(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149460
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】量子ドット組成物、その製造方法、その硬化物、及びそれを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20241010BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20241010BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20241010BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20241010BHJP
C09K 11/56 20060101ALI20241010BHJP
C09K 11/02 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C08F290/06
C09K11/08 G
C09K11/70
C09K11/88
C09K11/56
C09K11/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061476
(22)【出願日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】10-2023-0045555
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】524132656
【氏名又は名称】▲韓▼国▲韓▼松化学有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】高 誠俊
(72)【発明者】
【氏名】李 大熙
(72)【発明者】
【氏名】文 溢柱
(72)【発明者】
【氏名】南 勁牟
(72)【発明者】
【氏名】姜 呟▲ジン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 吉蘭
(72)【発明者】
【氏名】▲ヨ▼ 盛▲ミン▼
(72)【発明者】
【氏名】柳 元錫
(72)【発明者】
【氏名】尹 美姫
(72)【発明者】
【氏名】李 宜珍
【テーマコード(参考)】
4H001
4J127
【Fターム(参考)】
4H001CA01
4H001CA02
4H001CC07
4H001CC09
4H001CC13
4H001XA15
4H001XA16
4H001XA30
4H001XA34
4H001XA49
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB051
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4J127BB191
4J127BC021
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4J127BD111
4J127BE431
4J127BE43Y
4J127BF661
4J127BF66Y
4J127BG121
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4J127BG311
4J127BG31Y
4J127BG331
4J127BG33Y
4J127CB151
4J127CB282
4J127CC031
4J127CC161
4J127CC162
4J127DA01
4J127DA06
4J127EA13
4J127EA15
4J127FA00
4J127FA21
(57)【要約】
【課題】量子ドット組成物、その製造方法、その硬化物、及びそれを含む表示装置を提供する。
【解決手段】本発明は、量子ドット組成物、その製造方法、その硬化物、及びそれを含む表示装置に係り、具体的には、電気流体力学インクジェットプリンティング用の量子ドット組成物、その製造方法、その硬化物、及びそれを含む表示装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット、光重合性モノマー及びオリゴマーを含み、
前記オリゴマーは、炭素-炭素二重結合を含む化合物、及びチオール基を含む化合物を含むことを特徴とする量子ドット組成物。
【請求項2】
前記オリゴマーは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物を2種以上含むことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項3】
前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物、及び分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物を1種ずつ含むことを特徴とする請求項2に記載の量子ドット組成物。
【請求項4】
前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、フェノール基を含む化合物を1種以上含むことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項5】
前記チオール基を含む化合物は、2~4官能基を含むことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項6】
前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、トリアリルイソシアヌレート及びフェノールアクリレートを含み、
前記チオール基を含む化合物は、エチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)を含むことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項7】
前記炭素-炭素二重結合を含む化合物と、前記チオール基を含む化合物とのモル比は、2.75:1~5:1であることを特徴とする請求項3に記載の量子ドット組成物。
【請求項8】
前記分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物と、前記分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物とのモル比は、0.01:1~1.5:1であることを特徴とする請求項7に記載の量子ドット組成物。
【請求項9】
前記炭素-炭素二重結合は、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基を含む群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項10】
常温で粘度が200~1000cpsの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項11】
前記量子ドットは、下記化学式1で表される一次リガンドと、
カルボキシル基を含む炭素数3~40の二次リガンドとで表面改質されたことを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【化1】
(前記化学式1において、
Mは2~4価の金属であり、
mは1~4の整数であり、Xは独立して炭素数3~20の有機基であり、
nは2~4の整数である。)
【請求項12】
電気流体力学(Electrohydrodynamic)インクジェットプリンティング用に使用されることを特徴とする請求項1に記載の量子ドット組成物。
【請求項13】
量子ドットの表面を改質した後、光重合性モノマーに分散して量子ドット分散液を得て、オリゴマーと混合するが、
前記オリゴマーは、炭素-炭素二重結合を含む化合物、及びチオール基を含む化合物を混合して製造されることを特徴とする量子ドット組成物の製造方法。
【請求項14】
前記オリゴマーは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物を2種以上含むことを特徴とする請求項13に記載の量子ドット組成物の製造方法。
【請求項15】
前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物、及び分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物を1種ずつ含むことを特徴とする請求項14に記載の量子ドット組成物の製造方法。
【請求項16】
前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、フェノール基を含む化合物を1種以上含むことを特徴とする請求項13に記載の量子ドット組成物の製造方法。
【請求項17】
前記チオール基を含む化合物は、2~4官能基を含むことを特徴とする請求項13に記載の量子ドット組成物の製造方法。
【請求項18】
前記炭素-炭素二重結合を含む化合物と、前記チオール基を含む化合物とのモル比を2.75:1~5:1で混合することを特徴とする請求項15に記載の量子ドット組成物の製造方法。
【請求項19】
前記分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物と、前記分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物とのモル比を0.01:1~1.5:1で混合することを特徴とする請求項18に記載の量子ドット組成物の製造方法。
【請求項20】
前記量子ドットの表面を改質することは、下記化学式1で表される一次リガンドを加えて一次表面改質した後、カルボキシル基を含む炭素数3~40の二次リガンドを加えて二次表面改質することを含むことを特徴とする請求項13に記載の量子ドット組成物の製造方法。
【化2】
(前記化学式1において、
Mは2~4価の金属であり、
mは1~4の整数であり、Xは独立して炭素数3~20の有機基であり、
nは2~4の整数である。)
【請求項21】
前記オリゴマーは、熱開始剤及び重合禁止剤をさらに含み、
前記オリゴマーが量子ドット分散液と混合される前に、常温で撹拌された後、重合反応を経てオリゴマーとして製造されることを特徴とする請求項13に記載の量子ドット組成物の製造方法。
【請求項22】
光重合性モノマーをさらに投入し、重合禁止剤、光開始剤及び拡散剤を追加して混合することをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の量子ドット組成物の製造方法。
【請求項23】
請求項1に記載の量子ドット組成物を利用して製造された、硬化膜。
【請求項24】
請求項1に記載の量子ドット組成物を含む、発光素子。
【請求項25】
請求項24に記載の発光素子を含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット組成物、その製造方法、その硬化物、及びそれを含む表示装置に係り、具体的には、電気流体力学インクジェットプリンティング用の量子ドット組成物、その製造方法、その硬化物、及びそれを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(Quantum dot: QD)は、いわゆる半導体ナノ結晶(semiconductor nanocrystals)であり、物質種類の変化なしに粒子サイズ別に異なる波長の光が発生して多様な色を作り出すことができ、既存の発光体よりも色純度及び光安定性が高いという長所があるので、次世代発光素子として注目されている。
【0003】
特に、ディスプレイ分野において新たなトレンドとなった量子ドットは、高分子マトリックスに分散され、複合体の形態にTV、LED以外に多様なディスプレイ、電子素子などに適用可能である。CdSe、InPなどで代表される量子ドットは、発光効率(Quantum Yield)の面において速く発展し、発光効率が100%に近い合成法が紹介されている。これに基づいて、現在、量子ドットシートを適用したTVが商用化されている。次の段階において、量子ドットを既存のLED TVのカラーフィルタ層に含み(顔料及び染料排除)、カラーフィルタ層においてフィルタリング方式ではない自体発光バージョンでの量子ドットTVが開発されている。そのような量子ドットTVの開発の核心は、量子ドットが画素を構成する工程及び製造工程において、量子ドットの光効率をどれほど維持させることができるかに焦点が合わせられている。
【0004】
一方、カラーフィルタ用素材は、高い感度、基板への付着力、耐化学性、耐熱性などが要求される。従来、ディスプレイに適用するカラーフィルタは、一般的に、感光性レジスト組成物を使用してフォトマスクを適用した露光工程を通じて所望のパターンを形成し、次いで、現像工程を通じて非露光部を溶解させて除去する、パターニング工程を通じて形成されたが、捨てられる素材によるコスト上昇問題をもたらした。
【0005】
最近、画素に使用される材料の高級化、及びこれによるコスト上昇の解消のために、既存のスピンコーティングやスリットコーティングを行ってパターニングするよりも、所望の部分にのみ材料を使用し、材料の使用を最大限抑制する方法が関心を受けている。最も代表的な方法は、インクジェット方式であり、大きくバブルジェット方式及びピエゾ方式が挙げられるが、インクジェット方式は、所望の画素にのみ材料を使用するため、不要な材料の無駄を防止することができる。
【0006】
しかし、インクジェット法に使用される量子ドット組成物は、粘度が100cps以下、好ましくは、50cps以下であることが要求されるので、100cpsを超える高粘度インクを適用するのには困難があった。
【0007】
そのようなインクジェット方式の短所を補完するために、微細パターニングが可能な電気流体力学(EHD: electrohydrodynamic)インクジェット方式が開発されている。EHDインクジェット方式は、インク吐出ノズルと基材との間に電気電位差を印加し、電場によるインクの微細化及びプリンティングを可能にした。
【0008】
関連した先行技術として、韓国特許公開第10-2020-0137977号公報には、電気流体力学的印刷方式に使用される溶液が開示されている。
【0009】
前述の先行技術は、微細プリンティングを利用してレンズ形態にして光効率を改善することが特徴であるので、粘度向上のために溶媒を蒸発させ、量子ドット-ポリマーレジンを形成しなければならない。また、量子ドットの割合が高ければ、良好な光変換効率を有するが、量子ドット間の凝集が生じ、量子ドットの割合が低ければ、光変換効率が悪くなるという問題点があった。
【0010】
これを解決するために、ポリマーと量子ドットとの適正の割合を提示したこともあるが、その重量の割合が約1:100~1:1000とポリマーの量が過度に多く必要であり、これにより、量子ドット-ポリマー間の撹拌過程、及び量子ドット-ポリマーレジン形成過程に相当な時間がかかるという問題がもたらされた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2020-0137977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、EHDインクジェット方式に好適な高粘度を有し、良好な電気伝導度を有し、量子ドット間の凝集が生じず、吐出性及びインクジェッティング性に優れた量子ドット組成物及びその製造方法を提供することである。
【0013】
また、量子ドット間の凝集が生じないながらも、光特性が優れて表される量子ドット組成物及びその製造方法を提供することである。
【0014】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記量子ドット組成物による硬化物及びそれを含む表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決するための本発明の一側面によれば、量子ドット、光重合性モノマー及びオリゴマーを含み、
前記オリゴマーは、炭素-炭素二重結合を含む化合物、及びチオール基を含む化合物を含むことを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0016】
好ましくは、前記オリゴマーは、
前記炭素-炭素二重結合を含む化合物を2種以上含むことを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0017】
好ましくは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物、及び分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物を1種ずつ含むことを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0018】
好ましくは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、フェノール基を含む化合物を1種以上含むことを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0019】
好ましくは、前記チオール基を含む化合物は、2~4官能基を含むことを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0020】
好ましくは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、トリアリルイソシアヌレート及びフェノールアクリレートを含み、
前記チオール基を含む化合物は、エチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)を含むことを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0021】
好ましくは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物と、前記チオール基を含む化合物とのモル比は、2.75:1~5:1であることを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0022】
好ましくは、前記分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物と、前記分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物とのモル比は、0.01:1~1.5:1であることを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0023】
好ましくは、前記炭素-炭素二重結合は、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基を含む群から選択される1つ以上であることを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0024】
好ましくは、常温で粘度が200~1000cpsの範囲であることを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0025】
好ましくは、前記量子ドットは、下記化学式1で表される一次リガンドと、カルボキシル基を含む炭素数3~40の二次リガンドとで表面改質されたことを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0026】
【化1】
(前記化学式1において、
Mは2~4価の金属であり、
mは1~4の整数であり、Xは独立して炭素数3~20の有機基であり、
nは2~4の整数である。)
【0027】
好ましくは、電気流体力学インクジェットプリンティング用に使用されることを特徴とする量子ドット組成物を提供する。
【0028】
本発明の他の側面によれば、量子ドットの表面を改質した後、光重合性モノマーに分散して量子ドット分散液を得て、オリゴマーと混合するが、
前記オリゴマーは、炭素-炭素二重結合を含む化合物、及びチオール基を含む化合物を混合して製造されることを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0029】
好ましくは、前記オリゴマーは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物を2種以上含むことを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0030】
好ましくは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物、及び分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物を1種ずつ含むことを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0031】
好ましくは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物は、フェノール基を含む化合物を1種以上含むことを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0032】
好ましくは、前記チオール基を含む化合物は、2~4官能基を含むことを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0033】
好ましくは、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物と、前記チオール基を含む化合物とのモル比を2.75:1~5:1で混合することを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0034】
好ましくは、前記分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物と、前記分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物とのモル比を0.01:1~1.5:1で混合することを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0035】
好ましくは、前記量子ドットの表面を改質することは、下記化学式1で表される一次リガンドを加えて一次表面改質した後、カルボキシル基を含む炭素数3~40の二次リガンドを加えて二次表面改質することを含むことを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0036】
【化2】
(前記化学式1において、
Mは2~4価の金属であり、
mは1~4の整数であり、Xは独立して炭素数3~20の有機基であり、
nは2~4の整数である。)
【0037】
好ましくは、前記オリゴマーは、熱開始剤及び重合禁止剤をさらに含み、
前記オリゴマーが量子ドット分散液と混合される前に、常温で撹拌された後、重合反応を経てオリゴマーとして製造されることを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0038】
好ましくは、光重合性モノマーをさらに投入し、重合禁止剤、光開始剤及び拡散剤を追加して混合することをさらに含むことを特徴とする量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0039】
本発明のさらに他の側面によれば、前記量子ドット組成物を利用して製造された硬化膜を提供する。
【0040】
本発明のさらに他の側面によれば、前記量子ドット組成物を含む発光素子を提供する。
【0041】
本発明のさらに他の側面によれば、前記発光素子を含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0042】
従来は、量子ドット粒子間の凝集を防止しながら優秀な光特性を具現することが困難であったが、本発明による量子ドット組成物及びその製造方法は、それを可能にする利点があり、これにより、製造工程が便利かつ簡素化され、コストを低減することができる。
【0043】
また、本発明による量子ドット組成物は、良好な電気伝導度を有し、粒子間の凝集が生じず、EHDインクジェットプリンティング用の量子ドットインク組成物として特に吐出性に優れ、粘度が適し、インクジェッティング性に優れている。
【0044】
また、量子ドット組成物の透明性に優れ、光特性に優れている。
【0045】
また、本発明による量子ドット組成物は、リガンドなどによって硬化時に排出されるガス(Out-gas)を減少させ、これから製造された製品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】実験例1による結果の一部を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明について説明する。
【0048】
本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、他の定義がなければ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって共通に理解される意味として使用できるであろう。また、通常使用される辞書に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的にあるいは過度に解釈されない。
【0049】
また、本明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0050】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを意味する。
【0051】
また、本明細書において、「単量体」と「モノマー」は同一の意味である。本発明における単量体は、オリゴマー及びポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書において、「光重合性モノマー」は、重合反応に関与する基、例えば、(メタ)アクリレート基をいう。
【0052】
本明細書において、「置換」は、化合物や作用基中の水素が、C1-C30アルキル基、C2-C30アルケニル基、C2-C30アルキニル基、C1-C30アルコキシ基、C1-C30ヘテロアルキル基、C3-C30ヘテロアルキルアリール基、C3-C30シクロアルキル基、C3-C15シクロアルケニル基、C6-C30シクロアルキニル基、C2-C30ヘテロシクロアルキル基、ハロゲン(-F、-Cl、-Brまたは-I)、ヒドロキシ基(-OH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基(-CN)、エステル基(-C(=O)OR、ここで、Rは、C1-C10アルキル基またはアルケニル基である)、エーテル基(-O-R、ここで、Rは、C1-C10アルキル基またはアルケニル基である)、カルボニル(-C(=O)-R、ここで、Rは、C1-C10アルキル基またはアルケニル基である)、カルボキシル基(-COOH)及びこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されていることを意味する。
【0053】
本明細書において、「有機基」は、C1-C30の直鎖または分枝鎖アルキル基、C2-C30の直鎖または分枝鎖アルケニル基、C2-C30の直鎖または分枝鎖アルキニル基を意味する。また、前記アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、それぞれ置換もしくは非置換のものである。
【0054】
本明細書において、「アルキル」は、炭素数1~40の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素に由来の1価置換基を意味する。その例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、iso-アミル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書において、「アルケニル」は、炭素-炭素二重結合を1個以上有する炭素数2~40の直鎖または分枝鎖の不飽和炭化水素に由来の1価置換基を意味する。その例としては、ビニル、アリル、イソプロぺニル、2-ブテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
<量子ドット組成物>
本発明の一実施形態による量子ドット組成物は、量子ドット、光重合性モノマー及びオリゴマーを含み、オリゴマーは、炭素-炭素二重結合を含む化合物、及びチオール基を含む化合物を含む。
【0057】
本発明の一実施形態による量子ドット組成物は、電気流体力学インクジェットプリンティング用に使用され、粘度が5000cps以下であり、好ましくは、200~1000cpsの範囲であり、より好ましくは、300~800cpsの範囲である。
【0058】
以下、前記量子ドット組成物の組成を具体的に説明すれば下記の通りである。
【0059】
量子ドット
量子ドット(Quantum Dot: QD)は、ナノサイズの半導体物質であり、サイズ及び組成によって異なるエネルギーバンドギャップを有することができ、これにより、多様な発光波長の光を放出することができる。
【0060】
そのような量子ドットは、均質な(homogeneous)単一層構造;コア-シェル構造、グラディエント(gradient)構造などの多重層構造;あるいはこれらの混合構造でもある。コア-シェル構造において、シェルは、複数層(例えば、コア/シェル/シェル)であり、この場合、各層は、互いに異なる成分、例えば、(半)金属酸化物を含んでもよい。
【0061】
量子ドットは、II-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族元素、IV族化合物及びこれらの組み合わせから自由に選択されうる。量子ドットがコア-シェル構造である場合、コアとシェルは、それぞれ下記例示された成分から自由に構成されうる。
【0062】
一例として、II-VI族化合物は、CdO、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnS及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;並びにCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されうる。
【0063】
他の一例として、III-V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;並びにGaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されうる。
【0064】
他の一例として、IV-VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;並びにSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されうる。
【0065】
他の一例として、IV族元素は、Si、Ge及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。IV族化合物は、SiC、SiGe及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物でもある。
【0066】
他の一例として、合金(alloy)型化合物は、InZnPなどから選択される三元素化合物でもある。
【0067】
前述の二元素化合物、三元素化合物または四元素化合物は、均一な濃度で粒子内に存在してもよく、濃度分布が部分的に異なる状態に分けられて同一粒子内に存在してもよい。また、1つの量子ドットが他の量子ドットを取り囲むコア/シェル構造を有することもできる。コアとシェルとの界面は、シェルに存在する元素の濃度が中心へ行くほど低くなる濃度勾配(gradient)を有することができる。
【0068】
量子ドットの形態は、当該分野において通常使用される形態であれば、特に制限されない。一例として、球状、棒状、ピラミッド状、ディスク状、多重枝状(multi-arm)、または立方体(cubic)ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノファイバ、ナノプレート粒子などの形態のものを使用することができる。
【0069】
また、量子ドットのサイズは、特に制限されず、当該分野に公知の通常の範囲内で適切に調節することができる。一例として、量子ドットの平均粒径(D50)は、約2~10nmでもある。このように、量子ドットの粒径が約2~10nmの範囲に制御される場合、所望の色相の光を放出することができる。例えば、InPを含有する量子ドットコア/シェルの粒径が約5~6nmである場合、約520~550nm波長の光を放出することができ、一方、InPを含有する量子ドットコア/シェルの粒径が約7~8nmである場合、約620~640nm波長の光を放出することができる。例えば、青色発光QDとしては、非カドミウム(Cd)系III-V族QD(例えば、InP、InGaP、InZnP、GaN、GaAs、GaP)を使用することができる。
【0070】
また、前記量子ドットは、約40nm以下の発光波長スペクトルの半値幅(full width of half maximum: FWHM)を有することができ、当該範囲で色純度や色再現性を向上させることができる。また、そのような量子ドットを通じて発光される光は、全方向に放出されるところ、広視野角が向上しうる。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、前記量子ドットの含量は、量子ドットの特性によって、量子ドット組成物の総重量を基準として1~60重量%、好ましくは、20~50重量%である。
【0072】
オリゴマー
本発明による量子ドット組成物において、オリゴマーは、炭素-炭素二重結合を含む化合物、及びチオール基を含む化合物を含む。好ましくは、炭素-炭素二重結合を含む化合物を2種以上含み、例えば、分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物と、分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物とを1種ずつ含んでもよい。
【0073】
分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物を含む場合、分子量は、約200~1000g/molであり、好ましくは、約200~800g/molであり、さらに好ましくは、約200~500g/molである。例えば、トリアリルイソシアヌレートなどを使用することができる。
【0074】
このとき、炭素-炭素二重結合を含む化合物は、フェノール基を含む化合物を1種以上含み、好ましくは、フェノール基を含む化合物は、分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物であってもよい。量子ドット組成物を硬化した後、後工程において、量子ドットの表面のリガンドなどがガス形態(以下、アウトガス)に排出され、硬化膜、発光素子及びディスプレイ装置へのクラック発生、合紙不良などの製品不良が生じる問題があるが、フェノール基を含む化合物を1種以上含む場合、アウトガスの生成を減少させることができる利点がある。例えば、フェノールアクリレートなどを使用することができる。
【0075】
チオール基を含む化合物は、2~4官能基を含み、好ましくは、分子当たり2~4個のチオール基を含み、さらに好ましくは、2~3個のチオール基を含む。例えば、エチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)などを使用することができる。
【0076】
炭素-炭素二重結合を含む化合物とチオール基を含む化合物とのモル比は、2.75:1~5:1であり、好ましくは、2.75:1~4:1であり、さらに好ましくは、2.75:1~3.5:1である。
【0077】
また、分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物と、分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物とのモル比は、0.01:1~1.5:1であり、好ましくは、0.1:1~1.5:1であり、さらに好ましくは、0.3:1~1.2:1である。
【0078】
炭素-炭素二重結合を含む化合物において、炭素-炭素二重結合は、独立して、アリル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基を含む群から選択される1つ以上であり、これに限定されない。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、前記オリゴマーの含量は、量子ドットの特性によって、量子ドット組成物の総重量を基準として1~50重量%、好ましくは、10~45重量%である。
【0080】
リガンド
本発明による量子ドット組成物において、リガンドは、量子ドットの表面を改質させる役割を行う。量子ドットは、疎水性を有する表面特性により光重合性モノマーに対する分散に障壁が存在するが、適切なリガンドにより量子ドットの表面を改質させ、光重合性モノマーに対する量子ドットの混和性を向上させることができる。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、前記リガンドは、下記化学式1で表される一次リガンド、及びカルボキシル基を含む炭素数3~40の二次リガンドを含んでもよい。
【0082】
【化3】
前記化学式1において、Mは2~4価の金属であり、
mは1~4の整数であり、Xは独立して炭素数3~20の有機基であり、
nは2~4の整数である。
【0083】
一次リガンドは、金属塩とチオール系化合物とを反応させて形成される金属-チオール系化合物でもある。
【0084】
前記一次リガンドにおいて、Mは2~4価の金属である。例えば、前記Mは、2族~14族の金属であり、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、InまたはSnでもある。前記化学式1において、nは、Mの価数によって決定され、2~4の整数である。
【0085】
また、前記化学式1において、Xは、独立して炭素数3~20の有機基でもある。例えば、前記Xは、エステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、カルボキシル基(-C(=O)-OH)、スルホニル(-SO2-)、スルフィド(-S-)、スルホキシド(-SO-)、アルコキシ基(CnH2n+1O-)及びヒドロキシ基(-OH)からなる群から選択される作用基を1つ以上含む、炭素数3~20のアルキレン基またはアルケニレン基でもある。具体的には、前記Xは、エステル(-C(=O)O-)作用基を含む、炭素数4~20の有機基でもある。
【0086】
前記一次リガンドにおいて、チオール基は、量子ドットの表面との親和性(affinity)に優れているので、量子ドットの光重合性モノマーに対する分散性を向上させることができる。また、前記一次リガンドは、チオール基だけでなく、エステル、エーテル、カルボニル、カルボキシル基、アルコキシ基、シクロアルカリまたはヒドロキシ基を含むことで、表面改質された量子ドットの疎水性を有する極性モノマーに対する分散性が極大化されうる。また、そのような量子ドットを含む量子ドット組成物は、ディスプレイ工程に有利な特性(例えば、低粘度)を有することができる。一方、炭素数が3以下のチオール系化合物を使用する場合、量子ドットの表面改質は可能であるが、表面改質された量子ドットの高い極性により、一般的な溶媒及びモノマーに対する分散が困難であるという問題が生じる。
【0087】
前記二次リガンドは、炭素数が3~40であり、カルボキシル基を含んでもよい。また、本発明の一実施形態によれば、前記二次リガンドは、チオール基を含まない。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、前記二次リガンドは、下記化学式2で表される。
【化4】
前記化学式2において、
Lは、単結合であるか、あるいは置換もしくは非置換のC1-C20アルキレン基、及び置換もしくは非置換のC1-C20アルケニレン基からなる群から選択され、
Aは、単結合であるか、あるいはエステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、スルホニル(-SO
2-)、スルフィド(-S-)及びスルホキシド(-SO-)からなる群から選択される作用基を1つ以上含むC1-C20アルキレン基またはアルケニレン基であり、
Rは、水素であるか、あるいは置換もしくは非置換のC1-C20アルキル基、及び置換もしくは非置換のC1-C20アルケニル基からなる群から選択される。
【0089】
好ましくは、前記二次リガンドにおいて、Aは、エステル(-COO-)、エーテル(-O-)及びこれらの組み合わせを含んでもよい。また、前記Aは、C2-C15アルキレン基またはアルケニレン基、好ましくは、C2-C10アルキレン基またはアルケニレン基でもある。
【0090】
一般的に、チオール系リガンドは、量子ドットの表面との反応性が高いことが知られている。しかし、チオール系リガンドのみを含む量子ドット組成物は、有害な臭気が生じたり、粘度が上昇して保存安定性が低下したりする問題が発生し、インクジェット用組成物に使用するのに適していない。本発明による量子ドット組成物は、チオール系リガンドを含む一次リガンドと、チオール基を含まない二次リガンドとを共に使用することで、低粘度及び優秀な保存安定性を表している。また、前記二次リガンドは、エステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、カルボキシル基(-C(=O)-OH)などの作用基を含むことで、光重合性モノマーに対する分散性に優れている。一方、二次リガンドの炭素数が16個以上である場合、量子ドットの表面改質が行われないか、一般的な溶媒及びモノマーに対する分散性が阻害される問題点が発生しうる。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、前記一次リガンドと二次リガンドとのモル比は、1:30~20:1であり、好ましくは、1:15~10:1であり、さらに好ましくは、1:8~5:1であるが、これに制限されない。
【0092】
また、本発明の一実施形態によれば、前記量子ドットとリガンドとの混合割合は、1:1~20重量比、好ましくは、1:1~10重量比、さらに好ましくは、1:5~10重量比である。ここで、前記リガンドは、一次リガンドと二次リガンドとの和を意味する。
【0093】
光重合性モノマー
本発明による量子ドット組成物において、光重合性モノマーは、量子ドット(QD)が分散される剤形、すなわち、高分子マトリックスの全体架橋密度をコントロールしてマトリックスの構造及び諸般の物性を発現する役割を行う。また、柔軟性(flexibility)並びに他の素材との接着性及び付着性を改善することができる。
【0094】
前記光重合性モノマーは、(メタ)アクリレート系モノマーを含んでもよい。使用可能なモノマーは、当該分野において通常使用するモノマーであれば、特別な制限なく使用することができる。
【0095】
一例として、(メタ)アクリレート系モノマーは、(メタ)アクリル基、ビニル基及びアリル基のうち少なくとも1つを含んでもよい。具体的には、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、2-フェノキシエチルアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリトリトールヘキサメタクリレートなどがある。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が混合されて使用されてもよい。本発明において、光重合性モノマーとして、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートは、量子ドット組成物の粘度特性を達成するのに好ましい。
【0096】
本発明において、(メタ)アクリルアミド系モノマーの含量は、量子ドットの特性によって、前記量子ドット組成物の総重量を基準として1~50重量%、好ましくは、3~40重量%である。
【0097】
光開始剤
本発明による量子ドット組成物において、光開始剤は、紫外線(UV)などの光源によって励起されて光重合を開始する役割を行う成分であって、当該分野における通常の光重合光開始剤を制限なく使用することができる。一例として、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物などを使用することができる。
【0098】
使用可能な光開始剤の非制限的な例を挙げれば、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、Irgacure 184、Irgacure 369、Irgacure 651、Irgacure 819、Irgacure 907、ベンジオンアルキルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルカタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトン、クロロアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2-クロロチオキサントン、2-エチルアントラキノン(2-ETAQ)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、ベンゾイルギ酸メチルなどがある。これらを単独で使用してもよく、2種以上混用してもよい。
【0099】
前記光開始剤の含量は、当該分野において公知の範囲内で適切に調節することができる。一例として、当該量子ドット組成物の総重量を基準として0.01~10重量%であり、好ましくは、0.1~5重量%である。前記光開始剤の含量が前述の範囲に該当する場合、マトリックスの物性低下なしに光重合反応が十分に行われうる。
【0100】
拡散剤
本発明による量子ドット組成物において、拡散剤は、光変換物質に吸収されない光を反射させ、前記反射された光を光変換物質が再び吸収するようにする。すなわち、拡散剤は、光変換物質に吸収される光の量を増加させ、光変換効率を増加させることができる。
【0101】
前記拡散剤は、当該分野において公知の拡散剤成分を制限なく使用することができる。そのような拡散剤は、拡散剤固形粉であってもよく、拡散剤が分散された分散液であってもよい。
【0102】
使用可能な拡散剤の非制限的な例は、硫酸バリウム(BaSO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、二酸化チタン(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)またはこれらの組み合わせを含んでもよい。また、拡散剤の平均粒径や形状は、特に制限されず、当該分野において公知の構成内で適切に取捨選択することができる。一例として、平均粒径(D50)は、150nm~250nmであり、具体的には、180nm~230nmである。前記拡散剤の平均粒径が前述の範囲内である場合、より優秀な光拡散効果を有することができ、光変換効率を増加させることができる。
【0103】
前記拡散剤の含量は、当該分野において公知の範囲内で適切に調節することができる。一例として、当該量子ドット組成物の総重量を基準として0.01~10重量%であり、好ましくは、0.1~5重量%である。拡散剤の含量が前述の範囲に該当する場合、マトリックスの物性低下なしに光変換効率向上効果を表すことができる。
【0104】
重合禁止剤
本発明による量子ドット組成物において、重合禁止剤は、ラジカルと反応して重合反応を起こさない低い反応性のラジカルまたは化合物を形成する物質であって、光重合反応の速度を調節することができる。
【0105】
前記重合禁止剤は、当該分野において公知の物質を制限なく使用することができる。例えば、重合禁止剤としては、キノン系化合物、フェノールあるいはアニリン系化合物、芳香族ニトロ及びニトロソ化合物を使用することができる。具体的には、ヒドロキノン(HQ)、メチルヒドロキノン(THQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、ヒドロキノンモノエチルエーテル(EEHQ)、1,4-ベンゾキノン(BQ)、2,5-ジフェニルベンゾキノン(DPBQ)、メチル-1,4-ベンゾキノン(MBQ)、フェニル-1,4-ベンゾキノン(PBQ)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,6-ジフェニル-4-オクタデシルオキシフェノール、カテコール、フェノチアジン、ビス(α-メチルベンジル)フェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノチアジン、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジプロピルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸などがある。これらを単独で使用してもよく、2種以上混用してもよい。
【0106】
前記重合禁止剤の含量は、当該分野において公知の範囲内で適切に調節することができる。一例として、当該量子ドット組成物の総重量を基準として0.01~2重量%であり、好ましくは、0.05~1重量部である。
【0107】
その他添加剤
前述の成分以外に、本発明の量子ドット組成物は、発明の効果を阻害しない範囲で当該分野において公知の添加剤を制限なく使用することができる。このとき、添加剤の含量は、当該分野において公知の範囲内で適切に調節することができる。
【0108】
使用可能な添加剤の一例を挙げれば、シラン系化合物、シロキサン系化合物、酸化防止剤、重合抑制剤、潤滑剤、表面調整剤、界面活性剤、付着促進剤、消泡剤、スリップ剤、溶剤、湿潤剤、光安定剤、汚れ防止剤、柔軟剤、増粘剤、ポリマーなどがある。これらを単独で使用してもよく、2種以上混用してもよい。
【0109】
シラン系化合物は、マトリックスに接着性を付与する役割を行い、シロキサン系化合物は、ウェッティング性を付与する役割を行う。そのようなシラン系化合物とシロキサン系化合物は、当該分野において公知の成分を制限なく使用することができる。
【0110】
酸化防止剤は、熱や光照射による退色、及びオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種酸化性ガスによる退色を抑制するものであり、本発明では、酸化防止剤を添加することで、マトリックスの着色の防止や、分解による膜厚さの減少を低減させることができる。使用可能な酸化防止剤の例には、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオウレア誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などがある。
【0111】
レベリング剤は、前記量子ドット組成物を被覆する際に平坦かつ滑らかにコーティングされるようにレベリングすることで、組成物内の接着力をより上昇させる目的で含まれうる。前記レベリング剤には、アクリル系、シリコン系などを単独または2種以上混合して含んでもよい。一例として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを含み、前記ポリエーテル鎖中に(メタ)アクリロイル基を付加して含んでもよい。
【0112】
界面活性剤は、前記量子ドット組成物の混和及び塗布均一性のために含まれうる。前記界面活性剤には、当該分野において公知の通常の陽イオン性、陰イオン性、双性イオン性、非イオン性界面活性剤を使用することができ、一例として、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤及びフッ素シリコン系界面活性剤のうち1種以上を使用することができる。
【0113】
光安定剤は、紫外線吸収剤であって、マトリックスの耐候性を高める効果を有する。柔軟剤は、乾燥した高分子マトリックス内にクラック発生を緩和させるためのものであり、硬化されたマトリックス内のクラック発生を緩和し、耐衝撃性及び耐屈曲性を改善することができる。
【0114】
<量子ドット組成物の製造方法>
本発明の他の実施形態による量子ドット組成物の製造方法は、量子ドットの表面を改質した後、光重合性モノマーに分散して量子ドット分散液を得て、オリゴマーと混合するが、前記オリゴマーは、炭素-炭素二重結合を含む化合物、及びチオール基を含む化合物を混合して製造されうる。
【0115】
前記炭素-炭素二重結合を含む化合物と、前記チオール基を含む化合物とのモル比を2.75:1~5:1で混合することを含んでもよい。
【0116】
このとき、炭素-炭素二重結合を含む化合物を2種以上含んでもよく、分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物と、分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物とを1種ずつ含んでもよく、前記分子当たり炭素-炭素二重結合を2~3個含む化合物と、前記分子当たり炭素-炭素二重結合を1個含む化合物とのモル比を0.01:1~1.5:1で混合することを含んでもよい。
【0117】
オリゴマーは、熱開始剤及び重合禁止剤をさらに含んでもよく、前記オリゴマーが量子ドット分散液と混合される前に、常温で撹拌された後、重合反応を経てオリゴマーとして製造されうる。
【0118】
その他、前記炭素-炭素二重結合を含む化合物、及びチオール基を含む化合物については、重複する範囲で前記量子ドット組成物において前述の通りである。
【0119】
量子ドットの表面を改質することは、下記化学式1で表される一次リガンドを加えて一次表面改質した後、カルボキシル基を含む炭素数3~40の二次リガンドを加えて二次表面改質することを含んでもよい。
【0120】
【化5】
(前記化学式1において、
Mは2~4価の金属であり、
mは1~4の整数であり、Xは独立して炭素数3~20の有機基であり、
nは2~4の整数である。)
【0121】
具体的には、量子ドットを合成し、量子ドットが合成された溶液に一次リガンドを加えて一次表面改質した後、遠心分離して一次表面改質された量子ドットを得、一次表面改質された量子ドットを光重合性モノマーに分散させた後、カルボキシル基を含む炭素数3~40の二次リガンドを加えて量子ドットを二次表面改質することができる。
【0122】
ここで、量子ドットの製造方法は、従来に多数の文献に知られた方法(例えば、高温注入法、微細流体反応器方法、マイクロ波放射を利用した方法など)を使用することができる。
【0123】
量子ドットは、量子ドットが合成された溶液の温度を約60℃に維持した状態で一次リガンドを投入し、30分~3時間撹拌して反応させ、量子ドットの表面を一次改質した後、二次リガンドを投入し、30分~3時間撹拌して反応させ、量子ドットの表面を二次改質することができる。
【0124】
前記量子ドットの表面改質は、2段階に分けて量子ドットの表面改質を進行し、一次リガンドと二次リガンドとの反応による付加生成物の形成を防止することができる。一方、前記量子ドットに前記一次リガンドと二次リガンドを同時に投入する場合、一次リガンドのチオール基と二次リガンドのアクリレートとのチオール-エン(thiol-ene)反応によって付加生成物が形成されうる。そのような付加生成物は、表面改質された量子ドットを光重合性モノマーに分散させるとき、量子ドット組成物の粘度を向上させうる。
【0125】
前述の方法により量子ドットの表面を改質した後、表面改質された量子ドットは遠心分離を通じて得られる。また、量子ドット分散液は、得られた表面改質された量子ドットを光重合性モノマーに分散させて製造されうる。
【0126】
加えて、量子ドット分散液及びオリゴマーに光重合性モノマーをさらに投入し、重合禁止剤、光開始剤及び拡散剤を追加して混合することをさらに含んでもよい。
【0127】
<硬化物、発光素子及びディスプレイ装置>
本発明は、前述の量子ドット組成物を含む硬化物を提供することができる。本発明による硬化物は、光特性に優れ、具体的には、光吸収率が85%以上、好ましくは、90%以上でもある。また、前記硬化物は、光変換率が30%以上、具体的には、35%以上でもある。
【0128】
前記硬化物は、前述の量子ドット組成物を基板上にEHDインクジェット噴射方法により塗布してパターンを形成する段階と、前記パターンを硬化する段階とを含んで製造されうる。
【0129】
本発明は、前述の量子ドット組成物を含む発光素子を提供する。例えば、カラーフィルタは、背面光源から出る白色光から画素単位で赤色、緑色、青色の3色を抽出し、液晶ディスプレイでカラーを具現可能にする薄膜フィルム形態の光学部品である。
【0130】
そのようなカラーフィルタは、染色法、顔料分散法、印刷法及び電着法などの方法によって製造される。また、量子ドット組成物を含むカラーフィルタは、インクジェット法によって製造される。インクジェット法は、所望の画素にのみ材料を使用するため、不要な材料の無駄を防止することができる。
【0131】
また、本発明は、前述の量子ドット組成物を含むディスプレイ装置を提供する。ここで、ディスプレイ装置は、液晶表示装置(LCD)、電界発光表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、有機発光素子(OLED)などがあるが、これらに限定されない。
【0132】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲が実施例に限定されるものではない。
【0133】
[製造例1-1]一次リガンド1-1の製造
1)約280gのポリオキシエチレングリコールメチルエーテル400及び約50gのメルカプトコハク酸を入れ、約100℃まで昇温して約12時間反応させる。反応終了後、常温に冷却し、ビス-(メトキシポリオキシエチレングリコール)メルカプトスクシナート-400)330gを得る。
2)丸底フラスコに、塩化亜鉛(ZnCl2)1.7gとビス-(メトキシポリオキシエチレングリコール)メルカプトスクシナート-400)32gとをヘキシルアセテート134.5gに入れた後、約60℃で撹拌して溶解させる。その後、真空状態で2時間HClを除去し、一次リガンドZn-ビス-(メトキシポリオキシエチレングリコール)メルカプトスクシナート-400)を製造した。
【0134】
[製造例1-2]一次リガンド1-2の製造
丸底フラスコに、塩化亜鉛(ZnCl2)と化学式A-1で表される化合物とを約1:3のモル比でヘキシルアセテートに入れた後、約60℃で熱撹拌を通じて溶解させる。その後、真空状態で約2時間HClを除去し、一次リガンド1-2を製造した。
【0135】
【0136】
[製造例1-3]一次リガンド1-3の製造
製造例1-2において、化学式A-1で表される化合物の代わりに、化学式A-2で表される化合物を使用することを除いては、製造例1-2と同様にして一次リガンド1-3を製造した。
【0137】
【0138】
[製造例1-4]一次リガンド1-4の製造
製造例1-2において、化学式A-1で表される化合物の代わりに、化学式A-3で表される化合物を使用することを除いては、製造例1-2と同様にして一次リガンド1-4を製造した。
【0139】
【0140】
[製造例1-5]一次リガンド1-5の製造
製造例1-2において、化学式A-1で表される化合物の代わりに、化学式A-4で表される化合物を使用することを除いては、製造例1-2と同様にして一次リガンド1-5を製造した。
【0141】
【0142】
[製造例1-6]一次リガンド1-6の製造
製造例1-6において、化学式A-1で表される化合物の代わりに、化学式A-5で表される化合物を使用することを除いては、製造例1-2と同様にして一次リガンド1-6を製造した。
【0143】
【0144】
[製造例2-1]二次リガンド2-1の製造
丸底フラスコに、化学式B-1で表される化合物をヘキシルアセテートに入れた後、常温で約1時間撹拌し、二次リガンド2-1を製造した。
【0145】
【0146】
[製造例2-2]二次リガンド2-2の製造
製造例2-1において、化学式B-1で表される化合物の代わりに、化学式B-2で表される化合物を使用することを除いては、製造例2-1と同様にして二次リガンド2-2を製造した。
【0147】
【0148】
[製造例2-3]二次リガンド2-3の製造
製造例2-1において、化学式B-1で表される化合物の代わりに、化学式B-3で表される化合物を使用することを除いては、製造例2-1と同様にして二次リガンド2-3を製造した。
【0149】
【0150】
[製造例2-4]二次リガンド2-4の製造
製造例2-1において、化学式B-1で表される化合物の代わりに、化学式B-4で表される化合物を使用することを除いては、製造例2-1と同様にして二次リガンド2-4を製造した。
【0151】
【0152】
[製造例2-5]二次リガンド2-5の製造
製造例2-1において、化学式B-1で表される化合物の代わりに、化学式B-5で表される化合物を使用することを除いては、製造例2-1と同様にして二次リガンド2-5を製造した。
【0153】
【0154】
[製造例2-6]二次リガンド2-6の製造
製造例2-1において、化学式B-1で表される化合物の代わりに、化学式B-6で表される化合物を使用することを除いては、製造例2-1と同様にして二次リガンド2-6を製造した。
【0155】
【0156】
[製造例3]量子ドット(QD)分散液の製造
1)InZnP/ZnSe/ZnS(コア/シェル/シェル)量子ドット分散溶液750ml(ハンソル、量子ドット固形粉20wt%;ヘキシルアセテート)を窒素雰囲気で約60℃まで昇温して撹拌する。前記製造された一次リガンド(1-1)であるZn-ビス-(メトキシポリオキシエチレングリコール)メルカプトスクシナート-400)を約9g入れ、約2時間撹拌し、量子ドットを一次表面改質した。
2)前記一次表面改質された量子ドットを含む溶液に、前記製造された二次リガンド(2-2)であるモノ(2-アクリロイルオキシエチル)スクシナートを約30g入れ、約2時間撹拌し、量子ドットを二次表面改質した。
3)前記表面改質が完了した量子ドットを含む溶液をシクロヘキサンで2回遠心分離して量子ドットパウダーを得た後、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(MIWON社製)に60wt%で分散させ、QD分散液を製造した。
【0157】
[製造例4]オリゴマーの製造
製造例4-1.オリゴマーAの製造
トリアリルイソシアヌレート100重量部を基準として、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1重量部及びメチルヒドロキノン0.1重量部を溶解させ、溶液Aを製造した。溶液A 25重量部、フェノキシエチルアクリレート50重量部及びエチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)25重量部を混合した後、室温で1時間撹拌した。撹拌後、反応器温度を約80℃に設定し、オリゴマー重合反応によってオリゴマーAを製造した。
【0158】
製造例4-2.オリゴマーBの製造
前記製造例4-1で製造した溶液A約42.9重量部、フェノキシエチルアクリレート約28.6重量部及びエチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)約28.6重量部を混合することを除いては、製造例4-1と同様にしてオリゴマーBを製造した。
【0159】
製造例4-3.オリゴマーCの製造
前記製造例4-1で製造した溶液A約29.2重量部、フェノキシエチルアクリレート約41.7重量部及びエチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)約29.2重量部を混合することを除いては、製造例4-1と同様にしてオリゴマーCを製造した。
【0160】
製造例4-4.オリゴマーDの製造
前記製造例4-1で製造した溶液A 20重量部、フェノキシエチルアクリレート40重量部及びエチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)40重量部を混合することを除いては、製造例4-1と同様にしてオリゴマーDを製造した。
【0161】
製造例4-5.オリゴマーEの製造
前記製造例4-1で製造した溶液A 50重量部、フェノキシエチルアクリレート25重量部及びエチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)25重量部を混合することを除いては、製造例4-1と同様にしてオリゴマーEを製造した。
【0162】
<実施例1-1>量子ドット組成物の製造
表面改質が完了した緑色量子ドット分散液(ハンソル、量子ドット高分子60wt%:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート40wt%)70重量部及びオリゴマーA 17.5重量部を混合した後、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(MIWON社製)5.4重量部、メチルヒドロキノン0.1重量部、光開始剤としてエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート2重量部、拡散剤として二酸化チタン5重量部を混合し、量子ドット組成物を製造した。
【0163】
<実施例1-2>
オリゴマーAの代わりに、製造例4-2で製造したオリゴマーBを使用したことを除いては、実施例1と同様である。
【0164】
<実施例1-3>
オリゴマーAの代わりに、製造例4-3で製造したオリゴマーCを使用したことを除いては、実施例1と同様である。
【0165】
<実施例1-4>
オリゴマーAの代わりに、製造例4-4で製造したオリゴマーDを使用したことを除いては、実施例1と同様である。
【0166】
<実施例1-5>
オリゴマーAの代わりに、製造例4-5で製造したオリゴマーEを使用したことを除いては、実施例1と同様である。
【0167】
<比較例1-1>
オリゴマーAの代わりに、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(MIWON社製)のモノマーを使用したことを除いては、実施例1と同様である。
【0168】
<比較例1-2>
オリゴマーAの代わりに、脂肪族ウレタンアクリレート系であるMIRAMER PU2042(MIWON社製)オリゴマーを使用したことを除いては、実施例1と同様である。
【0169】
<比較例1-3>
オリゴマーAの代わりに、エポキシアクリレート系であるMIRAMER SC6300(MIWON社製)オリゴマーを使用したことを除いては、実施例1と同様である。
【0170】
<実施例2-1>
表面改質が完了した赤色量子ドット分散液(ハンソル、量子ドット高分子60wt%:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート40wt%)46.5重量部及びオリゴマーA 35.5重量部を混合した後、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート10.9重量部、メチルヒドロキノン0.1重量部、光開始剤としてエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート2重量部、拡散剤として二酸化チタン5重量部を混合し、量子ドット組成物を製造した。
【0171】
<実施例2-2>
オリゴマーAの代わりに、製造例4-2で製造したオリゴマーBを使用したことを除いては、実施例2-1と同様である。
【0172】
<比較例2-1>
オリゴマーAの代わりに、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(MIWON社製)のモノマーを使用したことを除いては、実施例2-1と同様である。
【0173】
実施例及び比較例の組成を下記表1に整理した。
【0174】
【0175】
実験例1.QD分散液及びオリゴマー混合液の分散性及び安定性評価
組成のうちオリゴマーを含む実施例1-1~1-5、実施例2-1~2-2及び比較例1-2~1-3において、QD分散液及びオリゴマー組成のみを混合した混合液を製造した。その結果を下記表2及び
図1に示している。
【0176】
【0177】
実施例1-1、1-2、2-1及び2-2の混合液において、QD分散液とオリゴマーとの混合性が良好であり、均一に分散され、長時間置いても硬化や凝集現象が生じず、混合液の安定性にも優れるものであることがわかる。
【0178】
一方、実施例1-3~1-5及び比較例1-2、1-3の混合液は、それぞれ分散性や安定性が不十分であるものであることがわかる。具体的には、実施例1-3及び1-4は、室温でも熱硬化が生じ、混合液の一部がプラスチックのように固くなる現象が発見されており、実施例1-5の場合、量子ドットとオリゴマーが互いに絡み合って凝集する現象が生じ、分散性が非常に不十分であるものことがわかった。また、比較例1-2及び1-3では、硬化や凝集のような現象はみられていないが、全体的に混合性が良好でなく、混合液が不透明であることがわかった。
【0179】
図1を参照すると、実施例1-1及び1-2の混合液は透明であるが、比較例1-2及び1-3の混合液は混濁していることが分かる。
【0180】
実験例2.量子ドット硬化物の光変換率及び光吸収率評価
1)実施例のうち、分散性及び安定性が良好であった実施例1-1、1-2及び比較例1-1~1-3の緑色量子ドット組成物をスピンコーター(Mikasa社製、Opticoat MS-A150)で2cm×2cmガラス基板上に10μmの厚さに塗布し、395nm波長のLED硬化器を使用して4000mJ/cm2で照射し、硬化膜を製造した。次いで、積分球装置(QE-2100、大塚電子社製)に2cm×2cm単膜試片をローディングし、初期光吸収率、硬化後の光変換率(QE)を測定した。次いで、窒素雰囲気下、180℃で30分間熱処理(Post-bake)した後、光変換率(QE)を測定した。その結果を下記表3に示している。
【0181】
【0182】
実施例1-1、1-2及び比較例1-1~1-3で製造した硬化膜は、10μm~約0.2μmの範囲でほぼ均一な厚さを有して製造された。
【0183】
光吸収率の場合、実施例はいずれも87%以上の値を示し、光変換率は35%以上と優秀な光特性を表すことを確認することができた。
【0184】
一方、比較例は、比較例1-1を除いては、87%を超えず、比較例1-1さえ実施例より低い光吸収率を表しており、オリゴマーの代わりにモノマーが使用された比較例1-1の光変換率は32.8%と多少低い光特性を表しており、比較例1-2~1-3で使用されたオリゴマーは、量子ドット分散液との分散性が良好でなく、比較例1-1よりも低い30.7%、27.6%の光変換率を示している。
【0185】
また、実施例の場合、熱処理後の光変換率も35%以上に維持されており、それぞれ0.1%、0.9%の変化があり、熱処理前後の変化率はそれぞれ約0.2%、2.4%を示している。一方、比較例の場合、それぞれ0.1%、0.3%、1.7%の光変換率の減少があり、熱処理前後の変化率はそれぞれ約0.3%、0.9%、6.2%を示している。
【0186】
したがって、実施例1-1及び1-2の優秀な光特性が熱処理前後でいずれもよく維持されるので、発光素子やディスプレイ類などに適用されて製品化した場合、比較例に比べて光特性をより長時間よく維持することができるであろう。
【0187】
2)実施例2-1、2-2及び比較例2-1で製造された赤色量子ドット組成物を用いて、前記と同様の方法で硬化膜を製造した後、光吸収率及び光変換率を測定した。また、前記と同様の方法で熱処理後の光変換率を測定した。その結果を下記表4に示している。
【0188】
【0189】
実施例2-1、2-2及び比較例2-1で製造した硬化膜は、10μm~約0.1μmの範囲でほぼ均一な厚さを有して製造された。
【0190】
光吸収率の場合、実施例はいずれも90%以上の値を表し、光変換率は39%以上と非常に優秀な光特性を表すことを確認することができた。
【0191】
一方、オリゴマーの代わりにモノマーが使用された比較例の光吸収率は90%未満であり、光変換率は35%と実施例に比べて多少低い光特性を示している。
【0192】
また、実施例の場合、熱処理後の光変換率も39%以上に維持されており、それぞれ0.1%、0.4%の変化があり、熱処理前後の変化率はそれぞれ約0.2%、1.0%を示している。
【0193】
比較例の場合、熱処理後の光変換率が小幅上昇したとしても、36%のレベルに止まり、実施例に比べて光特性は良好でなかった。
【0194】
これを総合すれば、実施例2-1及び2-2の優秀な光特性が熱処理前後でいずれもよく維持されるので、発光素子やディスプレイ類などに適用されて製品化した場合、比較例に比べて光特性をより長時間よく維持することができるであろう。
【0195】
実験例3.量子ドット組成物の粘度評価
実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3の緑色量子ドット組成物の粘度を測定した。このとき、粘度は、常温(25℃)で回転式レオメータ(サーモサイエンティフィック社製HAAKE MARS)を使用して測定した。
【0196】
また、同様の方法により、実施例2-1~2-2及び比較例2-1の赤色量子ドット組成物の粘度を測定した。その結果を下記表5に示している。
【0197】
【0198】
緑色量子ドット組成物の実施例の粘度は約392cps及び417cpsを示しており、赤色量子ドット組成物の実施例の粘度は約495cps及び734cpsを示しており、インクジェットプリンティング用はいうまでもなく、EHDインクジェットプリンティングにも適した粘度を有することを確認した。
【0199】
一方、オリゴマーの代わりにモノマーが使用された比較例1-1及び2-1は、約35cps及び22cpsの低粘度を示しており、EHDインクジェットプリンティングには適しないことを確認した。
【0200】
また、オリゴマーを使用した比較例1-2及び1-3の場合、粘度基準上には適しているが、実験例1及び2の結果を考慮するとき、実際の適用には困難があると判断される。
【0201】
実験例4.EHD(electrohydrodynamic)インクジェットプリンティング(インクジェッティング性)評価
実施例1-1~1-2及び比較例1-1の緑色量子ドット組成物のインクジェッティング性(吐出性)を測定した。具体的には、iEHDプリンター(ENJET社製)装備を通じてノズル内径75μmを使用してEHDインクジェッティング性を評価した。
また、同様の方法により、実施例2-1~2-2及び比較例2-1の赤色量子ドット組成物のインクジェッティング性を測定した。その結果を下記表6に示している。
【0202】
【0203】
緑色量子ドット組成物の実施例は、いずれもノズルの目詰まりがなく、1.4kVデルタ電圧(-0.6kV~-2kV)とEHDインクジェットプリンティングが良好であることを確認し、赤色量子ドット組成物の実施例も、ノズルの目詰まりがなく、0.8kVデルタ電圧(-0.6kV~-1.5kV)とEHDインクジェットプリンティングが良好であることを確認した。
【0204】
一方、オリゴマーの代わりにモノマーが使用された比較例1-1及び2-1は、低粘度により、EHDプリンティング時に所望の部位にのみ正しくジェッティングされない問題を発見した。
【0205】
但し、オリゴマーを使用した比較例1-2及び1-3の場合、前記実験例3の結果に基づいてジェッティング性において適した粘度を有することを確認したが、前記実験例1の結果を総合するとき、組成物の混濁度が大きく、原料が析出する可能性があるので、ノズルの目詰まりが懸念され、ジェッティング性評価を行わなかった。
【0206】
本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で多様に修正または変形されて実施可能なことは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。