(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149687
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】CD19及びCD3と結合可能な多重特異性抗原結合タンパク質、ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20241010BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024129056
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2021536788の分割
【原出願日】2019-12-23
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/123108
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物等1:2018年12月3日に公開されたアメリカ血液学会(ASH)年次総会、アブストラクト、2018年、ポスター発表、カリフォルニア州サンディエゴ、アメリカ合衆国 刊行物等2:2018年11月29日に公開されたアメリカ血液学会(ASH)年次総会、アブストラクト、2018年、オンライン公開、リンパ腫:前臨床化学療法および生物学的薬剤:ポスターIII血液(2018)132(補足1):4169 刊行物等3:2018年11月1日に公開されたアメリカ血液学会(ASH)年次総会、アブストラクト、2018年、オンライン公開
(71)【出願人】
【識別番号】521239808
【氏名又は名称】アイタブメッド (エイチケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フアン ジフア
(72)【発明者】
【氏名】シェン ウージョン
(72)【発明者】
【氏名】ラオ イーチュン
(72)【発明者】
【氏名】ツイ ユミン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シャオチアン
(57)【要約】
【課題】CD19及びCD3と結合可能な多重特異性抗原結合タンパク質、ならびにその使用の提供。
【解決手段】CD3及びCD19に特異的に結合する多重特異性抗原結合タンパク質(MSAP)が提供される。医薬組成物の調製を目的としたMSAPの使用、がんを処置する方法、及びMSAPを含むキットがさらに提供される。一部の抗原は、腫瘍組織中において過剰発現される、変異誘発される、または選択的に変異誘発される。それゆえ、がん細胞の表面上にある特定の抗原を標的とする抗体は、がん治療薬として使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重特異性抗原結合タンパク質であって、
I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、前記抗CD3 Fab断片が、
(a)免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及びIg重鎖定常領域(CH1)、ならびに
(b)Ig軽鎖可変領域(VL)及びIg軽鎖定常領域(CL)を含む、前記抗CD3 Fab断片と、
II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片と、
III.場合により、前記抗CD3 Fab断片及び前記抗CD19抗原結合断片を連結させるリンカーとを含む、前記多重特異性抗原結合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月24日出願の国際特許出願第PCT/CN2018/123108号の優先権の利益を主張し、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物に関する内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式(CRF)(ファイル名:720622001641SEQLIST.TXT、記録日:2019年12月11日、サイズ:54KB)。
【0003】
本発明は、CD3及びCD19に特異的に結合する多重特異性抗原結合タンパク質(MSAP)に関する。さらに、MSAPを含む医薬組成物、MSAPを使用してがんを処置する方法、及びMSAPを含むキットが本明細書で提供される。
【背景技術】
【0004】
一部の抗原は、腫瘍組織中において過剰発現される、変異誘発される、または選択的に変異誘発される。それゆえ、がん細胞の表面上にある特定の抗原を標的とする抗体は、がん治療薬として使用され得る。Bリンパ球抗原CD19は、CD19分子(分化抗原群19)、Bリンパ球表面抗原B4、T細胞表面抗原Leu-12及びCVID3としても知られている。CD19は、正常及び悪性Bリンパ球の両方で発現され、B細胞腫瘍関連抗原と見なされている。これは、Bリンパ球分化のバイオマーカー、リンパ腫の診断、及び白血病免疫療法の標的として使用され得る。
【0005】
CD3は、3つの異なるポリペプチド鎖(ε鎖、δ鎖及びγ鎖)を含む、T細胞によって発現される抗原である。3本のCD3ポリペプチド鎖は、T細胞受容体(TCR)及びζ鎖と会合してTCR複合体を形成し、これはT細胞中においてシグナル伝達カスケードを活性化させる機能を有する。現在、多くの治療戦略がTCRシグナル伝達を標的とし、抗ヒトCD3モノクローナル抗体を使用して疾患を処置する。CD3特異的抗体のOKT3は、ヒトの治療用途用に承認された最初のモノクローナル抗体であり、同種移植片拒絶の処置を目的とした免疫調節剤として臨床で使用されている。
【0006】
二重特異性抗体は、がん細胞を効果的に死滅させる可能性があることが分かっているが、全身性免疫活性化、免疫原性(抗薬物抗体効果)を含む、これらの分子の重篤な有害作用、及び一般的に乏しい製造性によって、この種類の薬物の幅広い適用が大幅に制限されている。例えば、CD19×CD3二重特異性scFv-scFv(一本鎖可変断片)融合タンパク質(ブリナツモマブ)の1つの欠点は、この薬物の半減期が短く、皮下投与とは不適合であるために、この薬物を毎日静脈内(i.v.)投与する必要があることであり、未だ、神経学的作用、例えば、失見当識、錯乱、発話及び言語障害、振戦または痙攣などが、依然として臨床試験中に生じた(Bargou et al.Science 321(5891):974-797,2008)。
現在の二重特異性抗体の形式に関する欠点は、良好な有効性及び安全性を有する、がん患者の処置におけるそれらの幅広い用途に関して今も大きな課題のままである。したがって、当該技術分野において、有効性、安定性、安全性及び製造性が改善された新規の二重特異性抗体または処置レジメンの開発が緊急に必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bargou et al.Science 321(5891):974-797,2008
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、CD3及びCD19に特異的に結合する多重特異性抗原結合タンパク質(「MSAP」、二重特異性抗原結合タンパク質、「BSAP」など)、MSAPを含む医薬組成物、ならびにMSAPを使用してがんを処置する方法を提供する。
【0009】
本発明の一態様では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及びIg重鎖定常領域(CH1)、ならびに(b)Ig軽鎖可変領域(VL)及びIg軽鎖定常領域(CL)を含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片を連結させるリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含み、第1抗CD19抗原結合断片が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される。
【0010】
上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかによるいくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端、例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープなどに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含む重鎖超可変領域H1(HVR-H1)、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖超可変領域L1(HVR-L1)、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、ジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合、例えば、約2個のジスルフィド結合などによって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。
【0011】
上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかによるいくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)はVHを含み、抗CD19抗原結合断片のVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)はVLを含み、抗CD19抗原結合断片のVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHは、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLは、配列番号:50のアミノ酸配列を含む。
【0012】
上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかによるいくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片は、一本鎖可変断片(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvを含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、異なるアミノ酸配列を有する。
【0013】
上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかによるいくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個のアミノ酸残基(約2~約15個のアミノ酸残基など)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択され、例えば、配列番号:44などである。
【0014】
上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかによるいくつかの実施形態では、MSAPは、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:61のアミノ酸配列を含む。
【0015】
上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかによるいくつかの実施形態では、MSAPは、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:58のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:58のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:58のアミノ酸配列を含む。
【0016】
上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかによるいくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:57のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:57のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:57のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:61のアミノ酸配列を含む。
【0017】
上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかをコードする単離核酸分子、単離核酸分子を保有する発現ベクター、発現ベクターを含む単離宿主細胞、及び単離宿主細胞を培養し、細胞培養物からMSAPを回収することを含む、上に記載されるMSAPのいずれかを産生する方法が、さらに提供される。
【0018】
本明細書では、上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかを含む、使用、組成物(医薬組成物など)、キット及び製品もまた提供される。いくつかの実施形態では、上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれか、及び場合により、薬学的に許容される担体を含む組成物(医薬組成物など)が提供される。
【0019】
がんを処置するための医薬の調製における上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかの使用が、さらに本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、がんの処置を必要とする個体におけるがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、個体に有効量の上に記載されるMSAP(BSAPなど)のいずれかまたはその組成物(医薬組成物など)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)または組成物(医薬組成物など)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、がんはDLBCLである。いくつかの実施形態では、がんはALLである。
【0020】
本発明のこれらの及び他の態様及び利点は、後続の発明を実施するための形態及び添付の特許請求の範囲から明らかとなる。本明細書に記載される様々な実施形態の1つ、いくつか、または全ての特性を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成してよいと理解されるべきである。
【0021】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、特許出願及び公開特許出願の開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】Aは、例示的なCD19×CD3 MSAP ITAB2009の構造を図示する。Bは、例示的なCD19×CD3 MSAP ITAB2007の構造を図示する。
【
図2】自己B細胞に対するCD19×CD3 MSAP(ITAB2009またはITAB2007)媒介ヒトPBMC細胞傷害を示す。CD19×CD3 MSAPを添加せずにヒトPBMCのみと混合したB細胞が対照として機能した。
【
図3】Daudi腫瘍細胞に対するCD19×CD3 MSAP(ITAB2009またはITAB2007)媒介ヒトPBMC細胞傷害を示す。CD19×CD3 MSAPを添加せずにヒトPBMCのみと混合したDaudi腫瘍細胞が対照として機能した。
【
図4】抗CD19染色シグナルによって反映されるような、異なる細胞のCD19発現レベルを示す。
【
図5-1】Pfeiffer細胞(
図5A)の存在下におけるCD19×CD3 MSAP(ITAB2009またはITAB2007)媒介T細胞活性化を示す。CD19×CD3 MSAPを添加せずにPfeiffer細胞と混合したT細胞が対照として機能した。
【
図5-2】Daudi細胞(
図5B)の存在下におけるCD19×CD3 MSAP(ITAB2009またはITAB2007)媒介T細胞活性化を示す。CD19×CD3 MSAPを添加せずにDaudi細胞と混合したT細胞が対照として機能した。
【
図6】Reh細胞に対するCD19×CD3 MSAP(ITAB2009またはITAB2007)媒介ヒトPri-T細胞の細胞傷害を示す。
【
図7】ヒトPBMCを接種した免疫再構築NOGマウスにおける、皮下Raji異種移植腫瘍に対するITAB2007 CD19×CD3 MSAPの成長阻害効果を示す。ビヒクル注射(PBST)は対照として機能した。結果は、ITAB2007が、huPBMC移植マウスにおけるRaji異種移植腫瘍の成長を濃度依存的様式で阻害したことを示した。
【
図8】ヒト初代T細胞で再構築した免疫系を有するReh接種マウスの、CD19×CD3 MSAPまたはビヒクル対照による処置下での生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片及びCD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含む多重特異性抗原結合タンパク質(MSAP)(以後「CD3×CD19 MSAP」と称される)を提供する。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvを含み、第1抗CD19 scFvが、抗CD3
Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、2つの抗CD19 scFvは同じである。本発明はまた、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)を使用して、がん、特に血液悪性腫瘍を処置する方法を提供する。
【0024】
現在の抗がん二重特異性抗体は、いくつかの欠点、例えば、乏しい製造性、凝集、短い半減期、重篤な有害作用(全身性免疫活性化、免疫原性(抗薬物抗体応答)など)、長い注入時間、及び腫瘍組織中で保持できないことなどの問題を抱えていて、これは良好な有効性及び安全性を有する、がん処置におけるこれらの抗がん二重特異性抗体の幅広い用途に大きな課題を提示している。例えば、ブリナツモマブ(BLINCYTO(登録商標)、抗CD3/抗CD19二重特異性scFv-scFv)は、フィラデルフィア染色体陰性の再発性または難治性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の第2選択処置として2014年に米国で承認された。しかしながら、その半減期が短く、皮下投与とは不適合であるために、ブリナツモマブを毎日静脈内(i.v.)投与する必要があり、未だ、神経学的作用、例えば、失見当識、錯乱、発話及び言語障害、振戦または痙攣などが、依然として臨床試験中に生じた(Bargou et al.Science 321(5891):974-797,2008)。
【0025】
広範な調査の後、本出願の発明者らは、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)形式を予想外にも発見し、これは抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を、抗CD3 Fab断片のN末端に融合している。本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、当該技術分野において既知の他の多重特異性タンパク質と比較して、いくつかの利点を有することが見出された。第1に、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、がん細胞、特にCD19低発現腫瘍、例えば、B細胞リンパ腫及び急性リンパ性白血病(ALL)などのがん細胞に対する細胞傷害活性が増強している。第2に、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、非ヒト霊長類、例えば、カニクイザルなどと交差反応するため、これはヒトの臨床試験予測に関する利益を目的とした非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)に対する毒性研究に役立つ可能性がある。第3に、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は半減期が長時間にわたるため、投薬頻度の低下及び注入時間の短縮を可能にし、患者に対してより多くの利便性を提供する可能性がある。
【0026】
したがって、一態様では、本発明は、以下を含むMSAP(BSAPなど)を提供する:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及びIg重鎖定常領域(CH1)、ならびに(b)Ig軽鎖可変領域(VL)及びIg軽鎖定常領域(CL)を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカー。別の態様では、本発明は、以下を含むMSAP(BSAPなど)を提供する:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及びIg重鎖定常領域(CH1)、ならびに(b)Ig軽鎖可変領域(VL)及びIg軽鎖定常領域(CL)を含み、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカー。
【0027】
本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)を含む医薬組成物及びキット、ならびにがんを処置するためのそれらの使用方法もまた提供される。
【0028】
I.定義
本発明の実施には、反対の具体的な指示がない限り、当業者の技能範囲内のウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学及び組換えDNA技術に関する従来の方法を用いることになり、その多くが例証の目的で以下に記載される。そのような技術は、文献中で十分に説明される。例えば、Current Protocols in Molecular
Biology or Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,New York,N.Y.(2009)、Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,John Wiley&Sons,1995、Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)、DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(D.Glover,ed.)、Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984)、Nucleic Acid Hybridization(B.Hames&S.Higgins,eds.,1985)、Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,eds.,1984)、Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)及び他の同様の参考文献を参照のこと。
【0029】
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、臨床病理学の過程において処置されている個体または細胞の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善または軽減、及び寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、がんと関連する1つ以上の症状が軽減または排除される場合、例えば、がん性細胞の増殖の減少(もしくは破壊)、疾患に起因する症状の低減、疾患に罹患している患者の生活の質の向上、疾患を処置するのに必要な他の薬剤用量の低減、及び/または個体の生存期間の延長が挙げられるが、これらに限定されない場合に、個体の「処置」に成功している。
【0030】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、対象の疾患または障害を処置するのに効果的な薬剤または薬物の量を指す。がんの場合、薬剤の有効量は、がん細胞の数を減少させる、腫瘍サイズを減少させる、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅延させる、好ましくは停止させる)、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅延させる、好ましくは停止させる)、腫瘍成長をある程度阻害する、及び/またはがんと関連する症状のうち1つ以上をある程度緩和する場合がある。臨床状況において理解されるように、有効量の薬物、化合物、または医薬組成物は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と組み合わせて得られても、または得られなくともよい。したがって、「有効量」は1つ以上の治療剤の投与に関連すると見なされてよく、単剤は1つ以上の他の薬剤と組み合わせて望ましい結果が達成される可能性がある、または達成される場合に、有効量で投与されていると見なされてよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、「個体」または「対象」は、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類、または霊長類を含むが、これらに限定されない哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。
【0032】
「抗体」という用語は最も広義に使用され、具体的には、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片が所望の生物活性または機能を呈する限り、その断片を網羅する。本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」(Ig)及び「抗体」という用語は、交換可能に使用される。
【0033】
「天然抗体」、「全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、以下に定義されるような抗体断片ではなく、その実質的にインタクトな形態の抗体を指す。本用語は、特にFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。天然抗体は通常、2本の同一軽(L)鎖及び2本の同一重(H)鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1個の共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に間隔を空けて鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、続いて複数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)及びその他端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖及び重鎖の可変ドメイン間に界面を形成すると考えられている。
【0034】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他方の部分と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2及びCH3ドメイン(まとめてCH)ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
【0035】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と称される場合がある。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と称される場合がある。これらのドメインは、一般に抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0036】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分が、抗体間で配列が大きく異なり、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均一に分布しているわけではない。それは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR、CDRとも称される)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、4つのFR領域を含み、主として、3つのHVRが連結しているベータシート配置を取り、HVRはベータシート構造に連結して、いくつかの場合ではベータシート構造の一部を形成しているループを形成する。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに保持され、他方の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体と抗原との結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞毒性への抗体の関与などを示す。
【0037】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる、2つの明確に異なるタイプのうち1つに割り当てられ得る。
【0038】
IgG「アイソタイプ」または「サブクラス」という用語は、本明細書で使用される場合、それらの定常領域の化学的及び抗原特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。
【0039】
それらの重鎖の定常ドメインにおけるアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分類される場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元配置は周知であり、概して、例えば、Abbas et
al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有または非共有会合によって形成される、より大きな融合分子の一部である場合がある。
【0040】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片または抗原結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(AB’)2、及びFv断片(一本鎖可変断片、scFvなど)、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0041】
抗体のパパイン消化によって、各々が単一の抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一抗原結合断片が産生され、残りが「Fc」断片であり、その名称が容易に結晶化するその能力を反映している。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋できるF(ab’)2断片が産生される。
【0042】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種の構造に類似した「二量体」構造で会合し得るように、柔軟なペプチドリンカーによって共有結合的に連結され得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この配置においてである。まとめると、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも親和性は低くなるが、抗原を認識してそれと結合する能力を有する。
【0043】
Fab断片は、重鎖及び軽鎖可変ドメイン(VH、VL)を含有し、さらに軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含有する、2つのポリペプチド鎖を有する。本明細書では、発明者らは「Fd」を、VH及びCH1ドメインを含むFab断片の重鎖ポリペプチド部分と称する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基を付加することによって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として作製された。抗体断片の他の化学結合もまた既知である。
【0044】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これによって、scFvが抗原結合に所望される構造を形成することが可能になる。scFvの概説については、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies.Springer Berlin Heidelberg,1994.269-315を参照のこと。
【0045】
「Fc」断片は、ジスルフィドによって互いに保持されている両方の重鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列によって決定され、その領域はまた、ある特定の細胞型で見られるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
【0046】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在する場合がある可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。いくつかの実施形態では、そのようなモノクローナル抗体は、典型的には標的と結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスによって得られた。例えば、選択プロセスは、複数のクローン、例えば、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンなどのプールからの、特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列はさらに変更され、例えば、標的に対する親和性を改善する、標的結合配列をヒト化する、細胞培養物中でその産生を改善する、インビボでのその免疫原性を減少させる、多重特異性抗体を作製することなどが可能であり、変更された標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることが理解されるべきである。異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を典型的に含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらには通常、他の免疫グロブリンが混在していないという点で有利である。
【0047】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、様々な技術、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495-97(1975)、Hongo et al.,Hybridoma 14(3):253-260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,Monoclonal Antibodies and
T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照のこと)、ならびにヒト免疫グロブリン座位またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全てを有する動物中においてヒト抗体またはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)、Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994)、Morrison,Nature 368:812-813(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)、ならびにLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照のこと)を含むものによって作製されてよい。
【0048】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か、またはそれと相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か、またはそれと相同である「キメラ」抗体に加えて、そのような抗体の断片が所望の生物活性を示す限り、その断片を特に含む(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)を参照のこと)。キメラ抗体は、PRIMATTZED(登録商標)抗体を含み、その抗体の抗原結合領域が、例えば、目的の抗原でマカクザルを免疫化することによって産生される抗体に由来する。
【0049】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRに由来する残基が、所望の特異性、親和性、及び/または能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などのHVRに由来する残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合には、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体で、またはドナー抗体では見られない残基を含む場合がある。これらの修飾が、抗体の性能をさらに改良するために行われてよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、その場合に超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体はまた、場合により免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含むことになる。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。また例えば、Vaswani
and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105-115(1998)、Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995)、Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994)、ならびに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照のこと。
【0050】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体及び/または本明細書で開示されるようなヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野において既知の様々な技術を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991)。また、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能な方法は、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.147(1):86-95(1991)に記載されている。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)も参照のこと。ヒト抗体は、抗原投与に応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内因性座位が不活性化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化xenomice(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照のこと)に抗原を投与することによって調製され得る。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体に関しては、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:3557-3562(2006)も参照のこと。
【0051】
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、本明細書で使用される場合、配列において超可変である、及び/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は6つのHVRを含み、VH中に3つ(H1、H2、H3)あり、VL中に3つ(L1、L2、L3)ある。天然抗体では、H3及びL3は、6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3は、抗体に微細特異性を付与する上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000)、Johnson and WuのMethods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照のこと。事実、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖が存在しなくとも機能的かつ安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993)、Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照のこと。HVRは、「CDR」または「相補性決定領域」とも称される。
【0052】
免疫グロブリン可変領域の構造及び位置は、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest.4th Edition.US Department of Health and Human Services.1987、及びインターネットで現在利用可能なその最新版(immuno.bme.nwu.edu)の参照によって決定されてよい。
【0053】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるようなHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0054】
「共有結合的に連結される」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上の化学結合による直接的連結または1つ以上のリンカーによる間接的連結を指す。任意の好適な化学結合が直接的連結を作製するために使用され得、これらとしては、共有結合、例えば、ペプチド結合及びジスルフィド結合など、または非共有結合、例えば、水素結合、疎水結合、イオン結合、もしくはファンデルワールス結合などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
「共有結合」は、本明細書で使用される場合、1つ以上の電子を共有する2個の原子間の安定した結合を指す。共有結合の例としては、ペプチド結合及びジスルフィド結合が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「ペプチド結合」は、アミノ酸のカルボキシル基と隣接アミノ酸のアミン基との間に形成される共有結合を指す。「ジスルフィド結合」は、本明細書で使用される場合、2個の硫黄原子間で形成される共有結合、例えば、1つ以上のジスルフィド結合による重鎖断片CH1及び軽鎖断片CLの組合せなどを指す。1つ以上のジスルフィド結合は、2つの断片のチオール基を連結させることによって、2つの断片間に形成される場合がある。いくつかの実施形態では、1つ以上のジスルフィド結合は、それぞれ重鎖断片及び軽鎖断片の1つ以上のシステイン間に形成され得る。ジスルフィド結合は、2個のチオール基の酸化によって形成され得る。いくつかの実施形態では、共有連結は、共有結合によって直接連結される。いくつかの実施形態では、共有連結は、ペプチド結合またはジスルフィド結合によって直接連結される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「結合する」、「に特異的に結合する」または「に特異的」であるという用語は、測定可能かつ再現可能な相互作用、例えば、標的と抗体との間の結合などを指し、これは、生体分子を含む分子の異種集団の存在下において標的の存在を決定する。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、または特異的に結合する抗体は、その抗体が他の標的に結合するよりも高い親和性、結合活性で、より容易に、及び/またはより長い期間でこの標的と結合する抗体である。一実施形態では、抗体と無関係な標的との結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるように、抗体と標的との結合の約10%未満である。いくつかの実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、異なる種に由来するタンパク質中に保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、必ずしもその必要はない。
【0057】
本明細書で使用される場合、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「相同性」は、配列をアライメントし、最大の配列同一性パーセントを得るために必要であればギャップを導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、特定のペプチドまたはポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントの決定を目的としたアライメントは、当該技術分野における技術の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者は、比較されている配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0058】
アミノ酸置換としては、ポリペプチド中のあるアミノ酸の、別のアミノ酸による置換が挙げられてよいが、これに限定されない。例示的な置換が、表Aに示される。アミノ酸置換が目的の抗体に導入され、その生成物が、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低減、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされてよい。
表A
【表A】
【0059】
アミノ酸は、共通の側鎖特性によってグループ分けされてよい:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、(3)酸性:Asp、Glu、(4)塩基性:His、Lys、Arg、(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro、(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴うことになる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「多重特異性抗原結合タンパク質」(MSAP)は、Fab断片と比較して異なる特性を有する1つ以上の抗原結合断片に共有結合的に連結されたFab断片を有するタンパク質を指す。特性は、生物学的特性、例えば、インビトロまたはインビボ活性などであってよい。特性はまた、単純な化学的または物理的特性、例えば、標的分子への結合、触媒反応などであってよい。Fab断片及び1つ以上の抗原結合断片は、単一のペプチド結合によって直接連結される、またはペプチドリンカーを介するが、互いにインフレーム様式で連結される場合がある。「多重特異性抗原結合タンパク質」及び「MSAP」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、ポリエピトープ特異性を有する抗原結合タンパク質を指す。
【0061】
「多重特異性」という用語は、抗体または抗原結合タンパク質(多重特異性抗原結合タンパク質、MSAPなど)に関して使用される場合、ポリエピトープ特異性を有する(すなわち、1つの生体分子上の2つ、3つ、もしくはそれを超える異なるエピトープに特異的に結合できるか、または2つ、3つ、もしくはそれを超える異なる生体分子上のエピトープに特異的に結合できる)抗体または抗原結合タンパク質を指す。別段の指示がない限り、多重特異性抗体またはMSAPによって結合される抗原が、多重特異性抗体名またはMSAP名中で列挙される順序は任意である。すなわち、「抗CD3/CD19」、「抗CD19/CD3」、「CD19×CD3」及び「CD3×CD19」という用語は、交換可能に使用されてよく、CD3及びCD19(例えば、異なるCD19エピトープ)の両方に特異的に結合する多重特異性抗体(MSAPなど)を指す。いくつかの実施形態では、MSAPはBSAPである。
【0062】
「二重特異性」という用語は、抗体または抗原結合タンパク質(二重特異性抗原結合タンパク質、BSAPなど)に関して使用される場合、1つの生体分子上における2つの異なるエピトープに特異的に結合できるか、または2つの異なる生体分子上のエピトープに特異的に結合できる抗体または抗原結合タンパク質を指す。別段の指示がない限り、二重特異性抗体またはBSAPによって結合される抗原が、二重特異性抗体名またはBSAP名中で列挙される順序は任意である。すなわち、「抗CD3/CD19」、「抗CD19/CD3」、「CD19×CD3」及び「CD3×CD19」という用語は、交換可能に使用されてよく、CD3及びCD19エピトープの両方に特異的に結合する二重特異性抗体(BSAPなど)を指す。いくつかの実施形態では、BSAPは二価である。いくつかの実施形態では、BSAPは多価(例えば、三価)である。
【0063】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドの「C末端」は、ポリペプチドの最後のアミノ酸残基を指し、これはそのアミン基を供与して、その隣接アミノ酸残基のカルボキシル基とペプチド結合を形成する。ポリペプチドの「N末端」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドの最初のアミノ酸を指し、これはそのカルボキシル基を供与して、その隣接アミノ酸残基のアミン基とペプチド結合を形成する。
【0064】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、核酸分子に連結される別の核酸を増殖できる核酸分子を指す。本用語は、自己複製核酸構造としてのベクターに加えて、ベクターが導入されている宿主細胞のゲノム中に組み込まれるベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが機能的に連結されている核酸の発現を誘導できる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
【0065】
「細胞」という用語は、初代対象細胞及びその子孫を含む。
【0066】
「サイトカインストーム」という用語は、「サイトカインカスケード」または「高サイトカイン血症」としても知られ、典型的にはサイトカインと免疫細胞との間の正のフィードバックループからなる致死的免疫反応を引き起こす可能性があり、様々なサイトカイン(例えば、INF-γ、IL-10、IL-6、CCL2など)のレベルが高く上昇する。
【0067】
本明細書に記載される本発明の実施形態が、実施形態「からなる」及び/または「から本質的になる」ことを含むと理解される。
【0068】
本明細書における「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータそれ自体を対象とする変化形を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」に言及している記載は「X」の記載を含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、ある値またはパラメータ「ではない」ことへの言及は、一般にある値またはパラメータ「以外」を意味し、かつ記載する。例えば、方法がXタイプのがんを処置するために使用されないとは、方法がX以外のタイプのがんを処置するために使用されることを意味する。
【0070】
本明細書で使用される「約X~Y」という用語は、「約X~約Y」と同じ意味を有する。
【0071】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「or」、及び「the」は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0072】
II.CD3×CD19多重特異性抗原結合タンパク質(CD3×CD19 MSAP)
本発明は、任意のリンカーによって互いに融合された、CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片(以後「抗CD3 Fab断片」と称される)及びCD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)(以後「抗CD19抗原結合断片」、例えば、抗CD19 scFvと称される)を含む多重特異性抗原結合タンパク質(MSAP)を提供し、以後「CD3×CD19 MSAP」と称される。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、(a)免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及びIg重鎖定常領域(CH1)、ならびにIg軽鎖可変領域(VL)及びIg軽鎖定常領域(CL)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、(a)免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及びIg重鎖定常領域(CH1)、ならびにIg軽鎖可変領域(VL)及びIg軽鎖定常領域(CL)を含み、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含み、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAPは、三価及び三重特異性である、すなわち、2つの抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、CD19の異なるエピトープに特異的に結合し、以後「CD3×CD19三重特異性抗原結合タンパク質」または「CD3×CD19 TSAP」と称される。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAPは、三価及び二重特異性である、すなわち、2つの抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、同じCD19エピトープに特異的に結合し、以後「三価CD3×CD19 BSAP」と称される。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAPは、二価及び二重特異性であり、以後「二価CD3×CD19 BSAP」と称される。例示的なCD3×CD19 MSAPが、
図1Bに示される。
【0073】
本発明のCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は重要な利点を有し、これらとしては、1)がん細胞死滅効果の増強を実証したこと、2)動物モデルにおいてバーキットリンパ腫及び前駆B細胞(preB)急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対して優れたインビボ治療効果を実証したこと、ならびに3)非ヒト霊長類、例えば、カニクイザルなどとの交差反応が、ヒトの臨床試験予測に関する利益を目的とした非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)に対する毒性研究に役立つ可能性があることを含むが、これらに限定されない。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、ジスルフィド結合によって連結されている。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含み、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含む重鎖超可変領域H1(HVR-H1)、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖超可変領域L1(HVR-L1)、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片はscFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、同じアミノ酸配列を有する2つの抗CD19 scFvを含む。いくつかの実施形態では、MSAPは、異なるアミノ酸配列を有する2つの抗CD19 scFvを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、約2~約15個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、抗CD3
Fab断片のVHのN末端に融合される。
【0076】
したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3
Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvがVHを含み、抗CD19 scFvのVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD19 scFvがVLを含み、抗CD19 scFvのVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvがVHを含み、抗CD19 scFvのVHが配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD19 scFvがVLを含み、抗CD19 scFvのVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、場合により、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvがVHを含み、抗CD19 scFvのVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD19 scFvがVLを含み、抗CD19 scFvのVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、抗CD19抗原結合断片のVHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、抗CD19抗原結合断片のVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3
Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvのVHが配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD19 scFvのVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含むMSAP(BSAPなど)が提供され、第1ポリペプチドが配列番号:53のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:58のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含むMSAP(BSAPなど)が提供され、第1ポリペプチドが配列番号:60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:58のアミノ酸配列を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、抗CD3
Fab断片のVLのN末端に融合される。
【0083】
したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3
Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、場合により、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvがVHを含み、抗CD19 scFvのVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD19 scFvがVLを含み、抗CD19 scFvのVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvがVHを含み、抗CD19 scFvのVHが配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD19 scFvがVLを含み、抗CD19 scFvのVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、場合により、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvがVHを含み、抗CD19 scFvのVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD19 scFvがVLを含み、抗CD19 scFvのVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、抗CD19抗原結合断片のVHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、抗CD19抗原結合断片のVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3
Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvのVHが配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD19 scFvのVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(例えば、BSAP)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含むMSAP(BSAPなど)が提供され、第1ポリペプチドが配列番号:57のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含むMSAP(BSAPなど)が提供され、第1ポリペプチドが配列番号:57のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:61のアミノ酸配列を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含み、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される。
【0090】
したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19
scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19 scFvのVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または第1及び/または第2抗CD19 scFvのVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3
Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19 scFvのVHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または第1及び/または第2抗CD19 scFvのVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19 scFvのVHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または第1及び/または第2抗CD19 scFvのVLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig
VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVHを含み、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)がVLを含み、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、以下を含むMSAP(BSAPなど)が提供される:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3
Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19 scFvのVHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または第1及び/または第2抗CD19 scFvのVLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含むMSAP(BSAPなど)が提供され、第1ポリペプチドが配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含むMSAP(BSAPなど)が提供され、第1ポリペプチドが配列番号:53のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含むMSAP(BSAPなど)が提供され、第1ポリペプチドが配列番号:60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:61のアミノ酸配列を含む。
【0096】
本発明は、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)のいずれかを含む融合タンパク質、CD3×CD19 MSAP複合体(例えば、小分子薬物複合体)、または本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAPのいずれかを発現する単離細胞をさらに提供する。
【0097】
抗CD3 Fab断片
本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の抗CD3 Fab断片は、ヒトCD3などのCD3に特異的に結合する。「CD3」は、6本鎖の多タンパク質複合体として当該技術分野において既知である(Abbas and Lichtman,2003、Janeway et al.,p172及び178,1999を参照のこと)。哺乳動物では、T細胞受容体(TCR)複合体は、CD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、2本のCD3イプシロン鎖、及びCD3ゼータ鎖のホモ二量体を含む。CD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、及びCD3イプシロン鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含有する免疫グロブリンスーパーファミリーの関連性の高い細胞表面タンパク質である。CD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、及びCD3イプシロン鎖の膜貫通領域は負に荷電していて、これはこれらの鎖と正荷電TCR鎖とが会合するのを可能にする特性である。CD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、及びCD3イプシロン鎖の細胞内尾部は各々、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフまたはITAMとして知られる単一の保存モチーフを含有しているのに対して、各CD3ゼータ鎖は3つ有している。理論に束縛されるものではないが、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能に重要であると考えられている。CD3は、本明細書で使用される場合、様々な動物種、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、または他の哺乳動物を含む種に由来する場合がある。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、抗CD3 Fab断片単独と比較して、インビボ半減期が増加している。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、個々の抗CD3 Fab断片の少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍の、またはそれを超える半減期を有する。
【0099】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の抗CD3 Fab断片は、≦1μMの平衡結合定数(Kd)、例えば、≦100nM、好ましくは≦10nM、より好ましくは≦1nMなどでCD3に結合する。例えば、抗CD3 Fab断片のKd値は、約≦1nM~約1pMである。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、約0.1×10-9M~約1×10-7M、例えば、約5.99×10-9MなどのKdでヒトCD3に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、約0.1×10-9M~約1×10-7M、例えば、約1.88×10-8MなどのKdでサル(例えば、カニクイザル)CD3に結合する。
【0100】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の抗CD3 Fab断片は、個々のCD3鎖、例えば、CD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、またはCD3イプシロン鎖などに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、2つ以上の個々のCD3鎖から形成される複合体(例えば、1本超のCD3イプシロン鎖の複合体、CD3ガンマ鎖とCD3イプシロン鎖との複合体、CD3デルタ鎖とCD3イプシロン鎖との複合体)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3
Fab断片は、CD3イプシロン鎖に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3イプシロンのN末端に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3イプシロンのアミノ酸1~27内のエピトープに特異的に結合する。
【0101】
抗CD3 Fab断片は、当該技術分野において既知の様々な方法によって生成され得る(例えば、米国特許第6,291,161号、同第6,291,158号を参照のこと)。抗CD3 Fabの供給源としては、様々な種、例えば、ヒト、ラクダ科動物(ラクダ、ヒトコブラクダ、もしくはリャマに由来、Hamers-Casterman et
al.(1993)Nature,363:446及びNguyen et al.(1998)J.Mol.Biol.,275:413)、サメ(Roux et al.(1998)Proc.Nat’l.Acad.Sci.(USA)95:11804)、魚類(Nguyen et al.(2002)Immunogenetics,54:39)、げっ歯類、トリ、またはヒツジを含む種に由来するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、ヒト抗体またはヒト化抗体に由来する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片はキメラである。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、例えば、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、またはヒトIg遺伝子を持つトランスジェニックマウスを使用して開発された完全ヒト抗体に由来する。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、ヒト及び非ヒト霊長類(カニクイザルなど)CD3の両方に特異的に結合する。サルCD3に対して交差反応性を有する例示的な抗ヒトCD3抗体としては、SP34マウスモノクローナル抗体が挙げられるが、これに限定されない(例えば、Pressano,S.The EMBO J.4:337-344,1985、Alarcon,B.EMBO J.10:903-912,1991、Salmeron A.et al.,J.Immunol.147:3047-52,1991、Yoshino N.et al.,Exp.Anim 49:97-110,2000、Conrad M L.et al.,Cytometry 71A:925-33,2007、及びYang et al.,J.Immunol.137:1097-1100:1986を参照のこと)。サルCD3に対して交差反応性を有する抗CD3 Fab断片を有するCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、非ヒト霊長類での毒性試験を容易にする可能性があり、これによってチンパンジーでの、または代用分子を使用した毒性試験を実施する必要なく、ヒト臨床試験候補のためのより適切な安全性評価が提供され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、非ヒト霊長類に対して交差反応性を有しない抗CD3抗体に由来する。例示的な抗CD3抗体としては、Cris-7モノクローナル抗体(Reinherz,E.L.et al.(eds.),Leukocyte typing II,Springer Verlag,New York,(1986))、BC3モノクローナル抗体(Anasetti et al.(1990)J.Exp.Med.172:1691)、OKT3(Ortho multicenter Transplant Study Group(1985)N.Engl.J.Med.313:337)及びその誘導体、例えば、OKT3 ala-ala(Herold et al.(2003)J.Clin.Invest.11:409)など、ビジリズマブ(Carpenter et al.(2002)Blood 99:2712)、ならびに145-2C11モノクローナル抗体(Hirsch et al.(1988)J.Immunol.140:3766)が挙げられる。本明細書で企図されるさらなるCD3結合分子としては、UCHT-1(Beverley,P C and Callard,R.E.(1981)Eur.J.Immunol.11:329-334)及びWO2004/106380、WO2010/037838、WO2008/119567、WO2007/042261、WO2010/0150918に記載されているCD3結合分子が挙げられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、免疫グロブリン(Ig)重鎖の1つの定常(CH1)領域及び1つの可変(VH)領域、ならびにIg軽鎖の1つの定常(CL)領域及び1つの可変(VL)領域を含む。いくつかの実施形態では、CH1及びVHは、VL及びCLとヘテロ二量体化し、重鎖及び軽鎖定常領域間のジスルフィド結合によって共有結合的に連結される。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、基本構造NH2-VL-CL-S-S-CH1-VH-NH2を有する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、1個以上のジスルフィド結合によって連結される。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1とCLとの間のジスルフィド結合数は、少なくとも1個、例えば、2個、3個、4個、またはそれを超える数などである。いくつかの実施形態では、システイン残基は、ジスルフィド結合を導入するために、抗CD3 Fab断片中で(CH1及びCL領域中などで)操作される。
【0105】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の抗CD3 Fab断片は、ジスルフィド結合を含まない。例えば、重鎖及び軽鎖は、ジスルフィド結合を必要とすることなく安定に相互作用するような方法で操作される場合がある。いくつかの実施形態では、重鎖または軽鎖は、システイン残基を除去するように操作され得るが、重鎖及び軽鎖は、依然として安定に相互作用し、Fabとして機能する。いくつかの実施形態では、変異は、重鎖及び軽鎖間の安定した相互作用を促進するために作製される。例えば、「ノブイントゥホール」操作戦略が、Fabの重鎖及び軽鎖間の二量体化を促進するために使用され得る(例えば、1996 Protein Engineering,9:617-621を参照のこと)。特定の目的、例えば、CH1及び/またはCLの定常ドメインにおけるアミノ酸変化、ならびに精製のためのジスルフィド結合除去またはタグの付加などのために設計されたバリアントFab断片も、本明細書での使用が企図される。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片内の可変領域及び定常領域の配置は、天然の抗CD3 Fabに見られるものとは異なっている場合がある。いくつかの実施形態では、可変領域及び定常領域の配向は、一方の鎖ではVH-CL、及び別の鎖ではVL-CH1であってよい(例えば、Shaefer et al.(2011),PNAS,108:111870-92を参照のこと)。
【0107】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の抗CD3 Fab断片は、モノクローナル抗体に由来する。好適なモノクローナル抗体は、IgA、IgM、IgD、IgG、IgE及びそのサブタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4などを含む、いずれかのタイプのものであってよい。軽鎖ドメインは、カッパ鎖またはラムダ鎖に由来してよい。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、組み換えて設計される。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、ヒト免疫グロブリンCH1を含む。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリンCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、ヒトラムダ軽鎖定常領域を含む。一実施形態では、ヒトラムダ軽鎖定常領域は、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個の(1個、2個、3個、4個、または5個などの)ジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約2個のジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。
配列番号:18(ヒトCH1)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKS
配列番号:52(ヒトラムダCL)
GQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTE
【0109】
CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の抗CD3 Fab断片は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)との間に形成される抗原結合部位によってCD3に特異的に結合する。抗原結合部位は、免疫グロブリン重鎖の少なくとも1つ(1つ、2つ、もしくは3つなど)のHVR及び/または免疫グロブリン軽鎖の少なくとも1つ(1つ、2つ、もしくは3つなど)のHVRを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19
MSAP(BSAPなど)は、CD3に特異的に結合する全長抗体のVH及びVL配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てのHVRを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、SP34に由来する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、米国特許第8,846,042号に記載されているCD3 Fab断片である。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、配列番号:15からの1つ、2つもしくは3つのHVR(もしくはCDR)を含むVH、及び/または配列番号:16からの1つ、2つもしくは3つのHVR(もしくはCDR)を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、配列番号:15からの3つのHVRを含むVH、及び/または配列番号:16からの3つのHVRを含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、配列番号:9~11から選択される1つ、2つもしくは3つのHVRを含むVH、及び/または配列番号:12~14から選択される1つ、2つもしくは3つのHVRを含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、配列番号:15のアミノ酸配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を含むVHを含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、配列番号:16のアミノ酸配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVHまたはVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗CD3 Fab断片は、CD3に結合する能力を保持している。いくつかの実施形態では、1個または2個のアミノ酸が、HVRのいずれか1つ以上において置換、挿入及び/または欠失されている。いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域中(すなわち、フレームワーク領域、「FR」中)で生じる。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、配列番号:15のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:16のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、及び/または配列番号:58のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。
配列番号:9(抗CD3 HVR-H1)
TYAMN
配列番号:10(抗CD3 HVR-H2)
RIRSKYNNYATYYADSVKD
配列番号:11(抗CD3 HVR-H3)
HGNFGNSYVSWFAY
配列番号:12(抗CD3 HVR-L1)
RSSTGAVTTSNYAN
配列番号:13(抗CD3 HVR-L2)
GTNKRAP
配列番号:14(抗CD3 HVR-L3)
ALWYSNLWV
配列番号:15(抗CD3 VH、HVRには下線が引かれている)
【化1】
配列番号:16(抗CD3 VL、HVRには下線が引かれている)
【化2】
配列番号:57(抗CD3 Fab断片のFdポリペプチド、HVRには下線が引かれている)
【化3】
配列番号:58(抗CD3 Fab断片の軽鎖ポリペプチド、HVRには下線が引かれている)
【化4】
【0111】
いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片の特定のVH及び/またはVLが、相補的可変領域のライブラリーをスクリーニングして、望ましい特性、例えば、CD3に対する高い親和性などを有するVH/VLを同定するために使用されてよい。そのような方法は、例えば、Portolano et al.,J.Immunol.(1993)150:880-887、Clarkson et al.,Nature(1991)352:624-628、及びKlimka et al.,British Journal of Cancer(2000)83:252-260、Beiboer et
al.,J.Mol.Biol.(2000)296:833-849、及びRader et al.,PNAS(1998)95:8910-8915に記載されている。
【0112】
抗CD19抗原結合断片
本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、CD19に特異的に結合する1つまたは2つの抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、抗CD3 Fab断片のN末端で、例えば、抗CD3 Fab断片のVHのN末端で、及び/または抗CD3 Fab断片のVLのN末端で融合される。
【0113】
Bリンパ球抗原CD19は、CD19分子(分化抗原群19)、Bリンパ球表面抗原B4、T細胞表面抗原Leu-12及びCVID3としても知られている。ヒトでは、CD19は、形質細胞を除く全てのB系細胞中で、及び濾胞樹状細胞中で発現される。CD19は、2つの主要な役割を有する:1)細胞質シグナル伝達タンパク質を膜に動員するアダプタータンパク質として機能すること、及び2)CD19/CD21複合体内で機能し、B細胞受容体シグナル伝達経路の閾値を低減させること。CD19は、正常Bリンパ球及び悪性Bリンパ球の両方で発現され、B細胞腫瘍関連抗原と見なされている。例えば、CD19は、Bリンパ球分化のバイオマーカー、がん診断マーカー、または免疫療法の標的、例えば、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、及び慢性リンパ性白血病(CLL)などの標的として機能し得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、細胞表面上のCD19に特異的に結合し得る。いくつかの実施形態では、細胞はがん細胞である。いくつかの実施形態では、がん細胞は、固形腫瘍中にある。いくつかの実施形態では、がん細胞は、転移がん細胞、例えば、血液がんなど、例えば、ALL、CLL、MCL、B細胞リンパ腫などである。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)単独と比較して、インビボ半減期が増加している。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、個々の抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)の少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍の、またはそれを超える半減期を有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、≦1μMの平衡結合定数(Kd)、例えば、≦100nM、好ましくは≦10nM、より好ましくは≦1nMなどでCD19に結合する。例えば、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のKd値は、約≦1nM~約1pMである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、約0.01×10-9M~約1×10-7M、例えば、約8.91×10-10MなどのKdでヒトCD19に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、約0.1×10-9M~約1×10-7M、例えば、約8.91×10-9MなどのKdでサル(例えば、カニクイザル)CD19に結合する。
【0117】
CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)中の抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、結合特異性の追加及び特性増強(例えば、血清半減期の増加、または免疫活性化カスケードの活性化)を提供するだけでなく、VH鎖及び/またはVL鎖のN末端への融合によって、CD3に対する抗CD3 Fab断片の結合親和性を著しく減少させる立体障害も生じさせる。これは他のFab融合タンパク質、例えば、TRIBODY(商標)などとは全く対照的であり、これはFab断片のC末端に追加の結合ドメインを融合する(例えば、Journal of Immunology,2000,165:7050-7057を参照のこと)。抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、他の既知の融合タンパク質、例えば、WO2008/024188及びWO2009/149185に記載されているものなどとは異なり、二量体化することを意図しない。CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)のさらに際立った特徴は、MSAP(BSAPなど)が腫瘍細胞上のCD19に結合されない場合、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、CD3に対する抗CD3 Fab断片の結合親和性を減少させることである。
【0118】
本明細書に記載される抗CD19抗原結合断片は、任意の形式のものであり、任意の好適な抗CD19抗体に由来し得る。例えば、抗CD19抗原結合断片は、scFv、VH、VL、scFv-scFv、Fv、Fab、Fab’、(Fab’)2、ミニボディ、ダイアボディ、ドメイン抗体バリアント(dAb)、単一ドメイン抗体(sdAb)、ラクダ抗体(VHH)、フィブロネクチン3ドメインバリアント、アンキリンリピートバリアント、及び他のタンパク質足場に由来する他の抗原特異的結合ドメインから選択され得る。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片はscFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)はヒト化されている。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)はキメラである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、マウス、ラット、サルまたはウサギのモノクローナル抗体に由来する。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、B43、MEDI-551、CLB-CD19、4G7、SJ25-C1LT19、Leu-12、HD37、または任意の他の既知である抗CD19抗体から選択される任意のモノクローナル抗体に由来する。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、例えば、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、またはヒトIg遺伝子を持つトランスジェニックマウスを使用して開発された完全ヒト抗体に由来する。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、ヒト及び非ヒト霊長類(カニクイザルなど)CD19の両方に特異的に結合する。サルCD19に対して交差反応性を有する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を有するCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、非ヒト霊長類での毒性試験を容易にする可能性があり、これによってチンパンジーでの、または代用分子を使用した毒性試験を実施する必要なく、ヒト臨床試験候補のためのより適切な安全性評価が提供され得る。
【0120】
本発明の抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、CD19の機能活性を完全にまたは部分的に調節、遮断、阻害、減少、拮抗、中和する、またはそれに干渉する場合がある。抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が結合しない場合と比較して、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)の存在下ではCD19の機能活性が、少なくとも95%(96%、97%、98%、99%または100%など)減少する場合、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、CD19の機能活性を完全に調節、遮断、阻害、減少、拮抗、中和できる、またはそれに干渉できると考えられる。抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が結合しない場合と比較して、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)の存在下ではCD19の機能活性が、少なくとも50%(55%、60%、75%、80%、85%、または90%など)減少する場合、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、CD19の機能活性を著しく調節、遮断、阻害、減少、拮抗、中和できる、またはそれに干渉できると考えられる。抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が結合しない場合と比較して、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)の存在下ではCD19の機能活性が、95%未満で減少する場合(10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、または90%減少するなど)、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、CD19の機能活性を部分的に調節、遮断、阻害、減少、拮抗、中和できる、またはそれに干渉できると考えられる。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、特定の配列またはこれらの配列のある特定のバリアントを含む。いくつかの実施形態では、バリアント配列中のアミノ酸置換は、CD19に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)の能力を実質的に減少させない。CD19に対する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)の結合親和性または他の特性、例えば、特異性、免疫原性、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)もしくは補体依存性細胞傷害性(CDC)、及び/またはCD19バリアントとの交差反応性などを実質的に改善する修飾もまた企図される。
【0122】
抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、CD19に特異的に結合する全長抗体の免疫グロブリン重鎖の少なくとも1つ(1つ、2つ、もしくは3つなど)のHVR及び/または免疫グロブリン軽鎖の少なくとも1つ(1つ、2つ、もしくは3つなど)のHVRを含んでよい。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、CD19に特異的に結合する全長抗体のVH及びVL配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てのHVRを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片は、CD19に特異的に結合するscFv(本明細書では「抗CD19 scFv」とも称される)である。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvのVH及びVLは、グリシン及び/またはセリンを含む柔軟なリンカーなどのペプチドリンカーによって互いに連結される。以下の「リンカー」小節におけるペプチドリンカーのいずれも、抗CD19 scFvのVH及びVL間で連結ペプチドとして使用され得る。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvのVH及びVLは、互いに直接連結される。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、N’-VH-L-VL-C’融合ポリペプチドを含み、Lは任意のペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、N’-VL-L-VH-C’融合ポリペプチドを含み、Lは任意のペプチドリンカーである。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、VH及び/またはVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7からの1つ、2つもしくは3つのHVR(もしくはCDR)を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50からの1つ、2つもしくは3つのHVR(もしくはCDR)を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7からの1つ、2つもしくは3つのHVR(もしくはCDR)を含むVH、及び/または配列番号:50からの1つ、2つもしくは3つのHVR(もしくはCDR)を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7からの3つのHVRを含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50からの3つのHVRを含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7からの3つのHVRを含むVH、及び/または配列番号:50からの3つのHVRを含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7の配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50(配列番号:50など)の配列と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片はscFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19
scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51のアミノ酸配列を含む。
配列番号:1(抗CD19 HVR-H1)
SYVMH
配列番号:2(抗CD19 HVR-H2)
WIGYINPYNDGTKY
配列番号:3(抗CD19 HVR-H3)
GTYYYGSRVFDY
配列番号:47(抗CD19 HVR-L1-1.3)
RSSKSLQNVNGNTYLY
配列番号:48(抗CD19 HVR-L2-1.3)
RMSNLNS
配列番号:49(抗CD19 HVR-L3-1.3)
MQHLEYPLT
配列番号:4(抗CD19 HVR-L1-1.2)
RSSKSLQNVNGNTYLY
配列番号:5(抗CD19 HVR-L2-1.2)
RMSNLNS
配列番号:6(抗CD19 HVR-L3-1.2)
MQHLEYPIT
配列番号:7(抗CD19 VH、HVRには下線が引かれている)
【化5】
配列番号:50(抗CD19 VL1.3、HVRには下線が引かれている)
【化6】
配列番号:8(抗CD19 VL1.2、HVRには下線が引かれている)
【化7】
配列番号:51(抗CD19 scFv(VL-VH)1.3)、HVRには下線が引かれ、ペプチドリンカーは太字である)
【化8】
配列番号:59(抗CD19 scFv(VL-VH)1.2)、HVRには下線が引かれ、ペプチドリンカーは太字である)
【化9】
【0125】
リンカー
本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、抗CD3 Fab断片のVHまたはVL及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカー(ペプチドリンカーなど)を含んでよい。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、2つの抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHと第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)との間のリンカーは、抗CD3 Fab断片のVLと第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)との間のリンカーと同じである。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHと第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)との間のリンカーは、抗CD3 Fab断片のVLと第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)との間のリンカーとは異なる。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片はscFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、抗CD19 scFvのVH及びVLを連結させるリンカー(ペプチドリンカーなど)を含み、これは抗CD3 Fab断片のVH及びVLと抗CD19 scFvとの間のリンカーのいずれかと同じか、またはそれとは異なってよい。
【0126】
リンカーは、任意の長さのペプチドリンカーであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約1アミノ酸~約10アミノ酸長、約2アミノ酸~約15アミノ酸長、約3アミノ酸~約12アミノ酸長、約4アミノ酸~約10アミノ酸長、約5アミノ酸~約9アミノ酸長、約6アミノ酸~約8アミノ酸長、約1アミノ酸~約20アミノ酸長、約21アミノ酸~約30アミノ酸長、約1アミノ酸~約30アミノ酸長、約2アミノ酸~約20アミノ酸長、約10アミノ酸~約30アミノ酸長、約2アミノ酸~約19アミノ酸長、約2アミノ酸~約18アミノ酸長、約2アミノ酸~約17アミノ酸長、約2アミノ酸~約16アミノ酸長、約2アミノ酸~約10アミノ酸長、約2アミノ酸~約14アミノ酸長、約2アミノ酸~約13アミノ酸長、約2アミノ酸~約12アミノ酸長、約2アミノ酸~約11アミノ酸長、約2アミノ酸~約9アミノ酸長、約2アミノ酸~約8アミノ酸長、約2アミノ酸~約7アミノ酸長、約2アミノ酸~約6アミノ酸長、約2アミノ酸~約5アミノ酸長、約2アミノ酸~約4アミノ酸長、または約2アミノ酸~約3アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸長のいずれかである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長のいずれかである。例えば、いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約5アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーのN末端は、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のC末端に共有結合的に連結され、ペプチドリンカーのC末端は、抗CD3 Fab断片のVHまたはVLのN末端に共有結合的に連結される。
【0127】
ペプチドリンカーは、天然に存在する配列または天然に存在しない配列を有し得る。例えば、重鎖のみの抗体のヒンジ領域に由来する配列が、リンカーとして使用され得る。例えば、WO1996/34103を参照のこと。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、ヒトIgG1またはIgG4ヒンジである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、変異型ヒトIgG1またはIgG4ヒンジである。いくつかの実施形態では、リンカーは、柔軟なリンカーである。例示的な柔軟なリンカーとしては、グリシンポリマー(G)n(配列番号:31)、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n(配列番号:32)、(GSGGS)n(配列番号:33)、(GGGS)n(配列番号:34)、または(GGGGS)n(配列番号:35)を含み、式中、nは少なくとも1つの整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び当該技術分野において既知の他の柔軟なリンカーが挙げられる。グリシン及びグリシン-セリンポリマーは、比較的構造化されていないため、構成要素間の中性テザーとして機能できる場合がある。グリシンは、ファイ-プサイ空間をアラニンよりも大幅に広く利用し、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が少ない(Scheraga,Rev.Computational Chem.11 173-142(1992)を参照のこと)。例示的な柔軟なリンカーとしては、Gly-Gly(配列番号:36)、Gly-Gly-Ser-Gly(配列番号:37)、Gly-Gly-Ser-Gly-Gly(配列番号:38)、Gly-Ser-Gly-Ser-Gly(配列番号:39)、Gly-Ser-Gly-Gly-Gly(配列番号:40)、Gly-Gly-Gly-Ser-Gly(配列番号:41)、Gly-Ser-Ser-Ser-Gly(配列番号:42)、Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser(配列番号:20)、Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号:21)、Gly-Arg-Ala-Gly-Gly-Gly-Gly-Ala-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号:22)、Gly-Arg-Ala-Gly-Gly-Gly(配列番号:29)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:43)、GGGGS(配列番号:44)などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHと抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)との間のリンカーは、GGGGS(配列番号:44)である。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVLと抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)との間のリンカーは、GGGGS(配列番号:44)である。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvのVH及びVLを連結させるリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:43)である。当業者は、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の設計は、リンカーが柔軟なリンカー部分に加えて、所望のCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)構造を提供するために、柔軟性の低い構造を付与する1つ以上の部分を含み得るように、全てまたは部分的に柔軟であるリンカーを含み得ると認識することになる。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片と抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)との間のリンカーは、安定したリンカー(プロテアーゼ、特にMMPによって切断できない)である。
【0129】
いくつかの実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHまたはVLと抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)との間のリンカーは、プロテアーゼ基質切断配列、例えば、MMP基質切断配列を含む。MMPによって切断され得る基質配列は、広く研究されている。例えば、PLGLAG(配列番号:30)の配列は、ほとんどのMMPによって切断され得る。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断部位は、MMP-2、MMP-9、またはそれらの組合せによって認識される。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、構造:N’-抗CD19 VH-L1-抗CD19 VL-L2-抗CD3
VH-CH1-C’を含む第1ポリペプチド、及び構造:N’-抗CD3 VL-CL-C’を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、構造:N’-抗CD19 VL-L1-抗CD19 VH-L2-抗CD3 VH-CH1-C’を含む第1ポリペプチド、及び構造:N’-抗CD3 VL-CL-C’を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、構造:N’-抗CD3 VH-CH1-C’を含む第1ポリペプチド、及び構造:N’-抗CD19 VH-L1-抗CD19 VL-L2-抗CD3 VL-CL-C’を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、構造:N’-抗CD3 VH-CH1-C’を含む第1ポリペプチド、及び構造:N’-抗CD19 VL-L1-抗CD19 VH-L2-抗CD3 VL-CL-C’を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、構造:N’-抗CD19 VH-L1-抗CD19 VL-L2-抗CD3 VH-CH1-C’を含む第1ポリペプチド、及び構造:N’-抗CD19 VH-L3-抗CD19 VL-L4-抗CD3 VL-CL-C’を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、構造:N’-抗CD19 VH-L1-抗CD19 VL-L2-抗CD3 VH-CH1-C’を含む第1ポリペプチド、及び構造:N’-抗CD19 VL-L3-抗CD19 VH-L4-抗CD3 VL-CL-C’を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、構造:N’-抗CD19 VL-L1-抗CD19 VH-L2-抗CD3 VH-CH1-C’を含む第1ポリペプチド、及び構造:N’-抗CD19 VL-L3-抗CD19 VH-L4-抗CD3 VL-CL-C’を含む第2ポリペプチドを含む。L1、L2、L3、及びL4は、本明細書に記載される任意の可能なリンカー(ペプチドライナーなど)である。L1~L4は同じか、または異なり得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列、または配列番号:53の配列と少なくとも約85%(少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%など)同一のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列、または配列番号:60の配列と少なくとも約85%(少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%など)同一のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:54のアミノ酸配列、または配列番号:54の配列と少なくとも約85%(少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%など)同一のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:61のアミノ酸配列、または配列番号:61の配列と少なくとも約85%(少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%など)同一のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチドは、配列番号:55の配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、第2ポリペプチドは、配列番号:56の配列を含む核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)及びその組成物(医薬組成物など)がさらに提供される。配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)及びその組成物(医薬組成物など)がさらに提供される。配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)及びその組成物(医薬組成物など)がさらに提供される。配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)及びその組成物(医薬組成物など)がさらに提供される。
【0132】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の第1及び/または第2ポリペプチドのC末端は、分子間ジスルフィド結合を形成できる共有結合領域CPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)を含む。例えば、いくつかの実施形態では、分子間ジスルフィド結合を形成できる共有結合領域は、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端に位置している。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2ポリペプチドのN末端またはC末端は、タンパク質精製のためにヒスチジンタグ(HISタグ)を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)のN末端は、ヒスチジンタグとさらに融合される。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及び/またはCLのC末端は、ヒスチジンタグとさらに融合される。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の第1及び/または第2ポリペプチドのN末端は、良好な発現のためにシグナルペプチド、例えば、配列番号:25に示されるシグナルペプチド配列など、または配列番号:26の核酸配列によってコードされるシグナルペプチドとさらに融合される。配列番号:53(第1ポリペプチドの抗CD19 VL-抗CD19 VH-GGGGSリンカー-抗CD3 VH-CH1-CPPCSのアミノ酸配列、リンカーは太字であり、HVRには下線が引かれている)
【化10】
配列番号:54(第2ポリペプチドの抗CD19 VL-抗CD19 VH-GGGGSリンカー-抗CD3 VL-CL-CPPCSのアミノ酸配列、リンカーは太字であり、HVRには下線が引かれている)
【化11】
配列番号:55(第1ポリペプチドの抗CD19 VL-抗CD19 VH-GGGGSリンカー-抗CD3 VH-CH1-CPPCSをコードする核酸配列)
gatgttgtgatgactcagtctcccagcagcatccccgtgaccctgggcgagtctgtgtccatcagctgcagaagcagcaagagcctgcagaacgtcaacggcaacacctacctgtactggttccagcagcggcctggccagtctccccagctgctgatctaccggatgagcaacctgaacagcggcgtgcccgatagattttctggctctggcagcggcaccgacttcaccctgagaatctccggcgtggaacccgaggacgtgggcgtgtactactgtatgcagcacctggaataccccctgaccttcggagccggcaccaagctggagatcaaaggcggaggcggtagtggcggtggtggttcaggcggtggcggatctcaggtgcagctggtgcagtctggccccgagctaatcaagcctggcggcagcgtgaagatgagctgcaaggcctccggctacaccttcaccagctacgtgatgcactgggtgcgccagaagcctggacagggcctggaatggatcggctacatcaacccctacaacgatggcaccaagtacaacgagaagttcaagggcagagccaccctgaccagcgacaagagcagcagcaccgcctacatggaactgagcagcctgcggagcgaggacagcgccgtgtactattgtgccagaggcacctactactacggcagccgggtgttcgactactggggacagggcaccacggtcaccgtctcctcaggtggcggaggatctgaggtgcagctggtggagtctgggggaggcttggtacagcctggggggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcacctttaacacctacgccatgaactgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtcgcacgcataagaagtaaatataataattatgcaacatattatgccgattcagtgaaagaccggttcaccatctccagagacgattccaagaacacgctgtatctgcaaatgaacagcctgagagccgaggacacggccgtatattactgtgtgagacatgggaacttcggtaatagctacgtttcctggtttgcttactggggccaagggacaatggtcaccgtctcttcagctagcaccaagggcccatccgtcttccccctggcaccctcctccaagagcacctctgggggcacagcggccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacccagacctacatctgcaacgtgaatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagaaagttgagcccaaatcttgtccaccgtgctcatag
配列番号:56(第2ポリペプチドの抗CD19 VL-抗CD19 VH-GGGGSリンカー-抗CD3 VL-CL-CPPCSをコードする核酸配列)
gatgttgtgatgactcagtctcccagcagcatccccgtgaccctgggcgagtctgtgtccatcagctgcagaagcagcaagagcctgcagaacgtcaacggcaacacctacctgtactggttccagcagcggcctggccagtctccccagctgctgatctaccggatgagcaacctgaacagcggcgtgcccgatagattttctggctctggcagcggcaccgacttcaccctgagaatctccggcgtggaacccgaggacgtgggcgtgtactactgtatgcagcacctggaataccccctgaccttcggagccggcaccaagctggagatcaaaggcggaggcggtagtggcggtggtggttcaggcggtggcggatctcaggtgcagctggtgcagtctggccccgagctaatcaagcctggcggcagcgtgaagatgagctgcaaggcctccggctacaccttcaccagctacgtgatgcactgggtgcgccagaagcctggacagggcctggaatggatcggctacatcaacccctacaacgatggcaccaagtacaacgagaagttcaagggcagagccaccctgaccagcgacaagagcagcagcaccgcctacatggaactgagcagcctgcggagcgaggacagcgccgtgtactattgtgccagaggcacctactactacggcagccgggtgttcgactactggggacagggcaccacggtcaccgtctcctcaggtggcggaggatctcaggctgtggtgactcaggagccctcactgactgtgtccccaggagggacagtcactctcacctgtcgctcaagtactggggctgttacaactagtaactatgccaactgggtccagcagaaacctggacaagcacccaggggtctgattggtggtaccaacaagcgagctccaggtacccctgcccggttctcaggctccctccttgggggcaaagctgccctgacactgtcaggtgtgcagcctgaggacgaggctgagtattactgcgctctatggtacagcaacctctgggtgttcggcggagggaccaagctgaccgtcctaggccaaccgaaagcggcgccctcggtcactctgttcccgccctcctctgaggagcttcaagccaacaaggccacactggtgtgtctcataagtgacttctacccgggagccgtgacagtggcctggaaggcagatagcagccccgtcaaggcgggagtggagaccaccacaccctccaaacaaagcaacaacaagtacgcggccagcagctatctgagcctgacgcctgagcagtggaagtcccacagaagctacagctgccaggtcacgcatgaagggagcaccgtggagaagacagtggcccctacagaatgtccaccgtgctcatag
配列番号:60(第1ポリペプチドの抗CD19 VL-抗CD19 VH-GGGGSリンカー-抗CD3 VH-CH1-CPPCSのアミノ酸配列、リンカーは太字であり、HVRには下線が引かれている)
【化12】
配列番号:61(第2ポリペプチドの抗CD19 VL-抗CD19 VH-GGGGSリンカー-抗CD3 VL-CL-CPPCSのアミノ酸配列、リンカーは太字であり、HVRには下線が引かれている)
【化13】
【0133】
III.調製方法
本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)は、当該技術分野において既知のタンパク質発現及び精製方法のいずれかによって調製されてよい。例えば、実施例1を参照のこと。CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)をコードするDNA配列は、完全に合成され得る。そのような配列を得た後、それを好適な発現ベクターにクローニングし、次いで好適な宿主細胞にトランスフェクトする。トランスフェクト宿主細胞を培養し、上清を回収して精製し、本発明のCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)を得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)のいずれか1つのポリペプチドのうち1つ以上をコードする単離核酸を提供する。いくつかの実施形態では、単離核酸は、配列番号:55または56の核酸配列を含む。単離核酸は、DNAまたはRNAであってよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、単離核酸は、ベクター、例えば、発現ベクター、ウイルスベクター、またはクローニングベクターなどの中に挿入される。核酸発現のために、ベクターを宿主細胞中に導入し、宿主細胞内での核酸の発現を可能にしてよい。発現ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能マーカー、及びシグナル配列をこれらに限定されることなく含む、発現を制御するための様々なエレメントを含有してよい。これらのエレメントは、当業者によって適宜選択されてよい。例えば、プロモーター配列は、ベクター中のポリヌクレオチドの転写を促進するために選択されてよい。好適なプロモーター配列としては、T7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、EF1aプロモーター、CMVプロモーター、及びSV40プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。エンハンサー配列は、核酸の転写を増強するために選択されてよい。選択可能マーカーは、ベクターが挿入されている宿主細胞を、挿入されていない宿主細胞から選択することを可能にするために選択されてよく、例えば、選択可能マーカーは、抗生物質耐性を付与する遺伝子であってよい。シグナル配列は、発現ポリペプチドを宿主細胞の外側に輸送できるように選択されてよい。いくつかの実施形態では、単離核酸は、シグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号:25のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、配列番号:26の核酸配列を含む。
配列番号:25(シグナルペプチドのアミノ酸配列)
MEWSWVFLFFLSVTTGVHS
配列番号:26(シグナルペプチドをコードする核酸)
atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactcc
【0136】
いくつかの実施形態では、上に記載されるベクターを含有する単離宿主細胞が提供される。ベクターを含有する宿主細胞は、単離核酸の発現またはクローニングに有用な場合がある。好適な宿主細胞としては、原核細胞、真菌細胞、酵母細胞、または高等真核細胞、例えば、哺乳動物細胞などが挙げられ得るが、これらに限定されない。E.coliなどの原核細胞中における抗体及び抗原結合断片の発現は、当該技術分野において十分に確立されている。概説については、例えば、Pluckthun,A.BioTechnology 9:545-551(1991)を参照のこと。培養真核細胞中における発現もまた、抗体またはその抗原結合断片を産生するための選択肢として当業者に利用可能であり、最近の概説、例えば、Ref,M.E.(1993)Curr.Opinion Biotech.4:573-576、Trill J.J.et al.(1995)Curr.Opinion Biotech 6:553-560を参照のこと。高等真核細胞、特に多細胞生物に由来するその細胞は、グリコシル化ポリペプチドの発現に使用され得る。好適な高等真核細胞としては、無脊椎動物細胞及び昆虫細胞、ならびに脊椎動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
ベクターは、当該技術分野において既知の任意の好適な方法、例えば、DEAE-デキストラン媒介送達、リン酸カルシウム沈降法、カチオン性脂質媒介送達、リポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、微粒子銃、受容体媒介遺伝子送達、ポリリジン、ヒストン、キトサン、及びペプチドによって媒介される送達を含むが、これらに限定されない方法を使用して宿主細胞中に導入され得る。目的のベクターを発現するための細胞のトランスフェクション及び形質転換に関する標準的な方法は、当該技術分野において周知である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、第1ポリペプチドをコードする第1ベクター及び第2ポリペプチドをコードする第2ベクターを含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドをコードする単離核酸を含む単一のベクターを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、本出願は、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)のいずれかを発現する方法を提供し、本方法は、ベクターを含有する単離宿主細胞を培養すること、及び細胞培養物からCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)を回収することを含む。単離宿主細胞は、ベクターに挿入された単離核酸の発現を可能にする条件下で培養される。ポリヌクレオチドの発現に好適な条件としては、好適な培地、培養培地中の宿主細胞の好適な密度、必要な栄養素の存在、補助因子の存在、好適な温度及び湿度、ならびに微生物夾雑物が存在しないことを挙げてよいが、これらに限定されない。当業者は、発現を目的として適宜好適な条件を選択することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、宿主細胞中で発現されるポリペプチドは、二量体を形成するため、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)を産生し得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞中で発現されるポリペプチドは、ホモ二量体であるポリペプチド複合体を形成し得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞は第1ポリヌクレオチド及び第2ポリヌクレオチドを発現し、第1ポリヌクレオチド及び第2ポリヌクレオチドは、ヘテロ二量体であるポリペプチド複合体を形成し得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド複合体(CD3×CD19 MSAPまたはBSAPなど)は、宿主細胞内で形成されてよい。例えば、二量体は、適切な酵素及び/または補因子の補助によって宿主細胞内で形成されてよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチド複合体は、細胞外に分泌されてよい。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、宿主細胞外に分泌され、宿主細胞の外側で二量体(CD3×CD19 MSAPまたはBSAPなど)を形成してよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、別々に発現され、好適な条件下で二量体化してCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の形成が可能であってよい。例えば、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、好適な緩衝液中で組み合わされ、第1タンパク質モノマー及び第2タンパク質モノマーが疎水性相互作用などの適切な相互作用によって二量体化することを可能にする場合がある。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドの二量体化を促進し得る酵素及び/または補因子を含有する好適な緩衝液中で組み合わされてよい。いくつかの実施形態では、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドは、好適なビヒクル中で組み合わされ、好適な試薬及び/または触媒の存在下でそれらが互いに反応することを可能にする場合がある。
【0142】
発現ポリペプチド(複数可)及び/またはポリペプチド複合体は、任意の好適な方法を使用して収集され得る。ポリペプチド(複数可)及び/またはポリペプチド複合体は、細胞内のペリプラズム空間で発現され得るか、または細胞外側の培地に分泌され得る。ポリペプチド及び/またはポリペプチド複合体が、細胞内で発現される場合、ポリペプチド及び/またはポリペプチド複合体を含有する宿主細胞が溶解される場合があり、ポリペプチド及び/またはポリペプチド複合体は、遠心分離または限外濾過によって望ましくない残屑を除去することによって溶解物から単離されてよい。ポリペプチド及び/またはポリペプチド複合体が、E.coliのペリプラズム空間に分泌される場合、細胞ペーストを、薬剤、例えば、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)などの存在下で約30分間解凍してよく、細胞残屑が遠心分離によって除去され得る(Carter et al.,BioTechnology 10:163-167(1992))。ポリペプチド及び/またはポリペプチド複合体が、培地中に分泌される場合、細胞培養物の上清は、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AminconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して収集及び濃縮されてよい。プロテアーゼ阻害剤及び/または抗生物質が収集及び濃縮ステップ中に含まれてよく、タンパク質分解及び/または汚染微生物の成長を阻害する。
【0143】
発現ポリペプチド(複数可)及び/またはポリペプチド複合体は、好適な方法、例えば、限定されることなく、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、イオン交換カラム上でのイオン交換分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、heparin sepharose上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などによってさらに精製され得る(概説については、Bonner,P.L.,Protein purification,Taylor&Francis.により出版,2007、Janson,J.C.,et al,Protein purification:principles,high resolution methods and applications,Wiley-VCHにより出版,1998を参照のこと)。
【0144】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド及び/またはポリペプチド二量体複合体は、アフィニティークロマトグラフィーによって精製され得る。いくつかの実施形態では、プロテインAクロマトグラフィーまたはプロテインA/G(プロテインA及びプロテインGの融合タンパク質)クロマトグラフィーは、抗体CH2ドメイン及び/またはCH3ドメインに由来する構成要素を含むポリペプチド及び/またはポリペプチド複合体の精製に有用であり得る(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))、Zettlit,K.A.,Antibody Engineering,Part V,531-535,2010)。いくつかの実施形態では、プロテインGクロマトグラフィーは、IgGγ3重鎖を含むポリペプチド及び/またはポリペプチド複合体の精製に有用であり得る(Guss et al.,EMBO J.5:1567 1575(1986))。いくつかの実施形態では、プロテインLクロマトグラフィーは、κ軽鎖を含むポリペプチド及び/またはポリペプチド複合体の精製に有用であり得る(Sudhir,P.,Antigen engineering protocols,Chapter 26,Humana Pressにより出版,1995、Nilson,B.H.K.at al,J.Biol.Chem.,267,2234-2239(1992))。親和性リガンドが結合されるマトリックスは、ほとんどの場合にアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。機械的に安定したマトリックス、例えば、多孔性ガラス粉体またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどは、アガロースを用いて達成され得る場合よりも、より速い流速及びより短い処理時間を可能にする。CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)が追加のCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。
【0145】
IV.医薬組成物、単位投与量、製品、及びキット
本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)のいずれか1つ、及び場合により薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が、本出願によってさらに提供される。
【0146】
医薬組成物は、本明細書に記載される様々な投与方法、例えば、全身投与または局所投与を含む方法に好適であってよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腫瘍部位への局所投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内注射用に製剤化される。
【0147】
「担体」は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含み、これらは用いられる投与量及び濃度でそれらに曝露されている細胞または哺乳動物にとって非毒性である。多くの場合、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントにとって非毒性であり、これらとしては、緩衝液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸など、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベンなど、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンなど、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなど、グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、キレート剤、例えば、EDTAなど、糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなど、塩形成対イオン、例えば、ナトリウムなど、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、及び/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などが挙げられる。
【0148】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約4.5~約9.0の範囲のpH、例えば、約5.0~約8.0、約6.5~約7.5、または約6.5~約7.0のいずれか1つのpH範囲を含むpHを有するように製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はまた、グリセロールなどの好適な張度調節剤の添加によって、血液と等張になるように作製され得る。
【0149】
インビボ投与に使用される医薬組成物は、一般に滅菌、実質的に等張として、米国食品医薬品局の全ての医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準(GMP)規制を完全に遵守して製剤化される。滅菌性は、滅菌濾過膜に通して濾過することによって容易に達成される。いくつかの実施形態では、組成物は病原体を含まない。注射用に、医薬組成物は、溶液の形態、例えば、生理学的に適合する緩衝液、例えば、ハンクス液またはリンゲル液などの中にあり得る。加えて、医薬組成物は固体形態であり、使用の直前に再溶解または懸濁され得る。凍結乾燥組成物も含まれる。
【0150】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内、腹腔内、または硝子体内注射に適した医薬組成物として日常的な手順に従って製剤化される。典型的には、注射用組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物はまた、可溶化剤及び注射部位の痛みを和らげるためにリグノカインなどの局所麻酔薬も含んでよい。一般に、成分は別個に、または単位剤形中で互いに混合させるかのいずれかで、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封された密閉容器中の乾燥凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給される。組成物が注入によって投与される場合、組成物は医薬グレードの滅菌水または生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて調剤され得る。組成物が注射によって投与される場合、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが、投与前に成分を混合できるように提供され得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ヒトへの投与に好適である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)または非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)への投与に好適である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単回使用バイアル、例えば、単回使用密封バイアルなどの中に含有される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数回使用バイアル中に含有される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、容器中にまとめて含有される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は凍結保存される。
【0152】
本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)、またはその組成物(医薬組成物など)の単位剤形もまた提供される。「単位剤形」という用語は、個体への単一投与量として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位が、好適な医薬担体、希釈剤、または賦形剤と関連して、所望の治療効果をもたらすように算出された所定量の活性物質を含有する。これらの単位剤形は、単一または複数の単位投与量で好適な包装内に保存され得、さらに滅菌及び密封されてもよい。
【0153】
本出願は、本明細書に記載される組成物(医薬組成物など)を好適な包装内に含む製品をさらに提供する。本明細書に記載される組成物(医薬組成物など)の好適な包装は、当該技術分野において既知であり、これらとしては、例えば、バイアル(密封バイアルなど)、容器、アンプル、ボトル、ジャー、軟包装(例えば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。これらの製品は、さらに滅菌及び/または密封されてよい。
【0154】
本出願は、本明細書に記載される組成物(医薬組成物など)を含むキットも提供し、本明細書に記載される使用などの、組成物を使用する方法に関する説明書(複数可)をさらに含んでよい。本明細書に記載されるキットは、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料、例えば、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び本明細書に記載されるいずれかの方法を実施するための説明書を含む添付文書を含む材料をさらに含んでよい。
【0155】
V.がんの処置方法
本出願の一態様は、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法を提供し、本方法は、有効量の本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)のいずれか、またはその組成物(医薬組成物など)を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその組成物(医薬組成物など)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。
【0156】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3
Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3
Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片はscFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片は、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含むscFvである。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)またはその組成物(医薬組成物など)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるがんを処置する方法は、以下の生物活性のうち1つ以上を有する:(1)がん細胞を死滅させる、(2)がん細胞の増殖を阻害する、(3)末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)、(4)腫瘍サイズを減少させる、(5)がんを有する個体の1つ以上の症状を軽減させる、(6)腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する、(7)生存期間を延長する、(8)がんが進行するまでの時間を延長する、及び(9)がんの再発可能性を予防、阻害、または減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれを超えるいずれかの腫瘍細胞死率を達成し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍サイズを減少させる方法は、腫瘍サイズを少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)減少させ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する方法は、転移を少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)阻害し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法は、個体の生存期間を、少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、18か月、もしくは24か月のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがんが進行するまでの時間を延長する方法は、がんが進行するまでの時間を、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医
薬組成物は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化することによって、対象の免疫応答または機能を増加、増強、または刺激し得る。いくつかの実施形態では、個体のCD4及び/またはCD8 T細胞は、プライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/または細胞溶解活性が、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物の投与前と比較して増加または増強している。
【0157】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片は、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含むscFvである。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)またはその組成物(医薬組成物など)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるがんを処置する方法は、以下の生物活性のうち1つ以上を有する:(1)がん細胞を死滅させる、(2)がん細胞の増殖を阻害する、(3)末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)、(4)腫瘍サイズを減少させる、(5)がんを有する個体の1つ以上の症状を軽減させる、(6)腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する、(7)生存期間を延長する、(8)がんが進行するまでの時間を延長する、及び(9)がんの再発可能性を予防、阻害、または減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれを超えるいずれかの腫瘍細胞死率を達成し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍サイズを減少させる方法は、腫瘍サイズを少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)減少させ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する方法は、転移を少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいず
れかを含む)阻害し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法は、個体の生存期間を、少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、18か月、もしくは24か月のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがんが進行するまでの時間を延長する方法は、がんが進行するまでの時間を、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化することによって、対象の免疫応答または機能を増加、増強、または刺激し得る。いくつかの実施形態では、個体のCD4及び/またはCD8 T細胞は、プライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/または細胞溶解活性が、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物の投与前と比較して増加または増強している。
【0158】
いくつかの実施形態では、MSAPは、2つよりも多い(3つ以上などの)エピトープに特異的に結合する。例えば、いくつかの実施形態では、MSAPは、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合される第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、及び抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含み、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、MSAPは三重特異性である。いくつかの実施形態では、MSAPは、二重特異性(例えば、BSAP)及び二価である。例えば、いくつかの実施形態では、二価及び二重特異性MSAP(またはBSAP)は、抗CD3 Fab断片のVHまたはVLのいずれかのN末端に融合される1つの抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含む。いくつかの実施形態では、MSAPは、二重特異性(例えば、BSAP)及び三価である。例えば、いくつかの実施形態では、MSAPは、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合される第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、及び抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を含み、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列及び/または構造を有するが、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片はscFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片は、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含むscFvである。
【0159】
したがって、いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg
CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、同じアミノ酸配列、例えば、配列番号:51または59などを有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3
Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3
Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:58のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、第1ポリペプチドが配列番号:57のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)またはその組成物(医薬組成物など)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるがんを処置する方法は、以下の生物活性のうち1つ以上を有する:(1)がん細胞を死滅させる、(2)がん細胞の増殖を阻害する、(3)末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)、(4)腫瘍サイズを減少させる、(5)がんを有する個体の1つ以上の症状を軽減させる、(6)腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する、(7)生存期間を延長する、(8)がんが進行するまでの時間を延長する、及び(9)がんの再発可能性を予防、阻害、または減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれを超えるいずれかの腫瘍細胞死率を達成し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍サイズを減少させる方法は、腫瘍サイズを少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)減少させ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する方法は、転移を少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)阻害し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法は、個体の生存期間を、少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、18か月、もしくは24か月のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがんが進行するまでの時間を延長する方法は、がんが進行するまでの時間を、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化することによって、対象の免疫応答または機能を増加、増強、または刺激し得る。いくつかの実施形態では、個体のCD4及び/またはCD8 T細胞は、プライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/または細胞溶解活性が、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物の投与前と比較して増加または増強している。
【0160】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19 scFvであって、抗CD19 scFvが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む、抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19 scFvを連結させるリンカーであって、抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び/または第2抗CD19 scFvが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19 scFvは、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3
Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)またはその組成物(医薬組成物など)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるがんを処置する方法は、以下の生物活性のうち1つ以上を有する:(1)がん細胞を死滅させる、(2)がん細胞の増殖を阻害する、(3)末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)、(4)腫瘍サイズを減少させる、(5)がんを有する個体の1つ以上の症状を軽減させる、(6)腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する、(7)生存期間を延長する、(8)がんが進行するまでの時間を延長する、及び(9)がんの再発可能性を予防、阻害、または減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれを超えるいずれかの腫瘍細胞死率を達成し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍サイズを減少させる方法は、腫瘍サイズを少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)減少させ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する方法は、転移を少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)阻害し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法は、個体の生存期間を、少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、18か月、もしくは24か月のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがんが進行するまでの時間を延長
する方法は、がんが進行するまでの時間を、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化することによって、対象の免疫応答または機能を増加、増強、または刺激し得る。いくつかの実施形態では、個体のCD4及び/またはCD8 T細胞は、プライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/または細胞溶解活性が、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物の投与前と比較して増加または増強している。
【0161】
いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、2つの抗CD19 scFvを含む。いくつかの実施形態では、2つの抗CD19 scFvは両方とも、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。
【0162】
したがって、いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結され、抗CD3 Fab断片のVHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvであって、第1抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19 scFvが、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合され、第1及び第2抗CD19 scFvが両方とも、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFv、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19 scFvを連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19 scFvを連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)またはその組成物(医薬組成物など)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるがんを処置する方法は、以下の生物活性のうち1つ以上を有する:(1)がん細胞を死滅させる、(2)がん細胞の増殖を阻害する、(3)末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)、(4)腫瘍サイズを減少させる、(5)がんを有する個体の1つ以上の症状を軽減させる、(6)腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する、(7)生存期間を延長する、(8)がんが進行するまでの時間を延長する、及び(9)がんの再発可能性を予防、阻害、または減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれを超えるいずれかの腫瘍細胞死率を達成し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍サイズを減少させる方法は、腫瘍サイズを少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)減少させ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する方法は、転移を少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)阻害し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法は、個体の生存期間を、少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、18か月、もしくは24か月のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがんが進行するまでの時間を延長する方法は、がんが進行するまでの時間を、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化することによって、対象の免疫応答または機能を増加、増強、または刺激し得る。いくつかの実施形態では、個体のCD4及び/またはCD8 T細胞は、プライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/または細胞溶解活性が、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物の投与前と比較して増加または増強している。
【0163】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含み、第1ポリペプチドが配列番号:60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含み、第1ポリペプチドが配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:58のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)を処置する方法が提供され、本方法は、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含み、第1ポリペプチドが配列番号:57のアミノ酸配列を含み、第2ポリペプチドが配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)またはその組成物(医薬組成物など)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるがんを処置する方法は、以下の生物活性のうち1つ以上を有する:(1)がん細胞を死滅させる、(2)がん細胞の増殖を阻害する、(3)末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)、(4)腫瘍サイズを減少させる、(5)がんを有する個体の1つ以上の症状を軽減させる、(6)腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する、(7)生存期間を延長する、(8)がんが進行するまでの時間を延長する、及び(9)がんの再発可能性を予防、阻害、または減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれを超えるいずれかの腫瘍細胞死率を達成し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍サイズを減少させる方法は、腫瘍サイズを少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)減少させ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する方法は、転移を少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)阻害し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法は、個体の生存期間を、少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、18か月、もしくは24か月のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがんが進行するまでの時間を延長する方法は、がんが進行するまでの時間を、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化することによって、対象の免疫応答または機能を増加、増強、または刺激し得る。いくつかの実施形態では、個体のCD4及び/またはCD8 T細胞は、プライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/または細胞溶解活性が、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物の投与前と比較して増加または増強している。
【0164】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん細胞(例えば、DLBCLまたはALL)を死滅させる方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん細胞(例えば、DLBCLまたはALL)を死滅させる方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん細胞(例えば、DLBCLまたはALL)を死滅させる方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3
Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)によって媒介される腫瘍細胞死率は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%のいずれか、またはそれを超える。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0165】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん細胞(例えば、DLBCLまたはALL)の増殖を阻害する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3
Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん細胞(例えば、DLBCLまたはALL)の増殖を阻害する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん細胞(例えば、DLBCLまたはALL)の増殖を阻害する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVH及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、がん細胞増殖率は、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)の存在下において少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%のいずれか、またはそれを超えて減少する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19
scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0166】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg
CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)方法があり、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig
VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVH及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0167】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の腫瘍サイズを減少させる方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の腫瘍サイズを減少させる方法があり、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の腫瘍サイズを減少させる方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVH及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、腫瘍サイズは、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)の存在下において少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)減少する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、抗CD3
Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0168】
いくつかの実施形態では、がん(例えば、DLBCLまたはALL)を有する個体(ヒトなど)の1つ以上の症状を軽減させる方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、がん(例えば、DLBCLまたはALL)を有する個体(ヒトなど)の1つ以上の症状を軽減させる方法があり、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、がん(例えば、DLBCLまたはALL)を有する個体(ヒトなど)の1つ以上の症状を軽減させる方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3
Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVH及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0169】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の既存の腫瘍転移(リンパ節への転移など)を減少させる(根絶するなどの)方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の既存の腫瘍転移(リンパ節への転移など)を減少させる(根絶するなどの)方法があり、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の既存の腫瘍転移(リンパ節への転移など)を減少させる(根絶するなどの)方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVH及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)は、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)の存在下において少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)減少する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0170】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の既存の腫瘍転移(リンパ節への転移など)の発生率または負荷を減少させる方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の既存の腫瘍転移(リンパ節への転移など)の発生率または負荷を減少させる方法があり、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)の既存の腫瘍転移(リンパ節への転移など)の発生率または負荷を減少させる方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVH及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0171】
いくつかの実施形態では、がん(例えば、DLBCLまたはALL)を有する個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、がん(例えば、DLBCLまたはALL)を有する個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法があり、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、がん(例えば、DLBCLまたはALL)を有する個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVH及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、個体の生存期間を少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、18か月、または24か月のいずれかで延長する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0172】
いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)の疾患進行までの時間を延長する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAP、またはその医薬組成物など)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)の疾患進行までの時間を延長する方法があり、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAP、またはその医薬組成物など)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のがん(例えば、DLBCLまたはALL)の疾患進行までの時間を延長する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAP、またはその医薬組成物など)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVH及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、疾患進行までの時間を少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間のいずれか、またはそれを超えて延長する。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 scFvは、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0173】
本明細書で提供される方法は、アジュバント設定で実施されてよい。いくつかの実施形態では、本方法はネオアジュバント設定で実施される、すなわち、本方法は一次/根治治療前に実施されてよい。いくつかの実施形態では、本方法は、これまでに処置を受けたことがある個体(ヒトなど)を処置するために使用される。本明細書で提供される処置方法のいずれかが、これまでに処置を受けたことがない個体(ヒトなど)を処置するために使用されてよい。いくつかの実施形態では、本方法は、第1選択療法として使用される。いくつかの実施形態では、本方法は、第2選択療法として使用される。
【0174】
本明細書に記載される方法は、固形がん及び液状がんの両方を含む、様々ながんの処置に好適である。本方法は、初期段階のがん、非転移性がん、原発性がん、進行がん、局所進行がん、転移がん、または寛解期のがんを含む、全ての段階のがんに適用可能である。本明細書に記載される方法は、第1療法、第2療法、第3療法、または当該技術分野において既知の他の種類のがん療法、例えば、化学療法、外科手術、放射線、遺伝子治療、免疫療法、骨髄移植、幹細胞移植、標的療法、凍結療法、超音波療法、光力学療法、ラジオ波焼灼療法などとの併用療法としてアジュバント設定またはネオアジュバント設定で使用されてよい。いくつかの実施形態では、がんは、以前の療法に抵抗性を示している。
【0175】
本発明の方法によって処置される可能性がある固形がんの例としては、膠芽腫、非小細胞肺癌、非小細胞肺癌以外の肺癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肝臓癌、結腸癌、上皮癌、胃癌、脾臓癌、皮膚癌、膠芽腫以外の脳癌、腎臓癌、甲状腺癌などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
本発明の方法によって処置される可能性がある非固形がんの例としては、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、がんはDLBCLまたはB-ALLである。
【0177】
いくつかの実施形態では、本方法は、がん細胞の表面上でCD19を過剰発現するがんを処置するのに好適である。いくつかの実施形態では、個体のがん細胞は、正常細胞と比較して少なくとも約2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍超のいずれか、またはそれを超える倍数でCD19を発現する。いくつかの実施形態では、CD19陽性がんは、白血病またはリンパ腫である。いくつかの実施形態では、CD19陽性がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0178】
したがって、いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のCD19陽性がん(白血病またはリンパ腫など)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig
VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のCD19陽性がん(白血病またはリンパ腫など)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片及び抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させるリンカーであって、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合されているリンカー。いくつかの実施形態では、個体(ヒトなど)のCD19陽性がん(白血病またはリンパ腫など)を処置する方法が提供され、本方法は、以下を含む有効量のMSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)を個体に投与することを含む:I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、抗CD3 Fab断片が、(a)Ig VH及びIg CH1、ならびに(b)Ig VL及びIg CLを含み、場合により、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLが、ジスルフィド結合によって連結されている抗CD3 Fab断片、II.CD19に特異的に結合する第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)であって、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合され、第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)が、抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合される、第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)、ならびにIII.場合により、抗CD3 Fab断片のVH及び第1抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第1リンカー、ならびに抗CD3 Fab断片のVL及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)を連結させる第2リンカー。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、同じCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、異なるCD19エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、配列中で同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2リンカーは、異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片は、CD3εのN末端(例えば、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープ)に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:9のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のVHは、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のVLは、配列番号:16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1及びCLは、約1~約5個のジスルフィド結合(例えば、2個のジスルフィド結合)によって連結されている。いくつかの実施形態では、抗CD3 Fab断片のCH1は、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または抗CD3 Fab断片のCLは、配列番号:52のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3
Fab断片のCH1及びCLのC末端は各々、分子間ジスルフィド結合を形成できるCPPC(配列番号:45)またはCPPCS(配列番号:46)の共有結合配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVH、及び/または配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片(例えば、scFv)は、配列番号:7のアミノ酸配列を含むVH、及び/または配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片はscFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗原結合断片は、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含むscFvである。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個(例えば、約2~約15個)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される(例えば、配列番号:44)。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、配列番号:57のアミノ酸配列を含む第1ポリペプチド、及び配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む第2ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)またはその組成物(医薬組成物など)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、サイトカインストームを誘導しない。いくつかの実施形態では、CD19陽性がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD19陽性がんを処置する方法は、以下の生物活性のうち1つ以上を有する:(1)がん細胞を死滅させる、(2)がん細胞の増殖を阻害する、(3)末梢T細胞の再分布を誘導する(例えば、CD19を発現する組織または腫瘍にT細胞を動員する)、(4)腫瘍サイズを減少させる、(5)がんを有する個体の1つ以上の症状を軽減させる、(6)腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する、(7)生存期間を延長する、(8)がんが進行するまでの時間を延長する、及び(9)がんの再発可能性を予防、阻害、または減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがん細胞を死滅させる方法は、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれを超えるいずれかの腫瘍細胞死率を達成し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍サイズを減少させる方法は、腫瘍サイズを少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)減少させ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される腫瘍転移(例えば、リンパ節への転移)を阻害する方法は、転移を少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)阻害し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介される個体(ヒトなど)の生存期間を延長する方法は、個体の生存期間を、少なくとも1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、18か月、もしくは24か月のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物によって媒介されるがんが進行するまでの時間を延長する方法は、がんが進行するまでの時間を、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間のいずれか、またはそれを超えて延長し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物は、エフェクター細胞(例えば、T細胞、例えば、CD8+及び/またはCD4+T細胞)を活性化することによって、対象の免疫応答または機能を増加、増強、または刺激し得る。いくつかの実施形態では、個体のCD4及び/またはCD8 T細胞は、プライミング、活性化、増殖、サイトカイン放出及び/または細胞溶解活性が、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)またはその医薬組成物の投与前と比較して増加または増強している。
【0179】
本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど、もしくはその医薬組成物)(またはその医薬組成物)の例示的な投与経路としては、経口、静脈内、腔内、腫瘍内、動脈内、筋肉内、皮下、非経口、経粘膜、経皮、点眼、局所、腹腔内、頭蓋内、胸膜内、及び表皮経路、またはがん細胞を含有することで知られているリンパ腺、体腔、臓器もしくは組織に送達される経路が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、注入によって投与される。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、皮下投与される。いくつかの実施形態では、MSAPは、注射によって投与される。
【0180】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、静脈内注入によって投与される。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、約24時間、20時間、15時間、10時間、8時間、6時間、3時間、2時間、1時間、30分以下のいずれか、またはそれ未満の時間にわたって個体に注入される。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、約30分~約1時間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間、約8時間~約10時間、約10時間~約12時間、約12時間~約18時間、約18時間~約24時間、約30分~約2時間、約2時間~約5時間、約5時間~約10時間、約10時間~約20時間、約30分~約10時間、または約30分~約20時間のいずれか1つの期間にわたって個体に注入される。MSAP(BSAPなど)は、任意の好適な速度で個体に注入されてよい。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど)は、約0.01μg/kg/時、0.02μg/kg/時、0.05μg/kg/時、0.1μg/kg/時、0.2μg/kg/時、0.5μg/kg/時、0.6μg/kg/時、0.7μg/kg/時、0.8μg/kg/時、0.9μg/kg/時、1μg/kg/時、1.5μg/kg/時、2μg/kg/時、3μg/kg/時、4μg/kg/時、5μg/kg/時、10μg/kg/時、15μg/kg/時、20μg/kg/時、25μg/kg/時、50μg/kg/時、75μg/kg/時、100μg/kg/時超のいずれか、またはそれを超える速度で注入されてよい。
【0181】
個体(ヒトなど)に投与されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)の投薬レジメンは、特定のMSAP(BSAPなど)組成物(医薬組成物など)、投与方法、ならびに処置されているがんの特定の型及び段階によって異なる場合がある。いくつかの実施形態では、MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)のその有効量は、組成物が個体に投与される場合に、毒性効果(すなわち、臨床的に許容されるレベルの毒性を超える効果)を誘導するレベルを下回るか、または潜在的な副作用が制御もしくは忍容され得るレベルである。
【0182】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)の有効量は、中枢神経系に有害作用を誘導するレベルを下回る。例えば、抗体療法で観察される有害作用は、注入関連副作用、例えば、サイトカイン放出症候群(「CRS」)などの発症であり、その重症例は「サイトカインストーム」として知られている。「サイトカインストーム」が誘導されると、健康な個体の免疫系が活性化され、大量の炎症性サイトカイン、例えば、INF-γ、CCL2、IL-10、IL-6などを放出する。これは、典型的にはサイトカインと免疫細胞との間の正のフィードバックループからなる致死的免疫反応を引き起こす可能性があり、様々なサイトカインのレベルが高く上昇する。CRSに関連すると記載されている他の有害な副作用は、倦怠感、嘔吐、頻拍、高血圧、背痛であるが、中枢神経系反応(CNS反応)、例えば、発作、脳症、脳浮腫、無菌性髄膜炎、及び頭痛などでもある。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、サイトカインストームなどのサイトカイン放出症候群を誘導しない用量で投与される。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、TNF、及びINF-γからなる群から選択される1つ以上のサイトカインの多量放出を誘導しない用量で投与される。いくつかの実施形態では、サイトカインの多量放出は、少なくとも約1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、24時間のいずれか、またはそれを超える時間にわたるサイトカインの持続放出である。いくつかの実施形態では、サイトカインの多量放出は、少なくとも約1、5、10、20、50、100、200、500、1000pg/mLのいずれか、またはそれを超える濃度のサイトカインの血清レベルまたは血中レベルである。いかなる理論にも束縛されることなく、本明細書に記載されるCD3×CD19 MSAP(BSAPなど)(またはその医薬組成物)は、T細胞を動員して活性化するために、標的腫瘍細胞上のCD19への結合を必要とする。そのような要件は、望ましくないサイトカインストーム、及び所望の標的腫瘍細胞が存在しない場合に望ましくないT細胞の活性化を大幅に減少させ得る。
【0183】
いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、約0.01μg/kg、0.05μg/kg、0.1μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、2μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、50μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、または1mg/kg以下のいずれか1つの用量で投与される。本明細書に記載される用量は、カニクイザルに好適な用量、そのヒト等価用量、または個体の特定の種に対する等価用量を指す場合がある。
【0184】
有効量のCD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、単回用量で、または複数回用量で投与されてよい。MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)の複数回用量での投与を含む方法の場合、例示的な投薬頻度としては、毎日、中断することなく毎日、毎週、中断することなく毎週、3週間のうち2週間、4週間のうち3週間、3週間ごとに1回、2週間ごとに1回、毎月、6か月ごと、毎年などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、約2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、6週間ごとに1回、または8週間ごとに1回投与される。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、1週間に少なくとも約1回、2回、3回、4回、5回、6回、または7回(すなわち、毎日)のいずれかで投与される。いくつかの実施形態では、各投与間の間隔は、約3年、2年、12か月、11か月、10か月、9か月、8か月、7か月、6か月、5か月、4か月、3か月、2か月、1か月、4週、3週、2週、1週、6日、5日、4日、3日、2日、または1日未満のいずれかである。いくつかの実施形態では、各投与間の間隔は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、2年、または3年超のいずれかである。いくつかの実施形態では、投薬スケジュール中に中断しない。
【0185】
CD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)の投与は、長期間、例えば、1日~約1週間、約1週間~約1か月、約1か月~約1年、約1年~約数年などにわたって延長され得る。いくつかの実施形態では、CD3×CD19 MSAP(BSAPなど、またはその医薬組成物)は、少なくとも約1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、1年間、2年間、3年間、4年間のいずれか、またはそれを超える期間にわたって投与される。
【0186】
例示的な実施形態
実施形態1.多重特異性抗原結合タンパク質であって、
I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、前記抗CD3 Fab断片が、
(a)免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及びIg重鎖定常領域(CH1)、ならびに
(b)Ig軽鎖可変領域(VL)及びIg軽鎖定常領域(CL)を含み、
場合により、前記抗CD3 Fab断片の前記CH1及び前記CLが、ジスルフィド結合によって連結されている、前記抗CD3 Fab断片と、
II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片と、
III.場合により、前記抗CD3 Fab断片及び前記抗CD19抗原結合断片を連結させるリンカーとを含む、前記多重特異性抗原結合タンパク質。
【0187】
実施形態2.前記抗CD19抗原結合断片が、前記抗CD3 Fab断片の前記VHのN末端に融合される、実施形態1に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0188】
実施形態3.前記抗CD19抗原結合断片が、前記抗CD3 Fab断片の前記VLのN末端に融合される、実施形態1に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0189】
実施形態4.第1抗CD19抗原結合断片及び第2抗CD19抗原結合断片を含み、前記第1抗CD19抗原結合断片が、前記抗CD3 Fab断片の前記VHのN末端に融合され、前記第2抗CD19抗原結合断片が、前記抗CD3 Fab断片の前記VLのN末端に融合される、実施形態1に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0190】
実施形態5.前記抗CD3 Fab断片が、CD3εのN末端に特異的に結合する、実施形態1~4のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0191】
実施形態6.前記抗CD3 Fab断片が、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープに特異的に結合する、実施形態5に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0192】
実施形態7.前記抗CD3 Fab断片の前記VHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含む重鎖超可変領域H1(HVR-H1)、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、ならびに/または前記抗CD3 Fab断片の前記VLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖超可変領域L1(HVR-L1)、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、実施形態5または6に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0193】
実施形態8.前記抗CD3 Fab断片の前記VHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または前記抗CD3 Fab断片の前記VLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、実施形態5~7のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0194】
実施形態9.前記抗CD3 Fab断片の前記CH1及び前記CLが、約1~約5個のジスルフィド結合によって連結されている、実施形態1~8のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0195】
実施形態10.前記抗CD3 Fab断片の前記CH1及び前記CLが、約2個のジスルフィド結合によって連結されている、実施形態9に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0196】
実施形態11.前記抗CD3 Fab断片の前記CH1が、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または前記抗CD3 Fab断片の前記CLが、配列番号:52のアミノ酸配列を含む、実施形態1~10のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0197】
実施形態12.前記抗CD19抗原結合断片がVHを含み、前記抗CD19抗原結合断片の前記VHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、ならびに/または前記抗CD19抗原結合断片がVLを含み、前記抗CD19抗原結合断片の前記VLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、実施形態1~11のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0198】
実施形態13.前記抗CD19抗原結合断片の前記VHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または前記抗CD19抗原結合断片の前記VLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、実施形態12に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0199】
実施形態14.前記抗CD19抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態1~13のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0200】
実施形態15.前記抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む、実施形態14に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0201】
実施形態16.前記多重特異性抗原結合タンパク質が、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19 scFvを含む、実施形態14または15に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0202】
実施形態17.前記第1抗CD19 scFv及び前記第2抗CD19 scFvが、同じアミノ酸配列を有する、実施形態16に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0203】
実施形態18.前記リンカーが、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個のアミノ酸残基を含む、実施形態1~17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0204】
実施形態19.前記リンカーが、約2~約15個のアミノ酸残基を含む、実施形態18に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0205】
実施形態20.前記リンカーが、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される、実施形態18または19に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0206】
実施形態21.前記多重特異性抗原結合タンパク質が、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチドが、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、前記第2ポリペプチドが、配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む、実施形態1~20のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0207】
実施形態22.前記第1ポリペプチドが、配列番号:53のアミノ酸配列を含み、前記第2ポリペプチドが、配列番号:54のアミノ酸配列を含む、実施形態21に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0208】
実施形態23.前記第1ポリペプチドが、配列番号:60のアミノ酸配列を含み、前記第2ポリペプチドが、配列番号:61のアミノ酸配列を含む、実施形態21に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【0209】
実施形態24.実施形態1~23のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質をコードする、単離核酸。
【0210】
実施形態25.実施形態1~23のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質と、場合により薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【0211】
実施形態26.がんの処置を必要とする個体におけるがんの処置方法であって、有効量の実施形態25に記載の医薬組成物を前記個体に投与することを含む、前記方法。
【0212】
実施形態27.前記医薬組成物が静脈内投与される、実施形態26に記載の方法。
【0213】
実施形態28.前記個体がヒトである、実施形態26または27に記載の方法。
【0214】
実施形態29.前記がんが、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、例えば、CMLの急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含むCML、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、例えば、CLLのリヒター症候群またはリヒター形質転換を含むCLL、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含むNHL、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される、実施形態26~28のいずれか1項に記載の方法。
【0215】
実施形態30.前記がんがDLBCLまたはALLである、実施形態29に記載の方法。
【実施例0216】
以下の実施例は、単に本発明の例示であることを意図し、それゆえ、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例及び詳細な説明は、限定するものではなく、実例として提供される。実験方法の詳細を記載していない実施形態については、そのような方法を、従来の条件、例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されているものなどに従って、または製造業者の提案通りに実施する。
【0217】
実施例1:例示的な多重特異性抗原結合タンパク質の発現及び精製
多重特異性抗原結合タンパク質(MSAP)を、標準的なプロトコールを使用して発現させた。MSAPの第1ポリペプチド鎖及び第2ポリペプチド鎖をコードするDNA断片を、pBOSベースのベクターにクローニングし、第1ポリペプチド鎖及び第2ポリペプチド鎖を発現する構築物を生成した。この構築物はまた、第1ポリペプチド鎖及び第2ポリペプチド鎖タンパク質の分泌を促進するために、シグナルペプチドをコードする配列も含有した。
【0218】
例示的なCD19×CD3 MSAPのアミノ酸配列及びそれをコードする核酸配列を表1に示す。
図1Aは、抗CD19 Fab断片のN末端VHに融合された抗CD3 scFvを有するITAB2009 MSAPコンフォメーションを図示する。
図1Bは、抗CD3 Fab断片のVHのN末端に融合された第1抗CD19 scFv、及び抗CD3 Fab断片のVLのN末端に融合された第2抗CD19 scFvを有するITAB2007 MSAPコンフォメーションを図示する。
表1.例示的なCD19×CD3 MSAP
【表1】
【0219】
一例としてCD19×CD3 MSAP ITAB2007を使用するために、ITAB2007の第1ポリペプチド鎖をコードするDNA断片(核酸配列配列番号:55)及びITAB2007の第2ポリペプチド鎖をコードするDNA断片(核酸配列配列番号:56)を、それぞれpBOSベースのベクターにクローニングした。この構築物はまた、Kozak配列及びシグナルペプチドをコードする配列(アミノ酸配列を配列番号:25として示し、核酸配列を配列番号:26として示す)を、第1ポリペプチド鎖及び/または第2ポリペプチド鎖の上流に含有することによって、ITAB2007 MSAPの第1ポリペプチド鎖及び第2ポリペプチド鎖を発現する構築物を作製した。CD19×CD3 MSAP ITAB2009も同様に構築した。シーケンシング結果は、正確な遺伝子挿入を示した。構築物をE.coliに形質転換し、トランスフェクショングレードのプラスミドDNAを得た。HEK293細胞を、EXPI293(商標)発現培地(Invitrogen)中で増殖させた。トランスフェクションのために、プラスミドDNA(MSAPの第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドをコードするDNA構築物)ならびに25kDのポリエチレンイミン(PEI、1:3のDNA/直鎖状25kD PEI重量比)を含有する10mLの培地を、90mLの細胞培養物に添加した。あるいは、約30μgのDNA混合物(MSAPの第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドをコードするDNA構築物)を、製造業者の指示に従ってExpiFectamine 293トランスフェクションキット(Invitrogen)を使用し、HEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2、125rpm)中で約6日間培養し、次いで上清を収集した。
【0220】
細胞培養上清を、IgG-CH1アフィニティークロマトグラフィー(Thermo Fisher Scientific)で精製して、標的タンパク質を得た。細胞培養上清を、0.22μmの滅菌膜に通して濾過し、150mMのNaCl及び10mMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.5)で平衡化したIgG-CH1アフィニティーマトリックス上にロードして、150mMのNaCl及び50mMのNaAc緩衝液(pH3.5)で溶出した。溶出液を、2Mのトリス溶出液で7.2のpHに調整し、10kD分画分子量を有するVivaspin遠心濃縮器(Sartorius)で濃縮した。精製したタンパク質を4℃で保存した。
【0221】
実施例2:CD19×CD3 MSAPの結合親和性の決定
抗原結合親和性
例示的なCD19×CD3 MSAP(すなわち、ITAB2007及びITAB2009)の抗CD19及び抗CD3結合ドメインと、対応するヒト及びカニクイザル抗原との結合親和性を、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサーを備えたOctet
QKeを使用して測定した。ヒトCD3抗原構築物(CD3εAA1~27.Fc)及びカニクイザルCD3抗原構築物(cynoCD3εAA1~27.Fc)は、ヒトIgG Fcに融合したCD3イプシロンのアミノ酸1~27からなるペプチドを有する。CD3抗原構築物の発現は、US8,846,042に記載されている。CD3抗原構築物またはCD19抗原(カニクイザル/アカゲザルCD19タンパク質(Fcタグ)、Sino Biological.Inc、組換えヒトCD19 Fcキメラ、R&D Systems.Inc)を、希釈液(PBS)で0.02mg/mLに希釈し、次いで抗ヒトFc捕捉(AHC)バイオセンサー上に固定化した。ITAB2007及びITAB2009を様々な濃度に希釈し、黒色マイクロプレートに添加した。PBSのみを含有する対照ウェルも設定した。検出結果を、ForteBio Data Acquisition及びForteBio Data Analysisソフトウェアを使用して分析した。
【0222】
表2に示す通り、例示的なCD19×CD3 MSAP(ITAB2007またはITAB2009)は、ヒト及びカニクイザル抗原(CD19またはCD3)に対してインビトロで交差反応性を示した。MSAPの交差反応性によって、カニクイザルの毒性及び有効性試験結果からヒトの臨床試験の外挿が容易になり得る。
表2.インビトロ結合親和性(KD)
【表2】
【0223】
実施例3.自己B細胞に対するCD19×CD3 MSAP媒介性PBMC細胞傷害
ヒトPBMC(hPBMC)調製:健康なヒト成人からの白血球濃縮試料をPBS緩衝液(Gibco)で希釈し、密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque、GE Healthcare)によって遠心分離してPBMCを得て、PBSで2回洗浄し、次いで室温、1000gで10分間遠心分離した。細胞を収集し、10%FBSを含有するRPMI 1640培地(Gibco)中に再懸濁させた。
【0224】
1ウェルあたり200μLの3×105PBMCを、96ウェルプレートに添加した。次いで、実験計画に従って、様々な濃度に希釈したCD19×CD3 MSAP ITAB2007及びITAB2009を添加した。CD19×CD3 MSAPを添加していない、PBMCを含有するウェルを対照として設定した。混合物を37℃、5%CO2で約18~24時間インキュベートした。細胞を回収し、抗体FITCマウス抗ヒトCD20(BD Pharmingen(商標))と共に30分間、室温でインキュベートした。ヨウ化プロピジウム(Sigma)を2μg/mLで添加し、15分間染色した。分析を、ACCURI C6(BD Bioscience)を使用して実施した。
【0225】
ヨウ化プロピジウム(PI)は、一般的に使用される核蛍光色素である。PIは無傷の細胞膜を透過できないため、無傷の細胞膜を有する生細胞を染色できない。死細胞の膜完全性の喪失によって、PIは死細胞に侵入し、DNAに結合できる。したがって、PI染色を使用して死細胞を同定できる。CD20陽性は生存B細胞を示しているが、CD20及びPIの両方に陽性である細胞は死滅B細胞を表す。CD19×CD3 MSAP媒介性細胞傷害は、次の式:死亡率%=[1-(試料ウェルの生存B細胞/試料ウェルの全B細胞)/(対照ウェルの生存B細胞/対照ウェルの全B細胞)]×100%を使用して算出した。
【0226】
死亡率をy軸として設定し、MSAP濃度をx軸として設定した。曲線を、4パラメータロジスティックモデルを使用してフィッティングし、EC50を決定した。
【0227】
図2から確認できる通り、CD19×CD3 ITAB2007及びITAB2009
MSAPの両方とも、ヒトPBMCによる自己B細胞死滅を媒介でき、それぞれ約0.16pM及び2.4pMのEC50であった。ITAB2007 CD19×CD3 MSAPは、自己B細胞の死滅においてITAB2009よりも優れている。
【0228】
実施例4.腫瘍細胞に対するCD19×CD3 MSAP媒介性PBMC細胞傷害(細胞傷害性アッセイ)
ヒトPBMCを、実施例3に記載した方法に従って調製し、10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中に再懸濁させた。
【0229】
Daudi細胞(標的細胞)を洗浄して遠心分離し、DiOC18(3,3’-ジオクタデシルオキサカルボシアニン過塩素酸塩、Life technologies)によって15分間染色し、次いで10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地中に再懸濁させた。100μLの3×104Daudi細胞及び100μLの3×105PBMCを、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。CD19×CD3 MSAP(例えば、ITAB2007、ITAB2009)を、実験計画に従って様々な濃度に希釈し、細胞混合物に添加した。MSAPを添加していないウェル(PBMC+Daudi標的細胞)を対照として設定した。約48時間のインキュベーションを、37℃で5%CO2によって実施した。DiOC18非染色対照ウェルを設定した。細胞をヨウ化プロピジウム(PI、Sigma)によって染色し、死細胞を表した。ACCURI C6サイトメーター(BD Bioscience)を分析に使用した。
【0230】
DiOC18陽性細胞は生存Daudi細胞を表しているが、DiOC18及びPIの両方に陽性である細胞は死滅Daudi細胞を表す。CD19×CD3 MSAP媒介性細胞傷害は、以下の式:死亡率%=[1-(試料ウェルの生存B細胞/試料ウェルの全B細胞)/(対照ウェルの生存B細胞/対照ウェルの全B細胞)]×100%を使用して算出した。
【0231】
死亡率をy軸として設定し、MSAP濃度をx軸として設定した。曲線を、4パラメータロジスティックモデルを使用してフィッティングし、EC50を決定した。
【0232】
図3から確認できる通り、CD19×CD3 MSAP ITAB2007及びITAB2009は両方とも、ヒトPBMCを媒介してDaudiなどの腫瘍細胞を死滅させるのに効果的であった。
【0233】
実施例5:CD19×CD3 MSAPによるヒトPri-T細胞の腫瘍依存的活性化
CD8は、典型的なT細胞表面抗原である。CD69は細胞表面受容体であり、これはT細胞活性化時に上方制御される。CD69+CD8+サブタイプのパーセンテージは、T細胞の活性化状態に関する効果的な指標として機能し得る。FACSに基づくT細胞活性化アッセイを実施して、T細胞活性化における例示的なCD19×CD3 MSAP(すなわち、ITAB2009及びITAB2007)の能力を決定した。
【0234】
異なるCD19発現レベルを有する2つのBリンパ腫細胞株(
図4)である、Pfeiffer(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)及びDaudi(バーキットリンパ腫)を、ITAB2009またはITAB2007媒介ヒトT細胞活性化において試験した(全CD8+T細胞に対するCD69+CD8+T細胞比)。
【0235】
Pri-T細胞の調製:ヒトPBMCを、実施例3に記載した方法に従って調製し、10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中に再懸濁させた。PBMCを、マウスIgG2a抗ヒトCD3抗体(5μg/mL、BioLegend,Inc.)及びマウスIgG1抗ヒトCD28抗体(1μg/mL、BioLegend,Inc.)でコーティングした培養フラスコ中に播種し、3日間、37℃の5%CO2インキュベーター内で培養した。細胞をIL-2でさらに3日間処理し、次いで今後の実験のために収集した。これらの細胞をPri-Tと命名した。
【0236】
Pri-T(3×10
4細胞/100μL)及びDaudiまたはPfeiffer細胞(3×10
4細胞/100μL)を穏やかに混合し、次いでITAB2009またはITAB2007 CD19×CD3 MSAPを添加して、異なるインキュベーション時間でインキュベートした。次いで、細胞を収集して、FITCマウス抗ヒトCD69抗体(BD Pharmingen(商標))及びCD8抗体(3B5)RPE複合体(Invitrogen)で30分間染色し、フローサイトメーターを分析に使用した。試料を、ACCURI(登録商標)C6サイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。結果を
図5A~5Bに示す。データを、CD8+に対するCD69+のパーセンテージを算出することによって提示した。
【0237】
図5A~5Bに示す通り、同じ条件下で、ITAB2007 CD19×CD3 MSAPは、CD19発現が低いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株であるPfeiffer細胞について、ITAB2009よりも効果的にT細胞活性化を誘導した(
図5A、
図4)が、一方でCD19発現が高いリンパ腫細胞株(
図4)であるDaudiについては、ITAB2007及びITAB2009 CD19×CD3 MSAPは、同様のT細胞活性化効果を示した(
図5B)。これらの結果は、二重特異性三価ITAB2007 CD19×CD3 MSAPが、CD19低発現腫瘍細胞を標的とする可能性を有することを示している。
【0238】
実施例6.腫瘍細胞に対するCD19×CD3 MSAP媒介性ヒトPri-T細胞細胞傷害(細胞傷害性アッセイ)
Pri-T細胞を、実施例5に記載した方法に従って調製し、10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中に再懸濁させた。
【0239】
Reh細胞(急性リンパ性白血病)を洗浄して遠心分離し、CFSE(5-(及び6)-カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル、eBioscience)によって10分間染色し、次いで10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中に再懸濁させた。100μLの1×104Reh細胞及び100μLの4×104Pri-T細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。CD19×CD3 MSAP(例えば、ITAB2007、ITAB2009)を、実験計画に従って様々な濃度に希釈し、細胞混合物に添加した。MSAPを添加していないウェル(Pri-T+Reh標的細胞)を対照として設定した。約24時間のインキュベーションを、37℃で5%CO2によって実施した。細胞を7-AAD(7-アミノ-アクチノマイシン、BD)によって10分間染色した。Cytoflex S(Beckman)を分析に使用した。
【0240】
CFSE陽性細胞はReh細胞を表しているが、7-AADに陽性である細胞は死細胞を表す。CD19×CD3 MSAP媒介性細胞傷害は、以下の式:死亡率%=[1-(試料ウェルの生存B細胞/試料ウェルの全生存細胞)/(対照ウェルの生存B細胞/対照ウェルの全生存細胞)]×100%を使用して算出した。
【0241】
死亡率をy軸として設定し、MSAP濃度をx軸として設定した。曲線を、4パラメータロジスティックモデルを使用してフィッティングし、EC50を決定した。
【0242】
図6に示す通り、CD19×CD3 MSAP ITAB2007は、ヒトPri-T細胞を媒介してReh細胞などの腫瘍細胞を死滅させるのに、ITAB2009と比較して有意に優れた有効性を示した。
【0243】
実施例7:免疫再構築マウスモデルにおけるヒトバーキットリンパ腫腫瘍異種移植片の死滅におけるCD19×CD3 MSAPの有効性アッセイ
ヒトバーキットリンパ腫腫瘍異種移植片の成長阻害に対する例示的なCD19×CD3
MSAP(すなわち、ITAB2007)の効果を調べるために、インビボ薬効アッセイを、ヒトリンパ球で再構築した免疫系を有し、Raji腫瘍細胞を移植した免疫不全マウスで実施した。
【0244】
がん細胞接種のために、Rajiバーキットリンパ腫細胞株をインビトロで培養して収集し、氷上であらかじめ冷却しておいた無血清L-15培地(Gibco)で再懸濁させ、後で使用するために氷上に置いた。ヒトPBMCの再構成については、健康なヒトドナーによって提供された白血球濃縮物を収集し、密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque、GE Healthcare)によって遠心分離してPBMCを得て、氷上であらかじめ冷却しておいたRPMI 1640培地(Gibco)中に再懸濁させ、後で使用するために氷上に置いた。
【0245】
7~8週齢の雌NOGマウス(NOD.Cg-PrkdcscidII2rgtm1Sug/JicCrl)を、試験開始前の少なくとも1週間、SPF条件(AAALAC認定)下で飼育した。マウスを、ブスルファン(Sigma)を用いて25mg/kg/日の濃度で2日間(-4日目及び-3日目)腹腔内処置し、次いで2.0×106細胞/マウスのRaji細胞をマウスの右背側側腹部に、0.2mL/マウスの量で0日目に皮下接種し、続いて1人の健康なドナーに由来する4.0×106細胞/マウスの未刺激ヒトPBMCを使用して、0.2mL/マウスの量で3日目に腹腔内処置をして再構成させた。
【0246】
Raji腫瘍がおよそ100~300mm3に成長した場合、14日目に32匹の担腫瘍マウスをCD19×CD3 MSAP処置のために4群(1群あたり8匹のマウス)に無作為に分け、それぞれビヒクル(PBST、対照)、ITAB2007を0.5μg/kgで、ITAB2007を5μg/kgで、またはITAB2007を50μg/kgで用いて毎日腹腔内処置した。無作為化後、1週間に2回、キャリパーを使用して各腫瘍の長さ及び幅を測定した。個々の腫瘍体積を、次の式:腫瘍体積(mm3)=長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)×0.5に基づいて算出した。腫瘍成長阻害率(TGI%)を使用して薬効を評価した。TGI%=[1-(avTi-avT0)/(avCi-avC0)]×100、式中、avTi-avT0は、処置群についてi日目の平均腫瘍体積から処置開始日(すなわち、14日目)の平均腫瘍体積を差し引いたものであり、avCi-0は、ビヒクル対照群についてi日目の平均腫瘍体積から処置開始日(すなわち、14日目)の平均腫瘍体積を差し引いたものである。
【0247】
図7は、ヒトPBMCを接種した免疫再構築NOGマウスにおける、皮下Raji異種移植腫瘍に対するITAB2007の成長阻害効果を示す。試験終了時に、平均腫瘍体積は、ビヒクル対照群では2320.96±276.62mm
3(29日目)、0.5μg/kgのITAB2007群では2477.04±331.34mm
3(32日目)、5μg/kgのITAB2007群では1534.02±159.21mm
3(32日目)、及び50μg/kgのITAB2007群では370.05±207.68mm
3(43日目)であった。腫瘍成長阻害率(TGI%)は、0.5μg/kg、5μg/kg、及び50μg/kgのITAB2007で29日目に処置した場合、それぞれ23.0%(p=0.9999)、57.0%(p=0.5176)、及び95.1%(p=0.0002)であった。
【0248】
したがって、NOGマウスの骨髄のブスルファン前処置、及びヒトPBMCを使用した免疫系の再構築後の、CD19×CD3 MSAP(すなわち、ITAB2007)の投与は、マウスにおいてヒトバーキットリンパ腫細胞Rajiのインビボ増殖を効果的に阻害でき、このことは、CD19×CD3 MSAPが、インビボで腫瘍細胞を死滅させるために免疫細胞を媒介し、用量依存的様式で腫瘍成長を有意に阻害できたことを示していた。
【0249】
実施例8:Reh白血病腫瘍異種移植片及びヒト初代T細胞を静脈内注射したマウス生存モデル(免疫再構築マウスモデル)でのCD19×CD3 MSAPの有効性アッセイ
異種移植腫瘍に対する例示的なCD19×CD3 MSAP(ITAB2007及びITAB2009)の成長阻害効果を調べるために、ヒト前駆B細胞(preB)急性リンパ芽球性白血病(ALL)Reh細胞及びヒト初代T細胞を静脈内注射した免疫不全NOD/SCIDマウスを、白血病の生存期間延長に関するMSAPインビボ有効性について評価した。
【0250】
8~10週齢の雌NOD/SCID(NOD.CB17-Prkdcscid/NcrCrl)マウスを、試験開始前の少なくとも1週間、SPF条件(AAALAC認定)下で飼育した。
【0251】
Pri-T細胞を、実施例5に記載した方法に従って調製し、10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中に再懸濁させた。
【0252】
Reh細胞を、10%FBS(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中において37℃の5%CO2インキュベーター内で培養した。
【0253】
マウスに、1.0×107細胞/マウスのReh細胞を尾静脈から、0.2mL/マウスの量で0日目に静脈内接種し、続いて4.0×106細胞/動物のインビトロ培養ヒト初代T細胞(Pri-T)を用いて、0.2mL/マウスの量で尾静脈から静脈内に3日目、9日目、15日目、及び21日目に合計4回注射して再構成させた。
【0254】
Rehがん細胞接種及びヒト初代T細胞再構成を行った37匹のNOD/SCIDマウスを3群に無作為に分け、3日目にヒト初代T細胞を注射した後、ビヒクル(PBST、n=13)、ITAB2009(n=12)、またはITAB2007(n=12)で腹腔内処置した。ITAB2009及びITAB2007の投薬レジメンは、以下の通りであった:1サイクルごとに50μg/kg、q.d.を3日間、続いて100μg/kg、q.d.を3日間、これを3日目~26日目までに合計4サイクル行い、ヒト初代T細胞の注射から2時間後に開始した。臨床観察及び生存を毎日モニターして記録した。
【0255】
図8に示す通り、ビヒクル群におけるマウスの生存期間中央値は、腫瘍細胞接種後35日間であって、全てのマウスが50日目までに死亡したか、または安楽死させた。ITAB2009またはITAB2007 CD19×CD3 MSAP処置は、マウスの生存期間を有意に延長し、ビヒクル対照と比較した場合、ITAB2009の生存期間中央値は53.5日間(p<0.0001、HR=0.2294)及びITAB2007では47.5日間(p=0.0003、HR=0.2977)であった。
【0256】
要約すると、三価形式ITAB2007 CD19×CD3 MSAPは、大きなインビボReh細胞(ALL細胞株)死滅効果、及びヒトPri-T細胞によるインビトロでのReh細胞死滅の媒介においてITAB2009と比較して有意に良好な効力を実証した。さらに、ITAB2007は、二価形式ITAB2009 CD19×CD3 MSAPと比較して、インビトロ及びインビボヒトB細胞腫瘍死滅においてはるかに良好な有効性を示した。要約すると、ITAB2007は、CD19低発現腫瘍細胞を標的とする大きな可能性を実証した。
【0257】
本発明で言及される全ての参考文献は、それらの参考文献の各々が個別に参照によって組み込まれている場合と同様に、参照によって本明細書に組み込まれる。記載は特定の実施形態に言及しているが、本発明がこれらの特定の詳細に関する変化形で実施される場合があると当業者には明らかとなる。したがって、本発明は、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
多重特異性抗原結合タンパク質であって、
I.CD3に特異的に結合する抗CD3 Fab断片であって、前記抗CD3 Fab断片が、
(a)免疫グロブリン(Ig)重鎖可変領域(VH)及びIg重鎖定常領域(CH1)、ならびに
(b)Ig軽鎖可変領域(VL)及びIg軽鎖定常領域(CL)を含む、前記抗CD3 Fab断片と、
II.CD19に特異的に結合する抗CD19抗原結合断片と、
III.場合により、前記抗CD3 Fab断片及び前記抗CD19抗原結合断片を連結させるリンカーとを含む、前記多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目2)
前記抗CD19抗原結合断片が、前記抗CD3 Fab断片の前記VHのN末端に融合される、項目1に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目3)
前記抗CD19抗原結合断片が、前記抗CD3 Fab断片の前記VLのN末端に融合される、項目1に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目4)
第1抗CD19抗原結合断片及び第2抗CD19抗原結合断片を含み、前記第1抗CD19抗原結合断片が、前記抗CD3 Fab断片の前記VHのN末端に融合され、前記第2抗CD19抗原結合断片が、前記抗CD3 Fab断片の前記VLのN末端に融合される、項目1に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目5)
前記抗CD3 Fab断片が、CD3εのN末端に特異的に結合する、項目1~4のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目6)
前記抗CD3 Fab断片が、CD3εのアミノ酸1~27内のエピトープに特異的に結合する、項目1~5のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目7)
前記抗CD3 Fab断片の前記VHが、配列番号:9のアミノ酸配列を含む重鎖超可変領域H1(HVR-H1)、配列番号:10のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、ならびに/または前記抗CD3 Fab断片の前記VLが、配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖超可変領域L1(HVR-L1)、配列番号:13のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、項目5または6に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目8)
前記抗CD3 Fab断片の前記VHが、配列番号:15のアミノ酸配列を含み、及び/または前記抗CD3 Fab断片の前記VLが、配列番号:16のアミノ酸配列を含む、項目5~7のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目9)
前記抗CD3 Fab断片の前記CH1及び前記CLが、ジスルフィド結合によって連結されている、項目1~8のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目10)
前記抗CD3 Fab断片の前記CH1及び前記CLが、約1~約5個のジスルフィド結合によって連結されている、項目9に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目11)
前記抗CD3 Fab断片の前記CH1及び前記CLが、約2個のジスルフィド結合によって連結されている、項目9または10に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目12)
前記抗CD3 Fab断片の前記CH1が、配列番号:18のアミノ酸配列を含み、及び/または前記抗CD3 Fab断片の前記CLが、配列番号:52のアミノ酸配列を含む、項目1~11のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目13)
前記抗CD19抗原結合断片がVHを含み、前記抗CD19抗原結合断片の前記VHが、配列番号:1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号:2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び配列番号:3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、ならびに/または前記抗CD19抗原結合断片がVLを含み、前記抗CD19抗原結合断片の前記VLが、配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号:6もしくは49のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、項目1~12のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目14)
前記抗CD19抗原結合断片の前記VHが、配列番号:7のアミノ酸配列を含み、及び/または前記抗CD19抗原結合断片の前記VLが、配列番号:8もしくは50のアミノ酸配列を含む、項目13に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目15)
前記抗CD19抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、項目1~14のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目16)
前記抗CD19 scFvが、配列番号:51または59のアミノ酸配列を含む、項目15に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目17)
前記多重特異性抗原結合タンパク質が、第1抗CD19 scFv及び第2抗CD19
scFvを含む、項目15または16に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目18)
前記第1抗CD19 scFv及び前記第2抗CD19 scFvが、同じアミノ酸配列を有する、項目17に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目19)
前記リンカーが、グリシン、セリン、アルギニン、及びアラニンからなる群から選択される約2~約30個のアミノ酸残基を含む、項目1~18のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目20)
前記リンカーが、約2~約15個のアミノ酸残基を含む、項目1~19のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目21)
前記リンカーが、配列番号:20~22、29、及び31~44からなる群から選択される、項目1~20のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目22)
前記多重特異性抗原結合タンパク質が、第1ポリペプチド及び第2ポリペプチドを含み、前記第1ポリペプチドが、配列番号:53または60のアミノ酸配列を含み、前記第2ポリペプチドが、配列番号:54または61のアミノ酸配列を含む、項目1~21のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目23)
前記第1ポリペプチドが、配列番号:53のアミノ酸配列を含み、前記第2ポリペプチドが、配列番号:54のアミノ酸配列を含む、項目22に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目24)
前記第1ポリペプチドが、配列番号:60のアミノ酸配列を含み、前記第2ポリペプチドが、配列番号:61のアミノ酸配列を含む、項目22に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
(項目25)
項目1~24のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質をコードする、単離核酸。
(項目26)
項目1~24のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質と、場合により薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
(項目27)
がんの処置を必要とする個体におけるがんの処置方法であって、有効量の項目26に記載の医薬組成物を前記個体に投与することを含む、前記方法。
(項目28)
前記医薬組成物が静脈内投与される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記個体がヒトである、項目27または28に記載の方法。
(項目30)
前記がんが、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)の急性転化及びCMLと関連するAbelsonがん遺伝子(Bcr-ABL転座)を含む慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、急性Bリンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)のリヒター症候群またはリヒター形質転換を含む慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病(HCL)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、マントル細胞白血病(MCL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)を含む非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫、全身性肥満細胞症、ならびにバーキットリンパ腫からなる群から選択される、項目27~29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記がんがDLBCLまたはALLである、項目30に記載の方法。