(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149712
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像条件設定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/74 20230101AFI20241010BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20241010BHJP
H04N 23/40 20230101ALI20241010BHJP
G03B 15/05 20210101ALI20241010BHJP
G03B 7/091 20210101ALI20241010BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20241010BHJP
A61B 1/303 20060101ALI20241010BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20241010BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H04N23/74
H04N23/56
H04N23/40 300
G03B15/05
G03B7/091
G03B15/03 Z
A61B1/303
A61B1/00 550
A61B1/045 610
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131235
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2020139844の分割
【原出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】峯尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中楠 徹
(57)【要約】
【課題】消費電力を削減しつつ適切な露光状態で撮影する。
【解決手段】撮像制御装置100は、対象に連なる孔部に挿入された挿入部を対象とともに、発光部230の照明を制御した状態で、撮像装置200に撮像させる撮像制御部111と、撮像制御部111による撮像装置200の制御に従って発光部230で照明せずに撮像された挿入部を表す画像の画像データに基づいて、撮像装置200による撮像状態及び発光部230による光量の少なくとも一方を、挿入部が第1挿入部である場合と、挿入部が第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定する設定部112と、を備え、撮像制御部111は、設定部112により設定された撮像状態及び光量の少なくとも一方に基づいて、少なくとも一方に対応する撮像装置200及び発光部230を制御することによって、対象の記録用の画像データを取得する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、照明装置の照明を制御した状態で、撮像装置に撮像させる制御手段と、
前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定する設定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記設定手段により設定された前記撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得する、
撮像制御装置。
【請求項2】
前記設定手段は、
前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、少なくとも前記挿入部が前記第1及び第2挿入部のいずれであるかを判定し、
前記挿入部が前記第1及び第2挿入部のいずれであるかの判定結果に基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が前記第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる前記第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定する、
請求項1に記載の撮像制御装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記挿入部における光の反射率を取得し、前記取得した反射率に基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を設定する、
請求項1に記載の撮像制御装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データをニューラルネットワークに入力し、前記ニューラルネットワークから出力される値に基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を設定する、
請求項1に記載の撮像制御装置。
【請求項5】
前記撮像状態には、前記撮像装置の露出に関するパラメータが含まれ、
前記設定手段は、前記挿入部が前記第1挿入部である場合と、前記第2挿入部である場合とで、前記露出に関するパラメータを互いに同じ値に設定し、前記照明装置による光量を互いに異なる値に設定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像制御装置。
【請求項6】
前記撮像装置は、前記対象からの反射光を受光し、電気信号に変換する撮像素子と、前記照明装置からの光が前記対象で反射して前記対象からの反射光が前記撮像素子に導入される経路上に位置及び退避可能に設けられた偏光フィルタと、を有し、
前記撮像状態には、前記偏光フィルタを前記経路上に位置させる第1状態と、前記経路上から退避させる第2状態とが含まれ、
前記設定手段は、前記偏光フィルタがあるべき状態を、前記挿入部が前記第1挿入部である場合に前記第1状態に設定し、前記第2挿入部である場合に前記第2状態に設定する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像制御装置。
【請求項7】
前記撮像装置は、前記対象からの反射光を受光し、電気信号に変換する撮像素子と、前記照明装置からの光が前記対象で反射して前記対象からの反射光が前記撮像素子に導入される経路上に位置及び退避可能に設けられた緑色フィルタと、を有し、
前記制御手段は、前記緑色フィルタを前記経路上から退避させた状態で、前記対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、前記照明装置で照明せずに、前記撮像装置に撮像させ、
その後、前記緑色フィルタを前記経路上に位置させた状態で、前記設定手段により設定された前記撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像制御装置。
【請求項8】
対象からの光を撮像素子に集光するレンズを備える撮像装置であって、
前記対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、照明装置の照明を制御した状態で、前記撮像装置に撮像させる制御手段と、
前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定する設定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記設定手段により設定された前記撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得する、
撮像装置。
【請求項9】
対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、照明装置の照明を制御した状態で、撮像装置に撮像させ、
前記制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定し、
前記設定された撮像状態及び光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得する、
撮像制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、照明装置の照明を制御した状態で、撮像装置に撮像させ、
前記制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定させ、
前記設定された撮像状態及び光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮像制御装置、撮像装置、撮像制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、写真撮影時に閃光を発光する装置が使われている。例えば特許文献1に開示された閃光制御装置では、ストロボを本発光して撮影する前に、予備発光を行い、予備発光時の撮影対象からの反射光を測光し、その測光結果に応じて、ストロボの発光量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている閃光制御装置では、本発光の前に予備発光を行うことによって、ストロボの最適な発光量を求めているが、予備発光を行う分、消費電力が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、消費電力を削減しつつ適切な露光状態で撮影することができる撮像制御装置、撮像装置、撮像制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る撮像制御装置は、
対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、照明装置の照明を制御した状態で、撮像装置に撮像させる制御手段と、
前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定する設定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記設定手段により設定された前記撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消費電力を削減しつつ適切な露光状態で撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る撮像装置の機能構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る膣鏡の外観の一例と、撮影時の膣鏡と撮像装置との位置関係を説明する図である。
【
図3】膣鏡を入口側から撮影した画像を説明する図である。
【
図4】第1実施形態に係る撮像制御処理のフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る撮像制御処理のフローチャートである。
【
図6】第3実施形態に係る撮像制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面において、同一または相当部分には、同一符号を付す。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る撮像装置200は、撮影対象として例えば、人間の膣の奥にある子宮頸部を撮影する装置であって、いわゆるコルポスコピーカメラである。撮像装置200は、
図1に示すように、レンズ210と、撮像部220と、発光部230と、操作部240と、表示部250と、撮像制御装置100と、を備える。撮像装置200は、撮像制御装置100によって設定された光量及び撮像状態で子宮頸部を撮影する。ここで、光量とは、発光部230で発光する光の強さを示す値である。また、撮像状態には、撮像装置200の露出に関するパラメータ(ISO感度、絞り値(F値)、露光時間(シャッター速度)等の各値、以下「露出パラメータ」という)が含まれる。
【0011】
レンズ210は、子宮頸部等、撮影対象からの光を、撮像部220が備える撮像素子に集光する。レンズ210は、撮影対象からの光が撮像素子上で焦点を結ぶように焦点距離やレンズの繰り出し量を調整する機能を備える。
【0012】
撮像部220は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子を備える。この撮像素子は、レンズ210を通った撮影対象からの反射光を受光して、電気信号に変換することによって、画像を撮像する。
【0013】
発光部230は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を備え、撮影対象を照明する。発光部230は照明装置として機能する。なお、発光部230は例えば
図2に示すように、レンズ210の付近に備えられている。
図2では、撮像装置200がレンズ210の上部に1つの発光部230を備える例を示しているが、撮像装置200は、複数の発光部230を備えてもよい。この場合、撮像装置200は複数の発光部230をレンズ210の周囲にリング状に備えてもよい。
【0014】
操作部240は、押しボタンスイッチ等のユーザインタフェースであり、ユーザからの操作入力を受け付ける。撮像装置200は、操作部240として、例えば、撮影ボタン等を備える。
【0015】
表示部250は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスを備え、各種操作用のユーザインタフェースや、撮影した画像を表示する。
【0016】
撮像制御装置100は、
図1に示すように、制御部110と、記憶部120と、を備える。
【0017】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)等で構成され、記憶部120に記憶されたプログラムを実行することにより、撮像制御装置100及び撮像装置200を制御する。
【0018】
記憶部120は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備え、制御部110のCPUが実行するプログラム、及び必要なデータ等を記憶する。
【0019】
制御部110は、記憶部120に記憶されたプログラムを実行することにより、
図1に示す撮像制御部111、設定部112、記録部113、として機能する。
【0020】
撮像制御部111は、撮影対象(例えば子宮頸部)に連なる孔部(例えば膣)に挿入された挿入部(例えば後述する膣鏡)を撮影対象とともに、発光部230の照明を制御した状態で、撮像装置200に撮像させる。例えば、撮像制御部111は、発光部230による照明の光量や、撮像装置200の撮像部220による撮像時の撮像状態(露出パラメータ)をそれぞれ、設定部112が設定した設定値に設定して、撮像部220で撮影対象を撮像する制御を行う。そして、撮像制御部111は、設定部112により設定された、撮像装置200による撮像状態及び発光部230による光量の少なくとも一方に基づいて、当該少なくとも一方に対応する撮像装置200及び発光部230を制御することによって、撮像部220で撮像した撮影対象の記録用の画像データを取得する。撮像制御部111は、制御手段として機能する。
【0021】
設定部112は、発光部230による照明の光量や、撮像部220による撮像時の撮像状態(露出パラメータ)を設定する。より詳細には、設定部112は、撮像制御部111による撮像装置200の制御に従って発光部230で照明せずに撮像された膣鏡を表す画像の画像データに基づいて、撮像装置200による撮像状態及び発光部230による光量の少なくとも一方を、膣鏡が後述する第1挿入部である場合と、膣鏡が第1挿入部とは光の反射率が異なる後述する第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定する。設定部112は、設定手段として機能する。
【0022】
記録部113は、撮像制御部111が取得した画像データを画像ファイルとして記憶部120に記録する。
【0023】
撮像装置200で子宮頸部を撮影する際には、子宮頸部に連なる膣に、
図2に示す膣鏡300を、先端側(
図2に示すA側)から挿入し、膣鏡300の入口側(
図2に示すB側)から膣鏡300を通して、子宮頸部を撮影する。膣鏡300は、上部301と下部302とに分かれており、要部303を支点として先端側を開閉可能である。ユーザは、膣の奥の子宮頸部を、膣鏡300の入口側から上部301と下部302の間の空間を通して、観察したり、撮影したりすることができる。なお、膣鏡300は、膣に挿入されることから挿入部ともいう。
【0024】
膣鏡300は、その材質(スチール、プラスチック等)や、表面加工(銀メッキ、黒塗装、半透明等)に応じて、撮影時の膣内の照明状態が変わる。本実施形態では、膣鏡300として、表面が銀メッキ加工されたスチール製のクスコ式膣鏡(以下「銀メッキ膣鏡」又は「第1挿入部」という)と、表面が黒塗装されたスチール製のクスコ式膣鏡(以下「黒塗装膣鏡」又は「第2挿入部」という)の2種類の一方が用いられる場合を想定する。
【0025】
膣鏡300として、黒塗装膣鏡を用いる場合は、膣鏡300での光の反射は極力抑えられた状態になるため、膣内は比較的安定した照明状態になる。したがって、黒塗装膣鏡を用いると、光量及び露出パラメータを適切な値に固定して良好な画像を撮影することができる。また、膣鏡300として、銀メッキ膣鏡を用いる場合は、膣鏡300で光が反射されるため、黒塗装膣鏡での適切な光量及び露出パラメータで撮影すると、露出オーバーになる可能性が高い。したがって、例えば露出パラメータを最適値に固定して撮影することを前提とすると、銀メッキ膣鏡を用いる場合は、黒塗装膣鏡を用いる場合と比べて発光部230から発光する光量を抑える必要が生じる。
【0026】
このような処理を行うためには、用いられている膣鏡300の種類を判定し、その判定結果に応じて、発光部230から発光する光量を調節すればよい。そして、膣鏡300は、通常、先端側も入口側も同じ材質で同じ表面加工が施されているため、膣に挿入された状態であっても、膣から突出した部分(入口側)の色、明るさ等から、膣鏡300の種類を判定することが可能である。また、膣から突出した部分については、通常(例えば室内光や太陽光の下では)発光部230を発光させなくても問題なく撮影可能である。
【0027】
そこで、撮像装置200は、発光部230を発光させない状態で膣鏡300の入口付近とその周囲を撮影し、その撮影された画像の画像データに基づいて、膣鏡300の種類を判定し、その後、膣鏡300の種類に応じた最適な光量を発光部230から発光させた状態で子宮頸部を撮影する。なお、この画像データは、膣鏡300が撮影された画像の画像データ(膣鏡300を表す画像の画像データ)であるが、膣鏡を含む画像の一部だけからなる画像データでもよく、また、膣鏡の一部が写った画像の画像データでもよい。
【0028】
膣鏡300が膣に挿入された状態で、撮像装置200で膣鏡300を通して子宮頸部401を撮影する場合、
図3に示すように、膣鏡300の周囲には膣の周囲の皮膚402が撮影され、膣鏡300の入口付近403の部分は膣から突出し、
図3において斜線でハッチングしてある部分として撮影され、膣鏡300の膣に挿入された部分は
図3で黒くなっている部分として撮影される。なお、膣鏡300は通常、
図2に示すように全体が同じ材質でできているが、
図3では便宜上、ハッチングを付したり黒塗りにしたりすることによって、膣鏡300の膣から突出している部分と膣に挿入されている部分とを区別できるようにしている。
【0029】
なお、撮影時に発光部230から光を発光しない場合、膣鏡300の膣に挿入された部分と、その奥の子宮頸部401には光が当たらないため、それらの部分は黒い領域として撮影される。しかし、膣鏡300の入口付近403の部分と膣の周囲の皮膚402の部分は撮影場所の周囲の照明状態に応じた明るさで撮影される。
【0030】
本実施形態では、最適な露出パラメータとして、ISO感度を400、絞りを開放(F値を最小)、露光時間(シャッター速度)を1/100秒とそれぞれ設定し、この露出パラメータの下で最適な光量を発光部230から発光させる。ここでは、黒塗装膣鏡を用いて上述の最適な露出パラメータで子宮頸部401を撮影する際の最適な光量を光量基準値(例えば光量10)とする。すると、同じ露出パラメータで、膣鏡300を銀メッキ膣鏡に変更した場合の最適な光量は、上述したように黒塗装膣鏡を用いた場合よりも小さい値になるため、光量基準値に銀基準係数(例えば0.8)を乗算した値(例えば8)となる。
【0031】
次に、
図4を参照しながら、制御部110によって実行される撮像制御処理について説明する。この処理は、膣鏡300の種類を判定して、使用されている膣鏡300に応じた最適な光量を発光部230から発光した状態で子宮頸部を撮影する処理である。撮像制御処理は、操作部240を介してユーザから撮像制御処理の開始の指示を受けると開始される。例えば、ユーザが操作部240の撮影ボタンを押すと、撮像制御処理が開始される。
【0032】
まず、撮像制御部111は、発光部230を発光させずに、撮像部220で判定用画像を撮影する(ステップS101)。すると、制御部110は、膣鏡300の内部の領域が黒く、膣鏡300の入口付近及びその周囲の部分が、撮影場所の照明状態に応じた明るさで撮影された判定用画像を取得する。この判定用画像400は、例えば
図3において、子宮頸部401の部分も黒い領域として撮影された画像である。
【0033】
次に設定部112は、判定用画像の画像データに基づいて、膣鏡300が銀メッキ膣鏡か否かを判定する(ステップS102)。この判定は、ステップS101で取得した
図3に示すような判定用画像400の画像データを用いて、例えば、膣鏡300の入口付近403の明るさ(例えばその付近の画素の輝度Iの平均値)とその周囲の皮膚402の明るさ(例えばその付近の画素の輝度Iの平均値)との大小の比較により行うことができる。
【0034】
なお、輝度Iとは、画素値をR(赤成分の大きさ)、G(緑成分の大きさ)、B(青成分の大きさ)で表した時に、以下の式(1)で算出される値である。画素値のR,G,Bはそれぞれ0から1までの値であり、輝度Iも0から1までの値となる。
I=0.299×R+0.587×G+0.114×B…(1)
【0035】
例えば、入口付近403の部分の画素の輝度の平均値が周囲の皮膚402の部分の画素の輝度の平均値よりも小さければ、設定部112は、膣鏡300が銀メッキ膣鏡ではない、すなわち黒塗装膣鏡であると判定する。そして、入口付近403の部分の画素の輝度の平均値が周囲の皮膚402の部分の画素の輝度の平均値以上ならば、設定部112は、膣鏡300が銀メッキ膣鏡であると判定する。
【0036】
なお、通常、子宮頸部401を撮影する際の膣鏡300と撮像装置200との位置関係はほぼ一定であるので、ピントの設定もこの位置関係に基づいて、子宮頸部401にピントが合うように予め設定しておくことが可能である。また、例えば、まず膣鏡300の入口付近403にピントを合わせてから、子宮頸部401までの距離(この「膣鏡300の入口付近403から子宮頸部401までの距離」を便宜上以下では「子宮頸部用ピント調整距離」という)だけピントの合う位置を動かすことによって、子宮頸部401にピントを合わせてもよい。子宮頸部401にピントが合うように設定されている場合は、判定用画像400において、膣鏡300の入口付近403の部分はピントがぼけた状態で撮影されるが、判定用画像400のどの辺りに膣鏡300の入口付近403の部分の画素が存在するか、また、判定用画像400のどの辺りに膣鏡300の周囲の皮膚402の部分の画素が存在するか、については、膣鏡300と撮像装置200との位置関係がほぼ一定であることから、予め求めておくことが可能である。
【0037】
また、判定用画像400を撮影する際には、撮像制御装置100は、例えば、撮影ボタンを半押しすると膣鏡300の入口付近403の部分にピントを合わせ、全押しすると子宮頸部用ピント調整距離だけピントの合う位置を動かすことによって子宮頸部401にピントを合わせるようにしてもよい。膣鏡300の入口付近403の部分にピントを合わせれば、画像認識により、判定用画像400のどの辺りに膣鏡300の入口付近403が存在するか、また、判定用画像400のどの辺りに膣の周囲の皮膚402が存在するか、を判定することができるので、この判定に基づいて、膣鏡300の入口付近403の部分の画素値や、膣の周囲の皮膚402の部分の画素値を取得してもよい。
【0038】
なお、子宮頸部用ピント調整距離には個人差があることも考えられるので、この距離を撮影対象毎に予め設定可能にしておいてもよい。また、標準的な子宮頸部用ピント調整距離だけでなく、さらに基準距離(例えば2cm)刻みで増減した距離だけ(膣鏡300の入口付近403の部分にピントを合わせた状態から)ピントの合う位置を動かすことによって、複数のピント位置において撮影するようにしてもよい。そして、その中から、子宮頸部401にピントが合った画像を自動的に選択してもよい。
【0039】
図4に戻り、膣鏡300が銀メッキ膣鏡でないなら(ステップS102;No)、黒塗装膣鏡であるとして、設定部112は、黒塗装膣鏡用の最適な撮影条件を設定値として設定する(ステップS103)。例えば、露出パラメータについては、ISO感度を400、絞りを開放(F値を最小)、露光時間(シャッター速度)を1/100秒とした設定値を露出パラメータ設定値として設定し、光量については、光量基準値(例えば10)を光量設定値として設定する。
【0040】
一方、膣鏡300が銀メッキ膣鏡なら(ステップS102;Yes)、設定部112は、銀メッキ膣鏡用の最適な撮影条件を設定値として設定する(ステップS104)。例えば、露出パラメータについては、ISO感度を400、絞りを開放(F値を最小)、露光時間(シャッター速度)を1/100秒とした設定値を露出パラメータ設定値として設定し、光量については、上記の光量基準値に銀基準係数を乗算した値(例えば8)を光量設定値として設定する。
【0041】
そして、撮像制御部111は、設定部112がステップS103又はステップS104で設定した設定値により、露出パラメータ及び光量を設定して撮影準備を行う(ステップS105)。次に、撮像制御部111は、撮影準備で設定された露出パラメータ及び光量で子宮頸部を撮影する(ステップS106)。そして、記録部113は、撮像制御部111が撮影して取得した画像の画像データを記録用の画像ファイルとして記憶部120に記録し(ステップS107)、撮像制御処理を終了する。
【0042】
なお、上述の撮像制御処理では、撮像状態(露出パラメータ)を最適な値に固定し、当該固定した撮像状態及び膣鏡300に応じて光量を最適な値に設定したが、これに限られない。例えば光量を固定し、当該固定した光量及び膣鏡300に応じて撮像状態(露出パラメータ)を最適な値に設定しても構わない。
【0043】
以上、説明した撮像制御処理により、判定用画像400を撮影する際には発光部230を発光させずに済むため、消費電力を削減することができ、また、使用している膣鏡300の種類に応じて露出パラメータ及び光量を設定するため、適切な露光状態で子宮頸部を撮影することができる。
【0044】
なお、上述の実施形態では、膣鏡300の種類として黒塗装膣鏡と銀メッキ膣鏡の2種類が存在するものとして説明したがこれに限られない。他の種類の膣鏡300が存在している場合においても、同様の処理により、判定用画像400の画像データに基づいて膣鏡300の種類を判定して、各膣鏡300の種類に応じた最適な撮像状態及び光量を設定することが可能である。
【0045】
また、銀メッキ膣鏡用の光量設定値は、上述のように計算によって求めなくてもよい。例えば、膣鏡300の種類に応じて最適な光量又は最適な撮像状態(露出パラメータ)の値が定められたテーブルを予め記憶部120に記憶しておき、このテーブルを参照して最適な光量又は撮像状態(露出パラメータ)を取得してもよい。
【0046】
(変形例1)
上述の第1実施形態では、膣鏡300の種類に応じて、それぞれ最適な露出パラメータ及び光量を設定するが、黒塗装膣鏡に比べると銀メッキ膣鏡は光が様々に反射するため、最適な露出パラメータ及び光量は時と場合によって変化する可能性も考えられる。そこで、変形例1に係る撮像制御装置100では、撮像制御処理(
図4)のステップS103の処理内容を、AE(Automatic Exposure)機能による露出パラメータ及び光量の設定に変更する。
【0047】
変形例1に係る撮像制御装置100は、黒塗装膣鏡を使用する場合には、第1実施形態と同様に、消費電力を削減しつつ、適切な露光状態で子宮頸部を撮影することができる。また、黒塗装膣鏡以外の膣鏡300を使用する場合には、AE機能によって適切な露光状態で子宮頸部を撮影することができる。
【0048】
(変形例2)
上述したように、銀メッキ膣鏡を使用すると光が様々に反射する。この光の反射を抑えるために、変形例2に係る撮像制御装置100では、膣鏡300が銀メッキ膣鏡であることが判定されたら、レンズ210の前(撮影対象とレンズ210との間)に偏光フィルタを挿入する。なお、偏光フィルタを挿入する位置はレンズ210の前に限られず、発光部230の前でもよい。
【0049】
すなわち、変形例2に係る撮像装置200は、発光部230からの光が撮影対象で反射して撮影対象からの反射光が撮像素子に導入される経路(発光部230から撮像素子までの光学系の経路)上に位置させたり(挿入したり)、当該経路から待避させたりできるように設けられた偏光フィルタを備える。したがって、変形例2においては、撮像状態として、偏光フィルタを当該経路上に位置させた状態(第1状態)と、偏光フィルタを当該経路上から退避させた状態(第2状態)と、が含まれる。
【0050】
そして、変形例2に係る撮像制御装置100では、撮像制御処理(
図4)のステップS101の処理内容は、「撮像制御部111は、偏光フィルタを光学系の経路から待避して、発光部230を発光させずに、撮像部220で判定用画像を撮影する」に変更され、ステップS103の処理内容は、「撮像制御部111は、偏光フィルタを光学系の経路に挿入し、設定部112は、偏光フィルタを考慮した上で銀メッキ膣鏡用の最適な撮影条件を設定値として設定する」に変更される。
【0051】
偏光フィルタが上記光学系の経路に挿入されると、撮像素子に到達する光がかなり抑えられることになるため、変形例2においては、ステップS103において、黒塗装膣鏡を使用する場合に比べて発光部230で発行する光量を少し(例えば40%)明るく設定する。例えば、露出パラメータについては、ISO感度を400、絞りを開放(F値を最小)、露光時間(シャッター速度)を1/100秒とした設定値を露出パラメータ設定値として設定し、光量については、光量基準値に偏光フィルタ係数(例えば1.4)を乗算した値(例えば14)を光量設定値として設定する。
【0052】
変形例2に係る撮像制御装置100は、第1実施形態と同様に、消費電力を削減しつつ、適切な露光状態で子宮頸部を撮影することができる。また、偏光フィルタを光学系の経路に挿入することによって、銀メッキ膣鏡を使用する場合でも比較的安定した露光状態で子宮頸部を撮影することができる。
【0053】
(変形例3)
コルポスコピーカメラにおいては、緑色フィルタを挿入して子宮頸部を撮影することも多い。変形例3に係る撮像装置200は、緑色フィルタを備え、子宮頸部を撮影する際には撮像制御装置100は、レンズ210の前(撮影対象とレンズ210との間)に緑色フィルタを挿入するものとする。ただし、緑色フィルタを挿入する位置はレンズ210の前に限られず、発光部230の前でもよい。すなわち、変形例3に係る撮像装置200では、発光部230からの光が撮影対象で反射して撮影対象からの反射光が撮像素子に導入される経路(発光部230から撮像素子までの光学系の経路)上に、緑色フィルタを位置させたり(挿入したり)、当該経路から待避させたりできるように構成されている。
【0054】
ただし、膣鏡300の種類を判定するための判定用画像を撮影する際には緑色フィルタの挿入は不要である。したがって、変形例3に係る撮像制御装置100では、撮像制御処理(
図4)のステップS101の処理内容は、「撮像制御部111は、緑色フィルタを光学系の経路から待避して、発光部230を発光させずに、撮像部220で判定用画像を撮影する」に変更される。
【0055】
そして、その後、撮像制御部111は、緑色フィルタを光学系の経路に挿入する処理を行い、ステップS103の処理内容は、「設定部112は、緑色フィルタの挿入を考慮した上での銀メッキ膣鏡用の最適な撮影条件を設定値として設定する」に変更され、ステップS104での処理内容は、「設定部112は、緑色フィルタの挿入を考慮した上での黒塗装膣鏡用の最適な撮影条件を設定値として設定する」に変更される。なお、変形例3に係る撮像制御処理において、緑色フィルタを光学系の経路に挿入する処理は、ステップS101の直後からステップS106の直前までの間であれば、任意のタイミングで行われてよいが、通常はステップS105において行われる。
【0056】
以上説明したように、変形例3に係る撮像制御装置100では、判定用画像400を撮影する際に緑色フィルタを光学系の経路から待避するので、膣鏡の種類の判定の際に、緑色フィルタの影響のない画像データを用いることができ、膣鏡の種類を誤判定する確率を抑えることができる。
【0057】
(変形例4)
上述の実施形態及び変形例では、撮像装置200が可視光を撮像するものとして説明したが、撮像対象は可視光に限定されない。例えば、赤外光又は紫外光を撮像してもよい。そして、その場合、発光部230は、赤外光又は紫外光を発光してもよい。変形例4に係る撮像装置200は、発光部230が赤外光又は紫外光を発光し、赤外光又は紫外光を撮像するものとする。
【0058】
変形例4に係る撮像制御装置100も、第1実施形態及びその変形例と同様に、膣鏡300の種類に応じて光量を調整する。すなわち、黒塗装膣鏡を使用している場合には、光量を光量基準値(例えば10)に設定し、銀メッキ膣鏡を使用している場合には、光量基準値に銀基準係数を乗算した値(例えば8)に光量を設定する。
【0059】
変形例4に係る撮像制御装置100では、赤外光又は紫外光で撮像を行う場合でも、発光部230を発光させずに判定用画像を撮影するので、赤外光又は紫外光の影響のない画像データを用いて膣鏡300の種類を判定でき、膣鏡300の種類を誤判定する確率を抑えることができる。
【0060】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、膣鏡300として、銀メッキ膣鏡と黒塗装膣鏡の2種類を用いていたが、より多くの種類の膣鏡300に対応可能な第2実施形態について説明する。
【0061】
第2実施形態に係る撮像制御装置100及び撮像装置200の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
第2実施形態に係る撮像制御処理について、
図5を参照して説明する。この処理は、第1実施形態に係る撮像制御処理のステップS102~ステップS104を、ステップS111に置き換えた処理になるので、ステップS111の処理について説明する。
【0063】
ステップS111では、設定部112は、判定用画像の画像データに基づいて、膣鏡300における光の反射率を取得し、取得した反射率に基づいて、撮影条件を設定する。この反射率は、ステップS101で取得した
図3に示すような判定用画像400の画像データを用いて膣鏡300の入口付近403の明るさ(例えばその付近の画素の輝度Iの平均値)とその周囲の皮膚402の明るさ(例えばその付近の画素の輝度Iの平均値)との比に基づいて求める。
【0064】
例えば、膣鏡300の入口付近403の部分の画素の輝度Iの平均値をVとし、その周囲の皮膚402の部分の画素の輝度Iの平均値をSとすると、反射率Rは以下の式(2)で算出される。
R=V/S …(2)
【0065】
そして、設定部112は、例えば、露出パラメータについては、ISO感度を400、絞りを開放(F値を最小)、露光時間(シャッター速度)を1/100秒とした設定値を露出パラメータ設定値として設定し、光量については、光量基準値(例えば10)を修正係数(例えば2)で割った値をさらに上述の反射率R(例えば0.8)で割って、修正加算値(例えば5)を加算した値(例えば11.25)を光量設定値として設定する。なお、この計算によって、光量設定値が光量上限値(例えば20)を超えた場合は、光量設定値を光量上限値に設定し直し、光量設定値が光量下限値(例えば1)未満になった場合には、光量設定値を光量下限値に設定し直してもよい。
【0066】
また、光量設定値は、上述のような計算式によって求めなくてもよい。例えば、様々な反射率に応じて最適な光量の値が定められたテーブルを予め記憶部120に記憶しておき、このテーブルを参照することにより、反射率から光量を取得してもよい。
【0067】
ステップS111の処理以外は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。以上説明した第2実施形態では、第1実施形態と同様に、消費電力を削減しつつ、適切な露光状態で子宮頸部を撮影することができる。また、膣鏡300の反射率に基づいて最適な光量を設定できるので、黒塗装膣鏡や銀メッキ膣鏡だけでなく、任意の膣鏡300を使用することができる。
【0068】
(第3実施形態)
上述の実施形態及び変形例では、膣鏡300の種類を判定したり、反射率を算出したりして光量を設定している。しかし、膣鏡300の種類の判定や反射率の算出をせずに、例えば機械学習により各種設定値を求めてもよい。ここでは、ニューラルネットワークを利用して撮像状態(露出パラメータ)又は光量の少なくとも一方を設定する第3実施形態について説明する。
【0069】
第3実施形態に係る撮像制御装置100及び撮像装置200の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。ただし、第3実施形態に係る設定部112は、CNN(Convlutional Neural Network)を備える。また、判定用画像の画像データのそれぞれに対して、露出パラメータを固定(例えば、ISO感度を400、絞りを開放(F値を最小)、露光時間(シャッター速度)を1/100秒に)した場合の最適な光量の設定値が正解ラベルとして付与された学習データ(判定用画像の画像データと最適な光量設定値との組)が大量に用意されているものとする。
【0070】
設定部112が備えるCNNは予め、上述の学習データを用いて、
図3に示すような膣鏡300の入口付近とその周囲が撮影された判定用画像の画像データが入力されると、最適な光量の設定値が出力されるように学習させておく。
【0071】
第3実施形態に係る撮像制御処理について、
図6を参照して説明する。この処理は、第1実施形態に係る撮像制御処理のステップS102~ステップS104を、ステップS121に置き換えた処理になるので、ステップS121の処理について説明する。
【0072】
ステップS121では、設定部112は、判定用画像の画像データを学習済のCNNに入力することにより、CNNの出力として、最適な光量設定値を取得する。そして、設定部112は、例えば、露出パラメータについては、ISO感度を400、絞りを開放(F値を最小)、露光時間(シャッター速度)を1/100秒とした設定値を露出パラメータ設定値として設定し、光量については、CNNから出力された値を光量設定値として設定する。
【0073】
ステップS121の処理以外は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。以上説明した第3実施形態では、第1実施形態と同様に、消費電力を削減しつつ、適切な露光状態で子宮頸部を撮影することができる。また、CNNによって最適な光量を設定できるので、膣鏡300の種類を判定する必要はなく、任意の膣鏡300を使用することができる。
【0074】
なお、上述の説明で、CNNは最適な光量設定値を出力するものとして説明したが、これはCNNの使い方の一例に過ぎない。例えば、判定用画像の画像データのそれぞれに対して、光量を光量基準値(例えば10に)に固定した場合の、最適な露出パラメータの設定値(ISO感度、絞り(F値)、露光時間(シャッター速度))が正解ラベルとして付与された学習データを大量に用意し、この学習データを用いて、判定用画像の画像データが入力されると、最適な露出パラメータの設定値が出力されるようにCNNを学習させてもよい。
【0075】
このように学習させたCNNを用いると、発光部230の発光時の光量を光量基準値に固定させたままで、最適な露出パラメータで子宮頸部401を撮影することができる。
【0076】
また、露出パラメータも光量も固定させないようにしてもよい。例えば、判定用画像400の画像データのそれぞれに対して、最適な露出パラメータの設定値(ISO感度、絞り(F値)、露光時間(シャッター速度))及び最適な光量の設定値が正解ラベルとして付与された学習データを大量に用意し、この学習データを用いて、判定用画像400の画像データが入力されると、最適な露出パラメータ設定値及び光量設定値が出力されるようにCNNを学習させてもよい。
【0077】
このように学習させたCNNを用いると、露出パラメータも発光部230の発光時の光量も固定させることなく、判定用画像400の画像データに基づいてCNNから出力された最適な露出パラメータ及び光量で子宮頸部401を撮影することができる。
【0078】
(その他の変形例)
なお、本発明は、上述の実施形態及び変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、第2、第3実施形態の各々は、変形例2~変形例4の各々と組み合わせることが可能である。さらに、変形例同士(例えば変形例2と変形例3)を組み合わせることも可能である。例えば、第2実施形態と変形例2とを組み合わせ、反射率Rが基準反射率(例えば1.5)を超えたら、偏光フィルタを光学系の経路に挿入し、光量設定値を、偏光フィルタを挿入しない場合に比べて、偏光フィルタ係数(例えば1.4)倍した値に設定してもよい。
【0079】
また、上述の第3実施形態と変形例2とを組み合わせ、学習データの正解ラベルに偏光フィルタの有無も含ませて学習させたCNNを用い、設定部112はCNNが出力した各種設定値と偏光フィルタの有無に基づいて撮影時の露出パラメータ、光量及び偏光フィルタの有無を設定してもよい。
【0080】
また、上述の実施形態及び変形例では、人間の子宮頸部を撮影する撮像装置200を例に挙げて説明したが、撮像装置200による撮影の対象は人間の子宮頸部に限られず、人間以外の動物(例えば犬、猫、牛、豚、馬等)の子宮頸部でもよい。
【0081】
さらに、撮像装置200による撮影の対象は子宮頸部に限られず、口、鼻の孔(鼻腔の入口部)、耳の孔(外耳道の入口部)、肛門等、膣鏡300のような挿入部を挿入して撮影する対象であれば、撮像装置200による撮影の対象となり得る。また、撮像装置200は、工場や作業現場での配管内又は人が入れない隙間での撮影や、自然界の穴の中(動物の巣穴、樹の洞、地面や崖の亀裂や穴)の撮影にも使用することができる。
【0082】
すなわち、撮像装置200は、一般に、対象(子宮頸部、咽喉、鼻腔の壁部(上甲介、中甲介、下甲介)、外耳道の壁や鼓膜、直腸、下水管の壁部等、腔部の壁部)に連なる孔部(膣、口腔、鼻の孔(鼻腔の入口部)、耳の孔(外耳道の入口部)、肛門、下水管等の配管等)に挿入された挿入部(膣鏡、咽喉鏡、鼻鏡、耳鏡、肛門鏡、下水管鏡等)を当該対象とともに、発光部230で照明せずに、撮像して判定用画像400を取得し、判定用画像400の画像データに基づいて撮像状態及び光量の少なくとも一方を設定して、当該設定に基づいて、孔部の奥に存在する対象を撮影する際に、使用することができる。
【0083】
また、上述の実施形態では、撮像装置200が撮像制御装置100を内蔵しているものとして説明したが、撮像制御装置100は、撮像装置200とは別個の装置であってもよい。この場合、撮像制御装置100及び撮像装置200は、双方が通信部を備え、撮像制御装置100は当該通信部を介して撮像装置200を制御可能に構成される。
【0084】
なお、撮像制御装置100の各機能は、通常のPC等のコンピュータによっても実施することができる。具体的には、上記実施形態では、撮像制御装置100が行う照明制御処理のプログラムが、記憶部120のROMに予め記憶されているものとして説明した。しかし、プログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical disc)、メモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータに読み込んでインストールすることにより、上述の各機能を実現することができるコンピュータを構成してもよい。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0086】
(付記1)
対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、照明装置の照明を制御した状態で、撮像装置に撮像させる制御手段と、
前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定する設定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記設定手段により設定された前記撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得する、
撮像制御装置。
【0087】
(付記2)
前記設定手段は、
前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、少なくとも前記挿入部が前記第1及び第2挿入部のいずれであるかを判定し、
前記挿入部が前記第1及び第2挿入部のいずれであるかの判定結果に基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が前記第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる前記第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定する、
付記1に記載の撮像制御装置。
【0088】
(付記3)
前記設定手段は、前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記挿入部における光の反射率を取得し、前記取得した反射率に基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を設定する、
付記1に記載の撮像制御装置。
【0089】
(付記4)
前記設定手段は、前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データをニューラルネットワークに入力し、前記ニューラルネットワークから出力される値に基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を設定する、
付記1に記載の撮像制御装置。
【0090】
(付記5)
前記撮像状態には、前記撮像装置の露出に関するパラメータが含まれ、
前記設定手段は、前記挿入部が前記第1挿入部である場合と、前記第2挿入部である場合とで、前記露出に関するパラメータを互いに同じ値に設定し、前記照明装置による光量を互いに異なる値に設定する、
付記1から4のいずれか1つに記載の撮像制御装置。
【0091】
(付記6)
前記撮像装置は、前記対象からの反射光を受光し、電気信号に変換する撮像素子と、前記照明装置からの光が前記対象で反射して前記対象からの反射光が前記撮像素子に導入される経路上に位置及び退避可能に設けられた偏光フィルタと、を有し、
前記撮像状態には、前記偏光フィルタを前記経路上に位置させる第1状態と、前記経路上から退避させる第2状態とが含まれ、
前記設定手段は、前記偏光フィルタがあるべき状態を、前記挿入部が前記第1挿入部である場合に前記第1状態に設定し、前記第2挿入部である場合に前記第2状態に設定する、
付記1から5のいずれか1つに記載の撮像制御装置。
【0092】
(付記7)
前記撮像装置は、前記対象からの反射光を受光し、電気信号に変換する撮像素子と、前記照明装置からの光が前記対象で反射して前記対象からの反射光が前記撮像素子に導入される経路上に位置及び退避可能に設けられた緑色フィルタと、を有し、
前記制御手段は、前記緑色フィルタを前記経路上から退避させた状態で、前記対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、前記照明装置で照明せずに、前記撮像装置に撮像させ、
その後、前記緑色フィルタを前記経路上に位置させた状態で、前記設定手段により設定された前記撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得する、
付記1から6のいずれか1つに記載の撮像制御装置。
【0093】
(付記8)
対象からの光を撮像素子に集光するレンズを備える撮像装置であって、
前記対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、照明装置の照明を制御した状態で、前記撮像装置に撮像させる制御手段と、
前記制御手段による前記撮像装置の制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定する設定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記設定手段により設定された前記撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得する、
撮像装置。
【0094】
(付記9)
対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、照明装置の照明を制御した状態で、撮像装置に撮像させ、
前記制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定し、
前記設定された撮像状態及び光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得する、
撮像制御方法。
【0095】
(付記10)
コンピュータに、
対象に連なる孔部に挿入された挿入部を前記対象とともに、照明装置の照明を制御した状態で、撮像装置に撮像させ、
前記制御に従って前記照明装置で照明せずに撮像された前記挿入部を表す画像の画像データに基づいて、前記撮像装置による撮像状態及び前記照明装置による光量の少なくとも一方を、前記挿入部が第1挿入部である場合と、前記挿入部が前記第1挿入部とは光の反射率が異なる第2挿入部である場合とで、互いに異なるように設定させ、
前記設定された撮像状態及び光量の少なくとも一方に基づいて、前記少なくとも一方に対応する前記撮像装置及び前記照明装置を制御することによって、前記対象の記録用の画像データを取得させる、
プログラム。
【符号の説明】
【0096】
100…撮像制御装置、110…制御部、111…撮像制御部、112…設定部、113…記録部、120…記憶部、200…撮像装置、210…レンズ、220…撮像部、230…発光部、240…操作部、250…表示部、300…膣鏡、301…上部、302…下部、303…要部、400…判定用画像、401…子宮頸部、402…周囲の皮膚、403…入口付近、BL…バスライン
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
この発明は、撮像装置、撮像条件設定方法及びプログラムに関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
特許文献1には、本発光の前に予備発光を行うことが開示されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、適切な露光状態で撮像することができる撮像装置、撮像条件設定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る撮像装置は、生体における孔部の内壁に所定の器具をあてがった状態で前記孔部の奥を前記孔部の外から撮像する場合に、記録用の画像データを取得するときの撮像条件を設定するための予備撮像を実行させる制御手段を備え、前記制御手段は、前記記録用の画像データを取得するときの撮像条件を前記予備撮像で取得した画像データにおける前記孔部の周辺の皮膚表面と前記器具が前記孔部から前記外に食み出ている部分との間のコントラストに基づいて設定する、ことを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、適切な露光状態で撮像することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体における孔部の内壁に所定の器具をあてがった状態で前記孔部の奥を前記孔部の外から撮像する場合に、記録用の画像データを取得するときの撮像条件を設定するための予備撮像を実行させる制御手段を備え、
前記制御手段は、前記記録用の画像データを取得するときの撮像条件を前記予備撮像で取得した画像データにおける前記孔部の周辺の皮膚表面と前記器具が前記孔部から前記外に食み出ている部分との間のコントラストに基づいて設定する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記撮像条件として露光条件を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記露光条件として所定の発光部からの発光量を設定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記予備撮像が実行される際に前記発光部が発光しないように前記予備撮像を実行させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
撮像装置が実行する撮像条件設定方法であって、
生体における孔部の内壁に所定の器具をあてがった状態で前記孔部の奥を前記孔部の外から撮像する場合に、記録用の画像データを取得するときの撮像条件を設定するための予備撮像を実行させる制御処理を含み、
前記制御処理は、前記記録用の画像データを取得するときの撮像条件を前記予備撮像で取得した画像データにおける前記孔部の周辺の皮膚表面と前記器具が前記孔部から前記外に食み出ている部分との間のコントラストに基づいて設定する、
ことを特徴とする撮像条件設定方法。
【請求項6】
コンピュータを、
生体における孔部の内壁に所定の器具をあてがった状態で前記孔部の奥を前記孔部の外から撮像する場合に、記録用の画像データを取得するときの撮像条件を設定するための予備撮像を実行させる制御手段として機能させ、
前記制御手段は、前記記録用の画像データを取得するときの撮像条件を前記予備撮像で取得した画像データにおける前記孔部の周辺の皮膚表面と前記器具が前記孔部から前記外に食み出ている部分との間のコントラストに基づいて設定する、
ことを特徴とするプログラム。