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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149644
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】芳香の抽出
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20241010BHJP
   C11B 9/02 20060101ALI20241010BHJP
   C12C 3/00 20060101ALI20241010BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20241010BHJP
   B01F 23/53 20220101ALI20241010BHJP
   B01F 31/80 20220101ALI20241010BHJP
   B01F 25/50 20220101ALI20241010BHJP
【FI】
C11B9/00 E
C11B9/00 D
C11B9/00 B
C11B9/02
C12C3/00 A
A23L27/10 C
B01F23/53
B01F31/80
B01F25/50
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024126163
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2021501316の分割
【原出願日】2019-07-19
(31)【優先権主張番号】18184617.1
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521014434
【氏名又は名称】カールスバーグ サプライ カンパニー エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】シング,スリンダー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ,マイケル
(57)【要約】
【課題】芳香抽出効率および/または芳香抽出選択性の改善は、芳香を含む製品のより柔軟でより費用効率の高い製造、ならびに貯蔵寿命が延長された製品を提供するので、芳香抽出を改善する必要がある。
【解決手段】本発明は、-植物またはその一部と液体の混合物を含む水和タンクであって、正のガス流圧力を含むように構成された水和タンク、-植物またはその一部を剪断するように構成された剪断ユニット、-流体力学的キャビテーションユニット、および、-少なくとも1つの循環ユニット、を含む芳香抽出ユニットに関し、ここで、水和タンク、剪断ユニット、キャビテーションユニットは流体連通下にあり、少なくとも1つの循環ユニットは、混合物をタンクから剪断ユニットへ、さらにキャビテーションユニットへ、そしてキャビテーションユニットからタンクおよび/または剪断ユニットへ循環して戻すように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップ芳香抽出物であって、25μg/L以上のミルセン、190μg/L以上のリナロール、および42μm/L以下のβ-シトロネロールを含み、ミルセン:リモネンの比が50:1を超え、および/または前記リナロール:リモネンの比が150:1を超える、ホップ芳香抽出物。
【請求項2】
50μg/L以上のミルセン、および200μgL/L以上のリナロール、および15μg/L以下のβ-シトロネロールを含む、請求項1に記載のホップ芳香抽出物。
【請求項3】
芳香抽出ユニット(1)を用いて、請求項1に記載のホップ芳香抽出物を製造する方法であって、
a)植物またはその一部と液体の混合物、および正のガス流圧力を含む水和タンク(2)を提供するステップ、
b)前記混合物を剪断ユニット(3)に通し、それにより前記植物またはその一部の少なくとも50体積%を1~100μmの粒子直径に剪断し、植物スラリーを形成するステップ、
c)前記植物スラリーを前記キャビテーションユニット(4)に通し、それによって植物の芳香が抽出され、それにより前記ホップ芳香抽出物が製造されるステップ
を含む方法であって、
前記芳香抽出ユニット(1)は、
・植物またはその一部と液体の混合物を含むのに適した水和タンク(2)であって、正のガス流圧力を含むように構成された水和タンク(2)、
・前記植物またはその一部を剪断するように構成された剪断ユニット(3)、
・流体力学的キャビテーションユニット(4)、および
・少なくとも1つの循環ユニット(5、5a、5b)を備え、
前記水和タンク、剪断ユニット、キャビテーションユニットは流体連通下にあり、前記少なくとも1つの循環ユニットは、混合物を前記タンクから前記剪断ユニットに、さらに前記キャビテーションユニットに、そして前記キャビテーションユニットから前記タンクおよび/または剪断ユニットに循環して戻すように構成され、前記剪断ユニットは前記キャビテーションユニットから分離し、前記植物またはその一部の少なくとも50体積%を1~100μmの粒子直径に剪断するように構成される、
ホップ芳香抽出物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香抽出ユニット、前記芳香抽出物を含む製品を製造するためのシステム、芳香抽出物を製造するための方法、前記芳香抽出物を含む飲料製品を製造する方法に関する。特に、本発明は、ホップ芳香抽出ユニット、ビール製品を製造するためのシステム、ならびにホップ芳香抽出物を製造する方法およびビール製品を製造する方法、ならびにホップ抽出物およびビール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、香水、食品および飲料の消耗品などの市販製品向けの活性化合物は、植物原料から抽出することができる。例えば、ホップ由来の抽出物は、ビール製品の主な芳香またはフレーバーを構成し得る。ホップ由来の抽出物質は、苦い芳香(例えばタンニン)と、より味わい深い芳香(例えばフムレン、ミルセン、およびリナロール)の両方を含み得る。
【0003】
抽出プロセスの効率と選択性は、抽出パラメータに依存する。したがって、特定の抽出パラメータは、特定の化合物、例えば芳香化合物のより高い選択性を促し得る。また、抽出パラメータは、より高い抽出効率または利用を促し得る。すなわち、植物原料に元々存在していた物質のより多くの量が抽出されるようになる。
【0004】
伝統的なビールの製造には、麦汁とホップの混合物の煮沸が含まれる。したがって、ホップ化合物、主に苦味が、煮沸プロセス中に麦汁に抽出される。煮沸後、煮沸された麦汁を発酵タンクに移し、酵母を加えて発酵させ、その後、酵母を取り出してから、ビールをラガーリングタンクまたは熟成タンク内で貯蔵し、さらなる使用、例えばろ過および/または瓶詰めまたは樽詰めに備える。ビールに良好なホップ芳香を加えるために、ホップオイルをプロセス中に、例えば発酵またはラガーリングの間に後で添加することができる。ホップオイルを使用する代わりに、「ドライホッピング」として知られる方法でホップ芳香を得ることもできる。伝統的に、ドライホッピングプロセスは、開始時または麦汁発酵中に発酵タンク内の麦汁にプレスされたホップペレットの形態のホップを添加することを含む。ホップペレットは、通常、乾燥、粉砕、および圧縮されたホップまたはその一部、通常はホップの葉と球果からなる。芳香は発酵している麦汁に直接抽出されるので、抽出時の温度は発酵温度に制限される。発酵温度は通常、酵母の状態を最適化するために選択される。これらの環境は、抽出される物質の量と比率の制御を困難にする。
【0005】
米国特許第2,830,904号[1]は、ラガーリングタンク内のビールに添加することができる別個のホップ抽出物を製造するための方法を開示している。ホップは、超音波処理中の酸化を防ぐために中立圧力で、または圧力下で、超音波キャビテーション、約95°F(35に相当)またはそれ未満の温度、およびCOに曝されると、水中または麦汁に抽出される。
【発明の概要】
【0006】
芳香抽出効率および/または芳香抽出選択性の改善は、芳香を含む製品のより柔軟でより費用効率の高い製造、ならびに貯蔵寿命が延長された製品を提供するので、芳香抽出を改善する必要がある。
【0007】
例えば、芳香抽出効率が向上すると、所与の植物材料の量に対してより多くの量の芳香が抽出される。それに対応して、芳香抽出選択性が向上すると、所与の植物材料の量に対して、より多くの量の選択された、または所望の芳香成分が抽出される。したがって、抽出効率および/または選択性の改善は、暗黙のうちに、より高い原材料の利用、より少ない材料廃棄物、したがってより費用効率の高い生産を意味する。また、芳香は貯蔵中に分解する傾向があるため、所与の製品内の芳香または選択された芳香の量が増えると、製品の貯蔵寿命が長くなる。
【0008】
さらに、芳香抽出の改善により、生産のアップスケーリングを含めて、生産の柔軟性が向上し得る。例えば、芳香抽出効率および/または選択性が向上した場合、バッチ抽出プロセスと比較して、連続抽出プロセスを使用する場合、同様の抽出が得られ得る。連続抽出プロセスは、通常、バッチプロセスと比較して、より速く、より簡単で、より多くのボリュームに簡単にアップスケールされる。
【0009】
以下に記載される本開示の実施形態は、あらゆる芳香抽出に拡げることができる。芳香抽出の例には、ビール生産のためのホップ抽出、およびアルコールおよびノンアルコールドリンクおよび飲料のための他の植物またはその一部、例えば植物の葉、ブレード、蕾、茎、根、および果実、例えばオレンジピール、緑茶、生姜からの芳香抽出が含まれる。ビール生産のためのホップ抽出には、ラガー、エール、ポーター、およびノンアルコールビールを含む任意のビール製品がさらに含まれ得る。
【0010】
以下では、ホップ抽出に基づいて実施形態を例示する。特にホップ抽出については、ホップ抽出プロセスの制御を改善すること、ならびに抽出効率および選択性を改善することが必要である。特に、抽出効率を向上させる必要がある。抽出プロセスのさらなる改善により、ビール生産の柔軟性が向上し、特有のより高い材料使用率、およびより少ない材料廃棄物、ならびにビール製品のより長い貯蔵寿命により、よりコスト効率に優れた生産方法が提供される可能性がある。
【0011】
本発明は、ホップ抽出ユニットおよび関連する方法を提供し、驚くほど効率的なホップ抽出、味わい深い芳香の驚くほど選択的な抽出、およびより信頼性が高く安全な抽出プロセス、ならびにより複雑でなく、より単純で柔軟なビール生産プロセスを提供する。本発明の1つの特定の利点は、この原材料の利用を改善する効率的なホップ抽出である。
【0012】
抽出ユニットおよび関連する方法から得られるホップ抽出物は、ビール製品などの流体に容易に添加および混合されるような組成および粘稠度を有し得る。さらに有利なことに、提供されるホップ抽出物は、流体との混合に対して高い親和性を有する化学組成を有し、これは、抽出物と流体との間の分子間力が強力であり得、それにより、抽出物と液体との間に密接な接触が存在する均質で安定した混合物を促進することを意味する。
【0013】
さらに有利には、提供されるホップ抽出物は、必要な体積が小さいような組成または濃度を有し、提供されるホップ抽出物は、制御可能なおよび/または少ない量で容易に添加されるような粘稠度、すなわち粘度をさらに有利に有する。
【0014】
有利なことに、ホップ抽出物および抽出ユニットは、ビール製品を製造するためのシステム、およびビール製品を製造する方法に使用される。さらに有利なことに、ホップ抽出物は、ビール製造プロセスの任意の時点で、例えば、ろ過や樽詰めの直前など、製造プロセスの後半で添加することができるため、より柔軟で費用対効果の高いビールの生産を実現する。
【0015】
したがって、本発明は、以下を含むホップ芳香抽出ユニットを提供する:
・ホップまたはその一部と液体の混合物を含む水和タンクであって、正のガス流圧力を含むように構成された水和タンク、
・ホップを剪断するように構成された剪断ユニット、
・流体力学的キャビテーションユニット、および
少なくとも1つの循環ユニット。
ここで、水和タンク、剪断ユニット、キャビテーションユニットは流体連通下にあり、少なくとも1つの循環ユニットは、混合物を循環させるように構成されている。
【0016】
本発明はさらに、以下を含むビール製品を製造するためのシステムを提供する:
・発酵麦汁を収容するように構成された発酵コンテナ、
・任意選択的に、発酵麦汁の固形物の一部を除去し、それによって発酵麦汁をグリーンビールに変換するように構成された分離ユニット、
・本発明によるホップ芳香抽出ユニット、
・少なくとも1つのポンプユニット。
ここで、発酵コンテナ、分離ユニット、および抽出ユニットは流体連通下にあり、少なくとも1つのポンプユニットは移送手段として構成される。
【0017】
好ましい実施形態では、発酵コンテナ、分離ユニット、および抽出ユニットは、連続的な流体連通下にある。最も好ましくは、発酵コンテナ、分離ユニット、および抽出ユニットは、部分的に連続的な流体連通下にある。
【0018】
本発明はまた、以下のステップを含むホップ芳香抽出物を製造する方法を提供する:
a)ホップまたはその一部と液体の混合物、および正のガス流圧力を含むコンテナを提供するステップ、
b)前記液体中でホップを剪断し、それによりホップスラリーを形成するステップ、
c)ホップスラリーを流体力学的キャビテーションユニットに通し、それによってホップ芳香が抽出されるステップ、
d)任意選択的にステップ(b)および/または(c)を複数回繰り返すことにより、ホップ芳香抽出物が製造されるステップ。
【0019】
好ましい実施形態では、前記方法は、本発明によるホップ芳香抽出ユニットで実行されるように構成される。
【0020】
本発明はまた、以下のステップを含むビール製品を製造する方法を提供する:
a)本発明によるホップ芳香抽出物を製造する方法によってホップ芳香抽出物を調製するステップ、
b)ステップ(a)で調製したホップ芳香抽出物を発酵麦汁またはグリーンビールに添加するステップ。
【0021】
好ましい実施形態では、ビール製品を製造するための方法は、本発明によるビール製品を製造するためのシステムのいずれかで実行されるように構成される。
【0022】
本発明のさらなる態様は、以下を含む芳香抽出ユニットに関する:
・植物またはその一部と液体の混合物を含む水和タンクであって、正のガス流圧力を含むように構成された水和タンク、
・植物またはその一部を剪断するように構成された剪断ユニット、
・流体力学的キャビテーションユニット、および
少なくとも1つの循環ユニット。
ここで、水和タンク、剪断ユニット、キャビテーションユニットは流体連通下にあり、少なくとも1つの循環ユニットは、混合物をタンクから剪断ユニットに、さらにキャビテーションユニットに、そしてキャビテーションユニットからタンクおよび/または剪断ユニットに循環して戻すように構成されている。
【0023】
本発明はさらに、以下を含む飲料製品を製造するためのシステムを提供する:
・飲料フィード、
・前の態様による芳香抽出ユニット、
・少なくとも1つのポンプユニット。
ここで、コンテナと抽出ユニットは流体連通下にあり、少なくとも1つのポンプユニットは移送手段として構成される。
【0024】
好ましい実施形態では、コンテナおよび抽出ユニットは、連続的な流体連通下にある。最も好ましくは、発酵コンテナおよび抽出ユニットは、部分的に連続的な流体連通下にある。
【0025】
本発明はまた、以下のステップを含む、芳香抽出物を製造する方法を提供する:
a)植物またはその一部と液体の混合物、および正のガス流圧力を含むコンテナを提供するステップ、
b)前記液体中で植物を剪断し、それにより植物スラリーを形成するステップ、
c)植物スラリーを流体力学的キャビテーションユニットに通し、それによって植物の芳香が抽出されるステップ、
d)任意選択的にステップ(b)および/または(c)を複数回繰り返すことにより、植物芳香抽出物が製造されるステップ。
【0026】
好ましい実施形態では、前記方法は、前の態様による芳香抽出ユニットで実行されるように構成される。
【0027】
本発明はまた、以下のステップを含む、飲料製品を製造する方法を提供する:
a)前の態様に従って芳香抽出物を調製するステップ、
b)ステップ(a)で調製した芳香抽出物を飲料フィードに添加するステップ。
【0028】
本発明はまた、以下のステップを含む、飲料製品を製造する方法を提供する:
a)飲料フィードを提供するステップ、
b)飲料フィードを第1の体積画分と第2の体積画分に分割するステップ、
c)正のガス流圧力下でコンテナ内の植物またはその一部と第1の体積画分を混合し、それによって混合物を形成するステップ、
d)前記混合物を剪断およびキャビテーションの少なくとも1サイクルに供し、それにより芳香抽出物を形成するステップ、
e)芳香抽出物の少なくとも一部を排出し、第2の体積画分と混合し、それによって飲料製品が製造されるステップ。
【0029】
好ましい実施形態では、プロセスは連続的であり、その結果、ステップ(b)の第1の体積画分は、ステップ(e)の放出された芳香抽出体積に本質的に等しい。
【0030】
好ましい実施形態では、飲料製品を製造するための方法は、本発明による飲料製品を製造するためのシステムのいずれかで実行されるように構成される。
【0031】
本開示のさらなる態様は、25μg/L以上のミルセン、190μg/L以上のリナロール、および42μm/L以下のβ-シトロネロールを含むホップ抽出物またはビール製品に関する。
【0032】
好ましい実施形態では、ホップ抽出物またはビール製品は、50、100、または150μg/L以上のミルセン、および200、205、210、または215μgL/L以上のリナロール、および15、14、13、または12μg/L以下のβ-シトロネロールを含む。
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明をより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本開示によるホップ芳香抽出ユニットの一実施形態を示す。
図2】本開示によるビールを製造するためのシステムの一実施形態を示す。
図3】芳香抽出システム(上部)の一実施形態、および複数のホッパユニットを含む、本開示によるビールを製造するためのシステム内の実装の一実施形態を示す。
図4】本開示による剪断ユニットに曝すことで得られた粒子径分布の一実施形態を示す。
図5ローター-ステーターシステムの例を示す。図5Aおよび5Cは例示的なローターであり、図5Bおよび5Dは例示的なステーターである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
添付図の助けを借りて本発明を以下に記載する。装置の同じ特徴または構成要素は異なる図において同じ参照番号で参照されることは当業者に理解されるだろう。参照番号のリストは、発明を実施するための形態の節の最後に記載されている。
【0036】
以下、実施形態を主にホップ抽出に基づいて例示する。しかしながら、当業者は以下の開示があらゆる芳香抽出に拡張できることを認識するだろう。
【0037】
定義
数値に関して本明細書で使用される場合の「およそ」という用語は、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%を意味する。
【0038】
「植物」という用語は、乾燥、焙煎、枯れ、酸化、硬化、および/または発酵などの処理にさらに供された可能性がある植物またはその一部を意味する。植物の一部の例には、植物の葉、ブレード、蕾、茎、根、および果物または穀物が含まれる。植物およびその一部の例は、ホップ、乾燥麦芽、オレンジ、乾燥オレンジピール、緑茶、および生姜である。
【0039】
「ホップ」という用語は、Humulus lupulus種の植物を意味する。「ホップ」という用語は、ホップ植物全体またはその一部を指す場合がある。したがって、「ホップ」は、ホップ植物、ホップ葉、ホップ球果、またはホップ植物の他の部分であり得る。多くの場合、本明細書で使用される「ホップ」は、ホップ植物の葉および球果を指す。
【0040】
「ホップペレット」または「乾燥ホップペレット」という用語は、均一な粉末に粉砕され、ペレットダイを通して圧縮された乾燥ホップ材料を意味する。粉砕は、好ましくはハンマー粉砕によって行われ得る。乾燥ホップ材料は、ホップの葉および/または球果を含むか、または本質的にそれらからなることさえある。ホップペレットは、それらの天然ホップオイルをすべて保持しており、ホップ全体の代わりに使用することができる。ホップペレットは、輸送、および棚に保管するのに有利である。
【0041】
「グリーンビール(green beer)」という用語は、最大12体積%のアルコールを含む発酵麦汁を意味し、ここで発酵麦汁由来の固形物の少なくとも70%が除去されている。発酵麦汁由来の固形物は、主に酵母を含むが、他の固形物、例えばホップ粒子を含み得る。したがって、グリーンビールは通常、新たに発酵させた麦汁に含まれる酵母の最大30%を含む。
【0042】
「麦汁」という用語は、粉砕された麦芽および/または粉砕された穀物穀粒ならびに任意選択的に追加の添加物など、麦芽および/または穀物穀粒の液体抽出物を意味する。麦汁は一般に、マッシングおよび任意選択的にスパージングによって得られる。マッシングは、粉砕された麦芽および/または粉砕された穀物穀粒ならびに任意選択的に追加の添加物の水中での制御された温置である。
【0043】
マッシングは、特定の温度で、特定の量の水中で行うことが好ましい。任意選択的に、マッシングの後に「スパージング」が続く場合があり、これは、熱湯でマッシングした後、使用済みの穀物から残留糖やその他の化合物を抽出するプロセスである。スパージングは通常、ラウタータン(lauter tun)、マッシュフィルタ、または使用済みの穀物から抽出された水を分離することを可能にする別の装置で行われる。マッシング後に得られる麦汁は一般に「第1の麦汁」と呼ばれ、一方、スパージング後に得られる麦汁は一般に「第2の麦汁」と呼ばれる。指定されていない場合、麦汁という用語は、第1の麦汁、第2の麦汁、または両方の組み合わせである可能性がある。
【0044】
抽出ユニット
図1は、本開示によるホップ芳香抽出ユニット1の実施形態を示している。このユニットは、流体連通下にあるように接続された水和タンク2、剪断ユニット3、および流体力学的キャビテーションユニット4、ならびに前記タンク、剪断ユニットおよびキャビテーションユニット間に循環媒体を流すように構成された少なくとも1つの循環ユニット5を含むように見える。
【0045】
タンク
ユニットは、抽出される植物、植物の一部、ホップ、またはホップペレットが、植物/ホップを水和するための液体と共に導入され、それによって固体と液体の混合物を形成する水和タンク2を備える。
【0046】
「水和タンク」という用語は、固体を液体で濡らすように適合されたタンク、コンテナまたはチャンバを意味する。したがって、水和タンクは、「湿潤タンク」または「混合容器」と呼ばれることもある。液体は有利には水を含み、その結果、固体は湿潤プロセス中に少なくとも部分的に水和される。
【0047】
タンクは、正のガス流圧力を含むように構成される。「ガス流圧力」という用語は、タンクを通るガス流がタンク内で正のガス圧を維持するように適合されていることを意味する。例えば、例えばおよそ0.5バールの正のCOガス圧を最初にタンクに課すことができ、その後、一定量のガスがタンクに出入りする間、タンク内の圧力が維持されるように、タンクを通る追加のCOの流れが提供される。この構成により、流入するガスの量およびタイプを制御できることが保証され得る。
【0048】
タンク、剪断ユニット、およびキャビテーションユニット間の流体連通は、タンク内の1つまたは複数のポートまたは開口部を介して有利に促進される。図1に示されるように、タンクは、混合物がポートを介してタンクに出入りすることができるように構成された少なくとも1つのポート2aを有利に備える。例えば、水和タンクからの混合物は、ポートを介してタンクから排出され得、任意選択的に、キャビテーションユニットからの混合物は、ポートを介してタンクに導入され得る。しかしながら、混合物の流れパターンの単純さを改善するために、タンクは、図1に示されるように、キャビテーションユニットから混合物を受け取るように構成された第2のポート2bを有利に備える。
【0049】
本開示の一実施形態では、タンクは、混合物がポートを介してタンクに出入りすることができるように構成された少なくとも1つのポート2aを備える。さらなる実施形態では、タンクは、キャビテーションユニットから混合物を受け取るように構成された第2のポート2bを備える。
【0050】
植物/ホップおよび液体のタンクへの単純かつ容易な供給を容易にするために、水和タンクは、植物/ホップまたはその一部をタンクに供給するように構成された開口部を有利に備える。好ましくは、ホップは、乾燥ホップペレットの形態で供給される。さらに有利には、タンクは、図1に示されるように、タンクに液体を供給するように構成された第3のポート2cを備える。
【0051】
本開示の一実施形態では、タンクは、植物/ホップまたはその一部をタンクに供給するように構成された開口部を備える。さらなる実施形態では、ホップは、ドライホップペレットの形態である。
【0052】
本開示の一実施形態では、タンクは、タンクに液体を供給するように構成された第3のポート2cを備える。
【0053】
ホップと液体がタンクに供給されると、正のガス流圧力を確保するためにタンクを閉じることができる。
【0054】
タンクは、ホップと液体の混合を促すことができる混合ユニットを備えていてもよい。これは、ホップの水和、例えばホップペレットの水和を促し得る。
【0055】
好ましくは、植物、ホップ、またはその一部は、1つまたは複数のホッパユニット12を介して混合容器2に供給される。図3の上部は、本開示による芳香抽出ユニットの実施形態を示し、ここで、植物/ホップは3つのホッパユニット12a~cを介して供給される。
【0056】
ホッパユニットは、コンテナまたはチャンバまたはリザーバであり、典型的には漏斗状または先細になっており、その結果、例えば、重力下でコンテナに含まれる固体バルク材料を排出するように適合されている。固体バルク材料の例は、ホップまたはその一部、植物、植物の一部、繊維、粒子、砂、岩、および他のタイプのばらのバルク材料である。
【0057】
有利には、ホッパユニットの1つまたは複数は、固体バルク材料を空気圧混合容器2などの空気圧システムに排出するように適合されている。
【0058】
上記のように、混合容器または水和タンクは、有利には、ホップ混合物とホップ芳香の酸化のリスクを低減するために空気圧式である、または例えば正のCOガス圧により加圧される。さらに有利なことに、混合容器は、植物/ホップが供給されるときに手動で開かれない。COを含むコンテナを手動で開けることは、高濃度のCOは人体に有害であるため、人的および環境的な健康および安全の両方のリスクがある。さらに、炭酸液体などの溶存ガスを含む液体に植物/ホップなどの固体粒子を供給すると、熟練者はメントスとコーラを混合する場合に起こる同様の状況から知っているように、大気圧下での爆発的なCO放出をもたらし得る。爆発的なCO放出もまた、人的および環境的な健康および安全のリスクがある。
【0059】
空気圧システムへのホッパの排出は、真空および/または圧力弁を使用することによって得ることができる。例えば、バルク固形物は、真空を使用することによって、ホッパユニットから排出または移動されてもよく、例えば、図3のホッパユニット12aのバルクは、真空でホッパユニットから吸引されることによって排出されてもよく、また、真空によってホッパユニット12bに移動されてもよい。あるいは、またはさらに、バルク固形物は、第1の圧力の第2のホッパユニットから、圧力弁を通って、第2の圧力の第3のホッパユニットに排出され得る。例えば、図3のホッパユニット12bのバルクは、圧力弁を通ってホッパユニット12cに排出されてもよく、ここで、第2のホッパユニットは大気圧または真空を含み、第3のホッパユニットは空気圧式である、または加圧される。第2のホッパユニットは「ゲートホッパユニット」と呼ばれることもあり、第3のホッパユニットは「計量供給ホッパユニット」と呼ばれることもある。したがって、真空および/または弁を使用することにより、ホッパユニットは、固体バルク材料を空気圧システムに供給または排出するように適合されている。
【0060】
ホッパユニット12cから混合容器2への移動は、加圧システム内の重力によって得ることができる。ホッパユニット12cから加圧システム内の混合容器2への移動をさらに容易にし、したがって生産速度を増加させるために、ユニットは、移動のための、スクリューコンベヤなどの1つまたは複数のバルク材料輸送手段をさらに備え得る。
【0061】
本開示の一実施形態では、芳香抽出ユニットは、1つまたは複数のホッパユニットを含む。さらなる実施形態では、ホッパユニットの1つまたは複数は、空気圧水和タンクなどの空気圧システムへの排出に適合されている。さらなる実施形態では、1つまたは複数のホッパユニットは、真空移動手段および/または1つまたは複数の圧力弁を含む。
【0062】
本開示の好ましい実施形態では、抽出ユニットは3つのホッパユニットを含み、ホッパユニットの少なくとも1つは真空移動手段を含み、ホッパユニットの少なくとも1つは圧力弁を含む。
【0063】
別のさらなる実施形態では、抽出ユニットは、スクリューコンベヤなどの1つまたは複数のバルク材料輸送手段を含む。
【0064】
空気圧システムに排出するように構成されたホッパユニットの別の利点は、加圧システムへの有害な酸素の取り込みが大幅に減少および/または排除されることである。したがって、抽出ユニット内のホップ混合物およびホップ芳香の酸化の程度が低減される。
【0065】
例3は、抽出ユニットがホッパユニットの存在および非存在下で運転された例を記載している。ホッパユニットの存在しないユニットは図1に具体化された抽出ユニットに対応し、ホッパユニットの存在するユニットは図3に具体化された抽出ユニットに対応した。水和タンク内の酸素摂取量を測定すると、ホッパユニットを含むセットアップについて大幅な低減が観察された。
【0066】
循環ユニット
循環ユニットによって、植物/ホップと液体の混合物は、逐次的または連続的に、タンクから剪断ユニットに、剪断ユニットからキャビテーションユニットに移動され、そしてキャビテーションユニットからタンクおよび/または図1の矢印で示されているように剪断ユニットに戻され、そこから剪断ユニットとキャビテーションユニットの組み合わせを通る循環を何度でも繰り返すことができる。したがって、1回の循環サイクルは、剪断ユニットとキャビテーションユニットの組み合わせを通る循環として定義される。したがって、キャビテーションユニットは剪断ユニットの下流に配置され、剪断ユニットはタンクの下流およびキャビテーションユニットの上流に配置される。したがって、1回の循環サイクルの後、植物/ホップと液体の混合物は「部分的に空洞化された」と呼ぶことができ、さらなる循環サイクルの際に、混合物は「さらに空洞化された」と呼ぶことができる。
【0067】
循環サイクルに続いて、混合物の全部または一部は、図1に示されるように、流れ出口10で除去され得る。したがって、部分的に空洞化されたまたはさらに空洞化された混合物は、流れ出口で除去/排出され得る。部品の数およびユニットの複雑さを低減するために、流れ出口は、流れ方向コントローラ5cの一部であり、循環のための閉ループを形成する第1の位置と、混合物の少なくとも一部が流れ出口で除去される第2の位置とを有する。
【0068】
本開示の一実施形態では、循環ユニットは、循環のための閉ループを形成する第1の位置と、混合物の少なくとも一部が流れ出口10で除去される第2の位置とを有する流れ方向コントローラ5cをさらに備える。さらなる実施形態では、循環ユニットは、タンク、剪断ユニット、およびキャビテーションユニット間の循環のための閉ループを形成する第1の位置と、混合物の少なくとも一部がキャビテーションユニットの後ろで流れ出口10で除去される第2の位置とを有する流れ方向コントローラ5cをさらに備える。
【0069】
したがって、流れ方向コントローラが第1の位置にあるとき、循環の閉ループが、タンク、剪断ユニット、キャビテーションユニットの間に形成され、そしてタンクに戻る。あるいは、第1のサイクルの後、混合物は、タンクの代わりに剪断ユニットに循環して戻され得、その結果、循環の第2の閉ループが剪断ユニット、キャビテーションユニットの間に形成され、剪断ユニットに戻る。どちらの場合も、循環は逐次的または連続的になるように構成することができる。
【0070】
本開示の一実施形態では、少なくとも1つの循環ユニットは、混合物をタンクから剪断ユニットに、さらにキャビテーションユニットに、そしてキャビテーションユニットからタンクおよび/または剪断ユニットに循環させるように構成される。
【0071】
効率的な循環のために、およびユニット内の詰まりを回避するために、循環ユニットは、有利には、2つ以上の循環ユニットを含む。さらに有利には、第1の循環ユニット5aは、例えば図1に示すようにタンクと剪断ユニットとの間に配置することにより、混合物をタンクから剪断ユニットに循環させるように構成され、第2の循環ユニット5bは、図1に示すようにキャビテーションユニットの後に配置することにより、混合物をキャビテーションユニットからタンクおよび/または剪断ユニットに循環して戻すように構成される。任意選択的に、循環ユニットはポンプとブースターポンプのグループから選択され、ここでブースターポンプは、ポンプで送られる媒体の圧力を上げるように適合される。循環の効率を改善するために、第1の循環ユニットは有利にはポンプであり、第2の循環ユニットはブースターポンプである。
【0072】
本開示の一実施形態では、ユニットは、第1および第2の循環ユニットを含み、第1の循環ユニット5aは、混合物をタンクから剪断ユニットに、さらにキャビテーションユニットに循環させるように構成され、第2の循環ユニット5bは、混合物をキャビテーションユニットからタンクおよび/または剪断ユニットに循環して戻すように構成されている。さらなる実施形態では、第1の循環ユニットはポンプであり、第2の循環ユニットはブースターポンプである。
【0073】
循環の効率を改善および制御するために、ユニットは、有利には、1つまたは複数の流量計を備える。例えば、ユニットは、第1の循環ユニットと第2の循環ユニットとの間に、例えばキャビテーションユニット4とキャビテーションタンク6との間に配置された流量計を備え得る。本開示の一実施形態では、ユニットは、1つまたは複数の流量計を備える。
【0074】
剪断ユニットおよびキャビテーションユニット
抽出中に、芳香物質は植物/ホップまたはその一部から周囲の液相に抽出される。したがって、「植物/ホップ芳香抽出物」という用語は、植物/ホップまたはその一部と液体との混合物を意味し、ここで固体植物/ホップからの物質が液相に抽出される。湿ったまたは水和した植物/ホップ、またはその一部を、剪断ユニットとキャビテーションユニットの組み合わせに曝すと、植物/ホップの芳香が驚くほど効率的に抽出され、また、より味わい深い芳香または物質が驚くほど選択的に抽出されることが分かった。
【0075】
例1は、本開示に従って生成されたホップ芳香抽出物の例を記載しており、驚くほど効率的かつ選択的な抽出が得られた。
【0076】
ホップから周囲の液体に抽出される可能性のあるホップ芳香には、イソブチルイソブチレート、ミルセン、イソアミルイソブチレート、リモネン、リナロール、酢酸シトロネリル、a-フムレン、a-テルピネオール、酢酸ゲラニル、β-シトロネロール、ゲラニオールが含まれるが、これらに限定されない。より味わい深い芳香の例は以下の物質:ミルセンおよびリナロールを含む。相対的な味わい深さで劣る芳香の例は、β-シトロネロールを含む。
【0077】
「剪断ユニット」という用語は、媒体を剪断力、すなわち、媒体の断面と同一平面上に作用する力に曝すユニットを意味する。液体中に分散された固体を含む懸濁液などの媒体は、懸濁液をローター-ステーターシステムに通すことによって剪断力に曝され得る。ローター-ステーターシステムは、間隔を空けてインラインに配置された一連の平行ディスクからなり、1つおきのディスクが回転し、1つおきのディスクが静止している。懸濁液は、ディスクに垂直な方向にローター-ステーターシステムに通され、交互の回転および静的ディスクを通過することにより、懸濁液は剪断力にかけられる。したがって、剪断ユニットは、本質的に一定の圧力で有効である剪断力に懸濁液をかける。ローター-ステーターシステムである剪断ユニットの例は、YTRON-Zホモジナイザーである。ローター-ステーターシステムの例を図5に示す。ここで、ローター-ステーターシステムは、事前定義された直径を持ち、プレートから半径方向に伸び、スロットに対応して互いに事前定義された距離で間隔を空けた歯を持つディスクとして特徴付けられる。図5Aおよび5Cは例示的なローターであり、図5Bおよび5Dは例示的なステーターである。ホップ/植物の特に有利な剪断は、約100~160mm、より好ましくは約120~140mm、最も好ましくは約130mmの直径を有するローター-ステーターで得られることが見出された。さらに有利な剪断は、5~50mm間隔、より好ましくは7~30mm間隔、例えば8mmまたは20mm間隔の歯を有するローターで得られることが見出された。さらに有利な剪断は、2~40mm間隔、より好ましくは4~30mm間隔、例えば5mmまたは20mm間隔の歯を有するステーターで得られることが見出された。特に有利な剪断は、2~40mm間隔の歯を有するステーターと組み合わせた、5~50mm間隔の歯を有するローター、例えば、5mm間隔の歯を有するステーターと組み合わせた8mm間隔の歯を有するローター、または20mm間隔の歯を有するステーターと組み合わせた20mm間隔の歯を有するローターで得られることが見出された。
【0078】
図1に示すように、ホップと液体の混合物は、剪断ユニットに1回または複数回通される。剪断ユニットにおいて、混合物は均質化され、剪断ユニットはさらに、植物/ホップ粒子の粉砕をもたらし得、それにより、植物/ホップまたはその一部の粒子径を減少させる。上記のように、剪断ユニットは、懸濁液を機械的に生成される剪断力にかけ、本質的に懸濁液を本質的に一定の圧力にかける。機械的な動きのために、機械的に生成された剪断力は、効率的な粒子径の減少を提供し得る。これは、機械的な動きおよび本質的に一定の圧力によって動作しないキャビテーションユニットとは対照的であり、したがって、以下でさらに記載するように、キャビテーションユニットは効果的な粒子径減少装置ではない。
【0079】
植物/ホップの粒子径が減少し、粒子の均質化または分散が改善されると、固体粒子と周囲の液体との間の表面積の接触が増加する。増加した接触表面積は、後続のキャビテーションユニットにおける改善された芳香抽出プロセスを促し得る。剪断ユニットに曝された植物/ホップ混合物の場合、粒子径はより細かく、粒子の分散はより均一であり、粘度は高く、懸濁液は「植物/ホップスラリー」と呼ばれ得、泥またはセメントと同様の物理的特性を有する。
【0080】
本開示の一実施形態では、剪断ユニットは、混合物中の剪断力を得るためのローター-ステーターシステムである。さらなる実施形態では、ローター-ステーターシステムは、約100~160mm、より好ましくは約120~140mm、最も好ましくは約130mmの直径を有する。さらなる実施形態では、ローターは、5~50mm間隔、より好ましくは7~30mm間隔、例えば8mmまたは20mm間隔の歯を備える。さらなる実施形態では、ステーターは、2~40mm間隔、より好ましくは4~30mm間隔、例えば5mmまたは20mm間隔の歯を備える。
【0081】
驚くべきことに、植物/ホップの粒子またはその一部が特定のサイズを有する植物/ホップスラリーが、改善された処理可能性と組み合わせて、改善された芳香抽出効率および選択性を提供することが見出された。「処理可能性」という用語は、粒子を処理する能力、例えば、粒子を分離および/またはろ過し、例えば、固体を液相から分離するか、または特定の粒子範囲をろ過する能力を意味する。したがって、処理可能性の悪いサイズは、凝集、フィルタ/セパレータの目詰まりを起こしやすいのに対し、処理可能性の良い粒子径は、フィルタまたは分離ユニットの目詰まりのリスクなしに、分離および/またはろ過が容易である。
【0082】
芳香抽出効率、選択性、および処理可能性を改善するために、驚くべきことに、粒子の大部分が1~100μm、または好ましくは8~100μmである粒子径分布(PSD)が有利であることが分かった。
【0083】
剪断ユニットの後に得られた植物/ホップスラリーのそのような粒子径分布の例を図4に示す。PSDは、0.1~0.2μmの特徴的な粒子直径の周りの第1のピーク、1~10μmの特徴的な粒子直径の周りの第2のピーク、および約20~100μmの特徴的な粒子直径の周りの第3のピークを持つ三峰性の粒子径分布であることが分かる。特に、40体積%未満の粒子が0.2μm未満の粒子径を有することが分かる。
【0084】
1~100μmの粒子の割合が高いほど、芳香抽出効率、選択性、および処理可能性が高くなることが観察された。
【0085】
得られる粒子径分布は、ポンプ速度、ポンプ周波数、ポンプサイズ、ローター-ステーター設計などのパラメータを含む、剪断ユニットの操作パラメータによって決定される。
【0086】
球形粒子の粒子径は、その直径または半径によって明確に定義される。しかしながら、ほとんどの場合、粒子の形状は球形ではなく、粒子はサイズが異なり、異なるサイズの分布を有する場合がある。したがって、粒子径を評価するために当業者に知られている一般的な技術を適用する場合、粒子径は、平均粒子直径などの代表的な粒子直径または半径に関して定量化されることが多い。さらに、非球形粒子のサイズは、非球形粒子と同じ体積を有する球体、非球形粒子と同じ表面積を有する球体、非球形粒子と同じ沈降速度を有する球体、非球形粒子の長軸の長さ(最大長さ)に対応する直径を有する球体、または非球形粒子の短軸(または最小長さ)に対応する直径を有する球体など、同等の球体の直径として定量化することができる。これは幾何学的な観点からは適切な定量化ではないが、特徴的なサイズの定量的な記載を提供するために適用される。ほとんどの場合、図4に示すように、粒子径分布が存在する。
【0087】
図4中、粒子径は「特徴的な粒子直径」を示している。これは、レーザー回折によって評価された同等の球形粒子の粒子直径である。この特徴的な粒子直径および関連する粒子径分布は、レーザー回折を使用して評価される。レーザー回折では、液体に分散した粒子が集束レーザービームに通され、その結果粒子が光を散乱する。散乱角は粒子径に比例し、散乱強度対角度のマップを取得して、粒子径と分布を計算するために使用することができる。粒子径分布の計算は、球形粒子を仮定することに基づくミー理論に基づくことができる。ミー理論には、得られた散乱パターンと理論から導き出された散乱パターンとの比較が含まれる(球形粒子を仮定)。
【0088】
本開示の特徴的な粒子直径は、レーザー回折およびミー理論を使用して評価された。具体的には、特徴的な粒子直径は、Malvern MasterSizer 2000(Malvern Panalytical GmbH、Kassel、ドイツ)を使用して評価された。
【0089】
各測定の前後に、蒸留水による洗浄ステップとバックグラウンド測定を実行した。サンプル(植物またはホップスラリー)を測定セルにロードして、許容可能なロード(または不明瞭化値)を取得し、測定を開始できるようにした。好ましくは、不明瞭化値は、12.34%など約12%であった。測定は、次の設定を使用して実行した:測定する材料の光学特性:粒子の屈折率=1.59、吸収率=0。
液体または分散剤の光学特性:屈折率=1.33。
測定時間=12秒。
【0090】
各サンプルを、1000スナップ/秒に対応する12000スナップで1回測定した。
【0091】
本開示の一実施形態では、剪断ユニットは、植物またはその一部の少なくとも50体積%を1~100μmの間、より好ましくは8~100μmの間の特徴的な粒子直径に剪断するように構成される。さらなる実施形態では、剪断ユニットは、植物またはその一部の少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99体積%を1~100μmの間、より好ましくは8~100μmの間の特徴的な粒子直径に剪断するように構成される。
【0092】
本開示の一実施形態では、剪断ユニットは、植物/ホップを三峰性粒子径分布(PSD)に剪断するように構成される。さらなる実施形態では、第1のピークの特徴的な粒子直径は0.1~0.5μm、より好ましくは0.1~0.2μmであり、第2のピークの特徴的な粒子直径は1~10μm、より好ましくは2~5μmであり、第3のピークの特徴的な粒子直径は10~100μm、より好ましくは20~50μmである。
【0093】
「流体力学的キャビテーションユニット」という用語は、液体または懸濁液を流体力学的キャビテーション力にさらすユニットを意味する。キャビテーション力は、液体または懸濁液を圧力の急激な変化にかけることによって生成され、これにより、圧力が比較的低い液体中に空洞またはボイドが形成され、より高い圧力にかけられるとボイドの内破が引き起こされる。ボイドの内破は、強い衝撃波を発生させる可能性がある。キャビテーション力は、非慣性キャビテーションまたは慣性キャビテーションによって生成される場合がある。非慣性キャビテーションは、超音波などのエネルギー入力によってサイズまたは形状が振動するボイドまたは気泡に基づく。対照的に、ボイドは、例えば特定の流速で狭窄したチャネルに液体を通過させることによって、または液体内の物体を機械的に回転させることによって、慣性キャビテーションのために機械的に生成される。慣性キャビテーションは、流体力学的キャビテーションと呼ばれることもある。
流体力学的キャビテーションユニットの例は、Hydro Dynamics,IncのShockWave Xtracto(商標)である。
【0094】
キャビテーション力によって生成される衝撃波は、剪断ユニットによって生成される剪断力とは本質的に異なる。剪断ユニットは、懸濁液を機械的に生成される剪断力にかけ、懸濁液を本質的に一定の圧力にかけるが、キャビテーションユニットは、本質的に懸濁液を高圧の変化または変動にかける。圧力変化は、10倍超、例えば、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍であり、好ましくは、90倍超、または100倍、最も好ましくは200倍超、例えば300倍である。さらに好ましくは、圧力変化または変動は、短い期間にわたって、または短い時間間隔で起こり、例えば10分未満、例えば5分または2分の内に、好ましくは60秒未満、例えば30、10秒の内に、そして最も好ましくは1秒未満、例えば100マイクロ秒未満、10マイクロ秒、1マイクロ秒、100ナノ秒、10ナノ秒、または1ナノ秒未満の内に起こる。
【0095】
キャビテーションユニットの動作は、機械的な動きではなく圧力変動に基づいているため、キャビテーションユニットは効果的な粒子径減少装置ではない。これは、例えば衝撃波の形態の圧力波に曝されている粒子が、ローターおよびステーターなどの2つの平行なプレート間で剪断力に曝される場合と比較して異なる反応を示すからである。例えば、圧力波に曝された粒子は固体粒子の圧縮と弾性変形によって体積が減少する傾向があり得るが、剪断力に曝された粒子は引き裂かれたり2つ以上の粒子部分に分割されたりすることによって体積が減少する傾向があり得る。
【0096】
本開示の一実施形態では、剪断ユニットは本質的に一定の圧力で動作するように構成され、キャビテーションユニットは、10倍を超える圧力変化、好ましくは50倍を超える圧力変化、最も好ましくは100倍を超える圧力変化の動作で動作するように構成される。さらなる実施形態では、圧力変化は、10分未満、より好ましくは10秒または1秒未満、例えば100ナノ秒、10ナノ秒、または1ナノ秒未満の時間間隔で起こる。
【0097】
図1に示すように、ホップと液体の混合物は、剪断ユニットと流体力学的キャビテーションユニットの組み合わせに1回以上通される。混合物をキャビテーション力にかけることは、ホップ芳香の抽出を促すと見られる。驚くほど効率的な抽出および選択性は、特に、実施例1に例示されるように、ホップ粒子が十分に分散され、粒子径が剪断ユニットによって減少される場合に、混合物を流体力学的キャビテーション力に曝すことによって得ることができる。
【0098】
本開示の一実施形態では、キャビテーションユニットは、混合物中に衝撃波および圧力変動を生成するように構成される。
【0099】
さらに有利には、抽出ユニットまたはその一部は、25℃未満の温度などの低温で運転される。実施例1に記載されているように、剪断ユニットおよび/またはキャビテーションユニットが4℃などの低温で運転された場合、驚くほど効率的かつ選択的な抽出が観察された。
【0100】
本開示の一実施形態では、剪断ユニットおよび/またはキャビテーションユニットは、1~15℃の範囲または2~10℃の範囲など25℃未満の温度で、好ましくはおよそ4℃で作動するように構成される。
【0101】
ガス
ホップ混合物およびホップ芳香の酸化のリスクを回避するために、抽出ユニットは、空気の侵入を防ぐべく動作中に周囲に対して有利にシールされる。さらに有利には、ユニットは、不活性または非酸化ガスを含み、これは、使用前に、および任意選択的に使用中にユニットに導入または充填することができる。ホップ混合物用の不活性または非酸化ガスの例には、CO、N、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0102】
例えば、水和タンクは、使用前に不活性ガスまたは非酸化ガスで充填され得、さらに、使用中に正のガス流圧力を含むように構成され得る。したがって、使用中は不活性ガスまたは非酸化ガスのみがユニット内に存在する。空気の侵入と混合物の偶発的な酸化のリスクをさらに減らすために、ガスは、正圧またはガスの過圧が得られるようにタンクに充填される。有利には、過圧は、0.1から1.5バールの範囲、例えば、0.2から1.5バールの範囲、例えば、およそ0.2、0.4、0.5、0.7、1、1.5バールなど、0.1バールを超える。
【0103】
本開示の一実施形態では、ガスは、CO、N、およびそれらの組み合わせの群から選択される。好ましい実施形態では、ガスはCOである。さらなる実施形態では、正のガス流圧力は、0.1から1.5バールの範囲、例えば0.2から1.5バールの範囲、例えば、およそ0.2、0.4、0.5、0.7、1、1.5バールなど、0.1バールを超える。
【0104】
ガス流圧力が高いほど、ユニットはより複雑でエネルギーを消費するようになる。混合物への空気の侵入のリスクは、ガス流がホップ混合物の上および全体に、すなわちタンクの上部全体に発生した場合、低いガス流圧力でもさらに低減され得ることが見出された。これにより、ガス流がタンクをパージする一方、ガス流は、エアブランケットまたはエアカーテンと同じ方法で、ホップ混合物の表面上および全体にガス層を形成する。
【0105】
本開示の一実施形態では、ガスはパージガスである。さらなる実施形態では、ガスは、タンクの上部を流れるように構成される。
【0106】
抽出ユニットへの空気の侵入および混合物の酸化のリスクをさらに低減するために、ユニットは、図1に示されるようなキャビテーションタンク6を含み得る。「キャビテーションタンク」という用語は、混合物がキャビテーションユニットから排出された後、混合物を収容するように構成されたタンク、コンテナ、またはチャンバを意味する。有利には、キャビテーションタンクは、使用前に不活性ガスまたは非酸化ガスで充填され得、さらに、水和タンクと同じ方法で、使用中に正のガス流圧力を含むように構成され得る。
【0107】
本開示の一実施形態では、ユニットは、キャビテーションユニットの後ろで混合物を収容するように構成されたキャビテーションタンク6をさらに含む。キャビテーションタンクは、バッファタンクとも呼ばれる。さらなる実施形態では、キャビテーションタンクは、正のガス流圧力を含むように構成される。さらなる実施形態では、ガスは、CO、N、およびそれらの組み合わせの群から選択され、および/または正のガス流圧力は、0.1から1.5バールの範囲、例えば0.2から1.5バールの範囲、例えば、およそ0.2、0.4、0.5、0.7、1、1.5バールなど、0.1バールを超え、および/またはガスはパージガスであり、および/またはキャビテーションタンクの上部を流れるように構成される。
【0108】
バッファタンクのサイズによって、抽出ユニットの容量が決まる。ビール製品の生産のために最適化されたホップ抽出の場合、サイズは有利には20~70hLである。本開示の一実施形態では、キャビテーションタンクは、20~70hL、より好ましくは30~50hL、例えば40hLの容量を有する。
【0109】
液体
芳香抽出効率と選択性は、抽出に使用される液体に依存する。しかしながら、抽出された芳香が飲料製品での使用を意図する場合、液体は、有利には、前記飲料製品または飲料製品の前駆体である。なぜなら、これはシステム効率を改善するからである。
【0110】
例えば、図2および3に示されるように、液体は、ビールフィードライン13から取られ得る。ビールフィードは、(例えば、図3の点線で示されるように)分離ユニット8の前で取られる麦汁、または(例えば、図3または図2に点線で示されるように)分離ユニットの後ろで取られるグリーンビール、例えば遠心分離されたグリーンビールであり得る。したがって、液体は、遠心分離されていない、遠心分離された、ろ過されていない、またはろ過されたビールであり得る。
【0111】
ホップ抽出の効率と選択性は、抽出に使用される液体に依存する。より味わい深いホップ芳香に対する驚くほど効率的な抽出および選択性は、0.5~12体積%のエタノール、例えば3~10体積%の範囲のエタノールを含む液体、例えば0.5~12体積%の範囲のエタノール、例えば3~10体積%の範囲のエタノール、例えば4~8体積%の範囲のエタノール、例えばおよそ約6体積%のエタノールを含むグリーンビールを使用して得られた。一実施形態では、液体は、実施例1に記載されているようなグリーンビールである。
【0112】
グリーンビールを液体として使用すると、酵母の量が少ないというさらなる利点がある。したがって、グリーンビールにおいては、典型的に、新たに発酵した麦汁中に存在するそれら固形物の少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%が除去されている。したがって、グリーンビールは、新たに発酵した麦汁に含まれる酵母細胞の最大20%、例えば最大10%など、酵母細胞の最大30%を含む。これは、限られた数の酵母細胞がキャビテーションユニットに曝されることを意味する。酵母細胞をキャビテーション力に曝すと、酵母細胞が破壊され、味に有害な細胞酵母成分が放出される可能性がある。これは、液体が高レベルの酵母細胞を含む場合に特に当てはまる可能性がある。したがって、抽出液中の低濃度の酵母が好ましい。
【0113】
さらに、そのような液体に基づいて生成されたホップ芳香抽出物は、アルコールを含む流体と混合するための高い親和性を有することが観察された。
【0114】
抽出プロセスで使用される原材料の量を減らすために、液体は有利には循環されたグリーンビールであり得る。「循環されたグリーンビール」という用語は、固形物の少なくとも70%が除去された、複数の分離ステップに曝されたグリーンビールを意味する。したがって、循環されたグリーンビールは、さらに加工されたグリーンビールと呼ばれることもある。
【0115】
本開示の一実施形態では、液体は、0.5~12体積%のアルコール、より好ましくは3~10体積%、例えばおよそ5、6、7、8、9体積%のアルコールを含む。さらなる実施形態では、液体は、グリーンビールまたは循環されたグリーンビールである。
【0116】
固体ホップと液体の混合物は懸濁液を形成する。懸濁液の安定性、すなわち液体内の固体粒子の分散と均一な分布は、粒子径、液体粘度、液体乱流などのパラメータに依存する。剪断ユニットに曝されたホップ混合物の場合、粒子径はより細かく、粒子の分散はより均一であり、粘度は高く、懸濁液はスラリーと呼ばれる場合があり、泥またはセメントと同じ物理的特性を有する。
【0117】
懸濁液の安定性を改善するために、ユニットは、1つまたは複数の攪拌手段を含み得る。攪拌手段の例は、YTRON-Yジェットストリームミキサーである。攪拌効率を改善するために、攪拌手段は、有利には、水和タンクおよび/またはキャビテーションタンクに配置される。
【0118】
本開示の一実施形態では、水和タンクおよび/またはキャビテーションタンクは、攪拌手段を含む。
【0119】
抽出方法
本開示は、芳香抽出物、特にホップ芳香抽出物を生成する方法を提供する。有利なことに、この方法は以下のステップを含む:
・ホップまたはその一部と液体との混合物、および正のガス流圧力を含むコンテナを提供するステップ、
・ホップを剪断し、それによってホップスラリーを形成するステップ、
・ホップスラリーを流体力学的キャビテーションユニットに通し、それによってホップ芳香を抽出するステップ、および
・任意選択的に、剪断ステップおよび/またはキャビテーションステップを複数回繰り返し、それによってホップ芳香抽出物が生成されるステップ。
【0120】
有利なことに、この方法は、上記の抽出ユニットで実行されるように構成される。好ましくは、剪断ステップおよびキャビテーションステップは、1から5回の範囲、例えば3回など、複数回繰り返される。
【0121】
改善された抽出効率および選択性のために、この方法は、実施例1で実証されるように、好ましい液体、温度、およびキャビテーションステップの繰り返し回数を使用して有利に実行される。
【0122】
本開示の一実施形態では、液体は、麦汁またはグリーンビールまたは循環されたグリーンビールまたはさらに加工されたグリーンビールなど、ろ過されていないビールである。さらなる実施形態では、スラリーは、キャビテーションユニットに2回以上、例えば3回または4回通される。さらなる実施形態では、この方法は、1~15℃または2~10℃の間など25℃未満の温度で、好ましくはおよそ4℃で実施される。
【0123】
開示された方法によって得られたホップ芳香抽出物は、実施例1にさらに記載されるように、驚くほど高い合計の抽出成分を含むことが見られた。抽出されたホップ成分は、ミルセンおよびリナロールなどのより味わい深い芳香の驚くほど高い濃度をさらに含んでいた。具体的には、高濃度のミルセンとリナロールが低濃度のβ-シトロネロールと組み合わせで見られた。したがって、生成されたホップ芳香抽出物は、味わい深いビールを提供するために少量の抽出物のみが必要とされることを促す組成および濃度を有する。したがって、少量のホップ原料から製造された抽出物を使用して、同様に味わい深いビールを得ることができる。
【0124】
本開示の一態様は、低濃度のβ-シトロネロールと組み合わせて、大量のミルセンおよびリナロールを含むホップ抽出物およびビール製品に関する。
【0125】
本開示の一実施形態では、25μg/L以上のミルセン、および190μg/L以上のリナロール、および42μ/L以下のβ-シトロネロールを含むホップ抽出物またはビール製品。
【0126】
さらなる実施形態において、ホップ抽出物またはビール製品は、50μg/L以上のミルセン、例えば、100μg/L以上のミルセンまたは150μg/L以上のミルセン、および200μgL/L以上のリナロール、例えば205μgL/L以上のリナロール、または210μgL/L以上のリナロール、または215μgL/L以上のリナロール、および15μg/L以下のβ-シトロネロール、例えば14μg/L以下のβ-シトロネロール、または13μg/L以下のβ-シトロネロール、または12μg/L以下のβ-シトロネロールを含む。
【0127】
本開示の一実施形態では、抽出物は、200~1000μg/l、より好ましくは400~600μg/l、例えば466または551μg/lの抽出されたホップ成分の合計を含む。さらなる実施形態では、抽出されたホップ成分は、ミルセンおよび/またはリナロールを含み、および/または抽出されたミルセンの量は10~500μg/l、より好ましくは50~200μg/l、例えば130または170μg/lであり、および/または抽出されたリナロールの量は150~500μg/l、より好ましくは180~250μg/l、例えば190または215μg/lである。前述の濃度は、好ましくは、6kg乾燥ホップ/hLのホップ対液体の比率を用いて得られる。
【0128】
抽出されたホップ成分は、ミルセン、リナロール、ゲラニオールなどのより味わい深い芳香の驚くほど高い相対比をさらに含んでいた。例えば、実施例1の表1に見られるように、リモネン、酢酸シトロネリル、およびa-テルピノールと比較したミルセン、リナロール、およびゲラニオールの相対比は、本開示によると、抽出されたホップについてはるかに高かった(カビホップ(Cavihop)試験3Cおよび3D)。例えば、ミルセン:リモネンの比率はカビホップ試験では130:1および170:1であり、従来の抽出ではわずか6:1である。同様に、リナロール:リモネンの比率はカビホップ試験では215:1および190:1であり、従来の抽出ではわずか120:1である。また、ゲラニオール:リモネンの比率は、従来(19:1)よりもカビホップ試験(81:1および69:1)の方がはるかに高い。実施例1で得られた比率の概要を以下の表に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0129】
本開示の一態様は、リモネン、酢酸シトロネリル、およびa-テルピノールと比較して、ミルセン、リナロール、およびゲラニオールの高い相対比を含むホップ抽出物およびビール製品に関する。
【0130】
本開示の一実施形態では、ホップ抽出物またはビール製品は、それぞれ50:1、150:1、および40:1を超える、リモネンと比較したミルセン、リナロール、およびゲラニオールの比率を含む。
【0131】
好ましい実施形態では、ミルセン:リモネンの比は、50:1より上、より好ましくは100:1より上、そして最も好ましくは120:1より上、例えば130:1または170:1である。
好ましい実施形態では、リナロール:リモネンの比は、150:1より上、より好ましくは170:1より上、そして最も好ましくは180:1より上、例えば190:1または215:1である。
好ましい実施形態では、ゲラニオール:リモネンの比は、40:1より上、より好ましくは50:1より上、そして最も好ましくは60:1より上、例えば69:1または81:1である。
【0132】
本開示の一実施形態では、ホップ抽出物またはビール製品は、それぞれ50:1、100:1、および40:1を超える、酢酸シトロネリルと比較したミルセン、リナロール、およびゲラニオールの比率を含む。
【0133】
好ましい実施形態では、ミルセン:酢酸シトロネリルの比は、50:1より上、より好ましくは100:1より上、そして最も好ましくは120:1より上、例えば130:1または170:1である。
好ましい実施形態では、リナロール:酢酸シトロネリルの比は、100:1より上、より好ましくは150:1より上、そして最も好ましくは180:1より上、例えば190:1または215:1である。
好ましい実施形態において、ゲラニオール:酢酸シトロネリルの比は、40:1より上、より好ましくは50:1より上、そして最も好ましくは60:1より上、例えば69:1または81:1である。
【0134】
本開示の一実施形態では、ホップ抽出物またはビール製品は、それぞれ5:1、15:1、および4:1を超える、a-テルピネオールと比較したミルセン、リナロール、およびゲラニオールの比率を含む。
【0135】
好ましい実施形態において、ミルセン:a-テルピネオールの比は、5:1より上、より好ましくは10:1より上、そして最も好ましくは11:1より上、例えば12:1または15:1である。
好ましい実施形態において、リナロール:a-テルピネオールの比は、15:1より上、より好ましくは16:1より上、例えば17:1または19:1である。
好ましい実施形態では、ゲラニオール:a-テルピネオールの比は4:1より上、より好ましくは5:1より上、例えば6:1または7:1である。
【0136】
ビールまたは飲料を製造するためのシステム
図2は、本開示によるビール製品を製造するためのシステムの実施形態を示す。このシステムは、本開示によるホップ芳香抽出ユニット、発酵コンテナ7、および分離ユニット8を流体連通下に含む。このシステムは、移送手段として構成された少なくとも1つのポンプユニット9をさらに備える。
【0137】
例えば、ポンプユニットは、発酵麦汁を発酵コンテナから分離ユニットに移送するように構成することができ、図2に示すように、移送は第1の移送ライン10aで行われ得る。分離ユニットは、発酵麦汁由来の固形物の少なくとも70重量%を除去するように構成することができ、その結果、分離ユニットは発酵麦汁をグリーンビールに変換する。
【0138】
ポンプユニットはさらに、グリーンビールを分離ユニットからシステム出口に移送するように構成することができ、移送は第2の移送ライン10bで行われ得る。任意選択的に、出口は、図2に示されるように、ろ過ユニット11をさらに含む。
【0139】
本開示の一実施形態では、システムは、ろ過ユニット11をさらに含む。
【0140】
ホップ芳香抽出ユニットの流れ出口は、点線によって図2に示されるように、第1の移送ライン、第2の移送ライン、または発酵コンテナ10cのいずれかに流体的に接続され、その結果、ユニット内で調製されたホップ芳香抽出物は、発酵麦汁またはグリーンビールのいずれかに添加することができる。ホップ芳香抽出物を添加するための複数の機会により製造プロセスの柔軟性は高められる。
【0141】
本開示の一実施形態では、ポンプユニットは、発酵麦汁を第1の移送ラインでコンテナから分離ユニットに移送し、第2の移送ラインでグリーンビールを分離ユニットから出口に移送するように構成され、ここで、抽出ユニットの流れ出口10は、第1の移送ライン10a、第2の移送ライン10b、またはコンテナ10cと流体的に接続されている。
【0142】
発酵コンテナ7は、発酵麦汁を含むように構成することができ、例えば、前記酵母による麦汁の発酵を可能にする条件下で麦汁および酵母を含むように構成することができる。
【0143】
効率的な発酵および発酵コンテナからの発酵麦汁の容易な移送のために、発酵コンテナは、有利には、円筒形の円錐タンク(CCT)である。
【0144】
本開示の一実施形態では、発酵コンテナは、円筒形の円錐タンク(CCT)である。
【0145】
有利なことに、分離ユニットは、発酵麦汁をグリーンビールに変換するように、すなわち、固形物の少なくとも70%を除去することによってグリーンビールに変換するように構成される。発酵麦汁は、典型的には、酵母細胞の形態の固形物、および/またはホップまたはその一部の粒子を含む。このような分離は、遠心分離機を使用して効率的に得られる。
【0146】
本開示の一実施形態では、分離ユニットは、固形物の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80または90%を除去するように構成される。さらなる実施形態では、分離ユニットは、固形物を除去するように構成され、前記固形物は、酵母細胞および/またはホップまたはその一部を含む。さらなる実施形態では、分離器ユニットは遠心分離機である。
【0147】
ポンピング、遠心分離、剪断、キャビテーションなどの機械的処理ステップにより、熱エネルギーが生成される場合がある。放出された熱エネルギーは、ホップ混合物、ホップ芳香抽出物、またはグリーンビールの加熱をもたらし得る。剪断およびキャビテーションは、周囲の25℃より低い温度で有利に実施され、グリーンビールまたはラガーリングビールは、より低い温度で有利に貯蔵される。特定の発酵に使用される酵母の種類によっては、発酵中は低温が好ましい場合もある。したがって、システムは、有利には、1つまたは複数の冷却ユニットを含む。さらに有利には、少なくとも1つの冷却ユニットが、剪断ユニットおよび/またはキャビテーションユニットに隣接して配置される。
【0148】
本開示の一実施形態では、システムは1つまたは複数の冷却ユニットを含む。
【0149】
方法
本開示は、ホップ芳香抽出物を調製するステップ、および調製されたホップ芳香抽出物を発酵麦汁またはグリーンビールに添加するステップを含む、ビール製品を製造する方法を提供する。
【0150】
有利なことに、この方法は、上記のシステムで実行されるように構成される。
【0151】
ホップ芳香抽出物を発酵麦汁に加えると、抽出物を含む発酵麦汁はその後グリーンビールに変換される。したがって、発酵麦汁および抽出物は、発酵麦汁由来の固形物の一部を除去するステップに供される。有利なことに、除去は、遠心分離機などの相分離手段によって得られる。これはさらに、ホップ芳香抽出物に元々存在する固体粒子、例えば、ホップまたはその一部が除去され得るという利点を有する。これは、得られるグリーンビールの味と外観に影響を及ぼし得る。
【0152】
本開示の一実施形態では、この方法は、発酵麦汁から固形物の一部を除去するステップを含む。さらなる実施形態では、除去は、遠心分離機などの相分離手段によって得られる。さらなる実施形態では、固形物の少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80または90重量%が除去される。
【0153】
本開示によるホップ芳香抽出物は、実施例1にさらに記載されるように、抽出成分の驚くほど高い合計、ならびに選択された成分の驚くほど高い相対比を含むことが見られた。抽出されたホップ成分は、ミルセンおよびリナロールなど、より味わい深い芳香の驚くほど高い濃度を含んでいた。したがって、製造されたホップ芳香抽出物は、味わい深いビールを提供するために少量の抽出物のみが必要とされることを促す組成および濃度を有する。したがって、実施例1にも示されているように、少量のホップ原料から製造された抽出物を使用して、同様に味わい深いビールを得ることができる。
【0154】
驚くべきことに、乾燥ホップ原料の量が約20重量%減少する可能性があることが分かった。これは、ヘクトリットルビールあたり2~25kgの範囲の乾燥ホップを使用するのに十分であることに対応する。
【0155】
本開示の一実施形態では、芳香抽出物は、ヘクトリットルビールあたり2~25kgの乾燥ホップ、より好ましくはヘクトリットルビールあたり4~20kgの乾燥ホップ、例えばヘクトリットルビールあたり4~8kgの範囲の乾燥ホップ、例えばヘクトリットルビールあたりおよそ6、12、または20kgの乾燥ホップに対応する量で添加される。
【0156】
飲料の連続生産のためのシステムと方法
本開示の改善された芳香抽出は、生産のアップスケールを含む、生産の柔軟性の向上を促進する。芳香抽出効率および/または選択性が増加するので、バッチ抽出プロセスと比較して、連続抽出プロセスを使用する場合、同様の抽出が得られ得る。連続抽出プロセスは、通常、バッチプロセスと比較して、より速く、より簡単で、より多くのボリュームに対してより簡単にアップスケールされる。
【0157】
したがって、有利には、芳香抽出ユニットは連続的に動作するように適合され、これは、植物/ホップと液体の混合物が、図1~3に矢印で示されるように、混合容器から剪断ユニットに、剪断ユニットからキャビテーションユニットに、そしてキャビテーションユニットから、任意選択的に最初にバッファタンクへ、次いで混合タンクおよび/または剪断ユニットに戻るように連続的に移送されることを意味する。剪断ユニットとキャビテーションユニットの組み合わせを通るこの循環は、何度でも繰り返すことができ、1循環サイクルは、剪断ユニットとキャビテーションユニットの組み合わせを通る循環として定義される。任意のサイクルに続いて、混合物の全部または一部は、図1~3に示されるように、流れ出口10で除去され得る。流れ出口の量は、循環のための閉ループを形成する第1の位置と、混合物の少なくとも一部が流れ出口で除去される第2の位置とを有する流れ方向コントローラ5cによって制御され得る。
【0158】
出口10で除去された芳香抽出混合物は、図3の点線で示されるように分離ユニットの前または後のいずれかでろ過されていないビールフィードに添加され得るか、または図2の点線10cで示されるように発酵コンテナに添加され得る。
【0159】
芳香抽出ユニットの連続動作、ならびに飲料の連続生産を確実にするために、流れ出口10で除去される流体の量は、水和タンク/混合容器2に供給される等量の流体によって有利に相殺され、その結果、抽出ユニット内の流体の量は、動作中は基本的に一定である。供給される流体は、図3に示すようにビールフィードライン13から取ることができ、ここで、ビールフィードは、分離ユニット8の前に取られる麦汁であるか、または分離ユニットの後に取られるグリーンビールであり得、したがって、液体は、遠心分離されていない、遠心分離された、ろ過されていない、またはろ過されたビールであり得る。
【0160】
驚くべきことに、飲料フィードと抽出ユニットが連続的な流体連通下にある場合、高い芳香抽出効率および/または選択性が得られ得ることが見出された。有利なことに、連続流体連通は、飲料フィードから抽出ユニットへの連続流体供給、および抽出ユニットから飲料フィードへの同時連続流体除去を含む。さらに有利には、抽出ユニットに供給される流体と抽出ユニットから除去される流体は同じである。例えば、供給および除去される流体の量は、20、33、または45hLであり得る。
【0161】
さらに有利には、飲料フィードの一部のみが供給され、抽出ユニットと交換される。これは、飲料フィードの少なくとも一部と抽出ユニットが連続流体連通下にあることを意味する。飲料フィードの一部のみが抽出ユニットと交換されるため、部分的な連続流体連通と呼ばれる場合がある。例えば、450hL/hの合計フィードの場合、45hL/hのみを交換でき、100hL/hの合計フィードの場合、33hL/hのみを交換でき、200hLの合計フィードの場合、20hLのみを交換することができる。驚くべきことに、5~40体積%、好ましくは5~30または8~20体積%の飲料交換の場合、システムは1~15℃または2~10℃などの25℃未満の温度で、好ましくは約4℃で動作するように構成されることが見出された。したがって、キャビテーションユニットに関連する混合物の温度上昇は、飲料フィードで希釈すると低減される。
【0162】
本開示の一実施形態では、飲料フィードおよび抽出ユニットは、連続流体連通下にある。さらなる実施形態では、飲料フィードの少なくとも一部および抽出ユニットは、連続流体連通下にある、または部分的な連続流体連通下にある。さらなる実施形態では、部分的な流体連通は、合計飲料フィードの5~40体積%、より好ましくは5~30または8~20体積%の間である。
【0163】
本開示の別のさらなる実施形態では、システムは、飲料フィードと抽出ユニットとの間で10~100hL/h、より好ましくは20~50hL/h、例えば20、33、または45hL/hを連続的に交換するように構成される。
【0164】
連続抽出および飲料製造に適合したシステムの例は、実施例2にさらに記載されている。
【0165】
飲料製品の連続生産のために、水和タンクは、有利には、事前に充填された開始状態を有する。図3に示すように、水和タンクは、最初の飲料フィードで事前に充填され得る。連続運転を開始すると、水和タンクの事前に充填された飲料フィードは、芳香抽出物を形成するために循環ユニットによって剪断ユニットおよびキャビテーションユニットに移送され、任意選択的に剪断ユニットおよびキャビテーションユニットを複数サイクル循環し、次いで抽出物は飲料フィードに移送または排出され、混合される。同時に、水和タンクの事前に充填された飲料フィードは、新しい飲料フィードに置き換えられる。水和タンクへの飲料の連続供給は、抽出物の排出量によって有利に相殺される。
【0166】
本開示の一態様は、以下のステップを含む、飲料製品を製造する方法に関する:
a)飲料フィードを提供するステップ、
b)飲料フィードを第1の体積画分と第2の体積画分とに分割するステップ、
c)正のガス流圧力に供されたコンテナ内で、第1の体積画分を植物またはその一部と混合し、それによって混合物を形成するステップ、
d)前記混合物を少なくとも1回の剪断およびキャビテーションサイクルに供し、それにより芳香抽出物を形成するステップ、
e)芳香抽出物の少なくとも一部を排出し、第2の体積画分と混合し、それによって飲料製品を製造するステップ。
【0167】
芳香抽出物および形成された飲料製品の温度を制御するために、第1の体積画分は有利には小部分である。本開示の一実施形態では、第1の体積画分は、飲料フィードの50%以下であり、より好ましくは、45、40、35、33、30、25、または20%以下である。
【0168】
芳香抽出効率および選択性を改善するために、混合物は、有利には、剪断およびキャビテーションの複数回のサイクルに供される。本開示の一実施形態では、ステップ(d)は2サイクル、より好ましくは3または4サイクル繰り返される。
【0169】
飲料製品内の固形物の量を減らすために、飲料フィードは有利には分離ステップに供される。本開示の一実施形態では、この方法は、飲料フィードを分離するステップをさらに含む。
【0170】
長期の連続的かつアップスケーラブルな生産を確実にするために、水和タンクへの飲料フィードは有利に一定であり、および/または水和への相対的な飲料フィードは、排出が一定であるのと比較して一定であり、その結果、図3に示す水和タンクおよび/またはキャビテーションタンクの液体量は時間の経過と共に一定である。
【0171】
本開示の一実施形態では、プロセスは連続的であり、その結果、ステップ(b)の第1の体積画分は、ステップ(e)の放出された芳香抽出体積に本質的に等しい。
【0172】
実施例
本発明は、以下に提供される実施例によってさらに記載される。
【0173】
実施例1-芳香抽出物の製造
ホップ芳香抽出物を図1に具体化された設定において製造した。6kg乾燥ホップ/hL。
【0174】
第1の試験(実施3C):第1の量のホップを水和タンクに加え、タンクに第1の量のラガータイプのグリーンビール(「ブランドA」とも呼ばれる)をさらに加えた。第2の試験(実施3D):20重量%少ないホップを水和タンクに加えた。これらの試験の両方で、発酵中にホップを追加せずにラガーを調製した。
【0175】
タンクに0.5バールのCO圧力をかけた。COはタンクの上部に一定の流れとして供給した。
【0176】
混合物を、剪断ユニットと流体力学的キャビテーションユニットの組み合わせを通して3回、すなわち3サイクル循環させた。剪断ユニットはYTRON-Zホモジナイザーであり、キャビテーションユニットはHydro Dynamics,Inc.のShockWave Xtractor(商標)であった。最大4~7C増大する
【0177】
3回目のサイクル後、流れ方向コントローラを第2の位置に設定し、抽出した混合物を流れ出口で除去し、グリーンビールに加えた。
【0178】
抽出された混合物の組成を、SPME-GC-MS法(固相マイクロ抽出ガスクロマトグラフィー-質量分析)に基づいてガスクロマトグラフィー(GC)を使用して分析した。
【0179】
表1に、製造された抽出物の化学組成を示し、抽出された成分の種類、量、および抽出された成分の合計を示す。比較のために、従来の方法で発酵中にドライホッピングされたラガービールの化学組成が表1に含まれる(試験番号3A)。試験3Cで用いたのと同じ量のホップペレットをドライホッピングに使用した。
【0180】
比較のために、従来のドライホッピングプロセスにおいて同量のホップを使用する従来のビールの化学組成が含まれる(試験番号3A)。従来の製造は、背景の節で記載したとおりであり、ホップと一緒に麦汁の混合物を沸騰させることを含み、沸騰に続いて、沸騰した麦汁を発酵タンクに移し、酵母を加えることによって発酵させ、その後酵母が除去された後、ビールはラガーリングタンクまたは熟成タンクに貯蔵され、さらなる使用に備える。ホップはプレスされたホップペレットの形態であり、開始時または麦汁発酵中に発酵タンク内の麦汁に加えられる。
【表4】
【0181】
従来のドライホッピングプロセス(試験番号3A)では、抽出されたホップ成分の合計は191μg/lであり、そのうち6μ/lがミルセン、120μ/lがリナロールであることが観察された。
【0182】
本開示の方法によって得られた抽出物について、抽出されたホップ成分のはるかにより高い合計が観察された。従来のホップ量(実施3C)から得られた抽出物について、抽出されたホップ成分の合計は551μg/lであり、そのうち170μ/lはミルセン、215μ/lはリナロールである。20重量%少ないホップ(実施3D)を使用して得られた抽出物について、抽出されたホップ成分の合計は466μg/lであり、そのうち130μ/lはミルセン、190μ/lはリナロールである。
【0183】
したがって、本開示の方法を使用して、より効率的で選択的なホップ抽出が得られた。
【0184】
実施例2:連続システム
図3に示すシステムを、1時間あたり100hLの合計飲料フィード13で使用した。システムを起動する前に、抽出ユニットをその容量まで満たした。例えば、バッファタンクを、例えば40hLの全容量まで満たした。
【0185】
バッファタンクが満たされると、100hL/hの飲料フィードの一部を芳香抽出ユニットに加え、より具体的には、33hL/hのフィードを混合容器2に連続的に加え、同時に33hL/hを流れ出口10で除去した。
【0186】
したがって、連続的な芳香抽出および連続的な飲料製造が得られ、高い生産率を促進する。飲料フィードと抽出ユニットの間の連続的な部分流体交換により、システムの温度は25°C未満である。
【0187】
実施例3:酸素摂取量
周囲から抽出ユニットへの酸素摂取量を測定し、特に、水和タンクへのホップの供給中および供給後に、周囲から水和タンクへの酸素摂取量を測定した。
【0188】
図1に具体化されているように、ホッパユニットのない抽出ユニットの場合、ホップの供給後に酸素摂取量を測定することができる。しかしながら、図3に具体化されるように、3つのホッパユニットを備えた抽出ユニットの場合、ホップの供給後に検出可能な酸素摂取量を測定することはできない。したがって、ホッパユニットは、抽出ユニットへの有害な酸素の摂取を大幅に低減および/または排除し得る。
【0189】
酸素摂取量は、図3にスケッチされた1つまたは複数のホッパユニットを含む、実施例2に記載の連続動作システムについても測定され、ここで溶存酸素(DO)センサを使用して酸素含有量が測定された。このシステムは、360hL/hの合計飲料フィード13で使用され、芳香抽出ユニットの前のビールフィード13の酸素含有量は約20ppbまで測定された。
【0190】
36hL/hなど、360hL/hの飲料フィードの一部を芳香抽出ユニットに連続的に加え、同時に36hL/hを流れ出口10で除去した。芳香抽出ユニット内の36hL/hフローの酸素含有量が流れ出口の直前で測定され、約32ppbであると測定され、その最大変動は約10ppbである。
【0191】
36hL/hの芳香抽出流量は、流れ出口10で排出され、飲料フィード13に排出されて混合される。したがって、芳香抽出ユニット後の飲料フィード混合物の、結果として生じる酸素含有量は、23.2ppbであると計算された(すなわち((360hL/h × 20ppb)+(36hL/h × 32ppb)/360hL/h)。
【0192】
したがって、抽出ユニット前の酸素含有量(20ppb)は、抽出ユニット後の酸素含有量(23.2ppb)に匹敵する。したがって、ホッパユニットを含む抽出ユニットは、抽出ユニットへの有害な酸素の取り込みを大幅に低減および/または排除することが見られた。
【0193】
項目
本開示の発明は、以下の項目によりさらに定義することができる。
【0194】
1.ホップ芳香抽出ユニット(1)であって、
・ホップまたはその一部と液体の混合物を含む水和タンク(2)であって、正のガス流圧力を含むように構成された水和タンク(2)、
・ホップを剪断するように構成された剪断ユニット(3)、
・流体力学的キャビテーションユニット(4)、および
・少なくとも1つの循環ユニット(5a、5b)を備え、
水和タンク、剪断ユニット、キャビテーションユニットは流体連通下にあり、少なくとも1つの循環ユニットは、混合物を循環させるように構成されている、ホップ芳香抽出ユニット(1)。
【0195】
2.循環ユニットが、循環のための閉ループを形成する第1の位置と、混合物の少なくとも一部が流れ出口(10)で除去される第2の位置とを有する流れ方向コントローラ(5c)をさらに備える、項目1に記載のユニット。
【0196】
3.少なくとも1つの循環ユニットが、混合物をタンクから剪断ユニットに、さらにキャビテーションユニットに、そしてキャビテーションユニットからタンクおよび/または剪断ユニットに循環して戻すように構成されている、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0197】
4.第1および第2の循環ユニットを含み、第1の循環ユニット(5a)は、混合物をタンクから剪断ユニットに、さらにキャビテーションユニットに循環させるように構成され、第2の循環ユニット(5b)は、混合物をキャビテーションユニットからタンクおよび/または剪断ユニットに循環して戻すように構成される、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0198】
5.剪断ユニットおよび/またはキャビテーションユニットが、25℃未満、例えば、1~15℃または2~10℃の温度で、好ましくはおよそ4℃で動作するように構成されている、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0199】
6.ガスが、CO、N、およびそれらの組み合わせの群から選択される、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0200】
7.正のガス流圧力が、0.1から1.5バールの範囲など、0.1バールを超える、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0201】
8.ガスがパージガスである、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0202】
9.ガスがタンクの上部を流れるように構成されている、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0203】
10.タンクが、ホップまたはその一部をタンクに供給するように構成された開口部を備える、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0204】
11.ホップがドライホップペレットの形態である、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0205】
12.液体が、0.5~12体積%のエタノール、より好ましくは、およそ5、6、7、8、9体積%のエタノールなど、3~10体積%のエタノールを含む、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0206】
13.液体がグリーンビールまたは循環されたグリーンビールである、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0207】
14.タンクが、混合物がポートを介してタンクに出入りすることができるように構成された少なくとも1つのポート(2a)を備える、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0208】
15.タンクが、キャビテーションユニットから混合物を受け入れるように構成された第2のポート(2b)をさらに備える、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0209】
16.タンクが、タンクに液体を供給するように構成された第3のポート(2c)を含む、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0210】
17.キャビテーションユニットの後に混合物を収容するように構成されたキャビテーションタンク(6)をさらに備える、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0211】
18.キャビテーションタンクが正のガス流圧力を含むように構成されている、項目17に記載のユニット。
【0212】
19.ガスがCO、N、およびそれらの組み合わせの群から選択される、および/または正のガス流圧力が0.1から1.5バールの範囲など0.1バールを超える、および/またはガスがパージガスである、および/またはタンクの上部を流れるように構成される、項目17~18のいずれかに記載のユニット。
【0213】
20.水和タンクおよび/またはキャビテーションタンクが攪拌手段を含む、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0214】
21.剪断ユニットが、混合物中の剪断力を得るためのローター-ステーターシステムである、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0215】
22.キャビテーションユニットが、混合物中に衝撃波および圧力変動を生成するように構成されている、前述の項目のいずれかに記載のユニット。
【0216】
23.ビール製品を製造するためのシステムであって、
・発酵麦汁を収容するように構成された発酵コンテナ(7)、
・発酵麦汁の固形物の一部を除去し、それによって発酵麦汁をグリーンビールに変換するように構成された分離ユニット(8)、
・項目2~15のいずれかによるホップ芳香抽出ユニット、
・少なくとも1つのポンプユニット(9)を備え、
発酵コンテナ、分離ユニット、および抽出ユニットは流体連通下にあり、少なくとも1つのポンプユニットは移送手段として構成される、システム。
【0217】
24.ポンプユニットが、発酵麦汁を第1の移送ラインでコンテナから分離ユニットに移送し、第2の移送ラインでグリーンビールを分離ユニットから出口に移送するように構成され、
抽出ユニットの流れ出口(10)は、第1の移送ライン(10a)、第2の移送ライン(10b)、またはコンテナ(10c)と流体的に接続されている、項目23に記載のシステム。
【0218】
25.発酵コンテナが円筒形円錐タンク(CCT)である、項目23~24のいずれかに記載のシステム。
【0219】
26.分離ユニットが、固形物の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80または少なくとも90%を除去するように構成される、項目23~25のいずれかに記載のシステム。
【0220】
27.分離ユニットが固形物を除去するように構成され、前記固形物が酵母および/またはホップまたはその一部を含む、項目23~26のいずれかに記載のシステム。
【0221】
28.分離器ユニットが遠心分離機である、項目23~27のいずれかに記載のシステム。
【0222】
29.1つまたは複数の冷却ユニットをさらに備える、項目23~27のいずれかに記載のシステム。
【0223】
30.ろ過ユニット(11)をさらに含む、項目16~19のいずれかに記載のシステム。
【0224】
31.ホップ芳香抽出物を製造する方法であって、
a)ホップまたはその一部と液体の混合物、および正のガス流圧力を含む容器を提供するステップ、
b)前記液体中のホップを剪断し、それによりホップスラリーを形成するステップ、
c)ホップスラリーを流体力学的キャビテーションユニットに通し、それによってホップ芳香が抽出されるステップ、
d)任意選択的にステップ(b)および/または(c)を複数回繰り返すことにより、ホップ芳香抽出物が製造されるステップ、
を含む方法。
【0225】
32.液体がグリーンビールまたは循環されたグリーンビールである、項目31に記載の方法。
【0226】
33.スラリーがキャビテーションユニットに2回以上、例えば3回または4回通される、項目31~32のいずれかに記載の方法。
【0227】
34.1~15℃または2~10℃など25℃未満の温度で、好ましくはおよそ4℃で実施される、項目31~33のいずれかに記載の方法。
【0228】
35.抽出物が、200~1000μg/l、より好ましくは400~600μg/l、例えば466または551μg/lの抽出されたホップ成分の合計を含む、項目31~34のいずれかに記載の方法。
【0229】
36.抽出されたホップ成分がミルセンおよび/またはリナロールを含み、および/または抽出されたミルセンの量が10~500μg/l、より好ましくは50~200μg/l、例えば130または170μg/lであり、および/または抽出されたリナロールの量が150~500μg/l、より好ましくは180~250μg/l、例えば190または215μg/lである、項目35に記載の方法。
【0230】
37.ビール製品を製造する方法であって、
a)請求項31~36のいずれかに記載の方法によりホップ芳香抽出物を調製するステップ、
b)ステップ(a)で調製したホップ芳香抽出物を発酵麦汁またはグリーンビールに添加するステップ、
を含む方法。
【0231】
38.発酵麦汁から固形物の一部を除去するステップをさらに含む、項目37に記載の方法。
【0232】
39.除去が、遠心分離機などの相分離手段によって得られる、項目38に記載の方法。
【0233】
40.固形物の少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80または90重量%が除去される、項目38~39のいずれかに記載の方法。
【0234】
41.芳香抽出物が、ヘクトリットルビールあたり2~25kgの乾燥ホップ、より好ましくはヘクトリットルビールあたり4~20kgの乾燥ホップ、例えばヘクトリットルビールあたり6、12、または20kgの乾燥ホップに対応する量で添加される、項目37~40のいずれかに記載の方法。
【0235】
42.グリーンビールをろ過するステップをさらに含む、項目37~41のいずれかに記載の方法。
【0236】
43.グリーンビールをラガーリングするステップをさらに含む、項目37~41のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
44.グリーンビールに1種または複数種の追加の化合物を添加するステップをさらに含み、前記追加の化合物が、例えば、COおよび/または水である、項目37から41のいずれか1つに記載の方法。
【0238】
45.項目1~22のいずれかによるユニット内で実行されるように構成された、項目31~36のいずれかによる方法。
【0239】
46.項目23~30のいずれかによるシステム内で実行されるように構成された、項目37~44のいずれかによる方法。
【符号の説明】
【0240】
1 ホップ芳香抽出ユニット
2 水和タンクまたは混合容器
2a 第1のポート
2b 第2のポート
2c 第3のポート
3 剪断ユニット
4 流体力学的キャビテーションユニット
5 循環ユニット
5a 第1の循環ユニット
5b 第2の循環ユニット
5c 流れ方向コントローラ
6 キャビテーションタンクまたはバッファタンク
7 発酵コンテナ
8 分離ユニット
9 ポンプユニット
10 流れ出口
10a 第1の移送ライン
10b 第2の移送ライン
10c 第3の移送ライン
11 ろ過ユニット
12 ホッパユニット
12a 第1のホッパユニット
12b 第2のホッパユニット、例えばゲートホッパユニット
12c 第3のホッパユニット、例えば計量供給ホッパユニット
13 ビールフィード
【0241】
参考文献
[1]米国特許第2,830,904号
図1
図2
図3
図4
図5