(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149725
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】歯ブラシ及び歯ブラシの製造方法
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A46B9/04
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024132133
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2020201508の分割
【原出願日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2019221641
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌志
(72)【発明者】
【氏名】山口 恵里奈
(57)【要約】
【課題】
ヘッド部の背面側の刷毛に溜まりがちな水分を除き、清潔に保つことができる歯ブラシを提供し、また、その歯ブラシの製造方法を提供する。
【解決手段】
刷毛4aと、複数の刷毛を束ねた毛束4を植毛するヘッド部2とを備え、ヘッド部は植毛面2aを有するとともに植毛面に植毛穴3が開けられ、毛束4は二つ折れにされ、二つ折れの状態で、二つ折れする部分である折り返し部5を先頭にして植毛穴に植設される歯ブラシ1であって、植毛穴は、ヘッド部の植毛面と逆側の背面2bを貫通し、毛束は、折り返し部を背面2b側の開口において露出し、ヘッド部は、厚さが1.5mm以上、かつ、2.5mm未満の範囲に形成されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刷毛と、複数の前記刷毛を束ねた毛束を植毛するヘッド部とを備え、該ヘッド部は植毛面を有するとともに該植毛面に植毛穴が開けられ、前記毛束は二つ折れにされ、該二つ折れの状態で、前記二つ折れする部分である折り返し部を先頭にして前記植毛穴に植設される歯ブラシであって、
前記植毛穴は、前記ヘッド部の前記植毛面と逆側の背面を貫通し、
前記毛束は、前記折り返し部を前記背面側の開口において露出し、
前記ヘッド部は、厚さが1.5mm以上、かつ、2.5mm未満の範囲に形成される
ことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記植毛穴に打ち込まれる平線を有し、
前記毛束は、前記平線によって二つ折れにされ前記植毛穴に押し込まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記植毛穴はその内側空間が略柱体状に形成され、
前記平線は、前記背面側の一辺である平線下端が、前記略柱体状の、前記背面側に位置する仮想の端面である植毛穴仮想底面よりも前記植毛面側に位置するように配設される
ことを特徴とする請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記植毛穴はその内側空間が略柱体状に形成され、
前記平線は、前記背面側の一辺である平線下端が、前記略柱体状の、前記背面側に位置する仮想の端面である植毛穴仮想底面に内接するように配設される
ことを特徴とする請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記植毛穴は、内径が前記植毛面における開口径よりも小さい縮径部を有する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記縮径部は、その内側空間の、前記背面側に位置する仮想の端面である縮径部仮想底面と、前記植毛穴仮想底面とが一致する
ことを特徴とする請求項5に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記平線は、前記平線下端が、前記縮径部の内側空間の、前記植毛面側に位置する仮想の端面である縮径部仮想上面に外接するように配設される
ことを特徴とする請求項5に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記植毛穴はその内側空間が略柱体状に形成され、
前記毛束は、前記折り返し部が、前記略柱体状の、前記背面側に位置する仮想の端面である植毛穴仮想底面に内接する
ことを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の歯ブラシ。
【請求項9】
貫通する植毛穴を有するとともに厚さが1.5mm以上且つ2.5mm未満の範囲に形成されるヘッド部を有する歯ブラシを準備する工程である歯ブラシ準備工程を含む準備工程と、
複数本の刷毛を束ねた毛束を、平線を当てることにより二つ折りに折り曲げ、前記二つ折れ状態の毛束と前記平線とを共に、前記二つ折れする部分である折り返し部を先頭に前記植毛穴の一方の開口から嵌入し、かつ、前記折り返し部を前記植毛穴の他方の開口において露出させるまで押し込む工程である植設工程とを含む
ことを特徴とする歯ブラシの製造方法。
【請求項10】
前記植設工程の前に、平面に凹状のくぼみ部を設けた平線押込補助具を準備する工程である補助具準備工程を含み、
前記植設工程は、前記他方の開口に前記くぼみ部が重なるように、前記平線押込補助具を前記ヘッド部の前記他方の開口側に装着するステップを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項11】
前記植設工程は、前記折り返し部が前記くぼみ部の底に当接するまで前記平線を挿嵌するステップを含む
ことを特徴とする請求項10に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項12】
前記歯ブラシ準備工程において、前記歯ブラシとして前記植毛穴は内径が前記一方の開口における開口径よりも小さい縮径部を有する歯ブラシを準備し、
前記植設工程において、前記折り返し部を前記縮径部に当接するように押し込む
ことを特徴とする請求項9に記載の歯ブラシの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯ブラシ及び歯ブラシの製造方法に関し、特に植毛穴がヘッド部を貫通する歯ブラシ及び貫通する植毛穴を設けるヘッド部を有する歯ブラシを準備する歯ブラシ準備工程を含む歯ブラシの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刷毛と、複数の前記刷毛を束ねた毛束を植毛するヘッド部とを備え、該ヘッド部は植毛面を有するとともに該植毛面に植毛穴が開けられ、前記毛束は二つ折れにされ、該二つ折れの状態で、前記二つ折れする部分である折り返し部を先頭にして前記植毛穴に植設される歯ブラシがある(特許文献1)。
【0003】
従来の歯ブラシは、前記毛束をU字状に二つ折れにし、その間に挟み込まれた前記平線を前記植毛穴に打ち込むことにより前記複数本の刷毛を束ねた毛束を前記ヘッド部に植設することができる。
【0004】
前記平線は薄い四角形の金属等の板であり、前記植毛穴の入口から挿嵌されるとともに、その相対する二辺の端縁が、前記植毛穴内の内周面に軸心方向の二筋の溝を描くようにして前記植毛穴の途中まで進む。しかし、前記二筋の溝が狭いため、仮に前記平線が前記植毛穴を逆向きに戻ろうとするときでも、前記二辺の端縁と前記溝との間に前記植毛穴の軸方向における摩擦力が生じる。その結果、前記刷毛は前記植毛穴から抜脱することなく前記植設された状態を維持する。
【0005】
また、前記ヘッド部が一定の厚さを有することにより、その厚さに応じた深さの前記植毛穴を開けることができ、前記溝の長さを確保することによって必要な摩擦を生じさせることができる。
【0006】
これらにより、従来の歯ブラシは、前記平線と前記毛束とを前記植毛穴に打ち込むというシンプルな組立て方法を採用しながらも、前記刷毛を前記ヘッド部に確実に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の歯ブラシは植毛穴が底面を有し、そのため、前記植毛穴が、前記ヘッド部の前記植毛面と逆側の背面において閉塞されている。このような構成のため、刷毛は前記ヘッド部の背面側において露出することがない。
【0009】
これに対し、歯ブラシを歯、歯茎などの口腔内の清掃のために用いることにより、使用者の唾液、清掃時の薬液等の水分は前記刷毛を伝って前記植毛穴の底部に溜まることがある。また、歯ブラシを洗浄するための流水、洗浄水等の水分が溜まることもある。これらの水分は、前記毛束が前記植毛穴に嵌まっているため、前記植毛穴を逆流して排出されることが困難である。また、こうした底部側の刷毛は、前記閉塞された植毛穴の内部に収まっているため、エアー、ガス等の気体により乾燥することが容易でなく、また、布、綿、紙等の吸水材によって拭くことが不可能である。
【0010】
その結果、上記の水分が溜まることによって雑菌が繁殖し易く、歯ブラシを清潔に保つことができない。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑み、ヘッド部の背面側の刷毛に溜まりがちな水分を除き、清潔に保つことができる歯ブラシの提供及びその歯ブラシの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は刷毛と、複数の前記刷毛を束ねた毛束を植毛するヘッド部とを備え、該ヘッド部は植毛面を有するとともに該植毛面に植毛穴が開けられ、前記毛束は二つ折れにされ、該二つ折れの状態で、前記二つ折れする部分である折り返し部を先頭にして前記植毛穴に植設される歯ブラシであって、前記植毛穴は、前記ヘッド部の前記植毛面と逆側の背面を貫通し、前記毛束は、前記折り返し部を前記背面側の開口において露出することを特徴とする歯ブラシを提供するものである。そして、このときの前記ヘッド部は、厚さが1.5mm以上、かつ、2.5mm未満の範囲に形成されてもよい。
【0013】
すなわち、本発明の歯ブラシにおいて、毛束は折り返し部を背面側の開口において露出するため、歯ブラシを口腔内の清掃のために用い、また、洗浄するときに、前記露出する毛束に布、綿、紙等の吸水材を当てることにより、唾液、薬液、流水、洗浄水等の水分を拭き取ることができる。このように水分を除くことによって、歯ブラシを清潔に保つことができる。
【0014】
また、前記毛束が前記植毛穴の内壁と接する際、前記毛束がUターンする前記折り返し部が前記内壁と接しないのに対して、前記毛束は、前記折り返し部の植毛面側に連続する略柱状の束であるストレート部において前記内壁と接する。仮に外力によって前記毛束が前記植毛穴を逆向きに退出しようとするときでも、このストレート部において前記植毛穴の軸方向における前記毛束と前記内壁との間に摩擦力が生じて前記毛束が留まろうとする。
【0015】
そこで、本発明の歯ブラシは前記折り返し部を背面側において露出するような構成のため、その分、この露出がしていない歯ブラシに比べ、前記ストレート部において前記内壁と接する面積が大きい。また、仮に前記ヘッド部の板厚をより小さく構成する場合でも、前記摩擦力が大きく、前記毛束は確実に植設された位置に留まることができる。そして、前記毛束が植設された位置に留まることにより、いつまでも前記露出する毛束に吸水材を当てることができ、歯ブラシを清潔に保つことができる。しかも、刷毛が前記植毛穴から抜脱することを低減し、この歯ブラシを長く使用することができる。
【0016】
ところで、ヘッド部の板厚を小さくすることにより、歯ブラシは、より奥歯に届きやすく、口腔内を清掃し易いことが知られている。そのため、本発明の歯ブラシによって口腔内を清掃し易く、しかも、長く使用することができる。
【0017】
(2)また、前記植毛穴に打ち込まれる平線を有し、前記毛束は、前記平線によって二つ折れにされ前記植毛穴に押し込まれてもよい。
【0018】
すなわち、平線は前記植毛穴の入口から挿嵌されるとともに、その対向する二辺の端縁が、前記植毛穴内の内周面に軸心方向の二筋の溝を描くようにして前記植毛穴の中を進む。しかし、前記二筋の溝が浅く、また溝の幅が狭いため、仮に前記平線が前記植毛穴を逆向きに戻ろうとするときでも、前記二辺の端縁と前記溝との間に前記植毛穴の軸方向における摩擦力が生じる。その結果、前記刷毛は前記植毛穴から抜脱することなく前記植設された状態を維持する。
【0019】
このとき、例えば、同じ板厚の二種類のヘッド部であって、一方のヘッド部において前記折り返し部が露出せず、また、他方のヘッド部において前記折り返し部が露出するときは、前記他方のヘッド部のほうが前記毛束をより深い位置で二つ折れにすることができ、前記一方のヘッド部に前記平線を挿嵌することのできる深さよりも前記他方のヘッド部の同じく深さのほうが大きい。このように、本発明の歯ブラシは、ヘッド部において前記折り返し部を露出するような構成であることにより、前記平線をより深く押し進めることができ、前記二辺の端縁と前記溝との間の摩擦が大きい。
【0020】
これまで述べた様にこれらの摩擦を比較的大きくできることにより、その分、仮に前記ヘッド部の板厚をより小さく構成する場合でも、本発明の歯ブラシは必要な大きさの摩擦を生じさせることができる。
【0021】
そして、ヘッド部の板厚を小さくすることにより、歯ブラシは、より奥歯に届きやすく、口腔内の清掃し易い。そのため、本発明の歯ブラシによって、口腔内を清掃し易く、しかも、長く使用することができる。
【0022】
(3)また、前記植毛穴はその内側空間が略柱体状に形成され、前記平線は、前記背面側の一辺である平線下端が、前記略柱体状の仮想の前記背面側端面である植毛穴仮想底面よりも前記植毛面側に位置するように配設されてもよい。
【0023】
すなわち、平線の一辺が植毛穴の仮想底面よりも植毛面側に位置するように構成されることにより、前記平線は植毛穴仮想底面よりもヘッド部の背面側からはみ出ることがない。そのため、平線が前記ヘッド部からはみ出ることによって使用者の口腔内を傷付けるような事故を防ぐことができる。
【0024】
こうして、本発明の歯ブラシは、平線による口腔内のケガを防ぎつつ、長く清潔に使用することができる。
【0025】
(4)また、前記植毛穴はその内側空間が略柱体状に形成され、前記平線は、前記背面側の一辺である平線下端が、前記略柱体状の仮想の前記背面側端面である植毛穴仮想底面に内接するように配設されてもよい。
【0026】
すなわち、平線が植毛穴仮想底面に内接するように構成されることにより、前記平線は前記植毛穴仮想底面よりもヘッド部の背面側からはみ出ることがない。そのため、平線が前記ヘッド部からはみ出ることによって使用者の口腔内を傷付けるような事故を防ぐことができる。
【0027】
それと同時に、前記植毛穴仮想底面に内接するため、前記平線を前記植毛穴の最も深い位置に配置することができる。そのため、そのぶん、前記平線と前記溝との摩擦が大きく、前記ストレート部が長く、かつ、前記毛束が前記内壁により強く密着することにより、前記ヘッド部の板厚が小さいときでも、前記毛束はより確実に植設された位置に留まることができ抜脱することがない。
【0028】
こうして、本発明の歯ブラシは、平線による口腔内のケガを防ぎつつ、長く清潔に使用することができる。
【0029】
(5)また、前記ヘッド部の板厚が1.5mm以上、かつ、4.0mm未満の範囲に形成されてもよい。
【0030】
本発明の歯ブラシは、ヘッド部の板厚を小さく構成する場合でも毛束が確実に植設された位置に留まる。
【0031】
従来、薄型の歯ブラシにおけるヘッド部の板厚は約2.5mmと言われる。ところで、歯ブラシについては、日本工業標準調査会(現・日本産業標準調査会)が平成7年3月1日に改正した『歯ブラシ JIS S 3016-1995』の解説によると、平成2年6月1日に日本工業標準調査会標準会議議決に基づき、毛止め強度が「最大引張力が8N以上であること」が規定されている。そこで、発明者は、本発明の歯ブラシの場合、実験によりヘッド部の板厚が1.5mmほどの薄いものであっても、毛止め強度が上記の規定値である8Nよりも大きい15N以上の値を示すことを見出した。また、ヘッド部の板厚が上記の1.5mm以上であり、かつ、4.0mm未満の場合であっても、上記の15N以上の値を示すことを見出した。さらに、同じく実験によりヘッド部の板厚が4.0mm以上であり、かつ、5.0mm以下の場合であっても、植毛穴が一部の小径なものであるときに毛止め強度が低減するものの、それでも上記の15N以上の値を示すことを見出した。
【0032】
このように、本発明の歯ブラシは、ヘッド部の板厚を1.5mm以上、かつ、5.0mm以下の範囲に設定することが可能であるとともに、同じく板厚を1.5mm以上、かつ、4.0mm未満の範囲に形成されることにより、歯ブラシとしてより望ましい毛止め強度を十分に有することができる。
【0033】
(6)また、前記植毛穴は、内径が前記植毛面における開口径よりも小さい縮径部を有してもよい。
【0034】
すなわち、植毛の際、毛束は、植毛穴の縮径部により妨げられ、不必要に背面側に押し込まれることがない。そのため、本発明の歯ブラシは、前記毛束が所定の深さに植設され、容易に製作することができる。また、使用中においても前記毛束が前記背面側へ抜けてしまうことがなく、刷毛が前記植毛穴から抜脱しないため、この歯ブラシを長く使用することができる。
【0035】
(7)また、前記縮径部は、その内側空間の仮想の前記背面側端面である縮径部仮想底面と、前記植毛穴仮想底面とが一致してもよい。
【0036】
すなわち、縮径部仮想底面と植毛穴仮想底面とが一致するので、縮径部は植毛穴の背面側に偏って設けられている。そして、毛束の押し込み深さが前記縮径部により規制されることから、前記縮径部が植毛面寄りに設けられる場合に比べて、前記毛束はより深く押し込まれ、ストレート部において前記植毛穴の内壁と接する面積が大きい。そのため、前記ストレート部と前記内壁との間で生じる摩擦力が大きく、前記毛束は前記植毛面側から抜脱する虞が小さい。
【0037】
また、平線をより深く挿嵌することができるため、前記平線と前記植毛穴内の溝との間で生じる摩擦力が大きく、前記毛束を抑える前記平線が前記植毛面側に戻ってしまうことが抑えられる。これによっても、前記毛束は前記植毛面側から抜脱する虞が小さい。
【0038】
(8)また、前記平線は、前記平線下端が、前記縮径部の内側空間の仮想の前記植毛面側端面である縮径部仮想上面に外接するように配設されてもよい。
【0039】
すなわち、平線は縮径部仮想上面に外接するので、それ以上、縮径部にまで進入して挿嵌されることがない。そのため、前記平線を、より大きな圧力を掛けて、内径が植毛面における開口径よりも小さい縮径部に嵌める必要がなく、本発明の歯ブラシは容易に製作することができる。
【0040】
(9)また、前記植毛穴はその内側空間が略柱体状に形成され、前記毛束は、前記折り返し部が、前記略柱体状の仮想の前記背面側端面である植毛穴仮想底面に内接してもよい。
【0041】
すなわち、毛束は折り返し部が植毛穴仮想底面に内接するので、それ以上、背面側に突出することがない。そのため、ヘッド部の前記背面側を作業台等の平面に当接させたような状態で前記毛束を植設しても、本発明の歯ブラシは、前記のように突出する部分が前記平面と干渉することがない。こうして、歯ブラシを容易に製作することができる。
【0042】
(10)本発明は貫通する植毛穴を有するヘッド部を有する歯ブラシを準備する工程である歯ブラシ準備工程を含む準備工程と、複数本の刷毛を束ねた毛束を、平線を当てることにより二つ折りに折り曲げ、前記二つ折れ状態の毛束と前記平線とを共に、前記二つ折れする部分である折り返し部を先頭に前記植毛穴の一方の開口から嵌入し、かつ、前記折り返し部を前記植毛穴の他方の開口において露出させるまで押し込む工程である植設工程とを含むことを特徴とする歯ブラシの製造方法を提供するものである。そして、このときの前記ヘッド部は、厚さが1.5mm以上且つ2.5mm未満の範囲に形成されてもよい。
【0043】
すなわち、本発明の歯ブラシの製造方法によって、歯ブラシは、毛束を他方の開口において露出するため、口腔内の清掃のために用い、また、洗浄するときに、前記露出する毛束に布、綿、紙等の吸水材を当てることにより、唾液、薬液、流水、洗浄水等の水分を拭き取ることができる。このように水分を除くことによって、歯ブラシを清潔に保つことができる。
【0044】
(11)また、前記植設工程の前に、平面に凹状のくぼみ部を設けた平線押込補助具を準備する工程である補助具準備工程を含み、前記植設工程は、前記他方の開口に前記くぼみ部が重なるように、前記平線押込補助具を前記ヘッド部の前記他方の開口側に装着するステップを含んでもよい。
【0045】
すなわち、本発明の歯ブラシの製造方法は、平線押込補助具のくぼみ部と植毛穴の他方の開口とが重なるため、前記他方の開口から突出する前記折り返し部を前記くぼみ部内に挿入できる。これにより、前記平線押込補助具を介して歯ブラシを作業台、装置等の平面上に載置して前記毛束と前記平線とを前記植毛穴に押し込むとき、このような作業台などが前記折り返し部の突出の邪魔にならず、効率良く製造することができる。
【0046】
(12)また、前記植設工程は、前記折り返し部が前記くぼみ部の底に当接するまで前記平線を挿嵌するステップを含んでもよい。
【0047】
すなわち、毛束の折り返し部が平線押込補助具のくぼみ部の底に当接するため、前記くぼみ部の深さによって、前記折り返し部が前記他方の開口から突出する長さを規制することができる。これにより、前記突出する長さを、布、綿、紙等の吸水材によって唾液、薬液、流水、洗浄水等の水分を拭き取るために十分な長さに設定するとともに、作業、使用、収納、美感等のために長過ぎないものに設定することが可能となる。しかも、前記平線と前記溝との摩擦が大きく、前記ストレート部が長く、かつ、前記毛束が前記内壁により強く密着することにより、前記ヘッド部の板厚が小さいときでも、前記毛束はより確実に植設された位置に留まることができ抜脱することがない。こうして、前記水分を除き、清潔に保つことができ、かつ、長く使用することができる歯ブラシを製造することができる。
【0048】
(13)また、前記歯ブラシ準備工程において、前記歯ブラシとして前記植毛穴は内径が前記一方の開口における開口径よりも小さい縮径部を有する歯ブラシを準備し、前記植設工程において、前記折り返し部を前記縮径部に当接するように押し込んでもよい。
【0049】
すなわち、植毛の際、折り返し部を縮径部に当接するように押し込むため、毛束は、前記縮径部に妨げられ、それ以上に他方の開口側に押し込まれることがない。そのため、本発明の歯ブラシの製造方法によって、前記毛束が所定の深さに植設され、歯ブラシを容易に製作することができる。また、使用中においても前記毛束が前記背面側へ抜けてしまうことがなく、刷毛が前記植毛穴から抜脱しないため、この歯ブラシを長く使用することができる。
【発明の効果】
【0050】
このように、ヘッド部の背側の刷毛に溜まりがちな水分を除き、清潔に保つことができる歯ブラシの提供及びその歯ブラシの製造方法の提供をすることができる。また、前記ヘッド部の板厚を小さくすることにより、口腔内を清掃し易い歯ブラシの提供及びその歯ブラシの製造方法の提供をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシ1の図を表す。(b)
図1(a)の歯ブラシ1を左側から視た図を表す。
【
図2】(a)本発明の第1の実施形態に係るヘッド部2の正面部分断面図を表す。(b)同じくヘッド部2の右側面部分断面図を表す。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシ1の斜視図を表す。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る植毛穴3の配置を表した説明図を表す。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシの製造方法S1000を示すフロー図を表す。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る平線押込補助具8の正面部分断面図を表す。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る平線押込補助具8がヘッド部2に装着された状態を示す説明図を表す。
【
図8】(a)本発明の第2の実施形態に係るヘッド部102の正面部分断面図を表す。(b)同じくヘッド部102の右側面部分断面図を表す。
【
図9】(a)本発明の第2の実施形態に係る植毛穴103の植毛穴円柱状空間Cの模式図を表す。(b)同じく縮径部円柱状空間Eの模式図を表す。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る歯ブラシの製造方法S1100を示すフロー図を表す。
【
図11】(a)本発明の第3の実施形態に係るヘッド部112の正面部分断面図を表す。(b)同じくヘッド部112の右側面部分断面図を表す。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る歯ブラシの製造方法S1200を示すフロー図を表す。
【
図13】(a)本発明の第4の実施形態に係るヘッド部12の正面部分断面図を表す。(b)同じくヘッド部12の右側面部分断面図を表す。
【
図14】本発明の第4の実施形態に係る平線押込補助具8がヘッド部12に装着された状態を示す説明図を表す。
【
図15】本発明の第4の実施形態に係る歯ブラシ11の毛止め強度を測定した結果を示す表を表す。
【
図16】本発明の第4の実施形態に係る歯ブラシ11の毛止め強度を測定した結果を示すグラフを表す。
【
図17】(a)本発明の第5の実施形態に係るヘッド部22の正面部分断面図を表す。(b)同じくヘッド部22の右側面部分断面図を表す。
【
図18】本発明の第5の実施形態に係る歯ブラシの製造方法S2000を示すフロー図を表す。
【
図19】本発明の第5の実施形態に係る平線押込補助具8がヘッド部22に装着された状態を示す説明図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[第1の実施形態]
図1~
図7は、本発明の第1の実施形態を例示している。図において1が歯ブラシである。
【0053】
歯ブラシ1のヘッド部2は植毛面2aを有し、植毛面2aに丸穴である植毛穴3が複数開けられている。各植毛穴3は、
図1(a)の例が示すように規則正しく配置されている。植毛穴3は
図2(a)(b)が示すように植毛面2aから、ヘッド部2に対して植毛面2aの逆側の面である背面2bまでを貫通する。
図3は、
図1(a)と同様に毛束4が植毛される前の状態の歯ブラシ1を示し、かつ、歯ブラシ1を斜めから表わした斜視図である。歯ブラシ1は飽和ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール樹脂(POM)などの合成樹脂により形成される。
【0054】
それぞれの植毛穴3に、図示しない歯、歯茎等の口腔M内を清掃するための複数の毛束4が植毛され、各毛束4は、その長手方向に揃えられた一本一本の刷毛4aが束ねられて形成される。
図1(a)の歯ブラシ1を左側から視た
図1(b)には、見やすくするため一束の毛束4だけが実線で示され、残りの毛束4が集まった状態で二点鎖線(想像線)で示されている。使用者は、植毛面2a側の刷毛4aを用いて口腔M内を清掃する。
【0055】
図4は植毛穴3の配置を表した説明図である。毛束4が集まった状態は
図1(b)と同様に二点鎖線により示す。
【0056】
各毛束4は二つ折れされ、この二つ折れする部分である折り返し部5を先頭にしてそれぞれの植毛穴3に押し込まれて植設される。
図2(a)は、毛束4が偏平な平線6によって二つ折れにされ植毛穴3に押し込まれた状態を、平線6の偏平な面の面方向から視た正面部分断面図である。また、
図2(b)は平線6の偏平な右側の面に向かって視たヘッド部2の右側面部分断面図である。正面部分断面図は平線6の横断面を含む断面図であり、また、右側面部分断面図は平線6の縦断面を含む断面図である。符号、引出線等を見易くするためハッチングは省略する。なお、
図1(a)は各毛束4の植設及び平線6の打ち込みの前の状態を示す。また、
図1(b)及び
図4において平線6の記載を省略する。
【0057】
平線6は銅、真鍮等の材質により形成され、合成樹脂のヘッド部2に対して打ち込まれることができる程の硬さを有する。
【0058】
図2(a)において、矢印U、矢印D、矢印L及び矢印Rはそれぞれ上側(上向き)、下側(下向き)、左側(左向き)及び右側(右向き)を示す。また、
図2(b)において、上記の矢印U及び矢印D以外に、矢印F及び矢印Bはそれぞれ前側(前向き)及び後側(後向き)を示す。
【0059】
各毛束4は、折り返し部5の植毛面2a側に連続する略柱状の束であるストレート部7を含む。ここで、ストレート部7は、
図2(a)が示すように、上下方向において折り返し部5の上側端から植毛面2aまでの範囲を指す。なお、図示されていないが、各毛束4を構成する複数の刷毛4aは、折り返し部5において正面視平線6の下側端である平線下端6aを取り囲む曲線状に配置され、また、ストレート部7において略上下方向の略直線状に配置される。
【0060】
このとき、毛束4は植毛穴3に押し込まれるため、ストレート部7が植毛穴3の内壁である植毛穴壁3aと密着する。
【0061】
折り返し部5の一部は、背面2b側の開口においてヘッド部2から突出して露出する。折り返し部5の下端が背面2bよりも下側に位置し、かつ、折り返し部5の上端が背面2bよりも上側に位置する。
【0062】
平線6は平線下端6aが背面2bよりも上側に位置するように配置される。すなわち、丸穴である植毛穴3の内側空間が略円柱状の植毛穴円柱状空間Cに形成され、この植毛穴円柱状空間Cが、仮想の背面2b側端面である植毛穴仮想底面Cbを有するのであって、平線6は、平線下端6aがこの植毛穴仮想底面Cbよりも植毛面2a側に位置するように配設される。
【0063】
平線6は下向きに打ち込まれ、植毛穴3の入口から挿嵌されるとともに、その前後方向に対向する二辺の端縁6b,6bが植毛穴3内の内周面に軸心方向の二筋の溝2c,2cを描くようにして植毛穴3の途中まで進む。しかし、二筋の溝2c,2cが浅く、また溝2c,2cの幅が狭いため、仮に平線6が植毛穴3を上向きに戻ろうとするときでも、二辺の端縁6b,6bと溝2c,2cとの間に植毛穴3の軸方向における摩擦力が生じる。その結果、各刷毛4aは植毛穴3から抜脱することなく植設された状態を維持する。
【0064】
これらのように、歯ブラシ1は、毛束4を背面2b側において露出するため、歯ブラシ1を口腔M内の清掃のために用い、また、洗浄するときに、前記露出する毛束4に布、綿、紙等の吸水材を当てることにより、唾液、薬液、流水、洗浄水等の水分を拭き取ることができる。このように水分を除くことによって、歯ブラシ1を清潔に保つことができる。
【0065】
また、毛束4が植毛穴壁3aと接する際、折り返し部5が植毛穴壁3aと接しないのに対して、毛束4は、ストレート部7において植毛穴壁3aと接する。仮に外力によって毛束4が植毛穴3を上向きに退出しようとするときでも、ストレート部7において植毛穴3の軸方向における毛束4と植毛穴壁3aとの間に摩擦力が生じて毛束4が留まろうとする。
【0066】
そして、本発明の歯ブラシ1は折り返し部5が背面2b側においてヘッド部2から露出するため、その分、この露出がしていない歯ブラシに比べ、ストレート部7において植毛穴壁3aと接する面積が大きい。そのため、前記摩擦力が比較的大きく、毛束4は確実に植設された位置に留まることができる。
【0067】
しかも、露出がしていない歯ブラシに比べ、平線6を挿嵌することのできる深さがより大きい。そのため、平線6をより深く押し進めることができ、二辺の端縁6b,6bとそれぞれの溝2c,2cとの間の摩擦が大きい。
【0068】
さらに、平線下端6aが植毛穴仮想底面Cbよりも植毛面2a側に位置するように構成されることにより、平線6は植毛穴仮想底面Cbよりも下向けにはみ出ることがない。そのため、平線6がヘッド部2からはみ出ることによって使用者の口腔M内を傷付けるような事故を防ぐことができる。
【0069】
[製造方法]
図5において、S1000は本発明の第1の実施形態における歯ブラシの製造方法を例示している。
【0070】
本発明の歯ブラシ1の製造方法S1000は、準備工程S1010、植設工程S1020の順にこれらの工程を含む。
【0071】
準備工程S1010は、歯ブラシ準備工程S1011及び補助具準備工程S1012を含む。歯ブラシ準備工程S1011において、歯ブラシ1を準備し、歯ブラシ1のヘッド部2には植毛穴3を設ける。歯ブラシ1は、ヘッド部2とヘッド部2に連続するハンドル部とが例えば射出成形により成型される。
【0072】
一方で、補助具準備工程S1012において、
図6の正面部分断面端面図に示すような、平面状のヘッド部受け面8aに凹状のくぼみ部9を複数設けた平線押込補助具8を準備する。平線押込補助具8において各くぼみ部9は図の上向きに開口する。
【0073】
各くぼみ部9はヘッド部受け面8aから視て略円形を成し、ヘッド部受け面8aの平面部との境界であるくぼみ縁9aの直径が各植毛穴3の直径と一致する。平線押込補助具8における各くぼみ部9の配置は、ヘッド部2における植毛穴3の左右方向及び前後方向における配置と一致する。平線押込補助具8は平線6よりも硬い材料により製作され、例えば、平線6が真鍮により形成されるとき、真鍮よりも硬い金属により製作される。
【0074】
植設工程S1020は、補助具装着ステップS1021、押込ステップS1022、補助具取外ステップS1023の順にこれらの工程を含む。
【0075】
補助具装着ステップS1021において、ヘッド部2の背面2bと平線押込補助具8のヘッド部受け面8aとが接触するように平線押込補助具8をヘッド部2に装着する。このとき、背面2bとヘッド部受け面8aとは、背面2bの平面と各植毛穴3の背面2b側開口との境界である背面側開口縁3bと、くぼみ縁9aとが重なり合うように配設される。これにより、各植毛穴3と、対応する各くぼみ部9とは連通する。
【0076】
押込ステップS1022において、複数本の刷毛4aを束ねた毛束4を、平線6を当てることにより二つ折りに折り曲げ、二つ折れ状態の毛束4と平線6とを共に、前記二つ折れする部分である折り返し部5を先頭に植毛穴3の植毛面2a側開口から嵌入し、かつ、折り返し部5を植毛穴3の背面2b側開口を通してヘッド部2から突出するまで押し込む。
【0077】
このとき、平線6は下向きに打ち込まれ、二辺の端縁6b,6bが二筋の溝2c,2cを描くようにして植毛穴3の途中まで進む。また、
図7が平線押込補助具8がヘッド部2に装着された状態を表し、折り返し部5の先端は、この
図7が示すようにくぼみ部9の内側まで進む。
【0078】
補助具取外ステップS1023において、ヘッド部受け面8aが背面2bから離れるように、ヘッド部2から平線押込補助具8を取り外す。補助具取外ステップS1023を経て、毛束4を背面2b側においてヘッド部2から露出するように刷毛4aが植設された歯ブラシ1が完成する。
【0079】
このように、歯ブラシ1は、植毛面2a側の刷毛4aを用いて口腔M内を清掃するとともに、毛束4が背面2b側においてヘッド部2から突出して露出するため、洗浄時に前記突出する毛束4に布、綿、紙等の吸水材を当てることにより、唾液、薬液、流水、洗浄水等の水分を拭き取ることができる。このように水分を除くことによって、歯ブラシ1を清潔に保つことができる。
【0080】
また、平線押込補助具8のくぼみ部9と植毛穴3の背面2b側開口とが重なり、植毛穴3とくぼみ部9とが連通するため、背面2b側開口から突出する折り返し部5をくぼみ部9内に挿入できる。これにより、平線押込補助具8を介して歯ブラシ1を作業台、装置等の平面上に載置して毛束4と平線6とを植毛穴3に押し込むとき、このような作業台などが折り返し部5の突出の邪魔にならず、歯ブラシ1を効率良く製造することができる。
【0081】
[第2の実施形態]
図8~
図10は、本発明の第2の実施形態を例示する。図において101が歯ブラシである。
【0082】
歯ブラシ101のヘッド部102は植毛面102aを有し、植毛面102aに丸穴である植毛穴103が複数開けられている。植毛穴103は
図8(a)(b)が示すように植毛面102aから、ヘッド部102に対して植毛面102aの逆側の面である背面102bまでを貫通する。
【0083】
植毛穴103は、内径が植毛面102aにおける開口径よりも小さい縮径部103cを有する。縮径部103cは、上端が環状の段差を形成し、この段差の内側における縁である段差縁103dを形成する。段差縁103dは平面視において円形を描く。そして、縮径部103cが占める内側空間が、段差縁103dと背面側開口縁103bとの間における略円柱状の縮径部円柱状空間Eを形成する。
【0084】
図9(a)(b)は、全体が植毛穴103を示し、植毛穴円柱状空間Cと縮径部円柱状空間Eとのそれぞれの正面断面図を模式的に表わす。
図9(a)は植毛穴円柱状空間Cを示し、
図9(b)の斜線を施した部分は縮径部円柱状空間Eを示す。ここで、植毛穴円柱状空間Cは、仮想の背面102b側端面である植毛穴仮想底面Cbを有する。縮径部円柱状空間Eは、仮想の植毛面102a側端面である縮径部仮想上面Ea及び仮想の背面102b側端面である縮径部仮想底面Ebを有する。
【0085】
これらの各仮想底面Cb,Ebは、縮径部103cが植毛穴103の背面102b側に偏って設けられているので、いずれも植毛穴103の最下部に位置する。換言すれば、背面102b寄りに位置する縮径部103cにおいて縮毛穴円柱状空間Cと縮径部円柱状空間Eとが一致するので、植毛穴仮想底面Cbと縮径部仮想底面Ebとは一致する。
【0086】
平線106は、
図8(a)(b)が示すように、平線下端106aが植毛穴仮想底面Cbよりも植毛面102a側に位置するように配設される。また、平線106は、平線下端106aが縮径部仮想上面Eaに外接して、縮径部円柱状空間Eに対して下向きに接するように配設される。そして、押し込まれた折り返し部105が段差縁103dに当接し、毛束104の植設が完了する。
【0087】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0088】
こうした構成により、歯ブラシ101は、植毛の際、毛束104の折り返し部105が、縮径部103cの段差縁103dにより妨げられ、不必要に背面102b側に押し込まれることがない。そのため、毛束104が所定の深さに植設され、容易に製作することができる。また、使用中においても毛束104が背面102b側へ抜けてしまうことがなく、刷毛104aが前記植毛穴103から抜脱しないため、この歯ブラシを長く使用することができる。
【0089】
また、縮径部103cが植毛穴103の背面102b側に偏って設けられており、毛束104の押し込み深さがこの縮径部103cにより規制されることから、毛束104は、縮径部103cが植毛面102a寄りに設けられる場合に比べて深く押し込まれる。そのため、ストレート部107において植毛穴壁103aと密着する面積が大きく、ストレート部107と植毛穴壁103aとの間で生じる摩擦力が大きい。これにより、毛束104は植毛面102a側から抜脱する虞が小さい。
【0090】
さらに、平線106を深く挿嵌することができるため、平線106と植毛穴103内の溝102c,102cとの間で生じる摩擦力が大きく、毛束104を抑える平線106が植毛面102a側に戻ってしまうことが抑えられる。これによっても、毛束104は植毛面102a側から抜脱する虞が小さい。
【0091】
そして、平線106は縮径部仮想上面Eaに外接するので、それ以上、縮径部103cにまで進入して挿嵌されることがない。そのため、平線106を、より大きな圧力を掛けて縮径部103cに嵌める必要がなく、歯ブラシ101は容易に製作することができる。他方で、平線106が縮径部仮想上面Eaに外接せず、縮径部仮想上面Eaより上方で留まる場合に比べて、平線106をより深く押し込むことになる。このことからも、毛束104は植毛面102a側から脱抜する虞が小さい。
【0092】
[製造方法]
図10において、S1100は本発明の第2の実施形態における歯ブラシの製造方法を例示している。
【0093】
本発明の歯ブラシ101の製造方法S1100は、準備工程S1110、植設工程S1120の順にこれらの工程を含む。
【0094】
準備工程S1110は、歯ブラシ準備工程S1111及び補助具準備工程S1112を含む。歯ブラシ準備工程S1111において、歯ブラシ101を準備し、歯ブラシ101のヘッド部102には植毛穴103を設ける。歯ブラシ101は、ヘッド部102とヘッド部102に連続するハンドル部とが例えば射出成形により成型される。
【0095】
このとき、植毛穴103は、内径が植毛面102aにおける開口径よりも小さい縮径部103cを有する。縮径部103cは、上端が環状の段差を形成し、この段差の内側における縁である段差縁103dを形成する。段差縁103dは平面視において円形を描く。
【0096】
次に、植設工程S1120は、補助具装着ステップS1121、押込ステップS1122、補助具取外ステップS1123の順にこれらの工程を含む。
【0097】
押込ステップS1122において、複数本の刷毛104aを束ねた毛束104を、平線106を当てることにより二つ折りに折り曲げ、二つ折れ状態の毛束104と平線106とを共に、前記二つ折れする部分である折り返し部105を先頭に植毛穴103の植毛面102a側開口から嵌入し、かつ、折り返し部105を植毛穴103の背面102b側開口を通してヘッド部102から突出するまで押し込む。
【0098】
押込ステップS1122は折り返し部当接ステップS1122aを含む。押し返し部当接ステップS1122aによって、毛束104は、植毛穴103を進んだ結果折り返し部105が段差縁103dに当接し、この段差縁103dに邪魔されてそれ以上に進まずに植設が完了する。
【0099】
その他の工程及びステップは、第1の実施形態における歯ブラシの製造方法と共通する。
【0100】
こうした製造方法により、植毛の際、折り返し部105を縮径部103cに当接するように押し込むため、毛束104は、縮径部103cに妨げられ、それ以上に背面102b側に押し込まれることがない。そのため、毛束104が所定の深さに植設され、歯ブラシ101を容易に製作することができる。また、使用中においても毛束104が背面102b側へ抜けてしまうことがなく、刷毛104aが植毛穴103から抜脱しないため、この歯ブラシ101を長く使用することができる。
【0101】
[第3の実施形態]
図11及び
図12は、本発明の第3の実施形態を例示する。図において111が歯ブラシである。
【0102】
歯ブラシ111のヘッド部112は植毛面112aを有し、植毛面112aに丸穴である植毛穴113が複数開けられている。植毛穴113は
図11(a)(b)が示すように植毛面112aから、ヘッド部112に対して植毛面112aの逆側の面である背面112bまでを貫通する。
【0103】
植毛穴113は、内径が植毛面112aにおける開口径よりも小さい縮径部113cを有する。縮径部113cは、上端が環状の段差を形成し、この段差の内側における縁である段差縁113dを形成する。段差縁113dは平面視において円形を描く。そして、縮径部113cが占める内側空間が、段差縁113dと背面側開口縁113bとの間における略円柱状の縮径部円柱状空間Eを形成する。縮径部円柱状空間Eの仮想の背面112b側端面である縮径部仮想底面Ebは、縮毛穴円柱状空間Cの仮想の背面112b側端面である植毛穴仮想底面Cbと一致する。
【0104】
毛束114は、植毛穴円柱状空間Cに押し込まれる折り返し部115が植毛穴仮想底面Cbに内接する。このように、歯ブラシ111は、毛束114を背面112b側において露出するため、歯ブラシ111を口腔M内の清掃のために用い、また、洗浄するときに、前記露出する毛束114に布、綿、紙等の吸水材を当てることにより、唾液、薬液、流水、洗浄水等の水分を拭き取ることができる。このように水分を除くことによって、歯ブラシ111を清潔に保つことができる。
【0105】
その他の構成は、第2の実施形態と共通する。
【0106】
こうした構成により、歯ブラシ111は折り返し部115が植毛穴仮想底面Cbに内接するのであって、毛束114がそれ以上背面112b側に突出することがない。そのため、ヘッド部112の背面112b側を作業台等の平面に当接させたような状態で毛束114を植設しても、歯ブラシ111は、突出する部分が前記平面と干渉することがない。こうして、歯ブラシ111を容易に製作することができる。
【0107】
[製造方法]
図12において、S1200は本発明の第3の実施形態における歯ブラシの製造方法を例示している。
【0108】
本発明の歯ブラシ111の製造方法S1200は準備工程S1210、植設工程S1220の順にこれらの工程を含む。準備工程S1210は歯ブラシ準備工程S1211を含む。また、植設工程S1220は押込ステップS1222を含む。押込ステップ1222は折り返し部当接ステップS1222aを含む。折り返し部当接ステップS1222aにおいて、折り返し部115は段差縁113dに当接するとともに植毛穴仮想底面Cbに内接する。
【0109】
これらの工程及びステップは、第2の実施形態における歯ブラシの製造方法と共通する。なお、本実施形態における歯ブラシ111の折り返し部115が背面112b側から突出しないため、必ずしも、第2の実施形態において用いる平線押込補助具8を必要としない。そのため、本実施形態の製造方法においては、第2の実施形態の製造方法に含まれる補助具準備工程S1112、補助具装着ステップS1121及び補助具取外ステップS1123を必ずしも必要としない。
【0110】
[第4の実施形態]
図13~
図16は、本発明の第4の実施形態を例示している。図において11が歯ブラシである。
【0111】
歯ブラシ11のヘッド部12は植毛面12aを有し、植毛面12aに丸穴である植毛穴13が複数開けられている。植毛穴13は
図13(a)(b)が示すように植毛面12aから背面12bまで貫通する。それぞれの植毛穴13に複数の毛束14が植毛され、各毛束14は、一本一本の刷毛14aが束ねられて形成される。各毛束14は二つ折れされ、この二つ折れ部分である折り返し部15を先頭にしてそれぞれの植毛穴13に押し込まれて植設される。
図13(a)(b)は、それぞれ、毛束14が偏平な平線16によって二つ折れされ植毛穴13に押し込まれた状態を示す正面部分断面図及び右側面部分断面図である。
【0112】
各毛束14は、折り返し部15の植毛面12a側に連続する略柱状の束であるストレート部17を含む。毛束14は植毛穴13に押し込まれるため、ストレート部17が植毛穴13の内壁である植毛穴壁13aと密着する。
【0113】
折り返し部15は、背面12b側の開口においてヘッド部12から突出して露出する。折り返し部15の下端が背面12bよりも下側に位置し、かつ、折り返し部15の上端が背面12bの上下方向における位置と一致する。
【0114】
平線16は下向けに打ち込まれ、二辺の端縁16b,16bが二筋の溝12c,12cを描くようにして植毛穴13の下端に近づくまで進む。そして、平線16は平線下端16aが背面12bよりも上側に位置するように配置される。すなわち、平線16は、平線下端16aが、植毛穴13の植毛穴円柱状空間Cが有する植毛穴仮想底面Cbよりも植毛面12a側に位置するように配置される。
【0115】
ストレート部17は下端が背面12bの上下方向における位置と一致する。すなわち、ヘッド部12の厚さとストレート部17の高さとが一致し、植毛穴壁13aの全体がストレート部17と密着する。
【0116】
図14は平線押込補助具8がヘッド部12に装着された状態を表し、折り返し部15は、この
図14が示すようにくぼみ部9の内側まで進む。
【0117】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0118】
本発明の歯ブラシ11は折り返し部15の全体が背面12b側においてヘッド部12から突出して露出するので、ストレート部17が植毛穴壁13a全体と密着する。そのため、毛束14が植毛穴壁13aと接する面積がより大きく、前記摩擦力が大きく、毛束14は確実に植設される位置に留まることができる。
【0119】
[実施例]
図15は、歯ブラシ11において、
図13に示すように平線16を用いて刷毛14aを植毛穴13に植設したときに、毛束14を植毛穴13から引き抜いたときの毛止め強度を測定した結果を示す。刷毛14aは材料がナイロンであり、太さが6mil(ミル)であり、長さが33mmのものを用いた。歯ブラシ11は、植毛穴13の直径がそれぞれ1.0mm、1.2mm、1.4mm、1.6mm、1.8mm及び2.0mmであり、また、
図4において符号tにより表されるヘッド部12の板厚が、それぞれ1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、5.0mmのものを用意した。それぞれの直径の植毛穴13に対して、各毛束14を構成する刷毛14aの本数は、1.0mmに対して11本の刷毛14aを折り返すことにより計22本、1.2mmに対して同計40本、1.4mmに対して同計52本、1.6mmに対して同計72本、1.8mmに対して同計90本、2.0mmに対して同計114本とした。
【0120】
毛束14の植設に際しては、歯ブラシの製造方法S1000に従い、平線押込補助具8を用いた。
【0121】
毛止め強度試験は、前掲の『歯ブラシ JIS S 3016-1995』の解説に従い引張試験機によった。引張試験機による強度試験における引き抜き速度を20mm/minに設定した。
【0122】
図15の表は、各行が示すそれぞれのヘッド部12の板厚(mm)であり、かつ、各列が示すそれぞれの植毛穴径(mm)であるときに、上述の本数の刷毛14aを植設し、その上で強度試験をそれぞれ3回ずつ行った際の毛止め強度(N)の平均値を示す。
【0123】
図16は、縦軸に毛止め強度(N)を示し、また、横軸にヘッド部12の板厚(mm)を示すときに、それぞれの植毛穴13の直径の場合の各グラフを表す。
図15の各数値及び
図16の各グラフが示すように、ヘッド部12の板厚を1.5mm以上、かつ、5.0mm以下の全ての場合の毛止め強度は15.0N以上であり、前掲の平成2年6月1日付日本工業標準調査会標準会議議決に基づく規定値である8Nよりも大きい値を示すことが確認された。よって、本発明の歯ブラシ11はヘッド部12の板厚を1.5mm以上、かつ、5.0mm以下に設定することができる。
【0124】
一方で、前記各グラフのうち、植毛穴13の直径が1.0mmの場合はヘッド部12が板厚4.0mmのときに毛止め強度がピークであり、板厚4.0mm以上のときに板厚の増加に伴って毛止め強度が減少することが見出された。また、上記寸法の植毛穴13の形成と平線16の打ち込みとの加工上においてヘッド部12の板厚は1.5mmが最小限界サイズであることが見出された。これらのように、上記寸法の直毛穴13に毛束14を植設するとき、ヘッド部12の板厚は1.5mm以上、かつ、4.0mm未満の範囲に形成されることがより好ましい。
【0125】
よって、本発明の歯ブラシ11は、ヘッド部12の板厚が1.5mm以上、かつ、4.0mm未満の範囲に形成されることにより、歯ブラシとしてより望ましい毛止め強度を有することができる。
【0126】
また、ヘッド部12の板厚が1.5mm以上、かつ、2.0mm未満の範囲のような極薄のものであっても毛止め強度は15.0N以上に上る。さらに、板厚が2.0mm以上、かつ、2.5mm未満の範囲のような薄いものであっても毛止め強度は25.0N以上に上る。
【0127】
これらのように、ヘッド部12の板厚を小さくすることにより、歯ブラシ11はより奥歯に届きやすく、口腔内を清掃し易い。そのため、本発明の歯ブラシ11によって口腔内を清掃し易く、しかも、刷毛14aが抜脱し難く長く使用することができる。
【0128】
[第5の実施形態]
図17~
図19は、本発明の第5の実施形態を例示する。図において21が歯ブラシである。
【0129】
歯ブラシ21のヘッド部22は植毛面22aを有し、植毛面22aに丸穴である植毛穴23が複数開けられている。植毛穴23は
図17(a)(b)が示すように植毛面22aから背面22bまで貫通する。それぞれの植毛穴23に複数の毛束24が植毛され、各毛束24は、一本一本の刷毛24aが束ねられて形成される。各毛束24は二つ折れされ、この二つ折れ部分である折り返し部25を先頭にしてそれぞれの植毛穴23に押し込まれて植設される。
図17(a)(b)は、それぞれ、毛束24が偏平な平線26によって二つ折れされ植毛穴23に押し込まれた状態を示す正面部分断面図及び右側面部分断面図である。
【0130】
各毛束24は、折り返し部25の植毛面22a側に連続する略柱状の束であるストレート部27を含む。毛束24は植毛穴23に押し込まれるため、ストレート部27が植毛穴23の内壁である植毛穴壁23aと密着する。
【0131】
折り返し部25は、背面22b側の開口においてヘッド部22から突出して露出する。折り返し部25の下端が背面22bよりも下側に位置し、かつ、折り返し部25の上端が背面22bの上下方向における位置と一致する。
【0132】
平線26は下向けに打ち込まれ、二辺の端縁26b,26bが二筋の溝22c,22cを描くようにして、平線下端26aがヘッド部22の背面22bに達するまで進む。すなわち、平線26は、平線下端26aが、植毛穴23の植毛穴円柱状空間Cが有する植毛穴仮想底面Cbに内接し、植毛穴仮想底面Cbに対して下向けに接するように配置される。また、二筋の溝22c,22cの長さはヘッド部22の厚さと一致する。
【0133】
ストレート部27は下端が背面22bの上下方向における位置と一致する。すなわち、ヘッド部22の厚さとストレート部27の高さとが一致し、植毛穴壁23aの全体がストレート部27と密着する。
【0134】
その他の構成は、第4の実施形態と共通する。
【0135】
本発明の歯ブラシ11は平線26が植毛穴23の最も下側に配置されるため、植毛穴23の最も深い位置で毛束24を半径外向けに押し付ける。そのため、毛束24が植毛穴壁23aにより強く密着する。これにより、毛束24はより確実に植設された位置に留まることができる。また、二筋の溝22c,22cが最も長く、二辺の端縁26b,26bとそれぞれの溝22c,22cと間の摩擦もより大きい。
【0136】
さらに、平線下端26aが植毛穴仮想底面Cbに内接するように構成されることにより、平線26は植毛穴仮想底面Cbよりも下向けにはみ出ることがない。そのため、平線26がヘッド部22からはみ出ることによって使用者の口腔M内を傷付けるような事故を防ぐことができる。
【0137】
[製造方法]
図18において、S2000は本発明の第5の実施形態における歯ブラシ21の製造方法を例示している。
【0138】
歯ブラシの製造方法S2000の押込ステップS2022は、各折り返し部25が、挿入する先の各くぼみ部9の底である窪底部9bに当接するまで平線26を挿嵌するステップである平線着底ステップS2022aを含む。このとき、
図6に示す平線押込補助具8は、くぼみ部9の深さが、各折り返し部25の上下方向の高さと一致するように構成されている。そのため、平線26は、各折り返し部25の下端が窪底部9bに当たることによって下向きの植毛穴23への進入を止める。
【0139】
また、平線押込補助具8が平線26よりも硬い材料により製作されるため、仮に平線26をさらに押し込もうとしたときでも、平線下端26aはヘッド部受け面8aに埋まることがない。
【0140】
図19は平線押込補助具8がヘッド部22に装着され、折り返し部25がくぼみ部9の内側に収まり、かつ、折り返し部25の下端が窪底部9bに当たった状態を示す。
【0141】
その他の工程及びステップは、第4の実施形態における歯ブラシの製造方法と共通する。
【0142】
このように、くぼみ部9の深さによって、折り返し部25が背面22b側開口から突出する長さを規制することができる。これにより、前記突出する長さを、布、綿、紙等の吸水材によって唾液、薬液、流水、洗浄水等の水分を拭き取るために十分な長さに設定するとともに、作業、使用、収納、美感等のために長過ぎないものに設定することが可能となる。こうして、前記水分を除き、清潔に保つことができる歯ブラシ21を製造することができる。
【0143】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0144】
例えば、植毛穴は丸穴でなくともよく、刷毛を毛束の状態で束ねて植設することができれば、楕円の穴や角穴に形成されてもよい。
【0145】
また、ヘッド部に設けられる植毛穴は複数でなくともよく、単一の植毛穴でもよい。これに伴い、植設される毛束も単一でもよい。さらに、平線押込補助具に設けられるくぼみ部も単一でもよい。
【0146】
折り返し部がヘッド部から突出して露出する場合、平線押込補助具について、折り返し部のヘッド部からの突出に差し障らなければ、背面側開口縁はくぼみ縁と同径でなくともよく、くぼみ縁よりも小径又は大径でもよい。
【0147】
平線の材質は金属である必要がなく、ヘッド部に対して打ち込まれる程の硬さを有していれば、例えばプラスチックでもよい。
【0148】
折り返し部がヘッド部から突出して露出する場合、平線を打ち込む際に、折り返し部のヘッド部からの突出に差し障らなければ、平線押込補助具を用いずに、例えば、ヘッド部を空中で一方の手により支持し、他方の手により毛束を支持して押し込んでもよい。
【0149】
毛束をヘッド部に植設する際、平線を用いず、例えば、刷毛をヘッド部に溶着して固定してもよい。
【0150】
平線上端は縮径部仮想上面に必ずしも外接しなくとも、平線を、毛束が植毛面側から抜脱しない程度に十分深く押し込むことができれば、縮径部仮想上面より上方に位置していてもよい。
【0151】
縮径部は背面側に偏って設けられなくとも、平線を、毛束が植毛面側から抜脱しない程度に十分深く押し込むことができれば、縮径部仮想底面が植毛穴仮想底面より上方に位置するように設けられてもよい。
【0152】
次の事項を開示する。
(請求項1)
刷毛と、複数の前記刷毛を束ねた毛束を植毛するヘッド部とを備え、該ヘッド部は植毛面を有するとともに該植毛面に植毛穴が開けられ、前記毛束は二つ折れにされ、該二つ折れの状態で、前記二つ折れする部分である折り返し部を先頭にして前記植毛穴に植設される歯ブラシであって、
前記植毛穴は、前記ヘッド部の前記植毛面と逆側の背面を貫通し、
前記毛束は、前記折り返し部を前記背面側の開口において露出し、
前記ヘッド部は、厚さが1.5mm以上、かつ、2.5mm未満の範囲に形成される
ことを特徴とする歯ブラシ。
(請求項2)
前記植毛穴に打ち込まれる平線を有し、
前記毛束は、前記平線によって二つ折れにされ前記植毛穴に押し込まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
(請求項3)
前記植毛穴はその内側空間が略柱体状に形成され、
前記平線は、前記背面側の一辺である平線下端が、前記略柱体状の、前記背面側に位置する仮想の端面である植毛穴仮想底面よりも前記植毛面側に位置するように配設される
ことを特徴とする請求項2に記載の歯ブラシ。
(請求項4)
前記植毛穴はその内側空間が略柱体状に形成され、
前記平線は、前記背面側の一辺である平線下端が、前記略柱体状の、前記背面側に位置する仮想の端面である植毛穴仮想底面に内接するように配設される
ことを特徴とする請求項2に記載の歯ブラシ。
(請求項5)
前記植毛穴は、内径が前記植毛面における開口径よりも小さい縮径部を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の歯ブラシ。
(請求項6)
前記縮径部は、その内側空間の、前記背面側に位置する仮想の端面である縮径部仮想底面と、前記植毛穴仮想底面とが一致する
ことを特徴とする請求項5に記載の歯ブラシ。
(請求項7)
前記平線は、前記平線下端が、前記縮径部の内側空間の、前記植毛面側に位置する仮想の端面である縮径部仮想上面に外接するように配設される
ことを特徴とする請求項6に記載の歯ブラシ。
(請求項8)
前記植毛穴はその内側空間が略柱体状に形成され、
前記毛束は、前記折り返し部が、前記略柱体状の、前記背面側に位置する仮想の端面である植毛穴仮想底面に内接する
ことを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の歯ブラシ。
(請求項9)
貫通する植毛穴を有するとともに厚さが1.5mm以上且つ2.5mm未満の範囲に形成されるヘッド部を有する歯ブラシを準備する工程である歯ブラシ準備工程を含む準備工程と、
複数本の刷毛を束ねた毛束を、平線を当てることにより二つ折りに折り曲げ、前記二つ折れ状態の毛束と前記平線とを共に、前記二つ折れする部分である折り返し部を先頭に前記植毛穴の一方の開口から嵌入し、かつ、前記折り返し部を前記植毛穴の他方の開口において露出させるまで押し込む工程である植設工程とを含む
ことを特徴とする歯ブラシの製造方法。
(請求項10)
前記植設工程の前に、平面に凹状のくぼみ部を設けた平線押込補助具を準備する工程である補助具準備工程を含み、
前記植設工程は、前記他方の開口に前記くぼみ部が重なるように、前記平線押込補助具を前記ヘッド部の前記他方の開口側に装着するステップを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の歯ブラシの製造方法。
(請求項11)
前記植設工程は、前記折り返し部が前記くぼみ部の底に当接するまで前記平線を挿嵌するステップを含む
ことを特徴とする請求項10に記載の歯ブラシの製造方法。
(請求項12)
前記歯ブラシ準備工程において、前記歯ブラシとして前記植毛穴は内径が前記一方の開口における開口径よりも小さい縮径部を有する歯ブラシを準備し、
前記植設工程において、前記折り返し部を前記縮径部に当接するように押し込む
ことを特徴とする請求項9に記載の歯ブラシの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、植毛穴がヘッド部を貫通する歯ブラシ及び貫通する植毛穴を設けるヘッド部を有する歯ブラシを準備する歯ブラシ準備工程を含む歯ブラシの製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0154】
1,11,21,101,111 歯ブラシ
2,12,22,102,112 ヘッド部
3,13,23,103,113 植毛穴
103c,113c 縮径部
4,14,24,104,114 毛束
4a,14a,24a,104a,114a 刷毛
5,15,25,105,115 折り返し部
6,16,26,106,116 平線
7,17,27,107,117 ストレート部
8 平線押込補助具
9 くぼみ部
C 植毛穴円柱状空間(略柱体状)
Cb 植毛穴仮想底面
E 縮径部円柱状空間
Ea 縮径部仮想上面
Eb 縮径部仮想底面
S1000,S1100,S1200,S2000 歯ブラシの製造方法
S1010,S1110,S1210,S2010 準備工程
S1011,S1111,S1211,S2011 歯ブラシ準備工程
S1012,S1112,S2012 補助具準備工程
S1020,S1120,S1220,S2020 植設工程
S1021,S1121,S2021 補助具装着ステップ
S1022,S1122,S1222,S2022 押込ステップ
S1023,S1123,S2023 補助具取外ステップ