(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149738
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】学習済みモデルの作成方法および画像生成方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20241010BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20241010BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20241010BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241010BHJP
【FI】
A61B6/03 560J
A61B6/03 560T
A61B6/46 536Q
A61B6/03 571
A61B6/12
G06T7/00 350B
G06T7/00 630
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024133883
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2022502635の分割
【原出願日】2020-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】押川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】平野 湧一郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高 正妍
(72)【発明者】
【氏名】水野 和恵
(57)【要約】
【課題】様々な画像要素に対して、かつ、複数の画像要素に対しても画像処理を行うことが可能な画像生成方法および画像処理装置を提供すること、および、そのような画像処理に用いる学習済みモデルの作成を効率的に行うことが可能な学習済みモデルの作成方法を提供する。
【解決手段】この学習済みモデルの作成方法は、3次元X線画像データ(80)を再構成した再構成画像(60)を生成する。シミュレーションにより、画像要素(50)の3次元モデルから投影像(61)を生成する。投影像を再構成画像に重畳して重畳画像(67)を生成する。重畳画像と、再構成画像または投影像とで機械学習を行うことにより、学習済みモデル(40)を作成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、
シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、
前記画像要素の前記投影像を前記再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を教師入力データとし、前記再構成画像または前記投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる前記画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成する、学習済みモデルの作成方法。
【請求項2】
前記重畳画像は、互いに異なる複数の画像要素毎に、複数作成され、
前記複数の画像要素は、生体組織である第1要素と、非生体組織である第2要素とを含む、請求項1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【請求項3】
前記重畳画像は、互いに異なる複数の画像要素毎に、複数作成され、
前記複数の画像要素は、骨、血管、体内に導入されるデバイス、衣類、ノイズおよびX線の散乱線成分のうち少なくとも複数を含む、請求項1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【請求項4】
前記画像要素は、線状または管状のデバイスを含み、
前記画像要素の前記投影像は、前記デバイスの3次元モデルの形状をランダムな座標値に基づいて生成した曲線でシミュレーションすることにより生成される、請求項1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【請求項5】
前記画像要素は、血管を含み、
前記画像要素の前記投影像は、血管の3次元モデルの形状をランダムに変化させるシミュレーションにより生成される、請求項1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【請求項6】
前記画像要素は、X線の散乱線成分を含み、
前記画像要素の前記投影像は、前記入力画像の撮影環境をモデル化したモンテカルロシミュレーションにより生成される、請求項1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【請求項7】
前記画像要素の前記投影像は、撮影環境モデルにおけるX線撮影装置が撮影可能な投影角度範囲に亘って投影角度を変化させて複数生成される、請求項6に記載の学習済みモデルの作成方法。
【請求項8】
前記画像要素の前記投影像は、撮影環境モデルにおける仮想線源のエネルギースペクトルを変化させて複数生成される、請求項6に記載の学習済みモデルの作成方法。
【請求項9】
前記機械学習は、1つの学習モデルに対して、前記画像要素毎に作成された前記教師入力データおよび前記教師出力データを入力することを含み、
前記学習済みモデルは、前記入力画像から前記複数の画像要素を重複なしで抽出し、抽出した前記複数の画像要素と、抽出後に残る残余画像要素と、をそれぞれ出力するように構成されている、請求項1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【請求項10】
入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、
画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、前記X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、前記X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成する、画像生成方法。
【請求項11】
前記画像処理は、強調処理または除去処理を含む、請求項10に記載の画像生成方法。
【請求項12】
複数の画像要素は、生体組織である第1要素と、非生体組織である第2要素とを含む、請求項10に記載の画像生成方法。
【請求項13】
複数の画像要素は、骨、血管、体内に導入されるデバイス、衣類、ノイズおよびX線の散乱線成分のうち少なくとも複数を含む、請求項10に記載の画像生成方法。
【請求項14】
前記複数の抽出画像の一部または全部に対して、別々に画像処理を行い、
前記処理画像は、画像処理後の前記複数の抽出画像と、前記X線画像との画像間演算により生成される、請求項10に記載の画像生成方法。
【請求項15】
前記画像間演算は、前記X線画像に対する、個々の抽出画像の重み付け加算または重み付け減算を行うことを含む、請求項10に記載の画像生成方法。
【請求項16】
前記学習済みモデルは、前記入力画像から前記複数の画像要素を重複なしで抽出し、抽出した前記複数の画像要素と、抽出後に残る残余画像要素と、をそれぞれ出力するように構成されている、請求項10に記載の画像生成方法。
【請求項17】
前記学習済みモデルは、3次元画像データから2次元の投影画像に再構成した再構成画像と、シミュレーションにより前記画像要素の3次元モデルから作成された投影像とを用いて機械学習により予め作成されている、請求項10に記載の画像生成方法。
【請求項18】
X線画像を取得する画像取得部と、
入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、前記X線画像から複数の画像要素を別々に抽出する抽出処理部と、
画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、前記X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、前記X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成する画像生成部と、を備える、画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習済みモデルの作成方法、画像生成方法および画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、学習済みモデルを用いて画像処理を行う方法が知られている。このような方法は、たとえば、国際公開第2019/138438号に開示されている。
【0003】
上記国際公開第2019/138438号には、被験者の特定部位を含む領域のX線画像に対して、学習済みモデルを利用して変換を行うことにより、特定部位を表す画像を作成することが開示されている。上記国際公開第2019/138438号には、特定部位として、被験者の骨部、造影剤が注入された血管、体内に留置されるステントが例示されている。学習済みモデルは、CT画像データから再構成した第1DRR(Digitally Reconstructed Radiography)画像と第2DRR画像とをそれぞれ教師入力画像と教師出力画像として機械学習を行うことにより作成される。学習済みモデルを用いた変換により得られた画像を元の画像から差分することにより、特定部位を除去した画像を生成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記国際公開第2019/138438号では、特定部位として骨部を表す画像を作成すること、造影剤が注入された血管を表す画像を作成すること、体内に留置されるステントを表す画像を作成することという、特定の1種の画像要素(特定部位)に対して画像処理を行うことが開示されている。しかし、多様な利用シーンにおける医用画像の視認性向上のため、特定の1つの画像要素(特定部位)に限定された画像処理だけでなく、様々な画像要素に対して、かつ、複数の画像要素に対しても画像処理を行えるようにすることが望まれている。
【0006】
また、上記国際公開第2019/138438号では、CT画像データから再構成した第1DRR画像および第2DRR画像を用いて機械学習を行うため、抽出すべき画像要素(特定部位)を実際に含んだCT画像データを準備する必要がある。様々な画像要素に対する機械学習を効率的に行うためには、抽出すべき画像要素を実際に含んだCT画像データの利用に限定されずに機械学習を行えるようにすることや、CT画像データに含まれていてもその画像要素のみを分離抽出することが困難な画像要素についても機械学習を行えるようにすることが望まれる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、様々な画像要素に対して、かつ、複数の画像要素に対しても画像処理を行うことが可能な画像生成方法および画像処理装置を提供すること、および、そのような画像処理に用いる学習済みモデルの作成を効率的に行うことが可能な学習済みモデルの作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における学習済みモデルの作成方法は、3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、画像要素の投影像を再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、重畳画像を教師入力データとし、再構成画像または投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成する。
【0009】
この発明の第2の局面における画像生成方法は、入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成する。
【0010】
この発明の第3の局面における画像処理装置は、X線画像を取得する画像取得部と、入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出する抽出処理部と、画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成する画像生成部と、を備える。
【0011】
なお、本明細書において、画像要素を「抽出する処理」とは、当該画像要素の抽出により、抽出した画像要素を表す画像を生成すること、および、抽出により当該画像要素が除去されたX線画像を生成すること、の両方を含む広い概念である。より具体的には、画像要素を「抽出する処理」とは、当該画像要素のみの画像を生成することと、元のX線画像から当該画像要素を除去した画像を生成することと、を含む。また、「画像間演算」とは、ある画像と別の画像とで互いに加算、減算、乗算、除算等の演算を行うことにより、1つの画像を生成することを意味する。より具体的には、「画像間演算」とは、複数の画像の間で、対応する画素毎に画素値の演算処理を行って、演算後の画像におけるその画素の画素値を決定することを意味する。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の局面における学習済みモデルの作成方法によれば、3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像と、シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから生成した2次元の投影像とを重畳した重畳画像を教師入力データとし、再構成画像または投影像を教師出力データとするので、3次元X線画像データが抽出対象となる画像要素を含んでいなくても、シミュレーションにより生成した抽出対象の画像要素を用いて機械学習を行える。つまり、抽出すべき画像要素を実際に含んだCT画像データを準備しなくても、教師データを用意することができる。また、シミュレーションにより抽出対象の画像要素の投影像を生成するので、CT画像データに含まれているが分離抽出することが困難な画像要素についても、教師データを用意することができる。その結果、様々な画像要素に対して、かつ、複数の画像要素に対して画像処理を行うための学習済みモデルの作成を効率的に行うことができる。
【0013】
また、上記第2の局面における画像生成方法および上記第3の局面における画像処理装置によれば、入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより処理画像を生成するので、入力されたX線画像から様々な画像要素を抽出画像として別々に抽出した上で、抽出された画像要素の種類に応じて、それぞれの抽出画像をX線画像に対して自由に加算したり減算したりすることができる。その結果、様々な画像要素に対して、かつ、複数の画像要素に対しても画像処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態による画像処理装置を示したブロック図である。
【
図3】学習モデルに対する機械学習および学習済みモデルを説明するための図である。
【
図5】学習済みモデルによる画像要素の抽出の第1の例を示した図である。
【
図6】学習済みモデルによる画像要素の抽出の第2の例および処理画像の生成を示した図である。
【
図7】
図6と異なり抽出画像に対して画像処理を行う例を示した図である。
【
図8】一実施形態による画像生成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図9】一実施形態による学習済みモデルの作成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】機械学習に用いる重畳画像の生成を説明するための図である。
【
図11】再構成画像の生成方法を説明するための図である。
【
図12】画像要素が骨である場合の教師入力データおよび教師出力データの例を示した図である。
【
図13】画像要素が骨である場合の処理画像の例を示した図である。
【
図14】画像要素がデバイスである場合の教師入力データおよび教師出力データの例を示した図である。
【
図15】画像要素がデバイスである場合の処理画像の例を示した図である。
【
図16】3次元モデルから生成したデバイスの投影像のバリエーション(A)~(I)を示した図である。
【
図17】画像要素がノイズである場合の教師入力データおよび教師出力データの例を示した図である。
【
図18】画像要素がノイズである場合の処理画像の例を示した図である。
【
図19】画像要素が血管である場合の教師入力データおよび教師出力データの例を示した図である。
【
図20】画像要素が血管である場合の処理画像の例を示した図である。
【
図21】画像要素が衣類である場合の教師入力データおよび教師出力データの例を示した図である。
【
図22】画像要素が衣類である場合の処理画像の例を示した図である。
【
図23】画像要素がX線の散乱線成分である場合の教師入力データおよび教師出力データの例を示した図である。
【
図24】画像要素がX線の散乱線成分である場合の処理画像の例を示した図である。
【
図25】モンテカルロシミュレーションにおけるX線の第1方向(A)および第2方向(B)における投影角度範囲を示した図である。
【
図26】モンテカルロシミュレーションにおけるX線のエネルギースペクトルの第1の例を示した図である。
【
図27】モンテカルロシミュレーションにおけるX線のエネルギースペクトルの第2の例を示した図である。
【
図28】教師入力データおよび教師出力データに用いるコリメータ画像の一例を示した図である。
【
図29】複数の学習済みモデルにより画像要素を抽出する例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1~
図28を参照して、一実施形態による画像処理装置100の構成、一実施形態の画像生成方法、一実施形態の学習済みモデルの作成方法について説明する。
【0017】
(画像処理装置の構成)
まず、
図1を参照して、画像処理装置100の構成について説明する。
【0018】
画像処理装置100は、機械学習により作成された学習済みモデル40を用いて、X線画像201に含まれる画像要素50を抽出し、抽出した画像要素50を用いてX線画像201の画像処理を行うように構成されている。画像処理装置100は、X線撮影装置200により撮影されたX線画像201を入力とし、X線画像201に含まれる各画像要素50に画像処理が行われた処理画像22を出力として生成する。
【0019】
図1に示すように、画像処理装置100は、画像取得部10と、抽出処理部20と、画像生成部30と、を備える。画像処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などの1つ又は複数のプロセッサ101と、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの1つ又は複数の記憶部102と、を備えたコンピュータにより構成されている。画像処理装置100は、表示装置103と接続されている。
【0020】
画像取得部10は、X線画像201を取得するように構成されている。画像取得部10は、たとえば、外部装置と画像処理装置100とを通信可能に接続するためのインターフェースにより構成される。画像取得部10は、インターフェースは、LAN(Local Area Network)などの通信インターフェースを含みうる。画像取得部10は、HDMI(登録商標)、Display Port、USBポートなどの入出力インターフェースを含みうる。画像取得部10は、通信により、X線撮影装置200から、または、ネットワークを介して接続されたサーバ装置からX線画像201を取得することができる。
【0021】
X線画像201は、X線撮影装置200により患者または被験者を撮影した医用画像である。X線画像201は、静止画像または動画像のいずれでもよい。動画像は、所定のフレームレートで撮影された静止画像の集まりである。X線画像201は、2次元画像である。X線画像201は、単純X線撮影、透視撮影、血管造影撮影などにより撮影された各種の画像でありうる。
【0022】
抽出処理部20は、記憶部102に記憶された学習済みモデル40を用いて、X線画像201から複数の画像要素50を別々に抽出するように構成されている。学習済みモデル40は、入力画像中から特定の画像要素50を抽出する処理を学習させた学習済みモデルである。
【0023】
画像要素50は、X線画像201を構成する画像部分または画像情報であって、同一または同種のまとまりとして定義されるものである。画像要素50は、解剖学的に分類される人体の部位でありうる。そのような画像要素50は、たとえば骨、血管などの生体組織である。画像要素50は、手術などにおいて被験者の体内に導入または留置される物体でありうる。そのような画像要素50は、たとえば体内に導入されるカテーテル、ガイドワイヤ、ステント、手術器具、固定具などのデバイスでありうる。画像要素50は、X線撮影における画像化処理に際して発生するノイズ、アーチファクト、X線の散乱線成分などでありうる。画像要素50は、被験者が身に着けており撮影時に写り込んだ衣類でありうる。なお、衣類とは、衣服、装飾品その他の装着物を含む概念である。X線画像201には、たとえば衣類のボタン、ファスナー、アクセサリ、金具部分などが写り込む。
【0024】
学習済みモデル40は、入力画像中から特定の画像要素50を抽出する処理を学習させる機械学習により予め作成されている。抽出処理部20は、1つまたは複数の学習済みモデル40を用いて画像要素50の抽出を行う。これにより、抽出処理部20は、X線画像201から別々の画像要素50を抽出した複数の抽出画像21を生成する。たとえば第1の抽出画像21には、第1の画像要素50が含まれ、第2の抽出画像21には、第1の画像要素50とは異なる第2の画像要素50が含まれる。学習済みモデル40の作成方法については、後述する。
【0025】
画像生成部30は、画像要素50毎に抽出された複数の抽出画像21と、X線画像201と、を用いた画像間演算を行うことにより、X線画像201に含まれる各画像要素50に画像処理が行われた処理画像22を生成するように構成されている。画像処理は、たとえば画像要素50の強調処理または画像要素50の除去処理を含む。なお、強調処理は、当該画像要素50に属する画素の画素値を相対的に高くする処理である。除去処理は、当該画像要素50に属する画素の画素値を相対的に低くする処理である。除去処理は、画像中から完全に除去することのみならず、部分的な除去により視認性を低下させることを含む。また、強調処理は、たとえばエッジ強調処理でありうる。除去処理は、ノイズ除去処理でありうる。
【0026】
画像間演算とは、複数の抽出画像21と、X線画像201との間で、対応する画素毎に画素値の演算を行うことにより、処理画像22における対応する画素の画素値を決定することである。演算の内容は、特に限定されないが、たとえば、加算、減算、乗算および除算の四則演算でありうる。本実施形態では、画像間演算は、X線画像201に対する、個々の抽出画像21の重み付け加算または重み付け減算を行うことを含む。X線画像201に抽出画像21の重み付け加算を行うことにより、X線画像201に含まれる画像要素50の強調処理を行える。X線画像201に抽出画像21の重み付け減算を行うことにより、X線画像201に含まれる画像要素50の除去処理を行える。重みの値を調整することにより、画像要素50の強調度合いまたは除去度合いを最適化できる。
【0027】
図1の例では、プロセッサ101が、記憶部102に記憶されたプログラム(図示せず)を実行することにより、抽出処理部20および画像生成部30として機能する。すなわち、
図1の例では、抽出処理部20および画像生成部30がプロセッサ101の機能ブロックとして実現されている。抽出処理部20および画像生成部30が個別のハードウェアとして構成されていてもよい。
【0028】
なお、個別のハードウェアとは、抽出処理部20および画像生成部30が別々のプロセッサによって構成されることを含む。個別のハードウェアとは、画像処理装置100が複数台のコンピュータ(PC)を含み、抽出処理部として機能するコンピュータ(PC)と、画像生成部として機能するコンピュータ(PC)とが、別々に設けられることを含む。
【0029】
画像処理装置100は、画像生成部30により生成された処理画像22を、表示装置103に表示させる。画像処理装置100は、たとえば、生成された処理画像22を、ネットワークを介してサーバ装置に送信する。画像処理装置100は、たとえば、生成された処理画像22を記憶部102に記録する。
【0030】
X線撮影装置200の構成例を
図2に示す。
図2は、血管透視撮影を行うことが可能な血管X線撮影装置の例を示している。X線撮影装置200は、天板210と、X線照射部220と、X線検出器230とを含んでいる。天板210は、被写体1(人)を支持するように構成されている。X線照射部220は、X線管球などのX線源を含み、X線検出器230に向けてX線を照射するように構成されている。X線検出器230は、たとえばFPD(Flat Panel Detector)により構成され、X線照射部220から照射され、被写体1を透過したX線を検出するように構成されている。
【0031】
図2の例では、X線照射部220と、X線検出器230とはCアーム240に保持されている。Cアーム240は、弧状のアーム部に沿って第1方向250に移動可能かつ回転軸線251回りに第2方向252に回転可能である。これにより、X線撮影装置200は、X線照射部220からX線検出器230に向かうX線の投影方向を、第1方向250および第2方向252にそれぞれ所定角度範囲ずつ変更することができる。
【0032】
(学習済みモデル)
図1に示したように、X線画像201に含まれる画像要素50の抽出処理は、機械学習によって作成された学習済みモデル40によって実施される。学習済みモデル40は、
図3に示すように、入力された画像から、予め学習された画像要素50を抽出し、抽出した画像要素50のみを表示した抽出画像21を出力する。
【0033】
本実施形態では、学習済みモデル40は、3次元画像データから2次元の投影画像に再構成した再構成画像60と、シミュレーションにより画像要素50の3次元モデルから作成された投影像61とを用いて機械学習により予め作成されている。
【0034】
機械学習法として、全層畳み込みニューラルネットワーク(FullyConvolutionalNetworks;FCN)、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン(SVM)、ブースティング等の任意の手法を用いることができる。本実施形態の学習モデルLM(学習済みモデル40)には、畳み込みニューラルネットワーク、より好ましくは、全層畳み込みニューラルネットワークを用いるとよい。そのような学習モデルLM(学習済みモデル40)は、画像が入力される入力層41、畳み込み層42、出力層43を含んで構成される。
【0035】
学習済みモデル40を作成するためには、教師入力データ64と教師出力データ65とを含んだ学習データ66を用いた機械学習が行われる。1つの学習データ66に含まれる教師入力データ64と教師出力データ65とは、同一の画像要素50についての抽出前のデータと抽出後のデータとの関係にある。
【0036】
機械学習は、抽出される複数の画像要素50について、画像要素毎に行われる。つまり、抽出すべき画像要素50毎に、学習データ66が準備される。
【0037】
図4に示すように、複数の画像要素50は、生体組織である第1要素51と、非生体組織である第2要素52とを含む。また、複数の画像要素50は、骨53、血管54、体内に導入されるデバイス55、衣類56、ノイズ57およびX線の散乱線成分58のうち少なくとも複数を含む。これらの内、骨53および血管54が、第1要素51に該当する。第1要素51は、骨53、血管54以外の生体組織を含んでもよい。これらの内、体内に導入されるデバイス55、衣類56、ノイズ57およびX線の散乱線成分58が、第2要素52に該当する。第2要素52は、デバイス55、衣類56、ノイズ57および散乱線成分58以外の画像要素を含んでもよい。
【0038】
図5に示す例では、1つの学習済みモデル40が、複数の画像要素50を別々に抽出するように構成されている。学習済みモデル40は、1つの入力チャネルと、複数(N個)の出力チャネルとを有する。Nは、2以上の整数である。学習済みモデル40は、入力チャネルに、X線画像201が入力されると、N個の画像要素50を別々に抽出する。学習済みモデル40は、抽出した1番目~N番目の画像要素50を、N個の出力チャネルから、それぞれ第1抽出画像21-1~第N抽出画像21-Nとして出力する。
【0039】
図5とは異なる例として、
図6の例では、学習済みモデル40は、1つの入力チャネルと、N+1個の出力チャネルとを有する。学習済みモデル40は、入力チャネルにX線画像201が入力されると、入力画像から複数(N個)の画像要素50を重複なしで抽出する。重複なしとは、いずれかの抽出画像(たとえば第1抽出画像21-1)に抽出された画像情報が、他の抽出画像(たとえば第2抽出画像21-2~第N抽出画像21-N)には含まれることがないことを意味する。学習済みモデル40は、抽出した1番目~N番目の画像要素をそれぞれ第1抽出画像21-1~第N抽出画像21-Nとして出力する。そして、学習済みモデル40は、抽出後に残る残余画像要素59を、N+1番目の出力チャネルから第N+1抽出画像21xとして出力する。
【0040】
この場合、第1抽出画像21-1~第N抽出画像21-Nは、互いに同一の画像情報を含まない。そして、入力されたX線画像201のうち、抽出されずに残る画像情報は第N+1抽出画像21xに含まれる。そのため、第1抽出画像21-1~第N抽出画像21-Nと第N+1抽出画像21xとを加算すると、元のX線画像201に戻ることになる。
【0041】
このように、
図6の例では、学習済みモデル40は、入力画像から複数の画像要素50を重複なしで抽出し、抽出した複数の画像要素50と、抽出後に残る残余画像要素59と、をそれぞれ出力するように構成されている。この結果、入力画像と比べて、抽出処理によって抽出された画像情報の合計が増えることも減ることもない。
【0042】
図6に示すように、画像生成部30(
図1参照)は、入力されたX線画像201に対して、第1抽出画像21-1~第N抽出画像21-Nに重み係数23を加味して加算または減算する画像間演算を行い、処理画像22を生成する。残余画像要素59を表す第N+1抽出画像21xは、画像処理には用いる必要がない。重み係数23としては、第1抽出画像21-1~第N抽出画像21-Nのそれぞれに対応して、係数w1~wnが個別に設定される。重み係数23は、たとえば、予め記憶部102に設定された固定値でありうる。ただし、処理画像22の用途などに応じて、複数種類の重み係数が設定されていてもよい。たとえば、処理モードAでは第1抽出画像21-1に重み係数23の第1の設定値が使用され、処理モードBでは第1抽出画像21-1に重み係数23の第2の設定値が使用される、といった具合である。また、重み係数23は、ユーザの操作入力に応じて任意の値に設定可能であってもよい。
【0043】
図7に示すように、各抽出画像21とX線画像201との画像間演算を行う前に、それぞれの抽出画像21に対して画像処理を行ってもよい。
図7の例では、画像生成部30は、複数の抽出画像21の一部または全部に対して、別々に画像処理を行うように構成されている。処理画像22は、画像処理後の複数の抽出画像21と、X線画像201との画像間演算により生成される。
【0044】
たとえば
図7では、画像生成部30は、第1抽出画像21-1に対して第1画像処理25-1を行い、第2抽出画像21-2に対して第2画像処理25-2を行い、・・・、第N抽出画像21-Nに対して第N画像処理25-Nを行う。画像要素50によっては画像処理を行う必要がない場合もあるので、一部の抽出画像21に対してのみ画像処理を行ってもよい。
【0045】
個々の抽出画像に対して行う画像処理は、特に限定されないが、たとえば画像補正処理または画像補間処理でありうる。画像補正処理は、エッジ強調処理、ノイズ除去処理を含みうる。画像補正処理は、たとえばコントラスト調整、線強調処理、平滑化処理などでありうる。画像補間処理は、たとえばガイドワイヤやカテーテルなどX線画像201中で写りにくいために途中で途切れたように見える画像要素50について、途切れた部分を補間する処理である。コントラスト調整や線強調処理などは、画像要素50毎に、適切なパラメータが異なり、全ての画像要素50を一括で処理することは困難であるが、個々の抽出画像21に対して画像処理を行うことによって、1つ1つの画像要素50に最適な画像処理が行われる。
【0046】
(画像生成方法)
次に、
図8を参照して、本実施形態の画像生成方法について説明する。画像生成方法は、画像処理装置100によって実施することができる。本実施形態の画像生成方法は、少なくとも、
図8に示した以下のステップS2およびステップS5を備える。
(S2)入力画像中から特定の画像要素50を抽出する処理を学習させた学習済みモデル40を用いて、X線画像201から複数の画像要素50を別々に抽出する。
(S5)画像要素50毎に抽出された複数の抽出画像21と、X線画像201と、を用いた画像間演算を行うことにより、X線画像201に含まれる各画像要素50に画像処理が行われた処理画像22を生成する。
また、本実施形態の画像生成方法は、
図8に示したステップS1、S3、S4、S6をさらに備えていてもよい。
【0047】
ステップS1において、X線画像201を取得する。具体的には、画像取得部10(
図1参照)が、たとえば
図2に示したX線撮影装置200によって撮影されたX線画像201を、X線撮影装置200またはサーバ装置との通信によって取得する。
【0048】
ステップS2では、抽出処理部20が、学習済みモデル40を用いて、X線画像201から複数の画像要素50を別々に抽出する。抽出処理部20は、ステップS1で取得したX線画像201を学習済みモデル40に入力する。これにより、学習済みモデル40が、
図5または
図6に示したように第1抽出画像21-1~第N抽出画像21-Nを出力する。
【0049】
ステップS3において、
図7に示したように、抽出された複数の抽出画像21の一部または全部に対して、画像処理を行ってもよい。この場合、画像生成部30が、画像処理の対象となる抽出画像21に対して、予め設定された画像処理を所定のパラメータで実行する。画像処理を行うか否かを、ユーザからの入力に応じて決定してもよい。画像処理を行うか否かを、抽出画像21の画像品質に応じて決定してもよい。ステップS3は実行しなくてもよい。
【0050】
ステップS4において、画像生成部30が、抽出画像21毎に、演算パラメータを取得する。演算パラメータは、たとえば重み係数23の設定値、演算方法の設定値を含む。演算方法の設定値は、対象となる抽出画像21について、重み付け加算(すなわち、画像要素50の強調処理)を行うか、重み付け減算(すなわち、画像要素50の除去処理)を行うか、を表す。演算方法の設定値および重み係数23の設定値は、抽出される画像要素50の種類毎に記憶部102に予め設定される。
【0051】
ステップS5では、画像生成部30が、画像要素50毎に抽出された複数の抽出画像21と、X線画像201と、を用いた画像間演算を行う。画像生成部30は、ステップS4で取得したパラメータに従って画像間演算を行う。画像生成部30は、第1抽出画像21-1~第N抽出画像21-Nの各々について、それぞれ対応する重み係数23を乗算して、それぞれ対応する演算方法によってX線画像201に対する画像間演算を行う。その結果、各抽出画像21によって重み付け加算または重み付け減算されたX線画像201が、処理画像22として生成される。これにより、画像生成部30が、X線画像201に含まれる各画像要素50に強調処理または除去処理である画像処理が行われた処理画像22(
図6または
図7参照)を生成する。
【0052】
ステップS6において、画像処理装置100は、処理画像22を出力する。画像処理装置100は、表示装置103、またはサーバ装置に処理画像22を出力する。また、画像処理装置100は、記憶部102に処理画像22を記憶する。
【0053】
処理画像22を表示装置103に表示させた後、画像生成部30は、演算パラメータを変更する操作入力を受け付けてもよい。たとえば画像生成部30は、重み係数23の値の入力を受け付けてもよいし、別のプリセットパラメータの選択を受け付けてもよい。たとえば画像生成部30は、ステップS3における画像処理のパラメータの変更を受け付けてもよい。そして、画像生成部30は、ユーザの操作入力に応じて、変更後のパラメータを用いて処理画像22を生成し直してもよい。
【0054】
(学習済みモデルの作成方法)
次に、学習済みモデルの作成方法について説明する。学習済みモデル40の作成は、画像処理装置100のプロセッサ101によって実施してもよいが、機械学習用のコンピュータ(学習装置300、
図10参照)を用いて実行されうる。
【0055】
図9および
図10に示すように、本実施形態の学習済みモデルの作成方法は、以下のステップS11~S14を含む。
(S11)CT(コンピュータ断層撮影)画像データ80を2次元の投影画像に再構成した再構成画像60を生成する。CT画像データ80は、「3次元X線画像データ」の一例である。
(S12)シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素50の3次元モデルから2次元の投影像61を生成する。
(S13)画像要素50の投影像61を再構成画像60に重畳して重畳画像67を生成する。
(S14)重畳画像67を教師入力データ64(
図3参照)とし、再構成画像60または投影像61を教師出力データ65(
図3参照)として機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる画像要素50を抽出する処理を行う学習済みモデル40(
図3参照)を作成する。
【0056】
本実施形態では、機械学習は、1つの学習モデルLMに対して、画像要素50毎に作成された教師入力データ64(
図3参照)および教師出力データ65(
図3参照)を入力することを含む。抽出対象となる画像要素50毎に、別々の学習モデルLMに対して機械学習を行ってもよい。
【0057】
まず、
図10のステップS10において、CT画像データ80が取得される。CT画像データ80は、被写体1をCT撮影することにより得られた、被写体1の3次元構造を反映した3次元画像データである。CT画像データ80は、3次元位置座標と、当該位置座標におけるCT値とを含むボクセルデータの3次元集合体である。血管などの動く(拍動する)部分の画像要素については、3次元情報に時間変化も含めた4次元の4D-CTデータを用いてもよい。これにより、時間に伴って動く対象でも精度よく学習を行うことが可能である。
【0058】
ステップS11において、CT画像データ80を2次元の投影画像に再構成した再構成画像60が生成される。
【0059】
再構成画像60は、CT画像データ80から生成されるDRR画像である。DRR画像は、
図2に示したようなX線撮影装置200のX線照射部220とX線検出器230との幾何学的投影条件を模擬した仮想的透視投影によって2次元投影画像として作成される模擬X線画像である。
【0060】
具体的には、
図11に示すように、3次元仮想空間上において、仮想X線管91と仮想X線検出器92とを、CT画像データ80に対して所定の投影方向となるように仮想的に配置することによって、仮想的なX線撮影系の3次元空間的配置(撮影ジオメトリ)を生成する。これらのCT画像データ80と、仮想X線管91および仮想X線検出器92との配置は、
図2に示した実際の被写体1と、X線照射部220およびX線検出器230との配置と同一の撮影ジオメトリとされる。なお、撮影ジオメトリとは、被写体1とX線照射部220およびX線検出器230との3次元空間における幾何学的な配置関係を意味する。
【0061】
そして、仮想X線管91から照射されたX線が仮想X線検出器92に到達するまでに通過した各ボクセルにおけるCT値の合計を加算することによって、再構成画像60における各画素の画素値が算出される。撮影ジオメトリを変更することによって、任意の投影角度における模擬X線画像を生成することができる。
【0062】
学習済みモデルの作成方法では、学習装置300により、1つの3次元データ(CT画像データ80)から、複数の再構成画像60が生成される。再構成画像60の生成数は、たとえば、約10万程度でありうる。学習装置300は、投影角度、投影座標、DRR画像生成のためのパラメータ、コントラスト、エッジ強調などの各パラメータを互いに異ならせて、複数の再構成画像60を生成する。互いに異ならせた複数の再構成画像60は、たとえば上記のパラメータをランダムに変更して再構成画像60を生成するアルゴリズムにより生成されうる。
【0063】
本実施形態では、画像要素50を含む投影像61と重畳した重畳画像67を作成するので、再構成画像60は、抽出対象となる画像要素50を含まないか、画像要素50を含んでいても抽出可能なコントラストを有していなくてもよい。
【0064】
また、本明細書において、「ランダム」、「乱数」という用語は、規則性がないこと、規則性がない数列(数の集合)を意味するが、完全にランダムである必要はなく、擬似ランダム、擬似乱数を含むものとする。
【0065】
図9のステップS12において、シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素50の3次元モデルから2次元の投影像61が生成される。
【0066】
投影像61は、学習済みモデル40による抽出の対象となる画像要素50を表す2次元画像である。投影像61は、たとえば画像要素50のみを含む。学習装置300は、抽出対象となる画像要素50の3次元モデルを取得し、3次元モデルからシミュレーションにより投影像61を生成する。
【0067】
3次元モデルは、たとえば、抽出対象となる画像要素50を含む対象物のCT撮影を行い、得られたCTデータから画像要素50を抽出することにより作成される。3次元モデルは、たとえば、研究機関等により公開されているCT画像データベースを利用して作成しうる。CT画像データベースは、たとえば、肺部CT画像データセットとして、米国国立がん研究所によるLIDC/IDRI(The Lung Image Data base Consortium and Image Database Resource Initiative)がある。この他にも、脳CT画像データセットや、標準化された骨格の3次元モデルなどを利用しうる。また、デバイス55、衣類56については、3次元CADデータを利用して作成しうる。3次元モデルは、たとえば、抽出対象となる画像要素50のみを含む3次元画像データである。
【0068】
なお、機械学習に用いる全ての投影像61を、3次元モデルからシミュレーションにより生成する必要はない。抽出すべき画像要素50を実際に含んだ2次元データ(X線画像)を取得し、取得された画像に含まれる画像要素50を分離抽出することにより、投影像61を作成しうる。
【0069】
学習装置300は、3次元モデルまたは2次元データに対して、投影方向、平行移動量、回転量、変形量、コントラストなどのパラメータを互いに異ならせて、2次元の投影像61を複数生成する。複数の投影像61は、元になるデータ(3次元モデル、2次元データ、他の投影像61)に対して、平行移動量、回転量、変形量、コントラストなどの可変パラメータをランダムに変更する処理を行うアルゴリズムによって生成されうる。
【0070】
学習装置300は、画像要素50の種類毎に、複数ずつ、2次元の投影像61を生成する。学習装置300は、1つの元データ(3次元データ、2次元データまたは投影像61)から、複数の投影像61を生成する。1つの元データからの投影像61の生成数は、たとえば、約10万程度でありうる。
【0071】
ステップS13において、ステップS12で生成した投影像61を、ステップS11で生成した再構成画像60に重畳して、重畳画像67(
図10参照)を生成する。重畳により、2次元の再構成画像60中に、抽出すべき画像要素50の投影像61を含んだ重畳画像67が生成される。複数の再構成画像60と複数の投影像61との組み合わせにより、重畳画像67も複数生成される。1つの学習データ66(
図3参照)は、重畳画像67と、その重畳画像67の生成に使用した再構成画像60および投影像61のうちのいずれかと、を含む。
【0072】
図9のステップS14において、機械学習が行われる。
図3の学習モデルLMの入力層41に入力される教師入力データ64として、重畳画像67が使用される。そして、学習モデルの出力層43に入力される教師出力データ65として、再構成画像60または投影像61が使用される。
【0073】
教師出力データ65が再構成画像60である場合、学習モデルLMは、入力画像から画像要素50を抽出して、当該画像要素50を含まない抽出画像21を生成することを学習する。教師出力データ65が投影像61である場合、学習モデルLMは、入力画像から画像要素50を抽出して、抽出した画像要素50を表す抽出画像21を生成することを学習する。抽出画像21は、画像要素50のみを含む画像でありうる。なお、画像要素50を含まない処理画像22を生成し、入力されたX線画像201から減算することにより、抽出した画像要素50のみを含む画像が生成できることから、教師出力データ65として再構成画像60を採用することと、投影像61を採用することとは、画像処理の観点で同等と考えることができる。
【0074】
なお、機械学習に用いる全ての学習データ66を、重畳画像67により作成する必要はない。抽出すべき画像要素50を実際に含んだ再構成画像60を教師入力データ64とし、その再構成画像60から抽出した画像要素50の投影像61を教師出力データ65としてもよい。
【0075】
図9のステップS15において、学習装置300は、機械学習が完了したか否かを判断する。学習装置300は、たとえば、全ての学習データ66について、所定の反復回数の機械学習が行われた場合に、機械学習が完了したと判断する。学習装置300は、たとえば学習モデルLMの性能を評価する評価関数の値が所定値以上となった場合に、機械学習が完了したと判断する。学習装置300は、機械学習が完了していないと判断した場合には、ステップS16において学習データ66を変更して、次の学習データ66を用いてステップS14の機械学習を実行する。
【0076】
機械学習が完了した場合、ステップS17において、学習された学習モデルLMが、学習済みモデル40として記憶される。これにより、学習済みモデル40の作成が完了する。作成された学習済みモデル40は、ネットワークを介して、または、非一過性の記録媒体に記録され、画像処理装置100に提供される。
【0077】
(画像要素毎の具体例)
次に、画像要素50毎の、重畳画像67(教師入力データ64)と、再構成画像60または投影像61(教師出力データ65)との具体例を説明する。また、画像要素50毎の、抽出画像21を用いた処理画像22の例を説明する。
【0078】
〈骨部〉
図12は、画像要素50が骨53である例を示す。教師入力データ64は、たとえば骨53を含まない再構成画像60と、骨53を含む投影像61との重畳画像67である。
【0079】
たとえばCT画像データ80または骨格の3次元モデルから投影像61を作成し、骨53を除去した再構成画像60に重畳することにより、重畳画像67が生成される。骨53を除去した再構成画像60は、骨53が有するCT値の範囲の画素について、CT値をゼロにクリップ(固定)することにより生成される。骨部が有するCT値は、一般に、約200HU~約1000HUとされるので、閾値を0HU~200HU程度の所定値に設定すればよい。
【0080】
教師出力データ65は、骨53のみを含む投影像61である。教師出力データ65には、重畳画像67の生成に使用した投影像61が使用される。
【0081】
なお、被験者を撮影したCT画像データ80には、通常、骨部が含まれるため、CT画像データ80から生成した再構成画像60を教師入力データ64としてもよい。そのため、必ずしも重畳画像67を作成する必要はない。
【0082】
この場合、教師出力データ65は、骨53のみを含む再構成画像60である。骨53のみを含む再構成画像60は、たとえば骨53を含む再構成画像60のうち、骨53が有するCT値未満のCT値を有する画素について、CT値をゼロにクリップすることにより生成される。
【0083】
機械学習により、学習モデルLMは、教師入力データ64のような入力画像から、教師出力データ65のように骨53を抽出した抽出画像21を生成することを学習する。
【0084】
画像処理装置100は、X線撮影装置200により取得されたX線画像201に対して、学習済みモデル40により生成した抽出画像21を重み付け減算する。これにより、
図13に示すように、X線画像201から骨53の画像要素50を除去した処理画像22が生成される。
図13では、説明のため便宜的に、除去された骨53の画像要素50を破線で示している。
【0085】
〈デバイス〉
図14は、画像要素50がデバイス55である例を示す。
図14では、デバイス55がガイドワイヤである。
【0086】
教師入力データ64は、デバイス55を含む重畳画像67である。CT画像データ80から生成した再構成画像60には、画像要素50が含まれていない。デバイス55の3次元モデルから生成されたデバイス55のみの投影像61が、再構成画像60に重畳される。その結果、
図14のようにデバイス55を含む重畳画像67が生成される。
【0087】
上記のように、デバイス55の2次元X線画像を撮影して、シミュレーションにより形状等を変化させた投影像61のバリエーションが複数作成されてもよい。複数の投影像61を用いて、複数の重畳画像67が生成される。
【0088】
特に、
図16に示すように、画像要素50が、線状または管状のデバイス55である場合、画像要素50の投影像61は、デバイス55の3次元モデルの形状をランダムな座標値に基づいて生成した曲線でシミュレーションすることにより生成される。
図16では、デバイス55の一例として、ステント55aを保持したガイドワイヤ55bの投影像61を、曲線シミュレーションによってランダムな形状で生成した例(A)~(I)を示す。
【0089】
それぞれの投影像61におけるガイドワイヤ55bは、ランダムな座標値を基点としたベジェ曲線によって異なる形状に生成されている。ベジェ曲線は、K個(Kは3以上の整数)の制御点から得られるK-1次曲線である。K個の制御点の座標値をランダムに指定するアルゴリズムによって、多様な形状のデバイス55の投影像61が大量に生成できる。
【0090】
体内に留置されたステント55aの単独の投影像61は、3次元モデル化した擬似ステントにランダムな平行移動、回転、変形、コントラスト変化を加えることによって、複数生成される。
【0091】
図14に戻り、教師出力データ65は、デバイス55のみを含む投影像61である。教師出力データ65には、重畳画像67の生成に使用した投影像61が使用される。
【0092】
機械学習により、学習モデルLMは、教師入力データ64のような入力画像から、教師出力データ65のようにデバイス55を抽出した抽出画像21を生成することを学習する。
【0093】
画像処理装置100は、X線撮影装置200により取得されたX線画像201に対して、学習済みモデル40により生成した抽出画像21を重み付け加算する。これにより、
図15に示すように、X線画像201からデバイス55の画像要素50を強調した処理画像22が生成される。
図15では、
図14と比べてデバイス55を太く図示することにより、強調されたことを示している。強調処理は、画素値を増大させる処理だけでなく、
図7に示した画像間演算の前の画像処理により、デバイス55の画像要素50を着色して表示する処理なども含まれうる。
【0094】
〈ノイズ〉
図17は、画像要素50がノイズ57である例を示す。ノイズ57は、たとえばランダムノイズであるが、
図17では、説明のために便宜的に、水平方向の点線の集合として示している。
【0095】
教師入力データ64は、ノイズ57を含む重畳画像67である。CT画像データ80から生成した再構成画像60には、ノイズ57が含まれていない。ランダムに生成されたノイズ57のみの投影像61が、再構成画像60に重畳される。その結果、
図17のようにノイズ57を含む重畳画像67が生成される。ノイズ57は、ガウス分布に従うガウスノイズや、ポアソン分布に従うポアソンノイズを、投影像61毎にランダムに生成することによって作成される。
【0096】
教師出力データ65は、ノイズ57のみを含む投影像61である。教師出力データ65には、重畳画像67の生成に使用した投影像61が使用される。
【0097】
機械学習により、学習モデルLMは、教師入力データ64のような入力画像から、教師出力データ65のようにノイズ57を抽出した抽出画像21を生成することを学習する。
【0098】
画像処理装置100は、X線撮影装置200により取得されたX線画像201に対して、学習済みモデル40により生成した抽出画像21を重み付け減算する。これにより、
図18に示すように、X線画像201からノイズ57の画像要素50を除去した処理画像22が生成される。
図18の処理画像22は、
図17の教師入力データ64のようにノイズ57が含まれるX線画像201から、ノイズ57が除去されたことを示している。
【0099】
〈血管〉
図19は、画像要素50が血管54である例を示す。血管54は、造影剤を導入して画像化された造影血管である。
図19は、頭部の脳血管の例を示しているが、その他の血管でもよい。血管は、たとえば心臓の冠動脈でありうる。
【0100】
教師入力データ64は、血管54を含む重畳画像67である。造影なしで撮影されたCT画像データ80から生成した再構成画像60には、血管54がほぼ含まれていない(十分なコントラストを有していない)。血管54の3次元モデルから生成された血管54のみの投影像61が、再構成画像60に重畳される。その結果、
図19のように血管54を含む重畳画像67が生成される。
【0101】
画像要素50が血管54である場合、画像要素50の投影像61は、血管54の3次元モデルの形状をランダムに変化させるシミュレーションにより生成される。投影像61の血管には、シミュレーションによりランダムな平行移動、回転、変形、コントラスト変化等が施される。すなわち、
図16に示したデバイス55と同様に、ランダムな変化が施された血管54の投影像61のバリエーションが生成される。上記のように、造影撮影された造影血管のCT画像データから、血管54の投影像61を作成してもよい。
【0102】
教師出力データ65は、血管54のみを含む投影像61である。教師出力データ65には、重畳画像67の生成に使用した投影像61が使用される。
【0103】
機械学習により、学習モデルLMは、教師入力データ64のような入力画像から、教師出力データ65のように血管54を抽出した抽出画像21を生成することを学習する。
【0104】
画像処理装置100は、X線撮影装置200により取得されたX線画像201に対して、学習済みモデル40により生成した抽出画像21を重み付け加算する。これにより、
図20に示すように、X線画像201から血管54の画像要素50を強調した処理画像22が生成される。
図20の処理画像22は、
図19の教師入力データ64のように血管54の画像要素50を含むX線画像201において、当該血管54が強調表示されたことを示している。
【0105】
〈衣類〉
図21は、画像要素50が衣類56である例を示す。
図21では、衣類56の例として、衣服のボタンおよび被験者が身に着けるネックレスを示している。
【0106】
教師入力データ64は、衣類56を含む重畳画像67である。CT画像データ80から生成した再構成画像60には、衣類56が含まれていない。衣類56の3次元モデルから生成された衣類56のみの投影像61が、再構成画像60に重畳される。その結果、
図21のように衣類56を含む重畳画像67が生成される。衣類56の3次元モデルは、衣類56のみのCT画像から作成してもよいし、たとえばCADデータなどから作成してもよい。上記のように、衣類56の2次元X線画像を撮影して、投影像61としてもよい。投影像61には、シミュレーションによりランダムな平行移動、回転、変形、コントラスト変化等が施される。
【0107】
教師出力データ65は、衣類56のみを含む投影像61である。教師出力データ65には、重畳画像67の生成に使用した投影像61と同一のデータが使用される。
【0108】
機械学習により、学習モデルLMは、教師入力データ64のような入力画像から、教師出力データ65のように衣類56を抽出した抽出画像21を生成することを学習する。
【0109】
画像処理装置100は、X線撮影装置200により取得されたX線画像201に対して、学習済みモデル40により生成した抽出画像21を重み付け減算する。これにより、
図22に示すように、X線画像201から衣類56の画像要素50を除去した処理画像22が生成される。
図22では、除去されたことを説明するため、便宜的に、除去された衣類56の画像要素50の部分を破線で示している。
【0110】
〈散乱線成分〉
図23は、画像要素50がX線の散乱線成分58である例を示す。
【0111】
教師入力データ64は、散乱線成分58を含む重畳画像67である。CT画像データ80から生成した再構成画像60では、再構成演算に散乱線成分58が含まれない。入力画像の撮影環境をモデル化したモンテカルロシミュレーションにより生成された散乱線成分58のみの投影像61が、再構成画像60に重畳される。その結果、散乱線成分58を含む重畳画像67が生成される。
【0112】
モンテカルロシミュレーションでは、たとえば
図2(または
図11)に示したように、X線照射部220からX線検出器230に至る入力画像(X線画像201)の撮影環境を3次元モデル化した撮影環境モデル85を作成する。そして、X線照射部220から出射され、X線検出器230により検出されるX線光子の1つ1つを、乱数を利用した確率現象として計算(シミュレーション)する。すなわち、シミュレーションにおいて、X線の投影方向、被験者の形状(体形)および光子に対する相互作用に関わる物性が仮定される。そして、X線光子が被験者を通過する際に生じる吸収、散乱現象などの相互作用が、確率現象として乱数を利用して計算される。モンテカルロシミュレーションでは、所定の光子数の計算を行い、仮想したX線検出器230により検出されたX線光子が形成する投影像61を生成する。所定の光子数は、画像化するのに十分な数であればよく、たとえば100億個程度である。
【0113】
本実施形態では、散乱線成分58である画像要素50の投影像61は、撮影環境モデル85におけるX線撮影装置200が撮影可能な投影角度範囲に亘って投影角度を変化させて複数生成される。たとえば
図2に示した例では、Cアーム240の移動により第1方向250および第2方向252に投影方向を変更可能である。そこで、
図25に示すように、第1方向250に±α度、第2方向252に±β度の投影角度範囲の全体に亘って、異なる角度値に変化させた複数の投影角度で、モンテカルロシミュレーションによる投影像61が生成される。投影角度は、投影角度範囲の全体に亘って等角度間隔で変更されてもよいし、投影角度範囲内で所定の数だけランダムに変更させた値としてもよい。さらに、投影角度範囲の外部であって、投影角度の限界(±α度、±β度)付近の角度値での投影像61を生成してもよい。
【0114】
また、本実施形態では、散乱線成分58である画像要素50の投影像61は、撮影環境モデル85における仮想線源のエネルギースペクトルを変化させて複数生成される。すなわち、撮影環境モデル85として仮定したX線照射部220により照射されるX線のエネルギースペクトルを、異なるスペクトルに変化させた複数条件で、モンテカルロシミュレーションによる投影像61の作成が行われる。
【0115】
一般に、X線の光子エネルギーが低い程、被験者の体内で吸収されやすく、散乱線成分58が発生しにくい。X線の光子エネルギーが高い程、被験者の体内で吸収されにくく、散乱線成分58が発生しやすい。そこで、たとえば
図26に示す第1エネルギースペクトル111に基づく投影像61と、
図27に示す第2エネルギースペクトル112に基づく投影像61とが、作成される。第2エネルギースペクトル112は、第1エネルギースペクトル111よりも相対的に高エネルギーのスペクトルである。
図26および
図27において、グラフの横軸はX線光子のエネルギー[keV]を示し、グラフの縦軸はX線の相対強度(すなわち、検出されるX線光子の数)を示す。
【0116】
なお、吸収スペクトルの相違に起因して、被験者に照射されたX線のエネルギースペクトルが検出される過程で相対的に高エネルギー側に偏るビームハードニング現象が発生する。CT画像データ80から生成した再構成画像60では、ビームハードニング現象に起因する画質変化をシミュレートすることができないが、モンテカルロシミュレーションによる投影像61では、ビームハードニング現象の影響を模擬することが可能である。
【0117】
図23は、一例として、モンテカルロシミュレーションによって求められたコンプトン散乱による散乱線成分58の投影像61を示している。本実施形態では、レイリー散乱などのコンプトン散乱以外の散乱線成分58を求めてもよい。さらに単一散乱だけでなく多重散乱による散乱線成分58を求めてもよい。これらの各種の散乱線成分58を別々の投影像61として作成し、別々に抽出するように機械学習を行ってもよいし、各種の散乱線成分58をまとめて表示する投影像61を作成し、各種の散乱線成分58を一括して抽出するように機械学習を行ってもよい。
【0118】
教師出力データ65は、散乱線成分58のみを含む投影像61である。教師出力データ65には、重畳画像67の生成に使用した投影像61と同一のデータが使用される。
【0119】
機械学習により、学習モデルLMは、教師入力データ64のような入力画像から、教師出力データ65のように散乱線成分58を抽出した抽出画像21を生成することを学習する。
【0120】
画像処理装置100は、X線撮影装置200により取得されたX線画像201に対して、学習済みモデル40により生成した抽出画像21を重み付け減算する。これにより、
図24に示すように、X線画像201から散乱線成分58の画像要素50を除去した処理画像22が生成される。散乱線成分58は、X線画像のコントラストを低下させる要因となるため、処理画像22では、散乱線成分58の除去によりコントラストを改善することが可能である。
図24の処理画像22は、
図23の教師入力データ64のように散乱線成分58によりコントラストが低下したX線画像201から、散乱線成分58が除去されることにより、コントラストが改善したことを示している。
【0121】
〈コリメータ画像〉
本実施形態では、作成される各教師入力データ64および各教師出力データ65の一部には、X線撮影装置200(X線照射部220)が備えるコリメータ(図示せず)によって撮影範囲が制限されたコリメータ画像68が含まれる。コリメータ画像68では、画像中の一部の領域にのみ画像が形成され、コリメータによって遮蔽された領域には画像情報が含まれない。各教師入力データ64および各教師出力データ65のうち一部は、コリメータを用いて実際に撮影された画像に基づくシミュレーションにより、X線の照射範囲(すなわち、画像領域)の形状、コリメータによる影響を受ける画質のパラメータをランダムに異ならせた複数のコリメータ画像68を含む。コリメータによる影響を受ける画質のパラメータは、透過度合い(コントラスト)、エッジのボケ、ノイズの含有量などである。
【0122】
コリメータ画像68は、たとえば、重畳画像67、再構成画像60および投影像61に対して、シミュレーションした照射範囲外の画像部分を除去し、コリメータによる影響を模擬した画像処理を施すことにより生成される。コリメータ画像68は、コリメータを用いて実際に撮影された画像から生成してもよい。これにより、コリメータの利用によるX線の照射範囲の変化や画質の変化に対する、画像要素50の抽出処理の頑健性を向上できる。
【0123】
以上のようにして、画像要素50の種類毎の機械学習と、画像処理装置100による処理画像22の生成とが行われる。
【0124】
上記の各具体例では、説明の便宜のため、個々の画像要素50および処理画像22を個別に説明した。しかし、実際の画像処理装置100による処理画像22の生成の際には、画像処理装置100に入力されるX線画像201には、上記の骨53、血管54、デバイス55、衣類56、ノイズ57および散乱線成分58のうち複数が含まれる。画像処理装置100は、入力されたX線画像201から、学習済みモデル40によって個々の画像要素50を抽出した抽出画像21を生成して、画像間演算を行う。その結果、複数の画像要素50の1つ1つについて強調処理または除去処理が行われた処理画像22が生成される。
【0125】
たとえば
図7に示した例では、N=6であり、第1抽出画像21-1が骨53を表し、第2抽出画像21-2がデバイス55を表し、第3抽出画像(21-3とする)がノイズ57を表し、第4抽出画像(21-4とする)が血管54を表し、第5抽出画像(21-5とする)が衣類56を表し、第6抽出画像(21-6とする)が散乱線成分58を表す。
【0126】
処理画像22の利用シーンについて、いくつかの例を示す。
【0127】
たとえば処理画像22は、単純X線撮影による、被験者の胸部正面のX線画像などに適用される。この場合、処理画像22において、骨53、ノイズ57、衣類56および散乱線成分58が除去される。骨53の除去により、心臓や肺などの関心領域の視認性が向上する。また、ノイズ57および散乱線成分58が除去されることにより、画像全体の視認性が向上する。衣類56の画像要素50が除去可能となることから、被験者が金属等を含む衣服、アクセサリ等を取り外すことなく、X線撮影を行うことができる。このことは、たとえば集団検診など、多数の被験者のX線撮影を連続的に行う場合に、作業効率の向上、被験者の待ち時間の削減などの有用な効果をもたらす。
【0128】
また、たとえば処理画像22は、X線血管撮影装置を利用したカテーテル治療のように、X線画像下治療(IVR;Interventional Radiology)におけるX線透視画像などに適用される。この場合、処理画像22において、骨53、ノイズ57および散乱線成分58が除去される。処理画像22において、カテーテルやガイドワイヤ、ステントなどのデバイス55および血管54が強調される。骨53、ノイズ57および散乱線成分58の除去により、透視画像の視認性が向上する。デバイス55および血管54が強調されることにより、カテーテル治療における関心領域や操作しているデバイスの視認性が向上する。
【0129】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0130】
本実施形態の学習済みモデル40の作成方法によれば、CT画像データ80を2次元の投影画像に再構成した再構成画像60と、シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素50の3次元モデルから生成した2次元の投影像61とを重畳した重畳画像67を教師入力データ64とし、再構成画像60または投影像61を教師出力データ65とする。これにより、CT画像データ80が抽出対象となる画像要素50を含んでいなくても、シミュレーションにより生成した抽出対象の画像要素50を用いて機械学習を行える。つまり、抽出すべき画像要素50を実際に含んだCT画像データ80を準備しなくても、教師データを用意することができる。また、シミュレーションにより抽出対象の画像要素50の投影像61を生成するので、CT画像データ80に含まれていても分離抽出することが困難な画像要素50についても、教師データを用意することができる。その結果、様々な画像要素50に対して、かつ、複数の画像要素50に対して画像処理を行うための学習済みモデル40の作成を効率的に行うことができる。
【0131】
本実施形態の画像生成方法および画像処理装置100によれば、入力画像中から特定の画像要素50を抽出する処理を学習させた学習済みモデル40を用いて、X線画像201から複数の画像要素50を別々に抽出し、画像要素50毎に抽出された複数の抽出画像21と、X線画像201と、を用いた画像間演算を行うことにより処理画像22を生成する。これにより、入力されたX線画像201から様々な画像要素50を抽出画像21として別々に抽出した上で、抽出された画像要素50の種類に応じて、それぞれの抽出画像21をX線画像201に対して自由に加算したり減算したりすることができる。その結果、様々な画像要素50に対して、かつ、複数の画像要素50に対しても画像処理を行うことができる。
【0132】
また、上記実施形態の例では、以下のように構成したことによって、更なる効果が得られる。
【0133】
すなわち、本実施形態では、重畳画像67は、互いに異なる複数の画像要素50毎に、複数作成され、複数の画像要素50は、生体組織である第1要素51と、非生体組織である第2要素52とを含む。このように構成すれば、骨53や血管54などの生体組織の画像要素50に対する画像処理と、体内に導入されるデバイス55や被験者が装着している衣類56などの非生体組織の画像要素50に対する画像処理とを、複合的に実行可能な学習済みモデル40を作成できる。このような学習済みモデル40を画像処理装置100に用いることにより、生体組織の画像要素50に対する画像処理と、非生体組織の画像要素50に対する画像処理とを、複合的に実行できる。
【0134】
また、本実施形態では、重畳画像67は、互いに異なる複数の画像要素50毎に、複数作成され、複数の画像要素50は、骨53、血管54、体内に導入されるデバイス55、衣類56、ノイズ57およびX線の散乱線成分58のうち少なくとも複数を含む。このように構成すれば、X線画像201の様々な利用シーンに応じた多様な画像要素50に対する画像処理を、複合的に実行可能な学習済みモデル40を作成できる。このような学習済みモデル40を画像処理装置100に用いることにより、X線画像201の様々な利用シーンに応じた多様な画像要素50に対する画像処理を、複合的に実行できる。
【0135】
また、本実施形態では、画像要素50は、線状または管状のデバイス55を含み、画像要素50の投影像61は、デバイス55の3次元モデルの形状をランダムな座標値に基づいて生成した曲線でシミュレーションすることにより生成される。このように構成すれば、ガイドワイヤやカテーテルなどの長くて様々な形状に曲がるデバイス55の画像要素50を学習するための教師データを、シミュレーションにより多様な形状でかつ大量に生成できる。その結果、実際に被験者の体内にデバイス55が配置された状態の3次元CTデータを大量に用意しなくても、効率的な機械学習を行える。
【0136】
また、本実施形態では、画像要素50は、血管54を含み、画像要素50の投影像61は、血管54の3次元モデルの形状をランダムに変化させるシミュレーションにより生成される。このように構成すれば、長くて複雑な形状に曲がる血管54の画像要素50を学習するための教師データを、シミュレーションにより、大量に、かつ、多様な個人差を含むように生成できる。その結果、様々な被験者の3次元CTデータを大量に用意しなくても、効率的な機械学習を行える。
【0137】
また、本実施形態では、画像要素50は、X線の散乱線成分58を含み、画像要素50の投影像61は、入力画像の撮影環境をモデル化したモンテカルロシミュレーションにより生成される。このように構成すれば、実際の3次元CTデータや2次元のX線画像201からは分離抽出することが困難なX線の散乱線成分58の投影像61を、モンテカルロシミュレーションによって生成できる。このようにして生成した投影像61を用いて、散乱線成分58を抽出する学習済みモデル40を作成することにより、実際に被験者を撮影したX線画像201から散乱線成分58を除去する画像処理を、モンテカルロシミュレーションのような複雑かつ高負荷の計算処理を行うことなく実現できる。そのため、たとえば散乱線成分58の影響が大きい腹部や骨部付近のコントラストを効果的に改善できる。また、たとえばX線撮影において散乱線成分58の影響を軽減するために用いられるX線吸収グリッドを使用しないで撮影を行い、散乱線成分58を画像処理によって除去するといった利用も可能となる。その場合、X線吸収グリッドを使用しない分だけX線量を低減できるので、被験者の被曝線量を効果的に低減できる。
【0138】
また、本実施形態では、画像要素50の投影像61は、撮影環境モデル85におけるX線撮影装置200が撮影可能な投影角度範囲(±α、±β)に亘って投影角度を変化させて複数生成される。このように構成すれば、単純X線撮影のように特定の投影方向(胸部正面、胸部側面など)からのみ撮影する場合だけでなく、X線画像下治療において多様な投影角度でX線撮影が行われたり、投影角度を変化させながらX線撮影が行われたりする場合にも、散乱線成分58を効果的に抽出可能な汎用性の高い学習済みモデル40を作成できる。
【0139】
また、本実施形態では、画像要素50の投影像61は、撮影環境モデル85における仮想線源のエネルギースペクトルを変化させて複数生成される。実際の医療現場では、撮影部位などに応じて、エネルギースペクトルが異なる様々な撮影条件でX線撮影が行われるが、上記構成によれば、そのようにX線画像201が様々なエネルギースペクトルで撮影される場合でも、散乱線成分58を効果的に抽出可能な汎用性の高い学習済みモデル40を作成できる。
【0140】
また、本実施形態では、機械学習は、1つの学習モデルLMに対して、画像要素50毎に作成された教師入力データ64および教師出力データ65を入力することを含み、学習済みモデル40は、入力画像から複数の画像要素50を重複なしで抽出し、抽出した複数の画像要素50と、抽出後に残る残余画像要素59と、をそれぞれ出力するように構成されている。このように構成すれば、抽出された複数の画像要素50と、残余画像要素59と、を全て加算すると元の入力画像に戻るように画像要素50の抽出が行える学習済みモデル40を提供できる。つまり、1つのX線画像201から複数の画像要素50を抽出した場合でも、当該X線画像201に含まれる画像情報のロスや、画像情報の意図しない増大が発生しない。X線画像201を用いて診断を行う医師等は、たとえ視認性を向上させる各種の画像処理を行ったとしても、元画像に含まれている画像情報に診断の根拠を見出すため、画像情報のロスが発生しないように画像要素50を抽出可能な学習済みモデル40によれば、複合的な画像処理を行う場合でも医師等が信頼可能な画像を提供できる。
【0141】
また、本実施形態では、複数の抽出画像21の一部または全部に対して、別々に画像処理を行い、処理画像22は、画像処理後の複数の抽出画像21と、X線画像201との画像間演算により生成される。このように構成すれば、学習済みモデル40を用いて複数の画像要素50を別々に抽出できることを利用して、抽出された各画像要素50の抽出画像21に対して、それぞれ独立して補正処理や補完処理などの画像処理が行える。ここで、たとえば抽出前のX線画像201に対して、特定の画像要素50だけに作用する画像処理を実行しようとする場合、その画像処理アルゴリズムは複雑かつ高負荷になり、特定の画像要素50以外の画像要素50に悪影響が及ぶこともありうる。これに対して、抽出画像21に対して画像処理を行う場合、他の画像要素50が存在しないことから、抽出画像21全体に対する単純なフィルタリング処理などを行うだけでも高い画像処理精度が得られる。そして、画像処理後の抽出画像21を用いて画像間演算を行うことにより、複数の画像要素50を単に強調したり除去したりするだけでなく、さらに個々の画像要素50に限定した高精度な画像処理を実行した処理画像22を、簡単に生成できる。
【0142】
また、本実施形態では、画像間演算は、X線画像201に対する、個々の抽出画像21の重み付け加算または重み付け減算を行うことを含む。このように構成すれば、抽出した複数の画像要素50を1つずつ個別に強調したり、除去したりした処理画像22を得ることができる。また、個々の画像要素50の強調度合いまたは除去度合いを、重み係数23の調整によって適切に設定できるので、X線画像201の様々な利用シーンに応じて、必要とされる画像要素50に対して高い視認性が得られる処理画像22を生成できる。
【0143】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0144】
たとえば、上記実施形態では、機械学習を行う装置(学習装置300)と、画像処理装置100とが別々の装置である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、画像処理装置において機械学習を行ってもよい。また、学習装置300は、クラウド上に設けられたサーバコンピュータにより構成されていてもよい。
【0145】
また、上記実施形態(
図5~
図7参照)では、1つの学習済みモデル40により、複数の画像要素50の抽出を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の学習済みモデルによって複数の画像要素50の抽出を行ってもよい。たとえば
図29に示すように、抽出すべき画像要素50毎に、1つずつ学習済みモデル40を設けてもよい。
図29では、学習済みモデル40-1、学習済みモデル40-2、・・・、学習済みモデル40-Nが設けられている。1つの学習済みモデル40は、1つ(1種類)の画像要素50の抽出を行う。この他、複数の画像要素50を抽出するように作成された学習済みモデル40を、複数設けてもよい。
【0146】
また、上記実施形態では、複数の画像要素50が、骨53、血管54、デバイス55、衣類56、ノイズ57および散乱線成分58のうち少なくとも複数を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。画像要素50は、骨53、血管54、デバイス55、衣類56、ノイズ57および散乱線成分58以外の画像要素を含んでもよい。画像要素50は、たとえば体内の特定の臓器などの特定の構造部分であってもよい。また、たとえば骨53のうち、特定部位の骨の画像要素50や、血管54のうち、特定部位の血管の画像要素50を他の骨や他の血管とは別に抽出してもよい。画像要素50は、骨53、血管54、デバイス55、衣類56、ノイズ57および散乱線成分58を含まなくてもよい。
【0147】
また、上記実施形態では、画像間演算により、骨53に除去処理を施し、血管54およびデバイス55に強調処理を施す例を示したが、本発明はこれに限られない。骨53に強調処理を施してもよいし、血管54およびデバイス55の一方または両方に除去処理を施してもよい。
【0148】
また、上記実施形態では、画像間演算の例として重み付け加算、重み付け減算の2つの例を示したが、本発明はこれに限られない。画像間演算は、重み係数なしの加算または減算であってもよい。画像要素50の強調処理を、重み係数あり、または重み係数なしの乗算により行ってもよい。画像要素50の除去処理を、重み係数あり、または重み係数なしの除算により行ってもよい。
【0149】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0150】
(項目1)
3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、
シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、
前記画像要素の前記投影像を前記再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を教師入力データとし、前記再構成画像または前記投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる前記画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成する、学習済みモデルの作成方法。
【0151】
(項目2)
前記重畳画像は、互いに異なる複数の画像要素毎に、複数作成され、
前記複数の画像要素は、生体組織である第1要素と、非生体組織である第2要素とを含む、項目1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【0152】
(項目3)
前記重畳画像は、互いに異なる複数の画像要素毎に、複数作成され、
前記複数の画像要素は、骨、血管、体内に導入されるデバイス、衣類、ノイズおよびX線の散乱線成分のうち少なくとも複数を含む、項目1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【0153】
(項目4)
前記画像要素は、線状または管状のデバイスを含み、
前記画像要素の前記投影像は、前記デバイスの3次元モデルの形状をランダムな座標値に基づいて生成した曲線でシミュレーションすることにより生成される、項目1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【0154】
(項目5)
前記画像要素は、血管を含み、
前記画像要素の前記投影像は、血管の3次元モデルの形状をランダムに変化させるシミュレーションにより生成される、項目1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【0155】
(項目6)
前記画像要素は、X線の散乱線成分を含み、
前記画像要素の前記投影像は、前記入力画像の撮影環境をモデル化したモンテカルロシミュレーションにより生成される、項目1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【0156】
(項目7)
前記画像要素の前記投影像は、撮影環境モデルにおけるX線撮影装置が撮影可能な投影角度範囲に亘って投影角度を変化させて複数生成される、項目6に記載の学習済みモデルの作成方法。
【0157】
(項目8)
前記画像要素の前記投影像は、撮影環境モデルにおける仮想線源のエネルギースペクトルを変化させて複数生成される、項目6に記載の学習済みモデルの作成方法。
【0158】
(項目9)
前記機械学習は、1つの学習モデルに対して、前記画像要素毎に作成された前記教師入力データおよび前記教師出力データを入力することを含み、
前記学習済みモデルは、前記入力画像から前記複数の画像要素を重複なしで抽出し、抽出した前記複数の画像要素と、抽出後に残る残余画像要素と、をそれぞれ出力するように構成されている、項目1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【0159】
(項目10)
入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、
画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、前記X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、前記X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成する、画像生成方法。
【0160】
(項目11)
前記画像処理は、強調処理または除去処理を含む、項目10に記載の画像生成方法。
【0161】
(項目12)
複数の画像要素は、生体組織である第1要素と、非生体組織である第2要素とを含む、項目10に記載の画像生成方法。
【0162】
(項目13)
複数の画像要素は、骨、血管、体内に導入されるデバイス、衣類、ノイズおよびX線の散乱線成分のうち少なくとも複数を含む、項目10に記載の画像生成方法。
【0163】
(項目14)
前記複数の抽出画像の一部または全部に対して、別々に画像処理を行い、
前記処理画像は、画像処理後の前記複数の抽出画像と、前記X線画像との画像間演算により生成される、項目10に記載の画像生成方法。
【0164】
(項目15)
前記画像間演算は、前記X線画像に対する、個々の抽出画像の重み付け加算または重み付け減算を行うことを含む、項目10に記載の画像生成方法。
【0165】
(項目16)
前記学習済みモデルは、前記入力画像から前記複数の画像要素を重複なしで抽出し、抽出した前記複数の画像要素と、抽出後に残る残余画像要素と、をそれぞれ出力するように構成されている、項目10に記載の画像生成方法。
【0166】
(項目17)
前記学習済みモデルは、3次元画像データから2次元の投影画像に再構成した再構成画像と、シミュレーションにより前記画像要素の3次元モデルから作成された投影像とを用いて機械学習により予め作成されている、項目10に記載の画像生成方法。
【0167】
(項目18)
X線画像を取得する画像取得部と、
入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、前記X線画像から複数の画像要素を別々に抽出する抽出処理部と、
画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、前記X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、前記X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成する画像生成部と、を備える、画像処理装置。
【符号の説明】
【0168】
10 画像取得部
20 抽出処理部
21(21-1、21-2、21-N) 抽出画像
22 処理画像
30 画像生成部
40(40-1、40-2、40-N) 学習済みモデル
50 画像要素
51 第1要素
52 第2要素
53 骨
54 血管
55 デバイス
56 衣類
57 ノイズ
58 散乱線成分
59 残余画像要素
60 再構成画像
61 投影像
64 教師入力データ
65 教師出力データ
67 重畳画像
80 CT画像データ(3次元X線画像データ)
85 撮影環境モデル
100 画像処理装置
111 第1エネルギースペクトル(エネルギースペクトル)
112 第2エネルギースペクトル(エネルギースペクトル)
200 X線撮影装置
201 X線画像
LM 学習モデル
【手続補正書】
【提出日】2024-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、
シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、
前記画像要素の前記投影像を前記再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を教師入力データとし、前記再構成画像または前記投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる前記画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、
前記重畳画像は、互いに異なる複数の前記画像要素毎に、複数作成され、
前記複数の画像要素は、生体組織である第1要素と、非生体組織である第2要素とを含む、学習済みモデルの作成方法。
【請求項2】
3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、
シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、
前記画像要素の前記投影像を前記再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を教師入力データとし、前記再構成画像または前記投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる前記画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、
前記重畳画像は、互いに異なる複数の画像要素毎に、複数作成され、
前記複数の画像要素は、骨、血管、体内に導入されるデバイス、衣類、ノイズおよびX線の散乱線成分のうち少なくとも複数を含む、学習済みモデルの作成方法。
【請求項3】
前記画像要素は、前記非生体組織である第2要素として、線状または管状のデバイスを含み、
前記画像要素の前記投影像は、前記デバイスの3次元モデルの形状をランダムな座標値に基づいて生成した曲線でシミュレーションすることにより生成される、請求項1に記載の学習済みモデルの作成方法。
【請求項4】
3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、
シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、
前記画像要素の前記投影像を前記再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を教師入力データとし、前記再構成画像または前記投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる前記画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、
前記画像要素は、血管を含み、
前記画像要素の前記投影像は、血管の3次元モデルの形状をランダムに変化させるシミュレーションにより生成される、学習済みモデルの作成方法。
【請求項5】
3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、
シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、
前記画像要素の前記投影像を前記再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を教師入力データとし、前記再構成画像または前記投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる前記画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、
前記画像要素は、X線の散乱線成分を含み、
前記画像要素の前記投影像は、前記入力画像の撮影環境をモデル化したモンテカルロシミュレーションにより生成される、学習済みモデルの作成方法。
【請求項6】
3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、
シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、
前記画像要素の前記投影像を前記再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を教師入力データとし、前記再構成画像または前記投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる前記画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、
前記機械学習は、1つの学習モデルに対して、前記画像要素毎に作成された前記教師入力データおよび前記教師出力データを入力することを含み、
前記学習済みモデルは、前記入力画像から前記複数の画像要素を重複なしで抽出し、抽出した前記複数の画像要素と、抽出後に残る残余画像要素と、をそれぞれ出力するように構成されている、学習済みモデルの作成方法。
【請求項7】
入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、
画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、前記X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、前記X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成し、
前記複数の画像要素は、生体組織である第1要素と、非生体組織である第2要素とを含む、画像生成方法。
【請求項8】
入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、
画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、前記X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、前記X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成し、
前記複数の画像要素は、骨、血管、体内に導入されるデバイス、衣類、ノイズおよびX線の散乱線成分のうち少なくとも複数を含む、画像生成方法。
【請求項9】
入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、
画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、前記X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、前記X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成し、
前記学習済みモデルは、前記入力画像から前記複数の画像要素を重複なしで抽出し、抽出した前記複数の画像要素と、抽出後に残る残余画像要素と、をそれぞれ出力するように構成されている、画像生成方法。
【請求項10】
入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、
画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、前記X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、前記X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成し、
前記学習済みモデルは、3次元画像データから2次元の投影画像に再構成した再構成画像と、シミュレーションにより前記画像要素の3次元モデルから作成された投影像とを用いて機械学習により予め作成されている、画像生成方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、学習済みモデルの作成方法および画像生成方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における学習済みモデルの作成方法は、3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、画像要素の投影像を再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、重畳画像を教師入力データとし、再構成画像または投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、重畳画像は、互いに異なる複数の画像要素毎に、複数作成され、複数の画像要素は、生体組織である第1要素と、非生体組織である第2要素とを含む。
この発明の第2の局面における学習済みモデルの作成方法は、3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、画像要素の投影像を再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、重畳画像を教師入力データとし、再構成画像または投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、重畳画像は、互いに異なる複数の画像要素毎に、複数作成され、複数の画像要素は、骨、血管、体内に導入されるデバイス、衣類、ノイズおよびX線の散乱線成分のうち少なくとも複数を含む。
この発明の第3の局面における学習済みモデルの作成方法は、3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、画像要素の投影像を再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、重畳画像を教師入力データとし、再構成画像または投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、画像要素は、血管を含み、画像要素の投影像は、血管の3次元モデルの形状をランダムに変化させるシミュレーションにより生成される。
この発明の第4の局面における学習済みモデルの作成方法は、3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、画像要素の投影像を再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、重畳画像を教師入力データとし、再構成画像または投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、画像要素は、X線の散乱線成分を含み、画像要素の投影像は、入力画像の撮影環境をモデル化したモンテカルロシミュレーションにより生成される。
この発明の第5の局面における学習済みモデルの作成方法は、3次元X線画像データを2次元の投影画像に再構成した再構成画像を生成し、シミュレーションにより、抽出対象となる画像要素の3次元モデルから2次元の投影像を生成し、画像要素の投影像を再構成画像に重畳して重畳画像を生成し、重畳画像を教師入力データとし、再構成画像または投影像を教師出力データとして機械学習を行うことにより、入力画像に含まれる画像要素を抽出する処理を行う学習済みモデルを作成し、機械学習は、1つの学習モデルに対して、画像要素毎に作成された教師入力データおよび教師出力データを入力することを含み、学習済みモデルは、入力画像から複数の画像要素を重複なしで抽出し、抽出した複数の画像要素と、抽出後に残る残余画像要素と、をそれぞれ出力するように構成されている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
この発明の第6の局面における画像生成方法は、入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成し、複数の画像要素は、生体組織である第1要素と、非生体組織である第2要素とを含む。
この発明の第7の局面における画像生成方法は、入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成し、複数の画像要素は、骨、血管、体内に導入されるデバイス、衣類、ノイズおよびX線の散乱線成分のうち少なくとも複数を含む。
この発明の第8の局面における画像生成方法は、入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成し、学習済みモデルは、入力画像から複数の画像要素を重複なしで抽出し、抽出した複数の画像要素と、抽出後に残る残余画像要素と、をそれぞれ出力するように構成されている。
この発明の第9の局面における画像生成方法は、入力画像中から特定の画像要素を抽出する処理を学習させた学習済みモデルを用いて、X線画像から複数の画像要素を別々に抽出し、画像要素毎に抽出された複数の抽出画像と、X線画像と、を用いた画像間演算を行うことにより、X線画像に含まれる各画像要素に画像処理が行われた処理画像を生成し、学習済みモデルは、3次元画像データから2次元の投影画像に再構成した再構成画像と、シミュレーションにより画像要素の3次元モデルから作成された投影像とを用いて機械学習により予め作成されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】