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特開2024-149538ポリフェニレンエーテル、その製造方法、熱硬化組成物、プリプレグ、及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149538
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテル、その製造方法、熱硬化組成物、プリプレグ、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/48 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C08G65/48
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024122248
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2022577038の分割
【原出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2021009705
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄大
(72)【発明者】
【氏名】福圓 真一
(72)【発明者】
【氏名】金 載勲
(57)【要約】
【課題】本発明は、汎用ケトン系溶媒への溶解性に優れるポリフェニレンエーテル及びその製造方法を提供することを目的とする。また、該ポリフェニレンエーテルを用いた、熱硬化組成物、プリプレグ、及び積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のポリフェニレンエーテルは、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位5~85mol%と、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位15~95mol%とを含み、30℃において0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定された還元粘度(ηsp/c)が0.03~0.30dL/gであることを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位5~85mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位15~95mol%とを含み、
30℃において0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定された還元粘度(ηsp/c)が0.03~0.30dL/gである、
ことを特徴とするポリフェニレンエーテル。
【化1】
(式(1)中、R11は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R12は各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
【化2】
(式(2)中、R22は各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR22は両方が水素原子でなく、R21は下記式(3)で表される部分構造である。
【化3】
(式(3)中、R31は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R32は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立に、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基である。))
【請求項2】
前記式(3)で表される部分構造がt-ブチル基である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項3】
平均水酸基数が2.5個/分子未満である、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項4】
平均水酸基数が0.2個/分子未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項5】
下記式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を有し、平均水酸基数が0.2個/分子未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。
【化4】
【化5】
【化6】
(式(6)中、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、前記飽和若しくは不飽和の炭化水素は炭素数1~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。)
【化7】
(式(7)中、Rは、炭素数1~10の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の2価の炭化水素は炭素数1~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよく、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の炭化水素は炭素数1~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。)
【請求項6】
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールから誘導された繰り返し単位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項7】
前記1価フェノールが、2-アリルフェノール又は2-メチル-6-アリルフェノールである、請求項6に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項8】
前記式(1)のフェノール、及び前記式(2)のフェノールの酸化重合を行う工程を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルと、ケトン系溶媒とを含む、ポリフェニレンエーテル溶液。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルを含む、熱硬化組成物。
【請求項11】
基材と、請求項10に記載の熱硬化組成物とを含む、プリプレグ。
【請求項12】
前記基材がガラスクロスである、請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のプリプレグの硬化物と、金属箔とを含む、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテル、その製造方法、熱硬化組成物、プリプレグ、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル(以下、「PPE」ともいう。)は、優れた高周波特性、難燃性、耐熱性を有するため、電気・電子分野、自動車分野、食品・包装分野の製品・部品用の材料、その他の各種工業材料分野の材料として幅広く用いられている。特に、近年、その低誘電特性や耐熱性を活かし基板材料等の電子材料用途及び様々な用途における改質剤としての応用が進められている。
【0003】
しかしながら、一般的に2,6-ジメチルフェノールに代表される1価フェノールから誘導される繰返し単位を有する高分子量のポリフェニレンエーテルはクロロホルム等の非常に毒性が高い溶媒には溶解するものの、良溶媒として知られているトルエン等の芳香族系溶媒に室温では高濃度では溶けにくく、またメチルエチルケトン等のケトン系溶媒には不溶であるという問題があった。そのため、例えば配線板材料として用いる際にはトルエンやメチルエチルケトン等の樹脂ワニス溶液の取り扱いが困難となる。
【0004】
特許文献1には、低分子量でかつ特定の粒子径を持つポリフェニレンエーテルがメチルエチルケトン等の溶媒への溶解性に優れることが開示されている。
また、特許文献2には、所定のポリフェニレンエーテル部分を分子構造内に有し、かつ、この分子末端に、p-エテニルベンジル基やm-エテニルベンジル基等を少なくとも1つ以上有してなる変性ポリフェニレンエーテル化合物が記載されている。
また、特許文献3にはポリフェニレンエーテル部分を分子構造内に有し、かつ、この分子末端に、メタクリル基を有した変性ポリマーについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-99824号公報
【特許文献2】特開2004-339328号公報
【特許文献3】特表2008-510059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、特許文献1-3にはポリフェニレンエーテルの溶剤溶解性を改善するため低分子化したポリフェニレンエーテル等の製造方法が開示されているが、単にポリフェニレンエーテルの分子量を低下させるだけ等ではメチルエチルケトン等の汎用ケトン系溶媒への室温での溶解性は大幅には改善されておらず、未だ不十分である。特に、ケトン系溶媒への長期の溶剤溶解性を改善する手法が望まれている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、汎用ケトン系溶媒への溶解性に優れるポリフェニレンエーテル及びその製造方法を提供することを目的とする。また、該ポリフェニレンエーテルを用いた、熱硬化組成物、プリプレグ、及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位5~85mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位15~95mol%とを含み、
30℃において0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定された還元粘度(ηsp/c)が0.03~0.30dL/gである、
ことを特徴とするポリフェニレンエーテル。
【化1】
(式(1)中、R11は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R12は各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
【化2】
(式(2)中、R22は各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR22は両方が水素原子でなく、R21は下記式(3)で表される部分構造である。
【化3】
(式(3)中、R31は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R32は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立に、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基である。))
[2]
前記式(3)で表される部分構造がt-ブチル基である、[1]に記載のポリフェニレンエーテル。
[3]
平均水酸基数が2.5個/分子未満である、[1]又は[2]に記載のポリフェニレンエーテル。
[4]
平均水酸基数が0.2個/分子未満である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
[5]
下記式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を有し、平均水酸基数が0.2個/分子未満である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
【化4】
【化5】
【化6】
(式(6)中、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、前記飽和若しくは不飽和の炭化水素は炭素数1~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。)
【化7】
(式(7)中、Rは、炭素数1~10の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の2価の炭化水素は炭素数1~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよく、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の炭化水素は炭素数1~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。)
[6]
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールから誘導された繰り返し単位を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
[7]
前記1価フェノールが、2-アリルフェノール又は2-メチル-6-アリルフェノールである、[6]に記載のポリフェニレンエーテル。
[8]
前記式(1)のフェノール、及び前記式(2)のフェノールの酸化重合を行う工程を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[9]
[1]~[7]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテルと、ケトン系溶媒とを含む、ポリフェニレンエーテル溶液。
[10]
[1]~[7]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテルを含む、熱硬化組成物。
[11]
基材と、[10]に記載の熱硬化組成物とを含む、プリプレグ。
[12]
前記基材がガラスクロスである、[11]に記載のプリプレグ。
[13]
[11]又は[12]に記載のプリプレグの硬化物と、金属箔とを含むことを特徴とする、積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、汎用ケトン系溶媒への溶解性に優れるポリフェニレンエーテル及びその製造方法を提供することができる。また、該ポリフェニレンエーテルを用いた、熱硬化組成物、プリプレグ、及び積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、この本実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテルが含有する一部又は全部の水酸基が変性されたポリフェニレンエーテルを、単に「ポリフェニレンエーテル」と表現する場合がある。従って、「ポリフェニレンエーテル」と表現された場合には、特に矛盾が生じない限り、未変性のポリフェニレンエーテル及び変性されたポリフェニレンエーテルの両方を含む。
なお、本明細書において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。また、本明細書において、置換基とは、例えば、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0012】
<ポリフェニレンエーテル>
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位とを少なくとも含み、化合物中の繰り返し単位が下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位とのみからなっていてもよい。
【化8】
(式(1)中、R11は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R12は各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
【化9】
(式(2)中、R22は各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR22は両方が水素原子でなく、R21は下記式(3)で表される部分構造である。
【化10】
(式(3)中、R31は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R32は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立に、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基のいずれかである。))
【0013】
上記式(1)中、R11は各々独立に、炭素数1~6の飽和炭化水素基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、より好ましくはメチル基又はフェニル基さらに好ましくはメチル基である。式(1)中、2つのR11は、共に同じ構造であることが好ましい。
上記R11の炭素数1~6の飽和炭化水素基、炭素数6~12のアリール基における置換基としては、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0014】
上記式(1)中、R12は各々独立に、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。式(1)中、2つのR12は、異なることが好ましく、一方が水素原子、他方が炭素数1~6の炭化水素基(好ましくはメチル基)であることがより好ましい。
上記R12の炭素数1~6の炭化水素基、炭素数6~12のアリール基における置換基としては、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0015】
上記式(2)中、R22は各々独立に、水素原子、炭素数1~15の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基であることがより好ましく、さらに好ましくは水素原子又はメチル基である。式(2)中、2つのR22は異なることが好ましく、一方が水素原子、他方が炭素数1~6の炭化水素基(好ましくはメチル基)であることがより好ましい。
上記R22の炭素数1~20の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~12のアリール基における置換基としては、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0016】
上記式(3)で表される部分構造としては、好ましくは、2級及び/又は3級炭素を含む基であり、例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基や、これらの末端にフェニル基を有する構造等が挙げられ、より好ましくは、tert-ブチル基、シクロヘキシル基であり、さらに好ましくはtert-ブチル基である。
なお、上記R31の炭素数1~8の直鎖アルキル基における置換基、上記R32の炭素数1~8のアルキレン基における置換基、及び上記R33の炭素数1~8のアルキル基及びフェニル基における置換基、としては、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0017】
本実施形態において、ポリフェニレンエーテルをNMR、質量分析等の手法で解析することによりその構造を同定できる。ポリフェニレンエーテルの構造を同定する具体的方法としては、フラグメンテーションを起こしにくいことが知られている電界脱離質量分析法(FD-MS)を実施し、検出されるイオンの間隔により繰り返しユニットを推定することが可能である。更に電子イオン化法(EI)でフラグメントイオンのピーク解析やNMRによる構造解析と組み合わせることでポリフェニレンエーテルの構造を推定する方法が挙げられる。
【0018】
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の合計100mol%に対して、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位を5~85mol%と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を15~95mol%含有する。溶剤溶解性に優れ、低誘電正接であるポリフェニレンエーテルを得る観点より、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、18mol%以上であることが好ましく、より好ましくは20mol%以上である。同様の観点から、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、82mol%以下であることが好ましく、より好ましくは80mol%以下である。
本実施形態のポリフェニレンエーテルに含まれる式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、1種であっても複数種であってもよい。また、本実施形態のポリフェニレンエーテルに含まれる式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、1種であっても複数種であってもよい。
【0019】
本実施形態のポリフェニレンエーテルに含まれるモノマー単位(例えば、ポリフェニレンエーテルに含まれるフェノールに由来する全モノマー単位)100mol%に対して、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の合計モルは、75mol%以上であることが好ましく、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上である。
【0020】
式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位のそれぞれの割合は、例えばH NMR、13C NMR等の解析手法を用いて求めることができ、より具体的には後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
式(1)のフェノールは未置換のオルト位を有さないため(即ち、ヒドロキシル基が結合する炭素原子の2つのオルト位の炭素原子には水素原子が結合しないため)、フェノール性ヒドロキシル基とパラ位の炭素原子だけにおいて別のフェノール性モノマーと反応できる。従って、式(1)から誘導された繰り返し単位は、下記式(8)の構造を有する繰り返し単位を含む。
【化11】
(式(8)中、R11とR12は式(1)と同様である。)
【0022】
式(2)のフェノールは、フェノール性ヒドロキシル基に加えて、フェノールのオルト位又はパラ位のいずれかで別のフェノール性モノマーと反応可能である。従って、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、下記式(9)、下記式(10)のモノマー単位あるいはこれらの組み合わせを有する。
【化12】
【化13】
(式(9)、式(10)中のR21、R22は式(2)と同様である。)
【0023】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルの30℃において0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定された還元粘度は、0.03~0.30dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.06~0.30dL/gである。
還元粘度は用途に応じ適宜選択することが可能である。例えば、基板材料への適用工程においてワニスを作製する溶媒に溶解させた際の流動性をより向上させたい場合には、還元粘度が低いことが好ましい。
還元粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0024】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、式(1)のフェノールと式(2)のフェノールに加え、下記式(11)の2価フェノールに由来する構造を含有する3元共重合体を不純物(本明細書において、単に「不純物A」と称する場合がある。)として含有しても良い。本実施形態のポリフェニレンエーテルは、上記ポリフェニレンエーテルと上記不純物Aとの混合物であってもよい。実施形態のポリフェニレンエーテル100モル%に対する不純物Aのモル割合としては、10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。
上記不純物Aは、例えば、1価フェノールの酸化重合の際に副生成物として発生する下記式(12)と1価フェノールから構成されるポリフェニレンエーテルとの反応により、式(11)のz=0である2価フェノール由来の構造を含有する3元共重合体として合成され得る。
【化14】
(式(11)中、R11とR12は式(1)と同様である。zは0又は1であり、Yは、
【化15】
(式中、R41は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、及びハロゲン原子のいずれか)のいずれかである。)
【化16】
(式(12)中、R11とR12は式(1)と同様である。)
【0025】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルの平均水酸基数は、未変性のポリフェニレンエーテルの場合には2.5個/分子未満であることが好ましく、より好ましくは2.2個/分子未満であり、更に好ましくは2.0個/分子未満である。平均水酸基数が2.5個/分子を超えた場合には構造制御が出来ていない多分岐型の未変性のポリフェニレンエーテルであることを意味している。
平均水酸基数は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルに含まれる水酸基が官能基(例えば、不飽和炭素結合を含む官能基等)へ変性された変性ポリフェニレンエーテルであっても良い。変性ポリフェニレンエーテルの場合には、平均水酸基数が0.2個/分子未満であることが好ましく、0.1個/分子未満であることがより好ましく、0.01個/分子未満であることがさらに好ましい。
【0027】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは下記式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を有しても良い。
【化17】
【化18】
【化19】
(式(6)中、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、上記飽和若しくは不飽和の炭化水素はRの合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよい。)
【化20】
(式(7)中、Rは、炭素数1~10の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基であり、上記飽和又は不飽和の2価の炭化水素はRの合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよく、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の炭化水素はRの合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよい。)
なお、上記式(4)、式(5)、式(6)、式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一つで表される部分構造は、ポリフェニレンエーテルに含まれる水酸基と直接結合してよい。
【0028】
上記式(4)、式(5)、式(6)、式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一つで表される部分構造を導入した変性ポリフェニレンエーテルに含まれる式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位のそれぞれの割合は、例えばH NMR、13C NMR等の解析手法を用いて求めることができ、より具体的には後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0029】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールを含んでも良い。上記1価フェノールは、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に結合する不飽和炭化水素基は1つであることが好ましい。上記不飽和炭化水素は、上記1価フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子の両方のオルト位の炭素原子に一つずつ結合していてもよいし、一方のオルト位の炭素原子に一つ結合していてもよい。なお、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する上記1価フェノールは、上記式(1)のフェノール、又は上記式(2)のフェノールとは異なる1価のフェノールをいう。
不飽和炭化水素基としては、炭素数3~10の不飽和の炭化水素基であることが好ましく、炭素数3~5の不飽和の炭化水素基であることが好ましい。このような不飽和炭化水素基としては、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1-プロピニル、2-プロピニル等)等が挙げられる。
上記不飽和炭化水素は炭素数3~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。
【0030】
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールの導入率としては、硬化性官能基数の調整のため適宜調整してよいが、式(1)のフェノールとフェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールの合計に対して、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールは0.1~30mol%であることが好ましく、0.1~25mol%であることがさらに好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテル中の、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位とフェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールから誘導された繰り返し単位の合計に対する、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する上記1価フェノールから誘導された繰り返し単位のモル割合としては、0.1~40mol%であることが好ましく、より好ましくは0.1~10mol%である。
【0031】
<ポリフェニレンエーテルの製造方法>
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、例えば、上記式(1)、式(2)で表される一価のフェノール化合物の酸化重合を行う工程を少なくとも含む方法により得られる。上記酸化重合を行う工程は、上記式(1)のフェノール及び式(2)のフェノールを少なくとも含む原料を酸化重合することが好ましい。
【0032】
上記式(1)で表される一価のフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジメチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2-メチル-6-トリルフェノール、2,6-ジトリルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,3-ジエチル-6-n―プロピルフェノール、2,3,6-トリブチルフェノール、2,6-ジ-n-ブチル-3-メチルフェノール、2,6-ジメチル-3-n-ブチルフェノール、2,6-ジメチル-3-t-ブチルフェノール等が挙げられる。中でも、特に、安価であり入手が容易であるため、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,6-ジフェニルフェノールが好ましい。
上記式(1)で表される一価のフェノール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記式(2)で表される一価のフェノール化合物としては、例えば2-イソプロピル-5-メチルフェノール、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2-イソブチル-5-メチルフェノール等が挙げられる。多分岐化抑制、ゲル化抑制の観点より嵩高い置換基である2-t-ブチル-5-メチルフェノール、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノールがより好ましい。
上記式(2)で表される一価のフェノール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記酸化重合を行う工程は、例えば、上記式(1)のフェノール及び式(2)のフェノールに加え、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールを含む原料の酸化重合を行う工程であってもよい。
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールとしては、上記オルト位の炭素原子に少なくとも一つの(好ましくは一つの)不飽和炭化水素基が結合し、メタ位及びパラ位の炭素原子には水素原子が結合する1価のフェノールであることが好ましく、より好ましくは2-アリルフェノール、2-アリル-6-メチルフェノール、さらに好ましくは2-アリルフェノールである。
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する上記1価フェノールは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
通常、オルト位に水素原子を有するフェノールの酸化重合(例えば、2-メチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2-フェニルフェノール)はオルト位においてもエーテル結合が形成され得るため、酸化重合時のフェノール化合物の結合位置の制御が困難となり、平均水酸基数が3個/分子以上の分岐状に重合された高分子量なポリマーが得られ、最終的には溶剤に不溶なゲル成分が発生する(下記参考例1の2,5-ジメチルフェノールと2,6-ジメチルフェノールの酸化重合を参照)。
一方、上記式(2)で表される片側のオルト位に嵩高い置換基を有するフェノールを用いた場合には反対側のオルト位に水素原子を有するにも関わらず、酸化重合時のフェノール化合物の結合位置の制御が可能となり、平均水酸基が2.5個/分子未満のポリフェニレンエーテルを得ることが出来る。
さらには、上記式(2)で表される片側のオルト位に嵩高い置換基を有するフェノールを用いた場合には、第3成分としてフェノールの酸素原子のオルト位に嵩高くない置換基(例えば、水素原子、アリル基、メチル基、エチル基、メトキシ基等)を有する1価フェノールを用いた場合にもゲル化せず、平均水酸基が2.5個/分子未満のポリフェニレンエーテルを得ることが出来る。
【0036】
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルの分子量は、上記式(1)から誘導された繰り返し単位と上記式(2)から誘導された繰り返し単位との合計に対する上記式(2)から誘導された繰り返し単位のモル割合により調整することが可能である。すなわち、上記式(2)から誘導された繰り返し単位のモル割合が高い場合には到達する分子量(還元粘度)を下げることでき、上記式(2)から誘導された繰り返し単位のモル割合が低い場合には分子量(還元粘度)が高く調整可能である。当該理由については明らかではないが、上記式(2)のオルト位の嵩高い置換により、高分子量化が抑制されていると推測される。
【0037】
(酸化重合工程)
ここで、ポリフェニレンエーテルの製造方法では、酸化重合工程において、重合溶剤としてポリフェニレンエーテルの良溶剤である芳香族系溶剤を用いることができる。
ここで、ポリフェニレンエーテルの良溶剤とは、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができる溶剤であり、このような溶剤を例示すると、ベンゼン、トルエン、キシレン(o-、m-、p-の各異性体を含む)、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素やクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼンのようなニトロ化合物;等が挙げられる。
【0038】
本実施形態で用いられる重合触媒としては、一般的にポリフェニレンエーテルの製造に用いることが可能な公知の触媒系を使用できる。一般的に知られている触媒系としては、酸化還元能を有する遷移金属イオンと当該遷移金属イオンと錯形成可能なアミン化合物からなるものが知られており、例えば、銅化合物とアミン化合物からなる触媒系、マンガン化合物とアミン化合物からなる触媒系、コバルト化合物とアミン化合物からなる触媒系、等である。重合反応は若干のアルカリ性条件下で効率よく進行するため、ここに若干のアルカリもしくは更なるアミン化合物を加えることもある。
【0039】
本実施形態で好適に使用される重合触媒は、触媒の構成成分として銅化合物、ハロゲン化合物並びにアミン化合物からなる触媒であり、より好ましくは、アミン化合物として下記式(13)で表されるジアミン化合物を含む触媒である。
【0040】
【化21】
式(13)中、R14、R15、R16、R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、全てが同時に水素原子ではない。R18は、炭素数2から5の直鎖状又はメチル分岐を持つアルキレン基である。
【0041】
ここで述べられた触媒成分の銅化合物の例を列挙する。好適な銅化合物としては、第一銅化合物、第二銅化合物又はそれらの混合物を使用することができる。第二銅化合物としては、例えば、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等を例示することができる。また、第一銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等を例示することができる。これらの中で特に好ましい金属化合物は、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。またこれらの銅塩は、酸化物(例えば酸化第一銅)、炭酸塩、水酸化物等と対応するハロゲン又は酸から使用時に合成しても良い。しばしば用いられる方法は、先に例示の酸化第一銅とハロゲン化水素(又はハロゲン化水素の溶液)を混合して作製する方法である。
【0042】
ハロゲン化合物としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム等である。また、これらは、水溶液や適当な溶剤を用いた溶液として使用できる。これらのハロゲン化合物は、成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。好ましいハロゲン化合物は、塩化水素の水溶液、臭化水素の水溶液である。
【0043】
これらの化合物の使用量は、特に限定されないが、銅原子のモル量に対してハロゲン原子として2倍以上20倍以下が好ましく、重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対して好ましい銅原子の使用量としては0.02モルから0.6モルの範囲である。
【0044】
次に触媒成分のジアミン化合物の例を列挙する。例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’-トリエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-エチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-N-エチルエチレンジアミン、N-n-プロピルエチレンジアミン、N,N’-n-プロピルエチレンジアミン、N-i-プロピルエチレンジアミン、N,N’-i-プロピルエチレンジアミン、N-n-ブチルエチレンジアミン、N,N’-n-ブチルエチレンジアミン、N-i-ブチルエチレンジアミン、N,N’-i-ブチルエチレンジアミン、N-t-ブチルエチレンジアミン、N,N’-t-ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’-トリメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-1-メチルプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-2-メチルプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,5-ジアミノペンタン等が挙げられる。本実施形態にとって好ましいジアミン化合物は、2つの窒素原子をつなぐアルキレン基の炭素数が2又は3のものである。これらのジアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対して0.01モルから10モルの範囲が好ましい。
【0045】
本実施形態においては、重合触媒の構成成分として、第1級アミン及び第2級モノアミンを含むことができる。第2級モノアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-i-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-i-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、ジオクチルアミン類、ジデシルアミン類、ジベンジルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミン、N-フェニルメタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、N-フェニルプロパノールアミン、N-(m-メチルフェニル)エタノールアミン、N-(p-メチルフェニル)エタノールアミン、N-(2’,6’-ジメチルフェニル)エタノールアミン、N-(p-クロロフェニル)エタノールアミン、N-エチルアニリン、N-ブチルアニリン、N-メチル-2-メチルアニリン、N-メチル-2,6-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0046】
本実施形態における重合触媒の構成成分として、第3級モノアミン化合物を含むこともできる。第3級モノアミン化合物とは、脂環式第3級アミンを含めた脂肪族第3級アミンである。例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル-n-ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの第3級モノアミンは、単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。これらの使用量は、特に限定されないが、重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対して15モル以下の範囲が好ましい。
【0047】
本実施形態では、従来より重合活性に向上効果を有することが知られている界面活性剤を添加することについて、何ら制限されない。そのような界面活性剤として、例えば、Aliquat336やCapriquatの商品名で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。その使用量は、重合反応混合物の全量100質量%に対して0.1質量%を超えない範囲が好ましい。
【0048】
本実施形態の重合における酸素含有ガスとしては、純酸素の他、酸素と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの、空気、更には空気と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの等が使用できる。重合反応中の系内圧力は、常圧で充分であるが、必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。
【0049】
重合の温度は、特に限定されないが、低すぎると反応が進行しにくく、また高すぎると反応選択性の低下やゲルが生成するおそれがあるので、0~60℃、好ましくは10~40℃の範囲である。
【0050】
ポリフェニレンエーテルの製造方法では、アルコール等の貧溶剤中で重合を行うことも出来る。
【0051】
(銅抽出及び副生成物除去工程)
本実施形態において、重合反応終了後の後処理方法については、特に制限はない。通常、塩酸や酢酸等の酸、又はエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて、触媒を失活させる。また、ポリフェニレンエーテルの重合により生じる二価フェノール体の副生成物を除去処理する方法も、従来既知の方法を用いて行うことができる。上記の様に触媒である金属イオンが実質的に失活されている状態であれば、該混合物を加熱するだけで脱色される。また既知の還元剤を必要量添加する方法でも可能である。既知の還元剤としては、ハイドロキノン、亜二チオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0052】
(液液分離工程)
ポリフェニレンエーテルの製造方法においては、銅触媒を失活させた化合物を抽出するため水を添加し、有機相と水相に液液分離を行った後、水相を除去することで有機相から銅触媒を除去してよい。この液液分離工程は、特に限定しないが、静置分離、遠心分離機による分離等の方法が挙げられる。上記液液分離を促進させるためには、公知の界面活性剤等を用いてもよい。
【0053】
(濃縮・乾燥工程)
続いて、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、液液分離後の上記ポリフェニレンエーテルが含まれた有機相を、溶剤を揮発させることで濃縮・乾燥させてよい。
【0054】
上記有機相に含まれる溶剤を揮発させる方法としては、特に限定はしないが、有機相を高温の濃縮槽に移し溶剤を留去させて濃縮する方法やロータリーエバポレーター等の機器を用いてトルエンを留去させて濃縮する方法等が挙げられる。
【0055】
乾燥工程における乾燥処理の温度としては、少なくとも60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、120℃以上が更に好ましく、140℃以上が最も好ましい。ポリフェニレンエーテルの乾燥を60℃以上の温度で行うと、ポリフェニレンエーテル粉体中の高沸点揮発成分の含有量を効率よく低減できる。
【0056】
ポリフェニレンエーテルを高効率で得るためには、乾燥温度を上昇させる方法、乾燥雰囲気中の真空度を上昇させる方法、乾燥中に撹拌を行う方法等が有効であるが、特に、乾燥温度を上昇させる方法が製造効率の観点から好ましい。乾燥工程は、混合機能を備えた乾燥機を使用することが好ましい。混合機能としては、撹拌式、転動式の乾燥機等が挙げられる。これにより処理量を多くすることができ、生産性を高く維持できる。
【0057】
本実施形態のポリフェニレンエーテルは上記式(1)のフェノールから誘導されるポリフェニレンエーテルを酸化剤の存在下で上記式(2)のフェノール化合物と平衡化する再分配反応によって製造することもできる。再分配反応は、当該技術において公知であり、例えばCooperらの米国特許第3496236号明細書、及びLiskaらの米国特許第5880221号明細書に記載されている。
【0058】
(変性反応工程)
未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基へ官能基を導入する方法に限定はなく、例えば、未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基と、炭素-炭素2重結合を有するカルボン酸(以下カルボン酸)とのエステル結合の形成反応により得られる。エステル結合の形成法は、公知の様々な方法を利用することが出来る。たとえば、a.カルボン酸ハロゲン化物とポリマー末端の水酸基との反応、b.カルボン酸無水物との反応によるエステル結合の形成、c.カルボン酸との直接反応、d.エステル交換反応による方法、等があげられる。aのカルボン酸ハロゲン化物との反応は最も一般的な方法の一つである。カルボン酸ハロゲン化物としては、塩化物、臭化物が一般的に用いられるが、他のハロゲンを利用してもかまわない。反応は、水酸基との直接反応、水酸基のアルカリ金属塩との反応いずれでも構わない。カルボン酸ハロゲン化物と水酸基との直接反応ではハロゲン化水素等の酸が発生するため、酸をトラップする目的でアミン等の弱塩基を共存させてもよい。bのカルボン酸無水物との反応やcのカルボン酸との直接反応では、反応点を活性化し、反応を促進するために、例えばカルボジイミド類やジメチルアミノピリジン等の化合物を共存させてもかまわない。dのエステル交換反応の場合は、必要に応じて、生成したアルコール類の除去を行うことが望ましい。また、反応を促進させるために公知の金属触媒類を共存させてもかまわない。反応後は、アミン塩等の副生物等を除くために、水、酸性、又はアルカリ性の水溶液で洗浄してもかまわないし、ポリマー溶液をアルコール類のような貧溶媒中に滴下し、再沈殿により、目的物を回収してもかまわない。またポリマー溶液を洗浄後、減圧下に溶媒を留去し、ポリマーを回収してもかまわない。
【0059】
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、上述の本実施形態の多官能変性ポリフェニレンエーテルの製造方法に限定されることなく、上述の、酸化重合工程、銅抽出及び副生成物除去工程、液液分離工程、濃縮・乾燥工程の順序や回数等を適宜調整してよい。
【0060】
(ポリフェニレンエーテル溶液)
本実施形態のポリフェニレンエーテル溶液は、上述の本実施形態のポリフェニレンエーテルとケトン系溶媒とを少なくとも含み、さらに他の成分を含んでいてもよい。また、溶媒として、ケトン系溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。
上記ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
上記ポリフェニレンエーテル溶液100質量%に対する、上記ポリフェニレンエーテルと上記ケトン系溶媒との合計質量の割合としては、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
上記ポリフェニレンエーテル溶液100質量%に対する上記ポリフェニレンエーテルの質量割合としては、1~40質量%が好ましい。また、上記ポリフェニレンエーテル溶液100質量%に対する上記ケトン系溶媒の質量割合としては、60~99質量%が好ましい。
上記ポリフェニレンエーテル溶液は、例えば、上記ポリフェニレンエーテル、上記ケトン系溶媒、及び任意の他の成分や他の溶媒等を混合することで製造することができる。
【0061】
<熱硬化組成物>
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、熱硬化組成物の原料として用いることができる。熱硬化組成物は、ポリフェニレンエーテルを含むものであれば特に限定されないが、架橋剤と、有機過酸化物とを更に含むことが好ましく、所望により、熱可塑性樹脂、難燃剤、その他の添加剤、シリカフィラー、溶剤等を更に含むことができる。本実施形態の熱硬化組成物の構成要素について以下に説明する。
【0062】
(ポリフェニレンエーテル)
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、上述のとおり、熱硬化組成物において、単独の樹脂として使用してもよいし、他の構造を有するポリフェニレンエーテルと併用してもよいし、公知の各種添加剤と組み合わせて使用することもできる。
他の成分と組み合わせて用いる場合、熱硬化組成物中のポリフェニレンエーテルの含有量は、0.5~95質量%であることが好ましく、より好ましくは20~93質量%、更に好ましくは40~90質量%である。
【0063】
(架橋剤)
本実施形態の熱硬化組成物では、架橋反応を起こすか、又は促進する能力を有する任意の架橋剤を使用することができる。
架橋剤は、数平均分子量が4,000以下であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が4,000以下であると、熱硬化組成物の粘度の増大を抑制でき、また加熱成形時の良好な樹脂流動性が得られる。
なお、数平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定した値としてよく、具体的には、GPCを用いて測定した値等が挙げられる。
【0064】
架橋剤は、架橋反応の観点から、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有することが好ましい。架橋剤は、1種類の化合物で構成されてもよく、2種類以上の化合物で構成されてもよい。
なお、本明細書にいう「炭素-炭素不飽和二重結合」とは、架橋剤がポリマー又はオリゴマーである場合、主鎖より分岐した末端に位置する二重結合をいう。炭素-炭素不飽和二重結合としては、例えば、ポリブタジエンにおける1,2-ビニル結合が挙げられる。
【0065】
架橋剤の数平均分子量が600未満である場合、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、2~4であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が600以上1,500未満の場合には、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、4~26であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が1,500以上4,000未満の場合には、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、26~60であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が上記範囲内にある場合に、炭素-炭素不飽和二重結合の数が上記特定値以上であることにより、本実施形態の熱硬化組成物は、架橋剤の反応性が一層高まり、熱硬化組成物の硬化物の架橋密度が一層向上し、その結果、一層優れた耐熱性を付与できる。一方で、架橋剤の数平均分子量が上記範囲内にある場合に、炭素-炭素不飽和二重結合の数が、上記特定値以下であることにより、加熱成形時に一層優れた樹脂流動性を付与できる。
【0066】
架橋剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、トリアリルシアヌレート(TAC)等のトリアルケニルシアヌレート化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、ポリブタジエン等の分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物、分子中にビニルベンジル基を有するジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン等の分子中にマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤は、これらの中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、及びポリブタジエンから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。架橋剤が、上記で説明された少なくとも1種以上の化合物を含むことにより、熱硬化組成物は、架橋剤とポリフェニレンエーテルとの相溶性及び塗工性に一層優れ、そして電子回路基板に実装されると基板特性に一層優れる傾向にある。
【0067】
ポリフェニレンエーテルと架橋剤との質量比(ポリフェニレンエーテル:架橋剤)は、架橋剤と変性ポリフェニレンエーテルとの相溶性、熱硬化組成物の塗工性、及び実装された電子回路基板の特性に一層優れるという観点から、25:75~95:5であることが好ましく、より好ましくは、32:68~85:15である。
【0068】
(有機過酸化物)
本実施形態では、ポリフェニレンエーテル及び架橋剤を含む熱硬化組成物の重合反応を促進する能力を有する任意の有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。なお、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も熱硬化組成物のための反応開始剤として使用することができる。中でも、得られる耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電正接(さらに誘電率も低いことが好ましい)を有する硬化物を提供することができるという観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
【0069】
有機過酸化物の1分間半減期温度は、好ましくは155~185℃であり、より好ましくは160~180℃、更に好ましくは165~175℃である。有機過酸化物の1分間半減期温度が155~185℃の範囲内にあることにより、有機過酸化物と変性PPEとの相溶性、熱硬化組成物の塗工性、及び実装された電子回路基板の特性に一層優れる傾向にある。
なお、本明細書において、1分間半減期温度とは、有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が半分になる時間が1分間となる温度である。1分間半減期温度は、ラジカルに対して不活性な溶剤、例えばベンゼン等に有機過酸化物を0.05~0.1mol/Lの濃度となるように溶解させ、有機過酸化物溶液を窒素雰囲気化で熱分解させる方法で確認される値である。
【0070】
1分間半減期温度が155~185℃の範囲内にある有機過酸化物としては、例えば、t-へキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(155.0℃)、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(166.0℃)、t-ブチルペルオキシラウレート(159.4℃)、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(158.8℃)、t-ブチルペルオキシ2-エチルへキシルモノカーボネート(161.4℃)、t-へキシルパーオキシベンゾエート(160.3℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(158.2℃)、t-ブチルペルオキシアセテート(159.9℃)、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン(159.9℃)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(166.8℃)、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)バレラート(172.5℃)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(175.4℃)、ジクミルパーオキサイド(175.2℃)、ジ-t-へキシルパーオキサイド(176.7℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(179.8℃)、及びt-ブチルクミルパーオキサイド(173.3℃)等が挙げられる。
【0071】
有機過酸化物の含有量は、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部を基準として、有機過酸化物と変性PPEとの相溶性及び熱硬化組成物の塗工性に一層優れるという観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、より更に好ましくは1.5質量部以上であり、熱硬化組成物が電子回路基板に実装されると基板特性に優れるという観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下である。
【0072】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物(ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体)、並びにビニル芳香族化合物の単独重合体から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ポリフェニレンエーテルとの相溶性、樹脂流動性、熱硬化組成物の塗工性及び硬化時の耐熱性等に一層優れる観点から、好ましくは50,000超780,000以下、より好ましくは60,000~750,000、更に好ましくは70,000~700,000である。
熱硬化組成物は、ポリフェニレンエーテル、架橋剤及び有機過酸化物と、上記で説明された種類及び重量平均分子量を有する熱可塑性樹脂とを含むと、変性PPEと他の含有成分との相溶性及び基材等への塗工性が良好になる傾向にあり、ひいては電子回路基板に組み込まれたときの基板特性にも優れることがある。
なお、重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
【0073】
上記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有率は、下限値について、20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは、22質量%以上、24質量%以上、26質量%以上、28質量%以上、30質量%以上、32質量%以上である。また、上限値について、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、69質量%以下、68質量%以下、67質量%以下である。上記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有率が20~70質量%であることにより、変性ポリフェニレンエーテルとの相溶性が一層向上し、かつ/又は金属箔との密着強度が一層向上する傾向にある。
【0074】
ビニル芳香族化合物としては、分子内に芳香環及びビニル基を有すればよく、例えば、スチレン等が挙げられる。
オレフィン系アルケン化合物としては、分子内に直鎖若しくは分岐構造を有するアルケンであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、及びイソプレン等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンエーテルとの相溶性に一層優れる観点から、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレンの単独重合体(ポリスチレン)から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、及びポリスチレンからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0075】
上記水素添加物における水素添加率は、特に限定されず、オレフィン系アルケン化合物由来の炭素-炭素不飽和二重結合が一部残存していてもよい。
【0076】
熱可塑性樹脂の含有量は、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部を基準として、2~20質量部であることが好ましく、3~19質量部であることがより好ましく、4~18質量部であることがさらに好ましく、5~17質量部であることが特に好ましい。この含有量が上記数値範囲内にあることにより、本実施形態の熱硬化組成物は、熱可塑性樹脂と変性ポリフェニレンエーテルとの相溶性及び塗工性に一層優れ、そして電子回路基板に実装されると基板特性に一層優れる傾向にある。
【0077】
なお、本実施形態の熱硬化組成物は、上記で説明された種類及び重量平均分子量を有する熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むこともできる。
【0078】
(難燃剤)
本実施形態の熱硬化組成物は、難燃剤を含むことが好ましい。難燃剤としては、耐熱性を向上できる観点から、熱硬化組成物の硬化後に熱硬化組成物中の他の含有成分と相溶しないものであれば特に制限されない。好ましくは、難燃剤は、熱硬化組成物の硬化後に熱硬化組成物中のポリフェニレンエーテル及び/又は架橋剤と相溶しない。
難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、難燃剤は、難燃剤と変性PPEとの相溶性、熱硬化組成物の塗工性、実装された電子回路基板の特性に一層優れる観点から、デカブロモジフェニルエタンであることが好ましい。
【0079】
難燃剤の含有量は、特に限定されないが、UL規格94のV-0レベルの難燃性を維持するという観点から、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電正接を低く維持できる観点から(好ましくはさらに誘電率も低く維持できる観点から)、難燃剤の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0080】
(シリカフィラー)
本実施形態の熱硬化組成物は、シリカフィラーを含有してもよい。シリカフィラーとしては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、及び中空シリカ等が挙げられる。
シリカフィラーの含有量は、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部に対して、10~100質量部としてよい。また、シリカフィラーは、その表面にシランカップリング剤等を用いて表面処理をされたものであってもよい。
【0081】
本実施形態の熱硬化組成物は、難燃剤及びシリカフィラー以外に、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤等の添加剤、溶剤等を更に含んでもよい。
本実施形態の熱硬化組成物は、溶剤を含む場合には、熱硬化組成物中の固形成分が溶剤に溶解又は分散したワニスの形態であることが可能であり、また、本実施形態の熱硬化組成物から樹脂フィルムを形成することができる。
【0082】
(溶剤)
溶剤としては、溶解性の観点から、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、メチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びクロロホルム等が好ましい。これらの溶剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
<プリプレグ>
本実施形態のプリプレグは、基材と上述の本実施形態の熱硬化組成物とを含み、基材とこの基材に含浸又は塗布された本実施形態の熱硬化組成物とを含む複合体であることが好ましい。プリプレグは、例えば、ガラスクロス等の基材を上記熱硬化組成物のワニスに含浸させた後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することにより得られる。
【0084】
基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラスクロス;アスベスト布、金属繊維布、及びその他の合成若しくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙-ガラス混繊糸から得られる布等の天然セルロース系基材;ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム;等が挙げられる。中でもガラスクロスが好ましい。これらの基材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
プリプレグ中の本実施形態の熱硬化組成物固形分(熱硬化組成物の溶剤以外の成分)の割合は、30~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましい。上記割合が30質量%以上であることにより、プリプレグを電子基板用等に用いた場合に絶縁信頼性に一層優れる傾向にある。上記割合が80質量%以下であることにより、電子基板等の用途において、曲げ弾性率等の機械特性に一層優れる傾向にある。
【0086】
<積層体>
本実施形態の積層体は、上述の本実施形態のプリプレグの硬化物と金属箔とを含み、本実施形態の熱硬化組成物又は本実施形態のプリプレグと金属箔とを積層して硬化して得られる金属張積層板であることが好ましい。金属張積層板は、プリプレグの硬化物(以下、「硬化物複合体」ともいう。)と金属箔とが積層して密着している形態を有することが好ましく、電子基板用材料として好適に用いられる。
金属箔としては、例えば、アルミ箔及び銅箔が挙げられ、これらの中でも銅箔は電気抵抗が低いため好ましい。
金属箔と組合せる硬化物複合体は、1枚でも複数枚でもよく、用途に応じて複合体の片面又は両面に金属箔を重ねて積層板に加工する。
【0087】
金属張積層板の製造方法としては、例えば、熱硬化組成物と基材とから構成される複合体(例えば、上述のプリプレグ)を形成し、これを金属箔と重ねた後、熱硬化組成物を硬化させることにより、硬化物積層体と金属箔とが積層されている積層板を得る方法が挙げられる。
上記金属張積層板の特に好ましい用途の1つはプリント配線板である。プリント配線板は、金属張積層板から金属箔の少なくとも一部が除去されていることが好ましい。
【0088】
<プリント配線板>
上記金属張積層板から金属箔の少なくとも一部を除去して、プリント配線板とすることができる。上記プリント配線板は、典型的には、上述した本実施形態のプリプレグを用いて、加圧加熱成形する方法で形成できる。基材としてはプリプレグに関して上述したのと同様のものが挙げられる。
上記プリント配線板は、本実施形態の熱硬化組成物を含むことにより、優れた耐熱性及び電気特性(低誘電正接及び/又は低誘電率)を有し、更には環境変動に伴う電気特性の変動を抑制可能であり、更には優れた絶縁信頼性及び機械特性を有する。
【実施例0089】
以下、実施例に基づいて本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0090】
まず、下記に各物性及び評価の測定方法及び評価基準について述べる。
【0091】
(1)未変性ポリフェニレンエーテルに含まれる式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計に対する、式(1)又は式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位のモル割合
実施例及び比較例で得られた未変性ポリフェニレンエーテルを重クロロホルムに溶解し、テトラメチルシランを内部標準として用い、H-NMR測定(JEOL製500MHz)を行った。測定の際、ポリフェニレンエーテルは事前に140℃、1mmHgで8時間保持することでトルエンや水等の揮発成分を除去し、乾燥状態の未変性ポリフェニレンエーテルとして測定を行った。式(1)及び式(2)のフェノールから誘導される単位のシグナルを同定し、それぞれの割合を算出した。
例えば、実施例及び比較例で得られた未変性ポリフェニレンエーテルにおいて、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2,6-ジメチルフェノール由来構造(2,6-ジメチルフェニレンユニット)に由来するシグナルと、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール由来構造(2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニット)に由来するシグナルの帰属方法については下記の通り解析した。各フェノールから誘導された繰り返し単位のピークは次の領域に現れる。
2,6-ジメチルフェニレンユニット及び2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのメチル基の水素原子由来のピーク(それぞれ6H、3Hずつ):1.60~2.50ppm(ただし、トルエンのメチル基の水素原子由来のピークを除く)
2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル基の水素原子由来のピーク(9H):1.00~1.52ppm(ただし、水の水素原子由来のピークを除く)
上記シグナルの積分値を調べ、下記数式(1)により2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル基の水素原子由来のピークの1プロトン当たりの積分値を求めることができる。
E={C-3×(D/9)}/6 ・・・数式(1)
C:2,6-ジメチルフェニレンユニット及び2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの積分値
D:2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル由来のピークの積分値
E:2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの1プロトン当たりの積分値
さらに下記数式(2)、(3)により、式(1)又は式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の割合(mol%)を計算することができる。
式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位の割合(mol%)=E/{(D/9)+E}×100 ・・・数式(2)
式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の割合(mol%)=(D/9)/{(D/9)+E}×100 ・・・数式(3)
【0092】
(2)未変性ポリフェニレンエーテルに含まれる式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、不純物Aから誘導された繰返し単位の合計に対する、不純物Aから誘導された繰返し単位のモル割合
実施例及び比較例で得られた未変性ポリフェニレンエーテルを重クロロホルムに溶解し、テトラメチルシランを内部標準として用い、H-NMR測定(JEOL製500MHz)を行った。測定の際、ポリフェニレンエーテルは事前に140℃、1mmHgで8時間保持することでトルエンや水等の揮発成分を除去し、乾燥状態の未変性ポリフェニレンエーテルとして測定を行った。式(1)、式(2)及び不純物Aのフェノールから誘導される単位のシグナルを同定し、それぞれの割合を算出した。
例えば、実施例及び比較例で得られた未変性ポリフェニレンエーテルにおいて、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2,6-ジメチルフェノール由来構造(2,6-ジメチルフェニレンユニット)に由来するシグナルと、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール由来構造(2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニット)に由来するシグナルと、不純物Aから誘導された繰返し単位、即ち、式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰返し単位に由来するシグナルの帰属方法については下記の通り解析した。各フェノールから誘導された繰り返し単位のピークは次の領域に現れる。
2,6-ジメチルフェニレンユニット、2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニット及び式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰返し単位に由来するシグナルのメチル基の水素原子由来のピーク(それぞれ6H、3H、12Hずつ):1.60~2.50ppm(ただし、トルエンのメチル基の水素原子由来のピークを除く)
2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル基の水素原子由来のピーク(9H):1.00~1.52ppm(ただし、水の水素原子由来のピークを除く)
式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰返し単位のメチル基の水素原子由来のピーク(4H):7.35ppm
上記シグナルの積分値を調べ、下記数式(4)により2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル基の水素原子由来のピークの1プロトン当たりの積分値を求めることができる。
E={C-3×(D/9)-12×(F/4)}/6 ・・・数式(4)
C:2,6-ジメチルフェニレンユニット及び2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの積分値
D:2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル由来のピークの積分値
F:式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰り返し単位のベンゼン環の水素原子由来のピークの積分値
E:2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの1プロトン当たりの積分値
さらに下記数式(5)により、式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である構造の割合(mol%)を計算することができる。
式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰り返し単位の割合(mol%)=(F/4)/{(D/9)+E+(F/4)}×100 ・・・数式(5)
【0093】
(3)未変性ポリフェニレンエーテルに含まれる式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールから誘導された繰り返し単位との合計に対する、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する上記1価フェノールから誘導された繰り返し単位のモル割合
実施例及び比較例で得られた未変性ポリフェニレンエーテルを重クロロホルムに溶解し、テトラメチルシランを内部標準として用い、H-NMR測定(JEOL製500MHz)を行った。測定の際、ポリフェニレンエーテルは事前に140℃、1mmHgで8時間保持することでトルエンや水等の揮発成分を除去し、乾燥状態の未変性ポリフェニレンエーテルとして測定を行った。式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールから誘導された繰り返し単位のシグナルを同定し、それぞれの割合を算出した。
例えば、実施例及び比較例で得られた未変性ポリフェニレンエーテルにおいて、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2,6-ジメチルフェノール由来構造(2,6-ジメチルフェニレンユニット)に由来するシグナルと、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール由来構造(2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニット)に由来するシグナルと、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2-アリルフェノール由来構造(2-アリルフェニレンユニット)に由来するシグナルは次の領域に現れる。
2,6-ジメチルフェニレンユニット及び2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのメチル基の水素原子由来のピーク(それぞれ6H、3Hずつ):1.60~2.50ppm(ただし、トルエンのメチル基の水素原子由来のピークを除く)
2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル基の水素原子由来のピーク(9H):1.00~1.52ppm(ただし、水の水素原子由来のピークを除く)
2-アリルフェニレンユニットのメチレン基の水素原子由来のピーク(2H):3.40ppm
上記シグナルの積分値を調べ、下記数式(6)により2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル基の水素原子由来のピークの1プロトン当たりの積分値を求めることができる。
E={C-3×(D/9)}/6 ・・・数式(6)
C:2,6-ジメチルフェニレンユニット及び2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの積分値
D:2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル由来のピークの積分値
E:2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの1プロトン当たりの積分値
さらに下記数式(7)により、2-アリルフェニレンユニットの割合(mol%)を計算することができる。
2-アリルフェニレンユニットの割合(mol%)=(G/2)/{E+(G/2)}×100 ・・・数式(7)
G:2-アリルフェニレンユニットのメチレン基由来のピークの1プロトン当たりの積分値
【0094】
(4)変性ポリフェニレンエーテルに含まれる式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計に対する、式(1)又は式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位のモル割合
変性ポリフェニレンエーテルについては下記の通り実施した。
実施例及び比較例で得られた変性ポリフェニレンエーテルを測定溶媒(水酸基を消失させるため重水を1滴加えた重クロロホルム)に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として用い、H-NMR測定(JEOL製500MHz)を行った。測定の際、ポリフェニレンエーテルは事前に80℃、1mmHgで8時間保持することでトルエンや水等の揮発成分を除去し、乾燥状態の変性ポリフェニレンエーテルとして測定を行った。式(1)及び式(2)のフェノールから誘導される単位のシグナルを同定し、それぞれの割合を算出した。
例えば、実施例及び比較例で得られた変性ポリフェニレンエーテルにおいて、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2,6-ジメチルフェノール由来構造(2,6-ジメチルフェニレンユニット)に由来するシグナルと、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール由来構造(2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニット)に由来するシグナル、式(4)、式(5)、式(6)又は式(7)からなる群から選ばれる部分構造に由来するシグナル、即ち、メタクリル基由来構造に由来するシグナルの帰属方法については下記の通り解析した。各フェノールから誘導された繰り返し単位のピークは次の領域に現れる。
2,6-ジメチルフェニレンユニット、2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニット及びメタクリル基のメチル基の水素原子由来のピーク(それぞれ6H、3H、3Hずつ):1.60~2.50ppm(ただし、トルエンのメチル基の水素原子由来のピークを除く)
2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル基の水素原子由来のピーク(9H):1.00~1.52ppm(ただし、水の水素原子由来のピークを除く)
メタクリル基のメチレン基の一つの水素原子由来のピーク(1H):4.4~5.8ppm
上記シグナルの積分値を調べ、下記数式(8)により2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル基の水素原子由来のピークの1プロトン当たりの積分値を求めることができる。
E={C-3×(D/9)-3×(H/1)}/6 ・・・数式(8)
C:2,6-ジメチルフェニレンユニット及び2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの積分値
D:2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル由来のピークの積分値
E:2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの1プロトン当たりの積分値
H:メタクリル基のメチレン基の一つの水素原子由来のピークの積分値
さらに下記数式(9)、(10)により、式(1)又は式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の割合(mol%)を計算することができる。
式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位の割合(mol%)=E/{(D/9)+E}×100 ・・・数式(9)
式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の割合(mol%)=(D/9)/{(D/9)+E}×100 ・・・数式(10)
【0095】
(5)変性ポリフェニレンエーテルに含まれる式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、不純物Aから誘導された繰返し単位の合計に対する、不純物Aから誘導された繰返し単位のモル割合
実施例及び比較例で得られた未変性ポリフェニレンエーテルを測定溶媒(水酸基を消失させるため重水を1滴加えた重クロロホルム)に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として用い、H-NMR測定(JEOL製500MHz)を行った。測定の際、ポリフェニレンエーテルは事前に80℃、1mmHgで8時間保持することでトルエンや水等の揮発成分を除去し、乾燥状態の未変性ポリフェニレンエーテルとして測定を行った。式(1)、式(2)及び不純物Aのフェノールから誘導される単位のシグナルを同定し、それぞれの割合を算出した。
例えば、実施例及び比較例で得られた未変性ポリフェニレンエーテルにおいて、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2,6-ジメチルフェノール由来構造(2,6-ジメチルフェニレンユニット)に由来するシグナルと、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位、即ち、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール由来構造(2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニット)に由来するシグナル、式(4)、式(5)、式(6)又は式(7)からなる群から選ばれる部分構造に由来するシグナル、即ち、メタクリル基由来構造に由来するシグナルと、不純物Aから誘導された繰返し単位、即ち、式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰返し単位に由来するシグナルの帰属方法については下記の通り解析した。各フェノールから誘導された繰り返し単位のピークは次の領域に現れる。
2,6-ジメチルフェニレンユニット、2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニット、式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰返し単位、メタクリル基に由来するシグナルのメチル基の水素原子由来のピーク(それぞれ6H、3H、12H、3Hずつ):1.60~2.50ppm(ただし、トルエンのメチル基の水素原子由来のピークを除く)
2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル基の水素原子由来のピーク(9H):1.00~1.52ppm(ただし、水の水素原子由来のピークを除く)
式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰返し単位のメチル基の水素原子由来のピーク(4H):7.35ppm
メタクリル基のメチレン基の一つの水素原子由来のピーク(1H):4.4~5.8ppm
上記シグナルの積分値を調べ、下記数式(11)により2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル基の水素原子由来のピークの1プロトン当たりの積分値を求めることができる。
E={C-3×(D/9)-12×(F/4)-3×(H/1)}/6 ・・・数式(11)
C:2,6-ジメチルフェニレンユニット及び2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの積分値
D:2-tert-ブチル-5-メチルフェニレンユニットのtert-ブチル由来のピークの積分値
F:式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰り返し単位のベンゼン環の水素原子由来のピークの積分値
E:2,6-ジメチルフェニレンユニットのメチル由来のピークの1プロトン当たりの積分値
H:メタクリル基のメチレン基の一つの水素原子由来のピークの積分値
さらに下記数式(12)により、式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である構造の割合(mol%)を計算することができる。
式(11)中のR11=メチル基、R12=水素原子、z=0である繰り返し単位の割合(mol%)=(F/4)/{(D/9)+E+(F/4)}×100 ・・・数式(12)
【0096】
(6)還元粘度(ηsp/c)
ポリフェニレンエーテルの0.5g/dLのクロロホルム溶液を調整し、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)(dL/g)を求めた。
【0097】
(7)ポリフェニレンエーテルの平均水酸基数
ポリフェニレンエーテルを5.0mg秤量した。そして、この秤量したポリフェニレンエーテルを、25mLの塩化メチレンに溶解させた。調製した溶液2.0mLに対して、2質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)のエタノール溶液を150μL添加した後、UV分光光度計(日立製作所:U-3210型)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定した(セル長1cmの吸光度測定用セルを使用)。そして、その測定結果に基づき、吸光度から得られる水酸基当量を、下記数式(13)により求めた。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めた数平均分子量(詳細は下記(8)に記載)を用いて、ポリフェニレンエーテル1分子当たりの平均水酸基数を算出した。
吸光度から得られる水酸基当量(g/mol)=[(ε×5)/(25×Abs)] ・・・数式(13)
(ここで、εは、吸光係数を示し、4700L/mol・cmである。)
ポリフェニレンエーテル1分子当たりの平均水酸基数(個/分子)=(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めた数平均分子量)/(吸光度から得られる水酸基当量) ・・・数式(14)
【0098】
(8)数平均分子量(Mn)
測定装置として、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21を用い、標準ポリスチレンとエチルベンゼンにより検量線を作成し、この検量線を利用して、得られた変性ポリフェニレンエーテルの数平均分子量(Mn)の測定を行った。標準ポリスチレンとしては、分子量が、3,650,000、2,170,000、1,090,000、681,000、204,000、52,000、30,200、13,800、3,360、1,300、550のものを用いた。
カラムは、昭和電工(株)製K-805Lを2本直列につないだものを使用した。溶剤は、クロロホルムを使用し、溶剤の流量は1.0mL/分、カラムの温度は40℃として測定した。測定用試料としては、変性ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液を作製して用いた。検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmとした。
上記測定データに基づきGPCにより得られた分子量分布を示す曲線に基づくピーク面積の割合から数平均分子量(Mn)(g/mol)算出した。
【0099】
(9)メチルエチルケトンに対する長期溶解性(MEK溶解性)
ガラス製の透明スクリュー管にポリフェニレンエーテルを1.5gとメチルエチルケトン8.5gを秤量した。20℃で攪拌子とマグネチックスターラーを用い混合した。1日後、この溶液が透明性を保っている場合は「〇」(良好)、明らかに溶解していない又は不溶分が多く存在する場合は「×」(不良)、若干溶け残りが存在する場合(若干の濁りがある場合)は「△」と判定した。
【0100】
(10)トルエンに対する長期溶解性(TL溶解性)
ガラス製の透明スクリュー管にポリフェニレンエーテルを2gとトルエン8gを秤量した。20℃で攪拌子とマグネチックスターラーを用い混合した。1日後、この溶液が透明性を保っている場合は「〇」(良好)、明らかに溶解していない又は不溶分が多く存在する場合は「×」(不良)、若干溶け残りが存在する場合(若干の濁りがある場合)は「△」と判定した。
【0101】
(11)熱硬化組成物の硬化物の誘電正接
実施例及び比較例で製造された積層板の10GHzでの誘電正接を、空洞共振法にて測定した。測定装置として、ネットワークアナライザー(N5230A、AgilentTechnologies社製)、及び関東電子応用開発社製の空洞共振器(Cavity Resornator CPシリーズ)を用いた。積層板を、ガラスクロスの経糸が長辺となるように幅約2mm、長さ50mm、厚さ約0.5mmの短冊状に切り出した。次に、105℃±2℃のオーブンに入れ2時間乾燥させた後、23℃相対湿度50±5%の環境下に24±5時間静置した。その後、23℃、相対湿度50±5%の環境下で上記測定装置を用いることにより、誘電正接の測定を行った。
【0102】
以下、各実施例及び比較例のポリフェニレンエーテルの製造方法を説明する。
【0103】
(実施例1)
重合槽底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、17.1L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、2.4gの酸化第二銅、18.1gの47質量%臭化水素水溶液、5.8gのジ-t-ブチルエチレンジアミン、28.1gのジ-n-ブチルアミン、85.6gのブチルジメチルアミン、17.9kgのトルエン、及び1497gの2,6-ジメチルフェノール、503gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールを入れ、均一溶液とした。次に、重合槽へ10.5L/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入し始め、重合を開始した。乾燥空気を120分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合中は内温が20℃になるようコントロールした。重合終結時の重合混合物(重合液)は均一な溶液状態であった。
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物に25.9gのエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)を水2kgの水溶液として添加した。70℃で150分間、重合混合物を撹拌し、その後20分静置し、液-液分離により有機相と水相とを分離した。上記有機相をロータリーエバポレーターによりポリマー濃度が25質量%になるまで濃縮した。
上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの比が6となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの比が3となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。ついで、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。
得られたポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
【0104】
(実施例2)
フェノール原料を1269gの2,6-ジメチルフェノール、731gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールとした他は実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0105】
(実施例3)
フェノール原料を853gの2,6-ジメチルフェノール、1147gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールとした他は実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0106】
(実施例4)
フェノール原料を454gの2,6-ジメチルフェノール、1517gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールとした他は実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0107】
(実施例5)
フェノール原料を765gの2,6-ジメチルフェノール、1142gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、93gの2-アリルフェノールとした他は実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0108】
(実施例6)
フェノール原料を503gの2,6-ジメチルフェノール、1128gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、369gの2-アリルフェノールとした他は実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0109】
(実施例7)
実施例3と同様に酸化重合、銅抽出、液液分離及びロータリーエバポレーターによる濃縮を行い、ポリマー濃度25質量%のポリマー溶液を変性反応の原液として用いた。
反応器上部に窒素ガス導入の為のライン、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた500mLの三口フラスコに、反応器内部を窒素置換した後、未変性ポリフェニレンエーテル溶液200g、4-ジメチルアミノピリジン0.64gを投入した。攪拌をしながらシリンジを用いてトリエチルアミン21mLを加えた。その後、塩化メタクリロイル10.9mLをシリンジに採取し、室温にて系内に滴下した。滴下終了後から1時間、オイルバスでフラスコを加熱し90℃で攪拌を継続した。その後、さらにオイルバスで加熱し、還流状態で反応を継続した。還流開始から4時間経過した段階で加熱をやめ、常温に戻った後にメタノール8gを加えて反応を停止した。次いで、ガラスフィルターを用いて反応溶液を濾過し、副生するトリエチルアンモニウム塩を除去した溶液を得た。上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの比が10となるメタノールと混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの比が2.5となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。ついで、湿潤ポリフェニレンエーテルを、100℃、1mmHgで8時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。上述した方法によりポリフェニレンエーテルの平均水酸基数を測定し、ポリフェニレンエーテル由来の平均水酸基数が0.2個/分子未満であることを確認した。またH NMR測定を行いメタクリル基のオレフィン由来のプロトンピークを確認したことより、水酸基がメタクリル基に変性に変性されていると判断した。各分析結果を表2に示す。
【0110】
(実施例8)
実施例3と同様に酸化重合、銅抽出、液液分離及びロータリーエバポレーターによる濃縮を行い、ポリマー濃度25質量%のポリマー溶液を変性反応の原液として用いた。
温度調節器、撹拌装置、冷却設備及び滴下ロートを備えた500mLの3つ口フラスコに、未変性ポリフェニレンエーテル溶液を200g、クロロメチルスチレン(p-クロロメチルスチレンとm-クロロメチルスチレンとの比が50/50、東京化成工業社製)24g、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド1.0gを投入した。その後、混合物を撹拌溶解し、液温を85℃とした。当該混合液に、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム4.2g/水104g)を1時間で滴下し、さらに85℃で5時間撹拌を続けた。次に、分液ロートを用い得られた水層を除去し、ポリマーを含むトルエン層(ポリマー溶液)を得た。ポリマー溶液に対するメタノールの比が10となるメタノールと混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対する洗浄溶剤(メタノール:水=80:20)の比が2.5となる量の洗浄溶剤(メタノール:水=80:20)により湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記のメタノール水混合溶媒による洗浄操作を三回行った後、湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの比が2.5となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記メタノールによる洗浄操作を二回行った後、湿潤ポリフェニレンエーテルを、100℃、1mmHgで8時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。上述した方法によりポリフェニレンエーテルの平均水酸基数を測定し、ポリフェニレンエーテル由来の平均水酸基数が0.2個/分子未満であることを確認した。またH NMR測定を行い5~7ppmにスチリル基由来のプロトンピークを確認したことより、水酸基がスチリル基に変性されていると判断した。各分析結果を表2に示す。
【0111】
(実施例9)
実施例3と同様に酸化重合、銅抽出、液液分離及びロータリーエバポレーターによる濃縮を行い、さらに100℃、1mmHgで2時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。上記乾燥状態のポリフェニレンエーテルを変性反応の原料として用いた。
温度調節器、撹拌装置、冷却設備及び滴下ロートを備えた500mLの3つ口フラスコに、未変性ポリフェニレンエーテルを50g、テトラヒドロフラン150g、アリルブロマイド12.6g、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド0.8gを投入し、液温25℃で撹拌した。当該混合液に、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム4.2g/水100mL)を60分間で滴下し、さらに25℃で12時間撹拌を続けた。
次に、10%塩酸水溶液でフラスコ内容物を中和した後、ポリマー溶液に対するメタノールの比が10となるメタノールと混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対する洗浄溶剤(メタノール:水=80:20)の比が2.5となる量の洗浄溶剤(メタノール:水=80:20)により湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記のメタノール水混合溶媒による洗浄操作を三回行った後、湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの比が2.5となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記メタノールによる洗浄操作を二回行った後、ついで、湿潤ポリフェニレンエーテルを、100℃、1mmHgで8時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。上述した方法によりポリフェニレンエーテルの平均水酸基数を測定し、ポリフェニレンエーテル由来の平均水酸基数が0.2個/分子未満であることを確認した。またH NMR測定を行い3.5~6.5ppmにアリル基由来のプロトンピークを確認したことより、水酸基がアリル基に変性に変性されていると判断した。各分析結果を表2に示す。
【0112】
(実施例10)
実施例5と同様に酸化重合、銅抽出、液液分離及びロータリーエバポレーターによる濃縮を行い、さらに100℃、1mmHgで2時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。上記乾燥状態のポリフェニレンエーテルを変性反応の原料として用いた点以外は実施例7と同様にメタクリル変性を行った。上述した方法によりポリフェニレンエーテルの平均水酸基数を測定し、ポリフェニレンエーテル由来の平均水酸基数が0.2個/分子未満であることを確認した。
またH NMR測定を行いメタクリル基のオレフィン由来のプロトンピークを確認したことより、水酸基がメタクリル基に変性に変性されていると判断した。各分析結果を表2に示す。
【0113】
(実施例11)
実施例7に記載のポリフェニレンエーテル79質量部に対し、TAIC(日本化成社製)20質量部、有機過酸化物(パーブチルP、日油社製)1質量部をトルエンに添加し、攪拌、溶解させてワニスを得た(固形分濃度58質量%)。このワニスに、Lガラスクロス(旭シュエーベル社製、スタイル:2116)を含浸させた後、所定のスリットに通すことにより余分なワニスを掻き落とし、105℃の乾燥オーブンにて所定時間乾燥させ、トルエンを除去することにより、プリプレグを得た。このプリプレグを所定サイズに切り出し、そのプリプレグの質量と同サイズのガラスクロスの質量とを比較することで、プリプレグにおける熱硬化組成物の固形分の含有量を算出したところ、52質量%であった。
このプリプレグを所定枚数重ね、更にその重ね合わせたプリプレグの両面に銅箔(古川電気工業株式会社製、厚み35μm、GTS-MP箔)を重ね合わせた状態で、真空プレスを行うことにより、銅張積層板を得た。この真空プレスの工程では、先ず、室温から昇温速度2℃/分で加熱しながら圧力40kg/cmの条件とし、次いで、温度が200℃に達した後に、温度を200℃に維持したまま圧力40kg/cm及び時間60分間の条件を採用した。
次に、上記銅張積層板から、エッチングにより銅箔を除去することにより積層板(厚さ約0.5mm)を得た。
各分析結果を表3に示す。
【0114】
(実施例12)
実施例10に記載のポリフェニレンエーテルを原料に用いた他は実施例11と同様の方法で積層板を得た。
各分析結果を表3に示す。
【0115】
(比較例1)
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.5リットルのジャケット付き反応器に、予め調整した0.15gの酸化第一銅及び1.12gの47%臭化水素の混合物と、0.36gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、5.31gのジメチル-n-ブチルアミン、1.74gのジ-n-ブチルアミン、491.3gのトルエンを入れた。次いで、激しく攪拌しながら反応器へ1.05L/分の速度で空気をスパージャーより導入し始めると同時に酸素を導入し始めると同時に、この溶液に、98.7gの2,6-ジメチルフェノール、1.34gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、400.0gのトルエンの混合溶液を60分かけて添加した。重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。空気を導入し始めてから130分後、空気の通気をやめ、反応器内の窒素ガス置換を行った後、1.03gのハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を溶かした20%メタノール溶液を少量ずつ添加した。ハイドロキノンのメタノール溶液を添加してから30分後、1.61gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を水200gの水溶液として添加した。70℃に加温し、70℃にて2時間銅抽出を実施した。その後、静置分離により未変性ポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水相とに分離した。上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの比が10となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの比が2.5となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。ついで、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。
得られたポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
【0116】
(比較例2)
フェノール原料を1973gの2,6-ジメチルフェノール、26.8gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールとした他は実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0117】
(比較例3)
フェノール原料を1740gの2,6-ジメチルフェノール、260gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールとした他は実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0118】
(比較例4)
重合槽底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、0.5L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.57gの酸化第二銅、24.18gの47質量%臭化水素水溶液、11.00gのジ-t-ブチルエチレンジアミン、62.72gのジ-n-ブチルアミン、149.92gのブチルジメチルアミン、20.65kgのトルエン、及び3.12kgの2,6-ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ重合槽の内温が25℃になるまで撹拌した。次に、重合槽へ32.8NL/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入し始め、重合を開始した。乾燥空気を140分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合中は内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合混合物(重合液)は均一な溶液状態であった。
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の2.5質量%水溶液を10kg添加した。70℃で150分間、重合混合物を撹拌し、その後20分静置し、液-液分離により有機相と水相とを分離した。
分取した有機相はポリフェニレンエーテル13.1質量%を含むトルエン溶液を得た。上記溶液を、ジャケット付きの撹拌槽に入れ、ジャケットに120℃の熱媒を流して加温した。発生するトルエンを主成分とする蒸気をコンデンサーにより冷却して、トルエンを系外に抜出し、撹拌槽内のポリマー濃度が30質量%になるまで濃縮した。
次に、ポリマー溶液に対するメタノールの比が1.0となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの比が2.5となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。ついで、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。
得られたポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0119】
(比較例5)
重合槽底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、0.5L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.02gの酸化第二銅、29.876gの47質量%臭化水素水溶液、9.684gのジ-t-ブチルエチレンジアミン、46.88gのジ-nブチルアミン、122.28gのブチルジメチルアミン、17.53kgのトルエン、及び1.5kgの2,6-ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ重合槽の内温が25℃になるまで撹拌した。次に、重合槽へ32.8NL/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入すると同時に、プランジャーポンプより1.62kgの2,6-ジメチルフェノールと、3.12kgのトルエンからなる溶液とを30分かけて重合槽に添加した。乾燥空気を86分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合中は内温が40℃になるようにコントロールした。重合終結時の重合混合物(重合液)は均一な溶液状態にあった。比較例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0120】
(比較例6)
フェノール原料を2kgの2,6-ジメチルフェノールとし、空気を導入し始めてから117分後に空気の通気を止めた他は実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0121】
(比較例7)
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた4.1リットルのジャケット付き反応器に、0.88gの塩化第二銅2水和物、3.76gの35%塩酸、33.57gのN,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン、850gのn-ブタノール及び1982gのメタノール、630gの2,6-ジメチルフェノールを入れた。使用した溶剤の組成重量比はn-ブタノール:メタノール=30:70であった。次いで激しく攪拌しながら反応器へ410mL/分の速度で酸素をスパージャーより導入し始めると同時に、重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。重合液は次第にスラリーの様態を呈した。
酸素を導入し始めてから200分後、酸素含有ガスの通気をやめ、この重合混合物に4.56gのエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)を溶かした50%水溶液を添加し、次いで8.52gのハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を溶かした20%メタノール溶液を少量ずつ添加した。攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた4.1リットルのジャケット付き反応器に得られた重合液を移し、60℃で3時間反応させた。反応終了後、濾過して、メタノール洗浄液(b)と、洗浄されるポリフェニレンエーテル(a)との質量比(b/a)が4となる量の洗浄液(b)で3回洗浄し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで120℃で4時間、真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。得られたポリフェニレンエーテルの分析結果を表1に示す。
【0122】
(比較例8)
フェノール原料を2kgの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールとした他は実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
【0123】
(製造例1)
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.5リットルのジャケット付き反応器に、予め調整した0.092gの酸化第一銅及び0.69gの47%臭化水素の混合物と、0.22gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、3.27gのジメチル-n-ブチルアミン、1.07gのジ-n-ブチルアミン、714.65gのトルエン、65.03gの2,6-ジメチルフェノール、14.97gの2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを入れた。次いで、激しく攪拌しながら反応器へ0.84L/分の速度で空気をスパージャーより導入し始めると同時に、重合温度は20℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。空気を導入し始めてから150分後、空気の通気をやめ、反応器内の窒素ガス置換を行った後、この重合混合物に0.99gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(同仁化学研究所製試薬)を水160gの水溶液として添加した。次いで70℃に加温し、70℃にて2時間銅抽出を実施した。その後、静置分離により未変性ポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水相とに分離した。
得られた未変性ポリフェニレンエーテルを用い、実施例7と同様にして変性ポリフェニレンエーテルを得た。
各分析結果を表2に示す。
【0124】
(比較例10)
製造例1に記載のポリフェニレンエーテルを原料に用いた他は実施例11と同様の方法で積層板を得た。
各分析結果を表3に示す。
【0125】
(参考例9)
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.5リットルのジャケット付き反応器に、予め調整した0.15gの酸化第一銅及び1.12gの47%臭化水素の混合物と、0.36gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、5.31gのジメチル-n-ブチルアミン、1.74gのジ-n-ブチルアミン、891.3gのトルエン、50.0gの2,6-ジメチルフェノール、50.0gの2,5-ジメチルフェノールを入れた。次いで、激しく攪拌しながら反応器へ1.05L/分の速度で空気をスパージャーより導入し始めると同時に、重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。空気を導入し始めてから120分後、溶液全体が高粘度化が進行し、ゲルが発生した。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
表1、表2に示すとおり、比較例との比較により、実施例のポリフェニレンエーテルを用いることで、メチルエチルケトンへの溶剤溶解性を高めた様々な還元粘度のポリフェニレンエーテルを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明のポリフェニレンエーテルは、溶剤溶解性に優れるため、電子材料用途及び改質剤用途として産業上の利用価値がある。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位5~85mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位15~95mol%とを含み、
30℃において0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定された還元粘度(ηsp/c)が0.03~0.30dL/gである、
ことを特徴とするポリフェニレンエーテル。
【化1】
(式(1)中、R11は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R12は各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
【化2】
(式(2)中、R22は各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR22は両方が水素原子でなく、R21は下記式(3)で表される部分構造である。
【化3】
(式(3)中、R31は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R32は各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは各々独立に、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基である。))
【請求項2】
前記式(3)で表される部分構造がt-ブチル基である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項3】
平均水酸基数が2.5個/分子未満である、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項4】
平均水酸基数が0.2個/分子未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項5】
下記式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を有し、平均水酸基数が0.2個/分子未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。
【化4】
【化5】
【化6】
(式(6)中、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、前記飽和若しくは不飽和の炭化水素は炭素数1~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。)
【化7】
(式(7)中、Rは、炭素数1~10の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の2価の炭化水素は炭素数1~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよく、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の炭化水素は炭素数1~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。)
【請求項6】
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールから誘導された繰り返し単位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項7】
前記1価フェノールが、2-アリルフェノール又は2-メチル-6-アリルフェノールである、請求項6に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項8】
前記式(1)のフェノール、及び前記式(2)のフェノールの酸化重合を行う工程を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項9】
前記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、前記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対する、前記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の割合が30~95mol%である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル。