(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149464
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】予測方法、予測装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/27 20200101AFI20241010BHJP
G06F 30/398 20200101ALI20241010BHJP
G01R 31/30 20060101ALI20241010BHJP
G06F 119/08 20200101ALN20241010BHJP
【FI】
G06F30/27
G06F30/398
G01R31/30
G06F119:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061521
(22)【出願日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2023061594
(32)【優先日】2023-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】入来院 美代子
(72)【発明者】
【氏名】岩田 進裕
【テーマコード(参考)】
2G132
5B146
【Fターム(参考)】
2G132AA20
2G132AB14
2G132AC09
2G132AC10
2G132AL12
2G132AL21
5B146AA22
5B146DC03
5B146GL09
(57)【要約】
【課題】対象物の温度分布の予測を効率的に行う。
【解決手段】予測方法は、発熱体を1つ含む対象物と発熱体との物性情報を含む複数の第1データを学習データとしてAIモデルを生成する。予測方法は、複数の発熱体を含む対象物と複数の発熱体との物性情報を含む第2データから、複数の発熱体のうち1つの発熱体を含む対象物と1つの発熱体との物性情報を含む第3データを複数の発熱体ごとに生成する。予測方法は、複数の第3データをそれぞれAIモデルに入力し、1つの発熱体を含む対象物の第1予測温度分布を算出し、第1予測温度分布に基づいて、複数の発熱体を含む対象物の第2予測温度分布を算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を1つ含む対象物と前記発熱体との物性情報を含む複数の第1データを学習データとしてAIモデルを生成し、
複数の発熱体を含む対象物と前記複数の発熱体との物性情報を含む第2データから、前記複数の発熱体のうち1つの発熱体を含む対象物と前記1つの発熱体との物性情報を含む第3データを前記複数の発熱体ごとに生成し、
複数の前記第3データをそれぞれ前記AIモデルに入力して前記1つの発熱体を含む前記対象物の第1予測温度分布を算出し、
前記第1予測温度分布に基づいて、前記複数の発熱体を含む前記対象物の第2予測温度分布を算出する、
予測方法。
【請求項2】
前記第1データを用いて解析し第3予測温度分布を算出し、
前記第1データと前記第3予測温度分布とを学習データとして前記AIモデルを生成する、
請求項1に記載の予測方法。
【請求項3】
前記第1データを用いて解析し第3予測温度分布を算出し、
前記第3予測温度分布から前記発熱体を含み温度が所定の閾値となる位置の内部を抽出温度分布として抽出し、
前記第1データと前記抽出温度分布とを学習データとして前記AIモデルを生成する、
請求項1に記載の予測方法。
【請求項4】
前記第3データから前記発熱体を含む前記抽出温度分布と同じサイズの領域を第4データとして抽出し、
前記第4データを前記AIモデルに入力して前記1つの発熱体を含む前記対象物の第4予測温度分布を算出し、
前記第4予測温度分布に基づいて、前記複数の発熱体を含む前記対象物の前記第2予測温度分布を算出する、
請求項3に記載の予測方法。
【請求項5】
前記第2予測温度分布を前記発熱体の発熱に基づく輻射及び対流による補正をした補正温度分布を算出し、
前記第2予測温度分布と前記補正温度分布とを学習データとして第2AIモデルを生成する、
請求項1に記載の予測方法。
【請求項6】
前記第2予測温度分布を前記第2AIモデルに入力して前記複数の発熱体を含む前記対象物の第4予測温度分布を算出する、
請求項5に記載の予測方法。
【請求項7】
前記物性情報は、前記発熱体の発熱量と前記対象物の熱伝導率を有する、
請求項1に記載の予測方法。
【請求項8】
前記第2予測温度分布から前記発熱体ごとの前記第1予測温度分布を差し引いた差分である前記発熱体ごとの予測温度差分に基づく平均予測温度分布を算出し、
前記第2予測温度分布と前記平均予測温度分布とを学習データとして第3AIモデルを生成する、
請求項1に記載の予測方法。
【請求項9】
前記第2予測温度分布及び前記平均予測温度分布を前記第3AIモデルに入力して前記複数の発熱体を含む前記対象物の第5予測温度分布を算出し、
前記第5予測温度分布に基づいて前記対象物の温度ばらつき及び予測温度平均値を算出し、
前記対象物の温度ばらつき及び予測温度平均値を学習データとして第4AIモデルを生成する、
請求項8に記載の予測方法。
【請求項10】
前記対象物の温度ばらつき及び予測温度平均値を前記第4AIモデルに入力して前記複数の発熱体を含む前記対象物の予測温度と前記対象物の正解温度との間の特性角度を算出し、
前記特性角度を用いて前記第5予測温度分布を補正して前記対象物の第6予測温度分布を算出する、
請求項9に記載の予測方法。
【請求項11】
発熱体を1つ含む対象物と前記発熱体との物性情報を含む複数の第1データを学習データとしてAIモデルを生成し、
複数の発熱体を含む対象物と前記複数の発熱体との物性情報を含む第2データから、前記複数の発熱体のうち1つの発熱体を含む対象物と前記1つの発熱体との物性情報を含む第3データを前記複数の発熱体ごとに生成し、
複数の前記第3データをそれぞれ前記AIモデルに入力して前記1つの発熱体を含む前記対象物の第1予測温度分布を算出し、
前記第1予測温度分布に基づいて、前記複数の発熱体を含む前記対象物の第2予測温度分布を算出する、プロセッサを備える、
予測装置。
【請求項12】
発熱体を1つ含む対象物と前記発熱体との物性情報を含む複数の第1データを学習データとしてAIモデルを生成する処理と、
複数の発熱体を含む対象物と前記複数の発熱体との物性情報を含む第2データから、前記複数の発熱体のうち1つの発熱体を含む対象物と前記1つの発熱体との物性情報を含む第3データを前記複数の発熱体ごとに生成する処理と、
複数の前記第3データをそれぞれ前記AIモデルに入力して前記1つの発熱体を含む前記対象物の第1予測温度分布を算出する処理と、
前記第1予測温度分布に基づいて、前記複数の発熱体を含む前記対象物の第2予測温度分布を算出する処理と、をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予測方法、予測装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱流体解析の解析時間を短縮する熱流体プログラムが開示されている。熱流体プログラムは、情報処理装置に、解析領域における熱流体に関わる複数の解析結果を用いて主成分分析し、新たな解析条件を基に、該主成分分析の結果得られた分析パターンを重ね合わせて、最終的な解に近似する近似解を算出する処理を実行させる。熱流体解析プログラムは、情報処理装置に、該算出した近似解を初期状態として、新たな解析条件に対する熱流体解析を実行する処理を実行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、エレクトロニクス機器の処理高速化及び高機能化が求められている。しかしながら、エレクトロニクス機器には、電力が供給されることにより発熱する発熱体が数多く含まれ、発熱体による熱によって処理速度が低下するおそれがある。そのため、エレクトロニクス機器の開発段階の設計時に、例えば、基板に搭載予定の電子部品の配置に応じて、基板においてどのような発熱が生じるかを適切に評価したいというニーズがある。発熱体を含む対象物の温度分布は、例えば、シミュレーション技術を利用して予測できるが、対象物に複数の発熱体が含まれる場合、解析に数時間から数十時間と非常に長い時間かかることがある。
【0005】
特許文献1では、解析対象の解析結果を用いて算出した近似解を初期状態として熱流体解析を実行することで解析時間を短縮する。さらなる解析時間の短縮を実現するためにArtificial Intelligence(以下、「AI」と称する)技術を用いて対象物の温度分布を予測したい。しかしながら、対象物の温度分布を予測するAIモデルを生成するためには、対象物に含まれる発熱体の数、種類及び位置等が異なる様々なパターンの学習データを用意する必要があるため、学習データの作成に時間がかかり非効率である。
【0006】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、対象物の温度分布の予測を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、発熱体を1つ含む対象物と前記発熱体との物性情報を含む第1データを複数作成し、前記第1データを学習データとしてAIモデルを生成し、複数の発熱体を含む対象物と前記複数の発熱体との物性情報を含む第2データから、前記複数の発熱体のうち1つの発熱体を含む対象物と前記1つの発熱体との物性情報を含む第3データを前記複数の発熱体ごとに生成し、複数の前記第3データをそれぞれ前記AIモデルに入力し、前記1つの発熱体を含む前記対象物の第1予測温度分布を算出し、前記第1予測温度分布に基づいて、前記複数の発熱体を含む前記対象物の第2予測温度分布を算出する、予測方法を提供する。
【0008】
また、本開示は、発熱体を1つ含む対象物と前記発熱体との物性情報を含む第1データを複数作成し、前記第1データを学習データとしてAIモデルを生成し、複数の発熱体を含む対象物と前記複数の発熱体との物性情報を含む第2データから、前記複数の発熱体のうち1つの発熱体を含む対象物と前記1つの発熱体との物性情報を含む第3データを前記複数の発熱体ごとに生成し、複数の前記第3データをそれぞれ前記AIモデルに入力し、前記1つの発熱体を含む前記対象物の第1予測温度分布を算出し、前記第1予測温度分布に基づいて、前記複数の発熱体を含む前記対象物の第2予測温度分布を算出する、プロセッサを備える、予測装置を提供する。
【0009】
また、本開示は、発熱体を1つ含む対象物と前記発熱体との物性情報を含む第1データを複数作成する処理と、前記第1データを学習データとしてAIモデルを生成する処理と、複数の発熱体を含む対象物と前記複数の発熱体との物性情報を含む第2データから、前記複数の発熱体のうち1つの発熱体を含む対象物と前記1つの発熱体との物性情報を含む第3データを前記複数の発熱体ごとに生成する処理と、複数の前記第3データをそれぞれ前記AIモデルに入力する処理と、前記1つの発熱体を含む前記対象物の第1予測温度分布を算出する処理と、前記第1予測温度分布に基づいて、前記複数の発熱体を含む前記対象物の第2予測温度分布を算出する処理と、をコンピュータに実行させる、プログラムを提供する。
【0010】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又は、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、対象物の温度分布の予測を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】サロゲートモデル1を生成するための学習データを示す図
【
図5】予測方法1を用いた予測温度分布の算出方法を示す図
【
図6】予測方法1を用いた予測温度分布の算出処理のフローチャート
【
図7】サロゲートモデル2を生成するための学習データを示す図
【
図8】予測方法2を用いた予測温度分布の算出方法を示す図
【
図9】予測方法2を用いた予測温度分布の算出処理のフローチャート
【
図10】サロゲートモデル3を生成するための学習データを示す図
【
図11】サロゲートモデル3を用いた輻射と対流との補正を説明する図
【
図12】補正温度分布を算出する処理を示すフローチャート
【
図14】サロゲートモデル3で補正する前の予測温度分布の温度精度を示す図
【
図15】サロゲートモデル3で補正した後の補正温度分布の温度精度を示す図
【
図16】サロゲートモデル3の改良に基づくサロゲートモデル4の概要例を示す図
【
図17】IC3個で学習して得たサロゲートモデル4でIC3個~IC20個の各サンプルを対象として予測した特性例を示す図
【
図18】サロゲートモデル4の学習、予測の動作概要例を示す図
【
図19】サロゲートモデル5の学習、予測の動作概要例を示す図
【
図20】予測方法5に係る基板の温度分布の予測動作例を時系列に示す図
【
図21】予測方法5に係る基板の温度分布の予測動作例を時系列に示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を適宜参照して、本開示に係る予測方法、予測装置及びプログラムを具体的に開示した実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0014】
まず、
図1を参照して、AIを用いて温度分布を予測する概要を説明する。
図1は、AIを用いて温度分布を予測する概念図である。
【0015】
従来、発熱体を含む対象物の温度分布は、発熱体の発熱量及び熱伝導率等からComputational Fluid Dynamic(以下、「CFD」と称する)等のシミュレーション技術を用いて予測される。しかしながら、CFDを用いた温度分布の予測は、例えば数時間から数十時間という非常に長い時間を計算に要するという課題がある。
【0016】
例えば、対象物として発熱体である素子を複数含む基板が挙げられる。素子は、例えば、コイル、コンデンサ、ダイオード、Integrated Circuit又はLarge Scale Integration等である。基板は、用途に応じて含まれる素子の数、大きさ及び種類が異なり、それぞれの基板に対しシミュレーション技術を用いて温度分布を解析すると膨大な時間がかかってしまう。なお、対象物は基板に限られず、エンジン又は発熱体を含む製品(例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等)等の発熱体を含む任意の物であってよい。
【0017】
従来の解析方法では温度分布の予測に時間がかかってしまうが、Convolutional Neural Network等のAI技術を用いることで対象物の温度分布の予測に要する時間を数秒から数十秒に大幅に短縮できる可能性がある。
【0018】
対象物に含まれる発熱体の発熱量、面内の熱伝導率、面外の熱伝導率及び輻射率等の物性情報が紐づいた情報(以下、「構造情報」と称する)が入力データとして用意される。構造情報は、例えば、対象物を縦横線で区切られた1つ1つのマス目に分割されたグリッドそれぞれに当該物性情報が紐づいている情報である。
【0019】
構造情報がAIモデルに入力されることで、AIモデルで予測された温度分布が算出される。AIモデルは、例えば、物理モデルの替わりに機械学習等を用いて物理プロセスを計算するサロゲートモデルである。物理モデルとは例えばCFD等の古典物理学を用いたシミュレーション技術のことである。以下では、対象物の温度分布を算出するためのAIモデルとしてサロゲートモデルを用いて説明する。
【0020】
このように、サロゲートモデルを用いて対象物の予測される温度分布(以下、「予測温度分布」と称する)の算出を行うことで解析時間を大幅に短縮することができる。しかしながら、サロゲートモデルを生成するためには非常に多くの学習データを用意する必要がある。例えば、N個(N:1以上の整数)の発熱体が含まれる対象物の温度分布を予測したい場合、対象物に発熱体が1個からN個含まれるそれぞれのパターンの構造情報が学習データとして必要になる。また、対象物に発熱体が1個からN個含まれるそれぞれのパターンで発熱体の位置関係が異なる構造情報が学習データとして必要になる。つまり、対象物に含まれる発熱体の種類及び数が多い程、高精度に温度分布を予測できるサロゲートモデルを生成するためには、膨大な数の学習データを用意する必要があり学習データの作成に時間がかかってしまう。
【0021】
また、教師あり学習を用いてサロゲートモデルを生成する場合、教師データの作成が必要になる。教師データとして、構造情報と構造情報の正解データとして予測温度分布とのデータが必要である。つまり、全ての構造情報それぞれについて予測温度分布をシミュレーション技術を用いて算出する必要がある。シミュレーション技術を用いた予測温度分布の算出には時間がかかるため、全ての構造情報の予測温度分布を算出して教師データを作成するには非常に時間がかかる。
【0022】
また、非常に多くの学習データを用意しても、学習データをAIに学習させサロゲートモデルを生成するのに時間がかかるという課題がある。サロゲートモデルの学習時間は、学習データの数が多いと、例えば、数年以上に及んでしまう可能性もある。対象物の形状、熱伝導率等の物性情報及び含まれる発熱体の種類及び数が変わると、それぞれの対象物に対するサロゲートモデルが必要になるため、学習データの作成の煩雑さ及び学習時間の観点から現実的ではない。
【0023】
このような課題を解決するために、本実施の形態では、熱の重ね合わせの原理を利用することで容易にサロゲートモデルを生成し、生成したサロゲートモデルから高精度に対象物の予測温度分布を算出する。以下、本実施の形態に係る予測方法について説明する。
【0024】
次に、
図2を参照して、予測装置10のブロック図を説明する。
図2は、予測装置10のブロック図である。
【0025】
予測装置10は、対象物の予測温度分布を算出する装置である。予測装置10は、プロセッサ11、メモリ12、通信I/F13及び表示デバイス14を含む。
【0026】
プロセッサ11は、例えばCentral Processing Unit、Digital Signal Processor、Graphical Processing UnitもしくはField Programmable Gate Arrayである。プロセッサ11は、予測装置10の全体的な動作を司るコントローラとして機能する。プロセッサ11は、予測装置10の各部の動作を統括するための制御処理、予測装置10の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理及びデータの記憶処理を行う。プロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラム及びAIモデルに従って動作する。プロセッサ11は、メモリ12に記憶された学習済みのAIモデルに従い対象物の予測温度分布を算出する。プロセッサ11は、動作時にメモリ12を使用し、プロセッサ11が生成又は取得したデータをメモリ12に一時的に保存する。
【0027】
メモリ12は、例えばRandom Access Memory(以下、「RAM」と称する)とRead Only Memory(以下、「ROM」と称する)とを用いて構成され、予測装置10の動作に必要なプログラム、対象物の予測温度分布を算出するための学習済みのAIモデル、さらには、動作中に生成されたデータを一時的に保持する。RAMは、例えば、予測装置10の動作中に使用されるワークメモリである。ROMは、例えば、予測装置10を制御するためのプログラムを予め記憶して保持する。
【0028】
通信I/F13は、予測装置10と外部装置(不図示)との間で無線又は有線で通信を行うインターフェース回路である。外部装置とは、例えば、対象物の予測温度分布を算出するためのAIモデルを作成するサーバ装置又は対象物の情報(対象物に含まれる発熱体の位置及び物性情報等)を有する装置等である。ここでI/Fは、インターフェースのことを表す。通信I/F13は、ネットワークを介して外部装置又は外部のサーバ装置等と通信してもよい。通信I/F13による通信方式は、例えば、Wide Area Network、Local Area Network、Long Term Evolution、4G、5G等の移動体通信、電力線通信、近距離無線通信(例えばBluetooth(登録商標)通信)又は携帯電話用の通信等である。
【0029】
表示デバイス14は、算出された対象物の予測温度分布の結果等が表示される。また、表示デバイス14は、ユーザ(例えば、対象物の予測温度分布を算出したい人)からの入力操作を受け付けてもよい。表示デバイス14は、ユーザから対象物の構造情報に関する入力、サロゲートモデルの生成に関する条件、予測温度分布を算出する際の条件等を受け付けてもよい。例えば、表示デバイス14は、ユーザから対象物に含まれる発熱体の位置、種類、数及び大きさ等の情報の入力を受け付けてもよい。表示デバイス14は、例えば、タッチパネルディスプレイ又はディスプレイ等である。なお、予測装置10は、ユーザからの入力操作を受け付ける場合、マウス又はキーボード等を含んでもよい。
【0030】
次に、
図3を参照して、対象物の予測温度分布の2つの予測方法について説明する。
図3は、予測方法1,2の模式図である。
【0031】
複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布の算出方法として、まず、予測方法1を説明する。
【0032】
プロセッサ11は、複数の発熱体が含まれる対象物の構造情報を基に、対象物に発熱体が1つ含まれる構造情報を対象物に含まれる発熱体ごとに作成する。プロセッサ11は、複数の発熱体が含まれる対象物の構造情報を、例えば、ユーザによって入力された情報(例えば、発熱体及び対象物の物性情報及び発熱体の位置等)を用いて作成してもよいし、予めユーザによって作成されメモリ12に保存されているものを用いてもよいし、通信I/F13を介して外部装置から取得してもよい。例えば、対象物に3つの発熱体が含まれる場合、プロセッサ11は、発熱体ごとに3つの構造情報を作成する。
【0033】
プロセッサ11は、学習済みのAIモデルに作成した構造情報を入力し、1つの発熱体が含まれる対象物の予測温度分布を算出する。学習済みのAIモデルの作成方法に関しては後述する。
【0034】
温度分布T1,T2,T3は、プロセッサ11によって算出された1つの発熱体が含まれる対象物の予測温度分布である。領域Dは、発熱体によって温度が上昇している領域を表す。
【0035】
ここで、熱伝導は、式(1)で示す通り重ね合わせの原理が成り立つ。
【0036】
【0037】
式(1)の関数は例えば、式(2)で示される熱伝導方程式である。
【0038】
【0039】
ここで、Tは温度、ρは密度、τは時間、cは比熱、αは熱伝導率、
【数3】
は単位当たりの発熱量及びx,y,zは座標を表す。このように、熱伝導は重ね合わせの原理が成り立つため、プロセッサ11によって算出された1つの発熱体が含まれる対象物の予測温度分布を足し合わせた予測温度分布を、複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布とみなすことができる。プロセッサ11は、温度分布T1,T2,T3を足し合わせ対象物全体の予測温度分布である温度分布T4を算出する。
【0040】
次に、複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布の算出方法として、予測方法2を説明する。
【0041】
プロセッサ11は、複数の発熱体が含まれる対象物の構造情報を基に、対象物に発熱体が1つ含まれる構造情報を対象物に含まれる発熱体ごとに作成する。例えば、対象物に3つの発熱体が含まれる場合、プロセッサ11は、発熱体ごとに3つの構造情報を作成する。
【0042】
プロセッサ11は、発熱体を1つ含む構造情報から発熱体の位置を含み発熱体から発生する熱が伝導する領域を切り出した抽出データを作成する。熱が伝導する領域に関しては後述する。
【0043】
プロセッサ11は、抽出データを学習済みのAIモデルに入力し、発熱体を1つ含む構造情報から切り出した領域の予測温度分布を算出する。
図3に示す例では、プロセッサ11は、温度分布T5,T6,T7を算出する。
【0044】
上述した通り、熱伝導は重ね合わせの原理が成り立つため、プロセッサ11は、温度分布T5,T6,T7を重ね合わせて対象物全体の温度分布T8を算出する。プロセッサ11は、温度分布T8を算出する際、温度分布T5,T6,T7がない領域の温度は発熱体を含まない場合の対象物の温度(例えば、環境下の室温)であるとみなして対象物全体の予測温度分布を作成してもよい。
【0045】
以下では、予測方法1及び予測方法2の対象物の予測温度分布の算出方法について詳しく説明する。
【0046】
<予測方法1>
図4を参照して、サロゲートモデル1を生成するための学習データについて説明する。
図4は、サロゲートモデル1を生成するための学習データを示す図である。
【0047】
プロセッサ11は、学習データとして、発熱体PAを1個含む対象物の構造情報20を作成する。プロセッサ11は、例えば、ユーザによって予測装置10に入力される対象物の熱伝導率等の物性情報、対象物に含まれる発熱体PAの位置、数、大きさ及び種類等の情報及び発熱体PAの物性情報を用いて構造情報20を作成してもよい。つまり、プロセッサ11は、ユーザの入力操作に基づき1つずつ構造情報20を作成する。また、プロセッサ11は、メモリ12に保存されているもしくはユーザから入力された対象物の熱伝導率等の物性情報及び発熱体PAの物性情報を用いて、対象物の中で発熱体PAが存在する位置及び発熱体PAの物性情報をランダムに設定した複数の構造情報20を作成してもよい。また、プロセッサ11は、通信I/F13を介して外部装置(不図示)から構造情報20を取得してもよい。
【0048】
構造情報20は、対象物の各位置での発熱体PAの発熱量、対象物の面内熱伝導率及び対象物の面外熱伝導率の情報が紐づいている3つのレイヤ構造のデータである。例えば、対象物に所定のグリッド幅のメッシュが設定されている場合、構造情報20は、各グリッドに発熱体PAの発熱量、対象物の面内熱伝導率及び対象物の面外熱伝導率の情報が紐づいているデータである。
【0049】
また、対象物の熱伝導率(面内熱伝導率及び面外熱伝導率)は対象物の位置に応じて異なる値となってもよい。例えば、対象物が基板の場合、配線のパターンによって基盤上で熱伝導率が異なる領域が生じる。例えば、対象物の熱伝導率が36[W/mK]であり、領域R1,R2は、熱伝導率が4[W/mK]である場合、構造情報20は、領域R1,R2の部分に対象物全体とは異なる熱伝導率の4[W/mK]が紐づいたデータとなる。なお、熱伝導率の値は一例であり、構造情報20は、一部の領域に対象物全体の熱伝導率よりも高い値の熱伝導率が紐づいたデータであってもよい。
【0050】
プロセッサ11は、作成した構造情報20をシミュレーション解析して、対象物の予測温度分布21を算出する。プロセッサ11は、予測温度分布21を構造情報20の正解データとして紐づけて学習データとする。プロセッサ11は、全ての構造情報20それぞれの予測温度分布21を算出し、全ての構造情報20の構造情報20と予測温度分布21とが紐づいたデータを作成し学習データとする。学習データとして用いられる構造情報から算出された当該予測温度分布は、第3予測温度分布と読み替えられる。
【0051】
プロセッサ11は、作成した構造情報20と構造情報20の正解データである予測温度分布21とが紐づいた学習データをAIに学習させサロゲートモデル1(AIモデルの一例)を生成する。AIは、例えば、U-Net等である。なお、プロセッサ11は、構造情報20のみを学習データとしてAIに学習させサロゲートモデル1を生成してもよい。
【0052】
プロセッサ11は、生成したサロゲートモデル1をメモリ12に保存する。
【0053】
次に、
図5を参照して、予測方法1を用いた予測温度分布の算出方法を説明する。
図5は、予測方法1を用いた予測温度分布の算出方法を示す図である。
【0054】
プロセッサ11は、複数の発熱体を含む対象物の構造情報30(第2データの一例)を作成する。発熱体(発熱体PA1,PA2,PA3)を3つ含む対象物の例を用いて説明する。なお、発熱体の位置、大きさ及び数は一例であり
図5の例に限られない。プロセッサ11は、外部装置から構造情報30を取得してもよいし、対象物の物性値、発熱体の物性値及び発熱体の位置等の構造情報の作成に必要な情報をユーザの入力操作に基づき取得し構造情報30を作成してもよいし、予めメモリ12に保存された構造情報30を用いてもよい。なお、複数の発熱体を含む対象物の構造情報30は第2データと読み替えられる。
【0055】
プロセッサ11は、構造情報30から発熱体を1つ含むデータ(以下、「個別データ」と称する)を作成する。個別データは、第3データの一例である。つまり、プロセッサ11は、構造情報30を用いて、発熱体PA1を含む個別データ31、発熱体PA2を含む個別データ32及び発熱体PA3を含む個別データ33を作成する。個別データの作成方法として、プロセッサ11は、構造情報30から発熱体PA2と発熱体PA3との発熱量の情報を削除し、対象物の熱伝導率(面内熱伝導率及び面外熱伝導率)と発熱体PA1の発熱量との情報が紐づいた構造情報を個別データ31として作成する。つまり、プロセッサ11は、発熱体PA1の対象物内の位置の情報を保持して、個別データ31を作成する。なお、個別データは第3データと読み替えられる。
【0056】
プロセッサ11は、個別データ31,32,33をそれぞれサロゲートモデル1に入力し予測温度分布34,35,36を算出する。サロゲートモデル1は、
図4で説明した学習済みのサロゲートモデルである。予測温度分布34は、対象物に発熱体PA1が1つ含まれる場合の温度分布の予測である。予測温度分布35は、対象物に発熱体PA2が1つ含まれる場合の温度分布の予測である。予測温度分布36は、対象物に発熱体PA3が1つ含まれる場合の温度分布の予測である。個別データから算出された予測温度分布は第1予測温度分布と読み替えられる。
【0057】
図3で説明した通り、熱伝導は重ね合わせの原理が成り立つため、プロセッサ11は、予測温度分布34、予測温度分布35及び予測温度分布36を足し合わせて、発熱体PA1,PA2,PA3を含む対象物の予測温度分布37を算出する。個別データから算出された予測温度分布を足し合わせて算出された予測温度分布は第2予測温度分布と読み替えられる。
【0058】
次に、
図6を参照して、予測方法1を用いた予測温度分布の算出処理を説明する。
図6は、予測方法1を用いた予測温度分布の算出処理のフローチャートである。
図6のフローチャートの各処理はプロセッサ11によって実行される。
図6に示すフローチャートの一連の処理は、
図4で説明したサロゲートモデル1の生成方法と
図5で説明した対象物の構造情報からサロゲートモデル1を用いて対象物の予測温度分布を算出する方法とをまとめた内容である。そのため、
図4及び
図5で説明した詳しい処理の内容は
図6では説明を省略する。
【0059】
プロセッサ11は、発熱体を1個含む場合の対象物の構造情報を作成する。プロセッサ11は、作成した構造情報をシミュレーション解析し対象物の予測温度分布を算出する。プロセッサ11は、構造情報と予測温度分布とを紐づけたデータ(第1データの一例)を発熱体1個の場合の学習データとして複数作成する(ステップSt100)。
【0060】
プロセッサ11は、ステップSt100の処理で作成した学習データをAIに学習させて発熱体を1個含む対象物の温度分布を予測するサロゲートモデル1を生成する(ステップSt101)。
【0061】
プロセッサ11は、温度分布を予測する対象である複数の発熱体を含む対象物の構造情報を作成する(ステップSt102)。なお、プロセッサ11は、当該構造情報を作成せずメモリ12に保存されている構造情報、ユーザから入力された構造情報又は外部装置から取得した構造情報を用いてもよい。
【0062】
プロセッサ11は、ステップSt102の処理で作成した構造情報を用いて、発熱体を1つ含む個別データを対象物に含まれる複数の発熱体それぞれについて作成する(ステップSt103)。
【0063】
プロセッサ11は、ステップSt103の処理で作成した複数の個別データをサロゲートモデル1に入力して発熱体を1つ含む対象物の予測温度分布を算出する(ステップSt104)。
【0064】
プロセッサ11は、ステップSt104の処理で算出した予測温度分布を足し合わせて複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出する(ステップSt105)。
【0065】
以上により、プロセッサ11は、熱伝導の重ね合わせの原理を利用し発熱体を1つ含む対象物の予測温度分布を足し合わせることで、複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出することができる。このように、プロセッサ11は、熱伝導の重ね合わせの原理を用いて複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出することで、複数の発熱体を含む対象物の温度分布を予測するサロゲートモデルではなく発熱体を1つ含む対象物の温度分布を予測するサロゲートモデルを生成すればよい。
【0066】
通常、複数の発熱体を含む対象物の温度分布を高精度に予測するサロゲートモデルを作成するためには、非常に多くの学習データを作成する必要がある。例えば、発熱体がN個(Nは1以上の整数)含まれる対象物では、プロセッサ11は、高精度に温度分布を予測するサロゲートモデルを作成するには、対象物に含まれる発熱体の数を1~N個に変化させたそれぞれのケースの構造情報を作成する必要がある。さらに、プロセッサ11は、対象物に含まれる発熱体の数を1~N個に変化させたそれぞれのケースにおいて、発熱体それぞれの発熱量及び発熱体の位置関係を変化させた構造情報を作成する必要がある。このように、プロセッサ11は構造情報を作成する際、変化させるパラメータが多く膨大な数の構造情報を作成しなくてはならないため学習データの作成に時間がかかる。
【0067】
また、プロセッサ11は、構造情報に紐づける正解データとして、作成した構造情報それぞれについてシミュレーション解析を実行し予測温度分布を算出する必要がある。シミュレーション解析は時間がかかるため、膨大な数の構造情報それぞれの予測温度分布を全て算出するのは非常に時間がかかり現実的ではない。
【0068】
また、構造情報と予測温度分布とを紐づけた学習データを作成したとしても、学習データの数が多いとサロゲートモデルを生成する学習時間が非常に長くなる。
【0069】
また、大きさ、形状又は熱伝導率等が異なる対象物は、高精度に予測温度分布を算出するためにはそれぞれ異なるサロゲートモデルを生成する必要があり、サロゲートモデルを生成する作業が非常に煩雑かつ時間がかかり現実的ではない。
【0070】
本実施の形態に係る予測方法1は、発熱体を1つ含む対象物の温度分布を予測するサロゲートモデルを生成すればよいため、学習データの数を減らすことができる。例えば、プロセッサ11は、発熱体がN個含まれる対象物では、それぞれの発熱体を1つ含む対象物の構造情報を作成すればよい。プロセッサ11は、発熱体が1つしかないため、対象物内の発熱体の位置を変化させた構造情報を作成すればよい。また、N個の発熱体の中で同じ種類(例えば、発熱量が同じ発熱体)の発熱体が存在する場合、全ての発熱体それぞれの構造情報を作成しなくても、種類ごとに構造情報を作成すればよい。このように、本実施の形態に係る予測方法1は、作成する構造情報の数を大幅に減らすことができる。
【0071】
作成する構造情報の数を減らすことができれば、シミュレーション技術を用いて予測温度分布を算出する回数を減らすことができる。これにより、本実施の形態に係る予測方法1は、学習データを作成する時間を削減することができる。
【0072】
また、複数の発熱体を含む対象物の温度分布を予測するサロゲートモデルを生成するための学習データの数よりも少ない数の学習データを用いて学習するため、サロゲートモデルを生成する時間を短縮することができる。
【0073】
これにより、本実施の形態に係る予測方法1は、生成した発熱体を1つ含む対象物の温度分布を予測するサロゲートモデルを用いて算出した予測温度分布を重ね合わせることで発熱体を複数含む対象物の予測温度分布を効率的に算出できる。
【0074】
<予測方法2>
次に、
図7を参照して、サロゲートモデル2を生成するための学習データについて説明する。
図7は、サロゲートモデル2を生成するための学習データを示す図である。
【0075】
プロセッサ11は、学習データとして発熱体PAを1個含む構造情報20を作成する。構造情報20は、
図4で説明した構造情報20と同様であるため説明を省略する。
【0076】
プロセッサ11は、作成した構造情報20をシミュレーション解析して対象物の予測温度分布41を算出する。
【0077】
プロセッサ11は、算出した予測温度分布41の中で発熱体が存在する位置もしくは温度が一番高い位置を中心として、所定の領域reを抽出し抽出温度分布42を作成する。ここで所定の領域reは、発熱体が存在する位置もしくは温度が一番高い位置を中心として、温度が予め定められた閾値以下となる位置を結んだ線の内部である。領域reは、矩形又は円等の形状である場合は、領域reの端の温度が全て閾値以下となるように設定される。なお、領域reは、発熱体が存在する位置もしくは温度が一番高い位置が必ずしも中心にある必要はなく、温度が予め定められた閾値以下となる位置を結んだ線の内部に発熱体が存在する位置もしくは温度が一番高い位置があればよい。このように、プロセッサ11は、発熱体から発生する熱が拡散する領域を予測温度分布41に設定し抽出する。
【0078】
プロセッサ11は、抽出温度分布42を構造情報20の正解データとして紐づけたデータを学習データとする。このように、プロセッサ11は、予測温度分布41ではなく抽出温度分布42を学習データすることで、発熱体から発生する熱が伝わらない領域の情報を削除し学習データの容量を減らすことができる。また、プロセッサ11は、対象物の発熱体の熱の効果がない領域の情報を削除することで余計な情報を削除し高精度なサロゲートモデルを生成することができる。プロセッサ11は、学習データをAIに学習させてサロゲートモデル2を生成する。プロセッサ11は、生成したサロゲートモデル2をメモリ12に保存する。
【0079】
次に、
図8を参照して、予測方法2を用いた予測温度分布の算出方法を説明する。
図8は、予測方法2を用いた予測温度分布の算出方法を示す図である。
【0080】
プロセッサ11は、複数の発熱体を含む対象物の構造情報50を作成する。発熱体(発熱体PA4,PA5,PA6,PA7,PA8)を5つ含む対象物の例を用いて説明する。なお、発熱体の位置、大きさ及び数は一例であり
図8の例に限られない。プロセッサ11は、外部装置から構造情報50を取得してもよいし、対象物の物性値、発熱体の物性値及び発熱体の位置等の構造情報の作成に必要な情報をユーザの入力操作に基づき取得し構造情報50を作成してもよいし、予めメモリ12に保存された構造情報50を用いてもよい。なお、複数の発熱体を含む対象物の構造情報50は第2データと読み替えられる。
【0081】
プロセッサ11は、構造情報50から発熱体を1つ含むデータ(以下、「個別データ」と称する)を作成する。つまり、プロセッサ11は、構造情報50を用いて、発熱体PA4を含む個別データ51及び発熱体PA5を含む個別データ52を作成する。なお、
図8では図示を省略しているが発熱体PA6,PA7,PA8についても同様に個別データを作成する。個別データの作成方法は
図5で説明した方法と同様である。
【0082】
プロセッサ11は、サロゲートモデル2を作成する際に用いた抽出温度分布42(
図7参照)と同じ大きさの領域を発熱体の位置を中心として個別データから抽出する。以下、上述した方法で個別データから抽出したデータを抽出個別データと称する。抽出個別データは、第4データと読み替えられる。プロセッサ11は、個別データ51から領域re1を抽出した抽出個別データをサロゲートモデル2に入力し予測温度分布53を算出する。プロセッサ11は、個別データ52から領域re2を抽出した抽出個別データをサロゲートモデル2に入力し予測温度分布54を算出する。発熱体PA6,PA7,PA8をそれぞれ含む個別データ(不図示)に関しても同様に予測温度分布を算出する。予測温度分布53及び予測温度分布54は第4予測温度分布と読み替えられる。
【0083】
図3で説明した通り、熱伝導は重ね合わせの原理が成り立つため、プロセッサ11は、それぞれの発熱体(PA4,PA5,PA6、PA7,PA8)を含む個別データから算出された予測温度分布(例えば、予測温度分布53、予測温度分布54)を全て足し合わせて発熱体PA4,5,6,7,8を含む対象物の予測温度分布55を算出する。個別データから算出された予測温度分布を足し合わせて算出された予測温度分布は第2予測温度分布と読み替えられる。
【0084】
次に、
図9を参照して、予測方法2を用いた予測温度分布の算出処理を説明する。
図9は、予測方法2を用いた予測温度分布の算出処理のフローチャートである。
図9のフローチャートの各処理はプロセッサ11によって実行される。
図9に示すフローチャートの一連の処理は、
図7で説明したサロゲートモデル2の生成方法と
図8で説明した対象物の構造情報からサロゲートモデル2を用いて対象物の予測温度分布を算出する方法とをまとめた内容である。そのため、
図7及び
図8で説明した詳しい処理の内容は
図9では説明を省略する。
【0085】
プロセッサ11は、発熱体を1個含む場合の対象物の構造情報を作成する。プロセッサ11は、作成した構造情報をシミュレーション解析し対象物の予測温度分布を算出する。プロセッサ11は、発熱体から発生する熱が拡散する領域(以下、「設定領域」と称する)を設定する(ステップSt200)。
【0086】
プロセッサ11は、ステップSt200の処理で設定した設定領域の予測温度分布を抽出温度分布として抽出する(ステップSt201)。
【0087】
プロセッサ11は、ステップSt201の処理で抽出した抽出温度分布を構造情報の正解データとして構造情報に紐づけた学習データを作成する(ステップSt202)。
【0088】
プロセッサ11は、ステップSt202の処理で作成した学習データをAIに学習させて発熱体を1個含む対象物の温度分布を予測するサロゲートモデル2を生成する(ステップSt203)。
【0089】
プロセッサ11は、温度分布を予測する対象である複数の発熱体を含む対象物の構造情報を作成する(ステップSt204)。なお、プロセッサ11は、当該構造情報を作成せずメモリ12に保存されている構造情報、ユーザから入力された構造情報又は外部装置から取得した構造情報を用いてもよい。
【0090】
プロセッサ11は、ステップSt204の処理で作成した構造情報を用いて、発熱体を1つ含む個別データを対象物に含まれる複数の発熱体それぞれについて作成する(ステップSt205)。
【0091】
プロセッサ11は、設定領域と同じサイズの発熱体を含む領域を、ステップSt205の処理で作成した個別データから抽出する(ステップSt206)。プロセッサ11は、ステップSt205の処理で作成した個別データ全てに対してステップSt206の処理を実行する。
【0092】
プロセッサ11は、ステップSt206の処理で抽出した抽出個別データをそれぞれサロゲートモデルに入力して発熱体を1つ含む対象物の予測温度分布を算出する(ステップSt207)。
【0093】
プロセッサ11は、ステップSt207の処理で算出した予測温度分布を足し合わせて複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出する(ステップSt208)。
【0094】
以上により、本実施の形態に係る予測方法2は、シミュレーション解析により算出された予測温度分布の一部のみを学習データとすることで学習データの容量を削減し、効率よくサロゲートモデルを生成できる。これにより、予測方法2は、サロゲートモデルの生成から複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布の算出までに係る時間を削減し効率的に対象物の温度分布を予測できる。
【0095】
<予測方法3>
予測方法1及び予測方法2は、熱伝導の重ね合わせの原理を利用して対象物の予測温度分布を算出する。さらに高精度の対象物の温度分布を予測するためには、熱の輻射及び対流の効果を考慮する必要がある。しかしながら、輻射及び対流は重ね合わせの原理が成り立たない。例えば、発熱体を1個含む対象物の輻射及び対流の効果も含めた予測温度分布を算出するサロゲートモデルを生成し、当該サロゲートモデルによって発熱体を1個含む対象物の予測温度分布を算出し、足し合わせて発熱体を複数含む対象物の予測温度分布を算出する。しかしながら、輻射及び対流は重ね合わせの原理が成り立たず、発熱体を1つ含む対象物の予測温度分布を足し合わせても、複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を高精度に再現することができない。
【0096】
このような理由から、予測方法1,2のサロゲートモデル1,2とは別に発熱体の熱の輻射及び対流の補正をするサロゲートモデルを生成する必要がある。以下では、対象物の予測温度分布を算出する際に輻射及び対流の補正を行う予測方法3について説明する。
【0097】
まず、
図10を参照して、サロゲートモデル3を生成するための学習データについて説明する。
図10は、サロゲートモデル3を生成するための学習データを示す図である。
【0098】
予測温度分布60は、予測方法1又は予測方法2で算出した予測温度分布である。
【0099】
プロセッサ11は、予測温度分布60をシミュレーション解析して発熱体の熱の輻射及び対流の補正をした予測温度分布61を算出する。輻射及び対流の補正をするシミュレーション解析に用いる方程式として、例えば、ナビエストークスの方程式及びシュテファン=ボルツマンの法則等である。予測温度分布61は、補正温度分布と読み替えられる。
【0100】
プロセッサ11は、予測温度分布61を正解データとして予測温度分布60に紐づけた学習データを複数作成する。
【0101】
プロセッサ11は、作成した学習データをAIに学習させサロゲートモデル3を生成する。
【0102】
次に、
図11を参照して、サロゲートモデル3を用いた輻射と対流との補正を説明する。
図11は、サロゲートモデル3を用いた輻射と対流との補正を説明する図である。
【0103】
プロセッサ11は、複数の発熱体を含む対象物の構造情報70を作成する。構造情報70の作成方法については
図5で説明した方法と同様であるため説明を省略する。
【0104】
プロセッサ11は、構造情報70から発熱体を1つ含む個別データ71を作成する。
【0105】
プロセッサ11は、個別データ71をサロゲートモデル1に入力し、発熱体を1つ含む対象物の予測温度分布72を算出する。
【0106】
プロセッサ11は、算出した予測温度分布72を足し合わせて複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出する。
【0107】
なお、
図11に示す例では、対象物の予測温度分布73の算出に予測方法1を用いる例を説明したが、予測方法2を用いて対象物の予測温度分布73が算出されてもよい。
【0108】
プロセッサ11は、予測温度分布73をサロゲートモデル3に入力して輻射及び対流の補正をした予測温度分布74を算出する。予測温度分布74は、第5予測温度分布と読み替えられる。
【0109】
次に、
図12を参照して、補正温度分布を算出する処理を説明する。
図12は、補正温度分布を算出する処理を示すフローチャートである。
図12のフローチャートの各処理はプロセッサ11によって実行される。
【0110】
プロセッサ11は、予測方法1又は予測方法2で算出した予測温度分布をシミュレーション解析して発熱体の熱の輻射と対流の補正をした補正温度分布を算出する。プロセッサ11は、予測方法1又は予測方法2で算出した予測温度分布と補正温度分布とを紐づけた学習データを作成する(ステップSt300)。なお、補正温度分布は予測温度分布に対する正解データである。
【0111】
プロセッサ11は、学習データをAIに学習させて発熱体の熱の輻射及び対流の補正するサロゲートモデル3を生成する(ステップSt301)。
【0112】
プロセッサ11は、温度分布を予測する対象である複数の発熱体を含む対象物の構造情報を作成する(ステップSt302)。なお、プロセッサ11は、当該構造情報を作成せずメモリ12に保存されている構造情報、ユーザから入力された構造情報又は外部装置から取得した構造情報を用いてもよい。
【0113】
プロセッサ11は、ステップSt302の処理で作成した構造情報を用いて、発熱体を1つ含む個別データを対象物に含まれる複数の発熱体それぞれについて作成する(ステップSt303)。
【0114】
プロセッサ11は、予測方法1を用いるか否かを判定する(ステップSt304)。プロセッサ11は、例えば、ユーザからの入力操作に基づき予測方法1を用いるか否かを判定してもよいし、予め定められた設定に基づき予測方法1を用いるか否かを判定してもよい。
【0115】
プロセッサ11は、予測方法1を用いると判定した場合(ステップSt304,YES)、ステップSt303の処理で作成した複数の個別データをサロゲートモデル1に入力して発熱体を1つ含む対象物の予測温度分布を算出する(ステップSt305)。
【0116】
プロセッサ11は、ステップSt305の処理で算出した予測温度分布を足し合わせて複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出する(ステップSt306)。
【0117】
プロセッサ11は、ステップSt306の処理で算出した予測温度分布をサロゲートモデル3に入力して発熱体の熱の輻射及び対流を補正した予測温度分布を算出する(ステップSt307)。
【0118】
プロセッサ11は、予測方法1を用いない(つまり、予測方法2を用いる)と判定した場合(ステップSt304,NO)、設定領域と同じサイズの発熱体を含む領域を、ステップSt303の処理で作成した個別データから抽出する(ステップSt308)。プロセッサ11は、ステップSt303の処理で作成した個別データ全てに対してステップSt308の処理を実行する。
【0119】
プロセッサ11は、ステップSt308の処理で抽出した抽出個別データをそれぞれサロゲートモデルに入力して発熱体を1つ含む対象物の予測温度分布を算出する(ステップSt309)。
【0120】
プロセッサ11は、ステップSt309の処理で算出した予測温度分布を足し合わせて複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出する(ステップSt307)。
【0121】
プロセッサ11は、ステップSt310の処理で算出した予測温度分布をサロゲートモデル3に入力して輻射及び対流の効果を補正した予測温度分布を算出する(ステップSt307)。
【0122】
なお、予測方法1又は予測方法2のどちらを用いて対象物の予測温度分布を算出するか予め定められている場合、プロセッサ11は、ステップSt304の処理を省略してもよい。予測方法1を用いる場合、プロセッサ11は、ステップSt303の処理の後、ステップSt305,St306及びSt307の処理を実行する。予測方法2を用いる場合、プロセッサ11は、ステップSt303の処理の後、ステップSt308,St309,St310及びSt307の処理を実行する。
【0123】
以上により、本実施の形態に係る予測方法3は、輻射及び対流の効果を補正することで、対象物の予測温度分布を高精度に算出することができる。
【0124】
<予測方法3で算出する予測温度分布の精度>
次に、予測方法3で算出する予測温度分布の精度について説明する。
【0125】
まず、
図13を参照して、温度精度の算出方法について説明する。
図13は、温度精度の算出方法を説明する図である。
【0126】
予測方法1、予測方法2又は予測方法3で算出された予測温度分布の精度は、対象物の構造情報をシミュレーション解析して算出された予測温度分布を正解データとして比較し、正解データとの差が小さい程精度が良いとして評価される。以下、予測温度分布の精度を温度精度と称する。
【0127】
温度精度を評価するために所定の幅の複数のグリッドにより構成されるメッシュResで分割される各領域の温度に着目する。
【0128】
例えば、領域C1の正解データの温度が20度とする。この場合、領域C1は、20度の温度帯域の領域として分類される。つまり、正解データの温度で各領域がどの温度帯域に分類されるか決定するものとする。領域C1の予測方法1、予測方法2又は予測方法3で算出された予測温度分布の温度が22度とする。この場合、領域C1の正解データと予測温度分布の誤差は、相対誤差で計算すると10%となる。
【0129】
また、領域C2の正解データの温度が30度とする。この場合、領域C2は、30度の温度帯域の領域として分類される。領域C2の予測方法1、予測方法2又は予測方法3で算出された予測温度分布の温度が24度とする。この場合、領域C2の正解データと予測温度分布の誤差は、20%となる。
【0130】
このように、各領域の誤差を全て算出する。同じ温度帯域の領域の誤差を平均した値を、予測誤差と定義する。例えば、20度の温度帯域が5つ存在し、それぞれの誤差が、8%、10%、13%、14%、21%の場合、予測誤差は、13.2%となる。予測誤差が小さい程、予測方法1、予測方法2又は予測方法3で算出された予測温度分布の精度は良いことを表す。
【0131】
なお、予測誤差の算出方法及び予測方法1、予測方法2又は予測方法3で算出された予測温度分布の精度の評価方法は一例であり上述した方法に限られない。
【0132】
次に、
図14を参照して、サロゲートモデル3で補正する前の予測温度分布の温度精度について説明する。
図14は、サロゲートモデル3で補正する前の予測温度分布の温度精度を示す図である。
【0133】
本実施の形態に係る予測方法1及び予測方法2は、1つ発熱体を含む対象物の予測温度分布から熱伝導の重ね合わせの原理を用いて複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出する。
【0134】
一方、従来の対象物の温度分布の予測方法(以下、「予測方法4」と称する)は、生成した複数の発熱体を含む対象物の温度分布を予測するサロゲートモデル(以下、「サロゲートモデル4」と称する)を用いる。予測方法4は、複数の発熱体を含む対象物の構造情報をサロゲートモデル4に入力し、対象物の予測温度分布を算出する。予測方法4で用いるサロゲートモデル4は、発熱体の数が異なる様々なパターンの構造情報と当該構造情報をシミュレーション解析して得られた予測温度分布とを学習データとし生成される。予測方法4では重ね合わせの原理を利用しないため、サロゲートモデル4の学習データとして用いる予測温度分布は、構造情報を輻射及び対流の効果も含めてシミュレーション解析して算出される。予測方法4は、本実施の形態の比較例として用いる。
【0135】
グラフG1,G2,G3,G4,G5,G6は、発熱体である素子を5つ含む基板の温度精度を表すグラフである。グラフG1,G2,G3,G4,G5,G6の横軸は温度帯域を表す。グラフG1,G2,G3,G4,G5,G6の縦軸は予測誤差を表す。
【0136】
グラフG1は、100個の学習データを用いて生成したサロゲートモデル1を利用した予測方法1によって算出された予測温度分布の温度精度である。例えば、温度帯域が20度の予測誤差はおよそ8%である。
【0137】
グラフG2は、300個の学習データを用いて生成したサロゲートモデル1を利用した予測方法1によって算出された予測温度分布の温度精度である。
【0138】
グラフG3は、800個の学習データを用いて生成したサロゲートモデル1を利用した予測方法1によって算出された予測温度分布の温度精度である。
【0139】
グラフG4は、100個の学習データを用いて生成したサロゲートモデル4を利用した予測方法4によって算出された予測温度分布の温度精度である。
【0140】
グラフG5は、300個の学習データを用いて生成したサロゲートモデル4を利用した予測方法4によって算出された予測温度分布の温度精度である。
【0141】
グラフG6は、800個の学習データを用いて生成したサロゲートモデル4を利用した予測方法4によって算出された予測温度分布の温度精度である。
【0142】
グラフG1,G2,G3の予測誤差は、グラフG4,G5,G6と比べて全体的に大きな値であることがわかる。グラフG1は、サロゲートモデル生成のための学習データ数が同じであるグラフG4と、例えば予測誤差が4%以上となる領域を比較すると、有意に予測誤差が大きいことが分かる。グラフG2についても同様に、サロゲートモデル生成のための学習データ数が同じであるグラフG5よりも予測誤差が大きい。グラフG3についても同様に、サロゲートモデル生成のための学習データ数が同じであるグラフG6よりも予測誤差が大きい。予測方法1で算出した予測温度分布は、輻射及び対流を考慮していないため、輻射及び対流を考慮している予測方法4よりも予測誤差が大きくなる。
【0143】
次に、
図15を参照して、サロゲートモデル3で補正した後の補正温度分布の温度精度について説明する。
図15は、サロゲートモデル3で補正した後の補正温度分布の温度精度を示す図である。
【0144】
グラフG7,G8,G9は、予測方法1で算出した予測温度分布をサロゲートモデル3で輻射及び対流の補正をした予測温度分布の温度精度である。つまり、グラフG7,G8,G9は、予測方法3で算出した予測温度分布の温度精度を表す。
【0145】
グラフG7において、予測方法1で用いたサロゲートモデル1の生成に用いた学習データ数が100個である。グラフG8において、予測方法1で用いたサロゲートモデル1の生成に用いた学習データ数が300個である。予測方法1で用いたサロゲートモデル1の生成に用いた学習データ数が800個である。
【0146】
まず、
図14で示したグラフG1,G2,G3と比較するとグラフG7,G8,G9はどれも温度精度が向上していることがわかる。グラフG7,G8,G9は、グラフG1,G2,G3の温度精度の算出に用いた予測温度分布を輻射及び対流の補正をした予測温度分布の温度精度である。つまり、輻射及び対流の補正を行うことで予測温度分布の温度精度が向上した。
【0147】
また、次に、グラフG8をグラフG6と比較すると、グラフG8の温度精度は、グラフG6の温度精度と同程度の精度となった。つまり、学習データを300個用いて生成したサロゲートモデル1を用いて算出した予測温度分布の温度精度は、学習データを800個用いて生成したサロゲートモデル4を用いて算出した予測温度分布の温度分布と同程度の温度精度であることがわかる。つまり、予測方法3を用いて温度分布を算出することで、少ない学習データ数で複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を高精度に予測することができる。
【0148】
なお、
図14及び
図15では予測方法1を用いた予測方法3説明したが、予測方法2を用いた予測方法3も同様に少ない学習データ数で複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を高精度に予測することができる。
【0149】
このように、本実施の形態に係る予測方法3は、従来よりも少ない学習データ数で生成したサロゲートモデル1,2を用いて複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を高精度に算出することができる。つまり、予測方法3は、サロゲートモデル1,2を生成するための学習データ数を削減することができる。これにより、予測方法3は、サロゲートモデル1,2を生成する学習時間を短縮し、複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を効率的に算出することができる。
【0150】
<予測方法5>
次に、
図16及び
図17を参照して、上述したサロゲートモデル3の改良により温度ばらつきが改善したことを説明する。
図16は、サロゲートモデル3の改良に基づくサロゲートモデル4の概要例を示す図である。
図17は、IC3個で学習して得たサロゲートモデル4でIC3個~IC20個の各サンプルを対象として予測した特性例を示す図である。以下の説明では、対象物の一例として基板、発熱体の一例としてIntegrated Circuit(IC)を例示するが、これらに限定されなくても構わない。
【0151】
図16のグラフ101は、基板上に搭載されたIC10個の予測温度分布を上述した予測方法1にしたがって算出した場合の各ICの予測温度分布の重ね合わせ後の特性例を示している。グラフ101の横軸は正解値、グラフ101の縦軸は予測値をそれぞれ示す。したがって、予測値(例えばy)が正解値(例えばx)と理想的に一致した場合には、予測値の特性はy=xの一次関数の直線Pr1と重なり、横軸(基準0度)から見て角度45度(45°)の線上にプロットされる。以下、このような予測値と正解値との関係をグラフで示した時の予測値の特性が有する特徴を表す角度のことを「特性角度」と称する場合がある。グラフ101では、予測値の特性Pr2は直線Pr1に倣って略直線状にプロットされているが、正解値から見てばらつきが大きくなっている。
【0152】
ところが、グラフ102に示すように、同様に基板上に搭載されたIC10個の予測温度分布を本件発明者らによるサロゲートモデル3の改良に基づき発案されたサロゲートモデル4(詳細は後述参照)を使用して算出すると、正解値に対する予測値のばらつきがかなり抑えられたことが判明した。つまり、グラフ102では、予測値の特性Pr3は直線Pr1に倣って略直線状にプロットされ、更に、グラフ101の特性Pr2に比べて正解値1から見たばらつきがかなり小さくなっている。このばらつきの抑制が効いているのは、サロゲートモデル4が、温度と温度差分との2つの要素を学習データとして使用し温度を予測するモデルとして学習されたものだからである。つまり、サロゲートモデル3が予測方法1又は予測方法2により得られた温度から輻射及び対流を考慮した温度を予測するというモデル(温度to温度)に対し、サロゲートモデル4では新たに温度差分(後述参照)を学習データとして使用し温度と温度差分から温度を予測しているモデル(温度+温度差分to温度)であることが特徴となっている。
【0153】
図17には、IC3個、IC5個、IC7個、IC10個、IC12個、IC15個、IC20個のそれぞれが基板上に搭載された場合のサロゲートモデル4を使用した結果として得られた各予測値と正解値との関係がプロットされたグラフである。各グラフには、予測値が正解値と一致する時の直線Pr1及び特性角度45度が示されており、
図16のグラフ102と同様に予測値の特性Pr11~Pr17の各々のばらつきが小さく抑えられていることが分かる。
【0154】
具体的には、グラフ111にはIC3個に対応する基板の温度の予測値の特性Pr11、グラフ112にはIC5個に対応する基板の温度の予測値の特性Pr12、グラフ113にはIC7個に対応する基板の温度の予測値の特性Pr13、グラフ114にはIC10個に対応する基板の温度の予測値の特性Pr14、グラフ115にはIC12個に対応する基板の温度の予測値の特性Pr15、グラフ116にはIC15個に対応する基板の温度の予測値の特性Pr16、グラフ117にはIC20個に対応する基板の温度の予測値の特性Pr17、がそれぞれ示されている。
図17に示すように、基板上に搭載されているICの個数が多ければ多い程に重ね合わされる温度分布の数が増えるため、相対的に予測値の温度が高くなる傾向が見られた。言い換えると、ICの個数が少なければ少ない程、サロゲートモデル4による予測値のプロットが直線Pr1に相対的に近づき、予測精度が増していることが分かった。
【0155】
以上を踏まえて、
図18を参照して、サロゲートモデル4の学習、予測の動作概要について説明する。
図18は、サロゲートモデル4の学習、予測の動作概要例を示す図である。
図18では、
図17のプロット例を踏まえてy=xの直線Pr1に近くなる(つまり予測精度が最も高くなった)IC3個が基板上に搭載されている場合を例示し、サロゲートモデル4(第3AIモデルの一例)の学習、予測の動作概要を説明する。
【0156】
サロゲートモデル4の学習に先立ち、IC3個が搭載された基板を対象として予測方法1又は予測方法2にしたがって算出された重ね合わせ後の予測温度分布120と、重ね合わせ後の予測温度分布120との温度差分3組の平均124とが、入力用の学習データとして準備される。また、入力用の学習データに対応する正解値としての予測温度分布125が、入力用に対する出力用の学習データとして準備される。プロセッサ11は、これらの入力用及び出力用の学習データが多数用意された上で機械学習等を行うことにより、学習データから予測温度分布(例えば予測温度分布125)を導出するためのサロゲートモデル4を生成する(サロゲートモデル4の学習)。
【0157】
なお、平均124は、重ね合わせ後の予測温度分布120から、IC1個ずつを発熱させた場合の予測温度分布121、122、123のそれぞれを差し引いた3個の差分の平均予測温度分布を示す。つまり、平均124は、「{(重ね合わせ後の予測温度分布120)-(予測温度分布121)}+{(重ね合わせ後の予測温度分布120)-(予測温度分布122)}+{(重ね合わせ後の予測温度分布120)-(予測温度分布123)}/3の計算により得られる予測温度分布となる。
【0158】
プロセッサ11は、サロゲートモデル4の学習後(言い換えると、生成後)の実際の推論(予測)時においても、重ね合わせ後の予測温度分布120と重ね合わせ後の予測温度との温度差分の平均とを入力して基板の予測温度分布125(第5予測温度分布の一例)を算出(導出)する(サロゲートモデル4による予測)。但し、
図17にも示されているように、ICの個数が少なければ少ない程、予測精度が高いことが分かったがICの個数が多くなればなる程、基板の予測値が正解値に対して相対的に高くなっている。つまり、ICの個数が多くなればなる程、基板の予測値に対応する特性角度が45度から徐々に乖離している。
【0159】
そこで、本件発明者らは、ICの個数に起因する予測値の正解値に対する特性角度の乖離を抑えるためのAIモデルとしてサロゲートモデル5を発案した。ここで、
図19を参照して、サロゲートモデル5(第4AIモデルの一例)の学習、予測の動作概要について説明する。
図19は、サロゲートモデル5の学習、予測の動作概要例を示す図である。
図19では、ICの個数(例えば
図17に示すIC3個、IC5個、IC7個、IC10個、IC12個、IC15個、IC20個)ごとの、角度(特性角度)及び温度ばらつき及び予測温度平均値の3軸で示される曲面Pr30の特性を示す3次元マップ130が図示されている。
【0160】
ここで、角度(特性角度)及び温度ばらつき及び予測温度平均値を次のように定義する。
【0161】
温度ばらつきとは、1枚の基板上で何度から何度まで予測された温度がばらついているかを定量的に示す。予測温度平均値とは、1枚の基板全体の予測温度の平均値(例えば64×64個のメッシュ(グリッド)ごとの予測温度の平均値)を示す。角度とは、上述した特性角度のことであり、正解値(x)と予測値(y)との関係例を示す2次元グラフの直線Pr1(y=x)の角度(45度)を基準とした時の角度のずれであり、具体的には温度の予測値の特性が有するばらつき程度を示す。
【0162】
サロゲートモデル5の学習に先立ち、サロゲートモデル4による出力である基板の予測温度分布125から得られる温度ばらつき及び予測温度平均値が、入力用の学習データとして準備される。また、入力用の学習データに対応する正解値としての角度(特性角度)が、入力用に対する出力用の学習データとして準備される。プロセッサ11は、これらの入力用及び出力用の学習データが多数用意された上で機械学習等を行うことにより、温度ばらつき及び予測温度平均値131から角度132(特性角度)を導出するためのサロゲートモデル5を生成する(サロゲートモデル5の学習)。
【0163】
プロセッサ11は、サロゲートモデル5の学習後(言い換えると、生成後)の実際の推論(予測)時においても、サロゲートモデル4の出力である基板の予測温度分布125から得られる温度ばらつき及び予測温度平均値を入力して基板の予測温度分布のプロット(
図20のグラフ141参照)を補正するための角度(特性角度)を算出(導出)する(サロゲートモデル5による予測)。これにより、プロセッサ11は、基板上に搭載されているICの個数の多寡に依らずに、サロゲートモデル5の出力である角度(特性角度)を用いた補正により、基板の予測温度分布を高精度に算出することができる。
【0164】
次に、
図20及び
図21を参照して、予測方法5による予測の対象となる基板SUB1の最終予測温度分布BP8を算出する過程を時系列に説明する。
図20は、予測方法5に係る基板の温度分布の予測動作例を時系列に示す図である。
図21は、予測方法5に係る基板の温度分布の予測動作例を時系列に示すフローチャートである。以下の説明では、発熱体1個のみが配置された基板SUB1の予測温度分布を算出するAIモデルとしてサロゲートモデル1を使用する例を説明するが、サロゲートモデル1に代えてサロゲートモデル2を使用しても構わない。
【0165】
先ず、プロセッサ11は、予測の対象となる基板SUB1のデータを生成する(t=t1)。基板SUB1の上には5個(n=5)の発熱体Q1、Q2、Q3、Q4、Q5が搭載されていることを例示する。なお、ここではn=5を例示しているが、5に限定されなくてもよいことは言うまでもない。プロセッサ11は、同じ基板SUB1上に搭載されている発熱体を1個ずつに分けて計5個の基板SUB1のデータを生成する(t=t2、St400)。プロセッサ11は、ステップSt400で生成された5個(n=5)の基板SUB1のデータそれぞれに、予測(計算)の条件を設定する(St401)。条件とは、例えばそれぞれの発熱体の発熱量、輻射率、熱伝導率(面内、面外)等の物性情報が該当する。
【0166】
プロセッサ11は、5個(n=5)の基板SUB1のデータそれぞれをサロゲートモデル1に入力することにより、それぞれの基板SUB1の予測温度分布BP1、BP2、BP3、BP4、BP5を算出する(t=t3、St402)。プロセッサ11は、ステップSt402で算出された基板SUB1の予測温度分布BP1、BP2、BP3、BP4、BP5を重ね合わせることにより、重ね合わせ後の予測温度分布BP6を算出する(t=t4、St403)。プロセッサ11は、ステップSt403で算出された重ね合わせ後の予測温度分布BP6との温度差分を算出する(St404)。例えば、プロセッサ11は、重ね合わせ後の予測温度分布から5個(n=5)の発熱体1個ずつ発熱させた場合の基板SUB1の予測温度差分の平均を差し引くことにより温度差分を算出する。プロセッサ11は、この算出した温度差分を用いて、重ね合わせ後の予測温度との温度差分の平均を算出する。
【0167】
プロセッサ11は、ステップSt403で算出した重ね合わせ後の予測温度分布BP6とステップSt404で算出した重ね合わせ後の予測温度との温度差分の平均とをサロゲートモデル4に入力することにより、基板SUB1の予測温度分布BP7を算出する(t=t5、St405)。プロセッサ11は、ステップSt405で算出した予測温度分布BP7に基づいて、その基板SUB1の温度ばらつき及び予測温度平均値(
図19参照)を算出する(t=t5)。プロセッサ11は、この算出した温度ばらつき及び予測温度平均値をサロゲートモデル5に入力することにより、基板SUB1の温度分布の予測値と正解値との関係を示すグラフ141の角度(特性角度)を予測する(t=t6、St406)。プロセッサ11は、ステップSt406で予測した角度(特性角度)を含む数式(例えばTx=Tp×cotθ)による演算により、グラフ141の温度分布の予測値(プロット)を補正する(t=t7、St407)。プロセッサ11は、ステップSt407での補正後の温度分布の予測値のグラフ142及び最終予測温度分布BP8(第6予測温度分布の一例)を表示デバイス14に表示する(t=t8)。
【0168】
(本実施の形態のまとめ)
以上の本実施の形態の記載により、下記技術が開示される。
【0169】
<技術1>
本実施の形態に係る予測方法は、発熱体を1つ含む対象物と発熱体との物性情報を含む複数の第1データを学習データとしてAIモデルを生成し、複数の発熱体を含む対象物と複数の発熱体との物性情報を含む第2データから、複数の発熱体のうち1つの発熱体を含む対象物と1つの発熱体との物性情報を含む第3データを複数の発熱体ごとに生成し、複数の第3データをそれぞれAIモデルに入力して1つの発熱体を含む対象物の第1予測温度分布を算出し、第1予測温度分布に基づいて、複数の発熱体を含む対象物の第2予測温度分布を算出する。
【0170】
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、AIモデルの生成に必要な学習データ数を削減し、AIモデルの生成にかかる時間を短縮できる。また、予測方法は、生成したAIモデルを用いて算出した1つの発熱体を含む対象物の第1予測温度分布から、複数の発熱体を含む対象物の第2予測温度分布を算出できる。以上により、予測方法は、生成したAIモデルを用いて複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を効率的に算出することができる。
【0171】
<技術2>
技術1に記載の予測方法は、第1データを用いて解析し第3予測温度分布を算出し、第1データと第3予測温度分布とを学習データとしてAIモデルを生成する。
【0172】
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、第1データと第1データの正解データである第3予測温度分布とを紐づけた教師データを学習データとすることで、高精度に対象物の予測温度分布を算出するAIモデルを生成できる。
【0173】
<技術3>
技術1又は技術2に記載の予測方法は、第1データを用いて解析し第3予測温度分布を算出し、第3予測温度分布から発熱体を含み温度が所定の閾値となる位置の内部を抽出温度分布として抽出し、第1データと抽出温度分布とを学習データとしてAIモデルを生成する。
【0174】
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、予測温度分布の一部のみを学習データとすることで学習データ容量を削減し効率的にAIモデルを生成できる。
【0175】
<技術4>
技術1から技術3のいずれか1つに記載の予測方法は、第3データから発熱体を含む抽出温度分布と同じサイズの領域を第4データとして抽出し、第4データをAIモデルに入力して1つの発熱体を含む対象物の第4予測温度分布を算出し、第4予測温度分布に基づいて、複数の発熱体を含む対象物の第2予測温度分布を算出する。
【0176】
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、AIモデルに入力するデータのサイズを小さくすることでデータ容量を削減し効率的に複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出できる。
【0177】
<技術5>
技術1から技術4のいずれか1つに記載の予測方法は、第2予測温度分布を発熱体の発熱に基づく輻射及び対流による補正をした補正温度分布を算出し、第2予測温度分布と補正温度分布とを学習データとして第2AIモデルを生成する。
【0178】
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、発熱体の発熱に基づく輻射及び対流の効果の補正をするAIモデルを生成することができる。
【0179】
<技術6>
技術1から技術5のいずれか1つに記載の予測方法は、第2予測温度分布を第2AIモデルに入力して複数の発熱体を含む対象物の第4予測温度分布を算出する。
【0180】
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、発熱体の発熱に基づく輻射及び対流の効果を補正した複数の発熱体を含む対象物の予測温度分布を算出することができる。
【0181】
<技術7>
技術1から技術6のいずれか1つに記載の予測方法において、物性情報は、発熱体の発熱量と対象物の熱伝導率を有する。
【0182】
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、発熱体の発熱量と対象物の熱伝導率とを考慮して予測温度分布を算出できる。
【0183】
<技術8>
技術1又は技術2に記載の予測方法は、第2予測温度分布から発熱体ごとの第1予測温度分布を差し引いた差分である発熱体ごとの予測温度差分に基づく平均予測温度分布を算出し、第2予測温度分布と平均予測温度分布とを学習データとして第3AIモデルを生成する。
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、発熱体の対象物上に搭載されている個数に拘わらず、第3AIモデルにより予測された結果である予測温度分布の温度ばらつきを小さく抑えることが可能となる。
【0184】
<技術9>
技術8に記載の予測方法は、第2予測温度分布及び平均予測温度分布を第3AIモデルに入力して複数の発熱体を含む対象物の第5予測温度分布を算出し、第5予測温度分布に基づいて対象物の温度ばらつき及び予測温度平均値を算出し、対象物の温度ばらつき及び予測温度平均値を学習データとして第4AIモデルを生成する。
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、対象物上に搭載されている発熱体の個数に拘わらず、対象物の温度ばらつき及び予測温度平均値から予測値と正解値との関係を示す角度(特性角度)を算出できるので、予測値を正解値に近づけるように補正することが可能となる。
【0185】
<技術10>
技術9に記載の予測方法は、対象物の温度ばらつき及び予測温度平均値を第4AIモデルに入力して複数の発熱体を含む対象物の予測温度と対象物の正解温度との間の特性角度を算出し、特性角度を用いて第5予測温度分布を補正して対象物の第6予測温度分布を算出する。
これにより、本実施の形態に係る予測方法は、対象物上に搭載されている発熱体の個数に拘わらず、予測値と正解値との関係を示す角度(特性角度)を用いた補正後の高精度な予測温度分布を出力することができる。
【0186】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本開示の技術は、対象物の温度分布の予測を効率的に行う予測方法、予測装置及びプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0188】
1,2,3 予測方法
10 予測装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 通信I/F
14 表示デバイス
20,30,50,70 構造情報
21,34,35,36,37,41,53,54,55,60,61,72,73,74 予測温度分布
31,32,33,51,52,71 個別データ
42 抽出温度分布
PA,PA1,PA2,PA3,PA4,PA5,PA6,PA7,PA8 発熱体
R1,R2,re,C1,C2 領域
Res メッシュ
G1,G2,G3,G4,G5,G6,G7,G8,G9 グラフ