(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149716
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】無電解めっき用シリコンウェハ
(51)【国際特許分類】
C23C 18/16 20060101AFI20241010BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C23C18/16 B
H01L21/68 N
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131756
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2023188610の分割
【原出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】390036364
【氏名又は名称】清川メッキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】本多 正二郎
(72)【発明者】
【氏名】三上 茂久
(72)【発明者】
【氏名】井口 文彰
(72)【発明者】
【氏名】清川 肇
(57)【要約】
【課題】シリコンウェハの底面用樹脂フィルムを容易に切断し、切断された底面用樹脂フィルムを容易に剥離し、無電解めっきを施すときにシリコンウェハの端部でめっき皮膜の形成の防止が可能なシリコンウェハを提供する。
【解決手段】底面に凹部1cを有するシリコンウェハ1のデバイス面1aにデバイス面用樹脂フィルム2が設けられ、シリコンウェハ1の底面に底面用樹脂フィルムが設けられ、デバイス面用樹脂フィルム2がシリコンウェハ1の端部から突出する鍔部2a及び開口部2bを有し、底面用樹脂フィルム3がシリコンウェハ1の端部から突出する鍔部3aを有し、デバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとが一体化され、シリコンウェハ1とデバイス面用樹脂フィルム2と底面用樹脂フィルム3との境界の空間4で底面用樹脂フィルム3にシリコンウェハ1とデバイス面用樹脂フィルム2との非接触面が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス面用樹脂フィルムおよび底面用樹脂フィルムを有するシリコンウェハであって、前記シリコンウェハが底面に凹部が形成されているシリコンウェハであり、前記シリコンウェハのデバイス面に前記デバイス面用樹脂フィルムが設けられ、前記シリコンウェハの底面に形成されている凹部に対応する形状を有する底面用樹脂フィルムが前記シリコンウェハの底面に設けられており、前記デバイス面用樹脂フィルムが、前記シリコンウェハの端部から突出する鍔部およびデバイスを搭載するための開口部を有する樹脂フィルムであり、前記底面用樹脂フィルムが、前記シリコンウェハの端部から突出する鍔部を有する樹脂フィルムであり、前記デバイス面用樹脂フィルムの鍔部と前記底面用樹脂フィルムの鍔部とが一体化されており、前記シリコンウェハと前記デバイス面用樹脂フィルムと前記底面用樹脂フィルムとの境界に空間が形成され、前記境界に形成されている空間において前記底面用樹脂フィルムに前記シリコンウェハと前記デバイス面用樹脂フィルムとの非接触面が形成されていることを特徴とするシリコンウェハ。
【請求項2】
前記デバイス面用樹脂フィルムのデバイス面に無電解めっき層が形成されている請求項1に記載のシリコンウェハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき用シリコンウェハの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、半導体チップなどのデバイスを搭載するために用いられる配線用基板、半導体ウェハなどに好適に使用することができる無電解めっき用シリコンウェハの製造方法および無電解めっき層含有シリコンウェハの製造方法に関する。
【0002】
なお、本発明において、無電解めっき層含有シリコンウェハは、シリコンウェハのデバイス面に無電解めっき層が形成されているシリコンウェハを意味する。
【背景技術】
【0003】
一般に、配線用基板に用いられるシリコンウェハの表面上のめっき皮膜は、シリコンウェハ上に感光性レジストなどの液レジストを塗布し、形成されたレジスト膜上に所定形状を有するマスクを介して露光し、ドライエッチングによって露光されていないレジストを除去した後、無電解めっきを行なうことによって形成されている(例えば、特許文献1の請求項1および段落[0037]参照)。
【0004】
しかし、シリコンウェハに液レジストを塗布したとき、シリコンウェハの端部に液レジストが均一に付着しないことがある。特に、近時のシリコンウェハの薄肉化のもとでは、シリコンウェハの端部がナイフエッジ状になるため、液レジストが当該ナイフエッジ状の端部に付着し難い。このように液レジストがシリコンウェハの端部に均一に付着せずにシリコンウェハが露出しているとき、当該シリコンウェハに無電解めっきを施した際に、露出しているシリコンウェハにめっき皮膜が形成され、当該めっき皮膜が容易にシリコンウェハから剥離して脱離することから、例えば、ダイシングなどの後工程でめっき皮膜がシリコンウェハから剥離し、デバイス面に付着することによって当該デバイス面を汚染することがある。
【0005】
シリコンウェハに無電解めっきを施したときに当該シリコンウェハの端部でめっき皮膜が形成されることを防止することができる無電解めっき用シリコンウェハとして、シリコンウェハのデバイス面の外周面に当該シリコンウェハの端部から突出して鍔部を形成するデバイス面用樹脂フィルムが設けられ、前記シリコンウェハの底面に当該底面全体を覆うとともに当該シリコンウェハの端部から突出して鍔部を形成する底面用樹脂フィルムが設けられ、デバイス面用樹脂フィルムの鍔部と底面用樹脂フィルムの鍔部とが一体化されている無電解めっき用シリコンウェハが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
前記無電解めっき用シリコンウェハは、シリコンウェハに無電解めっきを施したときに当該シリコンウェハの端部でめっき皮膜が形成されることを防止することができるという優れた効果を奏する。
【0007】
しかし、前記無電解めっき用シリコンウェハを用いた場合、デバイス面に無電解めっきを施した後、デバイス面用樹脂フィルムをシリコンウェハから剥離させるために前記鍔部に刃物で切れ目を入れ、当該切れ目からデバイス面用樹脂フィルムをシリコンウェハから剥離させるとき、デバイス面用樹脂フィルムをシリコンウェハから剥離させるのに高度の技術を要する。
【0008】
したがって、近年、無電解めっき用シリコンウェハのデバイス面に無電解めっきを施した後、底面用樹脂フィルムとともにデバイス面用樹脂フィルムを容易にシリコンウェハから剥離することができる無電解めっき用シリコンウェハの製造方法および無電解めっき層含有シリコンウェハの製造方法の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-243897号公報
【特許文献2】実用新案登録第3187573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、無電解めっき用シリコンウェハの底面に貼付されている底面用樹脂フィルムを容易に切断することができ、切断された底面用樹脂フィルムをシリコンウェハから容易に剥離することができるとともに、無電解めっきを施したときにシリコンウェハの端部でめっき皮膜が形成されることを防止することができる無電解めっき用シリコンウェハの製造方法および無電解めっき層含有シリコンウェハの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
(1) デバイス面用樹脂フィルムおよび底面用樹脂フィルムを有するシリコンウェハであって、前記シリコンウェハが底面に凹部が形成されているシリコンウェハであり、前記シリコンウェハのデバイス面に前記デバイス面用樹脂フィルムが設けられ、前記シリコンウェハの底面に形成されている凹部に対応する形状を有する底面用樹脂フィルムが前記シリコンウェハの底面に設けられており、前記デバイス面用樹脂フィルムが、前記シリコンウェハの端部から突出する鍔部およびデバイスを搭載するための開口部を有する樹脂フィルムであり、前記底面用樹脂フィルムが、前記シリコンウェハの端部から突出する鍔部を有する樹脂フィルムであり、前記デバイス面用樹脂フィルムの鍔部と前記底面用樹脂フィルムの鍔部とが一体化されており、前記シリコンウェハと前記デバイス面用樹脂フィルムと前記底面用樹脂フィルムとの境界に空間が形成され、前記境界に形成されている空間において前記底面用樹脂フィルムに前記シリコンウェハと前記デバイス面用樹脂フィルムとの非接触面が形成されていることを特徴とするシリコンウェハ、および
(2) 前記デバイス面用樹脂フィルムのデバイス面に無電解めっき層が形成されている前記(1)に記載のシリコンウェハ
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無電解めっき用シリコンウェハの底面に貼付されている底面用樹脂フィルムを容易に切断することができ、切断された底面用樹脂フィルムをシリコンウェハから容易に剥離することができるとともに、無電解めっきを施したときにシリコンウェハの端部でめっき皮膜が形成されることを防止することができる無電解めっき用シリコンウェハの製造方法および無電解めっき層含有シリコンウェハの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明における無電解めっき用シリコンウェハの面方向の中心部における概略縦断面図である。
【
図2】本発明における無電解めっき用シリコンウェハの他の実施態様の面方向の中心部における概略縦断面図である。
【
図3】本発明における無電解めっき用シリコンウェハの他の実施態様の面方向の中心部における概略縦断面図である。
【
図4】本発明における無電解めっき用シリコンウェハの他の実施態様の面方向の中心部における概略縦断面図である。
【
図5】本発明における無電解めっき層が形成されている無電解めっき用シリコンウェハの面方向の中心部における概略縦断面図である。
【
図6】本発明における無電解めっき層が形成されている無電解めっき用シリコンウェハの底面用樹脂フィルムを切断するときの無電解めっき用シリコンウェハの面方向の中心部における概略縦断面図である。
【
図7】本発明における無電解めっき層が形成されている無電解めっき用シリコンウェハの底面用樹脂フィルムを切断した後、切断された底面用樹脂フィルムとともにデバイス面用樹脂フィルムをシリコンウェハから剥離して除去するときの無電解めっき用シリコンウェハの面方向の中心部における概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)無電解めっき用シリコンウェハの製造方法
本発明の無電解めっき用シリコンウェハの製造方法は、前記したように、シリコンウェハと当該シリコンウェハのデバイス面に設けられるデバイス面用樹脂フィルムと当該シリコンウェハの底面に設けられる底面用樹脂フィルムとを有する無電解めっき用シリコンウェハを製造する方法である。
【0015】
本発明においては、シリコンウェハのデバイス面に当該シリコンウェハの端部から突出する鍔部および当該シリコンウェハにデバイスを搭載するための開口部を有するデバイス面用樹脂フィルムを設けるとともに、前記シリコンウェハの底面に当該シリコンウェハの端部から突出する鍔部を有する底面用樹脂フィルムを設け、前記シリコンウェハの端部とデバイス面用樹脂フィルムと底面用樹脂フィルムとの境界に空間を形成させてデバイス面用樹脂フィルムの鍔部と底面用樹脂フィルムの鍔部とを一体化させるという操作が採られている。
【0016】
本発明の無電解めっき用シリコンウェハの製造方法によれば、前記操作が採られているので、無電解めっき用シリコンウェハの底面に貼付されている底面用樹脂フィルムを容易に切断することができ、切断された底面用樹脂フィルムをシリコンウェハから容易に剥離することができるとともに、無電解めっきを施したときにシリコンウェハの端部でめっき皮膜が形成されることを防止することができるという優れた効果が奏される。
【0017】
以下に本発明の無電解めっき用シリコンウェハの製造方法を図面に基づいて説明するが、本発明は、当該図面に記載されている実施態様のみに限定されるものではなく、本発明の範囲内で他の実施態様を包含していてもよい。
【0018】
図1は、本発明における無電解めっき用シリコンウェハの面方向の中心部における概略縦断面図であるが、本発明は、かかる実施態様のみに限定されるものではない。
【0019】
シリコンウェハ1は、通常、シリコンで構成されているが、必要により炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、ヒ化ガリウムなどの化合物がシリコンウェハ1に含有されていてもよい。
【0020】
シリコンウェハ1の大きさは、無電解めっき用シリコンウェハの用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該無電解めっき用シリコンウェハの用途などに応じて適宜決定することが好ましい。また、シリコンウェハ1の平面形状は、特に限定されないが、通常、円形ないし楕円形であり、好ましくは円形である。
【0021】
シリコンウェハ1の厚さは、無電解めっき用シリコンウェハの用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該無電解めっき用シリコンウェハの用途などに応じて適宜決定することが好ましいが、通常、30~800μm程度である。
【0022】
シリコンウェハ1のデバイス面1aは、シリコンウェハ1の表面(平面)であり、半導体チップなどのデバイスが搭載される面である。シリコンウェハ1のデバイス面1aには、後述するように無電解めっき層(図示せず)が形成される。
【0023】
シリコンウェハ1のデバイス面1aの領域の大きさおよび形状は、無電解めっき用シリコンウェハの用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該無電解めっき用シリコンウェハの用途などに応じて適宜決定することが好ましい。シリコンウェハ1のデバイス面1aは、通常、シリコンウェハ1の端部よりも内側に形成される。デバイス面1aの平面形状としては、例えば、円形、楕円形、正方形などの多角形などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明においては、シリコンウェハ1およびデバイス面1aがいずれも同心円の円形であることが好ましい。
【0024】
シリコンウェハ1の端部1dの縦断面の形状は、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1から容易に剥離させることができるようにする観点から、
図1に示されるように、円弧状であることが好ましい。
【0025】
シリコンウェハ1の底面1bは、
図1に示されるように平面であってもよく、
図2に示されるように凹部1cが形成されていてもよい。なお、
図2は、無電解めっき用シリコンウェハの面方向の中心部における概略縦断面図である。
【0026】
図2に示される凹部1cの平面形状は、特に限定されないが、例えば、シリコンウェハ1の平面形状が円形であるとき、シリコンウェハ1と同心円の円形であることが好ましい。凹部1cが円形である場合、凹部1cの直径dは、特に限定されず、デバイス面1aの直径Dと同一であってもよく、デバイス面1aの直径Dよりも小さくてもよく、デバイス面1aの直径Dよりも大きくてもよい。
【0027】
凹部1cの底面は、通常、平滑であるが、必要により、凹凸、波形などが形成されていてもよい。
【0028】
デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ナイロン1、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂;塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの樹脂からなる樹脂フィルム、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーからなるフィルム、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴムなどの合成ゴムなどからなるゴムシートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0029】
デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3の厚さは、特に限定されないが、通常、それぞれ10~200μm程度であることが好ましい。
【0030】
シリコンウェハ1のデバイス面1aには、シリコンウェハ1の端部1dからデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aが突出するようにデバイス面用樹脂フィルム2が設けられる。
【0031】
デバイス面用樹脂フィルム2は、シリコンウェハ1にデバイスを搭載するための開口部2bおよびシリコンウェハ1の端部1dから突出する鍔部2aを有する。デバイス面用樹脂フィルム2は、シリコンウェハ1の端部1dから突出する鍔部2aを有することから、シリコンウェハ1のデバイス面1aに無電解めっきを施したときにシリコンウェハ1の端部1dでめっき皮膜が形成されることを防止することができる。
【0032】
デバイス面用樹脂フィルム2は、シリコンウェハ1のデバイス面1aに無電解めっきを施したときにシリコンウェハ1の端部1dでめっき皮膜が形成されることを効果的に防止し、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1から容易に剥離させるために、シリコンウェハ1のデバイス面1aを被覆しないが、シリコンウェハ1の端部1dを覆うとともに、シリコンウェハ1にデバイスを搭載するための開口部2bおよびシリコンウェハ1の端部1dから突出する鍔部2aを有することが好ましい。
【0033】
例えば、シリコンウェハ1の平面形状が円形である場合、デバイス面用樹脂フィルム2は、デバイスを搭載するための開口部2bを有する環状の樹脂フィルムであることが好ましい。デバイス面用樹脂フィルム2の直径は、鍔部2aを形成するために、シリコンウェハ1の直径よりも大きくなるように設定される。
図1に示される鍔部2aの長さ(デバイス面用樹脂フィルム2と底面用樹脂フィルム3とが接触している部分の長さ)Xは、デバイス面用樹脂フィルム2の大きさによって異なるので一概には決定することができないが、鍔部2aと鍔部3aとを十分に一体化させるとともに、シリコンウェハ1の変形を防止し、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1から容易に剥離させることができるようにする観点から、1~20mm程度であることが好ましく、3~15mmであることがより好ましい。
【0034】
シリコンウェハ1のデバイス面1aにデバイス面用樹脂フィルム2を設ける方法としては、例えば、デバイス面用樹脂フィルム2として熱可塑性樹脂からなるデバイス面用樹脂フィルム2を用い、デバイス面用樹脂フィルム2をシリコンウェハ1のデバイス面1aに載置し、加熱、加圧または真空引きすることによってデバイス面用樹脂フィルム2をシリコンウェハ1のデバイス面1aに接着させる方法、デバイス面用樹脂フィルム2として粘着面を有するデバイス面用樹脂フィルム2を用い、当該デバイス面用樹脂フィルム2の粘着面とシリコンウェハ1のデバイス面1aとを重ね合わせることにより、デバイス面用樹脂フィルム2をシリコンウェハ1のデバイス面1aに接着させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0035】
シリコンウェハ1の底面1bには、シリコンウェハ1の端部1dから突出する鍔部3aを有する底面用樹脂フィルム3が設けられる。なお、シリコンウェハ1の底面1bは、シリコンウェハ1のデバイス面1aとは反対側の面を意味する。
【0036】
底面用樹脂フィルム3は、
図1および
図3に示されるようにシリコンウェハ1の底面1b全体を被覆するように設けられていてもよく、
図2および
図4に示されるようにシリコンウェハ1の底面1bを完全に被覆するのではなく、シリコンウェハ1の底面1bが露出するように設けられていてもよい。
【0037】
なお、
図3は、本発明における無電解めっき用シリコンウェハの他の実施態様を示し、面方向の中心部における概略縦断面図であり、シリコンウェハ1の底面に凹部1cが形成されている。また、
図4は、本発明における無電解めっき用シリコンウェハの他の実施態様を示し、面方向の中心部における概略縦断面図であり、シリコンウェハ1の底面1bが露出している。
【0038】
底面用樹脂フィルム3として、シリコンウェハ1の端部1dから突出する鍔部3aを有する底面用樹脂フィルム3が用いられる。
【0039】
底面用樹脂フィルム3は、シリコンウェハ1の底面1bを被覆し、シリコンウェハ1の端部1dを覆うとともに、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1から容易に剥離させるために、シリコンウェハ1の端部1dから突出する鍔部3aを有する。
【0040】
例えば、シリコンウェハ1の平面形状が円形である場合、底面用樹脂フィルム3は、シリコンウェハ1と同心円の円形の樹脂フィルムであることが好ましい。
【0041】
シリコンウェハ1および底面用樹脂フィルム3の平面形状が円形である場合、底面用樹脂フィルム3の直径は、鍔部3aを形成するために、シリコンウェハ1の直径よりも大きくなるように設定される。鍔部3aの長さは、デバイス面用樹脂フィルム2の大きさによって異なるので一概には決定することができないが、鍔部2aと鍔部3aとを十分に一体化させるとともに、シリコンウェハ1の変形を防止し、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1から容易に剥離させることができるようにする観点から、鍔部2aの長さXと同様に、1~20mm程度であることが好ましく、3~15mmであることがより好ましい。鍔部3aの長さは、鍔部2aの長さXと同一であることが好ましい。
【0042】
図2および
図4に示されるように、シリコンウェハ1の底面1bが露出している場合、シリコンウェハ1の底面1bの露出している箇所に無電解金属めっきを施してもよい。
【0043】
シリコンウェハ1の底面1bが外部に露出している場合、例えば、シリコンウェハ1の平面形状が円形であるとき、シリコンウェハ1の底面1bの露出している箇所の形状は、シリコンウェハ1と同心円の円形であることが好ましい。この場合、底面用樹脂フィルム3は、シリコンウェハ1を外部に露出させるための開口部(図示せず)を有しており、底面用樹脂フィルム3の外周(図示せず)および開口部の中心がシリコンウェハ1の中心と同一である同心円の環状の樹脂フィルムであることが好ましい。
【0044】
シリコンウェハ1の底面1bに底面用樹脂フィルム3を設ける方法としては、例えば、底面用樹脂フィルム3として熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを用い、底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1の底面1bに載置し、加熱、加圧または真空引きすることによって底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1の底面1bに接着させる方法、底面用樹脂フィルム3として粘着面を有する底面用樹脂フィルム3を用い、底面用樹脂フィルム3の粘着面とシリコンウェハ1の底面1bとを重ね合わせることにより、底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1の底面1bに接着させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0045】
シリコンウェハ1のデバイス面1aにシリコンウェハ1の端部1dからデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aを突出させてデバイス面用樹脂フィルム2を設ける操作、およびシリコンウェハ1の底面1bにシリコンウェハ1の端部から底面用樹脂フィルム3の鍔部3aを突出させて底面用樹脂フィルム3を設ける操作は、いずれを先に行なってもよい。
【0046】
次に、シリコンウェハ1の端部1dとデバイス面用樹脂フィルム2と底面用樹脂フィルム3との境界に空間4を形成させてデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとを一体化させる。このようにシリコンウェハ1の端部1dとデバイス面用樹脂フィルム2と底面用樹脂フィルム3との境界に空間4を形成させる点に、本発明の特徴の1つがある。
【0047】
本発明では、シリコンウェハ1の端部1dとデバイス面用樹脂フィルム2と底面用樹脂フィルム3との境界に空間4を形成させるので、後述するように空間4が存在している箇所で底面用樹脂フィルム3を切断し、デバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとが一体化されている切断片7を形成させ、形成された切断片7を用いて切断されている底面用樹脂フィルム3およびデバイス面用樹脂フィルム2をシリコンウェハ1から容易に剥離して除去することができる。
【0048】
図1において、空間4でシリコンウェハ1およびデバイス面用樹脂フィルム2の双方と非接触である底面用樹脂フィルム3のシリコンウェハ1の直径方向における長さLは、特に限定されない。長さLは、空間4が存在している箇所で底面用樹脂フィルム3を容易に切断することができるようにする観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、シリコンウェハ1の変形を防止し、底面用樹脂フィルム3が切断された箇所で底面用樹脂フィルム3とともにデバイス面用樹脂フィルム2をシリコンウェハ1から容易に剥離することができるようにする観点から、好ましくは8mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。
【0049】
図1において、底面用樹脂フィルム3の上面から空間4の上端部までの高さHは、シリコンウェハ1の厚さなどによって異なるので一概には決定することができないが、底面用樹脂フィルム3のみを切断装置で効率よく切断するとともに、シリコンウェハ1の変形を防止する観点から、好ましくは0.05~1mm、より好ましくは0.1~0.8mm、さらに好ましくは0.2~0.8mmである。
【0050】
デバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとを一体化させる方法としては、例えば、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3としてそれぞれ熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを用い、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1に載置し、デバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとを重ね合せた後、加熱、加圧または真空引きすることによってデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとを一体化させる方法、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3として、少なくともいずれか一方に粘着面を有する樹脂フィルムを用い、当該粘着面を介してデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとを一体化させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0051】
なお、
図1~4に示される無電解めっき用シリコンウェハの実施態様では、デバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aは、底面用樹脂フィルム3の平面状を有する鍔部3aの上面で一体化されているが、本発明は、当該実施態様のみによって限定されるものではなく、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3の双方を屈曲させて鍔部2aと鍔部3aとを接触させて一体化させてもよい。より具体的には、例えば、底面用樹脂フィルム3の上にシリコンウェハ1を載置し、シリコンウェハ1の端部1dを覆うようにシリコンウェハ1の上にデバイス面用樹脂フィルム2を載置し、空間4が形成されるようにデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aおよび底面用樹脂フィルム3の鍔部3aの双方を屈曲させてデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとを一体化させてもよい。また、シリコンウェハ1の端部1dを覆うようにシリコンウェハ1のデバイス面1aにデバイス面用樹脂フィルム2を載置し、シリコンウェハ1の底面1bを覆うようにシリコンウェハ1の底面1bに底面用樹脂フィルム3を載置し、空間4が形成されるように底面用樹脂フィルム3の鍔部3aを屈曲させてデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとを一体化させてよい。以上のようにして無電解めっき用シリコンウェハを製造することができる。
【0052】
(2)無電解めっき層含有シリコンウェハの製造方法
本発明の無電解めっき層含有シリコンウェハの製造方法では、前記で得られた無電解めっき用シリコンウェハのデバイス面に無電解めっきを施し、無電解めっき層を形成させた後、前記空間が存在している箇所で底面用樹脂フィルムを切断し、デバイス面用樹脂フィルムの鍔部と底面用樹脂フィルムの鍔部とが一体化されている切断片を形成させ、形成された切断片を用いて切断されている底面用樹脂フィルムおよびデバイス面用樹脂フィルムをシリコンウェハから剥離して除去することにより、無電解めっき層含有シリコンウェハを製造することができる。
【0053】
以下に本発明の無電解めっき層含有シリコンウェハの製造方法を図面に基づいて説明するが、本発明は、当該図面に記載されている実施態様のみに限定されるものではなく、本発明の範囲内で他の実施態様を包含していてもよい。
【0054】
図5は、本発明において、無電解めっき層6が形成されている無電解めっき用シリコンウェハの面方向の中心部における概略縦断面図である。
図6は、本発明において、無電解めっき層6が形成されている無電解めっき用シリコンウェハの底面用樹脂フィルム3を切断装置5で切断するときの無電解めっき用シリコンウェハの面方向の中心部における概略縦断面図である。
図7は、本発明において、無電解めっき層6が形成されている無電解めっき用シリコンウェハの底面用樹脂フィルム3を切断した後、形成された切断片7で底面用樹脂フィルム3およびデバイス面用樹脂フィルム2をシリコンウェハ1から剥離して除去するときの無電解めっき用シリコンウェハの面方向の中心部における概略縦断面図である。
【0055】
まず、
図1に示されるシリコンウェハ1のデバイス面1aに無電解めっきを施すことにより、
図5に示されるように無電解めっき層6をデバイス面1aで形成させる。
【0056】
無電解めっきは、電気化学的酸化還元反応によって金属を析出させる方法である。本発明においては、無電解めっき法として一般に採用されている無電解めっきの方法を用いることができ、本発明は、無電解めっき法によって限定されるものではない。無電解めっきは、例えば、シリコンウェハ1の表面上にアルミナ、銅などの薄膜をスパッタリングなどによって形成させた後、レジスト開口部の周辺領域に施すことができる。
【0057】
無電解めっき層6を構成する金属としては、例えば、NiP、Au、Pt、Pd、Pd-P、Cu、NiWP、NiB、NiBPなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの金属は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。無電解めっき層6の厚さは、特に限定されないが、通常、0.5~50μm程度である。
【0058】
無電解めっき層6をシリコンウェハ1のデバイス面1aで形成させた後、
図6に示されるように、空間4が存在している箇所で底面用樹脂フィルム3を切断装置5で切断する。例えば、空間4の平面形状が円形である場合、空間4が存在している箇所で底面用樹脂フィルム3を切断装置5で円周状に切断することができる。その際、シリコンウェハ1およびデバイス面用樹脂フィルム2に切断装置5による傷などをつけないようにする観点から、底面用樹脂フィルム3のみを切断装置5で切断し、切断装置5がシリコンウェハ1およびデバイス面用樹脂フィルム2と接触しないようにすることが好ましい。例えば、切断装置5を治具などに固定しておき、移動装置などを用いてシリコンウェハ1を機械的に移動させることにより、空間4が存在している箇所の底面用樹脂フィルム3のみが切断装置5で切断されるようにしてもよい。
【0059】
切断装置5としては、例えば、カッターナイフなどの刃物、レーザー光線などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0060】
底面用樹脂フィルム3を切断装置5で切断したとき、
図7に示されるように、切断された底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aとが一体となっている切断片7が形成される。
【0061】
次に、切断片7をシリコンウェハ1から剥離することにより、切断されている底面用樹脂フィルム3およびデバイス面用樹脂フィルム2をシリコンウェハ1から除去する。切断片7は、例えば、切断片7を手指、ピンセットなどで挟み、矢印A方向に移動させることにより、シリコンウェハ1から容易に除去することができる。
【0062】
なお、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3がシリコンウェハ1の表面上で粘着し、剥離しがたい場合には、例えば、デバイス面用樹脂フィルム2に紫外線を照射したり、加熱したりすることにより、デバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3を軟化または硬化させてシリコンウェハ1の表面から剥がれやすくしてもよい。
【0063】
シリコンウェハ1から切断片7を除去した後、シリコンウェハ1に存在している底面用樹脂フィルム3の端部3bは、シリコンウェハ1の端部1dから突出している。したがって、後工程で底面用樹脂フィルム3の端部3bを手指、ピンセットなどで挟み、引っ張ることにより、底面用樹脂フィルム3をシリコンウェハ1から容易に剥離させることができる。
【0064】
また、シリコンウェハ1に存在しているデバイス面用樹脂フィルム2および底面用樹脂フィルム3は、各樹脂フィルムの表面に粘着ロールを転動させることにより、シリコンウェハ1から容易に剥離することができる。
【0065】
以上説明したように、本発明によれば、シリコンウェハ1のデバイス面1aにデバイス面用樹脂フィルム2を設けるとともに、シリコンウェハ1の底面1bに底面用樹脂フィルム3を設け、シリコンウェハ1の端部1dとデバイス面用樹脂フィルム2と底面用樹脂フィルム3との境界に空間4を形成させてデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aと底面用樹脂フィルム3の鍔部3aとを一体化させ、シリコンウェハ1のデバイス面1aに無電解めっきを施した後、底面用樹脂フィルム3を切断装置5で切断することによって得られた切断片7を剥離するという操作が採られているので、底面用樹脂フィルム3とともにデバイス面用樹脂フィルム2をシリコンウェハ1から容易に除去することができる。
【0066】
また、本発明の無電解めっき用シリコンウェハの製造方法および無電解めっき層含有シリコンウェハの製造方法によれば、シリコンウェハ1の周囲にデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aおよび底面用樹脂フィルム3の鍔部3aが形成されるので、シリコンウェハ1の変形、損傷などを防止することができるとともに、無電解めっきを施したときにシリコンウェハ1の端部1dでめっき皮膜が形成されることを防止することができる。さらに、シリコンウェハ1のデバイス面用樹脂フィルム2の鍔部2aおよび底面用樹脂フィルム3の鍔部3aは、無電解めっきをシリコンウェハ1に施す際に用いられるめっき槽内のキャリアに固定する際の支持体として利用することができる。
【0067】
したがって、本発明で得られた無電解めっき用シリコンウェハおよび当該無電解めっき用シリコンウェハが用いられている無電解めっき層含有シリコンウェハは、例えば、半導体チップなどを搭載するために用いられる配線用基板、半導体ウェハなどを工業的に製造する際に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 シリコンウェハ
1a シリコンウェハのデバイス面
1b シリコンウェハの底面
1c シリコンウェハの底面に形成されている凹部
1d シリコンウェハの端部
2 デバイス面用樹脂フィルム
2a デバイス面用樹脂フィルムの鍔部
2b デバイス面用樹脂フィルムの開口部
3 底面用樹脂フィルム
3a 底面用樹脂フィルムの鍔部
3b 底面用樹脂フィルムの端部
4 空間
5 切断装置
6 無電解めっき層
7 切断片