(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149441
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】抗微生物性酸化第一銅含有コーティング
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20241010BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C23C26/00 A
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】35
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060984
(22)【出願日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】63/457,602
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521359944
【氏名又は名称】ベイパー テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パトリック アントニー サリヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ブライス ランドルフ アントン
【テーマコード(参考)】
4F100
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AA17C
4F100AA17D
4F100AA27B
4F100AB11E
4F100AB17B
4F100AB17C
4F100AK52E
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100JA11C
4F100JC00C
4F100JC00E
4F100JL06E
4F100JL10C
4F100JL11B
4F100JN01D
4K044AA03
4K044BA12
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB04
4K044BC01
(57)【要約】
【課題】抗微生物性コーティングを有するコーティングされた物品が提供される。
【解決手段】コーティングされた物品は、基材と、基材上に配置された少なくとも1つの接着層とを含む。少なくとも1つの接着層は、酸化銅、酸化ジルコニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む。有利には、抗微生物性亜酸化銅層は、少なくとも1つの接着層上に配置される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むコーティングされた物品
基材;
前記基材上に配置された少なくとも1つの接着層、ただし該少なくとも1つの接着層は、酸化銅、酸化ジルコニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む;
前記少なくとも1つの接着層上に配置された抗微生物性亜酸化銅層、ただし該、抗微生物性亜酸化銅層は、前記少なくとも1つの接着層より少なくとも5倍厚い。
【請求項2】
抗微生物性亜酸化銅層が、式CuzO(式中、zは2.2~1.1である)を有する化合物を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項3】
抗微生物性亜酸化銅層が酸化第一銅を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項4】
少なくとも1つの接着層が、式CuxO(式中、xは2.2~0.6である)を有する化合物を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項5】
少なくとも1つの接着層が、式ZryO2(式中、yは3~0.6である)を有する化合物を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項6】
抗微生物性亜酸化銅層が、前記抗微生物性亜酸化銅層全体にわたって20モル%以内まで均一な化学量論を有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項7】
抗微生物性亜酸化銅層中の銅原子のパーセントが、基材からの距離が増加するにつれて減少する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項8】
抗微生物性亜酸化銅層が0.5ミクロンより大きい厚さを有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項9】
抗微生物性亜酸化銅層が約0.5ミクロン~約10ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項10】
抗微生物性亜酸化銅層が灰色の非虹色を有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項11】
少なくとも1つの接着層が約250nm未満の厚さを有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項12】
少なくとも1つの接着層が約10nm~約200nmの厚さを有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項13】
抗微生物性亜酸化銅層が、基材から延伸する複数の結晶柱を含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項14】
抗微生物性亜酸化銅層が、光源D65について、35~55のL*、-5~5のa*、及び-10~-4のb*の色空間座標を有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項15】
抗微生物性亜酸化銅層上に配置された透明金属酸化物層をさらに含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項16】
抗微生物性亜酸化銅層上に配置された抗微生物性シラン含有層をさらに含む、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項17】
抗微生物性シラン含有層が、
第1のシラン化合物;及び
金属イオン
を含む微生物阻害材料を含み;
前記第1のシラン化合物は、前記金属イオンに結合した官能基を含む、請求項16に記載のコーティングされた物品。
【請求項18】
第1のシラン化合物が下記式(I)によって記載される、請求項17に記載のコーティングされた物品:
【化1】
式中、
R
1は、-C
1~C
x+1アルキル-S(R
3)
y(M)、-C
2~C
x+2アルケニル-S(R
3)
y(M)、-C
3~C
x+3アルキニル-S(R
3)
y(M)、-C
1~C
xアルキル-N(R
3)
y(M)、-C
2~C
xアルケニル-N(R
3)
y(M)、-C
3~C
xアルキニル-N(R
3)
y(M)、-C
1~C
x+1アルキル-P(R
3)
y(M)、-C
2~C
x+2アルケニル-P(R
3)
y(M)、-C
3~C
x+3アルキニル-P(R
3)
y(M)からなる群から選択され;
各R
2は同じであるか又は異なり、繰り返し構造の別のSi原子との結合であるか、又は水素、-C
1~C
10アルキル、-C
2~C
10アルケニル、-C
3~C
10アルキニルからなる群から選択され;
nは正の整数であり;
xは正の整数であり;
yは正の整数であり;
Mは金属イオン又は金属である。
【請求項19】
抗微生物性シラン含有層が指紋阻害材料をさらに含む、請求項17に記載のコーティングされた物品。
【請求項20】
以下を含むコーティングされた物品
基材;
前記基材上に配置された接着層であって、酸化銅を含む接着層;及び
前記接着層上に配置された抗微生物性亜酸化銅層であって、前記接着層より少なくとも5倍厚い、抗微生物性亜酸化銅層;
ただし、前記接着層と前記抗微生物性亜酸化銅層の組み合わせに、銅以外の金属は実質的に含まれない。
【請求項21】
抗微生物性亜酸化銅層が、式CuzO(式中、zは2.2~1.1である)を有する化合物を含む、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項22】
抗微生物性亜酸化銅層が酸化第一銅を含む、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項23】
接着層が、式CuxO(式中、xは2.2~0.6である)を有する化合物を含む、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項24】
抗微生物性亜酸化銅層中の銅原子のパーセントが、基材からの距離の増加とともに減少する、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項25】
抗微生物性亜酸化銅層が0.5ミクロンより大きい厚さを有する、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項26】
抗微生物性亜酸化銅層が約0.5ミクロン~約10ミクロンの厚さを有する、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項27】
抗微生物性亜酸化銅層が灰色の非虹色を有する、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項28】
接着層が約250nm未満の厚さを有する、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項29】
接着層が約10nm~約200nmの厚さを有する、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項30】
抗微生物性亜酸化銅層が、基材から延伸する複数の結晶柱を含む、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項31】
抗微生物性亜酸化銅層が、光源D65について、35~55のL*、-5~5のa*、及び-10~-4のb*の色空間座標を有する、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項32】
抗微生物性亜酸化銅層上に配置された抗微生物性シラン含有層をさらに含む、請求項20に記載のコーティングされた物品。
【請求項33】
抗微生物性シラン含有層が、
第1のシラン化合物;及び
金属イオン
を含む微生物阻害材料を含み;
前記第1のシラン化合物は前記金属イオンに結合した官能基を含む、請求項32に記載のコーティングされた物品。
【請求項34】
第1のシラン化合物が下記式(I)によって記載される、請求項33に記載のコーティングされた物品:
【化2】
式中、
R
1は、-C
1~C
x+1アルキル-S(R
3)
y(M)、-C
2~C
x+2アルケニル-S(R
3)
y(M)、-C
3~C
x+3アルキニル-S(R
3)
y(M)、-C
1~C
xアルキル-N(R
3)
y(M)、-C
2~C
xアルケニル-N(R
3)
y(M)、-C
3~C
xアルキニル-N(R
3)
y(M)、-C
1~C
x+1アルキル-P(R
3)
y(M)、-C
2~C
x+2アルケニル-P(R
3)
y(M)、-C
3~C
x+3アルキニル-P(R
3)
y(M)からなる群から選択され;
各R
2’は同じであるか又は異なり、繰り返し構造の別のSi原子との結合であるか、又は水素、-C
1~C
10アルキル、-C
2~C
10アルケニル、-C
3~C
10アルキニルからなる群から選択され;
nは正の整数であり;
xは正の整数であり;
yは正の整数であり;
Mは金属イオン又は金属である。
【請求項35】
抗微生物性シラン含有層が指紋阻害材料をさらに含む、請求項33に記載のコーティングされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2023年4月6日に出願された米国仮特許出願第63/457,602号の利益を主張する。
【0002】
少なくとも1つの側面では、本発明は、抗微生物性コーティング及びこのようなコーティングでコートされた物品に関する。
【背景技術】
【0003】
生物活性を有するコーティングは、様々な目的に有用であり得る。生物活性とは、生物に対して生物学的効果又は生理学的効果を有する材料を指す。例えば、生物活性材料には、生物の正常な生物学的機能又は生理学的機序の改変をもたらす材料が含まれる。本明細書で使用される生物活性であることには、微生物に対する有益な効果及び有害な効果又は微生物の正常な機能に対する変化が含まれる。1つの一般的な生物活性材料は抗微生物性物質である。抗微生物性コーティングは多くの目的に役立つ。
一般に、抗微生物性コーティングは、ウイルス、細菌、又は真菌生物のような微生物の増殖を阻害するか又はこれを死滅させる。1つのとくに関連する例としては、抗微生物性素材を使用することによって伝染病の拡散を防止することが挙げられる。抗微生物性素材は衛生目的にも役立ち得る。疾患の拡大を防止し、衛生を強化したいという要望が、抗微生物性素材を開発するための多大な努力をもたらした。医療施設及び健康処置における抗微生物性素材の使用は、大きな利益をもたらすことができる。
病院などの医療施設は、高濃度の病原菌と脆弱な免疫を有する個体とを組み合わせた独特の環境を提示する。したがって、病院などの施設は、抗微生物性表面から利益を得る。医療機器のための抗微生物性素材は、消毒の負担を軽減し、疾患の拡散を防止することができる。
さらに、手頃な価格の抗微生物性表面は、生物と接触するあらゆる表面に利益をもたらす可能性がある。例えば、調理に関与する表面又はドアノブのような一般的に触れられる表面は、抗微生物特性から利益を得ることができるだろう。主に装飾的な表面であっても、手頃な価格であれば、抗微生物特性から利益を得ることができ、有害な又は望ましくない微生物生命の拡散及び増殖を阻害するのを助けることができるはずである。
【0004】
抗微生物性素材を製造することは、困難かつ高価であり得る。さらに、抗微生物特性は、他の望ましくない特性を伴い得る。例えば、一部の抗微生物性素材は、柔らかすぎる場合がある。他の抗微生物性素材は、耐摩耗性が低い場合がある。Microban(登録商標)は、塗料に混合することができるリン酸銀ガラスのような抗微生物性添加剤を販売している。一部の用途では、塗料の外観が望ましくない場合がある。一部の抗微生物性コーティングは、ナノ粒子蒸着を使用して、コーティングの表面上に抗微生物特性を有するナノ粒子を堆積させることができる。例えば、Protec社製のABACO(登録商標)は、ナノ粒子を使用した抗微生物性コーティングである。しかしながら、ナノ粒子の使用は複雑かつ高価であり得る。さらに、このようなコーティングは、繊細な表面を有するか、又は耐摩耗性が低くなりがちである。
抗微生物性素材の別の例としては、様々な金属が挙げられる。例えば、銀は抗微生物特性を有することが知られている。しかしながら、銀は高価であり得るし、その特性は多くの用途に適していない場合がある。例えば、銀の外観又は耐摩耗性は、ある特定の用途には適さない場合がある。
【0005】
したがって、これらの課題のうちの1つ若しくは複数を解決するか、又は現在の抗微生物性素材の代替物を提供する抗微生物性コーティングが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
少なくとも1つの側面では、抗微生物性コーティングを有するコーティングされた物品(coated article)が提供される。該コーティングされた物品は、基材(substrate)
と、基材上に配置された少なくとも1つの接着層とを含む。該少なくとも1つの接着層は、酸化銅、酸化ジルコニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む。有利には、抗微生物性亜酸化銅層は、少なくとも1つの接着層上に配置される。特徴的には、抗微生物性亜酸化銅層は、抗微生物性亜酸化銅が多層構造であっても、少なくとも1つの接着層より少なくとも5倍厚い。
【0007】
別の側面では、抗微生物性コーティングを有するコーティングされた物品が提供される。かかるコーティングされた物品は、基材と、基材上に配置された亜酸化銅接着層とを含む。抗微生物性亜酸化銅層は、少なくとも1つの接着層上に配置される。特徴的には、抗微生物性亜酸化銅層は、抗微生物性亜酸化銅が多層構造であっても、少なくとも1つの接着層より少なくとも5倍厚い。
【0008】
別の側面では、抗微生物性コーティングを有するコーティングされた物品が提供される。このコーティングされた物品は、基材と、基材上に配置された酸化第二銅接着層とを含む。亜酸化銅層は、酸化第二銅接着層上に配置され、場合により酸化第二銅接着層と接触する。有利には、コーティングされた物品上のコーティングは、銅以外の金属を含まない。
【0009】
前記概要は例示にすぎず、いかなる意味においても限定することを意図するものではない。上記の例示的な側面、態様、及び特徴に加えて、さらなる側面、態様、及び特徴を、図面及び以下の詳細な説明を参照して明確にする。
【0010】
本開示の性質、目的、及び利点をさらに理解するために、以下の図面と併せて以下の詳細な説明を参照すべきであり、以下の図面中、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】抗微生物性層を有するコーティングされた物品の断面図である。
【0012】
【
図1B】透明酸化物オーバーコートを有する抗微生物性層を有するコーティングされた物品の断面図である。
【0013】
【
図2】接着層及び亜酸化銅層でコーティングされた基材のEDSスキャンを示す図である。
【0014】
【0015】
【
図4】銅ピーク及び酸化銅(Cu
2O)ピークと整列した亜酸化銅層のX線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、本発明の現在好ましい組成物、態様及び方法に詳細にします。これは、本発明者らに現在知られている、本発明を実施するためのベストモードを構成する。図面は必ずしも縮尺通りではない。しかしながら、開示される態様は、様々な形態及び代替形態で具体化され得る本発明の単なる例示であることを理解すべきである。したがって、本明細書に開示される具体的な詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に本発明の任意の側面の代表的な基礎として、及び/又は本発明を様々に使用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0017】
例の項における記載を除いて、又は他に明示的に示されている場合を除いて、材料の量又は反応及び/若しくは使用の条件を示すこの説明における全ての数値は、本発明の最も広い範囲を説明する際に「約」という語によって修飾されると理解されるべきである。言及された数値限界内での実施が一般的に好ましい。
また、明示的に反対の記載がない限り:パーセント、「部」及び比の値は重量基準であり;任意のポリマーについて提供される分子量は、別段の指示がない限り、重量平均分子量を指し;本発明に関連する所与の目的に適した又は好ましい材料の群又はクラスの説明は、群又はクラスのメンバーのうちのいずれか2つ以上の混合物が等しく適しているか、又は好ましいことを意味し;化学用語での構成要素の説明は、本明細書で指定された任意の組み合わせへの添加時の構成要素を指し、いったん混合された混合物の構成要素間の化学的相互作用を必ずしも排除するものではなく;頭字語又は他の略語の第1の定義は、同じ略語の本明細書における全ての後続の使用に適用され、最初に定義された略語の通常の文法的変形に準用され;明示的に反対の記載がない限り、特性の測定は、同じ特性について以前又は後に言及されるのと同じ技術によって決定される。
【0018】
また、本発明は、具体的な構成要素及び/又は条件が当然変化し得るので、以下に記載される具体的な態様及び方法に限定されないことも理解されるべきである。さらに、本明細書で使用される用語法は、本発明の特定の態様を説明する目的でのみ使用され、決して限定することを意図するものではない。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことにも留意しなければならない。例えば、単数形での構成要素への言及は、複数の構成要素を含むことを意図している。
【0020】
「含む(comprising)」という用語は、「包含する(including)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、又は「特徴とする(characterized by)」と同義である。これらの用語は包括的かつオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを排除するものではない。
【0021】
「からなる(consisting of)」という句は、請求項で特定されていないいずれの要素、ステップ、又は成分も除外する。この句が、プリアンブルの直後ではなく、請求項本体の条項に現れる場合、この句はその条項に示される要素のみを限定し;他の要素は、全体として請求項から除外されない。
【0022】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、請求項の範囲を、特定されている材料又はステップならびに特許請求されている主題の基本的な及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0023】
「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に関して、これら3つの用語のうちの1つが本明細書で使用される場合、ここに開示され特許請求される主題は、他の2つの用語のいずれかの使用を包含することができる。
【0024】
整数範囲は全ての介在する整数を明示的に包含することも認識すべきである。例えば、整数範囲1~10は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10を明示的に包含する。同様に、範囲1~100は、1、2、3、4....97、98、99、100を包含する。同様に、任意の範囲が要求される場合、上限値と下限値との差を10で割った増分である介在数を代替的な上限値又は下限値と見なすことができる。例えば、範囲が1.1~2.1である場合、以下の数1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、及び2.0を下限又は上限として選択することができる。本明細書に示される具体例では、濃度、温度、及び反応条件(例えば、圧力、pH等)は、示された値のプラス又はマイナス50パーセントを有効数字3桁に丸めて実施することができる。ある改良においては、濃度、温度、及び反応条件(例えば、圧力、pH等)は、示された値のプラス又はマイナス30パーセントを例において提供される値の有効数字3桁に丸めて実施することができる。別の改良においては、濃度、温度、及び反応条件(例えば、pH等)は、示された値のプラス又はマイナス10パーセントを例において提供される値の有効数字3桁に丸めて実施することができる。
【0025】
「亜酸化銅」という用語は、酸化第二銅(CuO)中の銅対酸素原子の比より大きい銅対酸素原子の比を有する酸化銅を意味する。したがって、銅対酸素の比は1:1より大きい。例えば、酸化第一銅(Cu2O)は亜酸化銅と考えられる。
【0026】
「酸化銅」という用語は、式CuxO(式中、xは2.2~0.6である)を有する化合物を意味する。ある改良形態において、zは、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.9、又は少なくとも0.95であり、最大で2.2、最大で2.0、最大で1.8、最大で1.6、最大で1.4、又は最大で1.2である。
【0027】
「酸化ジルコニウム」という用語は、式ZryO2(式中、yは3~0.6である)を有する化合物を意味する。
【0028】
略語:
【0029】
「EDS」は、エネルギー分散型X線分光法を意味する。
【0030】
「SEM」は、走査型電子顕微鏡法を意味する。
【0031】
図1A及び
図1Bを参照すると、抗微生物性コーティングを有するコーティングされた物品の概略図が提供されている。
コーティングされた物品10は、基材12と、基材上に配置された少なくとも1つの接着層14とを含む。少なくとも1つの接着層14は、酸化銅、酸化ジルコニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む。抗微生物性亜酸化銅層18は、少なくとも1つの接着層14上に配置される。
特徴的には、抗微生物性亜酸化銅層18は、少なくとも1つの接着層14より少なくとも5倍厚い。ある改良形態(refinement)においては、抗微生物性亜酸化銅層18は0.5ミクロンより大きい厚さを有する。さらなる改良形態においては、亜酸化銅層18は約0.5ミクロン~約10ミクロンの厚さを有する。
有利には、少なくとも1つの接着層14及び亜酸化銅層18は、化学蒸着又は物理蒸着によって作製することができる。適切な物理蒸着技術には、アーク蒸着及び反応性スパッタリングが含まれる。典型的には、少なくとも1つの接着層14は約20nm~200nmの厚さを有する。
図1Bは、亜酸化銅層18が最上層20でコーティングされている変形形態を提供する。
【0032】
別の側面では、最上層20は、酸化ジルコニウムを含む層などの透明金属酸化物層20である。
【0033】
別の側面では、最上層20は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2022/0235232号明細書に開示される抗微生物性シラン含有層である。これに関して、抗微生物性シラン含有層は、第1のシラン化合物及び金属イオンを有する微生物阻害材料を含むことができ、第1のシラン化合物は、金属イオンに結合した官能基を含む。例えば、抗微生物性シラン含有層は抗微生物性素材を含むことができる。とくに、抗微生物性シラン含有層は第1のシラン化合物及び金属イオンを含む。特徴的には、シラン化合物は、金属イオンに結合した官能基を含む。さらなる改良形態においては、抗微生物性シラン含有層は、好ましくは疎水性であり得るシラン化合物(例えば、第2のシラン化合物)を含む指紋阻害材料をさらに含む。
【0034】
別の側面では、第1のシラン化合物は下記式(I) によって記載される:
【化1】
(式中、
R
1は、-C
1~C
x+1アルキル-S(R
3)
y(M)、-C
2~C
x+2アルケニル-S(R
3)
y(M)、-C
3~C
x+3アルキニル-S(R
3)
y(M)、-C
1~C
xアルキル-N(R
3)
y(M)、-C
2~C
xアルケニル-N(R
3)
y(M)、-C
3~C
xアルキニル-N(R
3)
y(M)、-C
1~C
x+1アルキル-P(R
3)
y(M)、-C
2~C
x+2アルケニル-P(R
3)
y(M)、及び-C
3~C
x+3アルキニル-P(R
3)
y(M)からなる群から選択され;
各R
2は同じであるか又は異なり、繰り返し構造の別のSi原子との結合であるか、又は水素、-C
1~C
10アルキル、-C
2~C
10アルケニル、-C
3~C
10アルキニルからなる群から選択され;
nは正の整数(例えば、1~500又はそれより大きい)であり;
xは正の整数(例えば、1~20又はそれより大きい)であり;
yは正の整数(例えば、1~4又はそれより大きい)であり;
Mは金属イオン又は金属である)。
【0035】
別の側面では、nは、1以上、2以上、10以上、20以上、50以上、100以上、200以上、300以上、400以上、又は450以上の正の整数である。ある改良形態においては、nは、500以下、450以下、400以下、300以下、200以下、100以下、50以下、20以下、10以下、5以下、又は2以下の正の整数である。上に言及される範囲の組み合わせも考えられる。
【0036】
別の側面では、xは、1以上、2以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、又は18以上の正の整数である。ある改良形態においては、xは、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、8以下、6以下、4以下、又は2以下の正の整数である。上に言及される範囲の組み合わせも考えられる。
【0037】
別の側面では、yは、1以上、2以上、3以上の正の整数である。ある改良形態においては、yは、4以下、3以下、又は2以下である。上に言及される範囲の組み合わせも考えられる。
【0038】
ある改良形態においては、Mは、銅イオン(例えば、Cu+、Cu2+)、チタンイオン(例えば、Ti3+、Ti4+)、バナジウムイオン(例えば、V2+、V3+)、クロムイオン(例えば、Cr2+、Cr3+)、マンガンイオン(例えば、Mn2+、Mn4+)、鉄イオン(例えば、Fe2+、Fe3+)、コバルトイオン(例えば、Co2+、Co3+)、ニッケルイオン(例えば、Ni2+)、亜鉛イオン(例えば、Zn2+)、ジルコニウムイオン(例えば、Zr2+)、パラジウムイオン(例えば、Pd2+)、カドミウムイオン(例えば、Cd2+)、白金イオン(例えばPt2+、Pt4+)、金イオン(例えば、Au+、Au3+)、水銀イオン(例えば、Hg2+)、テルビウムイオン(例えば、Tb3+)、タングステンイオン(例えば、W4+)、アルミニウムイオン(例えば、Al3+)、ガリウムイオン(例えば、Ga3+)、ゲルマニウムイオン(例えば、Ge2+)、ヒ素イオン(例えば、As3+)、セレンイオン(例えば、Se2+)、スズイオン(例えば、Sn2+)、アンチモンイオン(例えば、Sb3+)、テルルイオン(例えば、Te2+)、鉛イオン(例えば、Pb4+)、ビスマスイオン(例えば、Bi3+)、及び/又はそれらの組み合わせからなる群から選択される金属イオンである。別の改良形態においては、Mは、Ag、Cu、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Pd、Cd、Pt、Au、Hg、W、Al、Ga、Ge、Tb、As、Se、Sn、Sb、Te、Pb、及びBiからなる群から選択される金属である。
【0039】
一部の改良形態においては、各R2は同じであるか又は異なり、繰り返し構造の別のSi原子との結合であるか、又は水素、-C1~C10アルキル、-C2~C10アルケニル、-C3~C10アルキニルからなる群から選択される。
【0040】
ある改良形態においては、R1及びR2中の各炭素原子及び/又は水素原子は独立して、場合により重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-O R3、-CO2H、-C(O)O R3、-C(O)NH2、C(O)NH(C1~C10アルキル)、-C(O)N(C1~C10アルキル)2、SC1~C10アルキル、-S(O)C1~C10アルキル、-S(O)2C1~C10アルキル、-S(O)NH(C1~C10アルキル)、-S(O)2NH(C1~C10アルキル)、-S(O)N(C1C10アルキル)2、-S(O)2N(C1~C10アルキル)2、-N R3、-NH2、-C2H8N2、-NH(C1~C10アルキル)、-P(C1~C10アルキル)2、-P(O)(C1~C10アルキル)2、-PO3H2、又は-Si(-OC1~C10アルキル)3で置換されている。
【0041】
ある改良形態においては、各R3は、結合、水素、重水素、場合により置換された-C1~C10アルキル、-C2~C10アルケニル、-C2~C10アルキニル、-C3~C10シクロアルキル、及び-C1~C10アルキル-O-C1~C10アルキルからなる群から選択され、nは正の整数である。
【0042】
一部の変形形態においては、第1のシラン化合物は基材上に固定化される。第1のシラン化合物は、共有結合及び/又は非共有結合によって基材に化学的に結合することができる。
【0043】
抗微生物性シラン含有層は、微生物阻害材料の量によって限定されない。例えば、微生物阻害材料は、約0.1重量%~約100重量%の量で存在することができる。
【0044】
ある変形形態においては、抗微生物性シラン含有層は指紋阻害材料をさらに含む。指紋阻害材料は第2のシラン化合物を含む。第2のシラン化合物は疎水性を付与することができる。ある改良形態においては、指紋阻害材料は、疎水性かつ親油性である指紋非視認性材料及び/又は疎水性かつ疎油性(oleophobic)である指紋防止材料を含む。ある変形形態においては、第2のシラン化合物は構造(II):
【化2】
(式中、R
1’は、そのいずれもが場合により少なくとも部分的にハロゲン化(例えば、フッ素化)されていてもよい、-C
1~C
20アルキル、-C
2~C
20アルケニル、及び-C
3~C
20アルキニルからなる群から選択され;
R
2’は同じであるか又は異なり、基材との結合であるか、又は水素、-C
1~C
10アルキル、-C
2~C
10アルケニル、及び-C
3~C
10アルキニルからなる群から選択される)
によって記載される。ある改良形態においては、R
1’及びR
2’は、それぞれR
1及びR
2について上に示されるのと同じであり得る。
【0045】
抗微生物性シラン含有層は、指紋阻害材料の量によって限定されない。例えば、微生物阻害材料は、約0.1重量%~約100重量%の量で存在することができる。
【0046】
ある変形形態においては、R1’及びR2’中の各炭素原子及び/又は水素原子は独立して、場合により重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-O R3、-CO2H、-C(O)O R3、-C(O)NH2、C(O)NH(C1~C10アルキル)、-C(O)N(C1~C10アルキル)2、SC1~C10アルキル、-S(O)C1~C10アルキル、-S(O)2C1~C10アルキル、-S(O)NH(C1~C10アルキル)、-S(O)2NH(C1~C10アルキル)、-S(O)N(C1C10アルキル)2、-S(O)2N(C1~C10アルキル)2、-N R3、-NH2、-C2H8N2、-NH(C1~C10アルキル)、-P(C1~C10アルキル)2、-P(O)(C1~C10アルキル)2、-PO3H2、又は-Si(-OC1~C10アルキル)3で置換されおり;各R3は、水素、重水素、場合により置換された-C1~C10アルキル、-C2~C10アルケニル、-C2~C10アルキニル、-C3~C10シクロアルキル、及び-C1~C10アルキル-O-C1~C10アルキルからなる群から選択される。
【0047】
1つの変形形態においては、少なくとも1つの接着層は、抗微生物性亜酸化銅層とは異なる酸化銅から構成される酸化銅層を含む。酸化銅は、式CuxO(式中、xは2.2~0.6である)によって記載することができる。ある改良形態においては、xは、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.9、少なくとも0.9、又は少なくとも0.95であり、最大で2.2、最大で2.0、最大で1.8、最大で1.6、最大で1.4又は最大で1.2である。ある改良形態においては、少なくとも1つの接着層は酸化第二銅(すなわち、Cu(II)O)層である。ある改良形態においては、酸化銅層は約10~200nmの厚さを有する。さらなる改良形態においては、酸化銅層は、少なくとも5nm、少なくとも10nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、又は少なくとも50nmの厚さ、及び最大で300nm、最大で250nm、最大で200nm、最大で180nm、最大で150nm、最大で120nm、又は最大で100nmの厚さを有する。
【0048】
別の変形形態においては、少なくとも1つの接着層は、酸化ジルコニウムから構成される酸化ジルコニウム層を含む。酸化ジルコニウムは、式ZryO2(式中、yは3~0.6である)によって記載することができる。ある改良形態においては、yは、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、又は少なくとも0.95であり、最大で3、最大で2.5、最大で2.0、最大で1.8、最大で1.6、最大で1.4又は最大で1.2である。別の改良形態においては、yは約1であり、少なくとも1つの接着層はジルコニア層(ZrO2)を含む。ある改良形態においては、酸化ジルコニウム層は約10~300nmの厚さを有する。さらなる改良形態においては、酸化ジルコニウム層は、少なくとも5nm、少なくとも10nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、又は少なくとも80nmの厚さ、及び最大で400nm、最大で300nm、最大で250nm、最大で200nm、最大で180nm、最大で150nm、最大で120nm、又は最大で100nmの厚さを有する。
【0049】
別の変形形態においては、少なくとも1つの接着層は、酸化ジルコニウム層及び酸化第二銅層を含む二重層である。
例えば、
図1A及び
図1Bに示されるように、少なくとも1つの接着層14は、基材12上に配置され、場合により基材12と接触する酸化ジルコニウム層22と、酸化ジルコニウム層22上に配置され、場合により酸化ジルコニウム層22と接触する酸化銅層24を含む。上に示されるように、酸化ジルコニウムは、式Zr
yO
2(式中、yは3~0.6である)によって記載することができる。ある改良形態においては、yは、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、又は少なくとも0.95であり、最大で3、最大で2.5、最大で2.0、最大で1.8、最大で1.6、最大で1.4又は最大で1.2である。別の改良形態においては、yは約1であり、少なくとも1つの接着層はジルコニア層(ZrO
2)を含む。
ある改良形態においては、酸化銅層24は、Cu
2O、CuO、Cu
4O
3又はそれらの組み合わせから構成される。ある改良形態においては、酸化銅層24は、式Cu
xO(式中、xは2.2~0.6である)によって記載される酸化銅から構成される。ある改良形態においては、xは、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.9、少なくとも0.9、又は少なくとも0.95であり、最大で2.2、最大で2.0、最大で1.8、最大で1.6、最大で1.4又は最大で1.2である。
ある改良形態においては、少なくとも1つの接着層は酸化第二銅(すなわち、Cu(II)O)層である。ある改良形態においては、酸化ジルコニウム層及び酸化銅層はそれぞれ独立して、約10~300nmの厚さを有する。さらなる改良形態においては、酸化ジルコニウム層及び酸化第二銅層はそれぞれ独立して、少なくとも5nm、少なくとも10nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、又は少なくとも80nmの厚さ、及び最大で400nm、最大で300nm、最大で250nm、最大で200nm、最大で180nm、最大で150nm、最大で120nm、又は最大で100nmの厚さを有する。
【0050】
ある変形形態においては、亜酸化銅層18は、式CuzO(式中、zは3~1.1である)を有する化合物から構成される。ある改良形態においては、zは、少なくとも1.1、少なくとも1.3、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、又は少なくとも1.8であり、最大で3、最大で2.7、最大で2.5、最大で2.4、最大で2.3、最大で2.2、又は最大で2.1である。ある改良形態においては、亜酸化銅層は酸化第一銅(Cu2O)を含む。
【0051】
ある変形形態においては、亜酸化銅層18は、亜酸化銅層の厚さ全体にわたって20モル%以内まで均一な化学量論を有する。ある改良形態においては、亜酸化銅層は、亜酸化銅層の厚さ全体にわたって10モル%以内まで均一な化学量論を有する。
別の変形形態においては、亜酸化銅層中の銅原子のパーセントは、基材からの距離が増加するにつれて減少する。換言すれば、銅の酸素に対する比は、基材からの距離が増加するにつれて減少する。
図2は、ステンレス鋼基材の元素分析を提供するEDSスキャンを提供する。分析は、亜酸化銅層において、銅の酸素に対する比が、基材からの距離が増加するにつれて減少することを示す。
【0052】
ある変形形態においては、亜酸化銅層18は、暗灰色の非虹色を有する。色にアクセスする際、亜酸化銅層18は、F2、L2、D65、及びD50などのCIE標準光源に対するLab色空間座標L*、a*、及びb*によって特徴付けることができる。ある改良形態においては、亜酸化銅層18は、CIE標準光源D65について、35~55のL*、-5~5のa*、及び-10~-4のb*の色空間座標を有する。
【0053】
ある変形形態においては、亜酸化銅層は、基材から延伸する複数の結晶柱を含む。ある改良形態においては、該柱は、基材に垂直な方向に沿って拡張する(すなわち、該柱の断面積が増加する)。
図3A及び
図3Bは、柱状成長を示す亜酸化銅層18のSEM顕微鏡写真を提供する。
図4は、亜酸化銅層のX線回折パターンを提供し、結晶が配向していないことについての明確な説明を提供する。
【0054】
ある変形形態においては、接着層は酸化銅を含み、抗微生物性亜酸化銅層は接着層上に配置される。上に示されるように、抗微生物性亜酸化銅層は接着層より少なくとも5倍厚い。有利には、接着層と抗微生物性亜酸化銅層の組み合わせは、銅以外の金属を含まない。これに関連して、含まないとは、接着層と抗微生物性亜酸化銅層の両方が独立して、1モルパーセント未満の他の金属を含むことを意味する。
【0055】
表1は、抗微生物性亜酸化銅層(例えば、酸化第一銅)の特性を提供する。表2は、酸化銅(例えば、酸化第二銅層)を含む接着層の特性を提供する。表3は、酸化ジルコニウム(例えば、酸化ジルコニウム層)を含む接着層の特性を提供する。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
表4は、コーティングされたステンレス鋼基材についての色特性を示す。
【0060】
【0061】
表5は、ステンレス鋼基材上の多層コーティングの例を提供する。
【0062】
【0063】
例示的な態様を上に記載しているが、これらの態様は、本発明の全ての可能な形態を説明することを意図するものではない。むしろ、本明細書で使用されている文言は、限定ではなく説明のための文言であり、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更が行われ得ることが理解される。さらに、種々の態様の特徴を組み合わせて、本発明のさらなる態様を形成してよい。
【符号の説明】
【0064】
10 コーティングされた物品
12 基材
14 接着層
18 亜酸化銅層
20 最上層、透明金属酸化物層
22 酸化ジルコニウム層
24 酸化銅層
【外国語明細書】