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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149616
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】振戦を抑制する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024125532
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2022141436の分割
【原出願日】2014-01-21
(31)【優先権主張番号】61/754,945
(32)【優先日】2013-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/786,549
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/815,919
(32)【優先日】2013-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/822,215
(32)【優先日】2013-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/857,248
(32)【優先日】2013-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515196735
【氏名又は名称】カラ ヘルス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CALA HEALTH,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンブルース,キャスリン,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】デルプ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】パデリ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ラジャセカール,ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン,ターヘル
(57)【要約】
【課題】振戦を抑制する装置を提供すること。
【解決手段】患者の振戦を治療するためのシステムであって、経皮ウェアラブル装置であり、決定部と、求心性神経経路を調節するように配置されるように構成された少なくとも1つの刺激電極を含む、第1の末梢神経効果器と、を備え、前記決定部は、プロセッサと、前記プロセッサによって実行されたときに前記装置に、前記患者の四肢の振戦を軽減するために前記第1の末梢神経効果器を介して第1求心性神経に電気刺激を与えるステップ、を行わせる命令を格納するメモリと、を備える、前記ウェアラブル装置と、前記ウェアラブル装置と通信し、前記ウェアラブル装置からデータを受信するように構成された通信装置であって、前記通信装置は、保存および/またはデータ処理のために前記データをリモートコンピューティングシステムに送信するようにさらに構成されている、前記通信装置と、を備える、システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の神経学的障害に関連する振戦を治療するためのシステムであって、
第1の末梢神経効果器を有する非埋め込み型のウェアラブル装置と、
決定部と、
前記神経学的障害に関連する前記振戦の1つ以上の特徴を特徴付けるために前記患者の四肢の動きを測定するように構成された少なくとも1つの生体力学センサと、を備え、
前記決定部は、プロセッサと、命令を格納するためのメモリとを備え、
前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記装置に、
第1の神経に第1の電気刺激を送達する前に、前記少なくとも1つの生体力学センサを用いて前記患者の四肢の動きを測定することにより、前記神経学的障害に関連する前記振戦の1つ以上の特徴を特徴付けること、を行わせる、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年1月21日に出願された米国特許仮出願第61/754,945号、2013年3月15日に出願された米国特許仮出願第61/786,549号、2013年4月25日に出願された米国特許仮出願第61/815,919号、2013年5月10日に出願された米国特許仮出願第61/822,215号、及び2013年7月23日に出願された米国特許仮出願第61/857,248号、の優先権を主張するものであり、これらのそれぞれは参照によってその全内容が本明細書に組み込まれている。
文献の引用
【0002】
本明細書中において言及される全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が参照により具体的且つ個別に示されて組み込まれる場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明の実施形態は、一般に、振戦を治療するシステム、装置、及び方法に関し、特に、末梢神経の刺激によって振戦を治療するシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
本態性振戦(ET)は、最もよくある運動障害であり、米国では推定1000万人の患者が侵されており、人口の高齢化に伴って増加傾向にある。ETの罹患率は年齢とともに高くなり、65歳超の人口では6.3%であるが、95歳超の人口では20%を超えるほどに増える。ETは、典型的には4~12Hzの、不随意の振動運動を特徴とする。ETは、声の動揺や頭及び手足の不要な動きを発生させる場合がある。手や前腕の振戦は、特に広まっており、書き物、タイピング、飲食などが困難になることから問題が大きい。休止時に起こるパーキンソン振戦と異なり、本態性振戦は姿勢振戦又は運動時振戦であり、姿勢振戦は、重力に逆らって手足を保持しようとすると誘発され、運動時振戦は運動時に誘発される。
【0005】
ETによる障害は様々であり、当惑から自立生活不能までの範囲があり、手や腕の動きが制御されないことで書き物や自力での食事などの作業ができない場合には自立生活ができないことになる。ETの罹患率が高く、多くのET患者に重い障害があるにもかかわらず、振戦に対処する治療の選択肢は不十分である。
【0006】
振戦の治療に使用される薬剤(例えばプロプラノロールやプリミドン)は、患者のうちのわずか60%において振戦の振幅を50%低減する効果しかないことがわかっている。これらの薬剤は、副作用が重い場合があり、多くのET患者に受け入れられない。別の治療法として、脳内に刺激器を外科的に埋め込む脳深部刺激療法(DBS)があり、これは、振戦の振幅を90%低減する効果がありうるが、非常に侵襲的な外科的処置であり、かなりのリスクがあることから、多くのET患者に受け入れられない。そこで、薬剤の副作用がなく脳手術のリスクがない、振戦を軽減する代替の治療法がET患者にとって大いに必要とされている。
【0007】
振戦は又、起立時振戦、多発性硬化症、又はパーキンソン病の患者にとっても重大な問題である。様々な神経障害には、脳卒中、アルコール依存症、アルコール離脱、末梢神経障害、ウィルソン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ギラン・バレー症候群、及び脆弱性X症候群、並びに、脳腫瘍、低血糖、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、インスリノーマ、通常の加齢、及び外傷性脳損傷等の振戦が含まれる。吃音や口ごもりも振戦の一形態である場合がある。これらの症状における振戦の潜在的病因はETの場合と異なる可能性があるが、これらの症状の幾つかに対する治療の選択肢も限られており、代替となる治療法が必要とされている。
【0008】
ETは、運動の発生と制御に関連する回路動態の異常によって引き起こされると考えられている。これまでの研究では、これらの回路動態は、冷却、局所鎮痛剤、又は振動によって一時的に変化させることが可能であることが示されてきた。以前の研究報告によれば、経皮電気神経刺激(TENS)を使用する電気刺激では振戦が改善されなかった(ムニョス(Munhoz)、2003年)。従って、ETに関連する回路動態を末梢神経刺激によって変化させることができ、結果としてET患者の振戦がかなり軽減されることが、本願発明者らの臨床研究において発見されたのは驚くべきことであった。
【0009】
本発明は、回路網動態の異常を修正する為に感覚神経に沿って中枢神経系まで信号を送信する新規な末梢刺激装置である。この刺激により、時間の経過とともに、異常な回路網における神経発火が正常化され、振戦が軽減される。DBSが脳を直接刺激するのに対し、本願発明者らの末梢刺激は、末梢を脳につなぐ感覚神経に沿って信号を送信することにより、異常な脳回路動態に影響を及ぼす。この方式は、非侵襲的であり、DBSの外科的リスク、及び関連する、認知、叙述、空間記憶、構音、運動、又は歩行の障害の問題の回避が期待される。末梢神経刺激は、異常な脳回路動態に対して位相散逸、打ち消し、又は不明瞭化を行うことにより、振戦の治療を効果的に行うことが可能である。脳に対する打ち消し、不明瞭化、又は訓練により、異常な脳回路動態を無視することは、従来のDBSのメカニズムに関する仮説に基づくものである。
【0010】
本願発明者らの方式と最も密接に関連する技術は、おそらくは経皮電気神経刺激(TENS)である。疼痛治療には高周波TENS(50~250Hz)がよく用いられるが、これは、大きな有髄末梢固有受容繊維(Aβ)を興奮させると、入ってくる疼痛信号がブロックされるという仮説によるものである。疼痛管理を目的としてTENSを用いて達成された臨床結果が一貫性に乏しいことからTENSを疼痛治療に用いることを疑問視する向きが多いが、表面電気刺激がAβニューロンを興奮させることには十分な裏付けがある。ET及びパーキンソン病を含む疾患では、異常である同じ脳回路に複数のAβニューロンが固有受容感覚情報を伝達する。このことから、本願発明者らは、提案されているいかなる動作メカニズムにも制限されることなく、神経刺激を用いてAβ神経を興奮させることにより振戦を改善することが可能であることを提案するに至った。ムニョス等(Munhoz et al.)による以前の研究では、TENS印加後に検査されたどの振戦パラメータにおいても有意の改善が全く見られなかった為、本願発明者らの上記提案は特に驚くべきものである。ムニョス等(Munhoz et al.)、「振戦、運動障害に対する経皮電気神経刺激の急性効果(Acute Effect of Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation on Tremor, Movement Disorders)」、18(2)、p.191-194(2003年)を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、振戦を治療するシステム、装置、及び方法に関し、特に、末梢神経の刺激によって振戦を治療するシステム、装置、及び方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態によっては、患者の振戦を軽減する方法が提供される。本方法は、第1の末梢神経効果器を、第1の末梢神経に対して相対的な第1の場所に配置するステップと、第1の末梢神経効果器から第1の末梢神経に第1の刺激を送達するステップと、患者の神経回路網動態を修正することにより、振戦の振幅を低減するステップと、を含む。
【0013】
実施形態によっては、配置するステップは、第1の末梢神経効果器を患者の皮膚の上に配置するステップを含み、第1の刺激は、皮膚表面に印加される電気刺激である。
【0014】
実施形態によっては、第1の刺激は、振幅が約0.1mAから約10mAであり、周波数が約10Hzから約5000Hzである。実施形態によっては、第1の刺激は、振幅が約15mA未満、約14mA未満、約13mA未満、約12mA未満、約11mA未満、約10mA未満、約9mA未満、約8mA未満、約7mA未満、約6mA未満、約5mA未満、約4mA未満、約3mA未満、約2mA未満、又は約1mA未満である。
【0015】
実施形態によっては、配置するステップは、第1の末梢神経効果器を患者にインプラントするステップを含み、第1の刺激は電気刺激である。
【0016】
実施形態によっては、インプラントするステップは、第1の末梢神経効果器を患者に注射するステップを含む。実施形態によっては、第1の刺激は、振幅が約3mA未満であり、周波数が約10Hzから約5000Hzである。実施形態によっては、第1の刺激は、振幅が約5mA未満、約4mA未満、約3mA未満、約2mA未満、又は約1mA未満である。
【0017】
実施形態によっては、末梢神経効果器は電源を含む。
【0018】
実施形態によっては、本方法は更に、外部に位置する電源から第1の末梢神経効果器に無線で給電するステップを含む。
【0019】
実施形態によっては、第1の刺激は振動触覚式である。
【0020】
実施形態によっては、第1の刺激は化学式である。
【0021】
実施形態によっては、本方法は更に、測定部により患者の手足の動きを感知して、動きデータを生成するステップと、動きデータから振戦情報を決定するステップと、を含む。
【0022】
実施形態によっては、送達するステップは、振戦情報に基づいて第1の刺激を送達するステップを含む。
【0023】
実施形態によっては、振戦情報は、患者の手足の休止位置からの最大偏移を含む。
【0024】
実施形態によっては、振戦情報は、患者の手足の休止位置を含む。
【0025】
実施形態によっては、振戦情報は、振戦の周波数、位相、及び振幅を含む。
【0026】
実施形態によっては、第1の刺激を送達するステップは、複数の刺激バーストを送達するステップを含み、刺激バースト間には可変時間遅延がある。
【0027】
実施形態によっては、本方法は更に、第2の末梢神経効果器を、第2の末梢神経に対して相対的な第2の場所に配置するステップと、第2の末梢神経効果器から第2の末梢神経に第2の刺激を送達するステップと、を含む。
【0028】
実施形態によっては、本方法は更に、患者の振戦の周期を決定するステップを含み、第2の刺激を送達するステップは、第2の刺激の送達を、第1の刺激の送達から、振戦の周期の所定の分数又は倍数だけオフセットするステップを含む。
【0029】
実施形態によっては、本方法は更に、患者の脳内の神経回路網の共時性の位相を散逸させるステップを含む。
【0030】
実施形態によっては、第1の場所と第2の場所は、隣接する指に位置する。
【0031】
実施形態によっては、第1の末梢神経と第2の末梢神経は、隣接する神経である。
【0032】
実施形態によっては、第1の末梢神経は正中神経であり、第2の末梢神経は尺骨神経又は橈骨神経である。
【0033】
実施形態によっては、第1の末梢神経と第2の末梢神経は、体部位局在的に隣接している。
【0034】
実施形態によっては、第1の刺激は、振幅が感覚閾値を下回る。
【0035】
実施形態によっては、第1の刺激は15Hz超である。
【0036】
実施形態によっては、第1の末梢神経は、患者の手足から固有受容情報を運搬する。
【0037】
実施形態によっては、本方法は更に、振戦の振幅を低減することに対する第1の刺激の有効性の持続時間を調べるステップと、有効性の持続時間が切れる前に第2の刺激を送達するステップと、を含む。
【0038】
実施形態によっては、有効性の持続時間を調べるステップは、所定の期間にわたって行われた複数の刺激印加を分析するステップを含む。
【0039】
実施形態によっては、有効性の持続時間を調べるステップは、患者の活動プロファイルを決定するステップを更に含む。
【0040】
実施形態によっては、有効性の持続時間を調べるステップは、振戦のプロファイルを決定するステップを更に含む。
【0041】
実施形態によっては、活動プロファイルは、カフェイン及びアルコールの消費量に関するデータを含む。
【0042】
実施形態によっては、本方法は更に、第1の末梢神経の上に導電経路エンハンサを配置するステップを含む。
【0043】
実施形態によっては、導電経路エンハンサは導電性タトゥである。
【0044】
実施形態によっては、導電経路エンハンサは、1つ以上の導電性ストリップを含む。
【0045】
実施形態によっては、第1の場所は、手首、前腕、手根管、指、及び上腕からなる群から選択される。
【0046】
実施形態によっては、患者の振戦を治療するシステムが提供される。本装置は、決定部と、末梢神経に電気刺激を送達するように適合された面接触部であって、決定部と通信する第1の末梢神経効果器を含む面接触部であって、第1の末梢神経効果器は少なくとも1つの電極を備える、面接触部と、を含んでよく、前記決定部は、処理部と、命令を記憶するメモリと、を備え、命令は、前記処理部によって実行されると、第1の末梢神経効果器から第1の末梢神経に第1の電気刺激を送達することを前記決定部に行わせ、電気刺激は、患者の神経回路網動態を修正することによって患者の手足の振戦を軽減するように、制御部によって構成される。
【0047】
実施形態によっては、第1の電気刺激は、振幅が約10mA未満であり、周波数が約10Hzから約5000Hzである。実施形態によっては、振幅は、約15mA未満、約14mA未満、約13mA未満、約12mA未満、約11mA未満、約10mA未満、約9mA未満、約8mA未満、約7mA未満、約6mA未満、約5mA未満、約4mA未満、約3mA未満、約2mA未満、又は約1mA未満である。
【0048】
実施形態によっては、接触面部は更に、決定部と通信する第2の末梢神経効果器を含み、第2の末梢神経効果器は少なくとも1つの電極を含み、メモリは命令を記憶し、命令は、処理部によって実行されると、第2の末梢神経効果器から患者の手足の第2の末梢神経に第2の電気刺激を送達することを決定部に更に行わせる。
【0049】
実施形態によっては、命令は、処理部によって実行されると、第1の電気刺激から、振戦の周期の所定の分数又は倍数だけ時間オフセットされた第2の電気刺激を送達することを決定部に行わせる。
【0050】
実施形態によっては、第1の末梢神経効果器は第1の指に配置されるように適合され、第2の末梢神経効果器は第2の指に配置されるように適合されている。
【0051】
実施形態によっては、第1の末梢神経効果器は、直線アレイとして並べられた複数の電極を含む。実施形態によっては、これらの複数の電極は、約1mmから約100mmの間隔を置いて配置されている。
【0052】
実施形態によっては、第1の末梢神経効果器は、2次元アレイとして並べられた複数の電極を含む。
【0053】
実施形態によっては、メモリは命令を記憶し、命令は、処理部によって実行されると、患者の手足上の第1の末梢神経効果器の位置に基づいて複数の電極のうちのサブセットを選択することを決定部に更に行わせ、複数の電極のうちのサブセットの選択は、第1の末梢神経効果器が手足上で配置又は再配置されるたびに行われる。
【0054】
実施形態によっては、複数の電極は、第1の軸に沿って約1mmから約100mmの間隔を置いて配置され、前記第1の軸に垂直な第2の軸に沿って約1mmから約100mmの間隔を置いて配置される。実施形態によっては、電極の幾つかは、互いに隣接してストリップを形成する。実施形態によっては、間隔は、約100mm未満、約90mm未満、約80mm未満、約70mm未満、約60mm未満、約50mm未満、約40mm未満、約30mm未満、約20mm未満、約10mm未満、約5mm未満、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、又は約1mm未満であってよい。
【0055】
実施形態によっては、本システムは更に、測定部を含み、メモリは命令を記憶し、命令は、処理部によって実行されると、測定部を使用して患者の手足の動きを測定して動きデータを生成することと、動きデータの分析に基づいて振戦の周波数及び大きさを決定することと、を前記決定部に更に行わせる。
【0056】
実施形態によっては、動きデータの分析は、動きデータのスペクトル電力の周波数分析を含む。
【0057】
実施形態によっては、周波数分析は、約4Hzから約12Hzの間に制限される。実施形態によっては、周波数分析は、概ね、関心対象の1つ以上の振戦の期待周波数レンジに制限される。
【0058】
実施形態によっては、動きデータの分析は、所定の時間長の動きデータに対して行われる。
【0059】
実施形態によっては、決定部は、動きデータに基づいて振戦位相情報を決定することと、振戦位相情報に基づいて第1の電気刺激を送達することと、を行うように更に適合されている。
【0060】
実施形態によっては、振戦位相情報はピーク振戦偏移を含み、決定部は、ピーク振戦偏移に対応する時刻に第1の電気刺激を送達するように更に適合されている。
【0061】
実施形態によっては、メモリは命令を記憶し、命令は、処理部によって実行されると、第1の電気刺激を複数の電気刺激バーストとして送達することを決定部に更に行わせ、電気刺激バースト間には可変時間遅延がある。
【0062】
実施形態によっては、メモリは命令を記憶し、命令は、処理部によって実行されると、決定された振戦の周波数に基づいて第1の電気刺激のパラメータを設定することを決定部に更に行わせる。
【0063】
実施形態によっては、メモリは命令を記憶し、命令は、処理部によって実行されると、決定された振戦の大きさに基づいて第1の電気刺激のパラメータを設定することを決定部に更に行わせる。
【0064】
実施形態によっては、メモリは命令を記憶し、命令は、処理部によって実行されると、決定された振戦の大きさを所定閾値と比較することを決定部に更に行わせ、第1の電気刺激は、決定された振戦の大きさが所定閾値を超えた場合に送達される。
【0065】
実施形態によっては、電極は、患者の皮膚を貫通して第1の電気刺激を送達するように適合されている。
【0066】
実施形態によっては、電極は、インプラントされて神経に電気刺激を送達するように適合されている。実施形態によっては、決定部は、第1の電気刺激のパラメータを調節する為の入力をユーザから受け入れるように適合されたユーザインタフェースを含む。
【0067】
実施形態によっては、メモリは更に、1つ以上の所定の刺激プロトコルのライブラリを記憶する。
【0068】
実施形態によっては、面接触部は決定部と一体化されている。
【0069】
実施形態によっては、面接触部と決定部は互いに別々であり、個別のハウジングを有する。
【0070】
実施形態によっては、決定部は、面接触部に電力を無線で供給するか、面接触部と通信するように構成されている。
【0071】
実施形態によっては、本システムは更に、決定部内に位置する測定部を含む。
【0072】
実施形態によっては、本システムは更に、面接触部内に位置する測定部を含む。
【0073】
実施形態によっては、決定部は、スマートフォン、タブレット、及びラップトップからなる群から選択されるコンピューティング装置である。
【0074】
実施形態によっては、本システムは更に、コンピューティング装置と通信するサーバを含み、サーバは、動きデータを、患者に送達された電気刺激の履歴とともにコンピューティング装置から受信するように構成されている。
【0075】
実施形態によっては、サーバは、受信された動きデータと、患者に送達された電気刺激の履歴とを、複数の患者からのデータを記憶しているデータベースに追加するようにプログラムされている。
【0076】
実施形態によっては、サーバは、受信された動きデータ、及び患者に送達された電気刺激の履歴を、データベースに記憶されているデータと比較することと、受信された動きデータ、及び患者に送達された電気刺激の履歴を、データベースに記憶されているデータと比較した結果に基づいて、修正された電気刺激プロトコルを決定することと、修正された電気刺激プロトコルをコンピューティング装置に送信することと、を行うようにプログラムされている。
【0077】
実施形態によっては、本電子装置はフレキシブルであり、フレキシブル基板上に配置されており、フレキシブル基板は、スリーブ、パッド、バンド、又は他のハウジングであってよい。
【0078】
実施形態によっては、患者の手足の振戦をモニタリングするシステムが提供される。本システムは、動きデータをキャプチャする慣性動き部と、電源と、無線送受信器と、を有する面接触部であって、患者の手足に装着されるように適合された面接触部と、面接触部と通信する処理部であって、面接触部から動きデータを受信するように構成された処理部と、を含んでよく、処理部は、動きデータの分析に基づいて、所定の期間にわたって振戦のシグネチャ及びプロファイルを決定するようにプログラムされている。
【0079】
実施形態によっては、処理部は携帯電話である。
【0080】
実施形態によっては、本システムは更に、携帯電話と通信するサーバを含み、サーバは携帯電話から動きデータを受信するように構成されている。
【0081】
実施形態によっては、処理部は更に、振戦の大きさを所定閾値と比較するようにプログラムされている。
【0082】
実施形態によっては、処理部は更に、振戦の大きさが所定閾値を超えた場合に警告を発するようにプログラムされている。
【0083】
実施形態によっては、所定閾値は、患者が調節できる。
【0084】
実施形態によっては、処理部は、活動データの入力を患者に促すようにプログラムされており、活動データは、活動の説明と、活動が行われた時刻とを含む。
【0085】
実施形態によっては、処理部は、活動データと、決定された振戦の周波数及び大きさとを相互に関連付けるようにプログラムされている。
【0086】
実施形態によっては、活動データは、カフェイン又はアルコールの消費量を含む。
【0087】
実施形態によっては、活動データは、薬剤の消費量を含む。
【0088】
本願発明者らは、薬剤の副作用がなく、脳手術のリスクもなく、振戦を効果的に軽減する末梢神経刺激装置及び方法を発明した。本願発明者らの方式は、安全であり、実施形態によっては非侵襲的であり、振戦の軽減に効果的である。実施形態によっては、本装置は、本態性振戦、パーキンソン振戦、及び他の振戦に関連付けられる神経回路動態を変化させることによって効果を発揮できる。本装置は、使いやすく、不快でなく、個々の患者にとって最良の治療を達成するように調節可能である。
【0089】
本発明の新規な特徴は、後述の特許請求の範囲において具体的に記載される。本発明の原理が利用されている例示的実施形態を説明する以下の詳細説明並びに添付図面を参照することにより、本発明の特徴及び利点がよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】振戦を軽減する為に見つけられた正中神経に刺激を送達する一実施形態を示す図である。
図2】(A)軽度、(B)中度、及び(C)重度のET患者における末梢神経刺激の一実施形態の治療効果を示す図である。この図は臨床研究の結果を示しており、ここでは、周波数が150Hz、300マイクロ秒、刺激オン時間が40分という刺激の構成によって、本態性振戦の患者の振戦の振幅が低減されている。この、ET患者がスパイラルを描く能力を比較することによって示された振戦の軽減は、刺激をオフにした直後に観察されたものである。
図3A】乃至
図3C図2の被験者Bのジャイロスコープデータから計算された手首の屈曲-伸展を示す図である。図3Aは、治療前の振戦を示す。図3Bは、治療直後の振戦の軽減を示す。図3Cは、治療後20分にわたって振戦の軽減が維持されていることを示す。
図4】中度のET患者において治療の効果がなかった例を示す図である。
図5】振戦を変化させるシステムを配置できる、患者上の様々な場所を示す図である。
図6】手に分布する主要な神経とそれらの遠位分岐部を示す図である。
図7A】乃至
図7D】振戦を変化させるシステムの様々な実施形態を示すブロック図である。
図8A】別々の指にある神経を興奮させる為に使用される電極対の一実施形態を示す図であり、ここでは両方の電極が当該の指に配置されている。
図8B】別々の指にある神経を興奮させる一代替手段を示す図であり、ここでは第2の電極が手首に配置されている。
図8C】別々の下層神経を標的とする為に手首に電極を配置することの一実施形態を示す図である。
図8D】様々な刺激部位を示す図である。
図9A】2本の指からの感覚入力を受信する脳領域同士の位相を散逸させる興奮スキームの一実施形態を示す図である。
図9B】4本の指からの感覚入力を受信する脳領域同士の位相を散逸させる興奮スキームの一実施形態を示す図である。
図10A】乃至
図10C】手の位置によって最適刺激のデューティサイクル及びタイミングが決まりうる一実施形態を示す図である。
図11】時間とともに周波数を変更する可変刺激の一実施形態を示す図である。
図12】刺激器が化学式であって、2つの神経変調化学物質を混合することにより化学式刺激を調整できる一実施形態を示す図である。
図13】ユーザ制御の様々な形態を示す図である。
図14A】乃至
図14L】振戦を変化させるシステムの様々な非侵襲的実施形態又は侵襲的実施形態を示す図である。図14Eは、刺激器が機械式である一実施形態を示す図である。図14Hは、腕時計のフォームファクタを有する装置の一実施形態を示す。図14Iは、図14Hに示された装置の裏面を示しており、ユーザと面接触する電極が示されている。図14Jは、装置ハウジングの腕時計フォームファクタの定位置にスナップ嵌入される使い捨て電極の面接触部の一実施形態を示す。図14Kは、自己位置合わせスナップ機能の一実施形態を示しており、この機能は、使い捨て電極の面接触部が腕時計フォームファクタの装置のハウジングにスナップ嵌入されることを可能にする。図15Lは、効果器が電気式である装置の一実施形態において電極を脊柱に沿って配置することの可能性を示す図である。
図15A】乃至
図15C】電極アレイの様々な実施形態を示す図である。
図16A】乃至
図16D】導電性インクのタトゥの様々な実施形態を示す図である。
図17】患者の活動及び振戦を測定する為に手又は手首に加速度計を配置する一実施形態を示す図である。
図18】6.5Hzを中心とする振戦がある患者についてのジャイロスコープの動きデータのスペクトル分析の一例を示す図である。
図19】姿勢振戦と運動振戦との相関関係を示す図である。
図20】刺激装置の一実施形態を示す図であり、刺激装置は、振戦の特性や刺激の履歴などのデータを記録し、これを、スマートフォンなどのデータポータル装置に送信することが可能であり、データポータル装置はこのデータをクラウドベースのサーバに送信する。
図21】ユーザへの通知又は刺激の改善に使用されるデータのモニタリング、統合、分析、及び表示を示すフローチャートである。
図22】フィードバック論理を示すフローチャートである。
図23】少なくとも一部分が皮下にインプラントされた電極を刺激器とする一実施形態を示す図である。
図24A】乃至
図24D】無線による給電及び制御を可能にするインプラント可能な装置及び皮膚表面装置の様々な実施形態を示す図である。
図25A】乃至
図25F】インプラント電気刺激用の様々な形状の電極を示す図である。
図26A】乃至
図26B】本装置とのインタラクションに使用される制御モジュールの2つの好ましい実施形態を示す図である。振戦装置用制御システムは、フィードバックを利用して刺激を修正する。このシステムは、活動及び振戦の測定に基づいて刺激が調節される閉ループである。
【発明を実施するための形態】
【0091】
用語の定義
【0092】
本明細書では、「刺激する」及び「刺激器」という用語は、一般に、標的領域の神経組織に信号、刺激、又はインパルスを送達すること(もの)を意味する。ニューロンの活動に対するそのような刺激の効果は「変調」と呼ばれるが、簡単の為に「刺激する」及び「変調する」という用語、並びにこれらの変形体は、本明細書では区別なく用いられる場合がある。神経組織への信号の送達の効果は、興奮性又は抑制性の場合があり、ニューロン活動の急性変化及び/又は長期変化を促進しうる。例えば、神経組織を「刺激」又は「変調」することの効果は、(a)ニューロンが活動電位を発火するようにニューロンを減極させる効果、(b)ニューロンを過分極させて活動電位を抑える効果、(c)ニューロンイオンの蓄えを使い切って活動電位の発火を抑える効果、(d)固有受容入力に合わせて変化させる効果、(e)筋収縮に影響を及ぼす効果、(f)神経伝達物質の解放又は取り込みの変化に作用する効果、又は(g)発火を抑える効果のうちの1つ以上の効果を含みうる。「固有受容」は、自分の各身体部位の相対位置がわかる感覚、又は自分の身体部位を動かす為に払っている労力がわかる感覚を意味する。固有受容は又、体性感覚、運動感覚、又は触覚と呼ばれる場合もある。「固有受容器」は、固有受容情報を神経系に供給する受容器であり、筋肉、関節、靱帯、及び腱における伸張受容器、並びに圧力、温度、光、及び音の受容器を含む。「効果器」は、本装置が標的神経を変調する為のメカニズムである。例えば、「効果器」は、神経の電気刺激又は固有受容の機械刺激であってよい。
【0093】
「電気刺激」は、標的領域の軟組織又は神経に電気信号を印加することを意味する。「振動触覚刺激」は、標的領域の軟組織及び神経への生体力学的負荷の印加などにより、固有受容器を興奮させることを意味する。「熱刺激」を印加することは、標的領域の冷却又は加熱を引き起こすことを意味する。「化学物質刺激」を印加することは、神経又は神経組織を化学物質、薬剤、又は医薬作用物質にさらして、それらにおけるニューロン活動を刺激することが可能な、そのような作用物質を送達することを意味する。これは、ニューロン内の神経伝達物質の解放又は取り込みに作用する局所麻酔剤、電気信号及び化学信号を通して情報を処理及び送信する電気的興奮性細胞を含む。「クラウド」は、分散している装置にまたがるデータの分析や表示、及びそれらのデータとのインタラクションのための、実時間プロトコルを使用するコンピュータ通信ネットワーク(例えばインターネット)を意味する。
【0094】
臨床研究
【0095】
本願発明者らは、末梢神経刺激を用いてETに関連する回路動態を変化させる方法を、臨床研究において評価した。図1に示されるように、手首の手のひら側に配置された表面電極102を使用して経皮電気神経刺激(TENS)を送達する装置100を使用して、正中神経104を、周波数150Hz、パルス幅300マイクロ秒の方形波で40分間刺激した。この実施形態では、ワイヤ106を使用して装置100を電極102に接続した。以前の研究報告(既掲のムニョス(Munhoz)、2003年)ではTENSを使用する末梢神経刺激で振戦が改善されなかった為、振戦が軽減されることがわかったのは驚くべきことであった。
【0096】
この電気刺激は、振戦の深刻度が軽度から重度までの被験者の振戦を効果的に軽減した。運動振戦の評価には、広く使用されている運動振戦の尺度である、ファーントロサマリンテストのアルキメデススパイラル描画作業を採用した。姿勢振戦の評価は、手の甲に装着されたジャイロスコープの角速度を測定することにより行った。
【0097】
図2では、3人の患者が被験者A、B、及びCとして表されており、軽度、中度、及び重度のETを有する被験者が刺激前及び刺激後に描いたスパイラルを示す。軽度、中度、及び重度の被験者における姿勢振戦の軽減は、それぞれ70%、78%、及び92%であった。姿勢振戦は電気刺激による軽減も可能であり、この効果は、処置が終了してから最長で45分維持された。図3A図3Cは、代表的な例として、図2の被験者Bのジャイロスコープデータから求められた、手首の屈曲-伸展に対する効果を示している。15分の処置で、振戦の振幅は0.9度(図3A)から0.2度(図3B)まで軽減された。この、振戦の振幅の低減は、40分の処置が終わっても維持された。処置後20分経ってから行われた測定では、振戦の振幅の低減が続いていて0.2度に維持されたことが示された(図3C)。振戦の軽減の様子は、被験者間で様々であった。図4に示されるように、何人かの被験者は治療の効果がなかった。
【0098】
電気刺激の印加によってET患者の振戦を軽減することにより、めざましい治療成果が達成された。この刺激は、処置中、処置直後、並びに処置後最長20分において振戦を軽減することができた。本システムの慢性使用を可能にし、ET患者が治療を生活に組み込むことを可能にする為には、本システムを長期間にわたって使いやすく効果的であるようにすることが重要である。この目標は、以下のイノベーション及び装置によって達成される。
【0099】
装置の配置
【0100】
本装置は、回路網動態の異常を修正する為に感覚神経を刺激する。この刺激により、時間の経過とともに、異常な回路網における神経発火が正常化され、振戦が軽減される。刺激される神経は、優先的には、振戦の影響を受ける手足からの感覚固有受容情報を搬送する神経である。神経は直接変調されてよく、これは、例えば、固有受容情報を搬送する神経に沿うか隣接するどこかを電気刺激することにより行われてよい。或いは、標的神経は間接的に変調されてよく、これは、例えば、標的神経を刺激する固有受容器を興奮させることによって行われてよい。図5は、手足又は声帯又は喉頭から固有受容情報を搬送する神経へのアクセスポイントを示す。このようなアクセスポイントは、指(510)、手(520)、手首(530)、前腕(540)、肘(550)、上腕(560)、肩(570)、脊柱(580)又は首(590)、足、足首、下腿、膝、又は大腿などであってよく、これらに限定されない。固有受容に作用する神経としては、例えば、手、腕、又は脊髄野の中の、或いは筋肉に沿う、或いは関節内の正中神経、尺骨神経、橈骨神経などがある。これらの領域が標的とする神経は、腕神経叢、内側神経、橈骨神経、及び尺骨、皮膚、又は関節の空間知覚神経を含んでよい。これらの領域は又、肩の筋肉、腕の筋肉、及び前腕、手、又は指の筋肉を含む筋肉組織を標的としてよい。肩の筋肉は、非限定的な例として、三角筋、大円筋、及び棘上筋を含んでよい。腕の筋肉は、烏口腕筋及び上腕三頭筋を含んでよい。前腕の筋肉は、長橈側手根伸筋、長母指外転筋、尺側手根伸筋、及び尺側手根屈筋を含んでよい。
【0101】
本装置は、好ましい場所において、ユーザの振戦性の上肢の皮膚表面に面接触し、腕神経叢、内側神経、橈骨神経、及び尺骨神経、又は上肢の皮膚上又は関節内の筋肉組織における興奮性の構造物からなる群から選択される神経束に神経変調信号を印加する。
【0102】
固有受容器は、例えば、筋肉、腱、関節、皮膚、及び内耳の中に見られる。直接変調の対象となる神経の候補を決定する為の基準として、軽減されるべき振戦の場所、皮膚表面に対する神経の近接度、固有受容繊維の密度が高いこと、興奮性の疼痛受容器又は筋肉からの距離などがある。前腕において標的となる正中神経、及び肘において標的となる尺骨神経は、これらの基準により上位にランクされる。間接的な固有受容変調の場所の候補を決定する基準として、固有受容器の密度及びタイプがある。パチーニ小体は、触覚に関する情報を提供する。筋紡錘は、筋肉伸張によって機械刺激依存イオンチャネルが開いたときに筋紡錘の求心性神経における活動電位をトリガすることにより、筋肉長の変化に関する情報を提供する。ゴルジ腱紡錘は、筋緊張に関する情報を提供する。これらの構造物を刺激することによっても、回路動態を変化させ、振戦を軽減することが可能である。
【0103】
本装置は、異常な脳回路にシナプスを形成する特定の神経を標的とする。このシナプスは、直接的であってもよく、複数の中継シナプスを経由するものであってもよい。図6は、オリーブ小脳回路、即ち、ETの形で異常が起きている回路に固有受容情報を送信する代表的な神経の組を示す。これらの神経は、正中神経(620)及び尺骨神経(630)の遠位分岐部及び主分岐部(610)、並びに橈骨神経(650)の遠位分岐部及び主分岐部(640)を含む。好ましい実施形態では、本装置は、手、手首、及び前腕からの固有受容情報を入力する神経を標的とする。
【0104】
別の実施形態では、本明細書に記載の任意の要素の組み合わせを用いて、声の振戦に関連する神経に作用させることが可能であり、そのような神経として、上喉頭神経又は反回神経等の迷走神経の分岐部が挙げられ、これに限定されない。
【0105】
装置の構成要素:様々な実施形態
【0106】
図7A~7Dは、振戦を変化させるシステム700の幾つかの実施形態を示す概念図である。システム700は、ハウジング720と、1つ以上の効果器730と、効果器730と電気的に連通している1つ以上の制御盤740と、1つ以上の電源750と、を含む。ハウジング720は、実施形態によっては、面接触部760を含んでよい。面接触部は、効果器を患者に結合することを容易にする。例えば、面接触部は、本装置と患者の神経との間に物理的、電気的、化学的、熱的、又は磁気的な接続を与えることが可能である。ハウジング720は、実施形態によっては、振戦検出用センサ780、メモリ770、ディスプレイ790、及び処理部797を含んでよい。本実施形態の本装置は、効果器と結合されて計算及び他の構成要素の制御を実施することが可能な処理部797を含んでよい。本装置は又、処理部797又はメモリ770に格納されて、あらかじめロードされる変調プロトコルを収容することが可能なデジタルライブラリを含んでもよい。本装置は、処理部797と通信する制御盤モジュール740を含んでよく、制御盤モジュール740はユーザが刺激パラメータを制御する為に使用することが可能である。ユーザは、制御盤から本装置の動作を調節することが可能である。例えば、制御盤は、本装置をオンにしたり、本装置をオフにしたり、効果器のパラメータ(強度等)を調節したりするように構成されてよい。本装置は、処理部797に接続されたセンサ780を含んでよく、センサ780は、あらかじめ定義されたパラメータの情報を検出し、前記パラメータ情報を処理部797に送信することが可能である。本装置は、センサ780及び処理部797に接続されたデータ記憶部770を含んでよく、処理部には電源750が接続されてよい。
【0107】
本装置は更に、ユーザと通信して装置の状況を報告する為のディスプレイ又はインジケータ790を含んでよい。インジケータは、発光ダイオード(LED)又は何らかの可視インジケータであることが好ましいが、音声インジケータであってもよい。情報は、バッテリ電力や刺激状況を含んでよい。
【0108】
本装置は、効果器730がなくてもよい。本装置は、治療用ではない診断用の装置であってよい。好ましい実施形態では、面接触部704は、振戦の時間推移を追跡する為に、振戦がある手足に装着される。本装置のユーザにフィードバックを提供することにより、ユーザは自身の振戦を自覚することが可能になり、時間推移をモニタリングすることが可能になる。治療用刺激がない場合でも、このバイオフィードバックは、個人が自身の振戦を軽減することに役立ちうる場合がある。或いは、本装置は、センサ780がなくてもよい。本装置は、診断用ではない治療用の装置であってよい。
【0109】
本装置を小型且つシンプルにする為に、これらの構成要素の多くを別のユニットに収容してよい。処理、制御、及び場合によっては感知が、離れた場所にある決定部702で実施されてよく、これによって、患者との治療用接触を行う面接触部704は小型でシンプルでフレキシブルになり、様々な用途に使用できる(図7B~7D)。この決定部702は、本用途向けに新しく設計された装置であってよく、或いは、スマートフォンなどの既存技術に統合されてもよい。これにより、本システムは、コスト及びサイズが低減された、ロバストなハンドヘルドフォームファクタとなることが可能になる。
【0110】
図7Bに示された好ましい一実施形態では、面接触部704はインプラントであり、効果器730は神経の電気刺激を提供し、命令セット及び電力は外部装置から無線で送出される。或いは、インプラントの面接触部704は、オンボードバッテリにより給電されてよい。或いは、インプラントの面接触部704は、神経電気記録(ENG)又は筋電図検査(EMG)によって検出される振戦又は神経筋活動の直接検出の為のセンサ780を収容してよい。
【0111】
図7Cに示された好ましい実施形態では、面接触部704は体表に装着され、効果器730は下層神経に電気刺激を与えるか、近傍の固有受容器に振動触覚刺激を与える。センサ780は、加速度計、ジャイロスコープ、及び磁気計を含む動きセンサを含んでよい。
【0112】
図7Dに示された好ましい実施形態では、動き、温度等を感知する1つ以上のセンサ部780が身体の様々な場所に装着されてよい。効果器730と決定部702は、身体の、センサ780と異なる場所に装着された独立したエンティティである。このことは、振戦が容易又は正確に測定されない場所で神経の刺激が行われる場合に有効である。例えば、手の振戦を軽減する為に刺激装置700を手首の下面に配置することは非常に効果的である。しかしながら、加速度計又はジャイロスコープを使用して手の振戦を手首で測定することは逆に困難である可能性がある。これに対し、センサ部を手袋内の手のひら又は手の甲に独立して配置するか、指の1本に指輪のように装着すると、手の振戦に対する感度が向上する。これは、センサ部が手首の関節から離れて配置される為である。
【0113】
効果器:概要
【0114】
効果器は、刺激が与えられる上肢領域の神経組織を変調するように動作可能である。例えば、効果器は、神経内のニューロン信号を修正すること、及び/又は、固有受容情報の流れ又は内容を修正することが可能である。効果器は、経皮的又は皮下的に作用することが可能である。神経に影響を及ぼす為に1つ以上の効果器が使用されてよい。実施形態によっては、効果器は神経に対して興奮性であってよい。別の実施形態では、効果器は神経に対して抑制性であってよい。実施形態によっては、治療のうちのある部分では神経を興奮させ、治療の別の部分では神経を抑制させることに、本システムを使用してよい。
【0115】
効果器:電気刺激
【0116】
実施形態によっては、効果器は電気刺激器であってよい。電気式効果器は、所望の場所に電気刺激を送達することが可能な電極、電極対、電極アレイ、又は何らかの装置を含んでよい。電気刺激は、経皮刺激又は皮下刺激であってよい。例えば、経皮電気刺激は、皮膚表面に配置された電極によって達成されてよく、皮下電気刺激は、神経のそばに配置されたインプラント電極によって達成されてよい。
【0117】
刺激パラメータは、自動的に調節されるか、ユーザによって制御されてよい。刺激パラメータは、オン/オフ、継続時間、強度、パルスレート、パルス幅、波形形状、及びパルスのオンオフの傾斜を含んでよい。好ましい一実施形態では、パルスレートは約50~5000Hzであってよく、好ましい周波数は約50~300Hz、又は150Hzである。好ましいパルス幅は50~500μs(マイクロ秒)の範囲であってよく、好ましいパルス幅は約300μsであってよい。電気刺激の強度は0mAから500mAの範囲で様々であってよく、好ましい電流は約1~6mAであってよい。これらの好ましい設定は、上述の臨床研究から導出されており、これによって、振戦の価値ある軽減が一定期間持続した。なお、電気刺激は、異なる患者及び異なる電気刺激方法のそれぞれにおいて調節可能であり、従って、これらの好ましい設定は非限定的な例である。強度調節は、0.1~1.0mA刻みであってよい。好ましい一実施形態では、刺激は約10分から約1時間続いてよい。
【0118】
好ましい一実施形態では、電極は、内側神経、橈骨神経、及び尺骨神経を含んでよい1つ以上の神経の上方の皮膚表面においてユーザと接触してよい。電極は、1つの電極が近位にあり(肘により近く)別の電極が遠位にある(手により近い)電極対が存在する構成にあってよい。これらの電極は、対向する電極と連通していてよい。電極対は、電流が通る正電荷又は負電荷の極性を有してよい。
【0119】
効果器は、それぞれが正極性又は負極性を有する2つの電極を含んでよく、或いは、電極アレイが複数の電極対を含んでよく、その各対は独自にプログラムされているか、他の電極対との関係に依存してプログラムされている。一例として、プログラムは、異なる時刻に異なる神経を巡回的に刺激することを可能にしてよく、例えば、まず尺骨神経、次に正中神経、次に橈骨神経を刺激したり、これらを任意に組み合わせて刺激したりすることを可能にしてよい。
【0120】
電気刺激は、固有受容入力と干渉すること、又は補償的筋収縮を引き起こすこと、或いは両方法を組み合わせることにより、振戦を抑制するように設計されてよい。電極は、上肢の皮膚表面に面接触する刺激器を通して電気信号を伝導させることが可能な任意の等価材料で置き換えられてよい。電極は、制御盤740に接続されていてよく、電極が配置されている領域及びその領域を直接取り囲む領域にある軟組織及び神経に電極経由で電気刺激を印加することが可能である。本実施形態の別の変形形態では、複数の標的領域の組み合わせに対して複数の電極が配置されてよい。
【0121】
処理部に接続され処理部によって制御される関数発生器が、電気刺激パラメータを変調するように動作してよい。関数発生器は、直接デジタル合成技術を利用して、振幅の表に記載可能な任意の波形を発生させる任意の波形発生器であることが好ましい。パラメータは、周波数、強度、パルス幅又はパルス継続時間、及び全体継続時間を含み、これらに限定されない群から選択される。出力は、最大出力電圧によって設定される限界電力を有することが好ましい。好ましい一実施形態では、デジタル記憶されたプロトコルが様々な刺激パラメータを周期的に繰り返すことにより、患者の順化を防ぐ。電気刺激の変化は、関数発生器によって達成される。
【0122】
刺激の最適化:位相散逸
【0123】
好ましい一実施形態では、刺激は、脳内の共時性の位相を散逸させるように設計される。異常な回路の位相を散逸させる概念は、回路網が異常なリズムに陥ろうとする傾向が神経の再訓練によって低減されることを示した最近の研究に基づく。興味深いことに、運動障害は、脳回路における周期的同期発火の異常に関連することが多い。パーキンソン病の場合、この回路は脳幹神経節内にある。ETの場合、この回路はオリーブ小脳回路である。これらの異常な振動が振戦を駆動すると考えられており、このことは、手や前腕の筋肉において観察される振戦が脳内の異常なリズム放電と同期していることを示した多くの研究によって支持される。最近のDBS研究が示すところによれば、隣接する電極対同士に対する低電圧の位相シフトされたバースト(協調リセットと呼ばれる)によって、異常な脳回路網における同期を低減することが可能であり、これによってパーキンソン振戦が軽減される。耳鳴りの治療に協調リセット理論が適用されることは、神経回路網の再訓練にシナプス興奮を用いる概念を支持する。
【0124】
本明細書に開示の装置は、高周波TENS刺激にまさる幾つかの利点を提供し、そのような利点として、使用電力の低減(これはバッテリ寿命の延長、運動の漸増及び収縮による不快さの軽減、感覚的興奮による不快さの軽減につながる)、(枯渇させるか他のメカニズムにより)隣接する神経における活動時の発火をあまり抑制しないこと、並びに、神経回路動態の訓練又は訓練維持の為には本装置を間欠的に使用するだけでいいように、より長く続く効果を維持することが挙げられる。本装置は、神経個体群の同期を低減する為に副次個体群を標的とするような方法で一連の神経を刺激する。例えば、これは、手の別々の指を刺激することにより達成可能である。図8Aは、本装置の好ましい一実施形態を示す図であり、指に装着されたアノード(810)及びカソード(820)の電極対が、各指の固有受容神経(正中神経、橈骨神経、及び尺骨神経)の分岐部を興奮させる為に使用される。この、アノード(遠位)とカソード(近位)の並びは、脳に向かう神経パルスを引き起こすことを意図されている。各指に対する固有の刺激パターンにより、固有の信号が脳内の特定のニューロン副次個体群に送信される。これは、脳の体部位局在性によるものであり、互いに隣接又は近接する異なる身体部位からの信号は、脳内で互いに近接する場所にシナプスを形成する。一代替実施形態では、感覚インパルスが脳に向かって通過すること(逆行性衝突)を抑える為に、アノードとカソードの位置を逆にしてよい。図8Bは、一代替構成を示しており、ここでは、指に単一電極(830)だけが装着されていて、第2の電極(840)は手首に配置されている。当業者であれば当然のことながら、指は1つの可能な一連の標的を表しているに過ぎず、別の場所が、標的となる互いに隣接するニューロン副次個体群として同様に使用されてよい。図8Cに示された代替実施形態では、電極は手首上の異なる場所に配置されており、それぞれ正中神経(850)、尺骨神経(860)、橈骨神経(870)を標的としている。当業者であれば当然のことながら、入力は、異常な脳回路に入る神経の別の場所又は分岐部に配置されてもよい。この場所は、振戦がある手足と同じ側にあってもよく反対側にあってもよい。この場所は、皮膚表面にあってもよく、皮膚を横断してもよく、インプラントされてもよい。図8Dは、例えば図9に示されるように、振戦周期Tの所定の分数又は倍数だけ遅延又はオフセットされた刺激の対象としうる様々な刺激部位を示す。
【0125】
本装置は、異常な回路網に対して位相散逸、打ち消し、又は不明瞭化を行うように設計された刺激スキームを使用する。図9Aは、2つの部位からの感覚入力を受信する脳領域同士の位相を散逸させる興奮スキームの例を示す概念図である。例えば、これら2つの部位は、図8A図8Dに示された指のうちの2本であってよい。部位2での刺激は、部位1の刺激後、時間T/2だけ遅延され、Tはネイティブ振戦の周期である。例えば、振戦の周波数が8Hzであれば、周期は125msであり、部位2の刺激は62.5msだけ遅延されることになる。刺激はニューロンの位相をリセットするように設計され、これは高周波刺激(100Hz超)又はDCパルスを用いて実施されてよい。図9Bは、4つの部位からの感覚入力を受信する脳領域同士の位相を散逸させる興奮スキームの例を示す概念図であり、連続する部位間の遅延はT/4である。別の実施形態では、刺激の、タイミング以外のパラメータ、例えば、周波数又はパルス幅、或いはこれらの組み合わせが場所によって可変である。このように可変であることは、異常な回路網動態に対して位相散逸、打ち消し、又は不明瞭化を行うことによって、脳の再訓練を行うように同様に意図されている。更に別の実施形態では、刺激は、単一の場所でパラメータを時間の経過とともに変化させて実施してもよい。例えば、刺激の周波数を数秒おきに変化させたり、刺激をオンオフしたりしてよい。更に別の実施形態では、刺激は一定であり、単一場所で実施される。これらのうちの好ましい実施形態では、場所は、手首に近い正中神経である。
【0126】
刺激の最適化:下位感覚
【0127】
刺激の強度を感覚閾値より低くすると、末梢神経刺激に関連しうる不快さ(うずき、しびれ、痛み)を避けられる。電極の厳密な位置、サイズ、及び表面接触は、刺激レベル、及び刺激を受ける解剖学的構造に大きな影響がある為、患者ごとに、更にはセッションごとに感覚閾値を較正することが必要となる場合がある。この較正は、ユーザが刺激パラメータを手動で設定するか、他の方法でそれぞれの感覚閾値を指定することによって行われてよい。別の可能なメカニズムでは、本装置が刺激パラメータの範囲全体を自動的に掃引し、患者が最も不快でないパラメータ値のセットを選択する。別の可能なメカニズムでは、あらかじめ選択されているパラメータ値のセットの中から、効果的であって不快でなかった刺激を患者が選択する。実施形態によっては、刺激による不快さを軽減して患者が許容する感覚閾値を上げるために、電極パッドはリドカインなどの局所鎮痛剤を含んでよい。実施形態によっては、数日間、数週間、又は数か月にも及びうる、電極パッドが装着される期間の痛みを軽減する為に、局所鎮痛剤を、制御された放出編成で送達することが可能である。そのような方法は、より高い刺激強度、及び/又は局所鎮痛剤との相乗効果により、より不快でない、或いは、より治療効果が高いことが可能であり、これによって、患者によっては振戦の軽減が可能である。
【0128】
刺激の最適化:高周波式
【0129】
代替又は追加で、刺激波形は周波数が非常に高くてよく、典型的にはkHz以上であってよく、これによってユーザは刺激を感じないか、ほとんど感じない。周波数が非常に高い刺激は、伝導障害を起こすと考えられている。しかしながら、その障害の前には、神経の強い脱分極を含む開始応答がある。周波数が非常に高い刺激を、患者にとっての不快さを引き起こすことなく、効果的に実施する為には、この開始応答を排除することが好ましいということになる。これは、最初の刺激の間に神経を冷却することにより、行うことが可能である。運動神経は一般に約15Hz以下の刺激によって興奮するが、感覚神経は一般に約50Hz以上の刺激によって興奮する。実施形態によっては、筋収縮を引き起こさないようにする為に、運動ニューロン刺激の15Hzの閾値を明確に超えて刺激することが望ましい場合がある。
【0130】
刺激の最適化:トリガ式
【0131】
代替又は追加で、振戦の位相に応じて刺激をトリガすることにより、有効性を高めることが可能である。そのような刺激の目標は、運動単位のリズム同調を壊すことである。より効果的な治療であれば、より低レベルの刺激を用いて同等の治療効果を、より小さい不快さで達成することが可能になると考えられる。本態性振戦は、本質的には、共振回路におけるフィードバックの問題である。振戦からずれた位相のタイミングで刺激を実施することにより、振戦の軽減が可能であり、これは、回路動態を変化させることにより、例えば、フィードバックループの利得をシフトすることにより行われる。
【0132】
図10Bに示されるように、高周波刺激のバーストは、手首の屈曲又は伸展が最大になるタイミング(図10A)で発生させてよい。例(図10C)では、バーストはランダム位相にシフトされている。手の位置(図10A)によって刺激の最適なデューティサイクル及びタイミングが決定されてよく、例えば、(図10B)振戦の偏移が最大のときに共振を外して刺激するように決定されたり、(図10C)可変時間遅延バーストを用いて振戦との共振を避けるように決定されたりしてよい。
【0133】
代替又は追加で、刺激は無秩序又は可変であってよい。無秩序、ランダム、又は可変の刺激の目標は、順化を防ぎ、回路の共振を低減することである。例えば、これは、図11に示されるように、刺激の周波数を時間の経過とともに変化させること、及び/又は、より高い周波数成分とより低い周波数成分とを重畳することによって実施されてよい。
【0134】
代替又は追加で、刺激は、高周波の交流電流であってよい。これは、活動電位が軸索に沿って伝搬する際にその活動電位をブロックすることが示されており、回路動態を調節することが可能である。
【0135】
実施形態によっては、最適な刺激パラメータを決定するために、上述の刺激パラメータを所定の順序に従って循環させてよい。実施形態によっては、有効性を失いつつある特定の刺激パラメータセットがないかどうかを判定する為に、刺激パラメータの有効性を時間の経過に対して監視することが可能である。実施形態によっては、特定の刺激パラメータセットの有効性が所定量だけ低下した場合に、刺激パラメータを変化させるか、所定の順序に従って循環させることが可能である。例えば、振戦の位相に応じて刺激がトリガされている場合に、刺激を、ランダム又は可変の時間遅延で送達することが可能であり、或いは、刺激が、ある振幅及び/又は周波数のセットを用いていた場合に、刺激を無秩序、ランダム、又は可変のモダリティに変更して順化を防ぐか中断させることが可能である。実施形態によっては、所定のルーチンに従ってランダム又は可変のタイプの刺激パラメータを利用することが可能であり、所定のルーチンは、例えば、所定の時間数を毎日、或いは、所定の日数を毎週、或いは、時刻を含む、他の何らかの所定の間隔である。
【0136】
効果器:振動触覚刺激式
【0137】
効果器は、振動触覚又は触覚を興奮させるなどの手段により、固有受容器を機械式に興奮させることが可能である。この機械刺激としては、力、振動、及び/又は運動などがありうる。効果器は、ゴルジ腱器官(GTO)又はパチーニ小体を興奮させることにより標的神経内に活動電位を誘起する。機械式効果器は、例えば、小型モータ、圧電性物質、質量物と、振動刺激を身体に印加するように質量物を動かす効果器とからなる1つ以上の振動触覚部、シャフトを回転させると振動刺激が生成されるようにシャフトに取り付けられた偏心質量物、又は、超音波モータなどであってよいが、磁気レオロジ流体(MRF)効果器や電気活性ポリマー(EAP)効果器であってもよい。
【0138】
振動刺激は250Hzが最適であり、これは、(ラメラ小体とも呼ばれる)パチーニ小体の最適感度に対応する。パチーニ小体は、接触及び振動を感知する、皮膚内の神経終末である。小体が変形すると、感圧ナトリウムイオンチャネルが開いて活動電位が発生する。或いは、振動は、指内にあって軽い接触に敏感な(触覚小体とも呼ばれる)マイスナー小体を興奮させる為に50Hzを下回ってよい。
【0139】
この機械式刺激器は、幾つかの方法で振戦を軽減するように動作可能である。1つの方法は、振戦がある筋肉から送信された固有受容駆動信号を不明瞭化又は修正する固有受容信号を脳に送信することであってよい。別の方法は、インピーダンスを制御することであってよい。関節インピーダンスは、共収縮する筋肉を経皮神経刺激によって変化させることにより、筋肉の剛性に作用し、結果として筋肉の収縮に作用することが可能である。別の方法は、振戦の収縮に対抗する補償的な筋収縮を神経刺激によって発生させることであってよい。刺激器は、例えば伸縮バンド又はベルクロ(登録商標)バンドによって、皮膚表面にしっかりと貼り付けられることが好ましい。
【0140】
効果器:化学物質式、熱式、その他
【0141】
本明細書に記載の各例では主に、刺激を電気刺激又は振動触覚刺激として述べてきた。しかしながら、患者の心地よさ、可搬性、安全性、又は費用の観点から大きな利点を提供しうる他の効果器を使用して刺激が実施されてもよい。
【0142】
本実施形態の別の変形形態では、効果器は、神経発火閾値を上げ下げする神経変調化学物質式であってよい。本発明で用いられる化学物質は、局所麻酔剤であってよく、これには「カイン」類が含まれ、これに限定されない。麻酔剤の「カイン」類としては、ベンゾカイン、 ブピバカイン、ブタカイン、カルビソカイン、クロロプロカイン、シプロカイン、ジブカイン、エチドカイン、ヘプタカイン、レボブピバカイン、リドカイン、リドカイン塩酸塩、メピバカイン、メソカイン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、ロピバカイン、テトラカインなどがあってよく、これらに限定されない。他の化学物質類としては、メントール類の化学物質、又は四川胡椒の実からとれるα-ヒドロキシサンショオール、或いはカプサイシンがあってよく、これらは全て、末梢感覚神経に影響を及ぼすことが知られている。
【0143】
図12は、パッチを通して化学物質刺激を経皮送達することが可能であるか、微量注射により送達されることが可能な化学物質刺激器を示す。事前にロードされるプロトコルは、好ましくは、1つ以上の化学物質の所定の組成であってよい。本発明における局所麻酔剤は、他の症状に関して知られているものであってよく、刺激用の推奨投与量は、他の症状の治療に関して試験されて承認されたものである。例えば、局所麻酔剤のリドカインは、2~10重量%で投与されてよい。或いは、リドカインは、他の麻酔剤と一緒に投与されてよい。図12に見られるように、2つの神経変調化学物質が混合されて、所望の組成が与えられる。化学物質刺激器は、リドカインを2.5重量%、プリロカインを2.5重量%含む組成で投与されてよい。或いは、化学物質刺激器は、リドカインを0.1~5重量%、プリロカインを0.1~5重量%含む組成で投与されてよい。
【0144】
化学物質刺激器は、四川胡椒の実からとれるα-ヒドロキシサンショオールであってよい。α-ヒドロキシサンショオールは、賦形剤又はキャリアに含まれてよい。賦形剤は、ジェル、クリーム、オイルなどの液体であってよい。本送達方法が経皮パッチの場合、化学物質の剤型はクリーム又はジェルであることが好ましい場合がある。組成は、ユーザが(図7の)制御盤モジュール740で選択してよい。本送達方法が微量注射の場合、剤型は溶液であることが好ましい場合がある。
【0145】
実施形態によっては、効果器は、冷却又は加熱を引き起こす(図7の)温度効果器732であってよい。この効果器は、神経を直接冷却するか、隣接する、腕の筋肉、皮膚、又は他の構成要素を間接的に冷却することによって、神経発火を変調することが可能である。温度効果器は、例えば、圧電物質(例えば、ペルチェ冷却タイル)、循環体液、圧縮された膨張性ガス、冷却された、又は温められた固体材料、又は蒸発性材料を含んでよい。冷却式効果器の一例は、参照によって本明細書に組み込まれている米国特許公開第2010/0107657号に開示されているようであってよい。加熱又は冷却は、皮膚表面に粘着するパッチの形で行われてよく、これは、刺激器を皮膚表面に貼り付ける装着具(例えば腕バンド)により、或いはインプラントにより、行われてよい。
【0146】
熱刺激器による一実施形態では、あらかじめロードされるプロトコルは、所定の刺激温度及び関連付けられた刺激継続時間であることが好ましい場合がある。好ましくは、あらかじめロードされるプロトコルは、熱冷却の継続時間として15分、冷却温度の範囲として15~25℃を要求してよい。刺激継続時間は、(限定ではないが)約5分から約30分になるようにプリプログラムされてよい。刺激の最大長さは、ユーザが十分許容できるものでなければならず、筋肉又は神経に少しでもダメージを与えるものであってはならない。温度センサは、刺激器が熱刺激器である実施形態において実効冷却温度を検出するように動作可能である。実効冷却温度又は実効加熱温度は、ユーザが感じる温度であってよく、これは必ずしも印加された温度と同じではない。実効温度が閾値に到達したことを温度センサが検出し、これが、特定のプロトコルに応じて印加された温度に対して±5℃の範囲にありうる場合、(図7の)処理部797は、実効的な冷却と意図された冷却とのずれを補償すべく、最初にプログラムされた冷却又は加熱より強い冷却又は加熱を行うように前記プロトコルを修正することが可能である。
【0147】
本発明は、代替として、他の効果器を適用してもよく、そのような効果器として、音響式(超音波励起により指先の感覚神経を興奮させる)、振動式、触覚式、発光式(例えば、光遺伝子修正された神経における露光)、磁気式(例えば、RF電界の高速切り替えによる)、又は各メカニズムの組み合わせがある。
【0148】
フォームファクタ:一般的なウェアラブル刺激器
【0149】
図14A~Eを参照すると、図7のシステム700は、非侵襲的、又は完全インプラント可能、又は部分インプラント可能であってよい。例えば、非侵襲的な実施形態は、スリーブ1400、又はパッチ1410、又は手袋のような、非侵襲的なハウジングを含んでよい。そのような非侵襲的な実施形態では、ハウジングの接触面は、患者の外側部分と連通している。実施形態によっては、1つ以上のシステム構成要素をインプラント1420してよい。例えば、電源は患者の外部に置いて、効果器、及び/又はハウジング接触面の少なくとも一部分を、接触点において患者内にインプラントしてよい。
【0150】
非侵襲的なシステムハウジングは、接触面及び/又は効果器を患者に近接させたままにすることを容易にすることが可能である。スリーブは、腕の長さ一杯を覆ってよく、細いバンドであってもよい。スリーブは、手足のいずれかの部分の外周の少なくとも一部分を覆うことが可能であり、或いは、スリーブは、手足のいずれかの部分の全外周を覆うことが可能である。スリーブの機能は、外部装置の位置をインプラントに対して維持することであってよい。この位置を維持する目的は、良好な電力転送、信頼できる通信、又は他の目的を達成することを含んでよい。
【0151】
ハウジングは、所望の特性を達成するのに好適な任意の材料で作られてよい。例えば、ハウジング材料は、フレキシブル且つ/又は伸縮性の材料、ポリマー、又は布地であってよい。ハウジングは、本装置を患者に固定する為に、ベルクロ、締めひも、トグル、及び/又はつなぎ材などの締め具を含んでよい。ハウジングは、本明細書に開示のシステムの各種構成要素を保持するように構成された複数のレイヤ及び/又はポケットを含んでよい。
【0152】
本システムは、介護者の支援の有無にかかわらず、患者が配置してよい。実施形態によっては、本システムは、腕に配置される為の支援メカニズムを有してよく、例えば、圧力応答式スナップ及び/又は自動位置合わせ磁石などを有してよい。スリーブ1400などの一部の実施形態では、本システムは、(スポーツスリーブと同様に)手足の端部からすべらせて装着されてよく、或いは腕に巻き付けられてよく、或いは(スナップバンドと同様に)腕に自動的に巻き付いてよい。実施形態によっては、ハウジングはパッチ1410の形態であってよい。例えば、ハウジングパッチ1410は、除去可能又は分解可能な接着剤により、患者の皮膚に固定されてよい。パッチを装着できる時間は様々であってよく、例えば、刺激期間のみ装着されるパッチや、数日、数週間、或いは数か月にわたって定位置に置いておかれるパッチがあり、これらに限定されない。パッチの取り付けは、機械式、化学式、又は電気式で行われてもよい。そのような実施形態として、パッチを所望の場所に固定するステープル、ひも、又は磁石があり、これらに限定されない。
【0153】
実施形態によっては、非侵襲的なシステムは、患者と連通しているがハウジングは患者に取り付けられない接触面を含んでよい。例えば、本システムは、患者がインタラクションを行う外部装置であってよい。例えば、ハウジングは、患者が中に手足を置くことが可能な開管状又は閉管状の構造であってよい。図14Dに示されるように、別の例として、パッド1430又は支持構造物に類似した外部器具があり、例えば、患者が手足の少なくとも一部分を置くことが可能な手首用のパッド又は支持物がある。
【0154】
一実施形態では、ハウジング1450は、ユーザの手首又は腕に装着される、図14H~Kに示されるような腕時計の構成を有してよい。ハウジング1450は、ハウジングと離れているか、部分的に離れているか、つながっている接触面1452を含んでよく、接触面1452はユーザとのインタラクションを行うことが可能である。接触面1452は、ハウジング1450に接続可能であり、一定期間の使用後に廃棄可能である。接触面の電極1454は、ストリップ状に並べられてよく、アノードとカソードのペアを単位として並べられてよい。本明細書に記載の他の電極構成も用いられてよい。上記の一定期間は、1回の使用の後であってよく、或いは、数分、数時間、数日、数週間、又は数か月の期間にわたっての複数回の使用の後であってよい。接触面自体は、手首バンド全体であってよく、或いは手首バンドの一部分であってよく、或いは手首バンドに取り付けられてよい。手首バンド自体は、接触面の一部分であってよく、或いはハウジングの一部分であってよく、或いはその両方であってよい。一例では、手首バンドは、接触面の有無にかかわらず、手首の周囲でスナップ留めされることが可能であって、これは、手首バンドが動かされると円形になって手首に巻き付くように、若干湾曲している弾性材料の特徴を有することによって可能である。別の例では、形状記憶を有する、ニチノールのような感温材料があり、これによって、本装置が皮膚と接触すると、手首バンドは、接触面の有無にかかわらず、形状が変化して患者の手首に巻き付く。別の例では、手首バンドは、接触面の有無にかかわらず、1つ以上の金属ワイヤを手首バンドの内側又は外側に有し、手首バンドは動かされると新しい形状を保持することによって、ユーザが本装置を手首上に配置し、力を加えて手首バンドの形状をユーザの固有の構造に合わせることを可能にする。別の例では、手首バンドは、接触面の有無にかかわらず、手首の一部分又は全体に巻き付く。この巻き付きは、同じ軸で行われてよく、或いは、らせん巻きであってよい。
【0155】
使い捨て又は非使い捨ての接触面は、スナップ機能、ベルクロ、圧入、磁石、温度、接着などを含み、これらに限定されない様々な方法でハウジングに接続されてよく、これらの方法は自動位置合わせ機能を含んでいてもいなくてもよい。この接続は、1つ以上の複数の次元又は軸で行われてよい。一例として、図14J及び図14Kは、自動位置合わせ部品がある、可能な一実施形態を示しており、この部品は、接触面を身体に3次元接続させる磁石であってよい。位置合わせ部品の形状が円形であることにより、第1の次元の位置合わせを1つの平面内で行うことが可能になりうる。位置合わせ部品の棒形状部分は、位置合わせ部品の円形の外形からオフセットされていてよく、接触面を適正な軸に位置合わせすることが可能である。位置合わせ部品の全体形状により、接触面を最終的な次元で位置合わせすることが可能であり、最終的な次元は、この特定の実施例では、深さである。ハウジングは、この形状と整合する外形を有してよく、この外形に対して接続が行われてよい。接続機能は逆であってもよく、位置合わせ部品はハウジング上に配置され、整合する外形形状は接触面上に配置されることが可能である。これらの、位置合わせ部品の接続部は、場合によっては、ハウジング又は接触面の構成要素のうちの一方又は両方に磁石があってよく、どちらにもなくてもよい。
【0156】
代替として、外部装置は、身体に装着されない物体であってよい。例えば、外部装置は携帯電話のフォームファクタを有してよく、患者は、外部装置をポケットやバッグに入れたり、手に持ったり、他の、携帯電話を輸送及び支持する方法(卓上に置くなど)で持ち歩くことになる。外部装置は、患者が振戦を抑えたい場所、例えば、ダイニングルームのテーブルや台所や更衣室などの場所において、家具表面に置かれるように設計されてよい。
【0157】
図14Lに示されるように、本発明の別の好ましい実施形態は、1つ以上の電極1460が脊柱に沿って貼り付けられる刺激装置を含んでよい。本刺激装置は、神経伝達物質の解放を刺激して、脊柱に沿って位置する神経を神経変調することによって振戦を軽減するように動作可能である。刺激が、神経伝達物質の解放及び取り込みに作用することによって、振戦領域を刺激する神経に作用することが可能である。電極は、頸部脊柱根の皮膚表面上に配置されることが好ましく、C1からC8にかけて配置されるのが好ましいが、C5とC8の間に配置されるのが最も好ましい。これらの電極は、パッチ電極であることが好ましい。操作部はユーザに貼り付け可能であることが好ましく、電極を操作部とつなぐリード線は、接続しやすいように磁化されていることが好ましい。操作部は、処理部に接続され、処理部によって制御されてよい。電極は(ユーザの背中側の)脊柱に沿って配置されるのが好ましい為、取り外して持ち運べる制御盤モジュールが、ユーザが操作する上でより好都合であろう。
【0158】
一実施形態では、電極は、頸部及び肩部のC2からC8にかけての領域の周囲の脊柱のいずれかの側に配置されてよい。電極は、脊柱から概ね100cmから1cm離れて配置されてよく、互いに200cmから5cm離れて配置されてよい。刺激パラメータは、500マイクロ秒と30マイクロ秒との間の位相継続時間を含んでよく、これは、300~60マイクロ秒であることが好ましい場合がある。パルスレートは、10Hzから5000Hzの範囲であってよく、好ましい範囲は50Hz~200Hz、又は150Hzであってよい。サイクル時間は、連続的であってよく、或いは、5秒から1時間の範囲であってよい。好ましいサイクル時間は、概ね5秒から20秒、又は10秒であってよい。電気刺激の継続時間は、1日あたり5分から24時間の範囲であってよい。好ましい範囲は、1日あたり概ね10回繰り返される30分から60分を含んでよく、或いは、好ましい範囲は、1日あたり概ね40分から1時間であって、週当たり1回から毎日1回繰り返されてよい。振幅(強度と区別なく使用されてよい)は、0.1mAから200mAの範囲であってよく、好ましい範囲は1mAから10mAを含んでよい。ユーザの振戦に対する効果があるまでの間にユーザが本装置を使用できる時間長さは、1日から1か月であってよく、或いは、好ましくは2日から4日の範囲であってよい。
【0159】
フォームファクタ:電気刺激の場合
【0160】
従来型のTENS装置は、多くの場合、位置決めしにくく、大きくて扱いにくく、不快である。以下に述べるイノベーションは、ETを抑える刺激器を手早く貼り付けて調節すること、並びに患者が刺激器を単体として不快でなく使用することを可能にすることを容易にするソリューションである。
【0161】
従来型のTENS装置の場合、所望の神経を最適にねらうように貼り付け電極のサイズ及び位置を適正に決定するのが困難である。電極が小さいほど、標的神経における電流密度が大きくなるが、パッドが小さいほど、刺激を神経に当て損なう可能性が高くなり、小さい電極からの電流密度が高いほど、不快さが引き起こされる可能性がある。パッドが大きいほど位置決めしやすくなるが、必要な電力が大きくなり、意図せずに隣接組織を刺激する可能性が高くなる。以下で述べるイノベーションは、これらの難題を解決し、一貫性があって効果的であって不快でなく安全な刺激を達成する。
【0162】
1つの電極だけをカソードとして使用し、1つの電極だけをアノードとして使用する代わりに、本装置は、図15A~15Cに示されるように、電極のアレイ1500を含んでよい。図では簡略化の為にこれらの電極が患者の皮膚上にひとつひとつ示されているが、実際には、電極のアレイは、スリーブ、フレキシブルパッド、又は基板、或いは他の、本明細書に記載のフォームファクタに組み込まれてよい。本装置が再位置決めされるたびに、又は検出される刺激の需要に基づいて、電極の適切な組み合わせが選択されることになる。刺激は、アノード及びカソードとして電極を1つずつ使用してもよく、電極を組み合わせて刺激電界の形状を決定してもよい。電極の選択は、本装置内のセンサ(後述)からのフィードバックに基づいて自動的に行われてよい。或いは、電極の選択はユーザによって手動で行われてもよい。例えば、ユーザは電極の複数の組み合わせの全てを繰り返してよく、これは、最適な振戦軽減を行う組み合わせ、又は正しい配置であることを示す現象(例えば、正中神経感覚刺激によって起こる第1の(人さし)指及び第2の指のうずき)を引き起こす組み合わせが見つかるまで行われてよい。図15Aは、個別電極の2次元アレイ1500を示す。或いは、これらの電極の幾つかを組み合わせて複数の直線列を作り、2次元アレイが複数の電極列から形成されるようにしてよい。図15Bは、電極の直線アレイ1500を示し、これは、図示されるようにバンドとして、或いは、パッチ、パッド、スリーブなどとして装着されてよい。図15Cは、電極アレイ1500を保持する為に使用されてよいハウジング1502を示す。
【0163】
代替として、位置決めが不十分な電極からの電気刺激は、電極と標的神経との間の導電経路を修正することにより、標的神経に向け直されてよい。例えば、図16A~16Dに示されるように、電極1602から標的神経1604への電気刺激の伝導を増強する為に、導電材料から作られてよい導電経路エンハンサ1600が、患者の皮膚の上に置かれたり、皮膚に埋め込まれたり、インプラントされたりしてよく、或いは、これらが組み合わされてよい。導電経路エンハンサは、神経の上に配置されてよく、且つ/又は、神経を横断して配置されてよい。例えば、一実施形態では、導電インクのタトゥが、標的から外れた刺激を正中神経の方向に向けることが可能である。隣接する構造物(即ち、血管、神経)より導電性が高いタトゥが、最小抵抗の経路を提供して電流の方向を変える。導電性のタトゥを配置又は位置決めする為に、まず標的神経が明確に識別される。次に、標的神経の上に導電性タトゥが配置される。図16A~16Dに示されるように、導電性タトゥは、神経を横断する複数の導電性ストライプを含んでよい。実施形態によっては、これらのストライプは、互いに平行であってよく、神経を横断してよい。他の実施形態では、ストライプは、中心が神経の上にある星形又はクロスハッチのパターンに形成されてよい。他の実施形態では、ストライプは、神経の上に、神経と平行に配置されてもよい(図示せず)。
【0164】
ウェアラブル装置は、ユーザが受け入れる為には、単体であり、不快でないことが必要である。図14B及び図14Fに示された好ましい実施形態では、例えば、効果器は電気式であり、皮膚パッチは、フレキシブル基板上に所定のパターンで印刷された、単一電極又は複数電極の電子装置を有して、バンドエイドによく似た「第2の皮膚」を形成している。付け心地及び表面粘着が最適であるように、弾性や剛性などの機械的特性は皮膚に匹敵させなければならない。表面電気刺激の為の回路及び配線は、本装置が身体又は身体内の組織に適合するように、フレキシブル材料に印刷又はエッチングされてよい。例えば、回路及び配線は、プラスチックなどのフレキシブル基板に印刷された銅であってよい。
【0165】
図14Gに示された別の実施形態では、本装置は、身体の表面に配置されてよいが、神経への影響を高める為に経皮浸透エレメント1470を含む。これらのエレメントは、極微針であってよく、刺激及び/又は薬剤送達の改善の為に使用される。実施形態によっては、経皮浸透エレメントは、皮膚表面に配置されて皮膚を貫通するマイクロ電極アレイを形成してよい。マイクロ電極アレイは、極微針のように動作可能であり、電極から神経への信号伝送を改善することと、皮膚の浸透性を高めて局所薬剤送達を改善することと、の両方を行うことが可能である。
【0166】
センサ:センサのタイプ
【0167】
本装置又は本システムはセンサを含んでよい。振戦をモニタリングするセンサは、単軸又は多軸の複数の加速度計の組み合わせ、ジャイロスコープ、傾斜計(本装置の向きがゆっくり変化した結果としての重力場の変化を測定し、修正する)、磁気計、光ファイバ電気角度計、光追跡又は電磁追跡、振戦している筋肉の発火を検出する筋電図検査(EMG)、神経電図(ENG)信号、脳波検査(EEG)などの技術による皮質記録、又は神経に近接するインプラントでの直接神経記録などがあってよい。図17は、手(1710)又は手首(1720)における動きセンサの代表的な配置を示す。他の追跡場所として、指や他の身体部位があってよい。
【0168】
これらの振戦センサからのデータを使用して、患者の現在及び履歴の振戦特性、例えば、振幅、周波数、及び位相が測定される。これらのセンサは、活動を特定する為に用いられてもよく、例えば、不随意の動き(例えば振戦)を随意の動き(例えば、飲んだり書いたりすること)と区別したり、時刻又は他の検出される活動(例えば、睡眠/覚醒サイクル)を基準とする振戦の有無を識別したりする為に用いられてもよい。
【0169】
本装置は、パフォーマンス及び使用状況のデータを提供するセンサを含んでもよく、このデータは、本装置が装着された日時(例えば、温度センサから)、本装置の位置(例えば、GPSから)、バッテリレベル、又はビデオ記録を含んでよい。別の実施形態では、センサは、冷却された手足の温度を測定する温度センサである。別の実施形態では、センサはビデオ記録を含む。別の実施形態では、スマートフォンなどの既存ハードウェアにあるセンサが使用される。例えば、振戦の測定は、スマートフォンにある加速度計、又は振戦を引き起こす書き物作業をしている患者に取り付けられた加速度計を使用して、スマートフォン画面上でトレースされる線を分析することによって行われてよい。
【0170】
センサ:振戦を抽出するアルゴリズム
【0171】
センサから提供されるデータのストリームから振戦に関する情報を抽出する為に、アルゴリズムが使用される。振戦は、その時間領域信号、周波数領域信号、振幅、又は発火パターン(例えば、バースト、スパイク)に基づいて識別可能である。例えば、図18では、ジャイロスコープの動きデータのスペクトル電力の周波数分析により、振戦の中心が約6.5Hzにあることが示されている(下側のプロットにおける最大電力に注目されたい)。
【0172】
動きデータは、各ローセンサチャネルとして、又は複数のセンサからのロー信号を融合することにより、取得可能である。一例として、多軸加速度計のデータを組み合わせて、1つの分析用数値を生成することが可能である。アルゴリズムは、4~12Hzの範囲の動きデータを抽出して、振戦に起因しない動きを除去する。これは、ノッチフィルタ、ローパスフィルタ、重み付き周波数フーリエ線形結合器、又はウェーブレットフィルタの何らかの組み合わせを使用して行われてよい。患者ごとに支配的な振戦周波数があるので、この範囲は、患者の振戦又は振戦履歴についての具体的な情報に基づいて狭められてよい。例えば、6Hzの振戦がある患者の場合、分析アルゴリズムは、5~7Hzの範囲の動きデータを抽出するだけでよい。或いは、患者の振戦が手首を最大5度だけ屈曲及び伸展するものであることが知られている場合、分析アルゴリズムは、手首を45度伸ばす動きが測定されると、この動きは、振戦ではなく意図的な全体の動きによるものである可能性が高いと判定する。或いは、アルゴリズムは、姿勢保持又は速動性の細かい運動作業に対応する可能性がある時間帯を識別することにより、動きデータをサンプリングする。
【0173】
適切な動きデータが抽出されたら、アルゴリズムは、振戦の主要特性、例えば、振幅、中心周波数、周波数拡散、振幅、位相、及びスペクトル電力を分析する。
【0174】
振戦の様々な側面を分析する為に、センサの融合技術が用いられてもよい。例えば、ノイズ及びドリフトを低減して空間内での手の正確な方向を特定する為に、手の甲に取り付けられた多軸加速度計及びジャイロスコープを組み合わせてよい。多軸加速度計及びジャイロスコープの第2のペアも手首に装着されて使用される場合、手首の関節の角度及び位置は、振戦中に決定されてよい。これにより、振戦を制御している様々な筋群の制動を引き起こしているのがどの神経のどのような興奮であるかを割り出すことが可能になる。
【0175】
ET患者の振戦には2つの構成要素がある。意図的な運動をしているときに存在するのが運動振戦であり、これは、飲むこと、食べること、書くこと、衣服を着ることなどの日常の作業を行う能力に影響する為、生活の質に対して大きな影響がある。重力に抗して静止姿勢を保持しているときに存在するのが姿勢振戦である。これは、見苦しいものではありうるが、生活の質への影響は運動振戦ほどではない。姿勢振戦は、典型的には、病気の進行において、より早い時期に存在し、運動振戦を引き起こすと考えられている。両構成要素とも、典型的には4~12Hzの範囲にあり、高齢の患者ほど、発生する振戦の周波数が低い。
【0176】
姿勢振戦及び運動振戦の検出は、休止時振戦の検出より困難である。休止時振戦は、パーキンソン病を含む他の運動障害で存在し、手足が休止している間のみ存在する振戦を分析することにより容易に識別可能である。動きデータから運動振戦を抽出することは困難であり、これは、作業に起因する動きから振戦に起因する動きを分離しなければならない為である。
【0177】
姿勢振戦の識別は、運動振戦の識別より容易な場合がある。これは、運動作業中の加速度計/ジャイロスコープのデータが、作業に関連する動きによって破損する為である。人々はしばしば人生において運動振戦より早い時期に姿勢振戦が発生し、それらがほぼ同じ周波数であることから、姿勢振戦が運動振戦を引き起こす可能性があると考えられている。本願発明者らが臨床研究において発見した姿勢振戦と運動振戦との相関関係は、図19に示されるように、姿勢振戦のデータを使用して運動振戦の分析又は治療を行うという本理論を支持するものである。
【0178】
センサ:データの記憶及び使用
【0179】
図20に示されるように、刺激装置2000は、ハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェアを含み、振戦特性、刺激履歴、パフォーマンス、使用状況、及び/又は本装置の制御などのデータを記録し、データポータル装置2002(例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、又は他の、Bluetooth(登録商標)などの無線通信プロトコルを使用する電子装置)に送信することが可能である。
【0180】
ET患者が使用する本装置を使用して記録されたデータは、スマートフォンに記憶されてよく、スマートフォンはこのデータをクラウドベースのデータベース/サーバ2004に送信する。或いは、ET患者が使用する本装置は、データをクラウドベースのデータベース/サーバ2004に直接送信することが可能である。これらにより、振戦の追跡、刺激の最適化、介護者及び医師との共有、及びコミュニティの構築を含む多くの活動が可能になる。このデータは、制御部に情報を提供し、患者、介護者、及び/又は臨床医にリアルタイムフィードバックを提供することが可能であり、或いは、患者、介護者、及び臨床医に履歴データを提供する為にデータを記憶することが可能である。クラウド2004に記憶されたデータは、複数のユーザ2008が複数のプラットフォーム2006で閲覧することが可能である。更に、クラウド2004上のデータは、コンピューティング装置2010によって統合分析されることが可能である。
【0181】
患者は一般に、数か月ごとに、或いはひょっとしたら年に1回、主治医を訪れて振戦に関するモニタリングを受ける。このモニタリングは、通常、非常に主観的である。そのうえ、振戦の深刻度は、様々な要因が劇的に作用する可能性があり、そのような要因として、睡眠パターン、情動状態、直前の身体活動、カフェイン摂取量、食べ物、薬剤などがある。
【0182】
そのような、たまにしかない、且つ不正確なモニタリングでは、患者、介護者、及び医師が患者のETの深刻度及び進み具合、並びに各種の治療及び行動の効果を理解できるかどうかが限定される。上記要因は、本装置によって与えられる刺激の効果と相互に作用する可能性があるが、これらの相互作用を検出することは困難である可能性がある。これらの相互作用が識別されれば、治療法が最適化され、自身の行動が振戦にどのように作用するかを患者がよりよく理解しやすくなるであろう。
【0183】
図21Aに示された一実施形態では、振戦は、センサを使用してモニタリング2100され、センサは、IMU、電極、又は他の既述のいずれかのセンサであってよい。モニタリングは、連続的に、又は飛び飛びの時間帯に行われてよい。これらのセンサからのデータが分析2110されて、時間の経過に対する振戦特性(振幅、周波数等)の変化が識別される。その結果は記録され、ユーザに対して表示2120される。分析2110及び/又は表示2120は、刺激装置自体において行われてよく、ローデータ又は分析済みデフォルトをスマートフォンやコンピュータなどの二次装置に伝達することによって行われてもよい。
【0184】
別の実施形態では、分析によって振戦履歴とユーザの行動との間の関係を調べることができるように、行動データ2101が収集されてもよい。行動データは、カフェイン、アルコール、薬剤の消費量、及び不安レベルを含んでよい。そして、本システムは、行動と振戦との間の相互作用を患者に警告することが可能である。
【0185】
本装置が治療用である別の実施形態では(即ち、本装置が効果器を有する場合は)、分析によって刺激履歴と振戦特性との間の関係を調べることができるように、刺激履歴2102が収集されてよい。
【0186】
図21Bに示された実施形態では、クラウドへのアップロード2140が追加されている。アップロードの前に分析がオンボードで行われるように(図示せず)、アップロード2140と分析2110の順序は入れ替えてもよい。クラウドを使用することによって、結果を、ユーザに対して様々なネットワーク接続機器で、例えば、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、デスクトップコンピュータなどで表示2120したり、医師2150や介護者などの他のユーザに対して表示2120したり、複数の患者にまたがる統合分析2160の為に表示したりすることが可能になる。
【0187】
図21Cは、統合データのありうる使用の幾つかを示しており、これには、患者らの振戦特性、地理的条件、年齢、性別などの特徴に基づいて、患者を類似の患者と関連付けること2170や、刺激アルゴリズムを改良すること2180が含まれる。
【0188】
図21Dは、図21A~Cに示されたデータのモニタリング及び分析が閉ループにおいてどのように使用されて刺激パラメータを調節することが可能かを示している。このようにして、アルゴリズムは、変数間の相互作用を検出して治療法を最適化する。
【0189】
本装置は、検出された振戦レベル又は活動レベルに適応的に応答する為に、刺激の閉ループ制御を含んでよい。本装置は、活動センサを通して振戦を知覚し、データロギングを行い、刺激パラメータの系統立った調節を行うことにより、振戦の最適な軽減を達成することを可能にする。図26Aは、この検出応答システムの基本構成要素を示す制御図である。目標(2650)は、意図されるプロファイルを定義する。例えば、ET患者の場合、このプロファイルは、振戦がないことであってよく、PD患者の場合、このプロファイルは、振戦又は硬直がないことであってよい。目標(2650)と検出結果(2660)との間の誤差(2670)が制御部(2680)にフィードされ、制御部(2680)は出力(2690)を修正する。制御部(2680)は、処理部及びメモリを含んでよい。制御部(2680)のアルゴリズムは、誤差及び測定値に加えて、測定値、刺激、及び活動の履歴をそのアルゴリズムを入力してもよい。出力(2690)によって刺激が修正される。効果器が電気式の場合、これは、刺激の波形、周波数、位相、場所、及び/又は振幅を修正することを含んでよい。好ましい実施形態(図15)では、本装置は小さな電極のアレイを含み、出力によって、どの電極をアノード及びカソードとして使用するかの選択が修正される。そして、修正の効果が測定装置によって検出(2660)されて、処理が繰り返される。検出(2660)及び/又は出力(2690)の修正は、リアルタイムで連続的に行われてよく、或いは、所定時刻間で定期的に遅らせて(例えば、毎時間又は毎日)行われてよく、或いは、所定の動き又はボタン押しのシーケンスなどの、ユーザが発生させる信号に対する応答として行われてよい。或いは、制御部は、刺激パラメータを手動で修正するよう患者に警告してもよい。この閉ループは、自動自己較正に用いられてよい。
【0190】
図26Bは、この検出応答システムの基本構成要素を示す制御図であり、図26Aに示された内容と類似しているが、ここでは、内部に位置する構成要素と外部に位置する構成要素がある。
【0191】
この制御は、他の行動パターンを考慮に入れてもよく、よりフィードフォワード制御部2640に似ている。例えば、ものを食べるときの典型的なパターンに対しては、特定のタイミングで効果器の発火をより積極的にすることにより、それらの活動における振戦を軽減することが可能である。又、人は、その日の自分の活動に基づいて、特定の時間帯に治療を増やしたいかどうか(例えば、スピーチなどの、不安を引き起こす行事があるかどうか)をスケジュールとして指定することが可能である。このタイプの情報は、制御部によって時間をかけて取得及び学習されてもよい。他のデータとして、例えば、睡眠、食物摂取量(特にアルコールやカフェインの消費量)、運動履歴、情動状態(特に不安レベル)、薬剤の使用量などがあり、これらは、Azumio、Jawbone、Fitbit等のような他のモバイル技術及びモバイルアプリケーションによって収集され、図20及び図21に示されたクラウドベースの患者データベースに統合されてよい。ユーザは、そのようなデータの入力を促されてよく、例えば、画像処理アプリケーションで食物摂取量を調べる為に食事の写真を撮ることを促されてよい。データベースは、離散的なイベント(例えば、カフェイン摂取の時刻及び量)を時系列データ(例えば、振戦の測定値)と結びつける。患者の行動、刺激、及び振戦の間の関係は、アルゴリズムによって調べられる。アルゴリズムは刺激を最適化し、振戦に影響する行動について患者に警告する。これは、振戦の治療を個人別に最適化することを可能にし、システムにフィードフォワードされる。
【0192】
実施形態によっては、ユーザは、特定の作業を行うことを、所定のタイミングで本装置又は携帯電話によって促されてよく、この作業は、患者を悩ましている振戦のタイプに応じて調整されてよく、例えば、ETの場合は特定の姿勢で腕をぐいっと伸ばすことであり、パーキンソン病の場合は腕を休止位置に置くことである。この時間の間、センサは振戦を記録することが可能である。実施形態によっては、患者は、追加又は代替として、カフェインを消費すること、又は最後にカフェインを消費してから経過した時間を記録することを指示されてもよい。このデータは、カフェインが振戦にどのように作用するか、治療プロトコル及び刺激パラメータの有効性、有効性の持続時間などを調べるのに使用されてよい。実施形態によっては、患者への指示は、刺激後に所定の時間が経過してから行われてよく、例えば、刺激の10分後、20分後、30分後、及び/又は60分後であってよい。この時間は、刺激の後の振戦軽減の測定された持続時間に応じて調節されてよい。
【0193】
本装置は、オンボードデータロギングを有し、この情報を外部データポータル装置、例えば、スマートフォンやインターネット対応充電/同期ステーションなどに送信することが可能である。この送信は無線であっても直接であってもよい。外部装置は、記憶容量がより大きく、クラウド内のデータベースへの送信が可能である。外部装置は、このデータをオンボードで分析して、画面上で、又はLED照明などのインジケータを使用して情報を提示することが可能であり、或いは、このデータは刺激装置自体に表示されてもよい。
【0194】
クラウド内のデータは、スマートフォン、タブレット、コンピュータなどを含む複数のプラットフォームで閲覧可能である。このデータは、ユーザ、担当医師、介護者、家族など、複数の人々が閲覧できる。これにより、患者の振戦の状況がより一層わかりやすくなり、治療の最適化が可能になる。実施形態によっては、データを閲覧するユーザがデータにコメントや注記を追加することも可能であり、そのコメントや注記には、コメントや注記を作成したユーザの識別情報、及びその作成日時をタグ付けすることが可能である。実施形態によっては、注記を作成する資格を、担当医師などの医療提供者と患者とに制限することが可能である。
【0195】
実施形態によっては、データへのアクセスは、医療提供者と患者とに制限される。アクセスの制限は、データにアクセスするための安全なユーザ名及びパスワードの設定をユーザに要求することによって行われてよい。実施形態によっては、患者は、家族や友人などの他者にデータへのアクセスを許可することも可能である。
【0196】
最適化アルゴリズム:
【0197】
本願発明者らのデータによると、TENS装置による刺激に対しては、非常に効果がある患者と、ある程度効果がある患者と、効果がない患者とがいる。しかしながら、本装置であれば、刺激パラメータ(刺激強度、周波数、波形、デューティサイクル、位相調整等)を最適化することにより、どの患者においても振戦の最大軽減を最良の使い心地で達成することが可能であり、時間の経過とともに、回路動態、装置の位置決め、患者の症状等の変化に応じた調節が可能である。図22は、装置用判断アルゴリズム/制御部を示す。
【0198】
一実施形態では、最適化アルゴリズムは、まず、1つ以上のパラメータを初期化2200する。パラメータは、刺激振幅、期待周波数、オン時間の継続時間、オフ時間の継続時間、期待刺激効果遅延時間などを含んでよい。次に、センサが振戦特性を検出2202し、記録する。振戦特性は、振戦の振幅、周波数、位相、及び他の、本明細書に記載の特性を含む。検出された振戦特性2202は、所望の目標振戦特性2204と比較される。目標は振戦の解消又は軽減であってよい。比較ステップ2206では、検出された振戦特性と目標振戦特性との間の誤差又は差を算出することが可能であり、振戦又は軽減された振戦が存在するかどうか2208、言い換えると、検出された振戦が目標条件以上かどうかを判定することが可能である。振戦が検出されない場合、或いは、より一般的には、所定の目標振戦条件が超えられない場合、アルゴリズムは検出ステップ2202にループバックする。振戦が検出された場合、或いは、より一般的には、所定の目標振戦条件が超えられた場合は、刺激をオンにする2210ことが可能である。刺激が、設定されているオン時間の継続時間を超過2212したら、刺激はオフにされ2214、アルゴリズムは検出ステップ2212に戻る。刺激がオンになっている間、本装置は、記録されたデータを、更なる処理の為にクラウド又は別の装置にアップロード2218することが可能である。刺激がオフにされたら2214、アルゴリズムは、オフ時間の継続時間をモニタリング2216することが可能であり、オフ時間の継続時間が経過したらデータのアップロード2218を続行することが可能である。或いは、オフ時間が経過する前でもデータをアップロードすることが可能である。カフェイン又はアルコールの摂取量、不安感、及び他の、振戦に作用しうるイベントを含んでよい、ユーザ報告イベント2220も、本システムに入力されて、クラウドに送信されてよい。このデータは制御部2222によって処理されてよく、制御部2222は、機械学習アルゴリズムを含む様々なアルゴリズムを使用して刺激パラメータを最適化することが可能である。パラメータが最適化されたら、新しい刺激パラメータが設定2224される。報告2226が患者に送信されてもよく、これは、ユーザ報告イベントで識別された様々な行動を、測定された振戦と合わせてハイライトしたり、測定された振戦と相互に関連付けたりすることが可能である。
【0199】
一実施形態では、刺激アルゴリズムは、治療する「オン」時間を最適化するように設計される。最適化アルゴリズムは、出力に関して最良のソリューションを見いだすことが可能であり、これには、限定ではなく、特定作業時の振戦、特定時刻における振戦、特定の場所における振戦を抑制することが含まれてよく、或いは、単純に、1日の振戦の全体的な最小化を最適化することが含まれてよい。アルゴリズムは、自己較正により刺激パラメータを調節してよく、そのようなパラメータとして、周波数、振幅、パルス幅、カソード及びアノードにする電極の選択、及び/又は刺激をオンオフするタイミングなどがあり、これらに限定されない。アルゴリズムは、ユーザ入力に応答してよく、或いは、完全に事前プログラムされていてもよい。アルゴリズムは、患者の振戦又は患者定義ニーズに合わせてリアルタイムで調節されるように刺激を時間の経過とともに調整する学習アルゴリズムであってよい。刺激は、入力に応じてオン又はオフにトリガされてよく、そのような入力として、(例えば、本装置をオン及び/又はオフにする)ユーザ入力、前回使用時からのタイミング、時刻、(例えば加速度計による)振戦の検出、電気的記録、又は上述の入力又は他の入力に基づくアルゴリズムなどがあり、これらに限定されない。一例として、ユーザは、音声起動を使用して本装置をオフにして、治療用窓(即ち、刺激がオフにされてからの振戦が軽減される時間)を利用することにより、意図的運動に必要な一定時間の安定を与えることが可能である。別の例では、ユーザによる噛み締め又は舌筋肉の使用が、口腔の内部又は外部に配置された外部装置によって検出されると、外部装置は、刺激をオフにする信号を出力し、ユーザが腕を安定させることを可能にして、意図的動作を安定的に行うことを可能にする。実施形態によっては、本システム及びアルゴリズムは、振戦のタイプを検出することが可能であり、これは、例えば、振戦パラメータ及び患者の測定された活動の分析に基づいて姿勢振戦と運動振戦とを区別することによって可能である。実施形態によっては、刺激パラメータは、部分的には、検出された振戦のタイプに基づいて決定されてよい。
【0200】
実施形態によっては、本システムはイベントトリガによって制御されてよい。イベントトリガは、規定された動き、温度、音声起動、GPS位置を含んでよく、或いはセンサで受信されたデータに基づいてよく、或いは、これらの任意の組み合わせであってよい。例えば、本装置は、意図的運動中にオン又はオフにされてよく、例えば、振戦が始まる前にオンにされたり、振戦が終わる前にオフにされたりしてよい。別の例では、本装置は、指定温度に達したらオン又はオフにされる。本システムは、所望の振戦抑制プロファイルを達成するように動作可能である。例えば、制御盤は、振戦抑制が必要な時間帯に本装置を起動したり、振戦抑制が必要な時間帯の前に本装置を起動して本装置の使用後も効果が続くようにしたり、且つ/又は、振戦が検出されたら本装置を起動したりしてよい。
【0201】
コミュニティデータに基づく最適化
【0202】
振戦の時間的経過については、現時点では、あまりよく理解されていない。1人の患者に関するデータベースを作成すると、本願発明者らがその患者の振戦を軽減する能力は高まるが、多数の患者からの記録を含むデータベースに個々の患者データを結合すると、最適な刺激パラメータを割り出す為のより強力な統計的方法を適用することが可能になる。実施形態によっては、同じタイプの振戦に悩む患者からのデータを結合することが可能である。実施形態によっては、各患者からの振戦データは、検索可能かつソート可能なメタデータを含むことが可能であり、メタデータは、データベース内のデータの集合体をオンデマンドでソートしたり、検索したり、且つ/又は再編成したりすることを可能にする。メタデータは、振戦のタイプ(振戦の振幅、振戦の周波数、振戦の一時的存在等)、名前、年齢、人種、性別、場所、日時、食べ物及び飲み物の消費量(特にカフェイン及びアルコールの消費量)、活動履歴(運動、睡眠等)、薬剤、過去の治療、及び現在の治療を含んでよい。
【0203】
図20及び図21に関して上述されたシステムは、データベースに入る多数の患者からのデータに適応されることが可能であり、それらのアルゴリズムは大規模なデータ集合に対して動作可能である。
【0204】
コミュニティの構築
【0205】
ETがある人々は、自身の振戦に関連する障害の為、疎外感を抱いている。結果として、それらの人々は、ETがある他の人々と会合することに非常に意欲的である。複数の支援グループが活発に活動し、拡大しつつあり、これらは、会合を組織して、ET患者同士がそれぞれの問題を語り、可能なソリューションを話し合うことを可能にする。ET患者の中には運転が困難な人もいる為、これらの会合に参加することが大変な場合がある。又、ある特定の物理的区域の中で支援グループに参加する人々は、自身の症状が互いに異なる場合があり、それらの人々は、互いに最もよく似た他の患者を見つける手立てがない。
【0206】
人々がETコミュニティの中で類似プロファイルを有するメンバを見つけることに、アルゴリズムが役に立つ可能性がある。例えば、アルゴリズムは、各患者を、年齢、振戦の深刻度、振戦の特徴、治療の成功、治療のタイプ、薬剤のタイプ、(住所又はGPSに基づく)場所、及び他の特徴に基づいて特徴づけることが可能である。これは、それらの人々が互いに通信することを支援し、ETがある特定の個人又は介護者にカスタマイズされた中央コミュニティウェブサイトからの情報を共有することを支援する。例えば、システムが、ある地理的区域の中で患者を見つけることが可能であり、或いは、特定の患者から所定の距離内にいる他の患者を見つけることが可能である。患者らは、オンラインのETコミュニティに参加することや、各自の場所をシステム上で検索できるようにすることの選択肢を持つことができる。本システムは、所定の距離内にある既存のETコミュニティ支援グループを見つけて患者に知らせることが可能である。
【0207】
他の処理部、ライブラリ、データ記憶装置
【0208】
例えば図7A~7Dに示された処理部797は、データを処理し、計算を実施し、振戦軽減装置の他の構成要素を制御するように動作可能である。これは、周辺装置又はマイクロコントローラを有するマイクロプロセッサであることが好ましい場合がある。例えば、処理部は、制御盤モジュール740を介してユーザからの入力を受け取ることが可能であり、ユーザが選択したとおりに刺激の実行を制御することが可能である。別の実施形態では、処理部797は、ユーザが選択した事前定義済み刺激プロトコルを実行することが可能である。これらの刺激プロトコルは、刺激プロトコルのデジタルライブラリ798において見つけることが可能であり、デジタルライブラリ798は、処理部797にロードされるか、EEPROM、SDカード等のような外部メモリに記憶されてよい。処理部797は又、センサ780から情報を受け取り、その情報をオンボードで処理し、それに応じて刺激を調節することが可能である。どのような処理部を選択するかは、行う必要がある信号処理の程度や、制御する必要がある周辺装置の数及びタイプによって決定される。周辺装置との通信は、例えば、USB、UART、SPI、I2C/TWIなどのよく知られた規格のいずれかによって実行されてよい。処理部は又、Bluetooth、Wi-Fiなどを使用する他のデバイスコンポーネントと無線通信することも可能である。処理部はオンボードデバイスであってよく、或いは、振戦データは、処理部と刺激部との間を無線リンクで伝送されてよい。
【0209】
電気刺激器730を有する一実施形態では、あらかじめロードされるプロトコル798は、電気刺激又は電気刺激のシーケンスであってよい。電気刺激又は電気信号は、電気パルス又は電気パルスのパターンを意味する。電気刺激は、パルス周波数、振幅、位相、パルス幅、又は電気刺激の継続時間などのパラメータを含んでよい。これらのパラメータは、ユーザが事前定義又は制御してよい。
【0210】
データ記憶部770は、本装置に関する動作統計、及び本装置に関する利用統計を、好ましくはNANDフラッシュメモリに記憶させるように動作可能である。NANDフラッシュメモリは、不揮発性のデータ記憶装置であって、記憶された情報を保持するのに電力が不要であり、電気的な消去及び再書き込みが可能である。場合によっては、このメモリを、micro-SDカードの形態でリムーバブルにすることが有利である可能性がある。
【0211】
電力:
【0212】
例えば図7A~7Dに示されたように、効果器は、1つ以上の電源と電気的に結合されてよい。電源750は、本装置に給電するように動作する。電源750は、処理部797に接続されて、処理部が動作する為にエネルギを供給することが可能である。電源は、好ましくは再充電可能且つ着脱可能であってよく、これは、本装置の再使用を可能にする為である。電源は、好ましくはバッテリであってよい。化学物質の様々な組み合わせが一般的に使用されており、これには、鉛酸、ニッケルカドミウム(NiCd)、ニッケル水素(NiMH)、リチウムイオン(Li-イオン)、リチウムイオンポリマー(Li-イオンポリマー)が含まれる。バッテリを再充電する方法は、好ましくは、壁ソケット、又は他の受電側機器、ソーラー電源、無線周波数、又は電気化学物質に接続することである。一代替電源としてウルトラキャパシタがある。ウルトラキャパシタは異なる3つのファミリに分類されてよく、これらは、二重層キャパシタ、疑似キャパシタ、及びハイブリッドキャパシタである。ウルトラキャパシタは、好ましくは、ナノポーラス材料で作られてよく、ナノポーラス材料としては、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーバイド由来カーボン、カーボンエアロジェル、固体活性炭、調整可能なナノポーラスカーボン、ミネラルベースのカーボンなどがある。ウルトラキャパシタは、充電がバッテリより高速であり、また、許容される充放電サイクル数がより多いという利点がある。バッテリ及びウルトラキャパシタは、代替として、併用されてもよく、これは、ウルトラキャパシタが多数の充放電サイクルを許容することから、ウルトラキャパシタがバッテリとの並列接続に適しており、且つ、電流密度という観点でバッテリパフォーマンスを改善しうる為である。或いは、電源は、身体からのエネルギを利用してもよい。実施形態によっては、電力は、運動の動き、熱エネルギ、及び/又は音から得られてよい。或いは、電源は、外部電源(例えば汎用電化製品)へのプラグを含んでよい。
【0213】
一実施形態では、本装置の再充電の為に専用の充電ステーション又はドングルが使用されてよい。専用充電ステーションの利点は、Wi-Fi又は別の通信プロトコルによる本装置からウェブへのデータのアップロードを容易にすることも可能な点である。
【0214】
インプラント:
【0215】
実施形態によっては、本システムの少なくとも一部分がインプラント可能である。インプラントされた刺激器は、表面刺激より制御性及び使い心地が良好である可能性があり、これは、神経のより近くに位置し、皮膚求心神経を興奮させない為である。
【0216】
末梢神経を刺激して手の振戦を抑制する方法では、インプラント刺激器が適正である為の特定の要件を導入する。第1に、インプラントは小さくなければならない。これは、インプラントを配置してインプラント処理として適正化する為の処置の侵襲性を最小化する為である。第2に、刺激は、検出された振戦又はユーザ入力に対して敏感である可能性がある為、インプラントは、外部装置からの通信を受信することが可能でなければならない。第3に、本装置は、外部装置の位置が変わりやすいことを許容しなければならない。
【0217】
本明細書に開示の、任意の数のシステム構成要素がインプラントされてよい。実施形態によっては、ハウジング、接触面、効果器、及び電源がインプラントされ、制御部が患者の外部にある。そのような実施形態では、制御部は、例えば、効果器と無線通信してよい。別の実施形態では、電源は患者の外部にある。
【0218】
本装置は、皮下にインプラントされてよく、或いは一部分がインプラントされてよく、或いは(皮膚を貫通して)経皮的であってよく、或いは皮膚の表面に置かれてよく、或いは身体に接触していなくてもよい。本装置は、これらの装置の集合体であってよく、例えば、インプラント構成要素と通信するか、これに給電する表面構成要素と、インプラント構成要素と、であってよい。本装置は、インプラントされる場合には、神経、筋肉、骨、靱帯、又は他の組織の中、又はその周辺にインプラントされてよい。
【0219】
一実施形態では、インプラントは、手根管を貫通する神経に作用するように手根管の中、又はその近くに配置される。別の実施形態では、インプラントは、上腕の二頭筋の間の正中神経の上又は近くに配置される。別の実施形態では、インプラントは、前腕又は手首の正中神経、橈骨神経、又は尺骨神経の上又は近くに配置される。別の実施形態では、インプラントは、腕から中枢神経系に向かって通っている固有受容神経に作用するように、腕神経叢の上又は近くに配置される。
【0220】
インプラントされる部分は、インプラントの効果が及ぶ範囲にある神経に作用するように、経脈管的に配置又は送達されてよい。一例では、腕神経叢の神経に作用するように、装置が、鎖骨下の動脈又は静脈 の中に配置されるか、その中を通るように配置される。
【0221】
図23に示されるように、ユーザが本態性振戦を軽減する為の制御可能な装置の好ましい一実施形態が、標的神経を刺激する為に、生体適合性材料で作られて、少なくとも一部分が皮下にインプラントされた電極2310と、外部操作盤2320と、を含み、外部操作盤2320は、ユーザ制御インタフェースを含み、リード線でインプラント電極2310と接続されている。本装置は更なる要素を含んでよく、そのような要素として、計算を実施し、他の構成要素を制御する処理部797と、処理部によって制御される関数発生器と、処理部又はメモリに記憶されて、あらかじめロードされる変調プロトコルを収容するデジタルライブラリ799と、処理部797と接続され、又はこれと通信して、あらかじめ定義されたパラメータを検出し、そのパラメータ情報を処理部に送信するセンサ780と、センサ及び処理部に接続されたデータ記憶装置770と、電源750と、があってよい。
【0222】
この実施形態では、インプラント電極2310は、標的神経に直接電気刺激を与えるように動作可能である。これらの電極は、少なくとも一部分が身体内にインプラントされ、長期間(好ましくは数年)そのままになるため、好適な電気的特性を有し、且つ生体適合性である材料から作られてよい。電極2310の材料は、シリコーン、PTFE、パリレン、ポリイミド、ポリエステルイミド、白金、セラミック、及び金、又はコラーゲンやヒアルロン酸などの自然材料を含む群から選択されることが好ましい。電極2310は、形状やサイズが様々であってよいが、対象の神経と接触することが重要である。電極の形状としては、平坦なシャンク、単純な均一マイクロワイヤ、及び幅広の基部から細い先端にかけて先細るプローブなどがある。電極は、近位端及び遠位端を有してよい。遠位端は、神経と接触してよく、選択された神経に神経刺激パルスを送達するように適応されてよい。リード線の近位端は、処理部797が動作させる外部操作盤に接続するように適応されてよい。
【0223】
本実施形態の一変形形態では、複数のリード線が様々な神経束に接続されていてよい。別の変形形態では、図24A~24Dに示されるように、インプラントとの無線通信が行われてよい。インプラント2400は、マイクロ電極又はマイクロ刺激器であってよく、針挿入によって神経のすぐ近くに挿入されてよい。針2402は、患者の標的神経2404の隣又は近くに挿入されてよく、その後、針からインプラントが射出されてよい。インプラント2400は、外部に位置する装置2406(例えば、本明細書に記載の決定部)と通信してよく、データをやりとりしてよく、これによって給電されてよい。
【0224】
一実施形態では、接触面は、インプラントされた神経カフであってよい。神経カフは、神経を全体的又は部分的に丸く囲んでよい。神経カフは、バタフライアーム電極を閉じる手段によって神経に取り付けられてよい。別の実施形態では、接触面は神経当接部であってよい。当接部は、神経と近接しているか、神経に沿って位置してよい。カフの機能は、本装置と神経とをよく接触又は近接させることであってよい。別の実施形態では、接触面は、神経又は神経鞘にアンカーで固定されてよい。例えば、本装置は、神経又は神経鞘に巻き付けられるか、くくりつけられるか、クランプされるか、小さな逆棘でつながれるか、化学的に融合されてよい。カフ、コイル、当接部、又はアンカーの機能は、本装置と神経とをよく接触又は近接させることである。これらの実施形態の幾つかを図25A~25Fに示す。
【0225】
例えば、図25A~25Cはコイル電極接触面の一実施形態を示しており、これは、図示されている複数コイルの電極、又は単一コイルの電極であってよい。実施形態によっては、コイル電極2500は、ニチノールなどの形状記憶材料から作られてよく、挿入及びインプラント処理の前は弛緩したまっすぐな構成を有してよく、体温にさらされた後はコイル巻きの構成を有してよい。図25D及び図25Eはバタフライカフ型電極2510の実施形態を示しており、この電極は、神経の少なくとも一部分を丸く囲むことが可能である。他の実施形態と同様に、接触面は、単一電極又は複数電極を含んでよく、送達中は開いた構成であって、インプラント処理後は神経に巻き付いて閉じた構成であるように、形状記憶材料から作られてよい。図25Fは、神経に当接し、神経に沿って位置することが可能な直線アレイ電極2520を有する接触面の一実施形態を示す。
【0226】
インプラントを挿入する方法は、局所麻酔又は全身麻酔を伴ってよい。インプラントは、針や縫合糸など、皮膚における1つ以上の穿刺を通して送達されてよく、或いは標的領域にアクセスする為に皮膚に切開部が作られてもよく、或いは両方の方法が併用されてもよい。一実施形態では、本装置は、神経及び/又は周囲の組織(例えば、血管又は腱)に本装置の全体又は一部分を巻き付けることによってインプラントされてよい。
【0227】
一実施形態では、インプラントは、血管経路に沿って配置された2つの電極を含んでよい。この経路は手掌弓に沿ってよく、電極は、上腕動脈及び腋窩動脈内に配置されてよい。電極間の流体柱は、電気を運搬し、隣接神経を刺激することが可能である。電極は、ステントのように血管経路の内部にあってもよく、血管ラップのように血管経路の外部にあってもよい。一実施形態では、本装置は、外部装置との双方向通信が可能なインプラントであってよい。本実施形態はメモリを含んでよい。外部「リスナ」装置は電源であってよい。インプラントは、その予備電力や使用履歴などの情報を「リスナ」に伝達してよい。別の実施形態では、本装置は、当該神経又は隣接神経上の活動を感知して、この情報をリスナに報告することが可能なインプラントである。
【0228】
別の実施形態では、本装置、又は本装置を配置するのに使用される装置は、誘導の為に超音波を使用してよい。超音波は、血管、神経、又は他の組織との近接度の測定、或いは、隣接組織のタイプ及び場所の特徴づけに用いられてよい。
【0229】
別の実施形態では、刺激用電極は液体として注射されてよい。別の実施形態では、電極はフレキシブルであってよく、ヒアルロン酸のような粘性媒体として送達されてよい。別の実施形態では、電極は、37℃でその形状を取るニチノールから作られてよい。これにより、電極を、ある構成、例えば、針を通るのに適した細長い構成で注射又は挿入し、体温まで温められるとそれぞれの形態を取るようにすることが可能になる。これらの例の幾つかを図25に示した。
【0230】
インプラントは、インプラント、外部電力伝送、通信システム、及び/又はプログラマブル刺激パラメータを記憶する電子装置の間の単方向又は双方向の通信の為に必要な構成要素を含んでよい。本装置は、無線周波数誘導結合によって外部アンテナからコマンド信号及び電力信号を受信する無線マイクロモジュールを含んでよい。効果器が電気式の場合、着信通信チャネルは、刺激の周波数、遅延、パルス幅、及びオンオフ間隔を含む情報を含んでよい。
【0231】
経皮的な充電又は給電によって、大型電源(例えばバッテリ)が不要になってインプラントサイズが低減され、手術が繰り返されても電源の交換が不要になる。内部構成要素に(例えば無線周波数(RF)電力転送により)無線で給電するために外部構成要素が使用されてよい。例えば、外部装置はRF電力を放射してよく、これは内部構成要素が共振コイルで受信する。この電力は、様々な波長で送信されてよく、例えば、3kHzから300GHzの範囲の無線周波数及び短波スペクトルで送信されてよく、これに限定されない。或いは、内部装置はバッテリを含んでよい。外部装置は、身体に装着されたり、身体上で運搬されたりしてよく、或いは、近くの周辺物内にあってよく、例えば、近くのテーブルや壁にあってよい。外部装置は、可搬であっても固定されていてもよい。本装置は、放電時に刺激を実施する容量性エネルギ蓄積モジュール電極を含んでよい。電子装置は、自身に給電することによって刺激プロファイルが駆動されると、かなり簡略化されることが可能である。キャパシタは、直流をブロックする一方で、交流を通す。キャパシタは、その絶縁破壊に達すると、放電し、刺激パルスを放出する。
【0232】
インプラントは振戦を直接感知することも可能であり、これは、例えば、神経電気記録(ENG)信号又は筋電図検査(EMG)信号、或いは加速度計、或いはこれらの組み合わせを使用することにより行われる。この場合、インプラントは複数の電極を含んでよく、これは、マイクロ電極とマクロ電極が、それぞれ感知することと刺激することとに、それぞれ好ましい為である。本装置は、検出されたイベントを伝達する為に、送出通信チャネルを含んでもよい。
【0233】
振戦を変化させる装置、及びこの装置を使用する方法の様々な実施形態をここまで開示してきた。これらの様々な実施形態は、単独で使用されてもよく、組み合わせて使用されてもよく、本発明の範囲から逸脱しない限り、これらの実施形態の個々の特徴に対する様々な変更が変更されてよい。例えば、各種方法ステップの順序は、場合によっては変更されてよく、且つ/又は、記載された装置に対して、1つ以上の任意選択の特徴が追加されたり除去されたりしてよい。従って、上述の実施形態の説明は、本発明の範囲を過度に限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲において説明される。
【0234】
本明細書において別々の実施形態のコンテキストで説明された幾つかの特徴は、単一の実施形態として組み合わせて実施することも可能である。逆に、単一の実施形態のコンテキストで説明された様々な特徴を、複数の実施形態に分けて実施したり、任意の好適な副組み合わせで実施したりすることも可能である。更に、各特徴は、特定の組み合わせで動作するものとして上述され、特許請求の範囲においても最初にそのように特許請求されている場合があるが、特許請求されている組み合わせの中の1つ以上の特徴が、その組み合わせから削除されてよい場合があり、特許請求された組み合わせは、副組み合わせ又は副組み合わせの変形形態を対象としてよい。
【0235】
〔付記1〕
患者の振戦を軽減する方法であって、
第1の末梢神経効果器を、第1の末梢神経に対して相対的な第1の場所に配置するステップと、
前記第1の末梢神経効果器から前記第1の末梢神経に第1の刺激を送達するステップと、
前記患者の神経回路網動態を修正することにより、前記振戦の振幅を低減するステップと、
を含む方法。
〔付記2〕
前記配置するステップは、前記第1の末梢神経効果器を前記患者の皮膚の上に配置するステップを含み、前記第1の刺激は、皮膚表面に印加される電気刺激である、付記1に記載の方法。
〔付記3〕
前記第1の刺激は、振幅が約0.1mAから約10mAであり、周波数が約10Hzから約5000Hzである、付記2に記載の方法。
〔付記4〕
前記配置するステップは、前記第1の末梢神経効果器を前記患者にインプラントするステップを含み、前記第1の刺激は電気刺激である、付記1に記載の方法。
〔付記5〕
前記第1の刺激は、振幅が約3mA未満であり、周波数が約10Hzから約5000Hzである、付記4に記載の方法。
〔付記6〕
測定部により前記患者の手足の動きを感知して、動きデータを生成するステップと、
前記動きデータから振戦情報を決定するステップと、
をさらに含む、付記1に記載の方法。
〔付記7〕
前記送達するステップは、前記振戦情報に基づいて前記第1の刺激を送達するステップを含む、付記6に記載の方法。
〔付記8〕
前記振戦情報は、前記患者の手足の休止位置からの最大偏移を含む、付記7に記載の方法。
〔付記9〕
前記振戦情報は、前記患者の手足の休止位置を含む、付記7に記載の方法。
〔付記10〕
前記振戦情報は、振戦の周波数、位相、及び振幅を含む、付記6に記載の方法。
〔付記11〕
前記第1の刺激を送達する前記ステップは、複数の刺激バーストを送達するステップを含み、前記刺激バースト間には可変時間遅延がある、付記1に記載の方法。
〔付記12〕
第2の末梢神経効果器を、第2の末梢神経に対して相対的な第2の場所に配置するステップと、
前記第2の末梢神経効果器から前記第2の末梢神経に第2の刺激を送達するステップと、
を更に含む、付記1に記載の方法。
〔付記13〕
前記患者の振戦の周期を決定するステップを更に含み、前記第2の刺激を送達する前記ステップは、前記第2の刺激の送達を、前記第1の刺激の送達から、前記振戦の周期の所定の分数又は倍数だけオフセットするステップを含む、付記12に記載の方法。
〔付記14〕
前記患者の脳内の神経回路網の共時性の位相を散逸させるステップを更に含む、付記12に記載の方法。
〔付記15〕
前記第1の場所と前記第2の場所は、隣接する指に位置する、付記12に記載の方法。
〔付記16〕
前記第1の末梢神経と前記第2の末梢神経は、隣接する神経である、付記12に記載の方法。
〔付記17〕
前記第1の末梢神経は正中神経であり、前記第2の末梢神経は尺骨神経又は橈骨神経である、付記12に記載の方法。
〔付記18〕
前記第1の末梢神経と前記第2の末梢神経は、体部位局在的に隣接している、付記12に記載の方法。
〔付記19〕
前記第1の刺激は、振幅が感覚閾値を下回る、付記1に記載の方法。
〔付記20〕
前記第1の刺激は15Hz超である、付記1に記載の方法。
〔付記21〕
前記第1の末梢神経は、前記患者の手足から固有受容情報を運搬する、付記1に記載の方法。
〔付記22〕
前記振戦の振幅を低減することに対する前記第1の刺激の有効性の持続時間を調べるステップと、
前記有効性の持続時間が切れる前に第2の刺激を送達するステップと、
を含む、付記1に記載の方法。
〔付記23〕
前記有効性の持続時間を調べる前記ステップは、所定の期間にわたって行われた複数の刺激印加を分析するステップを含む、付記1に記載の方法。
〔付記24〕
前記有効性の持続時間を調べる前記ステップは、前記患者の活動プロファイルを決定するステップを更に含む、付記23に記載の方法。
〔付記25〕
前記有効性の持続時間を調べる前記ステップは、前記振戦のプロファイルを決定するステップを更に含む、付記23に記載の方法。
〔付記26〕
前記活動プロファイルは、カフェイン及びアルコールの消費量に関するデータを含む、付記24に記載の方法。
〔付記27〕
前記第1の末梢神経の上に導電経路エンハンサを配置するステップを更に含む、付記1に記載の方法。
〔付記28〕
前記導電経路エンハンサは導電性タトゥである、付記27に記載の方法。
〔付記29〕
前記導電経路エンハンサは、1つ以上の導電性ストリップを含む、付記27に記載の方法。
〔付記30〕
第1の場所は、手首、前腕、手根管、指、及び上腕からなる群から選択される、付記1に記載の方法。
〔付記31〕
患者の振戦を治療するシステムであって、
決定部と、
末梢神経に電気刺激を送達するように適合された面接触部であって、前記面接触部は、前記決定部と通信する第1の末梢神経効果器を備え、前記第1の末梢神経効果器は少なくとも1つの電極を備える、前記面接触部と、を備え、
前記決定部は、処理部と、命令を記憶するメモリと、を備え、前記命令は、前記処理部によって実行されると、
前記第1の末梢神経効果器から第1の末梢神経に第1の電気刺激を送達することを前記決定部に行わせ、前記電気刺激は、前記患者の神経回路網動態を修正することによって前記患者の手足の振戦を軽減するように、前記制御部によって構成される、
システム。
〔付記32〕
前記第1の電気刺激は、振幅が約10mA未満であり、周波数が約10Hzから約5000Hzである、付記31に記載の方法。
〔付記33〕
前記接触面部は更に、前記決定部と通信する第2の末梢神経効果器を備え、前記第2の末梢神経効果器は少なくとも1つの電極を備え、前記メモリは命令を記憶し、前記命令は、前記処理部によって実行されると、前記第2の末梢神経効果器から前記患者の手足の第2の末梢神経に第2の電気刺激を送達することを前記決定部に更に行わせる、付記31に記載のシステム。
〔付記34〕
前記命令は、前記処理部によって実行されると、前記第1の電気刺激から、前記振戦の周期の所定の分数又は倍数だけ時間オフセットされた前記第2の電気刺激を送達することを前記決定部に行わせる、付記30に記載のシステム。
〔付記35〕
前記第1の末梢神経効果器は第1の指に配置されるように適合され、前記第2の末梢神経効果器は第2の指に配置されるように適合されている、付記30に記載のシステム。
〔付記36〕
前記第1の末梢神経効果器は、直線アレイとして並べられた複数の電極を備える、付記31に記載のシステム。
〔付記37〕
前記複数の電極は、約1mmから約100mmの間隔を置いて配置されている、付記31に記載のシステム。
〔付記38〕
前記第1の末梢神経効果器は、2次元アレイとして並べられた複数の電極を備える、付記31に記載のシステム。
〔付記39〕
前記メモリは命令を記憶し、前記命令は、前記処理部によって実行されると、前記患者の手足上の第1の末梢神経効果器の位置に基づいて前記複数の電極のうちのサブセットを選択することを前記決定部に更に行わせ、前記複数の電極のうちの前記サブセットの前記選択は、前記第1の末梢神経効果器が前記手足上で配置又は再配置されるたびに行われる、付記38に記載のシステム。
〔付記40〕
前記複数の電極は、第1の軸に沿って約1mmから約100mmの間隔を置いて配置され、前記第1の軸に垂直な第2の軸に沿って約1mmから約100mmの間隔を置いて配置される、付記38に記載のシステム。
〔付記41〕
測定部を更に備え、前記メモリは命令を記憶し、前記命令は、前記処理部によって実行されると、
前記測定部を使用して前記患者の手足の動きを測定して動きデータを生成することと、
前記動きデータの分析に基づいて振戦の周波数及び大きさを決定することと、
を前記決定部に更に行わせる、付記31に記載のシステム。
〔付記42〕
前記動きデータの前記分析は、前記動きデータのスペクトル電力の周波数分析を含む、付記41に記載のシステム。
〔付記43〕
前記周波数分析は、約4Hzから約12Hzの間に制限される、付記42に記載のシステム。
〔付記44〕
前記動きデータの前記分析は、所定の時間長の前記動きデータに対して行われる、付記41に記載のシステム。
〔付記45〕
前記決定部は、前記動きデータに基づいて振戦位相情報を決定することと、前記振戦位相情報に基づいて前記第1の電気刺激を送達することと、を行うように更に適合されている、付記41に記載のシステム。
〔付記46〕
前記振戦位相情報はピーク振戦偏移を含み、前記決定部は、前記ピーク振戦偏移に対応する時刻に前記第1の電気刺激を送達するように更に適合されている、付記45に記載のシステム。
〔付記47〕
前記メモリは命令を記憶し、前記命令は、前記処理部によって実行されると、前記第1の電気刺激を複数の電気刺激バーストとして送達することを前記決定部に更に行わせ、前記電気刺激バースト間には可変時間遅延がある、付記41に記載のシステム。
〔付記48〕
前記メモリは命令を記憶し、前記命令は、前記処理部によって実行されると、前記決定された振戦の周波数に基づいて前記第1の電気刺激のパラメータを設定することを前記決定部に更に行わせる、付記41に記載のシステム。
〔付記49〕
前記メモリは命令を記憶し、前記命令は、前記処理部によって実行されると、前記決定された振戦の大きさに基づいて前記第1の電気刺激のパラメータを設定することを前記決定部に更に行わせる、付記41に記載のシステム。
〔付記50〕
前記メモリは命令を記憶し、前記命令は、前記処理部によって実行されると、前記決定された振戦の大きさを所定閾値と比較することを前記決定部に更に行わせ、前記第1の電気刺激は、前記決定された振戦の大きさが所定閾値を超えた場合に送達される、付記41に記載のシステム。
〔付記51〕
前記電極は、前記患者の皮膚を貫通して前記第1の電気刺激を送達するように適合されている、付記31に記載のシステム。
〔付記52〕
前記電極は、インプラントされて前記神経に前記電気刺激を送達するように適合されている、付記31に記載のシステム。
〔付記53〕
前記決定部は、前記第1の電気刺激のパラメータを調節する為の入力をユーザから受け入れるように適合されたユーザインタフェースを含む、付記31に記載のシステム。
〔付記54〕
前記メモリは更に、1つ以上の所定の刺激プロトコルのライブラリを記憶する、付記31に記載のシステム。
〔付記55〕
前記面接触部は前記決定部と一体化されている、付記31に記載のシステム。
〔付記56〕
前記面接触部と前記決定部は互いに別々であり、個別のハウジングを有する、付記31に記載のシステム。
〔付記57〕
前記決定部は、前記面接触部に電力を無線で供給するか、前記面接触部と通信するように構成されている、付記56に記載のシステム。
〔付記58〕
前記決定部内に位置する測定部を更に備える、付記56に記載のシステム。
〔付記59〕
前記面接触部内に位置する測定部を更に備える、付記56に記載のシステム。
〔付記60〕
前記決定部は、スマートフォン、タブレット、及びラップトップからなる群から選択されるコンピューティング装置である、付記56に記載のシステム。
〔付記61〕
前記コンピューティング装置と通信するサーバを更に備え、前記サーバは、動きデータを、前記患者に送達された前記電気刺激の履歴とともに前記コンピューティング装置から受信するように構成されている、付記60に記載のシステム。
〔付記62〕
前記サーバは、
前記受信された動きデータと、前記患者に送達された前記電気刺激の前記履歴とを、複数の患者からのデータを記憶しているデータベースに追加するようにプログラムされている、
付記61に記載のシステム。
〔付記63〕
前記サーバは、
前記受信された動きデータ、及び前記患者に送達された前記電気刺激の前記履歴を、前記データベースに記憶されているデータと比較することと、
前記受信された動きデータ、及び前記患者に送達された前記電気刺激の前記履歴を、前記データベースに記憶されているデータと比較した結果に基づいて、修正された電気刺激プロトコルを決定することと、
前記修正された電気刺激プロトコルを前記コンピューティング装置に送信することと、
を行うようにプログラムされている、付記62に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26