IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149416
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241010BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241010BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241010BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20241010BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241010BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01L29/78 658Z
H01L29/78 655A
H01L29/78 657D
H01L29/78 652J
H01L29/78 653A
H01L29/91 C
H01L29/78 652M
H01L29/78 658H
H01L29/91 J
H01L29/78 652T
H01L29/91 F
H01L27/06 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058486
(22)【出願日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2023062415
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】野路 典昭
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】北原 和弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 達也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】林田 隼弥
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AC10
5F048BA11
5F048BB05
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC12
5F048BD07
5F048BF06
(57)【要約】
【課題】凸欠陥を凹欠陥に変えることで、不良率を低減させることができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体基板にMOS構造を含む表面構造を形成し、表面構造を覆う層間絶縁膜を形成し、表面構造に接し、層間絶縁膜の表面全体を覆うAl合金膜を成膜し、Al合金膜の表面を覆うレジスト膜を成膜し、レジスト膜をマスクとして、Al合金膜をパターニングし、レジスト膜を除去する。レジスト膜は、Al合金膜の凸欠陥を一部露出する膜厚で成膜する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板にMOS構造を含む表面構造を形成する第1工程と、
前記表面構造を覆う層間絶縁膜を形成する第2工程と、
前記表面構造に接し、前記層間絶縁膜の表面全体を覆うAl合金膜を成膜する第3工程と、
前記Al合金膜の表面を覆うレジスト膜を成膜する第4工程と、
前記レジスト膜をマスクとして、前記Al合金膜をパターニングする第5工程と、
前記レジスト膜を除去する第6工程と、
を含み、
前記第4工程では、前記Al合金膜上の凸欠陥を一部露出する膜厚で前記レジスト膜を成膜することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記レジスト膜の膜厚は1.6μm以上3.1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記レジスト膜の膜厚は2.7μm以上2.9μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記凸欠陥の高さは、5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板にMOS構造を含む表面構造を形成する第1工程と、
前記表面構造を覆う層間絶縁膜を形成する第2工程と、
前記表面構造に接し、前記層間絶縁膜の表面全体を覆うAl合金膜を成膜する第3工程と、
前記Al合金膜の表面を覆うレジスト膜を成膜する第4工程と、
前記レジスト膜をマスクとして、前記Al合金膜をパターニングする第5工程と、
前記レジスト膜を除去する第6工程と、
を含み、
前記第4工程では、前記Al合金膜上の凸欠陥を完全に被覆する膜厚で前記レジスト膜を成膜することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記レジスト膜の膜厚は3.3μm以上4.0μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記凸欠陥の高さは、8μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記レジスト膜の膜厚は3.8μm以上4.0μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記凸欠陥の高さは、10μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機膜に段切れ等の欠陥を生じさせ、その欠陥から剥離液がレジストパターンに到達することで、無機膜をリフトオフによって除去する半導体装置の製造方法が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-181646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の半導体装置の製造方法では、Al-SiなどのAl合金膜成膜前に異物があると、Al合金膜中に異物が取り込まれ凸欠陥となり、組立時の電気特性不良の主要因になるという課題があった。この発明は、凸欠陥を凹欠陥に変えることで、不良率を低減させることができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、組立時の電気特性不良の主要因にとならない小さな凸欠陥については、凹欠陥に変えることを防ぐことで不良率を低減させることができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、半導体基板にMOS構造を含む表面構造を形成する第1工程を行う。次に、前記表面構造を覆う層間絶縁膜を形成する第2工程を行う。次に、前記表面構造に接し、前記層間絶縁膜の表面全体を覆うAl合金膜を成膜する第3工程を行う。次に、前記Al合金膜の表面を覆うレジスト膜を成膜する第4工程を行う。次に、前記レジスト膜をマスクとして、前記Al合金膜をパターニングする第5工程を行う。次に、前記レジスト膜を除去する第6工程を行う。前記第4工程では、前記Al合金膜上の凸欠陥を一部露出する膜厚で前記レジスト膜を成膜する。
【0006】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、前記レジスト膜の膜厚は1.6μm以上3.1μm以下であることを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、前記レジスト膜の膜厚は2.7μm以上2.9μm以下であることを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、前記凸欠陥の高さは、5μm以上であることを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、半導体基板にMOS構造を含む表面構造を形成する第1工程を行う。次に、前記表面構造を覆う層間絶縁膜を形成する第2工程を行う。次に、前記表面構造に接し、前記層間絶縁膜の表面全体を覆うAl合金膜を成膜する第3工程を行う。次に、前記Al合金膜の表面を覆うレジスト膜を成膜する第4工程を行う。次に、前記レジスト膜をマスクとして、前記Al合金膜をパターニングする第5工程を行う。次に、前記レジスト膜を除去する第6工程を行う。前記第4工程では、前記Al合金膜上の凸欠陥を完全に被覆する膜厚で前記レジスト膜を成膜する。
【0010】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、前記レジスト膜の膜厚は3.3μm以上4.0μm以下であることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、前記凸欠陥の高さは、8μm以下であることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、前記レジスト膜の膜厚は3.8μm以上4.0μm以下であることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、前記凸欠陥の高さは、10μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、凸欠陥を凹欠陥に変えることで、不良率を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図2】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてAl-Si膜スパッタ前の状態を模式的に示す断面図である。
図4】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてAl-Si膜スパッタ後の状態を模式的に示す断面図である。
図5】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト塗布後の状態を模式的に示す断面図である。
図6】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてAl-Si膜エッチング、レジスト除去後の状態を模式的に示す断面図である。
図7A】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、凸欠陥高さ6μmの場合のレジスト膜厚と凹欠陥変化率を示すグラフである。
図7B】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、凸欠陥高さ5μmの場合のレジスト膜厚と凹欠陥変化率を示すグラフである。
図7C】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、凸欠陥高さ4μmの場合のレジスト膜厚と凹欠陥変化率を示すグラフである。
図8】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、凸欠陥高さとレジスト膜厚との関係を示すグラフである。
図9A】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が十分な場合のAl-Si膜パターニング後の状態を模式的に示す断面図である。
図9B】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が十分な場合のAl-Si膜エッチング中の状態を模式的に示す断面図である。
図9C】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が十分な場合のAl-Si膜エッチング後の状態を模式的に示す断面図である。
図10A】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が薄い場合のAl-Si膜パターニング後の状態を模式的に示す断面図である。
図10B】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が薄い場合のAl-Si膜エッチング中の状態を模式的に示す断面図である。
図10C】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が薄い場合のAl-Si膜エッチング後の状態を模式的に示す断面図である。
図11】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト塗布後の状態を模式的に示す上面図である。
図12】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において装置ステージ装着後の状態を模式的に示す上面図である。
図13】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてポリイミド膜除去後の状態を模式的に示す断面図である。
図14】従来の半導体装置での異物の高さとレジスト膜の膜厚の被覆性の関係性を示す断面図である。
図15】実施の形態1にかかる半導体装置での異物の高さとレジスト膜の膜厚の被覆性の関係性を示す断面図である。
図16】実施の形態2にかかる半導体装置での異物の高さとレジスト膜の膜厚の被覆性の関係性を示す断面図である。
図17】異物の高さ5μmでのAl-Si欠陥サイズとレジスト膜の膜厚による凹欠陥変化率を示すグラフである。
図18】従来の半導体装置の製造方法においてAl-Si膜スパッタ前の状態を模式的に示す断面図である。
図19】従来の半導体装置の製造方法においてAl-Si膜スパッタ後の状態を模式的に示す断面図である。
図20】従来の半導体装置の製造方法においてレジスト塗布後の状態を模式的に示す断面図である。
図21】従来の半導体装置の製造方法においてAl-Si膜エッチング、レジスト除去後の状態を模式的に示す断面図である。
図22】従来の半導体装置の製造方法においてレジスト塗布後の状態を模式的に示す上面図である。
図23】従来の半導体装置の製造方法において装置ステージ装着後の状態を模式的に示す上面図である。
図24】従来の半導体装置の製造方法においてポリイミド膜、レジスト塗布後の状態を模式的に示す断面図である。
図25】従来の半導体装置の製造方法においてポリイミド膜除去後の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して±5%以内まで含むとするのがよい。
【0017】
最初に、従来の半導体装置の製造方法について説明する。従来の半導体装置の製造方法について、RC-IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor:逆導通絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を例に説明する。RC-IGBTは、例えばトレンチゲート構造のIGBTと、このIGBTに逆並列に接続したFWD(Free Wheeling Diode:還流ダイオード)とを同一の半導体基板(半導体チップ)上に一体化してなる。
【0018】
まず、通常採用される厚い状態のn-型半導体基板(半導体ウェハ)を準備する。次に、一般的な方法により、MOS(Metal Oxide Semiconductor)ゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)などの表面デバイス構造を形成する。例えば、n-型半導体基板であるn-型ドリフト層101のおもて面に、n型蓄積層105、p型ベース領域102、トレンチ106、n+型エミッタ領域103、p+型コンタクト領域104、ゲート絶縁膜、ゲート電極108等を形成する(図18等参照)。次に、ゲート電極108を覆うように、例えばBPSG膜などの層間絶縁膜109を堆積(形成)する。
【0019】
次に、層間絶縁膜109をパターニングしてコンタクトホールを形成する。次に、コンタクトホールの内部に、コンタクトプラグ115を形成する。次に、例えばスパッタリング法により、コンタクトホールの内部のコンタクトプラグ115に接するように、層間絶縁膜の表面全体を覆うAl-Si(アルミニウムシリコン合金)膜133を形成する。
【0020】
次に、Al-Si膜133をパターニングする。次に、Al-Si膜133をアニールして、おもて面電極(エミッタ電極とアノード電極)を形成する。次に、おもて面電極上にパッシベーション膜を例えば、ポリイミド膜で形成する。次に、n-型半導体基板を裏面側から研削していき、半導体装置として用いる製品厚さの位置まで研削して薄化する。次に、n-型半導体基板の研削後の裏面に、裏面デバイス構造を形成する。次に、半導体ウェハのおもて面上に、エッジ終端領域を覆うようにパッシベーション膜を形成する。次に、パッシベーション膜をパターニングしてエミッタ電極、アノード電極や各電極パッドを露出させ、エミッタ電極やアノード電極上にNi-Pめっきを成長させ、その上にAuめっきを成長させることで、表面電極を形成する。次に、n-型ドリフト領域101の内部にライフタイムキラーとなるヘリウムの欠陥を導入(形成)する。
【0021】
次に、n-型半導体基板の裏面に、裏面電極(コレクタ電極とカソード電極)を形成する。次に、n-型半導体基板を切断(ダイシング)して個々のチップ状に個片化することで、RC-IGBTチップ(半導体チップ)が完成する。
【0022】
従来の半導体装置の製造方法では、Al-Si膜133のパターニングの際、ウェットエッチングのマスクとして用いるレジスト膜131を形成している。この際、表面デバイス(層間絶縁膜109やコンタクトプラグ115)上に異物があると、異物の大きさにより、Al-Si膜133上に凸欠陥136が形成される(図21参照)。
【0023】
図18は、従来の半導体装置の製造方法においてAl-Si膜成膜前の状態を模式的に示す断面図である。ここでは、表面デバイス上に、それぞれ高さの異なる異物130a、異物130b、異物130cがある場合を示す。異物130aは高さが6μm以上で、異物130bは高さが5μm程度(6μmより小さい)である。異物の高さが小さいもので、形状によっては異物130cのようにAl-Si膜中に埋まる場合がある。
【0024】
図19は、従来の半導体装置の製造方法においてAl-Si膜スパッタ後の状態を模式的に示す断面図である。Al-Si膜133は、5μm程度の膜厚であるため、異物130cの場合はAl-Si膜133内に埋没するが、異物130a、130bの場合ではAl-Si膜133に凸欠陥136が形成される。
【0025】
図20は、従来の半導体装置の製造方法においてレジスト塗布後の状態を模式的に示す断面図である。レジスト膜131は、膜厚3.2μmで形成される。このため、異物130bの場合、レジスト膜131は凸欠陥136を被覆できるが、異物130aの場合、凸欠陥136が大きいため、レジスト膜131は凸欠陥136を被覆できない。
【0026】
図21は、従来の半導体装置の製造方法においてAl-Si膜エッチング、レジスト除去後の状態を模式的に示す断面図である。異物130aの場合、レジスト膜131が凸欠陥136を被覆できないため、Al-Si膜133のエッチングの際にAl-Si膜133とともに異物130aがエッチングされ、凹欠陥135が形成される。一方、異物130bの場合、凸欠陥136がレジスト膜131で被覆されているため、Al-Si膜133はエッチングされず、Al-Si膜133と異物130bが残り、凸欠陥136のままとなる。
【0027】
凹欠陥135が生じた場合、めっき工程でめっき液が浸み込み、組立時に電気特性不良が発生する。IGBTであれば、電気特性評価で検出が可能であるが、RC-IGBT(IGBT+FWD)では、FWD部に欠陥が生じた場合、電気特性で検出ができない。また、凸欠陥136が生じ、凸欠陥136が大きい場合、スパッタ時にスリットが生じてめっき液の浸み込みが発生するためスクリーニングが必要である。このため、表面電極パターンを形成した後に自動外観検査装置を用いて、欠陥のスクリーニングを行っている。
【0028】
このように、スクリーニングすべき欠陥は、凹欠陥135と凸欠陥136があるが、表面電極パターンを形成した後は、凹欠陥135は下地まで欠損が貫通しており、下地パターンが露出しているため、スクリーニングすべき欠陥かどうかの判別がしやすい。一方、凸欠陥136は黒い点にしか見えないため、凸欠陥136の検出感度が低く、凸欠陥136により、電気特性不良の主要因になるという課題がある。
【0029】
また、凸欠陥136があると後工程で以下の不具合が生じるという課題がある。図22は、従来の半導体装置の製造方法においてレジスト塗布後の状態を模式的に示す上面図である。例えば、ライフタイムキラーとなるヘリウムの欠陥を導入する際、マスク(遮蔽膜)としてフォトレジスト膜を形成する。この際、スピンコーター(塗布機)に半導体ウェハ110を載置し、半導体ウェハ110のおもて面にフォトレジスト138を塗布(滴下)する。そして、半導体ウェハ110を回転させることで、半導体ウェハ110のおもて面の全面にフォトレジストを広げて、半導体ウェハ110のおもて面の全面にフォトレジスト膜138を形成する。しかしながら、凸欠陥136があると、凸欠陥136を起点して、クサビ型の塗布ムラ137ができてしまい、半導体ウェハ110のおもて面の全面にフォトレジスト膜138を形成できなくなるという課題がある。
【0030】
また、図23は、従来の半導体装置の製造方法において装置ステージ装着後の状態を模式的に示す上面図である。半導体ウェハ110を裏面側から研削した後、半導体ウェハ110の表面側を装置ステージ140にチャックした際に、凸欠陥136起因により、半導体ウェハ110が割れてしまう場合が生じるという課題がある。
【0031】
また、図24は、従来の半導体装置の製造方法においてポリイミド膜、レジスト塗布後の状態を模式的に示す断面図である。図25は、従来の半導体装置の製造方法においてポリイミド膜除去後の状態を模式的に示す断面図である。凸欠陥136があると、図24のように、ポリイミド膜116、レジスト膜131塗布時に塗布ムラが生じ、図25のように、凸欠陥136を中心にポリイミド膜116が除去できない場合が生じるという課題がある。
【0032】
(実施の形態1)
以下に上述の課題を解決する実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を説明する。図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態1にかかる半導体装置の構造について、トレンチ型RC-IGBT150を例に説明する。図1に示す実施の形態1にかかる半導体装置は、トレンチゲート構造のIGBTと、このIGBTに逆並列に接続したダイオードとを同一の半導体基板(半導体チップ)上に一体化したRC-IGBT150である。RC-IGBT150は、オン状態のときに電流が流れる領域である活性領域と、活性領域の周囲を囲むエッジ終端領域とを備えるが、図1では、活性領域のみを図示する。
【0033】
RC-IGBT150は、活性領域の同一の半導体基板上に、IGBTの動作領域となるIGBT領域(トランジスタ部)21と、ダイオードの動作領域となるダイオード領域(ダイオード部)22とが並列に設けられている。
【0034】
活性領域の半導体ウェハ10内では、n-型ドリフト層1のおもて面の表面層には、n型蓄積層5が設けられていてもよい。n型蓄積層5は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電荷蓄積層(Charge Storage Layer:CSL)である。n型蓄積層5上にIGBT領域21からFWD領域22にわたってp型ベース領域2が設けられている。p型ベース領域2は、FWD領域22においてp型アノード領域として機能する。p型ベース領域2を貫通してn-型ドリフト層1に達するトレンチ6が設けられている。トレンチ6は、IGBT領域21およびFWD領域22に設けられ、IGBT領域21では両側にn+型エミッタ領域3が設けられる。トレンチ6は、所定の間隔で例えばストライプ状の平面レイアウトに配置され、p型ベース領域2を複数の領域(メサ部)に分離する。トレンチ6の内部には、トレンチ6の内壁に沿ってゲート絶縁膜7が設けられ、ゲート絶縁膜7の内側にゲート電極8が設けられている。
【0035】
IGBT領域21において、p型ベース領域2の内部には、各メサ部にそれぞれn+型エミッタ領域3が選択的に設けられている。n+型エミッタ領域3は、トレンチ6の内壁に設けられたゲート絶縁膜7を挟んでゲート電極8に対向する。各メサ部にp+型コンタクト領域4が設けられてもよい。この場合、n+型エミッタ領域3およびp+型コンタクト領域4は互いに接する。FWD領域22において、p型ベース領域2の内部には、n+型エミッタ領域3およびp+型コンタクト領域4は設けられていない。おもて面電極11は、コンタクトホールを介してn+型エミッタ領域3に接するとともに、層間絶縁膜9によってゲート電極8と電気的に絶縁されている。n+型エミッタ領域3には、選択的に開口が設けられ、その開口において、おもて面電極11とp型ベース領域2が電気的に接続していてもよい。p+型コンタクト領域4が設けられる場合、おもて面電極11とp+型コンタクト領域4が電気的に接続していてもよい。おもて面電極11は、IGBT領域21においてエミッタ電極として機能し、FWD領域22においてアノード電極として機能する。また、コンタクトホール内にコンタクトプラグ15を埋め込み、エミッタ電極が、バリアメタル(不図示)、コンタクトプラグ15を介してn+型エミッタ領域3およびp+型コンタクト領域4に接続されてもよい。おもて面電極11は、Al膜またはAl-SiなどのAl合金膜で構成され、コンタクトプラグ15は、タングステン(W)で構成され、バリアメタルは、Ti(チタン)、TiN(窒化チタン)の2層の膜で構成されてもよい。
【0036】
-型ドリフト層1の内部には、基板裏面側に、n+型フィールドストップ(FS)層12が設けられている。n+型FS層12は、オフ時にp型ベース領域2とn-型ドリフト層1との間のpn接合から後述するp+型コレクタ領域13側に伸びる空乏層の伸びを抑制する機能を有する。
【0037】
また、n-型ドリフト層1の内部には、FWD領域22において、n+型FS層12よりもn-型ドリフト層1のおもて面から浅い位置に、ヘリウム(He)照射によりライフタイムキラーとなる空孔(V)などの格子欠陥を導入してなるライフタイム制御領域(不図示)が設けられていてもよい。
【0038】
-型ドリフト層1の裏面側の表面層の、n+型FS層12よりもn-型ドリフト層1の裏面から浅い位置には、IGBT領域21にp+型コレクタ領域13が設けられ、FWD領域22にn+型カソード領域14が設けられている。n+型カソード領域14は、p+型コレクタ領域13に隣接する。裏面電極24は、p+型コレクタ領域13およびn+型カソード領域14の表面に設けられている。裏面電極24は、IGBT領域21においてコレクタ電極として機能し、FWD領域22においてカソード電極として機能する。
【0039】
(実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について説明する。図2は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。まず、n-型ドリフト領域1となるn-型の半導体ウェハ10を用意する(ステップS1)。半導体ウェハ10の材料は、シリコン(Si)であってもよいし、炭化珪素(SiC)であってもよい。以下、半導体ウェハ10がシリコンウェハである場合を例に説明する。
【0040】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入を1組とする工程を異なる条件で繰り返し行い、半導体ウェハ10のおもて面側に、MOS構造を含む表面デバイス構造を形成する(ステップS2:第1工程)。例えば、まず、IGBTのp型ベース領域2、n+型エミッタ領域3およびp+型コンタクト領域4を形成する。p型ベース領域2は、IGBT領域21からFWD領域22にわたって活性領域全面に形成される。p型ベース領域2は、FWD領域22においてp型アノード領域を兼ねる。n+型エミッタ領域3およびp+型コンタクト領域4は、IGBT領域21においてp型ベース領域2の内部に選択的に形成される。
【0041】
半導体ウェハ10の、p型ベース領域2および後述するn型フィールドストップ(FS)層12、p+型コレクタ領域13およびn+型カソード領域14以外の部分がn-型ドリフト領域1である。IGBT領域21において、n-型ドリフト領域1とp型ベース領域2との間に、n型蓄積層5を形成してもよい。n型蓄積層5は、IGBTのターンオン時にn-型ドリフト領域1の少数キャリア(ホール)の障壁となり、n-型ドリフト領域1に少数キャリアを蓄積する機能を有する。
【0042】
次に、半導体ウェハ10のおもて面を熱酸化して、エッジ終端領域において半導体ウェハ10のおもて面を覆うフィールド酸化膜を形成する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、IGBT領域21においてn+型エミッタ領域3、p型ベース領域2およびn型蓄積層5を貫通してn-型ドリフト領域1に達するトレンチ6を形成する。トレンチ6は、半導体ウェハ10のおもて面側から見て、例えば、IGBT領域21とFWD領域22とが並ぶ方向(図1の横方向)と直交する方向(図1の奥行き方向)に延びるストライプ状のレイアウトに配置されている。
【0043】
また、トレンチ6は、IGBT領域21と同様のレイアウトで、FWD領域22にも形成される。FWD領域22において、トレンチ6は、p型ベース領域2(p型アノード領域)を貫通してn-型ドリフト領域1に達する。次に、例えば熱酸化により、トレンチ6の内壁に沿ってゲート絶縁膜7を形成する。次に、半導体ウェハ10のおもて面上に、トレンチ6の内部を埋め込むようにポリシリコン(poly-Si)層を形成する。次に、このポリシリコン層を例えばエッチバックして、ゲート電極8となる部分をトレンチ6の内部に残す。
【0044】
これらのp型ベース領域2、n+型エミッタ領域3、p+型コンタクト領域4、トレンチ6、ゲート絶縁膜7およびゲート電極8でトレンチゲート構造のMOSゲートが構成される。ゲート電極8の形成後に、n+型エミッタ領域3、p+型コンタクト領域4およびn型蓄積層5を形成してもよい。n+型エミッタ領域3は、隣り合うトレンチ6間(メサ領域)の少なくとも1つのメサ領域に配置されていればよく、n+型エミッタ領域3を配置しないメサ領域が存在してもよい。また、n+型エミッタ領域3は、トレンチ6がストライプ状に延びる方向に所定の間隔で選択的に配置されていてもよい。
【0045】
以上のように、表面デバイス構造を形成した後、半導体ウェハ10のおもて面上に、ゲート電極8を覆うように、例えばBPSG膜などの層間絶縁膜9を形成する(ステップS3:第2工程)。次に、層間絶縁膜9をパターニングして、層間絶縁膜9を深さ方向に貫通する複数のコンタクトホールを形成する。深さ方向とは、半導体ウェハ10のおもて面から裏面に向かう方向である。IGBT領域21のコンタクトホールには、n+型エミッタ領域3およびp+型コンタクト領域4が露出される。FWD領域22のコンタクトホールには、p型ベース領域2が露出される。コンタクトホールの内部に、バリアメタル(不図示)を介してコンタクトプラグ15を形成してもよい。
【0046】
次に、層間絶縁膜9上に、コンタクトホールを埋め込むようにAl-Si膜33を成膜する(ステップS4:第3工程)。例えば、スパッタリング法により、コンタクトホールの内部のコンタクトプラグ15に接するように、層間絶縁膜9の表面全体を覆うAl合金膜、例えばAl-Si膜33を形成する。次に、Al-Si膜33のパターニングのため、ウェットエッチングのマスクとして用いるため、Al-Si膜33の表面を覆うレジスト膜31を形成する(ステップS5:第4工程)。次に、レジスト膜31をマスクとして、Al-Si膜33をパターニングする(ステップS6:第5工程)。次に、パターニングしたAl-Si膜33をアニールすることで、おもて面電極11を形成する。次に、レジスト膜31を除去する(ステップS7:第6工程)。おもて面電極11は、IGBT領域21においてp型ベース領域2、n+型エミッタ領域3およびp+型コンタクト領域4に電気的に接続され、エミッタ電極として機能する。また、おもて面電極11は、FWD領域22においてp型ベース領域2に電気的に接続され、アノード電極として機能する。おもて面電極11は、n+型エミッタ領域3を配置しないメサ領域においてp型ベース領域2に電気的に接続されていてもよい。
【0047】
実施の形態1では、レジスト膜31は、従来の膜厚3.2μmより薄く、Al-Si膜33上の凸欠陥36を一部露出する膜厚で成膜する。一部露出するとは、例えば、図4のように、凸欠陥36の頂部が覆われていない場合や、図20のように、凸欠陥136の側部が覆われていない場合である。凸欠陥36を一部露出する膜厚は、例えば、1.6μm以上3.1μm以下である。このように、薄くすることで、以下に説明するように、表面デバイス構造上に異物があった場合に形成される凸欠陥36を、凹欠陥35に変換することができる。
【0048】
図3は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてAl-Si膜成膜前の状態を模式的に示す断面図である。ここでは、表面デバイス(コンタクトプラグ15および層間絶縁膜9)上に、それぞれ高さの異なる異物30a、異物30b、異物30cがある場合を示す。異物30aは高さが6μm以上で、異物30bは高さが5μm程度(6μmより小さい)である。異物の高さが小さいもので、形状によっては異物30cのようにAl-Si膜中に埋まる場合がある。
【0049】
図4は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてAl-Si膜スパッタ後の状態を模式的に示す断面図である。Al-Si膜33は、5μm程度の膜厚であるため、異物30cの場合はAl-Si膜33内に埋没するが、異物30a、30bの場合ではAl-Si膜33に凸欠陥36が形成される。凸欠陥36の高さは、異物30a、30bの高さに関連し、異物30a、30bの高さが高いほど、高くなる。
【0050】
図5は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト塗布後の状態を模式的に示す断面図である。レジスト膜31は、膜厚1.6μm以上3.1μm以下で形成される。このため、異物30aおよび30bの場合、レジスト膜31は段切れし、凸欠陥36を被覆できず、凸欠陥36の一部が露出する。
【0051】
図6は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてAl-Si膜エッチング、レジスト除去後の状態を模式的に示す断面図である。異物30aおよび30bの場合、凸欠陥36を被覆できず、凸欠陥36の一部が露出するため、Al-Si膜33のエッチングの際にAl-Si膜33とともに異物30aおよび30bがエッチングされ、凹欠陥35が形成される。
【0052】
このように、異物30aの場合、従来と同様に凹欠陥35が形成され、従来は、凸欠陥36となっていた異物30bの場合でも、レジスト膜31を薄くすることで、凹欠陥35が形成されるようになる。凸欠陥36を凹欠陥35にすることで下地との輝度差が大きくなり、陥検査時の検出感度が向上し、検査工程のスループットを改善できる。また、Al-Si膜33のエッチングで欠陥の幅が広がるため、凸欠陥36よりも凹欠陥25の方が幅大きく、検出感度が向上する。
【0053】
ここで、図7Aは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、凸欠陥高さ6μmの場合のレジスト膜厚と凹欠陥変化率を示すグラフである。図7Bは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、凸欠陥高さ5μmの場合のレジスト膜厚と凹欠陥変化率を示すグラフである。図7Cは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、凸欠陥高さ4μmの場合のレジスト膜厚と凹欠陥変化率を示すグラフである。図7A図7Cにおいて、横軸は、レジスト膜31の膜厚を示し、単位はμmである。縦軸は、凹欠陥変化率を示し、単位は%である。凹欠陥変化率とは、Al-Si膜33スパッタ後の状態(図4参照)での凸欠陥36が、Al-Si膜33エッチング、レジスト除去後(図6参照)に凹欠陥35に変化される割合である。図7A図7Cでは、凸欠陥36の横方向のサイズが6μm~10μmの場合を示す。
【0054】
図7Aは異物30aのように、異物30aの高さが大きい場合であり、図7Aに示すように、レジスト膜31が、膜厚1.6μm以上3.1μm以下である場合は、レジスト膜31は、凸欠陥36を一部被覆できず、凸欠陥36が凹欠陥35に変化される。
【0055】
図7Bは異物30bのように、異物30bの高さが5μm程度の場合であり、図7Bに示すように、レジスト膜31が、膜厚3.2μmの従来は、レジスト膜31は、凸欠陥36を被覆するため、凸欠陥36が、凹欠陥35に変化されない率が高い。一方、実施の形態1のレジスト膜31が、膜厚1.6μm以上3.1μm以下である場合は、レジスト膜31は、凸欠陥36を一部被覆できず、凸欠陥36が凹欠陥35に変化される率が高い。
【0056】
図7Cは異物30cのように、異物30cの高さが低い場合であり、異物30cでは凸欠陥36とならないため、凸欠陥36が凹欠陥35に変化される率は低くなっている。
【0057】
図8は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において、凸欠陥高さとレジスト膜厚との関係を示すグラフである。図8において、横軸は、凸欠陥36の高さを示し、単位はμmである。縦軸は、凹欠陥35化するためのレジスト膜の膜厚上限を示し、単位はμmである。図8に示すように、レジスト膜31の膜厚を3.1μm以下とすることで、7μmの凸欠陥36を凹欠陥35にすることができる。また、従来凸欠陥36になった5μm程度の凸欠陥36を凹欠陥36にするためには、レジスト膜31の膜厚を2.7μm以上2.9μm以下にするのがより最適である。
【0058】
図9Aは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が十分な場合のAl-Si膜パターニング後の状態を模式的に示す断面図である。図9Bは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が十分な場合のAl-Si膜エッチング中の状態を模式的に示す断面図である。図9Cは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が十分な場合のAl-Si膜エッチング後の状態を模式的に示す断面図である。
【0059】
一方、図10Aは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が薄い場合のAl-Si膜パターニング後の状態を模式的に示す断面図である。図10Bは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が薄い場合のAl-Si膜エッチング中の状態を模式的に示す断面図である。図10Cは、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト膜厚が薄い場合のAl-Si膜エッチング後の状態を模式的に示す断面図である。
【0060】
レジスト膜31の端部では、Al-Si膜33をエッチングする際に、図9Bおよび図10Bの矢印で示すように、レジスト膜31下のAl-Si膜33までエッチングされてしまう。このため、レジスト膜31の端部では、図9Cおよび図10Cの点線の円で示すように、ヒサシが形成される。ここで、レジスト膜31に十分な膜厚があれば、図9Cのようにヒサシは折れないが、レジスト膜31の膜厚が不十分な場合、図10Cのようにヒサシは折れてしまう。このため、レジスト膜31の膜厚は、ウェットエッチングによってできたヒサシが折れない強度を保つ必要があり、例えば、レジスト膜31の膜厚を1.6μm以上にすることで、ヒサシが折れることを防止できる。また、ヒサシが折れ無いためのレジスト膜31の膜厚の下限は、半導体ウェハ10のウェハ口径によらず、1.6μmである。
【0061】
図11は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてレジスト塗布後の状態を模式的に示す上面図である。上述したように、実施の形態1では、凸欠陥36が凹欠陥35に変換される。このため、例えば、ライフタイムキラーとなるヘリウムの欠陥を導入する際、マスク(遮蔽膜)としてフォトレジスト膜38を形成する際に、図11のように、凸欠陥36によるクサビ型の塗布ムラができず、半導体ウェハのおもて面の全面にフォトレジスト膜38を形成できる。
【0062】
また、図12は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法において装置ステージ装着後の状態を模式的に示す上面図である。半導体ウェハ10を裏面側から研削した後、半導体ウェハ10の表面側を装置ステージ40にチャックした際に、実施の形態1では、凸欠陥36がないため、図12のように半導体ウェハ10は装置ステージ40に密着し、半導体ウェハ10が割れてしまうことを防止できる。
【0063】
また、図13は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法においてポリイミド膜除去後の状態を模式的に示す断面図である。実施の形態1では、凸欠陥36がないため、ポリイミド膜16、レジスト31塗布時に塗布ムラが生じず、ポリイミド膜16が除去できない場合を防止できる。
【0064】
図2のフローチャートの説明に戻る。次に、n-型半導体基板を裏面側から研削する前に、表面デバイス構造に傷がつかないように保護するため、Al-Si膜33上に保護用レジスト膜(不図示)を形成する(ステップS8)。次に、半導体ウェハ10を裏面側から研削していき(バックグラインド)、半導体装置として用いる製品厚さの位置まで研削する(ステップS9)。次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入を1組とする工程を異なる条件で繰り返し行い、半導体ウェハ10の裏面側に裏面デバイス構造を形成する(ステップS10)。例えば、n型フィールドストップ(FS:Field Stop)層12、n+型カソード領域14およびp+型コレクタ領域13を形成する。
【0065】
+型カソード領域14は、半導体ウェハ10の研削後の裏面の表面層に、半導体ウェハ10の裏面の全面にわたって形成される。n型フィールドストップ層12は、半導体ウェハ10の研削後の裏面からn+型カソード領域14よりも深い位置に形成される。n型フィールドストップ層12は、少なくともIGBT領域21からFWD領域22にわたって形成される。n型フィールドストップ層12は、n+型カソード領域14に接していてもよい。
【0066】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入により、n+型カソード領域14の、IGBT領域21に対応する部分をp+型に変えることでp+型コレクタ領域13を形成する。すなわち、p+型コレクタ領域13は、IGBT領域21とFWD領域22とが並ぶ方向においてn+型カソード領域14に接する。p+型コレクタ領域13は、深さ方向においてn型フィールドストップ層12に接していてもよい。
【0067】
次に、熱処理(アニール)により、p+型コレクタ領域13およびn+型FS層12を活性化させる。次に、半導体ウェハ10のおもて面上に、エッジ終端領域を覆うようにパッシベーション膜を形成する。次に、パッシベーション膜をパターニングしてエミッタ電極、アノード電極や各電極パッドを露出させ、エミッタ電極やアノード電極上にNi-Pめっきを成長させ、その上にAuめっきを成長させることで、表面電極を形成する。
【0068】
次に、半導体ウェハ10のおもて面上に、FWD領域22に対応する部分が開口したフォトレジスト膜(不図示)を形成する。このフォトレジスト膜をマスク(遮蔽膜)として高加速エネルギーで深い飛程のヘリウム照射を行い、n-型ドリフト領域1の内部にライフタイムキラーとなるヘリウムの欠陥を導入(形成)する(ステップS11)。次に、ステップS8で形成した保護用レジスト膜を除去する(ステップS12)。
【0069】
そして、灰化処理(アッシング)により、フォトレジスト膜を除去する。次に、半導体ウェハ10の裏面の全面に、裏面電極24を形成する(ステップS13)。裏面電極24は、p+型コレクタ領域13およびn+型カソード領域14に接する。裏面電極24は、コレクタ電極として機能するとともに、カソード電極として機能する。その後、半導体ウェハ10をチップ状に切断(ダイシング)して個片化することで、RC-IGBTチップ150(半導体チップ)が完成する。
【0070】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、レジスト膜を、従来より薄く形成することで、凸欠陥を凹欠陥に変えることができる。これにより、下地との輝度差が大きくなり、欠陥検査時の検出感度が向上し、検査工程のスループットを改善できる。また、Al-Si膜のエッチングで欠陥の幅が広がるため、凸欠陥よりも凹欠陥の方が幅が大きくなり、検出感度が向上する。さらに、後工程のレジストやポリイミド塗布ムラを改善でき、半導体ウェハの表面側を装置ステージにチャックした際に、半導体ウェハが割れてしまうことを防止できる。
【0071】
(実施の形態2)
以下に実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明する。図14は、従来の半導体装置での異物の高さとレジスト膜の膜厚の被覆性の関係性を示す断面図である。図14において、異物30d、30a、30b、30cの順で大きさは小さくなり、異物30dが最も大きく、異物30cが最も小さい。ここで、範囲S1は、異物30dにより、Al-Si膜33のスパッタ成膜時に欠損41が生じる場合である。範囲S2は、レジスト膜31が凸欠陥36を被覆できない場合である。
【0072】
この場合、上述のように、範囲S2ではレジスト膜31が凸欠陥36を被覆できないため、Al-Si膜33のエッチングの際にAl-Si膜33とともに異物30aがエッチングされ、凹欠陥が形成される。一方、異物30bは、凸欠陥36がレジスト膜31で被覆されているため、Al-Si膜33はエッチングされず、Al-Si膜33と異物30bが残り、凸欠陥36のままとなり、電気特性不良の主要因になる。また、異物30cは、Al-Si膜33内に埋没し、大きな凸欠陥36が形成されないため問題はない。
【0073】
このため、実施の形態1では、レジスト膜31を、従来より薄く形成している。図15は、実施の形態1にかかる半導体装置での異物の高さとレジスト膜の膜厚の被覆性の関係性を示す断面図である。図15での異物30a、30b、30c、30dの大きさは、図14と同じである。また、レジスト膜31の膜厚は、2.6μm程度である。
【0074】
この場合、上述のように、異物30bも、範囲S2に入りレジスト膜31が凸欠陥36を被覆できないため、Al-Si膜33のエッチングの際にAl-Si膜33とともに異物30aがエッチングされ、凹欠陥が形成される。このようにして、凸欠陥36を凹欠陥に変換することで欠陥検査時の検出感度を向上させ、検査工程のスループットを改善している。
【0075】
しかしながら、製造ラインにより、範囲S2に入る異物30a、30bが多くなる場合がある。この場合、凸欠陥36を強制的に凹欠陥に変換することにより、この半導体装置は、自動外観検査装置で不良品として除外され、良品率が低下する。また、この際に比較的小さい凸欠陥36が強制的に凹欠陥に変換されてしまい、このような凹欠陥の中には自動外観検査装置で検出されずに後工程に進んで、後工程で特性不良となってしまうものがあるといった課題がある。小さい凸欠陥とは、横方向のサイズが例えば8.0μm以下であってよい。
【0076】
このため、実施の形態2では、レジスト膜31を、従来より厚く形成している。図16は、実施の形態2にかかる半導体装置での異物の高さとレジスト膜の膜厚の被覆性の関係性を示す断面図である。図16での異物30a、30b、30c、30dの大きさは、図14と同じである。また、レジスト膜31の膜厚は、3.8μm程度である。
【0077】
この場合、図16に示すように、レジスト膜31を厚くすることで、レジスト膜31が凸欠陥36を完全に被覆し、凸欠陥36を被覆できない範囲S2が無くなる。このため、凸欠陥36が凹欠陥に変換されない。これにより、範囲S1に入るAl-Si膜33に欠損を生じさせるほどの高さをもつ異物30dは、エッチングで凹欠陥に変換しているが、Al-Si膜33に欠損を生じさせない無害な異物30a~30cはエッチングにより凹欠陥に変換させずに無害化している。このように凸欠陥36を強制的に凹欠陥に変換することを防止することで、半導体装置が自動外観検査装置で不良品として除外されることを減少させるとともに、自動外観検査装置で検出できない不良品を無害化し、後工程の特性不良を減少させ、良品率を向上することができる。
【0078】
図17は、異物の高さ5μmでのAl-Si欠陥サイズとレジスト膜の膜厚による凹欠陥変化率を示すグラフである。図17に示すように、レジスト膜31の膜厚が3.0μm以下の場合(図17の●、○、□のグラフ)では、高い確率で凸欠陥が小さいサイズの凹欠陥に変換されていることが分かる。また、レジスト膜31の膜厚が3.2μmの場合(図17の△のグラフ)、Al-Si欠陥サイズが7μm以上の欠陥サイズで凹欠陥が発生していることが分かる。これにより、レジスト膜31が凸欠陥36を完全に被覆し、凸欠陥36を被覆できない範囲S2をなくすためには、レジスト膜31の膜厚を3.2μmより大きくする必要がある。
【0079】
また、図8の凸欠陥高さとレジスト膜厚との関係を示すグラフは、実施の形態2でも同じであり、図8によるとレジスト膜31の膜厚を3.3μm以上とすることで、8μmの高さの異物も被覆できることが分かる。このため、実施の形態2では、8μm以下の高さの異物を被覆するため、レジスト膜31の膜厚は、3.3μm以上4.0μm以下としている。また、10μm以下の高さの異物を被覆するため、レジスト膜31の膜厚は、3.8μm以上4.0μm以下とすることがより好ましい。
【0080】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、レジスト膜を、従来より厚く、3.3μm以上に形成することで、レジスト膜が凸欠陥を被覆できない範囲を無くし、凸欠陥が凹欠陥に変換されないようにしている。これにより、Al-Si膜に欠損を生じさせない無害な異物はエッチングにより凹欠陥に変換させずに無害化している。このように凸欠陥を強制的に凹欠陥に変換することを防止することで、半導体装置が自動外観検査装置で不良品として除外されることを減少させ、良品率を向上させることができる。また、自動外観検査装置で検出できない不良品を無害化し、後工程の特性不良を減少させ、良品率を向上することができる。
【0081】
以上において本発明では、シリコン基板の第1主面上にMOSゲート構造を構成した場合を例に説明したが、これに限らず、半導体の種類(例えば、炭化珪素(SiC)など)、基板主面の面方位などを種々変更可能である。また、本発明の実施の形態では、トレンチ型IGBTを例に説明したが、これに限らず、プレーナ型IGBT、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)などのMOS型半導体装置など様々な構成の半導体装置に適用可能である。また、本発明では、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造方法は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用される高耐圧半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0083】
1、101 n-型ドリフト領域
2、102 p型ベース領域
3、103 n+型エミッタ領域
4、104 p+型コンタクト領域
5、105 n型蓄積層
6、106 トレンチ
7 ゲート絶縁膜
8、108 ゲート電極
9、109 層間絶縁膜
10、110 半導体ウェハ
11 おもて面電極
12 n型フィールドストップ層
13 p+型コレクタ領域
14 n+型カソード領域
15、115 コンタクトプラグ
16、116 ポリイミド膜
21 IGBT領域
22 FWD領域
24 裏面電極
30a、130a 異物
30b、130b 異物
30c、130c 異物
30d 異物
31、131 レジスト膜
33、133 Al-Si膜
35、135 凹欠陥
36、136 凸欠陥
38、138 フォトレジスト膜
40、140 装置ステージ
41 欠損
137 クサビ型の塗布ムラ
150 RC-IGBT
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25