(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024149747
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ドア制御方法
(51)【国際特許分類】
B61D 19/02 20060101AFI20241010BHJP
E05F 15/40 20150101ALI20241010BHJP
【FI】
B61D19/02 V
B61D19/02 Q
B61D19/02 D
E05F15/40
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134231
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2019088329の分割
【原出願日】2019-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2018100211
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 覚
(72)【発明者】
【氏名】藤田 憲司
(57)【要約】
【課題】戸開動作時におけるドアと戸袋との間への物体の挟み込みを検出することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るドア制御方法は、ドア60を駆動制御するドア制御装置20が実行するドア制御方法であって、ドア60の戸開動作時において、ドア60と戸袋との間への物体の挟み込みを検出するステップS104と、ステップS104で挟み込みが検出された場合、ドア60を閉方向に移動させることなく、戸開動作中のドア60を停止させるステップS110と、ステップS110でドア60が停止されてから所定時間T1が経過した後にドア60の戸開動作を再開させるステップS114及びステップS102と、を含む。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアを駆動制御するドア制御装置が実行するドア制御方法であって、
前記ドアの戸開動作時において、前記ドアと戸袋との間への物体の挟み込みを検出する第1のステップと、
前記第1のステップで前記挟み込みが検出された場合、前記ドアを閉方向に移動させることなく、戸開動作中の前記ドアを停止させる第2のステップと、
前記第2のステップで前記ドアが停止されてから所定時間経過した後に前記ドアの戸開動作を再開させる第3のステップと、を含む、
ドア制御方法。
【請求項2】
前記第2のステップが所定回数実行された場合、前記第1のステップ及び前記第2のステップを実行しない、
請求項1に記載のドア制御方法。
【請求項3】
前記第2のステップが前記所定回数実行された場合、前記第1のステップ及び前記第2のステップを実行せずに、前記ドアの戸開動作を再開させる第4のステップを含む、
請求項2に記載のドア制御方法。
【請求項4】
ドアを駆動制御するドア制御装置が実行するドア制御方法であって、
前記ドアの戸開動作時において、前記ドアと戸袋との間への物体の挟み込みを検出する第1のステップと、
前記第1のステップで前記挟み込みが検出された場合、前記ドアを閉方向に移動させることなく、戸開動作中の前記ドアを停止させる第2のステップと、
前記第2のステップで前記ドアが停止された後、前記ドアを駆動するモータを制御することにより、前記挟み込みに対応する第5のステップと、を含む、
ドア制御方法。
【請求項5】
前記第5のステップでは、前記モータの推力をゼロにする、
請求項4に記載のドア制御方法。
【請求項6】
前記第5のステップでは、前記ドアが動作しない程度の前記ドアを閉じる方向の推力を前記モータから出力させる、
請求項4に記載のドア制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドア制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、列車を構成する各車両の側面に設けられるドアの戸閉動作時において、二枚のドアパネルの間への物体(例えば、乗客の衣服や持ち物等)の挟み込みが発生した場合に、乗客等が挟まれた物体を引き抜き可能なようにドア推力を制御するドア制御装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ドアの戸開動作時においても、ドアの戸開動作に起因して、ドアパネルと戸袋との間への物体の引き込みによる挟み込みが発生する可能性がある。戸開動作時における物体の挟み込みは、ドアの開き始めから開き終わりまでのどの時点でも発生しうるため、ドア制御装置は、戸閉動作時における物体の挟み込みの場合のように、挟まれた物体の影響でドアが全閉位置に到達していないこと等のドアの位置に着目して、戸開動作時における物体の挟み込みを検出することが難しい。また、戸開動作時における物体の挟み込みが発生した場合、挟まれた物体を引きずりながらドアが動作し続ける場合もありうるため、ドア制御装置は、戸閉動作時における物体の挟み込みの場合のように、ドアが全閉する前に停止してしまう等のドアの停止に着目して、戸開動作時における物体の挟み込みを検出することが難しい。よって、戸閉動作時における物体の挟み込みの場合の検出手法を利用することができず、戸開動作時における物体の挟み込みの発生を検出する検出方法が望まれている。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、戸開動作時におけるドアと戸袋の間への物体の挟み込みを検出することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
ドアを駆動制御するドア制御装置が実行するドア制御方法であって、
前記ドアの戸開動作時において、前記ドアと戸袋との間への物体の挟み込みを検出する第1のステップと、
前記第1のステップで前記挟み込みが検出された場合、前記ドアを閉方向に移動させることなく、戸開動作中の前記ドアを停止させる第2のステップと、
前記第2のステップで前記ドアが停止されてから所定時間経過した後に前記ドアの戸開動作を再開させる第3のステップと、を含む、
ドア制御方法が提供される。
【0007】
また、本開示の他の実施形態では、
ドアを駆動制御するドア制御装置が実行するドア制御方法であって、
前記ドアの戸開動作時において、前記ドアと戸袋との間への物体の挟み込みを検出する第1のステップと、
前記第1のステップで前記挟み込みが検出された場合、前記ドアを閉方向に移動させることなく、戸開動作中の前記ドアを停止させる第2のステップと、
前記第2のステップで前記ドアが停止された後、前記ドアを駆動するモータを制御することにより、前記挟み込みに対応する第5のステップと、を含む、
ドア制御方法。
【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、戸開動作時におけるドアと戸袋の間への物体の挟み込みを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るドア制御装置を含むドア制御システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るドア制御装置による戸開動作時における物体の挟み込みの検出方法を説明するタイミングチャートである。
【
図3A】ドア制御装置による戸開制御の第1例を概略的に示すフローチャートである。
【
図3B】ドア制御装置による戸開制御の第1例に対応するドアの移動状態に関する状態遷移図である。
【
図4A】ドア制御装置による戸開制御の第2例を概略的に示すフローチャートである。
【
図4B】ドア制御装置による戸開制御の第2例に対応するドアの移動状態に関する状態遷移図である。
【
図5A】ドア制御装置による戸開制御の第3例を概略的に示すフローチャートである。
【
図5B】ドア制御装置による戸開制御の第3例に対応するドアの移動状態に関する状態遷移図である。
【
図6A】ドア制御装置による戸開制御の第4例を概略的に示すフローチャートである。
【
図6B】ドア制御装置による戸開制御の第4例に対応するドアの移動状態に関する状態遷移図である。
【
図7】第2実施形態に係るドア制御装置を含むドア制御システムの構成の一例を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係るドア制御装置による戸開動作時における物体の挟み込みの検出方法を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
最初に、本発明の第1実施形態について説明する。
【0012】
[ドア制御システムの構成]
まず、
図1を参照して、第1実施形態に係るドア制御装置20を含むドア制御システム1の構成について説明する。
【0013】
図1は、第1実施形態に係るドア制御装置20を含むドア制御システム1の構成の一例を示す図である。
【0014】
尚、図中において、二重線は、動力伝達系統を表し、太い実線は、電力供給系統を表し、細い実線は、制御系統を表す。
【0015】
ドア制御システム1は、例えば、鉄道車両(列車)等の車両に搭載され、車両制御装置10と、ドア制御装置20と、インバータ30と、電流センサ31と、モータ40と、エンコーダ41と、ドア開閉機構50と、ドア60を含む。ドア制御システム1が搭載される車両には、例えば、電車等の動力が搭載される車両だけでなく、動力が搭載されない車両(いわゆる客車)等も含まれうる。以下、ドア制御システム1が搭載される車両を単に「車両」と称する。
【0016】
車両制御装置10は、車両の運行に関する制御を行う。車両制御装置10は、例えば、複数の車両が連結される列車の場合、先頭の車両の運転室と最後尾の車両の車掌室とに一つずつ設けられる。また、車両制御装置10は、例えば、車両が一両編成である場合、車両の進行方向の両端に位置する運転室及び車掌室に一つずつ設けられる。
【0017】
車両制御装置10は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、これらの組み合わせにより任意に実現されてよい。例えば、車両制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、不揮発性の補助記憶装置と、通信用の各種インターフェース等を含むコンピュータを中心として構成される。以下、ドア制御装置20についても同様である。
【0018】
車両制御装置10は、例えば、車掌等による図示しないドア60の開閉用のスイッチに対する操作に応じて、ドア60の戸開を指令する戸開指令、或いは、ドア60の戸閉を指令する戸閉指令をドア制御装置20に出力する。
【0019】
ドア制御装置20は、車両制御装置10から受信される戸開指令及び戸閉指令に応じて、全閉状態のドア60を戸開させる制御(以下、「戸開制御」)、及び、全開状態のドア60を戸閉させる制御(以下、「戸閉制御」)を行う。ドア制御装置20は、例えば、ROMや不揮発性の補助記憶装置等に格納される一以上のプログラムをCPU上で実行することにより実現される機能部として、シーケンス制御部2001と、速度パターン発生部2002と、速度調節部2003と、推力調節部2004と、インバータ制御部2005と、電流・推力変換部2006と、速度検出部2007と、位置検出部2008と、挟み込み検出部2009を含む。また、ドア制御装置20は、例えば、補助記憶装置等の不揮発性の内部メモリに規定される記憶領域としての記憶部2000を含む。
【0020】
インバータ30は、ドア制御装置20(具体的には、後述するインバータ制御部2005)による制御下で、モータ40に駆動電力を供給し、モータ40を駆動させる。インバータ30は、例えば、車両に搭載される所定の電源装置から供給される直流電力を三相交流電力に変換し、モータ40に供給する。
【0021】
電流センサ31は、インバータ30からモータ40に供給される電流を検出する。電流センサ31は、インバータ30とモータ40との間を接続するU相、V相、及びW相のそれぞれに対応する三本の電力線(以下、それぞれ、「U相線」、「V相線」、及び「W相線」)のうちの2本、例えば、U相線及びV相線のそれぞれに設けられる電流センサ31a,31bを含む。電流センサ31a,31bは、それぞれ、接触式センサであってもよいし、カレントトランス方式やホール素子方式等の非接触式センサであってもよい。電流センサ31a,31bにより検出されるU相線、V相線の電流に対応する電流検出信号iudet,ivdetは、ドア制御装置20に取り込まれる。
【0022】
モータ40は、例えば、回転式の三相交流電動機であり、ドア開閉機構50を介して、ドア60に開閉動作のための推力を付加する。
【0023】
尚、モータ40は、回転式に限定されず、ドア60を電気駆動可能であれば、例えば、リニアモータであってもよい。また、モータ40は、後述するドア60の二枚のドアパネルのそれぞれに対応させて二つ設けられてもよい。
【0024】
エンコーダ41は、例えば、モータ40の筐体等に取り付けられ、モータ40の回転角度(回転位置)を検出する既知の検出手段である。エンコーダ41により検出されるモータ40の回転位置に対応する回転位置信号PSは、ドア制御装置20に取り込まれる。
【0025】
ドア開閉機構50は、モータ40の出力(推力)をドア60に伝達し、ドア60の開閉動作を実現する機構部である。ドア開閉機構50は、例えば、ピニオンギヤ部51と、ピニオンギヤ部51と噛み合うラックギヤ部52を含む。
【0026】
ピニオンギヤ部51は、モータ40の出力軸と連結され、モータ40の回転に伴い、回転する。
【0027】
ラックギヤ部52は、例えば、二枚のドアパネルのそれぞれに対応して二つ設けられ、ドア60の上方において、ドア60の開閉方向に延在する態様で、ドア60の二枚のドアパネルのそれぞれに一体として取り付けられる。ラックギヤ部52は、ピニオンギヤ部51と噛み合い、ピニオンギヤ部51の回転動作をラックギヤ部52の延在方向、つまり、ドア60の開閉方向の直線運動に変換する。つまり、ラックギヤ部52は、モータ40の回転に伴うピニオンギヤ部51の回転に応じて、一体としてドア60(ドアパネル)を開閉方向に移動させ、戸開動作及び戸閉動作を実現する。
【0028】
ドア60は、例えば、車両の車体の進行方向を基準とする左右側面の一又は複数の開口のそれぞれに設けられる。ドア60は、例えば、二枚のドアパネルが対向する方向に移動する態様で開閉動作を行うスライド式の合わせドアであり、二枚のドアパネルは、戸開時において、車両の車体に設けられる戸袋に収容される。
【0029】
シーケンス制御部2001は、車両制御装置10から入力される戸開指令a或いは戸閉指令a、及び、位置検出部2008により検出されるドア60のドアパネルの位置に対応するドアパネル位置情報pdetに応じて、ドア60の戸開動作或いは戸閉動作に関するシーケンス制御を行う。
【0030】
例えば、シーケンス制御部2001は、車両制御装置10から入力される戸開指令aに応じて、ドア60の戸開動作に関するシーケンス制御を開始する。そして、シーケンス制御部2001は、ドアパネル位置情報pdetに基づき、ドア60の戸開動作の進行状態を把握しながら、予め規定されるシーケンスに沿った内容のドア制御指令bを出力し、ドア60が全開位置に到達するまで、ドア60の戸開動作を制御する。
【0031】
また、例えば、シーケンス制御部2001は、ドア60の戸開動作時において、挟み込み検出部2009によりドア60のドアパネルと戸袋との間への物体(例えば、乗客の衣服や持ち物等)の引き込みによる挟み込みが検出された場合(具体的には、物体の引き込みが検出されたことを示す挟み込み信号dが受信された場合)、物体の挟み込みに対応するためのドア60の制御(以下、「挟み込み対応制御」)を行う。以下、特に断らない限り、「物体の挟み込み」は、戸開動作時におけるドア60のドアパネルと戸袋との間への物体の挟み込みを意味する。挟み込み対応制御の詳細は、後述する(
図3~
図6参照)。
【0032】
また、例えば、シーケンス制御部2001は、ドア60の戸開動作に関するシーケンス制御の開始時に、モータ40から出力されるドア60に対する推力の制限値(以下、「推力制限値」)flimitを速度調節部2003に出力する。推力制限値flimitは、例えば、モータ40の最大出力や定格出力等に基づき予め規定される所定値f1に設定される(flimit=f1)。
【0033】
速度パターン発生部2002は、シーケンス制御部2001から入力されるドア制御指令b、及び、位置検出部2008から入力されるドアパネル位置情報pdetに基づき、速度指令値vcomを出力する。速度パターン発生部2002は、例えば、ドアパネル位置情報pdetに基づき、ドアパネルの位置を把握しつつ、マップや変換式等に基づき、ドアパネルの位置に対応する速度指令値vcomを出力する。
【0034】
速度調節部2003(速度制御部の一例)は、速度指令値vcomに基づき、モータ40の速度制御を行う制御器(コントローラ)である。具体的には、速度調節部2003は、速度指令値vcomと、速度検出部2007により検出されるドア60の速度の検出値(以下、「速度検出値」)vdetとの間の差分(偏差)が小さくなるように、速度フィードバック制御演算を行い、推力指令値fcomを出力する。このとき、速度調節部2003は、推力指令値fcomが推力制限値flimit以下になるようにする。つまり、速度調節部2003は、速度指令値vcomと速度検出値vdetとの差分を小さくするために算出した推力指令値fcomが推力制限値flimitを超えている場合、推力指令値fcomの値を推力制限値flimitに補正し、出力する。速度調節部2003には、例えば、PID(Proportional Integral Differential)制御器等、任意のフィードバック制御用の制御器が適用されてよい。以下、推力調節部2004についても同様である。
【0035】
推力調節部2004(推力制御部の一例)は、推力指令値fcomに基づき、モータ40の推力制御を行う制御器(コントローラ)である。具体的には、推力調節部2004は、推力指令値fcomと、電流・推力変換部2006から入力される、モータ40からドア60に付加される推力の検出値(以下、「推力検出値」)fdetとの間の差分(偏差)が小さくなるように、推力フィードバック制御演算を行い、インバータ制御部2005に対する操作量eを出力する。
【0036】
インバータ制御部2005は、推力調節部2004から入力される操作量eに基づき、インバータ30を制御する。具体的には、インバータ制御部2005は、操作量eに基づき、インバータ30を駆動するための駆動信号DS(例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号)をインバータ30に出力する。
【0037】
電流・推力変換部2006は、電流センサ31a,31bから入力される電流検出信号iudet,ivdetに基づき、所定の変換式やマップ等を用いて、電流センサ31a,31bにより検出されたU相線及びV相線の電流検出値をモータ40の推力検出値fdetに変換する。
【0038】
速度検出部2007は、エンコーダ41から入力される回転位置信号PSに基づき、ドア60の位置情報を微分することにより、ドア60の速度を検出し、速度検出値vdetを出力する。
【0039】
位置検出部2008は、エンコーダ41から入力される回転位置信号PSに基づき、ドア60(ドアパネル)の位置を検出し、ドアパネル位置情報pdetを出力する。
【0040】
挟み込み検出部2009は、ドア60の戸開動作時において、物体の挟み込みを検出する。挟み込み検出部2009は、物体の挟み込みを検出した場合、挟み込み信号dをシーケンス制御部2001に出力する。
【0041】
記憶部2000には、各機能部2001~2009が演算に用いる各種情報が格納され、各機能部2001~2009は、適宜、必要な情報を記憶部2000から読み出す。
【0042】
[戸開動作時における物体の挟み込みの検出方法]
次に、
図2を参照して、ドア制御装置20(挟み込み検出部2009)によるドア60の戸開動作時における物体の挟み込みの検出方法について説明する。
【0043】
図2は、ドア制御装置20(挟み込み検出部2009)による物体の挟み込みの検出方法を説明する図である。具体的には、
図2の上図は、物体の挟み込み発生時の速度検出値vdet、速度指令値vcom、及び推力指令値fcomの時間変化を示すグラフであり、
図2の下図は、挟み込み信号dの出力状態(出力の有無)の時間変化を示すグラフである。
【0044】
図2に示すように、時刻t11で物体の挟み込みが発生している。
【0045】
物体の挟み込みが発生すると、ドア60には、動摩擦力等を含む定常的に作用する定常抗力だけでなく、物体の挟み込みに対応する外乱抗力が作用する。そのため、物体の挟み込みに対応する外乱抗力は、ドア60の速度を低下させ、時刻t11以降で速度検出値vdetが低下し始める。
【0046】
このとき、速度調節部2003は、速度検出値vdetと速度指令値vcomとの差分(偏差)を小さくするため、推力指令値fcomを増加させる。しかしながら、上述の如く、推力指令値fcomは、推力制限値flimit以下に制限されるため、推力制限値flimitで頭打ちになり、飽和してしまう。
【0047】
その結果、物体の挟み込みによる外乱抗力と定常的に発生する動摩擦力等の定常抗力との和が推力制限値flimitを上回ると、その状態が継続することになり、ドア60の速度低下が更に進行する。つまり、速度検出値vdetは、時刻t11以降で、低下し続ける。
【0048】
よって、挟み込み検出部2009は、速度検出値vdetが、速度指令値vcomに対して、所定の速度低下閾値Δvdh(>0)以上低下したことにより、ドア60に発生した物体の挟み込みを検出することができる(時刻t12)。
【0049】
戸開動作時における物体の挟み込みは、ドア60の開き始めから開き終わりまでのどの時点でも発生しうるため、ドア制御装置20は、戸閉動作時における物体の挟み込みの場合のように、挟まれた物体の影響でドア60が全閉位置に到達していないこと等のドア60の位置に着目した方法で、戸開動作時における物体の挟み込みを検出するのは難しい。また、戸開動作時における物体の挟み込みが発生した場合、挟まれた物体を引きずりながらドア60が動作し続ける場合もありうるため、戸閉動作時における物体の挟み込みの場合のように、ドア60が全閉前に停止してしまう等のドア60の停止に着目した方法で、戸開動作時における物体の挟み込みを検出するのは難しい。
【0050】
これに対して、本実施形態では、上述の如く、物体の挟み込みに起因するドア60に対する外乱抗力に対応するドア60の速度低下に着目することにより、ドア制御装置20は、物体の挟み込みを検出することができる。
【0051】
物体の挟み込みを検出するための速度低下閾値Δvdh(第1の所定値の一例)は、例えば、速度指令値vcomの大きさに基づき、規定される。速度指令値vcomが大きくなるほど、速度制御系における過渡的な速度変動幅が大きくなる可能性があるからである。また、速度低下閾値Δvdhは、例えば、ドア制御装置20によるドア60の速度制御系における定常誤差(定常偏差)に基づき、規定される。速度低下閾値Δvdhと比較される、速度指令値vcomと速度検出値vdetとの差分には、定常誤差が含まれるからである。また、速度低下閾値Δvdhは、例えば、ドア制御装置20によるドア60の速度制御系における外乱応答(外乱入力に対して一時的な速度変動が生じる場合の過渡的な応答特性)に基づき、規定される。外乱入力に基づき一時的に速度変動が生じる場合と、物体の挟み込みによる継続的な速度低下の場合とを切り分ける必要性があるからである。また、速度低下閾値Δvdhは、例えば、ドア制御装置20によるドア60の速度制御系における速度変動の大きさに基づき、規定される。速度低下閾値Δvdhと比較される、速度指令値vcomと速度検出値vdetとの差分には、速度制御系で想定される速度変動分が含まれるからである。挟み込み検出部2009は、速度指令値vcomの大きさ、速度制御系の定常誤差、速度制御系の外乱応答、及び、速度制御系の速度変動の大きさのうちの少なくとも一つに基づき、速度低下閾値Δvdhを規定してよい。具体的には、挟み込み検出部2009は、速度指令値vcomの大きさ、速度制御系の定常誤差、速度制御系の外乱応答、及び、速度制御系の速度変動の大きさのうちの少なくとも一つを考慮した、予め準備されるマップやテーブル等の情報に基づき、速度低下閾値Δvdhを規定してよい。これにより、物体の挟み込みの誤検出が抑制される。
【0052】
また、
図2に示すように、挟み込み検出部2009は、速度検出値vdetが、速度指令値vcomに対して、速度低下閾値Δvdh以上低下したことを時素τd1(>0)を以て判断し、ドア60に発生した物体の挟み込みを検出してもよい。このとき、時素τd1は、ドア60に発生した物体の挟み込みの検出を確定させるまでの遅延時間或いは待機時間である。以下、後述する時素τd2についても同様である。つまり、挟み込み検出部2009は、速度検出値vdetが速度指令値vcomに対して速度低下閾値Δvdh以上低下してから、その状態が時素τd1以上の間継続していることにより、ドア60に発生した物体の挟み込みを検出してもよい(時刻t13)。これにより、一時的なドア60の速度変動が排除されるため、物体の挟み込みの誤検出が更に抑制される。
【0053】
物体の挟み込みを検出するための時素τd1(第1の所定時間の一例)は、速度低下閾値Δvdhの場合と同様、速度指令値vcomの大きさ、速度制御系の定常誤差、速度制御系の外乱応答、及び、速度制御系の速度変動の大きさのうちの少なくとも一つに基づき、規定されてよい。つまり、挟み込み検出部2009は、速度指令値vcomの大きさ、速度制御系の定常誤差、速度制御系の外乱応答、及び、速度制御系の速度変動の大きさのうちの少なくとも一つを考慮した、予め準備されるマップやテーブル等の情報に基づき、時素τd1を規定してよい。これにより、物体の挟み込みの誤検出が更に抑制される。
【0054】
[挟み込み対応制御の詳細]
次に、
図3~
図6を参照して、挟み込み対応制御の詳細について説明する。
【0055】
図3(
図3A、
図3B)は、ドア制御装置20による戸開制御の第1例を説明する図である。具体的には、
図3Aは、ドア制御装置20による戸開制御の第1例を概略的に示すフローチャートである。
図3Bは、ドア制御装置20による戸開制御の第1例に対応するドア60の移動状態に関する状態遷移図である。
図3Aのフローチャートは、例えば、車両制御装置10から戸開指令aが受信されると開始される。以下、
図4A、
図5A、及び
図6Aのフローチャートについても同様である。
【0056】
図3Aに示すように、ステップS102にて、ドア制御装置20(シーケンス制御部2001)は、戸開指令aの受信に応じて、ドア60の戸開動作を開始させる。具体的には、シーケンス制御部2001は、ドア制御指令bを速度パターン発生部2002に出力することにより、速度調節部2003による速度フィードバック制御及び推力調節部2004による推力フィードバック制御に基づくドア60の戸開動作を開始させる。これにより、
図3Bに示すように、ドア60は、全閉の状態ST10から戸開動作中に対応する状態ST11に遷移する。
【0057】
ステップS104にて、シーケンス制御部2001は、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みを検出されたか否か、具体的には、挟み込み検出部2009から挟み込み信号dが出力されたか否かを判定する。シーケンス制御部2001は、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みが検出されていない場合、ステップS106に進み、物体の挟み込みが検出された場合、ステップS110に進む。
【0058】
ステップS106にて、シーケンス制御部2001は、ドアパネル位置情報pdetに基づき、ドア60のドアパネルが所定の全開位置に到達したか否かを判定する。シーケンス制御部2001は、ドア60のドアパネルが全開位置に到達した場合、ステップS108に進み、全開位置に到達していない場合、ステップS104に戻り、ステップS104,S106の処理を繰り返す。
【0059】
ステップS108にて、シーケンス制御部2001は、ドア60のドアパネルが全開位置に到達したことに応じて、ドア60の戸開動作を停止(終了)させる。シーケンス制御部2001は、例えば、インバータ30を停止させる。そして、ドア制御装置20は、今回の処理を終了する。これにより、
図3Bに示すように、ドア60は、戸開動作中に対応する状態ST11から全開状態に対応する状態ST12に遷移し、戸開動作を停止する(つまり、ドア60は、全開状態で停止している)。
【0060】
一方、ステップS110にて、シーケンス制御部2001は、物体の挟み込みの検出に応じて、ドア60の戸開動作を一時停止させる、つまり、ドア60を一時的に停止させる。これにより、
図3Bに示すように、ドア60は、戸開動作に対応する状態ST11からドア60の戸開動作が停止された状態ST13に遷移する。
【0061】
そして、ステップS112にて、シーケンス制御部2001は、モータ40の推力をゼロにする。具体的には、シーケンス制御部2001は、例えば、インバータ30に停止信号を出力し、インバータ30を一時的に停止させる。また、シーケンス制御部2001は、例えば、推力制限値flimitをゼロに設定して速度調節部2003に出力し、速度調節部2003から出力される推力指令値fcomを強制的にゼロにすることにより、モータ40のゼロ推力制御(ゼロトルク制御)を行ってもよい。これにより、
図3Bに示すように、ドア60は、付加される推力がオフ(ゼロ)の状態ST14に遷移する。
【0062】
ステップS114にて、シーケンス制御部2001は、ステップS112の処理後(モータ40の推力をゼロにした後)、所定時間Tth(第3の所定時間の一例)が経過したか否かを判定する。シーケンス制御部2001は、所定時間Tthが経過していない場合、所定時間Tthが経過するまで待ち、所定時間Tthが経過した場合、ステップS102に戻る。これにより、
図3Bに示すように、ドア60は、付加される推力がオフ(ゼロ)の状態ST14から戸開動作中に対応する状態ST11に遷移する(戻る)。
【0063】
このように、本例では、シーケンス制御部2001(挟み込み対応制御部の一例)は、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みが検出された場合、ドア60の戸開動作を停止させると共に、所定時間Tthの間、モータ40の推力をゼロにする態様の挟み込み対応制御を行う。これにより、車両の乗客等は、ドア60に開方向の推力が付加されている場合に比して、比較的容易に、ドアパネルと戸袋の間に引き込まれる態様で挟まった物体(例えば、衣服や荷物等)を取り除くことができる。
【0064】
また、戸閉動作時における物体の挟み込みが発生した場合、ドア60の二枚のドアパネルを所定距離だけ開方向に移動させることで、乗客等は、安全に、ドア60に挟まれた物体を取り除くことができるが、戸開動作時における物体の挟み込みが発生した場合に、同様の方法を用いると安全面で問題が生じうる。具体的には、乗客等は、ドア60が戸開動作を開始すると、その後のドア60が戸開された状態を期待して、ドア60から車両に乗り込んだり、車両外に降りたりするための行動を起こし始める。そのため、戸開動作中において、ドア60が一時的に閉方向に移動してしまうと、ドア60が戸開された状態を期待してドア60に向けて移動していた乗客等がドアパネルに衝突等してしまう可能性が生じる。
【0065】
これに対して、本例では、ドア60が閉方向に移動することがないため、ドア制御装置20は、乗客等の安全性を確保することができる。
【0066】
つまり、本例におけるドア制御装置20は、乗客等の安全性を確保しつつ、乗客がドアパネルと戸袋の間に挟まれた物体を比較的容易に取り除くことができるように支援することができる。
【0067】
続いて、
図4(
図4A、
図4B)は、ドア制御装置20による戸開制御の第2例を説明する図である。具体的には、
図4Aは、ドア制御装置20による戸開制御の第2例を概略的に示すフローチャートである。
図4Bは、ドア制御装置20による戸開制御の第2例に対応するドア60の移動状態に関する状態遷移図である。
【0068】
尚、挟み込みカウンタF1は、挟み込み検出部2009による物体の挟み込みの検出に応じて、挟み込み対応制御が実行された回数を示すカウンタである。
【0069】
図4Aに示すように、ステップS201にて、ドア制御装置20は、挟み込みカウンタF1をゼロに初期化する(F1=0)。
【0070】
ステップS202~S208の処理は、
図3AのステップS102~S108と同じであるため、説明を省略する。また、ステップS202~S208の処理に対応する
図4Bの状態ST20~ST22は、
図3Bの状態ST10~ST12と同じであるため、説明を省略する。
【0071】
一方、ステップS204にて、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みが検出されると、ステップS209にて、ドア制御装置20は、挟み込みカウンタF1を"1"だけインクリメントし(F1=F1+1)、ステップS210に進む。
【0072】
ステップS210~S214の処理は、
図3AのステップS110~S114と同じであるため、説明を省略する。また、ステップS210~S214の処理に対応する
図4Bの状態ST23,ST24は、
図3Bの状態ST13,ST14と同じであるため、説明を省略する。
【0073】
ステップS214にて、ステップS212の処理後(モータ40の推力をゼロにした後)、所定時間Tthが経過したと判定されると、ステップS216にて、シーケンス制御部2001は、挟み込みカウンタF1が所定閾値Fth1(正の整数)より小さいか否かを判定する。シーケンス制御部2001は、挟み込みカウンタF1が所定閾値Fth1より小さい場合、ステップS202に戻り、挟み込みカウンタF1が所定閾値Fth1より小さくない、つまり、所定閾値Fth1以上である場合、ステップS218に進む。
【0074】
ステップS218にて、シーケンス制御部2001は、ドア制御指令bを速度パターン発生部2002に出力することにより、速度調節部2003による速度フィードバック制御及び推力調節部2004による推力フィードバック制御に基づくドア60の戸開動作を開始(再開)させて、ステップS220に進む。これにより、
図4Bに示すように、ドア60は、付加される推力がオフ(ゼロ)の状態ST24から戸開動作中に対応する状態ST25に遷移する。
【0075】
ステップS220にて、シーケンス制御部2001は、ドアパネル位置情報pdetに基づき、ドア60のドアパネルが所定の全開位置に到達したか否かを判定する。シーケンス制御部2001は、ドア60のドアパネルが全開位置に到達した場合、ステップS208に進み、全開位置に到達していない場合、ドアパネルが全開位置に到達するまで本ステップの処理を繰り返す。つまり、
図4Bに示すように、状態ST24では、状態ST21と異なり、ドア60のドアパネルが全開位置に到達するまで、物体の挟み込みの発生の有無に依らず、戸開動作が継続される。
【0076】
このように、本例では、シーケンス制御部2001は、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みが検出されるたびに挟み込み対応制御を行うことにより、挟み込み対応制御を所定閾値Fth1に対応する回数(所定回数の一例)行った場合、その後、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みが検出された場合であっても、挟み込み対応制御を行わない。そして、速度調節部2003及び推力調節部2004は、それぞれ、挟み込み対応制御が所定閾値Fth1に対応する回数行われた場合、挟み込み検出部2009による物体の挟み込みの検出の有無によらず、ドア60が全開位置に到達するように、速度制御及び推力制御を継続させる。これにより、ドア制御装置20は、挟み込み対応制御の実施回数を制限することができるため、物体の挟み込みの検出が継続されることにより、挟み込み対応制御が継続的に繰り返し実行され、ドア60の戸開動作が完了しないような事態を回避させることができる。
【0077】
続いて、
図5(
図5A、
図5B)は、ドア制御装置20による戸開制御の第3例を説明する図である。具体的には、
図5Aは、ドア制御装置20による戸開制御の第3例を概略的に示すフローチャートである。
図5Bは、ドア制御装置20による戸開制御の第3例に対応するドア60の移動状態に関する状態遷移図である。
【0078】
図5Aに示すように、ステップS302~S310の処理は、
図3AのステップS102~S110の処理と同じであるため、説明を省略する。また、ステップS302~S310に対応する
図5Bの状態ST30~状態ST34は、
図3Bの状態ST10~ST14と同じであるため、説明を省略する。
【0079】
ステップS310の後、ステップS312にて、シーケンス制御部2001は、モータ40からドア60が閉方向に動作しない程度、つまり、静止摩擦力を含む想定される定常的な抗力の作用によりドア60の停止状態が維持される程度のドア60の閉方向への微小推力(以下、「微小閉推力」)を出力させる。これにより、
図5Bに示すように、ドア60は、微小閉推力が付加された状態ST34に遷移する。具体的には、シーケンス制御部2001は、ドア60を閉方向に動作させるためのドア制御指令bを速度パターン発生部2002に出力すると共に、推力制限値flimitを微小閉推力に相当する値として予め規定される所定値f2に設定し(flimit=f2)、速度調節部2003に出力する。これにより、速度調節部2003から出力される推力指令値fcomが微小閉推力に相当する所定値f2で頭打ちの状態に維持され、結果として、モータ40から微小閉推力が継続的に出力され、ドア60に付加される。
【0080】
このとき、微小閉推力に相当する所定値f2は、例えば、上述の定常的な抗力の作用によりドア60の停止状態が維持されると想定される微小閉推力の範囲のうちの相対的に高い値であり、より好適には、上限値であってよい。
【0081】
ステップS314の処理は、
図3AのステップS114と同じであるため、説明を省略する。
【0082】
このように、本例では、シーケンス制御部2001は、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みが検出された場合、ドアの戸開動作を停止させると共に、その後、所定時間Tth(第4の所定時間の一例)の間で、静止摩擦力等を含む定常的な抗力の作用によりドア60の静止状態が維持される程度の微小閉推力をモータ40から出力させる態様の挟み込み対応制御を行う。これにより、車両の乗客等は、ドアパネルと戸袋との間に挟まれた物体を引っ張り出す際に、ドア60の静止摩擦力等の定常的な抗力に打ち勝って、物体を引っ張り出す必要があるところ、ドア60に作用する微小閉推力によって、当該定常的な抗力の少なくとも一部がキャンセルされる。よって、乗客等がドアパネルと戸袋の間に挟まった物体を取り除くために必要な引っ張る力が更に低減され、乗客等は、より容易に、挟まった物体を取り除くことができる。
【0083】
また、上述の第1例等の場合と同様、ドア60が閉方向に移動することがないため、ドア制御装置20は、乗客等の安全性を確保することができる。
【0084】
つまり、本例におけるドア制御装置20は、第1例等の場合と同様、乗客等の安全性を確保しつつ、乗客がドアパネルと戸袋の間に挟まれた物体をより容易に取り除くことができるように支援することができる。
【0085】
また、本例では、静止摩擦力等を含む定常的な抗力の作用によりドア60の停止状態が維持されると想定される微小閉推力の範囲のうちの上限に相当する大きさの微小閉推力がモータ40からドア60に付加される。これにより、ドア60の静止摩擦力等の想定される定常的な抗力がほとんどキャンセルされるため、乗客等がドアパネルと戸袋の間に挟まった物体を取り除くために必要な引っ張る力が最小化され、乗客等は、より容易に、挟まった物体を取り除くことができる。
【0086】
続いて、
図6(
図6A、
図6B)は、ドア制御装置20による戸開制御の第4例を説明する図である。具体的には、
図6Aは、ドア制御装置20による戸開制御の第4例を概略的に示すフローチャートである。
図6Bは、ドア制御装置20による戸開制御の第4例に対応するドア60の移動状態に関する状態遷移図である。
【0087】
図6Aに示すように、ステップS401~S410,S414~S420の処理は、
図4AのステップS201~S210,S214~S220と同じである。また、ステップS401~S410,S414~S420に対応する
図6Bの状態ST40~ST43,ST45は、
図4Bの状態ST20~ST23,ST25と同じである。また、ステップS412の処理は、
図5AのステップS312と同じである。また、ステップS412に対応する
図6Bの状態ST44は、
図5Bの状態ST34と同じである。
【0088】
つまり、本例では、シーケンス制御部2001は、上述の第3例(
図5A、
図5B)の場合と同様、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みが検出された場合、ドアの戸開動作を停止させると共に、その後、所定時間Tthの間で、静止摩擦力等を含む定常的な抗力の作用によりドア60の静止状態が維持される程度の微小閉推力をモータ40から出力させる態様の挟み込み対応制御を行う。これにより、ドア制御装置20は、乗客等の安全性を確保しつつ、乗客がドアパネルと戸袋の間に挟まれた物体をより容易に取り除くことができるように支援することができる。
【0089】
一方、本例では、シーケンス制御部2001は、上述の第2例(
図4A、
図4B)の場合と同様、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みが検出されるたびに挟み込み対応制御を行うことにより、挟み込み対応制御を所定閾値Fth1に対応する回数行った場合、その後、挟み込み検出部2009により物体の挟み込みが検出された場合であっても、挟み込み対応制御を行わない。そして、速度調節部2003及び推力調節部2004は、それぞれ、挟み込み対応制御が所定閾値Fth1に対応する回数行われた場合、挟み込み検出部2009による物体の挟み込みの検出の有無によらず、ドア60が全開位置に到達するように、速度制御及び推力制御を継続させる。これにより、ドア制御装置20は、上述の第2例の場合と同様、物体の挟み込みの検出が継続されることにより、挟み込み対応制御が継続的に繰り返し実行され、ドア60の戸開動作が完了しないような事態を回避させることができる。
【0090】
<第2実施形態>
次いで、第2実施形態について説明する。
【0091】
第2実施形態に係るドア制御装置20は、第1実施形態に対して、主に、物体の挟み込みの検出方法が異なる。以下、第1実施形態に係るドア制御装置20(ドア制御システム1)と異なる部分を中心に説明する。
【0092】
尚、本実施形態に係るドア制御装置20は、第1実施形態と同様の挟み込み対応制御、つまり、
図3~
図6の挟み込み対応制御を実行可能であるため、本実施形態に係るドア制御装置20の挟み込み対応制御に関する説明は省略する。
【0093】
[ドア制御システムの構成]
まず、
図7を参照して、本実施形態に係るドア制御装置20を含むドア制御システム1の構成について説明する。
【0094】
本実施形態に係るドア制御装置20は、第1実施形態と同様、シーケンス制御部2001と、速度パターン発生部2002と、速度調節部2003と、推力調節部2004と、インバータ制御部2005と、電流・推力変換部2006と、速度検出部2007と、位置検出部2008と、挟み込み検出部2009を含む。加えて、ドア制御装置20は、抗力推定部2010を含む。
【0095】
抗力推定部2010は、ドア60の速度変動の要因となっている抗力を推定する、つまり、当該抗力の推定値(以下、「抗力推定値」)fdestを算出する。
【0096】
例えば、抗力推定部2010は、推力指令値fcom及び速度検出値vdetから速度変動の要因となっている抗力を推定する状態観測器(オブザーバ)として規定されてよい。また、抗力推定部2010は、推力指令値fcomに代えて、電流・推力変換部2006により検出されるモータ40の推力検出値fdetを用いることにより、速度変動の要因となっている抗力を推定する状態観測器として規定されてもよい。ドア60に推力指令値fcomに対応する推力(即ち、推力検出値fdetに相当する推力)が入力された場合に、推力指令値fcomにより推定(期待)される速度(以下、「速度推定値」)vestと、実際に出力されるドア60の速度に相当する速度検出値vdetとの間の差分には、ドア60に作用する抗力が影響しているからである。具体的には、抗力推定部2010に相当する状態観測器は、ドア60の力学モデル等に基づき、状態観測理論を用いて、以下の式(1)、(2)のように規定されてよい。このとき、下式において、sは、ラプラシアン(ラプラス演算子)であり、k1,k2は、それぞれ、調節ゲインであり、T1,T2は、それぞれ、時定数である。
【0097】
【0098】
【0099】
本例では、抗力推定値fdestは、調節ゲインk2及び時定数T2を用いて、速度検出値vdetと、推力指令値fcomに基づく速度推定値vestとの間の差分に関する一次遅れの微分要素として表される。
【0100】
尚、式(1),(2)で示す状態観測器は、一例であり、例えば、抗力推定値fdestの収束性等を考慮して、抗力推定部2010には、ルーエンバーガー(Luenberger)の状態観測器等が適用されてもよい。また、上述の如く、式(1),(2)において、推力指令値fcomは、推力検出値fdetに置換されてもよい。
【0101】
抗力推定部2010は、上述の式(1)、(2)に基づき、動摩擦力等を含む定常的にドア60に発生する定常抗力と、物体の挟み込み等に対応する外乱抗力とを含む抗力推定値fdestを推定することができる。
【0102】
尚、抗力推定部2010は、例えば、ドア60の力学モデル(運動方程式等)から直接的に抗力推定値fdestを推定してもよい。例えば、抗力推定部2010は、電流・推力変換部2006により検出されるモータ40の推力検出値fdetと、速度検出部2007により検出される速度検出値vdetの直近の速度変動値と、ドア60の動作部分の質量等を、ドア60の力学モデル(運動方程式)に適用することによって、定常抗力及び外乱抗力を含む抗力推定値fdestを推定してもよい。また、抗力推定部2010は、外乱抗力に相当する抗力推定値fdestを推定してもよい。例えば、抗力推定部2010は、実験やシミュレーション等を通じて取得される、ドア60の駆動系に想定される動摩擦力等の定常抗力の想定値に相当する分を減算することにより、外乱抗力に相当する抗力推定値fdestを推定してもよい。
【0103】
[戸開動作時における物体の挟み込みの検出方法]
次に、
図8を参照して、ドア制御装置20(挟み込み検出部2009)によるドア60の戸開動作時における物体の挟み込みの検出方法について説明する。
【0104】
図8は、ドア制御装置20(挟み込み検出部2009)による物体の挟み込み検出方法を説明する図である。具体的には、
図8の上図は、物体の挟み込み発生時の速度検出値vdet、速度指令値vcom、抗力推定値fdest、及び推力指令値fcomの時間変化を示すグラフであり、
図8の下図は、挟み込み信号dの出力状態(出力の有無)の時間変化を示すグラフである。
【0105】
図8に示すように、時刻t21で物体の挟み込みが発生している。
【0106】
物体の挟み込みが発生すると、物体の挟み込みに対応する外乱抗力がドア60に作用し続けるため、抗力推定部2010による抗力推定値fdestは、急激に増大し、その後、略一定の非常に大きい値を示し続ける。
【0107】
よって、挟み込み検出部2009は、抗力推定値fdestが抗力閾値fobst(>0)を超えたことにより、ドア60に発生した物体の挟み込みを検出することができる(時刻t22)。
【0108】
本実施形態では、物体の挟み込みという現象の結果であるドア60の速度の低下に代えて、現象の要因である抗力の増加に着目している。そのため、ドア制御装置20は、より早いタイミング、具体的には、ドア60の速度制御系において、速度低下をある程度補償できている状況であっても、物体の挟み込みを検出することができる。
【0109】
物体の挟み込みを検出するための抗力閾値fobst(第2の所定値の一例)は、例えば、ドア60に作用する動摩擦力等を含む定常抗力に基づき、規定されてよい。具体的には、抗力閾値fobstは、ドア60に作用する動摩擦力等を含む定常抗力として想定されるレベルの値に規定される。上述の如く、抗力推定値fdestは、定常抗力を含む態様で算出されるからである。
【0110】
また、
図8に示すように、挟み込み検出部2009は、抗力推定値fdestが抗力閾値fobstを超えたことを時素τd2(>0)を以て判断し、ドア60に発生した物体の挟み込みを検出してもよい。つまり、挟み込み検出部2009は、抗力推定値fdestが抗力閾値fobstを超えてから、その状態が時素τd2以上の間継続していることにより、ドア60に発生した物体の挟み込みを検出してもよい(時刻t23)。これにより、一時的に発生した物体の挟み込み(例えば、ドアパネルと戸袋の間に引き込まれた物体を乗客が直ぐに引き出せたような場合)等が排除されるため、挟み込み検出部2009は、上述した挟み込み対応制御を必要とするような状況の物体の挟み込みだけを検出することができる。
【0111】
物体の挟み込みを検出するための時素τd2(第2の所定時間の一例)は、例えば、経験則やシミュレーション等に基づき取得される、物体の引き抜きに成功する確率と物体の挟み込みが発生してからの経過時間との関係等から規定されてよい。物体の挟み込みが発生してからの経過時間が長くなるほど、物体が戸袋の奥まで引き込まれるため、ドア60に推力が付加されている状況で、乗客等が物体を引き抜きに成功する確率が低くなると考えられるからである。
【0112】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0113】
例えば、上述した実施形態では、ドア制御装置20は、車両に搭載されるドアを制御対象とするが、車両に搭載されるドア以外のドアを制御対象にしてもよい。具体的には、ドア制御装置20は、例えば、エレベータ等のドアの制御を行ってもよく、上述と同様の方法で、ドアの戸開動作時における物体の挟み込みを検出したり、物体の挟み込みの検出に応じて、挟み込み対応制御を行ったりしてよい。これにより、上述の実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【符号の説明】
【0114】
10 車両制御装置
20 ドア制御装置
30 インバータ
40 モータ
50 ドア開閉機構
60 ドア
2000 記憶部
2001 シーケンス制御部(挟み込み対応制御部)
2002 速度パターン発生部
2003 速度調節部(速度制御部)
2004 推力調節部(推力制御部)
2005 インバータ制御部
2006 電流・推力変換部
2007 速度検出部
2008 位置検出部
2009 挟み込み検出部
2010 抗力推定部