(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014975
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】PEG化破傷風神経毒素および筋緊張低下の治療
(51)【国際特許分類】
C07K 14/33 20060101AFI20240125BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240125BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240125BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240125BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240125BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240125BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
C07K14/33 ZNA
A61K38/16
A61K47/60
A61P11/00
A61P21/02
A61P43/00 121
C12N15/31
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196375
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2021529491の分割
【原出願日】2019-07-30
(31)【優先権主張番号】2018902779
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】521048060
【氏名又は名称】スノーレトックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スムーカー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ノーブリー,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】コロエ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】コンジット,ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】サッセ,アンソニー
(57)【要約】
【課題】本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)と結合された破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)および第二TeNTを含む組成物に関する。本発明は、様々なPEG-TeNTにも関する。本発明は、組成物または様々なPEG-TeNTを使用する筋緊張低下の治療方法、および組成物または様々なPEG-TeNTを含むキットにも関する。1つの実施形態では、筋緊張低下は、閉塞型睡眠時無呼吸である。
【解決手段】本発明者らは、これらの問題に対処するために、修飾TeNTのファミリーおよび治療レジメンを作り出した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に対して、1つ以上の表面セリンからシステインへのアミノ酸置換を含む、破傷風神経毒素(TeNT)またはそのフラグメント。
【請求項2】
前記置換されたセリンは、配列番号1に対して、S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S600C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cの1つ以上を含む、請求項1に記載のTeNT。
【請求項3】
前記置換システインは、ポリエチレングリコール(PEG)と結合している、請求項1または2に記載のTeNT。
【請求項4】
前記PEGは、約2kDa、約5kDa、約10kDa、または約20kDaである、請求項3に記載のTeNT。
【請求項5】
前記PEGは、直鎖または分岐鎖である、請求項3または4に記載のTeNT。
【請求項6】
TeNTまたはそのフラグメントであって、配列番号1に対して、R1225K;R1225E;W1288A;W1288Y;W1288F;W1288L;R1225KおよびW1288A;R1225EおよびW1288A;R1225KおよびW1288Y;R1225EおよびW1288Y;R1225KおよびW1288F;R1225EおよびW1288F;R1225KおよびW1288L;R1225EおよびW1288L;R1225del;W1288del;もしくはR1225delおよびW1288del;E270A;Y374A;E270AおよびY374;G270del;Y374del;またはこれらの組合せを含み、前記TeNTまたはそのフラグメントが不活性である、TeNTまたはそのフラグメント。
【請求項7】
(i)ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT);および(ii)前記第一PEG-TeNTは第二TeNTに結合していない前記第二TeNTを含む、組成物。
【請求項8】
前記第一PEG-TeNTは、請求項3~5のいずれか一項に記載のTeNTを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記第二TeNTは、請求項1~6のいずれか一項に記載のTeNTである、請求項7または請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
筋緊張低下の治療方法であって、前記方法は、(i)ポリエチレングリコール(PEG)結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT);および(ii)第二TeNTを、対象に投与することを含む、方法。
【請求項11】
第二TeNTを投与される対象における筋緊張低下治療のための医薬製剤におけるポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む、第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)の使用。
【請求項12】
ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)を投与される対象における筋緊張低下治療のための医薬製剤における第二TeNTの使用。
【請求項13】
筋緊張低下治療のための医薬製剤における、(i)ポリエチレングリコール(PEG)
が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT);および(ii)第二TeNTの使用。
【請求項14】
前記第一PEG-TeNTまたは前記第二TeNTは、PEG化TeNT軽鎖(LC)、PEG化TeNT重鎖(HC)、またはPEG化TeNTフラグメントc(c)を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の組成物、請求項10に記載の方法、または請求項11~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記第一PEG-TeNTまたは前記第二TeNTは、PEG化HCを含むPEG-TeNT-HC、またはPEG化LCおよびPEG化cを含むPEG-TeNT-LC-cである、請求項7~14のいずれか一項に記載の組成物、方法または使用。
【請求項16】
前記第一PEG-TeNTはPEG-TeNT-HCであり、前記第二TeNTはPEG-TeNT-LC-cである、請求項7~15のいずれか一項に記載の組成物、方法または使用。
【請求項17】
前記第二TeNTは、不活性化されたTeNTを含む、請求項7~16のいずれか一項に記載の組成物、方法または使用。
【請求項18】
配列番号1に対して、前記不活性化されたTeNTは:R1225K;R1225E;W1228A;W1288Y;W1288F;W1288L;R1225KおよびW1288A;R1225EおよびW1288A;R1225KおよびW1288Y;R1225EおよびW1288Y;R1225KおよびW1288F;R1225EおよびW1288F;R1225KおよびW1288L;R1225EおよびW1288L;R1225del;W1288del;もしくはR1225delおよびW1288del;E270A;Y374A;E270AおよびY374;G270del;Y374del;またはこれらの組合せを含む、請求項17に記載の組成物、方法または使用。
【請求項19】
前記対象に、
効能が低下するまで、PEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を対象に投与し;次いで
効能が低下するまで、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを含む組成物を対象に投与し;次いで
PEG化LCおよびPEG化HCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)
を投与する、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項20】
前記筋緊張低下は、閉塞型睡眠時無呼吸である、請求項9~19のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項21】
前記組成物は、治療用組成物である、請求項7または14~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む、PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)。
【請求項23】
前記TeNT軽鎖(LC)がPEG化されているか、前記TeNT重鎖(HC)がPEG化されているか、または前記TeNTフラグメントc(c)がPEG化されている、請求項22に記載のPEG-TeNT。
【請求項24】
LCがPEG化されており、かつ、HCがPEG化されている(PEG-TeNT-LC-HC)か、またはLCがPEG化されており、かつ、cがPEG化されている(PEG-TeNT-LC-c)、請求項22または請求項23に記載のPEG-TeNT。
【請求項25】
PEGはリジン残基と結合している、請求項22~24のいずれか一項に記載のPEG-TeNT。
【請求項26】
PEGはシステイン残基と結合されており、必要に応じて、前記システイン残基は、配列番号1に対して、表面セリンからシステインへの置換である、請求項22~24のいずれか一項に記載のPEG-TeNT。
【請求項27】
前記PEGは、約5kDa、約10kDaまたは約20kDaの分子量を有する、請求項22~26のいずれか一項に記載のPEG-TeNT。
【請求項28】
筋緊張低下の治療方法であって、前記方法は、請求項22~27のいずれか一項に記載のPEG-TeNTを対象に投与することを含み、前記PEG-TeNTは第二TeNTと結合していない、方法。
【請求項29】
筋緊張低下治療のための医薬製剤における請求項22~27のいずれか一項に記載のPEG-TeNTの使用であって、前記PEG-TeNTは第二TeNTと結合していない、使用。
【請求項30】
前記対象に、PEG化HCを含む第一PEG-TeNT(PEG-TeNT-HC)ならびにPEG化LCおよびPEG化cを含む第二PEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-c)を投与する、請求項28に記載の方法または請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記対象に、
PEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c);ならびに/または
PEG化HCを含む第一PEG-TeNT(PEG-TeNT-HC)およびPEG化LC-cを含む第二PEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-c);ならびに/または
PEG化HCおよびPEG化LCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)
を投与する、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項32】
治療は、
効能が低下するまで、PEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を対象に投与し;次いで
効能が低下するまで、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを対象に投与し;次いで
PEG化LCおよびPEG化HCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)
を対象に投与することを含む、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項33】
治療は、不活性化されたTeNTを投与することをさらに含む、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項34】
配列番号1に対して、前記不活性化されたTeNTは:R1225K;R1225E;W1288A;W1288Y;W1288F;W1288L;R1225KおよびW12
88A;R1225EおよびW1288A;R1225KおよびW1288Y;R1225EおよびW1288Y;R1225KおよびW1288F;R1225EおよびW1288F;R1225KおよびW1288L;R1225EおよびW1288L;R1225del;W1288del;もしくはR1225delおよびW1288del;E270A;Y374A;E270AおよびY374;G270del;Y374del;またはこれらの組合せを含む、請求項33に記載の方法または使用。
【請求項35】
前記筋緊張低下は、閉塞型睡眠時無呼吸である、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項36】
請求項1~6のいずれか一項に記載のTeNT、請求項7、14~18もしくは21のいずれか一項に記載の組成物、または請求項22~27のいずれか一項に記載のPEG-TeNTを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)および第二TeNTを含む組成物に関する。本発明は、前記組成物を使用する筋緊張低下の治療方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
破傷風神経毒素(TeNT)は、クロストリジウム・テタニ(Clostridium
tetani)により産生される。TeNTは脊髄において作用し、抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)およびグリシンの脊髄抑制性介在ニューロンにおける放出を遮断する。そのように、TeNTは、痙性麻痺を引き起こす。TeNTは、複数の血清型では発生しない。
【0003】
TeNT、あるいは少なくともTeNTフラグメントの、生物学的特性を治療に利用することが提案されている。しかしながら、タンパク質治療薬を用いた長期治療は、標的とされる免疫反応をもたらす傾向にある。TeNTの血清型は1つしか知られていないため、TeNTをベースとする治療において、免疫を回避するために血清型を切り替えることは選択肢にはない。さらに、多くの人々はTeNTに対してワクチン接種をしているため、TeNTをベースとする治療は妨げられる。
【0004】
特許文献1では、不適当な筋収縮の疾患治療のため、PEG化ボツリヌス毒素の使用が開示されている。特許文献1は、不適当な筋収縮、例えば、転移性(migration)頭痛または斜視の疾患治療にPEG化TeNTを使用することも示唆している。しかしながら、上記のように、TeNTは筋収縮を引き起こすため、PEG化されているかいないかに関わらず、不適当な筋収縮の疾患治療のためのその使用は妨げられる。
【0005】
非特許文献1は、PEG化タンパク質の投与から得られた抗PEG免疫応答に対するPEG化の効果を開示しているが、その知見をいかなる治療のためにも利用していない。
【0006】
特許文献2は、筋肉量を増加するためのPEG化TeNTフラグメントc(c)の使用を開示している。TeNTがパパインによって酵素切断される場合に、フラグメントc(50kDa)は生成され、TeNT重鎖のC末端における451アミノ酸に相当する。フラグメントcは、消化されていないTeNTの結合、内部移行および経シナプス輸送能力を保持するが、いかなる神経細胞のプロセスも破壊せず、したがって、無毒である。
【0007】
破傷風トキソイド免疫性を与えられた対象における既存の抗TeNT免疫応答を回避する、TeNTをベースとする治療のためのニーズが存在する。
【0008】
本明細書において従来技術出版物を参照する場合、かかる参照は、出版物がオーストラリアまたはいずれもの他国の当技術分野における常識の一部を形成すると認めることにはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0197278(A1)号
【特許文献2】国際公開第2016/001762(A1)号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Wan et al.Process Biochemistry(2017)52:183-191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、タンパク質治療薬を投与すると、適応免疫系が抗体反応を起こし、タンパク質治療薬の効果を低下させるため、TeNTの利用が十分に実現されていないことを理解している。TeNTに対して免疫を持つ多くの集団によって実証されるように、ワクチン接種の結果として、適応免疫応答は意図的であってよい。あるいは、適応免疫応答は意図されておらず、タンパク質治療薬に対する反復暴露に起因してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、これらの問題に対処するために、修飾TeNTのファミリーおよび治療レジメンを作り出した。詳細には、本発明は、各々が免疫系を回避するPEG化TeNT(PEG-TeNT)のファミリー、および以前に投与されたPEG-TeNTの有効性が低下する場合や、患者の免疫プロファイルが別のPEG-TeNTの使用を妨げる場合に、異なる代替のPEG-TeNTを治療のために使用する段階的な治療レジメンを提供する。
【0013】
第一態様は、配列番号1に対して、1つ以上の表面セリンからシステインへのアミノ酸置換を含む、破傷風神経毒素(TeNT)またはそのフラグメントを提供する。
【0014】
第一態様の1つの実施形態では、置換システインは、ポリエチレングリコール(PEG)と結合している。
【0015】
第二態様は、TeNTまたはそのフラグメントであって、配列番号1に対して、R1225K;R1225E;W1288A;W1288Y;W1288F;W1288L;R1225KおよびW1288A;R1225EおよびW1288A;R1225KおよびW1288Y;R1225EおよびW1288Y;R1225KおよびW1288F;R1225EおよびW1288F;R1225KおよびW1288L;R1225EおよびW1288L;R1225del;W1288del;もしくはR1225delおよびW1288del;E270A;Y374A;E270AおよびY374;G270del;Y374del;またはこれらの組合せを含み、TeNTまたはそのフラグメントが不活性である、TeNTまたはそのフラグメントを提供する。
【0016】
第三態様は、(i)ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT);および(ii)第一PEG-TeNTは第二TeNTに結合していない第二TeNTを含む、組成物を提供する。
【0017】
第四態様は、筋緊張低下の治療方法であって、該方法は、(i)ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT);および(ii)第二TeNTを、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0018】
第四態様は、第二TeNTを投与される対象における筋緊張低下治療のための医薬製剤における、ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)の使用も提供する。
【0019】
第四態様は、ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT
)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)を投与される対象における筋緊張低下治療のための医薬製剤における、第二破傷風神経毒素(TeNT)の使用も提供する。
【0020】
第四態様は、筋緊張低下治療のための医薬製剤における、(i)ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT);および(ii)第二TeNTの使用も提供する。
【0021】
第四態様は、第二TeNTを投与された対象における筋緊張低下の治療方法において使用するための、ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)も提供する。
【0022】
第四態様は、ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)を投与される対象における、筋緊張低下の治療方法において使用するための第二破傷風神経毒素(TeNT)の使用も提供する。
【0023】
第四態様は、筋緊張低下の治療方法における使用のための、(i)ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT);および(ii)第二TeNTも提供する。
【0024】
第四態様の実施形態では、組成物は、第一PEG-TeNTおよび第二TeNTを含んでよい。
【0025】
第四態様は、筋緊張低下の治療方法における使用のための、(i)ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む第一PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT);および(ii)第二TeNTを含む組成物も提供する。
【0026】
1つの実施形態では、第一PEG-TeNTまたは第二TeNTは、PEG化TeNT軽鎖(LC)、PEG化TeNT重鎖(HC)、PEG化TeNT重鎖(HC)およびPEG化TeNT軽鎖(LC)、またはPEG化TeNTフラグメントc(c)を含む。1つの実施形態では、第一PEG-TeNTまたは第二TeNTは、PEG-TeNT-LC-HCを含む。
【0027】
別の実施形態では、第一PEG-TeNTまたは第二TeNTは、PEG化HCを含むPEG-TeNT-HCである。この実施形態では、LCは、PEG化されていない。別の実施形態では、第一PEG-TeNTまたは第二TeNTは、PEG化LCおよびPEG化cを含むPEG-TeNT-LC-cである。この実施形態では、HNは、PEG化されていない。
【0028】
更なる実施形態では、第一PEG-TeNTはPEG-TeNT-HCであり、第二TeNTはPEG-TeNT-LC-cである。
【0029】
1つの実施形態では、第二TeNTは、不活性化されたTeNTを含む。配列番号1に対して、不活性化されたTeNTは:R1225K;R1225E;W1288A;W1288Y;W1288F;W1288L;R1225KおよびW1288A;R1225EおよびW1288A;R1225KおよびW1288Y;R1225EおよびW1288Y;R1225KおよびW1288F;R1225EおよびW1288F;R1225KおよびW1288L;R1225EおよびW1288L;R1225del;W1288del;R1225delもしくはW1288del;E270A;Y374A;E270AおよびY374A;G270del;Y374del;またはこれらの組合せを含んでよい。1つの実施形態では、第二TeNTは、R1225EおよびW1288Aを含む不活性化されたTeNTを含む。
【0030】
1つの実施形態では、対象に、効能が低下するまで、PEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を投与し;次いで、効能が低下するまで、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを含む組成物を投与し;次いで、PEG化LCおよびPEG化HCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)を投与する。
【0031】
1つの実施形態では、治療は、PEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を対象に投与し、;次いで、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを含む組成物を対象に投与し、;次いで、PEG化LCおよびPEG化HCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)を対象に投与して、対象の抗TeNT抗体の免疫プロファイルを決定し、このプロファイルに基づいてPEG-TeNTの有効組成物を決定することを含む。
【0032】
1つの実施形態では、筋緊張低下は、閉塞型睡眠時無呼吸である。
【0033】
別の実施形態では、組成物は、治療用組成物である。別の実施形態では、組成物は、美容用組成物である。
【0034】
TeNT LCおよびTeNT HN(LC-HN)から成るタンパク質の製造方法であって、該方法は、配列番号6を含むアミノ酸をコードする核酸分子を宿主細胞内で発現することを含む、方法も開示する。
【0035】
第五態様は、ポリエチレングリコール(PEG)が結合した破傷風神経毒素(TeNT)を含む、PEG化破傷風神経毒素(PEG-TeNT)を提供する。
【0036】
1つの実施形態では、TeNT軽鎖(LC)がPEG化されている、TeNT重鎖(HC)がPEG化されている、またはTeNTフラグメントc(c)がPEG化されている。1つの実施形態では、LCはPEG化されており、かつ、HCはPEG化されている(PEG-TeNT-LC-HC)か、または、LCはPEG化されており、かつ、cはPEG化されている(PEG-TeNT-LC-c)。
【0037】
別の実施形態では、PEGは、TeNTのリジン残基と結合している。別の実施形態では、PEGは、TeNTのシステイン残基と結合している。1つの実施形態では、PEGはTeNTのシステイン残基と結合しており、該システイン残基は配列番号1に対して天然またはセリン残基に対する置換のいずれかである。
【0038】
1つの実施形態では、PEGは、約2kDa、約5kDa、約10kDa、または約20kDa、または約30kDaの分子量を有する。
【0039】
第六態様は、筋緊張低下の治療方法であって、該方法は、第五態様のPEG-TeNTを対象に投与することを含み、PEG-TeNTは第二TeNTと結合していない、方法を提供する。
【0040】
第六態様は、筋緊張低下治療のための医薬製剤における第五態様のPEG-TeNTの使用であって、PEG-TeNTは第二TeNTと結合していない、使用も提供する。
【0041】
あるいは、第六態様は、筋緊張低下の治療方法における使用のための第五態様のPEG-TeNTであって、該方法は、PEG-TeNTを対象に投与することを含み、PEG-TeNTは第二TeNTと結合していない、PEG-TeNTを提供する。
【0042】
1つの実施形態では、対象に、PEG化HCを含む第一PEG-TeNT(PEG-TeNT-HC)ならびにPEG化LCおよびPEG化cを含む第二PEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-c)を投与する。
【0043】
別の実施形態では、対象に、PEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c);ならびに/またはPEG化HCを含む第一PEG-TeNT(PEG-TeNT-HC)およびPEG化cを含む第二PEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-c);ならびに/またはPEG化HCおよびPEG化LCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)を投与する。
【0044】
1つの実施形態では、治療は、効能が低下するまで、PEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を、対象に投与することを含む。その後、治療は、効能が低下するまで、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを、対象に投与することを含んでよい。その後、治療は、PEG化LCおよびPEG化HCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)を、対象に投与することを含んでよい。
【0045】
1つの実施形態では、治療は、効能が低下するまで、PEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を対象に投与し;次いで、効能が低下するまで、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを対象に投与し;次いで、PEG化LCおよびPEG化HCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)を、対象に投与することを含む。
【0046】
1つの実施形態では、治療は、効能が低下するまで、約5kDaの分子量を有するPEGを含むPEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を対象に投与し;次いで、効能が低下するまで、約10kDaの分子量を有するPEGを含むPEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を対象に投与し;次いで、効能が低下するまで、約20kDaの分子量を有するPEGを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を、対象に投与することを含む。その後、治療は、効能が低下するまで、これらのいずれかまたは両方が5kDaの分子量を有するPEGを含むPEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを対象に投与し;次いで、効能が低下するまで、これらのいずれかまたは両方が10kDaの分子量を有するPEGを含むPEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを対象に投与し;次いで、効能が低下するまで、これらのいずれかまたは両方が20kDaの分子量を有するPEGを含むPEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを、対象に投与することを含んでよい。その後、治療は、効能が低下するまで、これらのいずれかまたは両方が5kDaの分子量を有するPEGを含むPEG化LCおよびPEG化HCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)を対象に投与し;次いで、効能が低下するまで、これらのいずれかまたは両方が10kDaの分子量を有するPEGを含むPEG化LCおよびPEG化HCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)を対象に投与し;次いで、効能が低下するまで、これらのいずれかまたは両方が20kDaの分子量を有するPEGを含むPEG化LCおよびPEG化HCを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)を、対象に投与することを含んでよい。
【0047】
1つの実施形態では、治療は、PEG化cを含むPEG-TeNT(PEG-TeNT-c)を対象に投与し;次いで、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cを含む組成物を対象に投与し;次いで、PEG化LCおよびPEG化HCを含むPE
G-TeNT(PEG-TeNT-LC-HC)を対象に投与して、対象の抗TeNT抗体の免疫プロファイルを決定し、このプロファイルに基づいてPEG-TeNTの有効組成物を決定することを含む。
【0048】
別の実施形態では、TeNTを用いた治療は、不活性化されたTeNTを投与することを更に含む。配列番号1に対して、不活性化されたTeNTは:R1225K;R1225E;W1228A;W1288Y;W1288F;W1288L;R1225KおよびW1288A;R1225EおよびW1288A;R1225KおよびW1288Y;R1225EおよびW1288Y;R1225KおよびW1288F;R1225EおよびW1288F;R1225KおよびW1288L;R1225EおよびW1288L;R1225del;W1288del;R1225delもしくはW1288delを含んでよい。1つの実施形態では、第二TeNTは、R1225EおよびW1288A;E270A;Y374A;E270AおよびY374A;G270del;Y374del;またはこれらの組合せを含む。
【0049】
1つの実施形態では、筋緊張低下は、閉塞型睡眠時無呼吸である。
【0050】
第七態様は、第一態様のTeNT、第二態様の組成物または第五態様のPEG-TeNTを含むキットを提供する。
【0051】
1つの実施形態では、それぞれ、第三または第六態様の方法に従って、組成物またはPEG-TeNTを使用する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は本発明の実施例PEG-TeNTの略図である。
図1Aは PEG-TeNT-c、
図1Bは PEG-TeNT-HC、
図1Cは PEG-TeNT-LC-c、
図1Dは PEG-TeNT-LC-HCを示し、TeNTは完全であり活性である、すなわち、TeNTは両方の鎖を含み、PEG化は特定の領域、すなわち、それぞれ、c、HC、LC-c、またはLC-HCに存在する。
【
図2】
図2は、1314アミノ酸を含む成熟TeNTのアミノ酸配列(配列番号1)である。
【
図3】
図3は、TeNTをコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号2)である。
【
図4】
図4は、TeNTをコードするベクターpRSET-TeNTのマップである。TeNTは、N末端His
6タグと共に発現される。核酸は、pRSET-AベクターのMCS内に挿入され、T7プロモーターの制御下発現される。
【
図5】
図5は、配列番号1のアミノ酸457~1314を含むHCのアミノ酸配列(配列番号3)である。
【
図6】
図6は、配列番号1のアミノ酸864~1314を含むcのアミノ酸配列(配列番号4)である。
【
図7】
図7は、cをコードするベクターpRSET-TeNT-cの核酸配列(配列番号5)である。
【
図8】
図8は、cをコードするベクターpRSET-TeNT-cのマップである。cは、N末端His
6タグと共に発現される。核酸は、pRSET-AベクターのMCS内に挿入され、T7プロモーターの制御下発現される。
【
図9】
図9は、配列番号1のアミノ酸1~863を含むLC-HNのアミノ酸配列(配列番号6)である。
【
図10】
図10は、LC-HNをコードするベクターpRSET-TeNT-LC-HNの核酸配列(配列番号7)である。
【
図11】
図11は、LC-HNをコードするベクターpRSET-TeNT-LC-HNのマップである。LC-HNは、N末端His
6タグと共に発現される。核酸は、pRSET-AベクターのMCS内に挿入され、T7プロモーターの制御下発現される。
【
図12】
図12は、配列番号1に対し、アミノ酸置換W1288AおよびR1225Eを含む非機能性のcのアミノ酸配列(配列番号8)である。
【
図13】
図13は、配列番号1に対し、アミノ酸置換W1288AおよびR1225Eを含む
図12(配列番号8)の非機能性のcをコードするベクターpRSET-TeNT-cの核酸配列(配列番号9)である。
【
図14】
図14は、配列番号1に対し、アミノ酸置換W1288AおよびR1225Eを含む
図12(配列番号8)の非機能性のcをコードするベクターpRSET-TeNT-cのマップである。配列番号1に対し、アミノ酸置換W1288AおよびR1225Eを含む、cは、N末端His
6タグと共に発現される。核酸は、pRSET-AベクターのMCS内に挿入され、T7プロモーターの制御下発現される。
【
図15】
図15は、配列番号1に対し、アミノ酸置換W1288AおよびR1225Eを含む非機能性のTeNTのアミノ酸配列(配列番号10)である。
【
図16】
図16は、配列番号1に対し、アミノ酸置換W1288AおよびR1225Eを含む
図15(配列番号10)の非機能性のTeNTをコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号11)である。
【
図17】
図17は、配列番号1に対し、アミノ酸置換W1288AおよびR1225Eを含む
図15(配列番号10)の非機能性のTeNTをコードするベクターpRSET-TeNTのマップである。配列番号1に対し、アミノ酸置換W1288AおよびR1225Eを含む、TeNTは、N末端His
6タグと共に発現される。核酸は、pRSET-AベクターのMCS内に挿入され、T7プロモーターの制御下発現される。
【
図18】
図18は、配列番号1に対し、表面セリンからシステインへのアミノ酸置換S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S600C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cを含む成熟1314アミノ酸TeNTのアミノ酸配列(配列番号12)である。
【
図19】
図19は、
図18(配列番号12)の表面セリンからシステインへ置換された成熟TeNTをコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号13)である。
【
図20】
図20は、
図18(配列番号12)の表面セリンからシステインへ置換された成熟TeNTをコードする
図19(配列番号13)のベクターpRSET-TeNTのマップである。表面セリンからシステインへ置換されたTeNTは、N末端His
6タグと共に発現される。核酸は、pRSET-AベクターのMCS内に挿入され、T7プロモーターの制御下発現される。
【
図21】
図21は、LCおよびc領域において、配列番号1に対し、表面セリンからシステインへのアミノ酸置換S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cを含む成熟1314アミノ酸TeNTのアミノ酸配列(配列番号14)である。
【
図22】
図22は、
図21(配列番号14)の表面セリンからシステインへ置換された成熟TeNTをコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号15)である。
【
図23】
図23は、
図21(配列番号14)の表面セリンからシステインへ置換された成熟TeNTをコードする
図22(配列番号15)のベクターpRSET-TeNTのマップである。表面セリンからシステインへ置換されたTeNTは、N末端His
6タグと共に発現される。核酸は、pRSET-AベクターのMCS内に挿入され、T7プロモーターの制御下発現される。
【
図24】
図24は、配列番号1に対し、HC表面セリンからシステインへのアミノ酸置換S600C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cを含むTeNTのアミノ酸配列(配列番号16)である。
【
図25】
図25は、
図24(配列番号16)の表面セリンからシステインへ置換された成熟TeNTをコードするベクターpRSET-TeNTの核酸配列(配列番号17)である。
【
図26】
図26は、
図24(配列番号16)の表面セリンからシステインへ置換されたTeNTをコードする
図25(配列番号17)のベクターpRSET-TeNTのマップである。表面セリンからシステインへ置換されたTeNTは、N末端His
6タグと共に発現される。核酸は、pRSET-AベクターのMCS内に挿入され、T7プロモーターの制御下発現される。
【
図27】
図27は、Discovery Studioを使用するモデルに、da Silva Antunesら(2017)およびPalermoら(2017)により同定された主要ヒト抗体クローン型によって認められたタンパク質データバンク(受託ID PDB:5N0B)マッピングエピトープに寄託された結晶構造解析データから誘導されたTeNTの三次元タンパク質構造モデルである。同定されたエピトープ中または周囲の表面セリン残基を、その後のPEG化のためのシステインへの変異のために選択した。
【
図28】
図28は、分子量が増加したPEGを含み、(A)クーマシーブルーおよび(B)ポリクローナル抗TeNT抗体を使用するウエスタンブロットによって検出されたPEG-TeNTのSDS-PAGE分析の2枚の写真である。(B)は、免疫原性がPEG分子量に比例することを示している。左端がkDaで表した分子量マーカー 1列目、TeNT 2列目、2kDa PEG-TeNT-HC-LC 3列目、5kDa PEG-TeNT-LC-HC 4列目、10kDa PEG-TeNT-LC-HC 5列目、20kDa PEG-TeNT-LC-HC 6列目である。
【
図29】
図29は、競合ELISAアッセイを表す4つの折れ線グラフである。それぞれが異なる分子量PEG(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)を含む4つのPEG-TeNTおよび4つのPEG-TeNT-LC-cセリン変異体を、ポリクローナル抗TeNT抗体を使用してTeNTに対してアッセイした。(A)TeNTをELISAプレートに吸着し、次いで、4つのPEG-TeNT抗原(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)の4つの濃度(10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/ml)の各々でプレインキュベートされたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブした。(B)各PEG-TeNT(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)を別々のELISAプレートに吸着し、次いで、TeNT抗原の4つの濃度(10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/ml)の各々でプレインキュベートされたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブした。(C)TeNT-LC-cセリン変異体をELISAプレートに吸着し、次いで、4つのPEG-TeNT-LC-cセリン変異体抗原(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)の4つの濃度(10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/ml)の各々でプレインキュベートされたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブした。(D)各PEG-TeNT-LC-cセリン変異体(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)を別々のELISAプレートに吸着し、次いで、TeNT-LC-cセリン変異体抗原の4つの濃度(10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/ml)の各々でプレインキュベートされたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブした。
【
図30】
図30は、PEG-TeNT-LC-HCを注射した雌C57BL/6マウスの後肢において後肢局在性筋強縮を示す4枚の写真である。
図30Aおよび
図30Bは、ナイーブマウスにおける後肢局在性筋強縮を示す。
図30Cは、破傷風トキソイドをワクチン接種されたマウスにおいて100ユニットのTeNTの注射後に後肢筋強縮がないことを示すが、
図30Dは、破傷風トキソイドをワクチン接種されたマウスにおいて80ユニットのPEG-TeNT LC-HC 20kDaの注射後に後肢筋強縮が持続していることを示す。
【
図31】
図31は、規定ユニットのTeNT、PEG-TeNT-LC-HC 20kDa、TeNT-LC-cセリン変異体体、PEG-TeNT-LC-cセリン変異体 2kDa、またはPEG-TeNT-LC-cセリン変異体 20kDaの注射後の雌C57BL/6マウスの後肢において示された破傷風臨床レベルを示す2ドットプロットである。
図31A)マウスに、TeNTまたはPEG-TeNT-LC-HC 20kDaを注射した。
図31B)マウスに、TeNT、TeNT-LC-cセリン変異体、PEG-TeNT-LC-cセリン変異体 2kDaまたはPEG-TeNT-LC-cセリン変異体 20kDaを注射した。1ユニットは、ナイーブマウスにおいて24時間以内にステージ4の筋強縮を引き起こすのに必要な毒素の最小量である。
【
図32】
図32は、破傷風トキソイドをワクチン接種されたマウスにおける臨床筋強縮の進行を示す2つの折れ線グラフである。
図32Aは、不活性化されたTeNTデコイを有するまたは有しない4000ユニットのTeNTを注射後の筋強縮の進行を示す。
図32Bは、不活性化されたTeNTデコイを有するまたは有しない40ユニットのTeNT-PEG 20kDaを注射後の筋強縮の進行を示す。両方の場合に、進行は、デコイの存在によって明らかに促進される。
【
図33】
図33は、実施例23に従って治療されたブリティッシュブルドッグの呼吸障害指数(RDI)に対する破傷風毒素の投与量増加の効果を示す箱ひげ図である。黒色棒は、破傷風毒素の各投与量における6試験のRDIのメジアンを表す。網掛けボックスは、四分位範囲を表し、ひげは、各投与量における最小および最大RDIサンプルを表す。破傷風毒素の増加は、プラセボ投与後のRDIと比較して、10IU/kgの投与後のRDI低下と関連していた(P=0.043;ウィルコクソンの符号順位検定)。加えて、プラセボおよび10IU/kgの中央値は、それぞれ、〇および*で表す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、免疫回避TeNTおよびPEG-TeNT分子(
図1)、その組成物、およびこれらの治療および美容の使用に関する。1つの実施形態では、本発明は、筋緊張低下の治療、必要に応じて、閉塞型睡眠時無呼吸の治療に関する。
【0054】
破傷風トキソイドに対する防御免疫応答を有する対象における筋緊張低下を治療するための、特に修飾されたTeNTならびにTeNTおよびデコイ(不活性化されたTeNT)の組成物の使用を、本明細書に記載する。その目標を達成するために、破傷風免疫患者において筋緊張を増大することができる生物活性化合物を送達するため、活性TeNTを、PEGの添加、特定の変異の導入、またはその組合せによって修飾する。
【0055】
活性は、修飾された毒素、または製剤の規定単位用量の投与によって実証することができ、同じ単位投与量において、TeNTはワクチン接種された対象において活性を示さないだろう。TeNTの三次元構造解析に基づいた、PEG分子の特異的結合のための特異的表面変異の導入は、ワクチン接種された対象における防御抗体応答により標的化されると知られている特定のTeNTエピトープのマスキングを可能とした。PEG化、部位特異的変異およびデコイ分子製剤の組合せは、TeNTの同等の単位の投与と比較して、ワクチン接種された哺乳類モデルにおける筋緊張の増大に対する当該分子の効果をかなり高めた。
【0056】
特許文献1は、不適当な筋収縮の障害の治療のための一連のPEG化ボツリヌス毒素を開示し、TeNTをボツリヌス毒素の代替物として使用することができることを示唆した。しかしながら、TeNTを使用して、筋収縮を治療することはできない。さらに、特許文献1の申請された発明は、開示された方法がエピトープの部位特異的マスキングを含まないので、有効であるように思われず、本発明者らの知る限りでは、TeNTエピトープの計画的マスキングに必要なエピトープの三次元構造および同定は特許文献1の優先日において利用可能でなかった。
【0057】
Wanらは、PEG化タンパク質の投与から得られた抗PEG免疫応答に対するPEG化の効果を対象とするが、いずれの治療のための知見も開発していない。Wanらは、PEG化破傷風トキソイドが非PEG化破傷風トキソイドに対して免疫原性低下を示したが、Wanらは、治療上関連のある分子または製剤を提示していない。さらに、破傷風トキソイドは、TeNTのホルムアルデヒド架橋により製造され得るワクチン接種のために使用される生物不活性TeNTであるので、破傷風トキソイドのPEG化は、活性TeNTの修飾に関連しない。すなわち、破傷風トキソイドは、PEG化されていてもされていなくても、活性TeNTの酵素、結合および転位活性の組合せを有しない。
【0058】
特許文献2は、神経伝達物質と結合、ニューロンへ侵入する以上の特定の活性を有しない分子である、TeNT cフラグメント単独に関する。
【0059】
したがって、破傷風トキソイド免疫性を与えられた対象において既存の抗TeNT免疫を回避する、TeNTをベースとする治療のためのニーズが存在する。マスクされ、活性であり、治療に適したPEG化TeNTにより部分的に提供される、この問題に対する解決法を本明細書において開示する。
【0060】
破傷風神経毒素(TeNT)
TeNTは、約150kDaであり、tetX遺伝子から発現される。tetXのコード領域に対応するが、開始メチオニンコドンを欠いている、コドン最適化核酸配列は、
図3のベクター配列(配列番号2)中に提供されている。TeNTは、翻訳後に切断されて-先ず開始メチオニン、次いで2つの部分:未切断タンパク質のN末端由来の50kDa軽鎖(LCまたはA鎖)および未切断タンパク質のC末端由来の100kDa重鎖(HCまたはB鎖)を除去する1つのタンパク質として発現される。2つの鎖は、神経毒性にとって必須である鎖間ジスルフィド結合によって接続されている。成熟TeNTの1314アミノ酸配列は、
図2(配列番号1)に提供されている。
【0061】
LCは、亜鉛エンドペプチダーゼ活性を有し、膜との小胞融合にとって必要な小胞結合膜タンパク質(VAMP)を攻撃し、それにより、神経伝達物質放出を阻止する。
【0062】
パパインで消化次第、HCを、各々50kDaである2つのドメイン:HNと呼ばれるN末端転位ドメイン;およびフラグメントc(c)と呼ばれるC末端ガングリオシド(膜)結合ドメインに切断することができる。c欠乏TeNTは、本明細書においてはLC-HNと表される。
【0063】
cは、2つのポリシアロガングリオシド結合部位を有し、ニューロン膜上のポリシアロガングリオシド(GD2 GD1b、およびGT1b)と結合する。したがって、cは、TeNTと末梢運動アクソンのシナプス前膜との結合を媒介し、TeNTがこの膜を横切ってニューロンへ移動するのを助ける。
【0064】
アミノ酸配列について:
開始メチオニンを欠いているTeNTのアミノ酸配列は、
図2(配列番号1)に提供されている;
HCのアミノ酸配列は、
図5(配列番号3)に提供されている;
cのアミノ酸配列は、
図6(配列番号4)に提供されている;および
LC-HNのアミノ酸配列は、
図9(配列番号6)に提供されている。
【0065】
ベクターコード化およびベクターマップのコドン最適化核酸配列について:
cの配列は、
図7(配列番号5)および
図8に提供されている;および
LC-HNの配列は、
図10(配列番号7)および
図11に提供されている。
【0066】
本明細書で使用されるとき、「TeNT」は、重鎖および軽鎖から成る完全なTeNT分子を表すために使用される。本明細書において、サブドメインおよびフラグメントは、これらの略記により表される:軽鎖「LC」;重鎖「HC」;重鎖N末端ドメイン「HN」;重鎖フラグメントc「c」;軽鎖+重鎖N末端ドメイン「LC-HN」(すなわち、cのないTeNT分子)。いずれのサブドメインまたはフラグメントがPEG化されている場合、接頭語PEGを使用する:PEG-LC;PEG-HC;PEG-HN;PEG-c;PEG-LC-HN。PEG化フラグメントまたはサブドメインを含む完全TeNT分子では、接頭語PEGを使用してPEG化サブドメインまたはフラグメントを示す:PEG-TeNT-LC;PEG-TeNT-HC;PEG-TeNT-LC-HC;PEG-TeNT-HN;PEG-TeNT-c;PEG-TeNT-LC-c;PEG-TeNT-LC-HN、など。
【0067】
これらは固有の機能があるため、サブドメインおよびフラグメントは、完全TeNTについて互換的でないと理解できるであろう。
【0068】
本明細書に開示されているTeNTは活性であっても不活性であってもよい。活性TeNTは、天然TeNTと同じ生物活性を有する。不活性TeNTは、1つ以上の天然TeNT活性を欠く。1つの実施形態では、不活性TeNTは、抑制性神経伝達物質の放出を遮断しない。本開示の不活性TeNTは、「デコイ」と呼ばれる場合もある。不活性TeNTとしては、破傷風トキソイドが挙げられる。1つの実施形態では、不活性TeNTは、本明細書に開示されている不活性TeNTである。
【0069】
1つの実施形態では、2つ以上のTeNTが結合されていてもよい。
【0070】
別の実施形態では、TeNTは結合されていない。本明細書に開示されている組成物、方法および使用の1つの実施形態では、第一PEG-TeNTは、第二TeNTと結合していない。
【0071】
本明細書に開示され、
図1に図示されている免疫回避PEG-TeNTとしては:
PEG化フラグメントcを有するTeNT(PEG-TeNT-c)(
図1A);
PEG化重鎖を有するTeNT(PEG-TeNT-HC)(
図1B);
PEG化軽鎖およびPEG化フラグメントcを有するTeNT(PEG-TeNT-LC-c)(
図1C);ならびに
完全にPEG化されたTeNT(PEG-TeNT-LC-HC)(
図1D)
が挙げられる。
【0072】
PEG-TeNT-cは、ワクチン接種された対象において適応免疫系の既存免疫応答を有利に回避する。1つの実施形態では、PEG-TeNT-cは、効果が低下するまで使用される第一段階治療を提供する。
【0073】
PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cは、ワクチン接種された対象において適応免疫系の既存免疫応答を有利に回避し、PEG-TeNT-cへの反復暴露によって誘発される適応免疫系の免疫応答も回避する。
【0074】
1つの実施形態では、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cは共に、これらの効果が低下するまで使用される第二段階治療を提供する。
【0075】
PEG-TeNT-LC-HCは、ワクチン接種された対象において適応免疫系の既存免疫応答を有利に回避し、PEG-TeNT-cおよびPEG-TeNT-HC+PEG
-TeNT-LC-cへの反復暴露によって誘発される適応免疫系の免疫応答も回避する。
【0076】
1つの実施形態では、PEG-TeNT-LC-HCは、その効果が低下するまで使用される第三段階治療を提供する。
【0077】
PEG化軽鎖を有するTeNT(PEG-TeNT-LC)、PEG化LCおよびHNを有するTeNT(PEG-TeNT-LC-HN)、ならびにPEG化HNを有するTeNT(PEG-TeNT-HN)も開示する。
【0078】
PEG-TeNTの特定の組合せおよびこれらのPEG-TeNTの組合せを用いた治療の順序を変更してよいと、当業者は理解できるだろう。
【0079】
ポリエチレングリコール(PEG)
PEGは、TeNT中の、例えば、リジン(例えば、アミノ-PEG化)、システイン(例えば、チオール-PEG化および架橋PEG化)、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン(例えば、N-グリコ-PEG化)、グルタミン酸、グルタミン(例えば、トランスグルタミナーゼ媒介PEG化)、セリン(例えば、O-グリコ-PEG化)、スレオニン(例えば、O-グリコ-PEG化)、またはチロシン残基と結合していてよい。PEG化の例としては、N末端PEG化およびC末端PEG化も挙げられる。
【0080】
PEGを水酸基活性である官能基、例えば、無水物、酸塩化物、クロロホルメートおよびカーボネートと反応することによって、PEG化を行ってよい。あるいは、アルデヒド、エステル、およびアミドなどの官能基を用いて、PEG化を行ってもよい。
【0081】
PEGは直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0082】
PEGは、修飾PEG、例えば、ポリ[オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート](POEGMA)であってよい。
【0083】
PEG化は、部位特異的PEG化であってよい。
【0084】
1つの実施形態では、TeNTまたはTeNTフラグメントの表面セリン残基を、表面システイン残基へ変異導入して免疫原性エピトープにおける特異的PEG結合を促進する。これとの関連で、変異は、置換、例えば、セリンからシステインへの置換と同義である。かかる変異、または置換としては、S81C;S120C;S144C;S248C;S335C;S428C;S600C;S963C;S1041C;S1155C;およびS1187Cの1つ以上の任意の組合せが挙げられる。
【0085】
ヘテロ二官能性PEGの官能基としては、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸、およびNHSエステルが挙げられる。
【0086】
1つの実施形態では、PEGは、カルボジイミド-EDCおよびスルホNHSを使用するカルボキシル-アミン架橋を使用してTeNTと結合している。
【0087】
本発明は、TeNTの異なるサブドメインまたはフラグメントと結合された異なる分子量のPEGを含むPEG-TeNTも企図している。
【0088】
PEGは、例えば、4℃~25℃において2~6時間で開示のTeNTと結合(conjugated)または結合(attached)してよい。1つの実施形態では、PEGは、室温において6時間でTeNTと結合した。
【0089】
効能
本明細書で使用されるとき、「筋緊張低下」は、抑制性神経伝達物質、例えば、GABAまたはグリシン、の阻害により治療され得る不随意筋力低下を伴うあらゆる障害を表す。そうであるから、「筋緊張低下」としては、神経学的駆動力低下または他の原因に続発する筋緊張低下および筋緊張、強度もしくは神経学的駆動力の低下もしくは不十分の病態が挙げられる。したがって、1つの実施形態では、筋緊張低下は、神経性筋緊張低下であり得る。
【0090】
本開示によるPEG-TeNT、組成物または方法で治療され得る筋緊張低下疾患としては、閉塞型睡眠時無呼吸、無呼吸、いびき、脊柱側弯症、筋弛緩を原因とする斜視、下垂症、ホルネル症候群、筋萎縮症、神経障害筋肉、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動神経疾患、いずれもの筋疾患、多発性硬化症、パーキンソン病、重症筋無力症、顔面筋緊張、場合によって眼瞼外反、いずれかの骨格筋もしくは平滑筋を原因とする弛緩性麻痺もしくは脱力、人工呼吸後脱力を含むいずれかの原因による呼吸筋力低下、外傷によって誘発された筋力低下または筋弛緩状態を原因とする悪い姿勢、骨盤底筋弛緩状態もしくは筋力低下、または鼻もしくは上気道弛緩症が挙げられる。
【0091】
本開示によるPEG-TeNT、組成物または方法で治療され得る他の疾患としては、筋萎縮症、筋ジストロフィー、筋肉量減少、鼻閉、インポテンス、脱毛症、低血圧症、側頭顎関節症候群、斜頸、頸部痛、筋内神経再生、片頭痛、頭痛、アカラシア、肥満症、刺激結腸、肛門裂傷、胃酸の影響を受けた組織または臓器、前立腺肥大、鼻漏、唾液分泌、肺粘膜の刺激、乾癬、免疫寛容、免疫反応が挙げられる。
【0092】
本開示により治療される疾患が筋緊張低下疾患それ自体でない場合では、本開示のTeNTを用いた治療による筋緊張増大は、疾患の症状を緩和し得る。
【0093】
PEG-TeNTの美容の応用としては、腹筋強化、胸筋強化、大殿筋強化、骨格筋強化、または筋肉弛緩を原因とする顔面下垂の治療を挙げることができる。
【0094】
本開示によるPEG-TeNT、組成物または方法で治療され得る平滑筋、骨格筋、組織または臓器としては、食道上部、食道壁、食道括約筋、下部食道括約筋、肛門括約筋、膀胱、膀胱括約筋、膣括約筋、幽門括約筋、オディ括約筋、回盲部括約筋、骨盤底筋、膣壁筋、前立腺、顎下腺、耳下腺、舌下腺、口腔内粘膜の小唾液腺、声帯ヒダ、顔面筋、咀嚼筋、頭蓋表筋、胸部筋肉、背筋、上肢筋、前腕筋、下肢筋、手筋、足筋、胃壁筋、結腸壁筋、頸筋、咽頭開大筋、咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋、オトガイ舌骨筋、頤舌筋、口蓋帆張筋、口蓋帆挙筋、茎突咽頭筋、茎突舌筋、顎舌骨筋、茎突舌骨筋、舌骨舌筋、顎二腹筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋、側頭筋、輪状咽頭筋、子宮筋および子宮頚部、胃神経分布、鼻腔内粘膜、肺粘膜、皮膚、胸腺、骨、冠動脈、肺平滑筋ならびに心筋が挙げられる。
【0095】
組成物および投与
本開示の組成物は、治療用組成物または美容用組成物であってよい。すなわち、組成物を、治療または美容目的のために使用してよい。
【0096】
本明細書で使用されるとき、用語「治療用組成物」または「美容用組成物」は、本明細書に記載されている対象における筋緊張低下を抑制または治療するTeNTを含む組成物を表す。組成物を、対象に投与するために製剤した。1つの実施形態では、組成物は無菌である。1つの実施形態では、組成物は発熱物質を含まない。組成物は、薬剤的に許容可能な担体を含んでよい。好ましくは、組成物を、優良試験所基準(GLP)または医薬品
及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(GMP)に従って製造する。
【0097】
本開示のTeNTを、10mg/kg以上まで投与してよい。本開示のTeNTを、約1fg/kg、約5fg/kg、約10fg/kg、約50fg/kg、約100fg/kg、約500fg/kg、約1pg/kg、約5pg/kg、約10pg/kg、約50pg/kg、約100pg/kg、約500pg/kg、約1ng/kg、約2ng/kg、約3ng/kg、約4ng/kg、約5ng/kg、約6ng/kg、約7ng/kg、約8ng/kg、約9ng/kg、約10ng/kg、約11ng/kg、約12ng/kg、約13ng/kg、約14ng/kg、約15ng/kg、約16ng/kg、約17ng/kg、約18ng/kg、約19ng/kg、約20ng/kg、約30ng/kg、約40ng/kg、約50ng/kg、約60ng/kg、約70ng/kg、約80ng/kg、約90ng/kg、約100ng/kg、約200ng/kg、約300ng/kg、約400ng/kg、約500ng/kg、約600ng/kg、約700ng/kg、約800ng/kg、約900ng/kg、約1μg/kg、約5μg/kg、約10μg/kg、約50μg/kg、約100μg/kg、約500μg/kg、約1 mg/kg、または約10mg/kgで投与してよい。本開示のTeNTを、上記の投与量のいずれかのいずれかの範囲内で投与してよい。
【0098】
本開示のTeNTを、1000IU/kg以上まで投与してよい。本開示のTeNTを、約0.1IU/kg、約0.2IU/kg、約0.3IU/kg、約0.4IU/kg、約0.5IU/kg、約0.6IU/kg、約0.7IU/kg、約0.8IU/kg、約0.9IU/kg、約1IU/kg、約2IU/kg、約3IU/kg、約4IU/kg、約5IU/kg、約6IU/kg、約7IU/kg、約8IU/kg、約9IU/kg、約10IU/kg、約11IU/kg、約12IU/kg、約13IU/kg、約14IU/kg、約15IU/kg、約16IU/kg、約17IU/kg、約18IU/kg、約19IU/kg、約20IU/kg、約30IU/kg、約40IU/kg、約50IU/kg、約60IU/kg、約70IU/kg、約80IU/kg、約90IU/kg、約100IU/kg、約200IU/kg、約300IU/kg、約400IU/kg、約500IU/kg、約600IU/kg、約700IU/kg、約800IU/kg、約900IU/kg、約1000IU/kgで投与してよい。本開示のTeNTを、上記の投与量のいずれかのいずれかの範囲内で投与してよい。
【0099】
2つのPEG-TeNTを含む組成物、例えば、TeNT-HCがPEG化(PEG-TeNT-HC)されている第一PEG-TeNTならびにTeNT-LCおよびTeNT-cがPEG化(PEG-TeNT-LC-c)されている第二PEG-TeNTを含む組成物では、第二PEG-TeNTに対する第一PEG-TeNTの比は変動してよい。例えば、第二PEG-TeNTに対する第一PEG-TeNTの比は、約1000:1、約500:1、約100:1、約50:1、約10:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1;約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:10、約1:50、約1:100、約1:500、または約1:1000であってよい。
【0100】
組成物は、TeNTのいずれかの組合せを含んでよく、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-cの組合せに限定されない。組成物は:PEG-TeNT-cおよびPEG-TeNT-HC;PEG-TeNT-cおよびPEG-TeNT-LC-c;PEG-TeNT-cおよびPEG-TeNT-LC-HC;PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-HC;ならびにPEG-TeNT-LC-cおよびPEG-TeNT-LC-HCを含んでよい。PEG-TeNT-c、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-c;PEG-TeNT-c、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-HC;PEG-TeNT-c、PEG-TeNT-LC-cおよびPEG-TeNT-LC-HC;PEG-TeNT-HC、PEG-TeN
T-LC-cおよびPEG-TeNT-LC-HC;ならびにPEG-TeNT-c、PEG-TeNT-HC、PEG-TeNT-LC-cおよびPEG-TeNT-LC-HCを含む組成物も開示する。組成物では、いずれかのTeNTに置換してよく、いずれかの組成物は、PEG-TeNT-LC、PEG-TeNT-LC-HN、および/またはPEG-TeNT-HNをさらに含んでよい。
【0101】
1つの実施形態では、組成物は、例えば、ワクチン接種によりTeNTへの事前の暴露によって産生された抗TeNT抗体に対するデコイとして作用する不活性化されたTeNTをさらに含む。不活性化されたTeNTは、配列番号1に対して、R1225K;R1225E;W1228A;W1288Y;W1288F;W1288L;R1225KおよびW1288A;R1225KおよびW1288Y;R1225EおよびW1288Y;R1225KおよびW1288F;R1225EおよびW1288F;R1225KおよびW1288L;R1225EおよびW1288L;R1225del;W1288del;またはR1225delおよびW1288del;E270A;Y374A;E270AおよびY374A;E270del;Y374del、またはこれらの組合せを含んでよい。1つの実施形態では、第二TeNTは、R1225E、W1288A、E270AおよびY374Aを含む不活性化されたTeNTを含む。
【0102】
少なくとも1つのPEG-TeNTおよびデコイTeNTを含む組成物では、デコイTeNTは、PEG-TeNTに対して過剰なモル数になってよい。例えば、PEG-TeNTに対するデコイTeNTの比は、約106:1;105:1、104:1、1000:1、約500:1、約400:1、約300:1、約200:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1であってよい。
【0103】
本開示のPEG-TeNTを、毎週1回、2回もしくは3回、毎月1回、2回もしくは3回、四半期毎に1回、2回もしくは3回、6ヶ月毎に1回、2回もしくは3回、または毎年1回、2回もしくは3回投与してよい。
【0104】
PEG-TeNTを、単回投与、分割投与、または反復投与で投与してよい。筋肉が対として存在する場合、PEG-TeNTを、対の筋肉1つへ片側的に、または対の筋肉両方へ両側的に投与してよい。
【0105】
本開示の2つ以上のPEG-TeNTを含む組合せの代わりとして、かかる2つ以上のPEG-TeNTを、逐次または同時に組み合わせて投与してよい。
【0106】
PEG-TeNTを、いずれかの適切な方法、例えば、注射、外科的移植、局所的適用、または鼻腔内投与によって局所的に対象に投与してよい。1つの実施形態では、TeNTを、患部の筋肉に注射により筋肉内投与する。
【0107】
PEG-TeNTを、優れた医療行為のための原則に合わせた方法で製剤、投薬、および投与するだろう。これに関連して考慮される因子としては、治療される筋緊張低下の特定の型、治療される特定の対象、対象の臨床状態、投与部位、投与方法、投与計画、および歯科を含む医療の開業医に公知の他の因子が挙げられる。投与しようとするPEG-TeNTの治療有効量は、かかる考察によって管理されるだろう。
【0108】
薬剤的に許容可能な担体としては、水、緩衝水、例えば、生理食塩水またはハンクもしくはアールの均衡溶液などの均衡食塩溶液などの食塩水、グリシン、および)ヒアルロン酸が挙げられる。
【0109】
筋肉内投与用に組成物を製剤してよい。筋肉内投与用組成物は、薬剤的に許容可能な滅菌水性もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液または乳濁液ならびに滅菌注射液もしくは分散液への調製用滅菌散剤を含んでよい。適切な水性または非水性担体、溶媒、希釈剤または媒体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびこれらの混合物、植物油(オリーブ油など)、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。
【0110】
組成物は、浸透促進剤を含んで、TeNTの送達を促進してよい。浸透促進剤としては、オレイン酸、ラウリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリレート、レクリネート(reclineate)、モノオレイン、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセリル1-モノカプレート、モノおよびジグリセリドならびにこれらの生理学的に許容可能な塩を挙げることができる。
【0111】
組成物は、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸塩、ホモバニレート(homovanilate))などのキレート剤をさらに含んでもよい。
【0112】
PEG-TeNTまたはPEG-TeNTを含む組成物を収容する容器を備える製造物品および/またはキットも提供する。容器は、必要に応じて単位剤形でPEG-TeNTまたは組成物を含むビン、バイアルまたは注射器であってよい。例えば、PEG-TeNTまたは組成物は、ディスポーザブル容器、必要に応じて注射器中に注射可能な液剤の形態であってよい。製造物品および/またはキットは、本明細書に開示されている方法による対象の治療を示す印刷された説明書および/またはラベルなどをさらに備えてよい。
【0113】
用語「治療有効量」は、対象における筋緊張低下を治療するために効果的なPEG-TeNT量を表す。
【0114】
用語「治療する」、「治療すること」または「治療」は、対象における筋緊張低下を予防、低減、もしくは寛解するまたは対象における筋緊張低下の進行を遅らせる(減少する)ことを目的とする治療処置および予防(prophylactic)もしくは予防(preventative)手段の両方を表す。治療を必要とする対象としては、既に筋緊張低下に罹患している者ならびに筋緊張低下を予防または寛解しようとする者が挙げられる。
【0115】
用語「予防すること」、「予防」、「予防の(preventative)」または「予防の(prophylactic)」は、筋緊張低下の発生を避ける、または筋緊張低下の発生を妨げる、筋緊張低下の発生から身を守る、または筋緊張低下の発生から保護することを表す。予防を必要とする対象は、筋緊張低下に罹患する傾向にあり得る。
【0116】
用語「寛解する」または「寛解」は、筋緊張低下を減少、低減または排除することを表す。
【0117】
筋緊張低下を定量化してよい。筋緊張低下を、半定量スケール、例えば、0~5で定量化してよく、0は存在しないことを表し、1~4は重症度の識別可能な増加であり、5は最大の重症度である。あるいは、筋緊張低下を、二値事象、すなわち、存在かまたは非存在、0または1として定量化してもよい。他の半定量スケールは、当業者には容易に分かるだろう。別の実施形態では、筋緊張低下を、例えば、フォースゲージを使用して定量的スケールで定量化してもよい。
【0118】
筋緊張低下のいずれもの定量も、コントロール、例えば、PEG-teNTの投与を受けていない健康なコントロール対象、筋緊張低下のための治療を受けているがPEG-TeNTで治療されていない罹患コントロール患者と比較してよい。
【0119】
PEG-TeNTの投与による筋緊張低下の治療は、筋緊張低下において約1%減少、約2%減少、約3%減少、約4%減少、約5%減少、約6%減少、約7%減少、約8%減少、約9%減少、約10%減少、約20%減少、約30%減少、約40%減少、約50%減少、約60%減少、約70%減少、約80%減少、約90%減少、または約100%減少であり得る。
【0120】
本明細書で使用されるとき、用語「対象」は、哺乳類を表し得る。哺乳類は、霊長類、特に、ヒトであってもよく、飼育動物、動物園の動物、またはコンパニオンアニマルであってよい。本明細書に開示されているPEG-TeNTの組成物および方法がヒトの医学的治療に適していると特に考えられるが、ウマ、ウシおよびヒツジなどの飼育動物、イヌおよびネコなどのコンパニオンアニマル、またはネコ科、イヌ科、ウシ科および有蹄動物などの動物園の動物の治療を含む獣医学的治療にも適用可能である。
【0121】
本明細書中で別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術および科学用語は本発明が属する技術分野の当業者および出版された文献により共通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0122】
なお、用語「a」または「an」は、1つ以上を表し、例えば、「a TeNT」は、1つ以上のTeNTを表すと理解される。このように、用語「a」または「an」、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用してよい。
【0123】
続くクレームおよび本発明の明細書では、言語表現または含意のせいで文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「comprise(含む)」または「comprises(含む)」または「comprising(含んでいる)」は非排他的意味で使用される、すなわち、本発明の様々な実施形態において表明された特徴の存在を規定するが、更なる特徴の存在も付加も排除しない。
【0124】
本明細書で使用されるとき、用語「about(約)」は、その数の大きさ±25%の所与の数に対する値の範囲を意図する。他の実施形態では、用語「about(約)」は、その数の大きさ±20%、±15%、±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の所与の数に対する値の範囲を意図する。例えば、1つの実施形態では、約3グラムは、2.7グラム~3.3グラム(すなわち、3グラム±10%)、などを示す。
【0125】
同様に、事象のタイミングまたは期間は、少なくとも25%変動し得る。例えば、1日続く1つの実施形態では、特定の事象が開示され得るが、事象は1日より長くまたは短く続き得る。例えば、「1日」は、約18時間~約30時間の期間を含み得る。他の実施形態では、時間は、その時間の±20%、±15%、±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%変動し得る。
【実施例0126】
実施例1-PEG-TeNT-c(
図1A)の製造
本実施例では、TeNT-cの表面セリン残基を、表面システイン残基へ変異導入して免疫原性エピトープにおいて特異的PEG結合を促進し、
図1Aの分子を産生する。変異は、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cである。
【0127】
表面セリンからシステインへの置換S963C、S1041C、S1155C、および
S1187Cを有するTeNTのための遺伝子は、商用プロバイダー、例えば、Integrated DNA Technologiesによって合成される。遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグを変異体タンパク質のN末端に付加するように、制限消化によってpRSET-A発現ベクターにサブクローン化する。
【0128】
S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cを含むTeNTを発現し、PEG化し、実施例5に従って精製して、PEG-TeNT-cを得る。
【0129】
実施例2-PEG-TeNT-HC(
図1B)の製造
本実施例では、TeNT-HCの表面セリン残基を、表面システイン残基へ変異導入して、免疫原性エピトープにおいて特異的PEG結合を促進し、
図1Bの分子を産生する。変異は、S600C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cである(
図24 配列番号16)。
【0130】
表面セリンからシステインへの置換S600C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cを有するTeNTのための遺伝子は、商用プロバイダー、例えば、Integrated DNA Technologiesによって合成される。遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグを変異体タンパク質のN末端に付加するように、制限消化によってpRSET-A発現ベクター(
図25 配列番号17、
図26)にサブクローン化する。
【0131】
S600C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cを含むTeNTを発現し、PEG化し、実施例5に従って精製して、PEG-TeNT-HCを得る。
【0132】
実施例3-PEG-TeNT-LC-c(
図1C)の製造
本実施例では、LCおよびcの表面セリン残基を、表面システイン残基へ変異導入して、免疫原性エピトープにおいて特異的PEG結合を促進し、
図1Cの分子を産生する。変異は、S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cであった(
図21 配列番号14)。
【0133】
LCおよびc中、表面セリンからシステインへの置換S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cを有するTeNTのための遺伝子は、商用プロバイダー、Integrated DNA Technologiesによって合成された。遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグを変異体タンパク質のN末端に付加するように、制限消化によってpRSET-A発現ベクター(
図22 配列番号15、
図23)にサブクローン化した。
【0134】
S81C、S120C、S144C、S248C、S335C、S428C、S963C、S1041C、S1155C、およびS1187Cを含むTeNTを、発現し、PEG化し、実施例5に従って精製して、PEG-TeNT-LC-cを得た。
【0135】
エンドトキシン除去
エンドトキシンを、実施例4に従って、TeNT-LC-cセリン変異体から除去した。
【0136】
システイン残基とのPEGの結合
1.過剰モル数のPEG-約2kDa、約5kDa、約10kDaまたは約20kDa
のPEGを有するマレイミドを、PBS中、pH6.5~7.5においてセリン変異体TeNT-LC-c(0.5~2mg/mL)と混合した。
2.室温で6時間、結合を行った。
3.過剰のPEGを、サイズ排除クロマトグラフィにより取り除いた。
【0137】
タンパク質のトリプシン消化活性
実施例4に従って、TeNT-LC-cセリン変異体の活性化のためのトリプシン消化を行った。
【0138】
実施例4-PEG-TeNT-LC-HC(
図1D)の製造(方法1)
【0139】
TeNTの製造
1.E.Coli BL21 DE3 pLysS株を、pRSET-TeNTベクターで電気形質転換し(
図3および4)、37℃において選択抗生物質(アンピシリンおよびクロラムフェニコール)と共にLB寒天上で一夜生育した。
2,200mLの前誘発ブロスに、選択プレートからの1コロニーを播種した。1.2%トリプトン;2.4%酵母エキス;2%グルコース;0.4%グリセロール;17mM
KH
2PO
4;72mM K
2HPO
4;および選択抗生物質(アンピシリンおよびクロラムフェニコール)を含む前誘発ブロスpH7.2~7.4。
3.培養液を、高速で振盪しながら30℃で一夜インキュベートした。
4.一夜培養した培養液を、4000g、10分間の遠心分離により収穫した。
5.1.2%トリプトン;2.4%酵母エキス;0.4%グリセロール;1mM IPTG;17mM KH
2PO
4;72mM K
2HPO
4;100μg/mLアンピシリン;および10μM ZnCl
2を含む200mLの発現ブロスpH7.2~7.4中に、ペレットを再懸濁した。
6.タンパク質を、高速で振盪しながら30℃で6時間発現した。
7.細胞を、4500gで15分間遠心分離により収穫し、ペレットを、20mMイミダゾールを含む30mLのTBS中にpH8において再懸濁した。
8.細胞を、超音波処理により溶解した。
9.細胞ライセートを、4500gで20分間遠心分離により透明にして、0.45μmフィルターにより濾過した。
10.タンパク質を、AKTA pure 25FPLCシステム(GE)を使用して、Hisタグアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
11.精製されたタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、PBSに緩衝液交換し、次いで、Superdex200 increase 10/300GLカラムを備えたAKTAピュア25FPLCシステムを使用して、ゲル濾過による第二段階精製を行った。
【0140】
エンドトキシン除去
1.0.5mLエンドトキシン除去スピンカラムを室温まで平衡化した。
2.カラムボタンプラグを取り除き、カラムキャップを緩め、カラムを15mLチューブ中に入れて、500gで1分間遠心分離してカラムから溶液を除去した。溶液を廃棄した。
3.カラムボタンプラグを交換し、カラムキャップを取り除き、95%エタノール中の0.2N NaOHを樹脂に添加し、カラムキャップを交換し、カラムを数回反転して樹脂を再懸濁してから、室温で1~2時間インキュベートした。
4.カラムボタンプラグを取り除き、カラムキャップを緩め、カラムを15mLチューブ中に入れて、500gで1分間遠心分離してカラムから溶液を除去した。溶液を廃棄した。
5.カラムボタンプラグを交換し、カラムキャップを取り除き、エンドトキシンを含ま
ない2M NaClを樹脂に添加し、カラムキャップを交換し、カラムを数回反転して樹脂を再懸濁した。
6.カラムボタンプラグを取り除き、カラムキャップを緩め、カラムを15mLチューブ中に入れて、500gで1分間遠心分離してカラムから溶液を除去した。溶液を廃棄した。
7.カラムボタンプラグを交換し、カラムキャップを取り除き、エンドトキシンを含まない超純水を樹脂に添加し、カラムキャップを交換し、カラムを数回反転して樹脂を再懸濁した。
8.カラムボタンプラグを取り除き、カラムキャップを緩め、カラムを15mLチューブ中に入れて、500gで1分間遠心分離してカラムから溶液を除去した。溶液を廃棄した。
9.カラムボタンプラグを交換し、カラムキャップを取り除き、エンドトキシンを含まないリン酸緩衝液を樹脂に添加し、カラムキャップを交換し、カラムを数回反転して樹脂を再懸濁した。
10.カラムボタンプラグを取り除き、カラムキャップを緩め、カラムを15mLチューブ中に入れて、500gで1分間遠心分離してカラムから溶液を除去した。溶液を廃棄した。
11.カラムを、リン酸緩衝液で2回以上リンスし、溶離液を廃棄した。
12.カラムボタンプラグを交換し、カラムキャップを取り除き、サンプルを樹脂に適用し、カラムキャップを交換し、カラムを数回反転して樹脂を再懸濁した。
13.カラムを、4℃で少なくとも1時間、回転混合しながらインキュベートした。
14.カラムボタンプラグを取り除き、カラムキャップを緩め、カラムを、エンドトキシンを含まない15mLチューブ中に入れて、500gで1分間遠心分離してカラムから溶液を除去した。サンプルは保持。
15.サンプル中のエンドトキシンが同等かそれ以下のレベルになって全ての投与量が対象のキログラム当たり5EUユニット未満のエンドトキシンしか含まなくなるまで、再生スピンカラムを用いてエンドトキシン除去手順を繰り返した。
【0141】
PEG-TeNT-LC-HCの製造
1.500μLのPBS pH7.4の全体積において、3μmolの精製TeNTおよび0.5mmolのmpeg-NHS(SC)(Nanocs)を、2kDa、5kDa、10kDa、20kDa、または30kDa PEGと結合した。
2.サンプルを、室温で3時間混合した。
3.過剰のPEGを、サイズ排除クロマトグラフィにより取り除いた。
【0142】
タンパク質の活性体へのトリプシン消化
1.0.1M NH4HCO3緩衝液、pH8.0または0.1Mトリス緩衝液pH8.5を含む0.5mL消化緩衝液中に、1mgのタンパク質を溶解した。
2.0.10mL~0.25mLの固定化TPCKトリプシンを、3×500μLの消化緩衝液で洗浄した。各洗浄後、遠心分離によってゲルを緩衝液から分離した。
3.約0.2mLの消化緩衝液中に、ゲルを再懸濁した。
4.固定化TPCKトリプシンを、タンパク質サンプルに添加した。
5.反応混合物を、高速振盪インキュベーターにおいて37℃で2時間~18時間インキュベートした。
6.固定化TPCKトリプシンを、遠心分離によって分離した。
【0143】
実施例5-PEG-TeNT-LC-HC(
図1D)の製造(方法2)
本実施例では、TeNT-LC-HCの表面セリン残基を、表面システイン残基に変異(SからCへの変異体)して、免疫原性エピトープにおいて特異的PEG結合を促進した。TeNT変異は、配列番号1に対して、S81C;S120C;S144C;S248C、S335C;S428C;S600C;S963C;S1041C;S1155C;およびS1187Cであった。
【0144】
セリン変異体TeNT-LC-HCの製造
E.Coli BL21(DE3)pLysS株を、SからCへの変異を含む
図18(配列番号12)のアミノ酸配列をコードするベクターpRSET-TeNT(
図19および20)で電気形質転換した。SからCへの変異を含むTeNT-LC-HCを発現し、ステップ10および11間に15分間0.5mM DTTの処理を付加した実施例4に従って精製した。
【0145】
エンドトキシン除去
エンドトキシンを、実施例4に従って、TeNT-LC-HCセリン変異体から除去した。
【0146】
システイン残基とのPEGの結合
1.約2kDa、約5kDa、約10kDaまたは約20kDaのPEGを有する過剰モル数のPEG-マレイミドを有するマレイミドを、PBS中、pH6.5~7.5においてセリン変異体TeNT-LC-HC(0.5~2mg/mL)と混合した。
2.室温で6時間、結合を行った。
3.過剰のPEGを、サイズ排除クロマトグラフィにより取り除いた。
【0147】
タンパク質のトリプシン消化活性
実施例4に従って、TeNT-LC-HCセリン変異体の活性化のためのトリプシン消化を行った。
【0148】
実施例6-不活性化デコイTeNT
本実施例では、ガングリオシド結合領域において配列番号1に対してR1225EおよびW1288Aアミノ酸置換を含む非PEG化組換えcを製造した。不活性化されたcを、非PEG化LC-HNの等モル量と結合して、不活性化デコイTeNTを製造した。得られた不活性化TeNTを、破傷風トキソイドのワクチンを接種された対象において抗体に基づいた中和応答のためのデコイとして使用する。
【0149】
R1225E W1288Aを含むcの製造
R1225EおよびW1288Aを含むcの遺伝子は、商用プロバイダー、Integrated DNA Technologiesによって合成された。遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグを変異体タンパク質のN末端に付加するように、制限消化によってpRSET-A発現ベクターにサブクローン化した。
【0150】
E.Coli BL21(DE3)pLysS株を、R1225E W1288A(
図12、配列番号8)を含むcをコードするpRSET-TeNT-cベクター(
図13(配列番号9)および
図14)で電気形質転換し、37℃で選択抗生物質(アンピシリンおよびクロラムフェニコール)を含むLB寒天上で一夜生育した。R1225E W1288Aを含むcを発現し、実施例4に従って精製した。
【0151】
エンドトキシン除去
エンドトキシンを、実施例4に従って、精製されたタンパク質から除去した。
【0152】
LC-HNの製造
E.Coli BL21(DE3)pLysS株を、pRSET-TeNT-LC-HNベクター(
図10および11)で電気形質転換し、37℃において選択抗生物質(アン
ピシリン、クロラムフェニコール)と共にLB寒天上で一夜生育した。LC-HNを発現し、実施例4に従って精製した。
【0153】
エンドトキシン除去
エンドトキシンを、実施例4に従って、精製されたタンパク質から除去した。
【0154】
E270A Y374Aを含むLC-HNの製造
E.Coli BL21(DE3)pLysS株を、E270A Y374Aを含むLC-HNをコードするpRSET-TeNT-LC-HNベクターで電気形質転換し、37℃において選択抗生物質(アンピシリン、クロラムフェニコール)と共にLB寒天上で一夜生育した。E270A Y374Aを含むLC-HNを発現し、実施例4に従って精製した。
【0155】
エンドトキシン除去
エンドトキシンを、実施例4に従って、精製されたタンパク質から除去した。
【0156】
実施例7-不活性デコイTeNT
R1225EおよびW1288Aを含むTeNTの遺伝子は、商用プロバイダー、Integrated DNA Technologiesによって合成された。遺伝子は、ベクターからの6xヒスチジンタグを変異体タンパク質(
図15 配列番号10、
図16
配列番号11、および
図17)のN末端に付加するように、制限消化によってpRSET-A発現ベクターにサブクローン化した。
【0157】
R1225EおよびW1288Aを含む不活性化TeNTを発現し、実施例4に従って精製した。
【0158】
エンドトキシン除去
エンドトキシンを、実施例4に従って、精製されたタンパク質から除去した。
【0159】
実施例8-PEG-TeNT分析
TeNTを製造し、実施例4に従ってPEG化し、次いで、SDS-PAGEにより分析(
図28)し、(A)クーマシーブルーによって、および(B)ポリクローナル抗TeNT抗体を使用してウエスタンブロットによって検出した。(B)は、免疫原性がPEG分子量に比例することを示している。
【0160】
実施例9-TeNTに対するPEG-TeNTの低下された免疫原性
各々異なる分子量のPEG(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)を含む4つのPEG-TeNTを製造し、実施例4に従ってPEG化した。次いで、PEG-TeNTを、TeNTに対して競合ELISAによってアッセイした。
【0161】
第一アッセイ(
図29A)では、TeNTを、ELISAプレートに吸着した。次いで、吸着されたTeNTを、4つのPEG-TeNT抗原(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)の4つの濃度(10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/ml)の各々でプレインキュベートされたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブした。このアッセイでは、より高い応答(OD 450nm)は、TeNTに対するより大きな親和性を示し、したがって、PEG-TeNTに対する免疫原性が低いことを示す。
【0162】
第二アッセイ(
図29B)では、各PEG-TeNTを、別々のELISAプレートに吸着した。次いで、各吸着されたPEG-TeNT(2kDa、5kDa、10kDaお
よび20kDa)を、TeNT抗原の4つの濃度(10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/ml)の各々でプレインキュベートされたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブした。このアッセイでは、より低い応答(OD 450nm)は、TeNTに対するより大きな親和性を示し、したがって、PEG-TeNTに対する免疫原性が低いことを示す。
【0163】
この実施例は、抗TeNT抗体は選択的にTeNTと結合し、PEG化TeNTはTeNT(すなわち、非PEG化)と比較して免疫原性を低下させたことを示した。
【0164】
実施例10-TeNT-LC-cセリン変異体に対するPEG-TeNT-LC-cセリン変異体の低下された免疫原性
TeNT-LC-cセリン変異体を、実施例5に従って製造した。TeNT-LC-cセリン変異体の4つのサンプルを、実施例5に従ってPEG化し、各サンプルは、異なる分子量のPEG(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)を含む。次いで、PEG-TeNT-LC-cセリン変異体を、TeNT-LC-cセリン変異体に対して競合ELISAによってアッセイした。
【0165】
第一アッセイ(
図29C)では、TeNT-LC-cセリン変異体を、ELISAプレートに吸着した。次いで、吸着されたTeNTセリン変異体を、4つのPEG-TeNTセリン変異体抗原(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)の4つの濃度(10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/ml)の各々でプレインキュベートされたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブした。このアッセイでは、より高い応答(OD 450nm)は、TeNTセリン変異体に対するより大きな親和性を示し、したがって、PEG-TeNTセリン変異体に対する免疫原性が低いことを示す。
【0166】
第二アッセイ(
図29D)では、各PEG-TeNT-LC-cセリン変異体を、別々のELISAプレートに吸着した。次いで、各吸着されたPEG-TeNTセリン変異体(2kDa、5kDa、10kDaおよび20kDa)を、TeNTセリン変異体抗原の4つの濃度(10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlおよび0.01μg/ml)の各々でプレインキュベートされたポリクローナル抗TeNT抗体でプローブした。このアッセイでは、より低い応答(OD 450nm)は、TeNTセリン変異体に対するより大きな親和性を示し、したがって、PEG-TeNTセリン変異体に対する免疫原性が低いことを示す。
【0167】
この実施例は、抗TeNT抗体は選択的にTeNT-LC-cセリン変異体と結合し、PEG化TeNT-LC-cセリン変異体はTeNT-LC-cセリン変異体(すなわち、非PEG化)と比較して免疫原性を低下させたことを示した。
【0168】
実施例11-TeNTに対するPEG-TeNTの低下された免疫原性
前の12ヶ月内に追加免疫破傷風トキソイドワクチン接種を受けた1つ以上の対象から採取されたヒト血清によりポリクローナル抗体を置換することを除いて実施例9に従って、競合ELISAアッセイを行う。血清中の抗体は、PEG-TeNTと対比してTeNT(すなわち、非PEG化TeNT)に対してより大きな親和性を示すだろう。
【0169】
実施例12-インビボモデル
PEG-TeNT-LC-HCを、実施例4に従って、組換えTeNTの表面に露出したリジン残基とPEG(約5kDa、約10kDaまたは約20kDa)を結合することによって製造した。
【0170】
15μLのPBS中の1ユニット以上のPEG-TeNT-LC-HCを、雌C57BL/6マウスの後肢に注射した。各動物は、注射48時間以内に局所的肢筋強縮を示した(
図30Aおよび30B)。
【0171】
実施例13-インビボモデル
実施例4に従って、TeNTの表面リジン残基と結合された5kDaのPEGを含むPEG-TeNT-LC-HCを、cデコイ、すなわち、R1225E W1288Aにより不活性化されたcと、1:10のモル比で結合した。5ngのPEG-TeNTを含む、15ミリリットルのPBS中の組成物を、雌C57BL/6マウスの後肢の筋肉内に注射した。各動物は、48時間以内に局所的肢筋強縮を示し、デコイの存在なしでPEG-TeNT-LC-HCで治療された動物から病徴発現は識別できなかった。
【0172】
実施例14.
5kDa、10kDaまたは20kDaのPEGを含むPEG-TeNT-LC-HCを、破傷風トキソイドで前以て免疫化されたマウスの後肢筋肉に50~500000ng/kg筋肉内投与した。増大された筋収縮は、3日までに注射された筋肉内で観察され、同ユニットのTeNTを投与されたマウスにおいて観察された効果より大きかった。
図31Aは、PEG-TeNT-LC-HC 20kDaについての結果を報告している。
【0173】
実施例15.
実施例6に従って製造されたTeNT-LC-HCおよび10:1または100:1モル過剰のデコイTeNTを含む組成物を、破傷風トキソイドで前以て免疫化されたマウスの後肢筋肉に50~500000ng/kg筋肉内投与した。増大された筋収縮は、3日間までに注射された筋肉内で観察され、TeNTを投与されたマウスにおいて観察された効果より大きかった(
図32A)。
【0174】
実施例16.
実施例6に従って製造された5kDa、10kDaまたは20kDaのPEGを含むPEG-TeNT-LC-HCおよび10:1または100:1モル過剰のデコイTeNTを含む組成物を、破傷風トキソイドで前以て免疫化されたマウスの後肢筋肉に50~500000ng/kg筋肉内投与した。増大された筋収縮は、3日間まで注射された筋肉内で観察され、TeNTを投与されたマウスにおいて観察された効果より大きく、かつ、PEG-TeNTのみを投与されたマウスにおいて観察された効果より大きかった(
図32B)。
【0175】
実施例17.
20kDaのPEGを含むPEG-TeNT-LC-HCを、破傷風トキソイドで前以てワクチン接種されたヒト対象の左おとがい舌骨筋に0.01~50000ng/kg筋肉内投与する。増大された筋収縮は、2週間までに注射された筋肉内で観察され、同対象に媒体のみ投与された右おとがい舌骨筋において観察された効果より大きいだろう。
【0176】
実施例18.
実施例6に従って製造された、20kDaのPEGを含むPEG-TeNT-LC-HCおよび10:1または1000:1モル過剰のデコイTeNTを含む組成物を、破傷風トキソイドで前以てワクチン接種されたヒト対象の左おとがい舌骨筋に50ng/kg筋肉内投与する。20kDaのPEGを含むPEG-TeNT-LC-HCを、同ヒト対象の右おとがい舌骨筋に50ng/kg筋肉内投与する。
【0177】
増大された筋収縮は、2週間までに左および右の両おとがい舌骨筋において観察されるが、PEG-TeNT-LC-HC単独と比較して、PEG-TeNT-LC-HCおよ
びデコイTeNTを含む組成物で治療された左おとがい舌骨筋において大きい。
【0178】
実施例19.
約30kgのブルドッグに、左および右おとがい舌骨筋に両側的に分割された投与量で、20kDaのPEGを含む25~50000ng/kgのPEG-TeNT-cを筋肉内投与する。投与すると、閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)は、媒体のみで治療された動物と比較して、PEG-TeNT治療された動物において低減する。OSAに関して、毎週、ブルドッグを観察し、媒体のみで治療された動物と比較可能なOSAの再開によって決定される、効果の低下まで、PEG-TeNT-c投与を必要に応じて繰り返す。
【0179】
その後、ブルドッグに、それぞれが20kDaのPEGを含む25~50000ng/kgのPEG-TeNT-HCまたは25~50000ng/kgのPEG-TeNT-LC-cを、左および右おとがい舌骨筋に両側的に分割して投与する。投与すると、OSAは、媒体のみで治療された動物と比較して、PEG-TeNT治療された動物において低減する。OSAに関して、毎週、ブルドッグを観察し、媒体のみで治療された動物と比較可能なOSAの再開によって決定される、効果の低下まで、PEG-TeNT-HCおよびPEG-TeNT-LC-c投与を必要に応じて繰り返す。
【0180】
その後、ブルドッグに、それぞれが20kDaのPEGを含む25~50000ng/kgのPEG-TeNT-LC-HCを、左および右おとがい舌骨筋に両側的に分割して投与する。投与すると、OSAは、媒体のみで治療された動物と比較して、PEG-TeNT治療された動物において低減する。OSAに関して、毎週、ブルドッグを観察し、媒体のみで治療された動物と比較可能なOSAの再開によって決定される、効果の低下まで、PEG-TeNT-LC-HC投与を必要に応じて繰り返す。
【0181】
実施例20.
Discovery Studioを使用して、タンパク質データバンクに寄託された結晶学的データから誘導されたTeNTの三次元モデル上に、da Silva Antunes et al(2017)PloS One,12(1), e0169086およびPalermo et al(2017)Biotechnology Journal,12(10),1700197により特定された主要ヒト抗体クローン形質により認識されたTeNTをマッピングした。同定されたエピトープ中または周囲の表面セリン残基を、実施例1~3および5に記載された続くPEG化のためのシステインへの変異のために特定した。
【0182】
実施例21.
1ナノグラム~64マイクログラムの、PEG-TeNT(表面リジンまたはシステイン残基と結合された5kDa、10kDaまたは20kDaの分岐鎖または直鎖PEG)および10~1000モル過剰のデコイTeNTの混合物を、破傷風トキソイドのワクチン接種されたマウスの後肢に筋肉内注射する。局所的筋強縮は、数時間から数ヶ月の期間観察され、天然TeNTを注射されたマウスで観察された効果より大きい。
【0183】
実施例22.
1ナノグラム~64マイクログラムの、PEG-TeNT(表面リジンまたはシステイン残基と結合された5kDa、10kDaまたは20kDaの分岐鎖または直鎖PEG)および10~1000モル過剰のデコイTeNTの混合物を、破傷風トキソイドのワクチン接種されたヒトのおとがい舌骨筋に筋肉内注射する。局所的筋強縮は、数週間から数ヶ月の期間観察され、天然TeNTを注射されたヒトで観察された効果より大きい。
【0184】
実施例23.
睡眠時呼吸障害のブリティッシュブルドッグに、0.001~10IU/KgのTeNTを左および右おとがい舌骨筋に両側的に分割して筋肉内投与した。投与すると、閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)は最も高い投与量において有意に減少することが確認された。ベースライン呼吸障害指数(RDI)スコアは19.9(四分位範囲5.45)であり、10IU/KgのTeNTでの治療後13.2(四分位範囲4.45)まで減少し、ウィルコクソン符号順位検定によって、プラセボの投与と比較して有意であると判定した;P=0.043。ブルドッグを、治療後4ヶ月観察し、RDI低下は維持された;RDI中央値=13.4、P=0.043;ウィルコクソン符号順位検定。