(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149528
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】作業機の油圧システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20241010BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20241010BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20241010BHJP
B60K 17/10 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
E02F9/22 R
F15B11/00 F
F15B11/02 E
B60K17/10 D
E02F9/22 L
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121211
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2021131401の分割
【原出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】竹村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】有井 一善
(57)【要約】
【課題】作業機を通常よりも低速で走行させる場合に走行速度の制御の精度を向上させる。
【解決手段】作業機の油圧システムは、原動機と、作業機を走行させる走行装置と、前記走行装置に動力を伝達可能な走行モータと、前記原動機の動力により駆動して前記走行モータに作動油を供給する可変容量の走行ポンプと、前記走行装置を操作する第1操作部材と、前記作業機を走行させる第1モード及び前記第1モードよりも低速で前記作業機を走行させる第2モードを切り換える第2操作部材と、前記第1操作部材及び前記第2操作部材の操作状態に基づいて、前記原動機及び前記走行ポンプの少なくともいずれかの駆動を制御する制御装置と、前記走行ポンプが有する斜板の角度を調整する調整機構と、を備え、前記制御装置は、前記第1モードでは、前記第1操作部材の操作状態に基づいて前記原動機の駆動を制御し、前記第2モードでは、前記第1操作部材の操作状態に基づいて前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、
作業機を走行させる走行装置と、
前記走行装置に動力を伝達可能な走行モータと、
前記原動機の動力により駆動して前記走行モータに作動油を供給する可変容量の走行ポンプと、
前記走行装置を操作する第1操作部材と、
前記作業機を走行させる第1モード及び前記第1モードよりも低速で前記作業機を走行させる第2モードを切り換える第2操作部材と、
前記第1操作部材及び前記第2操作部材の操作状態に基づいて、前記原動機及び前記走行ポンプの少なくともいずれかの駆動を制御する制御装置と、
前記走行ポンプが有する斜板の角度を調整する調整機構と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1モードでは、前記第1操作部材の操作状態に基づいて前記原動機の駆動を制御し、
前記第2モードでは、前記第1操作部材の操作状態に基づいて前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更する作業機の油圧システム。
【請求項2】
前記原動機の動力により駆動して、前記走行ポンプの斜板の角度を調整するためのパイロット油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出された前記パイロット油が流れる油路に接続され、前記第1操作部材の操作状態に応じて、前記走行ポンプの受圧部に前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を作用させる操作弁と、を備え、
前記調整機構は、前記操作弁に作用する前記パイロット圧を変更する圧力変更部を有し、
前記制御装置は、前記第1操作部材の操作状態に基づいて、前記圧力変更部により前記パイロット圧を変更する請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項3】
前記原動機の動力により駆動して、前記走行ポンプの斜板の角度を調整するためのパイロット油を吐出する油圧ポンプを備え、
前記調整機構は、前記走行ポンプの受圧部に前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を作用させる操作弁を有し、
前記制御装置は、前記第1操作部材の操作状態に基づいて、前記操作弁の開度を制御して、前記パイロット圧を変更する請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項4】
前記原動機の動力により駆動して、前記走行ポンプの斜板の角度を調整するためのパイロット油を吐出する油圧ポンプを備え、
前記調整機構は、
前記第1操作部材の操作状態に応じて、前記走行ポンプの受圧部に前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を作用させる操作弁と、
前記操作弁から前記走行ポンプの受圧部に作用する前記パイロット圧を変更する圧力変更部と、を有し、
前記制御装置は、前記第1操作部材の操作状態に基づいて、前記圧力変更部により前記パイロット圧を変更する請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項5】
前記原動機の動力により駆動して、前記走行ポンプの斜板の角度を調整するためのパイロット油を吐出する油圧ポンプを備え、
前記調整機構は、
前記走行ポンプの斜板の角度を変更する油圧レギュレータと、
前記油圧レギュレータに対して、前記パイロット油を供給しない中立位置、前記パイロット油を第1方向に供給する第1位置、及び前記パイロット油を第2方向に供給する第2位置に切換可能な操作弁と、を有し、
前記制御装置は、前記第1操作部材の操作状態に基づいて、前記操作弁の作動状態を変更することにより、前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を変更する請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項6】
前記第1操作部材は、前記第1モードにおいて前記原動機の回転数を設定可能なアクセル部材を含み、
前記制御装置は、
前記第1モードでは、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を前記アクセル部材により設定された回転数に一致させ、
前記第2モードでは、前記アクセル部材の操作状態に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整する請求項1~5のいずれかに記載の作業機の油圧システム。
【請求項7】
前記第1操作部材は、前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な速度調整部材を含み、
前記制御装置は、前記第2モードにおいて、
前記速度調整部材の操作状態に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、
前記アクセル部材が操作されたときには、前記速度調整部材の操作状態に基づいて調整した前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度よりも速くなるように、前記アクセル部材の操作量に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整する請求項6に記載の作業機の油圧システム。
【請求項8】
前記第1操作部材は、前記第1モード及び前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な走行操作部材を含み、
前記制御装置は、前記第1モード及び前記第2モードでは、前記走行操作部材の操作量に応じて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、
前記走行操作部材の操作量に応じて前記第2モードで調整する前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を、前記走行操作部材の同一の操作量に応じて前記第1モードで調整する前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度よりも遅くする請求項1~5のいずれかに記載の作業機。
【請求項9】
前記第1操作部材は、
前記第1モードにおいて前記原動機の回転数を設定可能なアクセル部材と、
前記第1モード及び前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な走行操作部材と、を含み、
前記制御装置は、
前記第1モードでは、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を前記アクセル部材により設定された回転数に一致させ、
前記第2モードでは、前記走行操作部材の操作量に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、且つ前記走行操作部材の操作量が一定のときに、前記アクセル部材が操作されると、当該アクセル部材の操作量に基づいて、前記原動機の回転数を変更せずに、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整する請求項1~5のいずれかに記載の作業機の油圧システム
。
【請求項10】
前記第1操作部材は、
前記第1モードにおいて前記原動機の回転数を設定可能な第1アクセル部材及び第2アクセル部材と、
前記第1モード及び前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な走行操作部材と、を含み、
前記制御装置は、
前記第1モードでは、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を前記第1アクセル部材及び前記第2アクセル部材のいずれかにより設定された回転数に一致させ、
前記第2モードでは、前記第1アクセル部材の操作量が一定量以上であるときに、前記第2アクセル部材の操作量に応じて、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度の調整範囲を設定し、前記走行操作部材の操作量に応じて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記設定した調整範囲内で前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整する請求項1~5のいずれかに記載の作業機の油圧システム。
【請求項11】
前記第1操作部材は、
前記第1モードにおいて前記原動機の回転数を設定可能な第1アクセル部材及び第2アクセル部材と、
前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な速度調整部材と、を含み、
前記制御装置は、前記第2モードにおいて、
前記速度調整部材の操作状態に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、
前記第1アクセル部材の操作量が一定量以上であるときに、前記第2アクセル部材が操作されると、当該第2アクセル部材の操作量に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、
前記速度調整部材の操作状態に基づいて調整する前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度とは異なる前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を、前記第2アクセル部材の操作量に基づいて調整する請求項1~5のいずれかに記載の作業機の油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ等の作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業負荷に応じて油圧ポンプから吐出する作動油の吐出量を制御するロードセンシングシステムを搭載した作業機が知られている。例えば特許文献1に開示された作業機は、油圧アクチュエータの作動を制御する制御弁を切り換えるためのパイロット油を吐出する第1油圧ポンプと、油圧アクチュエータを作動させるための作動油を吐出する第2油圧ポンプと、油圧アクチュエータの作動時の最高負荷圧が作用可能な第1油路と、第2油圧ポンプからの作動油の吐出圧が作用可能な第2油路と、第1油圧ポンプからパイロット油が吐出される第3油路と、第2油圧ポンプを制御する油圧制御部とを備えている。
【0003】
上記油圧制御部は、第1油路に作用する最高負荷圧と第2油路に作用する第2油圧ポンプの吐出圧との差圧が一定になるように、第2油圧ポンプからの作動油の吐出量を制御する。また、上記油圧制御部は、第3油路における第1取出部から取り出されたパイロット油の第1圧力と、第2取出部から取り出されたパイロット油の第2圧力との差圧に基づいて、第2油圧ポンプからの作動油の吐出量を制御することで、第1油圧ポンプの馬力制御を行って、馬力ロスを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、作業機を通常よりも低速で走行させる場合に走行速度の制御の精度を向上させることができる作業機の油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下の通りである。
本発明の作業機の油圧システムは、原動機と、作業機を走行させる走行装置と、前記走行装置に動力を伝達可能な走行モータと、前記原動機の動力により駆動して前記走行モータに作動油を供給する可変容量の走行ポンプと、前記走行装置を操作する第1操作部材と、前記作業機を走行させる第1モード及び前記第1モードよりも低速で前記作業機を走行させる第2モードを切り換える第2操作部材と、前記第1操作部材及び前記第2操作部材の操作状態に基づいて、前記原動機及び前記走行ポンプの少なくともいずれかの駆動を制御する制御装置と、前記走行ポンプが有する斜板の角度を調整する調整機構と、を備え、前記制御装置は、前記第1モードでは、前記第1操作部材の操作状態に基づいて前記原動機の駆動を制御し、前記第2モードでは、前記第1操作部材の操作状態に基づいて前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更する。
【0007】
本発明の一態様では、前記作業機の油圧システムは、前記原動機の動力により駆動して、前記走行ポンプの斜板の角度を調整するためのパイロット油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された前記パイロット油が流れる油路に接続され、前記第1操作部材の操作状態に応じて、前記走行ポンプの受圧部に前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を作用させる操作弁と、を備え、前記調整機構は、前記操作弁に作用する前記パイロット圧を変更する圧力変更部を有し、前記制御装置は、前記第1操作部材の操作状態に基づいて、前記圧力変更部により前記パイロット圧を変更してもよい。
【0008】
本発明の一態様では、前記調整機構は、前記走行ポンプの受圧部に前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を作用させる操作弁を有し、前記制御装置は、前記第1操作部材の操作状態に基づいて、前記操作弁の開度を制御して、前記パイロット圧を変更してもよい。
【0009】
本発明の一態様では、前記調整機構は、前記第1操作部材の操作状態に応じて、前記走行ポンプの受圧部に前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を作用させる操作弁と、前記操作弁から前記走行ポンプの受圧部に作用する前記パイロット圧を変更する圧力変更部と、を有し、前記制御装置は、前記第1操作部材の操作状態に基づいて、前記圧力変更部により前記パイロット圧を変更してもよい。
【0010】
本発明の一態様では、前記調整機構は、前記走行ポンプの斜板の角度を変更する油圧レギュレータと、前記油圧レギュレータに対して、前記パイロット油を供給しない中立位置、前記パイロット油を第1方向に供給する第1位置、及び前記パイロット油を第2方向に供給する第2位置に切換可能な操作弁と、を有し、前記制御装置は、前記第1操作部材の操作状態に基づいて、前記操作弁の作動状態を変更することにより、前記パイロット油の圧力であるパイロット圧を変更してもよい。
【0011】
本発明の一態様では、前記第1操作部材は、前記第1モードにおいて前記原動機の回転数を設定可能なアクセル部材を含み、前記制御装置は、前記第1モードでは、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を前記アクセル部材により設定された回転数に一致させ、前記第2モードでは、前記アクセル部材の操作状態に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整してもよい。
【0012】
本発明の一態様では、前記第1操作部材は、前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な速度調整部材を含み、前記制御装置は、前記第2モードにおいて、前記速度調整部材の操作状態に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、前記アクセル部材が操作されたときには、前記速度調整部材の操作状態に基づいて調整した前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度よりも速くなるように、前記アクセル部材の操作量に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整してもよい。
【0013】
本発明の一態様では、前記第1操作部材は、前記第1モード及び前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な走行操作部材を含み、前記制御装置は、前記第1モード及び前記第2モードでは、前記走行操作部材の操作量に応じて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、前記走行操作部材の操作量に応じて前記第2モードで調整する前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を、前記走行操作部材の同一の操作量に応じて前記第1モードで調整する前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度よりも遅くしてもよい。
【0014】
本発明の一態様では、前記第1操作部材は、前記第1モードにおいて前記原動機の回転数を設定可能なアクセル部材と、前記第1モード及び前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な走行操作部材と、を含み、前記制御装置は、前記第1モードでは、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を前記アクセル部材により設定された回転数に一致させ、前記第2モードでは、前記走行操作部材の操作量に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、且つ前記走行操作部材の操作量が一定のときに、前記アクセル部材が操作されると、当該アクセル部材の操作量に基づいて、前記原動機の回転数を変更せずに、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整してもよい。
【0015】
本発明の一態様では、前記第1操作部材は、前記第1モードにおいて前記原動機の回転数を設定可能な第1アクセル部材及び第2アクセル部材と、前記第1モード及び前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な走行操作部材と、を含み、前記制御装置は、前記第1モードでは、前記原動機の駆動を制御して、前記原動機の回転数を前記第1アクセル部材及び前記第2アクセル部材のいずれかにより設定された回転数に一致させ、前記第2モードでは、前記第1アクセル部材の操作量が一定量以上であるときに、前記第2アクセル部材の操作量に応じて、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度の調整範囲を設定し、前記走行操作部材の操作量に応じて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記設定した調整範囲内で前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整してもよい。
【0016】
本発明の一態様では、前記第1操作部材は、前記第1アクセル部材及び前記第2アクセル部材と、前記第2モードにおいて前記走行モータの回転数を調整可能な速度調整部材と、を含み、前記制御装置は、前記第2モードにおいて、前記速度調整部材の操作状態に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、前記第1アクセル部材の操作量が一定量以上であるときに、前記第2アクセル部材が操作されると、当該第2アクセル部材の操作量に基づいて、前記調整機構により前記走行ポンプの斜板の角度を変更して、前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を調整し、前記速度調整部材の操作状態に基づいて調整する前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度とは異なる前記走行モータの回転数及び前記走行装置の走行速度を、前記第2アクセル部材の操作量に基づいて調整してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業機を通常よりも低速で走行させる場合に走行速度の制御の精度を向上させることができる作業機の油圧システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】第1実施形態の作業機の作業系の油圧システムの全体図である。
【
図1B】第1実施形態の油圧制御部の周辺の拡大図である。
【
図2A】第1実施形態のエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量との関係をグラフで示す図である。
【
図2B】第1実施形態のエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量との関係を表で示す図である。
【
図3】第2実施形態の作業機の作業系の油圧システムの全体図である。
【
図4A】第2実施形態のエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量との関係をグラフで示す図である。
【
図4B】第2実施形態のエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量との関係を表で示す図である。
【
図5】第3実施形態のエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量との関係をグラフで示す図である。
【
図6】第3実施形態のエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量との関係を表で示す図である。
【
図10A】第4実施形態の作業機の作業系の油圧システムの要部を示す図である。
【
図10B】第4実施形態の制御弁の二次圧と操作部材の操作量との関係をグラフで示す図である。
【
図10C】第4実施形態の制御弁の二次圧と操作部材の操作量との他の関係をグラフで示す図である。
【
図11】第5実施形態の作業機の走行系の油圧システムの全体図である。
【
図12A】第5実施形態のアクセル部材の操作量と走行一次圧との関係をグラフで示す図である。
【
図12B】第5実施形態のアクセル部材の操作量と走行一次圧との他の関係をグラフで示す図である。
【
図13】第6実施形態の作業機の走行系の油圧システムの要部を示す図である。
【
図14A】第6実施形態のジョイスティックの操作量と走行二次圧との関係をグラフで示す図である。
【
図14B】ジョイスティックの操作量と走行ポンプの吐出量の関係をグラフで示す図である。
【
図14C】ジョイスティックの操作量と走行モータの回転数の関係をグラフで示す図である。
【
図16A】第7実施形態のエンジン回転数とLS差圧の関係を表で示す図である。
【
図16B】第7実施形態のエンジン回転数と走行一次圧・二次圧の関係を表で示す図である。
【
図17】第7実施形態の操作部材の操作量とエンジン回転数と比例弁電流の関係を示す図である。
【
図18】第8実施形態の作業機の走行系の油圧システムの全体図である。
【
図19】第8実施形態のエンジン回転数と走行一次圧の関係をグラフで示す図である。
【
図20A】第9実施形態の作業機の走行系の油圧システムの要部を示す図である。
【
図20B】第9実施形態の作業機の走行系の油圧システムの他の例を示す図である。
【
図21】第10実施形態のエンジン回転数と第1補正係数の関係をグラフで示す図である。
【
図22】ジョイスティックの操作方向と指令値の一例を示す図である。
【
図23】指令値と操作電流値の関係を示す図である。
【
図24】本発明の実施形態の作業機の側面図である。
【
図25】本発明の実施形態の作業機の機体の内部構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
[作業機の全体構成]
図24は、本発明の実施形態の作業機1の側面図である。作業機1は、機体2と、キャ
ビン3と、作業装置4と、走行装置5とを備えている。本実施形態では、作業機1の一例としてコンパクトトラックローダを示しているが、本発明に係る作業機はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、トラクタ、スキッドステアローダ、バックホー等であってもよい。
【0020】
機体2には、キャビン3が搭載されている。キャビン3の内部には、運転席8が設けられている。作業機18の運転席に着座した運転者の前側(
図24の左側)を前方、運転者の後側(
図24の右側)を後方、運転者の左側(
図24の手前側)を左方、運転者の右側(
図24の奥側)を右方とする。
図25は、作業機1の機体2の内部構造を示す側面図である。
図25に示すように、キャビン3は、連結軸6などにより機体2と連結されていて、連結軸6を中心に上方へ回動可能である。
【0021】
機体2の内部には、油圧ポンプP1、P2と原動機32が搭載されている。原動機32は、石油系の燃料によって駆動する内燃機関であるエンジン(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン)から構成されている。他の例として、電力によって駆動する電気モータから、原動機32を構成してもよい。本実施形態では、原動機32をエンジン32として以降の説明を進める。
【0022】
図24において、作業装置4は機体2に装着されている。作業装置4は、ブーム10と、作業具11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、バケットシリンダ15とを有している。
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下へ揺動自在に設けられている。作業具11は、例えばバケットから成る。当該バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)に上下へ揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10の基部(後部)を支持している。
【0023】
左右の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13、及びブームシリンダ14は、左右の各ブーム10に対応するように、機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸16(第1枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部は、機体2の後部寄りに枢支軸17(第2枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第2枢支軸17は、第1枢支軸16の下方に設けられている。
【0024】
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸18(第3枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第3枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸19(第4枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第4枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって第3枢支軸18の下方に設けられている。
【0025】
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸20(第5枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第5枢支軸20は、機体2であって、リフトリンク12の前方に対応する位置に設けられている。制御リンク13の他端は、枢支軸21(第6枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第6枢支軸21は、ブーム10であって、第2枢支軸17の前方で且つ第2枢支軸17の上方に設けられている。
【0026】
ブームシリンダ14が伸縮することにより、ブーム10の基部がリフトリンク12及び制御リンク13によって支持されながら、ブーム10が第1枢支軸16回りに上下へ揺動し、ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、ブーム10の上下への揺動に伴って、第5枢支軸20回りに上下へ揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下への揺動に伴って、第2枢支軸17回りに前後へ揺動する。
【0027】
ブーム10の前部には、バケット11に代えて、別の作業具が装着可能である。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等の予備アタッチメントがある。
左側のブーム10の前部には、油圧取出部(図示省略)が設けられている。油圧取出部は、予備アタッチメントに装備された油圧アクチュエータ(図示省略)と、ブーム10に設けられた油圧パイプ等の配管(図示省略)とを接続する。油圧取出部と予備アタッチメントの油圧アクチュエータとは、別の油圧パイプで接続される。油圧取出部に供給された作動油は、当該別の油圧パイプを通過して、油圧アクチュエータに供給される。
【0028】
バケットシリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。バケットシリンダ15を伸縮することで、バケット11が上下へ揺動する。
走行装置5は機体2の外側に設けられている。左側及び右側の各走行装置5は、本実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置から成る。なお、当該走行装置5に代えて、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。
ブームシリンダ14が伸縮することにより、ブーム10が上下へ揺動する。バケットシリンダ15が伸縮することにより、バケット11が上下へ揺動する。
【0029】
[第1実施形態]
図1Aは、第1実施形態の作業機1の作業系の油圧システム30Aを示す図である。
図1Aに示すように、油圧システム30Aは、第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2とを備えている。第1油圧ポンプP1は、エンジン32の動力によって駆動する油圧ポンプである。第1油圧ポンプP1は、作動油タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。第1油圧ポンプP1は、エンジン32の回転数に応じて吐出流量が変動する定容量型のギヤポンプによって構成されている。
【0030】
第2油圧ポンプP2は、エンジン32の動力によって駆動するポンプであって、第1油圧ポンプP1とは異なる位置に設置された油圧ポンプである。この第2油圧ポンプP2は、斜板形の可変容量アキシャルポンプから構成されている。第2油圧ポンプP2は、作動油タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。
第2油圧ポンプP2は、作業機1で作業を行うための油圧アクチュエータ(ブームシリンダ14、バケットシリンダ15、予備アタッチメントに設けられた油圧アクチュエータ、走行装置5に設けられた油圧アクチュエータなど)を作動させる作動油を吐出する。第1油圧ポンプP1は、作業機1に備わる油圧機器(油圧弁及び油圧アクチュエータなど)の作動を制御する制御弁(
図1の制御弁56など)を切り換えるためのパイロット油を吐出する。
【0031】
油圧システム30Aは、ブーム10、バケット11、予備アタッチメント等を作動させる油圧システムであって、複数の制御弁56を備えている。複数の制御弁56は、第2油圧ポンプP2の吐出ポートに接続された油路39に設けられている。複数の制御弁56は、ブーム制御弁56A、バケット制御弁56B、及び予備制御弁56Cである。ブーム制御弁56Aは、ブームシリンダ14の作動を制御するための弁である。バケット制御弁56Bは、バケットシリンダ15の作動を制御するための弁である。予備制御弁56Cは、予備アタッチメントに設けられた油圧アクチュエータの作動を制御するための弁である。
【0032】
ブーム10の操作とバケット11の操作は、運転席8の周囲に設けられたレバー型等の操作部材58によって行うことができる。操作部材58は、操作装置(作業操作装置)52に含まれている。操作部材58は、中立位置から、前、後ろ、左、右、左斜め前方向、左斜め後ろ方向、右斜め前方向、及び右斜め後ろ方向にそれぞれ傾動可能に支持されている。操作部材58をいずれかの方向に傾動操作することにより、操作部材58の下部に設けられた複数の操作弁59(操作弁59A、操作弁59B、操作弁59C、操作弁59D)を操作することができる。複数の操作弁59は、第1油圧ポンプP1に接続された油路(第3油路)40に接続され、第1油圧ポンプP1からの作動油が供給可能である。
【0033】
操作部材58を前側に傾動させると、下降用操作弁59Aが操作されて、当該下降用操作弁59Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧がブーム制御弁56Aの受圧部に作用することで、ブーム10が下降する。
操作部材58を後側に傾動させると、上昇用操作弁59Bが操作されて、当該上昇用操作弁59Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧がブーム制御弁56Aの受圧部に作用することで、ブーム10が上昇する。
【0034】
操作部材58を右側に傾動させると、バケットダンプ用の操作弁59Cが操作され、バケット制御弁56Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁56Bがバケットシリンダ15を伸長させる方向に作動し、操作部材58の傾動量に比例した速度で、バケット11がダンプ動作する。
【0035】
操作部材58を左側に傾動させると、バケットスクイ用の操作弁59Dが操作され、バケット制御弁56Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁56Bがバケットシリンダ15を縮小させる方向に作動し、操作部材58の傾動量に比例した速度で、バケット11がスクイ動作する。
【0036】
予備アタッチメントの操作は、運転席8の周囲に設けられた操作スイッチ24によって行うことができる。操作スイッチ24は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。操作スイッチ24の操作に応じた電気信号が、制御装置25に入力される。
【0037】
制御装置25は、CPU、MPU、又はメモリ等の半導体と、電気電子回路等から構成されている。制御装置25は、操作スイッチ24の操作量に応じた指令(電気信号)を第1電磁弁60A及び第2電磁弁60Bに出力する。第1電磁弁60A及び第2電磁弁60Bは、制御装置25から出力された指令に応じて、即ちスイッチ24の操作量に応じて、開作動する。その結果、第1電磁弁60A及び第2電磁弁60Bに接続された予備制御弁56Cにパイロット油が供給され、予備アタッチメントの予備アクチュエータが予備制御弁56Cから供給された作動油によって作動する。
【0038】
油圧システム30Aは、作業機1で行う作業に応じて第2油圧ポンプP2の吐出量を制御するロードセンシングシステムを備えている。当該ロードセンシングシステムには、第1油路70、第2油路71、及び油圧制御部75が備わっている。油圧制御部75は、流量補償弁72、斜板可変部73、開度変更部76、及び電磁弁81を含んでいる。
【0039】
第1油路70(「PLS油路」とも言う。)は、各制御弁56A、56B、56Cと流量補償弁72とに接続されている。第1油路70は、各制御弁56A、56B、56Cの作動時に、各制御弁56A、56B、56Cにかかる作動油の圧力である負荷圧を検出するための油路である。第1油路70は、各制御弁56A、56B、56Cの負荷圧のうち、最高負荷圧であるPLS信号圧を流量補償弁72に伝達する。即ち、第1油路70には、油圧アクチュエータ14、15などの作動時の最高負荷圧が作用可能である。
【0040】
第2油路71(「PPS油路」とも言う。)は、第2油圧ポンプP2の吐出ポートと流量補償弁72とに接続されている。第2油路71は、第2油圧ポンプP2から吐出される作動油の圧力(吐出圧)であるPPS信号圧を流量補償弁72に伝達する。即ち、第2油路71には、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出圧が作用可能である。第2油圧ポンプP2は、制御弁56A、56B、56Cのスプールの開口状態に応じて、油路71、39に作動油を吐出する。
【0041】
図1Bは、油圧システム30Aの油圧制御部75の周辺の拡大図である。
斜板可変部73は、例えば油圧シリンダから成る。斜板可変部73は、ピストン73A、ピストン73Aを収容する収容部73B、及びピストン73Aに連結したロッド(移動部)73Cを有している。ロッド73Cの一端部は、ピストン73Aに接続され、ロッド73Cの他端部は、第2油圧ポンプP2の斜板に接続されている。斜板可変部73のボトム側の収容部73B内に流量補償弁72から作動油が供給されることで、ピストン73Aが移動して、ロッド73Cが伸縮し、第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更可能になる。即ち、斜板可変部73は、第2油圧ポンプP2の斜板の角度を可変する。なお、収容部73B内に供給された作動油は、例えば収容部73のトップ側(ピストン73Aに対してロッド73C側)に接続された油路(図示省略)からタンク22に排出される。
【0042】
流量補償弁72は、制御弁から成り、第1油路70と第2油路71に接続されている。流量補償弁72は、PLS信号圧及びPPS信号圧に基づいて、斜板制御部73の作動を制御可能な制御弁である。流量補償弁72は、PPS信号圧とPLS信号圧との圧力差であるLS差圧(=PPS信号圧-PLS信号圧)を一定にするように、斜板制御部73に対する作動油の供給ポートの開度が設定される。流量補償弁72は、設定された開度に応じて、斜板制御部73に作動油を供給して油圧をかけることにより、斜板制御部73のピストン73Aを移動させて、ロッド73Cを伸縮させる。
【0043】
上記のようなロードセンシングシステムによれば、PPS信号圧とPLS信号圧との圧力差であるLS差圧が一定になるように、流量補償弁72と斜板制御部73などにより第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更されて、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量が調整される。
油圧システム30Aは馬力制御回路を備えている。当該馬力制御回路には、油圧制御部75が含まれている。油圧制御部75は、第1油圧ポンプP1から吐出されるパイロット油によっても作動し、LS差圧を一定にするように第2油圧ポンプP2を制御する。
【0044】
第1油圧ポンプP1から吐出されたパイロット油は第3油路40を流れる。第3油路40から分岐する第4油路41には、電磁弁81が設けられている。電磁弁81は、例えば電磁比例弁、パイロットチェック弁、或いは可変リリーフ弁等で構成されている。
図1の例では、電磁弁81は電磁比例弁から成る。電磁弁81に備わるソレノイド等が励磁されることで、電磁弁81の開度が任意に変更可能である。可変電磁弁81の作動(開度の変更)は、制御装置25によって電気的に制御される。
【0045】
第4油路41より第3油路40の上流側(第1油圧ポンプP1側)にある中途部分には、フィルタ49が設けられている。第3油路40のフィルタ49より上流側にある部分から分岐してタンク22に到る油路(符号省略)には、リリーフ弁(符号省略)が設けられている。
【0046】
第1油圧ポンプP1から第3油路40へ吐出されたパイロット油は、フィルタ49、第4油路41、及び電磁弁81を通って開度変更部76に流れて行く。電磁弁81は、開度が変更されることで、第4油路41を通って開度変更部76に到るパイロット油の流量を
変化させ、開度変更部76にかかるパイロット圧を調整する。詳しくは、電磁弁81の開度が小さくなるに連れて、開度変更76に流れるパイロット油の流量が減少し、開度変更部76に作用するパイロット圧が大きくなる。フィルタ49によっても、油路40、41から開度変更部76に作用するパイロット圧が大きくなる。
【0047】
このように電磁弁81は、開度変更部76を作動させるパイロット油のパイロット圧を調整する。また、電磁弁81の開度が変更されることで、第4油路41を流れるパイロット油のうち、電磁弁81に流入するパイロット油の第1圧力Piと、電磁弁81から流出するパイロット油の第2圧力PAとにパイロット差圧(パイロット油の圧力差;PA-Pi)が生じ、且つ当該パイロット差圧が変化する。
【0048】
開度変更部76は、例えば油圧シリンダから成る。開度変更部76は、ピストン76A、ピストン76Aを収容する収容部76B、及びピストン76Aに連結したロッド76Cを有している。ロッド76Cの一端部は、ピストン76Aに接続され、ロッド76Cの他端部は、流量補償弁72に接続されている。収容部76Bのボトム側(ロッド76Cと反対側)には、第4油路41が接続されている。
【0049】
第4油路41から収容部76Bのボトム側(ロッド76Cと反対側)の内部に流入するパイロット油のパイロット圧(第2圧力PA)により、ピストン76Aが収容部76B内で移動する。詳しくは、第4油路41から収容部76B内に流入するパイロット油のパイロット圧が小さくなると、ピストン76Aがロッド76Cを縮小させる方向(流量補償弁72から離れる方向)に移動する。第4油路41から収容部76B内に流入するパイロット油のパイロット圧が大きくなると、ピストン76Aがロッド76Cを伸長させる方向(流量補償弁72に近づく方向)に移動する。ロッド76Cが伸縮することにより、流量補償弁72の開度が変更される。即ち、開度変更部76は、電磁弁81により調整されたパイロット圧に応じて作動して、流量補償弁72の開度を変更する。開度変更部76の収容部76B内にあるパイロット油は、収容部76Bのロッド76C側に接続された排出油路41Aから排出される。
【0050】
流量補償弁72は、PLS信号圧とPPS信号圧との差圧であるLS差圧が一定となるように開度が設定されるだけでなく、開度変更部76のピストン76Aの移動に応じて開度が変更される。流量補償弁72の開度が変更されることで、流量補償弁72から斜板制御部73に供給される作動油の流量と圧力も変更される。
【0051】
開度変更部76の非作動時は、流量補償弁(制御弁)72に内蔵されたスプール(図示省略)がスプリング72Aにより所定方向に付勢されることで、LS差圧が一定になるように、流量補償弁72の開度は設定されている。開度変更部76が作動して、ロッド76Cが伸縮することで、流量補償弁72のスプールがスプリング72Aの弾性力に抗して移動し、流量補償弁72の開度が変更される。これにより、流量補償弁72から斜板制御部73へ供給される作動油の流量と圧力が変更され、当該変更に応じて、斜板制御部73のピストン73Aが移動して、ロッド73Cが伸縮し、第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更される。
【0052】
図1Aに示す制御装置25は、電磁弁81の作動を制御することによって、油圧制御部75及び第2油圧ポンプP2も制御し、流量補償弁72が一定にするLS差圧を変更する。以下、LS差圧の変更について詳しく説明する。
【0053】
制御装置25には、エンジン32の回転数を測定する第1測定装置82が接続されている。以下、エンジン32の回転数を、単に「エンジン回転数」と言い、第1測定装置82の測定値を実回転数と言う。制御装置25は、第1測定装置82により測定されたエンジ
ン回転数(実回転数)に応じて、電磁弁81に制御信号(電流信号)を出力して、電磁弁81の開度を制御する。この電磁弁81の開度に応じて、開度変更部76に作用するパイロット圧(第2圧力PA)が変更されて、開度変更部76により流量補償弁72の開度が変更される。そして、流量補償弁72の開度の変更に応じて、流量補償弁72から斜板可変部73に作用する作動油の圧力が変更され、斜板可変部73により第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更され、第2油圧ポンプP2が吐出する作動油の流量が変更される。これにより、第1油路70に作用するPLS信号圧と第2油路71に作用するPPS信号圧との差圧(圧力差)であるLS差圧が変更される。変更後のLS差圧は、流量補償弁72などにより一定に保たれる。
【0054】
図2Aは、作業機1のエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量の関係をグラフで示す図である。
図2Bは、
図2Aと同一の関係を表で示す図である。
図2A及び
図2Bにおいて、ポンプ吐出量とは、制御弁56(ブーム制御弁56A、バケット制御弁56B、予備制御弁56C)のスプールの開口面積を一定(最大)にした場合の、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量のことである。
【0055】
図2A及び
図2Bに示すエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量の関係は、例えば、予め行われた実験又はシミュレーションの結果などに基づいて導出される。また、当該関係を示すデータが、制御装置25に設けられた記憶部26に記憶されている。当該関係を示すデータとしては、例えば
図2Aに示すようなグラフのデータであってもよいし、
図2Bに示すような表のデータであってもよいし、或いはエンジン32の実回転数からLS差圧を算出する関数のデータであってもよい。即ち、エンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量の関係は、エンジン32の実回転数から対応するLS差圧を求めることが可能なデータであれば、形式はなんでもよい。以降、説明の便宜上、
図2A及び
図2Bに示すエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量の関係のことを制御マップという。
【0056】
図2Aに破線で示す制御線L1は、エンジン回転数に応じたLS差圧の変化を表していて、
図2Bに示すエンジン回転数とLS差圧との1対1の関係と対応している。また、
図2Aに示す太い実線は、エンジン回転数に応じたポンプ吐出量の変化を表していて、
図2Bに示すエンジン回転数とポンプ吐出量との1対1の関係と対応している。
【0057】
図2Aの制御マップの第1制御線L1又は
図2Bの制御マップの左から1列目と2列目は、エンジン回転数がアイドリング時の回転数(1200rpm)から最大回転数(2600rpm)まで変化した場合の、LS差圧の変化を示している。なお、アイドリングとは、作業機1においてエンジン回転数を低く抑制した状態のことである。
図2Aの第1制御線L1及び
図2Bでは、エンジン回転数が増加するに連れて、LS差圧も増加している。
【0058】
制御装置25は、第1測定装置82で測定されたエンジン32の実回転数を第1測定装置82から取得すると、
図2A又は
図2Bの制御マップに基づいて、当該実回転数に対応するLS差圧を設定する。そして、制御装置25は、設定したLS差圧に対応する制御信号を電磁弁81に出力し、電磁弁81の開度を変更する。制御装置25が設定したLS差圧に対応する制御信号は、予め記憶部26に記憶された演算式又は制御データに基づいて、制御装置25が生成してもよい。上記のように制御装置25からの制御信号に応じて電磁弁81の開度が変更されると、開度変更部76に作用するパイロット圧(第2圧力PA)が変更されて、開度変更部76と流量補償弁72と斜板可変部73により第2油圧ポンプP2が制御されて、制御信号に対応するLS差圧が実現される。即ち、制御装置25は、第1測定装置82により測定されたエンジン32の実回転数に基づいて、油圧制御部75によりLS差圧を変更する。
【0059】
このようにLS差圧が変更されることで、第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更されて、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量が調整される。即ち、作業機1のエンジン32の駆動に連動して、第2油圧ポンプP2の出力が調整される。このため、作業機1の作業系の馬力制御の精度を向上させることができ、当該制御可能な馬力の範囲で、第2油圧ポンプP2の出力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0060】
また、制御装置25が電磁弁81の開度を制御することによって、開度変更部76に作用するパイロット圧(第2圧力PA)が変更されて、開度変更部76と開度変更部76と斜板可変部73によりLS差圧が変更されて、第2油圧ポンプP2の出力が調整される。このため、第2油圧ポンプP2の出力調整の自由度が高くなり、作業機1の作業系の馬力制御の精度を一層向上させることができる。
【0061】
他の例として、制御装置25が、エンジン32の実回転数と目標エンジン回転数とに基づいて、LS差圧を変更してもよい。目標エンジン回転数は、アクセル部材84(
図1)を操作することによって設定可能である。
【0062】
アクセル部材84は、第1アクセル部材84aと第2アクセル部材84bとを含んでいる。アクセル部材84a、84bは、運転席8の近傍に設けられていて、制御装置25に接続されている。第1アクセル部材84aは、回転自在な摘み部を有するダイヤル式の操作部材である。運転者(オペレータ)が第1アクセル部材84aの摘み部を把持した状態で回すことによって、目標エンジン回転数が設定可能である。第2アクセル部材84bは、揺動自在な踏み込み部を有するペダル式の操作部材である。運転者が第2アクセル部材84bの踏み込み部を踏み込むことによっても、目標エンジン回転数が設定可能である。
【0063】
アクセル部材84a、84bの操作量は、例えばポテンショメータ又はその他の等により検出されて、制御装置25に入力される。制御装置25は、第1アクセル部材84aで設定された目標エンジン回転数(第1目標エンジン回転数という。)と、第2アクセル部材84bで設定された目標エンジン回転数(第2目標エンジン回転数という。)のうち、大きい方の目標エンジン回転数を採用する。例えば、第1目標エンジン回転数が1300rpmであって、第2目標エンジン回転数が2200rpmである場合、制御装置25は、第2アクセル部材84bで設定された第2目標エンジン回転数を目標エンジン回転数EP2として設定し、当該目標エンジン回転数EP2に基づいてエンジン32の駆動を制御する。
【0064】
この際、第1測定装置82により測定されたエンジン32の実回転数EP1が目標エンジン回転数EP2以上である場合(実回転数EP1≧目標エンジン回転数EP2)、制御装置25は、
図2Aの第1制御線L1と実回転数EP1とに基づいてLS差圧を設定し、当該LS差圧に応じた制御信号を電磁弁81に出力する。即ち、エンジン32の実回転数EP1が目標エンジン回転数EP2以上である場合、制御装置25は、エンジン32の実回転数EP1に応じてLS差圧を変更する。
【0065】
一方、第1測定装置82により測定されたエンジン32の実回転数EP1が目標エンジン回転数EP2より低い場合(実回転数EP1<目標エンジン回転数EP2)、又は目標エンジン回転数EP2から所定値A1を減算した回転数よりも実回転数EP1が低い場合(実回転数EP1<目標エンジン回転数EP2-所定値A1、例えばA1=100rpm)、制御装置25は、
図2Aに示すように、第1制御線L1をLS差圧が下がる方向にシフトさせた第2制御線L2を算出する。そして、制御装置25は、第2制御線L2と実回転数EP1とに基づいてLS差圧を設定し、当該LS差圧に応じた制御信号を電磁弁81に出力する。即ち、エンジン32の実回転数EP1が目標エンジン回転数EP2より低下すると、制御装置25はLS差圧を減少させる。なお、
図2Aに太い実線で示すポンプ吐出量は、第1制御線L1に対応していて、第2制御線L2には対応していない。
【0066】
制御装置25は、例えば次の式(1)に基づいて第2制御線L2を算出する。
第2制御線L2=第1制御線L1×e2[定数 ×最大負荷率(負荷率-定数,0)]・・・(1)
【0067】
式(1)中の「負荷率」はエンジン32の負荷率であり、「最大負荷率」はエンジン32の最大負荷率である。エンジン32の負荷率とは、作業機1に搭載された機器(作業装置4又は走行装置5)が作動していない場合(無負荷状態)のエンジン32の出力に対する、当該機器が作動している場合(作動負荷状態)のエンジン32の出力の割合(比率)のことである。エンジン32の出力とは、エンジン32のトルクにエンジン32の回転数を乗算した仕事量のことである(単位:kW又はPS(馬力))。エンジン32のトルクは、トルクセンサ(図示省略)により検出される。式(1)中の「負荷率-定数」がマイナス値の場合、「最大負荷率 (負荷率 - 定数)」の値はゼロとする。
【0068】
例えば、作業装置4の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ14、バケットシリンダ15、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ)が停止し、且つ走行装置5が停止しているときに、制御装置25は、エンジン32が無負荷状態にあると判断する。そして、制御装置25は、このときのエンジン32の出力を算出して、当該算出値を無負荷状態のエンジン32の出力として記録する。この無負荷状態のエンジン32の出力の算出と記録とを、制御装置25が所定の周期で実行してもよい。他の例として、予め無負荷状態のエンジン32の出力を設定して、記憶部26に記憶させておいてもよい。
【0069】
また、作業装置4の油圧アクチュエータと走行装置5のうちの少なくともいずれか1つが作動したときに、制御装置25は、エンジン32が作動負荷状態にあると判断する。そして、制御装置25は、エンジン32の出力を所定の周期で算出し、当該算出値を作動負荷状態のエンジン32の出力とする。また、制御装置25は、作動負荷状態のエンジン32の出力を算出する毎に、既に記録された無負荷状態のエンジン32の出力に対する、当該作動負荷状態のエンジン32の出力の割合を、エンジン32の負荷率として算出し、当該負荷率を記録する。さらに、制御装置25は、記録されたエンジン32の負荷率のうち、最大負荷率を検出する。
【0070】
他の例として、制御装置25が、次の式(2)に基づいて第2制御線L2を算出してもよい。
第2制御線L2=第1制御線L1×e2 -(α × ΔE )・・・(2)
式(2)中の「ΔE」は、目標エンジン回転数と実回転数との回転数差である(回転数差ΔE=目標エンジン回転数EP2-実回転数EP1)。「α」は、作業機1が、走行を優先する走行優先モードと、作業機1の作業を優先する作業優先モードのうち、いずれのモードにあるかによって変わる係数である。走行優先モードのときの係数αより、作業優先モードのときの係数αの方が小さい値である。運転席の周囲に設けられたスイッチ等を操作することで、走行優先モードと作業優先モードとを切り換えることができる。また、走行優先モードと作業優先モードとの間に、作業より走行を若干優先する若干走行優先モード、走行より作業を若干優先する若干作業優先モードを設けて、これら4つのモード毎に係数αを変えてもよい。
【0071】
また、他の例として、エンジン32の実回転数が目標エンジン回転数から僅かに(例えば、数回転未満)減少したときに、制御装置25が、上記式(2)を採用せず、次の式(3)或いは式(4)を採用して、第2制御線L2を算出してもよい。
第2制御線L2=第1制御線L1×e2 -(α × ΔE2 )・・・(3)
第2制御線L2=第1制御線L1×e2 -{α × 最大負荷率(ΔE-定数,0))・・
・(4)
【0072】
上述した例では、エンジン32の実回転数が目標エンジン回転数より低下した場合に、制御装置25が第1制御線L1をLS差圧が下がる方向にシフトさせることで第2制御線L2を算出しているが、これに代えて、第2制御線L2を予め設定して記憶部26に記憶させておいてもよい。
【0073】
上述したように、エンジン32の実回転数が目標エンジン回転数よりも低下した場合に、制御装置25が第2制御線L2と実回転数に基づいてLS差圧を変更することで、エンジン32に何らかの負荷が掛かって、実回転数が低下しても、当該負荷に応じて第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量を減少させることができる。また、制御装置25がエンジン32の負荷又は回転数に応じて第2制御線L2を算出することで、エンジン32の負荷に応じて第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量を減少させることができる。さらにこれらの結果、作業機1の作業系の馬力制御の精度を向上させることが可能となる。
【0074】
他の例として、制御装置25が、目標エンジン回転数と実回転数との差(回転数差ΔE)に基づいてLS差圧を変更してもよい。この場合、まず制御装置25は、アクセル部材84によって設定された目標エンジン回転数と、第1測定装置82により測定された実回転数との回転数差(ΔE)を求める。次に、制御装置25は、回転数差ΔEに応じて第1制御線L1をLS差圧が小さくなる方向にシフトさせる。このとき、制御装置25は、回転数差ΔEが大きいほど、第1制御線L1のシフト量を大きくする。また、制御装置25は、予め定められた定数A(圧力、単位:MPa)に回転数差ΔEを乗算して、シフト量を求める(シフト量=A×ΔE)。次に、制御装置25は、求めたシフト量だけLS差圧が小さくなる方向に、第1制御線L1をシフトさせた第2制御線L2を算出する。そして、制御装置25は、第2制御線L2とエンジン32の実回転数とに基づいてLS差圧を設定し、当該LS差圧に応じた制御信号を電磁弁81に出力する。
【0075】
上記によれば、エンジン32の負荷によって、目標エンジン回転数に対して実回転数が低下しても、当該低下量(回転数差ΔE)に応じて、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量を減少させることができる。この結果、エンジン32の負荷に応じて、作業機1の作業系の馬力制御を精度良く行うことが可能となる。
また、他の例として、予めシフト量毎に対応する第2制御線L2を設定して、記憶部26に記憶させておいてもよい。
【0076】
また、制御装置25は、エンジン32に対する燃料の噴射量に基づいてLS差圧を変更してもよい。この場合、制御装置25は、エンジン32の駆動を制御する際に、インジェクタ(図示省略)から噴射する燃料の噴射量を演算する。噴射量の演算は、制御装置25に入力された目標エンジン回転数、実回転数、又はクランク角度などの様々な条件に基づいて実行されるが、具体的な演算方法は公知技術と同様であるため、説明を省略する。なお、燃料の噴射量とは、エンジン32がディーゼルエンジンから成る場合、エンジン32の出力を発生させるための燃料の噴射量(メイン噴射量)であって、DPF再生(粒子燃焼)等を行うためのポスト噴射量ではない。
【0077】
制御装置25は、燃料の噴射量を演算すると、当該噴射量が所定の噴射閾値より大きいか否かを判定する。噴射閾値は、エンジン回転数に応じて定められた標準的な噴射量よりも大きな値に設定されている。制御装置25は、演算した燃料の噴射量が噴射閾値より大きい場合、第1制御線L1をLS差圧が下がる方向にシフトさせて第2制御線L2を算出する。そして、制御装置25は、当該第2制御線L2とエンジン32の実回転数とに基づいてLS差圧を設定し、当該LS差圧に応じた制御信号を電磁弁81に出力する。これによれば、エンジン32の負荷が大きくて、燃料の噴射量が噴射閾値より大きくなっても、
第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量を減少させることができる。この結果、エンジン32の負荷に応じて、作業機1の作業系の馬力制御を精度良く行うことが可能となる。
【0078】
また、電磁弁81は、エンジン32の負荷率に基づいてLS差圧を変更してもよい。この場合、制御装置25は、前述したようにエンジン32の負荷率を演算し、当該負荷率が所定の閾値より大きいか否かを判定する。ここで、エンジン32の負荷率が閾値よりも大きい場合、制御装置25は、第1制御線L1をLS差圧が下がる方向にシフトさせて第2制御線L2を算出する。そして、制御装置25は、当該第2制御線L2とエンジン32の実回転数とに基づいてLS差圧を設定し、当該LS差圧に応じた制御信号を電磁弁81に出力する。これによれば、エンジン32の負荷が大きくて、負荷率が大きくなっても、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量を減少させることができる。この結果、エンジン32の負荷に応じて、馬力制御を精度良く行うことが可能となる。
【0079】
また、作業機1に設けられた作動油(パイロット油を含む。)、作業機1に搭載された各種機器を冷却するための冷却水、及びエンジン32の内部に入っているエンジンオイルのうちの少なくともいずれか1つの流体の温度が高くなるに連れて、制御装置25が第1制御線L1のシフト量を大きくして、第2制御線L2を算出してもよい。そして、制御装置25が、当該第2制御線L2とエンジン32の実回転数とに基づいてLS差圧を設定し、当該LS差圧を油圧制御部75により実現してもよい。
【0080】
また、作業機1に設けられた作動油、冷却水、及びエンジンオイルのうちの少なくともいずれか1つの流体の温度に基づいて、制御装置25がLS差圧を変更してもよい。制御装置25には、作業機1に設けられた流路を流れる流体の温度を測定する第2測定装置83(
図1)が接続されている。第2測定装置83は、作業機1に設けられた油路を流れる作動油、水路を流れるエンジン32等の機器の冷却用の冷却水、又はエンジン32に設けられた油路を流れるエンジンオイルのうち、少なくとも一方の流体の温度を測定する。制御装置25は、第2測定装置83により測定された流体の温度を取得すると、当該流体の温度が対応する所定の下限閾値以下であるか否かを判定する第1判定と、当該流体の温度が対応する所定の上限閾値以上であるか否かを判定する第2判定のうちの、少なくともいずれか1つの判定を実行する。
【0081】
上記の下限閾値及び上限閾値は、流体の温度に基づいて作業機1のヒートバランスが良好であるか否かを判断するために設定された流体の所定の温度である。例えば、作動油の温度又はエンジンオイルの温度が-20℃以下である場合、作動油又はエンジンオイルの粘性が高いため、制御装置25は、ヒートバランスが良好ではないと判断する。また、作動油又はエンジンオイルの温度が60℃以上である場合も、制御装置25は、ヒートバランスが良好でないと判断する。
【0082】
上記のように、制御装置25は、第2測定装置83によって測定された流体(作動油、冷却水、及びエンジンオイルのうちの少なくとも1つ)の温度を取得し、当該流体の温度と上限閾値又は下限閾値とを比較し、当該比較結果に基づいて作業機1のヒートバランスが良好であるか否かを判断する。そして、ヒートバランスが良好でない場合、即ち、流体の温度が下限閾値以下である場合、又は流体の温度が上限閾値以上である場合、制御装置25は、第1制御線L1をLS差圧が下がる方向にシフトさせて、第2制御線L2を算出する。この際、制御装置25は、流体の温度と上限閾値又は下限閾値との差が大きくなるに連れて、第1制御線L1のシフト量を多くして、第2制御線L2を算出してもよい。制御装置25は、第2制御線L2を算出すると、当該第2制御線L2とエンジン32の実回転数とに基づいてLS差圧を設定し、当該LS差圧に応じた制御信号を電磁弁81に出力して、当該LS差圧を実現する。
【0083】
上記によれば、作業機1のヒートバランスが良好でないときに、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量を減少させることができる。この結果、エンジン32の負荷に応じて、作業機1の作業系の馬力制御を精度良く行うことが可能となり、また作業機1のヒートバランスが良好になるように誘導することが可能となる。
【0084】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の作業機1の油圧システム30Bを示す図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図3に示す第2実施形態の油圧システム30Bでは、LS差圧の変更を指令する指令部材88が制御装置25に接続されている。指令部材88は、運転席8の近傍に設けられた操作スイッチである。指令部材88がオン操作されると、指令部材88と連動する電気回路から、LS差圧の変更を指令する電気信号が発せられて、当該電気信号(以下、単に「変更指令」という。)が制御装置25に入力される。指令部材88がオン操作されていないとき、即ちオフ操作状態にあるときは、LS差圧の変更指令が発せられず、当該変更指令が制御装置25に入力されることもない。
【0085】
図4Aは、作業機1においてLS差圧の変更指令の有無に応じたエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量の関係をグラフで示す図である。
図4Bは、
図4Aと同一の関係を表で示す図である。
図4A及び
図4Bに示す制御マップは、記憶部26に予め記憶されている。
【0086】
図4A及び
図4Bに示すように、指令部材88から制御装置25に対してLS差圧の変更指令が入力されていない(変更指令無しの)場合、エンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量の関係(
図4Aに破線で示す制御線L1、
図4Bの左から1~3列目)は、
図2A及び
図2Bに示したエンジン回転数とLS差圧とポンプ吐出量の関係と同じである。指令部材88から制御装置25に対してLS差圧の変更指令が入力された(変更指令有りの)場合は、変更指令が無い場合(
図4Aに1点鎖線で示す制御線L1、
図4Bの左から1列目と4列目と5列目)より、エンジン回転数に対応するLS差圧及びポンプ吐出量が高くなっている。
【0087】
制御装置25は、指令部材88からの変更指令の有無、第1測定装置82で測定されたエンジン32の実回転数、及び
図4A又は
図4Bに示す制御マップに基づいてLS差圧を設定し、当該LS差圧に応じた制御信号を電磁弁81に出力する。これにより、電磁弁81の開度が当該制御信号に応じて変更されて、当該制御信号に対応するLS差圧が実現される。即ち、指令部材88からのLS差圧の変更指令が有るときに、第1測定装置82により測定されたエンジン32の実回転数に応じてLS差圧が変更される。
【0088】
また、
図4A及び
図4Bに示すように、制御装置25は、指令部材88からのLS差圧の変更指令が有る場合のLS差圧を、当該変更指令が無い場合のLS差圧より大きな値に設定する。即ち、指令部材88によりLS差圧の変更指令が有る場合は、当該変更指令が無い場合より、LS差圧が増加する。
【0089】
上記によれば、例えば、作業機1の運転者が作業装置4のアタッチメントの動作、即ち、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ14、バケットシリンダ15、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ)の動作を通常よりも素早くしたい場合に、指令部材88をオン操作することで、LS差圧が高くなって、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量が増加する。この結果、作業機1がハイスピードモードになって、作業装置4の油圧アクチュエータを素早く動作させることが可能となる。
【0090】
[第3実施形態]
第3実施形態では、アクセル部材84を指令部材として兼用する。即ち、アクセル部材84に含まれる第1アクセル部材84a及び第2アクセル部材84bのうちの少なくともいずれか1つを操作することにより、エンジン32の回転数が設定可能で且つLS差圧の変更指令を発することが可能である。第3実施形態の作業機1の油圧システムの構成は、
図1に示した第1実施形態の油圧システム30Aの構成と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
例えば、第1アクセル部材84a及び第2アクセル部材84bのうちの少なくともいずれか1つが操作されると、当該アクセル部材と連動した電気回路(図示省略)から所定の電気信号が制御装置25に入力される。制御装置25は、当該電気信号に基づいて、目標エンジン回転数を設定し、且つLS差圧の変更指令が有ったと判断する。
【0092】
アクセル部材84a、84bが両方とも操作された場合、制御装置25は、第1アクセル部材84aの操作に応じて入力された電気信号に基づいて第1目標エンジン回転数を設定し、第2アクセル部材84bの操作に応じて入力された電気信号に基づいて第2目標エンジン回転数を設定する。そして、制御装置25は、第1目標エンジン回転数と第2目標エンジン回転数のうち、大きい方の回転数を目標エンジン回転数として採用する。また、制御装置25は、採用した目標エンジン回転数とエンジン32の実回転数とに基づいて、エンジン32の回転数を目標エンジン回転数に合わせるように、エンジン32の駆動を制御する。さらに、制御装置25は、第1目標エンジン回転数と第2目標エンジン回転数のうち、目標エンジン回転数として採用しなかった回転数、即ち小さい方の回転数に基づいてLS差圧(LS差圧の変更値)を設定する。
【0093】
例えば、第1アクセル部材84aが最大量又は最大量より若干少ない所定量以上操作されて、第1目標エンジン回転数が最大値又は最大値より若干小さい値に設定され、且つ第2アクセル部材84bが第1アクセル部材84aの操作量より少ない操作量だけ操作されて、第2目標エンジン回転数が第1目標エンジン回転数より小さい値に設定される。この場合、制御装置25は、第1目標エンジン回転数を目標エンジン回転数として採用し、第2目標エンジン回転数に基づいてLS差圧を設定する。
【0094】
逆に、第2アクセル部材84bが最大量又は最大量より若干少ない所定量以上操作されて、第2目標エンジン回転数が最大値又は最大値より若干小さい値に設定され、且つ第1アクセル部材84aが第2アクセル部材84bの操作量より少ない操作量だけ操作されて、第1目標エンジン回転数が第2目標エンジン回転数より小さい値に設定される。この場合、制御装置25は、第2目標エンジン回転数を目標エンジン回転数として採用し、第1目標エンジン回転数に基づいてLS差圧を設定する。
【0095】
図5は、第1アクセル部材84aと第2アクセル部材84bのうち、一方アクセル部材の操作量が最大又は所定量以上である場合の、他方のアクセル部材の操作量とLS差圧とポンプ吐出量の関係をグラフで示す図である。
図6は、
図5と同一の関係を表で示す図である。
図5及び
図6に示す制御マップは、記憶部26に予め記憶されている。
【0096】
第1アクセル部材84aと第2アクセル部材84bのうち、一方のアクセル部材の操作量が少なめの(0%より若干多い)所定量(10%)以下であり、且つ他方アクセル部材の操作量が最大(100%)又は多めの(100%より若干少ない)所定量(90%)以上である場合、
図5及び
図6に示す制御マップでは、LS差圧は最小値の1.50MPaである。このLS差圧の最小値(1.50MPa)は、第1実施形態(
図2A、
図2B)及び第2実施形態(
図4A、
図4B)に示したように、エンジン回転数が最大値(2600rpm)である場合(第2実施形態では、変更指令無しで且つエンジン回転数が最大値の場合)のLS差圧(1.50MPa)と同値である。即ち、一方のアクセル部材が操作
されていなくても、他方アクセル部材の操作量が最大又は多めの所定量以上であれば、LS差圧は最小値に設定される。
【0097】
また、
図5及び
図6に示す制御マップでは、一方のアクセル部材の操作量が大きくなるに連れて、LS差圧は大きくなる。また、一方のアクセル部材の操作量が多めの(100%より若干少ない)所定量(90%)以上になると、LS差圧は最大値の1.80MPaになる。
【0098】
制御装置25は、第1アクセル部材84aと第2アクセル部材84bのうち、操作量が小さい方(操作量0%も含む。)のアクセル部材の操作量と、
図5又は
図6の制御マップとに基づいてLS差圧を設定し、当該LS差圧に応じた制御信号を電磁弁81に出力する。これにより、電磁弁81の開度が当該制御信号に基づいて変更されて、当該制御信号に対応するLS差圧が実現される。
【0099】
つまり、作業機1の運転者が第1アクセル部材84aと第2アクセル部材84bとを両方とも操作した場合、操作量が大きい一方のアクセル部材の操作に応じて、エンジン32の回転数を変更して、作業機1の走行速度を操作することができる。また、操作量が小さい他方のアクセル部材の操作に応じてLS差圧を変更して、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量も変更することができる。特に、作業者が第1アクセル部材84aと第2アクセル部材84bとを両方とも大きな操作量で操作することで、LS差圧を高くして、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量を多くすることができる。これらの結果、アクセル部材84、84a、84bの操作状態に応じて、作業機1の馬力制御を精度良く行うことが可能となる。
【0100】
[油圧制御部の変形例]
図7Aは、油圧制御部の第1変形例を示す図である。
図7Aに示す油圧制御部75Aは、流量補償弁72、斜板可変部73、開度変更部76(第1開度変更部)に加えて、絞り部101、電磁弁102、及び開度変更部103(第2開度変更部)を含んでいる。第3油路40から分岐する第4油路には、第1分岐油路41、第2分岐油路41B、及び第3分岐油路41Cが含まれている。第3油路40と第1分岐油路41との第1接続点(分岐点)43には、第3伝達油路41Cも接続されている。接続点43より下流(第1油圧ポンプP1と反対側)にある第2接続点(分岐点)44には、第2伝達油路41Bが接続されている。開度変更部76の収容部76Bのボトム側には、第1分岐油路41の先端(第1接続部43と反対側の端)が接続されている。収容部76Bのロッド76C側には、第2伝達油路41Bの先端(第2接続部44と反対側の端)が接続されている。
【0101】
絞り部101は、第3油路40の第1接続点43と第2接続点44との間に設けられている。絞り部101は、第3油路40を流れるパイロット油の流量を減少させる。電磁弁102は、電磁比例弁、可変リリーフ弁、電磁切換弁、又は電磁絞り弁などで構成されている。電磁弁102は、第3分岐油路41Cの中途部分に設けられている。
【0102】
開度変更部103は油圧シリンダから成る。開度変更部103は、ピストン103A、ピストン103Aを収容する収容部103B、及びピストン103Aの移動に伴って移動するロッド103Cを有している。収容部103Bのボトム側(ロッド76Cと反対側)には、第3分岐油路41Cの先端(第1接続部43と反対側の端)が接続されている。ロッド103Cは、流量補償弁72に接続されている。ピストン103Aは、電磁弁102から第3分岐油路41Cに排出されるパイロット油の圧力によって移動可能である。
【0103】
電磁弁102からピストン103A側にある第3分岐油路41Cに排出されるパイロット油の圧力が大きくなると、ピストン103Aはロッド103Cを伸長させる方向(流量
補償弁72に近づく方向)に移動する。また、電磁弁102からピストン103A側にある第3分岐油路41Cに排出されるパイロット油の圧力が小さくなると、ピストン103Aはロッド103Cを収縮させる方向(流量補償弁72から離れる方向)に移動する。
【0104】
制御装置25は電磁弁102の開度を制御する。例えば、指令部材88がオフ操作状態にあるときは、電磁弁102は全閉状態にある。指令部材88がオン操作されると、制御装置25が電磁弁102に制御信号(電気信号)を入力して、電磁弁102を全開状態にする。なお、指令部材88がオフ操作状態にあるときに、制御装置25が電磁弁102に全閉用の制御信号を入力して、電磁弁102を全閉状態にしてもよい。
【0105】
電磁弁102が全閉状態にあるときは、第1油圧ポンプP1から第3油路40に吐出されたパイロット油が、第1分岐油路41を流れて開度変更部76のピストン76Aよりボトム側の収容部76B内に流入する。このように開度変更部76に流入するパイロット油のパイロット圧は、絞り部101によって設定される。開度変更部76は、第1分岐油路41から作用するパイロット圧によってロッド76Cを伸縮させて、流量補償弁72の開度を設定する。
【0106】
電磁弁102が全開状態にあるときは、第1油圧ポンプP1から第3油路40に吐出されたパイロット油が、第3分岐油路41Cを流れて電磁弁102を経由して開度変更部103のピストン103Aよりボトム側の収容部103B内に流入する。制御装置25により電磁弁102の開度が変更されることによって、開度変更部103に流入するパイロット油のパイロット圧は変更される。開度変更部103は、第3分岐油路41Cから作用するパイロット圧によってロッド103Cを伸縮させて、流量補償弁72の開度を変更する。
【0107】
他の例として、制御装置25がアクセル部材84の操作状態に応じて、電磁弁102の開度を制御してもよい。例えば、第2アクセル部材84bの操作量(踏み込み量)が0%(第2アクセル部材84bが未操作状態)であるときに、制御装置25は電磁弁102を全閉状態にする。また、第2アクセル部材84bが操作されたときは、第2アクセル部材84bの操作量が大きくなるに連れて、制御装置25が電磁弁102の開度を大きくする。
【0108】
第2アクセル部材84bが操作されていないときは、電磁弁102が全閉状態にあるため、開度変更部76に作用するパイロット圧が絞り部101によって設定される。第2アクセル部材84bが操作されたときは、電磁弁102が開くため、シリンダ部103に作用するパイロット圧が大きくなる。また、第2アクセル部材84bの操作量が大きくなるに連れて、電磁弁102の開度が大きくなるため、開度変更部103に作用するパイロット圧も大きくなる。
【0109】
例えば、第2アクセル部材84bの操作量が0%以外であるときは、制御装置25が、第2アクセル部材84bの操作量と、
図5又は
図6に示した制御マップとに基づいて、開度変更部103に作用するパイロット圧を設定し、当該パイロット圧に対応する制御信号(電気信号)を電磁弁102に入力して、電磁弁102の開度を調整する。これにより、開度変更部103に作用するパイロット圧が変更されて、開度変更部103が流量補償弁72の開度を変更する。
【0110】
上述した第2アクセル部材84bの場合と同様に、制御装置25が第1アクセル部材84aの操作状態に応じて、電磁弁102の開度を調整し、開度変更部103に作用するパイロット圧を変更してもよい。
図7Bは、油圧制御部の第2変形例を示す図である。
図7Bに示す油圧制御部75Bで
は、第3分岐油路41Cの中途部分に電磁切換弁106と絞り部110とが設けられている。電磁切換弁106は絞り部110より、第1接続点43側に設けられている。電磁切換弁106は、例えば、第1位置106aと第2位置106bとに切換可能な二位置切換弁で構成されている。
【0111】
制御装置25は、電磁切換弁106に制御信号(電気信号)を入力して、電磁切換弁106の位置を切り換える。例えば、指令部材88がオフ操作状態にあるときは、
図7Bに示すように、電磁切換弁106が第1位置106aの状態にある。指令部材88がオン操作されると、制御装置25は電磁切換弁106に制御信号を入力して、電磁切換弁106を第2位置106bに切り換える。なお、指令部材88がオフ操作状態にあるときに、制御装置25が電磁切換弁106に制御信号を入力して、電磁切換弁106を第1位置106aに切り換えるようにしてもよい。
【0112】
電磁切換弁106が第1位置106aに切り変わると、第1油圧ポンプP1から第3油路40に吐出されたパイロット油が、第3分岐油路41Cに流れても、電磁切換弁106を通過することができず、開度変更部103に流れて行かない。然るに、第1油圧ポンプP1から第3油路40に吐出されたパイロット油は、第1分岐油路41を流れて開度変更部76のピストン76Aよりボトム側の収容部76B内に流入する。このように開度変更部76に流入するパイロット油のパイロット圧は、絞り部101によって設定される。このため、開度変更部76が、第1分岐油路41から作用するパイロット圧によってロッド76Cを伸縮させて、流量補償弁72の開度を設定する。
【0113】
電磁切換弁106が第2位置106bに切り変わった状態のときは、第1油圧ポンプP1から第3油路40に吐出されたパイロット油が第3分岐油路41Cを流れて、電磁切換弁106と絞り部110とを経由して開度変更部103に流入する。このように開度変更部103に流入するパイロット油のパイロット圧は、絞り部101によって設定される。このため、開度変更部103が第3分岐油路41Cから作用するパイロット圧によってロッド103Cを伸縮させて、流量補償弁72の開度を大きくなるように変更する。
【0114】
上述した油圧制御部75A、75Bを用いても、流量補償弁72の開度を変更することができる。そして、流量補償弁72の開度の変更に応じて、流量補償弁72から斜板可変部73に供給する作動油の流量と圧力を変更し、斜板可変部73によって第2油圧ポンプP2の斜板の角度を変更して、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量も変更することができる。この結果、油圧アクチュエータ(シリンダ14、15など)の動作速度を変更することが可能になる。また、PPS信号圧とPLS信号圧との差圧であるLS差圧を変更して、作業機1の作業系の馬力制御の精度を向上させることとが可能になる。
【0115】
他の例として、
図7A又は
図7Bに示す油圧制御部75A、75Bにおいて、
図1Bなどに示した電磁弁81を第1分岐油路41に接続し、制御装置25により電磁弁81の開度を調整して、開度変更部76の作動を制御するようにしてもよい。
【0116】
図7Cは、油圧制御部の第3変形例を示す図である。
図7Cに示す油圧制御部75Cでは、第1分岐油路41に電磁弁81が設けられている。第3油路40の第2接続点(分岐点)44には、第2分岐油路41Bが接続されている。流量補償弁72から斜板制御部73に作動油を供給するための第5油路85には、電磁弁74が設けている。制御装置25は、電磁弁81又は電磁弁74に対して制御信号(電流信号)を入力して、電磁弁81、74の開度を変更することにより、流量補償弁72から斜板制御部73に供給する作動油の流量と圧力とを変更して、第2油圧ポンプP2の斜板の角度を変更する。第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更されることで、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量が変更され、PPS信号圧とPLS信号圧との差圧であるLS差圧も変更される。即ち、制御装置25は電磁弁81、74の開度を変更することによって、LS差圧を変更する。
【0117】
図8Aは、油圧制御部の第4変形例を示す図である。
図8Aに示す油圧制御部75Dには、電気的に絞り面積を変更可能な可変絞り弁から成る電磁弁181Aが含まれている。電磁弁181Aは、第3油路40の第1接続点43と第2接続点44との間に設けられている。電磁弁181Aは、第3油路40を流れるパイロット油の流量を増減させる。制御装置25が電磁弁181Aの開度を電気的に変更することで、第1分岐油路41から開度変更部76のボトム側の収容部76B内に作用するパイロット圧(第2圧力PA)と、第2分岐油路41B及び開度変更部76のロッド76C側の収容部76B内に作用するパイロット圧(第3圧力Po)とにパイロット差圧(PA-Po)が生じ、当該パイロット差圧が変化する。このパイロット差圧の変化により、開度変更部76のピストン76Aが移動して、ロッド76Cが伸縮し、流量補償弁72の開度が設定されたり変更されたりする。詳しくは、制御装置25が、電磁弁181Aの開度を小さくするに連れて、第1パイロット差圧が大きくなって、開度変更部76が流量補償弁72の開度を大きくする。
【0118】
図8Bは、油圧制御部の第5変形例を示す図である。
図8Bに示す油圧制御部75Eには、電気的に絞り面積を変更可能な可変絞り弁から成る電磁弁181Bが含まれている。第3油路40から分岐する第4油路には、第1分岐油路41、第2分岐油路41B、及びバイパス油路41Dが含まれている。電磁弁181Bはバイパス油路41Dに接続されている。バイパス油路41Dの第1端部は、第3油路40における絞り部101と第1油圧ポンプP1との間に接続されている。バイパス油路41Dの第2端部は、第3油路40の第2接続部44に接続されている。電磁弁181Bは、バイパス油路41Dを流れるパイロット油の流量を増減させる。
【0119】
制御装置25が電磁弁181Bの開度を電気的に変更する。これにより、第1油圧ポンプP1から吐出されたパイロット油の圧力である第1圧力Piと、電磁弁181B及び絞り部101より下流(第1油圧ポンプP1と反対側)にあるバイパス油路41Dの一部及び第2分岐油路41Bに作用するパイロット圧(第3圧力Po)とにパイロット差圧(Pi-Po)が生じ、当該パイロット差圧が変化する。
【0120】
上記のパイロット差圧の変化により、第1分岐油路41から開度変更部76のボトム側の収容部76B内に作用するパイロット圧(第2圧力PA)と、第2分岐油路41B及び開度変更部76のロッド76C側の収容部76B内に作用するパイロット圧(第3圧力Po)にもパイロット差圧(PA-Po)が生じ、当該パイロット差圧が変化する。これにより、開度変更部76のピストン76Aが移動して、ロッド76Cが伸縮し、流量補償弁72の開度が設定されたり変更されたりする。
【0121】
詳しくは、制御装置25が、電磁弁181Bの開度を小さくするに連れて、上述した第1圧力Pi及と第3圧力Poとのパイロット差圧(Pi-Po)が大きくなり、第2圧力PAと第3圧力Poとのパイロット差圧(PA-Po)も大きくなって、開度変更部76が流量補償弁72の開度を大きくする。
【0122】
制御装置25は、エンジン32の回転数などに応じて、上述した電磁弁181A、181Bの開度を制御することにより、LS差圧を変更することが可能である。
【0123】
図9Aは、油圧制御部の第6変形例を示す図である。
図9Aに示す油圧制御部75Fでは、
図8Bに示した電磁弁181Bに代えて、電磁切換弁から成る電磁弁182と、絞り部183とをバイパス油路41Dに設けている。絞り部183は、バイパス油路41Dを流れるパイロット油の流量を減少させる。本例では、絞り部183は、電磁弁182より上流(第1油圧ポンプP1側)に設けられているが、電磁弁182より下流に絞り部18
3を設けてもよい。
【0124】
電磁弁182は、制御装置25により電気的に第1位置182aと第2位置182bとに切り換えられる。例えば、制御装置25が電磁弁182に制御信号を入力していないときは、バネの弾性力により電磁弁182が第1位置182aに切り換わった状態にある。このとき、第1油圧ポンプP1から第3油路40に吐出されたパイロット油の全部が絞り部101を通過し、油路40を流れるパイロット油の流量が絞り部101により絞られる。このため、絞り部101より上流にある油路41を流れるパイロット油のパイロット圧(第1圧力Pi)と、絞り部101より下流にある油路油路41Bを流れるパイロット油のパイロット圧(第3圧力Po)とにパイロット差圧(Pi-Po)が生じ、当該パイロット差圧が大きくなる。
【0125】
制御装置25が電磁弁182に制御信号を入力すると、電磁弁182が第2位置182bに切り換わる。このとき、第1油圧ポンプP1から第3油路40に吐出されたパイロット油の一部が絞り部101を通過して、当該パイロット油の一部の流量が絞り部101により絞られる。また、第1油圧ポンプP1から第3油路40に吐出されたパイロット油の他部がバイパス油路41Dを流れて、絞り部183と電磁弁182とを通過し、当該パイロット油の他部の流量が絞り部183により絞られる。このため、油路41を流れるパイロット油のパイロット圧(第1圧力Pi)と、油路油路41Bを流れるパイロット油のパイロット圧(第3圧力Po)とにパイロット差圧(Pi-Po)が生じ、当該パイロット差圧が小さくなる。
【0126】
上記のパイロット差圧の変化により、第1分岐油路41から開度変更部76のボトム側の収容部76B内に作用するパイロット圧(第2圧力PA)と、第2分岐油路41B及び開度変更部76のロッド76C側の収容部76B内に作用するパイロット圧(第3圧力Po)にもパイロット差圧(PA-Po)が生じ、当該パイロット差圧(PA-Po)が上述したパイロット差圧(Pi-Po)と同様に変化する。これにより、開度変更部76のピストン76Aが移動して、ロッド76Cが伸縮し、流量補償弁72の開度が設定されたり変更されたりする。そして、流量補償弁72の開度に応じて斜板可変部73が作動し、第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更されて、第2油圧ポンプP2の出力及びLS差圧が変更される。
【0127】
図9Bは、油圧制御部の第7変形例を示す図である。
図9Bに示す油圧制御部75Gでは、
図9Aに示した絞り部183に代えて、電磁弁182の第2位置182bの内部にある油路182cに、絞り部184が設けられている。絞り部184は、内部油路182cを流れるパイロット油の流量を減少させる。
【0128】
このように、電磁弁182の内部油路182cに絞り部184を設けても、制御装置25が電磁弁182を第1位置182a又は第2位置182bに切り換えることで、絞り部101、184が油路40、41D、182cを流れるパイロット油の流量を絞り、開度変更部76に作用するパイロット差圧が変化し、当該パイロット差圧の変化に応じて、開度変更部76が作動し、流量補償弁72の開度が設定されたり変更されたりする。そして、流量補償弁72の開度に応じて斜板可変部73が作動し、第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更されて、第2油圧ポンプP2の出力及びLS差圧が変更される。
【0129】
制御装置25は、エンジン32の回転数などに応じて、上述した電磁弁182の位置を制御することにより、LS差圧を変更することが可能である。
図9Cは、油圧制御部の第8変形例を示す図である。
図9Cに示す油圧制御部75Hでは、
図9A及び
図9Bに示した電磁弁182に代えて、3つの位置に切換可能な電磁比例弁から成る電磁弁185が設けられている。
【0130】
電磁弁185は、制御装置25により電気的に第1位置185a、第2位置185b、及び第3位置185cに切り換えられる。各位置185a、185c、185cの内部油路185d、185e、185fには、絞り部184a、184b、184cがそれぞれ設けられている。絞り部184a、184b、184cは、対応する内部油路185d、185e、185fを流れるパイロット油の流量を減少させる。絞り部184aの開口面積は、絞り部184bの開口面積より小さくなっている。絞り部184cの開口面積は、絞り部184bの開口面積より大きくなっている。
【0131】
制御装置25が電磁弁185を第1位置185a、第2位置185b、又は第3位置185cのいずれかに切り換えることで、絞り部101と各位置に設けられた絞り部184a、184b、184cによって油路40、41D、185d、185e、185fを流れるパイロット油の流量が絞られる。これにより、絞り部101、184a、184b、184cよりも上流にある油路40、41Dの一部を流れるパイロット油のパイロット圧(第1圧力Pi)と、第2分岐油路41Bを流れるパイロット油のパイロット圧(第3圧力Po)とにパイロット差圧が生じ、当該パイロット差圧が変化する。
【0132】
また、第1分岐油路41から開度変更部76の収容部76B内に作用するパイロット圧(第2圧力PA)と、第2分岐油路41B及び開度変更部76の収容部76B内に作用するパイロット圧(第3圧力Po)にもパイロット差圧が生じ、当該パイロット差圧が変化する。そして、当該パイロット差圧に応じて、開度変更部76が作動して、流量補償弁72の開度が設定されたり変更されたりする。
【0133】
図9Dは、油圧制御部の第9変形例を示す図である。
図9Dに示す油圧制御部75Iでは、
図9Cに示した電磁弁185に代えて、3つの位置に切換可能な電磁比例弁から成る電磁弁186が設けられている。
【0134】
電磁弁186は、制御装置25により電気的に第1位置186a、第2位置186b、及び第3位置186cに切り換えられる。第2位置186cと第3位置186cの内部油路186e、186fには、絞り部184b、184cがそれぞれ設けられている。絞り部184b、184cは、対応する内部油路186e、186fを流れるパイロット油の流量を減少させる。絞り部184cの開口面積は、絞り部184bの開口面積より大きくなっている。
【0135】
例えば、制御装置25が電磁弁186に制御信号を入力していないときは、バネの弾性力により電磁弁186が第1位置186に切り換わった状態にあって、バイパス油路41Dに流入したパイロット油が電磁弁186を通過できなくなる。制御装置25が電磁弁186に制御信号を入力すると、電磁弁186が第2位置186b又は第3位置186cに切り換わって、バイパス油路41Dに流入したパイロット油が電磁弁186の第2位置186b又は第3位置186cを通過する。
【0136】
このようにパイロット油が第2位置186b又は第3位置186cを通過する際に、絞り部101、184b、184cが油路40、41Dを流れるパイロット油の流量を絞り、絞り部101、184b、184cより上流にある油路40、41Dの一部を流れるパイロット油のパイロット圧(第1圧力Pi)と、第2分岐油路41Bを流れるパイロット油のパイロット圧(第3圧力Po)とにパイロット差圧が生じ、当該パイロット差圧が変化する。
【0137】
また、第1分岐油路41から開度変更部76の収容部76B内に作用するパイロット圧(第2圧力PA)と、第2分岐油路41B及び開度変更部76の収容部76B内に作用す
るパイロット圧(第3圧力Po)にもパイロット差圧(Pi-Po)が生じ、当該パイロット差圧が変化する。このパイロット差圧(Pi-Po)の変化に応じて、開度変更部76が作動して、流量補償弁72の開度が設定されたり変更されたりする。流量補償弁72の開度に応じて、斜板制御部73が作動して、第2油圧ポンプP2の斜板の角度が変更され、LS差圧も変更される。
【0138】
上述した油圧制御部75H、75Iのいずれかを用いた場合、指令部材88、84によりLS差圧の変更の指令が発せられたときに、制御装置25が、電磁弁185、186を第1位置185a、186aに切り換えて、LS差圧を大きくなるように変更してもよい。
図7A、
図7B、
図8B、及び
図9A~
図9Dに示した変形例では、エンジン32の実回転数に応じて、第1油圧ポンプP1からのパイロット油の吐出流量が変わるため、絞り部101の上流側に作用するパイロット圧と下流側に作用するパイロット圧との差圧も変わります。このため、エンジン32の回転数に応じたLS差圧の制御パラメータの設定をしなくても、油圧的(機械的)にLS差圧を設定することができる。また、エンジン32の負荷が大きくなったときには、油圧的に自動で設定されるLS差圧を、電磁弁181B、182、185、186により低下させることができる。つまり、エンジン32の負荷が大きくなったときに、電磁弁181B、182、185、186を開放して、第1油圧ポンプP1から吐出されたパイロット油の一部を分流して、絞り部101を流れるパイロット油の流量を減らすことで、第1油圧ポンプP1によるパイロット油の吐出量に対して、開度変更部76に作用するパイロット差圧を減らすことができる。
【0139】
作業機1で使用する作動油の種類や作動油温度等の影響により、作動油の粘性が変わると、第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量が変わり、LS差圧も変わってしまう。(作動油の粘性高くなるに連れて、LS差圧が大きくなる。)そのため、第2油圧ポンプP2が決められた作動油の流量を吐出しようとすると、作動油の粘性に応じてLS差圧を設定する必要があり、
図1Aに示した油圧回路では、作動油の粘性などを検出するセンサを追加したり、複雑な制御を行ったりする必要がある。これに対して、
図7A、
図7B、
図8B、及び
図9A~
図9Dに示した油圧回路では、作動油の粘性が高いときは、絞り部101、181A又は電磁弁102、185,186の上流側と下流側とでパイロット油のパイロット差圧が大きくなり、LS差圧が高くなる。このため、作動油の粘性などを検出するためのセンサを追加したり、当該粘性を考慮した複雑な制御を行ったりしなくても、前述したようにLS差圧を変更することができる。
【0140】
上述した実施形態では、油圧制御部75、75A~75Iにより第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量を多くすることで、油圧アクチュエータの動作速度を向上(上昇)させることができる。然るに、これ以外に、例えば
図10Aに示すような操作部材58、84と制御弁56Dとにより、油圧アクチュエータの動作速度を向上させてもよい。
【0141】
[第4実施形態]
図10Aは、第4実施形態の作業機1の作業系の油圧システム30Cの要部を示す図である。油圧システム30Cでは、制御装置25に、操作部材58、アクセル部材84、及び制御弁56Dが接続されている。操作部材58は、ブーム10、バケット11、又は予備アタッチメントを操作するレバーなどである。操作部材58の操作量は、例えばポテンショメータ等により検出されて、制御装置25に入力される。
【0142】
制御弁56Dは3位置切換弁であり、電気的に駆動する2個1対のソレノイド部56eと、油圧により可動する2個1対の受圧部56fとを有している。制御装置25は操作部材58の操作量に応じて、ソレノイド部56eの駆動を制御し、制御弁56Dの位置を切り換える。制御弁56Dに接続された油圧アクチュエータは、ブームシリンダ14、バケ
ットシリンダ15、又は予備アタッチメントに装備された油圧アクチュエータ等である。
【0143】
図10Bは、制御弁56Dの二次圧(制御弁56Dから油圧アクチュエータ14、15などに排出される作動油の圧力)と制御弁56のスプールの移動量と操作部材58、84bの操作量との関係をグラフで示す図である。
図10Cは、
図10Bと同一の関係を表で示す図である。なお、
図10Bでは、縦軸に制御弁56Dの二次圧と、制御弁56Dのスプールの移動量とを一緒に示し、然もそれぞれ最大を100%として百分率で示している。
【0144】
図10B及び
図10Cに示すように、第2アクセル部材84bを操作したときの第2アクセル部材84bの操作量(踏み込み量)が10%以下である場合、操作部材58を最大限(フルストローク100%)操作しても、制御装置25は、制御弁56Dのスプールの移動量が80%になるように、少なくともいずれかのソレノイド部56eに制御信号を出力する。即ち、第2アクセル部材84bの操作量が閾値よりも小さい場合に、制御装置25は、操作部材58の最大付近の大きな操作量(85~100%)に対応する制御弁56Dのスプールの開口面積を最大よりある程度小さく(80%)設定する。
【0145】
一方、第2アクセル部材84bの操作量が90%以上である場合、操作部材58の操作量が85%を超えた時点で、制御弁56Dのスプールの移動量が最大限(フルストローク)100%になるように、少なくともいずれかのソレノイド部56eに制御信号を出力する。即ち、第2アクセル部材84bの操作量が閾値よりも大きい場合に、制御装置25は、操作部材58の最大付近の大きな操作量(85~100%)に対応する制御弁56Dのスプールの開口面積を最大(100%)にする。
【0146】
上記のように、第2アクセル部材84bの操作量と操作部材58の操作量とを連動させることによって、第2アクセル部材84bの操作量が大きい場合には、油圧アクチュエータ14、15などを素早く動作させることができる。また、第2アクセル部材84bの操作量が小さい場合には、油圧アクチュエータ14、15などを標準的な早さで動作させることができる。
【0147】
なお、
図10B及び
図10Cでは、第2アクセル部材84bの操作量を、最大操作量を基準とした割合で示したが、最大操作量以外の所定の操作量(例えば80%等)を基準として、第2アクセル部材84bの操作量を表してもよい。また、第2アクセル部材84bに代えて、第1アクセル部材84aを用い、第1アクセル部材84aと操作部材58と制御弁56Dとを連動させて、油圧アクチュエータ14、15などの動作速度を変更してもよい。
【0148】
また、前述した操作弁59(操作弁59A、操作弁59B、操作弁59C、操作弁59D)を電磁弁で構成し、操作部材58の操作量に応じて、操作弁59から出力するパイロット圧を変更してもよい。この場合、制御装置25は、操作部材58の操作量を取得すると、当該操作量に基づいて操作弁(電磁弁)59の開度を設定し、当該開度に応じた制御信号を操作弁59に出力する。これにより、操作弁59の開度を、操作部材58の操作量に応じた開度にすることができる。
【0149】
[第5実施形態]
図11は、第5実施形態の作業機1の走行系の油圧システム30Dを示す図である。第5実施形態は、上述した第1実施形態~第4実施形態のいずれにも適用可能である。即ち、前述した作業系の油圧システム30A~30C及び油圧制御部75、75A~75Iのいずれに対しても、走行系の油圧システム30Dを組み合わせることが可能である。(後述する他の走行系の油圧システム30E~30Gについても同様である。)第5実施形態の説明において、上述した実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0150】
図11に示す油圧システム30Dは、走行装置5を駆動することが可能である。また、油圧システム30Dは、第1走行ポンプ53L、第2走行ポンプ53R、第1走行モータ36L、及び第2走行モータ36Rを備えている。
【0151】
第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rは、エンジン32の動力によって駆動される油圧ポンプである。具体的には、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rは、エンジン32の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプである。第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rは、パイロット圧が作用する受圧部53aと受圧部53bとを有している、受圧部53a、53bに作用するパイロット圧によって走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度が変更される。当該斜板の角度が変更されることによって、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの出力(作動油の吐出量)と作動油の吐出方向を変えることができる。
【0152】
第1走行ポンプ53Lと第1走行モータ36Lとは、循環油路57hによって接続され、第1走行ポンプ53Lが吐出した作動油が第1走行モータ36Lに供給される。第2走行ポンプ53Rと第2走行モータ36Rとは、循環油路57iによって接続され、第2走行ポンプ53Rが吐出した作動油が第2走行モータ36Rに供給される。
【0153】
第1走行モータ36Lは、機体2の左側に設けられた走行装置5の駆動軸に動力を伝達する油圧モータである。第1走行モータ36Lは、第1走行ポンプ53Lから吐出した作動油により回転が可能であり、作動油の流量によって、回転速度(回転数)を変更することができる。第1走行モータ36Lには、斜板切換シリンダ37Lが接続され、当該斜板切換シリンダ37Lを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても第1走行モータ36Lの回転速度(回転数)を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Lを収縮した場合には、第1走行モータ36Lの回転数は低速域(第1速度)に設定され、斜板切換シリンダ37Lを伸長した場合には、第1走行モータ36Lの回転数は高速域(第2速度)に設定される。つまり、第1走行モータ36Lの回転数は、低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに変更が可能である。
【0154】
第2走行モータ36Rは、機体2の右側に設けられた走行装置5の駆動軸に動力を伝達する油圧モータである。第2走行モータ36Rは、第2走行ポンプ53Rから吐出した作動油により回転が可能であり、作動油の流量によって、回転速度(回転数)を変更することができる。第2走行モータ36Rには、斜板切換シリンダ37Rが接続され、当該斜板切換シリンダ37Rを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても第2走行モータ36Rの回転速度(回転数)を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Rを収縮した場合には、第2走行モータ36Rの回転数は低速域(第1速度)に設定され、斜板切換シリンダ37Rを伸長した場合には、第2走行モータ36Rの回転数は高速域(第2速度)に設定される。つまり、第2走行モータ36Rの回転数は、低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに変更が可能である。
【0155】
また、油圧システム30Dは走行切換弁34を備えている。走行切換弁34は、走行モータ36L、36Rの回転数(回転速度)を第1速度に設定する第1状態と、第2速度に設定する第2状態とに切換可能である。走行切換弁34は、第1切換弁71L、71Rと第2切換弁172とを有している。
【0156】
第1切換弁71Lは、第1走行モータ36Lの斜板切換シリンダ37Lに油路を介して接続されていて、第1位置71La及び第2位置71Lbに切り換え可能な二位置切換弁である。第1切換弁71Lは、第1位置71Laに切り変わっている場合、斜板切換シリ
ンダ37Lを収縮する。また、第1切換弁71Laは、第2位置71L2bに切り変わっている場合、斜板切換シリンダ37Lを伸長する。
【0157】
第1切換弁71Rは、第2走行モータ36Rの斜板切換シリンダ37Rに油路を介して接続されていて、第1位置71Ra及び第2位置71Rbに切り換え可能な二位置切換弁である。第1切換弁71Rは、第1位置71Raに切り変わっている場合、斜板切換シリンダ37Rを収縮する。また、第2位置71Rbに切り変わっている場合、斜板切換シリンダ37Rを伸長する。
【0158】
第2切換弁172は、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを切り換える電磁弁であり、且つ励磁されることにより第1位置172aと第2位置172bとに切り換え可能な二位置切換弁である。第2切換弁172、第1切換弁71L、及び第1切換弁71Rは、油路41により接続されている。第2切換弁172は、第1位置172aに切り変わっている場合に、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第1位置71La、71Raに切り換える。また、第2切換弁172は、第2位置172bに切り変わっている場合に、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第2位置71La、71Rbに切り換える。
【0159】
第2切換弁172が第1位置172aにあり、第1切換弁71Lが第1位置71Laにあり、第1切換弁71Rが第1位置71Raにある場合、走行切換弁34が第1状態になって、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度に設定する。また、第2切換弁172が第2位置172bにあり、第1切換弁71Lが第2位置71Laにあり、第1切換弁71Rが第2位置71Raにある場合、走行切換弁34が第2状態になって、走行モータ36L、36Rの回転数を第2速度に設定する。つまり、走行切換弁34によって、走行モータ36L、36Rを低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに切り換えることができる。
【0160】
走行モータ36L、36Rの第1速度或いは第2速度への切り換えは、変速部材61によって行うことができる。変速部材61は、作業機1の運転者等が操作可能なプッシュスイッチ等から成り、制御装置25に接続されている。変速部材61で所定の操作を行うことで、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度(第1状態)から第2速度(第2状態)に切り換える増速を実行することができる。また、変速部材61で別の所定の操作を行うことで、走行モータ36L、36Rの回転数を第2速度(第2状態)から第1速度(第1状態)に切り換える減速を実行のいずれかに切り換えることができる。
【0161】
制御装置25は、変速部材61の操作状態に基づいて、走行切換弁34の状態を切り換える。例えば、走行モータ36L、36Rの回転数が第1速度に設定された状態で、変速部材61で所定の操作が行われると、走行モータ36L、36Rの回転数を第2速度に増速することを示す2速指令(走行切換弁34を第2状態にする指令)が、変速部材61と連動する電気回路から制御装置25に出力される。また、変速部材61は、走行モータ36L、36Rの回転数が第2速度に設定された状態で、変速部材61で所定の操作が行われると、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度に減速することを示す1速指令(走行切換弁34を第1状態にする指令)が、変速部材61と連動する電気回路から制御装置25に出力される。
【0162】
なお、変速部材61は、オン操作状態とオフ操作状態をそれぞれ保持可能な操作スイッチであってもよい。この場合、変速部材61がオフ操作状態にある場合には、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度に保持する指令が制御装置25に出力される。また、変速部材61がオン操作状態にある場合には、走行モータ36L、36Rの回転数を第2速度に保持する指令が制御装置25に出力される。
【0163】
制御装置25は、走行切換弁34を第1状態にすることを示す指令(1速指令)を取得した場合、第2切換弁172のソレノイドを消磁することで、走行切換弁34を第1状態に切り換える。また、制御装置25は、走行切換弁34を第2状態にすることを示す指令(2速指令)を取得した場合、第2切換弁172のソレノイドを励磁することで、走行切換弁34を第2状態に切り換える。
【0164】
油圧システム30Dは、第1油圧ポンプP1、第2油圧ポンプP2、及び走行操作装置(以下、単に「操作装置」という。)54を備えている。第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、前述した実施形態の第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2と同一である。第1油圧ポンプP1がパイロット油を吐出する第3油路40の分岐点48(
図11及び
図1など)から分岐した油路40a(
図11など)に、走行系の油圧システム30Dは接続されている。(後述する他の走行系の油圧システム30E~30Gも同様である。)
【0165】
操作装置54は、第1走行ポンプ53Lと第2走行ポンプ53Rを操作する装置であって、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度(斜板角度)を変更可能である。操作装置54は、操作レバー等から成る走行操作部材(第1操作部材;以下、単に「操作部材」という。)159と、複数の操作弁55とを含んでいる。
【0166】
操作部材159は、操作弁55に支持され、左右方向(作業機1の機体幅方向)又は前後方向に揺動(傾動)操作可能である。即ち、操作部材159は、中立位置Nを基準とすると、中立位置Nから右方及び左方に揺動操作可能であり、且つ中立位置Nから前方及び後方に揺動操作可能である。言い換えれば、操作部材159は、中立位置Nを基準に少なくとも4方向に揺動することが可能である。尚、説明の便宜上、前方及び後方の双方向、即ち、前後方向のことを第1方向という。また、右方及び左方の双方向、即ち、左右方向のことを第2方向ということがある。
【0167】
また、複数の操作弁55は、共通、即ち1本の操作部材159によって操作される。複数の操作弁55は、操作部材159の揺動に基づいて作動する。複数の操作弁55には、吐出油路40が接続され、当該吐出油路40を介して、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)が供給可能である。複数の操作弁55は、操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、及び操作弁55Dである。
【0168】
前後方向(第1方向)のうち、前方(一方)に操作部材159を揺動操作、即ち操作部材159を前操作した場合に、操作弁55Aは、操作部材159の前操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力を変化させる。前後方向(第1方向)のうち、後方(他方)に操作部材159を揺動操作、即ち操作部材159を後操作した場合に、操作弁55Bは、操作部材159の後操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力を変化させる。左右方向(第2方向)のうち、右方(一方)に操作部材159を揺動操作、即ち操作部材159を右操作した場合に、操作弁55Cは、操作部材159の右操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力を変化させる。左右方向(第2方向)のうち、左方(他方)に操作部材159を揺動操作、即ち操作部材159を左操作した場合に、操作弁55Dは、操作部材159の左操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力を変化させる。
【0169】
複数の操作弁55と、走行ポンプ53L、53Rとは、走行油路45によって接続されている。言い換えれば、走行ポンプ53L、53Rは、操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、操作弁55D)から出力された作動油によって作動可能な油圧機器である。
走行油路45は、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45d、及び第5走行油路45eを有している。第1走行油路45aは、走行
ポンプ53Lの受圧部53aに接続された油路である。第2走行油路45bは、走行ポンプ53Lの受圧部53bに接続された油路である。第3走行油路45cは、走行ポンプ53Rの受圧部53aに接続された油路である。第4走行油路45dは、走行ポンプ53Rの受圧部53bに接続された油路である。第5走行油路45eは、操作弁55、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、及び第4走行油路45dを接続する油路である。
【0170】
操作部材159を前方(
図11では矢示A1方向)に揺動させると、操作弁55Aが操作されて該操作弁55Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して第1走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に、第3走行油路45cを介して第2走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用する。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rが正転(前進回転)して、作業機1が前方に直進する。
【0171】
また、操作部材159を後方(
図11では矢示A2方向)に揺動させると、操作弁55Bが操作されて該操作弁55Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2走行油路45bを介して第1走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用すると共に、第4走行油路45dを介して第2走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rが逆転(後進回転)して、作業機1が後方に直進する。
【0172】
また、操作部材159を右方(
図11では矢示A3方向)に揺動させると、操作弁55Cが操作されて該操作弁55Cからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して第1走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に、第4走行油路45dを介して第2走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、第1走行モータ36Lが正転し且つ第2走行モータ36Rが逆転して、作業機1が右側に旋回する。
【0173】
また、操作部材159を左方(
図11では矢示A4方向)に揺動させると、操作弁55Dが操作されて該操作弁55Dからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第3走行油路45cを介して第2走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用すると共に、第2走行油路45bを介して第1走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用する。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、第1走行モータ36Lが逆転し且つ第2走行モータ36Rが正転して、作業機1が左側に旋回する。
【0174】
また、操作部材159を斜め方向に揺動させると、受圧部53aと受圧部53bとに作用するパイロット圧の差圧によって、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向及び回転速度が決定され、作業機1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する。
【0175】
すなわち、操作部材159を左斜め前方に揺動操作すると、当該操作部材159の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左旋回する。また、操作部材159を右斜め前方に揺動操作すると、該操作部材159の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右旋回する。また、操作部材159を左斜め後方に揺動操作すると、該操作部材159の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左旋回する。また、操作部材159を右斜め後方に揺動操作すると、該操作部材159の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右旋回する。
【0176】
制御装置25には、アクセル部材84a、84bと第1測定装置82とが接続されている。制御装置25は、アクセル部材84a、84bの操作量を取得し、第1測定装置82
により計測されたエンジン32の実回転数を取得する。そして、制御装置25は、アクセル部材84a、84bの操作量に基づいて、目標エンジン回転数を設定し、当該目標エンジン回転数を実現するように、エンジン32の実回転数を確認しながら、エンジン32の駆動を制御する。
【0177】
油圧システム30Dは速度調整機構(調整機構)200を備えている。速度調整機構200は、少なくとも走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bに作用するパイロット圧を変更することによって、走行ポンプ53L、53Rが有する斜板の角度を調整して、作業機1の速度(車速)を予め定められた速度(設定速度)よりも速くする。
【0178】
速度調整機構200は圧力変更部201を有している。圧力変更部201は、例えば第3油路40に設けられた電磁比例弁(電磁弁、操作弁)から成る。制御装置25は、圧力変更部201に制御信号を入力して、圧力変更部201の開度を変更することにより、第3油路40から操作弁55に作用する一次圧(第3油路40から操作弁55に流れるパイロット油のパイロット圧のことであって、走行一次圧とも言う。)を変更する。
【0179】
また、制御装置25は、作業機1を通常走行させる第1モード(通常モード)と、作業機1の車速を低く制限して作業機を低速走行させる第2モード(クリープモード)とに切り換え可能である。第1モードと第2モードとの切り換えは、例えば運転席8の近傍に設けられた操作スイッチ202(第2操作部材)を操作することで行える。
【0180】
図12Aは、アクセル部材84の操作量と操作弁55の一次圧である走行一次圧(又は操作弁55の二次圧である走行二次圧)との関係をグラフで示す図である。この
図12Aに示す関係を表す制御マップのデータが、記憶部26に予め記憶されている。制御装置25は、この
図12Aに示す制御マップに基づいて、圧力変更部201の開度を変更することで、操作弁55に作用する走行一次圧を変更する。
【0181】
具体的には、例えば第1モード(通常モード)では、制御装置25は、
図12Aの制御線L10に示すように、アクセル部材84(第1アクセル部材84a又は第1アクセル部材84b;第1操作部材)の操作量に関わらず、走行一次圧が一定になるように、圧力変更部201に制御信号を入力する。第1モード(通常モード)では、アクセル部材84を操作することで、原動機32の回転数が設定可能である。即ち、第1モードにおいて制御装置25が、アクセル部材84の操作状態に基づいて、エンジン32の回転数を設定し、原動機32の実回転数が設定した回転数と一致するように、エンジン32の駆動を制御する。
【0182】
操作スイッチ202により第2モード(クリープモード)に切り換えられると、制御装置25は、
図12Aの制御線L11に示すように、操作弁55の一次圧を制御線L10で設定された圧力よりも低い値に設定する。そして、制御装置25は制御線L11に基づき、アクセル部材84(第1アクセル部材84a又は第1アクセル部材84b)の操作量が多くなるに連れて、操作弁55の一次圧が上昇するように、圧力変更部201に制御信号を入力する。なお、
図12Aに示した制御線L11は一例である。
【0183】
上記によれば、第2モード(クリープモード)では、アクセル部材84の操作量に応じて、圧力変更部201の開度、操作弁55に作用する一次圧、及び走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bに作用するパイロット圧を変更することができる。そして、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度、走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量、及び走行モータ36L、36Rの回転数も変更することができる。
【0184】
即ち、第2モードでは、制御装置25がアクセル部材84の操作量に応じて、作業機1
の走行系のアクチュエータである走行モータ36L、36Rを作動させるための作動油を吐出する走行ポンプ53L、53Rの駆動を制御することができ、走行モータ36L、36Rの駆動も制御することができる。この結果、作業機1の走行系の馬力制御と車速(走行速度)制御の精度を向上させることが可能となる。
【0185】
特に、第2モードでは、アクセル部材84の操作量が多くなるに連れて、圧力変更部201の開度が大きくなって、操作弁55に作用する一次圧も大きくなるため、走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bに作用するパイロット圧を大きくなるように変更することができる。そして、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量を多くし、走行モータ36L、36Rの回転数を大きくして、作業機1の車速を速くすることができる。上記のように、制御装置25は、第2モードでは、アクセル部材84の操作状態(操作量)に基づいて、エンジン32の回転数を変更せずに、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行モータ36L、36Rの回転数及び作業機1(走行装置5)の走行速度を変更する。
【0186】
また、第2モードにおいて制御装置25が、速度調整部材86とアクセル部材84(第アクセル部材84a又は第2アクセル部材84b)との操作状態に基づいて、速度調整機構200により走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を調整してもよい。この場合、制御装置25は、まず速度調整部材86の操作状態に基づいて、速度調整機構200により走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を調整する。そして、アクセル部材84が操作されたときには、速度調整部材86の操作状態に基づいて調整した走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度より速くなるように、アクセル部材84の操作量に基づいて、速度調整機構200により走行プポン53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を調整する。
【0187】
また、第2モードにおいて制御装置25が、速度調整部材86の操作状態に応じて、制御線L11(
図12A)を縦軸方向にシフト(平行移動)させて、操作弁55の一次圧の調整範囲を変更してもよい。速度調整部材86は、アクセル部材84及び変速部材61より小さい調整幅で、作業機1の車速を一時的に調整(変更)するボリュームスイッチなどから成り、作業機1の運転者により操作される。制御装置25は、速度調整部材86と連動する電気回路(図示省略)から、速度調整部材86の操作状態に応じて入力される電気信号に基づいて、速度調整部材86の操作状態を検出する。
【0188】
具体的には、例えば、速度調整部材86を操作することによって、作業機1の車速及び操作弁55の一次圧(走行一次圧)の調整範囲を設定可能に構成する。そして、速度調整部材86により設定された調整範囲に応じて、
図12Aの制御線L11を縦軸方向にシフトさせる。詳しくは、第2モードにおいて、速度調整部材86により車速が最も遅くなる第1段階が設定された場合には、制御装置25が、
図12Aの制御線L11のデータを補正して、制御線L11を下方にシフトさせた制御線L11aのデータを算出する。また、速度調整部材86により車速が最も速くなる第N段階(Nは2以上の整数)が設定された場合には、制御装置25が、制御線L11のデータを補正して、制御線L11を上方にシフトさせた制御線L11bのデータを算出する。
【0189】
その後、制御装置25は、上記補正後の制御線L11a、11bと、アクセル部材84(第1アクセル部材84a又は第1アクセル部材84b)の操作量に基づいて、圧力変更部201に制御信号を入力し、操作弁55の一次圧を変更する。なお、制御装置25は、速度調整部材86により車速の調整段階が設定(又は変更)されると、当該調整段階に応じてエンジン32の回転数を変更させる。
【0190】
また、他の例として、第2モードにおいて、アクセル部材84の操作量が閾値以上(例えば、第1アクセル部材84a又は第2アクセル部材84bの操作量が80%以上)である場合において、速度調整部材86により車速の調整段階が変更されたときに、制御装置25が変更後の調整段階に応じて、上述したように制御線L11のデータを補正し、補正後の制御線のデータを算出してもよい。この場合、制御装置25は、補正後の制御線とアクセル部材84の操作量とに基づいて、圧力変更部201に制御信号を入力し、操作弁55の一次圧を変更する。
【0191】
なお、アクセル部材84の操作量が閾値未満(例えば、第1アクセル部材84a又は第2アクセル部材84bの操作量が80%未満)である場合には、速度調整部材86により車速の調整段階が変更されても、制御装置25は制御線L11のデータを補正しない。この場合、制御装置25は、制御線L11で示される操作弁55の一次圧のうち、アクセル部材84の操作量0%に対応する一次圧に応じた制御信号を圧力変更部201に入力し、当該操作弁55の一次圧を実現する。また、制御装置25は、アクセル部材84の操作量又は速度調整部材86により設定された車速の調整段階に基づいて、エンジン32の回転数を変更する。
【0192】
制御線L10についても、上述した制御線L11のように、制御装置25が速度調整部材86による車速の調整段階とアクセル部材84の操作量とに応じて補正してもよい。
また、第2モードにおいて、
図12Bに示す制御線L11c
1~L11c
10のように、制御装置25がアクセル部材84の操作量に応じて、操作弁55の一次圧を変更してもよい。
【0193】
図12Bのグラフに示すアクセル部材84の操作量と走行一次圧(又は二次圧)との関係では、アクセル部材84を最大限操作したときの操作量を100%としている。
図12Bに示す制御線L11c
1~L11c
10、L10のデータは、記憶部26に予め記憶される。或いは、制御線L11c
1~L11c
10のうち、少なくともいずれか1つの制御線のデータを記憶部26に予め記憶しておき、当該制御線のデータに基づいて、制御装置25が残りの制御線のデータを算出するようにしてもよい。
【0194】
その場合、制御装置25は、速度調整部材86により設定された車速の調整段階に応じて、制御線L11c1~L11c10のいずれかを採用する。具体的には、例えば速度調整部材86により作業機1の車速を10段階に調整可能に構成する。そして、車速の最も遅い第1段階、次に車速の遅い第2段階、・・・、車速の最も速い第10段階というように、速度調整部材86により設定された調整段階の段階数が大きくなるほど、制御線L11c1、L11c2、・・・、L11c10というように、制御装置25が傾きの大きい制御線L11c1~L11c10を採用する。
【0195】
詳しくは、例えば速度調整部材86により車速が最も遅い第1段階が設定された場合には、制御装置25が制御線L11c1のデータを採用する。また、例えば車速が最も速い第10段階が設定された場合には、制御装置25が制御線L11c10のデータを採用する。制御装置25は、採用したいずれかの制御線L11c1~L11c10と、アクセル部材84の操作量とに基づいて、圧力変更部(比例弁)201に制御信号を入力し、操作弁55の一次圧を変更する。
【0196】
上記により、速度調整部材86を操作することで、制御装置25が制御線L11c1~L11c10のいずれかを選択する。即ち、制御装置25により、操作弁55の一次圧である走行一次圧(又は操作弁55の二次圧である走行二次圧、ひいては、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度、走行モータ36L、36Rの回転数、及び走行装置5の走行速
度)を調整可能な範囲である調整段階が設定される。そして、アクセル部材84が操作されることで、制御装置25は、当該操作量と上記選択された制御線L11c1~L11c10とに基づいて、上記調整段階において走行一次圧などを調整する。
【0197】
また、アクセル部材84が所定量以上操作されることで、制御装置25は、当該操作量と上記選択された制御線L11c1~L11c10とに基づいて、対応する調整段階において走行一次圧などを上昇するように変更する。つまり、第2モード(クリープモード)では、速度調整部材86が操作されることで、作業機1の車速の調整段階などが設定され、アクセル部材84が操作されることで、設定された調整段階において作業機1の車速などが変更される。
【0198】
第1モードでは、制御装置25が制御線L10を採用し、アクセル部材84の操作量に関わらず、操作弁55の一次圧が制御線L10の示す一定圧になるように、圧力変更部(比例弁)201に制御信号を入力する。第2モードの制御線L11c1~L11c10に基づいて設定される操作弁55の一次圧は、アクセル部材84の操作量が100%のときに、第1モードの制御線L10が示す操作弁55の一次圧(一定圧)と同値である。
【0199】
他の例として、制御装置25が、エンジン32の負荷(負荷率など)又は、エンジン32の実回転数と目標エンジン回転数との差に応じて、
図12Aの制御線L10、L11又は
図12Bの制御線L11c
1~L11c
10を縦軸方向にシフトさせる補正を行ってもよい。
【0200】
また、例えば第1アクセル部材84aと第2アクセル部材84bのうち、第1アクセル部材84aの操作量が所定量(80%など)未満のときは、制御装置25が、制御線L10、L11、L11c1~L11c10のいずれかと第1アクセル部材84aの操作量とに基づいて、操作弁55の一次圧を設定してもよい。そして、第1アクセル部材84aの操作量が所定量以上のときに、制御装置25が、制御線L10、L11、L11c1~L11c10のいずれかと第2アクセル部材84bの操作量とに基づいて、操作弁55の一次圧を設定するようにしてもよい。
【0201】
上述した実施形態では、第2モード(クリープモード)において、操作弁55に作用する一次圧を変更していたが、これに代えて、操作弁55から排出されるパイロット油の圧力である二次圧(走行二次圧ともいう。)を変更してもよい。この場合、
図12A~
図12Cに示した制御データを用いることができる。また、操作状態に応じた電気信号を出力可能なジョイスティック等により、操作装置54を構成するのが好ましい。
【0202】
[第6実施形態]
図13は、第6実施形態の作業機1の走行系の油圧システム30Eの要部を示す図である。油圧システム30Eの操作装置54は、作業機1の走行を操作する操作部材(走行操作部材)159と操作弁55a、55b、55c、55dとを有している。操作部材159は、ジョイスティックから成り、操作部159aと、操作部159aに連動する電気回路159bとを有している。以降、便宜上、ジョイスティックから構成された操作部材159を、ジョイスティック159という。
【0203】
ジョイスティック159の操作部159aは、左右方向(機体幅方向)又は前後方向に揺動操作可能である。電気回路159bは、操作部159aの操作量及び操作方向に応じた操作信号(電気信号)を制御装置25に入力する。制御装置25は、電気回路159bから入力された操作信号に基づいて、ジョイスティック159(操作部159a)の操作量及び操作方向を検出する。
【0204】
操作弁55a~55dは電磁比例弁(電磁弁)から成る。操作弁55a~55dは、第3油路40に接続された走行油路45(45a~45d)の中途部分に設けられている。詳しくは、操作弁55aは、第1走行油路45aの中途部分に接続されている。第1走行油路45aの一端は第3油路40に接続され、第1走行油路45aの他端は走行ポンプ53Lの受圧部53aに接続されている。操作弁55bは、第2走行油路45bの中途部分に接続されている。第2走行油路45bの一端は第3油路40に接続され、第2走行油路45bの他端は走行ポンプ53Lの受圧部53bに接続されている。
【0205】
操作弁55cは、第3走行油路45cの中途部分に接続されている。第3走行油路45cの一端は第3油路40に接続され、第3走行油路45cの他端は走行ポンプ53Rの受圧部53aに接続されている。操作弁55dは、第4走行油路45dの中途部分に接続されている。第4走行油路45dの一端は第3油路40に接続され、第4走行油路45dの他端は走行ポンプ53Rの受圧部53bに接続されている。
【0206】
制御装置25は、操作部159aが前方に揺動操作されると、操作弁55a及び操作弁55cに制御信号を出力し、走行ポンプ53L、53Rの斜板を正転(前進)の方向に揺動させる。また、制御装置25は、操作部159aが後方に揺動操作されると、操作弁55b及び操作弁55dに制御信号を出力し、走行ポンプ53L、53Rの斜板を逆転(後進)の方向に揺動させる。また、制御装置25は、操作部159aが右方に揺動操作されると、操作弁55a及び操作弁55dに制御信号を出力し、第1走行ポンプ53Lの斜板を正転の方向に揺動させ、第2走行ポンプ53Rの斜板を逆転の方向に揺動させる。さらに、制御装置25は、操作部159aが左方に揺動操作されると、操作弁55b及び操作弁55cに制御信号を出力し、第1走行ポンプ53Lの斜板を逆転の方向に揺動させ、第2走行ポンプ53Rの斜板を正転の方向に揺動させる。
【0207】
操作弁55a~55dは、速度調整機構200に含まれる圧力変更部としても機能する。制御装置25は、ジョイスティック159の操作量に応じて、操作弁55a~55dの開度を変更することにより、操作弁55a~55dの二次圧(走行二次圧)を変更する。
図14Aは、ジョイスティック159の操作量と走行二次圧との関係をグラフで示す図である。この
図14Aに示す関係を表す制御マップは、制御装置25の記憶部26に予め記憶されている。
【0208】
操作スイッチ202(
図13)により第1モード(通常モード)に切り換えられると、制御装置25は、
図14Aに示す制御線L20とジョイスティック159の操作量とに基づいて、操作弁55a~55dの二次圧を設定し、当該二次圧を実現するように、操作弁55a~55dに制御信号を出力する。即ち、制御装置25は、第1モードでは、ジョイスティック159の操作量が大きくなるに連れて、操作弁55a~55dの開度を大きくして、操作弁55a~55dから出力する二次圧を上昇させる。なお、第1モードでは制御装置25は、アクセル部材84の操作量に関わらず、制御線L20の傾き等を変更しない。
【0209】
一方、操作スイッチ202により第2モード(クリープモード)に切り換えられると、制御装置25は、
図14Aに示す制御線L21~L23のいずれかと、ジョイスティック159の操作量とに基づいて、操作弁55a~55dの二次圧を設定し、当該二次圧を実現するように、操作弁55a~55dに制御信号を出力する。即ち、このとき制御装置25は、操作弁55a~55dの二次圧を、第1モードで用いる制御線L20に基づいて設定される圧力よりも低い値に設定する。また、制御装置25は、ジョイスティック159の操作量に応じて操作弁55a~55dから出力する二次圧を変更する。
【0210】
ジョイスティック159を最大限操作すると、ジョイスティック159の操作量は10
0%となる。また、アクセル部材84の第1アクセル部材84aを最大限操作すると、第1アクセル部材84aの操作量も100%となり、第2アクセル部材84bを最大限操作すると、第2アクセル部材84bの操作量も100%となる。
【0211】
例えば、第2モードにおいて、変速部材61(
図11)など(又は速度調整部材86)が操作されることにより、
図14Aの制御線L21に対応する速度の調整段階が選択される。そして、第1アクセル部材84aが一定量(80%)以上操作された場合において、第2アクセル部材84bの操作量が10%未満であるときに、制御装置25が、制御線L21とジョイスティック159の操作量とに基づいて、操作弁55a~55dの二次圧を設定する。また、第2アクセル部材84bの操作量が10%~90%未満であるときには、制御装置25が、制御線L22とジョイスティック159の操作量とに基づいて、操作弁55a~55dの二次圧を設定する。さらに、第2アクセル部材84bの操作量が90%以上であるときには、制御装置25が、制御線L23とジョイスティック159の操作量とに基づいて、操作弁55a~55dの二次圧を設定する。
【0212】
第2モードの制御線L21~L23に基づいて設定される操作弁55a~55dの二次圧は、第1モードの制御線L20に基づいて設定される操作弁55a~55dの二次圧より小さい値である。また、ジョイスティック159の操作量が所定量以上を操作された場合、制御線L21、制御線L22、制御線L23の順で操作弁55a~55dの二次圧が高く設定される。
【0213】
制御装置25は、上記のように制御線L21~L23のいずれかと、ジョイスティック159の操作量とに基づいて、操作弁55a~55dの二次圧を設定すると、当該二次圧を実現するように、操作弁55a~55dに制御信号を出力して、操作弁55a~55dの開度を制御する。
【0214】
上記によれば、第2モード(クリープモード)では、ジョイスティック(走行操作部材)159の操作量が多くなるに連れて、操作弁55a~55dから出力する二次圧が大きくなるため、走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bに作用するパイロット圧を変更して、作業機1の車速を速くすることが可能となる。即ち、制御装置25は、ジョイスティック159の操作量に応じて第2モードで調整する走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を、走行操作部材の同一の操作量に応じて前記第1モードで調整する走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度より遅くする。また、制御装置25は、ジョイスティック159の操作量に応じて走行ポンプ53L、53Rを制御して、作業機1の走行系の馬力制御と車速制御の精度を向上させることが可能となる。
【0215】
また、第2モードにおいて、第1アクセル部材84aが一定量以上に操作され、且つ第2アクセル部材84bが所定量操作されることで、制御装置25が制御線L21~L22のいずれかを選択する。即ち、制御装置25により、操作弁55a~55dの二次圧である走行二次圧(ひいては、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度、走行モータ36L、36Rの回転数、及び走行装置5の走行速度)を調整可能な範囲である調整段階が設定される。そして、制御装置25が、ジョイスティック159の操作状態と上記選択された制御線とに基づいて、上記走行二次圧などを調整する。また、ジョイスティック159が所定量以上操作されることで、制御装置25は、当該ジョイスティック159の操作量と上記選択された制御線とに基づいて、上記調整段階において走行二次圧を上昇するように変更する。
【0216】
上記のように、アクセル部材84a、84bが操作された上で、ジョイスティック159が操作されることで、走行二次圧を調整して、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度、走行モータ36L、36Rの回転数、及び走行装置5の走行速度も調整し、作業機1の車速を変更することができる。また、
図14Aに示す制御線L21~L23のように、第2アクセル部材84bによる走行二次圧の調整幅より、ジョイスティック159による走行二次圧の調整幅が小さいため、第2アクセル部材84bを操作して、作業機1の車速の調整範囲を設定した上で、ジョイスティック159を操作することで、作業機1の車速を第2アクセル部材84bより小さい調整幅で調整することができる。
【0217】
また、第1モードでのジョイスティック159の操作量に応じた作業機1の車速より、第2モードでのジョイスティック159の操作量に応じた作業機1の車速を低下させることができる。さらに、当該作業機1の車速の低下の程度を、第2アクセル部材84bの操作により設定することができる。
【0218】
上記実施形態では、第2モードにおいて、制御装置25がアクセル部材84の操作量に応じて制御線L21~L23のいずれかを採用したが、これ以外に、例えば制御装置25が速度調整部材86により設定された車速の調整段階に応じて、制御線L21~L23のいずれかを採用してもよい。
【0219】
具体的には、例えば速度調整部材86により車速が最も遅い第1段階が設定されたときに、制御装置25が制御線L21を採用する。また、車速が最も速い第N段階(Nは3以上の自然数)が設定されたときに、制御装置25が制御線L23を採用する。さらに、第1段階と第N段階の中間にある第N-M段階(Mは1以上で且つN未満の自然数、好ましくはM=N/2)が設定されたときに、制御装置25が制御線L22を採用する。
【0220】
上述した実施形態では、ジョイスティック159の操作量に応じて、作業機1の走行系のパイロット圧(操作弁55a~55dの一次圧又は二次圧)を変更したが、ジョイスティック159のような電気的な操作部材の操作量に応じて、走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量又は走行モータ36L、36R(
図11)の回転数を変更してもよい。この場合の実施形態を以下で説明する。なお、以下では、電気的な操作部材の一例としてジョイスティック159を採用する。
【0221】
図14Bは、ジョイスティック159の操作量と走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量との関係をグラフで示す図である。
図14Cは、ジョイスティック159の操作量と走行モータ36L、36Rの回転数との関係をグラフで示す図である。この
図14Bに示す関係を表す制御マップ又は
図14Cに示す関係を表す制御マップは、制御装置25の記憶部26に予め記憶されている。
【0222】
操作スイッチ202により第1モード(通常モード)に切り換えられたときに、制御装置25は制御線L20b、L20cを採用する。操作スイッチ202により第2モード(クリープモード)に切り換えられたときに、制御装置25は制御線L21b~L23bのいずれか、又は制御線L21c~L23cのいずれかを採用する。
【0223】
例えば変速部材61などにより、制御線L21b、L21cに対応する速度の調整段階が選択され、且つ第1アクセル部材84aが一定量(80%)以上操作される。この場合において、第2アクセル部材84bの操作量が10%未満であるときに、制御装置25は制御線L21b、L21cを採用する。また、第2アクセル部材84bの操作量が10%~90%未満であるときに、制御装置25は制御線L22b、L22cを採用する。さらに、第2アクセル部材84bが90%以上であるときに、制御装置25は制御線L23b、L23cを採用する。なお、他の例として、第2アクセル部材84bが90%以上であるときに、制御装置25が採用する候補として、制御線L23b、L23cだけでなく、制御線L20を含めてもよい。電磁弁181B、182、185、186により低下させることができる。
【0224】
上記のように制御装置25は制御線L20b~L23b、L20c~L23cのいずれかを採用すると、当該制御線とジョイスティック159の操作量とに基づいて、走行ポンプ53L、53Rの吐出量又は走行モータ36L、36Rの回転数を設定し、当該吐出量又は回転数を実現するように、操作弁55a~55dに制御信号を出力する。
【0225】
他の例として、制御装置25は、以下の(5)~(7)のような演算式に基づいて、操作弁55a~55dの二次圧、走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量、又は走行モータ36L、36Rの回転数を設定してもよい。式(5)~(7)は、操作スイッチ202により第2モードに切り換えられていて、第1アクセル部材84aの操作量が閾値以上(例えば80%以上)であり、且つ第2アクセル部材84bの操作量が10%以上であり、且つ速度調整部材86により車速の調整段階として第1段階が設定された場合の演算式である。
【0226】
式(5)は次の通りである。
操作弁55a~55dの二次圧=(
図14Aの制御線L21でジョイスティック159の操作量に対応する操作弁55a~55dの二次圧)×[1+定数×(第2アクセル部材84bの操作量(%)-10%)]・・・(5)
【0227】
制御装置25は、上記式(5)に基づいて操作弁55a~55dの二次圧を算出した場合、当該算出値と、
図14Aの制御線L21に基づいて設定したジョイスティック159の操作量に対応する操作弁55a~55dの二次圧(設定値)とを比較する。そして、上記操作弁55a~55dの二次圧の算出値が設定値より大きければ、制御装置25は、当該算出値(操作弁55a~55dの二次圧)を実現するように、操作弁55a~55dの開度を制御する。対して、上記操作弁55a~55dの二次圧の算出値が設定値以下であれば、制御装置25は、当該設定値(操作弁55a~55dの二次圧)を実現するように、操作弁55a~55dの開度を制御する。
【0228】
式(6)は次の通りである。
走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量=(
図14Bの制御線L21でジョイスティック159の操作量に対応する走行ポンプ53L、53Rの吐出量)×[1+定数×(第2アクセル部材84bの操作量(%)-10%)]・・・(6)
【0229】
制御装置25は、上記式(6)に基づいて走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量を算出した場合、当該算出値と、
図14Bの制御線L21に基づいて設定したジョイスティック159の操作量に対応する走行ポンプ53L、53Rの吐出量(設定値)とを比較する。そして、上記走行ポンプ53L、53Rの吐出量の算出値が設定値より大きければ、制御装置25は、当該算出値(走行ポンプ53L、53Rの吐出量)を実現するように、操作弁55a~55dの開度を制御する。対して、上記走行ポンプ53L、53Rの吐出量の算出値が設定値以下であれば、制御装置25は、当該設定値(走行ポンプ53L、53Rの吐出量)を実現するように、操作弁55a~55dの開度を制御する。
【0230】
なお、走行ポンプ53L、53Rの吐出量に対応する操作弁55a~55dの開度、又は当該開度を実現するために、制御装置25が操作弁55a~55dに入力する制御信号を示す制御データは、記憶部26に予め記憶されている。
【0231】
式(7)は次の通りである。
走行モータ36L、36Rの回転数=(
図14Cの制御線L21でジョイスティック159の操作量に対応する走行モータ36L、36Rの回転数)×[1+定数×(第2アクセル部材84bの操作量(%)-10%)]・・・(7)
【0232】
制御装置25は、上記式(7)に基づいて走行モータ36L、36Rの回転数を算出した場合、当該算出値と、
図14Cの制御線L21に基づいて設定したジョイスティック159の操作量に対応する走行モータ36L、36Rの回転数(設定値)とを比較する。そして、上記走行モータ36L、36Rの回転数の算出値が設定値より大きければ、制御装置25は、当該算出値(走行モータ36L、36Rの回転数)を実現するように、操作弁55a~55dの開度を制御する。対して、上記走行モータ36L、36Rの回転数の算出値が設定値以下であれば、制御装置25は、当該設定値(走行モータ36L、36Rの回転数)を実現するように、操作弁55a~55dの開度を制御する。
【0233】
なお、走行モータ36L、36Rの回転数に対応する操作弁55a~55dの開度、又は当該開度を実現するために、制御装置25が操作弁55a~55dに入力する制御信号を示す制御データは、記憶部26に予め記憶されている。
操作スイッチ202により第1モードに切り換えられた場合は、制御装置25が、上記式(5)~(7)において制御線L20、L20b、L20cを適用する。
【0234】
また、操作スイッチ202により第2モードに切り換えられて、速度調整部材86により車速の調整段階として第2段階以上が設定された場合は、当該調整段階に応じて制御装置25が、上記式(5)~(7)において制御線L21~L23、L21b~L23b、L21c~L23cのいずれかを適用する。
【0235】
他の例として、作業機1において、作業具11(
図24)が取り換え可能である場合は、制御装置25が作業機1に取り付けられた作業具11の種類をセンサ等の検出装置によって検出し、当該作業具11の種類に応じて上述した式(5)~(7)のうちの少なくともいずれか1つの式の定数(補正係数)を変更してもよい。また、ジョイスティック159に代えて、操作状態に応じて電気信号を出力する他の電気的な操作部材を用いてもよいし、又は操作状態に応じて油圧信号を出力する他の操作部材を用いてもよい。
【0236】
また、制御装置25が、エンジン32の負荷(負荷率など)又は、エンジン32の実回転数と目標エンジン回転数との差に応じて、
図14A~
図14Cの制御線L20~L23、L20b~L23b、L20c~L23cを縦軸方向にシフトさせる補正を行ってもよい。
【0237】
また、例えば第1アクセル部材84aの操作量が所定量(80%など)未満のときに、制御装置25が、第1アクセル部材84aの操作量に応じて、制御線L20~L23、L20b~L23b、L20c~L23cのいずれかを採用し、当該制御線と、ジョイスティック159の操作量とに基づいて、操作弁55a~55dの二次圧、走行ポンプ53L、53Rの吐出量、又は走行モータ36L、36Rの回転数を設定してもよい。
【0238】
また、例えば第1アクセル部材84aの操作量が所定量以上のときに、制御装置25が、第2アクセル部材84bの操作量に応じて、制御線L20~L23、L20b~L23b、L20c~L23cのいずれかを採用し、当該制御線と、ジョイスティック159の操作量とに基づいて、操作弁55a~55dの二次圧、走行ポンプ53L、53Rの吐出量、又は走行モータ36L、36Rの回転数を設定するようにしてもよい。
【0239】
また、例えば制御装置25は、第2モードにおいて、ジョイスティック(走行操作部材)159が操作されると、当該ジョイスティック159の操作量に基づいて、速度調整機構200により走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を調整する。そして、ジョイスティック159の操作量が一定のときに、即ちジョイスティック159の操作量に基づいて速度調整機構200により走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を一定に調整しているときに、アクセル部材84(第1アクセル部材84a又は第2アクセル部材84b)が操作されると、当該アクセル部材84の操作量に基づいて、エンジン32の回転数を変更せずに、速度調整機構200により走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を変更して(調整し直して)もよい。
【0240】
また、例えば制御装置25は、第2モードにおいて、速度調整部材86の操作状態に基づいて、速度調整機構200により走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を調整した後、第1アクセル部材84aの操作量が一定量以上であるときに、第2アクセル部材84bが操作されると、当該第2アクセル部材の操作量84bに基づいて、速度調整機構200により走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を調整してもよい。この場合、制御装置25は、速度調整部材86の操作状態に基づいて調整する走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度とは異なる走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度を、第2アクセル部材84bの操作量に基づいて調整する。
【0241】
具体的には、例えば
図14Aに示した制御データにおいて、制御装置25は、速度調整部材86の操作状態に基づいて、制御線L21~L23のいずれかに対応する速度の調整段階を選択する。そして、第1アクセル部材84aが一定量(80%)以上操作されたときに、さらに第2アクセル部材84bが操作されると、選択した制御線L21~L23を第2アクセル部材84bの操作量に基づいて縦軸方向にシフトする。このとき、制御装置25は、他の制御線L21~L23と重ならないように、選択した制御線L21~L23を縦軸方向にシフトする。
【0242】
これにより、速度調整部材86の操作状態に基づいて調整する走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度とは異なる走行モータ36L、36Rの回転数及び走行装置5の走行速度が、制御装置25により第2アクセル部材84bの操作量に基づいて調整される。
また、制御装置25は、上述のように設定した操作弁55a~55dの二次圧、走行ポンプ53L、53Rの吐出量、又は走行モータ36L、36Rの回転数に基づいて、操作弁55a~55dの全部、いずれか1つ、又はいずれか2つ以上に制御信号を入力して、当該操作弁の開度を制御してもよい。
【0243】
上述した第6実施形態では、第2モード(クリープモード)において、操作弁55a~55dの二次圧などを変更したが、これ以外に、操作弁55a~55dとは別の弁を用いて、走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bに作用するパイロット圧、走行ポンプ53L、53Rと走行モータ36L、36Rの斜板の角度、又は走行モータ36L、36Rの回転数を変更してもよい。また、走行ポンプ53L、53R又は走行モータ36L、36Rを制御してもよい。
【0244】
図15は、速度調整機構200の変形例を示す図である。
図15に示す速度調整機構200では、走行油路45a~45dのそれぞれから分岐した分岐油路51に圧力変更部201Aが接続されている。圧力変更部201Aは、例えば可変リリーフ(電磁弁)弁から成る。走行油路45a~45dは、
図13に示したように、操作弁(電磁比例弁)55a~55dに接続されている。
【0245】
制御装置25は、例えば
図12Aに示した制御マップとアクセル部材84の操作量とに
基づいて、圧力変更部201Aの開度を変更することにより、走行油路45a~45dに作用するパイロット圧を変更する。具体的には、操作スイッチ202により第1モード(通常モード)に切り換えられると、制御装置25は、
図12Aの制御線L10に基づいて、アクセル部材84の操作量に関わらず、圧力変更部201Aの開度を全開又は所定の開度に固定し、走行油路45a~45dに作用するパイロット圧(操作弁55a~55dの二次圧)を一定にする。
【0246】
一方、操作スイッチ202により第2モード(クリープモード)に切り換えられると、制御装置25は、
図12Aの制御線L11とアクセル部材84の操作量とに基づいて、圧力変更部201Aの開度を、制御線L10を採用した場合の圧力変更部201Aの開度よりも低く設定することで、走行油路45a~45dに作用するパイロット圧(操作弁55a~55dの二次圧)を第1モードのときより低くする。また、制御装置25は、アクセル部材84の操作量が多くなるに連れて、走行油路45a~45dに作用するパイロット圧が上昇するように、圧力変更部201Aの開度を大きくする。
【0247】
即ち、第2モード(クリープモード)では、アクセル部材84の操作量が多くなるに連れて、圧力変更部201Aの開度が大きくなるので、走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bに作用するパイロット圧を上昇させるように変更することができる。そして、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更して、走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量を多くして、走行モータ36L、36Rの回転数を速くし、作業機1の車速(走行速度)を速くすることが可能となる。
【0248】
図15の圧力変更部201Aと、
図12Aに示す制御マップとを併用する場合、制御装置25がエンジン32の負荷、又はエンジン32の実回転数と目標エンジン回転数との差に応じて、制御線L10を変更してもよい。また、エンジン32の負荷として、例えばセンサなどにより検出したスロットルバルブの開度、又はエンジン32の負荷率を採用してもよい。
【0249】
そして、エンジン32の負荷が第1閾値以上であれば、制御装置25が制御線L10を下方(圧力低下方向)へシフトさせて、操作弁55a~55dの二次圧を低く設定してもよい。又は、エンジン32の実回転数と目標エンジン回転数との差が第2閾値以上であれば、制御装置25が制御線L10を下方へシフトさせて、操作弁55a~55dの二次圧を低く設定してもよい。またこれらの場合、制御装置25が、エンジン32のストールを防止するアンチストール制御と連動させて、操作弁55a~55dの二次圧の変化方向に制御線L10をシフトさせてもよい。
【0250】
或いは、制御装置25が、PID制御或いはPI制御により、エンジン32の負荷又はエンジン32の実回転数と目標エンジン回転数との差に応じて、
図12Aの制御線L10を縦軸方向にシフトして、新たな制御線を求めてもよい。また、制御線L10だけでなく、第2モードの制御線L11も、上記と同様に縦軸方向にシフトさせてもよい。
また、
図15の圧力変更部201Aと
図12Aの制御マップとを併用して、
図11の操作弁55A~55Dの二次圧(走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bに作用するパイロット圧)を変更してもよい。
【0251】
[第7実施形態]
図16Aは、第7実施形態のエンジン回転数とLS差圧の関係を表で示す図である。なお、第7実施形態の油圧システムとしては、前述した
図1、
図3、及び
図10Aの作業系の油圧システム30A~30Cのいずれか、又は
図11及び
図13の走行系の油圧システム30D、30Eのいずれかが適用可能である。また、
図15に示した速度調整機構200も適用可能である。
【0252】
第7実施形態では、制御装置25は、エンジン32の駆動を制御して、エンジン32の実回転数を低く抑制するオートアイドル制御を実行する。詳しくは、例えば制御装置25は、オートアイドル制御において、エンジン32の実回転数を、予め定められたオートアイドル制御時の目標エンジン回転数に一致させ、或いは当該オートアイドル制御時の目標エンジン回転数以下に調整する。
【0253】
オートアイドル制御を開始するトリガとしては、例えば、作業用の操作部材58若しくは走行用の操作部材159が一定時間以上操作されなかったこと、アンロード弁(図示省略)により操作装置52、54へのパイロット油の供給が遮断されたこと(油圧ロック状態)、制動装置(図示省略)の作動を指令するパーキングスイッチ(図示省略)が操作されたこと、又はオートアイドル制御の実行を指令する操作スイッチが操作されたことなどがある。
【0254】
オートアイドル制御を実行しているときに、操作部材58、159、84のいずれかが操作されると、制御装置25は、オートアイドル制御を停止して、通常状態に復帰する。通常状態では、例えば運転者が手で操作可能なハンド操作部材86、159、84のいずれか又はアクセル部材84で設定されたエンジン32の設定回転数と一致するように、制御装置25がエンジン32の回転数を制御する。
【0255】
また、制御装置25は、オートアイドル制御と連動させて、LS差圧を設定したり変更したりする。例えば制御装置25は、オートアイドル制御を実行していないとき(通常時)は、
図16Aの左から1列目と2列目に示すように、エンジン回転数(実回転数)に応じて、LS差圧を設定する。そして、制御装置25は、設定したLS差圧を油圧制御部75、75A~75Cにより実現する。
【0256】
また、制御装置25は、オートアイドル制御を実行しているときは、
図16Aの左から1列目と3列目に示すように、エンジン回転数(実回転数)が変化しても、LS差圧を固定値(例えば1.5MPa)に設定する。このLS差圧の固定値は、第1実施形態などで説明したエンジン回転数(実回転数)が最大時に設定されるLS差圧と同値である(
図2Aの制御線L1、
図2Bなど参照)。
【0257】
つまり、制御装置25は、オートアイドル制御を実行しているときに、エンジン回転数(実回転数)に応じた所定の差圧(
図16Aの左から2列目)以上の大きな所定の差圧(
図16Aの左から3列目)をLS差圧として設定し、エンジン回転数が変化しても、当該LS差圧を固定する。そして、制御装置25は、設定したLS差圧(固定値)を油圧制御部75、75A~75Cにより実現し且つ維持する。
【0258】
上記によれば、オートアイドル制御が実行されて、エンジン32の実回転数が低下しても、当該実回転数に応じた所定の圧力(
図16Aの左から2列目のLS差圧)以上の圧力(
図16Aの左から3列目のLS差圧)が、LS差圧として設定され、当該LS差圧が実現される。このため、操作部材58が操作されたときに、油圧アクチュエータ14、15などを素早く作動させて、ジョイスティック159の操作状態に応じて、作業装置4により作業を即座に行うことができ、作業機1の作業系の馬力制御の精度を向上させることが可能となる。
【0259】
また、オートアイドル制御の実行中に、エンジン32の最高回転数に応じた所定の圧力(
図16Aの左から2列目の最下欄のLS差圧)を、LS差圧として設定して、当該LS差圧を実現することで、操作部材58の操作に応じて、油圧アクチュエータ14、15及び作業装置4などをより素早く作動させることができる。
【0260】
他の例として、制御装置25は、オートアイドル制御を実行しているときに、アクセル部材84によって設定されているエンジン32の回転数(目標エンジン回転数)に対応するLS差圧を設定してもよい。これにより、エンジン32の実回転数に応じた所定の圧力以上の圧力を、LS差圧として設定することができる。
【0261】
制御装置25は、オートアイドル制御と連動させて、操作弁55(
図11の操作弁55A~55D又は
図13の操作弁55a~55d)の一次圧又は二次圧(走行一次圧・二次圧)を変更してもよい。この場合のエンジン回転数と走行一次圧・二次圧の関係を、
図16Bに表で示している。
図16Bに示す例では、制御装置25は、オートアイドル制御を実行していないとき(通常時)には、
図16Bの第1列目と第2列目に示すように、エンジン回転数(実回転数)に応じて、走行一次圧・二次圧を設定する。
【0262】
また、制御装置25は、オートアイドル制御を実行しているときには、
図16Bの左から1列目と3列目に示すように、エンジン回転数(実回転数)が変化しても、操作弁55の一次圧又は二次圧を固定値(例えば2.6MPa)に設定する。この操作弁55の一次圧又は二次圧の固定値は、エンジン回転数(実回転数)が最大時(2600rpm)に設定される操作弁55の一次圧又は二次圧(2.6MPa)と同値である(
図16Bの左から2列目の最下欄参照)。
【0263】
つまり、制御装置25は、オートアイドル制御を実行しているときに、前述した圧力変更部(201、201A、55a~55d)により操作弁55a~55dの一次圧又は二次圧(パイロット圧)をエンジン回転数に応じた所定の圧力以上の大きな所定の圧力に設定し、エンジン回転数が変化しても、当該圧力を固定(維持)する。そして、制御装置25は、設定した一次圧又は二次圧(固定値)を圧力変更部(201、201A、55a~55d)により実現し且つ維持する。
【0264】
上記によれば、オートアイドル制御が実行されて、エンジン32の実回転数が低下しても、当該実回転数に応じた所定の圧力(
図16Bの左から2列目の圧力)以上の圧力(
図16Bの左から3列目の圧力)が、操作弁55の一次圧又は二次圧として設定され、当該一次圧又は二次圧が実現される。このため、ジョイスティック159が操作されたときに、走行ポンプ53L、53Rと走行モータ36L、36Rとを素早く作動(反応)させて、ジョイスティック159の操作状態に応じて、走行装置5により作業機1を即座に走行させることができる。そして、作業機1の走行系の馬力制御の精度を向上させることが可能となる。
【0265】
また、オートアイドル制御の実行中に、エンジン32の最高回転数に応じた所定の圧力(
図16Bの左から2列目の最下欄の圧力)を、操作弁55の一次圧又は二次圧として設定して、当該一次圧又は二次圧を実現することで、ジョイスティック159の操作に応じて、走行ポンプ53L、53R、走行モータ36L、36R、及び走行装置5などをより素早く作動させることができる。
【0266】
他の例として、制御装置25は、オートアイドル制御を実行しているときに、アクセル部材84によって設定されたエンジン32の回転数(目標エンジン回転数)に対応する操作弁55の一次圧又は二次圧を設定してもよい。これにより、エンジン32の実回転数に応じた所定の圧力以上の圧力を、操作弁55の一次圧又は二次圧として設定することができる。また、圧力変更部201、201A、55a~55dに代えて、作動弁167(
図18)を用いて、操作弁55の一次圧又は二次圧を変更してもよい。
【0267】
制御装置25は、前述した圧力変更部(201、201A、55a~55d)に入力する制御信号(電流値)を変えることにより、操作弁55の一次圧を変更する。
また、
図13などに示したように、操作弁55を電磁比例弁55a~55dにより構成し、制御装置25が、例えば電磁比例弁55a~55dに入力する制御信号(印加電流値)を変えることにより、電磁比例弁55a~55dの二次圧を変更してもよい。或いは、
図15に示したように、走行油路45a~45dに設けた圧力変更部201Aを可変リリーフ弁から構成し、制御装置25が、可変リリーフ弁201Aに入力する制御信号を変えることにより、電磁比例弁55a~55dの二次圧を変更してもよい。
【0268】
また、走行用の操作部材159、84、58の操作量に応じて、電磁比例弁(圧力変更部201、201A、55a~55d)により走行一次圧又は走行二次圧(パイロット圧)を変更する場合、オートアイドル制御の実行中と、オートアイドル制御を実行していない通常時とで、制御装置25が電磁比例弁(201、201A、55a~55d)に入力する電流値(制御信号)を変更してもよい。この場合の一例として、ジョイスティック159の操作量と、エンジン回転数と、電磁比例弁201に入力する電流の関係を、
図17にグラフで示している。なお、
図17の横軸は時間を示している。
【0269】
図17に示すように、オートアイドル制御の実行中(AI実行有り)に、時点t1でジョイスティック159が操作されると(操作量>0%)、以降(
図17の横軸の時点t1の右側)は制御装置25が、
図17に点線で示すジョイスティック159の操作量に応じて、
図17の2点鎖線で示すように電磁比例弁201に入力する電流を設定する。即ち、オートアイドル制御の実行中にジョイスティック159が操作された場合に、制御装置25から電磁比例弁201に入力される電流値(
図17の2点鎖線)は、オートアイドル制御を実行していない通常時にジョイスティック159が操作された場合に、制御装置25から電磁比例弁201に入力される電流値(
図17の破線)よりも、急峻に大きくなる。
【0270】
このため、オートアイドル制御の実行中にジョイスティック159が操作された場合の、制御装置25から電磁比例弁201への入力電流(
図17の2点鎖線)は、通常時にジョイスティック159が操作された場合の、制御装置25から電磁比例弁201への入力電流(
図17の破線)より、ジョイスティック159の操作量に応じた電流値に早く一致する。またこれに伴って、オートアイドル制御の実行中にジョイスティック159が操作された場合の、操作弁55の一次圧又は二次圧は、通常時にジョイスティック159が操作された場合の、操作弁55の一次圧又は二次圧より、ジョイスティック159の操作量に応じた圧力に早く一致する。
【0271】
上記によれば、オートアイドル制御が実行されて、エンジン32の実回転数が低下しても、ジョイスティック159が操作されたときに、走行ポンプ53L、53Rと走行モータ36L、36Rとを素早く反応させて、ジョイスティック159の操作状態に応じて、走行装置5により作業機1を即座に走行させることができる。そして、作業機1の走行系の馬力制御の精度を向上させることが可能となる。
【0272】
また、オートアイドル制御の実行中にジョイスティック159が操作された場合、制御装置25が、電磁比例弁201に高電圧を印加して、ジョイスティック159の操作量に応じた電流値を電磁比例弁201に入力してもよい。これにより、ジョイスティック159の操作量に応じたパイロット圧で走行ポンプ53L、53R及び走行モータ36L、36Rが制御され、作業機1がオートアイドル状態から通常状態に素早く復帰することができる。
【0273】
なお、オートアイドル制御が実行されていない通常時にジョイスティック159が操作された場合の、制御装置25から電磁比例弁201への入力電流(
図17の破線)が、ジ
ョイスティック159の操作量に応じた電流値に一致するタイミングは、通常時にジョイスティック159が操作された場合の、エンジン32の実回転数(
図17では図示省略)がジョイスティック159の操作量に応じた回転数に一致するタイミングとほぼ同時である。
【0274】
また、オートアイドル制御の実行中にジョイスティック159が最大限(100%)操作された場合の、制御装置25から電磁比例弁201への入力電流と、通常時にジョイスティック159が最大限(100%)操作された場合の制御装置25から比例弁201への入力電流とを、同値に設定してもよい。
【0275】
また、上記実施形態では、走行用の操作部材159の操作量に応じて、電磁比例弁201により操作弁55の一次圧を変更する例を説明したが、これに限定するものではない。例えば、作業用の操作部材58(
図1など)の操作量に応じて、制御弁56の一次圧(流入するパイロット油のパイロット圧)又は二次圧(流出するパイロット油のパイロット圧)を変更する電磁比例弁を設けてもよい。またこの場合、例えば
図17に示した制御マップを適用して、制御弁56の一次圧又は二次圧を設定したり変更したりしてもよい。
【0276】
図1A~
図2Bに示した第1実施形態では、第2制御線L2(
図2A)を算出するための式(2)の係数αを、作業機1の走行優先モードと作業優先モードで変えていたが、これに加えて、例えば
図18に示す作動弁167と連動させて、式(2)の係数αを変えてもよい。
【0277】
[第8実施形態]
図18は、第8実施形態の作業機1の走行系の油圧システム30Fの全体図である。
図18に示す油圧システム30Fは、
図11に示した速度調整機構200の圧力変更部201に代えて、作動弁167が設けられている。これ以外の油圧システム30Fの構成は、
図11に示した油圧システム30Eと同一である。作動弁167は電磁比例弁(電磁弁)から成り、第3油路40に設けられている。作動弁167は、作業機1のエンジンストールを防止するための弁(アンチストール弁とも言う。)であって、操作弁55(55A~55D)に作用するパイロット油のパイロット圧(操作弁55の一次圧、即ち走行一次圧)を変更する。
【0278】
制御装置25は、作動弁167の開度を制御することによって、意図せずエンジン32が停止(エンジンストール)するのを防止する制御、即ちアンチストール制御を実行する。アンチストール制御において、例えば制御装置25は、アクセル部材84によって設定された目標エンジン回転数と、第1測定装置82によって検出されたエンジン32の実回転数との差であるドロップ回転数が閾値以上である場合に、走行ポンプ53L、53Rの出力(作動油を吐出する際の力)を低下させることによって、エンジンストールを防止する。
【0279】
作動弁167は、パイロット油が流れる第3油路40に設けられ、制御装置25によって開度が変更されることで、走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bに作用するパイロット圧を変更する。制御装置25は、作動弁167に入力する制御信号(電流信号、又は電圧信号であってもよい。)を変えることにより、作動弁167の開度を変更する。
【0280】
作動弁167の開度が変更されることで、作動弁167から操作弁55(55A~55D)に作用するパイロット圧(走行一次圧)が変更され、走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bに作用するパイロット圧も変更される。そして、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度が変更されて、走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量が変
更され、走行モータ36L、36Rの回転数も変更される。即ち、制御装置25は、作動弁167の開度を変更することによって、走行一次圧を変更し、走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量及び走行モータ36L、36Rの出力を制御する。これにより、作業機1において、エンジンストールが生じるの防止し且つ走行系の馬力制御の精度を向上させることができる。
【0281】
また、
図18に示す走行系の油圧システム30Fと、
図1A、
図1B、
図3、又は
図7A~
図10Aに示した作業系の油圧システム30A~30Cとを組み合わせることで、制御装置25が作動弁167の開度を変更することにより、第3油路40に作用するパイロット圧が変更され、第3油路40に接続された他の油路41、41B、41C、41D又は油路41Aなどに作用するパイロット圧も変更される。即ち、開度変更部76を作動させるためのパイロット圧が変更される。このため、開度変更部76、流量補償弁72、及び斜板可変部73の作動状態が変更されて、当該変更に応じて、第2油圧ポンプP2の斜板の角度、第2油圧ポンプP2の出力(第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量)、及びLS差圧が変更される。このように、制御装置25は、作動弁(電磁弁)167の作動を制御することによっても、LS差圧を変更して、作業機1の作業系の馬力制御の精度を向上させることができる。
【0282】
また、
図11、
図13、又は
図15に示した走行系の油圧システム30D、30Eなどと、
図1A、
図1B、
図3、又は
図7A~
図10Aに示した作業系の油圧システム30A~30Cとを組み合わせることで、制御装置25は、電磁弁201、55a~55d、201Aの作動を制御することによっても、LS差圧を変更して、作業機1の作業系の馬力制御の精度を向上させることができる。
【0283】
図19は、第8実施形態のエンジン回転数と走行一次圧の関係をグラフで示す図である。
図19の関係を表す制御マップのデータは、制御装置25の記憶部26に予め記憶されている。走行一次圧は、第3油路40において、作動弁167から操作装置54へ向かうパイロット油のパイロット圧のことである。言い換えれば、走行一次圧とは、作業機1の走行操作を行う操作部材159に設けられた複数の操作弁55A、55B、55C、55Dに作用するパイロット油の一次圧のことである。
図19に示す複数の制御線L80A、L80B、L80Cは、制御装置25が走行一次圧を設定するために用いる制御データである。
【0284】
例えばアンチストール制御の実行中に、エンジン32の目標エンジン回転数と実回転数との差であるドロップ回転数が所定の閾値未満であるときは、制御装置25が、制御線L80Cと実回転数とに基づいて、走行一次圧を設定する。詳しくは、
図19に細い点線で示すように、エンジン32の回転数(実回転数)と制御線L80との交点の走行一次圧が設定される。制御線L80Cは、制御線L80Aと比べて、走行一次圧が高くなる方(
図19で上方)へシフトしている。このため、制御装置25が制御線L80Cを採用した場合は、制御線L80A、L80Bを採用した場合より、走行一次圧が高く設定される。
【0285】
一方、アンチストール制御の実行中に、エンジン32のドロップ回転数が閾値以上であるときは、制御装置25が、制御線L80Aと制御線L80Bのうちのいずれかと、エンジン32の実回転数とに基づいて、走行一次圧を設定する。制御線L80Bは、制御線L80Aと比べて、走行一次圧が低くなる方(
図19で下方)にシフトしている。このため、制御装置25が制御線L80Bを採用した場合は、制御線L80A、L80Cを採用した場合よりも、走行一次圧が低く設定される。
【0286】
例えば、エンジン32のドロップ回転数が閾値以上で且つ、当該閾値より大きな所定値以上であれば、制御装置25は、制御線L80Bとエンジン32の実回転数とに基づいて
、走行一次圧を設定する。また、エンジン32のドロップ回転数が閾値以上で且つ所定値未満であれば、制御装置25は、制御線L80Aとエンジン32の実回転数とに基づいて、走行一次圧を設定する。
【0287】
他の例として、制御装置25が、ドロップ回転数以外の変数に基づいて、制御線L80A、L80B、L80Cのいずれかを採用してもよい。
例えば、作業機1が走行優先モードにあるときに、制御装置25は、ドロップ回転数に関係なく制御線L80Aを採用し、且つ予め記憶された異なる複数の係数候補値のうち、最も大きい係数候補値を、第1実施形態で示した式(2)~(4)の係数αとして採用する。また、作業機1が作業優先モードにあるときに、制御装置25は、ドロップ回転数に関係なく制御線L80Bを採用し、且つ最も小さい係数候補値を係数αとして採用する。
【0288】
また、走行優先モードと作業優先モードとの間に、作業より走行を若干優先する若干走行優先モードと、走行より作業を若干優先する若干作業優先モードとを設けてもよい。この場合、作業機1が若干走行優先モードにある場合、制御装置25は、制御線L90Aを採用し且つ、走行優先モードで採用した係数候補値より小さくて、作業優先モードで採用した係数候補値より大きい係数候補値を、係数αとして採用する。また、作業機1が若干作業優先モードにある場合、制御装置25は、制御線L80Bを採用し且つ、若干走行優先モードで採用した係数候補値より小さくて、作業優先モードで採用した係数候補値より大きい係数候補値を、係数αとして採用する。
【0289】
上記のように、作業機1の走行と作業のいずれを優先するかなどを示すモードの実行状態によって、ドロップ回転数に関係なく、制御線L80A、L80Bが採用されると共に、係数αが変更される。このため、制御装置25は、前述した式(2)~(4)のいずれかと係数αとに基づいて、第2制御線L2(
図2A)を算出することができる。そして、エンジン32の実回転数が目標エンジン回転数よりも低い場合、又は目標エンジン回転数から所定値を減算した回転数よりも実回転数が低い場合に、制御装置25が、第2制御線L2とエンジン32の実回転数とに基づいて、LS差圧を設定したり変更したりすることができる。
【0290】
即ち、制御装置25は、作業機1の走行と作業の優先状況と、エンジン32の実回転数とに応じて、LS差圧を設定したり変更したりすることができ、当該LS差圧に応じて第2油圧ポンプP2からの作動油の吐出量を変更することが可能となる。また、制御装置25は、制御線L80A、L80B、L80Cとエンジン32の実回転数とに基づいて、走行一次圧を設定することができ、当該走行一次圧に応じて走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量を変更することが可能となる。さらにこれらの結果、作業機1の作業系と走行系の馬力制御の精度を向上させることが可能となる。
【0291】
[第9実施形態]
図20Aは、第9実施形態の作業機1の走行系の油圧システム30Gの要部を示す図である。油圧システム30Gでは、走行用の操作装置54A及び調整機構200として、操作弁155L、155Rと油圧レギュレータ156L、156Rとが含まれている。また、油圧システム30Gには、
図20Aに示す構成に加えて、前述した制御装置25と走行モータ36L、36Rなどのような、作業機1の走行系の構成が備わっている(
図20Aでは図示省略)。
【0292】
油圧レギュレータ156L、156Rは、作動油が供給可能な供給室157と、供給室157に設けられたピストンロッド158とを有している。油圧レギュレータ156Lのピストンロッド158は、第1走行ポンプ53Lの斜板に連結されている。油圧レギュレータ156Rのピストンロッド158は、第2走行ポンプ53Rの斜板に連結されている。各油圧レギュレータ156L、156rのピストンロッド158の作動(直進移動)によって、各走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度が変更される。
【0293】
操作弁155Lは、油圧レギュレータ156Lを操作する電磁比例弁(電磁弁)であって、第1位置155aと第2位置155bと中立位置155cとに切り換え可能である。操作弁155Lのスプールが制御装置25から出力された制御信号に基づいて移動することで、操作弁155Lの位置が変更される。操作弁155Lの第1ポートと油圧レギュレータ156Lの供給室157とは、第1走行油路145aにより接続されている。操作弁155Lの第2ポートと油圧レギュレータ156Lの供給室157とは、第2走行油路145bにより接続されている。
【0294】
操作弁155Rは、油圧レギュレータ156Rを操作する電磁比例弁(電磁弁)であって、第1位置155aと第2位置155bと中立位置155cとに切り換え可能である。操作弁155Rのスプールが制御装置25から出力された制御信号に基づいて移動することで、操作弁155Rの位置が変更される。操作弁155Rの第1ポートと油圧レギュレータ156Rの供給室157とは、第4走行油路145dにより接続されている。操作弁155Rの第2ポートと油圧レギュレータ156Rの供給室157とは、第3走行油路145cにより接続されている。
【0295】
操作弁155L及び操作弁155Rは、制御装置25(
図20では図示省略)から入力される制御信号に基づいて、中立位置155cから第1位置155aと第2位置155bとに切り換わる。制御装置25が操作弁155L及び操作弁155Rに制御信号を入力して、操作弁155L及び操作弁155Rを第1位置155aに切り換える。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2操作ポンプ53Rの斜板が正転の方向に揺動し、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rが正転可能となる。
【0296】
また、制御装置25が操作弁155L及び操作弁155Rに制御信号を出力して、操作弁155L及び操作弁155Rを第2位置155bに切り換える。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2操作ポンプ53Rの斜板が逆転の方向に揺動し、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rが逆転可能となる。
また、制御装置25が操作弁155L及び操作弁155Rに制御信号を出力して、操作弁155Lを第1位置155aに切り換え、且つ操作弁155Rを第2位置155bに切り換える。これにより、第1走行ポンプ53Lの斜板が正転の方向に揺動して、第1走行ポンプ53Lが正転可能となり、且つ第2操作ポンプ53Rの斜板が逆転の方向に揺動して、第2走行ポンプ53Rが逆転可能となる。
【0297】
さらに、制御装置25が操作弁155L及び操作弁155Rに制御信号を出力して、操作弁155Lを第2位置155bに切り換え、且つ操作弁155Rを第1位置155aに切り換える。これにより、第1走行ポンプ53Lの斜板が逆転の方向に揺動して、第1走行ポンプ53Lが逆転可能となり、且つ第2操作ポンプ53Rの斜板が正転の方向に揺動して、第2走行ポンプ53Rが正転可能となる。
【0298】
また、制御装置25は、操作弁155L、155Rに制御信号を出力して、第1位置155a又は第2位置155bにある操作弁155L、155Rの開度を変更可能である。制御装置25は、操作部材159、84の操作状態に基づいて、操作弁155L、155Rの位置又は開度を変更することにより、走行油路145a~145dに作用するパイロット圧、即ち走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を調整するためのパイロット油の圧力を変更する。走行ポンプ53L、53Rから吐出された作動油は、前述した走行モータ36L、36Rにそれぞれ供給される。上述した操作弁(電磁弁)155L、155Rを用いても、操作弁155L、155Rに対して入出されるパイロット油のパイロット圧(即ち、走行一次圧と走行二次圧)を
図12A、
図12B、及び
図14に示したように変更して、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を変更し、走行モータ36L、36Rの回転方向と回転数とを変更することができる。
【0299】
他の例として、
図20Bに示すように、第1油圧ポンプP1からパイロット油が吐出される第3油路40に、圧力変更部201を設けてもよい。この場合、制御装置25は、操作部材159、84の操作状態に基づいて、操作弁155L、155Rの位置若しくは開度、又は圧力変更部201の開度を変更することにより、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度を調整するためのパイロット油の圧力(走行油路145a~145dに作用するパイロット圧)を変更すればよい。このように、操作弁155L、155Rと圧力変更部201を併用することで、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度と走行モータ36L、36Rの回転方向と回転数とをより細かい変更幅で変更することができ、走行装置5及び作業機1の速度制御の精度を向上させることが可能となる。
【0300】
また、
図20Aに示す走行系の油圧システム30Gと、
図1A、
図1B、
図3、又は
図7A~
図10Aに示した作業系の油圧システム30A~30Cとを組み合わせることで、制御装置25が電磁比例弁155L、155Rの位置を変更することにより、第3油路40に作用するパイロット圧が変更され、第3油路40に接続された他の油路41、41B、41C、41D又は油路41Aなどに作用するパイロット圧も変更される。このため、開度変更部76を作動させるためのパイロット圧が変更され、開度変更部76、流量補償弁72、及び斜板可変部73の作動状態が変更されて、当該変更に応じて、第2油圧ポンプP2の斜板の角度、第2油圧ポンプP2の出力、及びLS差圧が変更される。このように、制御装置25は、電磁比例弁(電磁弁)155L、155Rの作動を制御することによっても、LS差圧を変更して、作業機1の作業系の馬力制御の精度を向上させることができる。
【0301】
前述した第7実施形態(
図16A~
図17)において、制御装置25が、例えば運転者が手で操作可能なハンド操作部材86、159、84のいずれかにより設定されたエンジン32の設定回転数と、記憶部26に記憶された基準回転数と、以下の式(8)とに基づいて、オートアイドル制御時の目標エンジン回転数を算出してもよい。
オートアイドル制御時の目標エンジン回転数=(設定回転数-基準回転数)×係数+基準回転数・・・(8)
【0302】
具体的には、例えば、基準回転数が1000rpmであり、設定回転数が1500rpmであり、係数が0.5である場合、式(8)に基づけば、オートアイドル制御時の目標エンジン回転数は1250rpm(=(1500-1000)×0.5+1000)となる。また、例えば、基準回転数が1000rpmであり、設定回転数が2000rpmであり、係数が0.5である場合、式(8)に基づけば、オートアイドル制御時の目標エンジン回転数は1500rpm(=(2000-1000)×0.5+1000)となる。
【0303】
なお、式(8)中の係数として、任意の値を設定してもよい。例えば寒冷地で作業機1を使用する際に、係数として0.5より大きな値を設定して、オートアイドル制御時の目標エンジン回転数をより高くしてもよい。また、例えば作業機1に設けられた冷却水又は作動油の温度が閾値より高くなると、係数として0.5より小さな値を設定して、オートアイドル制御時の目標エンジン回転数をより低くしてもよい。
【0304】
また、例えばハンド操作部材86、159、84又はアクセル部材84で設定可能な最低のエンジン回転数(一般的に「アイドリング回転数」と呼ばれる回転数)を、式(8)中の基準回転数として設定してもよい。
また、式(8)以外の計算式或いは方法で、オートアイドル制御時の目標エンジン回転
数を設定してもよい。
【0305】
オートアイドル制御時(オートアイドル制御中)に、操作部材58、159が操作されると、制御装置25は、オートアイドル制御を終了して、通常状態に復帰する。そして、制御装置25は、アクセル部材84により設定された目標エンジン回転数と、第1測定装置82により測定されたエンジン32の実回転数とに基づいて、エンジン32の駆動制御、LS差圧の変更、各種制御マップの制御線の変更、又は走行一次圧若しくは二次圧の変更などを実行する。
【0306】
また、操作部材58、159の操作後に、制御装置25は、エンジン32の実回転数が目標エンジン回転数に達するまでの間、即ち
図17に太い実線で示すように、エンジン回転数(実回転数)が立ち上がって一定になるまでの間、LS差圧を固定値にしてもよい。これにより、操作部材58、159の操作前にオートアイドル制御が実行されていた場合には、操作部材58、159の操作前が通常時であった場合より、エンジン32の実回転数を目標エンジン回転数に早く一致させることができる。
【0307】
なお、第7実施形態では、制御装置25から電磁比例弁201へ入力する電流が大きくなるに連れて、走行圧(操作弁55の一次圧と二次圧)も大きくなるため、電磁比例弁201の入力電流と走行圧は比例関係にあるが、他の例として、電磁比例弁201の入力電流と走行圧とを反比例関係になるようにしてもよい。この場合、走行圧が所望の圧力になるように、制御装置25が電磁比例弁201の入力電流を制御すればよい。
【0308】
[第10実施形態]
作業機1において、前述したオートアイドル制御とアンチストール制御とを連動させてもよい。この場合を第10実施形態として、以下で説明する。
図21は、第10実施形態のエンジン回転数と第1補正係数の関係をグラフで示す図である。第10実施形態の作業機1の油圧システムの構成は、例えば
図13又は
図20に示した油圧システム30E、30Gの構成と同一である。
図21に示す制御マップは、
図19に示した制御マップに代えて、制御装置25で用いられる。
図21に示す関係を表す制御マップのデータは、制御装置25の記憶部26に予め記憶されている。
【0309】
第1補正係数は、作業機1におけるアンチストール制御の実行中に、走行ポンプ53L、53Rを制御するために用いる補正値である。詳しくは、第1補正係数は、アンチストール制御の実行中に、電磁比例弁から成る操作弁55a~55d(
図13)又は操作弁155L、155R(
図20)に対して入力する電流値を補正するため電流補正値である。
図21に示す制御線L90A、L90B、L90Cは、エンジン32の実回転数に応じた第1補正係数を求めるための制御データである。
【0310】
例えば、作業機1でアンチストール制御とオートアイドル制御とが両方とも実行されている場合、又はアンチストール制御だけが実行され且つエンジン32のドロップ回転数が閾値未満である場合、制御装置25は、制御線L90Cと実回転数とに基づいて、第1補正係数を設定する。制御線L90Cは、制御線L90Aと比べて、第1補正係数が高くなる側(
図21で上方)にシフトしている。このため、制御装置25が制御線L90Cを採用した場合は、制御線L90A、L90Bを採用した場合より、第1補正係数が高く設定される。
【0311】
一方、アンチストール制御とオートアイドル制御のうち、アンチストール制御だけが実行され且つエンジン32のドロップ回転数が閾値以上である場合、制御装置25は、制御線L90Aと制御線L90Bのうちのいずれかと、エンジン32の実回転数とに基づいて、第1補正係数を設定する。制御線L90Bは、制御線L90Aと比べて、第1補正係数が低くなる側(
図21で下方)にシフトしている。このため、制御装置25が制御線L90Bを採用した場合は、制御線L90A、L90Cを採用した場合より、第1補正係数が低く設定される。
【0312】
例えば、エンジン32のドロップ回転数が閾値以上で且つ当該閾値より大きい所定値以上であるときは、制御装置25が、制御線L90Bとエンジン32の実回転数とに基づいて、第1補正係数を設定する。また、エンジン32のドロップ回転数が閾値以上で且つ所定値未満であるときは、制御装置25が、制御線L90Aとエンジン32の実回転数とに基づいて、第1補正係数を設定する。
【0313】
図22は、ジョイスティック159の操作方向と指令値の一例を示す図である。
図22に示す各矢印と平行な方向は、ジョイスティック159の操作方向の一例を示している。各矢印の先端と根元の近傍に示す括弧内の2つの数値(%)は、ジョイスティック159の操作方向、操作量、及び指令値を表している。
【0314】
ジョイスティック159の指令値とは、操作弁(電磁比例弁)55a~55d、155L、155Rによって走行ポンプ53L、53Rを制御するための指令値である。より詳しくは、括弧内の左側の数値(%)が、第1走行ポンプ53Lの制御用の指令値であり、括弧内の右側の数値(%)が、第2走行ポンプ53Rの制御用の指令値である。また、プラス(+)の指令値(正の数値)は、走行ポンプ53L、53Rの正転を示し、マイナス(-)の指令値(負の数値)は、走行ポンプ53L、53Rの逆転を示している。
【0315】
例えば(0%、0%)は、ジョイスティック159が中立位置(未操作状態)にあり、操作量が「0」(無し)であり、走行ポンプ53L、53Rの制御用の指令値が「0」(無し)であることを表している。また、例えば(+100%、+100%)とは、ジョイスティック159の操作方向が前方であり、操作量が最大の100%であり、第1走行ポンプ53Lの制御用の指令値と第2走行ポンプ53Rの制御用の指令値が両方とも正転の100%であることを示している。つまり、例えばジョイスティック159が右に最大限操作された場合は(+100%、-100%)、操作量は最大の100%になり、第1走行ポンプ53Lに対する指令値は正転の100%になり、第2走行ポンプ53Rに対する指令値は逆転の100%になる。
【0316】
ジョイスティック159がいずれかの方向に揺動操作されると、その操作状態に応じた電気信号がジョイスティック159(
図13の電気回路159b)から制御装置25に入力される。制御装置25は、当該電気信号に基づいて、ジョイスティック159の操作方向、操作量、及び指令値を検出する。
【0317】
図23は、指令値と操作電流値の関係を示す図である。
図23に示す関係を表す制御マップは、制御装置25の記憶部26に予め記憶されている。制御装置25は、ジョイスティック159から入力される電気信号に基づいて指令値を検出した後、当該指令値と
図23に示す制御マップとに基づいて、操作弁(電磁比例弁)55a~55d、155L、155Rにそれぞれ入力する操作電流値を設定する。
【0318】
アンチストール制御が実行されていない場合、制御装置25は、操作電流値を設定すると、当該操作電流値を制御信号として操作弁55a~55d、155L、155Rに入力し、操作弁55a~55d、155L、155Rにより走行ポンプ53L、53Rを制御する。
また、アンチストール制御が実行されている場合、制御装置25は、上述したように操作電流値を設定すると共に、
図21に示した制御マップとエンジン32の実回転数とに基づいて第1補正係数を設定する。そして、制御装置25は、第1補正係数で操作電流値を
補正して、アンチストール電流値を求める。この際、例えば制御装置25は、操作電流値に第1補正係数(0.4~1)を乗算して得た電流値を、アンチストール電流値とする。このように求めたアンチストール電流値は、操作電流値以下になる。
【0319】
また、ジョイスティック159の操作前に、アンチストール制御とオートアイドル制御とが両方とも実行されていた場合、制御装置25は、
図21に示した制御線L90Cとエンジン32の実回転数とに基づいて、第1補正係数を設定している。このため、ジョイスティック159が操作されると、制御装置25が、操作電流値を設定した後に、制御線L90Cなどに基づく第1補正係数で操作電流値を補正して、アンチストール電流値を求める。このように求めたアンチストール電流値は、ジョイスティック159の操作前にアンチストール制御だけが実行され且つドロップ回転数が閾値以上であった場合のアンチストール電流値(制御線L90A、L90Bのいずれかに基づく第1補正係数と操作電流値との乗算値)以上で且つ操作電流値以下になる。
【0320】
また、アンチストール制御が実行されている場合、制御装置25は、アンチストール電流値を制御信号として操作弁(電磁比例弁)55a~55d、155L、155Rに入力し、操作弁55a~55d、155L、155Rにより走行ポンプ53L、53Rを制御する。
上述したように制御装置25から操作弁55a~55d、155L、155Rに入力される操作電流値或いはアンチストール電流値が高くなるに連れて、走行二次圧が高くなって、走行ポンプ53L、53Rからの作動油の吐出量が多くなる。
【0321】
他の例として、制御装置25が、PID制御或いはPI制御により、目標エンジン回転数又はエンジン32の実回転数に応じた電流値を、操作弁55a~55d、155L、155Rに入力するようにしてもよい。この場合、例えば制御装置25は、設定した操作電流値或いはアンチストール電流値に対して、PID制御で用いる係数(制御ゲイン)などを乗算することで、操作弁55a~55d、155L、155Rに入力する電流値を求めればよい。
【0322】
アンチストール制御とオートアイドル制御とが両方とも実行されている場合に、ジョイスティック159が操作されて、オートアイドル制御が停止されると、制御装置25は、ジョイスティック159の操作状態(操作方向と操作量)に応じて、エンジン32の回転数を上昇させる。この際、制御装置25が、ジョイスティック159の操作方向及び操作量に応じて設定した目標エンジン回転数を、制御線L90C(
図21)とエンジン32の実回転数とに基づいて設定した第1補正係数で補正してもよい。
【0323】
また、アンチストール制御とオートアイドル制御とが両方とも実行されている場合に、ジョイスティック159が操作されると、制御装置25が、ジョイスティック159の操作状態に応じて、エンジン32の回転数を上昇させる。またこの際、制御装置25は、次の式(9)~(11)に基づいて、走行二次圧(操作弁55a~55d、155L、155Rの二次圧)、走行ポンプ53L、53Rの吐出量(作動油の吐出量)、又は走行モータ36L、36Rの回転数を設定してもよい。
【0324】
走行二次圧=(
図14Aの制御線L20でジョイスティック159の操作量に対応する操作弁55a~55dの二次圧×[1+定数×(目標エンジン回転数/実回転数)]・・・(9)
走行ポンプ53L、53Rの吐出量=(
図14Bの制御線L20でジョイスティック159の操作量に対応する走行ポンプ53L、53Rの吐出量×[1+定数×(目標エンジン回転数/実回転数)]・・・(10)
走行モータ36L、36Rの回転数=(
図14Cの制御線L20でジョイスティック1
59の操作量に対応する走行モータ36L、36Rの回転数×[1+定数×(目標エンジン回転数/実回転数)]・・・(11)
【0325】
制御装置25は、上記の式(9)~(11)に基づいて、走行二次圧、走行ポンプ53L、53Rの吐出量、又は走行モータ36L、36Rの回転数を設定すると、これらを実現するように、操作弁55a~55d、155L、155Rの開度を制御する。
【0326】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0327】
1 :作業機
14 :ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
15 :バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
25 :制御装置
30A~30G :作業機の油圧システム
32 :原動機
40 :第3油路
41 :第4油路、第1分岐油路
41B : 第2分岐油路
41C : 第3分岐油路
41D : バイパス油路
56、56A、56B、56C、56D :制御弁
70 :第1油路
71 :第2油路
72 :流量補償弁
73 :斜板可変部
75、75A~75I :油圧制御部
76 :開度変更部
81 :電磁弁
82 :第1測定装置
83 :第2測定装置
84 :アクセル部材(指令部材)
84a :第1アクセル部材(指令部材)
84b :第2アクセル部材(指令部材)
88 :指令部材
102 :電磁弁
103 :開度変更部
181A、181B :電磁弁
182、185、186 :電磁弁
201、201A 圧力変更部(電磁弁)
55a~55d、155L、155R 操作弁(電磁弁)
P1 :第1油圧ポンプ
P2 :第2油圧ポンプ