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特開2024-149469向上した成形性を持つセルパウチフィルム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149469
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】向上した成形性を持つセルパウチフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/131 20210101AFI20241010BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241010BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20241010BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241010BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20241010BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241010BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/133
H01M50/119
B32B27/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061644
(22)【出願日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】10-2023-0045371
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523422299
【氏名又は名称】ユルチョン・ケミカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YOULCHON CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ノクチョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヒシク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒフン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ソンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ムンギュ
【テーマコード(参考)】
4F100
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AK42A
4F100AK46A
4F100AT00A
4F100BA02A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00C
4F100DD07
4F100EJ64B
4F100GB16
4F100JD02B
4F100JK06
4F100JK07A
4F100JL12C
4F100YY00A
4F100YY00B
5H011AA01
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD03
5H011DD09
5H011DD22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】成形性が向上したセルパウチフィルム及びその製造方法、それを用いた二次電池を提供する。
【解決手段】セルパウチフィルムであって、少なくとも外層100、バリア層300、シーラント層500が順次積層されてなり、セルパウチフィルムの外層とバリア層との間を剥離後のバリア層側の剥離面の表面粗さRaが1.5μm以下であることを特徴とするセルパウチフィルムとする。
【効果】当該セルパウチフィルムは、高成形の際に生じるエッジ部のクラック発生現象を抑制できることでエッジ部を厚く形成することができ、これにより高成形特性に優れる。このようなセルパウチフィルムは二次電池のエネルギー密度を向上させることができるので、電気自動車やエネルギー貯蔵装置などの中大型のセルパウチフィルムとして特に有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルパウチフィルムであって、
少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、
セルパウチフィルムの外層とバリア層との間を剥離後のバリア層側の剥離面の表面粗さRaが1.5μm以下であることを特徴とするセルパウチフィルム。
【請求項2】
セルパウチフィルムであって、
少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、
ナイロンとポリエチレンテレフタルレート(PET)とがラミネートされてなる外層のMD方向の弾性率が2450 N/mm2 以下であり、TD方向の弾性率が2400 N/mm2 以下であることを特徴とするセルパウチフィルム。
【請求項3】
前記バリア層は成形前の厚さが60μmであり、
下記のように測定したセルパウチフィルムのエッジ(edge)部の金属層残存厚さが34μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルパウチフィルム。
[エッジ(edge)部の金属層残存厚さの測定]
240mm(MD)×266mm(TD)のセルパウチフィルムを成形機にて成形し、12mm成形してからエッジ(edge)部を断面切削機にて切削しSEMを用いてセルパウチフィルムのうちの金属層断面の最大厚さを測定する。
【請求項4】
下記のように測定したセルパウチフィルムの最大成形深さが16mm以上であることを特徴とする請求項3に記載のセルパウチフィルム。
[成形性の測定]
セルパウチフィルムを240mm(MD)×266mm(TD)の大きさでカットして試片を作製し、成形機にて成形性を評価する。成形性の評価は、10回測定して10回ともクラックなしに成形されたパウチの最大(max)成形深さを測定して行う。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のセルパウチフィルムの製造方法であって、
バリア層に含まれる金属原反の両面に表面処理を施す両面表面処理段階;
前記両面表面処理が施された金属原反を乾燥する段階;
前記表面処理が施された金属原反の一方側の面に接着剤を塗布して外面接着層を形成する外面接着層コーティング段階;及び
前記外面接着層の上に外層原反をラミネートする外層ラミネート段階;
を含み、
前記両面表面処理後の金属原反の乾燥温度が160℃以上であることを特徴とするセルパウチフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記方法は、ナイロン及びポリエチレンテレフタルレート(PET)フィルムを先にラミネートし、前記ラミネートされたナイロン及びポリエチレンテレフタルレート(PET)フィルムをバリア層とラミネートする段階;をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のセルパウチフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記両面表面処理段階は、金属原反の一方側の面の表面処理後、乾燥段階を行うことなく直ちに前記金属原反の他方側の面の表面処理が行われることを特徴とする請求項5に記載のセルパウチフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記乾燥段階は、前記両面に表面処理が施された金属原反をフローティング方式にて乾燥することを特徴とする請求項5に記載のセルパウチフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記両面表面処理段階は、金属原反の一方側の面はダイレクトコーティング(Direct coating)及びRKC(Reverse Kiss Coating)の兼用方式にて水系及び溶剤系コーティング液を塗布する第1次コーティングを行い、
金属原反の他方側の面は、RKC及びフィルムアップダウンコーティング(Film up/down coating)方式にてコーティング液を塗布する第2次コーティングを行うことを含むことを特徴とする請求項5に記載のセルパウチフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記方法は、
前記外層ラミネート段階の後に第1回の巻取りを行う段階;
前記第1回の巻取りの後、表面処理が施された金属原反において外層がラミネートされていない他方側の面に内面接着層を形成する段階;
前記内面接着層の下にシーラント層原反をラミネートする段階;及び
前記シーラント層原反のラミネートの後に第2回の巻取りを行う段階;を含む、請求項5に記載のセルパウチフィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のセルパウチフィルムで外装されたことを特徴とする二次電池。
【請求項12】
二次電池の製造方法であって、
請求項1又は2に記載のセルパウチフィルムで二次電池を外装する段階;を含むことを特徴とする二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、向上した成形性を持つセルパウチフィルム、その製造方法、これを用いたセルパウチと二次電池及びその製造方法に関し、より詳しくは、二次電池パウチフィルムの高成形の際に生じるエッジ(edge)部をクラックの発生なしに厚く形成することができ、これにより高成形特性に優れることで特に中大型電池用に適合したセルパウチフィルム、その製造方法、これを用いたセルパウチと二次電池及びその製造方法に関する。

[本発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1415185612
[課題番号]20022450
[部署名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国産業技術評価管理院
[研究事業名]素材部品パッケージ型(最高企業)
[研究課題名]2倍以上の高接着強度(60℃)の具現が可能な次世代二次電池パウチの開発
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]栗村化学(株)
[研究期間]2023.01.01~2023.12.31
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池(LiB)は、高いエネルギー密度と優れた出力を有するなどの多様な長所を基に多くのアプリケーションに適用されている。
【0003】
セルパウチフィルムは、かかる二次電池のようなセルの電極群と電解液を取り囲む多層構造の包装用積層フィルムであって、電池の安全性、寿命特性、そして作動持続力を決める核心の部品素材であり、機械的柔軟性及び強度、高い酸素/水蒸気バリア性、高い熱的シーリング強度、電解液に対する耐化学性、電気絶縁性、高温安全性などが要求される。
【0004】
リチウム二次電池の適用分野が小型から自動車用やESS用の中大型へと拡大されるにつれて、セルパウチフィルムもまた、中大型に適合した特性を持つことが要求されており、特に安全性が高く且つ高成形特性を持つことが必要になってきた。
【0005】
関連して、自動車用のリチウム二次電池(LiB)のセルの大きさやセルパウチの成形深さは二次電池の容量に大きく影響を及ぼす因子である。セルの大きさの場合、その大きさが一般の小型用に比べて大きく高い成形性が要求されるが、セルの成形深さはセルの容量を決めることから、深さが深く成形(forming)されるほど次世代二次電池の要求容量である700Wh/Lに至るための必須条件であると言える。
【0006】
一方、セルパウチは、一般的に金属層の一方側の面に表面処理を施す第1工程、金属層の他方側の面に表面処理を施す第2工程、一方側の面に外層をラミネートする第3工程、他方側の面にシーラント層をラミネートする第4工程が順に行われて製造され、各工程毎にコーティング、乾燥、及び巻取りなどの処理が順に繰り返し行われる。しかし、この場合、原反の送りの際に発生する走行損失(Loss)や工程不良が発生する確率が増加し改善が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第10-2016-0070468号
【特許文献2】大韓民国公開特許公報第10-2022-0031820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の例示的な具現例では、一側面において、セルパウチフィルムの高成形の際に生じるエッジ(edge)部のクラック発生現象を抑制できることでエッジ(edge)部を厚く形成することができる、セルパウチフィルム及び当該パウチフィルムで外装された二次電池を提供することを目的とする。
本発明の例示的な具現例では、一側面において、セルパウチフィルムの高成形特性に優れる、セルパウチフィルム及び当該パウチフィルムで外装された二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の例示的な具現例では、セルパウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、セルパウチフィルムの外層とバリア層との間を剥離後のバリア層側の剥離面の表面粗さRaが1.5μm以下であるセルパウチフィルム(請求項1に記載のセルパウチフィルム)を提供する。
【0010】
本発明の例示的な具現例では、セルパウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、ナイロンとポリエチレンテレフタルレート(PET)とがラミネートされてなる外層のMD方向の弾性率が2450 N/mm2 以下であり、TD方向の弾性率が2400 N/mm2 以下であるセルパウチフィルム(請求項2に記載のセルパウチフィルム)を提供する。
【0011】
例示的な一具現例において、前述した請求項1に記載のセルパウチフィルム及び/又は請求項2に記載のセルパウチフィルムは、前記バリア層は成形前の厚さが60μmであり、下記のように測定したセルパウチフィルムのエッジ(edge)部の金属層残存厚さが34μm以上であるセルパウチフィルム(請求項3に記載のセルパウチフィルム)であってよい。
[エッジ(edge)部の金属層残存厚さの測定]
240mm(MD)×266mm(TD)のセルパウチフィルムを成形機にて成形し、12mm成形してからエッジ(edge)部を断面切削機にて切削しSEMを用いてセルパウチフィルムのうちの金属層断面の最大厚さを測定する。
【0012】
例示的な一具現例において、前述したセルパウチフィルム(請求項1~3のいずれか一項に記載のセルパウチフィルム)は、下記のように測定したセルパウチフィルムの最大成形深さが16mm以上であるセルパウチフィルム(請求項4に記載のセルパウチフィルム)であってよい。
[成形性の測定]
セルパウチフィルムを240mm(MD)×266mm(TD)の大きさでカットして試片を作製し、成形機にて成形性を評価する。成形性の評価は、10回測定して10回ともクラックなしに成形されたパウチの最大(max)成形深さを測定して行う。
【0013】
本発明の例示的な具現例では、前述したセルパウチフィルム(請求項1~4のいずれか一項に記載のセルパウチフィルム)の製造方法であって、バリア層に含まれる金属原反の両面に表面処理を施す両面表面処理段階;前記両面表面処理が施された金属原反を乾燥する段階;前記表面処理が施された金属原反の一方側の面に接着剤を塗布して外面接着層を形成する外面接着層コーティング段階;及び前記外面接着層の上に外層原反をラミネートする外層ラミネート段階;を含み、前記両面表面処理後の金属原反の乾燥温度が160℃以上であるセルパウチフィルムの製造方法(請求項5に記載のセルパウチフィルムの製造方法)を提供する。
【0014】
例示的な一具現例において、前記方法(請求項5に記載のセルパウチフィルムの製造方法)は、ナイロン及びポリエチレンテレフタルレート(PET)フィルムを1次的にラミネートしてから、該ラミネートされたナイロン及びポリエチレンテレフタルレート(PET)フィルムをバリア層であるアルミニウムとラミネートする段階;を含む、方法(請求項6に記載のセルパウチフィルムの製造方法)であってよい。
【0015】
例示的な一具現例において、前記方法(請求項5又は6に記載のセルパウチフィルムの製造方法)において、前記両面表面処理段階は、金属原反の一方側の面の表面処理後、乾燥段階を行うことなく直ちに前記金属原反の他方側の面の表面処理が行われる方法(請求項7に記載のセルパウチフィルムの製造方法)であってよい。
【0016】
例示的な一具現例において、前記方法(請求項5~7のいずれか一項に記載のセルパウチフィルムの製造方法)において、前記乾燥段階は、前記両面に表面処理が施された金属原反をフローティング方式にて乾燥する方法(請求項8に記載のセルパウチフィルムの製造方法)であってよい。
【0017】
例示的な一具現例において、前記方法(請求項5~8のいずれか一項に記載のセルパウチフィルムの製造方法)において、前記両面表面処理段階は、金属原反の一方側の面はダイレクトコーティング(Direct coating)及びRKC(Reverse Kiss Coating)の兼用方式にて水系及び溶剤系コーティング液を塗布する第1次コーティングを行い、金属原反の他方側の面はRKC及びフィルムアップダウンコーティング(Film up/down coating)方式にてコーティング液を塗布する第2次コーティングを行うことを含む方法(請求項9に記載のセルパウチフィルムの製造方法)であってよい。
【0018】
例示的な一具現例において、前記方法(請求項5~9のいずれか一項に記載のセルパウチフィルムの製造方法)において、前記方法は、前記外層ラミネート段階の後に第1回の巻取りを行う段階;前記第1回の巻取りの後、表面処理が施された金属原反において外層がラミネートされていない他方側の面に内面接着層を形成する段階;前記内面接着層の下にシーラント層原反をラミネートする段階;及び前記シーラント層原反のラミネート後に第2回の巻取りを行う段階;を含む方法(請求項10に記載のセルパウチフィルムの製造方法)であってよい。
【0019】
本発明の例示的な具現例では、さらに、前述したセルパウチフィルム(請求項1~4のいずれか一項に記載のセルパウチフィルム)からなるセルパウチト又はこれを用いて外装された二次電池(請求項11に記載の二次電池)を提供する。
【0020】
また、本発明の例示的な具現例では、二次電池の製造方法であって、前述したセルパウチフィルム(請求項1~4のいずれか一項に記載のセルパウチフィルム)で二次電池を外装する段階;を含む二次電池の製造方法(請求項12に記載の二次電池の製造方法)を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の例示的な具現例では、二次電池パウチフィルムの高成形の際に生じるエッジ(edge)部のクラック発生現象を抑制できることでエッジ(edge)部を厚く形成することができ、これにより高成形特性に優れる二次電池用パウチフィルムを提供することができる。このようなセルパウチフィルムは二次電池のエネルギー密度を向上させることができるので、電気自動車やエネルギー貯蔵装置などの中大型のパウチフィルムとして特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の例示的な具現例に係るセルパウチフィルムの断面を概略的に示す図である。
図2】本発明の例示的な具現例に係るセルパウチフィルムの製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
用語の定義
本明細書において単数の表現は、文脈上明らかに異なって捉えられない限り、複数の表現を含んでよい。本出願における「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせが存在することを表すためのものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせなどの存在又は付加可能性を排除しない。
【0024】
本明細書において第1、第2などといった表現は、特に言及されない限り、特定の順序を指すことではなく、構成を互いに区分して指すために用いられる。
【0025】
本明細書において特定の層の「上」に形成されるとは、当該層に直接形成されることだけではなく、更なる他の層を介して形成されることも含む。
【0026】
本明細書において「セル(cell)」とは、電池を意味するものであって、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池などのような二次電池や携帯用蓄電池などのような各種の電池をすべて含む最も広い意味である。
【0027】
本明細書において「セルパウチ(cell pouch)」又は「セルパウチフィルム(cell pouch film)」は、正極、負極、及びセパレータ(separator)などのセル構成要素が電解液に含侵されて収納されたものであって、前記セル構成要素を収納するためにガスバリア性、曲げ性、耐電解液性、及び熱接着性などを考慮した積層構造のフィルムを袋型や箱型などに加工されたものをすべて含む最広義の意味である。
【0028】
本明細書において最終構造とは、セルパウチフィルムが有する最終的な層構造のことを意味する。このような最終構造は、多様な製造工程のタイプに応じて少しずつ異なり得る。
例えば、最終構造は、外部カバー基材(又は外層)、第1接着剤層、外表面処理層、基準基材(又はバリア層)、内表面処理層、第2接着剤層、及び内部カバー基材(又はシーラント層)からなることであってよい。又は、最終構造は、外部カバー基材(又は外層)、第1接着剤層、外表面処理層、基準基材(又はバリア層)、内表面処理層、押出コーティング層、内部カバー基材(又はシーラント層)からなることであってよい。又は、最終構造は、外部カバー基材(又は外層)、第1接着剤層、外表面処理層、基準基材(又はバリア層)、内表面処理層、第2接着層、押出コーティング層、内部カバー基材(又はシーラント層)からなることであってよい。
【0029】
本明細書において中間構造とは、セルパウチフィルムの製造工程の途中で形成される構造のことであって、製造工程に応じて多様なセルパウチの中間構造が生じ得る。
例えば、外部カバー基材(又は外層)、第1接着剤層(又は外面接着層)、外表面処理層、基準基材(又はバリア層)、内表面処理層、第2接着剤層(又は内面接着層)からなる第1中間構造が生じてよい。又は、外部カバー基材(又は外層)、第1接着剤層(又は外面接着層)、外表面処理層、基準基材(又はバリア層)、内表面処理層からなる第2中間構造が生じてよい。
【0030】
本明細書において一つのインライン(in-line)工程は、原反がアンワインダとリワインダ(巻取りロール)との間で1回の走行を行うロール・ツー・ロール(roll-to-roll)工程のことを意味する。
【0031】
本明細書において1回の巻取り(リワインディング)とは、巻取りロールが1回回転するという意味ではなく(巻取りロールは当然ながら複数回回転してよい)、フィルムが巻取りロールに巻き取られて1回目の走行を終えるとのことを意味する。したがって、2回の巻取り(リワインディング)とは、製造工程中に1回目の走行を終えてから再び走行を開始して2回目の走行を終えるとのことを意味する。
【0032】
本明細書において原反とは、製造工程の際に提供されるバリア層又は金属層の材料のことを意味してよい。
【0033】
本明細書において機能性原反とは、シーラント層及び/又は外層を形成する樹脂原反を意味してよい。
【0034】
本明細書においてエッジ(edge)部は、成形部の角部のことを意味する。例えば、成形の際にパウチは185mm(X軸)×85mm(Y軸)×12mm(Z軸)の大きさの直方体のカップ(cup)状に製造される。エッジ部は、該直方体のカップの角部の先端から0.5mm×0.5mm×0.5mmまでの部分のことを意味する。
【0035】
本明細書においてバリア層側の剥離面とは、バリア層の素材である金属表面自体を意味することではなく、セルパウチフィルムの外層とバリア層とを剥離する場合に、剥離後に外層フィルム側から剥離された物質が一部残るようになるバリア層側の表面(剥離面)のことを意味する。よって、バリア層側の剥離面の表面粗さとは、バリア層の素材である金属表面自体の表面粗さではなく、外層フィルムから剥離されてバリア層側に残った物質(残存物)が存在するバリア層側の剥離面の表面粗さを意味する。当該残存物によって生じる剥離面の表面粗さは、金属層表面自体の表面粗さとは異なる。
【0036】
例示的な具現例の説明
以下、本発明の例示的な具現例を詳述する。
セルパウチフィルムの高成形の際にエッジ(edge)部にクラックが発生しやすいため、エッジ(edge)部を厚く形成することは難しい。すなわち、エッジ(edge)部をどれだけ厚く形成することができるかが高成形性を評価する尺度になり得る。エッジ(edge)部をどれだけ厚く形成することができるかは、後述するように成形後のエッジ部のバリア層の残存厚さ(成形後の厚さ)で評価することができる。
【0037】
本発明者らは、セルパウチフィルムの外層とバリア層とを剥離したときの剥離面の表面粗さ及び/又はセルパウチフィルムのナイロンとPETとをラミネートしてなる外層のMD方向の弾性率及びTD方向の弾性率が高成形の際にエッジ(edge)部の厚さ及びこれによる高成形性に関連していることを見出し鋭意研究を重ねて本発明に至った。
【0038】
具体的に、本発明の例示的な具現例では、セルパウチフィルムであって、セルパウチフィルムの外層とバリア層との間を剥離後のバリア層側の表面粗さRaが1.5μm以下である。
【0039】
非制限的な例示において、前記表面粗さRaは、0.82~1.5μm又は0.82~1.13μmであってよい。非制限的な例示において、前記表面粗さRaは、1.49μm以下、1.48μm以下、1.47μm以下、1.46μm以下、1.45μm以下、1.44μm以下、1.43μm以下、1.42μm以下、1.41μm以下、1.40μm以下、1.39μm以下、1.38μm以下、1.37μm以下、1.36μm以下、1.35μm以下、1.34μm以下、1.33μm以下、1.32μm以下、1.31μm以下、1.30μm以下、1.29μm以下、1.28μm以下、1.27μm以下、1.26μm以下、1.25μm以下、1.24μm以下、1.23μm以下、1.22μm以下、1.21μm以下、1.20μm以下、1.19μm以下、1.18μm以下、1.17μm以下、1.16μm以下、1.15μm以下、1.14μm以下、1.13μm以下、1.12μm以下、1.11μm以下、1.10μm以下、1.09μm以下、1.08μm以下、1.07μm以下、1.06μm以下、1.05μm以下、1.04μm以下、1.03μm以下、1.02μm以下、1.01μm以下、1.0μm以下、0.99μm以下、0.98μm以下、0.97μm以下、0.96μm以下、0.95μm以下、0.94μm以下、0.93μm以下、0.92μm以下、0.91μm以下、0.90μm以下、0.89μm以下、0.88μm以下、0.87μm以下、0.86μm以下、0.85μm以下、0.84μm以下、0.83μm以下、又は0.82μmであってよい。
【0040】
セルパウチフィルムの外層とバリア層との間を剥離後のバリア層側の表面粗さRaが1.5μmを超えると、後述する実験例からも確認できるように、12mm成形後のエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さが不足し、且つ成形性も劣化するようになる。
【0041】
このような前記バリア層側の表面粗さは、後述する製造工程によって調節されてよく、特に、1P3C工程を行う際の両面表面処理後の乾燥チャンバの乾燥温度及び/又はナイロン及びPETのラミネートを別途に行うか否かや、ナイロン/PETのMD及びTD弾性率などによって影響されると考えられる。
【0042】
例示的な一具現例において、セルパウチフィルムでは、ナイロンとPETとをラミネートしてなる外層のMD方向の弾性率が2450以下、TD方向の弾性率が2400以下であることが好ましい。
【0043】
前記MD方向及びTD方向の弾性率の評価方法は、次のとおりである。
すなわち、前記セルパウチフィルムを試片カッターにて150mm×1.5mmの大きさで作製(MD、TD試片を2個ずつ作製)した後、手作業でNy/PETをパウチから剥離する。次いで、万能試験機器(UTM)にて各試片の弾性率を評価する。弾性率の評価条件は、速度:50mm/min、グリップギャップ(Grip gap):50mmとし、常温25℃、湿度30%で評価を行う。弾性率の評価は、SSカーブ(Curve)における弾性率区間の傾きを用いて求める。
【0044】
非制限的な例示において、ナイロンとPETとをラミネートしてなる外層のMD方向の弾性率は、2450以下、2400以下、2350以下、2300以下、2250以下、2200以下、2150以下、2100以下、2050以下であってよい。又は、2000以上、2050以上、2100以上、2150以上、2200以上、2250以上、2300以上、2350以上、2400以上であってよい。MD方向の弾性率が前記範囲よりも低いと、外部衝撃への抵抗力が低減することがある。
【0045】
ナイロンとPETとをラミネートしてなる外層のMD方向の弾性率が2450を超えると、後述する実験例から分かるように成形性が劣化することがある。
【0046】
非制限的な例示において、ナイロンとPETとをラミネートしてなる外層のTD方向の弾性率は、2400以下、2350以下、2300以下、2250以下、2200以下、2150以下、2100以下、2050以下であってよい。又は、2000以上、2050以上、2100以上、2150以上、2200以上、2250以上、2300以上、2350以上であってよい。MD方向の弾性率が前記範囲よりも低いと、外部衝撃への抵抗力が低減することがある。
【0047】
ナイロンとPETとをラミネートしてなる外層のTD方向の弾性率が2400を超えると、後述する実験例から分かるように成形性が劣化することがある。
【0048】
ナイロンとPETとをラミネートしてなる外層のMD方向の弾性率及びTD方向の弾性率も同じく、製造工程によって調節されてよく、同じ材料を用いても、特に1P3C工程を行う際の両面表面処理後の乾燥チャンバの乾燥温度及び/又はナイロン及びPETのラミネートを別途に行うか否かなどによって影響されると考えられる。
【0049】
例示的な一具現例において、下記のように測定したセルパウチフィルムのエッジ(edge)部の金属層残存厚さ(成形前の金属層の厚さは60μm)は、34μm以上、34.5μm以上、35μm以上、35.5μm以上、36μm以上、36.5μm以上、37μm以上、37.5μm以上、38μm以上、38.5μm以上、39μm以上、39.5μm以上であってよく、例えば、34~40μmであってよい。
[エッジ(edge)部の金属層残存厚さの測定]
240mm(MD)×266mm(TD)のセルパウチフィルムをクロム(Cr)コートされた1カップ成形機にて成形し、12mm成形してからエッジ(edge)部を断面切削機にて切削しSEMを用いてパウチフィルムのうちの金属層断面の最大厚さ、すなわち、残存厚さを測定する。ここで、成形前のパウチフィルムのうちの金属層の厚さは60μmである。
【0050】
例示的な一具現例において、下記のように測定したセルパウチフィルムの最大成形深さは、16mm以上、16.5mm以上、17mm以上、17.5mm以上、18mm以上、18.5mm以上、19mm以上、19.5mm以上、20mm以上、20.5mm以上、21mm以上、21.5mm以上であるか22mmであってよい。
[成形性の測定]
240mm(MD)×266mm(TD)のセルパウチフィルムをクロム(Cr)コートされた1カップ成形機にて成形性を測定する。
10回測定して10回ともクラックなしに成形された最大成形深さを評価する。成形時の圧力は0.3MPaに固定し、成形機のR値(角部曲率半径値)は4R(4mm)とした。成形時のフォーミングサイズは横90mm×120mmとし、シングルフォーミングで行った。
【0051】
一方、図1を参照して説明すると、本発明の例示的な具現例では、シーラント層500;前記シーラント層500の上に積層された内面接着層400;前記内面接着層400の上に積層されたバリア層300;前記バリア層300の上に積層された外面接着層200;及び前記外面接着層200の上に形成された外層100を含んでよい。
【0052】
例示的な一具現例において、前記セルパウチフィルムの外層100は、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などであってよく、好ましくは、ナイロンとPETとの混合層(ナイロンとPETとのラミネートフィルム)から構成されてよい。
【0053】
例示的な一具現例において、前記外層100のうちのナイロンフィルムは、成形性の側面から厚さが20μm以上であることが好ましく、25μm以上がより好ましいが、ナイロンフィルムの厚さが30μmを超えると、絶縁破壊電圧が低下することがある。このため、好ましいナイロンフィルムの厚さは20μm~30μm、好ましくは、25μm~30μmであってよい。ナイロンフィルムが20μmより小さいと、成形性が劣化することがある。
【0054】
例示的な一具現例において、前記外層100のうちのPETフィルムの厚さが薄く、ナイロンフィルムの厚さが厚いほど成形性に有利である。なお、PETフィルムの厚さが薄いほど絶縁破壊電圧の側面で不利になることがあるので、このような観点から、PETフィルムの厚さは7μm~12μmであることが好ましい。
【0055】
例示的な一具現例において、PETフィルムは、MD及びTD伸び率がそれぞれ90~110%又は95~105%又は100%であるものを用いてよい。前記ナイロンフィルムは、MD伸び率が100~200%又は110~150%又は110~125%で、TD伸び率が70~200%又は70~150%又は74~138%であるものを用いてよい。例えば、ナイロンフィルムのMD伸び率が約125%である場合、TD伸び率は約75%であるものを用いてよく、又はMD伸び率が約110%である場合、TD伸び率が約138%であるものを用いてよい。
【0056】
例示的な具現例において、前記シーラント層500は、熱接着性樹脂、すなわち、熱接着のためのシーリング樹脂(sealing resin)を含んでよい。具体的に、前記シーラント層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)系などのポリオレフィン系、これらの共重合体、ターポリマー又はこれらの誘導体、及びエチレンビニルアセテート(EVA)からなる群より選ばれた一つ以上を含んでよい。前記共重合体(Co-polymer)又はターポリマー(ter-polymer)としては、エチレン/プロピレン共重合体又はエチレン/プロピレン/ブタジエンのターポリマーなどを含んでよい。一実施例として、前記シーラント層は、20~100μm又は20~80μmの厚さを有してよい。前記シーラント層は複数の層から構成されてよい。前記シーラント層500であるポリプロピレン(CPP)層の厚さは、例えば、20~80μmであってよい。
【0057】
一実施例として、シーラント層500は、ポリプロピレン層(PP)、例えば、無延伸ポリプロピル(CPP)フィルムから構成され、当該ポリプロピレン(PP)層とバリア層とがポリプロピレン系樹脂の接着剤コーティング層及び/又は押出コーティング(Extrusion Coating;EC)層を介して貼合されてよい。また、前記シーラント層500自体も押出によって形成されてよい。前記ポリプロピレン層(PP)は、要求物性に応じて各種の添加剤(ゴム、エラストマ、スリップ剤など)を含有してよい。
【0058】
例示的な具現例において、前記外面接着層200は、前記バリア層300と外層100との接着のための接着剤層である。
【0059】
例示的な具現例において、前記外面接着層200は、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、及びポリエステル系接着剤のうちの一つ以上を含んでよい。一実施例として、前記外面接着層は、0.5μm~10μmの厚さを有してよい。
【0060】
例示的な具現例において、前記内面接着層400は、前記バリア層300とシーラント層500との接着のための接着剤コーティング層又は押出コーティング層であってよい。又は、他の一実施例として、前記内面接着層は、接着剤コーティング層及び押出コーティング層を含んでよい。
【0061】
前記内面接着剤層400は、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、及びポリエステル系接着剤のうちの一つ以上を含んでよい。一実施例として、前記内面接着剤層400は、0.5μm~10μmの厚さを有してよい。一実施例において、前記押出樹脂層は、パウチの曲げ性、接着性、絶縁性などを向上させることができる。一実施例として、前記押出コーティング層は、ポリプロピレン系樹脂などのオレフイン系樹脂を含んでよい。一実施例として、前記押出コーティング層は、約5~80μmの厚さを有してよい。
【0062】
例示的な具現例において、前記バリア層300は、金属層、又はこれに前記金属層の両面にそれぞれ均一にコートされた表面処理層を含んでよく、前記金属層は、金属薄膜又は金属蒸着層であってよい。前記金属薄膜は、金属箔(metal foil)が挙げられる。前記金属蒸着層は、別途のプラスチックフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタルレート(PET)、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などのフィルムに金属が真空蒸着されて形成されてよい。
【0063】
一具現例として、前記金属層の金属は、前記のような遮断性能を有するものであれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、及びタングステン(W)などからなる群より選ばれた1以上(単一金属又は単一金属の混合)、又はこれらから選ばれた2以上の合金(alloy)などが挙げられる。具体的に、前記金属は、アルミニウム又はその合金、チタン又はその合金、タングステン又はその合金、モリブデン又はその合金、銅又はその合金、及びステンレス鋼からなる群より選ばれる1種以上を含んでよい。より具体的には、アルミニウムを含んでよい。一実施例として、前記表面処理層は、金属の耐腐食性を提供するために、リン酸、クロム、ジルコニウム、セリウム、ランタン、スカンジウム、イットリウムなどによる表面処理層であってよい。
【0064】
一具現例として、前記バリア層300は、20μm~80μmの厚さを有してよい。前記バリア層の厚さが20μm未満であると、成形などの工程の際にピンホール、微細クラックなどが発生することがあるため安全性の確保が難しくなることがあり、また前記バリア層の厚さが80μmを超えると、電池の製作の際にエネルギー密度が低くなることがある。例示的な一具現例において、前記セルパウチフィルムの総厚さは、例えば、60~185μmであってよい。一実施例において、前記セルパウチフィルムは、153μm以上であるか113μm以下のものであってよい。
【0065】
一方、本発明の例示的な具現例では、前述したセルパウチフィルムの製造方法であって、バリア層に含まれる金属原反の両面に表面処理を施す両面表面処理段階;前記両面表面処理が施された金属原反を乾燥する段階;前記表面処理が施された金属原反の一方側の面に接着剤を塗布して外面接着層を形成する外面接着層コーティング段階;及び前記外面接着層の上に外層原反をラミネートする外層ラミネート段階;を含み、前記両面表面処理後の金属原反の乾燥温度が160℃以上であるセルパウチフィルムの製造方法を提供する。
【0066】
関連して、一般的に、従来技術は、i)金属層の一方側の面に表面処理層をコートし乾燥した後にこれを巻き取る1次巻取り(winding)段階を経てから前記金属層の他方側の面に他の表面処理層をコートし乾燥した後にこれを再び巻き取る2次巻取りを行う段階;ii)前記表面処理が施された金属層の一方側の面に外面接着層を形成して外層をラミネートし乾燥した後にこれを巻き取る3次巻取りを行う段階;及びiii)前記表面処理が施された金属層の他方側の面に内面接着層を形成してシーラント層をラミネートし乾燥する段階を含む。このように複数の工程を繰り返し行うようになる場合、走行損失や工程不良の発生確率が高くなるだけでなく、成形性も劣化することがある。
【0067】
そこで、本発明の例示的な具現例では、従来のようにセルパウチ用フィルムを各層の積層工程毎にコーティング、乾燥、及び巻取りなどの工程を順に繰り返し行って製造する方法ではない、一つのインライン工程で原反の一度の走行で3回以上のコーティング過程が行われ得る1P3C(1 Pass 3 Coating、1P3C)方式によって製造することで前記のような従来技術の問題を解決し且つ成形性を向上することができる。
【0068】
例示的な一具現例において、前記方法は、ナイロン及びポリエチレンテレフタルレート(PET)フィルムを1次的にラミネートする段階;及び前記ラミネートされたナイロン及びポリエチレンテレフタルレート(PET)フィルムをバリア層である金属層、好ましくは、アルミニウムとラミネートする段階;を含んでよい。
【0069】
詳述すると、一般的なソルベントドライラミネーション(SDL)工程では、1次作業としてバリア層(通常、アルミニウムを用いる)にナイロン(Nylon)フィルムをラミネートした後、2次作業としてポリエチレンテレフタルレート(PET)フィルムをその上にラミネートする。このとき、金属であるアルミニウムは伸び率が良くないため、ナイロンに熱的な収縮が生じることに備えて熱収縮が生じないようにできる限り大きな張力を与えてラミネートするようになる。ところで、このときに既に伸びたナイロン(Nylon)フィルムは、パウチにした場合に引っ張りに対する抵抗力が既に大きくなった状態になる。そのため、優れた成形性が低下することがある。
【0070】
これに対し、1P3C工程を採用し且つナイロンフィルム及びPETフィルムが予めラミネートされた状態で当該ナイロンフィルム及びPETフィルムがラミネートされてなる外層をバリア層とラミネート(ナイロンフィルム側がバリア層に向くようにラミネート)する場合には、前述した工程と異なり、成形性がより優れるものになることがある。
【0071】
さらに、バリア層に含まれる金属原反の両面を表面処理した後、金属原反を乾燥する場合(図2の(5)番工程)、乾燥温度、すなわち、乾燥チャンバの温度が160℃以上である場合、成形性がより優れるものになることがある。
非制限的な例示において、前記乾燥チャンバの温度は、160℃~200℃であってよい。当該範囲では製造されたフィルムの物性変化に有意な差がない。
【0072】
例えば、前記乾燥チャンバの温度は、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上、180℃以上、185℃以上、190℃以上、195℃以上であってよく、又は200℃以下、195℃以下、190℃以下、185℃以下、180℃以下、175℃以下、170℃以下、165℃以下であってよい。前記範囲よりもチャンバの温度が低くなると、特に表面処理の効果が低下し且つ表面処理後の物性(外層剥離強度、耐電解性など)の低下が示されることがある。このような傾向は、特に140℃以下である場合により顕著になることがある。
【0073】
例示的な一具現例において、前記方法は、前記ラミネートされたナイロン及びポリエチレンテレフタルレート(PET)フィルムをバリア層とラミネートする際に、その反対側にシーラント層の形成のための樹脂、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルムを併せてラミネートするものであってよい。
【0074】
例示的な一具現例において、前記方法は、バリア層である金属層の両面を第1次及び第2次コートして表面処理を施す両面二重コーティング段階;前記表面処理が施された金属層の両面に接着剤を塗布して乾燥するコーティング段階;及び前記接着剤が塗布及び乾燥された金属層の両面に前述したシーラント層の形成のための樹脂フィルム及び外層フィルム(ナイロン及びPETのラミネートフィルム)をラミネートする段階;を含むものであってよい。
【0075】
一具現例において、前記両面表面処理段階は、金属原反の一方側の面の表面処理後、乾燥段階を行うことなく直ちに前記金属原反の他方側の面の表面処理が行われることであってよい。このとき、前記両面表面処理段階は、第1次コータ及び第2次コータを含む両面二重コーティング手段によって行われてよい。
【0076】
一具現例において、前記両面表面処理段階は、金属原反の一方側の面はダイレクトコーティング(Direct coating)及びRKC(Reverse Kiss Coating)の兼用方式にて水系及び溶剤系コーティング液を塗布する第1次コーティングを行い、金属原反の他方側の面はRKC及びフィルムアップダウンコーティング(Film up/down coating)方式にてコーティング液を塗布する第2次コーティングを行うことを含んでよい。
【0077】
具体的に、前記第1次コーティングは、第1次コータによってダイレクトコーティング(Direct coating)及びリバースキスコーティング(Reverse Kiss Coating、RKC)の兼用方式にて水系及び溶剤系コーティング液を塗布する第1次コーティングを行うことで、コーティング液の物性や変更まで考慮することができる。金属原反の他方側の面は、RKC及びフィルムアップダウンコーティング(Film up/down coating)方式にてコーティング液を塗布する第2次コーティングを行ってよい。一方、外層を形成する基材接触面とコーティングロール(Coating Roll)及びドクター(Doctor)の位置を調整できるように構成することで、コーティングの均一度及び作業速度の向上を可能にすることができる。より具体的に、前記コーティング剤の精度良いコントロールのためにチャンバ方式(密閉配管)を構成することで、コーティング剤の粘度を調節することができ、且つ異物の流入を根本的に遮断することができる。
【0078】
一具現例において、前記両面表面処理段階は、より具体的に、巻き取られた金属原反を繰り出して供給する原反供給過程;供給された金属原反の表面に存在する異物を除去する異物除去過程;表面の異物が除去された金属原反の張力を調節する張力調節過程;及び一定の張力が維持される金属原反の両面にコーティングを行う両面二重コーティング過程を含んでよい。
【0079】
一具現例において、前記異物除去過程は、金属原反の両面に放電処理を施して油分を除去する第1次異物除去過程を含んでよい。また、前記異物除去過程は、油分が除去された金属原反の両面にピンホールの発生の有無を確認するピンホール検査過程をさらに含んでよい。また、前記異物除去過程は、前記ピンホール検査を経た金属原反の両面に発生する異物をロール方式にて除去する第2次異物除去過程をさらに含んでよい。
【0080】
また、一具現例に係る前記方法は、前記両面表面処理段階と外面接着層コーティング段階との間に前記両面に表面処理が施された金属原反をフローティング方式にて乾燥して物性を安定化させる物性安定化乾燥段階をさらに含んでよい。前記フローティング方式によれば、表面処理が施された金属原反の両面を同時に乾燥することができ、がイドロ-ルと原反との接触が最小化するので、がイドロ-ルによる異物転写及び原反の突き刺されなどの外観の走行性不良発生を顕著に低減することができる。
【0081】
一具現例において、前記方法において前記乾燥段階は物性を安定化させることであって、両面に表面処理が施された金属原反をフローティング方式にて乾燥することであってよい。すなわち、両面表面処理が施された原反を浮遊した状態で非接触式にて乾燥できるようにエアフローティング(Air Floating)方式を適用することができる。これにより、送りロールなどの構成との接触を最小化しながら両面コートされた金属原反を乾燥することができる。次いで、乾燥された金属原反を冷却させる冷却段階及び冷却された金属原反の表面を検査する表面検査段階をさらに含んでよい。
【0082】
一具現例において、前記表面処理が施された金属原反の一方側の面に接着剤を塗布して外面接着層をそれぞれ形成する外面接着層コーティング段階は、2回のコーティングによって表面処理が施された金属原反の一方側の面に接着剤を塗布する過程であって、第3次コータによって行われてよく、乾燥などの過程を経ながらラミネートのための準備をするようになる。接着剤を塗布してから、接着剤が塗布された金属原反を乾燥させて接着層を形成した後、乾燥された接着層の厚さを測定し、接着層の表面をコロナ処理して接着力を強化させることができる。
【0083】
一具現例において、前記方法は、前記ラミネート段階の後、前記金属原反において外層がラミネートされていない他方側の面に内面接着層を形成する段階をさらに含んでよい。また、一具現例において、前記内面接着層形成段階の後に乾燥段階をさらに含んでよい。一具現例において、前記内面接着層の下にシーラント層原反をラミネートする段階をさらに含んでよい。
【0084】
一具現例において、前記方法は、外層ラミネート段階までの各段階で用いられる原反に突き刺され及び/又は圧痕が発生することを防止するために、セルパウチの最終構造の製造時まで計2回以下の巻取り段階を含んでよい。具体的に、計2回以下、より好ましくは、計1回の巻取りでセルパウチフィルムの最終構造を製造することが最も好ましい。
【0085】
一具現例において、前記巻取り段階は、前記外層ラミネート段階の後に行われてよい。又は、前記シーラント層ラミネート段階の後に行われてよい。例えば、前記巻取り段階は、図2中の(10)番段階で行われることであってよい。
【0086】
一具現例において、前記外面接着層の上に外層原反をラミネートするラミネート段階及び前記内面接着層の下にシーラント層原反をラミネートする段階は、それぞれ接着剤が塗布された金属原反の一方側の面に機能性原反をラミネートする過程であって、内側は主に電池の耐熱性及び耐寒性を安定化するためのシーラント層原反がラミネートされてよく、外側は耐熱性と耐ピンホール性及び耐摩耗性などのための外層原反がラミネートされてよい。一具現例において、前記各ラミネート段階は、予め準備された外層原反又は実ラント原反をラミネートすることであってよい。
【0087】
一具現例において、前記第3次コーティング段階とラミネート段階との間に、接着剤が塗布された金属原反を乾燥させて接着層を形成する接着剤乾燥段階;乾燥された接着層の厚さを測定する接着層厚さ測定段階;及び前記接着層の表面をコロナ処理して接着力を強化させる接着層表面処理段階をさらに含んでよい。
【0088】
一具現例において、前記ラミネート段階の後に前記シーラント層及び外層の表面を検査する表面検査段階をさらに含んでよい。
【0089】
一具現例において、各原反を送る過程で、異物及びスクラッチの発生を最小化するためにガイドロールに基材接触ロールと軸とを分離して可動するテンデンシ(Tendency)構造及び一体型で可動するシャフト(Shaft)構造を両方とも適用してよい。ガイドロールの一般の駆動方式は、モータからの回転を軸一体型ガイドロールに伝達して1:1の速度に合わせて駆動をする仕組みであるのに対し、テンテンシ駆動方式は、ガイドロールと軸とを分離して微細なロールの回転速度を相互補正する仕組みになっており、必要な区間で適宜適用してよい。一実施例として、設備の稼動に問題が生じたときに分離して運営できるようにリワインダ(Re-winder)部とアンワインダ(Un-winder)部(原反供給部)とを別途に構成してよい。
【0090】
また、一具現例において、原反の送り途中での異物及びスクラッチの発生の最小化のためにテンション制御区間ではサクションロールを適用してよく、走行途中で発生する異物がロールにくっ付いて外観不良(突き刺され、スクラッチなど)を誘発することを防止するために、異物を除去するための接触式クリーンロールを適用してよい。
【0091】
一方、本発明の例示的な具現例では、熟成段階をさらに含んでよい。前記熟成段階は、セルパウチの製造の際の接着力、耐電解液性、剥離強度などの信頼性を向上するために必要な工程であるが、所要時間が多少長いため最適の熟成工程が肝要である。前記セルパウチの最終構造に対して1回だけの熟成工程を経て製品を製造することが生産性の面から好ましい。具体的に、前記方法は、2回以下の熟成段階を含むものであってよい。より具体的に、前記方法は、前記両面表面処理段階の後に熟成段階なしに、表面処理が施された金属原反の一方側の面に接着剤を塗布するものであってよく、前記熟成段階は、外層及び/又はシーラント層のラミネート段階の後に含まれることであってよい。例えば、前記ラミネート段階前の両面表面処理段階で熟成段階が含まれる場合には、製造途中段階のフィルムが一定時間以上空気中に曝されながら積層されていない表面処理剤の脱着が生じることがある。例えば、接着層形成段階で熟成段階が含まれる場合には、接着層の反応が一部進んで後で該接着層が他の層にくっ付くブロッキング現象が生じることがある。
【0092】
一方、本発明の例示的な具現例では、バリア層を形成する金属原反の両面に表面処理を施す第1次コータ3及び第2次コータ4を含む両面表面処理手段;前記表面処理が施された金属原反の一方側の面に接着剤を塗布する第3次コータ7;及び前記接着層の一方側の面に機能性原反をラミネートするラミネート部9;を含む、前記セルパウチ用フィルムの製造装置を提供してよい。図2は、本開示の一実施例に係るセルパウチ用フィルムの製造装置の模式図である。
【0093】
一具現例において、前記両面表面処理手段は、原反供給部1、異物除去手段2、張力調節部、及び第1次コータ3及び第2次コータ4を含んでよい。前記原反供給部1は、巻き取られた金属原反を繰り出して供給する。前記異物除去手段2は、供給された金属原反の表面に存在する異物を除去する。前記張力調節部は、表面の異物が除去された金属原反の張力を調節する。前記第1次コータ3及び第2次コータ4は、一定の張力が維持される金属原反の両面にコーティングを行う。
【0094】
一具現例において、前記異物除去手段2は、金属原反の両面に放電処理を施して油分を除去する第1次異物除去部を含んでよい。また、油分が除去された金属原反の両面にピンホールの発生の有無を確認するピンホール検査部をさらに含んでよい。確認の結果異常がない場合に金属原反の両面に発生する異物をロール方式にて除去する第2次異物除去部をさらに含んでよい。
【0095】
一具現例において、前記両面表面処理手段と第3次コータ7との間に両面がコーティング処理された金属原反をフローティング(Floating)方式にて乾燥して物性を安定化させる物性安定化乾燥部5が設けられてよい。このとき、乾燥方式は、コートされた基材を浮遊した状態で非接触式にて乾燥できるようにエアフローティング(Air Floating)方式を適用してよい。これにより、送りロールなどの構成との接触を最小化しながら両面コートされた金属原反を乾燥することができる。次いで、冷却部6によって乾燥された金属原反を冷却させ、表面検査部によって前記冷却された金属原反の表面を検査してよい。
【0096】
一具現例において、前記第3次コータ7とラミネート部9との間に、接着剤が塗布された金属原反を乾燥させて接着層を形成する接着剤乾燥部8;乾燥された接着層の厚さを測定する接着層測定部;及び接着層の表面をコロナ処理して接着力を強化させる接着層表面処理部をさらに含んでよい。
【0097】
一具現例において、前記ラミネート部9に続いて前記シーラント層及び外層の表面を検査する表面検査部をさらに含んでよい。
【0098】
一具現例によれば、、セルパウチ用フィルムは、図2の製造装置で製造されたものであってよい。一実施例において、図2中のラミネート部9と最終巻取り部(End、2nd Re-wind)との間には、表面処理が施された金属原反の他方側の面に接着剤を塗布する第4次コータ(図示せず)、乾燥部(図示せず)、機能性原反(外層、シーラント層)ラミネート部(図示せず)、押出部(共押出を含む)(図示せず)などが必要に応じて追加されてよい。
【0099】
一方、本発明の例示的な具現例では、前述したセルパウチフィルムで外装された二次電池を提供する。かかる二次電池は、代表的にリチウム二次電池であってよく、特に電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵装置(ESS)などの中大型の二次電池であってよい。
【0100】
また、本発明の例示的な具現例では、前述したセルパウチフィルムで二次電池を外装する段階;を含む二次電池の製造方法を提供する。
【実施例0101】
以下の実施例を通じて本発明の例示的な具現例をより詳しく説明することにする。なお、本明細書に開示された実施例は単に説明のための目的から例示されたものであって、本発明の実施例は種々の形態で実施でき、本明細書に開示された実施例に限定されると解釈されてはならない。
【0102】
[実験方法]
<実施例及び比較例の製造>
実施例及び比較例のパウチフィルムは、外層、バリア層、シーラント層が積層されたものであって、外層は、最外側のポリエチレンテレフタルレート(PET)フィルム(厚さ12μm)及びその内側のナイロン(Ny)フィルム(厚さ25μm)のラミネートフィルムを用い、バリア層はアルミニウムを用い(厚さ60μm)、シーラント層はポリプロピレン層(厚さ80μm)を用いた。総厚さは、接着剤層の厚さを含めて183μmである。
【0103】
パウチフィルムにおいて外層を接着する方法を下記のように異ならせたことと、両面表面処理後の乾燥過程(図2中の(5))での乾燥チャンバの温度を下の表1のようにそれぞれ異ならせたことを除いては、実施例及び比較例を同様にして製造した。
【0104】
先ず、比較例のパウチフィルムは、ソルベントドライラミネーション(Solvent Dray Lamination;SDL)方法にて外層を金属層とラミネートした。具体的に、金属層であるアルミニウム層の両面に表面処理剤をコートしてから外層であるナイロンを1次的にラミネートした後、その上にPETを2次的にラミネートした。表面処理後の乾燥温度は140℃以上、150℃以下とした。次いで、内層(シーラント層)であるポリプロピレン(PP)層を押出してパウチフィルムを製造した。この過程では、硬質金属であるアルミニウムの上にあるナイロンが熱収縮し易いため、ナイロンが熱収縮しないようにできる限り大きな張力を加えてラミネートした。
【0105】
一方、実施例のパウチフィルムは、既にラミネートされたナイロンフィルム及びPETフィルムをアルミニウムに一回にラミネート(ナイロンフィルムがアルミニウムを向くようにラミネート)し、次いで、その反対側に内層(シーラント層)であるポリプロピレン(PP)層を押出してラミネートした。表面処理後の乾燥温度は160℃以上とした。
【0106】
【表1】
【0107】
各パウチフィルムを240mm(MD)×266mm(TD)の大きさで作製した。
【0108】
実施例及び比較例に係る剥離とバリア層側の剥離表面粗さ、エッジ部のアルミニウム残存厚さ、及び成形性の評価のための最大成形深さを次のように評価した。
【0109】
<剥離の実施>
2.5cm(TD)×15cm(MD)の大きさのパウチフィルムを電解液が入っている容器に含浸してから当該容器を密封し、該密封された容器を85℃のオーブンに入れて1日放置後、当該電解液に含浸させておいたパウチフィルムを取り出して1.5cm(TD)×15cm(MD)の大きさに裁断して試料を作製した。
【0110】
バリア層に損傷が生じないように外層だけに浅い切れ目を入れてから万能試験機(UTM)にて引っ張って金属層と剥離されたシーラント層の一部を剥離後、当該試料を両面テープを用いてスライドガラスに平らに付着し、再び万能試験機(UTM)にて金属層と剥離されたシーラント層が180度になるように、当該試料の両端を掴んで約30mm以上剥離されるように引っ張って剥離した(速度50mm/min)。
【0111】
<表面粗さの測定>
剥離されたシーラント層の金属(アルミニウム層)層側を1×1cmの大きさでカットし、両面テープを用いてスライドガラスに平らに付着した。
表面粗さ測定装備(NV-2200 3D profiler、Nano system社製)を用いて表面の屈曲写真を撮影した。得られたデータを分析プログラム(NanoMap、Nano system社製)を用いてヒストグラム(Histogram)欄のRaを測定した。
【0112】
<外層(ナイロン/PET)の弾性率の測定>
セルパウチフィルムを試片カッターにて150mm×1.5mmの大きさで作製(MD、TD試片を2個ずつ作製)した後、手作業でNy/PETをパウチから剥離した。次いで、万能試験機器(UTM)にて弾性率を評価した。弾性率の評価条件は、速度:50mm/min、グリップギャップ(Grip gap):50mmとし、常温25℃、湿度30%で評価を行った。弾性率の評価は、SSカーブ(Curve)における弾性率区間の傾きを用いて求めた。
【0113】
<成形性及び成形後のエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さの測定>
240mm(MD)×266mm(TD)のセルパウチフィルムを、クロム(Cr)コートされた1カップ成形機にて成形してその成形性及びエッジ部のアルミニウム残存厚さを評価した。
成形性の結果は、10回測定して10回ともクラックなしに成形が完壁になった最大成形深さにて評価した。成形時の圧力は0.3MPaと固定し、成形機のR値(角部曲率半径値)は4R(4mm)とした。成形時のフォーミングサイズは横90mm×120mmとし、シングルフォーミングにて行った。
【0114】
成形後のエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さの評価は、12mm成形してからエッジ(edge)部を断面切削機にて切削しSEMを用いてパウチフィルムのうちのアルミニウムの断面評価後のアルミニウムの厚さ(最大厚さ、成形後の残存厚さ)を測定した。このようにパウチフィルムにおけるエッジ部のアルミニウム残存厚さ(成形後の厚さ)を測定することは、成形後のバリア層の残存厚さが成形性に最も大きな影響を与えるためである。
【0115】
実施例及び比較例のパウチフィルムの剥離表面粗さRa、外層弾性率(ナイロン/PET弾性率)、エッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さ(単位:μm)、成形性(単位:mm)の評価結果は、それぞれ次の表2~表5に表すとおりである。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
これらの表に見られるように、外層とバリア層を剥離した後のバリア層側の剥離表面粗さRaが1.5μm超である比較例に比べて、表面粗さRaが1.5μm以下である実施例は、成形後のエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さが大きく、遥かに成形性に優れていることが分かる。
また、ナイロンとPETとをラミネートしてなる外層のMD方向の弾性率が2450以下である場合及びナイロンとPETとをラミネートしてなる外層のTD方向の弾性率が2400以下である実施例は、比較例に比べて、成形後のエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さが大きく、遥かに成形性に優れていることが分かる。
【0121】
以上、本発明の非制限的且つ例示的な具現例を説明したが、本発明の技術思想は添付の図面や前記説明内容に限定されない。本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の形態の変形が可能であることはこの分野の通常の知識を有する者には自明であり、また、かかる形態の変形は本発明の特許請求の範囲に属すると言えよう。
図1
図2