものとして本体部11の走行と洗浄動作を停止させてもよい。このほか、例えばトップスプレー32やサイドスプレー33に送られる水の水圧を監視対象としてもよい。水圧が所定値以下の場合、水が車両Cに噴射されないおそれがあるため、本体部11の走行と洗浄動作を停止させてもよい。
【0032】
制御部50は音声案内手段58を有している。音声案内手段58はプログラムされたシーケンスに従い本体部11のスピーカ(不図示)に音声信号を送信することができる。送信された音声信号はスピーカから音声案内として出力される。音声信号の内容としては洗浄処理の手順の説明や注意事項などを設定するとよい。
【0033】
このように構成される洗車装置10の洗浄処理について説明する。
図4は洗車装置10の洗浄処理の流れの一例を示すフロー図である。
【0034】
本体部11は、スイッチ18がドック19とスイッチングする位置において洗車処理開始を待機する。車両Cがレール15とレール16の間に進入し、光電センサ39が車両Cのタイヤで遮られて遮光状態となったら、制御部50の制御により洗浄処理を開始する[1]。
【0035】
まず、洗車装置10は、第1工程として本体部11を前方に移動(往行走行)させながら光電センサ36により車両Cの形状を検出しつつ[2]、トップスプレー32およびサイドスプレー33から水と洗剤を散布する[3]。さらに光電センサ36で求められた車両Cの形状に合わせ、トップブラシ30やサイドブラシ31を用いて車両Cの表面をブラッシング洗浄する[4]。スイッチ18がドック20とスイッチングしたら本体部11は第1工程を終了する。
【0036】
次いで、洗車装置10は、第2工程として本体部11を後方に移動(復行走行)させながらトップスプレー32およびサイドスプレー33から車両Cに水を散布し、車両Cの汚れや洗剤を流し落とす[5]。スイッチ18がドック19とスイッチングしたら本体部11は第2工程を終了する。
【0037】
最後に、洗車装置10は、第3工程として、本体部11を前方に移動(往行走行)させながらトップノズル34およびサイドノズル35を用いて車両Cに送風し、水滴を除去して乾燥を図る[6]。スイッチ18がドック20とスイッチングしたら本体部11は第3工程を終了する。その後、音声などにより車両Cを退出させるよう案内し、洗浄処理終了とする。
【0038】
車両Cを退出させるよう案内を受けた車両Cの運転手は、車両Cを前進させてレール15とレール16の間から退出させる。車両Cの退出後、本体部11は待機位置へ移動する。洗車装置10の洗浄処理は以上で終了となる。
【0039】
洗車装置10の洗浄処理は非常停止手段57の制御により途中で停止され得る。
図8は前記した洗浄処理の流れの一例における第一工程(より具体的には、
図4のフロー図における[2]の段階)で非常停止した場合の、本体部11と車両Cの位置関係を示す図である。このように洗浄処理を途中で停止したら、本体部11を自動で待機位置へ移動させるとよい。非常停止後、車両Cの持ち主や洗車装置10の管理者の操作に依らず、本体部11を自動で待機位置へ移動させることにより、効率よく洗浄処理をやり直したり、次の洗浄処理を開始したりすることができる。また、車両Cと本体部11が離間することで、車両Cの運転手が車内から出られるようになる。洗浄処理が非常停止する場合の洗車装置10の動作の一例について、
図5のフロー図をもとに説明する。なお、本実施形態においては、洗浄処理中の光電センサ39の通光・遮光の切り替わりを非常停止の原因として採用する。
【0040】
本体部11は、スイッチ18がドック19とスイッチングする位置において洗車処理開始を待機する。車両Cがレール15とレール16の間に進入し、光電センサ39が車両Cのタイヤで遮られて遮光状態となったら、制御部50の制御により洗浄処理を開始する。洗浄処理の開始に伴い、監視手段56も監視対象の各部の監視を開始する[7]。
【0041】
洗車装置10は、第1工程として本体部11を前方に移動(往行走行)させながら光電センサ36により車両Cの形状を検出しつつ、トップスプレー32およびサイドスプレー33から水と洗剤を散布する。車両Cの形状を検出しているとき、車両Cの運転手が誤って車両Cを前進させてしまったものとする。この場合、監視手段56は光電センサ39の通光を検出する[8]。洗浄処理中に光電センサ39が通光状態となったため、非常停止手段57は走行制御手段52と洗浄制御手段55に停止信号を送り、本体部11の走行と洗浄動作を停止させる[9]。その後、ブラシなどの洗浄手段を待機位置へ戻す[10]。
【0042】
洗浄動作を停止させ、各種の洗浄手段を待機位置へ戻したら、本体部11が移動する旨を音声で報知する[11]。その後、本体部11を待機位置まで走行させる[12]。スイッチ18がドック19とスイッチングしたら本体部11の走行を停止させる[13]。以上で洗浄処理が非常停止した場合の処理は終了となる。
【0043】
このようにして、洗浄処理を途中で停止したら、本体部11を自動で待機位置へ移動させるとよい。非常停止後に本体部11を自動で待機位置へ移動させることにより、従来の洗車装置の課題であった、誰も洗車装置を洗浄処理開始前の状態に戻すことができないといった事態を防ぐことができる。これにより、効率よく洗浄処理をやり直したり、次の洗浄処理を開始したりすることができる。例えば洗車装置10の管理者が本体部11の操作のために呼び出されることがないため、洗車装置10の管理者は無人で洗車装置10を運用することもできる。
【0044】
洗浄処理の非常停止により、トップブラシ30やサイドブラシ31、トップノズル34やサイドノズル35など各種の洗浄手段が待機位置にない状態で停止することが考えられる。例えばサイドブラシ31が車両Cに近接したまま洗浄処理が停止することが考えられる。この状態で本体部11を待機位置へ戻すと、車両Cとサイドブラシ31などの洗浄手段が衝突するおそれがある。そこで、本体部11を自動で待機位置に戻す前に、まず各種の洗浄手段を待機位置に戻すとよい。
【0045】
各種の洗浄手段を待機位置に戻した後、各種の洗浄手段が実際に待機位置にあると検出されてから本体部11を自動で待機位置に移動させるようにしてもよい。例えば各種の洗浄手段の待機位置に物体を検出可能なセンサを設け、そのセンサの状態を監視手段56で監視可能としてもよい。センサが物体を検出している状態にある場合、各種の洗浄手段が実際に待機位置にあるとして、本体部11を自動で待機位置に移動させるようにしてもよい。
【0046】
(第二実施形態)
車両Cや障害物との接触を検出する手段を本体部11に設け、車両Cや障害物と本体部11の接触が検出されたときに本体部11の走行と洗浄処理を非常停止可能としてもよい。
図6はそのような障害物検出手段70を備えた洗車装置10Aの正面図である。
【0047】
洗車装置10Aは、本体部11Aを備えている。本体部11Aは障害物検出手段70を備えている。障害物検出手段70は棒状体71と支持部72を備えている。支持部72は前後揺動自在に本体部11Aに設けられており、棒状体71の両端から棒状体71を支持している。また、支持部72は変位に伴い動作するスイッチを備えており、制御部50Aと接続されている。支持部72は変位に伴いスイッチが動作すると、制御部50Aに信号を送る。
【0048】
洗車装置10Aは制御部50Aを備えている。
図7は制御部50Aを含む洗車装置10Aのシステム構成図である。制御部50Aは非常停止手段57Aを備えている。非常停止手段57Aは、障害物検出手段70から信号を受信したとき、走行制御手段52と洗浄制御手段55に停止信号を送り、本体部11Aの走行と洗浄動作を停止させる。
【0049】
障害物検出手段70は検出したい障害物に応じてその形状や取り付け位置を適宜設定するとよい。例えば車両Cのドアミラーを検出したい場合には、
図6に示すように脚部12と脚部13に障害物検出手段70を設けるとよい。車両Cがレール15とレール16の間でどちらかのレール側に偏って停止している場合、本体部11の走行に伴いドアミラーが本体部11と接触してしまう事態が想定される。そこで、障害物検出手段70でドアミラーを検出可能とするとよい。本体部11の待機位置をドック19側として、洗浄処理の第1工程で本体部11を前進させる場合、本体部11より先に棒状体71がドアミラーに触れるよう、障害物検出手段70は本体部11の進行方向へ突出させて設けるとよい。障害物検出手段70はドアミラーとの接触により本体部11側に押し込まれ、ドアミラーを破損することなく接触を検出することができる。
【0050】
障害物検出手段70がドアミラーと接触し、非常停止手段57Aが本体部11Aの走行と洗浄動作を非常停止させたら、本体部11Aを自動で待機位置に戻し、車両Cの運転手に左右の偏りを修正するよう音声で案内するとよい。こうした処理を行うことにより、非常停止後に効率よく洗浄処理をやり直すことができる。
【0051】
障害物検出手段70が本体部11Aの前方(ドック20側)に設けられており、本体部11Aに先行して車両Cと接触する構成であれば、その後に本体部11Aがドック19側へ自動で戻る際、本体部11Aと車両Cが接触するおそれがない(なお、車両Cは停止した状態のままであるものとする)。そのため、例えば障害物検出手段70を本体部11Aの前方に設ける場合、本体部11Aが前進する処理工程においては、非常停止後に本体部11Aを自動で待機位置に戻すとよい。本体部11Aが待機位置に戻る際に車両Cと接触するおそれがなく、非常停止後に効率よくかつより安全に洗浄処理をやり直すことができる。
【0052】
このようにして、障害物検出手段70の取り付け位置に鑑みて、本体部11Aと車両Cが所定の位置関係にあるときにのみ本体部11Aを待機位置へ自動で移動させる処理を行ってもよい。すなわち、洗浄処理の所定の段階でのみ本体部11Aを待機位置へ自動で戻してもよい。例えば第一実施形態において説明した洗浄処理の流れでは、本体部11Aは第1工程と第3工程においてドック20側へ走行する。障害物検出手段70を本体部11Aの前方に設ければ、第1工程と第3工程においては本体部11Aより先に障害物検出手段70が車両Cと接触する位置関係となる。そこで、第1工程と第3工程でのみ非常停止後に本体部11Aを自動で待機位置に戻す処理を行ってもよい。本体部11Aが待機位置に戻る際に車両Cと接触するおそれがなく、非常停止後に効率よくかつより安全に洗浄処理をやり直すことができる。
【0053】
障害物検出手段70の取り付け位置は前記した例に限定されるものではない。障害物検出手段70は例えば本体部11Aの後方に設置してもよい。後方に設置された障害物検出手段70は、非常停止後に本体部11Aが待機位置へ自動で戻る際、本体部11Aの進路上にある障害物を検出することができる。
【0054】
例えば本体部11Aの前後に障害物検出手段70を取り付ける場合、前側の障害物検出手段70が障害物を検出して非常停止したときのみ本体部11Aを待機位置へ自動で移動させるようにしてもよい。後ろ側の障害物検出手段70が障害物検出を検出した場合、その障害物は本体部11Aがドック19へ移動する進路上にあることが想定される。そのため、後ろ側の障害物検出手段70が障害物を検出した場合には走行を停止し、本体部11Aを他の手段(例えば管理者による手動操作)で移動させるよう報知してもよい。このようにして、特定の非常停止理由で停止した場合にのみ本体部11Aを自動で待機位置に移動させてもよい。これにより、非常停止後に効率よくかつより安全に洗浄処理をやり直すことができる。
【0055】
本実施形態における障害物検出手段70は、人為的に本体部11A側へ押し込むことで、非常時の本体部11Aの停止手段としても機能する。そこで、人為的に障害物検出手段70が操作された可能性が高い状況では、非常停止後に本体部11Aを待機位置へ自動で走行させないようにしてもよい。これにより、非常停止が必要な多様な状況に対応しつつ、効率よく洗浄処理をやり直すことができる。
【0056】
例えば本体部11Aの前後に障害物検出手段70が取り付けられている場合、本体部11Aが前進している際に後ろ側の障害物検出手段70が車両Cと接触することは、自動車の一般的な形状などから考えにくい。この場合、本体部11Aの周囲の何者かが何らかの事情で後ろ側の障害物検出手段70を操作し、本体部11Aを停止させたと考えられる。こうした状況では、非常停止後に本体部11Aを待機位置へ自動で走行させないようにするとよい。これにより、非常停止後に効率よくかつより安全に洗浄処理をやり直すことができる。
【0057】
(第三実施形態)
非常停止に伴い自動で本体部11を待機位置に移動させたのち、自動で洗浄処理を最初の工程から始めてもよい。これにより、非常停止後に効率よく洗浄処理をやり直すことができる。そのような処理を行う洗車装置10Bの動作について説明する。
図9は洗車装置10Bの非常停止時の動作の一例を示すフロー図である。
【0058】
本体部11は、スイッチ18がドック19とスイッチングする位置において洗車処理開始を待機する。車両Cがレール15とレール16の間に進入し、光電センサ39が車両Cのタイヤで遮られて遮光状態となったら、洗浄処理を開始する。洗浄処理の開始に伴い、監視手段56も監視対象の各部の監視を開始する[14]。
【0059】
洗浄処理の最中に監視手段56が何らかの異常を検出した場合[15]、洗車装置10Bは洗浄処理を非常停止し[16]、ブラシなどの洗浄手段を待機位置へ戻す[17]。なお、異常が検出されなかった場合、洗車装置10Bは洗浄処理を非常停止することなく実行し、洗車完了とする。
【0060】
ブラシなどの洗浄手段を待機位置へ戻したら、洗車装置10Bは、監視手段56が検出した異常の内容に基づき、自動で待機位置に戻るかどうかを判断する[18]。例えば監視手段56の各監視対象につき、異常が発生した際に本体部11を待機位置に戻すかどうかを予め決めておくと良い。待機位置に戻る場合、本体部11が動き出す旨を周囲に報知し[19]、本体部11を待機位置に戻す[20]。なお、自動で待機位置に戻らない異常内容であった場合は、例えば所定の連絡先に連絡するよう報知し、洗浄処理終了としてもよい。
【0061】
本体部11を待機位置に戻したら、その非常停止が1回目であったかどうかを判定する[21]。1回目であった場合、再び洗浄処理をスタートする[22]。例えば洗浄処理中に車両Cの運転手が車両Cを不注意で動かしてしまった場合など、1回は非常停止したが、立て続けには洗浄処理が非常停止しない場合が考えられる。そこで、非常停止が1回目であった場合には、洗浄処理を自動でやりなおすとよい。
【0062】
障害物検出手段70が車両Cや障害物を検出して非常停止した場合には、障害物を動かしたり、車両Cの停車位置を調整させたりすることにより非常停止の原因を取り除くことができる。そこで、1回目の異常内容に基づき車両Cの運転手や本体部11の周囲に必要な報知を行ってもよい。
【0063】
非常停止が2回目以降であった場合には、例えば車両Cが洗浄可能な大きさを超えている場合など、洗浄処理が不可能である場合が考えられる。この場合には洗浄処理を中止し、例えば所定の連絡先に電話するよう車両Cの運転手に報知してもよい。
【0064】
(第四実施形態)
第三実施形態においては、非常停止に伴い本体部11を待機位置に移動させたのち、自動で洗浄処理を最初の工程から始める場合について説明したが、洗浄処理を再び始めるかどうかを車両Cの運転者が選択できるようにしてもよい。そのように構成された洗車装置10Dについて図面をもとに説明する。
【0065】
図10は洗車装置10Dの正面図である。洗車装置10Dは本体部11Dを備えている。本体部11Dは表示部90を備えている。表示部90は制御部50と接続されており、制御部50の制御により、例えば洗浄処理の非常停止時に洗車装置10Dの利用者に指示を出すことができる。表示部90は液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの画像出力手段を備えていてもよい。表示部90はスピーカなどの音声出力手段を備えていてもよい。表示部90は、ボタンやタッチパネルなどの入力手段を備えていてもよい。また、表示部90の取り付け位置や数は特に限定されるものではない。表示部90は本体部11Dと別個に設けられていてもよい。
【0066】
洗車装置10Dの非常停止時の動作について説明する。
図11は洗車装置10Dの非常停止時の動作の一例を示すフロー図である。
【0067】
洗浄処理の最中に監視手段56が何らかの異常を検出した場合、洗車装置10Dは洗浄処理を非常停止し、トップブラシ30やサイドブラシ31などの洗浄手段を待機位置へ戻す[30]。そして、本体部11Dを待機位置に戻す[31]。なお、監視手段56が検出した異常の種類によっては本体部11Dを待機位置に戻さず洗浄処理終了としてもよい。
【0068】
本体部11Dが待機位置に戻ったら、洗車装置10Dは、洗浄処理を再開可能か判定する[32]。例えば非常停止が洗浄処理の開始後1度目であれば、洗浄処理を再開可能と判定してもよい。監視手段56が検出した異常の種類に応じて洗浄処理再開可能または不可能と判定してもよい。洗浄処理再開可能と判定した場合、洗車装置10Dは、表示部90に再洗車希望有無の選択画面を表示する[33]。車両Cの運転者は表示部90を操作して、洗浄処理を再開するかどうかを入力する。
【0069】
洗浄処理再開が選択された場合[34]、洗車装置10Dは洗浄処理を再開する。洗浄処理再開にあたり、洗車装置10Dは、監視手段56が検出した異常が車両Cの停止位置に関連する異常であったかを判定してもよい[35]。車両Cの停止位置に関連する異常としては、例えば障害物検出装置70が何らかの物体を検出したことを含むことができる。例えば本体部11Dが待機位置から走行している際に、本体部11Dに設けられた障害物検出装置70が物体を検出した場合、車両Cが適正位置で停止していないために障害物検出装置70と接触したと考えられる。そのため、障害物検出装置70が何らかの物体を検出したことを車両Cの停止位置に関連する異常としてもよい。
【0070】
監視手段56が検出した異常が車両Cの停止位置に関連する異常であった場合、洗車装置10Dは車両Cの運転者に適正な停止位置へ車両Cを止めなおすよう案内する[36]。この案内は、例えば表示部90への表示や、音声などにより行うことができる。光電センサ39が通光状態から遮光状態となり、車両Cの再入車が確認されたら[37]、洗車装置10Dは洗浄処理を再開してもよい。監視手段56が検出した異常が車両Cの停止位置に関連する異常でなかった場合には[35]、停止位置是正の案内をせず洗浄処理を再開してもよい。
【0071】
車両Cが適正位置に停止していない状況で洗浄処理を再開した場合、再び非常停止することが予想される。洗車装置10Dは、車両Cが適正位置に停止していないことに起因する異常の発生時、車両Cの運転者に車両Cを止めなおすよう案内するため、非常停止後に効率よく洗浄処理をやり直すことができる。
【0072】
なお、再洗車時には、非常停止前に実行予定であった工程と異なる工程を実行してもよい。再洗車実行前や再入車前後などにおいて、例えば表示部90を車両Cの運転者に操作させ、洗浄処理の内容や車両Cが有する装備品などの情報を入力させてもよい。再洗車時には、入力された情報をもとに非常停止前に実行予定であった工程と異なる工程を実行してもよい。
【0073】
洗車装置10Dが洗浄処理を再開不可能と判定した場合[32]や、車両Cの運転者が洗浄処理の再開を希望しなかった場合[34]には、洗浄処理を再開せず終了する。洗浄処理終了にあたって、車両Cを退出させることができ、かつ車両Cの運転手がそれを望む場合には、車両C退出のための案内をしてもよい。
【0074】
洗車装置10Dは、洗浄処理再開を不可能と判定した場合[32]や、車両Cの運転者が洗浄処理の再開を希望しなかった場合[34]には、表示部90に退出希望有無の選択画面を表示する[38]。車両Cの運転者が退出を希望した場合[39]、洗車装置10Dは車両Cを本体部11Dから退出させるよう運転者に案内し[40]、洗浄処理終了とする。車両Cを移動させることに問題があると判定した場合や車両Cの運転者が退出を希望しなかった場合には、退出の案内をせず洗浄処理を終了してもよい。退出の案内をせず洗浄処理終了とした場合には、車両Cが本体部11D内で停止していることを洗車装置10Dの管理者に報知してもよい。
【0075】
このようにして、洗車装置10Dは、非常停止後に本体部11Dを待機位置に戻すため、車両Cを退出させやすい。本体部11Dが待機位置(車両Cの前方)にあるため、運転者は本体部11Dとの干渉を気にせずに車両Cを後退させ、退出することができる。非常停止後に洗浄処理の再開を望まない利用者を効率よく退出させることで、他の利用者の洗浄処理を素早く始めることもできる。
【0076】
洗車装置10Dは非常停止後にトップブラシ30などの洗浄手段を待機位置に戻すため、本体部11Dを通過させて車両Cを退出させることも可能である。車両Cを本体部11Dの後方に退出させる場合、本体部11Dをドック20側へ走行させ、本体部11Dが車両Cを通過してから退出の案内をしてもよい。このような処理を非常停止に係る異常の種類に応じて行ってもよい。このようにして、非常停止後に洗浄処理の再開を望まない利用者を効率よく退出させることで、他の利用者の洗浄処理を素早く始めることもできる。
【0077】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0078】
例えば非常停止時の本体部11の走行位置によっては、ドック19側ではなくドック20側へ本体部11を移動させてもよい。非常停止時、洗浄処理のどの工程において停止したかを参照し、その工程における本体部11の初期位置へ本体部11を移動させてもよい。
【0079】
例えば第一実施形態で説明した洗浄処理の第2工程(
図4における[5])においては、本体部11はドック20側から洗浄処理を開始する。第2工程で非常停止した場合には、スイッチ18がドック20とスイッチングする位置まで本体部11を移動させるようにしてもよい。非常停止後に本体部11をドック20側へ移動すると、車両Cが前進で洗車装置10から退出しやすくなる。非常停止なく洗浄処理を終了した際、車両Cを前進で洗車装置10から退出させる動線設計としている場合には、非常停止時も車両Cが通常と同様に退出しやすいよう、本体部11を車両Cの後方へ移動させるとよい。非常停止により生じる車両Cの運転手の戸惑いや動揺を軽減することができる。
【0080】
このようにして非常停止後に車両Cにスムーズに退出させることにより、洗車装置10をより効率的に洗浄処理可能な状態に戻すことができる。非常停止した際には、停止時の本体部11の位置に基づき、ドック19とドック20のうちより近い方へ本体部11を移動させてもよい。
【0081】
車両Cの運転手や本体部11の周囲の人々への報知手段として音声を用いた場合について説明したが、他の手段を用いてもよい。例えば本体部11の周囲に電子看板を設け、その表示により注意喚起や指示などを行ってもよい。音声案内と他の手法を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
非常停止後、車両Cの運転者の希望により再び洗浄処理を実行する場合に、非常停止前に実行予定であった工程と異なる工程を実行してもよい。例えば、洗浄処理の再実行に伴い洗浄処理全体にかかる時間が増加することを鑑みて、非常停止後にはより簡素な洗浄処理工程を実行してもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 洗車装置
11 本体部
15 レール
16 レール
17 車輪
21 モータ
22 エンコーダ
30 トップブラシ
31 サイドブラシ
32 トップスプレー
33 サイドスプレー
34 トップノズル
35 サイドノズル
50 制御部
51 走行位置検出手段
52 走行制御手段
55 洗浄制御手段
56 監視手段
57 非常停止手段