(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149476
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ルパタジン固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20241010BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241010BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20241010BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P37/08
A61P43/00 113
A61K9/20
A61K9/32
A61K9/36
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2024065788
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023071883
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中原 茜
(72)【発明者】
【氏名】穀田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆亮
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA44
4C076BB01
4C076BB22
4C076CC03
4C076CC29
4C076DD28
4C076DD38
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4C076DD69T
4C076EE13H
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE32H
4C076EE38
4C076FF02
4C076FF21
4C086AA01
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4C086BC27
4C086DA23
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA11
4C086ZB13
4C086ZC45
(57)【要約】
【課題】D-マンニトールを含みながら溶出挙動が良好なルパタジン固形製剤を提供する。
【解決手段】
ルパタジンまたはその塩と、D-マンニトールと、部分アルファー化デンプンとを含有することを特徴とするルパタジン固形製剤により解決される。D-マンニトールと部分アルファー化デンプンの質量比[D-マンニトール/部分アルファー化デンプン]は1~7であることが好ましい。また、ルパタジンまたはその塩の90%粒子径(D90)は60μm以下であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルパタジンまたはその塩と、D-マンニトールと、部分アルファー化デンプンとを含有することを特徴とする、ルパタジン固形製剤。
【請求項2】
D-マンニトールと部分アルファー化デンプンの質量比[D-マンニトール/部分アルファー化デンプン]が1~7である、請求項1に記載のルパタジン固形製剤。
【請求項3】
ルパタジンまたはその塩の90%粒子径(D90)が、60μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のルパタジン固形製剤。
【請求項4】
ルパタジンまたはその塩の90%粒子径(D90)が、10μm以下であることを特徴とする、請求項3に記載のルパタジン固形製剤。
【請求項5】
ルパタジン固形製剤100質量%中の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が5質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のルパタジン固形製剤。
【請求項6】
ルパタジンまたはその塩と、D-マンニトールと、部分アルファー化デンプンとを含有する核粒子と、該核粒子の表面に設けられたコーティング層とを備えた顆粒を含む、ルパタジン固形製剤。
【請求項7】
前記コーティング層が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有する、請求項6に記載のルパタジン固形製剤。
【請求項8】
前記コーティング層が、さらにメチルセルロースを含有する、請求項7に記載のルパタジン固形製剤。
【請求項9】
錠剤である、請求項1~8のいずれかに記載のルパタジン固形製剤。
【請求項10】
口腔内崩壊錠である、請求項9に記載のルパタジン固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルパタジン固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ルパタジンは経口アレルギー性疾患治療薬であり、ルパタジンフマル酸塩、すなわち、8-Chloro-6,11-dihydro-11-{1-[(5-methylpyridin-3-yl)methyl]piperidin-4-ylidene}-5H-benzo [5,6]cyclohepta[1,2-b]pyridine monofumarateを含む錠剤が「ルパフィン(登録商標)錠」という名称で販売されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ルパフィン(登録商標)錠10mg添付文書(2022年6月改訂(第2版)、2020年12月改訂(第1版))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
錠剤等の固形製剤は、薬物(有効成分)と添加剤とを含むが、医薬品として十分な作用を奏するために好ましい添加剤は、薬物によって異なることが一般的である。
このような背景のもと、本発明者は薬物との反応性が低いD-マンニトールを賦形剤として用いてルパタジン固形製剤を調製し検討を開始したところ、D-マンニトールを含むルパタジン固形製剤は、溶出挙動に課題が生じる傾向にあることを見出した。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、D-マンニトールを含み、溶出挙動が良好なルパタジン固形製剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、ルパタジン固形製剤に賦形剤としてD-マンニトールを配合した場合には、部分アルファー化デンプンを組み合わせて配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕ルパタジンまたはその塩と、D-マンニトールと、部分アルファー化デンプンとを含有することを特徴とする、ルパタジン固形製剤。
〔2〕D-マンニトールと部分アルファー化デンプンの質量比[D-マンニトール/部分アルファー化デンプン]が1~7である、〔1〕に記載のルパタジン固形製剤。
〔3〕ルパタジンまたはその塩の90%粒子径(D90)が、60μm以下であることを特徴とする、〔1〕に記載のルパタジン固形製剤。
〔4〕ルパタジンまたはその塩の90%粒子径(D90)が、10μm以下であることを特徴とする、〔3〕に記載のルパタジン固形製剤。
〔5〕ルパタジン固形製剤100質量%中の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が5質量%以下である〔1〕に記載のルパタジン固形製剤。
〔6〕ルパタジンまたはその塩と、D-マンニトールと、部分アルファー化デンプンとを含有する核粒子と、該核粒子の表面に設けられたコーティング層とを備えた顆粒を含む、ルパタジン固形製剤。
〔7〕前記コーティング層が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有する、〔6〕に記載のルパタジン固形製剤。
〔8〕前記コーティング層が、さらにメチルセルロースを含有する、〔7〕に記載のルパタジン固形製剤。
〔9〕錠剤である、〔1〕~〔8〕に記載のルパタジン固形製剤。
〔10〕口腔内崩壊錠である、〔9〕に記載のルパタジン固形製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、D-マンニトールを含みながら溶出挙動が良好なルパタジン固形製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のルパタジン固形製剤(以下、単に固形製剤という場合もある。)は、ルパタジンまたはその塩と、D-マンニトールと、部分アルファー化デンプンとを含有する。
【0010】
ルパタジンの塩の種類としては、医薬品として使用可能なものであれば制限はないが、ルパタジンフマル酸塩が好ましい。ルパタジンまたはその塩は、市場より入手可能なものを使用でき、結晶形態でも、アモルファス形態でもよい。
【0011】
ルパタジンまたはその塩の粒子径は、ルパタジン固形製剤の溶出挙動がより優れる点から、90%粒子径(D90)が60μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。90%粒子径(D90)の下限値は3μmであることが好ましい。
50%粒子径(D50)は10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。50%粒子径(D50)の下限値は1μmであることが好ましい。
10%粒子径(D10)は5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。10%粒子径(D10)の下限値は0.5μmであることが好ましい。
【0012】
ここで90%粒子径とは、体積基準粒子径分布において頻度の累積が90%になる粒子径である。すなわち、D90の値以下の粒子径を有する粒子は総体積の90%を占める。同様に、50%粒子径とは、体積基準粒子径分布において頻度の累積が50%になる粒子径であり、メジアン径とも呼ばれる。10%粒子径とは、体積基準粒子径分布において頻度の累積が10%になる粒子径である。
本明細書において粒子径は、粒度分布測定装置(Mastersizer3000、Malvern Instruments社製)を用いた乾式レーザー回折法で測定した値を意味する。
【0013】
D-マンニトールは、医薬品分野で添加剤として使用可能なものであれば制限はなく、市場より入手可能なものを使用できる。D-マンニトールは薬物との反応性が低く、賦形剤として好適であるとともに、造粒がしやすく味のよい固形製剤が得られやすい点でも好ましい。
【0014】
部分アルファー化デンプンは、医薬品分野で添加剤として使用可能なものであれば制限はなく、市場より入手可能なものを使用できる。賦形剤としてD-マンニトールを配合したルパタジン固形製剤に対し、部分アルファー化デンプンを崩壊剤として配合することにより、溶出挙動の良好な固形製剤が得られる。このようにルパタジン固形製剤においては、D-マンニトールと、部分アルファー化デンプンとを組み合わせて配合することが溶出挙動の点で好適である。
【0015】
D-マンニトールおよび部分アルファー化デンプン以外の添加剤としては、医薬品分野で使用可能な賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤、香料等の添加剤をいずれも必要に応じて含有することができる。
【0016】
賦形剤としては、上述のD-マンニトールに加えて、結晶セルロース、乳糖水和物、無水乳糖、精製白糖、バレイショデンプン、アルファー化デンプン等の1種以上を必要に応じて併用できるが、他の成分との反応性が低い点、成形性に優れる点、崩壊性に優れた固形製剤が得られやすい点等で、併用する場合には結晶セルロースを選択することが好ましい。
【0017】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、デキストリン、水アメ等が挙げられ、これらのうちの1種以上を必要に応じて使用できるが、類縁物質の生成が抑制され安定性に優れた固形製剤が得られやすいことから、ヒプロメロースを使用することが好ましい。
【0018】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられ、これらのうち1種以上を部分アルファー化デンプンに加えて使用できるが、崩壊性の点から、トウモロコシデンプンおよびクロスポビドンのうちの少なくとも一方を部分アルファー化デンプンとともに使用することが好ましい。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、崩壊性の点等、必要に応じて使用できるが、固形製剤の溶出挙動の点からは、固形製剤100質量%中、5質量%以下の範囲で使用するか、使用しないことが好ましい。
【0019】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0020】
甘味剤としては、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、スクロース、サッカリン又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、ステビア又はその塩等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
香料としては、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、l-メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0021】
その他の添加剤としては、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム,タルク等)、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、カルナウバロウ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
また、コーティング層には、コーティング基剤(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、カルメロースナトリウム等)、コーティング可塑剤(クエン酸トリエチル等)、タルク等の滑沢剤等を必要に応じて使用できる。
【0022】
なお、添加剤としては、複数種の添加剤があらかじめ造粒された造粒物を使用してもよく、たとえば、D-マンニトール(賦形剤)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(崩壊剤)およびポリビニルアルコール完全けん化物(結合剤)が造粒された市販の造粒物(SmartEx(登録商標、信越化学工業株式会社製))等を使用してもよい。
SmartEx(登録商標)は、D-マンニトール90.0~95.0質量%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース5.0~7.0質量%、ポリビニルアルコール完全けん化物0.1~0.3質量%からなる造粒物であり、粒子径が異なる「QD-50」または「QD-100」をいずれも使用できる。
【0023】
本発明の固形製剤は、ルパタジンまたはその塩と、D-マンニトールと、部分アルファー化デンプンを含有する限り、その態様には制限はなく、顆粒状製剤(顆粒剤、ドライシロップ剤、細粒剤等)、錠剤(即放性錠剤、口腔内崩壊錠等)等が挙げられるが、ルパタジンまたはその塩は苦味を有することから、ルパタジンまたはその塩を含有する核粒子にコーティング層が設けられた顆粒を含む顆粒状製剤や錠剤が好ましい。
具体的には、顆粒に必要に応じて添加剤を添加した顆粒状製剤や、顆粒に必要に応じて添加剤を混合し、得られた打錠用組成物を打錠した錠剤が好ましい。錠剤の表面には任意の材料を用いたコーティングを行って最外コーティング層を設けることもできる。
【0024】
このように顆粒を含む態様である場合、核粒子にD-マンニトールと、部分アルファー化デンプンが含まれることが好ましい。
ルパタジンまたはその塩を含有する核粒子の形態としては、ルパタジンまたはその塩とD-マンニトールと部分アルファー化デンプンを含む造粒物、添加剤粒子の表面にルパタジンまたはその塩とD-マンニトールと部分アルファー化デンプンを含む原薬層が形成されたレイヤリング粒子等が挙げられるが、ルパタジンまたはその塩とD-マンニトールと部分アルファー化デンプンを含む造粒物であることが好ましい。
【0025】
核粒子に設けられるコーティング層には、公知のコーティング基剤を使用できるが、少なくともアミノアルキルメタクリレートコポリマーを用いることが好ましい。アミノアルキルメタクリレートコポリマーを用いると、ルパタジンまたはその塩の苦味を効果的に抑制でき、ルパタジンまたはその塩の安定性等にも影響を与えにくく好ましい。コーティング層は、さらにメチルセルロース、ヒプロメロース等の他のコーティング基剤、クエン酸トリエチル等のコーティング可塑剤、タルク等の滑剤等の添加剤を含むことができる。特にコーティング基剤として、アミノアルキルメタクリレートコポリマーとメチルセルロ―スを併用することによって、コーティング層を設けても溶出挙動が良好な固形製剤とすることができる。また、コーティング層の外側には、目的に応じたオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコート層を設けることにより、例えば顆粒同士の固着を防止する等、特定の機能を付与できる。オーバーコート層としては、例えばD-マンニトールを固形製剤100質量%中、3質量%以下の範囲で含んで形成される層が挙げられる。
【0026】
アミノアルキルメタクリレートコポリマーとしては、市場より医薬品用途として入手可能なアミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプを使用できる。アミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体である、市販のオイドラギット(登録商標)E100、オイドラギット(登録商標)EPO、コリコート(登録商標)スマートシール30D、コリコート(登録商標)スマートシール100P等を使用できる。
メチルセルロースとしては、市場より医薬品用途として入手可能なもの、たとえば信越化学工業株式会社製のMETOLOSE(登録商標)等を使用できる。好ましくは、20℃における2%水溶液粘度(日本薬局方)が2~10mPa・sの範囲で、メトキシ基の割合が26.0~33.0%のものが好適で、なかでも、20℃における2%水溶液粘度が4mPa・sでメトキシ基の割合が26.0~33.0%のものがより好ましい。このようなメトキシセルロースとしては、上述のMETOLOSE(登録商標)のSMタイプが好適である。
【0027】
本発明の固形製剤中のルパタジンまたはその塩の含有量は適宜設定でき、固形製剤100質量%中、例えば3~20質量%とすることができ、好ましくは3~15質量%である。核粒子にコーティング層が設けられた顆粒を含む錠剤の場合には3~8質量%とすることも好適である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中のルパタジンまたはその塩の含有量は例えば5~40質量%とすることができ、好ましくは10~35質量%、より好ましくは10~20質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中のルパタジンまたはその塩の含有量は例えば5~55質量%とすることができ、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~45質量%である。
【0028】
D-マンニトールの含有量も適宜設定でき、固形製剤100質量%中、30~70質量%とすることができ、好ましくは35~70質量%、より好ましくは40~70質量%とすることができる。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中のD-マンニトールの含有量は例えば1~65質量%とすることができ、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~55質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中のD-マンニトールの含有量は例えば1~65質量%とすることができ、好ましくは1~60質量%、より好ましく3~55質量%である。
D-マンニトールの含有量が上記範囲であると、安定性に優れ、味のよい固形製剤が得られやすく、造粒もしやすい傾向にある。
【0029】
部分アルファー化デンプンの含有量も適宜設定でき、固形製剤100質量%中、1~30質量%とすることができ、好ましくは3~25質量%、より好ましくは5~20質量%とすることができる。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の部分アルファー化デンプンの含有量は例えば5~45質量%とすることができ、好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~35質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の部分アルファー化デンプンの含有量は例えば5~65質量%とすることができ、好ましくは10~60質量%、より好ましく15~55質量%である。
部分アルファー化デンプンの含有量が上記範囲であると、D-マンニトールを含むルパタジン固形製剤の溶出挙動を良好とすることができる。
【0030】
固形製剤中におけるD-マンニトールと部分アルファー化デンプンの質量比[D-マンニトール/部分アルファー化デンプン]は、1~7が好ましく、3~6がより好ましい。このような範囲内であると、D-マンニトールを含む固形製剤に対して部分アルファー化デンプンを加えたことによる効果が十分に発揮される。また、核粒子にD-マンニトールと部分アルファー化デンプンが含まれることが好ましく、この場合、核粒子中におけるD-マンニトールと部分アルファー化デンプンの質量比[D-マンニトール/部分アルファー化デンプン]は0.5~2が好ましく、1~2がより好ましい。
【0031】
本発明の固形製剤が、ルパタジンまたはその塩、D-マンニトールおよび部分アルファー化デンプンを含有する核粒子に、コーティング層が設けられた顆粒を含有するものである場合、核粒子に設けるコーティング層は、上述のとおり、アミノアルキルメタクリレートコポリマーをコーティング基剤として含有することが好ましい。その場合のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は適宜設定できるが、固形製剤を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は例えば1~15質量%とすることができ、好ましくは1~12質量%、より好ましくは3~10質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は例えば5~25質量%とすることができ、好ましくは5~20質量%、より好ましくは5~18質量%である。
コーティング層を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は45質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは55質量%以上である。上限値には特に制限はないが、コーティング層に他のコーティング基剤、コーティング可塑剤、滑剤等を含有させる場合は、70質量%が好ましく、65質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。
【0032】
コーティング基剤としては、上述のとおり、アミノアルキルメタクリレートコポリマーとともにメチルセルロースを併用することが好ましい。その場合のメチルセルロースの含有量は適宜設定できるが、固形製剤を100質量%とした場合、コーティング層中のメチルセルロースの含有量は例えば0.1~10質量%とすることができ、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、コーティング層中のメチルセルロースの含有量は例えば0.5~10質量%とすることができ、好ましくは1~8質量%、より好ましくは1~5質量%である。
コーティング層を100質量%とした場合、コーティング層中のメチルセルロースの含有量は5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上である。上限値には特に制限はないが、35質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、25質量%がさらに好ましい。
コーティング基剤としてアミノアルキルメタクリレートコポリマーとメチルセルロースを併用する場合、これらの質量比[メチルセルロース/アミノアルキルメタクリレートコポリマー]は、0.1~2が好ましく、0.1~1がより好ましく、0.1~0.5がさらに好ましい。
【0033】
顆粒における核粒子とコーティング層の質量比率は、核粒子を100質量部とした場合、コーティング層は1~30質量部とすることができ、5~25質量部が好ましく、10~20質量部がより好ましい。
【0034】
固形製剤はD-マンニトール以外の賦形剤を必要に応じて含んでもよく、固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中のD-マンニトール以外の賦形剤の含有量は例えば1~25質量%とすることができ、好ましくは1~20質量%、5~15質量%である。
ここで固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、D-マンニトールは顆粒と、顆粒に加えられる添加剤との両方に含まれることが好ましい。
【0035】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の結合剤の含有量は例えば0.1~5質量%とすることができ、好ましくは0.5~4質量%、より好ましくは1.0~3質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の結合剤の含有量は例えば1~10質量%とすることができ、好ましくは2~8質量%、より好ましくは3~6質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の結合剤の含有量は例えば1~15質量%とすることができ、好ましくは3~12質量%、5~10質量%である。
ここで結合剤としては少なくともヒプロメロースを使用することが好ましく、固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、ヒプロメロースは、顆粒、特に核粒子に含まれることが好ましい。
【0036】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の部分アルファー化デンプン以外の崩壊剤の含有量は例えば1~15質量%とすることができ、好ましくは1~12質量%、より好ましくは1~10質量%である。このような崩壊剤としては例えばトウモロコシデンプン、クロスポビドン等が好ましい。
顆粒を100質量%とした場合、部分アルファー化デンプン以外の崩壊剤の含有量は例えば1~13質量%とすることができ、好ましくは4~10質量%、より好ましくは5~9質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、部分アルファー化デンプン以外の崩壊剤の含有量は例えば1~13質量%とすることができ、好ましくは4~10質量%、より好ましくは5~9質量%である。
【0037】
ここで固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、崩壊剤は、少なくとも顆粒に含まれ、顆粒に加えられる添加剤にも必要に応じて含まれることが好ましく、顆粒に部分アルファー化デンプンが含まれ、顆粒に加えられる添加剤にトウモロコシデンプン、クロスポビドンの少なくとも一方が含まれることが崩壊性の点で好ましい。顆粒に加えられる添加剤には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが、固形製剤100質量%中、5質量%以下の範囲で含まれてもよい。
【0038】
甘味剤は、固形製剤を100質量%とした場合、0.1~1質量%の範囲で含まれることが好ましく、滑沢剤は、固形製剤を100質量%とした場合、0.1~3質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0039】
本発明の固形製剤は、ルパタジンまたはその塩、D-マンニトールおよび部分アルファー化デンプンを含有する限り、公知の方法で製造できるが、顆粒を含む製剤である場合、次のような方法で顆粒を製造することが好適である。
ルパタジンまたはその塩、D-マンニトールおよび部分アルファー化デンプンと、必要に応じて加えられる結合剤等の他の添加剤とを混合して造粒用組成物とし、精製水等の溶媒を造粒用組成物に加え、流動層造粒、転動流動層造粒、攪拌造粒等の公知方法で造粒する。この際、結合剤は溶媒に溶解してもよい。ついで、得られた造粒物(核粒子)に対して、好ましくはアミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびメチルセルロースと必要に応じて使用される添加剤をエタノール等の溶媒に溶解した液を噴霧、乾燥し、造粒物の外側にコーティング層を形成する。コーティング層の外側に必要に応じてD-マンニトール等を含むオーバーコート層を形成する。このようにして顆粒を製造できる。
また、D-マンニトール等の賦形剤からなる粒子を用意し、その表面にルパタジンまたはその塩、D-マンニトールおよび部分アルファー化デンプンを含む液を噴霧して原薬層を形成してレイヤリング粒子とし、これを核粒子としてその表面にコーティング層等を形成してもよい。
【0040】
このようにして得られた顆粒に、必要に応じて添加剤を配合して顆粒状製剤(顆粒剤、ドライシロップ剤、細粒剤等)としてもよいし、得られた顆粒に対して必要に応じて添加剤を加えて打錠用組成物とし、これを打錠することにより、錠剤(即放性錠剤、口腔内崩壊錠等)としてもよい。なお、得られた錠剤には、最外コーティング層を必要に応じて形成してもよい。
【0041】
以上説明したように、本発明は、D-マンニトールを含有する固形製剤に対し、部分アルファー化デンプンを配合したものであるため、溶出挙動に関する課題を解決することができる。
【実施例0042】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[例1~例4]
下記の表1の処方に従い、口腔内崩壊錠を製造した。
具体的には、まず、表1の造粒物の欄に記載の各成分を混合して造粒用組成物とし、水を造粒用組成物に滴下しながら撹拌造粒し、造粒物を得た。ついで、得られた造粒物を整粒し、表1の後添加物の欄に記載の成分を加えて打錠用組成物とし、これを打錠して例1~4の口腔内崩壊錠(質量100mg、直径6.5mm)を得た。
得られた各口腔内崩壊錠について、保存前と、条件1(25℃、60%RHで1ヶ月)および条件2(60℃、1ヶ月)での保存後に、下記の方法で溶出試験を行った。
保存前の溶出試験の結果を表1に、保存後の溶出試験の結果を表2に示す。
【0043】
なお、表1中のルパタジンフマル酸塩(A)および(B)の粒子径はそれぞれ以下のとおりである。
ルパタジンフマル酸塩(A)
D90:13.35μm
D50:4.41μm
D10:1.067μm
【0044】
ルパタジンフマル酸塩(B)
D90:5.14μm
D50:1.99μm
D10:0.614μm
【0045】
<溶出試験>
各例で得られた口腔内崩壊錠1錠と試験液(pH6.8)900mLを用い、パドル法により毎分50回転で溶出試験を行った。
具体的には、溶出試験開始後の所定時間(5分後、15分後、30分後、60分後)に、溶出液10mLをとり、直ちに37±0.5℃に加温した試験液10mLを加えた。この液を速やかに毎分3000回転で5分間遠心分離し、上澄み液1mLを量りとった。この上澄み液に溶出試験第1液1mLを加え、試料溶液とした。
別に定量用ルパタジンフマル酸塩約36mgを量り、溶出試験第1液に溶かし、100mLとした。この液4mLを量り、溶出試験第1液を加えて100mLとした。この液1mLを量り、試験液1mLを加え、標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液について、HPLC法により試験を行い、波長258nmにおける紫外吸収を測定しクロマトグラムを得た。各試料溶液の溶出試験開始後、所定時間における溶出率(%)を標準溶液のピーク面積を基準として求めた。
以上の試験を各例の口腔内崩壊錠2個(n=2)について行い、2個の平均(平均溶出率)を算出し、表1および表2に記載した。
なお、移動相は、リン酸二水素カリウム6.8gを水に溶かして1000mLとした液550mLに、アセトニトリル350mLとメタノール100mLを加えて調製した。
【0046】
【0047】
表1に示すように、D-マンニトールを含有する口腔内崩壊錠のうち、部分アルファー化デンプンを含む例1~例3の錠剤は、保存前の平均溶出率が良好で、溶出挙動に優れていた。
【0048】
【0049】
表2に示すように、D-マンニトールとともに部分アルファー化デンプンを含む例1~例3の口腔内崩壊錠は、条件1および条件2での保存後の平均溶出率の低下(溶出遅延)が抑制されていた。特に、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含まない例2の錠剤、粒子径がより小さいルパタジンフマル酸塩(B)を用いた例3の錠剤は、より溶出遅延が抑制されていた。
【0050】
[例5]
以下のようにして口腔内崩壊錠を製造した。
表3の造粒物の欄に記載の各成分のうち、ヒプロメロース以外の成分を混合して造粒用組成物とし、ヒプロメロースを水に溶解させた液を造粒用組成物に噴霧しながら流動層造粒し、造粒物(核粒子)を得た。ついで、得られた造粒物に対して、表3のコーティング層の欄に記載の各成分を溶媒(エタノール)に溶解させた液を噴霧、乾燥してコーティング層を形成し、ついで、表3のオーバーコート層の欄に記載のD-マンニトールを水に溶解させた液を噴霧、乾燥してオーバーコート層を形成し、顆粒を得た。
その後、整粒した顆粒に表3の後添加物の欄に記載の成分を加えて打錠用組成物とし、これを打錠して例5の口腔内崩壊錠(質量250mg、直径8.5mm)を得た。
得られた口腔内崩壊錠について、保存前と、条件1(25℃、60%RHで1ヶ月)および条件2(60℃、1ヶ月)での保存後に、上記の方法で溶出試験を行った。
溶出試験の結果も表3に示す。
【0051】
なお、表3中のルパタジンフマル酸塩(C)の粒子径は以下のとおりである。
ルパタジンフマル酸塩(C)
D90:8.07μm
D50:2.78μm
D10:0.907μm
また、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとして、オイドラギット(登録商標)E100を用い、メチルセルロースとして、20℃における2%水溶液粘度が4mPa・sでメトキシ基の割合が26.0~33.0%のMETOLOSE(登録商標)のSM-4タイプを用いた。
【0052】
【0053】
表3に示すように、コーティング基剤としてアミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびメチルセルロースを用いて形成されたコーティング層を核粒子(造粒物)の表面に形成して顆粒とし、この顆粒に後添加物を加えて打錠して得られた口腔内崩壊錠は、溶出遅延が抑制されていた。