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特開2024-14970脳の健康監視のための眼球インピーダンスベースのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014970
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】脳の健康監視のための眼球インピーダンスベースのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/053 20210101AFI20240125BHJP
【FI】
A61B5/053
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023195404
(22)【出願日】2023-11-16
(62)【分割の表示】P 2019563423の分割
【原出願日】2018-05-16
(31)【優先権主張番号】62/506,971
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511000957
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ワード
(72)【発明者】
【氏名】モハマド ハカム ティーバ
(72)【発明者】
【氏名】アシュウィン ベル
(72)【発明者】
【氏名】サルダール アンサリ
(72)【発明者】
【氏名】パラグ ジー.パティル
(57)【要約】
【課題】方法とシステムは、脳血液量(CBV)の動的な変化を評価する眼球窓を使用して、脳生体インピーダンスを監視および評価する。
【解決手段】その接眼窓は、非侵襲的な方法で、目の周囲の領域を通して収集された生体インピーダンス測定値を使用して、多数の異なる脳の健康指標を測定する、眼球生体インピーダンスデバイスによって実装される。眼球生体インピーダンスデバイスは、カソードとアノードとを含む局所測定電極を備えたゴーグルであってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の脳の健康を評価するための装置であって、
1つ以上の電極と、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記装置に、
前記1つ以上の電極を使用して、前記対象の眼球領域に電流を供給すること、
前記1つ以上の電極を使用して、前記対象の前記眼球領域から得られた電気信号を検知し、前記電気信号から前記対象の生体インピーダンス値を決定することであって、前記生体インピーダンス値が、前記対象の前記眼球および脳領域の少なくとも一部分を含む伝導経路の生体インピーダンスを表す、検知し、決定すること、ならびに
前記生体インピーダンス情報から脳の健康指標を決定すること、を行わせる、非一時的命令を記憶するコンピュータ可読メモリと、を備える、装置。
【請求項2】
前記脳の健康指標が、(i)脳血液量(CBV)、(ii)脳自己調節(CAR)、(iii)頭蓋内圧(ICP)、(iv)脳潅流圧(CPP)、(v)灌流反応性指数(PRx)、(vi)脳血流(CBF)、(vii)血圧、および(viii)換気の変化のうちの少なくとも1つを示す、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コンピュータ可読メモリが、前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記装置に前記対象の呼吸数、呼吸の質、および/または心拍数を決定させる非一時的命令を記憶する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1のレンズと第2のレンズとを有するゴーグルをさらに備え、前記1つ以上の電極が、前記対象の前記眼球領域からの前記脳への電気伝導経路を提供するように、それぞれ前記第1および第2のレンズの内面に位置付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のレンズが、電流注入電極を備え、前記第2のレンズが、電流検知電極を備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のレンズが、電流注入電極と電流検知電極とを備え、前記第2のレンズが、電流注入電極と電流検知電極とを備える、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
対象の脳の健康を評価する方法であって、
対象の眼球領域への電気信号の提供、および前記眼球領域および脳領域の少なくとも一部分を含む伝導経路上の前記電気信号の検出に応答して、前記対象の眼球-脳領域生体インピーダンス値を決定することと、
前記眼球-脳領域生体インピーダンス値から、サンプル期間にわたる頭蓋内圧の変化を決定することであって、それらの変化が、脳血液量(CBV)の変化に対応する、決定することと、
前記サンプル期間にわたるCBVに対する前記対象の動脈圧の影響を決定することと、
CBVに対する、前記サンプル期間にわたる平均頭蓋内圧および前記サンプル期間にわたる平均動脈圧の影響を決定することと、
前記平均頭蓋内圧および前記平均動脈圧の相関から圧力反応性指数値を決定することであって、CBVに対する前記圧力反応性指数が、前記対象の脳の健康を示す、決定することと、を含む、方法。
【請求項8】
対象の脳の健康を評価する方法であって、
サンプル期間にわたる前記対象の平均頭蓋内圧データを受信することと、
サンプル期間にわたる前記対象の平均動脈圧データを受信することと、
前記平均頭蓋内圧および前記平均動脈圧の相関から決定された圧力反応性指数値を受信することであって、前記圧力反応性指数が、前記対象の脳の健康を示す、受信することと、
前記対象の眼球領域への電気信号の提供、ならびに前記眼球領域および脳領域の少なくとも一部分を含む伝導経路上の前記電気信号の検出に応答して、前記サンプル期間にわたる前記対象の眼球-脳領域生体インピーダンスを決定することと、
前記生体インピーダンスを前記圧力反応性指数と組み合わせ、脳の健康指標を生成することであって、前記指標が、前記対象の健康な脳の状態を示す正の値と、前記対象の不健康な脳の状態を示す負の値とを有する、組み合わせ、生成することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記生体インピーダンスを前記圧力反応性指数と組み合わせることが、圧力反応性指数と前記生体インピーダンスとの間の移動ピアソン相関、および/または平均動脈圧と生体インピーダンスとの間の移動ピアソン相関を実行することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象の脳の状態を処置する方法であって、
前記対象の眼球領域に、前記対象に対して脳の状態に影響を与える処置を適用することを含み、前記脳の状態に影響を与える処置が、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)、経頭蓋交流電気刺激(tACS)、生体光子刺激、および/または音響刺激である、方法。
【請求項11】
前記脳の状態に影響を与える処置の処置時間にわたって、前記対象の眼球-脳領域生体インピーダンスを測定することと、
前記処置期間中の前記眼球-脳領域生体インピーダンスの変化に基づいて、前記脳の状態に影響を与える処置の有効性を評価することと、さらに含む、請求項10に記載の処置方法。
【請求項12】
前記脳の状態に影響を与える処置の前記処置時間にわたって、前記対象の眼球-脳領域生体インピーダンスを測定することが、
前記対象の眼球領域において前記対象の外面に配置された1つ以上の電極を通して前記対象の前記眼球領域に電気信号を提供することと、
前記対象の伝導経路上の前記電気信号を検出することであって、前記伝導経路が、前記眼球領域と脳領域の少なくとも一部分とを含む、検出することと、
前記検出された電気信号から前記眼球-脳領域生体インピーダンスを決定することと、を含む、請求項11に記載の処置方法。
【請求項13】
前記処置期間中の前記眼球-脳領域生体インピーダンスの変化に基づいて、前記脳の状態に影響を与える処置の有効性を評価することが、
前記生体インピーダンス情報から脳の健康指標を決定することであって、前記脳の健康指標が、(i)脳血液量(CBV)、(ii)脳自己調節(CAR)、(iii)頭蓋内圧(ICP)、(iv)脳潅流圧(CPP)、(v)灌流反応性指数(PRx)、(vi)脳血流(CBF)、(vii)血圧、および(viii)換気の変化のうちの少なくとも1つを示す、決定することと、
前記脳の健康指標が、許容できる脳の健康指標値または許容できない脳の健康指標値を有するかを判定するために、前記脳の健康指標を評価することと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
対象の脳の状態を処置するための装置であって、
前記対象の眼球領域に係合するように構成されたハウジングであって、前記対象の前記眼球領域に電気信号を送達するように構成された1つ以上の電極を有する、ハウジングと、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記装置に、
前記脳の状態を処置するために、前記1つ以上の電極を使用して、前記対象の前記眼球領域に経頭蓋直流電気刺激(tDCS)および/または経頭蓋交流電気刺激(tACS)の形態で電気信号を供給させる非一時的命令を記憶するコンピュータ可読メモリと、を備える、装置。
【請求項15】
前記ハウジングが、第1のレンズと第2のレンズとを有するゴーグルであり、前記対象の前記眼球領域からの前記脳への電気伝導経路を提供するために、前記1つ以上の電極が、それぞれ前記第1および第2のレンズの内面に位置付けられている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ゴーグルと統合され、療法および/または診断情報を提供するための光子刺激をさらに備え、前記眼球領域を通して前記脳に療法および/または診断情報のための光子刺激を提供するように構成された、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記光子刺激が、前記電気信号の供給中に提供される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記光子刺激が、前記電気信号の前記供給と重複しない、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記対象に治療または診断目的で音響刺激を提供するように構成された音響刺激ステージをさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記音響刺激ステージが、前記眼球領域において前記音響刺激を提供するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記音響刺激ステージが、前記眼球領域以外の前記対象の領域において前記音響刺激を提供するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、“Ocular Impedance Based System for Brain Health Monitoring”と題する、2017年5月16日に出願された米国仮出願第62/506,971号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、概して、脳の健康を監視および評価するための技術に関し、より具体的には、眼球インピーダンス測定を使用して脳の健康を監視および評価するための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に提供される背景技術の記載は、本開示の文脈を一般的に提示する目的のためのものである。この背景技術のセクションに記載されている範囲での現在名前が挙げられている発明者らの研究、および別の方法で出願時に従来技術と見なされていない可能性がある記載の態様は、明示的にも黙示的にも本開示に対する従来技術とは認められない。
【0004】
外傷性脳損傷(TBI)は、米国の損傷関連死の約30%において重要な役割を果たし、診断されないままおよび気付かれないままであるが、健康に対して永続的な影響を有し得る関連合併症のために、「サイレント流行」と呼ばれる場合が多い。重症TBIの治療における管理戦略は、通常、主に炎症および脳虚血として現れる二次的な脳損傷の予防を目的としている。頭蓋内圧(ICP)の監視および脳灌流圧(CPP)の目標レベルへの最適化は、二次損傷を予防するための一次的方法として過去に提案されており、現在の実践の中心である。しかしながら、近年の試験は、ICP監視、または管理を誘導するためのCPPの標的化の明確な利点を実証していない。
【0005】
近年の管理アプローチは、圧力反応性指数(PRx)などの方法を使用した脳血管自己調節(CAR)に基づいて、CPPのより動的で個別化された精度最適化を利用しようと試みてきた。自己調節は、CPPの変化に応答して血管の調子を調節し、そうすることで、脳の代謝需要に一致するように一定レベルの脳血流(CBF)を維持する血管の能力である。CARは、二次的脳損傷に対する最も重要な中枢神経系の自己防御機構のうちの1つと考えられ得る。CARは、重症TBIの後に損なわれることが多く、重症TBI、ならびに脳卒中、くも膜下出血、脳腫瘍、心停止、高血圧クリーゼ、およびその他などの様々な急性神経疾患および虚血性傷害の患者における転帰の予測因子であることが示されている。
【0006】
しかしながら、CARの現在の評価方法には、脳血液量の相対的な変化を直接監視および追跡する能力を欠いている。加えて、それらは、病院外の環境では利用できない。例えば、PRxを使用する現在の技術は、侵襲的な監視を必要とする。
【0007】
CARの反映として脳血液量(CBV)の動的な変化を監視するために使用され得る技術が必要である。様々な環境(例えば、民間および軍の入院前環境、救急外来外傷センター、集中治療室など)で使用するのに好適な、外傷性脳損傷および他の脳血管緊急事態を伴う負傷者におけるCBV変化を測定するための携帯用非侵襲センサが必要である。これにより、二次的脳損傷を予防するための早期の正確な監視および処置が可能になる。
【発明の概要】
【0008】
本技術は、脳血液量(CBV)の動的変化を評価する方法として、眼球窓を通して脳生体インピーダンスを監視および評価する方法およびシステムを含む。技術は、非侵襲的かつ継続的な方法で達成され得る。技術は、脳インピーダンスを監視して、脳血液量の変化に関連するCBF、ICP、およびCPPの変化を追跡する。このようにして、技術は、CAR障害を評価するためにさらに使用され得る。
【0009】
本技術は、対象の目(複数可)を通して収集されたインピーダンス測定値を使用して、多数の異なる脳の健康指標を測定する非侵襲的な方法を提供する。カソードおよびアノードの組み合わせを含んでもよい測定電極を特に局在化するために、眼生体インピーダンスデバイスが使用される。
【0010】
一例では、対象の脳の健康を評価するための装置は、1つ以上の電極と、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、装置に、1つ以上の電極を使用して、対象の眼球領域に電流を供給すること、1つ以上の電極を使用して、対象の眼球領域から得られた電気信号を検知し、電気信号から対象の生体インピーダンス値を決定することであって、生体インピーダンス値が、対象の眼球および脳領域の少なくとも一部分を含む伝導経路の生体インピーダンスを表す、検知し、決定すること、ならびに生体インピーダンス情報から脳の健康指標を決定することを行わせる、非一時的命令を記憶するコンピュータ可読メモリと、を備える。
【0011】
別の例では、対象の脳の健康を評価する方法であって、方法は、対象の眼球領域への電気信号の提供、ならびに眼球領域および脳領域の少なくとも一部分を含む伝導経路上の電気信号の検出に応答して、対象の眼球-脳領域生体インピーダンス値を決定することと、眼球-脳領域生体インピーダンス値から、サンプル期間にわたる頭蓋内圧の変化を決定することであって、それらの変化が、脳血液量(CBV)の変化に対応する、決定することと、サンプル期間にわたるCBVに対する対象の動脈圧の影響を決定することと、CBVに対する、サンプル期間にわたる平均頭蓋内圧およびサンプル期間にわたる平均動脈圧の影響を決定することと、平均頭蓋内圧および平均動脈圧の相関から圧力反応性指数値を決定することであって、CBVに対する前記圧力反応性指数が、対象の脳の健康を示す、決定することと、を含む。
【0012】
別の例では、対象の脳の健康状態を評価する方法であって、方法は、サンプル期間にわたる対象の平均頭蓋内圧データを受信することと、サンプル期間にわたる対象の平均動脈圧データを受信することと、平均頭蓋内圧および平均動脈圧の相関から決定された圧力反応性指数値を受信することであって、圧力反応性指数が、対象の脳の健康を示す、受信することと、対象の眼球領域への電気信号の提供、ならびに眼球領域および脳領域の少なくとも一部分を含む伝導経路上の電気信号の検出に応答して、サンプル期間にわたる対象の眼球-脳領域生体インピーダンスを決定することと、生体インピーダンスを圧力反応性指数と組み合わせ、脳の健康指標を生成することであって、指標が、対象の健康な脳の状態を示す正の値と、対象の不健康な脳の状態を示す負の値とを有する、組み合わせ、生成することと、を含む。
【0013】
別の例では、対象の脳の状態を処置する方法であって、方法は、対象の眼球領域に、対象に対して脳の状態に影響を与える処置を適用することを含み、脳の状態に影響を与える処置は、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)、経頭蓋交流電気刺激(tACS)、生体光子刺激、および/または音響刺激である。
【0014】
別の例では、対象の脳の状態を処置するための装置であって、装置は、対象の眼球領域に係合するように構成されたハウジングであって、対象の眼球領域に電気信号を送達するように構成された1つ以上の電極を有する、ハウジングと、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、装置に、1つ以上の電極を使用して、対象の眼球領域に経頭蓋直流電気刺激(tDCS)および/または経頭蓋交流電気刺激(tACS)の形態で電気信号を供給して、脳の状態を処置させる、非一時的命令を記憶するコンピュータ可読メモリと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下に記載される図面は、本明細書で開示されるシステムおよび方法の様々な態様を示す。各図は、本システムおよび方法の態様の一例を示していることを理解されたい。
【0016】
図1】フォーリーカテーテルバルーン(1)、ICPプローブ(2)、LDFプローブ(3)、および眼球インピーダンス電極(カソードおよびアノードの組み合わせを含んでもよい)(4)の試験対象上の配置を示す。
図2】一例における、眼球インピーダンス電極を使用して測定された呼吸ならびに心周期の変化を示すインピーダンス波形のプロットである。
図3】A:過換気中、プロットA1)dz対MAP、プロットA2)dz対ICP、プロットA3)dz対CPP、プロットA4)dz対CBFの変化、およびプロットA5)dz対PetCO2、B:昇圧薬注入中、プロットB1)dz対MAP、プロットB2)dz対ICP、プロットB3)dz対CPP、およびプロットB4)dz対CBFの変化、C:硬膜外血腫中、プロットC1)dz対ICP、プロットC2)dz対CPP、プロットC3)dz対CBFの変化、ならびにD:全身出血中、プロットD1)dz対MAP、プロットD2)dz対ICP、プロットD3)dz対CPP、およびプロットD4)dz対CBFの変化、の散布図および相関係数を示し、ここで、dzは、測定された脳生体インピーダンスであり、MAPは、平均動脈圧であり、ICPは、頭蓋内圧であり、CPPは、脳灌流圧であり、CBFは、脳血流である。
図4】様々な位置に配置された眼球インピーダンス電極(カソードおよびアノード)で得られたインピーダンス波形のプロット、すなわち、プロットA1)眼瞼およびプロットA2)頭皮上、ならびにプロットB1)眼球インピーダンスおよびB2)頭皮インピーダンスのそれぞれのパワースペクトル密度を示す。プロットは、同じ縮尺を使用する。
図5】眼球インピーダンス電極から得られた脳-眼球インピーダンス測定値のプロットを示す。図5A)は、正常な呼吸中の例示的な測定されたインピーダンス応答を示す。図5B)は、深呼吸中の例示的な測定されたインピーダンス応答を示す。図5C)は、ヴァルサルヴァ法中の例示的な測定されたインピーダンス応答を示す。図D)は、息を止めている間の例示的な測定されたインピーダンス応答を示す。画像の縮尺は変動して、変化の視覚的な検査を可能にする。
図6】硬膜外血腫の誘発中(イン)、血腫の除去中(アウト)のICP、CBF、MAP、およびインピーダンスの変化を示す。
図7】一実施例に従った眼球生体インピーダンス測定デバイスを示す。
図8】別の実施例に従った眼球生体インピーダンス測定デバイスを示す。
図9】別の実施例に従った眼球生体インピーダンス測定デバイスを示す。
図10】本明細書の一実施例に従った眼球生体インピーダンス評価システムを示す。
図11】別の実施例に従った眼球生体インピーダンス測定デバイスを示す。
図12】別の実施例に従った眼球生体インピーダンス測定デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の文章は、多くの異なる実施形態の詳細な説明を記載しているが、本発明の法的範囲が、本特許の最後に記載される特許請求の範囲の文言によって定義されることが理解されるべきである。詳細な説明は、単に例示的なものとして解釈されるべきであり、全ての可能な実施形態を説明することは、不可能ではない場合でも非現実的であるので、全ての可能な実施形態を説明するものではない。現在の技術または本特許の出願日の後に開発される技術のいずれかを使用して、多くの代替の実施形態を実装し得、これらは、依然として特許請求の範囲の範囲内である。
【0018】
生体インピーダンスは、誘導電流または電圧に対する組織抵抗の尺度である。電流が全体またはその一部として身体に印加されると、生体インピーダンスは、電流が流れる構成要素の各々のインピーダンスの累積効果を表す。これらの構成要素には、筋肉組織、骨、脂肪、細胞内および細胞外液、ならびに血液が含まれる。良好な導体である血液は、インピーダンスに異なった影響を及ぼす。したがって、目的の領域内の血液量を調節する生理学的事象または他の誘発された事象は、インピーダンスで検出され得る。この一例は、換気、さらには心周期の効果である(図5)。したがって、組織のセグメントにわたる電気インピーダンスは、血液量が減少すると増加し、血液量が増加すると減少する。例えば、ヴァルサルヴァ法は、静脈圧を増加させ、脳からの静脈還流を制限することによって、脳容積を増加させる(したがってインピーダンスを減少させる)ことが予想される。深吸気が脳からの静脈還流を増加させるため、深呼吸がインピーダンスの大きい変動を示すことが予想される一方で、息こらえは、呼吸誘発変化を最小限に抑えることが予想される。図5A~5Dのプロットは、例を提供する。図6は、外傷性脳損傷の一種である硬膜外血腫の形成、次いで除去中のMAP、ICP、CBF、およびインピーダンスの経時的傾向および変化を示す。図6のプロットが示すように、インピーダンス(dz)は、血液量の減少(すなわち、CBFの減少)と共に増加し、逆もまた同様である。
【0019】
本技術は、双極配列を使用して、目または眼球領域の他の部分を通して脳生体インピーダンスを測定する方法およびシステムを提供する。例示的な眼球生体インピーダンスデバイスが、図7~9、11、および12に示される。流体界面、および介在組織(毛髪、頭皮、筋肉、骨)の減少を伴う脳への眼球生体インピーダンスデバイスの近接、ならびに脳への視神経の直接接続により、本デバイスは、脳がデバイスを通して送信される電流の大部分に接触することを確認することが可能である。目を通して小電流が印加され得るため、結果として生じる測定された伝導率の差は、電極間の血液量を反映し、これは、脳の大部分を含む。
【0020】
本明細書でさらに考察されるように、我々は、硬膜外バルーンの膨張を使用したICPの増加などを、様々な実験手法を使用した眼球測定を通して、生体インピーダンスの評価を確認して、頭皮または顔の軟組織の血流の変化が、本技術によって測定されたインピーダンスの顕著な変化の原因ではないことを実証している。このようにして、我々は、従来の頭皮ベースの測定技術とは相関関係のない、これまで測定および評価に関して認識および分離されていない、まったく新しい生体インピーダンス経路測定を実証している。さらに、本技術は、生体インピーダンスを測定し、その測定値をCBF、ICP、およびCPPなどの脳の健康の指標と相関させることにおいて、予想外の改善を提供する。
【0021】
様々な実験手法(過換気、昇圧薬注入、硬膜外血腫、および全身出血)を使用して、本技術の有効性を試験するためにICP、CPP、およびCBFの変化を通して脳血液量のレベルを変化させた。いずれの場合も、眼球インピーダンス測定技術は、事象に関連する脳血液量の変化を検出することが可能であった。これらの試験は、インピーダンスを通して脳血液量の変化を監視することによって、CARおよび他の頭蓋内事象を評価するための効果的な機構を提供する本技術の能力を実証した。したがって、本明細書の技術は、患者に侵襲的監視手順を実施する前に、またはそのような侵襲的監視と併せて、CARまたは脳血液量の変化に対する他の療法の効果を評価する機構として、TBIまたは他の脳障害を有する患者の早期評価を提供するために使用され得る。
【0022】
さらに、本技法は、他の監視技術と組み合わされ得る。例えば、圧力反応性指数(PRx)(平均動脈圧MAPとICPとの間の移動ピアソン相関)の計算などのアプローチは、脳の健康の独立した予測因子を提供することが示されている。本明細書の眼球測定、生体インピーダンス技術は、PRxと併せて使用され得、脳インピーダンスなどの追加の同時測定基準を使用すると、そうでなければ高いノイズ測定値であるPRxの使用の改善が可能になる。全体的な組織インピーダンスは、経時的に変化し、個人によって異なり、電極(カソードおよびアノード)のタイプおよび配置によって影響を受ける可能性があるが、本技術は、インピーダンス波をその基本値に正規化することによってこれらの影響を低減し、ベースラインまたは通常値に対する指数の必要性をなくし得る。さらに、MAPおよび脳インピーダンスを利用するPRxタイプの測定基準(移動ピアソン相関または他の計算技術を使用)が、CARの正確な測定基準として使用され得る。
【0023】
本明細書の技術は、多くの方法でより広くPRxおよびCARと使用され得る。いくつかの例では、より正確なPRx値が決定され得るICP、およびCAR結果のより正確な評価を決定するために、本明細書の生体インピーダンス測定技術が使用される。他の例では、PRxは、例えば既知の技術を通して独立して決定されてもよく、PRx値は、CARのより正確な評価のために生体インピーダンスと相関されてもよい。
【0024】
例示的な実施形態として、PRxは、独立して決定され、次いで本明細書に記載の技術を使用して測定される生体インピーダンスと相関される。例えば、生体インピーダンスは、圧力反応性指数と組み合わされて、脳の健康指標を生成することができ、PRx値自体と同様に、負の値を有するその指標は、対象の健康な脳の状態(すなわち、無傷の自己調節)を示し、正の値を有する指標は、対象の不健康な脳の状態(すなわち、自己調節障害)を示す。この組み合わせは、数学的な組み合わせである。例えば、2つの値が、移動ピアソン相関を使用してサンプル期間にわたって相関され得る。加えて、移動ピアソン相関は、生体インピーダンスによって測定されたMAPおよびdzを使用して生成され得、PRxならびに追加のMAPおよびdz相関の両方が一緒に比較および追跡されることを可能にする。
【0025】
我々は、以下に例示的な試験手順を記載する。最初の例では、我々は、多くの生理学的課題に応答した脳血液量のリアルタイムの変化を評価する新規の方法で、眼球-脳インターフェースを使用して、脳生体インピーダンスを測定した。血液は、良好な導電体であるため、我々は、脳生体インピーダンス(dz)の変化が脳血液量の変化を追跡すると仮定した。ICP、平均動脈血圧(MAP)、脳灌流圧(CPP)、および脳血流量(CBF)の侵襲的監視のために、6匹の麻酔ブタに機器を装備した。生体インピーダンスを、眼瞼上に配置されたECG電極を通して継続的に監視した。低電流(0.1~1mA、50kHz)を印加し、同じ電極を通して電位を検知した。ICP、CPP、およびCBFのレベルを操作するために、過換気、昇圧薬投与、硬膜外血腫の形成、および全身出血などの介入を使用した。
【0026】
試験の結果は、生体インピーダンス(dz)がICP、CPP、およびCBFの変化と高度に相関していることを示した(r=-0.72~-0.88、p<0.0001)。dzの受信者動作曲線(ROC)を、CPPの異なる閾値およびCBFのパーセント変化でプロットした。曲線下面積(AUC)、感度、および特異性を各閾値について計算した。dzは、(83%~100%)および(70%~100%)の間でそれぞれ変動する感度および特異性で、(0.80~1.00、p<0.003)間の曲線下面積の高い予測力を有することが示され、脳血液量の変化をリアルタイムで追跡するdzの能力を実証する。
【0027】
したがって、これらの実験は、CPPおよびCBFの変化を高精度で追跡するために、眼球脳インターフェースを通して測定された脳生体インピーダンスが使用され得ることを確認し、脳血液量およびCARの変化を評価する価値がある。
【0028】
過換気:人工呼吸器を、35~40mmHgで呼気終末CO2(PetCO2)に達するために、最初に15~18BPMのベースラインに設定した。ベースラインの読み取り後、次いで、PetCO2が約20mmHgに達するまで、呼吸数(RR)を10呼吸ずつ4倍に増加させた。PetCO2を5~10分間、約20mmHgに維持した。次いで、RRをベースラインレベルまで低下させた。
【0029】
昇圧薬(ノルエピネフリン)投与:ノルエピネフリン(4μg/mL)を500mLの5%デキストロースと混合し、持続注入によって投与し、160mmHg以上のMAPに達するまで滴定した。MAPを5分間、160mmHg以上に維持し、続いて注入を停止し、動物のMAPをほぼベースラインレベルに戻した。ノルエピネフリン注入を3回繰り返した。
【0030】
硬膜外血腫:硬膜外血腫のシミュレーションを、Metzgerおよび同僚によって記載されるように、8Fフォーリーカテーテルを使用して作成した。バルーンに0.5mL/分の速度で6~8mLの生理食塩水を充填した。バルーンが膨張して35~45mmHgのICPに達するようにICPを監視した。圧力を最大5分間維持し、続いて同じ速度でバルーンをしぼませて、ICPをベースラインレベルに戻した。
【0031】
全身出血:最後に、大腿動脈を通して50~100mL/分の速度で動物を出血させた。出血は、動物の推定総血液量の30~40%に相当する800~1000mLの総量に対して、16~20分間中断することなく継続した。
【0032】
別の実験では、3名のヒト対象が同意し、動物実験に記載されるものと同じ電流およびインピーダンス監視パラメータを使用したインピーダンス監視のために、電極を彼らの閉じた眼瞼上に配置した。志願者を仰臥位に配置し、次いで以下の操作:通常の呼吸、深呼吸、息こらえ、ヴァルサルヴァ法を行うように求めた。
【0033】
我々は、ベースライン全体にわたって、かつ様々な操作中に、眼球-脳インピーダンスならびに脳および全身の血行動態(CBF、ICP、CPP、MAP、PetCO2)の変化を検査および評価した。生のインピーダンス信号を、反復単純移動平均(20点移動平均を3回通過)を使用して最初に平滑化およびフィルタリングした。インピーダンス変化(dz)を、dz=zmax-zmin)/zmaxとして計算し、自然対数を使用して変換した。
【0034】
2つの実験では、記述統計を使用して、有効性を評価し、平均値および標準偏差(SD)または中央値および四分位範囲(IQR)を示した。多くの統計分析を利用して、以下のように、dzの性能をMAP、ICP、CBF、CPP、およびPetCO2の侵襲的測定基準と比較した。ピアソン相関を使用して、値の範囲にわたる視覚的検査を可能にした。ある特定の範囲のCBFおよびCPP値にわたってdzの予測値を評価するために、受信者動作特性(ROC)分析および曲線下面積(AUC)を構築した。ROCグラフは、真陽性の結果と偽陽性の結果との間の関係を示し、AUCが大きいほど、予測値はより良好である。有意水準をα=0.05で考慮した。
【0035】
結果は以下のとおりであった。最初の実験では、平均(SD)体重が39.3(0.75)kgの動物6匹を試験した。図2は、人工呼吸中のベースライン眼球-脳生体インピーダンス記録を示し、呼吸によって誘発された変化ならびに重なり合った心周期変化の両方に注目している。表1は、ベースラインでの重量MAP、ICP、およびCPPの平均値および(SD)値、ならびに様々な操作中の変化の範囲(最小および最大)および方向を示す。ピアソン相関は、MAP、ICP、CPP、PetCO2、CBF変化とdzとの間の高い相関を示した(r=0.6~0.96、p<0.0001)(表1および図3を参照)。
【0036】
操作中のdzのROCを、CPPおよびCBF変化の異なる閾値でプロットした。表2に示されるように、各操作でdzのAUC、感度、および特異性を計算した。dzは、(0.81~1.00、p<0.004)の間の曲線下面積で高い予測能力を示した。上記の閾値に関連するインピーダンス法の感度および特異性は、それぞれ(0.75~1.00)および(0.80~1.00)の間で変動した。表2は、様々なCPPおよびパーセントCBF変化の閾値、ならびに操作中のdzの対応するAUC、感度、および特異性を列挙する。
【0037】
頭皮と比較して、脳からの信号を取り込むか、または捕捉する眼球経路技術の能力をよりよく理解し、定量化するために、我々は、1匹の追加の動物で別の実験を実施した。眼球電流注入の有効性を、1対の電極を眼瞼上に、もう1対を動物の耳の近くに最初の対と同じ距離で配置することによって、頭皮を通して同量の電流を注入することと比較した。最初に、眼球電極と頭皮電極との間の抵抗を測定した。頭皮を通して電流を注入したときの3MΩと比較して、眼球経路を通して電流を注入すると、0.5MΩの抵抗をもたらし、電流の眼球注入による著しく優れたコンダクタンスを示す。次に、パワースペクトル密度を使用して、dzの呼吸成分の振幅を比較した(図4を参照)。周期性呼吸を、人工呼吸器によって毎分16呼吸の速度で制御した。電流を頭皮経路と比較して眼球経路を通して注入したとき、呼吸成分の出力は、6.5倍大きかった。動物が過換気されたとき、比率は、46倍に増加した(RR=56)。
【0038】
次いで、眼球電極と頭皮電極との間で等距離にある2つの穿頭孔を頭蓋骨に作成することによって、電圧勾配を脳内で測定した。電流によってもたらされる電圧勾配を、電流注入を周期的に中断することによって測定した。これを20回繰り返し、電極の各対を使用して平均化した。結果は、電流が頭皮経路と比較して眼球経路を通して注入されたとき、脳内の電圧勾配が40%高いことを示し、電流が眼球経路を通して注入された場合、電流のより大きい部分が脳を通過することを示す。最後に、動物を安楽死させ、脳活動および血流の変化によって引き起こされる電気的変動がない状態で、2つの眼瞼の間の抵抗を測定した。開頭術を行った後にこれを繰り返し、脳を摘出し、続いて摘出した頭蓋骨および頭皮を戻し、元に位置で縫合した。抵抗値は、脳を摘出する前にR=10kΩ、および後にR=30kΩであった。脳、ならびに眼瞼の間の残りの組織、皮膚、および骨の抵抗の並列モデルを仮定して、脳の抵抗をR=R/R-R)=300/20kΩ=15kΩとして計算した。結果として、脳を通過する電流対総電流の比は、I/I=R/R=10/15として計算され得る。したがって、眼球経路を通して注入される電流のうちの約3分の2が脳を通過する。電気信号の電流値は対象によって異なるが、本明細書の改善された技術を用いて、生体インピーダンスは、4mA以下または2mA以下など、5mA未満を含む約10mA未満の電流値から測定され得る。電流値の下限は異なるが、いくつかの例では1mAであり得、他の例ではさらに低い場合がある。
【0039】
第2の実験では、志願者対象から収集されたインピーダンスデータは、動物実験から注目された同様のインピーダンス波形を示した。インピーダンス波形の明確な呼吸および心周期誘発変化が観察された。深吸気およびヴァルサルヴァ法は、これらの呼吸法によって生じる脳血液量の変化から予想されるインピーダンスの変化をもたらした(図5を参照)。
【0040】
図7図9(ならびに図11および図12)は、異なる例示的な眼球生体インピーダンスデバイスおよび構成を示す。
【0041】
図7は、透明、部分的に透明、または不透明であり得るキャップから形成された第1のレンズ102を有するゴーグルの形態の、例示的な眼球生体インピーダンスデバイス100を示す。例示された例では、第1のレンズ102は、レンズ102の内部眼球領域係合部分に、図8に示される1つ以上の電極104をさらに含む。係合部分は、レンズ102が対象上の所定の位置に置かれたとき、1つ以上の電極104が対象の表皮と導電接触するように構成されている。1つ以上の電極104は、対象の眼球領域の皮膚内、したがって皮膚を通る接触点で、対象に電流を注入するための皮膚への伝導経路を提供する。その導電接触は、電極104との接触点が直接であるように皮膚(閉じた眼瞼など)との直接接触であってもよいか、またはその接触点は、電極104と皮膚との間に位置付けられた別の導電体を通っていてもよく、例えば、患者により均一に電流を分散させるために、眼球領域の上または周囲に位置付けられた導電性フィルムを通っていてもよい。デバイス100は、第2のレンズ106の電極が第1のレンズからの注入電流を検知するように構成され得、それにより生体インピーダンスセンサとして使用され得ることを除いて、第1のレンズ102と同様または同一であり得る第2のレンズ106を含む。第2のレンズ106の電極108は、電極104の電極と同様に、皮膚と直接接触していても、または間接的に接触していてもよい。さらに、電流経路は、レンズ102から始まり、レンズ106で終わるものとして記載されているが、そのような配向は、それに連結された制御回路によって課せられ得る(例えば、図10を参照)。制御回路は、電流の流動方向を逆にすることができ、動作は同じになる。いくつかの例では、電極104および108は同一ではないが、電極パターンおよび/または位置決めが異なり得る。そのような例において、電流注入および検知の特定の方向は、それらの電極の違いに少なくとも部分的に基づいて確立され得る。レンズ102および106は、非導電性材料用に形成されたブリッジ110によって物理的に接続されて、電極104および108の適切な電気的分離をさらに提供する。
【0042】
図9は、同様に第1のレンズ202および第2のレンズ204から形成された眼球生体インピーダンスデバイス200の別の例示的な構成を示す。デバイス200では、各レンズは、注入電極206および検知電極208の両方を含む。電極206および208のパターン化は、パターンおよび位置も同様に異なり得る。図示された例では、注入電極206が、各レンズ202および204の重心により近く配設される一方で、検知電極208は、重心からさらに遠位に位置付けられる。代わりに、逆方向が使用され得る。いくつかの例では、電極206および208は、レンズの係合表面の周囲で交互に位置付けられてもよい。デバイス100の場合のように、いくつかの例では、各電極タイプのうちの1つのみが各レンズ上で使用される。
【0043】
皮膚に接触しているデバイスの例が示されているが、さらに他の例では、接触は、コンタクトレンズタイプの方法で角膜組織とデバイスとの間で達成される。
【0044】
本明細書の眼球生体インピーダンス技術は、機能の組み合わせを提供するデバイスで実装されてもよい。例えば、生体インピーダンスを測定するためのレンズベースのデバイスは、レンズベースのデバイスと組み合わされ得、発光ダイオード(LED)を通した白色光療法、高色温度の光療法(500ルクス、1000ルクス、1500ルクス以上)、青色光療法デバイス(例えば、450nmおよび500nmまたはそれらの間の波長で放射)、脳血液酸素化監視、ミトコンドリア修復のための様々な近赤外および赤外波長(730~770nm、850~890nm、880~920nm、950~970nm)など、患者に光療法を提供することが可能である送信機である、レンズキャップ内の光送信機も含む。いくつかのそのようなデバイスは、季節性情動障害(SAD)ならびに片頭痛および他の脳関連状態の治療に使用される。さらに他の例では、本明細書の眼球生体インピーダンス技術は、“Method and apparatus for monitoring intra ocular and intra cranial pressure”と題する米国特許第8,172,769号に記載されるものなどの音響エネルギー印加デバイスと共に使用され得、その明細書全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
デバイスの例は、図11および12に示される。図11は、レンズ402とレンズ406とを有する眼球治療デバイス400を示し、各々は、光子治療LEDアレイ410および412のそれぞれが埋め込まれている。LEDアレイ410および412は、レンズ402および406を形成するキャップの中央部分上に位置付けられてもよい。これらのキャップは、本明細書の他の例示的なレンズと同様に、不透明であり、外部光が対象に作用することを阻止し得る。代わりに、これらの例では、アレイ410および412からの光子のみが対象に作用する。当然のことながら、他の例では、本明細書に記載のレンズは、透明または半透明(semi-transparent)(すなわち、半透明(translucent))であってもよい。アレイ410および412は、この統合されたゴーグル構成を介して、光子刺激を生成し、それにより、対象への療法および/または対象への診断情報を提供する。デバイス400は、光子刺激および電気信号の両方を制御する、その例が図10に記載されるコントローラによって制御されてもよい。図8および図9の例に示されるように、眼球領域接触のためにレンズ縁に位置付けられ得る電極(図示せず)を通して印加および検知される電気信号の供給中に、光子刺激が提供され得る。電極(図示せず)は、生体インピーダンスの検知および/または対象の処置のための電気信号を提供する。いくつかの例では、光刺激信号は、電気信号の供給と重複しない。
【0046】
図12は、レンズ502と504とを有し、対象に治療または診断の目的で音響刺激を提供するように構成された2つのスピーカ506によって形成された音響刺激ステージと統合された、デバイス500を示す。これらの例に限定されないが、スピーカは、耳栓スタイルのヘッドホン、オーバーイヤー型ヘッドホン、対象のこめかみを含む対象の側面または眼球領域の付近に取り付けられた小型スピーカなどであってもよい。つまり、スピーカ506は、眼球領域および/または眼球領域以外の対象上の領域において音響刺激を提供するように構成されてもよい。電極(図示せず)は、生体インピーダンスの検知および/または対象の処置のための電気信号を提供する。電気信号および音響刺激信号の両方を制御するために、図10のようなコントローラが使用される。
【0047】
図10は、本明細書の眼球生体インピーダンス測定技術の例示的な実施形態を実施する際に使用される様々な構成要素を示す例示的なブロック図300である。分析装置302は、開示された実施形態の機能の実行に従って、より具体的には患者320の眼球領域に電気的に連結された電流注入電極350、および同様に患者320の眼球領域に電気的に連結された検知電極352によって、眼球生体インピーダンスデバイス316を介して患者320(例えば、ヒトまたは動物)に連結される。分析装置302は、入力/出力(I/O)回路312に接続されたリンク322を介してデータベース314に動作可能に接続されたコントローラ304を有してもよい。図示されていないが、追加のデータベースが既知の方法でコントローラ304にリンクされ得ることに留意されたい。コントローラ304は、プログラムメモリ306と、プロセッサ308(マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサと呼ばれることもある)と、ランダムアクセスメモリ(RAM)310と、入力/出力(I/O)回路312とを含み、それらは全て、アドレス/データバス320を介して相互接続されている。1つのマイクロプロセッサ308のみが示されているが、コントローラ304は、複数のマイクロプロセッサ308を含み得ることが理解されるべきである。同様に、コントローラ304のメモリは、複数のRAM310および複数のプログラムメモリ306を含み得る。I/O回路312は単一のブロックとして示されているが、I/O回路312はいくつかの異なる種類のI/O回路を含み得ることが理解されるべきである。RAM(複数可)310およびプログラムメモリ306は、例えば、半導体メモリ、磁気的に読み取り可能なメモリ、および/または光学的に読み取り可能なメモリとして実装されてもよい。リンク324は、I/O回路312を通してコントローラ304を眼球生体インピーダンスデバイス316に動作可能に接続し得る。眼球生体インピーダンスデバイス316は、電極350および352を介して患者320に動作可能に接続される。
【0048】
プログラムメモリ306および/またはRAM310は、マイクロプロセッサ308による実行のための様々なアプリケーション(すなわち、機械可読命令)を記憶し得る。例えば、オペレーティングシステム330は一般に、試験装置302の動作を制御し、本明細書に記載のプロセスを実施するために試験装置302にユーザーインターフェースを提供し得る。プログラムメモリ306および/またはRAM310はまた、試験装置302の特定の機能にアクセスするための様々なサブルーチン332を記憶し得る。限定ではなく一例として、サブルーチン332は、とりわけ、眼球領域に電流を供給するためのサブルーチン、眼球生体インピーダンスデバイス316で生体インピーダンス測定を行うためのサブルーチン、MAP、ICP、CBF、CPP、および眼球-脳インピーダンスなどの脳の健康指標を決定するためのサブルーチン、および他のサブルーチン、例えば、ソフトウェアキーボード機能の実装、分析装置302内の他のハードウェアとのインターフェースなどを含んでもよい。例えば、上記のプロセスは、プロセッサ308による実行のためにプログラムメモリ306上に記憶されてもよい。プログラムメモリ306および/またはRAM310は、分析装置302の構成および/または動作に関係する、および/または1つ以上のサブルーチン252の動作に関係するデータをさらに記憶し得る。例えば、データは、眼球生体インピーダンスデバイス316によって収集されたデータ、プロセッサ308によって決定および/または計算されたデータなどであってもよい。コントローラ304に加えて、分析装置302は、他のハードウェアリソースを含み得る。分析装置302はまた、視覚ディスプレイ326および入力デバイス(複数可)328(例えば、キーパッド、キーボードなど)などの様々なタイプの入力/出力ハードウェアを含み得る。一実施形態では、ディスプレイ326は、タッチ式であり、ソフトウェアルーチン332のうちの1つとしてソフトウェアキーボードルーチンと協働して、ユーザ入力を受け入れ得る。分析装置が、多くの既知のネットワーキングデバイスおよび技術のうちのいずれかを通して(例えば、病院または診療所のイントラネットなどの通勤者ネットワーク、インターネットなどを通して)、より広範な医療ネットワーク(図示せず)と通信することが有利であり得る。例えば、分析装置は、医療記録データベース、病院管理処理システム、医療専門家端末(例えば、ドクターステーション、ナースステーション)、患者監視システム、スマートポンプ、スマート注入システム、自動薬物送達システムなどの自動薬物送達システムなどに接続されてもよい。したがって、開示される実施形態は、自動閉ループシステムの一部として、または意思決定支援システムの一部として使用され得る。一例として、有線または無線接続を通して分析装置302をネットワーク336に接続するために、ネットワークインターフェース334は、I/Oインターフェース312に連結される。
【0049】
このようにして、システム300は、例えば、生体インピーダンスが経時的に変化するか、処置に応答して変化するか、または他の何らかの条件に基づいて変化するかを判定することによって、患者の生体インピーダンスを決定し、次いで脳の健康をさらに評価するように構成されてもよい。システム300は、MAP、ICP、CBF、CPP、および/または眼球-脳インピーダンスなどの脳健康指標を決定し、それを経時的に測定するように構成されている。さらに考察されるように、MAP、換気パラメータ、ICP(脳脊髄液の除去による)、血液および輸液などの特定の療法を滴定して、CPPを最適化し、CARを保存して、脳の転帰を改善するために、脳インピーダンスの変化が使用され得る。例えば、MAPの上昇(異常なCARを示す)に応答して脳インピーダンスが低下すると、医療提供者は、MAPを低減するように促され得る。別の例には、MAPに変化のないインピーダンスの増加が含まれ得るか、または現在のケアがICPの上昇を示し、したがってICPを低減するための療法を促し得る。
【0050】
したがって、さらなる例示的な実施形態では、本明細書の生体インピーダンス決定技術は、そのような処置の有効性を改善するために処置技術と組み合わされる。
【0051】
例えば、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、うつ病または統合失調症などの精神疾患の治療、ならびに記憶力の強化、実行機能の強化、注意力の強化、および流暢さの強化などの認知力の強化の提供における神経調節技術として提案されている。技術は、頭皮上の様々な位置において皮膚上に外部から配置された電極を使用して、脳に直流刺激を加えることを含み得る。しかしながら、実際に頭皮に浸透し、脳に流入する電流の量は、非常に少ないと考えられている。本明細書の技術により、眼球領域内に電極を含むことによって、眼球対頭皮の経路を、脳に浸透するそれらの能力について比較した前述の実験で概説したように、より高いレベルの電流を脳に送達することが今や可能である。直流の送達のためのこの眼球経路は、所望に応じて、療法の監視を助ける手段として、本技術に従った脳生体インピーダンスの同時または断続的測定と結合され得る。この生体インピーダンスベースのフィードバックは、次いで、手動または処置信号の完全もしくは部分自動化コンピュータ処理のいずれかにより、処置をさらに誘導するために使用され得る。例えば、本技術を使用して強化されたPRxを決定する文脈において、脳に送信される電気刺激信号を制御する経頭蓋直流電気刺激コントローラは、例えば、負の値から正の値へのPRxの変化からの、強化されたPRxの変化に応答して、電気信号(すなわち、電流値、周波数、波形、電圧など)を自動的に再調節するように構成され得る。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態では、電流注入部位として頭皮を使用する従来のtDCSは、眼球-脳生体インピーダンス信号を使用してtDCS電極の位置を最適化することによって方向付けられ得る。例えば、tDCS電極は、対象上に位置付けられ得、処置を開始する。生体インピーダンスを測定し、電極を別の位置に配置し、そこから生体インピーダンスを再測定する。各位置の生体インピーダンス、または各位置の生体インピーダンスから決定される脳の健康指標を評価することによって、治療専門家は、どのtDCS電極の位置が対象の治療により良好であるか、例えば、どの位置がより良好な脳の健康指標値をもたらすかを判定することができる。
【0053】
これらの眼球-脳領域生体インピーダンス強化処置技術は、tDCSに限定されない。技術は、経頭蓋交流電気刺激(tACS)を用いた同様の方法で使用されて、刺激信号特性、tACS刺激電極の位置などを制御することができる。tACSは、脳卒中からうつ病に及ぶ多数の神経および神経-精神状態に対して、tDCSと同様に使用される。したがって、本明細書の眼球-脳経路技術は、tDCSおよびtACSのための頭皮電極配置を最適化するために使用されている生体インピーダンスの眼球-脳経路に加えて、tACSおよび/またはtDCSを送達し、かつ脳生体インピーダンスを監視するために使用され得る。
【0054】
さらに他の例では、これらの眼球-脳生体インピーダンス強化処置は、生体光子ベースの処置および音響ベースの処置を含み得る。生体光子処置には、対象へのプロトン光子刺激およびその効果の監視が含まれる。これらの生体光子処置には、一般に赤色光療法、青色光療法、赤外線療法と呼ばれるものが含まれ、対象の視覚系を通して刺激光子が提供される。本明細書に記載の生体インピーダンス技術は、例えば、処置中に脳の健康指標を測定し、それに応じてその処置の有効性を評価することによって、生体光子療法の有効性を監視するために使用され得る。
【0055】
音響ベースの処置が、同様の方法で分析され得る。いくつかの例では、頭蓋内圧の増加を検出するために、音響エネルギーが対象の頭部に印加される。例えば、音響アイパッチが患者の目または眼瞼に適用され、超音波掃引発生器が、患者の頭蓋骨にわたって音響信号を適用し、信号は、所定の範囲にわたって掃引される。アイパッチは、音響信号を測定するための圧電フィルムセンサを有する。一実施形態では、所定の範囲は、超音波帯域内にあり、分析器は、センサの出力から共振周波数および前述の共振周波数での音響振幅の減衰を決定し、前述の減衰と頭蓋内圧との間に相関がある。別の実施形態では、所定の範囲は、20kHz未満の範囲を含み、分析器は、脈動が消失するまで眼に圧力が加えられた上他で網膜動脈の脈動を決定し、そのような圧力は、頭蓋内圧の尺度である。これらの音響アイパッチは、音響信号の印加中に対象の眼球-脳領域生体インピーダンスを測定する生体インピーダンス電極で構成されている。次いで、音響信号の有効性は、生体インピーダンス値またはそこから導出された脳の健康指標(複数可)の変化に基づいて評価され得る。また、本明細書の他の処置例(tDCS、tACS、生体光子など)の場合のように、測定された生体インピーダンス応答に基づいて脳の健康を改善するために、処置信号が調節され得る。
【0056】
本明細書を通して、複数の事例は、単一の事例として記載された構成要素、動作、または構造を実装し得る。1つ以上の方法の個々の動作が別個の動作として例示および記載されたが、個々の動作のうちの1つ以上が同時に実行されてもよく、例示された順序で動作が実行される必要はない。例示的な構成内で別個の構成要素として提示された構造および機能は、組み合わされた構造または構成要素として実装されてもよい。同様に、単一構成要素として提示された構造および機能は、別個の構成要素として実装されてもよい。これらのおよび他の変形、修正、追加、および改善は、本明細書の主題の範囲内にある。
【0057】
加えて、ある特定の実施形態は、本明細書では、論理または多くのルーチン、サブルーチン、アプリケーション、もしくは命令を含むものとして記載されている。これらは、ソフトウェア(例えば、機械可読媒体もしくは伝送信号上に具現化されたコード)またはハードウェアのいずれかを構成し得る。ハードウェアでは、ルーチンなどは、ある特定の動作を実行することが可能な有形ユニットであり、ある特定の方法で構成または配置され得る。例示的な実施形態では、1つ以上のコンピュータシステム(例えば、スタンドアロン、クライアントもしくはサーバコンピュータシステム)、またはコンピュータシステムの1つ以上のハードウェアモジュール(例えば、プロセッサまたはプロセッサのグループ)は、本明細書に記載のある特定の動作を実行するように動作するハードウェアモジュールとして、ソフトウェア(例えば、アプリケーションまたはアプリケーション部分)によって構成され得る。
【0058】
様々な実施形態において、ハードウェアモジュールは、機械的または電子的に実装され得る。例えば、ハードウェアモジュールは、恒久的に構成された専用回路または論理を含み得る(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または特定用途向け集積回路(ASIC)等の専用プロセッサとして)。ハードウェアモジュールはまた、一定のオペレーションを実施するためにソフトウェアによって一時的に構成されるプログラマブル論理または回路(例えば、汎用プロセッサまたは他のプログラマブルプロセッサ内に包含されるもの)も含み得る。専用かつ恒久的に構成された回路において、または一時的に構成された回路(例えば、ソフトウェアによって構成された)においてハードウェアモジュール機械的に実装する決定は、コストおよび時間を考慮してなされ得ることが理解されよう。
【0059】
したがって、「ハードウェアモジュール」という用語は、有形エンティティを包含すると理解されるべきであり、ある特定の方法で動作するように、または本明細書に記載のある特定の動作を実行するように物理的に構築されているか、永久に構成されている(例えば、ハードウェアに組み込まれている)か、または一時的に構成されている(例えば、プログラムされている)エンティティということである。ハードウェアモジュールが一時的に構成されている(例えば、プログラムされている)実施形態を考慮すると、ハードウェアモジュールの各々は、どの時点のインスタンスにおいても構成またはインスタンス化されている必要はない。例えば、ハードウェアモジュールがソフトウェアを使用して構成された汎用プロセッサを備える場合、汎用プロセッサは、異なる時間にそれぞれ異なるハードウェアモジュールとして構成されてもよい。したがって、ソフトウェアは、例えば、ある時点のインスタンスで特定のハードウェアモジュールを構成し、異なる時点のインスタンスで異なるハードウェアモジュールを構成するようにプロセッサを構成し得る。
【0060】
ハードウェアモジュールは、他のハードウェアモジュールに情報を提供すること、およびそれらから情報を受信することができる。したがって、記載されたハードウェアモジュールは、通信可能に連結されていると見なされ得る。複数のそのようなハードウェアモジュールが同時に存在する場合、通信は、ハードウェアモジュールを接続する信号伝送を通して(例えば、適切な回路およびバスを介して)達成され得る。複数のハードウェアモジュールが異なる時間に構成またはインスタンス化される実施形態では、そのようなハードウェアモジュール間の通信は、例えば、複数のハードウェアモジュールがアクセスするメモリ構造内の情報の記憶および検索を通して達成され得る。例えば、1つのハードウェアモジュールが動作を実行し、その動作の出力を、それが通信可能に連結されているメモリデバイスに記憶し得る。次いで、さらなるハードウェアモジュールが後に、メモリデバイスにアクセスして、記憶された出力を検索および処理し得る。ハードウェアモジュールはまた、入力または出力デバイスとの通信を開始し得、リソースで動作することができる(例えば、情報の収集)。
【0061】
本明細書に記載の例示的な方法の様々な動作は、少なくとも部分的に、一時的に構成されているか(例えば、ソフトウェアによって)、または関連する動作を実行するように永久に構成されている1つ以上のプロセッサによって実行され得る。一時的または永久に構成されているかどうかにかかわらず、そのようなプロセッサは、1つ以上の動作または機能を実行するように動作するプロセッサ実装モジュールを構成し得る。本明細書で言及されるモジュールは、いくつかの例示的な実施形態では、プロセッサ実装モジュールを含み得る。
【0062】
同様に、本明細書の記載の方法またはルーチンは、少なくとも部分的にプロセッサで実装され得る。例えば、方法の動作のうちの少なくともいくつかは、1つ以上のプロセッサによって、またはプロセッサで実装されたハードウェアモジュールによって実行され得る。動作のある特定の性能は、(異なる処理能力を有する)単一の機械内に存在するだけではなく、多くの機械にわたって配備もされる1つ以上のプロセッサの間で分散され得る。いくつかの例示的な実施形態では、プロセッサは、単一の位置に位置してもよい(例えば、現場、オフィス環境、またはサーバファームの一部として配備される)一方で、他の実施形態では、プロセッサは、多くの位置にわたって分散されてもよい。
【0063】
特に明記しない限り、「処理すること」、「演算すること」、「計算すること」、「決定すること」、「提示すること」、「表示すること」などの用語を使用した本明細書の考察は、1つ以上のメモリ(例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、もしくはそれらの組み合わせ)、レジスタ、または情報を受信、記憶、送信、もしくは表示する他の機械構成要素内の物理(例えば、電気、磁気、または光)量として表されたデータを操作または変換するGPUスレッド上のアクションまたはプロセスを指し得る。
【0064】
本明細書に使用される際、「一実施形態」または「実施形態」に対する任意の参照は、実施形態と併せて説明された特定の要素、特徴、構造または特性が、少なくとも1つの実施形態に含められることを意味する。本明細書の様々な場所の「一実施形態において」という語句の出現は、必ずしも全てが同一の実施形態を参照しているとは限らない。
【0065】
いくつかの実施形態は、「連結された」および「接続された」という表現をそれらの派生語と共に使用して説明され得る。例えば、いくつかの実施形態は、2つ以上の要素が物理的または電気的に直接接触していることを示すために「連結された」という用語を使用して説明され得る。しかしながら、「連結された」という用語は、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、それでも互いに協働または相互作用することも意味し得る。実施形態は、この文脈において限定されない。
【0066】
本明細書に使用される際、「備える(comprises、comprising)」、「含む(includes、including)」、「有する(has、having)」という用語、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されていないか、またはかかるプロセス、方法、物品もしくは装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、正反対に明示的に述べられない限り、「または」は、排他的なまたはではなく、包括的なまたはであることを意味する。例えば、条件AまたはBは、Aが真(または存在)かつBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)かつBが真(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のうちのいずれか1つによって満たされる。
【0067】
加えて、「a」または「an」の使用は、本明細書の実施形態の要素および構成要素を説明するために用いられる。これは単に便宜上、かつ説明の一般的な意味を与えるために行わる。本説明および以下の特許請求の範囲は、1つまたは少なくとも1つを含むように解釈されるべきであり、単数形は、そうでないことを意味することが明らかでない限り、複数形も含む。
【0068】
この詳細な説明は、単に一例として解釈されるべきであり、全ての可能な実施形態を説明することは、不可能ではない場合でも非現実的であるので、全ての可能な実施形態を説明するものではない。現在の技術または本出願の出願日の後に開発される技術のいずれかを使用して、多くの代替の実施形態を実装し得る。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
この詳細な説明は、単に一例として解釈されるべきであり、全ての可能な実施形態を説明することは、不可能ではない場合でも非現実的であるので、全ての可能な実施形態を説明するものではない。現在の技術または本出願の出願日の後に開発される技術のいずれかを使用して、多くの代替の実施形態を実装し得る。
本発明の態様の一部を以下に記載する。
1.対象の脳の健康を評価するための装置であって、
1つ以上の電極と、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記装置に、
前記1つ以上の電極を使用して、前記対象の眼球領域に電流を供給すること、
前記1つ以上の電極を使用して、前記対象の前記眼球領域から得られた電気信号を検知し、前記電気信号から前記対象の生体インピーダンス値を決定することであって、前記生体インピーダンス値が、前記対象の前記眼球および脳領域の少なくとも一部分を含む伝導経路の生体インピーダンスを表す、検知し、決定すること、ならびに
前記生体インピーダンス情報から脳の健康指標を決定すること、を行わせる、非一時的命令を記憶するコンピュータ可読メモリと、を備える、装置。
2.前記脳の健康指標が、(i)脳血液量(CBV)、(ii)脳自己調節(CAR)、(iii)頭蓋内圧(ICP)、(iv)脳潅流圧(CPP)、(v)灌流反応性指数(PRx)、(vi)脳血流(CBF)、(vii)血圧、および(viii)換気の変化のうちの少なくとも1つを示す、項目1に記載の装置。
3.前記コンピュータ可読メモリが、前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記装置に前記対象の呼吸数、呼吸の質、および/または心拍数を決定させる非一時的命令を記憶する、項目1に記載の装置。
4.第1のレンズと第2のレンズとを有するゴーグルをさらに備え、前記1つ以上の電極が、前記対象の前記眼球領域からの前記脳への電気伝導経路を提供するように、それぞれ前記第1および第2のレンズの内面に位置付けられている、項目1に記載の装置。
5.前記第1のレンズが、電流注入電極を備え、前記第2のレンズが、電流検知電極を備える、項目4に記載の装置。
6.前記第1のレンズが、電流注入電極と電流検知電極とを備え、前記第2のレンズが、電流注入電極と電流検知電極とを備える、項目4に記載の装置。
7.対象の脳の健康を評価する方法であって、
対象の眼球領域への電気信号の提供、および前記眼球領域および脳領域の少なくとも一部分を含む伝導経路上の前記電気信号の検出に応答して、前記対象の眼球-脳領域生体インピーダンス値を決定することと、
前記眼球-脳領域生体インピーダンス値から、サンプル期間にわたる頭蓋内圧の変化を決定することであって、それらの変化が、脳血液量(CBV)の変化に対応する、決定することと、
前記サンプル期間にわたるCBVに対する前記対象の動脈圧の影響を決定することと、
CBVに対する、前記サンプル期間にわたる平均頭蓋内圧および前記サンプル期間にわたる平均動脈圧の影響を決定することと、
前記平均頭蓋内圧および前記平均動脈圧の相関から圧力反応性指数値を決定することであって、CBVに対する前記圧力反応性指数が、前記対象の脳の健康を示す、決定することと、を含む、方法。
8.対象の脳の健康を評価する方法であって、
サンプル期間にわたる前記対象の平均頭蓋内圧データを受信することと、
サンプル期間にわたる前記対象の平均動脈圧データを受信することと、
前記平均頭蓋内圧および前記平均動脈圧の相関から決定された圧力反応性指数値を受信することであって、前記圧力反応性指数が、前記対象の脳の健康を示す、受信することと、
前記対象の眼球領域への電気信号の提供、ならびに前記眼球領域および脳領域の少なくとも一部分を含む伝導経路上の前記電気信号の検出に応答して、前記サンプル期間にわたる前記対象の眼球-脳領域生体インピーダンスを決定することと、
前記生体インピーダンスを前記圧力反応性指数と組み合わせ、脳の健康指標を生成することであって、前記指標が、前記対象の健康な脳の状態を示す正の値と、前記対象の不健康な脳の状態を示す負の値とを有する、組み合わせ、生成することと、を含む、方法。
9.前記生体インピーダンスを前記圧力反応性指数と組み合わせることが、圧力反応性指数と前記生体インピーダンスとの間の移動ピアソン相関、および/または平均動脈圧と生体インピーダンスとの間の移動ピアソン相関を実行することを含む、項目8に記載の方法。
10.対象の脳の状態を処置する方法であって、
前記対象の眼球領域に、前記対象に対して脳の状態に影響を与える処置を適用することを含み、前記脳の状態に影響を与える処置が、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)、経頭蓋交流電気刺激(tACS)、生体光子刺激、および/または音響刺激である、方法。
11.前記脳の状態に影響を与える処置の処置時間にわたって、前記対象の眼球-脳領域生体インピーダンスを測定することと、
前記処置期間中の前記眼球-脳領域生体インピーダンスの変化に基づいて、前記脳の状態に影響を与える処置の有効性を評価することと、さらに含む、項目10に記載の処置方法。
12.前記脳の状態に影響を与える処置の前記処置時間にわたって、前記対象の眼球-脳領域生体インピーダンスを測定することが、
前記対象の眼球領域において前記対象の外面に配置された1つ以上の電極を通して前記対象の前記眼球領域に電気信号を提供することと、
前記対象の伝導経路上の前記電気信号を検出することであって、前記伝導経路が、前記眼球領域と脳領域の少なくとも一部分とを含む、検出することと、
前記検出された電気信号から前記眼球-脳領域生体インピーダンスを決定することと、を含む、項目11に記載の処置方法。
13.前記処置期間中の前記眼球-脳領域生体インピーダンスの変化に基づいて、前記脳の状態に影響を与える処置の有効性を評価することが、
前記生体インピーダンス情報から脳の健康指標を決定することであって、前記脳の健康指標が、(i)脳血液量(CBV)、(ii)脳自己調節(CAR)、(iii)頭蓋内圧(ICP)、(iv)脳潅流圧(CPP)、(v)灌流反応性指数(PRx)、(vi)脳血流(CBF)、(vii)血圧、および(viii)換気の変化のうちの少なくとも1つを示す、決定することと、
前記脳の健康指標が、許容できる脳の健康指標値または許容できない脳の健康指標値を有するかを判定するために、前記脳の健康指標を評価することと、を含む、項目12に記載の方法。
14.対象の脳の状態を処置するための装置であって、
前記対象の眼球領域に係合するように構成されたハウジングであって、前記対象の前記眼球領域に電気信号を送達するように構成された1つ以上の電極を有する、ハウジングと、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記装置に、
前記脳の状態を処置するために、前記1つ以上の電極を使用して、前記対象の前記眼球領域に経頭蓋直流電気刺激(tDCS)および/または経頭蓋交流電気刺激(tACS)の形態で電気信号を供給させる非一時的命令を記憶するコンピュータ可読メモリと、を備える、装置。
15.前記ハウジングが、第1のレンズと第2のレンズとを有するゴーグルであり、前記対象の前記眼球領域からの前記脳への電気伝導経路を提供するために、前記1つ以上の電極が、それぞれ前記第1および第2のレンズの内面に位置付けられている、項目14に記載の装置。
16.前記ゴーグルと統合され、療法および/または診断情報を提供するための光子刺激をさらに備え、前記眼球領域を通して前記脳に療法および/または診断情報のための光子刺激を提供するように構成された、項目15に記載の装置。
17.前記光子刺激が、前記電気信号の供給中に提供される、項目16に記載の装置。
18.前記光子刺激が、前記電気信号の前記供給と重複しない、項目16に記載の装置。
19.前記対象に治療または診断目的で音響刺激を提供するように構成された音響刺激ステージをさらに備える、項目15に記載の装置。
20.前記音響刺激ステージが、前記眼球領域において前記音響刺激を提供するように構成されている、項目19に記載の装置。
21.前記音響刺激ステージが、前記眼球領域以外の前記対象の領域において前記音響刺激を提供するように構成されている、項目19に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の脳の健康を評価するための装置であって、
1つ以上の電極と、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されたとき、前記装置に、
前記1つ以上の電極を使用して、前記対象の脳に、視神経を含む前記対象の眼球領域を含む伝導経路を通じて電流を供給すること、
前記1つ以上の電極を使用して、前記対象の前記眼球領域の視神経を介して得られた電気信号を検知すること、
前記対象の前記眼球領域の視神経を介して得られた電気信号に基づいて、前記伝導経路と関連する伝導率の差を測定すること、
前記伝導率の差から前記対象の生体インピーダンス値を決定することであって、前記生体インピーダンス値が、前記伝導経路の生体インピーダンスを表す、決定すること、および
前記生体インピーダンス情報から脳の健康指標を決定すること、を行わせる、非一時的命令を記憶するコンピュータ可読メモリと、を備える、装置。
【外国語明細書】